(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粗飼料を主食とする例えば牛のような家畜は、胃袋で粗飼料を発酵させて消化吸収を行うため胃袋内で常にガスが発生し、鼓脹症になり易い。しかしながら、従来の無線端末の計測データでは、鼓脹症になった牛を見つけることができても、手遅れになることが多かったため、鼓脹症を初期段階又は予兆の段階で見つけることが可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、圧力センサ(30)と無線回路(11)と
これら圧力センサ(30)及び無線回路(11)を収容して防水するケース(40,40V)とを有し、家畜(10)の胃袋(10S)内に留置されて前記胃袋(10S)内の圧力を計測して得た圧力データを無線送信する無線端末(20,20V
)において、前記ケース(40,40V)は、一端が有底で他端が開口した筒形のケース本体(41)と、前記ケース本体(41)の開口を閉塞する蓋体(42,42V)とからなり、前記蓋体(42,42V)には、内外に貫通し、前記圧力を計測するための圧力計測用受圧部(18,34)を内側に有して閉塞される計測孔(46)と、前記ケース本体(41)の外側に位置する保護壁部(42H)と、が備えられ、前記計測孔(46)は、前記蓋体(42,42V)の内面から前記保護壁部(42H)の内部まで直線状に延びる第1直線部(44)と、前記保護壁部(42H)を前記ケース本体(41)の軸方向と交差する方向に貫通して、前記第1直線部(44)とT字形に交差して延び、末端が前記保護壁部(42H)の外面に開口する第2直線部(45)と、を備えてなる無線端末(20,20V)である。
請求項2の発明は、前記圧力計測用受圧部(18)は、前記計測孔(46)の途中位置に張られて、前記圧力を受けて弾性変形する防水シート(18)であり、前記圧力センサ(30)は、前記計測孔(46)に気密状態に嵌合して前記防水シート(18)との間に気密空間(19)を形成し、前記気密空間(19)の内圧を前記胃袋(10S)内の圧力として計測する請求項1に記載の無線端末(20V)である。
【0006】
請求項
3の発明は、
圧力センサ(30)と無線回路(11)とこれら圧力センサ(30)及び無線回路(11)を収容して防水するケース(40)とを有し、家畜(10)の胃袋(10S)内に留置されて前記胃袋(10S)内の圧力を計測して得た圧力データを無線送信する無線端末(20)において、前記ケース(40)は、一端が有底で他端が開口した筒形のケース本体(41)と、前記ケース本体(41)の開口を閉塞するように嵌合しかつ内外に貫通する計測孔(46)を有する蓋体(42)と、からなり、前記圧力センサ(30)は、前記ケース本体(41)に固定されて前記蓋体(42)に向かって突出すると共に先端に前記圧力を計測するための圧力計測用受圧部(34)を有し、前記蓋体(42)と前記ケース本体(41)との嵌合に伴って、前記圧力センサ(30)が前記計測孔(46)に嵌合して前記計測孔(46)が前記圧力計測用受圧部(34)により閉塞される無線端末(20)である。
【0007】
請求項
4の発明は、前記計測孔(46)は、前記圧力計測用受圧部
(34)から
前記蓋体(42)の外面までの間で屈曲又は湾曲している請求項
3に記載の無線端末
(20)である。
【0009】
請求項5の発明は、
圧力センサ(30)と無線回路(11)とを有し、家畜(10)の胃袋(10S)内に留置されて前記胃袋(10S)内の圧力を計測して得た圧力データを無線送信する無線端末(20W)において、前記圧力センサ(30)を実装しかつ防水処理されたセンサ実装防水部(21T)を有するセンサ実装回路基板(21W)と、前記無線端末(20W)のうち前記センサ実装防水部(21T)以外に配置されている電気回路を収容する防水部屋(41B)を内側に有しかつ前記センサ実装防水部(21T)が前記防水部屋(41B)の外側に張り出すように前記センサ実装回路基板(21W)を支持する防水ケース(40W)と、前記防水ケース(40W)に一体に設けられるか又は固定されて、前記センサ実装防水部(21T)を収容すると共に、内外に貫通する複数の貫通孔(38A)を有するセンサ保護ケース(38)と、を備え、前記無線端末(20W)が液中で略同一の基本姿勢に維持されるように前記基本姿勢の前記無線端末(20W)における下寄り位置に重心が配置され、前記無線端末(20W)が前記基本姿勢であるときに前記センサ実装防水部(21T)における前記圧力センサ(30)の実装面が下方を向きかつ前記圧力センサ(30)の圧力計測用受圧部(34)が下方を向く無線端末(20W)である。
【0014】
請求項
6の発明は、前記無線端末(20,20V,20W)が液中で略同一の基本姿勢に維持されるように前記基本姿勢の前記無線端末(20,20V,20W)における下寄り位置に重心が配置されている請求項
1から
5の何れか1の請求項に記載の無線端末(20,20V,20W)である。
【0015】
請求項
7の発明は、前記無線端末(20,20V,20W)が前記基本姿勢であるときに前記無線回路(11)のアンテナ(12)の送波方向が一定方向を向く請求項
6に記載の無線端末(20,20V,20W)である。
【0016】
請求項
8の発明は、前記無線端末(20,20V,20W)全体の比重は、1.8g/cm
3以上である請求項1から
7に記載の無線端末(20,20V,20W)である。
【0017】
請求項
9の発明は、請求項1から
8の何れか1の請求項に記載の複数の前記無線端末(20,20V,20W)と、前記複数の無線端末(20,20V,20W)から無線送信される前記圧力データと前記無線端末(20,20V,20W)同士を識別するための端末識別データとを取得して複数頭の家畜(10)の体調を監視する監視装置(50)と、を備えてなる家畜監視システム(100)である。
【0018】
請求項
10の発明は、前記監視装置(50)には、前記複数の無線端末(20,20V,20W)からの圧力データを比較して異常な圧力データを送信した前記無線端末(20,20V,20W)を判別するデータ解析部(52)が備えられている請求項
9に記載の家畜監視システム(100)である。
【0019】
請求項
11の発明は、前記監視装置(50)には、予め設定された基準データと各前記無線端末(20,20V,20W)からの圧力データとを比較して異常な圧力データを送信した前記無線端末(20,20V,20W)を判別するデータ解析部(52)が備えられている請求項
9又は
10に記載の家畜監視システム(100)である。
【0020】
請求項
12の発明は、前記データ解析部(52)は、人工知能を利用して各前記圧力データが異常か否かを判別する請求項
10又は
11に記載の家畜監視システム(100)である。
【0021】
請求項
13の発明は、前記データ解析部(52)は、各前記無線端末(20,20V,20W)の家畜(10)が鼓脹症であるか否かを判別する請求項
9から
12の何れか1の請求項に記載の家畜監視システム(100)である。
【0022】
請求項
14の発明は、請求項1から
8の何れか1の請求項に記載の複数の前記無線端末(20,20V,20W)を複数頭の前記家畜(10)の胃袋(10S)に留置させて、それら前記複数の無線端末(20,20V,20W)から無線送信される前記圧力データと前記無線端末(20,20V,20W)同士を識別するための端末識別データとを取得して複数頭の家畜(10)の体調を監視する家畜監視方法である。
【発明の効果】
【0023】
請求項
1,3,5の無線端末(20,20V,20W)は、家畜(10)の胃袋(10S)内に留置されて胃袋(10S)内の圧力データを無線送信するので、その圧力データに基づいて家畜(10)の鼓脹症を初期段階又は予兆の段階で見つけることができる。
【0024】
鼓脹症に罹患しやすい家畜(10)は、藁や牧草のような高繊維質物の粗飼料を主食としているため、それらから無線端末(20,20V)の圧力計測用受圧部(18,34)を如何に保護するかが問題になる。これに対し、請求項
1,3の無線端末(20,20V)では、圧力計測用受圧部(18,34)が、圧力センサ(30)及び無線回路(11)を収容するケース(40,40V)に形成された計測孔(46)の内側に配置されているので、圧力計測用受圧部(18,34)に対する粗飼料の当接が抑えられ、耐久性が向上すると共に、胃袋(10S)内の液体の圧力を計測する際に、液体の動圧の影響を受け難くなり計測精度が向上する。また、請求項
5の無線端末(20W)のように、圧力センサ(30)を実装しかつ防水処理されたセンサ実装防水部(21T)を有するセンサ実装回路基板(21W)を備えて、防水ケース(40W)に、センサ実装防水部(21T)以外に配置されている電気回路を収容する一方、センサ実装防水部(21T)を防水部屋(41B)の外側に張り出させて、複数の貫通孔(38A)を備えたセンサ保護ケース(38)でセンサ実装防水部(21T)を覆った構成としても、上記した請求項
1,3の無線端末(20,20V)と同様の効果を奏する。
【0025】
また、請求項
5の無線端末(20W)においては
、無線端末(20W)が液中で略同一の基本姿勢に維持されるように下寄り位置に重心
が配置され、無線端末(20W)が基本姿勢であるときにセンサ実装防水部(21T)における圧力センサ(30)の実装面が下方を向きかつ圧力センサ(30)の圧力計測用受圧部(34)が下方を向
いているので、より確実に圧力計測用受圧部(34)に対する粗飼料の当接が抑えられる。
【0026】
また、
請求項1,4の構成のように
計測孔(46)を屈曲又は湾曲させれば、より確実に圧力計測用受圧部(18,34)に対する粗飼料の当接が抑えられる。また、請求項
1の構成のように、ケース(40,40V)を、筒形のケース本体(41)と、その一端の開口を閉塞する蓋体(42,42V)とに分けて、その蓋体(42,42V)に計測孔(46)を形成することで、ケース(40,40V)に屈曲した計測孔(46)を容易に形成することができる。具体的には、蓋体(42,42V)に、ケース本体(41)の外側に位置する保護壁部(42H)を設けて、計測孔(46)を、蓋体(42,42V)の内面から保護壁部(42H)の内部まで直線状に延びる第1直線部(44)と、保護壁部(42H)内で第1直線部(44)とT字形に交差する第2直線部(45)とを備えた構成とすれば、蓋体(42,42V)を成形品とする場合も加工品とする場合も、計測孔(46)を容易に形成することができる。
【0027】
なお、計測孔(46)の閉塞に関しては、例えば、請求項
3の構成のように、ケース(40)を筒形のケース本体(41)と、その開口を閉塞しかつ計測孔(46)を有する蓋体(42)とで構成して、蓋体(42)とケース本体(41)との嵌合に伴って圧力センサ(30)が計測孔(46)に嵌合して計測孔(46)が閉塞されるようにしてもよいし、請求項
2の構成のように、計測孔(46)の途中位置に、圧力を受けて弾性変形する防水シート(18)を張って閉塞し、圧力センサ(30)が、計測孔(46)に気密状態に嵌合して防水シート(18)との間に気密空間(19)を形成して、気密空間(19)の内圧を胃袋(10S)内の液体の圧力として計測するようにしてもよい。
【0028】
請求項
6の構成によれば、無線端末(20,20V,20W)が液中で略同一の基本姿勢に維持されるように基本姿勢の無線端末(20,20V,20W)における下寄り位置に重心が配置されているので、無線回路(11)のアンテナ(12)の向きが安定し、安定した計測と安定した無線送信とが可能になる。また、請求項
7の構成のように、無線端末(20,20V,20W)が基本姿勢であるときに無線回路(11)のアンテナ(12)の送信方向が一定方向、例えば上方を向くようにすれば、家畜(10)の肉体による無線の減衰が抑えられる。また、無線端末(20,20V,20W)を安定して胃袋(10S)内に留置させておくために、請求項
8の無線端末(20,20V,20W)のように、無線端末(20,20V,20W)全体の比重は、1.8g/cm
3以上であることが好ましい。
【0029】
請求項
9及び
14の家畜監視システム(100)及び家畜監視方法によれば、監視装置(50)が、複数の無線端末(20,20V,20W)から圧力データと共に端末識別データを取得することで、複数頭の家畜(10)を識別しての胃袋(10S)内の圧力を監視することが可能となる。
【0030】
また、人間が監視装置(50)に集められた複数の圧力データと端末識別データとから、異常な圧力データを送信した無線端末(20,20V,20W)を判別して、各家畜(10)の健康状態を判断してもよいし、監視装置(50)のデータ解析部(52)に、異常な圧力データを送信した無線端末(20,20V,20W)を判別させて、各家畜(10)の健康状態を判断してもよいし、さらには、請求項
13の構成のように、データ解析部(52)に、各家畜(10)が鼓脹症であるか否かを判断させてもよい。また、データ解析部(52)は、請求項
10の構成のように、複数頭の家畜(10)の圧力データを比較して異常を判別してもよいし、請求項
11の構成のように、予め記憶した基準データと各家畜(10)の圧力データとを比較して異常を判別してもよいし、それらの両方に基づいて異常を判別してもよい。具体的には、他の家畜(10)より胃袋(10S)内の圧力が高く、かつ、それが基準データ以上であった場合に、第1の異常と判断し、他の家畜(10)より胃袋(10S)内の圧力が高く、かつ、それが基準データより低い場合には、第2の異常と判断してもよい。また、請求項16の構成のようにデータ解析部(52)が、人工知能を利用して各圧力データの異常を判別してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
以下、
図1〜
図5を参照して、本開示の家畜監視システム100に係る第1実施形態について説明する。
図1に示した本実施形態の家畜監視システム100は、監視対象となる複数頭の牛10の胃袋10S(具体的には、第1胃又は第2胃)内に留置される複数の無線端末20と、無線端末20が取得した情報を管理するクラウドサーバー50と、クラウドサーバー50を介して無線端末20が取得した情報の提供を受けるユーザ端末60と、を備えてなる。無線端末20と、クラウドサーバー50と、ユーザ端末60とは、無線基地局400,401を含んだ通信ネットワーク101を介して接続されている。なお、クラウドサーバー50が特許請求の範囲の「監視装置」に相当する。
【0033】
図2に示すように、無線端末20は、ケース40の内部にメイン回路基板21、サブ回路基板31、電池22等を収容して備える。ケース40は、一端が開口し、他端が閉塞された円筒状のケース本体41と、その一端の開口を閉塞する蓋体42とからなる。以下の説明において、ケース40の軸方向を「前後方向」と呼び、蓋体42により閉塞される側を「前側」とする。
【0034】
なお、本実施形態のケース本体41及び蓋体42は、例えば、樹脂の成形品であるが、それらの両方又は一方が金属の加工品であってもよい。
【0035】
電池22、メイン回路基板21、サブ回路基板31は、例えばケース本体41の内側に丁度嵌合される支持フレーム28に支持されてケース本体41内に固定されている。
【0036】
支持フレーム28は、ケース本体41の前後方向の略中央に配置されて、ケース本体41の中心軸J1と直交する円板状の中継盤29Aを有する。そして、支持フレーム28のうち中継盤29Aより後側部分に電池22が支持されてケース本体41の奥部に収容される。また、支持フレーム28には、電池22の前面と後面の電極に接続される1対のバスバー28Bが備えられ、それら1対のバスバー28Bの末端が中継盤29Aの前面に配置されている。
【0037】
メイン回路基板21、サブ回路基板31は、支持フレーム28のうち中継盤29Aより前側部分に支持されている。そして、メイン回路基板21は、例えば、ケース本体41の中心軸J1からずれた位置で中心軸J1と平行になるように配置され、無線端末20が後述する基本姿勢になると、メイン回路基板21が中心軸J1より上方に位置して略水平になる。また、メイン回路基板21の後端部は中継盤29Aに付き合わされ、前述の1対のバスバー28Bがメイン回路基板21の後端部に接続されている。
【0038】
図4に示すように、メイン回路基板21には、無線回路11、信号処理回路13等が実装されていると共に、無線回路11のアンテナ12(例えば、ループアンテナ)がプリントされている。また、信号処理回路13には、マイコン13Aとメモリ13Bとが含まれ、メモリ13Bには、マイコン13Aにより実行される信号処理プログラムと無線端末20同士を識別するための端末識別データ等が記憶されている。
【0039】
メイン回路基板21の下方では、錘23が支持フレーム28によって支持されている。錘23は、無線端末20を後述する基本姿勢に維持するためのものであって、ケース本体41内の内部の断面形状である円を半分にした半円と略同じ断面形状をなしている。なお、錘23は、電池22より比重が高い部材(例えば、鉄やタングステン)で構成されている。
【0040】
サブ回路基板31は、支持フレーム28に備えられ、ケース本体41の中心軸J1と直交する円環径の板状をなす中継盤29Bに支持されている。また、サブ回路基板31に形成された複数のスルーホールを、メイン回路基板21から突出する複数のピンが貫通して半田付けされ、サブ回路基板31の電気回路とメイン回路基板21の電気回路とが接続されている。また、
図4に示すように、サブ回路基板31には、圧力センサ30と、圧力センサ30を動作させて圧力を計測するためのセンサ回路30C等とが実装されている。そして、圧力センサ30による圧力の計測結果がセンサ回路30Cを通してメイン回路基板21の信号処理回路13に取り込まれる。
【0041】
圧力センサ30は、
図3に示すように、サブ回路基板31の前面に配置され、サブ回路基板31から前方に向かって延びる円柱状をなし、圧力センサ30の中心軸がケース本体41の中心軸J1の同軸上に配置されるようにサブ回路基板31が支持フレーム28に位置決めされている。また、圧力センサ30は、軸方向の途中位置に段差面30Dを有して段付き状に先細りになっている。そして、圧力センサ30のうち段差面30Dより前側のヘッド部33の前端面が計測用受圧面34をなし、そこに受けた圧力が圧力センサ30によって計測される。また、支持フレーム28は、ケース本体41の奥面に一端部を突き当てられてケース本体41の軸方向で位置決めされ、これにより、圧力センサ30もケース本体41の軸方向で位置決めされている。
【0042】
なお、支持フレーム28は、接着材や溶着等によりケース本体41に固定されていてもよいし、ケース本体41に奥面と次述する蓋体42の内面との間に挟まれて固定されていてもよい。また、実施形態では、圧力センサ30の計測用受圧面34が、特許請求の範囲の「圧力計測用受圧部」に相当する。
【0043】
蓋体42は、ケース本体41と同一外径の円盤状をなし、その後面には、
図2に示すように、外縁寄り位置から突出する環状突条43と中心部から突出する後面中央突部47とが備えられている。そして、環状突条43をケース本体41の内側に嵌合し、蓋体42の後面外縁部をケース本体41の前面に当接させることで、蓋体42がケース本体41に対して芯出しされると共に軸方向で位置決めされ、振動溶着又は接着材等で外縁全体を防水処理された状態に固定されている。
【0044】
蓋体42のうちケース本体41の前面より前側に位置する蓋本体部42Hは、特許請求の範囲における「保護壁部」に相当し、その蓋本体部42Hには、蓋本体部42Hを径方向に貫通する第2直線部45が形成されている。
図3に示すように、第2直線部45の断面形状は、横方向に幅広な扁平形状をなしていて、第2直線部45を備えたことで、蓋本体部42Hは、第2直線部45を前後方向で挟んで対向する前側板部42Fと後側板部42Rを備えた構造になっている。より詳細には、第2直線部45のうちケース本体41の軸方向の幅H1は、第2直線部45の前後に残された蓋本体部42Hの壁部の前後方向の厚みよりも大きくなっており、第2直線部45のうちケース本体41の軸方向と直交方向する幅H2は、ケース本体41の外径の略半分の大きさをなしている。
【0045】
後面中央突部47の中心部には、第1直線部44が形成されている。第1直線部44は、断面円形をなし、蓋体42の中心軸J1の同軸上に位置し、後面中央突部47の後面から第2直線部45まで延びて、第2直線部45とT字形に交差している。そして、これら第1直線部44と第2直線部45とから計測孔46が構成されている。また、第1直線部44の後端部には、段付き状に拡径されたOリング受容部44Aが形成され、そこにOリング48が収容されている。そして、蓋体42のケース本体41に対する嵌合に伴い、圧力センサ30のヘッド部33がOリング48の内側を貫通し、ヘッド部33の先端部が第1直線部44のうちOリング受容部44Aより前側部分に嵌合すると共に、Oリング48がOリング受容部44Aの内周面と圧力センサ30のヘッド部33の外周面とによって押し潰される。つまり、計測孔の第1直線部44が、圧力センサ30によって防水状態に閉塞される。
【0046】
無線端末20全体の重量を無線端末20の全体の体積とから求められる無線端末20の比重は、1.8g/cm
3以上になっている。これにより、無線端末20は、牛10の胃袋10S内の液体に沈んで、胃袋10S内に安定して留まる。また、無線端末20の重心Gは、例えば、無線端末20の軸方向(ケース40の軸方向でもある)においては、その略中央に位置し、その重心Gを挟んだ両側に最も重量が大きな電池22と錘23とが配置されている。また、無線端末20の重心Gは、軸方向と直交する方向では、無線端末20の中心軸J1(ケース40の中心軸でもある)を挟んでメイン回路基板21の反対側に位置している。これらにより、無線端末20は、牛10の胃袋10S内で軸方向を水平にして、錘23に対してメイン回路基板21が上方に位置して水平となる基本姿勢又はそれに近い姿勢に維持される。無線端末20が基本姿勢に維持されたとき、無線回路11のアンテナ12の送波方向は上方を向くようになっている。
【0047】
無線端末20の構造に関する説明は以上である。
図5には、無線端末20の制御上の構成がブロック図にして示されている。上述した無線端末20の構造の説明で言及されていない
図5のトリガ生成部14、送信データ生成部15等は、メモリ13Bの信号処理プログラムを実行したときのマイコン13Aによって構成される。そして、以下のように無線端末20は動作する。即ち、無線端末20では、トリガ生成部14にて、一定期間(例えば、10分)毎に送信トリガが生成され、それら送信トリガが生成される毎に圧力センサ30による圧力計測が行われる。そして、送信データ生成部15により、圧力センサ30の計測結果である圧力データとメモリ13Bに記憶されている端末識別データとを含んだ送信データが生成され、無線回路11により無線送信される。従って、複数の無線端末20が複数頭の牛10の胃袋10Sに留置された状態で使用される本実施形態の家畜監視システム100では、複数頭の牛10の胃袋10S内の最新の圧力データを含んだ送信データが、複数の無線端末20から無線送信される。
【0048】
複数の無線端末20からの送信データは、本実施形態の家畜監視システム100を構成するクラウドサーバー50で受信される。具体的には、
図1に示すように、無線端末20からの送信データは、まず、複数の牛10を飼育している牛舎や牧場に設置されたゲートウェイ500で受信される。ゲートウェイ500は、中継基地局としての機能を備えている。そして、ゲートウェイ500は、無線端末20からの送信データを汎用通信回線300を介してクラウドサーバー50に送信する。本実施形態では、1つのゲートウェイ500が1つのクラウドサーバー50に接続されているが、例えば牛舎や牧場毎にゲートウェイ500を設置し、複数のゲートウェイ500が1つのクラウドサーバー500に接続されていてもよい。
【0049】
クラウドサーバー50は、少なくとも、監視端末50Aを含む1つ以上のパソコンと、記憶装置50Bとを有してなる。監視端末50Aは、図示しない信号処理プログラムを実行させてなり、
図5に示された制御ブロックを有して、以下のように動作する。即ち、クラウドサーバー50は、複数の無線端末20から送信されてくる送信データを通信回路51を通して取り込み、例えばそれらに受信時刻を付加してバッファ59に蓄える。そして、データ解析部52が、バッファ59に蓄えられている通信データに含まれる圧力データを比較して異常な圧力データを送信した無線端末20を判別する。なお、記憶装置50Bには、各無線端末20の端末識別データが予め格納されており、端末識別データから各無線端末20を特定することが可能となっている。
【0050】
具体的には、データ解析部52の平均演算部53が、例えば、最新の所定時間(例えば、1時間)内の全無線端末20の圧力データの平均値を全体平均値として演算すると共に、各無線端末20の平均値を個別平均値として演算する。そして、データ解析部52のデータ比較部54が、例えば、個別平均値から全体平均値を差し引いた差分を、記憶装置50Bに記憶されている基準差分値と比較し、差分が基準差分値より小さい場合には異常なしと判定する一方、基準差分値より大きい場合には異常ありと判定して、その圧力データの送信元である無線端末20の端末識別データと、差分の大きさのレベルに応じた警告情報と、判定時刻とを含んだ異常判定データを生成する。また、データ比較部54により異常判定データを生成されると、その異常判定データは、通信制御部56により、ユーザ端末60に通知される。
【0051】
詳細には、データ比較部54は、差分が記憶装置50Bに記憶されている第1から第3の基準差分値のうち最も小さい値である第1基準差分値より小さいか、第1基準差分値より大きく、その次に小さい第2基準値より小さいか、第2基準差分値より大きく、第3基準値より小さいか、さらには、第3基準差分値より大きいかを判別して、差分の大きさのレベルに応じた警告情報に切り替える。また、差分が第3基準差分値より大きいことを判別した場合の警告情報は、その圧力データを送信した無線端末20を有する牛10が鼓脹症であるという旨の情報が含まれるようにする。
【0052】
なお、記憶装置50Bに、無線端末20毎にそれら無線端末20が留置されている各牛10の家畜特定情報(例えば、牛10の牛舎番号や外観写真等)を記憶しておき、通信制御部56が、異常判定データと共に家畜特定情報をユーザ端末60に通知して、緊急に対処できるようにしてもよい。
【0053】
ユーザ端末60は、例えば、畜主等が所有し、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどであり、クラウドサーバー50と通信可能な一般的な通信手段であればよい。ユーザ端末60は、上述したように、クラウドサーバー50から異常判定データの通知を受信する。また、ユーザ端末60からクラウドサーバー50にアクセスして、クラウドサーバー50上で、各牛10の胃袋10Sの圧力に係る異常があるか無いかの状況等について自由に閲覧できるように構成されていてもよい。
【0054】
本実施形態の家畜監視システム100の構成に関する説明は以上である。家畜監視システム100によれば、以下の作用・効果を奏する。即ち、家畜監視システム100では、複数の牛10の胃袋10S内に無線端末20が留置されて胃袋10S内の圧力データが無線送信されるので、圧力データに基づいて牛10の鼓脹症を初期段階又は予兆の段階で見つけることができる。
【0055】
ここで、牛10は、藁や牧草のような高繊維質物の粗飼料を主食としているため、それらから無線端末20の圧力センサ30の計測用受圧面34を如何に保護するかが問題になる。これに対し、本実施形態の無線端末20の圧力センサ30の計測用受圧面34は、メイン回路基板21やサブ回路基板31を収容するケース40に形成された計測孔46の内側に配置されているので、計測用受圧面34に対する粗飼料の当接が抑えられ、耐久性が向上すると共に、胃袋10S内の液体の圧力を計測する際に、液体の動圧の影響を受け難くなり計測精度が向上する。
【0056】
また、無線端末20が液中で略同一の基本姿勢に維持されるように基本姿勢の無線端末20における下寄り位置に重心が配置されているので、無線回路11のアンテナ12の向きが安定し、安定した計測と安定した無線送信とが可能になる。しかも、その基本姿勢でアンテナ12の送信方向が上方を向くので、牛10の肉体のうち比較的肉が薄い部分を無線波が通過することになり、無線の減衰が抑えられる。
【0057】
また、本実施形態の家畜監視システム100では、クラウドサーバー50を利用して、無線端末20で計測した圧力データを収集し、解析するので、複数の牛舎や牧場で飼育されている複数の牛10に対しても一括して遠隔監視することが可能となる。
【0058】
しかも、クラウドサーバー50は、複数の無線端末20から圧力データと共に端末識別データを取得するので、複数頭の牛10を識別しての胃袋10S内の圧力を監視することが可能となる。そして、クラウドサーバー50のデータ解析部52が、異常な圧力データを送信した無線端末20を判別して、各牛10の健康状態を判断するので、家畜の管理者の負担が軽減される。
【0059】
[第2実施形態]
本実施形態は、図示されていないが、
図5に示された前記第1実施形態のクラウドサーバー50のデータ解析部52の構成のみが異なる。即ち、本実施形態の家畜監視システム100のクラウドサーバー50は、平均演算部53を有さず、記憶装置50Bには、各無線端末20からの圧力データと比較するための基準データが記憶されている。そして、第1実施形態では、データ解析部52のデータ比較部54が、圧力データの全体均値と個別平均値とを比較していたところを、本実施形態では、クラウドサーバー50のデータ比較部54が、基準データに対する各圧力データの差分を求める構成になっている。その他の構成に関しては、第1実施形態と同じである。本実施形態の構成によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0060】
[第3実施形態]
本実施形態は、
図6に示されており、無線端末20Vの蓋体42Vの構造のみが第1実施形態と異なる。即ち、その蓋体42Vには、計測孔46における第1直線部44の途中位置に防水シート18が張られ、その防水シート18と圧力センサ30の計測用受圧面34との間に気密空間19が形成されている。そして、胃袋10S内の圧力に応じて防水シート18が弾性変形し、気密空間19の内圧が胃袋10S内の液体の圧力に応じて変化し、その気密空間19の内圧が圧力センサ30により胃袋10S内の圧力として計測されるようになっている。本実施形態の構成によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、圧力センサ30の保護が厚くなり、耐久性の向上が図られる。
【0061】
なお、第1実施形態では、圧力センサ30の計測用受圧面34が、本開示の「圧力計測用受圧部」に相当していたが、本実施形態では、防水シート18が本開示の「圧力計測用受圧部」に相当する。また、上記気密空間19を設けず、防水シート18を計測用受圧面34に重ねた構成とし、防水シート18を介して計測用受圧面34が受ける圧力が胃袋10S内の圧力として計測されるようにしてもよい。
【0062】
[第4実施形態]
本実施形態は、
図7に示されており、無線端末20Wの前端部の構造のみが第1実施形態と異なる。即ち、本実施形態の無線端末20Wでは、蓋体42Wが支持フレーム28の前端部に一体に備えられている。蓋体42Wは、ケース本体41と略同一の外径の円板状をなし、ケース本体41の前面に蓋体42Wの後面外縁部が重ねられて接着材又は溶着等によって固定されている。
【0063】
メイン回路基板21Wには、蓋体42Wを貫通して、蓋体42Wより前方に片持ち梁状に突出するセンサ実装防水部21Tが備えられている。また、蓋体42Wのうちメイン回路基板21Wが貫通した部分は、防水処理が施されてケース本体41内は防水部屋41Bをなし、無線端末20Wのうちセンサ実装防水部21T以外の電気回路は、全て防水部屋41Bに収容されている。
【0064】
センサ実装防水部21Tのうち無線端末20Wが基本姿勢になったときの下面には、圧力センサ30が実装されている。なお、センサ回路30C(
図4参照)は、メイン回路基板21Wのうち防水部屋41B内に配置されている部分に配置され、そのセンサ回路30Cと圧力センサ30とを接続するプリント配線が蓋体42Wの内外に跨がって延びている。そして、圧力センサ30の先端(本実施形態では、圧力センサ30の下端)の計測用受圧面34を除いたセンサ実装防水部21Tの全体が防水処理されている(例えば、防水用フィルムでラミネートされている)。
【0065】
また、ケース40Wの前面には、センサ実装防水部21Tを収容するセンサ保護ケース38が固定されている。センサ保護ケース38は、ケース本体41と同一の外径を有する一端有底、他端開放の円筒状をなし、蓋体42Wの前面の外縁寄り位置から突出する環状突条の39Aの外側に嵌合されて接着材等で固定されている。また、センサ保護ケース38には、複数の貫通孔38Aが形成されている。
【0066】
本実施形態の無線端末20Wによっても第1及び第2の実施形態の無線端末20,20Vと同様の作用効果を奏する。また、無線端末20Wでは、液中で略同一の基本姿勢に維持され、センサ実装防水部21Tにおける圧力センサ30の実装面が下方を向きかつ圧力センサ30の計測用受圧面34が下方を向くので、確実に計測用受圧面34に対する粗飼料の当接が抑えられる。
【0067】
なお、本実施形態では、ケース本体41と蓋体42Wとからなるケース40Wが、特許請求の範囲の「防水ケース」に相当し、メイン回路基板21Wが「センサ実装回路基板」に相当する。
【0068】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0069】
(1)前記各実施形態の無線端末20,20V,20Wにマグネットを固定しておき、牛10の胃袋10Sから無線端末20,20V,20Wを容易に取り出せるようにしてもよい。具体的には、ケース本体41の後端部にマグネットを固定しておき、先端にマグネットを固定したワイヤを胃カメラのように牛の胃袋に挿入して無線端末20,20V,20Wのマグネットと合体せて引っ張り出せるようにしてもよい。
【0070】
(2)前記各実施形態の計測孔46は、T字形に屈曲した構造であったが、計測孔46はそのような形状に限定されるものではなく、T字形以外の形状に屈曲していてもよいし、直線状であってもよいし、湾曲していてもよい。
【0071】
(3)メイン回路基板21には、温度センサや加速度センサが実装されていてもよい。
【0072】
(4)上記したデータ解析部52が人工知能を用いて異常を判別するようにしてもよい。例えば、予め健康な牛10と鼓脹症の牛10の胃袋10S内の圧力を機械学習したモデルに、判別すべき無線端末20の胃の圧力を与えて、鼓脹症の有無を判別させてもよい。このとき、人工知能に対して、胃袋10S内の圧力だけでなく、体重や大きさ等の身体データや、胃袋10S内の温度や加速度等のデータとの対応関係も機械学習させておき、判別すべき牛10の胃袋10S内の圧力とともに、その牛10の身体データや温度や加速度データを与えて判別させてもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では、無線端末20を牛10の胃袋10Sに留置する構成であったが、他の家畜の胃袋10S内に留置してもよい。
【0074】
(6)上記実施形態では、支持フレーム28は、ケース本体41と別体であったが、ケース本体41に一体に形成されていてもよい。
【0075】
(7)上記実施形態では、1対のバスバー28Bにより電池22とメイン回路基板21とが接続される構成であったが、ケーブル接続されていてもよい。
【0076】
(8)上記実施形態では、無線回路11のアンテナ12が、メイン回路基板21にアンテナパターンが形成された構成であったが、サブ回路基板31に形成された構成であってもよい。
【0077】
(9)上記実施形態では、サブ回路基板31に圧力センサ30とセンサ回路30Cが実装されて、圧力センサ30の計測結果がセンサ回路30Cを通して信号処理回路13に出力される構成であったが、圧力センサ30の計測結果がI2C等のシリアルバスにより出力される構成であってもよい。
【0078】
(10)上記実施形態では、Oリング48は、Oリング受容部44Aの内周面と圧力センサ30のヘッド部33の外周面とによって押し潰される構成であったが、Oリング受容部44Aの段差面44Dと圧力センサ30の段差面30Dとによって押し潰される構成であってもよい。
【0079】
(11)上記第4実施形態において、メイン回路基板21Wは、防水部屋41Bに収容されていたが、ポッティングにより、絶縁樹脂に埋設されていてもよい。
【解決手段】本開示の無線端末20は、圧力センサ30を備えて、牛10の胃袋10S内に留置され、胃袋10S内の圧力データを無線送信するので、その圧力データに基づいて牛10の鼓脹症を初期段階又は予兆の段階で見つけることができる。しかも本実施形態の無線端末20は、圧力センサ30の計測用受圧面34が、メイン回路基板21やサブ回路基板31を収容するケース40に形成された計測孔46の内側に配置されているので、計測用受圧面34に対する粗飼料の当接が抑えられ、耐久性が向上すると共に、胃袋10S内の液体の圧力を計測する際に、液体の動圧の影響を受け難くなり計測精度が向上する。