特許第6861933号(P6861933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 木部 誠の特許一覧

特許6861933音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体
<>
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000002
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000003
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000004
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000005
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000006
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000007
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000008
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000009
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000010
  • 特許6861933-音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861933
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】音あてクイズシステム、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A63F 9/00 20060101AFI20210412BHJP
   A63F 13/80 20140101ALI20210412BHJP
   G09B 15/00 20060101ALI20210412BHJP
   G09B 5/04 20060101ALI20210412BHJP
   G09B 7/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A63F9/00 501
   A63F13/80 D
   G09B15/00 Z
   G09B5/04
   G09B7/02
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-70500(P2018-70500)
(22)【出願日】2018年3月31日
(65)【公開番号】特開2019-180445(P2019-180445A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2018年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】316007827
【氏名又は名称】木部 誠
(72)【発明者】
【氏名】木部 誠
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−164547(JP,A)
【文献】 特開平05−072965(JP,A)
【文献】 特開2017−219579(JP,A)
【文献】 実開昭58−071797(JP,U)
【文献】 特開平02−238483(JP,A)
【文献】 特開平10−078751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/00−13/98
G09B15/00−15/08
G10G 1/00− 7/02
A63H 1/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出題されるクイズの難度を逓増させる音あてクイズシステムであって、
出題数を保持ないし更新してゲームを制御するゲーム制御手段と、
ユーザーが基準音を設定するための基準音設定手段と、
ユーザーが前記基準音設定手段によって指定した基準音を基準として音あてクイズの問題音を出題する基準音クイズ出題手段と、
ユーザーがクイズ応答情報を入力するための基準音クイズ応答情報入力手段と、
前記基準音クイズ出題手段が発音した問題音とユーザーが前記基準音クイズ応答情報入力手段によって入力したクイズ応答情報とを比較してその判定結果をユーザーに応答する基準音クイズ正誤判定手段と、
を有し、
前記の基準音クイズ出題手段は、
ユーザーが前記基準音設定手段によって指定した基準音を出題候補音の一つとするオクターブ判別課題を第一順位、
前記基準音をドとした場合のドとソ以外を含まない出題候補音を判別する課題を第二順位、
前記基準音をドとして、ドを根音とするトライアドの和音の構成音のみからなるドミソ判別課題を第三順位、
前記基準音を要素とする自然長音階スケールから前記第三順位の出題候補音を除いた残りを出題候補音とする判別課題を第四順位、
前記基準音をドとした長音階スケールに含まれる連続した音全てのドレミファソラシド判別課題を第五順位、
前記基準音から1オクターブ内のクロマトーン判別課題を第六順位
とする、難易度序列に基づき、
設定された難易度序列に対応する音あてクイズをスタートし、
基準音単位回数の出題がなされるごとに難易度序列を高順位にしてゆくことで出題音候補の間隔を徐々に狭める機能を有することを特徴とする、音あてクイズシステム。
【請求項2】
出題されるクイズの難度を逓増させる音あてクイズシステムであって、
出題数を保持ないし更新してゲームを制御するゲーム制御手段と、
ユーザーが出題フレーズの構成音の範囲を設定するための出題範囲設定手段と、
ユーザーが前記出題範囲設定手段によって指定した出題範囲に含まれる音からフレーズ再現課題を出題するフレーズ出題手段と、
ユーザーがフレーズ再現課題応答情報を入力するためのフレーズ再現情報入力手段と、
前記フレーズ出題手段が発音したフレーズとユーザーが前記フレーズ再現情報入力手段によって入力したフレーズ再現課題応答情報とを比較してその判定結果をユーザーに応答するフレーズ正誤判定手段と、
を有し、
前記の出題範囲設定手段は、ユーザーによってトニック音を指定させるとともに、当該トニックの調の自然長音階上におけるルート音からユーザーによって1つのルート音を指定させ、前記指定されたトニック音の調の自然長音階上における前記指定されたルート音を第2音とする1オクターブ内の7音を出題範囲とする機能を有することを特徴とし、
前記のフレーズ出題手段は、
直前に出題した音楽的パターンに対応するコードの内容から判断してそれに続くコードを選択するステップと、
該選択されたコードの内容から構成音を決定するステップと、
4音の並べ方のうちから同音連打を含まずかつ独立した3音以上の要素をもつ並べ方によって構成音を並べるステップと、
によって音楽的パターンを作成する機能を有し、フレーズ単位回数の出題がなされるごとにフレーズ再現課題において出題されるフレーズの提示テンポと該フレーズに含まれる音の数とを逓増させる機能を有し、
前記フレーズ再現情報入力手段は、表示デバイス上に表示されユーザーによってドラグ操作可能な作音コントローラを含み、
前記フレーズ再現情報入力手段は、当該作音コントローラを、ユーザー操作によって上記表示デバイス内のある特定方向に、前記表示デバイスの前記特定方向のピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御するとともに、当該ドラグ操作が解放された場合、前記表示デバイス内に、前記解放された位置の近傍がコントローラ幅の中央位置となる位置に新たな作音コントローラが表示されるように制御し、前記新たな作音コントローラが前記特定方向と平行な方向であって前記ピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御され、
当該2つの作音コントローラのドラグ操作によってピッチベンド値を入力する機能を有することを特徴とする、音あてクイズシステム。
【請求項3】
音あてクイズシステムであって、
出題数を保持ないし更新してゲームを制御するゲーム制御手段と、
ユーザーが出題フレーズの構成音の範囲を設定するための出題範囲設定手段と、
ユーザーが前記出題範囲設定手段によって指定した出題範囲に含まれる音からフレーズ再現課題を出題するフレーズ出題手段と、
ユーザーがフレーズ再現課題応答情報を入力するためのフレーズ再現情報入力手段と、
前記フレーズ出題手段が出題した音とユーザーが前記フレーズ再現情報入力手段によって入力したフレーズ再現課題応答情報とを比較してその判定結果をユーザーに応答するフレーズ正誤判定手段と、
を有し、
前記の出題範囲設定手段は、ユーザーによってトニック音を指定させるとともに、当該トニックの調の自然長音階上におけるルート音からユーザーによって1つのルート音を指定させ、前記指定されたトニック音の調の自然長音階上における前記指定されたルート音を第2音とする1オクターブ内の7音を出題範囲とする機能を有することを特徴とし、
前記のフレーズ出題手段は、直前に出題した音楽的パターンに対応するコードの内容から判断してそれに続くコードを選択するステップと、該選択されたコードの内容から構成音を決定するステップと、4音の並べ方のうちから同音連打を含まずかつ独立した3音以上の要素をもつ並べ方によって構成音を並べるステップと、によって音楽的パターンを作成する機能を有し、
前記フレーズ再現情報入力手段は、表示デバイス上に表示されユーザーによってドラグ操作可能な作音コントローラを含み、
前記フレーズ再現情報入力手段は、当該作音コントローラを、ユーザー操作によって上記表示デバイス内のある特定方向に、前記表示デバイスの前記特定方向のピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御するとともに、当該ドラグ操作が解放された場合、前記表示デバイス内に、前記解放された位置の近傍がコントローラ幅の中央位置となる位置に新たな作音コントローラが表示されるように制御し、前記新たな作音コントローラが前記特定方向と平行な方向であって前記ピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御され、
当該2つの作音コントローラのドラグ操作によってピッチベンド値を入力する機能を有することを特徴とする、音当てクイズシステム。
【請求項4】
音あてクイズシステムであって、
ユーザーが出題候補音情報を設定するための出題候補音設定手段と、
ユーザーが前記出題候補音設定手段によって指定した出題候補音から音あてクイズの問題音を出題する候補音クイズ出題手段と、
ユーザーがクイズ応答情報を入力するための候補音クイズ応答情報入力手段と、
前記候補音クイズ出題手段が発音した問題音とユーザーが前記候補音クイズ応答情報入力手段によって入力したクイズ応答情報とを比較してその判定結果をユーザーに応答する候補音クイズ正誤判定手段と、
を有することを特徴とし、
前記候補音クイズ応答情報入力手段は、表示デバイス上に表示されユーザーによってドラグ操作可能な作音コントローラを含み、
前記候補音クイズ応答情報入力手段は、当該作音コントローラを、ユーザー操作によって上記表示デバイス内のある特定方向に、前記表示デバイスの前記特定方向のピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御するとともに、当該ドラグ操作が解放された場合、前記表示デバイス内に、前記解放された位置の近傍がコントローラ幅の中央位置となる位置に新たな作音コントローラが表示されるように制御し、前記新たな作音コントローラが前記特定方向と平行な方向であって前記ピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御され、
当該2つの作音コントローラのドラグ操作によってピッチベンド値を入力する機能を有することを特徴とする、音当てクイズシステム。
【請求項5】
前記基準音クイズ応答情報入力手段は、表示デバイス上に表示されユーザーによってドラグ操作可能な作音コントローラを含み、
前記基準音クイズ応答情報入力手段は、当該作音コントローラを、ユーザー操作によって上記表示デバイス内のある特定方向に、前記表示デバイスの前記特定方向のピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御するとともに、当該ドラグ操作が解放された場合、前記表示デバイス内に、前記解放された位置の近傍がコントローラ幅の中央位置となる位置に新たな作音コントローラが表示されるように制御し、前記新たな作音コントローラが前記特定方向と平行な方向であって前記ピクセル幅を上限としてドラグ操作可能であるように制御され、
当該2つの作音コントローラのドラグ操作によってピッチベンド値を入力する機能を有することを特徴とする請求項1記載の音あてクイズシステム。
【請求項6】
CPU、ROM、RAM、アドレス・データバス、入力デバイス、出力デバイスを構成要素とするシステムを、請求項1ないし5いずれかに記載の音あてクイズシステムとして機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音あてクイズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
音あてクイズについて、音色を変更する、和音を出題する、といった難易度設定技術が提案されている。AIなどの機械的手段を用いて音あてクイズ等の練習を行う技術は有意義である。インストラクターに出題してもらわなければ練習できないといった不都合点を解決できるからである。
また負荷制御一般について、AI制御により練習負荷をパーソナライズする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010-30462
【特許文献2】特願平3-232045
【特許文献3】特願2016-111773
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音あてクイズについての音色変更はつまり、ある基音成分に対し倍音成分やその他の周波数成分をどのように含ませたものを出題するかという点に関する変更である。音色変更によって音あてクイズの難易度が変化するのは、練習者が普段聴きなれている音色に関する判別課題が比較的容易である一方で、聴きなれていない音色に関する判別課題は比較的難しい、という理由によるものである。一般に音に含まれる周波数成分の数が多くなるほど、その全ての周波数成分を弁識することは難しくなってゆくという関係があるといえるかもしれないが、含まれる倍音成分等によって、必ずしも基音自体の判別が難しくなるという性質のものではない。たとえばピアノのド音に含まれる周波数成分がいかに複雑であっても、普段そのピアノ音を聴き慣れている人にとってみれば、その複合的な音は、普段聴き慣れているドの音、として単純に認識されるだろう。
【0005】
和音に関する音あてクイズも、ある基音に対しどのような倍音または倍音に近い成分を加えた音であるかを判別する課題といえる。つまり和音の種類を弁識するのは音色の種類を弁識するのと似た性質を持っているといえる。たとえば一般的に、自分が使い慣れた和音とその構成音を弁識する課題は容易である一方で、使ったことのない和音とその構成音を弁識する課題は比較的に難しい。またたとえばあるメジャーコードの響きを聴いたときに、それをマイナーコードでなくメジャーコードである、と判別するのは容易である。このように音色や和音にかかる弁識課題は定性的課題としての側面が強い。
【0006】
AIを用いて練習負荷をパーソナライズしようとする観点からすると、練習の難易度設定にかかる負荷は、定量可能な負荷であることが好ましい。音あてクイズシステムの難易度を定量的に規定する上で、どのような負荷要素に着目すべきかについて課題があるといえる。
ところで、出題される音の音色のほか、出題音候補の間隔も音あてクイズの成績を左右する負荷になりうる。たとえばドの音とそれより1オクターブ高いドの音と1オクターブ低いドの音の3音を判別する課題より、隣接したシドレの3音を判別する課題の方が難しいが、その理由は前者に比べ後者の方が出題音候補間の間隔が狭いからであると説明できる。
ドミソの3音を判別するよりも、隣接する半音階の3音(ドド#レなど)を判別する方が難しいが、半音階判別課題よりもさらに、セント単位でファインピッチを再現させる課題の方が、より細やかな音感が要求されるという点で難しいといえる。
また複数の音から成る和音を出題する方式のほか、複数の音から成る音楽的フレーズを出題し、そのフレーズ長さ(フレーズに含まれる音の数とフレーズ提示テンポ)を調整することにより音あてクイズの負荷を調整する方式がありえる。たとえば出題された単音を再現する課題よりも、出題された複数音から成るフレーズを再現する課題の方が難しい。一般的に、フレーズ提示テンポが等しい場合、フレーズに含まれる音の数が多くなるほど、そのフレーズ再現課題はワーキングメモリに大きな負荷をかける難しいものになるといえる。また一般的に、フレーズの各音を弁識する課題はフレーズの提示テンポがゆっくりの場合よりもはやい場合の方が難しい。
本発明は、この「出題音候補の間隔ないしファインピッチ(音の間隔)」および「フレーズ提示テンポとフレーズに含まれる音の数(フレーズの長さ)」に着目して負荷制御を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、音あてクイズにかかる負荷としての、出題音候補の間隔、一つのフレーズに含まれる音の数、フレーズ提示テンポ、に着目しつつ、フレーズを形成する自動作曲アルゴリズムを音あてクイズに応用する技術、およびファインピッチ再現課題に応答するための応答手段、などを含む新たな音あてクイズにかかる技術を提案することを課題とする。
【0008】
一般的に、音あてクイズは、出題→応答→判定を繰り返す流れによって行われる。
【0009】
一般的に、音あてクイズの出題内容には「単音」と「和音」と「フレーズ」がある。
音あてクイズの出題内容が単音であるときは一音ごとの入力について正誤判定を行う。
音あてクイズの出題内容が和音であるときは、一般に一定の時間内に入力された複数の音の入力を判定対象とし、和音としての複数音単位で正誤判定を行う。
音あてクイズの出題内容がフレーズであるときは、一般に一定の時間内に入力された一連の複数の音の入力を判定対象とする。
もっとも、出題された和音のトニック(主音)を答えさせる態様等の音あてクイズがあってもよいし、フレーズの最初の音の音名のみを答えさせる態様等の音あてクイズがあってもよい。
運指練習等に前置し、2分程度の、練習者の実力にフィットする態様で十分に整理された短時間の音あてクイズを行う習慣は、音感向上の上で有意義である可能性が示唆される。
【0010】
本発明の音あてクイズシステムは、
クイズ出題手段(基準音クイズ出題手段、フレーズ出題手段、候補音クイズ出題手段)、
クイズ応答情報入力手段(基準音クイズ応答情報入力手段、フレーズ再現情報入力手段、候補音クイズ応答情報入力手段)、および
正誤判定手段(基準音クイズ正誤判定手段、フレーズ正誤判定手段、候補音クイズ正誤判定手段)、
を基本の構成要素とし、
該問題出題手段は、基準音設定手段、出題範囲設定手段、または出題候補音設定手段によってユーザーにより設定された、基準音によって決まる出題候補音、出題範囲によって画される出題候補音、または具体的な出題候補音の情報を用いて、単音または複数の出題候補音から成るフレーズを出題する。
また本発明の音あてクイズシステムにおけるゲーム制御手段は、単位回数(基準音単位回数 フレーズ単位回数)のクイズ出題がなされるごとに、ROMなどに保持される出題数の値を更新して、練習負荷を調整するゲーム制御に用いる手段であることが意図される。
【0011】
本発明では音あてクイズの課題として、システムが出題した単音をユーザーに判別させる課題(単音判別課題)と、システムが出題したフレーズをユーザーに再現させる課題(フレーズ再現課題)と、単音とフレーズにかかるファインピッチ再現課題を扱う。単音判別課題では出題音に対応する鍵盤等の操作があったかどうかを判定し、フレーズ再現課題では出題されたフレーズに含まれる音と同じ音が同じ順序で入力されたかどうかを判定する。ファインピッチ再現課題ではユーザーが入力した単音のファインピッチないしフレーズ各音のファインピッチを判定対象とする。
複数の音の入力を判定対象とする場合には、システムによる出題開始と同時に入力を受け付けるようにしてもよいし、出題が済んだ時点以降に入力を受け付けるようにしてもよい。
音あてクイズの出題内容がフレーズである場合の正誤判別タイミングについては、ユーザーによるフレーズの入力完了を待つのではなく、好ましくは、誤入力が検出された時に逐一入力が誤りである旨の提示と、フレーズの再提示を行うようにする。
【0012】
以下、本稿において音を表す際、ドレミファソラシ表記のほか、たとえばC(60)のような要領で音名を記述する。C(60)とはmidi規格におけるnote number=60のCの音をさす。
【0013】
本発明の一態様は、設定された基準音からの間隔を基準として出題音候補を定める難易度序列を有することを特徴とする(請求項1)。
【0014】
[技術的意義] 出題音候補の間隔に着目して難易度序列を定め、その序列に対応する内容の出題を行う工夫は音あてクイズの難易度調整を行う上で有意義である。また、単位回数の出題ごとに出題音候補の間隔を徐々に狭めていくことにより、定量的な態様で難度逓増させるという工夫が意図されている。
【0015】
たとえば単位回数が4である場合、4音の出題と応答がなされるごとに、より高順位の難易度序列がある場合には、難易度序列を高順位に変更しながら音あてクイズを続ける。
その場合、もし初期の難易度序列が第二順位であれば、C(60)→C(72)→G(67)→C(72)などの順序で4回の単音判別課題が実施された後、
難易度序列が第三順位に移行してC(60)→G(67)→E(64)→C(60)などと出題が続き、さらに難易度序列が第四順位に移行してD(62)→F(65)→A(69)→F(65)などと、
4回音あてクイズがなされるごとに難易度序列を高順位に移行しながら出題が続いてゆく。
ここでは単位回数が4である場合を例示したが、単位回数の具体的な値は任意である。単位回数をユーザーによって指定できるようにしてもよい。
また先の単位回数の出題についてユーザーの応答内容が全て正解だった場合のみ難度逓増処理を行い、ユーザーの応答内容に不正解がふくまれていた場合には難度逓増しない、などとしてもよい。
【0016】
なお初期の難易度序列と終端の難易度序列にかかる設定は任意である。つまり具体的練習プロセスにおいては必ずしも第一順位から練習を始めて第六順位まで練習を行わなければならないというわけではない。
たとえば第二順位から開始して第四順位が終了した時点で練習完了としてもよいし、第三順位から開始して第五順位が終了した時点で練習完了等としてもよい。
また各難易度序列順位の練習長さは異なる値を個別に設定できるようにしてもよい。たとえば第二順位を1回、第三順位を1回、第四順位は2回実施する、などとしてもよい。
初期の難易度序列や各難易度序列順位の練習長さをボタンやトラックバー等によりユーザーから設定可能とする工夫は有意義である。初期の難易度序列指定は練習者の実力に負荷強度をフィットさせる上でエッセンシャルであり、各難易度序列順位の練習長さ指定は重点をどの負荷レベルに置く練習を行うかをデザインする上でエッセンシャルだからである。
【0017】
本発明の一態様は、設定された出題範囲を基準として自動作曲アルゴリズムにより音楽的フレーズを作成しフレーズ再現課題を出題する機能を有することを特徴とする(請求項2)。
【0018】
[技術的意義] 自動作曲アルゴリズムの適用はフレーズ再現課題による音あてクイズを実施する上で有意義である。
【0019】
本発明の一態様は、フレーズ再現課題におけるフレーズに含まれる音の数とその提示テンポとを逓増させる機能を有することを特徴とする(請求項3)。
【0020】
[技術的意義] 「フレーズ長さ」を調整して練習者の脳のワーキングメモリ等にかかる負荷制御を行う。出題するフレーズに含まれる音の数を逓増させてゆくために自動作曲の技術を応用する。
フレーズに含まれる音の数が多くなるに従ってフレーズを提示するテンポ(フレーズ提示テンポ)をはやくしてゆくことでフレーズ提示にかかる時間を短くしてゆく工夫は有意義である。
【0021】
本発明の一態様は、クイズ応答情報入力手段として階層化された作音コントローラを含むことを特徴とする(請求項4、請求項5、請求項6、請求項7)。
【0022】
[技術的意義] コントローラを階層化して表示デバイスのピクセル幅より大きなパラメータを扱う工夫はファインピッチ再現課題に応答する上で有意義である。
【0023】
たとえば表示デバイスのピクセル幅が900の場合、階層化されていないトラックバーコントローラによって表現できるパラメータの上限幅は900であるが、たとえば第一階層の幅を900、第二階層の幅を200とするコントローラであれば、たとえば二つのコントローラ値の乗算により900×200=180000のパラメータを扱うことができるようになる。さらに偶数値だけを扱うとするならその2倍、nの倍数値だけを扱うとするならそのn倍のパラメータ幅を扱うことができる。このような工夫は表示デバイスの限られたサイズにおいて幅の大きなパラメータ入力を扱う際に有意義である。
【0024】
本発明における階層化された作音コントローラは、幅を持つ画面上のフォームに表示されることを前提とし、第一階層の幅をフォーム幅とし、第二階層をフォーム幅以下の幅とするコントローラであることが意図される。該階層化された作音コントローラは、操作により対応するコントローラ値が変更されるのに伴って対応するピッチベンドを送信し音を発する機能を有する。
【0025】
本発明はプログラム発明としての態様をもつ(請求項8、請求項9)。
【0026】
[技術的意義] 該態様は、コンピュータまたは構成要素としてコンピュータを持つシステム等のシステムを、本発明の音あてクイズシステムとして機能させるための手順を指示するプログラム又はプログラムを記憶した記録媒体であることが意図される。
【発明の効果】
【0027】
以上の仕組みを採用することにより、本発明は音あてクイズの負荷を、定量的に、細かに、調整することができる。その結果、音あてクイズについて難度逓増練習プロセスの実施が可能となる。また音にかかる脳のワーキングメモリに刺激を与え、半音よりも細かなピッチにかかる音感を養う手段を提供する。
筋力トレーニングの負荷を日を追うごとに徐々に増大させてゆくように、音あてクイズの負荷をスモールステップで増大させてゆくことが技術的に可能となれば、難度逓増練習プロセスの実施により音感を強化することができる。本発明の一態様にかかる取り組みにより、30歳を超えてからの取り組みであっても、事前に基準となる音を示さない状態でのドミソの3音を判別課題音とする音あてクイズについて、100%の精度で正答することが可能になったことからすると、「言語的要素としてのピッチ保持(絶対音感)は限定された期間にトレーニングをすることでしか獲得できない」との通説の一画は覆された可能性のあることが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の音あてクイズシステムの一態様にかかる基本的構成の例を示すブロック構成図である。
図2】負荷逓増の仕組みを持つ音あてクイズシステムの基本的なフローの例である。
図3】音あてクイズに関する負荷としての「出題音候補の間隔」を説明する図である。
図4】出題音候補の間隔を徐々に狭めてゆく出題例である。
図5】トニック音とルート音によって音あてクイズの出題範囲を設定する方法を説明する図である。
図6】自動作曲アルゴリズムを説明する図である。
図7】音あてクイズに関する負荷としての「フレーズに含まれる音の数」と「フレーズ提示テンポ」について説明する図である。
図8】フレーズに繰り返し構造をもたせることについて説明する図である。
図9】出題候補音設定手段とクイズタイプ選択について説明する図である。
図10】階層化された作音コントローラについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき発明の各実施形態について詳述する。
【0030】
図1は本発明の音あてクイズシステムの一態様にかかる基本的構成の例を示すブロック構成図である。RAMが記憶した各パラメータをCPUが更新しながら出力デバイスに対し、映像出力、音出力等を行う制御シナリオと制御に用いられる乱数情報とがROMに記憶されている。さらに入力デバイスからの入力を検出する仕組みを持っている。
【0031】
本発明は基本的にはPC上で作動することが意図されるが、例えばCPUやROM等の電子デバイスの作用を人や計時装置やメモ書等が担い、制御されたシナリオに基づいてピアノが鳴らされる、といったシステム態様等を妨げない。また各ハードウェア構成要素を、複数のマシンを組み合わせ、それらに機能を配分し実施する等の種々の変更は容易に想定され得るものであり、それらの変更は、当然に本発明の思想に包含される概念である。
【0032】
図2は本発明の音あてクイズシステムの一態様にかかる負荷逓増の仕組みとその基本的な流れの例である。
開始決定以後、出題→記憶を頼りに再現応答→チェック→正誤確認表示→一定回数正解したなら難易度逓増、を繰り返す構成になっている。
【0033】
単音判別課題または単音のファインピッチ再現課題の出題が始まると、出題候補音から乱数等を用いてクイズ出題手段が選択した出題音が鳴り始める。
出題音が減衰音の場合、好ましくは、クイズ出題手段は500msほどの間隔でその音を連打するように鳴らし続ける。
【0034】
フレーズ判別課題またはフレーズのファインピッチ再現課題の出題が始まると、一定テンポ(フレーズ提示テンポ)で、フレーズ出題手段が作成したフレーズの各音が鳴り始める。
フレーズの全ての音が鳴り終わったら、フレーズを鳴らしたのと同じ長さの待機時間の後、フレーズ出題手段は再びそのフレーズの最初からフレーズの各音を鳴らす。
ユーザーからの入力内容に誤りがあった場合、好ましくは、不正解であることを知らせるブザーなどの警告音を鳴らし、フレーズ演奏途中であればフレーズ演奏をストップし、またそのフレーズの最初からフレーズの各音を鳴らす。
【0035】
ユーザーが入力したクイズ応答情報と出題内容が一致した場合は正解の処理を行い、不一致の場合には不正解の処理を行う。
正解時には画面上の楽譜に出題された音符と正解であることを示すマークを800ms程度の一定時間表示したあとに次の出題を行うようにしてもよい。なお、この800msは例示であり、正解であったことをどの程度の時間表示するかを、フレーズ提示テンポの一音分とするなどの工夫を妨げない。
そのマークの内容と表示形式は破裂アニメーションや矢が刺さるアニメーションなど任意のものでよい。
出題内容がフレーズの場合はフレーズ単位で結果を表示するようにする。つまりたとえば正解した場合の入力終了時点で一連のフレーズの構成音と正解であることを示すマークを重ねたものを横並びに一定時間表示する。
【0036】
図2の例では、単位回数(基準音単位回数 フレーズ単位回数)の出題が正解だった場合、つまり出題数(=正解数)≧単位回数、となった場合に、出題数をリセットして次の難易度レベルの出題に進む機序が示されている。
これは練習者の高負荷への順応を促しながら練習負荷を逓増してゆくという基本的な考え方に基づくものである。
たとえば順応が得られたかどうかの判別基準として正解率を考慮するようにしてもよいし、さらにたとえば左前頭葉背外側後部などの活性化状況をチェックして絶対音感にかかる脳活動があらわれているかどうかをチェックし、順応が得られている場合のみ負荷逓増するなどの態様で負荷制御フィードバックを行うようにしてもよい。
なお、単位回数とは、基本的には、難易度を変更するまでの間に音あてクイズの出題→応答→判定を繰り返す回数のことを意味するが、この例のように応答が不正解の場合にデクリメントされることが予定されうる出題数の上限値としての側面をもつ。
【0037】
本発明の音あてクイズシステムの一態様においては、ユーザーによって設定された基準音を元に図3(a)ないし図3(e)の要領で問題音の候補を定める。図3は基準音がドの場合の各難易度序列における問題音の候補を図示したものである。
【0038】
各出題音候補音の間隔は狭い方がクイズ負荷は大きいといえる。
たとえば、オクターブちがいのドの音を判別する課題(図3(a)参照)よりも、ドミソを判別する課題(図3(c) 参照)の方が難しく、
ドミソを判別する課題(図3(c) 参照)よりも、ドレミファソラシドを判別する課題(図3(d)参照)の方が難しい。
また、ドレミファソラシドを判別する課題(図3(d) 参照)よりも、黒鍵を含むクロマトーンを判別する課題(図3(e) 参照)の方が難しい。
難度の大小関係は一般に、オクターブ判別(図3(a) 参照)<ドソド判別(図3(b) 参照)<ドミソ判別(図3(c) 参照)<ドレミファソラシド判別(図3(d) 参照)<クロマトーン判別(図3(e) 参照)である。
【0039】
出題音候補のうちの具体的にどの音を問題出題手段が出題するかは、たとえばROMに記憶された乱数を用いて決めるようにするとよい。任意の自動作曲アルゴリズムを適用して出題順序を決定するようにしてもよい。
出題候補音が3つの場合には、直前に出題した音と異なる音を出題するという出題アルゴリズムを適用することが好ましいが、出題候補音の数が十分に多い場合には様々の出題アルゴリズムの適用が可能となる。
図3(d)はドレミファソラシド判別課題(請求項1における難易度序列の第五順位)に対応するが、当該第五順位のように自然長音階スケールの全ての音が出題候補に含まれている場合には、好ましくは自動作曲アルゴリズムを適用して自然な音楽的パターンを出題する。
図3(e)はクロマトーン判別課題(請求項1における難易度序列の第六順位)に対応するが、これをさらに細かく分けてもよい。つまり例えばクロマトーン判別課題の出題は、(1)自動作曲アルゴリズムにより作成される経過音としての半音階を含むパターン、と(2)ランダムにクロマトーンを並べたパターン、のように、出題方法を変える工夫によって難易度段階を細分化することが可能である。なお一般的には、調感を伴うフレーズを出題するパターンよりも調感を伴わない出題パターンの方が音あてクイズは難しくなる。そのほか、前の音より半音高い音か前の音より半音低い音が出題可能な場合にはその音の出題(隣接移動)を4回程度繰り返し、その次の出題は前の音より4〜6半音階離れた音の出題が可能な場合にはその音を出題し(ジャンプ)、また前の音より半音高い音か前の音より半音低い音が出題可能な場合にはその音の出題(隣接移動)を4回程度繰り返す、といった要領で、隣接移動とジャンプを組み合わせた出題方法の適用も有意義である。とにかく出題候補音が多くなることにより様々の出題パターン作成が可能となるが、それら出題パターン作成方法の適用ないし併用は妨げられない。
【0040】
図4に出題が進むごとに難度が逓増する例を示す。
楽譜の最初の小節はオクターブ判別、
2小節目はドソド判別課題、
3小節目はドミソ判別課題、
4小節目は自然長音階スケールからドミソを除いた音についての判別課題、
5小節目と6小節目はドレミファソラシド判別課題、
7小節目と8小節目はクロマトーン判別課題、
を出題している。
このように出題がすすむにつれて、難易度序列を繰り上げ、出題音候補の間隔を徐々に狭めてゆく工夫が考えられる。
【0041】
ここでは基準音単位回数が4である場合を例示したが、単基準音位回数の具体的な値は任意である。基準音単位回数をユーザーが任意の値に指定できるようにしてもよい。
またどの難易度序列から出題を開始し、どの難易度序列まで出題を行うか、は任意である。また各難易度序列における出題長さ設計も任意である。
たとえば第二順位から開始して第四順位が終了した時点で練習完了としてもよいし、第三順位から開始して第五順位が終了した時点で練習完了等としてもよい。各難易度序列順位の練習長さは異なる値を個別に設定できるようにしてもよい。たとえば第二順位は基準音単位回数の出題を1回、第三順位も1回、第四順位は2回実施する、などとしてもよい。
初期の難易度序列や各難易度序列順位の練習長さをボタンやトラックバー等によりユーザーから設定可能とする工夫は有意義であり、システムが開始レベル設定手段や練習長さ設定手段を有することは妨げられない。
またクロマトーン判別課題の出題の後、ファインピッチ再現課題の出題へ移行し、さらにファインピッチ再現課題の許容範囲を狭めてゆく、という工夫があってもよい。
【0042】
図5に基準となる音(トニックとルート)とそれに対応する出題範囲の例を示す。この例ではトニックをCとし、ルートがC(60)からB(71)までの7種類のそれぞれの場合について、基本となる出題範囲を示した。
この例のように基本的には「トニックの調の自然長音階上における、ルートの音を第2音とする1オクターブ内の7音」を出題範囲とする。トニックをC以外の音とする場合も同様の要領で出題範囲を定めることができるのはもちろんである。また例においては自然長音階を採用しているが、採用するスケールの種類は任意である。上述の出題範囲の設定方式は主に機械を用いた出題処理に明確な出題範囲を与える便宜のためのものである。
トニックとルートの指定方法は任意である。数値入力を受け付けるフォーム上のトラックバーで値を指定できるようにしてもよいし、テキストボックスで数値を入力できるようにしてもよい。値の入力動作に対応して入力値に対応する出題範囲をそのフォーム上に表示して目視しやすいようにしてもよい。
【0043】
図6に自動作曲のアルゴリズムの例を示す。自動作曲技術により自由な長さの音楽的フレーズを自動作曲によって無尽蔵に得ることができる。
【0044】
たとえば調をCメジャー(つまりトニックはC)とし、ドレミファソラシの音がこの順序で並ぶスケールで、最初のコードがCメジャーであることを想定した場合に、図6の選択肢例の(1-1-1),(2-1),(3-1-1),(2-14),(3-2-1)が選択されたとすると、「ドミドソドファソラ」という音楽的パターンが作成される。詳しくはつまり、まず(1-1-1)でコード進行I→IVについて調がCメジャーならコード進行はCメジャー → Fメジャーになる。I:Cメジャー(ドミソ)における構成音が(2-1)1,3,5の場合、構成音はド,ミ,ソとなり、その並べ方が(3-1-1)1→2→1→3の場合、作成されるパターンは、ド→ミ→ド→ソとなる。さらに(1-1-1)で次のコードはIV:Fメジャー(ファラド)であるが、構成音が(2-14)1,2,3,5の場合、構成音はファ,ソ,ラ,ドとなり、これを想定されたスケール内での低い順に並べるとド,ファ,ソ,ラとなる。その並べ方が(3-2-1)1→2→3→4の場合、作成されるパターンは、ド→ファ→ソ→ラとなり、以上の「ドミドソ」と「ドファソラ」をつないだ「ドミドソドファソラ」が出力内容となる。
【0045】
このようにして得られた音楽的パターンは出自の各コードに対応する調感を持つので、該コードの構成音から付する和音にフィットする(たとえば上述の例でドミドソはドミソの和音にフィットし、ドファソラはファラドの和音にフィットするはずである)。つまり図6に例示するアイデアは、コード進行の観念を伴った音楽的パターンを作成する基礎として利用可能である。これにより自由な長さの音楽的フレーズを無尽蔵に得ることができる。またフレーズを出題する音あてクイズにおいて、先に出題したフレーズに続くフレーズを次々と出題提示してゆくという出題方法が可能となる。また、本発明の音あてクイズシステムによる音感トレーニングを、出題範囲と音楽的パターンの自動生成機序が共通で整合性がある読譜練習や運指練習に前置することで、音感がよく活性化している状態で全体の練習プロセスを実施できるようになる点は、特筆すべき有意義な点である。
【0046】
図7はフレーズ再現課題の出題ごとにフレーズ提示テンポを逓増させてゆく出題例である。
たとえば、出題ごとにテンポが1増え、テンポが20増えるごとにフレーズ長さが1増えるようにする。
ここに例示されるフレーズの長さを調整するアルゴリズムは
フレーズに含まれる音の数=Int(フレーズ提示テンポ/20)
というものである。
なお、これは例示であり、たとえば出題ごとにテンポが2増え、テンポが10増えるごとにフレーズ長さが1増えるようにするようにしてもよい。
【0047】
フレーズ再現課題出題開始と同時にユーザーからの入力を受け付けるようにしてもよいし、出題が済んだ時点以降に入力を受け付けるようにしてもよい。
フレーズ再現課題の場合の正誤判別タイミングについては、ユーザーによるフレーズの入力が出題内容を再現している場合にはフレーズ入力完了時に正解である旨の判別を行って次のステップに進めばよいのであるが、必ずしもユーザーによるフレーズの入力完了を待つのではなく、好ましくは、誤入力が検出された時に逐一入力が不正解である旨の提示と、フレーズの再提示を行うようにする。
【0048】
図8に例示するように、フレーズに含まれる音の数が8以上になると繰り返し構造を出題するようにしてもよい。その場合たとえば一つのフレーズ中に同じ4音が含まれるようにする。
なお、このフレーズに含まれる音の数にかかる8と繰り返し構造にかかる4という数は例示であり、これは6と3などでもよい。つまりたとえばフレーズに含まれる音の数が6以上になると3音から成る繰り返し構造が出現するなどとしてもよい。一般的には、繰り返し構造の長さをnとした場合に、フレーズに含まれる音の数が2n以上になった場合に繰り返し構造の出現を許容するようにする。なおnは2以上の任意の自然数である。
【0049】
図9に出題候補音設定手段の例として、鍵盤部分と操作ボタン部分を持ち、ディスプレイ上に表示されるフォームの例を示す。
この図の例ではボタン部分の上部に、3つ以上の音の選択を促すメッセージ、が表示されているが、該フォームはそのようなメッセージ表示部分を有していてもよい。
この例においては、鍵盤をクリックまたはタップすると出題候補音が選択され、既に指定されている鍵盤を再度クリックまたはタップすると選択が解除されるという機序が予定される。指定された鍵盤に塗りつぶしなどの描画処理をすると選択状態が分かりやすく好ましい。
3つ以上の出題候補音が選択されている状態で、操作ボタン部分にあるボタンを押すと、選択されている出題候補音を出題する音あてクイズが始まる。
操作ボタン部分のうち「ファインピッチ再現課題」に対応するボタン(図中ではfineTボタンがそのボタンであると意図されている)を押すと画面が切り替わり、本発明の音あてクイズシステムにおける階層化された作音コントローラを応答に用いる「ファインピッチ再現課題」の出題が始まるのであるが、この操作ボタン部分に様々の練習メニューに対応するボタンが併存することは妨げられない。たとえば階層化された作音コントローラではなく鍵盤を用いて応答するタイプの「出題候補音を出題する、ごく単純なノート判別課題」や、選択された出題候補音をトニックとする調の自然長音階ドレミファソラシドから成る連続した複数の音(scale)を提示してその「ドレミファソラシドの音のド(トニックの音)を判別させる課題」などのメニューを備えることは有意義である。
【0050】
ファインピッチを応答する方式の音あてクイズについては、ピアノ鍵盤様の入力手段から択一的に回答させる方式よりも、作音楽器的な入力手段によって応答させる方式が好ましい。ファインピッチをどのように応答させるかについて、大まかなピッチと細かなピッチについて階層化されたコントローラを用いることで、表示入力デバイスのサイズによる制約を回避できる。この工夫により小さなデバイスでも大きな幅をもつパラメータ送信ないしファインピッチ応答が可能になるので、この工夫は有意義である。
【0051】
図10はファインピッチ再現課題に対応するための階層化された作音コントローラによるファインピッチ応答の仕組みを説明する図である。
ここではmidi規格のピッチベンド送信によってノート情報にピッチ変化を加えた音を発する仕組みによりファインピッチ応答を行う例について説明する。
ピッチベンドレンジの値と基本ノートの値はその基本ノートとピッチベンド範囲によって発音できる最も高い音と最も低い音の間の範囲に全ての出題候補音が含まれるように設定される。たとえば出題候補音のうち最も低いノートと最も高いノートの中間に位置するノートを基本ノートとし、それに最も低いノートと最も高いノートの差に相当するピッチベンドレンジを設定すればよい。ゆとりをもたせてピッチベンドレンジを少し大きな値とするなどしてもよい。
【0052】
第一階層の作音コントローラはフォーム上に図10(a)のように表示され、フォーム幅(厳密にはフォーム幅からツマミの横幅を引いた幅)の範囲で左右にドラグすることができる。
midi規格におけるピッチベンド値の範囲は−8192〜+8191なので、第一階層の作音コントローラ操作時点でのピッチベンド値は、−8192+16384÷フォーム幅×第一階層の作音コントローラ位置、となる。なおこの場合、第一階層の作音コントローラ位置の値は、ツマミがフォーム左端位置にある場合を0とし、フォーム右端位置にある場合をフォーム幅(厳密にはフォーム幅の値からツマミ幅の値を減算した値)とする。
【0053】
第一階層の作音コントローラのドラグを解放すると、第二階層の作音コントローラがフォーム上に図10(b)のように表示される。好ましくは、基本的に、ドラグを離した第一階層の作音コントローラのツマミの位置が第二階層の作音コントローラの幅の中央あたりになるように第二階層の作音コントローラを表示する。第二階層の作音コントローラは第一階層の作音コントローラのツマミの位置を中央として左右にドラグすることができる。なお第二階層の作音コントローラ位置の値はそのトラックバーの中央が0、左がマイナス値で右がプラス値である。
第二階層の作音コントローラ操作時点でのピッチベンド値は、たとえば「第一階層の作音コントローラ操作時点でのピッチベンド値+第二階層の作音コントローラ位置の値」のようになる。このように、第二階層の作音コントローラによってファインピッチを指定して音あてクイズに利用することが意図される。
【0054】
各コントローラをドラグしている間、ピッチベンドによって変化した基本ノートの音に対応する音を発する。
OKを押すと、その音の内容が正誤判定の対象の入力内容(クイズ応答情報)とし、第二階層の作音コントローラの表示を消してフォーム上には第一階層の作音コントローラのみが描画されている状態とする。ファインピッチ再現課題の正誤判定は許容範囲をもって行われる。許容範囲は狭い方が難しいといえる。許容範囲は再現課題音の±10cent程度以内とすればよい。
たとえばC(60)を出題音とする単音のファインピッチ再現課題の場合、もし入力内容のピッチがC(60)より5セント低かったら、図(b)のように「C(60)-5cent」のような表示がなされ、それが設定された許容範囲内であれば図(b)のように音符と正解であることを示すマークを表示するようにしてもよい。一連の練習の成績をリスト表示できるようにしてもよい。
フレーズのファインピッチ再現課題の場合はフレーズ単位で結果を表示するようにする。つまり正解した場合の入力終了時点で一連のフレーズの構成音と正解であることを示すマークを重ねたものを横並びに表示し、さらに各構成音について、単音のファインピッチ再現課題の場合と同じ要領で各音に対応する入力内容と差分を音符の下部等に表示するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、AIによる自動制御技術を含む機械的手段による負荷制御を利用した新たな音感訓練ないし教育手段を提供し、音感教育すなわち音に対するセンス増進に貢献するものである。
【符号の説明】
【0056】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
4 入力デバイス
5 出力デバイス
6 アドレス・データバス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10