特許第6861935号(P6861935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社の特許一覧

特許6861935匍匐害虫防除用硬化性組成物、シーリング材、並びに、匍匐害虫の防除方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861935
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】匍匐害虫防除用硬化性組成物、シーリング材、並びに、匍匐害虫の防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/14 20060101AFI20210412BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20210412BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20210412BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20210412BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20210412BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20210412BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20210412BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20210412BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A01N31/14
   A01N53/06 150
   A01N53/08 100
   A01N53/08 110
   A01N53/08 125
   A01N53/10 210
   A01N25/02
   A01N25/10
   A01P7/04
   A01M1/20 A
   C09K3/10 G
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-110114(P2017-110114)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-111684(P2018-111684A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2020年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-3683(P2017-3683)
(32)【優先日】2017年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】田中 康順
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−88859(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/049730(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/079780(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
A01M 1/00−1/24
C09K 3/00−3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1):
−Si(R13-aa (1)
(式中、R1は1価炭化水素基又はハロゲン化1価炭化水素基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子、又はアルコキシ基を表し、aは0〜3の整数を表す。)
で表される反応性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有するポリオキシアルキレン系重合体を主成分とする基材、
(B)数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、
(C)数平均分子量400以上の液体飽和炭化水素、及び、
(D)ピレスロイド系化合物、
を含むことを特徴とする匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項2】
前記ピレスロイド系化合物が、ペルメトリン、フェノトリン、レスメトリン、ビフェントリン、プラレトリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、フタルスリン及びエトフェンプロックスからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項3】
前記ピレスロイド系化合物が、α−シアノフェノキシベンジル基を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項4】
前記ピレスロイド系化合物が、シフェノトリン、フェンプロパトリン、シペルメトリン、シハロトリン、シフルトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、フェンバレレート、及びエスフェンバレレートからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項5】
(A)100重量部に対し、(B)を10重量部〜80重量部、(C)を5重量部〜50重量部、(D)を0.01重量部〜30重量部含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項6】
前記反応性ケイ素基が、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、及びメチルジメトキシエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項7】
前記ポリオキシアルキレン系重合体が、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、又はポリオキシブチレンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項8】
前記基材が、さらに反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項9】
さらに昆虫成長制御剤、共力剤、防黴剤、硬化剤、充填剤、垂れ防止剤、脱水剤、光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項10】
前記匍匐害虫がチャタテムシ類であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物を含むことを特徴とするシーリング材。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の匍匐害虫防除用硬化性組成物又は請求項11に記載のシーリング材を用いて匍匐害虫を防除することを特徴とする匍匐害虫の防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匍匐害虫防除用硬化性組成物、シーリング材、並びに、匍匐害虫の防除方法に関する。本発明は、チャタテムシ等の匍匐害虫の防除に有用なものである。
【背景技術】
【0002】
チャタテムシは体長1〜2mm程度の微小昆虫であり、主にカビ類を餌としている。チャタテムシは人に直接被害を与えるものではないが、いわゆる不快害虫と認識されている。近年、一般家屋や工場、貯蔵食物、古い書物などにチャタテムシが大量発生する事例が増えており、大きな問題となっている。特に食品工場や医薬品工場では、虫体の製品への混入リスクが高まり、その対策が求められている。
【0003】
チャタテムシが生息する場所は間仕切壁裏面や天井裏が主であり、餌を求めて、シーリング材や幅木の亀裂、隙間から、室内に出現する。チャタテムシの防除方法としては、殺虫液剤や殺虫エアゾール剤を直接噴霧することや、燻蒸剤で部屋全体や工場内全体を燻蒸することが挙げられる。しかしこれらの方法では、一般家屋の場合には殺虫剤の人体への暴露の問題があり、工場の場合には生産物への殺虫剤混入のリスクがある。
【0004】
室内への害虫の侵入を防ぐために、殺虫剤や害虫忌避剤を含有するシーリング材が開発されている。例えば特許文献1には、殺虫剤及び/又は害虫忌避剤としてピレスロイド系化合物を含有するシーリング材について記載されている。特許文献2には、ピレスロイド系化合物の1つであるアクリナトリンを配合したシリコーンゴム組成物について記載されている。
【0005】
チャタテムシに対する殺虫剤の効果を調べた報告として、以下の非特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−2503号公報
【特許文献2】特開2009−185142号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】柴田光信「数種ピレスロイド剤に対するヒラタチャタテ(Liposcelis bostrichophilus)の感受性」、ペストロジー学会誌、第13巻、第1号、第38−39頁、1998年
【非特許文献2】哘 恵子ら「不快害虫としてのヒラタチャタテに対する数種殺虫剤の効力」、日環セ所報、第17号、第67−69頁、1990年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の住宅は気密性が高く湿気がこもるためカビが繁殖しやすく、チャタテムシが発生しやすい。また工場においては虫体の異物混入のリスクをできる限り排除する必要がある。そのため、チャタテムシ等の害虫の発生と屋内への侵入を防止するための更なる技術開発が望まれる。
そこで本発明は、チャタテムシ等の匍匐害虫の防除に有用な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、チャタテムシ等の匍匐害虫の屋内への侵入を防止するための、室温硬化性樹脂を用いた殺虫組成物を検討し、その中で変性シリコーン系シーリング材用の硬化性樹脂に着目し、害虫防除能を付与するべく種々検討を行った。その結果、溶剤としてポリプロピレングリコールに流動パラフィンを組み合わせることにより、チャタテムシ等の匍匐害虫に対するピレスロイド系化合物の害虫防除効果が格段に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の1つの様相は、(A)下記一般式(1):
−Si(R13-aa (1)
(式中、R1は1価炭化水素基又はハロゲン化1価炭化水素基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子、又はアルコキシ基を表し、aは0〜3の整数を表す。)
で表される反応性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有するポリオキシアルキレン系重合体を主成分とする基材、
(B)数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、
(C)数平均分子量400以上の液体飽和炭化水素、及び、
(D)ピレスロイド系化合物、
を含むことを特徴とする匍匐害虫防除用硬化性組成物である。
【0011】
好ましくは、前記ピレスロイド系化合物が、ペルメトリン、フェノトリン、レスメトリン、ビフェントリン、プラレトリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、フタルスリン及びエトフェンプロックスからなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【0012】
好ましくは、前記ピレスロイド系化合物が、α−シアノフェノキシベンジル基を有するものである。
【0013】
好ましくは、前記ピレスロイド系化合物が、シフェノトリン、フェンプロパトリン、シペルメトリン、シハロトリン、シフルトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、フェンバレレート、及びエスフェンバレレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【0014】
好ましくは、前記ピレスロイド系化合物が、ペルメトリン、シフェノトリン、レスメトリン、及びフェノトリンからなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【0015】
好ましくは、(A)100重量部に対し、(B)を10重量部〜80重量部、(C)を5重量部〜50重量部、(D)を0.01重量部〜30重量部含む。
【0016】
好ましくは、前記反応性ケイ素基が、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、及びメチルジメトキシエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0017】
好ましくは、前記ポリオキシアルキレン系重合体が、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、又はポリオキシブチレンである。
【0018】
好ましくは、前記基材が、さらに反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含む。
【0019】
好ましくは、さらに昆虫成長制御剤、共力剤、防黴剤、硬化剤、充填剤、垂れ防止剤、脱水剤、光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む。
【0020】
好ましくは、前記匍匐害虫がチャタテムシ類である。
【0021】
本発明の他の様相は、上記の匍匐害虫防除用硬化性組成物を含むことを特徴とするシーリング材である。
【0022】
本発明の他の様相は、上記の匍匐害虫防除用硬化性組成物又は上記のシーリング材を用いて匍匐害虫を防除することを特徴とする匍匐害虫の防除方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、チャタテムシ等の匍匐害虫を効率的に防除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、(A)下記一般式(1):
−Si(R13-aa (1)
(式中、R1は1価炭化水素基又はハロゲン化1価炭化水素基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子、又はアルコキシ基を表し、aは0〜3の整数を表す。)
で表される反応性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有するポリオキシアルキレン系重合体を主成分とする基材、
(B)数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、
(C)数平均分子量400以上の液体飽和炭化水素、及び、
(D)ピレスロイド系化合物、
を含むものである。
【0025】
上記ポリオキシアルキレン系重合体は、いわゆる変性シリコーン系シーリング材を構成する重合体である。一般に、変性シリコーン系シーリング材とは、末端に反応性シリル基(反応性ケイ素基)を導入したシリル化ポリエーテルを主成分とし、湿気硬化でシロキサン結合を形成するものを指す(日本シーリング材工業会「建築用シーリング材−基礎と正しい使い方−」第3版(平成24年10月1日発行)p182)。反応性ケイ素基は、加水分解性ケイ素基、架橋性ケイ素基、とも称される。
【0026】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物の(A)成分である基材は、上記ポリオキシアルキレン系重合体を主成分とするものである。ここで「主成分」とは、基材中における含有量が50重量%以上であることを指し、好ましくは60重量%以上、より好ましくは66重量%以上である。副成分を含めず、上記ポリオキシアルキレン系重合体のみで(A)成分を構成してもよい。
【0027】
上記ポリオキシアルキレン系重合体としては、例えば、下記のオキシアルキレン単位が複数個連なったポリオキシアルキレン骨格を含むものが挙げられる。
−(CH2n−O−(nは1〜4の整数)
−CH2CH(CH3)−O−
−CH2CH(C25)−O−
−CH2C(CH32−O−
−CH2CH(CH=CH2)−O−
これらの中で、ポリオキシエチレン(−CH2−CH2−O−)、ポリオキシプロピレン(−CH2CH(CH3)−O−)、ポリオキシブチレン(−CH2CH(C25)−O−)が好ましく、作業性に優れる点でポリオキシプロピレンが特に好ましい。
上記ポリオキシアルキレン系重合体には、上記の繰り返し単位が1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0028】
上記ポリオキシアルキレン系重合体は直鎖状でもよく、分鎖を有するものでもよい。上記ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量は、4000〜30000であることが好ましい。このような反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の具体例としては、株式会社カネカ製の商品名「MSポリマーS203」、「MSポリマーS303」、「MSポリマーS203H」、及び「MSポリマーS303H」、旭硝子株式会社製 の商品名「エクセスターES2410」、等が例示される。なお、リビングラジカル重合法を用いることによって、デッドポリマーが少なく分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0029】
上記一般式(1)で表される反応性ケイ素基としては、トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基、等が挙げられる。ここでアルコキシ基、アルキル基の炭素数は10以下が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
トリアルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、等が挙げられる。アルキルジアルコキシシリル基としては、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、メチルジメトキシエトキシシリル基、等が挙げられる。ジアルキルアルコキシシリル基としては、ジメチルメトキシシリル基等が挙げられる。
これらの中で、トリメトキシシリル基とメチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0030】
反応性ケイ素基の数としては、上記ポリオキシアルキレン系重合体1分子中に少なくとも1個あればよい。反応性ケイ素基は、上記ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖と側鎖のいずれに導入されていてもよく、分子鎖末端に導入されていることが好ましい。
【0031】
上記ポリオキシアルキレン系重合体の分子鎖末端に対する反応性ケイ素基の導入率は特に限定されるものではないが、50%以上であることが好ましい。なお、反応性ケイ素基の導入率について、分子鎖末端の官能基が水酸基の場合は、例えば、反応性ケイ素基導入後の未反応の水酸基を水酸基価分析法にて定量および算出することができる。分子鎖末端の官能基が水酸基以外の場合は、例えば、赤外分光法や核磁気共鳴法などを用いて、反応性ケイ素基導入後の未反応の官能基を定量および算出することができる。
【0032】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、公知の方法で製造することができる。例えば、上記した「建築用シーリング材−基礎と正しい使い方−(第3版)」のp182−183に記載の方法が挙げられる。具体的には、分子量3000程度のポリプロピレングリコール(PPG)の末端ヒドロキシル基をアルコキシド基に転換させた後、多価ハロゲン化合物を反応させることによって分子量を増大させ、分子量延長反応により高分子量化する。次に、CH2=CHRXで示される有機ハロゲン化合物を反応させることによって末端にオレフィン基を導入する。その後、脱塩精製工程を経てヒドロキシル化反応によって末端に反応性のシリコーン官能基(反応性ケイ素基)を導入する。
【0033】
下記(イ)又は(ロ)の方法によっても、反応性ケイ素基をポリオキシアルキレン系重合体に導入することができる(特許第3913859号公報)。
(イ)分子中に水酸基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するオキシアルキレン系重合体を得るか、又は、不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により不飽和基を含有するオキシアルキレン系重合体を得る。次いで、得られた不飽和基を含有するオキシアルキレン系重合体に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
【0034】
(ロ)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0035】
その他、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法は、特開昭50−156599号公報、特開昭52−73998号公報、特開昭60−6747号公報、等の文献に記載されている。
【0036】
(A)の主成分である上記ポリオキシアルキレン系重合体以外の成分(副成分)としては、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が挙げられる。すなわち本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物においては、上記ポリオキシアルキレン系重合体(以下、重合体(a−1)と称することがある。)と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(以下、重合体(a−2)と称することがある。)とを併用することができる。これにより、硬化したシーリング材の耐候性や接着性が向上する。重合体(a−2)としては、例えば、上記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が挙げられる。重合体(a−1)と重合体(a−2)とを併用した重合体の具体例としては、株式会社カネカ製の商品名「MSポリマーS903」、「MSポリマーS943」が例示される。
【0037】
重合体(a−1)に対する重合体(a−2)の配合量としては、重合体(a−1)100重量部に対して1重量部〜100重量部が好ましく、より好ましくは10重量部〜100重量部、さらに好ましくは10重量部〜80重量部である。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、公知の方法で製造することができる。例えば、アリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を、VIII族金属の存在下でヒドロシリコン化合物と反応させる方法(特開昭54−36395号公報)、アルキル(メタ)アクリレートを、アルコキシシリル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート、及びメルカプト基を含有する連鎖移動剤の存在下で共重合させる方法(特開昭57−179210号公報)、アルキル(メタ)アクリレートを、2官能ラジカル重合性化合物及び連鎖移動剤としてアルコキシシリル基を含有するメルカプタンの存在下で共重合させる方法(特開昭59−78222号公報)、アルキル(メタ)アクリレートを、重合開始剤としてアルコキシシリル基を含有するアゾビスニトリル化合物を使用して重合する方法(特開昭60−23405号公報)、等を用いて製造することができる(特開2002−201350号公報)。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体等の、(A)成分におけるポリオキシアルキレン系重合体以外の成分(副成分)の分子鎖末端に対する反応性ケイ素基の導入率は、ポリオキシアルキレン系重合体と同様に特に限定されるものではないが、50%以上であることが好ましい。
【0040】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、(B)数平均分子量1000以上のポリプロピレングリコール、を含有する。ポリプロピレングリコールの数平均分子量の上限は特にないが、例えば、数平均分子量1000〜6000のものが低粘度であることから取り扱いやすく、数平均分子量1000〜4000のものが特に好ましい。ポリプロピレングリコールはジオール型、トリオール型のいずれを使用してもよい。
【0041】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、(C)数平均分子量400以上の液体飽和炭化水素、を含有する。液体飽和炭化水素の数平均分子量の上限は特になく、常温で液体のものであればいずれも使用可能である。
(C)成分の具体例としては、流動パラフィンが挙げられる。例えば、株式会社MORESCO社製の商品名「モレスコホワイトP−150」(数平均分子量409)、「モレスコホワイトP−200」(数平均分子量430)、「モレスコホワイトP−260」(数平均分子量453)、「モレスコホワイトP−350」(数平均分子量483)、等が挙げられる。
【0042】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物における(B)成分の含有量としては、(A)成分100重量部に対して、好ましくは10重量部〜80重量部、より好ましくは20重量部〜70重量部、さらに好ましくは30重量部〜60重量部である。
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物における(C)成分の含有量としては、(A)成分100重量部に対して、好ましくは5重量部〜50重量部、より好ましくは8重量部〜40重量部、さらに好ましくは10重量部〜30重量部である。
【0043】
また本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物における(B)成分と(C)成分の合計の含有量としては、例えば、(A)成分100重量部に対して、(B)成分と(C)成分の合計が、好ましくは30重量部〜100重量部、より好ましくは30重量部〜80重量部、さらに好ましくは40重量部〜60重量部である。(A)成分100重量部に対して(B)成分と(C)成分の合計が100重量部より多い場合、硬化剤を加えた後の組成物の硬度が低くなる可能性がある。
【0044】
また本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物における(B)成分に対する(C)成分の重量比については、例えば、(B)成分100重量部に対して、(C)成分が、通常は5重量部〜500重量部、好ましくは8重量部〜250重量部、より好ましくは10重量部〜100重量部、さらに好ましくは20重量部〜50重量部である。(B)成分100重量部に対して(C)成分が500重量部より多い場合、硬化剤を加えた後の組成物から(C)成分が浸み出す可能性がある。
【0045】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、(D)ピレスロイド系化合物、を含有する。ピレスロイド系化合物としては、匍匐害虫に対する防除効果を有するものであれば特に限定はない。
【0046】
ピレスロイド系化合物の例としては、アクリナトリン、アレスリン、ベータ−シフルトリン、ビフェントリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、エンペントリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルフェンプロックス、フルメトリン、フルバリネート、ハルフェンプロックス、イミプロトリン、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリン、レスメトリン、シグマ−サイパーメトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、テトラメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、アルファシペルメトリン、フラメトリン、タウフルバリネート、等が挙げられる。これらのピレスロイド系化合物については、1種のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また本発明において用いられるピレスロイド系化合物には各種異性体が含まれる。また本発明において用いられるピレスロイド系化合物は(C)成分に室温で溶解するものがより好ましい。
【0047】
1つの好ましい実施形態では、前記ピレスロイド系化合物として、ペルメトリン、フェノトリン、レスメトリン、ビフェントリン、プラレトリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、フタルスリン及びエトフェンプロックスからなる群より選ばれた少なくとも1種が用いられる。これらのピレスロイド系化合物については、1種のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
別の好ましい実施形態では、前記ピレスロイド系化合物として、α−シアノフェノキシベンジル基を有するピレスロイド系化合物が用いられる。例えば、α−シアノフェノキシベンジル基を有するピレスロイド系化合物として、シフェノトリン、フェンプロパトリン、シペルメトリン、シハロトリン、シフルトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、フェンバレレート、及びエスフェンバレレートからなる群より選ばれた少なくとも1種が用いられる。これらのピレスロイド系化合物については、1種のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物における(D)成分の含有量は、化合物の種類にもよるが、一般に(A)成分100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜30重量部、より好ましくは0.03重量部〜15重量部、さらに好ましくは0.1重量部〜10重量部である。(A)成分100重量部に対して(D)成分の含有量が30重量部より多い場合、硬化剤を加えた後の組成物から(D)成分が多量に浸み出すことがあり好ましくない。一方、(A)成分100重量部に対して(D)成分の含有量が0.01重量部未満であると、殺虫効果の持続期間が短くなることから好ましくない。
【0050】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、反応性ケイ素基の反応を促進する目的でシラノール縮合触媒(硬化剤、硬化触媒)を含んでもよい。シラノール縮合触媒としては、例えば、カルボン酸のアルキルスズ塩、アルキルスズアルコキシド、アルキルスズキレート化合物、アルキルスズオキサイド及びその反応生成物、アルキルスズ塩とシリケート化合物との反応生成物、カルボン酸スズ塩、等が挙げられる。この中で、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫塩と正ケイ酸エチルとの反応生成物、ジブチル錫ジアセチルアセトナートが好ましい。また他にも、アルコキシ基およびキレート基を有するチタン化合物、ジルコニウムオキシド化合物、バナジウムオキシド化合物を用いてもよい。シラノール縮合触媒の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.01重量部〜20重量部が好ましく、0.1重量部〜10重量部がより好ましい。
なお、本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物にシラノール縮合触媒を含めない場合は、匍匐害虫防除用硬化性組成物の使用時にシラノール縮合触媒を添加し、硬化させることができる。
【0051】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、その性能を損なわない限りにおいて、他の成分をさらに含んでもよい。例えば、昆虫成長制御剤、共力剤、防黴剤、充填剤、垂れ防止剤、脱水剤、光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分をさらに含んでもよい。
【0052】
昆虫成長制御剤は、昆虫の成長や休眠、産卵等の昆虫特有の機能を阻害する化合物である。昆虫成長制御剤の例としては、ピリプロキシフェン、メソプレン、ハイドロピレン、フェノキシカルブ、ルフェヌロン、フルフェノクスロン、ノバルロン、ヘキサフルムロン、テフルベンズロン、ジフルベンズロン、トリフルムロン、ブプロフェジン、シロマジン、等が挙げられる。これらの昆虫成長制御剤については1種類のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。昆虫成長制御剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.01重量部〜30重量部が好ましく、0.1重量部〜10重量部がより好ましい。
【0053】
共力剤は、殺虫剤と混合することで殺虫効果を著しく高める化合物である。共力剤の例としては、ビス−(2,3,3,3−テトラクロロプロピル)エーテル(別名:S−421)、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(別名:MGK−264)、α−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエン(別名:ピペロニルブトキシド、PBO)、等が挙げられる。これらの共力剤については1種類のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。共力剤の含有量は、(D)成分1重量部に対して、1重量部〜20重量部が好ましく、3重量部〜10重量部がより好ましい。
【0054】
防黴剤としては、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリノン系化合物;チアベンダゾール、カルベンダジム等のベンズイミダゾール系化合物;テトラクロロメチルスルホニルピリジン;ジヨードメチル−p−トリルスルホン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート等の有機ヨウ素系化合物;2,2−ジブロモ−3−ニトリルプロピオンアミド;ジンクピリチオン、等が挙げられる。防黴剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.01重量部〜10重量部が好ましく、0.1重量部〜6重量部がより好ましい。
【0055】
充填剤としては、無水ケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土タルク、酸化チタン、ベントナイト、酸化亜鉛、ガラス繊維、等が挙げられる。これらの充填剤については1種類のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。充填剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して10重量部〜200重量部が好ましく、50重量部〜120重量部がより好ましい。
【0056】
垂れ防止剤としては、高分散シリカ、有機変性ベントナイト、合成ヘクトライト、有機ワックス類、反応性有機シリコン化合物、等が挙げられる。これらの垂れ防止剤については1種類のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
脱水剤としては、酸化カルシウム、ビニルトリメトキシシラン等の反応性有機シリコン化合物、オルトギ酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルトギ酸アルキル、などが挙げられる。脱水剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.1重量部〜10重量部が好ましく、0.2重量部〜5重量部がより好ましい。
【0058】
光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物、等が挙げられる。この中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。光安定剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.1重量部〜10重量部が好ましく、0.2重量部〜5重量部がより好ましい。
【0059】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリシレート系化合物、置換トリル系化合物、金属キレート系化合物、等が挙げられる。この中でもベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.1重量部〜10重量部が好ましく、0.2重量部〜5重量部がより好ましい。
【0060】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤、等が挙げられる。この中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.1重量部〜10重量部が好ましく、0.2重量部〜5重量部がより好ましい。
【0061】
また本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、その性能を損なわない限りにおいて、ピレスロイド系化合物以外の害虫防除成分をさらに含んでもよい。ピレスロイド系化合物以外の害虫防除成分としては、カーバメート系化合物、有機リン系化合物、等が挙げられる。
【0062】
前記カーバメート系化合物の例としては、メトキサジアゾン、アラニカルブ、ベンダイオカルブ、ベンフラカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ、フェノチオカルブ、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、イソプロカルブ、メトルカルブ、メソミル、メチオカルブ、オキサミル、ピリミカーブ、プロポキスル、XMC、チオジカルブ、キシリルカルブ、アルジカルブ、等が挙げられる。この中で、メトキサジアゾン、カルバリル、フェノブカルブ、プロポキスルが、殺虫活性が高いことから特に好ましい。本発明において用いられるカーバメート系化合物には各種異性体が含まれる。
【0063】
前記有機リン系化合物の例としては、アセフェート、クロルピリホス、ダイアジノン、ジクロルボス、フェニトロチオン、フェンチオン、マラチオン、プロペタンホス、トリクロルホン、等が挙げられる。本発明において用いられる有機リン系化合物には各種異性体が含まれる。
【0064】
本発明の匍匐害虫防除用硬化性組成物は、例えば、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体からなる(A)成分に、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分、必要に応じて他の成分を添加し、加熱・攪拌等の条件を適宜調節し、均一に分散及び溶解させることにより製造することができる。(A)成分として反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を併用する場合には、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(重合体(a−1))と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(重合体(a−2))との混合物に、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分、必要に応じて他の成分を添加すればよい。
【0065】
本発明における硬化性組成物は、室温硬化性組成物、湿分硬化性組成物、等と言い換えることができる。
【0066】
本発明のシーリング材は、上記の匍匐害虫防除用硬化性組成物を含むものである。本発明の匍匐害虫の防除方法は、上記の匍匐害虫防除用硬化性組成物又はシーリング材を用いて匍匐害虫を防除するものである。
【0067】
本発明のシーリング材を施用することによって、チャタテムシ等の匍匐害虫を防除することができる。本発明のシーリング材は、従来の変性シリコーン系シーリング材と同様に、建築用シーリング材として用いることができる。
【0068】
本発明の対象となる匍匐害虫としては、チャタテムシ類、トビムシ類、キクイムシ類、シバンムシ類、ヒメマキムシ類、ハネカクシ類、ケシキスイ類、カツオブシムシ類、アリ類、ダンゴムシ類、シロアリ類、ゴキブリ類、などが挙げられる。
【0069】
チャタテムシ類としては、コチャタテ等のコチャタテ科;ヒラタチャタテ、カツブシチャタテ、ソウメンチャタテ等のコナチャタテ科;ヒメチャタテ等のヒメチャタテ科、などに属する微小昆虫が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0071】
表1に示す配合(単位:重量部)からなる12種の硬化性組成物を作製した。具体的操作としては、ポリオキシアルキレン系重合体を主成分とする基材100重量部に、乾燥器により水分を除去した炭酸カルシウム(関東化学株式会社)120重量部および酸化チタン(ルチル型、関東化学株式会社)20重量部を混合して充分混練した。所定量(表1の配合に従う)のポリプロピレングリコールと所定量(表1の配合に従う)の流動パラフィンを混和してなる溶剤にペルメトリン(住友化学株式会社)3重量部又は0.9重量部(表1の配合に従う)を溶解した溶液を、混練物に滴下し、撹拌した。硬化触媒として1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン(商品名「ネオスタンU−130」、日東化成株式会社)2重量部を加えて混練し、所定の形状に成形し、室温に放置することで表1に示す硬化性組成物1〜12(試料番号1〜12)を得た。
対照として、ポリプロピレングリコールのみからなる溶剤(流動パラフィン不使用)を用いて同様の操作を行い、表2に示す配合(単位:重量部)からなる6種の硬化性組成物101〜106(試料番号101〜106)を得た。また、溶剤としてフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)(関東化学株式会社)を用いて硬化性組成物107(試料番号107)を得た。
【0072】
使用した基材、ポリプロピレングリコール、及び流動パラフィンの詳細は以下のとおりである。
【0073】
<基材>
・MSポリマーS303H(株式会社カネカ)
・MSポリマーS203H(株式会社カネカ)
・MSポリマーS943(株式会社カネカ)
【0074】
<ポリプロピレングリコール>
・ポリプロピレングリコール400(PPG400、数平均分子量400、ジオール型)(和光純薬株式会社)
・ポリプロピレングリコール1000(PPG1000、数平均分子量1000、ジオール型)(和光純薬株式会社)
・ポリプロピレングリコール3000(PPG3000、数平均分子量3000、ジオール型)(和光純薬株式会社)
・ポリプロピレングリコール3000T(PPG3000、数平均分子量3000、トリオール型)(和光純薬株式会社)
・ポリプロピレングリコール4000(PPG4000、数平均分子量4000、トリオール型)(和光純薬株式会社)
【0075】
<流動パラフィン>
・モレスコホワイトP−70(数平均分子量323)(株式会社MORESCO)
・モレスコホワイトP−120(数平均分子量384)(株式会社MORESCO)
・モレスコホワイトP−350(数平均分子量483)(株式会社MORESCO)
【0076】
〔試験例1〕
各硬化性組成物4.0〜4.2gを、底面の直径80mm、高さ45mmの円柱型ポリカップの円底面に厚さ1.0〜1.5mm、直径60mmの円状になるようになるように広げ、48時間以上室温で放置することにより硬化させた。硬化組成物の円の中心付近に、飼育用餌粉末約100mgを置き、ヒラタチャタテ約50匹を放し、25℃の温度環境下に置いた。48時間後に、ポリカップ内のヒラタチャタテの生存成虫数と生存幼虫数および致死成虫数と致死幼虫数を調査した。致死成虫数と致死幼虫数の合計を、試験開始時に放した虫数で除し、致死率(%)を算出した。この試験を2回行い(N=2)、致死率の平均値(平均致死率)を算出した。結果を表1、2の最下段に示す。
【0077】
すなわち、溶剤としてポリプロピレングリコールのみ使用した場合(表2)と比較して、ポリプロピレングリコールと流動パラフィンとを併用した場合(表1)に、ヒラタチャタテに対する平均致死率が向上した。特に、流動パラフィンとしてモレスコホワイトP−350(数平均分子量483)を用いた場合に平均致死率が大きく向上した(硬化性組成物3〜7)。このうち、硬化性組成物5〜12では90%以上の非常に高い平均致死率が得られた。この効果は、ペルメトリン含量が1.0%(3重量部添加)と0.3%(0.9重量部添加)のいずれの場合でも得られた。
一方、表2に示すように、溶剤として流動パラフィンを用いなかった硬化性組成物101〜106では、17%以下の致死率しか得られなかった。また、溶剤としてフタル酸ジエチルヘキシルを用いた硬化性組成物107では9%の致死率しか得られなかった。
【0078】
以上のように、害虫防除成分としてペルメトリン等のピレスロイド系化合物を含有する変性シリコーン系硬化性組成物において、溶剤としてポリプロピレングリコールと流動パラフィンとを併用することにより、チャタテムシ類等の匍匐害虫に対する防除効果を向上させることができた。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
さらに、ペルメトリン以外のピレスロイド系化合物を用いて、表3に示す5種の硬化性組成物13〜17(試料番号13〜17)を作製した。使用したピレスロイド系化合物と流動パラフィンは以下のとおりである。
【0082】
<ピレスロイド系化合物>
・d・d−T80−プラレトリン
・ビフェントリン
・d・d−T−シフェノトリン
・フェンプロパトリン
・エトフェンブロックス
【0083】
<流動パラフィン>
・モレスコホワイトP−150(数平均分子量409)(株式会社MORESCO)
・モレスコホワイトP−200(数平均分子量430)(株式会社MORESCO)
【0084】
〔試験例2〕
試験例1と同様にして試験を行い、ヒラタチャタテの致死率の平均値(平均致死率)を算出した。結果を表3の最下段に示す。
【0085】
すなわち、いずれのピレスロイド系化合物を用いた場合でも、90%以上の高い平均致死率が得られた。
【0086】
【表3】