【文献】
佐藤彰、外2名,添加剤のナノカプセル化による各種機能の向上,プラスチックエージ,2014年 7月 1日,Vol.60,No.7,p.82−86
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明樹脂層は、引張弾性率が800MPa以上,2000MPa以下であり、引張破断伸度が200%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の化粧シート。
前記結晶性ポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)95%以上の高結晶性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧シート。
前記無機微粒子が、アルミナ、シリカ、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、ダイヤモンドのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の化粧シート。
前記樹脂層のうちの前記原反層より裏面側の1層となる隠蔽層として、樹脂中にアルミをフレーク状としたフレーク状の金属を添加して形成していることを特徴とする請求項13に記載の化粧シートの製造方法。
前記ベシクルが、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂より選択された成分からなる外膜を具備するリポソームであることを特徴とする請求項13に記載の化粧シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の化粧シートは、複数の樹脂層からなる化粧シートであって、当該樹脂層の少なくとも1層に対して、ナノサイズの添加剤が含まれていることが重要である。ナノサイズの添加剤は、より具体的には、平均粒径が375nm以下とされていることが好ましい。さらに、このナノサイズの添加剤が、ベシクルに添加剤を内包させた添加剤内包ベシクルとされていることが好ましく、より好ましくは当該添加剤内包ベシクルが単層膜の外膜を具備する構成とされているものである。
【0035】
ナノサイズの添加剤とは、添加剤をナノサイズ化する手法(ナノ化処理)によってナノサイズの粒子とされた添加剤のことであり、当該ナノ化処理としては、例えば、添加剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、添加剤や当該添加剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、添加剤や当該添加剤からなるガスや蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法などの方法を用いることができる。それぞれの方法を実施するための具体的な手段を簡単に挙げると、固相法としてはボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミルなどが挙げられる。液相法としては、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法などが挙げられる。そして、気相法としては、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法などが挙げられる。
【0036】
ナノ化処理のより具体的な方法を説明すると、固相法の具体例としては、例えば、イソプロピルアルコール100gと2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム50gの混合物をビーズミルで60分間、30μmの安定化ジルコニアビーズを用いて、平均粒子径100nm〜150nm程度のナノサイズの造核剤粒子を得ることができる。また、晶析法の具体例としては、例えば、キシレン96g、イソプロピルアルコール72gおよび水24gからなる混合溶媒に2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム50gを溶解させ、この溶液をマイクロリアクター内でエタノールなどの貧溶媒と接触させて平均粒子径1nm〜150nmのナノサイズの造核剤粒子を析出させることができる。
【0037】
また、添加剤内包ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞状のカプセルのことであり、特に、内部に液相を含むものが添加剤内包ベシクルと呼ばれている。本発明においては、この液相中に添加剤が含まれている。この添加剤内包ベシクルは、互いの外膜同士が反発し合う作用によって粒子が凝集することがなく、極めて高い分散性を有している。この作用によって、各樹脂層を構成する樹脂組成物中に対して添加剤を均一に分散させることを可能とするものである。ナノ化処理の中でナノサイズの添加剤を添加剤内包ベシクルとして得る手法(ベシクル化処理)としては、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などが挙げられる。このようなベシクル化処理について簡単に説明すると、Bangham法は、フラスコなどの容器にクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解する。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去して脂質からなる薄膜を形成し、添加剤の分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させることよりベシクルを得る方法である。エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代わってフィルターを通過させることによりベシクルを得る方法である。水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌して分散させてベシクルを得る方法である。逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、添加剤を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを作り、当該エマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、この冷却・加熱を繰り返すことによってベシクルを得る方法である。
【0038】
特に、単層膜からなる外膜を具備する添加剤内包ベシクルを得るための方法として、超臨界逆相蒸発法が挙げられる。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態または臨界点以上の温度条件下もしくは圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセルを作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0039】
超臨界逆相蒸発法による具体的なベシクル化処理は、超臨界二酸化炭素と分散剤としてのリン脂質と内包物質としての添加剤の混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって超臨界二酸化炭素と水相のエマルションが生成する。その後、減圧すると二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が添加剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセルが生成する。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、添加剤粒子表面で分散剤が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。なお、多重膜のカプセルとしたい場合には、リン脂質、添加剤、水相の混合流体中に超臨界二酸化炭素を注入することにより容易に作製することができる。添加剤内包ベシクルを調製する際に用いるリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセルロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質などが挙げられる。当該添加剤内包ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備することにより樹脂材料との優れた相溶性を実現することができる。
【0040】
また、当該添加剤内包ベシクルは分散剤からなる外膜を具備していてもよい。分散剤としては、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂などが挙げられる。高分子系の界面活性剤としては、脂肪族多価ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アルキルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ミリスチン酸などとリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどが結合したものが挙げられる。シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。チタネートカップリング剤としては、テトラキス[2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブトキシ]チタン(IV)、ジ−i−プロポキシチタンジオソステアレート、(2−nーブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタンなどが挙げられる。シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどのオレフィンを重合または、ポリオレフィンを熱分解したもので、それをさらに酸化またはマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸などによって変性したものが挙げられる。樹脂としては、ポリオレフィンをマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸などによって変性したものが挙げられる。
【0041】
本発明の化粧シートは、基材に貼り合わせて用いられるものであり、当該基材側から少なくとも原反層、透明樹脂層およびトップコート層が順に積層されており、このうち、少なくとも透明樹脂層が前記ナノサイズの添加剤を含んだ樹脂層からなることが重要である。
【0042】
透明樹脂層が前記ナノサイズの添加剤を含んだ樹脂層からなる場合には、結晶性ポリプロピレン樹脂90〜100重量%を主成分とし、ナノサイズの添加剤としての造核剤を含むことが重要である。より好ましくは、当該ナノサイズの添加剤をベシクルの状態(造核剤内包ベシクル)で含有させることであり、この場合には、造核剤内包ベシクルは、平均粒径が可視光の波長の1/2以下とされていることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域は、400〜750nmであるので、平均粒径が375nm以下とされていることが好ましい。このような透明樹脂層においては、製膜時の冷却条件を調整することによって、ヘイズ値が15%以下、より好ましくは10%以下、引張弾性率が800MPa以上,2000MPa以下、引張破断伸度が200%以上とされていることが重要である。
【0043】
また、結晶性ポリプロピレン樹脂は、ペンタッド分率の異なるアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンおよびこれらの混合物から適宜選択して設計することができる。より好ましくは、当該結晶性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)95%以上、より好ましくは96%以上のプロピレンの単独重合体、すなわちホモポリマーである高結晶性ホモポリプロピレン樹脂とされることが重要である。なお、透明樹脂層を構成する結晶性ポリプロピレン以外の樹脂は、結晶性ポリプロピレンの物性に著しく悪影響を与えないならば、その配合の目的によって適宜選定が可能である。但し、V溝曲げ加工適性を維持するためには透明樹脂層を構成する結晶性ポリプロピレン樹脂との相溶性が良いものが好ましい。
【0044】
このような、透明樹脂層は厚さが、20μm以上,250μm以下とされていることが好ましい。
【0045】
ナノサイズの造核剤は、その粒子径がナノサイズと極めて小さいことにより、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の3乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加して1つの造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、当該造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長していた結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長がとまるので、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を極めて小さくすることができる。
【0046】
このため、透明樹脂層に対してナノサイズの造核剤を含有させることにより、従来の造核剤と比較して、樹脂中により微細かつ大量の結晶核を発生させて、その結果、結晶部における結晶核同士の距離を短くして、個々の結晶の成長を抑制し、球晶の平均粒径を極めて小さくさせることに成功した。そして、このような、結晶性ポリプロピレン樹脂においては、ヘイズ値が15%以下という優れた高い透明性を実現している。
【0047】
さらに、当該ナノサイズの造核剤をベシクルの状態、すなわち造核剤内包ベシクルとして含有させることにより、造核剤同士が凝集することを防いで樹脂材料に対する高い分散性を実現している。樹脂組成物中においては、当該造核剤内包ベシクルの外膜が部分的に崩壊して造核剤が露出した状態となり、樹脂材料の結晶化過程において、ナノサイズの造核剤粒子を結晶核とする球晶が形成される。
【0048】
この時、特に、超臨界逆相蒸発法によって得られた造核剤内包ベシクルは極めて小さいサイズとされているため、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を極めて小さくすることができるとともに、結晶部の結晶化度を飛躍的に向上させることができる。
【0049】
本発明の化粧シートにおいては、透明樹脂層に対してナノサイズの造核剤、より好ましくは、造核剤内包ベシクルを含有させていることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒径を極めて小径として、優れた耐擦傷性を実現している。特に、造核剤内包ベシクルを含有させることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂中に造核剤を均一に分散させて、結晶性ポリプロピレンの結晶化度をコントロールして当該透明樹脂層の硬度および靭性が最適となるように調整し、引張弾性率が800MPa以上、2000MPa以下、かつ、引張破断伸度が200%以上の優れた耐擦傷性および耐後加工性を実現することができる。
【0050】
以下、簡単に上記説明において用いた用語の説明をする。
【0051】
造核剤とは、樹脂の結晶化時において、結晶核の生成を促進させる、もしくは、造核剤自体を結晶核とするために添加されるものであり、添加時に基材の樹脂に溶融し再度析出して結晶核を生成する溶融型もしくは基材に添加した核剤が溶融することなくそのままの粒径で結晶核となる非溶融型の造核剤がある。ポリプロピレン樹脂の造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルーおよびタルク等が挙げられる。特に、本発明においては、ナノ化処理との効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
【0052】
ヘイズ値とは、物体の一方の面から入射した光が他方の面に出射する場合に、他方の面から出射した光線のすべての積分値(全光線透過率)から他方の面から出射した光線のうち直線成分のみの積分値(直線透過率)を指し引いた値(拡散透過率)を、全光線透過率で除した値を百分率で表した値であり、値が小さいほど透明性が高いことを表す。このヘイズ値は、結晶部における結晶化度や球晶サイズなどの物体の内部の状態によって決まる内部ヘイズと、入射面および出射面の凹凸の有無などの物体の表面の状態によって決まる外部ヘイズとによって決定付けされる。なお、本発明においては、単にヘイズ値と称する場合には、内部ヘイズおよび外部ヘイズとによって決定される値を意味する。
【0053】
引張破断伸度とは、試料を所定の速度で引っ張り、破断した際の伸びを表す値であり、破断時の試料の長さ(L)から試験前の試料の長さ(L0)を引いた値を試験前の試料の長さ(L0)で除した値を百分率で表した値であり、値が小さいほど伸びが悪くV溝曲げ加工などの後加工時に亀裂や白化が生じるため耐後加工性に劣り、値が大きいほどよく伸びて容易に後加工が可能であり耐後加工性に優れていることを示す。
【0054】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C−NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、上記透明樹脂層を構成する樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものであり、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率とは、13C−NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。そして、このようなアイソタクチックペンタッド分率は、主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはアイソタクチックペンタッド分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐擦傷性が向上する。
【0055】
また、本発明の化粧シートにおいては、トップコート層が前記ナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層からなる場合には、ナノサイズの添加剤としての分散剤と、無機微粒子とを含むことが重要である。より好ましくは、当該ナノサイズの添加剤をベシクルの状態(分散剤内包ベシクル)で含有させることである。分散剤は、超臨界逆相蒸発法における外膜のその他の形態にて挙げた分散剤から適宜選択して用いることができるが、ベシクルに内包する物質と外膜に用いられる物質とは異なる物質を用いることが好ましい。無機微粒子は、トップコート層の主成分である樹脂材料100重量部に対して、0.1〜30重量部の割合で配合された状態とされていることが重要であり、0.1重量部未満では耐擦傷性の効果が得られず、30重量部より多いと微粒子による光の散乱作用によって透明性が損なわれたりコストアップが懸念される。なお、本明細書においては、トップコート層を構成する樹脂組成物を調製する際の混合比によって形成後のトップコート層に対する無機微粒子の含有量を特定することとしているが、これは、前記配合量を添加して得られた樹脂組成物から形成されたトップコート層は、完成した化粧シートに対して曲げ加工などの後加工がなされると、その加工の変形に伴って無機微粒子が移動する現象が生じるが、当該無機微粒子の移動はトップコート層の全体に亘って均一に生じるものではなく、例えば、表面付近は樹脂の変形が大きく、それに伴って無機微粒子の移動量も多くなるので、トップコート層内部の無機微粒子の密度と表面付近の無機微粒子の密度とに差異が生じるため、一概に、形成された後のトップコート層について単位体積当たりに含まれる無機微粒子の含有量を特定することは困難とされているためである。また、形成された後のトップコート層中の無機微粒子の含有量を特定する場合、当該トップコート層を構成する樹脂組成物を無機材料と有機材料とに分離し、当該無機材料中に含まれる無機微粒子の含有量を分析する必要があり、この分析を行うためには複数工程の前処理を要するため、形成された後のトップコート層中の無機微粒子の含有量の特定には膨大な時間を要し現実的ではない。
【0056】
また、当該樹脂組成物は、硬化型樹脂からなる樹脂材料を主成分とし、当該硬化型樹脂が、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂の少なくとも一方からなることが好ましく、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂との混合物を用いてもよい。硬化型樹脂の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定するものではない。
【0057】
無機微粒子としては、アルミナ、シリカ、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、ダイヤモンドなどの微粒子が挙げられる。平均粒径が1〜100μmの無機微粒子を用いることができ、特に、1〜30μm程度の無機微粒子が好適である。
【0058】
熱硬化型樹脂としては、2液硬化型のウレタン系のものを用いることが好ましい。ウレタン系の熱硬化型樹脂は、作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。ウレタン系樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートとを反応させて得られるウレタン系のものを用いてもよい。イソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジシソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアメート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体や各種プレポリマーなどの硬化剤より適宜選択して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤を使用することが好ましい。
【0059】
また、光硬化型樹脂としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、アクリルアクリレート系などから適宜選択して用いることができるが、特に、耐候(光)性が良好なウレタンアクリレート系およびアクリルアクリレート系のものを用いることが好ましい。光硬化型樹脂の硬化方法としては、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化することが作業性の観点から好ましい。
【0060】
熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂との混合物については、例えば、熱硬化型樹脂としてのアクリルポリオールとイソシアネートとを反応し得られるウレタン系樹脂と光硬化型樹脂としてのウレタンアクリレート系樹脂とを混合して用いることが好ましく、これによって、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制および無機微粒子との密着性を向上させることができる。
【0061】
このような、ナノサイズの分散剤、より好ましくは、当該ナノサイズの分散剤をベシクルの状態(分散剤内包ベシクル)で含有するトップコート層を具備する化粧シートとすることにより、高い透明性、耐擦傷性および耐後加工性に優れた化粧シートを提供することを可能とする。これは、トップコート層を構成する樹脂組成物中においてナノサイズの分散剤が均一に分散する作用によって、無機微粒子が2次凝集することを防いで当該無機微粒子の高い分散性を実現し、凝集した無機微粒子に起因する透明性の低下や機械的強度の低下が抑制されることで、トップコート層の高い透明性や優れた耐擦傷性および耐後加工性を実現している。さらに、トップコート層を構成する樹脂組成物の主成分を熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂との混合物からなる樹脂材料とすることにより、当該混合物の架橋によって高い耐擦傷性と、最適な柔軟性を備えた耐後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。
【0062】
本発明において備えられている他の層としての原反層(本明細書における「原反層」は、以下同様)としては、意匠性、耐擦傷性および耐後加工性に特化させた化粧シートとする場合には、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などから適宜選択して用いることができる。
【0063】
本発明の化粧シートを不燃材料からなる化粧シートとする場合には、前記ナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層からなる原反層を本発明において備えられている他の層として採用することが好ましく、ナノサイズの添加剤としての分散剤と、無機フィラーとを含むことが重要である。特に、当該ナノサイズの分散剤がベシクルの状態(分散剤内包ベシクル)で含有されていることが好ましい。分散剤は、超臨界逆相蒸発法における外膜のその他の形態にて挙げた分散剤から適宜選択して用いることができるが、分散剤内包ベシクルに内包する物質と外膜に用いられる物質とは異なる物質を用いることが好ましい。無機フィラーは、原反層の主成分であるポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、50〜900重量部の割合で含まれていることが重要である。なお、本明細書においては、原反層を構成する樹脂組成物を調製する際の混合比によって形成後の原反層に対する無機フィラーの含有量を特定することとしているが、これは、前記配合量を添加して得られた樹脂組成物から形成された原反層は、完成した化粧シートに対して曲げ加工などの後加工がなされると、その加工の変形に伴って無機フィラーが移動する現象が生じるが、当該無機フィラーの移動は原反層の全体に亘って均一に生じるものではなく、例えば、表面付近は樹脂の変形が大きく、それに伴って無機フィラーの移動量も多くなるので、原反層内部の無機フィラーの密度と表面付近の無機フィラーの密度とに差異が生じるため、一概に、形成された後の原反層について単位体積当たりに含まれる無機フィラーの含有量を特定することは現実的に困難とされているためである。また、形成された後の原反層中の無機フィラーの含有量を特定する場合、当該原反層を構成する樹脂組成物を無機材料と有機材料とに分離し、当該無機材料中に含まれる無機フィラーの含有量を分析する必要があり、この分析を行うためには複数工程の前処理を要するため、形成された後の原反層中の無機フィラーの含有量の特定には膨大な時間を要し現実的ではない。
【0064】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルクまたは酸化チタン等が挙げられる。なかでも、炭酸カルシウムは製造手法による粒径のコントロールや表面処理によるポリオレフィン樹脂との相溶性の制御が容易であり、また、材料コストとしても安価であるため化粧シートの低廉化の観点からも好適である。
【0065】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどを)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
【0066】
また、本発明において備えられている他の層としての原反層が、一軸延伸シートまたは二軸延伸シートからなることが好ましい。当該原反層においては、特に、超臨界逆相蒸発法により得られた分散剤内包ベシクルを含有させることにより、当該原反層中に無機フィラーを高分散させることに成功している。これにより、当該無機フィラーを高充填した場合においても十分な機械的強度を実現しており、加えて、一軸延伸加工または二軸延伸加工を施した一軸延伸シートまたは二軸延伸シートとすることにより、より一層フィルムとしての機械的強度に優れた原反層とすることができる。また、無機フィラーを高充填した場合には、得られるフィルムの表面に凹凸が生じて平滑性に劣る場合があるが、一軸延伸シートまたは二軸延伸シートとすることにより、フィルム表面の平滑性に優れ、絵柄印刷を施す際のインキの着肉性が良好な印刷適性に優れた原反層とすることができる。
【0067】
ここで、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準においては、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしている必要がある(建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号)。本発明の化粧シートが不燃材料として認定されるためには、不燃性基材と貼り合わせた状態で50kW/m
2の輻射熱による加熱にて20分間の加熱時間において下記の1〜3の要求項目をすべて満たす必要がある。
1.総発熱量が8MJ/m
2以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板または亜鉛メッキ鋼板から選択して用いることができる。
【0068】
そして、本発明において備えられている他の層として前述の原反層を具備する化粧シートは、前記不燃性基材と貼り合わせた状態でのISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、前記施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件をともに満たす不燃材料を実現している。
【0069】
このような、ナノサイズの分散剤、より好ましくは分散剤ベシクルと、無機フィラーとが配合された原反層を本発明において備えられている他の層として具備する化粧シートとすることにより、無機フィラーの高充填を実現して、建築基準法施工令に記載の不燃材料の技術的基準を満たした「不燃材料」としての化粧シートを提供することを可能とする。そして、無機フィラーの高充填を可能とした結果、化粧シートにおける樹脂成分の占める割合を低減化させて、廃棄後の焼却処分時に発生する二酸化炭素の排出量を極めて少なくすることができる。
【0070】
また、特に、超臨界逆相蒸発法により得られた分散剤内包ベシクルを含有させることにより、樹脂組成物内において無機フィラーが凝集することを防いで高分散させることができるので、機械的強度や耐後加工性に優れた化粧シートとすることができる。さらに、原反層を一軸延伸シートまたは二軸延伸シートとすることにより、平滑性を有し、機械的強度の高い原反層とすることができる。
【0071】
以下に、一般的な各種化粧シートの構成を
図1〜3を用いて説明する。
【0072】
図1は、単層化粧シートの一例であり、必要に応じて片面又は両面をコロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等で活性にした透明樹脂層1の一方の面に、絵柄層2および隠蔽層3を設け、当該透明樹脂層1の他方の面に、トップコート層4を設けた構成の化粧シートである。尚、隠蔽層3の基材(上記化粧シートが貼り合わせられる木質ボード類、無機系ボード類、金属板等の基材)に対する接着性に問題があれば、重ねてプライマー層5を適宜設けてもかまわない。また、意匠性を向上させるためにトップコート層4側の透明樹脂層1面にエンボス模様1aを適宜設けてもよい。
【0073】
図1の構成のエンボス模様1aは、透明樹脂層1としての例えば高結晶性ポリプロピレンシートに直接付与されるもので、その方法は製膜された前記シートに熱及び圧力により凹凸模様を有するエンボス版を用いてエンボス模様を付与する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いて冷却と同時にエンボスを設ける方法などがある。ここではエンボス部としてのエンボス模様1aにインキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。
【0074】
高結晶性ポリプロピレンシートよりなる透明樹脂層1のシートの成形方法は特に製膜できればよく、限定されるものでは無いが、押出機を用いる方法が最も一般的である。
【0075】
図1において絵柄層2、隠蔽層3を設ける方法としては、高結晶性ポリプロピレンシートよりなる透明樹脂層1に、直接グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インキジェット印刷などを行う方法がある。
【0076】
また、特に隠蔽層3を施す場合は、コンマコーター、ナイフコーター、リップコーター、金属蒸着あるいはスパッタ法等を用いてもよい。トップコート層4を設ける方法も隠蔽層3や絵柄層2等を設ける方法と同様で何ら規定されるものではない。
【0077】
ここで使用される高結晶性ポリプロピレンシートによる透明樹脂層1には、必要に応じて熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、そして、本発明の特徴を損なわない範囲で着色剤、光散乱剤および艶調整剤などの各種添加剤を添加することもできる。
【0078】
熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。特に、本用途に用いる場合は耐候性を考慮する必要があり、紫外線吸収剤と光安定剤は必須となり、添加量はそれぞれ透明樹脂層1を100重量%として、0.1〜1.0重量%が適量である。
【0079】
絵柄層2にインキを使用する場合は、バインダーとしては、硝化綿、セルロース、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定すればよい。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。
【0080】
中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いてイソシアネートで硬化させる方法である。これらバインダー以外には通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されている。特によく用いられる顔料には、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
【0081】
隠蔽層3に使用される材料も基本的には絵柄層2と同じものでよいが、目的として隠蔽性を持たせる必要があるために、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用する。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。塗布厚みは、2μm以下では隠蔽性を付与しにくく、10μm以上では樹脂層の凝集力が弱くなるため2μm〜10μmが妥当である。
【0082】
トップコート層4に使用される材料も特に規定されるものではないが、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッソ系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルジョン、溶剤系いずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでも良い。中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。
【0083】
イソシアネートにはトリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体や各種プレポリマーなどの硬化剤より適宜選択して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤を使用することが好ましい。
【0084】
化粧シートの表面の硬度をさらに向上させるためには、トップコート層4として紫外線や電子線照射で硬化する樹脂の使用も可能である。さらに耐候性を向上させるために紫外線吸収剤及び光安定剤を適宜添加してもよい。また各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。さらに、表面の意匠性から艶の調整のため、あるいはさらに耐磨耗性を付与するために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の添加も任意に行える。塗布厚みは通常2μm〜10μmが妥当である。
【0085】
プライマー層5に使用される材料も基本的には絵柄層2、隠蔽層3と同じものでよいが、化粧シートの裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させても良い。塗布厚みは基材との密着を確保することが目的であるので、0.1μm〜3.0μmが妥当である。
【0086】
図2には、絵柄の施された各種原反層7と高結晶性ポリプロピレンによる透明樹脂層1との積層タイプの構成の一例を示す。ここで積層方法及び透明樹脂層の層数は任意に選択できる。
【0087】
図2に示す化粧シートは、紙面上部側から順に、トップコート層4、透明樹脂層1、接着剤層6(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄層2、原反層7、プライマー層5と積層されている。
【0088】
ここでトップコート層4やエンボス模様(
図1に示すエンボス模様1a参照)は必要であれば設ければよく、プライマー層5も原反層7がオレフィン系材料のように表面が不活性な場合には必要であるが、表面が活性な基材の場合は特に必要なものではない。
【0089】
また原反層7としてオレフィン系の原反層のような表面が不活性な基材を用いる場合は、原反層7の表裏にコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。さらには原反層7と絵柄層2との間にも密着を確保させるためにプライマー層を設けることもある。また、化粧シートに隠蔽性を付与したい場合には、原反層7として隠蔽性の着色シートを使用しても良いし、隠蔽層3を設けても良い。
【0090】
原反層7としては、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等の紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔等から任意に選定可能である。また、原反層7は透明樹脂層1と同一の樹脂組成物からなるシートであってもかまわない。
【0091】
図2の構成において透明樹脂層1、絵柄層2、トップコート層4、プライマー層5は
図1のそれと同一でよい。
【0092】
接着剤層6は接着方法として任意の材料選定が可能で、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等による積層方法があり、接着剤はアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。通常はその凝集力から2液硬化タイプのものとして、特にイソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが望ましい。
【0093】
積層方法にも特に規制はないが、熱圧を応用した方法、押出ラミネート法及びドライラミネート法等が一般的である。またエンボス模様を施す場合には、一旦各種方法でラミネートしたシートに、後から熱圧によりエンボスを入れる方法、冷却ロールに凹凸模様を設け、押出ラミネートと同時にエンボスを施す方法がある。
【0094】
また、押出しと同時にエンボスを施した透明樹脂層1と原反層7を熱あるいはドライラミネートで貼り合わせる方法等がある。絵柄層2及び接着剤層6を施す位置は、通常通り原反層7側でもよいし、透明樹脂層1側でもよい。
【0095】
さらに、
図2において、トップコート層4側の透明樹脂層1の面にエンボス模様(
図1のエンボス模様1a参照)を施した場合には、このエンボス模様の中にインキを埋め込んで意匠性を向上させることも可能である。
【0096】
図3には
図2とは異なる積層タイプの構成の一例を示す。プライマー層5、原反層7、絵柄層2、透明樹脂層1、トップコート層4、接着剤層6等は
図2と全く同様であるが、異なるところは接着剤層6と透明樹脂層1の間に接着性樹脂層8が設けられているところである。これは、特に押出ラミネート方法でさらなるラミネート強度を求める場合に行うが、透明樹脂層1と接着性樹脂層8との共押出法でラミネートを行う。
【0097】
上記接着性樹脂層8は、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したもので、厚みは接着力向上の目的から2μm以上、また厚すぎると、折角、高結晶性の透明樹脂層1で表面硬度を向上させたにも関わらず、接着性樹脂層8自体の柔らかさの影響を受けるため20μm以下が望ましい。
【0098】
耐候性の面からは、基材としての透明樹脂層1を守るために、前記のようにトップコート層4及び透明樹脂層1に耐候性を施す方法もあり、また、それだけではなく、絵柄層2を守るために接着剤層6に紫外線吸収剤及び光安定剤を添加する方法もある。
【0099】
図2及び
図3に示した積層タイプの各層の厚みは、原反層7としては、印刷作業性、コストを考慮して30μm〜150μm、透明樹脂層1としては、意匠性、後加工性、コストを考慮して20μm〜250μm、より好ましくは30μm〜150μmにすることが望ましいが、積層品としての化粧シートの総厚みは、80μm〜250μmの範囲にすることが必要である。
【0100】
本発明の化粧シートの実施形態は、上記の
図1〜
図3に示す化粧シートについて、下記の実施形態1乃至実施形態6に挙げる態様がある。
実施形態1:
図1〜
図3の化粧シートについて、透明樹脂層1に上述のナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層を適用した形態
実施形態2:
図1〜
図3の化粧シートについて、トップコート層4に上述のナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層を適用した形態
実施形態3:
図1〜
図3の化粧シートについて、トップコート層4および透明樹脂層1に上述のナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層を適用した形態
実施形態4:
図2および
図3の化粧シートについて、原反層7に上述のナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層を適用した形態
実施形態5:
図2および
図3の化粧シートについて、原反層7および透明樹脂層1に上述のナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層を適用した形態
実施形態6:
図2および
図3の化粧シートについて、透明樹脂層1、トップコート層4および原反層7に上述のナノサイズの添加剤が含まれた樹脂層を適用した形態
【0101】
実施形態1乃至実施形態3の化粧シートによれば、化粧シートのトップコート層4および透明樹脂層1からなる透明層の透明性、化粧シートの表面における耐擦傷性および耐後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。なお、原反層7の材質については、特に限定するものではない。
【0102】
実施形態4および実施形態5の化粧シートによれば、不燃材料からなる化粧シートを提供することができる。
【0103】
実施形態6の化粧シートによれば、透明層の透明性、化粧シート表面の耐擦傷性および耐後加工性に優れるとともに、不燃材料からなる化粧シートを提供することができる。
【0104】
以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施例について検討する。
【0105】
<実施例1>
実施例1においては、
図1の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、固相法によりナノ化処理した2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.5%となった。
【0106】
得られた透明樹脂シートによる透明樹脂層1の片面に、2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を行い、絵柄層2を施した後、該絵柄層2に重ねて隠蔽性のある2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)を塗布量6g/m
2 にて塗布して隠蔽層3を施した。
【0107】
また、この隠蔽層3に重ねて、プライマーコートとして2液硬化型ウレタンインキ(PET−E、レジウサー:大日精化(株)製)を塗布量1g/m
2にて塗布してプライマー層5を形成した。
【0108】
次に、このシートの透明樹脂シートによる透明樹脂層1面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した後、そのエンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/m
2にて塗布して、
図1に示す総厚110μmの化粧シートを得た。
【0109】
<実施例2>
実施例2においては、
図2の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、晶析法によりナノ化処理した2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は6.8%となった。
【0110】
他方、隠蔽性のある70μmの原反層7に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄層2を施し、また、その原反層7の裏面にプライマーコートを施してプライマー層5を設けた。しかる後、前記原反層7の絵柄層2面に、高結晶性ポリプロピレン製の前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1をドライラミネート用接着剤(タケラックA540:武田薬品工業製;塗布量2g/m
2)による接着層6を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。次に貼り合わせたシートの前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した後、そのエンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/m
2にて塗布して、
図2に示す総厚154μmの化粧シートを得た。
【0111】
<実施例3>
実施例3においては、
図3の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、隠蔽性のある70μmの原反層7に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄層2を施し、また、その原反層7の裏面にプライマーコートを施してプライマー層5を設けた。
【0112】
他方、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、晶析法によりナノ化処理した2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムを1000PPMとを添加した樹脂を、ポリエチレン系の易接着性樹脂と共に溶融押出機を用いて共押出しして、透明樹脂層1として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートと接着性樹脂層8とを製膜し、前記接着性樹脂層8を介して前記原反層7の絵柄層2面と高結晶性ポリプロピレン製の前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1とをエクストルージョンラミネート法により貼り合わせた。なお、共押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.3%となった。
【0113】
次に貼り合わせたシートの前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した後、そのエンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/m
2にて塗布して、
図3に示す総厚155μmの化粧シートを得た。
【0114】
<比較例1>
上記実施例1において、ナノ化処理を施していない2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム1000PPMを添加した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを得た。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、成膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は18.3%となった。
【0115】
<比較例2>
上記実施例2において、ナノ化処理を施していない2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム1000PPMを添加した添加した以外は、実施例2と同様の方法で化粧シートを得た。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、成膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は17.1%となった。
【0116】
<比較例3>
上記実施例1において、造核剤を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを得た。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、成膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は1.8%となった。
【0117】
上記実施例1〜3及び上記比較例1〜3で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、鉛筆硬度試験にて表面硬度を判定し、V溝曲げ加工試験にてV溝曲げ加工適性の有無を判定し、それぞれ評価した。その評価結果を下記表1に示した。なお、V溝曲げ加工試験は、加工機や加工時の環境に左右されないように低温による高速折り曲げ条件にて実施した。表1における「Vカット」の項目の記号の説明は下記の通りである。
○:V溝曲げ加工適性に優れていた
×:クラックが発生した
【0118】
なお、表1は、先の出願である特願2014−228856号の明細書に記載の表1に相当する表であり、本明細書における実施例1〜3は当該先の出願の実施例1〜3に相当し、本明細書における比較例1〜3は当該先の出願の比較例1〜3に相当するものである。
【0120】
表1から明らかなように、本発明のナノ化処理した造核剤を添加した高結晶性ポリプロピレンを使用した実施例1〜3による化粧シートは、従来の比較例1および比較例2による化粧シートに比べて、高い透明性を有し、耐擦傷性およびV溝曲げ加工適性に優れた化粧シートと言える。また、比較例3による化粧シートは、高い透明性を有しているものの、耐擦傷性に大きく劣る結果となった。
【0121】
<実施例4>
<超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のナノ化処理>
まず、本実施例における超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のナノ化処理方法は、メタノール100重量部、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−11、ADEKA社製)82重量部、ホスファチジルコリン5重量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入する。容器内の温度および圧力を保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによって造核剤が内包されたリン脂質からなる外膜を具備する造核剤内包ベシクルを得る。
【0122】
本発明の化粧シートの実施例4においては、
図1の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、前述の超臨界逆相蒸発法によって造核剤内包ベシクル化したリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)を1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.5%となった。
【0123】
得られた透明樹脂シートによる透明樹脂層1の片面に、2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を行い、絵柄層2を施した後、該絵柄層2に重ねて隠蔽性のある2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)を塗布量6g/m
2にて塗布して隠蔽層3を施した。
【0124】
また、この隠蔽層3に重ねて、プライマーコートとして2液硬化型ウレタンインキ(PET−E、レジウサー:大日精化(株)製)を塗布量1g/m
2にて塗布してプライマー層5を形成した。
【0125】
次に、このシートの透明樹脂シートによる透明樹脂層1面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した後、そのエンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/m
2にて塗布して、
図1に示す総厚110μmの化粧シートを得た。
【0126】
<実施例5>
実施例5においては、
図2の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、前述の超臨界逆相蒸発法によって造核剤内包ベシクル化したリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)を1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜し、続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は6.8%となった。
【0127】
他方、隠蔽性のある70μmの原反層7に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄層2を施し、また、その原反層7の裏面にプライマーコートを施してプライマー層5を設けた。しかる後、前記原反層7の絵柄層2面に、高結晶性ポリプロピレン製の前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1をドライラミネート用接着剤(タケラックA540:武田薬品工業製;塗布量2g/m
2)による接着層6を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。次に貼り合わせたシートの前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した後、そのエンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/m
2にて塗布して、
図2に示す総厚154μmの化粧シートを得た。
【0128】
<実施例6>
実施例6においては、
図3の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、隠蔽性のある70μmの原反層7に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を施して絵柄層2を施し、また、その原反層7の裏面にプライマーコートを施してプライマー層5を設けた。
【0129】
他方、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、前述の超臨界逆相蒸発法によって造核剤内包ベシクル化したリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)を1000PPMとを添加した樹脂を、ポリエチレン系の易接着性樹脂と共に溶融押出機を用いて共押出しして、透明樹脂層1として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートと接着性樹脂層8とを製膜し、前記接着性樹脂層8を介して前記原反層7の絵柄層2面と高結晶性ポリプロピレン製の前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1とをエクストルージョンラミネート法により貼り合わせた。なお、共押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.3%となった。
【0130】
次に貼り合わせたシートの前記透明樹脂シートによる透明樹脂層1の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した後、そのエンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/m
2にて塗布して、
図3に示す総厚155μmの化粧シートを得た。
【0131】
<比較例4>
上記実施例4において、ナノ化処理を施していないリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)を1000PPMを添加した以外は、実施例4と同様の方法で化粧シートを得た。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、成膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は18.3%となった。
【0132】
<比較例5>
上記実施例5において、イソプロピルアルコールとリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)の混合物をビーズミルで60分間、30μmの安定化ジルコニアビーズを用いて、固相法によりナノ化処理を施したリン酸エステル金属塩系添加剤1000PPMとを添加した以外は、実施例5と同様の方法で化粧シートを得た。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、成膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は17.1%となった。
【0133】
<比較例6>
上記実施例4において、造核剤を添加しない以外は、実施例4と同様の方法で化粧シートを得た。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、成膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は1.8%となった。
【0134】
上記実施例4〜6及び上記比較例4〜6で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、鉛筆硬度試験にて表面硬度を判定し、V溝曲げ加工試験にてV溝曲げ加工適性の有無を判定し、それぞれ評価した。その評価結果を下記表2に示した。なお、V溝曲げ加工試験は、加工機や加工時の環境に左右されないように低温による高速折り曲げ条件にて実施した。表2における「Vカット」の項目の記号の説明は下記の通りである。
○:V溝曲げ加工適性に優れていた
×:クラックが発生した
【0135】
なお、表2は、先の出願である特願2014−228857号の明細書に記載の表1に相当する表であり、本明細書における実施例4〜6は当該先の出願の実施例1〜3に相当し、本明細書における比較例4〜6は当該先の出願の比較例1〜3に相当するものである。
【0137】
表2から明らかなように、本発明の超臨界逆相蒸発法を用いて造核剤内包ベシクル化した造核剤を添加した高結晶性ポリプロピレンを使用した実施例4〜6による化粧シートは、従来の比較例4および比較例5による化粧シートに比べて、高い透明性を有し、耐擦傷性およびV溝曲げ加工適性に優れた化粧シートと言える。また、比較例6による化粧シートは、高い透明性を有しているものの、耐擦傷性に大きく劣る結果となった。
【0138】
<実施例7>
実施例7においては、
図2の構成における実施形態3の化粧シートを作製した。具体的には、前記造核剤内包ベシクルを添加した透明樹脂層1の表面に対して、前記分散剤内包ベシクルを0.5重量部と無機微粒子を5重量部とを光硬化型樹脂に添加したトップコート層4を形成した化粧シートとした。
【0139】
<超臨界逆相蒸発法により分散剤を内包した分散剤内包ベシクルの調製>
まず、以下に超臨界逆相蒸発法により分散剤内包ベシクル化された分散剤の詳しい調製方法を説明する。まず、メタノール100重量部、分散剤としての3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン70重量部、分散剤内包ベシクルの外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5重量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とする。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100重量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながらさらに15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことで分散剤を内包したリン脂質からなる外膜を具備する分散剤内包ベシクルが得られる。
【0140】
<透明樹脂層1を構成する樹脂組成物の調製>
以下に、超臨界逆相蒸発法により造核剤内包ベシクル化された造核剤を添加した透明樹脂層1の樹脂組成物の詳しい調製方法を説明する。まず、超臨界逆相蒸発法による造核剤の造核剤内包ベシクル化方法は、メタノール100重量部、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−11、ADEKA社製)82重量部、ホスファチジルコリン5重量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入する。容器内の温度および圧力を超臨界状態に保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによって造核剤を内包したリン脂質からなる外膜を具備する造核剤内包ベシクルを得る。実際に透明樹脂層1としての透明樹脂シートを形成する際には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、前述の造核剤内包ベシクルを1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを得る。
【0141】
上述の透明樹脂層1を構成する樹脂組成物を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしての透明樹脂シートを製膜し、得られた透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、透明樹脂シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。他方、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシート(原反層7)の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5重量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄層2を設け、また、前記原反層7の他方の面にプライマー層5を設けた。しかる後、前記原反層7の一方の面側に、接着性樹脂層8としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学工業(株)製;塗布量2g/m
2)を介して透明樹脂シートをドライラミネート法にて貼り合わせた。そして、透明樹脂シートの表面にエンボス模様1aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、前述の分散剤内包ベシクル0.5重量部、無機微粒子としての粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)5重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成し、総厚167μmの
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0142】
<実施例8>
実施例8においては、
図2の構成における実施形態3の化粧シートを作製した。具体的には、前記造核剤内包ベシクルを添加した透明樹脂層1の表面に対して、前記分散剤内包ベシクルを0.5重量部と無機微粒子を5重量部とを光硬化型樹脂および熱硬化型樹脂の混合樹脂に添加したトップコート層4を形成した化粧シートとした。
【0143】
実施例7において、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)を60重量部、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を40重量部、前記分散剤内包ベシクル0.5重量部、無機微粒子としての粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)5重量部を配合してなるインキを用いてトップコート層4を形成し、
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0144】
<実施例9>
実施例9においては、
図2の構成における実施形態2の化粧シートを作製した。具体的には、前記造核剤内包ベシクルを添加しない透明樹脂層1の表面に対して、前記分散剤内包ベシクルを0.5重量部と無機微粒子を5重量部とを光硬化型樹脂に添加したトップコート層4を形成した化粧シートとした。
【0145】
実施例7において、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500ppmと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000ppmと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000ppmとを添加した樹脂を用いて透明樹脂層1を形成し、
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0146】
<比較例7>
比較例7においては、前記造核剤内包ベシクルを添加した透明樹脂層1の表面に対して、ナノ化処理を施していない分散剤を0.5重量部と無機微粒子を5重量部とを光硬化型樹脂に添加したトップコート層4を形成した化粧シートとした。
【0147】
具体的には、実施例7において、原反層7の一方の面側に、接着剤層6としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学工業(株)製;塗布量2g/m
2)を介して透明樹脂層1をドライラミネート法にて貼り合わせ、透明樹脂層1の表面にエンボス模様1aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、ナノ化処理を施していない分散剤としての3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−502;信越シリコーン)0.5重量部、無機微粒子としての粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)5重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成して
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0148】
<比較例8>
比較例8においては、前記造核剤内包ベシクルを添加した透明樹脂層1の表面に対して、前記分散剤内包ベシクルを0.5重量部と無機微粒子を0.05重量部とを光硬化型樹脂に添加したトップコート層4を形成した化粧シートとした。
【0149】
具体的には、実施例7において、透明樹脂層1の表面にエンボス模様1aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、前述の分散剤内包ベシクル0.5重量部、無機微粒子としての粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)0.05重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成して
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0150】
<比較例9>
比較例9においては、前記造核剤内包ベシクルを添加した透明樹脂層1の表面に対して、前記分散剤内包ベシクルを0.5重量部と無機微粒子を40重量部とを光硬化型樹脂に添加したトップコート層4を形成した化粧シートとした。
【0151】
具体的には、実施例7において、透明樹脂層1の表面にエンボス模様1aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、前述の分散剤内包ベシクル0.5重量部、無機微粒子としての粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)40重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成して
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0152】
上記実施例7〜9および上記比較例7〜9で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、目視にて表面の透明性、ホフマンスクラッチ試験およびスチールウールラビング試験にて表面硬度、V溝曲げ加工試験にてV溝曲げ加工適性を判定し、それぞれ評価を行った。得られた評価結果を表3に示す。
【0153】
なお、表3は、先の出願である特願2015−045763号の明細書に記載の表1に相当する表であり、本明細書における実施例7〜9は当該先の出願の実施例1〜3に相当し、本明細書における比較例7〜9は当該先の出願の比較例1〜3に相当するものである。
【0155】
実施例7〜9の化粧シートにおいては、表3に示すように、透明性が良好であるとともに、スチールウール試験およびホフマンスクラッチ試験においても良好な結果が得られた。これは、トップコート層4に添加した分散剤が、本発明の超臨界逆相蒸発法を用いてベシクル化処理を施しているため当該分散剤がトップコート層4の樹脂組成物中において高い分散性を有し、その結果、前記シリカ微粒子をも均一に分散させることができるために良好な透明性を備えることを可能としているとともに、シリカ微粒子の分散性に優れるため、トップコート層4を構成する樹脂組成物の主成分である樹脂材料との密着性が高く、シリカ微粒子が表面に固定化して硬度が上がり、耐擦傷性の向上につながったと考えられる。
【0156】
一方で、比較例7および比較例9で得られた化粧シートは、実施例7〜9の化粧シートと比較して、透明性が劣るという結果が得られた。この理由としては、比較例7においては、分散剤に対してナノ化処理を施していないために十分な分散性が得られなかったためであり、比較例9においては、トップコート層4に添加されたシリカ微粒子の添加量が多すぎるために2次凝集が生じ、分散性が低くなってしまったためであると考えられる。
【0157】
また、比較例8の化粧シートは、スチールウール試験およびホフマンスクラッチ試験において、実施例7〜9の化粧シートと比較して表面硬度(耐擦傷性)に劣るという結果が得られた。この理由としては、シリカ微粒子の添加量が少なく、耐傷性改善効果が得られていないためであると考えられる。
【0158】
また、実施例7〜9および比較例8で得られた化粧シートは、V溝曲げ加工適性が良好であるという結果が得られた。特に実施例8において良好であり、トップコート層4を光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物とすることで、より柔軟性を付与できているためであると考えられる。
【0159】
表3から明らかなように、本発明の超臨界逆相蒸発法を用いてナノ化処理を施した分散剤内包ベシクルを添加した硬化型樹脂をトップコート層4に使用した実施例7〜9による化粧シートは、従来の比較例7による化粧シートに比べて、高い透明性を有し、耐擦傷性およびV溝曲げ加工適性に優れた化粧シートと言える。また、実施例7〜9による化粧シートは、比較例8および比較例9による化粧シートに比べて、透明性あるいは耐擦傷性に優れた化粧シートであるといえる。
【0160】
<実施例10>
実施例10においては、
図2の構成における実施形態4の化粧シートを作製した。具体的には、分散剤として12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、無機フィラーとして炭酸カルシウムを用いた原反層7を具備し、透明樹脂層1を具備する化粧シートの具体的な態様について説明する。
【0161】
まずは、分散剤内包ベシクルの具体的な調製方法手順について説明する。分散剤内包ベシクルの調製は、60℃に保たれた高圧ステンレス容器にメタノールを100重量部、分散剤を70重量部、リン脂質としてのホスファチジルコリン5重量部の割合で入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入し、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻し、超臨界逆相蒸発法によりリン脂質からなる外膜を具備する分散剤内包ベシクルを得た。
【0162】
アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
【0163】
他方、上記方法によって得られた分散剤としての12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを内包した分散剤内包ベシクル40重量部と、無機フィラーとしての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)100重量部とを、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。この熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いたカレンダー成形法により膜厚70μmの原反層7としての原反シートを製膜した。当該原反シートに2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を施して絵柄層2を形成し、また、その原反シートの裏面にプライマーコートを施してプライマー層5を形成した。しかる後、原反シートの絵柄層2側に対して、上記の透明樹脂シートによる透明樹脂層1をドライラミネート用接着剤(タケラックA540:三井化学工業製;塗布量2g/m
2)による接着剤層6を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。次に貼り合わせたシートの透明樹脂層1の上面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:DICグラフィックス社製)を塗布量3g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成して
図2に示す総厚154μmの化粧シートを得た。
【0164】
<実施例11>
実施例11においては、実施形態4のうちにおいて透明樹脂層を具備しない化粧シートを作製した。具体的には、分散剤として12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、無機フィラーとして炭酸カルシウムを用いた原反層7を具備している化粧シートの具体的な態様について説明する。
【0165】
実施例10に記載の方法によって得られた分散剤としての12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを内包した分散剤内包ベシクル40重量部と、無機フィラーとしての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)100重量部とを、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。この熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いたカレンダー成形法により膜厚90μmの原反層7としての原反シートを製膜した。当該原反シートに2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を施して絵柄層2を形成し、また、その原反シートの裏面にプライマーコートを施してプライマー層5を形成した。そして、前記絵柄層2上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:DICグラフィックス社製)を塗布量3g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成して
図4に示す総厚94μmの化粧シートを得た。
【0166】
<実施例12>
実施例12においては、
図3の構成における実施形態4の化粧シートを作製した。具体的には、分散剤としてビニルトリエトキシシランを用いた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとしての炭酸カルシウムとを配合した原反層7を具備し、透明樹脂層1を具備する化粧シートの具体的な態様について説明する。
【0167】
透明樹脂層1として使用する高結晶性ポリプロピレン樹脂製の透明樹脂シートは実施例10と同様のものを使用する。まず、実施例10に記載の方法によって得られた分散剤としてのビニルトリエトキシシランを内包した分散剤内包ベシクル4重量部と、無機フィラーとしての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000(仮))200重量部とを、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。この熱可塑性樹脂組成物のペレットを単軸押出機による溶融製膜にてTダイより押出し、インラインにて延伸倍率4倍に一軸延伸を実施して膜厚50μmの原反層7として使用する原反シートを得た。当該原反シートに2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を施して絵柄層2を形成し、また、当該原反シートの裏面にプライマーコートを施してプライマー層5を設けた。そして、原反シートと透明樹脂シートとをエクストルージョンラミネート法により貼り合わせるとともに、透明樹脂層1の上面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:DICグラフィックス社製)を塗布量3g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成して
図3に示す総厚135μmの化粧シートを得た。
【0168】
<比較例10>
比較例10においては、分散剤を添加せずに、無機フィラーとしての炭酸カルシウムを添加した化粧シートとした。具体的な作製方法を以下に説明する。なお、透明樹脂層1は実施例10と同じものを用いる。
【0169】
無機フィラーとしての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000(仮))100重量部を、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。この熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いたカレンダー成形法により膜厚70μmの原反層7としての原反シートを製膜した。以下の工程に関しては、実施例10と同様の加工により化粧シートを得た。
【0170】
<比較例11>
比較例11においては、分散剤および無機フィラーを添加せずに作製した化粧シートとした。なお、透明樹脂層1は、実施例10と同じものを用いる。
【0171】
高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))を用いたカレンダー成形法により膜厚70μmの原反層7としての原反シートを製膜した。以下の工程に関しては、実施例10と同様の加工により化粧シートを得た。
【0172】
上記実施例10〜12および上記比較例10,11で得られた各々化粧シートについて、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験および引張試験を実施した結果を表4に示す。
【0173】
なお、表4は、先の出願である特願2014−256197号の明細書に記載の表1に相当する表であり、本明細書における実施例10〜12は当該先の出願の実施例1〜3に相当し、本明細書における比較例10および比較例11は当該先の出願の比較例1および比較例2に相当するものである。
【0175】
各試験を実施した結果から、表4に示すように、本発明の超臨界逆相蒸発法により分散剤内包ベシクル化された分散剤(分散剤内包ベシクル)と無機フィラーとを添加した原反層7を本発明において備えられている他の層として採用した実施例10〜12における化粧シートは、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準を満たしている「不燃材料」であることが明らかとなった。無機フィラーを添加した比較例10については、不燃材料の技術的基準を満たす「不燃材料」であったが、無機フィラーを添加していない比較例11については、総発熱量が8.9MJ/m
2となり不燃材料の技術的基準を満たしていなかった。
【0176】
また、実施例10〜12における化粧シートは、いずれの化粧シートにおいても引張弾性率が500MPa以上、2000MPa以下、引張破断伸度が200%以上を達成しており、化粧シートに求められる機械的強度を備えた耐後加工性に優れた化粧シートであることが明らかとなった。分散剤を添加せずに無機フィラーのみを添加した比較例10については、引張破断伸度が75%と非常に小さく、化粧シートに求められる機械的強度を有していなかった。分散剤および無機フィラーを添加しなかった比較例2については、化粧シートに求められる機械的強度を有していた。
【0177】
以上の結果から、実施例10〜12における化粧シートは、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準を満たす「不燃材料」であるとともに、化粧シートに要求される機械的強度を備えた耐後加工性に優れた化粧シートであると言える。
【0178】
<実施例13>
実施例13においては、
図3の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、超臨界逆相蒸発法により得られた造核剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層1を具備する化粧シートである。
【0179】
まず、本実施例において用いた造核剤内包ベシクルの調製方法について説明する。造核剤としては、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)を用いた。造核剤内包ベシクルは、60℃に保たれた高圧ステンレス容器にメタノールを35.5重量%、造核剤を27重量%、リン脂質としてのホスファチジルコリン2重量%の割合で入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を35.5重量%注入し、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻して造核剤内包ベシクルを得た。
【0180】
化粧シートは、実施例7において説明した透明樹脂層1と原反層2とをドライラミネート法により貼り合わせる方法により作製した。なお、透明樹脂層1の製膜時においては、冷却条件を調整することにより、表5に示すヘイズ値を有する透明樹脂層1とした。
【0181】
得られた各化粧シートについて、ヘイズ値の測定、引張弾性率、引張破断伸度強度の測定、鉛筆硬度試験にて表面硬度の測定、V溝曲げ加工試験による耐後加工性の評価を行った。得られた評価結果を表5に示す。なお、表5においては、暗色のマスキングが施されている部分が本発明の化粧シートに該当するものであり、明色のマスキング部分は比較例を示すものである。
【0182】
以下に、各評価試験の試験方法を簡単に説明する。
<ヘイズ値測定試験>
ここで、ヘイズ値とは、物体の一方の面から入射した光が他方の面に出射する場合に、他方の面から出射した光線のすべての積分値(全光線透過率)から他方の面から出射した光線のうち直線成分のみの積分値(直線透過率)を指し引いた値(拡散透過率)を、全光線透過率で除した値を百分率で表した値であり、値が小さいほど透明性が高いことを表す。このヘイズ値は、結晶部における結晶化度や球晶サイズなどの物体の内部の状態によって決まる内部ヘイズと、入射面および出射面の凹凸の有無などの物体の表面の状態によって決まる外部ヘイズとによって決定付けされる。なお、本発明においては、単にヘイズ値と称する場合には、内部ヘイズおよび外部ヘイズとによって決定される値を意味する。本実施例においては、ヘイズ値測定試験は、ヘイズ値測定試験器(日本電色社製;NDH2000)を用いて、各透明樹脂シートについて行った。予め、サンプルホルダーに何も取り付けない状態でブランク測定を行っておく。各透明樹脂シートの測定においては、サンプルホルダーにサンプルを取り付けてブランク測定と同じ条件でサンプル透過測定を行い、サンプル透過測定とブランク測定との比を百分率で表したものをヘイズ値として算出した。
【0183】
<引張弾性率および引張破断伸度の測定方法>
得られた化粧シートについてJISK−7127−4に準じたスーパーダンベルカッター(ダンベル社製)を用いて引張試験用の試験片を作製する。得られた試験片を、引張試験機(テンシロン社製)にセットし、引張り速度50mm/分にて引張り、試験片が切れる直前の長さと、試験前の長さとの比から引張破断伸度を算出する。さらに、当該試験において得られた応力−歪曲線の応力と歪とが比例関係になる弾性領域における傾きから引張弾性率を算出した。
【0184】
<鉛筆硬度試験>
鉛筆硬度試験においては、2B、B、HB、F、H、2H、3Hの鉛筆を用い、化粧シートに対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、当該鉛筆に1kgの荷重を付加した状態でスライドさせて化粧シートに傷が形成されるか否かの判定を行う(旧JIS規格 JISK5400に準拠)。硬度が低い鉛筆から行い、引っ掻き傷が形成された硬度を化粧シートの表面硬度として示す。
【0185】
<V溝曲げ加工適性試験>
V溝曲げ加工適性試験においては、基材としての中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法により得られた各化粧シートをウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材の他方の面に対して、反対側の化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を基材と化粧シートとを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シートの面が山折りとなるように基材Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シートの表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、耐後加工性の優劣の評価を行う。表5においては、「Vカット」の項目にて示し、評価は下記の2段階にて行った。
○:白化・亀裂などが認められなかった
×:化粧シートとして容認できない白化・亀裂が認められた
【0187】
表5から明らかなように、ヘイズ値が13%以下、引張弾性率が800〜2000MPaの範囲内であって、引張破断伸度が250%以上の透明樹脂層1を具備する化粧シートとすることにより、優れた表面硬度と耐後加工性を備えた化粧シートが得られる。超臨界逆相蒸発法により得られた造核剤内包ベシクルを含むものの、ヘイズ値、引張弾性率および引張破断伸度が本発明の範囲内とされていない透明樹脂層1を具備する化粧シートについては、化粧シートに要求される耐後加工性を備えていなかった。
【0188】
<実施例14>
実施例14においては、
図3の構成における実施形態1の化粧シートを作製した。具体的には、エクストルージョン法により得られた造核剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層1を具備する化粧シートである。
【0189】
まず、本実施例において用いた造核剤内包ベシクルの調製方法について説明する。造核剤としては、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)を用いた。調製方法としては、蒸留水100重量部、造核剤0.7重量部、造核剤内包ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン0.05重量部を混合したリン脂質懸濁液をガラスシリンジに入れ、当該ガラスシリンジを任意の孔径のメンブレンフィルターを挟んだエクストルーダーの両側にセットする。このエクストルーダーを任意の温度下にて、両側にセットしたガラスシリンジのシリンジを交互に動作させて、任意の回数についてメンブレンフィルターを通過させて前記造核剤を内包する造核剤内包ベシクルを得た。
【0190】
化粧シートは、実施例7において説明した透明樹脂層1と原反層2とをドライラミネート法により貼り合わせる方法により作製した。なお、透明樹脂層1の製膜時においては、冷却条件を調整することにより、表6に示すヘイズ値を有する透明樹脂層1とした。
【0191】
得られた各化粧シートについて、ヘイズ値の測定、引張弾性率、引張破断伸度の測定、鉛筆硬度試験にて表面硬度の測定、V溝曲げ加工試験による耐後加工性の評価を行った。得られた評価結果を表6に示す。なお、表6においては、暗色のマスキングが施されている部分が本発明の化粧シートに該当するものであり、明色のマスキング部分は比較例を示すものである。評価方法の具体的な方法および表に記載の記号の説明は実施例13と同じである。
【0193】
表6から明らかなように、ヘイズ値が15%以下、引張弾性率が800〜2000MPaの範囲内であって、引張破断伸度が200%以上の透明樹脂層1を具備する化粧シートとすることにより、優れた表面硬度と耐後加工性を備えた化粧シートが得られる。造核剤内包ベシクルを含むものの、ヘイズ値、引張弾性率および引張破断伸度が本発明の範囲内とされていない透明樹脂層1を具備する化粧シートについては、化粧シートに要求される耐後加工性を備えていなかった。なお、ナノ化処理を施していない造核剤を含む透明樹脂層1を用いた化粧シートについては、化粧シートに要求される、耐後加工性、意匠性および表面硬度を有していなかった。
【0194】
<実施例15>
実施例15においては、
図2の構成における実施形態2および実施形態3の化粧シートを作製した。具体的には、超臨界逆相蒸発法により得られた分散剤内包ベシクルと、無機微粒子とを含有するトップコート層4を具備する化粧シートである。また、実施形態3の形態の化粧シートにおいては、超臨界逆相蒸発法により得られた造核剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層1をさらに具備する。
【0195】
まず、本実施例において用いた分散剤内包ベシクルの調製方法について説明する。分散剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランまたは12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを用いた。分散剤内包ベシクルは、60℃に保たれた高圧ステンレス容器にメタノールを35.5重量%、分散剤を27重量%、リン脂質としてのホスファチジルコリン2重量%の割合で入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を35.5重量%注入し、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻して分散剤内包ベシクルを得た。造核剤内包ベシクルは、実施例13に記載の方法によって得た。
【0196】
化粧シートは、実施例9と同様の方法により作製した。なお、表7におけるヘイズ値は、透明樹脂層1にトップコート層4を積層した透明層について測定した結果である。原反層7の材料は特に限定するものではないが、本実施例においてはポリオレフィン系樹脂を用いて作製した。また、光硬化型樹脂としては(表7における「光」の項目)、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)を用い、熱硬化型樹脂としては(表7における「熱」の項目)、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を用いた。光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物としては(表7における「光/熱」の項目)、前記熱硬化型樹脂を60重量部、前記熱硬化型樹脂を40重量部の割合で混合したものを用いた。
【0197】
上記の方法にて得られた化粧シートについて、ヘイズ値の測定、スチールウールラビング試験およびホフマンスクラッチ試験にて表面硬度の評価、V溝曲げ加工試験にて耐後加工性の評価を行い得られた結果を表7に示す。各評価試験の試験方法を簡単に説明する。ヘイズ値の測定およびV溝曲げ加工試験の方法は、実施例13にて説明したので割愛する。V溝曲げ加工試験の評価結果は、「Vカット」の項目に示す。なお、表7においては、暗色のマスキングが施されている部分が本発明の化粧シートに該当するものであり、明色のマスキング部分は比較例を示すものである。
【0198】
<スチールウールラビング試験>
スチールウールラビング試験は、木質基材に貼り合せた各化粧シートの表面に対し、スチールウールを当接させた状態で治具を用いて固定し、当該治具に500gの荷重をかけたまま一定の速度で、距離50mm、50往復の条件にて擦らせて、化粧シートの表面の傷つきの有無を目視にて判定した。スチールウールは、ボンスター#0(日本スチールウール(株)製)を丸めて使用した。
<ホフマンスクラッチ試験>
ホフマンスクラッチ試験は、ホフマンスクラッチハードネステスター(BYK−Gardner社製)を用いて、1200gの荷重にて、木質基材に貼り合せた各化粧シートの表面を一定の速度で引っ掻き、化粧シートの表面の傷つきの有無を目視にて判定した。なお、表7の記号の説明は下記の通りである。
◎:非常に良好な透明性、耐擦傷性または耐後加工性を有する
○:良好な透明性、耐擦傷性または耐後加工性を有する
×:透明性、耐擦傷性または耐後加工性に劣る
【0200】
表7から明らかなように、超臨界逆相蒸発法により得られた分散剤内包ベシクルと、無機微粒子0.1〜30重量部とを配合し、ヘイズ値が13%以下とされたトップコート層4を具備する実施形態2および実施形態3の化粧シートとすることにより、優れた耐擦傷性および耐後加工性を備えた化粧シートが得られる。また、実施形態3の態様の化粧シートにおいては、超臨界逆相蒸発法により得られた造核剤内包ベシクルを含む透明樹脂層1を用いることにより、より優れた耐擦傷性および耐後加工性を実現できることがわかる。
【0201】
<実施例16>
施例16においては、
図2の構成における実施形態2および実施形態3の化粧シートを作製した。具体的には、エクストル−ジョン法により得られた分散剤内包ベシクルと、無機微粒子とを含有するトップコート層4を具備する化粧シートである。また、実施形態3の形態の化粧シートにおいては、エクストルージョン法により得られた造核剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層1をさらに具備する。
【0202】
まず、本実施例において用いた分散剤内包ベシクルの調製方法について説明する。分散剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランまたは12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを用いた。分散剤内包ベシクルは、蒸留水100重量部、分散剤0.7重量部、分散剤内包ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン0.05重量部を混合したリン脂質懸濁液をガラスシリンジに入れ、当該ガラスシリンジを任意の孔径のメンブレンフィルターを挟んだエクストルーダーの両側にセットする。このエクストルーダーを任意の温度下にて、両側にセットしたガラスシリンジのシリンジを交互に動作させて、任意の回数についてメンブレンフィルターを通過させて分散剤内包ベシクルを得た。造核剤内包ベシクルは、実施例14に記載の方法によって得た。
【0203】
化粧シートは、実施例9と同様の方法により作製した。なお、表8におけるヘイズ値は、透明樹脂層1にトップコート層4を積層した透明層について測定した結果である。原反層7の材料は特に限定するものではないが、本実施例においてはポリオレフィン系樹脂を用いて作製した。また、光硬化型樹脂としては(表8における「光」の項目)、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)を用い、熱硬化型樹脂としては(表8における「熱」の項目)、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を用いた。光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物としては(表8における「光/熱」の項目)、前記熱硬化型樹脂を60重量部、前記熱硬化型樹脂を40重量部の割合で混合したものを用いた。
【0204】
上記の方法にて得られた化粧シートについて、ヘイズ値の測定、スチールウールラビング試験およびホフマンスクラッチ試験にて表面硬度の評価、V溝曲げ加工試験にて耐後加工性の評価を行い得られた結果を表8に示す。各評価試験の試験方法および評価の記号の説明は、実施例13および実施例16にて説明したので割愛する。V溝曲げ加工試験の評価結果は、「Vカット」の項目に示す。なお、表8においては、暗色のマスキングが施されている部分が本発明の化粧シートに該当するものであり、明色のマスキング部分は比較例を示すものである。
【0206】
表8から明らかなように、エクストル−ジョン法により得られた分散剤内包ベシクルと、無機微粒子0.1〜30重量部とを配合し、ヘイズ値が14%以下とされたトップコート層4を具備する実施形態2および実施形態3の化粧シートとすることにより、優れた耐擦傷性および耐後加工性を備えた化粧シートが得られる。また、実施形態3の態様の化粧シートにおいては、エクストルージョン法により得られた造核剤内包ベシクルを含む透明樹脂層1を用いることにより、より優れた耐擦傷性および耐後加工性を実現できることがわかる。なお、トップコート層4および透明樹脂層1のいずれの樹脂層に対してもベシクルを配合していない化粧シートについては、化粧シートに要求される耐擦傷性を得ることができなかった。
【0207】
<実施例17>
実施例17においては、
図2の構成における実施形態4および実施形態5の化粧シートを作製した。具体的には、超臨界逆相蒸発法により得られた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとを含有する原反層7を具備する化粧シートである。また、実施形態5の形態の化粧シートにおいては、超臨界逆相蒸発法により得られた造核剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層1をさらに具備する。なお、分散剤内包ベシクルは、実施例15において12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを使用して調製したものを用い、造核剤内包ベシクルは実施例13において調製したものを用いた。化粧シートは、実施例10において説明した方法により作製した。なお、作製した化粧シートの一部においては、表9に示すように、原反層7に対して4倍の延伸倍率にて一軸延伸加工を施した一軸延伸シートを用いた。
【0208】
上記の方法にて得られた化粧シートについて、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を行った。得られた試験結果を表9に示す。なお、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしている必要がある(建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号)。本発明の化粧シートが不燃材料として認定されるためには、不燃性基材と貼り合わせた状態で50kW/m
2の輻射熱による加熱にて20分間の加熱時間において下記の1〜3の要求項目をすべて満たす必要がある。
1.総発熱量が8MJ/m
2以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板または亜鉛メッキ鋼板から選択して用いることができる。
【0210】
表9から明らかなように、超臨界逆相蒸発法により得た分散剤内包ベシクルと、無機フィラー50〜900重量部とを配合した原反層7を具備する化粧シートとすることにより、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準を満たしている「不燃材料」とすることができる。また、超臨界逆相蒸発法により得られた造核剤内包ベシクルを含む透明樹脂層1を用いた化粧シートについても不燃材料の技術的基準を満たしていることがわかる。なお、分散剤内包ベシクルと無機フィラーとを配合していない原反層7を具備する化粧シートについては、不燃材料の技術的基準を満たしていなかった。
【0211】
<実施例18>
実施例18については、
図2の構成における実施形態4の化粧シートを作製した。具体的には、エクストルージョン法により得られた分散剤内包ベシクルを含有する原反層7を本発明において備えられている他の層として具備する化粧シートである。なお、分散剤内包ベシクルは、実施例16において12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを使用して調製したものを用いた。化粧シートは、実施例10において説明した方法により作製した。なお、作製した化粧シートの一部においては、表10に示すように、原反層7に対して4倍の延伸倍率にて一軸延伸加工を施した一軸延伸シートを用いた。
【0212】
上記の方法にて得られた化粧シートについて、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を行った。得られた試験結果を表10に示す。具体的な発熱性試験の方法および不燃材料の技術的要件については、実施例17において述べたので割愛する。
【0214】
表10から明らかなように、エクストルージョン法により得た分散剤内包ベシクルと、無機フィラー50〜900重量部とを配合した原反層7を具備する化粧シートとすることにより、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準を満たしている「不燃材料」とすることができる。
【0215】
<実施例19>
実施例19においては、
図2の構成における実施形態6の化粧シートを作製した。具体的には、超臨界逆相蒸発法により得られた造核剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層1、超臨界逆相蒸発法により得られた分散剤内包ベシクルと無機微粒子とを含有するトップコート層4、および超臨界逆相蒸発法により得られた分散剤内包ベシクルと無機フィラーとを含有する原反層7を本発明において備えられている他の層として具備する化粧シートである。なお、造核剤内包ベシクルは実施例13において調製したものを用い、分散剤内包ベシクルは実施例15において12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを使用して調製したものを用いた。なお、作製した化粧シートの一部においては、表11に示すように、原反層7に対して4倍の延伸倍率にて一軸延伸加工を施した一軸延伸シートを用いた。
【0216】
化粧シートは下記の方法にて作製した。透明樹脂層1としては、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、造核剤としてリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21:ADEKA社製)を用いて前述の超臨界逆相蒸発法によって得た造核剤内包ベシクル1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押出し厚さ100μmの透明樹脂シートを得た。得られた透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、透明樹脂シートの表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
【0217】
他方、前記分散剤ベシクル40重量部と、無機フィラーとしての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)500重量部とを、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施して熱可塑性樹脂組成物のペレットを作製した。この熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いたカレンダー成形法により膜厚70μmの原反層7を得た。当該原反層7の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5重量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄層2を設け、また、前記原反層7の他方の面にプライマー層5を設けた。しかる後、前記原反層7の一方の面側に、接着剤層6としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学工業(株)製;塗布量2g/m
2)を介して透明樹脂シートをドライラミネート法にて貼り合わせた。
【0218】
そして、透明樹脂シートの表面にエンボス模様1aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、前記分散剤内包ベシクル0.5重量部、無機微粒子としての粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)0.1または30重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2にて塗布してトップコート層4を形成し、総厚200μmの
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0219】
上記の方法にて得られたサンプルNo.1〜8の化粧シートについて、コーンカロリーメ−タ試験機による発熱性試験、ヘイズ値の測定、スチールウールラビング試験およびホフマンスクラッチ試験にて表面硬度の評価、V溝曲げ加工試験にて耐後加工性の評価を行った。各評価試験の方法は、上記の実施例13,15および17にて記載した方法にて行った。得られた試験結果を表11に示す。なお、表11の記号の説明は下記の通りである。
◎:非常に良好な透明性、耐擦傷性または耐後加工性を有する
○:良好な透明性、耐擦傷性または耐後加工性を有する
【0221】
表11から明らかなように、造核剤内包ベシクルを含み引張弾性率が1000MPa、引張破断伸度が200〜250%の透明樹脂層1を具備し、分散剤内包ベシクルと無機微粒子0.1または30重量部とを含むトップコート層4を具備し、さらに、分散剤内包ベシクルと無機フィラー500重量部とを含む原反層7を本発明において備えられている他の層として具備する化粧シートとすることにより、高い透明性による優れた意匠性を有し、優れた耐擦傷性と耐後加工性を備えるとともに、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準を満たしている「不燃材料」とすることができる。
【0222】
<実施例20>
実施例20においては、
図2の構成における実施形態6の化粧シートを作製した。具体的には、表12に示す組み合わせのように、超臨界逆相蒸発法またはエクストルージョン法により得られた造核剤内包ベシクルを含有する透明樹脂層1、超臨界逆相蒸発法またはエクストルージョン法により得られた分散剤内包ベシクルと無機微粒子とを含有するトップコート層4、および超臨界逆相蒸発法またはエクストルージョン法により得られた分散剤内包ベシクルと無機フィラーとを含有する原反層7を本発明において備えられている他の層として具備する化粧シートである。なお、超臨界逆相蒸発法による造核剤内包ベシクルは実施例13において調製したものを用い、エクストルージョン法による造核剤内包ベシクルは実施例14において調製したものを用いた。また、超臨界逆相蒸発法による分散剤内包ベシクルは実施例15において調製したものを用い、エクストルージョン法による分散剤内包ベシクルは実施例16において調製したものを用いた。分散剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを使用した。光硬化型樹脂としては、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)を用いた。化粧シートは、実施例19において説明した方法により作製した。
【0223】
上記の方法にて得られたサンプルNo.9〜11の化粧シートについて、コーンカロリーメ−タ試験機による発熱性試験、ヘイズ値の測定、スチールウールラビング試験およびホフマンスクラッチ試験にて表面硬度の評価、V溝曲げ加工試験にて耐後加工性の評価を行った。各評価試験の方法は、上記の実施例13,15および17にて記載した方法にて行った。得られた試験結果を表12に示す。なお、表12の記号の説明は下記の通りである。
○:良好な透明性、耐擦傷性または耐後加工性を有する
【0225】
表12から明らかなように、複数の樹脂層について、異なるベシクル化方法によって得られた造核剤内包ベシクルまたは分散剤内包ベシクルを添加した場合においても、結果的に、造核剤内包ベシクルを含み引張弾性率が1000MPa、引張破断伸度が200〜250%の透明樹脂層1を具備し、分散剤内包ベシクルと無機微粒子30重量部とを含むトップコート層4を具備し、さらに、分散剤内包ベシクルと無機フィラー500重量部とを含む原反層7を本発明において備えられている他の層として具備する化粧シートとすることにより、透明樹脂層1およびトップコート層4とからなる透明層についてヘイズ値14%以下という高い透明性を実現して優れた意匠性を有し、化粧シート表面について優れた耐擦傷性と耐後加工性とを備えるとともに、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準を満たしている「不燃材料」とすることができる。
【0226】
本発明の化粧シートおよび化粧シートの製造方法は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。