(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、光重合反応において、光重合開始剤が350nm以上の波長の光の照射によっても活性であるように加えられる光重合増感剤であり、かつ光硬化時あるいは硬化物中において、マイグレーションの起きにくい光カチオン及び光ラジカル重合増感剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、アントラセン化合物の構造と物性に関して鋭意検討した結果、本発明の{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}基を有するアントラセン型化合物が、光カチオン重合及び光ラジカル重合の光重合増感剤として優れた効果をしめすのみならず、当該{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}基を有するアントラセン型化合物は、当該化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物を重合させた硬化物中において、マイグレーションを起こしづらくなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物に存する。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)において、Qは水素原子、(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基、又は一般式(2)で表される10−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9−アントリル基、又は一般式(3)で表される1,4−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、*印は結合位置を表す。
【0013】
【化3】
【0014】
一般式(3)において、Zは、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、*印は結合位置を表す。
【0015】
また、本発明の第2の要旨は、一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物においてQが水素原子である一般式(4)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物に存する。
【0016】
【化4】
【0017】
一般式(4)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0018】
また、本発明の第3の要旨は、一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物においてQが(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基である一般式(5)で表される9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物に存する。
【0019】
【化5】
【0020】
一般式(5)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0021】
また、本発明の第4の要旨は、一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物においてQが一般式(2)で表される10−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9−アントリル基である、一般式(6)で表される10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物に存する。
【0022】
【化6】
【0023】
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、*印は結合位置を表す。
【0024】
【化7】
【0025】
一般式(6)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0026】
また、本発明の第5の要旨は、一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物において、Qが一般式(3)で表される1,4−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル基である、一般式(7)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物に存する。
【0027】
【化8】
【0028】
一般式(3)において、Zは
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0029】
【化9】
【0030】
一般式(7)において、X、Y、Zは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0031】
本発明の第6の要旨は、一般式(8)で表される9−アントロン化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを反応式1に従って反応させることによる一般式(4)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物の製造法に存する。
【0032】
【化10】
【0033】
反応式1において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0034】
本発明の第7の要旨は、一般式(10)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン型化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを反応式2に従い、反応させることによる一般式(5)で表される9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物の製造法に存する。
【0035】
【化11】
【0036】
反応式2において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0037】
本発明の第8の要旨は、一般式(11)で表される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを反応式3に従い、反応させることによる一般式(6)で表される10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物の製造法に存する。
【0038】
【化12】
【0039】
反応式3において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0040】
本発明の第9の要旨は、一般式(12)で表される10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを反応式3に従い、反応させることによる一般式(7)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物の製造法に存する。
【0041】
【化13】
【0042】
反応式4において、X、Y、Zは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0043】
本発明の第10の要旨は、第1の要旨乃至第5の要旨のいずれかひとつに記載の(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物を含有する光カチオン重合増感剤に存する。
【0044】
本発明の第11の要旨は、第1の要旨乃至第5の要旨のいずれかひとつに記載の(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物を含有する光ラジカル重合増感剤に存する。
【0045】
本発明の第12の要旨は、第10の要旨に記載の光カチオン重合増感剤と光重合開始剤としてオニウム塩を含有する光カチオン重合開始剤組成物に存する。
【0046】
本発明の第13の要旨は、第11の要旨に記載の光ラジカル重合増感剤と光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル重合開始剤組成物に存する。
【0047】
本発明の第14の要旨は、第12の要旨に記載の光カチオン重合開始剤組成物と光カチオン重合性化合物を含有する光カチオン重合性組成物に存する。
【0048】
本発明の第15の要旨は、第13の要旨に記載の光ラジカル重合開始剤組成物と光ラジカル重合性化合物を含有する光ラジカル重合性組成物に存する。
【0049】
本発明の第16の要旨は、第14の要旨に記載の光カチオン重合開始剤組成物と光カチオン重合性化合物を含有する光カチオン重合性組成物に、更に光ラジカル重合性化合物を含有する光重合性組成物に存する。
【発明の効果】
【0050】
本発明の一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物は、光重合反応において光重合増感剤として優れた効果を有するだけでなく、当該化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物を重合させた硬化物中において、すぐれた耐マイグレーション性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(光重合増感剤)
本発明の(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物は、一般式(1)に記載の構造を有する化合物である。
【0053】
一般式(1)において、Qは水素原子、(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基、又は一般式(2)で表される10−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9−アントリル基、又は一般式(3)で表される1,4−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0055】
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、*印は結合位置を表す。
【0057】
一般式(3)において、Zは、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、*印は結合位置を表す。
【0058】
一般式(1)において、Qが水素原子である場合は、一般式(4)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物となる。
【0060】
一般式(4)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0061】
一般式(4)において、X、Yで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、X、Yで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子等が挙げられる。
【0062】
一般式(4)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物の代表例としては、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン等が挙げられる。
【0063】
また、一般式(1)においてQが(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基である場合は、一般式(5)で表される9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物となる。
【0065】
一般式(5)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0066】
一般式(5)において、X、Yで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、X、Yで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子等が挙げられる。
【0067】
一般式(5)で表される9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物の代表例としては、9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−メチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−メチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−メチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−メチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−エチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−エチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−エチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−エチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−(t−ブチル)−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−(t−ブチル)−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−(t−ブチル)−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−(t−ブチル)−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、1−クロロ−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2−クロロ−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、3−クロロ−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、4−クロロ−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン等が挙げられる。
【0068】
また、一般式(1)においてQが一般式(2)で表される10−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9−アントリル基である場合は、一般式(6)で表される10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物となる。
【0070】
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、*印は結合位置を表す。
【0072】
一般式(6)において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0073】
一般式(6)において、X、Yで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、X、Yで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子等が挙げられる。
【0074】
一般式(6)で表される10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物の代表例としては、10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,2’−ジメチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,2’−ジエチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,2‘−ビス(t−ブチル)−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、1,1’−ジメチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、1,1’−ジエチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、1,1’−ビス(t−ブチル)−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、3,3’−ジメチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、3,3’−ジエチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、3,3’−ビス(t−ブチル)−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、4,4’−ジメチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、4,4’−ジエチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、4,4’−ビス(t−ブチル)−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,6,2’ ,6’−テトラメチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,6,2’.6’−テトラエチル−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,6,2’.6’−テトラ(t−ブチル)−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,2’−ジクロロ−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、2,2’−ジブロモ−10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン等が挙げられる。
【0075】
また、一般式(1)において、Qが一般式(3)で表される1,4−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル基である場合は、一般式(7)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物となる。
【0077】
一般式(3)において、Zは
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、*印は結合位置を表す
【0079】
一般式(7)において、X、Y、Zは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0080】
一般式(7)において、X、Y、Zで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、X、Y、Zで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子等が挙げられる。
【0081】
一般式(7)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物の代表例としては、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、1−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、3−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、4−メチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、1−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、3−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、4−エチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、1−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、3−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、4−(t−ブチル)−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、1−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、3−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、4−クロロ−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、2,6−ジメチル−9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[3−メチル−{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[3−エチル−{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[5−メチル−{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[5−エチル−{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[6−メチル−{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[6−エチル−{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン等が挙げられる。
【0082】
これら例示した化合物の中で、製造の容易さと性能の高さから、特に、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン、10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセンが好ましい。
【0083】
本発明の一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物は、その分子中に光重合増感機能を有するアントラセン構造部分と光重合性を有する3−メチルオキセタン−3−イル基部分を有することが特徴である。
【0084】
本発明の一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物は、光重合増感剤として優れた重合促進効果を有するだけでなく、当該化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物を重合させた硬化物中において、優れた耐マイグレーション性を有する。
【0085】
この耐マイグレーション性の効果は、当該化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物を重合させたとき、恐らくは、本発明の光重合増感剤も自らも光重合反応を起こし高分子化したり、重合反応で生成する高分子樹脂骨格に取り込まれたりすることにより、マイグレーションを起こしづらくなっていると推測される。
【0086】
(製造法)
次に、上記一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物の製造方法について説明する。
【0087】
まず、一般式(4)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物の製造方法について説明する。一般式(4)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物は、一般式(8)で表わされる9−アントロン化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを下記反応式1に従って反応させることにより製造することができる。
【0089】
反応式1において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0090】
すなわち、一般式(8)で表わされる9−アントロン化合物を塩基性化合物存在下、構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンと反応させることにより得ることができる。
【0091】
原料として用いられる9−アントロン化合物としては例えば、9−アントロン、1−メチル−9−アントロン、2−メチル−9−アントロン、3−メチル−9−アントロン、4−メチル−9−アントロン、1−エチル−9−アントロン、2−エチル−9−アントロン、3−エチル−9−アントロン、4−エチル−9−アントロン、1−(t−ブチル)−9−アントロン、2−(t−ブチル)−9−アントロン、3−(t−ブチル)−9−アントロン、4−(t−ブチル)−9−アントロン、1−クロロ−9−アントロン、2−クロロ−9−アントロン、3−クロロ−9−アントロン、4−クロロ−9−アントロン、2,6−ジメチル−9−アントロン、2,6−ジメチル−9−アントロン、2,6−ジメチル−9−アントロン、2,6−ジメチル−9−アントロン等が挙げられる。
【0092】
9−アントロン化合物に対する3−クロロメチル−3−メチルオキセタンの添加比率は、好ましくは0.5モル倍以上、4モル倍以下、より好ましくは1.5モル倍以上、2.5モル倍以下である。0.5モル倍以下では未反応の9−アントロン化合物が反応物中に残り生成物の純度が低下し、一方4モル倍以上加えても収率は変わりないのでそれ以上加える意味がない。
【0093】
当該反応において、塩基性化合物が必須である。塩基性化合物としては、有機塩基性化合物又は無機塩基性化合物がある。有機塩基性化合物としては,有機アミン化合物が一般的である。有機アミンとしては1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物、ピリジン類、有機強塩基化合物が挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられ、2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ビス(n−プロピル)アミン、ビス(n−ブチル)アミン、ビス(n−ペンチル)アミン、ビス(n−ヘキシル)アミン、ビス(n−オクチル)アミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ピペリジン等が挙げられ、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(n−プロピル)アミン、トリス(n−ブチル)アミン、トリス(n−ペンチル)アミン、トリス(n−ヘキシル)アミン、トリス(n−オクチル)アミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン等が挙げられ、ピリジン類としてはピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ルチジン等が挙げられ、有機強塩基化合物としては、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルグアニジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。また、無機塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0094】
塩基性化合物の添加比率としては、9-アントロン化合物に対して、好ましくは0.5モル倍以上、2.0モル倍以下、より好ましくは、1.0モル倍以上、1.5モル倍以下である。0.5モル倍以下では反応速度が遅く、1.5モル倍以上だと、生成物の反応液に対する溶解度が高くなり、析出量が低下し好ましくない。
【0095】
溶媒としては、オキセタン化合物と反応しなければ特に種類を選ばないが、芳香族溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、塩素系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられ、芳香族溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等が挙げられ、ケトン系溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、塩素系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、アミド系溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0096】
溶媒の使用量は、9−アントロン化合物が浸ればよいが、重量で言うと、9−アントロン化合物に対して1重量倍以上、10重量倍以下であり、通常は9−アントロン化合物に対して、2〜3重量倍程度である。
【0097】
反応温度は、好ましくは、室温以上150℃以下であり、より好ましくは40℃以上、100℃以下である。室温以下では反応時間がかかりすぎ、また150℃以上では副反応が起き生成物の純度が低下し好ましくない。
【0098】
反応時間は、反応温度によるが、通常3時間以上8時間以下である。
【0099】
反応終了後、室温まで冷却した後、酸性水溶液に投入し、生じた沈殿を吸引ろ過・水洗・乾燥し、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物を得ることができる。また、必要に応じて再結晶等により精製してもよい。
【0100】
得られた化合物の同定は、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物であることを確認した。
【0101】
次に、一般式(5)で表される9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物の製造方法について説明する。一般式(5)で表される9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物は、一般式(10)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを下記反応式2に従って反応させることにより製造することができる。
【0103】
反応式2において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0104】
すなわち、一般式(10)で表される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を塩基性化合物存在下、構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンと反応させることにより得ることができる。
【0105】
原料として用いられる9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては例えば、9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(t−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−クロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0106】
9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対する3−クロロメチル−3−メチルオキセタンの添加比率は、好ましくは1.0モル倍以上、6.0モル倍以下、より好ましくは2.0モル倍以上、3.0モル倍以下である。1.0モル倍以下では未反応の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が反応物中に残り生成物の純度が低下し、一方6.0モル倍以上加えても収率は変わりないのでそれ以上加える意味がない。
【0107】
当該反応において、塩基性化合物が必須である。塩基性化合物としては、有機塩基性化合物又は無機塩基性化合物がある。有機塩基性化合物としては,有機アミン化合物が一般的である。有機アミンとしては1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物、ピリジン類、有機強塩基化合物が挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられ、2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ビス(n−プロピル)アミン、ビス(n−ブチル)アミン、ビス(n−ペンチル)アミン、ビス(n−ヘキシル)アミン、ビス(n−オクチル)アミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ピペリジン等が挙げられ、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(n−プロピル)アミン、トリス(n−ブチル)アミン、トリス(n−ペンチル)アミン、トリス(n−ヘキシル)アミン、トリス(n−オクチル)アミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン等が挙げられ、ピリジン類としてはピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ルチジン等が挙げられ、有機強塩基化合物としては、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルグアニジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。また、無機塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0108】
塩基性化合物の添加比率は、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは1.0モル倍以上、5.0モル倍以下、より好ましくは、2.5モル倍以上、3.5モル倍以下である。1.0モル倍以下では反応速度が遅く、5.0モル倍以上だと、生成物の反応液に対する溶解度が高くなり、析出量が低下し好ましくない。
【0109】
溶媒としては、オキセタン化合物と反応しなければ特に種類を選ばないが、芳香族溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、塩素系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられ、芳香族溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等が挙げられ、ケトン系溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、塩素系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、アミド系溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0110】
溶媒の使用量は、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が浸ればよいが、重量で言うと、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して1重量倍以上、20重量倍以下であり、通常は9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、5〜10重量倍程度である。
【0111】
反応温度は、好ましくは、室温以上150℃以下であり、より好ましくは40℃以上、100℃以下である。室温以下では反応時間がかかりすぎ、また150℃以上では副反応が起き生成物の純度が低下し好ましくない。
【0112】
反応時間は、反応温度によるが、通常3時間以上8時間以下である。
【0113】
反応終了後、室温まで冷却した後、酸性水溶液に投入し、生じた沈殿を吸引ろ過・水洗・乾燥し、9,10−ビス−(3−メチルオキセタン−3−イルメトキシ)アントラセン型化合物を得ることができる。また、必要に応じて再結晶等により精製してもよい。
【0114】
得られた化合物の同定は、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物であることを確認した。
【0115】
次に、一般式(6)で表される10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物の製造方法について説明する。一般式(6)で表される10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物は、一般式(11)で表される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを下記反応式3に従って反応させることにより製造することができる。
【0117】
反応式3において、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0118】
すなわち、一般式(11)で表される9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物を塩基性化合物存在下、構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンと反応させることにより得ることができる。
【0119】
原料として用いられる9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物としては例えば、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、1,1’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、2,2’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、3,3’−ジメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、1,1’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、2,2’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、3,3’−ジエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、1,1’−ビス(t−ブチル)−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、2,2’−ビス(t−ブチル)−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、3,3’−ビス(t−ブチル)−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、1,1’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、2,2’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、3,3’−ジクロロ−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、2,2’,6,6’−テトラメチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、2,2’,6,6’−テトラエチル−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン、2,2’,6,6’−テトラキス(t−ブチル)−9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン等が挙げられる。
【0120】
9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対する3−クロロメチル−3−メチルオキセタンの添加比率は、好ましくは1.5モル倍以上、8.0モル倍以下、より好ましくは3.0モル倍以上、5.0モル倍以下である。1.5モル倍以下では未反応の9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が反応物中に残り生成物の純度が低下し、一方8.0モル倍以上加えても収率は変わりないのでそれ以上加える意味がない。
【0121】
当該反応において、塩基性化合物が必須である。塩基性化合物としては、有機塩基性化合物又は無機塩基性化合物がある。有機塩基性化合物としては,有機アミン化合物が一般的である。有機アミンとしては1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物、ピリジン類、有機強塩基化合物が挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられ、2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ビス(n−プロピル)アミン、ビス(n−ブチル)アミン、ビス(n−ペンチル)アミン、ビス(n−ヘキシル)アミン、ビス(n−オクチル)アミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ピペリジン等が挙げられ、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(n−プロピル)アミン、トリス(n−ブチル)アミン、トリス(n−ペンチル)アミン、トリス(n−ヘキシル)アミン、トリス(n−オクチル)アミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン等が挙げられ、ピリジン類としてはピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ルチジン等が挙げられ、有機強塩基化合物としては、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルグアニジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。また、無機塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0122】
塩基性化合物の添加比率は9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、8.0モル倍以下、より好ましくは、3.0モル倍以上、5.0モル倍以下である。2.0モル倍以下では反応速度が遅く、8.0モル倍以上だと、生成物の反応液に対する溶解度が高くなり、析出量が低下し好ましくない。
【0123】
溶媒は、オキセタン化合物と反応しなければ特に種類を選ばないが、芳香族溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、塩素系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられ、芳香族溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等が挙げられ、ケトン系溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、塩素系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、アミド系溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0124】
溶媒の使用量は、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物が浸ればよいが、重量で言うと、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対して2重量倍以上、20重量倍以下であり、通常は9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン化合物に対して、5〜15重量倍程度である。
【0125】
反応温度は、好ましくは、室温以上150℃以下であり、より好ましくは40℃以上、100℃以下である。室温以下では反応時間がかかりすぎ、また150℃以上では副反応が起き生成物の純度が低下し好ましくない。
【0126】
反応時間は、反応温度によるが、通常3時間以上8時間以下である。
【0127】
反応終了後、室温まで冷却した後、酸性水溶液に投入し、生じた沈殿を吸引ろ過・水洗・乾燥し、10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物を得ることができる。また、必要に応じて再結晶等により精製してもよい。
【0128】
得られた化合物の同定は、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン型化合物であることを確認した。
【0129】
次に、一般式(7)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物の製造方法について説明する。一般式(7)で表される9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物は、一般式(12)で表される10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物と構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンとを下記反応式4に従って反応させることにより製造することができる。
【0131】
反応式4において、X、Y、Zは同一であっても異なっていてもよく、
水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0132】
すなわち、一般式(12)で表される10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物を塩基性化合物存在下、構造式(9)で表される3−クロロメチル−3−メチルオキセタンと反応させることにより得ることができる。
【0133】
原料として用いられる10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物としては例えば、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−1−メチル−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−2−メチル−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル−3−メチル−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−4−メチル−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−1−エチル−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−2−エチル−9−アントロン10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−3−エチル−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−4−エチル−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−{1−(t−ブチル)}−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−{2−(t−ブチル)}−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−{3−(t−ブチル)}−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−{4−(t−ブチル)}−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−(2,6−ジメチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−(2,6−ジメチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−(2,6−ジメチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−(2,6−ジメチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−(2,6−ジエチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−(2,6−ジエチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−(2,6−ジエチル)−9−アントロン、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−(2,6−ジエチル)アントロン、10−(3−メチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン、10−(5−メチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン、10−(6−メチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン、10−(3−エチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン、10−(5−エチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン、10−(6−エチル−1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン等が挙げられる。
【0134】
10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物に対する3−クロロメチル−3−メチルオキセタンの添加比率は、好ましくは2.0モル倍以上、9.0モル倍以下、より好ましくは4.0モル倍以上、6.0モル倍以下である。2.0モル倍以下では未反応の10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物が反応物中に残り生成物の純度が低下し、一方9.0モル倍以上加えても収率は変わりないのでそれ以上加える意味がない。
【0135】
当該反応において、塩基性化合物が必須である。塩基性化合物としては、有機塩基性化合物又は無機塩基性化合物がある。有機塩基性化合物としては,有機アミン化合物が一般的である。有機アミンとしては1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物、ピリジン類、有機強塩基化合物が挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられ、2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ビス(n−プロピル)アミン、ビス(n−ブチル)アミン、ビス(n−ペンチル)アミン、ビス(n−ヘキシル)アミン、ビス(n−オクチル)アミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ピペリジン等が挙げられ、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(n−プロピル)アミン、トリス(n−ブチル)アミン、トリス(n−ペンチル)アミン、トリス(n−ヘキシル)アミン、トリス(n−オクチル)アミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン等が挙げられ、ピリジン類としてはピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ルチジン等が挙げられ、有機強塩基化合物としては、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルグアニジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。また、無機塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0136】
10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物に対する塩基性化合物の添加比率は好ましくは2.0モル倍以上、7.0モル倍以下、より好ましくは、3.0モル倍以上、5.0モル倍以下である。1.0モル倍以下では反応速度が遅く、5.0モル倍以上だと、生成物の反応液に対する溶解度が高くなり、析出量が低下し好ましくない。
【0137】
溶媒としては、オキセタン化合物と反応しなければ特に種類を選ばないが、芳香族溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、塩素系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられ、芳香族溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等が挙げられ、ケトン系溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、塩素系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、アミド系溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0138】
溶媒の使用量は、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物が浸ればよいが、重量で言うと、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物に対して1重量倍以上、20重量倍以下であり、通常は10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン化合物に対して、6〜12重量倍程度である。
【0139】
反応温度は、好ましくは、室温以上150℃以下であり、より好ましくは40℃以上、100℃以下である。室温以下では反応時間がかかりすぎ、また150℃以上では副反応が起き生成物の純度が低下し好ましくない。
【0140】
反応時間は、反応温度によるが、通常10時間以上50時間以下である。
【0141】
反応終了後、室温まで冷却した後、酸性水溶液に投入し、生じた沈殿を吸引ろ過・水洗・乾燥し、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物を得ることができる。また、必要に応じて再結晶等により精製してもよい。
【0142】
得られた化合物の同定は、
1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン型化合物であることを確認した。
【0143】
(光重合増感剤)
本発明の一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物は光重合増感剤として光重合硬化速度を促進することが判明した。すなわち、本発明の般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物は、光重合性化合物が光重合開始剤により光重合を開始する際に、照射された光のエネルギーを光重合開始剤に伝える重合増感剤として作用する。本発明の般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物は、直接光重合性化合物に添加されてもよいし、当該(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物を光重合増感剤として、光重合開始剤と配合することにより、光重合開始剤組成物を調製することもできる。
【0144】
(光重合開始剤組成物)
本発明の光重合開始剤組成物は、光重合増感剤として前記一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物と、光重合開始剤を含有する組成物である。光重合開始剤としては、光カチオン重合増感剤及び/又は光ラジカル重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤の中でも、光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤の両方の機能を持つオニウム塩が好ましい。オニウム塩としては通常スルホニウム塩またはヨードニウム塩が用いられる。
【0145】
スルホニウム塩としては、S,S,S’,S’−テトラフェニル−S,S’−(4,4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート等が挙げられ、例えば、サンアプロ社製のCPI−100P,CPI−101A,CPI−200K、又はビー・エー・エス・エフ社製のイルガキュア270等を使用することができる。
【0146】
一方、ヨードニウム塩としては、4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられ、例えば、ビー・エー・エス・エフ社製の商品「イルガキュア250」、ソルベイジャパン社製の商品PHOTOINITIATOR2074等を使用することができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
【0147】
本発明の光重合開始剤組成物において、一般式(1)で表される光重合増感剤の光重合開始剤組成物中における使用量は、特に限定されないが光重合開始剤に対して通常5〜100重量%の範囲、好ましくは10〜50重量%の範囲である。光重合増感剤の使用量が5重量%未満では光重合性化合物を光重合させるのに時間がかかりすぎてしまい、一方、100重量%を超えて使用しても添加に見合う効果は得られない。
【0148】
(光カチオン重合性組成物)
本発明の光重合性組成物は、一般式(1)で表される(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物と光重合開始剤を含有する光重合開始剤組成物と、光カチオン重合性化合物とを含有する組成物である。
【0149】
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製の商品「UV−9300」等のエポキシ変性シリコーン;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フタル酸ジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン等のグリシジルエーテル等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。その他の脂環式エポキシ化合物としては、例えばダイセル社製の商品セロキサイド2021Pを使用することができる。これらは二種以上を併用してもよい。また、これらのオリゴマーでもよい。
【0150】
(光ラジカル重合性組成物)
本発明の光ラジカル重合性組成物は、光ラジカル重合性化合物と上記の光重合開始剤組成物とを含有する組成物である。
【0151】
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらの光ラジカル重合性化合物のうち、フィルム形成能等の面から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(以下、両者をあわせて「(メタ)アクリル酸エステル」という)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリ ル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチ ロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリ ブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。これらの光ラジカル重合性化合物は、単一化合物でも二種以上の混合物であっても良い。また、これらのオリゴマーでもよい。
【0152】
(ハイブリッド組成物)
本発明の光重合開始剤組成物において、光重合開始剤としてオニウム塩を用いた場合は、オニウム塩が光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤の両方の機能を持ち、本発明の光重合増感剤である(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基を有するアントラセン型化合物も光カチオン重合増感剤と光ラジカル重合増感剤の両方の機能を持つため、光重合性化合物として、光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の両方を含むハイブリッド組成物において、光重合開始剤組成物として用いることもできる。
【0153】
光カチオン重合性組成物、光ラジカル重合性組成物又はハイブリッド組成物中の光重合開始剤の配合割合は、光重合開始剤と光カチオン重合性化合物及び/又は光ラジカル重合性化合物との合計100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。光重合開始剤の割合が0.01重量部未満の場合は光硬化が十分に進行ないことがあり、5重量部を超える場合は、硬化物の硬度が低下したり、光重合開始剤が硬化物から滲み出したりすることがある。
【0154】
本発明の光重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0155】
(硬化方法)
本発明の光重合性組成物を光硬化させる場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもでき、塊状に成形して光硬化させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布することができる。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。このようにして調製した膜に、250〜500nmの波長範囲を含む紫外線を1〜1000mW/cm
2程度の強さで光照射すればよい。用いる光源としてはメタルハライドランプ、キセノンランプ、紫外線LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。太陽光の使用も可能である。
【0156】
フィルム状で硬化させる場合、基材上に塗布された本発明の光重合性組成物上にカバーフィルムを被せて硬化することにより、重合阻害を及ぼす酸素や水分の影響等を排除することができる。
【0157】
カバーフィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、特にポリエチレンフィルムなどが主として用いられる。本発明の光重合性組成物中に含まれる光重合増感剤は、カバーフィルムに対するマイグレーション性が極めて低いのが特徴である。
【0158】
本発明の硬化物の光硬化の判定は、タックフリーテスト(指触テスト)に基づいて行った。すなわち、光重合性組成物に光照射すると、硬化して表面のタック(べたつき)が取れるため、光照射を開始してからタック(べたつき)が取れるまでの時間を測定し、光硬化時間とした。
【0159】
(タック・フリー・テスト)
本発明の光カチオン重合性組成物又は光ラジカル重合性組成物が光硬化したかどうかを判定する方法としては、タック・フリー・テスト(指触テスト)がある。すなわち、光重合性組成物に光を照射すると、硬化して表面のタック(べたつき)がなくなるため、光を照射してからタック(べたつき)がなくなるまでの時間(タック・フリー・タイム)を測定することにより、光硬化時間を測定することができる。
【0160】
(耐マイグレーション性の判定)
本発明の光カチオン重合性組成物又は光ラジカル重合性組成物に含まれる光重合増感剤がフィルム等に移行(マイグレーション)するかどうかを判定する方法としては、光重合増感剤を含む光重合性組成物を薄いフィルム状物に塗布したものを作成し、その上にポリエチレンフィルムを被せて、光重合性組成物を挟んだフィルム積層物を作る。当該積層物を一定温度(26℃)で一定期間保管し、その後ポリエチレンフィルムを剥がし、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行しているかを調べ、耐マイグレーション性を判定した。剥がしたポリエチレンフィルムは、アセトンで表面の組成物を洗った後乾燥し、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、光重合増感剤に起因する吸収強度の増大を調べることにより耐マイグレーション性を測定した。なお、当該測定には、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2200)を用いた。比較例の化合物である9,10−ジブトキシアントラセンと量的な比較するために、得られた吸光度を9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度の値に換算した。換算に当たっては、紫外・可視分光光度計により本発明の化合物及び9,10−ジブトキシアントラセンの260nmにおける吸光度を測定し、その吸光度の値とモル濃度からそれぞれのモル吸光係数を計算し、その比を用いて換算した。
【0161】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部は重量部である。
【実施例】
【0162】
(合成実施例1)9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの三口フラスコに9−アントロン9.7g(50ミリモル)、3−クロルメチル−3−メチルオキセタン12g(100ミリモル)、N,N−ジメチルアセトアミド60gを窒素雰囲気下加え、得られた薄黄色の溶液にジアザビシクロウンデセン10.5g(70ミリモル)のN,N−ジメチルアセトアミドの15g溶液を滴下した。 すぐにエンジ色の溶液となった。60℃で6時間加熱し、次いで室温まで冷却後、3%硫酸水溶液に投入した。黄色の多量の沈殿が生じた。吸引ろ過・水洗・乾燥し、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセンの黄白色粉末11.2g(40.3ミリモル)が得られた。原料の9−アントロンに対する単離収率は81モル%であった。
(1)融点:106−107℃
(2)IR(KBr、cm
−1):3050,2930,2860,1413,1339,1086,984,974,886,845,793,732,721,634.
(3)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.87(s,3H),4.29(s,2H),4.61−4.65(m,2H),4.85−4.90(m,2H),7.43−7.51(m,4),7.97−8.02(m,2H),8.22−8.26(m,2H),8.28(s,1H).
【0163】
(合成実施例2)9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの三口フラスコに9,10−ジヒドロキシアントラセン2.39g(11.4ミリモル)、3−クロルメチル−3−メチルオキセタン3.6g(30ミリモル)、N,N−ジメチルアセトアミド15gを窒素雰囲気下加え、得られた黄緑色の溶液に苛性ソーダ1.2gの水6g水溶液を加えた。すぐに赤黒い溶液となった。次いで、60℃で5時間加熱したところ、肌色のスラリーとなった。次いで室温まで冷却後、吸引ろ過・水洗・メタノール洗いした。 得られたウェットケーキを乾燥し、9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセンの黄白色の微結晶 1.94g(5.1ミリモル)が得られた。原料の9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する単離収率は45モル%であった。
(1)融点:167−168℃
(2)IR(KBr、cm
−1):3050,2960,2925,2860,1400,1348,1064,1015,970,934,809,765,703,656,607.
(3)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.85(s,6H),4.27(s,4H),4.61−4.64(m,4H),4.85−4.90(m,4H),7.46(m,4H),8.22−8.27(m,4H).
【0164】
(合成実施例3)10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの三口フラスコに9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン1.93g(5ミリモル)、3−クロルメチル−3−メチルオキセタン2.4g(20ミリモル)、N,N−ジメチルアセトアミド20gを窒素雰囲気下加え、得られた白いスラリーにジアザビシクロウンデセン3.0g(20ミリモル)のN,N−ジメチルアセトアミドの4g溶液を滴下した。 すぐに赤い色の溶液となった。次いで、60℃で20時間加熱したところ、肌色のスラリーとなった。次いで室温まで冷却後、吸引ろ過・水洗・メタノール洗いした。 得られたウェットケーキを乾燥し、10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセンの肌色粉末2.2g(3.9ミリモル)が得られた。原料の9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオンに対する単離収率は78モル%であった。
(1)融点:>260℃
(2)IR(KBr,cm
−1):3050,3030,2940,2920,2860,1337,1078,1010,975,779,769,756,719,673,610.
(3)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.86(s,6H),4.51(s,4H),4.68−4.74(m,4H),4.96−5.01(m,4H),7.08−7.18(m,8H),7.43−7.49(m,4H),8.39−8.45(m,4H).
【0165】
(合成実施例4)9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの三口フラスコに10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロン3.52g(10ミリモル)、3−クロルメチル−3−メチルオキセタン6.0g(50ミリモル)、N,N−ジメチルアセトアミド30gを窒素雰囲気下加え、得られた黄緑色のスラリーにジアザビシクロウンデセン6.1g(40ミリモル)のN,N−ジメチルアセトアミドの5g溶液を滴下した。 すぐに黒赤色の溶液となった。60℃で24時間加熱した。えんじ色のとなった。次いで室温まで冷却後、3%硫酸水溶液に投入したところ、赤肌色の沈殿が多量に出た。吸引ろ過・水洗・n−ヘキサン洗いした。 得られたウェットケーキを乾燥し、9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセンの赤肌色粉末5.1g(8.4ミリモル)が得られた。原料の10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9−アントロンに対する単離収率は84モル%であった。
(1)融点:124−126℃
(2)IR(KBr、cm
−1):3070,2970,2940,2866、1410,1375,1354,1335,1259,1081,1031,1017,973,834,768,743.
(3)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ0.46(s,3H),1.51(s,3H),1.81(s,3H),3.49(s,2H),3.84−3.90(m,4H),4.10(s,2H),4.36(s,2H),4.50−4.54(m,2H),4.65−4.68(m,2H),4.74−4.77(m,2H),4.90−4.94(m,2H),6.81(s,1H),7.36−7.41(m,2H),7.47−7.53(m,2H),7.61−7.67(m,2H),7.73−7.78(m,2H),8.18−8.21(m,1H),8.30−8.36(m,2H),8.40−8.43(m,1H)。
【0166】
(評価実施例1)光カチオン重合における光重合増感効果
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物(ダイセル社製 セロキサイド2021P)100部、光重合開始剤としてヨードニウム塩(ビー・エー・エス・エフ社製 イルガキュア250)4.0部、光重合増感剤として合成実施例1と同様の方法で合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を混合し、光重合性組成物を調製した。このようにして調製した当該組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)の上にバーコーター(No.12)を用いて膜厚が18ミクロンになるように塗布した。ついで、当該組成物を塗布したフィルム表面からPhoseon社製紫外線LEDを用いて光照射した。照射光の中心波長は395nmで照射強度は50mW/cm
2であった。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は1.4秒であった。
【0167】
(評価実施例2)光カチオン重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を合成実施例2と同様にして合成した9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例1と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は1.4秒であった。
【0168】
(評価実施例3)光カチオン重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を合成実施例3と同様にして合成した10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例1と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は7.0秒であった。
【0169】
(評価実施例4)光カチオン重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を合成実施例4と同様にして合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例1と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は12秒であった。
【0170】
(評価比較例1)光カチオン重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン 1.0部を添加しない事こと以外は実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を実施例1と同様に塗布・光照射した。しかし、当該光硬化組成物は5分照射しても光硬化しなかった。
【0171】
(評価比較例2)光カチオン重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン 1.0部を市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例1と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は1.3秒であった。
【0172】
(評価実施例5)光ラジカル重合における光重合増感効果
光ラジカル重合性化合物としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(大阪有機社製 ビスコート400)100部、光重合開始剤としてヨードニウム塩(ビー・エー・エス・エフ社製 イルガキュア250)2.5部、光重合増感剤として合成実施例1と同様の方法で合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を混合し、光重合性組成物を調製した。このようにして調製した当該組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)の上にバーコーター(No.20)を用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、当該組成物を塗布したフィルム表面からPhoseon社製紫外線LEDを用いて光照射した。照射光の中心波長は395nmで照射強度は50mW/cm
2であった。光照射開始から当該組成物の塗布面のべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は6.0秒であった。
【0173】
(評価実施例6)光ラジカル重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を合成実施例2と同様にして合成した9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例5と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例5と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は0.5秒であった。
【0174】
(評価実施例7)光ラジカル重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を合成実施例3と同様にして合成した10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例5と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例5と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は1.4秒であった。
【0175】
(評価実施例8)光ラジカル重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を合成実施例4と同様にして合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例5と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例5と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は0.4秒であった。
【0176】
(評価比較例3)光ラジカル重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を添加しない事こと以外は評価実施例5と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例5と同様に塗布・光照射した。しかし、当該光硬化組成物は3分照射しても光硬化しなかった。
【0177】
(評価比較例4)光ラジカル重合における光重合増感効果
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1.0部を市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン1.0重量部とすること以外は評価実施例5と同様にして光重合性組成物を調製した。次いで、このようにして調製した当該組成物を評価実施例5と同様に塗布・光照射した。その時の「タック・フリー・タイム」は0.6秒であった。
【0178】
評価実施例1乃至評価実施例8及び評価比較例1乃至評価比較例4の結果を表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
表1より、次のことが明らかである。すなわち、本発明の{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}基を有するアントラセン型化合物は、光カチオン重合、光ラジカル重合の両方において、光重合増感効果を有し、少量の添加でも優れた光重合増感効果を有していることがわかる。
【0181】
<マイグレーション性の試験>
(評価実施例9)光カチオン重合系におけるマイグレーション性の試験
カチオン重合性化合物として、脂環式エポキシ(セロキサイド2021P)100部、光重合増感剤として、合成実施例1と同様の方法で合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を混合し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が30ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムを良く拭いた後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン型化合物の吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.16、三日保管後0.15であった。
【0182】
(評価実施例10)光カチオン重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を合成実施例2と同様にして合成した9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部としたこと以外は評価実施例9と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.015、4日保管後0.014であった。
【0183】
(評価実施例11)光カチオン重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を合成実施例3と同様にして合成した10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン1部としたこと以外は評価実施例9と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.001、4日保管後0.001であった。
【0184】
(評価実施例12)光カチオン重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を合成実施例4と同様にして合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン1部としたこと以外は評価実施例9と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.004、4日保管後0.004であった。
【0185】
(評価比較例5)光カチオン重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を9,10−ジブトキシアントラセン1部としたこと以外は評価実施例8と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.72、4日保管後0.83であった。
【0186】
(評価実施例13)光ラジカル重合系におけるマイグレーション性の試験
ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100部、光重合増感剤として、合成実施例1と同様の方法で合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を混合し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が30ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムを良く拭いた後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.32、三日保管後0.33であった。
【0187】
(評価実施例14)光ラジカル重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を合成実施例2と同様にして合成した9,10−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部としたこと以外は評価実施例13と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.037、4日保管後0.035であった。
【0188】
(評価実施例15)光ラジカル重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を合成実施例3と同様にして合成した10,10’−ビス{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−9,9’−ビアントラセン1部としたこと以外は評価実施例13と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.002、4日保管後0.002であった。
【0189】
(評価実施例16)光ラジカル重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を合成実施例4と同様にして合成した9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−10−[{1,4−ビス(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}−2−ナフチル]アントラセン1部としたこと以外は評価実施例8と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.003、4日保管後0.003であった。
【0190】
(評価比較例6)光ラジカル重合系におけるマイグレーション性の試験
光重合増感剤として9−{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}アントラセン1部を市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン1部としたこと以外は評価実施例13と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後1.650、4日保管後1.660であった。
【0191】
【表2】
【0192】
評価実施例9乃至評価実施例16、評価比較例5、評価比較例6を表2にまとめた。表2から次のことが明らかである。すなわち、本発明の{(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ}基を有するアントラセン型化合物は、市販の光重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンに比べ、カチオン重合系、ラジカル重合系の両系において、ポリエチレンフィルムに対する移行度が極めて低く、優れた耐マイグレーション性を示すことが明らかである。