特許第6861960号(P6861960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6861960ナノ粒子を複合化した多孔質材料及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861960
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ナノ粒子を複合化した多孔質材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/26 20060101AFI20210412BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20210412BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20210412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210412BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALN20210412BHJP
   B82Y 25/00 20110101ALN20210412BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALN20210412BHJP
【FI】
   A61K33/26
   A61K41/00
   A61K47/42
   A61P35/00
   !B82Y5/00
   !B82Y25/00
   !B82Y40/00
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-102976(P2016-102976)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-210412(P2017-210412A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】陳 国平
(72)【発明者】
【氏名】張 晶
(72)【発明者】
【氏名】川添 直輝
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−137911(JP,A)
【文献】 特開2005−137973(JP,A)
【文献】 Biomacromolecules,2015年,Vol.16,pp.2599-2608
【文献】 Key Engineering Materials,2014年,Vols.609-610,pp.425-429
【文献】 Colloids and Surfaces B: Biointerfaces,2013年,Vol.101,pp.196-204
【文献】 Applied Materials & Interfaces,2015年,Vol.7,pp.13866-13875
【文献】 医科学応用研究財団研究報告,2015年,Vol.32,pp.48-50
【文献】 化学工業,2010年,Vol.61, No.1,pp.3-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00−33/44
A61K 41/00
A61K 47/00−47/69
B82Y 5/00
B82Y 25/00
B82Y 40/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体吸収性高分子を含む多孔質体と、
前記多孔質体の空孔表面に形成された、外部刺激で発熱するナノ粒子と、を含
孔径が1〜4000μmの範囲であり、
がん組織の切除部位への移植、又は、がん細胞の被覆に用いられる、複合多孔質材料。
【請求項2】
前記ナノ粒子は磁性ナノ粒子である、請求項1に記載の複合多孔質材料。
【請求項3】
前記磁性ナノ粒子は四酸化三鉄ナノ粒子または三酸化二鉄ナノ粒子である、請求項2に記載の複合多孔質材料。
【請求項4】
前記ナノ粒子の粒径が1nmから1000nmの範囲である、請求項1から3の何れかに記載の複合多孔質材料。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリエチレンイミン、アルブミン、及び、ゼラチンからなる群より選択される少なくとも1種の分子により表面修飾されている、請求項1から4の何れかに記載の複合多孔質材料。
【請求項6】
ナノ粒子と生体吸収性高分子との混合物から多孔質体を作製する、請求項1から5の何れかに記載の複合多孔質材料の製造方法。
【請求項7】
前記多孔質体の形成に当たって空孔形成剤を使用する、請求項に記載の複合多孔質材料の製造方法。
【請求項8】
前記空孔形成剤は氷である、請求項に記載の複合多孔質材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術でがん組織を除去した部位に埋め込まれ、あるいはがん組織を直接覆い、近赤外光や磁場などを体外から照射されて発熱することにより、多孔質材料内あるいは周囲のがん細胞を死滅に至らしめる多孔質材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんはすべての病気の中でトップの死因であり、現在でも3人に1人ががんで死亡している。高齢化社会の進行に伴い、この割合は今後も増加すると予測されている。このような中、がんの根本的治療に対する社会のニーズはきわめて高く、いろいろな方法と治療薬が開発されている。現在、がんの治療法として、手術療法、化学療法、放射線療法が三大療法といわれている。
【0003】
がん三大療法のうち、がん組織を手術で切除する治療法は最も直接的である。手術療法では、がん組織を切除し、その周辺組織やリンパ節に転移があれば、それらも一緒に切除する。早期のがんやある程度の進行がんであっても、切除可能であれば手術療法が積極的に行われている。手術療法には、塊状のがん組織を一気に切除できるというメリットがある。
【0004】
ただし、手術療法では、手術メスを入れることによって生じた創部の治癒や全身機能の回復にある程度は時間がかかる。さらに、切除後の正常部位どうしをそのまま継ぎ合わせるため、切除した部位の大きさによっては臓器の機能が低下してしまう場合もある。こうしたデメリットを低減するために、最近では、切除する範囲をできるだけ最小限にとどめる方法や、内視鏡による腹腔鏡下・胸腔鏡下手術のように体への負担を少なくする手術も行われるようになった。
【0005】
しかし現実には手術の後にかなりの頻度で再発が見られる。これは、肉眼では見えないがん細胞や微小ながん組織が手術後も体内に残存してしまうためである。手術で切除する範囲を小さくすればするほどがん細胞を取り残してしまう可能性が高くなり、再発のリスクが上昇する。
【0006】
手術療法では、取り残したがん細胞や微小ながん組織をどのように治療するかが問題となる。通常、手術後には抗がん剤による治療、すなわち化学療法や放射線療法を併用することもある。このように複数の治療法を組み合わせて、総合的に治療を進める集学的治療が行われている。
【0007】
前記の三大療法以外には、がん細胞が正常細胞に比べて熱に弱いという性質を利用し、がん細胞を死滅させる温熱療法が開発されている。高周波誘電加温法は、生体を電極で挟み全身を42℃程度に加温する方法である。ただし、血流の冷却作用のため、がん組織内部の温度は上がらず、がん組織を死滅させるには十分ではない。そこで、近赤外光や交流磁場の印加で発熱する磁性体をがん組織に取り込ませるため、近年、ナノサイズの磁性酸化鉄微粒子(非特許文献1)や磁性粒子を含有する医薬(たとえば、特許文献1、2)が検討されている。
【0008】
これらのナノ粒子を血管注射し、血流を通じて磁性粒子をがん組織に集積させるが、大きながん組織を死滅させたい場合に十分な磁性粒子の集積量を確保するのは難しい。
【0009】
以上のような従来技術の現状から、がん組織を切除する範囲を大きくするほど、がん細胞を取り残してしまう可能性は低くなるが、切除した部位やその大きさによっては臓器の機能が大きく低下してしまう場合がある。逆に切除する範囲を小さくするほど、がん細胞を取り残してしまう可能性が高くなり、再発のリスクが上昇する。また術後に、がん再発を予防する目的でがん治療薬を注射投与すると、薬剤は血流を通じて全身を循環するため、がん組織への集積効率の低さや副作用の惹起という問題があった。このように従来技術では、手術による組織・臓器機能の低下する場合がある上に、放射線療法や化学療法による副作用に苦しむという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実情に鑑み、外科手術でがん組織を切除した後に移植、あるいはがん組織に直接被覆するために使用できる磁性ナノ粒子/生体吸収性高分子複合多孔質材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、生体吸収性高分子と、外部刺激で発熱するナノ粒子とを含む、複合多孔質材料が与えられる。
ここで、前記ナノ粒子は磁性ナノ粒子であってよい。
また、前記磁性ナノ粒子は四酸化三鉄ナノ粒子または三酸化二鉄ナノ粒子であってよい。
また、前記ナノ粒子の粒径が1nmから1000nmの範囲であってよい。
また、その孔径が1〜4000μmの範囲であってよい。
本発明の他の側面によれば、外科的な手術でがん組織を除去した部位に埋め込まれ、またはがん組織を直接覆い、外部の近赤外光または磁場が照射されることによって発熱し、内部或いは周囲のがん細胞を死滅できる、前記何れかの複合多孔質材料が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、ナノ粒子と生体吸収性高分子との混合物から多孔質体を作製する、前記何れかの複合多孔質材料の製造方法が与えられる。
ここで、生体吸収性高分子の多孔質体の空孔表面にナノ粒子を形成してよい。
また、前記多孔質体の形成に当たって空孔形成剤を使用してよい。
また、前記空孔形成剤は氷であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、がん組織の切除部位に複合多孔質材料を移植し、あるいは複合多孔質材料でがん組織を覆うことにより、明確に局限され、しかも自由な形状の領域だけを発熱させることができる。また、場所毎の発熱量についても、場所毎に複合多孔質材料の試料量(厚さ等)やそこに使用する材料中のナノ粒子の含有量を変えるなどの処置により、調節可能である。従って、複雑な形状の領域に存在していたり、あるいは熱による損傷が深刻な障害をもたらす部位の近傍に存在するがん組織であっても、効率的に死滅させることができる。また、複合多孔質材料が体内で分解吸収されるようにすることもできる。更に、それにともなって放出された磁性ナノ粒子はがん細胞に取り込まれ、外科手術で取り残されたがん細胞を死滅させることができる。また、外部磁場を与えることで、がん組織とがん細胞を繰り返し加熱することにより死滅させることが可能である。また、多孔質構造により、がん細胞を複合多孔質材料内に侵入せしめることができ、がん細胞を効率的に死滅させることも可能となる。これにより、手術などにより更に散らばりやすくなったがん細胞を、体内に拡散する前に多孔質材料中に取り込んで、ここで加熱によって死滅させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を1:99として作製した、表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真。
図1b】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を5:95として作製した、表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図1c】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を10:90として作製した、表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図1d】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製した、表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図1e】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を20:80として作製した、表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図1f】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を30:70として作製した、表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図1g】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を40:60として作製した、表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図2】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を10:90として作製した、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図3】未修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製した、未修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図4】ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製した、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図5】ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製した、ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図6】ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を1:99として作製した、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図7】沈着法で作製した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンとの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図8】a.ゼラチン濃度は2.0(w/v)%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製した、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真。b.ゼラチン濃度は4.0%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製した、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真。c.ゼラチン濃度は6.0%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製した、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真。
図9a】コラーゲン濃度は0.5%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比を15:85として作製した、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真。
図9b】コラーゲン濃度は1.0%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比を15:85として作製した、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真。
図9c】コラーゲン濃度は2.0%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比を15:85として作製した、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真。
図10】コラーゲン濃度は2.0%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比を15:85とし、大きさが425μm〜500μmの氷微粒子を用いて作製した、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料の走査電子顕微鏡写真(上は低倍率、下は高倍率)。
図11】クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン架橋複合多孔質材料に近赤外光を照射したときの温度変化(光熱効果)。Gelはゼラチン、Fe−1、Fe−5、Fe−10、Fe−15のハイフンの後の数字はそれぞれクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子の重量分率(%)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳述する。本発明における複合多孔質材料の基材には、生体吸収性天然高分子、生体吸収合成高分子を用いることができる。生体吸収性天然高分子は生体に由来する、生体吸収性合成高分子は人工物を原料に合成した生体吸収性を持つもので、生体吸収性と生体適合性を示すものであれば何れも使用できる。
【0015】
本発明において好ましく使用される生体吸収性高分子はゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、細胞成長因子、細胞分化制御因子、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ (グリセロールセバシン酸及びこれらの共重合体である。これらの生体吸収性合成高分子を1種類、あるいは2種類以上を混合してから用いることができる。本発明において好ましく使用される生体吸収性高分子はゼラチン、コラーゲン、あるいはゼラチンとコラーゲンを主成分とする混合物である。コラーゲンにはI、II、III、IV、V、VI、VIII、IX、X型などのものがあるが、本発明においてはこれらの何れも使用でき、これらの誘導体を使用してもよい。
【0016】
磁性ナノ粒子と生体吸収性合成高分子との複合多孔質材料の空孔の孔径は1〜4000μm、好ましくは20〜1000μm程度とするのがよい。また、複合多孔質材料の大きさは、複合多孔質材料の使用態様によって適宜定めればよいが、通常一辺は0.01〜20cmで、好ましくは0.02〜5 cmである。その空隙率は、通常5〜99.9%、好ましくは50〜99.9%である。
【0017】
上記の磁性ナノ粒子として、四酸化三鉄ナノ粒子あるいは三酸化二鉄ナノ粒子を使用してよいが、望ましいのは四酸化三鉄ナノ粒子である。更に磁性ナノ粒子としては従来公知のものの何れも使用してよい。これらの磁性ナノ粒子は公知の方法で合成してもよい。四酸化三鉄ナノ粒子として、市販の四酸化三鉄ナノ粒子を用いてもよいし、例えば下記の方法で合成してもよい。
【0018】
まず、チオ硫酸ナトリウム(NaSO)を純水に溶かし、チオ硫酸ナトリウム水溶液を調製する。また、塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)を純水に溶解させて塩化鉄(III)水溶液を調製する。前記2種類の溶液に窒素ガスを通し、窒素雰囲気下で、塩化鉄(III)水溶液を撹拌しながら、チオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下する。この混合溶液を75℃の水浴で撹拌しながら加熱し、アンモニア水を滴下し、40分間反応をおこなう。その後、反応溶液を室温まで冷却し、永久磁石で四酸化三鉄ナノ粒子を回収する。回収物を純水で4回洗浄し、これにより、表面が未修飾の四酸化三鉄ナノ粒子が得られる。上記の反応において、チオ硫酸ナトリウムの濃度は0.01g/mL〜0.5g/mLで、望ましいのは0.02g/mL〜0.1g/mLである。塩化鉄(III)六水和物の濃度は0.1g/mL〜10g/mLで、望ましいのは0.05g/mL〜1.0g/mLである。アンモニア水の濃度は25%〜28%で、望ましいのは25%である。
【0019】
上記の磁性ナノ粒子は、表面修飾していないものでも、表面修飾したものでもいずれも利用できる。磁性ナノ粒子の表面修飾は、多孔質体の原料である生体吸収性物質の溶液と混合するときに混合溶液における磁性ナノ粒子の分散性を向上させるために行われるものである。表面修飾に用いられる分子として、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリエチレンイミン、アルブミン、ゼラチンなどが挙げられる。これらの分子で磁性ナノ粒子の表面を修飾するためには、例えば上記の磁性ナノ粒子の合成反応過程で、アンモニア水を滴下してから、これらの分子の一種類か複数類の水溶液をさらに滴下し、40分間反応をおこなう。
【0020】
磁性ナノ粒子の粒径は1nmから1000nmのものを利用できるが、発熱効率や分散性を考えると望ましいのは2nmから500nmである。磁性ナノ粒子は粒径の均一なものでも良いし、不均一なものでもよい。
【0021】
上記生体吸収性高分子を溶かす溶媒には、純水、純水とエタノールの混合溶媒、pHを調整した酢酸水溶液、塩酸水溶液、酢酸/水/エタノール混合溶媒、及び塩酸/エタノール混合溶媒、クロロホルム、四塩化炭素、ジオキサン、トリクロロ酢酸、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトン、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルアセトアミド、ヘキサフルオロ−2−プロパノールなどが挙げられる。望ましい溶媒は純水、純水とエタノールとの混合溶媒、pHを調整した酢酸水溶液、pHを調製した塩酸水溶液、酢酸/水/エタノール混合溶媒、及び塩酸/エタノール混合溶媒である。pHを調整した溶液のpHは1〜6.5で、望ましいpHは2.5から6までである。エタノールと水との体積比は1:99から50:50でよいが、望ましくは1:99から20:80である。
【0022】
生体吸収性高分子の溶液を調製する温度はその生体吸収性高分子が分解、ゲル化しない温度で行われる。通常は1〜60℃であるが、望ましくは4〜50℃である。
【0023】
磁性ナノ粒子と生体吸収性物質の多孔質高分子とを複合化する方法として、多孔質材料高分子と磁性ナノ粒子を混合してから多孔質化する方法と、多孔質材料を作製してから、その多孔質材料の空孔壁の表面で磁性ナノ粒子を形成、沈着させる方法とがある。磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子との複合多孔質材料における磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子との重量比は0.1:99.9から50:50までで、望ましくは0.5:99.5から20:80までである。
【0024】
多孔質材料の生体吸収性高分子原料と磁性ナノ粒子とを混合してから多孔質化する方法では、まず生体吸収性高分子の溶液に磁性ナノ粒子を添加した後、超音波あるいは機械的な攪拌により、磁性ナノ粒子を生体吸収性物質によく分散させる。この分散溶液を用いて磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子との複合多孔質材料を作製することができる。
【0025】
前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子との複合多孔質材料を作製する方法としては、例えば、前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液をそのまま凍結乾燥する方法と、あらかじめ作製した氷微粒子を前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液に添加し、多孔質化する方法とが挙げられる。
【0026】
前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液をそのまま凍結乾燥する方法では、磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子の混合溶液を予備凍結する。その方法としては、例えば、生体吸収性高分子の溶液に磁性ナノ粒子を添加し、超音波あるいは機械的な攪拌により、磁性ナノ粒子を生体吸収性高分子によく分散させる。磁性ナノ粒子を均一に分散させた磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液をフリーザーに数時間静置し、凍結する。フリーザーの温度は−1〜100℃で、望ましい温度は−5〜80℃である。凍結時間は1〜24時間で、望ましい凍結時間は2〜8時間である。
【0027】
あるいは、あらかじめ作製した氷微粒子を前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液に添加し、多孔質化する方法を使用してもよい。この場合は、まず純水を容器に満たした液体窒素中に噴霧し、氷微粒子を作製する。形成した氷微粒子を低温チャンバー(−15℃)に容器ごと移し、容器内の液体窒素が気化して消失するまで、容器を静置する。その後、大きな目開きの篩と小さな目開きの篩とを用いて所定の粒径の氷を篩い分ける。何れの篩もその目開きは公称20〜2000μmで、望ましいのは公称50〜1000μmである。篩い分けた氷微粒子を−4℃の低温チャンバー内に1〜6時間静置し、氷微粒子の温度を−4℃で平衡化させる。そして、前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液を−4℃の低温チャンバーに移し、数十分間静置することによって温度平衡化させる。温度を−4℃にした磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液と前記の温度を−4℃にした篩い分けた氷微粒子を一定の体積mL対重量gの比率で−4℃の低温チャンバーで混合する。磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液と氷微粒子との比率は、体積mL対重量gで99:1〜10:90で良いが、望ましい比率(体積mL対重量g)は80:20〜30:70である。氷微粒子が磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液に均一に分散するようによく攪拌する。この混合物を−20℃で12時間静置した後、さらに−80℃で4時間静置することにより、混合物を凍結する。
【0028】
上記2つの方法の何れにおいても、その過程で準備した凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質構造を形成させる。
【0029】
前記の磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子の複合多孔質材料を架橋することで多孔質材料の構造を安定させ、架橋複合多孔質材料とする。用いられる架橋方法としては、従来公知のものが何れも使用できる。一般的に蒸気法や溶液法を用いることができる。蒸気法で用いられる架橋剤としては、従来公知のものが何れも使用できる。好ましく使用される架橋剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドのようなアルデヒド類、特にグルタルアルデヒドである。
【0030】
前記の蒸気法は、上記の架橋剤をガス状にして用いるのが好ましい。具体的には、上記磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料を一定温度で一定濃度の架橋剤又はその水溶液で飽和した架橋剤蒸気の雰囲気下で一定時間架橋を行う。架橋温度は、上記磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料が溶解せず、且つ架橋剤の蒸気が形成できる範囲内で選定すればよく、通常、20℃〜50℃に設定される。架橋時間は、架橋剤の種類や架橋温度にもよるが、上記磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料の生体吸収性を阻害せず、かつ生体移植時にこのものが溶解しないような架橋固定化が行われる範囲に設定するのが望ましい。好ましい架橋時間は10分から12時間程度である。架橋反応後の磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料を室温で純水に浸漬して洗浄し、これを1回の洗浄として4回以上繰り返す。洗浄後未反応の活性官能基を失活させるため、グリシン水溶液に磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料を室温で数時間浸漬する。グリシン水溶液の濃度は0.01〜1.0Mで、望ましいのは0.05〜10.3Mである。温度は4℃〜37℃で、望ましいのは4℃から30℃である。時間は1〜24時間で、望ましいのは4〜12時間である。
【0031】
溶液架橋法では、カルボジイミド、アルデヒド類、或いはエポキシ類などの架橋剤とN−ヒドロキシコハク酸イミドなどの活性化剤を用いて架橋する。未架橋の磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料は水に溶解してしまうので、これらの架橋剤をエタノールと水の混合溶媒に溶解させ、数段階にかけて架橋する。各段階の混合溶媒のエタノール対水の割合は異なり、最初の段階から最終段階までエタノール対水の割合は高いほうから低いほうに変える。エタノール対水の割合は99/1から1/99までである。架橋温度は4℃から40℃で、望ましくは室温である。架橋剤の濃度は5mM〜500mMで、望ましくは10mM〜100mMである。活性化剤の濃度は5mM〜500mMで、望ましくは10mM〜100mMである。最後の架橋反応後の磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料を室温で純水に浸漬して洗浄し、これを1回の洗浄として4回以上繰り返す。洗浄後未反応の活性官能基を失活させるため、グリシン水溶液に磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との複合多孔質材料を室温で数時間浸漬する。グリシン水溶液の濃度は0.01〜1.0Mで、望ましくのは0.05〜10.3Mである。温度は4℃〜37℃で、望ましくは4℃から30度である。時間は1〜24時間で、望ましくは4〜12時間である。
【0032】
上記の架橋複合多孔質材料を30分間純水での洗浄を3回以上繰り返する。洗浄後、5Pa以下の減圧下で48時間凍結乾燥を行い、目的の磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との架橋複合多孔質材料の架橋複合多孔質材料を得る。
【0033】
あるいは、生体吸収性高分子からなる多孔質材料を作製した後で前記磁性ナノ粒子を多孔質材料の空孔壁面で形成、沈着させる方法(沈着法)を含む製造方法を使用することができる。この場合、生体吸収性高分子からなる多孔質材料の作製方法として、前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる混合溶液のかわりに、生体吸収性高分子のみの溶液にすれば、前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子との複合多孔質材料を作製する方法(氷微粒子を利用と利用しない二つの方法)を適用することができる。その後の洗浄、架橋処理、ブロッキング処理工程は前記磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子との複合多孔質材料のすべての工程と同じである。これにより、生体吸収性高分子の架橋多孔質材料を作製できる。
【0034】
その後、生体吸収性高分子多孔質材料の空孔壁面で磁性ナノ粒子を形成させることにより、磁性ナノ粒子と生体吸収性天然高分子との架橋複合多孔質材料の架橋複合多孔質材料を得る。そのためには、例えば、前記チオ硫酸ナトリウム水溶液と塩化鉄(III)水溶液に窒素ガスをバブリングした後、窒素雰囲気下で塩化鉄(III)水溶液を撹拌しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下する。次に、生体吸収性高分子の架橋多孔質材料をチオ硫酸ナトリウム水溶液と塩化鉄(III)水溶液との混合溶液に染み付ける。この混合物から前記生体吸収性高分子架橋多孔質材料を取り出し、75℃の水浴で加熱した25%のアンモニア水に浸漬する。振とうしながら、60分間反応を行う。これにより、生体吸収性高分子架橋多孔質材料の空孔壁面に磁性ナノ粒子を形成させる。純水で6回以上洗浄した後、磁性ナノ粒子と生体吸収性高分子からなる架橋複合多孔質材料を得る。
【0035】
このような複合多孔質材料に対して外部から近赤外光や交流磁場などの刺激を与えると、磁性ナノ粒子は発熱し、がん細胞とがん組織を死滅させることができる。必要に応じて前記の外部刺激を繰り返し与え、磁性ナノ粒子を繰り返し発熱させることにより、がん細胞やがん組織への殺傷効果を高められると期待される。また、複合多孔質材料の基材である生体吸収性高分子は、多孔質であることから体内で急速に分解・吸収され、それにともなって磁性ナノ粒子が放出される。そして、磁性ナノ粒子は周囲の細胞に取り込まれ、周囲のがん細胞を死滅させることも可能である。これにより、がん組織とがん細胞を効率よく死滅させることが期待される。また、このような複合多孔質材料は、外部からの電気的な配線やあるいは加熱流体などの供給のための配管の接続なしで、複合体内部やその近傍部位を温熱療法に適した温度まで昇温させ、またその温度を所望の時間だけ維持することができる。更に、本発明に係る複合多孔質材料では、その周囲に存在する細胞を孔の中に効率よく取り込み、またそれを加熱することができる。従って、例えば手術後に切除箇所の近傍に残留したがん細胞を捕捉・死滅させることもできる。
【実施例】
【0036】
以下では、本発明に係るナノ粒子を複合化した多孔質材料を各種作製して、その表面形状などを調べた結果を示す。なお、温熱療法自体の作用・効果は良く知られている事項であって、それは加熱機構の如何を問わずに発揮されるものであるから、以下では複合多孔質材料の製造方法と、その結果得られる特異な構造についての例を示す。また、本発明に係る多孔質材料が外部からの刺激により実際に発熱することを実証する。
【0037】
[実施例1]
ゼラチン多孔質材料を作製するために、原料ゼラチンの濃度が0.1(w/w)%〜50.0(w/w)%の範囲内のものを用いた。クエン酸で修飾した四酸化三鉄ナノ粒子(以下、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子と表記)とゼラチンの重量比が0.1:99.9〜50:50の範囲内で作製した。
【0038】
ゼラチンの濃度が4.0(w/v)%で、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比が1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、30:70と40:60のクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を作製した。大きさが425μm〜500μmの氷微粒子を多孔質材料の空孔形成剤として用いた。
【0039】
まず、0.8gのブタ由来ゼラチンに30(v/v)% 酢酸水溶液10mLを加えて、45℃で2時間、つづいて室温で4時間撹拌し、8.0(w/v)%ゼラチン溶液を調製した。一方、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子を調製した。チオ硫酸ナトリウム(Na)0.4gを20mL純水に溶解させ、チオ硫酸ナトリウム水溶液を調製した。塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)2.6gを40mLの純水に溶解させ、塩化鉄(III)水溶液を調製した。この二つの溶液に窒素ガスをバブリングした後、窒素雰囲気下で塩化鉄(III)水溶液40mLを撹拌しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液20mLを滴下した。この混合溶液を75℃の水浴中で撹拌しながら加熱し、25%のアンモニア水4mLを滴下し、更に0.1g/mLのクエン酸水溶液10mLを滴下し、40分間反応を行った。これにより、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子を得た。その後、反応溶液を室温まで冷却し、永久磁石を用いて四酸化三鉄ナノ粒子を回収した。回収物を純水で4回洗浄した後、適量の純水に分散させ、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子の濃度を0.00081g/mL、0.0042g/mL、0.0089g/mL、0.014g/mL、0.020g/mL、0.034g/mLと0.053g/mLになるように調製した。
【0040】
一方、氷微粒子を作製するため、純水300mLを液体窒素10Lの入った容器に噴霧し、水滴を凍結させた。凍結物を−15℃の低温チャンバーに容器ごと移した。そのまま低温チャンバー内で約2時間静置することによって、液体窒素を気化させた。次に、低温チャンバー内で公称500μmの目開きをもつ篩と公称425μmの目開きをもつ篩を用いて大きさ425μm〜500μm氷を篩い分けた。低温チャンバー内の温度を−4℃に変更し、前記の氷微粒子を2時間静置し、氷微粒子の温度を−4℃に調製した。
【0041】
前記の8.0(w/v)%ゼラチン溶液10mLと濃度が0.00081g/mL、0.0042g/mL、0.0089g/mL、0.014g/mL、0.020g/mL、0.034g/mLと0.053g/mLのクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLのそれぞれとを室温で混合し、超音波処理によりクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させた。調製した混合溶液のゼラチンの濃度は4.0(w/v)%で、クエン酸表面修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比はそれぞれ1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、30:70と40:60であった。これらのクエン酸表面修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液を−4℃の低温チャンバーに移し、40分間静置することによって温度平衡化させた。温度を−4℃にしたクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液20mLと前記の大きさ425μm〜500μmの氷微粒子を7:3(体積mL対重量g)の比率で−4℃の低温チャンバーで混合した。氷微粒子がクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液に均一に分散するようによく攪拌した。この混合物を−20℃で12時間静置した後、さらに−80℃で4時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質構造を形成させた。
【0042】
次に、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質材料を99.5%のエタノールで洗浄(10分間×1回)した。その後、次の3段階の工程に分けて逐次的に架橋反応を行った。第1段階の架橋反応工程では、エタノール/水(95/5、v/v)30mLに0.03gの2−モルホリノエタンスルホン酸(MES、終濃度0.1wt%)を撹拌しながら加えた。このMES溶液に0.288gの1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、終濃度50mM)及び0.069gのN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS、終濃度20mM)を加えて10分間撹拌することにより、第1段階の架橋反応溶液を調製した。この第1段階の架橋反応溶液に前記のクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質材料を室温で8時間浸漬することによって、第1段階の架橋反応を行った。第2段階の架橋反応工程では、エタノール/水(90/10、v/v)30mLに0.03gのMESを撹拌しながら加えた。このMES溶液に0.288gのEDC及び0.069gのNHSを加えて10分間撹拌することにより、第2段階の架橋反応溶液を調製した。この第2段階の架橋反応溶液に第1段階の架橋反応後のクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質材料を室温で8時間浸漬し、第2段階の架橋反応を行った。第3段階の架橋反応工程では、エタノール/水(85/15、v/v)30mLに0.03gのMESを撹拌しながら加えた。このMES溶液に0.288gのEDC及び0.069gのNHSを加えて10分間撹拌することにより、第3段階の架橋反応溶液を調製した。この第3段階の架橋反応溶液に第2段階の架橋反応後のクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質材料を室温で8時間浸漬して、第2段階の架橋反応を行った。最後の架橋反応後のクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質材料を室温で30分間超純水に浸漬し、これを1回の洗浄として6回繰り返した。その後、0.1Mのグリシン水溶液にクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン多孔質材料を室温で8時間浸漬した。その後、上記の30分間純水での洗浄を6回繰り返した。洗浄後、5Pa以下の減圧下で48時間凍結乾燥を行い、目的のクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を得た。
【0043】
得られた表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/架橋ゼラチン多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察して、図1a〜図1gに示す像を得た。これらの図からも分かるように、ゼラチンの濃度を4.0(w/v)%として、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比をそれぞれ1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、30:70及び40:60として作製したクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの各架橋複合多孔質材料は、氷微粒子の大きさ及び形状を反映した空孔構造と球状の空孔を連通する空隙とからなる多孔質構造を有し、またクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子は空孔壁面で観察された。
【0044】
[実施例2]
クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの複合多孔質材料を作製した。ゼラチンの濃度は4.0(w/w)%であり、またクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比は15:85とした。ここでは氷微粒子は使用しなかった。
【0045】
実施例1で作製した8.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと実施例1で作製した濃度が0.014g/mLのクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLととを室温で混合し、超音波処理により、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させた。調製した混合溶液のゼラチンの濃度は4.0(w/v)%であり、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比は15:85であった。このクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液を−80℃の低温で6時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質構造を形成させた。次に、実施例1と同様の洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を得た。
【0046】
得られたクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察した。その走査電子顕微鏡写真を図2に示す。ゼラチンの濃度が4.0(w/v)%であり、またクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比が15:85で作製した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料は、扁平な空孔を有し、四酸化三鉄ナノ粒子は空孔壁面で観察された。
【0047】
[実施例3]
未修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの複合多孔質材料を作製した。ゼラチンの濃度は4.0(w/v)%、四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比は15:85とした。ここでは、空孔形成剤として氷微粒子を使用しなかった。
【0048】
まず、未修飾の四酸化三鉄ナノ粒子(未修飾四酸化三鉄ナノ粒子と表記)を調製した。実施例1で作製したチオ硫酸ナトリウム水溶液及び塩化鉄(III)水溶液にそれぞれ窒素ガスを通し、次に、窒素ガス雰囲気下で、塩化鉄(III)水溶液40mLを撹拌しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液20mLを滴下した。この混合溶液を75℃の水浴で撹拌しながら加熱し、25%のアンモニア水4mLを滴下し、40分間反応を行った。これにより、表面修飾していない四酸化三鉄ナノ粒子を得た。その後、反応溶液を室温まで冷却し、永久磁石で四酸化三鉄ナノ粒子を集めた。これを純水で4回洗浄した後、未修飾四酸化三鉄ナノ粒子を純水に分散させ、未修飾四酸化三鉄ナノ粒子の濃度を0.014g/mLになるように調製した。
【0049】
実施例1で作製した8.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.014g/mLの未修飾四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを室温で混合し、超音波処理により未修飾四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させた。調製した混合溶液のゼラチンの濃度は4.0(w/v)%であり、また未修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比は15:85であった。この四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液を−80℃で6時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、未修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質構造を形成させた。次に、実施例1と同様の洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、未修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を得た。
【0050】
得られた四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を走査電子顕微鏡で観察して、図3に示す像を得た。ゼラチンの濃度が4.0(w/v)%であり、また表面修飾していない四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比が15:85で作製した未修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料は、扁平な空孔を有し、その空孔壁面では未修飾四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0051】
[実施例4]
ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの複合多孔質材料を作製した。ゼラチンの濃度は4.0(w/w)%であり、またポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比は15:85であった。ここでは空孔形成剤として氷微粒子を使用しなかった。
【0052】
まず、ポリビニルアルコールで修飾した四酸化三鉄ナノ粒子(以下、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子と表記)を調製した。実施例1で作製したチオ硫酸ナトリウム水溶液及び塩化鉄(III)水溶液にそれぞれ窒素ガスをバブリングした後、窒素雰囲気下で塩化鉄(III)水溶液40mLを撹拌しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液20mLを滴下した。この混合溶液を75℃の水浴で撹拌しながら加熱し、25%のアンモニア水4mLを滴下し、更に重量平均分子量が22,000のポリビニルアルコールの水溶液(0.1g/mL)10mLを滴下した後、40分間反応を行った。これにより、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子を得た。その後、反応溶液を室温まで冷却し、磁石で四酸化三鉄ナノ粒子を集めた。これを純水で4回洗浄した後、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子を純水に分散させ、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子の濃度を0.014g/mLになるように調製した。
【0053】
実施例1で作製した8.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.014g/mLのポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを室温で混合し、超音波処理によりポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させた。調製した混合溶液のゼラチンの濃度は4.0(w/v)%であり、またポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比は15:85であった。このポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液を−80℃の低温で6時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質構造を形成させた。次に、実施例1と同様の洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を得た。
【0054】
得られたポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察した。その、走査電子顕微鏡写真を図4に示す。ゼラチンの濃度が4.0(w/v)%で、ポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比が15:85で作製したポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料は扁平な空孔を有し、空孔壁面ではポリビニルアルコール修飾四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0055】
[実施例5]
ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの複合多孔質材料を作製した。ゼラチンの濃度は4.0(w/w)%、ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比が15:85であった。空孔形成剤として氷微粒子を使用しなかった。
【0056】
まず、ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子(以下、ポリアクリル酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子と表記)を調製した。実施例1で作製したチオ硫酸ナトリウム水溶液及び塩化鉄(III)水溶液にそれぞれ窒素ガスをバブリングした後、窒素雰囲気下で塩化鉄(III)水溶液40mLを撹拌しながら、チオ硫酸ナトリウム水溶液20mLを滴下した。この混合溶液を75℃の水浴で撹拌しながら加熱し、25%のアンモニア水4mLを滴下し、更に重量平均分子量が450,000のポリアクリル酸の水溶液(0.1g/mL)10mLを滴下した後、40分間反応を行った。これにより、ポリアクリル酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子を得た。その後、反応溶液を室温まで冷却し、永久磁石で四酸化三鉄ナノ粒子を集めた。これを純水で4回洗浄した後、ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子を純水に分散させ、ポリアクリル酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子の濃度を0.014g/mLになるように調製した。
【0057】
実施例1で作製した8.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.014g/mLのポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを室温で混合し、超音波処理によりポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させた。調製した混合溶液のゼラチンの濃度は4.0(w/v)%、ポリアクリル酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比が15:85であった。このポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液を−80℃の低温で6時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質構造を形成させた。次に、実施例1と同様な洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、ポリアクリル酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を得た。
【0058】
得られたポリアクリル酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察した。その走査電子顕微鏡写真を図4に示す。ゼラチンの濃度が4.0(w/v)%で、ポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比を15:85として作製したポリアクリル酸で表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料は扁平な空孔を有し、その空孔壁面ではポリアクリル酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0059】
[実施例6]
ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの複合多孔質材料を作製した。ゼラチンの濃度は4.0(w/w)%であり、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比は1:99とした。ここでは氷微粒子を使用しなかった。
【0060】
まず、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子(四酸化三鉄ナノ粒子と呼ぶ)を調製した。実施例1で作製したチオ硫酸ナトリウム水溶液及び塩化鉄(III)水溶液にそれぞれ窒素ガスをバブリングした後、窒素雰囲気下で塩化鉄(III)水溶液40mLを撹拌しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液20mLを滴下した。この混合溶液を75℃の水浴で撹拌しながら加熱し、25%のアンモニア水4mLを滴下し、更に重量平均分子量が約110,000のゼラチンの水溶液(0.1g/mL)10mLを滴下した後、40分間反応を行った。これにより、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子を得た。その後、反応溶液を室温まで冷却し、永久磁石で四酸化三鉄ナノ粒子を集めた。これを純水で4回洗浄した後、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子を純水に分散させ、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子の濃度を0.00081g/mLになるように調製した。
【0061】
実施例1で作製した8.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.00081g/mLのゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを室温で混合し、超音波処理によりゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させた。調製した混合溶液のゼラチンの濃度は4.0(w/v)%であり、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比は1:90であった。このゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン混合溶液を−80℃の低温で6時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質構造を形成させた。次に、実施例1と同様の洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を得た。
【0062】
得られたゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察し、走査電子顕微鏡写真を図6に示す。ゼラチンの濃度が4.0(w/v)%で、ゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの重量比が1:99で作製したゼラチンで表面修飾した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料は、扁平な空孔を有し、空孔壁面では四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0063】
[実施例7]
ゼラチン多孔質材料を作製した後その空孔壁の表面で四酸化三鉄ナノ粒子を形成させることにより、四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンの複合多孔質材料を沈着法によって作製した。
【0064】
実施例1で作製した4.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLを−80℃の低温で6時間静置することにより、ゼラチン溶液を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、多孔質構造を形成した。次に、実施例1と同様の洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、ゼラチンの架橋多孔質材料を得た。
【0065】
実施例1で作製したチオ硫酸ナトリウム水溶液及び塩化鉄(III)水溶液にそれぞれ窒素ガスをバブリングした後、窒素雰囲気下で塩化鉄(III)水溶液40mLを撹拌しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液20mLを滴下した。ゼラチンの架橋多孔質材料をチオ硫酸ナトリウム水溶液と塩化鉄(III)水溶液との混合溶液に染み付けた。この混合物からゼラチンの架橋多孔質材料を取り出し、75℃の水浴で加熱した25%のアンモニア水10mLに入れた。振動しながら、60分間反応を行った。これにより、ゼラチン多孔質材料の空孔壁面に四酸化三鉄ナノ粒子を形成させた。純水で10回洗浄した後、四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を得た。
【0066】
作製した四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察した。その走査電子顕微鏡写真を図7に示す。四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料は扁平な空孔を有し、空孔壁面では四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0067】
[実施例8]
ゼラチンの濃度条件を2.0(w/v)%、4.0(w/v)%、6.0(w/v)%として、株式会社フェローテックから商品名が磁性ナノ粒子(表面コーティングなし)、型番:EMG1111として提供される市販の四酸化三鉄ナノ粒子(他の実施例で「市販の四酸化三鉄ナノ粒子」として言及されているものも同じ製品である)を用いて、四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比が15:85の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を作製した。ここでは氷微粒子を使用しなかった。
【0068】
まず、0.4g、0.8gと1.2gのブタ由来ゼラチンにそれぞれ30(v/v)%酢酸水溶液10mLを加えて、45℃で2時間撹拌し、つづいて室温で4時間撹拌し、4.0、8.0と12.0(w/v)%ゼラチンの溶液を調製した。
【0069】
続いて、市販の四酸化三鉄ナノ粒子を純水に分散させ、濃度が0.0071g/mL、0.014g/mLと0.0211g/mLになるように調製した。
【0070】
前記の4.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.0071g/mLの四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを、前記の8.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.014g/mLの四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを、また前記の12.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.0211g/mLの四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとをそれぞれ室温で混合し、超音波処理により四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させることによって、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比が15:85であって、ゼラチンの濃度が2.0、4.0及び6.0(w/v)%である懸濁液を調製した。
【0071】
これらの市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン懸濁液を−80℃の低温で6時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン複合多孔質構造を形成した。次に、実施例1と同様の洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料を作製した。
【0072】
作製した市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察した。その走査電子顕微鏡写真を図8に示す。ゼラチンの濃度がそれぞれ2.0、4.0及び6.0(w/v)%であって市販の四酸化三鉄ナノ粒子とゼラチンとの重量比が15:85で作製した市販の四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチンの各架橋複合多孔質材料は不規則な空孔を持ち、空孔壁面では四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0073】
[実施例9]
コラーゲンの濃度条件が0.5(w/v)%、1.0(w/v)%と2.0(w/v)%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子を用いて、四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比が15:85の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料を作製した。ここでは氷微粒子を使用しなかった。
【0074】
まず、純水に酢酸溶液を添加し、pHが3.0の酢酸水溶液を作製した。pHが3.0の酢酸水溶液と無水エタノールとを90:10(v/v)の割合で混合し、水/エタノール混合溶液を調製した。水/エタノール混合溶液を4℃の低温チャンバーに12時間静置し、水/エタノール混合溶液の温度を4℃に調整した。0.1g、0.2g及び0.4gのブタ由来のタイプIコラーゲンをそれぞれ温度が4℃の水/エタノール混合溶液10mLに入れ、4℃のチャンバーで48時間撹拌し、1.0、2.0及び4.0(w/v)%コラーゲンの溶液を調製した。
【0075】
続いて、市販の四酸化三鉄ナノ粒子を純水に分散させ、四酸化三鉄ナノ粒子の濃度を0.0018g/mL、0.0035g/mL及び0.0071g/mLになるように調製した。これらの溶液を4℃のチャンバーで10時間静置し、溶液の温度を4℃に調整した。
【0076】
前記の1.0(w/v)%のコラーゲン溶液10mLと前記の濃度が0.0018g/mLの市販の四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを、また前記の2.0(w/v)%のコラーゲン溶液10mLと前記の濃度が0.0035g/mLの市販の四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを、更に前記の4.0(w/v)%のゼラチン溶液10mLと前記の濃度が0.0071g/mLの四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを、それぞれを4℃のチャンバーで混合し、超音波処理により四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させ、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンの重量比が15:85で、コラーゲンの濃度は0.5、1.0及び2.0(w/v)%の懸濁液を調製した。
【0077】
これらの市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの懸濁液を−80℃の低温で6時間静置することにより、混合物を凍結させた。凍結物を室温、5Pa以下の減圧下で3日間凍結乾燥を行うことにより、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲン複合多孔質構造を形成した。次に、実施例1と同様の洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料を作製した。
【0078】
作製した市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察した。その走査電子顕微鏡写真を図9に示す。コラーゲンの濃度がそれぞれ0.5、1.0及び2.0(w/v)%で、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比が15:85で作製した市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの各架橋複合多孔質材料は不規則な空孔を持ち、空孔壁面では四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0079】
[実施例10]
コラーゲンの濃度条件を2.0(w/v)%とし、また市販の四酸化三鉄ナノ粒子を用いて、四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比が15:85の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料を作製した。ここでは、大きさが425μm〜500μmの氷微粒子を多孔質材料の作製に用いた。
【0080】
実施例9で調製した4.0(w/v)%のコラーゲン溶液10mLと実施例9で調製した濃度が0.0071g/mLの市販の四酸化三鉄ナノ粒子懸濁液10mLとを4℃のチャンバーで混合し、超音波処理により四酸化三鉄ナノ粒子をゼラチン溶液に均一に分散させることにより、市販の四酸化三鉄ナノ粒子とコラーゲンとの重量比が15:85で、コラーゲンの濃度は2.0(w/v)%の懸濁液を調製した。この市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲン混合溶液を−4℃の低温チャンバーに移し、40分間静置し、温度平衡化を行った。温度を−4℃にした市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲン混合溶液20mLと実施例1で作製して温度を−4℃にバランスした大きさ425μm〜500μmの氷微粒子とを、7:3(重量g対体積mL)の比率で−4℃の低温チャンバーで混合した。氷微粒子が市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲン混合溶液に均一に分散するようによく攪拌した。この混合物を−20℃の低温で12時間静置した後、さらに−80℃の低温で4時間静置することにより、混合物を凍結させた。次に、実施例1と同様の凍結乾燥、洗浄、架橋、ブロッキング処理、凍結の各工程を経て、氷微粒子を用いての市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料を作製した。
【0081】
作製した氷微粒子を用いた場合の市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料の構造を走査電子顕微鏡で観察した。その走査電子顕微鏡写真を図10に示す。氷微粒子を用いた場合の市販の四酸化三鉄ナノ粒子/コラーゲンの架橋複合多孔質材料は、氷微粒子のサイズを反映した球状の空孔構造及び球状の空孔を連通する空隙からなる多孔質構造を有し、空孔壁面では四酸化三鉄ナノ粒子が観察された。
【0082】
[実施例11]
本実施例では、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン架橋複合多孔質材料の光熱効果を調べた。実施例1で作製した複合多孔質材料を細胞培養用培地に浸漬し、波長805nm、出力密度1.6Wcm−2の近赤外レーザー光を照射した。
【0083】
照射時間と複合多孔質材料の温度との関係を図11に示す。前記複合多孔質材料の温度は近赤外レーザー光の照射によって上昇し、がんの温熱療法で必要とされる温度である42.5℃以上に加熱することができた。さらに、前記複合多孔質材料におけるクエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子の含率が増加するにつれて、温度の上昇速度が増加した。これに対して、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子と複合化していない架橋ゼラチン多孔質材料では、温度はほとんど上昇しなかった。以上のことから、クエン酸修飾四酸化三鉄ナノ粒子/ゼラチン架橋複合多孔質材料の光熱効果が確認された。生体内で前記複合多孔質材料を加熱する方法として近赤外レーザー光を用いることは可能なので、本発明の複合多孔質材料はがんの温熱療法に好適である。
【0084】
なお、磁性体のナノ粒子に交流磁場を印加することでもこれらのナノ粒子を発熱させることができることは良く知られている。従って、本実施例において近赤外レーザー光照射に代えて交流磁場を印加しても、その磁場の強さを調節することによって図11に示したものと同様な結果を得ることができること
は明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特許第5031979号
【特許文献2】特許第5321772号
【非特許文献】
【0086】
【非特許文献1】Shih-Hsiang Liao et.al., International Journal of Nanomedicine, 10 3315-3328 (2015).
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
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図2
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図10
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