(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
病巣を除去等する外科手術として従来から開腹手術や開胸手術が行われている。これらの手術では、腹壁又は胸壁を10数センチにわたって切開し、医師が患部を直に観察しながら手で触れて手術を行っていた。しかし、この開腹手術及び開胸手術は、切開領域が広いがゆえに痛みも大きく傷跡が残りやすく身体への負担も大きいだけでなく、術後の回復に長期間要するといった問題があった。
【0003】
これに対し、比較的身体への負担が小さい手術の一つとして腹腔鏡下手術がある。この腹腔鏡下手術とは、腹部や胸部に3〜15ミリ程度の小さな穴を数か所開けて、そこから腹腔鏡や把持鉗子等の細長い専用の医療器具を挿入し、モニタに映し出される体内の様子を観察しながら行う手術である。この腹腔鏡下手術は、開腹手術や開胸手術に比べ切開領域が狭く、それゆえに術後の疼痛も少なく、美容的にも良好で、術後の回復が早いため、近年広く普及している。
【0004】
しかし、腹腔鏡下手術は低浸襲である反面、従来用いられている把持鉗子は直線形状であるため、患部が体内深部に存在する場合には手術が困難になる。従って、臓器などを迂回し患部までの経路を確保可能な腹腔鏡に対応した軟性術具により手術を行う手法が提案されており、この軟性術具用の操作システムの構築が求められている。
【0005】
そして、軟性術具の操作システムとして、軟性内視鏡に搭載可能で柔軟性を有する軟性鉗子用の操作部(マスタ)と作業部(スレーブ)からなるマスタ・スレーブ式操作システムが既に提案されている。
この操作システムの第1の従来技術は、
図11(A)に示すように、柔軟操作材である軟性鉗子110の基端部を操作装置の直動アクチュエータ116に取り付け、軟性鉗子110の先端部の把持鉗子114を開閉するためにワイヤ112を引っ張る直動アクチュエータ116からなるワイヤ引っ張り機構と軟性鉗子110の送り機構を2つのアクチュエータによってそれぞれ動作している。つまり、ワイヤ112の基端を直動アクチュエータ116に固定して、この直動アクチュエータ116でワイヤ112を引っ張るだけでなく、図示しない他の直動または回転アクチュエータで直動アクチュエータ116を駆動して軟性鉗子110の引き込みや送り出しをする構造となっている。
【0006】
また、第2の従来技術として、
図11(B)に示すようなプーリ118を回転させてワイヤ112を引っ張ると共に、軟性鉗子110の引き込みや送り出しを図示しない回転アクチュエータによりプーリ118を回転して行う構造も知られている。
【0007】
さらに、第3の従来技術として、下記特許文献1に開示された回転ドラム7の外周面22Aに鉗子挿入部6を収納するために、鉗子挿入部6を回転ドラム7に巻き取るようなものも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これら従来技術の構造では、ワイヤ引っ張り部を中心として、軟性鉗子110や直動アクチュエータ116、プーリ118等を含む系全体を回転させる際に以下の問題が生じる。
第1の従来技術では、軟性鉗子110の送り機構に図示しない直動または回転アクチュエータを使用しているので、系全体の送りとワイヤ112の引っ張りとをそれぞれ独立に制御容易である。但し、送り機構として直動アクチュエータを用いた場合はストロークの増大に伴い装置が大型化する。また、回転アクチュエータを用いた場合はストロークを確保できるものの、ストロークの増大により回転量が多くなった場合、直動アクチュエータ116自体を回転するために、配線のねじれ等が生じる欠点があるだけでなく、回転対象が大型化する。したがって、装置の小型化と長ストロークを両立することが難しい。
【0010】
第2の従来技術では、軟性鉗子110やプーリ118を含む系全体を回転させる回転アクチュエータとワイヤ112を引っ張る回転アクチュエータを同一軸上に配置すれば、ワイヤ引っ張り用の回転アクチュエータ自体を回転させずに系全体の回転量を多くすることができる。しかし、系全体の回転とワイヤ引っ張りとを同時に実現する際に、2つの回転アクチュエータの回転が互いの動作に影響するので、ワイヤ112の引っ張り部を中心に系全体を回転させる際に、ワイヤ張力の制御と系全体の回転の制御を独立に行うことが困難である。
【0011】
第3の従来技術では、前記した第1、第2の従来技術のねじれ発生等の困難性を解消しているが、鉗子を開閉させるワイヤの押し引きが一部ドラムの巻き取り方向と一致するため、鉗子の開閉と巻き取りとを同時に行うことが困難であった。
【0012】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、2つのアクチュエータの動作に相互に影響されずに柔軟操作材の先端側の開閉動を制御可能とすることができる遠隔操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、先端に開閉動する処置具が装着された柔軟なコード状の挿入部と、
前記処置具の開閉動
及び前記挿入部の進入・退出を操作する操作部と、
を有した遠隔操作装置であって、
前記挿入部が、前記処置具と一端が連結されたワイヤおよび、該ワイヤを被う外装チューブを含み、
前記操作部が、前記挿入部を巻回するとともに回転させて前記挿入部を進入・退出させる収納ドラム、前記ワイヤの他端が固定され、回り止めされて該収納ドラムと協同して回転するとともに
収納ドラムの軸方向に前後動可能な開閉機構および、往復動して開閉機構を押し引きする直動アクチュエータを含む、遠隔操作装置である。
【0014】
請求項1に係る遠隔操作装置は、先端側の処置具が開閉動し得るように形成された柔軟構造の挿入部の基端側に、開閉動を操作する操作部が固着され、この挿入部が、処置具と一端が連結されたワイヤおよび、該ワイヤを被う外装チューブを含んで構成されている。さらに、収納ドラムがこの操作部を往復動可能としつつ支持している。
他方、操作部が、挿入部を巻回するとともに回転させて挿入部を進入・退出させる収納ドラムおよび、ワイヤの他端が固定され、該収納ドラムと協同して回転するとともに
収納ドラムの軸方向に前後動可能な開閉機構を含んで構成されている。そして、操作部の開閉機構を収納ドラムに対して往復動することで、挿入部の先端側の処置具が開閉動する。また、柔軟構造の挿入部が収納ドラムの回転により、この収納ドラムに巻き付け可能となっている。
【0015】
つまり、本請求項では、挿入部の先端側の処置具を開閉動すると共に、柔軟構造の挿入部が収納ドラムに巻き付け可能となっている。このことで、挿入部の引っ張りと挿入部や収納ドラムを含む系全体の回転とをそれぞれ独立して制御可能となる。これに伴い、収納ドラムを回転して挿入部の送り出しや引き込みするいわゆる送り操作機構と、挿入部の先端側を開閉動するいわゆる開閉操作機構とが、個々に独立していて、遠隔操作装置の小型化と挿入部の長ストローク化の両立が可能になる。
【0016】
他方、本請求項では、挿入部の引っ張りは、操作部の押し込み量により決まる。これに対して、挿入部や収納ドラムを含む系全体を回転させる際には、ワイヤの他端が固定されている開閉機構は
収納ドラムの軸方向に移動するので、直動アクチュエータの配線による回転の制限はなくなる。
以上より、本請求項によれば、挿入部の引っ張りと挿入部や収納ドラムを含む系全体の回転とを独立して制御可能になる。
【0017】
さらに本請求項に係る遠隔操作装置によれば、開閉機構が収納ドラムの軸方向に前後動する。
つまり、開閉機構が収納ドラムの軸方向に前後動することで、簡易に挿入部の収納ドラムへの引き込みや送り出しをできるので、任意の時に任意の量だけ挿入部の引き込みや送り出しが可能となる。
【0018】
請求項2に係る遠隔操作装置によれば、収納ドラムの軸方向への動きを開閉機構に対して付勢する。
このことで、開閉機構への付勢により挿入部の先端に装着された処置具が外装チューブ内でワイヤが相対的に移動するのに伴い開閉動する。他方、それ以外の場合には、処置具が開閉動することがなく、開状態或いは閉状態を維持できる。
【0019】
請求項3に係る遠隔操作装置によれば、駆動回転されるモータを有し、収納ドラムが該モータに対して着脱可能とされると共に、該収納ドラムと該モータとの間に凹部及び爪部があり、これら凹部と爪部を係り合わせて位置決めしつつモータから収納ドラムに動力伝達される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2つのアクチュエータの動作に相互に影響されずに挿入部の先端側の開閉動を制御可能とすることができる遠隔操作装置が提供されるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置に適用される収納ドラムの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の拡大全体図であって操作ピンが上昇した状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の拡大全体図であって操作ピンが下降した状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の全体図であって収納ドラムの回転台への取り付けを説明する正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の全体図であって収納ドラムが回転台に装着された状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の収納ドラムの回転台への係合いに用いられる係合爪を表す回転台の斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の収納ドラムの回転台への係合いに用いられる部分を表す図であって、(A)は収納ドラムの底面図であり、(B)は回転台の上面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置の収納ドラムへの柔軟操作材の巻き付けを表す概念断面図であって、(A)は柔軟操作材が引き込まれた状態であり、(B)は柔軟操作材が送り出されつつある状態である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置が適用された柔軟操作材が用いられる腹腔鏡の斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る遠隔操作装置が適用された柔軟操作材が用いられる腹腔鏡の断面図である。
【
図11】従来技術を表す図であって、(A)は直動アクチュエータによる牽引を説明する図であり、(B)はプーリの巻き取りによる牽引を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る遠隔操作装置の一実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態の遠隔操作装置10は、
図1から
図3に示すように、例えば金属材料により円筒形状に形成された収納ドラム12の周囲一周にわたって収納溝12Aが設けられており、この収納ドラム12の中央部には、円形状で底部が未貫通の穴部12Bが形成されている。
【0023】
穴部12B内には、操作部である軸形状の操作ピン16がスライド可能に配置されていて、この穴部12Bの底と操作ピン16との間にコイルスプリング14が挿入されている。このため、コイルスプリング14により常時、操作ピン16は収納ドラム12の頂面側に付勢されている。例えばこの収納ドラム12は、
図4に示す直径Dが50mmで高さHが21.5mmの円筒状に形成され、収納溝12Aの幅は3mmであり、収納溝12Aの底面の直径は30mmとされた構造とされている。
【0024】
ただし、穴部12Bの周囲の収納ドラム12の壁面及び操作ピン16の外周面の一部は、それぞれ切り欠かれており、廻り止めキー18がこの部分にはまり込んで、操作ピン16の収納ドラム12に対する不用意な回転が防止されている。そして、
図2及び
図3に示すように、収納ドラム12の上方で収納ドラム12の中心部と対向した位置には、ステッピングモータ等のモータ類やソレノイド等からなる直動アクチュエータ20の駆動部20Aが配置されていて、この駆動部20Aが上下動して操作ピン16を収納ドラム12内に押し込めるようになっている。
【0025】
他方、本実施形態の柔軟操作材22を構成する金属製の作動ワイヤ24の基端部がこの操作ピン16の軸方向中程に埋め込まれて固着している。この作動ワイヤ24は、同じく柔軟操作材22を構成するチューブ状にテフロン(登録商標)等の樹脂材料により形成された外装チューブ26内を貫通している。例えば、この柔軟操作材22の断面の直径は3mmであり、長さが500mmとされているので、直径30mmの収納溝12A内に最大5巻き程度この柔軟操作材22は巻き付け可能となっている。
【0026】
この柔軟操作材22の先端側には、開閉動する動作部であってエンドエフェクタともされる把持鉗子28が設置されていて、この把持鉗子28に作動ワイヤ24の先端部が連結されている。この把持鉗子28には図示しないスプリングが取り付けられていて通常は、
図2に示すような開放された開状態となっている。また、
図2及び
図3に示すように、収納ドラム12には、穴部12Bから収納溝12Aに向かって作動ワイヤ24を通すための貫通孔12Cが形成されていて、外装チューブ26の基端部が収納溝12Aの底に固定されることで、この貫通孔12Cに対向して外装チューブ26が位置している。
【0027】
従って、操作ピン16を含む柔軟操作材22や直動アクチュエータ20等が、把持鉗子28を開閉するいわゆる開閉操作機構を構成する。そして、
図3に示すように、柔軟操作材22の基端側に固着された操作ピン16をコイルスプリング14の付勢力に抗しつつ、直動アクチュエータ20の駆動部20Aが移動して押し下げることで、作動ワイヤ24が外装チューブ26の基端部から所定量引き出されることになる。これに伴い、作動ワイヤ24が外装チューブ26内で相対的に移動し、柔軟操作材22の先端側の把持鉗子28が開閉動して閉鎖される閉状態となる。
【0028】
また、直動アクチュエータ20の駆動部20Aによる押し下げをやめることで、
図2に示すように、コイルスプリング14の付勢力により操作ピン16が上昇して、やはり作動ワイヤ24が外装チューブ26内で相対的に移動し、柔軟操作材22の先端側の把持鉗子28が開閉動して開放される開状態となる。つまり、本実施形態では、直動アクチュエータ20による操作ピン16の往復動により作動ワイヤ24が外装チューブ26内で相対的に移動して、柔軟操作材22の先端側の把持鉗子28が開閉動することになる。
【0029】
この一方、
図4に示すように、直動アクチュエータ20に対向して回転機構30が配置されている。この回転機構30は回転台32を有している他、この回転台32を回転する駆動源であって回転アクチュエータとされるモータ34を有している。このモータ34の筒状に形成された駆動軸34A内には、回転台32の中心位置から下側に突出する連結軸32Aが駆動軸34Aと同軸状かつスライド可能に挿入されている。但し、連結軸32Aと駆動軸34Aとの間は、図示しないキーやスプライン等により廻り止めがされている。そして、駆動軸34Aの上端と回転台32の下面との間には、弾性部材であるコイルばね36が巻き付けられて配置されていて、このコイルばね36が回転台32を上側に常時付勢している。
【0030】
図6及び
図7(B)に示すように、回転台32の上面には3つの係合爪32Bが連結軸32A廻りの120度毎の等間隔で突出している。これに対応して、前述の収納ドラム12の底面には、3つの凹部12Dが操作ピン16と同軸状の位置とされる
図5及び
図7(A)に示す中心軸C廻りに120度毎の等間隔であって、係合爪32Bに対応する位置に形成されている。
【0031】
従って、
図4に示す収納ドラム12が移動して
図5に示す位置に来た状態でモータ34が若干回転すると、これら係合爪32Bがコイルばね36により押し上げられることにより、それぞれ凹部12Dにはまり込んで係り合うことになる。この結果として、中心軸Cに対して収納ドラム12の中心部が同軸状になるように収納ドラム12が回転台32上に位置決めされる。これに伴い、モータ34の回転力が駆動軸34A、連結軸32A、回転台32を介して収納ドラム12に伝達されて、収納ドラム12が回転可能となる。つまり、回転軸C廻りに収納ドラム12をモータ34が回転することになる。
【0032】
以上より、係合爪32Bと凹部12Dとが係り合うことで、駆動軸34Aや連結軸32Aを介してモータ34が収納ドラム12を回転して、
図8(A)に示すように収納ドラム12の収納溝12A内への柔軟操作材22の引き込み及び、
図8(B)に示すように収納溝12A内からの柔軟操作材22の送り出しがされる。
【0033】
但し、収納ドラム12は中心軸C廻りに回転した場合でも、収納ドラム12の回転の中心部に配置された操作ピン16の位置はずれないので、操作ピン16の操作を直動アクチュエータ20の駆動部20Aにより常時可能としている。そして、これら回転機構30や凹部12D等が、収納ドラム12を回転して柔軟操作材22を引き込んだり送り出したりするいわゆる送り操作機構を構成する。
【0034】
次に、本実施形態に係る遠隔操作装置10の腹腔鏡下手術への使用例を以下に説明する。
図9及び
図10に示す軟性内視鏡である腹腔鏡40は、伸縮可能なベローズ42内に図示しない内視鏡本体が入る主チューブ42Aの他に、遠隔操作装置10が入る副チューブ42Bも備えられている。
【0035】
また、ベローズ42の外周側には腹腔鏡40の先端部が任意の方向に向かっていけるように、案内ワイヤ44が複数配置されている。この案内ワイヤ44のいずれかを引っ張ることで、患部が体内の深部に存在する場合でも、臓器などを迂回し患部までの経路に向かうように、腹腔鏡40の先端部を案内できるようになる。
【0036】
さらに、ベローズ42の外周側にはこのベローズ42の補強のために、ベローズ42の長手方向に沿って複数のリンク材46が伸びていると共に、スペーサリング48が所定の間隔で配置されていて、このリンク材46及び案内ワイヤ44が各スペーサリング48を貫通している。
【0037】
この一方、医師が内視鏡本体で患部を目視しつつ、患部から試料の採取が必要と判断された場合等には、予め回転台32上に収納ドラム12を位置決めしておけば、遠隔操作装置10のモータ34を駆動回転するのに伴い収納ドラム12が回転する。そして、収納ドラム12からの柔軟操作材22を送り出して柔軟操作材22の先端側を副チューブ42B内に送り込むことができる。さらに、直動アクチュエータ20により把持鉗子28の操作がされて、患部から試料を採取することが可能となる。
【0038】
この後、モータ34の逆方向への駆動に伴い収納ドラム12が逆回転して柔軟操作材22が巻き戻されて、試料の採取が完了する。なお、複数回の採取が必要であれば、他の収納ドラム12に交換し遠隔操作装置10を再度用いて同様にして採取することになる。
【0039】
次に、本実施形態に係る遠隔操作装置10の作用を以下に説明する。
本実施形態に係る遠隔操作装置10の柔軟操作材22は、先端側に開閉動する把持鉗子28を有すると共に外装チューブ26内を貫通する作動ワイヤ24を有する柔軟構造に形成されている。この作動ワイヤ24の基端側に操作ピン16が固着されているが、収納ドラム12の中心部に往復動可能にこの操作ピン16は支持されている。このため、直動アクチュエータ20の駆動部20Aが操作ピン16を収納ドラム12に対して往復動することにより、外装チューブ26内で作動ワイヤ24が相対的に移動するのに伴って、
図2及び
図3に示すように柔軟操作材22の先端側の把持鉗子28が操作されて開閉動する。
【0040】
他方、収納ドラム12をその中心部廻りに回転しても、中心部に位置する操作ピン16は実質的に移動しないので、直動アクチュエータ20による操作ピン16の操作が常時可能になる。このため、柔軟操作材22の引き込みや送り出しをする収納ドラム12を中心とした系全体の回転を把持鉗子28の操作と独立して制御可能となる。
【0041】
具体的には、収納ドラム12を回転するモータ34を有し、このモータ34が収納ドラム12による柔軟操作材22の引き込み及び、収納ドラム12からの柔軟操作材22の送り出しをするようになっている。このため、この収納ドラム12の回転により系全体が回転して、柔軟構造の柔軟操作材22がこの収納ドラム12に巻き付け可能となるのに伴い、手術の際の任意の時に任意の量だけ、柔軟操作材22の引き込みや送り出しができるようになる。
【0042】
以上より、本実施形態では、操作ピン16が直動アクチュエータ20により往復動されることで、柔軟操作材22の先端側の把持鉗子28が確実に開閉動するが、この際柔軟操作材22の作動ワイヤ24の引っ張り量は、直動アクチュエータ20による操作ピン16の押し込み量により決定する。
【0043】
他方、柔軟操作材22や収納ドラム12を含む系全体をモータ34により回転することで、軟性鉗子である柔軟操作材22が収納ドラム12に巻き付けられるが、この際操作ピン16と直動アクチュエータ20の先端を滑らせることにより、直動アクチュエータ20自体を回転させる必要がなく、直動アクチュエータ20の配線による回転の制限はなくなる。
【0044】
以上のことで、柔軟操作材22の作動ワイヤ24の引っ張りと柔軟操作材22や収納ドラム12を含む系全体の回転とをそれぞれ独立して制御可能となる。つまり、本実施形態では、収納ドラム12を回転して柔軟操作材22の収納ドラム12への引き込みや収納ドラム12からの送り出しをするいわゆる送り操作機構と、柔軟操作材22の先端側の把持鉗子28のいわゆる開閉操作機構とが、個々に独立していることになる。そして、本実施例の遠隔操作装置10では、これらが独立して構成する部品が少ないことから、ローコストに装置を実現できる。
【0045】
このため、本実施形態では、従来技術のように直動アクチュエータの配線のねじれを生じさせたり、2つのアクチュエータの回転動作が相互に影響したりせずに、作動ワイヤ24の張力の制御を可能とすることで、遠隔操作装置10の小型化と柔軟操作材22の長ストローク化の両立が可能になる。この結果として、把持鉗子28が閉じた閉状態と開いた開状態でそれぞれ柔軟操作材22の収納ドラム12への引き込み操作を行っても、いずれの状態においても把持鉗子28の開閉状態を維持したままの操作可能となる。
【0046】
尚、上記実施形態では、収納ドラム12の材質としてアルミニウムや鉄等の金属材料を採用することが考えられるが、樹脂材料としても良い。さらに、この収納ドラム12に対する操作ピン16の回転防止のために廻り止めキー18を採用したが、スプライン等の公知な手段による固定としても良い。また、直動アクチュエータ20にステッピングモータ等のモータ類を採用した場合、モータ類の回転力を駆動部20Aの直線動に変換するギヤ、リンク機構、カム機構等を直動アクチュエータ20内に配置することが考えられる。
【0047】
この一方、柔軟操作材22の外装チューブ26をテフロン(登録商標)以外の樹脂材料により構成してもよく、金属材料であっても良い。要するに柔軟操作材22は収納ドラム12への巻き取り可能な柔軟構造であればよい。さらに、本発明に係る遠隔操作装置は柔軟操作材22や作動ワイヤ24を各1本としたが2本以上の複数本としても良く、また、遠隔操作装置は腹腔鏡下手術のみへの適用に限定されるものではなく、例えば手術用の練習器具にも適用可能である。
【0048】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。