特許第6861978号(P6861978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861978
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20210412BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   H02N2/04
   H01L41/09
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-136644(P2016-136644)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-11375(P2018-11375A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−312208(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0048442(US,A1)
【文献】 特開2005−094920(JP,A)
【文献】 特開2008−099399(JP,A)
【文献】 特開2011−049498(JP,A)
【文献】 特開2010−236974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
H01L 41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加されることにより伸縮変位する圧電素子と、
前記圧電素子の変位を、拡大された変位として出力する変位拡大機構と、
所定の部材または装置に支持される支持部を有する支持部材と
を有し、
前記変位拡大機構は、移動対象が固定され、拡大された変位を出力する第1の出力部材と、前記第1の出力部材の変位出力をバランスアウトするための変位を出力する第2の出力部材とを有し、
前記第1の出力部材および前記第2の出力部材は、前記支持部に対して、点対称または線対称となる位置に配置されており、
前記圧電素子として、第1の圧電素子および第2の圧電素子を有し、
前記支持部材には、その一方側および他方側に、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子がそれぞれ反対側に延びるように一端が固定され、
前記変位拡大機構は、
前記第1の圧電素子の他端に取り付けられ、前記第1の圧電素子の伸縮にともなって移動する第1の取り付け部材と、
前記第2の圧電素子の他端に取り付けられ、前記第2の圧電素子の伸縮にともなって移動する第2の取り付け部材と、
前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材を連結し、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の一方の側面に沿って設けられ、前記支持部材部材に対応する位置において、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の変位方向に直交する方向に、拡大された変位を出力する第1の変位伝達部と、
前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材を連結し、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他方の側面に沿って設けられ、前記支持部材に対応する位置において、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の変位方向に直交する方向に、拡大された変位を出力する第2の変位伝達部と、
を有し、
前記第1の出力部材は前記第1の変位伝達部に設けられ、前記第2の出力部材は前記第2の変位伝達部に設けられ、
前記第1の取り付け部材は、前記第1の圧電素子の前記一方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第1延長部と、前記第1の圧電素子の前記他方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第2延長部とを有し、
前記第2の取り付け部材は、前記第2の圧電素子の前記一方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第1延長部と、前記第2の圧電素子の前記他方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第2延長部とを有し、
前記第1の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材の第1延長部の先端と、前記第2の取り付け部材の第1延長部の先端とを繋ぎ、
前記第2の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材の第2延長部の先端と、前記第2の取り付け部材の第2延長部の先端部とを繋ぐことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の取り付け部材の側面および前記第2の取り付け部材の側面に設けられた補強板をさらに具備することを特徴とする請求項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第1のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第2のアーム部材とをさらに有し、前記第1の出力部材は、前記第1のアーム部材および前記第2のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第1のアーム部材との間、前記第1のアーム部材と前記第1の出力部材との間、前記第1の出力部材と前記第2のアーム部材との間、前記第2のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられ、
前記第2の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第3のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第4のアーム部材とをさらに有し、前記第2の出力部材は、前記第3のアーム部材および前記第4のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第3のアーム部材との間、前記第3のアーム部材と前記第2の出力部との間、前記第2の出力部材と前記第4のアーム部材との間、前記第4のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
電圧が印加されることにより伸縮変位する圧電素子と、
前記圧電素子の変位を、拡大された変位として出力する変位拡大機構と、
所定の部材または装置に支持される支持部を有する支持部材と
を有し、
前記変位拡大機構は、移動対象が固定され、拡大された変位を出力する第1の出力部材と、前記第1の出力部材の変位出力をバランスアウトするための変位を出力する第2の出力部材とを有し、
前記第1の出力部材および前記第2の出力部材は、前記支持部に対して、点対称または線対称となる位置に配置されており、
前記圧電素子として、平行に配置された第1の圧電素子および第2の圧電素子を有し、
前記変位拡大機構は、
前記第1の圧電素子の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する第1の変位拡大機構と、
前記第2の圧電素子の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する第2の変位拡大機構と、
前記第1の変位拡大機構および前記第2の変位拡大機構を連結し、固定する連結・固定部材と
を有し、
前記第1の変位拡大機構は、
前記第1の圧電素子の一方の端部に取り付けられる第1の取り付け部材と、
前記第1の圧電素子の他方の端部に取り付けられる第2の取り付け部材と、
前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材を連結し、前記第1の圧電素子の前記第2の圧電素子に隣接しない外側の側面に沿って設けられ、前記第1の圧電素子の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する第1の変位伝達部とを有し、
前記第2の変位拡大機構は、
前記第2の圧電素子の一方の端部に取り付けられる第3の取り付け部材と、
前記第2の圧電素子の他方の端部に取り付けられる第4の取り付け部材と、
前記第3の取り付け部材および前記第4の取り付け部材を連結し、前記第2の圧電素子の前記第1の圧電素子に隣接しない外側の側面に沿って設けられ、前記第2の圧電素子の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する第2の変位伝達部とを有し、
前記第1の出力部材は前記第1の変位伝達部に設けられ、前記第2の出力部材は前記第2の変位伝達部に設けられ、
前記連結・固定部材は、前記第1の圧電素子および第2の圧電素子の間に、これらの隣接する側面に沿って設けられており、前記第1の変位拡大機構の前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材、ならびに前記第2の変位拡大機構の前記第3の取り付け部および前記第4の取り付け部に対して、それぞれヒンジを介して連結されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記連結・固定部は、前記第1の圧電素子および第2の圧電素子の間に、これらの隣接する側面に沿って設けられた、前記第1の変位拡大機構の前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材に対して、それぞれヒンジを介して連結された第1の固定部材と、前記第1の圧電素子および第2の圧電素子の間に、これらの隣接する側面に沿って設けられた、前記第2の変位拡大機構の前記第3の取り付け部材および前記第4の取り付け部材に対して、それぞれヒンジを介して連結された第2の固定部材と、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材とを連結する連結部材を有し、
前記圧電アクチュエータは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間で分離されており、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材とを前記連結部材により連結することを特徴とする請求項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記支持部材は、前記連結・固定部材から延びていることを特徴とする請求項または請求項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記第1の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第1のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第2のアーム部材とをさらに有し、前記第1の出力部材は、前記第1のアーム部材および前記第2のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第1のアーム部材との間、前記第1のアーム部材と前記第1の出力部材との間、前記第1の出力部材と前記第2のアーム部材との間、前記第2のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられ、
前記第2の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第3のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第4のアーム部材とをさらに有し、前記第2の出力部材は、前記第3のアーム部材および前記第4のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第3のアーム部材との間、前記第3のアーム部材と前記第2の出力部との間、前記第2の出力部材と前記第4のアーム部材との間、前記第4のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記第1の出力部材および前記第1の出力部材に取り付けられる部材の合計質量と、前記第2出力部材および前記第2の出力部材に取り付けられる部材の合計質量とが同じ質量となるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記第1の出力部材に仕事が課せられる場合に、前記第2の出力部材にも同等の仕事が課せられるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の変位を変位拡大機構により拡大して所定の駆動動作を行う圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子に電圧を与えることにより印加電圧に応じた伸縮変位が生じる圧電アクチュエータは、エネルギー効率が高く、高速応答が可能であり、小型化、薄型化に適している等の優れた点を有しているため、種々の分野の駆動装置として適用されている。
【0003】
しかし、圧電素子は発生する変位が数μmから数十μmと小さいため、圧電素子を実際のアクチュエータ等に適用する場合、圧電素子の変位を拡大する変位拡大機構が用いられている。
【0004】
変位拡大機構としては、非特許文献1に示すものが知られている。この変位拡大機構500は、図6に示すように、長尺体からなる圧電素子400の一端面および他端面にそれぞれ固定された第1の取り付け部材501および第2の取り付け部材502と、圧電素子400の一方の側面に、これら第1の取り付け部材501および第2の取り付け部材502を連結するように設けられ、圧電素子の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する変位伝達機構503と、圧電素子400の他方の側面に、第1の取り付け部材501および第2の取り付け部材502をヒンジ506を介して連結するように設けられた固定部材504とを有する。変位伝達機構503は、中央に出力部材505を有し、複数のヒンジ506および複数のアーム507の作用により出力部材505から拡大された変位を出力することが可能となっている。また、固定部材504の表面は固定面となり、所定の部材または装置に固定される。
【0005】
このような構成の変位拡大機構500が圧電素子400に装着されることにより圧電アクチュエータ600が構成される。このような圧電アクチュエータ600では、圧電素子400を伸長させることによって、圧電素子400の移動をともなわずに、出力部505から出力を得ることができる。この圧電アクチュエータは、圧電素子400の移動をともなわないため、高剛性であり、速い応答性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】有限会社メカノトランスフォーマ 商品情報 メカトランスMTKKシリーズ、[平成28年6月29日検索]、インターネット<URL:http://www.mechano-transformer.com/products/01a_actuator_mtkk.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非特許文献1に記載されたような変位拡大機構付き圧電アクチュエータにおいて、固定部材504の固定面を所定の部材または装置に固定することができない場合がある。例えば図7に示すように、固定部材504の固定面を固定できないので、やむを得ず、固定部材504から横に延びる支持部材508を設け支持部材508の先端で所定の部材に固定するような場合が考えられる。つまり、圧電アクチュエータが浮いた状態で固定される場合である。
【0008】
このような場合、支持部材508の長さが変化すると共振周波数が変化してしまう。例えば支持部材508の長さLが10mmの場合の共振周波数シミュレーション値は1236Hzであるに対し、支持部材508の長さLが20mmの場合は1194Hzである。つまり、所定の部材に固定するための支持部材508の長さが10mm違うだけで、共振周波数は50Hz以上も変化してしまう。このように、取り付け方の少しの違いが共振周波数の大きな変化につながってしまう。
【0009】
このことは、アクチュエータの正確な動作を必要とする場合、例えば瞬時動作させた場合の発生変位を一定に保ちたい場合等には大きな支障となる。
【0010】
したがって、本発明は、取り付け方による共振周波数の変化が小さい変位拡大機構付き圧電アクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の(1)〜()を提供する。
【0012】
(1)電圧が印加されることにより伸縮変位する圧電素子と、
前記圧電素子の変位を、拡大された変位として出力する変位拡大機構と、
所定の部材または装置に支持される支持部を有する支持部材と
を有し、
前記変位拡大機構は、移動対象が固定され、拡大された変位を出力する第1の出力部材と、前記第1の出力部材の変位出力をバランスアウトするための変位を出力する第2の出力部材とを有し、
前記第1の出力部材および前記第2の出力部材は、前記支持部に対して、点対称または線対称となる位置に配置されており、
前記圧電素子として、第1の圧電素子および第2の圧電素子を有し、
前記支持部材には、その一方側および他方側に、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子がそれぞれ反対側に延びるように一端が固定され、
前記変位拡大機構は、
前記第1の圧電素子の他端に取り付けられ、前記第1の圧電素子の伸縮にともなって移動する第1の取り付け部材と、
前記第2の圧電素子の他端に取り付けられ、前記第2の圧電素子の伸縮にともなって移動する第2の取り付け部材と、
前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材を連結し、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の一方の側面に沿って設けられ、前記支持部材に対応する位置において、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の変位方向に直交する方向に、拡大された変位を出力する第1の変位伝達部と、
前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材を連結し、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の他方の側面に沿って設けられ、前記支持部材に対応する位置において、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の変位方向に直交する方向に、拡大された変位を出力する第2の変位伝達部と、
を有し、
前記第1の出力部材は前記第1の変位伝達部に設けられ、前記第2の出力部材は前記第2の変位伝達部に設けられ、
前記第1の取り付け部材は、前記第1の圧電素子の前記一方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第1延長部と、前記第1の圧電素子の前記他方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第2延長部とを有し、
前記第2の取り付け部材は、前記第2の圧電素子の前記一方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第1延長部と、前記第2の圧電素子の前記他方の側面に沿って前記支持部材側に延長する第2延長部とを有し、
前記第1の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材の第1延長部の先端と、前記第2の取り付け部材の第1延長部の先端とを繋ぎ、
前記第2の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材の第2延長部の先端と、前記第2の取り付け部材の第2延長部の先端部とを繋ぐことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【0015】
)前記第1の取り付け部材の側面および前記第2の取り付け部材の側面に設けられた補強板をさらに具備することを特徴とする()に記載の圧電アクチュエータ。
【0016】
)前記第1の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第1のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第2のアーム部材とをさらに有し、前記第1の出力部材は、前記第1のアーム部材および前記第2のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第1のアーム部材との間、前記第1のアーム部材と前記第1の出力部材との間、前記第1の出力部材と前記第2のアーム部材との間、前記第2のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられ、
前記第2の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第3のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第4のアーム部材とをさらに有し、前記第2の出力部材は、前記第3のアーム部材および前記第4のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第3のアーム部材との間、前記第3のアーム部材と前記第2の出力部との間、前記第2の出力部材と前記第4のアーム部材との間、前記第4のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の圧電アクチュエータ。
【0017】
電圧が印加されることにより伸縮変位する圧電素子と、
前記圧電素子の変位を、拡大された変位として出力する変位拡大機構と、
所定の部材または装置に支持される支持部を有する支持部材と
を有し、
前記変位拡大機構は、移動対象が固定され、拡大された変位を出力する第1の出力部材と、前記第1の出力部材の変位出力をバランスアウトするための変位を出力する第2の出力部材とを有し、
前記第1の出力部材および前記第2の出力部材は、前記支持部に対して、点対称または線対称となる位置に配置されており、
前記圧電素子として、平行に配置された第1の圧電素子および第2の圧電素子を有し、
前記変位拡大機構は、
前記第1の圧電素子の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する第1の変位拡大機構と、
前記第2の圧電素子の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する第2の変位拡大機構と、
前記第1の変位拡大機構および前記第2の変位拡大機構を連結し、固定する連結・固定部材と
を有し、
前記第1の変位拡大機構は、
前記第1の圧電素子の一方の端部に取り付けられる第1の取り付け部材と、
前記第1の圧電素子の他方の端部に取り付けられる第2の取り付け部材と、
前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材を連結し、前記第1の圧電素子の前記第2の圧電素子に隣接しない外側の側面に沿って設けられ、前記第1の圧電素子の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する第1の変位伝達部とを有し、
前記第2の変位拡大機構は、
前記第2の圧電素子の一方の端部に取り付けられる第3の取り付け部材と、
前記第2の圧電素子の他方の端部に取り付けられる第4の取り付け部材と、
前記第3の取り付け部材および前記第4の取り付け部材を連結し、前記第2の圧電素子の前記第1の圧電素子に隣接しない外側の側面に沿って設けられ、前記第2の圧電素子の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する第2の変位伝達部とを有し、
前記第1の出力部材は前記第1の変位伝達部に設けられ、前記第2の出力部材は前記第2の変位伝達部に設けられ、
前記連結・固定部材は、前記第1の圧電素子および第2の圧電素子の間に、これらの隣接する側面に沿って設けられており、前記第1の変位拡大機構の前記第1の取り付け部材および前記第2の取り付け部材、ならびに前記第2の変位拡大機構の前記第3の取り付け部材および前記第4の取り付け部材に対して、それぞれヒンジを介して連結されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【0018】
)前記連結・固定部は、前記第1の圧電素子および第2の圧電素子の間に、これらの隣接する側面に沿って設けられた、前記第1の変位拡大機構の前記第1の取り付け部および前記第2の取り付け部に対して、それぞれヒンジを介して連結された第1の固定部材と、前記第1の圧電素子および第2の圧電素子の間に、これらの隣接する側面に沿って設けられた、前記第2の変位拡大機構の前記第3の取り付け部および前記第4の取り付け部に対して、それぞれヒンジを介して連結された第2の固定部材と、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材とを連結する連結部材を有し、
前記圧電アクチュエータは、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間で分離されており、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材とを前記連結部材により連結することを特徴とする()に記載の圧電アクチュエータ。
【0019】
) 前記支持部材は、前記連結・固定部材から延びていることを特徴とする()または()に記載の圧電アクチュエータ。
【0020】
)前記第1の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第1のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第2のアーム部材とをさらに有し、前記第1の出力部材は、前記第1のアーム部材および前記第2のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第1のアーム部材との間、前記第1のアーム部材と前記第1の出力部材との間、前記第1の出力部材と前記第2のアーム部材との間、前記第2のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられ、
前記第2の変位伝達部は、前記第1の取り付け部材側に設けられた第3のアーム部材と、前記第2の取り付け部材側に設けられた第4のアーム部材とをさらに有し、前記第2の出力部材は、前記第3のアーム部材および前記第4のアーム部材の間の、前記支持部材に対応する位置に設けられ、
前記第1の取り付け部材と前記第3のアーム部材との間、前記第3のアーム部材と前記第2の出力部との間、前記第2の出力部材と前記第4のアーム部材との間、前記第4のアーム部材と前記第2の取り付け部材との間には、それぞれ可撓性および弾性を有するヒンジが設けられていることを特徴とする()から()のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【0023】
(8)前記第1の出力部材および前記第1の出力部材に取り付けられる部材の合計質量と、前記第2出力部材および前記第2の出力部材に取り付けられる部材の合計質量とが同じ質量となるように構成されることを特徴とする(1)から()のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【0024】
)前記第1の出力部材に仕事が課せられる場合に、前記第2の出力部材にも同等の仕事が課せられるように構成されることを特徴とする(1)から()のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、変位拡大機構が、移動対象が固定され、拡大された変位を出力する第1の出力部材と、第1の出力部材の変位出力をバランスアウトするための変位を出力する第2の出力部材とを有し、第1の出力部材および前記第2の出力部材は、支持部材の支持部に対して、点対称または線対称となる位置に配置されているので、支持部において、アクチュエータ動作にともなう運動量を実質的にゼロとすることができる。このため、圧電アクチュエータの剛性を高く維持することができるとともに、取り付け方の相違による共振周波数の変化を小さくすることができる。したがって、例えば瞬時動作させた場合の発生変位を一定に保つような、アクチュエータの正確な動作を必要とする場合に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す正面図である。
図2図1の圧電アクチュエータにさらに補強板を設けた構成を示す斜視図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す正面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る圧電アクチュエータの変形例を示す正面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す正面図である。
図6】従来の圧電アクチュエータを示す正面図である。
図7】従来の圧電アクチュエータにおいて固定部の固定面を他の部材または装置に固定できない場合に、固定部材から横に延びる支持部材を設けた場合を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
最初に、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す正面図である。
本実施形態の圧電アクチュエータ100は、図1に示すように、所定の装置または部材に固定される固定部材1と、固定部材1の一方側および他方側に、それぞれ反対側に延びるように一端が固定され、電圧が印加されることにより他端側に伸縮する第1の圧電素子2および第2の圧電素子3と、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3に対して、それぞれ伸縮方向に圧縮力を与える第1の与圧機構4および第2の与圧機構5と、第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の変位を拡大する変位拡大機構10と、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3を駆動する駆動部30と有する。
【0028】
固定部材1にはネジ穴1a、1bが形成されており、固定部材1を挟むように一対の支持部材61(紙面奥側のみ図示)がネジ止めされている。一対の支持部材61は、圧電アクチュエータ100の上方で連結部材62により連結されており、連結部材62は、アーム63を介して所定の装置に固定されている。
【0029】
第1の圧電素子2および第2の圧電素子3は、同じ材料からなっており、同じ大きさを有している。これらは、板状(例えば、10mm×10mm)の板状の圧電体が電極を挟んで複数積層されて全体として直方体(例えば40mmの長さ)として構成されている。圧電素子2および3は、側面に電圧を印加するための電気端子(図示せず)を備えており、この電気端子間に電圧が印加されることにより、図1の矢印Aで示す長さ方向(図1のY方向)に伸長するように構成されている。圧電体を構成する圧電材料としては、圧電効果を有するセラミック材料が用いられ、そのような材料として、典型的にはチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O;PZT)を挙げることができる。圧電素子2および3の形状は直方体に限らず、例えば三角柱や六角柱等の多角柱であっても、円柱であってもよい。
【0030】
第1の与圧機構4および第2の与圧機構5は、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の伸縮方向に予め圧縮力が与えられるように構成されている。圧電素子は、脆性材料であるセラミックス材料で構成されており、引張り力に対して弱いことから、予め圧縮力を与えることが重要である。
【0031】
第1の与圧機構4は、例えば、第1の圧電素子2の一端面および他端面に固定される一対のヘッドピース40a,40bと、一対のヘッドピース40a,40b間に架け渡されるように設けられた圧縮力付与部材41とを有している。また、第2の与圧機構5は、例えば、第2の圧電素子3の一端面および他端面に固定される一対のヘッドピース50a,50bと、一対のヘッドピース50a,50b間に架け渡されるように設けられた圧縮力付与部材51とを有している。この第1および第2の与圧機構4および5により、第1および第2の圧電素子2および3から生じる力に対して1/5〜1/2程度の圧縮力を与える。圧縮力付与部材41、51は例えば2本である。
【0032】
なお、与圧機構を設けずに変位拡大機構に与圧機構としての機能をもたせてもよい。
【0033】
変位拡大機構10は、第1の圧電素子2の固定部材1とは反対側の端部に第1の与圧機構4のヘッドピース40bを介して取り付けられ、第1の圧電素子2の伸縮にともなって移動する第1の取り付け部材11と、第2の圧電素子3の固定部材1とは反対側の端部に第2の与圧機構5のヘッドピース50bを介して取り付けられ、第2の圧電素子3の伸縮にともなって移動する第2の取り付け部材12と、第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12を連結し、固定部材1に対応する位置において、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の変位方向に直交する方向に、拡大された変位を出力する変位伝達部20とを有する。
【0034】
第1の取り付け部材11は、第1の圧電素子2の端面側の取り付け部11aと、取り付け部11aから第1の圧電素子2の上面(一方の側面)に沿って固定部材1側に延長する第1延長部11bと、取り付け部11aから第1の圧電素子2の下面(他方の側面)に沿って固定部材1側に延長する第2延長部11cとを有し、略コ字状をなしている。また、第2の取り付け部材12は、第2の圧電素子3の端面側の取り付け部12aと、取り付け部12aから第2の圧電素子3の上面(一方の側面)に沿って固定部材1側に延長する第1延長部12bと、取り付け部11aから第2の圧電素子3の下面(他方の側面)に沿って固定部材1側に延長する第2延長部12cとを有し、略コ字状をなしている。
【0035】
変位伝達部20は、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の一方の側面に沿って設けられた第1の変位伝達部材20aと、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の他方の側面(反対側の側面)に沿って設けられた第2の変位伝達部材20bとを有している。第1の変位伝達部材20aおよび第2の変位伝達部材20bは、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3に電圧を印加して伸長した際に、それぞれ反対方向に変位を出力するようになっている。
【0036】
第1の変位伝達部材20aは、第1の取り付け部材11の第1延長部11bの先端および第2取り付け部材12の第1延長部12bの先端を繋ぐように設けられており、第1のヒンジ21aと、第1のアーム部材22aと、第2のヒンジ23aと、第1の出力部材24aと、第3のヒンジ25aと、第2のアーム部材26aと、第4のヒンジ27aとを有する。そして、第1のアーム部材22aが第1のヒンジ21aを介して第1の取り付け部材11の第1延長部11bに連結され、第2のアーム部材26aが第4のヒンジ27aを介して第2の取り付け部材12の第1延長部12bに連結されており、第1の出力部材24aは、それぞれ第2のヒンジ23aおよび第3のヒンジ25aを介して第1のアーム部材22aおよび第2のアーム部材26aに連結されている。
【0037】
一方、第2の変位伝達部材20bは、第1の取り付け部材11の第2延長部11cの先端および第2取り付け部材12の第2延長部12cの先端を繋ぐように設けられており、第5のヒンジ21bと、第3のアーム部材22bと、第6のヒンジ23bと、第2の出力部材24bと、第7のヒンジ25bと、第4のアーム部材26bと、第8のヒンジ27bとを有する。そして、第3のアーム部材22bが第5のヒンジ21bを介して第1の取り付け部材11の第2延長部11cに連結され、第4のアーム部材26bが第8のヒンジ27bを介して第2の取り付け部材12の第2延長部12cに連結されており、第2の出力部材24bは、それぞれ第6のヒンジ23bおよび第7のヒンジ25bを介して第3のアーム部材22bおよび第4のアーム部材26bに連結されている。
【0038】
第1の出力部材24aおよび第2出力部材24bは、中央に位置する固定部材1に対応する位置に、互いに対向するように設けられ、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3が動作されたときに、同じ大きさの変位が互いに反対方向に出力されるようになっている。そして、第1の出力部材24aおよび第2出力部材24bは、固定部材1の支持部材61への固定部、すなわち圧電アクチュエータ100が所定の部材または装置に支持される支持部に対して、点対称または線対称となる位置に配置されている。
【0039】
また、第1のアーム部材22aと第2のアーム部材26aは、第1の出力部材24aを挟んで対称に配置され、第1のアーム部材22aおよび第2のアーム部材26aと、第3のアーム部材22bおよび第4のアーム部材26bとは、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3を挟んで対称に配置される。
【0040】
具体的には、第1〜第8のヒンジ21a,23a,25a,27a,21b,23b,25b,27bは可撓性および弾性を有し、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の伸縮により撓んで第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の変位を第1の出力部材24aおよび第2の出力部材24bに伝達可能となっており、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3がY方向に伸縮変位することにより、第1の出力部材24aおよび第2の出力部材24bから、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の伸縮方向に直交するX方向に互いに反対の向きになるように拡大された変位が出力されるようになっている。
【0041】
このとき、第1のヒンジ21a、第4のヒンジ27a、第5のヒンジ21b、および第8のヒンジ27bは、第2のヒンジ23a、第3のヒンジ25a、第6のヒンジ23b、第7のヒンジ25bよりも外側に設けられているため、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3が伸長した際に、第1の出力部材24aおよび第2の出力部材24bが相対的に外側へ変位するようになっている。
【0042】
第1の出力部材24aには移動対象であるロッド64が固定されており、ロッド64が連結部材62およびアーム63を貫通して延びており、ロッド64の先端には、適宜の部材、例えば、電子部品検査用のプローブが取り付けられるようになっている。また、第2の出力部材24bからは、第1の出力部材24aの出力に対するバランスアウトの出力が出力される。この場合に、第1の出力部材24aおよび第1の出力部材24aに取り付けられる部材の合計質量と、第2出力部材24bおよび第2の出力部材24bに取り付けられる部材の合計質量とが同じ質量となるように、第2の出力部材24bにウエイトを取り付けることが好ましい。また、第1の出力部材24aに仕事が課せられる場合に、第2の出力部材24bにも同等の仕事が課せられるようにすることが好ましい。例えば、第1の出力部材24aの負荷がある剛性値を持った部材に接する場合に、それと同等の剛性を持つ負荷を第2の出力部材24bにも与えることが好ましい。
【0043】
このようにして変位拡大機構10に、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3のY方向の伸縮変位が伝達され、数倍〜数十倍程度に拡大してX方向の変位として移動対象部材に伝達することができる。
【0044】
駆動部30は、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3に電圧を与えてこれらを駆動するドライバー31と、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の駆動等を制御する制御部32とを有している。
【0045】
制御部32は、設定器等から目標位置が入力され、それに基づいてドライバー31に制御信号を出力し、ドライバー31はその制御信号に基づいて第1の圧電素子2および第2の圧電素子3に所定の電圧を与えこれらを伸縮させる。
【0046】
このように構成される圧電アクチュエータ100においては、駆動部30の制御部32からの指令に基づきドライバー31が第1の圧電素子2および第2の圧電素子3に所定の電圧を与えることにより、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3がY方向に伸縮変位し、それにともなって、変位拡大機構10により拡大された変位が出力される。変位拡大機構10においては、第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12が第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の伸縮変位にともなって移動し、変位伝達部20に変位が伝達される。
【0047】
具体的には、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の伸縮変位が、第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12を介して、第1の変位伝達部20aおよび第2の変位伝達部20bに伝達される。第1の変位伝達部20aにおいては、第1〜第4のヒンジ21a,23a,25a,27aおよび第1および第2のアーム部材22a,26aを介して、第1の出力部材24aから10〜30倍程度に拡大されたX方向の変位が出力される。また、第2の変位伝達部20bにおいては、第5〜第8のヒンジ21b,23b,25b,27bおよび第3および第4のアーム部材22b,26bを介して、第2の出力部材24bから数倍〜数十倍程度に拡大されたX方向の変位が出力される。
【0048】
そして、第1の出力部材24aから出力された拡大された変位は、移動対象であるロッド64に伝達され、一方、第2の出力部材24bから出力される変位は、バランスアウトのために用いられる。
【0049】
圧電素子は高速応答が可能であることから、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3に印加する電圧を高速で変化させることにより、移動対象を高速で動作させることができる。
【0050】
ところで、図6に示す、非特許文献1に記載されたような従来の変位拡大機構においては、圧電素子の移動をともなわずに出力部から出力を得ることができ、固定部材の表面が所定の部材または装置に固定されている場合は、高剛性で高速応答が可能であるが、固定部材の表面を所定の部材または装置に固定することができない場合、すなわち、圧電アクチュエータを浮いた状態で固定せざるを得ない場合は、十分な剛性を確保することが困難であり、固定部に振動が生じてしまう。このため、固定部材から延びるアーム部の長さ、すなわち圧電アクチュエータが支持される位置によって共振周波数が変化してしまう。
【0051】
これに対して、本実施形態では、固定部材1の一方側および他方側に、それぞれ反対側に延びるように一端が固定された第1の圧電素子2および第2の圧電素子2を設け、変位拡大機構10として、第1の圧電素子2の他端および第2の圧電素子3の他端にそれぞれ設けられた、第1の圧電素子2の伸縮および第2の圧電素子3の伸縮にともなって移動する第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12と、第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12を連結し、固定部材1に対応する位置において、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の変位方向に直交する方向に、拡大された変位を出力する第1の変位伝達部20aおよび第2の変位伝達部20bとを有するものを用いた。
【0052】
本実施形態の変位拡大機構10は、所定の部材または装置に支持される支持部材として機能する固定部材1に圧電素子を固定する構成を有するため、動作時に圧電素子の位置が変動せず、動作時に圧電素子自身の質量が負荷にならない状態を維持している。そして、その上で、第1の変位伝達部20aの第1の出力部材24aおよび第2の変位伝達部20bの第2の出力部材24bを、支持部材である固定部材1の所定の部材または装置に支持される支持部に対して対称に配置して、これらの出力をバランスアウトするようにしている。これにより、それぞれが動作時の出力慣性を打ち消すことができ、圧電アクチュエータ100を支持する支持部において、アクチュエータ動作にともなう運動量を実質的にゼロとすることができる。このため、圧電アクチュエータ100の剛性を高く維持することができるとともに、取り付け方の相違による共振周波数の変化を小さくすることができる。したがって、例えば瞬時動作させた場合の発生変位を一定に保つような、アクチュエータの正確な動作を必要とする場合に極めて有効である。
【0053】
また、第1の出力部材24aに移動対象を装着した際に、第2の出力部材24bにほぼ同じ質量のバランス部材を装着することにより、動作時の変位拡大機構10の出力慣性をほぼ完全に打ち消すことができる。
【0054】
さらに、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3が固定部材1を挟んで両側に存在し、それぞれは動作時の出力慣性を打ち消すことができる。このため、高速でありながら高精度の動作が可能であり、さらに圧電アクチュエータ全体の初期位置もずれにくくなる。
【0055】
さらにまた、第1の取り付け部材11は、固定部材1側に延長する第1延長部11bおよび第2延長部11cを有し、第2の取り付け部材12は、固定部材1側に延長する第1延長部12bおよび第2延長部12cを有しており、第1の変位伝達部20aは第1の取り付け部材11の第1延長部11bと第2の取り付け部材12の第1延長部12bを繋ぎ、第2変位伝達部20bは第1の取り付け部材11の第2延長部11cと第2取り付け部材12の第2延長部12cを繋ぐようになっている。このため、第1の変位伝達部20aおよび第2の変位伝達部20bのアーム長を短くすることができる。これにより、等価質量を低下させることができるので、より高速な動作が可能となる。
【0056】
本実施形態の場合には、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の一端は固定部材1に固定されているため、圧電素子の質量の自己共振周波数に対する影響はほとんどなく、自己共振周波数を実質的に決めるのはアーム(第1〜第4のアーム部材22a,26a,22b,26b)の質量となり、変位拡大動作にともなうアームの動きはこれらの片端をピン固定した動きに近く、アーム先端から見た等価質量はアームの総質量の1/3となる。したがって、自己共振周波数のより高い構造とするためには、アームの質量を低減させることが好ましく、そのために、アーム長を短くして、自己共振周波数を最大限度高めることが好ましい。
【0057】
なお、上記実施形態において、第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12は、それぞれ、延長部11b11c、および延長部12b12cに第1の変位伝達部20aおよび第2の変位伝達部20bのアーム部材22a,26a,22b,26bがヒンジを介して接続されているが、取り付け部材11,12の質量は第1および第2の圧電素子に対する質量負荷になるため、さらなる高速化を達成するためには、取り付け部材11,12の質量をできるだけ小さくしつつ、第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12の剛性を高めることが必要となる。そのために、図2の斜視図に示すように、第1の取り付け部材11および第2の取り付け部材12の側面の両側に、それぞれ補強板13および補強板14を取り付けることが好ましい。
【0058】
なお、本実施形態では、第1のヒンジ21a、第4のヒンジ27a、第5のヒンジ21b、および第8のヒンジ27bを、第2のヒンジ23a、第3のヒンジ25a、第6のヒンジ23b、第7のヒンジ25bよりも外側に設けて、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3が伸長した際に、第1の出力部材24aおよび第2の出力部材24bが相対的に外側へ変位するようにしたが、第1のヒンジ21a、第4のヒンジ27a、第5のヒンジ21b、および第8のヒンジ27bを、第2のヒンジ23a、第3のヒンジ25a、第6のヒンジ23b、第7のヒンジ25bよりも内側に設けて、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3が伸長した際に、第1の出力部材24aおよび第2の出力部材24bが相対的に内側へ変位するようにしてもよい。
【0059】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は本発明の第2の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す正面図である。
本実施形態の圧電アクチュエータ200は、図6に記載された従来の圧電アクチュエータ500を2つ重ねた構造を有する。なお、第1の実施形態で説明した与圧機構を設けてもよいが、以下の説明では与圧機構を省略している。
【0060】
本実施形態の圧電アクチュエータ200は、図3に示すように、互いに平行に配置された長尺体からなる第1の圧電素子201および第2の圧電素子202と、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する変位拡大機構203と、所定の部材または装置に支持される支持部材240と、駆動部とを有する。駆動部は図示していないが、第1の実施形態の駆動部30と同様に構成される。
【0061】
第1の圧電素子201および第2の圧電素子202は、同じ材料からなっており、同じ大きさを有しており、第1の実施形態の第1の圧電素子2および第2の圧電素子3と同様に構成される。
【0062】
変位拡大機構203は、第1の圧電素子201の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する第1の変位拡大機構210と、第2の圧電素子202の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する第2の変位拡大機構220と、第1の変位拡大機構210および第2の変位拡大機構220を連結し、固定する連結・固定部材230とを有する。支持部材240は、連結・固定部材230から延びている。
【0063】
第1の変位拡大機構210は、第1の圧電素子201の一方の端部に取り付けられる第1の取り付け部材211と、第1の圧電素子201の他方の端部に取り付けられる第2の取り付け部材212と、第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212を連結し、第1の圧電素子201の第2の圧電素子202に隣接しない外側の側面に沿って設けられ、第1の圧電素子201の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する第1の変位伝達部材213とを有する。
【0064】
第2の変位拡大機構220は、第2の圧電素子202の一方の端部に取り付けられる第3の取り付け部材221と、第2の圧電素子202の他方の端部に取り付けられる第4の取り付け部材222と、第3の取り付け部材221および第4の取り付け部材222を連結し、第2の圧電素子202の第1の圧電素子201に隣接しない外側の側面に沿って設けられ、第2の圧電素子201の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する第2の変位伝達部材223とを有する。
【0065】
連結・固定部材230は、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202の間に、これらの隣接する側面に沿って設けられており、第1の変位拡大機構210の第1の取り付け部211および第2の取り付け部212、ならびに第2の変位拡大機構220の第3の取り付け部221および第4の取り付け部222に対して、それぞれヒンジ231,232,233,234を介して連結されている。
【0066】
第1の変位伝達部材213は、第1のヒンジ251と、第1のアーム部材252と、第2のヒンジ253と、第1の出力部材254と、第3のヒンジ255と、第2のアーム部材256と、第4のヒンジ257とを有する。そして、第1のアーム部材252が第1のヒンジ251を介して第1の取り付け部材211に連結され、第2のアーム部材256が第4のヒンジ257を介して第2の取り付け部材212に連結されており、第1の出力部材254は、それぞれ第2のヒンジ253および第3のヒンジ255を介して第1のアーム部材252および第2のアーム部材256に連結されている。
【0067】
一方、第2の変位伝達部材223は、第5のヒンジ261と、第3のアーム部材262と、第6のヒンジ263と、第2の出力部材264と、第7のヒンジ265と、第4のアーム部材266と、第8のヒンジ267とを有する。そして、第3のアーム部材262が第5のヒンジ261を介して第3の取り付け部材221に連結され、第4のアーム部材266が第8のヒンジ267を介して第4の取り付け部材222に連結されており、第2の出力部材264は、それぞれ第6のヒンジ263および第7のヒンジ265を介して第3のアーム部材262および第4のアーム部材266に連結されている。
【0068】
第1の出力部材254および第2出力部材264は、連結・固定部材230を挟んで互いに対向するように設けられ、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3に同じ電圧が印加されて動作されたときに、同じ大きさの変位が互いに反対方向に出力されるようになっている。そして、第1の出力部材254および第2の出力部材264は、連結・固定部材230から延びる支持部材240の固定部、すなわち圧電アクチュエータ200が所定の部材または装置(図示せず)に支持される支持部に対して、線対称の位置に配置されている。
【0069】
また、第1のアーム部材252と第2のアーム部材256は、第1の出力部材254を挟んで対称に配置され、第1のアーム部材252および第2のアーム部材256と、第3のアーム部材262および第4のアーム部材266とは、連結・固定部材230を挟んで対称に配置される。
【0070】
具体的には、第1〜第8のヒンジ251,253,255,257,261,263,265,267は可撓性および弾性を有し、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202の伸縮により撓んで第1の圧電素子201および第2の圧電素子202の変位を第1の出力部材254および第2の出力部材264に伝達可能となっており、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202がY方向に伸縮変位することにより、第1の出力部材254および第2の出力部材264から、第1の圧電素子2および第2の圧電素子3の伸縮方向に直交するX方向に互いに反対の向きになるように拡大された変位が出力される。
【0071】
このとき、第1のヒンジ251、第4のヒンジ257、第5のヒンジ261、および第8のヒンジ267は、第2のヒンジ253、第3のヒンジ255、第6のヒンジ263、第7のヒンジ265よりも外側に設けられているため、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202が伸長した際に、第1の出力部材254および第2の出力部材264が相対的に外側へ変位するようになっている。
【0072】
第1の出力部材254には移動対象であるロッド64が固定されておりロッド64の先端には、適宜の部材、例えば、電子部品検査用のプローブが取り付けられるようになっている。また、第2の出力部材264からは、第1の出力部材254の変位出力をバランスアウトするための変位が出力される。この場合に、第1の出力部材254および第1の出力部材254に取り付けられる部材の合計質量と、第2の出力部材264および第2の出力部材254に取り付けられる部材の合計質量とが同じ質量になるように、第2の出力部材264にウエイトを取り付けることが好ましい。また、第1の出力部材254に仕事が課せられる場合に、第2の出力部材264にも同等の仕事が課せられるようにすることが好ましい。例えば、第1の出力部材254の負荷がある剛性値を持った部材に接する場合に、それと同等の剛性を持つ負荷を第2の出力部材264にも与えることが好ましい。
【0073】
このようにして第1の変位拡大機構210および第2の変位拡大機構220に、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202のY方向の伸縮変位が伝達され、数倍〜数十倍程度に拡大してX方向の変位として移動対象部材に伝達することができる。
【0074】
このように構成される圧電アクチュエータ200においては、駆動部の制御部からの指令に基づきドライバーが第1の圧電素子201および第2の圧電素子202に同じ値の所定の電圧を与えることにより、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202がY方向に伸縮変位し、それにともなって、第1の変位拡大機構210および第2の変位拡大機構220により拡大された変位が出力される。第1の変位拡大機構210においては、第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212が第1の圧電素子201の伸縮変位にともなって移動し、第1の変位伝達部213に変位が伝達される。また、第2の変位拡大機構220においては、第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212が第2の圧電素子202の伸縮変位にともなって移動し、第2の変位伝達部223に変位が伝達される。
【0075】
第1の変位伝達部213においては、第1の圧電素子201の変位が、第1〜第4のヒンジ251,253,255,257および第1および第2のアーム部材252,256を介して、第1の出力部材254から10〜30倍程度に拡大されてX方向の変位として出力される。また、第2の変位伝達部223においては、第2の圧電素子202の変位が、第5〜第8のヒンジ261,263,265,267および第3および第4のアーム部材262,266を介して、第2の出力部材264から数倍〜数十倍程度に拡大されてX方向の変位として出力される。
【0076】
そして、第1の出力部材254から出力された、拡大された変位は、移動対象であるロッド64に伝達され、一方、第2の出力部材264から出力される変位は、バランスアウトのために用いられる。
【0077】
圧電素子は高速応答が可能であることから、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202に印加する電圧を高速で変化させることにより、移動対象を高速で動作させることができる。
【0078】
このとき、上述したように、図に示す、非特許文献1に記載されたような従来の変位拡大機構においては、圧電アクチュエータが支持される位置によって共振周波数が変化してしまうが、第1の実施形態の圧電アクチュエータ100と同様、本実施形態の圧電アクチュエータ200においても、動作時に圧電素子自身の位置が変動しない状態を維持した上で、第1の出力部材254および第2の出力部材264を、圧電アクチュエータ200を支持する部分に対して対称に配置して、これらの出力をバランスアウトするようにしている。これにより、それぞれが動作時の出力慣性を打ち消すことができ、圧電アクチュエータ200を支持する部分において、アクチュエータ動作にともなう運動量を実質的にゼロとすることができる。このため、圧電アクチュエータ200の剛性を高く維持することができるとともに、取り付け方の相違による共振周波数の変化の小さい、安定な動作が可能である。したがって、例えば瞬時動作させた場合の発生変位を一定に保つような、アクチュエータの正確な動作を必要とする場合に極めて有効である。
【0079】
実際に、本実施形態の圧電アクチュエータにおいて、支持部材240の長さLを10mmおよび200mmと変化させて共振周波数のシミュレーションを行った結果、そのシミュレーション値は、それぞれ1170Hzおよび1174MHzであって、高々4Hzの違いでしかなく、安定な動作が可能であることが確認された。
なお、本実施形態では、第1のヒンジ251、第4のヒンジ257、第5のヒンジ261、および第8のヒンジ267を、第2のヒンジ253、第3のヒンジ255、第6のヒンジ263、第7のヒンジ265よりも外側に設けて、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202が伸長した際に、第1の出力部材254および第2の出力部材264が相対的に外側へ変位するようにしたが、第1のヒンジ251、第4のヒンジ257、第5のヒンジ261、および第8のヒンジ267を、第2のヒンジ253、第3のヒンジ255、第6のヒンジ263、第7のヒンジ265よりも内側に設けて、第1の圧電素子201および第2の圧電素子202が伸長した際に、第1の出力部材254および第2の出力部材264が相対的に内側へ変位するようにしてもよい。
【0080】
次に、本実施形態の変形例について説明する。図4は本実施形態の圧電アクチュエータの変形例を示す正面図である。図4の圧電アクチュエータ200′は、図6に示す従来の圧電アクチュエータと同じ構造の圧電アクチュエータ270を2つ機械的に連結したものである。
【0081】
すなわち、圧電アクチュエータ200′を構成する圧電アクチュエータ270は、変位拡大機構280を有する。変位拡大機構280は、圧電素子204の変位を拡大するものであり、圧電素子204の一方の端部に取り付けられる第1の取り付け部材281と、第1の圧電素子203の他方の端部に取り付けられる第2の取り付け部材282と、第1の取り付け部材281および第2の取り付け部材282を連結し、圧電素子204の一方の側面に沿って設けられ、第1の圧電素子201の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する変位伝達部材283と、圧電素子204の他方の側面に、第1の取り付け部材281および第2の取り付け部材282をヒンジ291および292を介して連結するように設けられた固定部材284とを有する。変位伝達部材283は、図3の第1の変位伝達部材213と同様に構成されているので、第1の変位伝達部材213と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
このような構成の2つの圧電アクチュエータ270を、固定部材284を背中合わせにして固定治具293によりねじ止め等により固定する。また、2つの固定部材284には、横方向(Y方向)に延びる支持部材294が固定されている。このような構成によれば、2つの圧電アクチュエータ270の各出力部材254が圧電アクチュエータ200′を支持する部分に対して対称に配置されており、これらの出力がバランスアウトされるようになっているから、図3の圧電アクチュエータ200と同様、圧電アクチュエータ200′を支持する部分において、アクチュエータ動作にともなう運動量を実質的にゼロとすることができ、圧電アクチュエータ200′の剛性を高く維持することができるとともに、取り付け方の相違による共振周波数の変化の小さい、安定な動作が可能である。また、このように構成することにより、任意の圧電アクチュエータ270を2つ組み合わせて圧電アクチュエータ200′を構成することができるので、個体差が存在しても、より性能のよいものどうしを組み合わせることができる。
【0083】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図5は本発明の第3の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す正面図である。
本実施形態の圧電アクチュエータ300は、図4に示すように、長尺体からなる圧電素子301と、圧電素子301の一端を固定するとともに、所定の部材または装置に支持される支持部材として用いられる固定部材302と、圧電素子301の変位を拡大し、その拡大した変位を出力する変位拡大機構303と、駆動部とを有する。駆動部は図示していないが、第1の実施形態の駆動部30と同様に構成される。
【0084】
圧電素子301は、第1の実施形態の第1の圧電素子2および第2の圧電素子3と同様に構成される。
【0085】
固定部材302は、圧電素子301が挿入される切り欠き部311を有するU字状に形成される。そして、切り欠き部311の底部で圧電素子301の一端が固定される。固定部材302には、圧電アクチュエータ300を所定の部材または装置に固定する際にボルトを挿通するための厚さ方向に貫通する取り付け穴312が形成されている。
【0086】
変位拡大機構303は、圧電素子301の他端に接続され、圧電素子301の伸縮により移動する移動部321と、一端が固定部材302および移動部321にそれぞれヒンジ結合され、他端が出力部となる、第1のアーム322および第2のアーム323とを有している。すなわち、第1のアーム322の基端部は、固定部材302の一方側の先端から延びる第1のヒンジ324と、移動部321から延びる第2のヒンジ325に接続されており、第2のアーム323の基端部は、固定部材302の他方側の先端から延びる第3のヒンジ327と、移動部321から延びる第4のヒンジ328に接続されている。
【0087】
第1のアーム322は、固定部材302の一方の側面に沿うように延び、その先端部には第1の出力部材326が設けられている。第2のアーム323は、固定部材302の他方の側面に沿うように延び、その先端部には第2の出力部材329が設けられている。
【0088】
第1〜第4のヒンジ324,325,327,328は可撓性および弾性を有し、第1のヒンジ324は第1のアーム322および固定部材302と一体的に設けられ、第2のヒンジ325は第1のアーム322および移動部321と一体的に設けられ、第3のヒンジ327は第2のアーム323および固定部材302と一体的に設けられ、第4のヒンジ328は第2のアーム323および移動部321と一体的に設けられている。そして、圧電素子301に電圧が印加されて伸縮変位することにより、第1〜第4のヒンジ324,325,327,328が撓みまたは曲げ変形し、第1のアーム322および第2のアーム323が互いに反対方向に回動され、第1の出力部材326および第2の出力部材329から互いに反対向きの数倍〜数十倍程度に拡大された変位が出力されるようになっている。そして、第1の出力部材326および第2の出力部材329は、固定部材302の固定部、すなわち圧電アクチュエータ300を所定の部材または装置(図示せず)に支持する部分に対して、線対称の位置に配置されている。
【0089】
第1の出力部材326には移動対象(図示せず)が固定されている。また、第2の出力部材329からは、第1の出力部材326の出力に対するバランスアウトの出力が出力される。この場合に、第1の出力部材326および第1の出力部材326に取り付けられる部材の合計質量と、第2の出力部材329および第2の出力部材329に取り付けられる部材の合計質量とが同じ質量になるように、第2の出力部材329にウエイトを取り付けることが好ましい。
【0090】
このように構成される圧電アクチュエータ300においては、駆動部の制御部からの指令に基づきドライバーが圧電素子301に所定の電圧を与えることにより、圧電素子301が伸縮変位し、それにともなって、変位拡大機構303により拡大された変位が出力される。
【0091】
具体的には、圧電素子301に電圧が印加されることにより、圧電素子301が伸長すると、固定部材302に対して移動部321が移動し、第1〜第4のヒンジ324,325,327,328を介して、第1のアーム322が上方に回動し、第2のアーム323が下方に回動し、第1の出力部材326および第2の出力部材329から数倍〜数十倍程度に拡大された変位が出力される。
【0092】
そして、第1の出力部材326から出力された、拡大された変位は、移動対象に伝達され、一方、第2の出力部材329から出力される変位は、バランスアウトのために用いられる。
【0093】
圧電素子は高速応答が可能であることから、圧電素子301に印加する電圧を高速で変化させることにより、移動対象を高速で動作させることができる。
【0094】
本実施形態の圧電アクチュエータ300においても、第1の実施形態の圧電アクチュエータ100および第2の実施形態の圧電アクチュエータ200と同様、動作時に圧電素子自身の位置が変動しない状態を維持した上で、第1の出力部材326および第2の出力部材329を、圧電アクチュエータ300を支持する部分に対して対称に配置して、これらの出力をバランスアウトするようにしている。これにより、それぞれが動作時の出力慣性を打ち消すことができ、圧電アクチュエータ300を支持する部分において、アクチュエータ動作にともなう運動量を実質的にゼロとすることができる。このため、圧電アクチュエータ300の剛性を高く維持することができるとともに、取り付け方の相違による共振周波数の変化を小さい、安定な動作が可能である。したがって、例えば瞬時動作させた場合の発生変位を一定に保つような、アクチュエータの正確な動作を必要とする場合に極めて有効である。
【0095】
本実施形態においても、第1の出力部材326および第1の出力部材326に取り付けられる部材の合計質量と、第2出力部材329および第2の出力部材329に取り付けられる部材の合計質量とが同じ質量となるように、第2の出力部材329にウエイトを取り付けることが好ましい。また、第1の出力部材326に仕事が課せられる場合に、第2の出力部材329にも同等の仕事が課せられるようにすることが好ましい。例えば、第1の出力部材236の負荷がある剛性値を持った部材に接する場合に、それと同等の剛性を持つ負荷を第2の出力部材329にも与えることが好ましい。
【0096】
<他の適用>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、変位拡大機構は、上記実施形態に限定されるものではなく、第1の出力部材および第2出力部材が圧電アクチュエータを支持する部分に対して、点対称または線対称となる位置に配置されているものであればよい。
【符号の説明】
【0097】
1;固定部材
2,3,201,202,301;圧電素子
4,5;与圧機構
10,210,220,303;変位拡大機構
11,12,211,212,221,222;取り付け部材
13,14;補強板
20;変位伝達部
20a,20b,213,223;変位伝達部材
21a,21b,23a,23b,25a,25b,27a,27b,231,232,233,234,251,253,255,257,261,263,265,267,324,325,327,328;ヒンジ
22a,22b,26a,26b,252,256,262,266;アーム部材
24a,254,326;第1の出力部材
24b,264,329;第2の出力部材
30;駆動部
31;ドライバー
32;制御部
100,200,300;圧電アクチュエータ
230;連結・固定部材
240;支持部材
302;固定部材
311;切り欠き部
321;移動部
322;第1のアーム
323;第2のアーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7