(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861979
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】アオサ目またはヒビミドロ目に属する緑藻類の種苗生産方法及び当該種苗を利用した緑藻類の養殖方法
(51)【国際特許分類】
A01H 13/00 20060101AFI20210412BHJP
A01G 33/02 20060101ALI20210412BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20210412BHJP
A01N 65/03 20090101ALI20210412BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
A01H13/00
A01G33/02 101G
A01P21/00
A01N65/03
A01N25/02
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-162119(P2016-162119)
(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公開番号】特開2018-29492(P2018-29492A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(74)【復代理人】
【識別番号】100216611
【弁理士】
【氏名又は名称】井手 浩
(72)【発明者】
【氏名】團 昭紀
(72)【発明者】
【氏名】岡 直宏
【審査官】
山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102160524(CN,A)
【文献】
特開平09−224511(JP,A)
【文献】
特開平09−205916(JP,A)
【文献】
特開平07−107969(JP,A)
【文献】
水産増殖,2003年,第51巻第2号,第165−172頁
【文献】
水産増殖,1997年,第45巻第1号,第5−8頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00−17/00
C12N 1/00−5/28
MEDLINE/BIOSIS/WPIDS/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アオサ属緑藻類の種苗生産方法であって、予め保存培養した母藻となる前記アオサ属緑藻類の藻体を細断した藻体片を、前記アオサ属緑藻類の藻体抽出物を含有する培養液で培養し、前記アオサ属緑藻類の藻体片から新芽が形成された種苗を得ることを特徴とするアオサ属緑藻類の種苗生産方法。
【請求項2】
前記保存培養が、培養温度5〜30℃、光量300〜1000luxの条件で2週間以上行われるものである請求項1記載のアオサ属緑藻類の種苗生産方法。
【請求項3】
前記藻体抽出物が、前記アオサ属緑藻類の藻体の摩砕物の水抽出物を濾過した濾液である請求項1または2項記載の緑藻類の種苗生産方法。
【請求項4】
前記藻体片を培養する培養液中に、前記藻体抽出物を原緑藻類湿重量基準で0.5〜10w/v%含有する請求項1〜3のいずれかの項記載のアオサ属緑藻類の種苗産生方法。
【請求項5】
前記藻体片の培養が、培養温度10〜35℃、光量100〜10000luxの条件で3〜12日間行われるものである請求項1〜4のいずれかの項記載のアオサ属緑藻類の種苗生産方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項記載の生産方法によって得られたアオサ属緑藻類の種苗を撹拌培養することを特徴とするアオサ属緑藻類の養殖方法。
【請求項7】
アオサ属緑藻類の藻体抽出物を有効成分とするアオサ属緑藻類藻体片の新芽形成誘導剤。
【請求項8】
前記藻体抽出物が、前記アオサ属緑藻類の藻体の摩砕物の水抽出物を濾過した濾液である請求項7記載の新芽形成誘導剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アオサ目またはヒビミドロ目に属する緑藻類の種苗生産方法及び当該種苗を利用した緑藻類の養殖方法に関し、更に詳細には、これらの緑藻類の体細胞から直接新芽を誘導形成し、簡便な工程で効率よく種苗を量産し得る種苗生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻の養殖には、海面養殖と陸上養殖の2つの手法がある。海面養殖は、様々な種の海藻で行われており、その生態的特性や生活史に基づき養殖技術が確立されてきた。例えば、アオサ目に属するスジアオノリの海面養殖では、母藻を細断化することで胞子の放出を促進し、胞子を養殖網に着生させる人工採苗法が採用されている(母藻細断法、特許文献1)。このようにして人工採苗された養殖網を養殖漁場に張り込み、藻体長20〜30cm程度にまで生長させてから摘採する。ヒビミドロ目に属するヒトエグサについても同様にして海面養殖が行われている。
【0003】
これに対し、陸上で養殖され、かつ産業化されている種類は少なく、日本では緑藻であるスジアオノリとクビレズタの他、数種の紅藻類に限られる。このうち、紅藻類やクビレズタの養殖方法は、藻体を断片化し、これを栄養繁殖により成長させて収穫する方法である。
【0004】
一方、スジアオノリは、藻体を細断すると体細胞が胞子を形成し、この胞子が放出されると細胞が空になってその部分が枯死するため、紅藻類やクビレズタのように栄養繁殖により養殖することは困難であるとされていた(特許文献2参照)。そのため、スジアオノリの陸上養殖では、胞子集塊法による種苗生産が行われている。この方法は、胞子を高密度に平板に播種し、胞子集塊を形成させた後、個々の胞子を発芽させて発芽体集塊を形成させ、さらに粉砕して小集塊とし、これを種苗として海水中に浮遊させて養殖するものである(特許文献2)。
【0005】
しかしながらこの方法では、まずスジアオノリの体細胞を生殖細胞(胞子)に成熟・分化させて胞子を放出させる工程が必要であり、またその胞子を回収し平板に播種する工程、さらに平板上でコケ状に広がった胞子集塊を平板から剥がし小集塊に粉砕する工程を要するなど、種苗生産の工程が非常に煩雑で時間と労力がかかり、生産効率に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−224511号公報
【特許文献2】特許第3828359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、これらの緑藻類の種苗を少ない労力と時間で生産することを可能とする技術が切望されており、本発明は、そのような種苗の生産方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アオサ目またはヒビミドロ目に属する海藻の藻体を細断した藻体片を、同種の海藻藻体の抽出物を含む培養液で培養することにより、藻体片を構成する体細胞が生殖細胞に成熟・分化することなく、直接体細胞から新芽の形成が誘導され、これを種苗として培養することで栄養繁殖が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、アオサ目海藻およびヒビミドロ目海藻よりなる群から選ばれる緑藻類の種苗生産方法であって、当該緑藻類の藻体片を、当該緑藻類の藻体抽出物を含有する培養液で培養することを特徴とする種苗生産方法である。
【0010】
また本発明は、上記生産方法によって得られる種苗を攪拌培養する緑藻類の養殖方法である。
【0011】
また本発明は、上記生産方法によって得られるアオサ目海藻またはヒビミドロ目海藻の種苗である。
【0012】
さらに本発明は、アオサ目海藻およびヒビミドロ目海藻よりなる群から選ばれる緑藻類の藻体の抽出物を有効成分とする緑藻類藻体片の新芽形成誘導剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、アオサ目またはヒビミドロ目海藻藻体の抽出物を含む培養液で同種海藻の藻体片を培養し、その体細胞から直接発芽を誘導することにより、従来困難とされてきた栄養繁殖を初めて実現したものである。従来の胞子を養殖網などの基質に付着させる養殖方法では、収穫時に基質から海藻を取り外す作業が必要であるのに対し、本発明では、種苗を水中で浮遊させながら増殖させることができるため藻体の回収が容易であり、収穫時の作業負担が著しく軽減される。また、胞子集塊法と比較して、大幅に簡略化された工程で種苗を量産できることから、生産効率が顕著に改善される。さらに、生殖細胞に由来する種苗生産法では、有性生殖によって形質が変化し一定の品質を維持することが困難であるが、本発明方法は栄養繁殖によって増殖するため、母藻の形質が養殖藻体においても維持され、均質な品質の藻体を安定的に生産することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】スジアオノリ藻体を細断した藻体片の顕微鏡写真である。
【
図2】スジアオノリ藻体片を保存培養して得られた種苗の顕微鏡写真である。
【
図3】スジアオノリ藻体片を保存培養して得られた種苗の顕微鏡写真である。
【
図4】スジアオノリ種苗を培養して得られた培養藻体の顕微鏡写真である。
【
図5】スジアオノリ種苗を培養して得られた培養藻体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアオサ目およびヒビミドロ目海藻よりなる群から選ばれる緑藻類の種苗生産方法は、当該緑藻類の藻体片を当該緑藻類の藻体抽出物を含有する培養液で培養することを特徴とする。
【0016】
(アオサ目海藻)
アオサ目海藻としては、例えば、アオサ科等に属する海藻が挙げられる。アオサ科に属する海藻としては、スジアオノリ(Enteromorpha prolifera)、ボウアオノリ(Enteromorpha intestinalis)、ヒラアオノリ(Enteromorpha intestinalis)、ウスバアオノリ(Enteromorpha linza)、ホソエダアオノリ(Enteromorpha crinita)、アナアオサ(Ulva pertusa)等のアオサ属、ヤブレグサ(Umbraulva japonica)等のヤブレグサ属が例示される。
(ヒビミドロ目海藻)
ヒビミドロ目海藻としては、例えばカイミドリ科に属する海藻があげられる。カイミドリ科に属する海藻としては、ヒトエグサ(Monostroma nitidum)、ヒロハノヒトエグサ(Monostroma.latissimum)等のヒトエグサ属が例示される。
アオサ目およびヒビミドロ目海藻のうち、スジアオノリ、ウスバアオノリ、ヒトエグサ、ヒロハノヒトエグサ等が好適である。
【0017】
(緑藻類の藻体片)
本発明では、上記アオサ目またはヒビミドロ目海藻の藻体を細断した藻体片を用いる。アオサ目またはヒビミドロ目海藻には、異型世代交代型のヒトエグサ、同型世代交代を行う有性の生活史を持つものと世代交代のない無性の生活史を持つものが含まれるスジアオノリなどが包含されるが、本発明において母藻となるアオサ目またはヒビミドロ目海藻の藻体とは、有性生殖を行うものでは配偶体または胞子体をいい、無性生殖を行うものでは無性の藻体をいう。藻体は、天然から採集した天然藻体でも、任意の養殖方法によって培養した培養藻体のいずれでもよい。藻体の部位は特に限定されるものではないが、成熟しにくく、新芽を形成しやすいことから、藻体のうち、先端部よりも付着器のある基部に近い部位の方が好ましい。具体的には、藻体全体のうち、基部から3/4までの部位が好ましく、基部から1/2での部位がより好ましい。また藻体は、新芽形成誘導が行われやすいことから、成熟して分化した生殖細胞が含まれず、実質的に体細胞から構成される未成熟の藻体であることが好ましい。具体的には、例えばスジアオノリの培養藻体を母藻とする場合、発芽してから好ましくは10〜40日、より好ましくは14〜30日程度培養し、その藻体長が好ましくは30〜200mm、より好ましくは30〜100mm程度にまで生長した若齢藻体が用いられる。
【0018】
上記母藻となる藻体を細断して藻体片を調製する。藻体の細断は、ブレンダー等によって行うことができる。新芽形成誘導及び収穫量の観点から、藻体片の長さは、好ましくは0.01〜2mm、より好ましくは0.1〜0.3mmであり、また1つの藻体片に含まれる体細胞の数は、400〜800個であることが好ましく、500〜700個がより好ましい。藻体片の長さは顕微鏡を用いて測定でき、例えば、光学顕微鏡によって藻体片を観察し、その視野において観察される藻体の粒径と個数を計測することによって、個数基準の長さの平均値として求めることができる。1つの藻体片に含まれる体細胞の数についても同様に、光学顕微鏡によって藻体片の断面を観察し、その視野において観察される藻体片の個数と各藻体片の細胞数を計測することによって、個数基準の細胞数の平均値として求められる。
【0019】
(母藻となる藻体の保存培養)
母藻となる藻体は、細断処理を行う前にあらかじめ保存培養することが好ましい。保存培養によって、藻体片の体細胞から新芽形成が分化誘導されやすくなる。保存培養の培養温度は5〜30℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。培養期間は2週間以上であることが好ましく、3〜4週間がより好ましい。一方、培養期間の上限は半年程度とすることが好ましい。培養温度を高くするほど、培養期間を短縮することができる。培養時の光量は、比較的低照度の範囲とすることが好ましく、具体的には300〜1000luxが好ましく、400〜700luxがより好ましい。保存培養に用いる培養液としては、滅菌した人工海水または海水を用いることができるが、培養液には、窒素源、リン源、アミノ酸等の栄養成分を必要に応じて添加でき、例えば、ポルフィランコンコ(第一製網株式会社)等の市販の藻類培養液を添加してもよい。このような培養液中で静置培養することが好ましい。
【0020】
(緑藻類藻体抽出物)
上記母藻となる海藻藻体を細断した藻体片を同種海藻の藻体抽出物を含有する培養液で培養する。抽出原料となる海藻の藻体は、上記母藻となる藻体と同様であり、有性生殖を行うものでは配偶体または胞子体をいい、無性生殖を行うものでは無性の藻体をいう。抽出原料となる藻体は、天然から採集した天然藻体でも、任意の養殖方法によって培養した培養藻体のいずれでもよい。抽出原料となる藻体の部位は特に限定されるものではないが、藻体片に対する新芽形成誘導効果に優れることから、藻体のうち、先端部よりも仮根または付着器のある基部に近い部位の方が好ましい。具体的には、藻体全体のうち、基部から3/4までの部位が好ましく、基部から1/2までの部位がより好ましい。また抽出原料となる藻体は、藻体片に対する新芽形成誘導が行われやすいことから、成熟して分化した生殖細胞が含まれず、実質的に体細胞から構成される未成熟の藻体であることが好ましい。具体的には、例えばスジアオノリの培養藻体を用いる場合、発芽してから好ましくは10〜40日、より好ましくは14〜30日程度培養し、その藻体長が好ましくは30〜200mm、より好ましくは30〜100mm程度にまで生長した若齢藻体が用いられる。
【0021】
このような抽出原料となる藻体は、細断ないし摩砕等の前処理をしてから抽出処理することが好ましく、特に摩砕処理により藻体の組織構造を破壊するとともに、藻体を構成する体細胞の細胞壁を破砕した摩砕物とすることが好ましい。例えば、スジアオノリの藻体では、細胞が2層に重なった2層構造の組織によって、内側が中空のストロー状構造を形成しているが、摩砕処理により、中空内部、細胞間及び細胞内部に含まれる成分が抽出されることで藻体抽出物の新芽形成誘導効果が向上する。抽出原料となる藻体の摩砕は、ホモジナイザー等を用いて行うことができる。抽出溶媒としては、水、海水等が挙げられ、これらのうち、新芽形成誘導効果及び工程の簡略化等の観点から海水が好適に用いられる。抽出条件は特に限定されないが、例えば、抽出温度は15〜25℃程度であり、抽出時間は12〜48時間程度である。必要に応じ振とう抽出を行ってもよい。このようにして得られた抽出物は、そのまま用いることもできるが、作業性や新芽形成誘導効果の観点から、さらに、凍結・自然解凍による固体沈殿、遠心分離、濾過等の公知の固液分離手段を適宜組み合わせて用いて分離した抽出液を用いることが好ましい。
【0022】
(藻体抽出物を含有する培養液における培養)
以上のようにして調製した藻体抽出物を含む培養液中で上記藻体片を培養する。培養液として、滅菌された人工海水または海水を用いることができる。培養液中の藻体抽出物の濃度は特に限定されないが、例えば、原緑藻類藻体湿重量基準で0.5〜10w/v%が好ましく、2〜3w/v%がより好ましい。培養液には、必要に応じ抗生物質を添加してもよい。この培養液中に上記藻体片を浸漬ないし懸濁する。培養液への藻体片の添加量は特に限定されないが、例えば湿重量基準で0.1〜5w/v%が好ましく、0.5〜2w/v%がより好ましく、特に好ましくは0.8〜1.0w/v%である。培養温度は10〜35℃が好ましく、20〜25℃がより好ましい。光量は100〜10000luxが好ましく、3000〜6000luxがより好ましく、光周期は10L:14D〜18L:6Dが好ましく、12L:12D〜16L:8Dがより好ましい。培養は静置培養または通気培養のいずれでもよいが、静置培養が好適である。このような条件で、好ましくは2〜12日間、より好ましくは3〜5日培養を行うことにより、藻体片から新芽が形成され、本発明の種苗が得られる。この種苗は、藻体片を構成する体細胞が成熟して形成された胞子が発芽したものではなく、体細胞から直接分枝を形成したものであり、胞子集塊法によって得られる複数の胞子または発芽体が集塊した種苗とは区別される。このように本発明の種苗は、実質的に体細胞と、体細胞から分化した長さ20〜50μm程度の複数の分枝から構成されるものである。
【0023】
(種苗の培養)
上記種苗を培養して生長させる。種苗の培養方法は特に限定されず、公知の培養方法に従って行えばよいが、作業性や生産効率の観点から、種苗を基質等に着生させず、培養液中に浮遊した状態で培養することが好ましい。例えば、攪拌子や攪拌機による機械攪拌や、通気による攪拌を行い、培養液全体を攪拌しながら連続攪拌培養することが好ましい。攪拌条件は培養容器の大きさ等により適宜設定されるが、例えば、培養容器として30Lの容量の容器を用い、通気による攪拌を行う場合には、培養容器内に空気を2.5L/分〜10L/分、好ましくは4L/分〜6L/分で導入すれば良い。
【0024】
上記培養に用いる培養液としては、滅菌された人工海水または海水を用いることができる。培養液には、窒素源、リン源、アミノ酸等の栄養成分を必要に応じて添加でき、例えば、ポルフィランコンコ(第一製網株式会社)等の市販の藻類培養液を添加してもよい。培養温度は、15〜25℃が好ましく、18〜22℃がより好ましい。光量は4000〜12000luxが好ましく、7000〜9000luxがより好ましく、8000luxが特に好ましい。光周期は12L:12D〜16L:8Dが好ましく、12L:12D〜14L:10Dがより好ましい。
【0025】
このような条件で培養することにより、種苗の分枝が栄養繁殖的に増殖する。その生長段階に応じて、培養容器の容量を段階的に増加させるスケールアップ培養が好適であり、最終的に藻体長が好ましくは100mm以上、より好ましくは
200mm以上となるまで生長させてから収穫する。収穫は網などで培養液中に浮遊する藻体を回収すればよい。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
実施例1
(藻体抽出物の調製)
継代培養されていた2本鞭毛の生殖細胞を作る無性生殖の生活史を持つスジアオノリ系統株を用いた。湿重量200gのスジアオノリを32psuの滅菌海水2000mlとともに家庭用ミキサーにて粉砕(22500rpm,1分)した後、-30℃で凍結、24時間後5℃の冷蔵庫内で解凍し、50μmフィルターで濾過し、濾液と残渣に分離した。残渣を外径9cmのガラス乳鉢に入れ、海砂(300〜600μm、30〜50mesh和光純薬工業)50gを加えて摩砕し、32psuの滅菌海水2000mlで懸濁して3L三角フラスコに入れ、往復振とう機(MULTI SHAKER MMS,東京理科機械)で、振とう速度130r.p.m.にて24時間振とうした。振とう後の溶液をメンブレンフィルター(Cellulose Acetate Filter,アドバンテック)を用い、孔径3,0.45,0.2μmの順で吸引濾過した。この濾液(藻体抽出液)を-30℃で保存した。
【0028】
(藻体片の調製)
母藻として継代培養されていた常に2本鞭毛の生殖細胞を作る無性生殖の生活史を持つスジアオノリ系統株を用いた。この母藻藻体を20℃で1か月間、市販藻類培養液(ポルフィランコンコ)を滅菌海水に1.7v/v%添加した培養液中で保存培養した。保存培養後の藻体を8g測りとり、家庭用ミキサーで約60秒間細断し、50μmのメッシュでこしとって藻体片を調製した。藻体片を顕微鏡観察したところ、その長さは250μmであった。藻体片の顕微鏡写真を
図1に示す。
【0029】
(種苗作成)
滅菌海水に上記藻体抽出液を25v/v%の割合で添加して培養液を調製した。この培養液100mlあたりに上記スジアオノリの藻体片約1gを添加し懸濁した。直径90mmのシャーレに藻体片を懸濁した培養液を30mlずつ分注した。25℃のインキュベーター内で、光量4500lux、光周期12L:12Dの条件で、3日間静置培養を行った。これによりスジアオノリ藻体片は成熟することなく、体細胞から新芽が形成されたことが確認された。得られた種苗の顕微鏡写真を
図2及び3に示す。
【0030】
(種苗の培養)
滅菌海水に市販藻類培養液(ポルフィランコンコ)を0.05v/v%添加して培養液を調製した。容量30Lの培養容器にこの培養液15mlを入れ、上記スジアオノリ種苗(湿重量10g)を懸濁させた。培養液に空気を5L/分で導入し、温度20℃、光量8000lux、光周期12L:12Dの条件下で7日間培養した。培養後、藻体の湿重量を測定したところ150gであった。培養藻体の写真を
図4及び5に示す。この藻体をさらにスケールアップ培養により最終的に藻体長200mm以上になるまで生長させた。スジアオノリ藻体片湿重量1gから最終的に10kgのスジアオノリ藻体を生産することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の方法は、簡便な工程で効率よくアオサ目またはヒビミドロ目海藻の種苗を量産することができ、この種苗を栄養繁殖的に増殖させることで均質な品質の藻体を安定的に生産可能であるため、アオサ目またはヒビミドロ目海藻の陸上養殖法として極めて有用である。
以 上