(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861983
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ロープウェイ搬器の懸垂機
(51)【国際特許分類】
B61B 12/02 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
B61B12/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-212766(P2016-212766)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-69950(P2018-69950A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 直昭
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−145660(JP,A)
【文献】
特開2009−202617(JP,A)
【文献】
特公昭43−028971(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機と懸垂機と客車とを備えたロープウェイの搬器において、前記懸垂機は、前記走行機に揺動自在に枢着した本体と、前記客車に連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、前記本体に対して着脱自在に取り付けられるとともに、前記客車に対して着脱自在に取り付けられ、前記懸垂機の前記本体と前記客車を更新する場合、前記連結部材を前記本体から離脱させるとともに、前記連結部材を前記客車から離脱させて、新たな懸垂機の本体又は客車と適合する連結部材に交換可能としたことを特徴とするロープウェイ搬器の懸垂機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープウェイの運行に用いられる搬器を構成する懸垂機に関する。
【背景技術】
【0002】
索道は、空中に張り渡した索条に搬器を懸垂し、この搬器を索条で牽引して運行を行う輸送設備であり、傾斜地等での人員や貨物の輸送に広く利用されている。索道の中でも比較的大型の閉鎖型搬器を用い、多数の乗客を輸送する設備として複線式普通索道があり、一般的にはロープウェイと称呼されている。
【0003】
ロープウェイは、
図3に示すように、停留場11、12間に固定索である支索13を張り渡すとともに、この支索13と平行して動索であるえい索15を張架し、これら支索13及びえい索15を支柱14で支持して線路を形成している。搬器16には、支索13上を転動する走行輪を有する走行機17を備え、この走行機17から懸垂機19を介して客車18を懸垂している。走行機17には、えい索15が連結されており、このえい索15を駆動することにより搬器16が支索13に沿って停留場11、12間を移動する。
【0004】
搬器16は、上記したように走行機17と懸垂機19と客車18とで構成されている。客車18は、アルミニウム合金を主材として箱状に形成されており、上部には前後左右方向に対称となる四カ所の位置に懸垂機19との連結部を突設している。この連結部は、合成ゴム等の弾性材を介して懸垂機19の下部に連結される。懸垂機19の上部は、走行機17に走行方向前後へ揺動自在に枢着しており、これにより線路中の走行勾配が変化しても客車18の水平姿勢が保たれるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−72539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロープウェイは大型の設備であるとともに、立地条件が厳しい地形に建設されるために建て替えには困難を伴うことから、一度建設されると20年ないし30年、あるいはそれ以上の長い期間に亘って設備が使用されるのが一般的である。ロープウェイにおいては、このように使用期間が長いため、この使用期間中に老朽化による各種機器や装置類の更新が必要になる場合があり、搬器もまた金属疲労や外観の悪化等のために交換しなければならない場合がある。この場合に、搬器を一式交換すると多額の費用がかかるために、走行機と懸垂機と客車とをそれぞれ別の年度に分けて更新したいという要望がある。
【0007】
しかしながら、使用していた現状の客車と更新する新規の客車とでは、懸垂機と連結する連結部の位置が相違することがあり、このような状況において客車の更新を先に行う場合には、客車と懸垂機を同時に更新するかしかないが、客車よりも懸垂機を先に更新する場合には、旧型の客車に合わせて懸垂機を先に更新し、後に新型の客車に合わせた懸垂機を新たに制作して更新することになる。したがって、時期を違えて客車と懸垂機を更新する場合には、種類の異なる2台の懸垂機をそれぞれの時期に制作して更新しなければならず多額の費用が発生してしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、時期を違えて懸垂機と客車を更新する場合に、多額の費用が発生することのないロープウェイ搬器の懸垂機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、走行機と懸垂機と客車とを備えたロープウェイの搬器において、前記懸垂機は、前記走行機に揺動自在に枢着した本体と、前記客車に連結する連結部材と、を備え、前記連結部材は
、前記本体
に対して着脱自在に取り付けられるとともに、前記客車に対して着脱自在に取り付けられ、前記懸垂機の前記本体と前記客車を更新する場合、前記連結部材を前記本体から離脱させるとともに、前記連結部材を前記客車から離脱させて、新たな懸垂機の本体又は客車と適合する連結部材に交換可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、客車の更新を行う際に懸垂機と連結する客車の連結部の位置が、現状の客車と更新する新型の客車とで相違していても、本体をそのままにして連結部材のみを交換することで対応できるので多額の費用を要さない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。なお、ロープウェイ全体の構成は、従来の技術において記載した
図3の構成と同一であり、同一の要素には、同一の符号を付すとともに、ロープウェイ全体の構成については説明を省略する。
【0013】
図1及び
図2は、索道の搬器16を示した正面図及び側面図である。搬器16は、支索13上を走行する走行機17と、走行機17に連結された懸垂機19と、懸垂機19に吊下された客車18とからなっている。
【0014】
走行機17は、支索13に沿って延びる箱形状のメインフレーム20の両端部に、それぞれ互いに回動可能に連結したバランスビーム22、23、24を介して複数の走行輪21を備え、これらの走行輪21が線路中に平行して張架された支索13上を転動して走行する。メインフレーム20の中央部下端には、えい索15が固着されており、このえい索15が駆動されることにより走行機17が牽引される。メインフレーム20には、懸垂機19とメインフレーム20とを連結する軸25を備えており、懸垂機19とメインフレーム20とは、走行する方向に対して前後方向に揺動自在になっている。
【0015】
懸垂機19は、本体26と連結部材27とからなっている。本体26は、主な材料を鋼板とした溶接構造体であって、正面視において略J字形状の主材28を側面視においてハ字状に配置して形成し、前後の主材28の下端部を左右の鋼管材29により連結している。鋼管材29の各前後端部には、連結部材27を固着するためのフランジ30が形成されている。
【0016】
連結部材27は、鋼板を組み合わせて断面を矩形筒状に形成したものであって、中央部の側面にフランジ31が形成されている。このフランジ31と本体26のフランジ30とをボルト等により締結し、連結部材27が本体26に固着される。連結部材27の両端には、客車18と連結するための支持部32が形成されている。支持部32は、本体26に固着したフランジ31よりも下方の位置にあり、連結部材27は、このような位置関係となるように鋼板により形成されている。
【0017】
客車18は、箱形の客車であって両側面に引き戸式の扉を有し、内部には、例えば100人程度の乗客を収容できる。客車18の上面には、客車18の中心に対して前後左右対称の4カ所に吊り金具33を上方へ突出して設けており、各吊り金具33は、合成ゴム等の弾性材を介して連結部材27の支持部32に取り付けられる。
【0018】
以上の構成により、客車18を更新する場合において、新たな客車の吊り金具の位置が現状の客車18の吊り金具33の位置と同一であれば、懸垂機19は現状のままで使用すればよい。一方、新たな客車の吊り金具の位置が、左右方向、前後方向、上下方向に相違する場合には、当該吊り金具の位置に合う支持部を有する連結部材を新たに製作し、これを現状の連結部材27と交換することにより新しい客車を取り付けることができる。
【符号の説明】
【0019】
11 停留場
12 停留場
13 支索
14 支柱
15 えい索
16 搬器
17 走行機
18 客車
19 懸垂機
20 メインフレーム
21 走行輪
22 バランスビーム
23 バランスビーム
24 バランスビーム
25 軸
26 本体
27 連結部材
28 主材
29 鋼管材
30 フランジ
31 フランジ
32 支持部
33 吊り金具