特許第6861985号(P6861985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6861985-索条牽引式輸送設備の原動装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861985
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】索条牽引式輸送設備の原動装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 9/00 20060101AFI20210412BHJP
   B61B 12/10 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B61B9/00 A
   B61B12/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-225838(P2016-225838)
(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-83442(P2018-83442A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 政信
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−162363(JP,A)
【文献】 特開2001−048451(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/080876(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3015884(JP,U)
【文献】 特開2018−030439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 9/00
B61B 12/10
B66B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停留場間に軌道を敷設または吊架し、該軌道に沿って走行する搬器に索条を連結し、該索条を前記停留場に設けた原動装置の原動滑車に巻き掛けて、該原動滑車を回転駆動することにより前記索条が前記搬器を牽引して輸送を行う索条牽引式輸送設備において、前記原動滑車から延伸する一方の索条を下方から支承する受索偏向輪と、前記原動滑車から延伸する他方の索条を上方から支承する圧索偏向輪と、前記原動滑車の前方に備えて前記圧索偏向輪から延伸した索条を巻き掛ける第1誘導滑車と、前記原動滑車の前方に備えて前記受索偏向輪から延伸した索条を巻き掛ける第2誘導滑車と、を備え、前記原動滑車は、前記軌道を含む線路に直交する方向へ傾いており、前記索条は、前記受索偏向輪及び前記圧索偏向輪と前記原動滑車との間において平面視で左右に交差することを特徴とする索条牽引式輸送設備の原動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索条により搬器を牽引して乗客や物資を輸送する索条牽引式輸送設備の原動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
索条により客車や台車(以下、これらをまとめて搬器という)を牽引して輸送を行う索条牽引式輸送設備は、旅客設備として人員の輸送を行うケーブルカーや、産業用設備として物資の輸送を行うインクライン等として知られている。索条牽引式輸送設備の一般的な構成としては、敷設された軌道上に搬器を移動可能に設置し、この搬器に接続された索条を滑車によって巻き掛け駆動することにより、搬器が軌道に沿って移動するように構成している。また、空中に吊架した支索を軌道にして、この軌道に沿って搬器を索条により牽引するロープウェイも索条牽引式輸送設備の一種である。
【0003】
このような索条牽引式輸送設備においては、山頂側の停留場に索条駆動用の原動装置を配設し、原動装置に備えた原動滑車に索条を巻き掛けて索条の両端に搬器を連結するか、または索条の一端に搬器を連結し他端にはカウンターウエイトを連結して、いわゆるつるべ式に運行を行う方式が多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。また、索条を停留場間でループ状に張り渡し、これに搬器を連結して運行する方式もある(例えば、特許文献2参照)。上記原動装置は、索条を巻き掛けた原動滑車と、この原動滑車に出力軸を連結した減速機と、この減速機の入力軸に連結した電動機とを備えており、電動機を駆動することにより原動滑車が回転するとともに、これに巻き掛けた索条が原動滑車との間の摩擦力によって駆動される。
【0004】
このように索条は、原動滑車との摩擦力により駆動力を得るため、設備の仕様によっては原動滑車への索条の巻き付け角を大きくとる必要のある設備もある。このことから従来、停留場内に複数の滑車を配置して、これらの滑車を介して索条を原動滑車に複数回巻き掛けて、必要となる巻き付け角を確保するようにしていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−219131号公報
【特許文献2】特開平8−244598号公報
【特許文献3】特開2015−000672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように複数の滑車を設置すると設備が高価になるとともに、必要となる空間が大きくなり経済的でないという難点があった。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡素な構成によって必要とする空間が少なくて済むとともに、原動滑車への索条の巻き付け角を大きく確保することのできる索条牽引式輸送設備の原動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、停留場間に軌道を敷設または吊架し、該軌道に沿って走行する搬器に索条を連結し、該索条を前記停留場に設けた原動装置の原動滑車に巻き掛けて、該原動滑車を回転駆動することにより前記索条が前記搬器を牽引して輸送を行う索条牽引式輸送設備において、前記原動滑車から延伸する一方の索条を下方から支承する受索偏向輪と、前記原動滑車から延伸する他方の索条を上方から支承する圧索偏向輪と、前記原動滑車の前方に備えて前記圧索偏向輪から延伸した索条を巻き掛ける第1誘導滑車と、前記原動滑車の前方に備えて前記受索偏向輪から延伸した索条を巻き掛ける第2誘導滑車と、を備え、前記原動滑車は、前記軌道を含む線路に直交する方向へ傾いており、前記索条は、前記受索偏向輪及び前記圧索偏向輪と前記原動滑車との間において平面視で左右に交差することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構成により必要とする空間が少なくて済み、また、原動滑車に巻き掛ける索条の巻き付け角を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】線路縦断面
図2】線路平面図
図3】原動装置の正面図
図4】原動装置の側面図
図5図4の平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、索条牽引式傾斜輸送設備の線路の一例を示した線路縦断面であり、図2は、線路平面図である。図に示すように線路は、標高の低い位置にある山麓停留場10と標高の高い位置にある山頂停留場11とを結んで形成されており、両停留場10、11を結んで2列を一組とした軌道12が二組平行して敷設され、この軌道12に沿って索条13が延線されている。索条13は、一端が一組の軌道12上を走行する搬器14aに連結されており、中間部を山頂停留場11に備えた原動装置15に巻き掛けて折返し、他端部を他組の軌道12上の搬器14bに連結されている。このように索条13に連結された搬器14aと14bとは、原動装置15を駆動することにより両停留場10、11間を軌道12に沿って互いに反対方向へ移動する。
【0011】
図3は原動装置の正面図であり、図4は原動装置の側面図、図5図4の平面図である。なお、以下の説明においては、図5における上側に対応する方向を右方向、下側を左方向として表現し、また図5の右側に対応する方向を前方向または線路側方向、左側を後方向として表現する。
【0012】
まず、原動装置15には、索条13を巻き掛けて駆動する原動滑車24を備えている。原動滑車24は、減速機25の出力軸に固着しており、原動滑車24と減速機25とはともに、線路に対して直交する方向へ右側が下側となるように傾いている。減速機25の入力軸には、軸継手26が連結されており、軸継手26の他端は電動機27に連結されている。この構成により、電動機27を駆動することによって減速機25を介して原動滑車24は、時計回り及び半時計回りのいずれの方向へも回転駆動される。
【0013】
減速機25の入力軸には、ディスク板31を装着するとともに、これを挟持して制動するディスク制動機32を備えている。また、原動滑車24の側方には制動機フレーム30が立設されており、これに原動滑車24のリム部を挟持して制動する滑車制動機33を装着している。各制動機32、33は、停留場10、11における搬器14a、14bの停車時や、運行中の異常発生時等に動作し、原動滑車24の回転ないし索条13の移動を停止させる。
【0014】
原動滑車24の線路側方向には、誘導滑車フレーム28が固設されており、この誘導滑車フレーム28の左右側方には、第1誘導滑車20と第2誘導滑車21とを回転自在に支持している。第1誘導滑車20と第2誘導滑車21とは、ともに水平方向に回転するようになっており、第1誘導滑車20よりも第2誘導滑車21のほうが高い位置にある。第1誘導滑車20に巻き掛けられた索条13は、平面視において線路側から原動滑車24に向けて内側方向へ偏向し、原動滑車24の左側へ進入するように延伸している。また、第2誘導滑車21に巻き掛けられた索条13は、平面視において線路側から原動滑車24に向けて内側方向へ偏向し、原動滑車24の右側へ進入するように延伸している。
【0015】
第1誘導滑車20及び第2誘導滑車21の原動滑車24側には、偏向輪フレーム29が立設されており、この偏向輪フレーム29には、受索偏向輪22と圧索偏向輪23とが垂直方向へ回転自在に支持されている。受索偏向輪22は、索条13を下方から支承しており、これにより索条13は、原動滑車24方向へ下方へ偏向されて延伸する。また、圧索偏向輪23は、索条13を上方から支承しており、これにより索条13は、原動滑車24方向へ上方へ偏向されて延伸する。このようにして第1誘導滑車20及び第2誘導滑車21と原動滑車24との間に張り渡された左右の索条13どうしは、平面視において互いに交差する位置で上下に離隔しており、互いに干渉することはない。
【0016】
以上の構成により、索条13が平面視において交差する角度θ(図5参照)を例えば90°に設定すると、原動滑車24における索条13の巻き付け角は270°となり、大きな巻き付け角を確保することができる。したがって、原動滑車24と索条13との間の摩擦力が増大し、左右の索条13の張力差が大きい場合であっても、索条13と原動滑車24との間で滑動することなく索条13を駆動することができる。なお、上記の説明においては、地上に敷設した軌道12に沿って搬器14a、14bが移動する索条牽引式輸送設備について説明を行ったが、空中に吊架した支索に沿って搬器を運行するロープウェイや、停留場間を循環移動する索条により搬器の運行を行う循環式索道等にも本発明の原動装置は適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
10 山麓停留場
11 山頂停留場
12 軌道
13 索条
14a 搬器
14b 搬器
15 原動装置
20 第1誘導滑車
21 第2誘導滑車
22 受索偏向輪
23 圧索偏向輪
24 原動滑車
25 減速機
26 軸継手
27 電動機
28 誘導滑車フレーム
29 偏向輪フレーム
30 制動機フレーム
31 ディスク板
32 ディスク制動機
33 滑車制動機
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5