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特許6862001タンジェンシャルフローろ過システムにおいてろ過収量を向上させるための改良された方法
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  • 特許6862001-タンジェンシャルフローろ過システムにおいてろ過収量を向上させるための改良された方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862001
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】タンジェンシャルフローろ過システムにおいてろ過収量を向上させるための改良された方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/14 20060101AFI20210412BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20210412BHJP
   B01D 61/18 20060101ALI20210412BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20210412BHJP
   C07K 1/34 20060101ALI20210412BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B01D61/14 510
   B01D61/22
   B01D61/14 500
   B01D61/18
   C12M1/12
   C07K1/34
   C12N1/02
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-507721(P2018-507721)
(86)(22)【出願日】2016年8月17日
(65)【公表番号】特表2018-526202(P2018-526202A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】EP2016069475
(87)【国際公開番号】WO2017029307
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年6月17日
(31)【優先権主張番号】2581/DEL/2015
(32)【優先日】2015年8月20日
(33)【優先権主張国】IN
(31)【優先権主張番号】2610/DEL/2015
(32)【優先日】2015年8月21日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ヌタラパチ,サシ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ギバウアー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】リデルフェルト,カール・アクセル・ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】カールマルカール,ナチケット
(72)【発明者】
【氏名】バーニカー,アジット・エス
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,アミット・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ランドシュトロム,フレドリック・オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ラグラマチャンドラン,サンギータ
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−530754(JP,A)
【文献】 特表2014−521333(JP,A)
【文献】 特表2005−505405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C12M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のためのプロセスであって、
a.前記クロスフローろ過システム(20)の無菌空気源(5)に動作可能に接続された蠕動ポンプなどの容積型ポンプ(4)を作動させることによって前記クロスフローろ過システム(20)の全体に加圧された空気の対向流の流れを生じさせるステップと、
b.前記クロスフローろ過システム(20)に動作可能に接続されたドレーン弁(6)において前記生物流体を回収するステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
前記クロスフローろ過システム(20)は、流路を形成するように互いに接続された一連のチューブ、弁(7)、センサ、および導管(10)を備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記無菌空気源(5)に動作可能に接続された容積型ポンプ(4)は、生物流体容器(1a)に隣接する前記クロスフローろ過システム(20)のくに位置する、請求項1乃至2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記加圧された空気の対向流の流れを生じさせるステップは、10〜10,000rpm、100〜1,000rpm、または9.655×10Pa〜3.449×10Paの間で流れを加圧する容積型ポンプ(4)によって作動させられる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記加圧された空気の対向流の流れを生じさせるステップは、1mL/分〜1L/分のフロー出力を加圧する容積型ポンプ(4)によって作動させられ、随意により、前記容積型ポンプ(4)は、6.897×10Pa〜1.034×10Paまたは9.655×10Pa〜6.879×10Paの間で流れを加圧する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
a)前記無菌空気源(5)は、受動的に供給され、あるいは1〜10リットル/分の流量で供給され、
b)前記加圧された空気の対向流の流れを生じさせるステップは、2リットル/分で流れを加圧する容積型ポンプ(4)によって作動させられ、
c)前記加圧された空気の対向流の流れを生じさせるステップは、流量の1〜100%のポンプ流量の百分率として測定され、
d)前記加圧された空気の対向流の流れを生じさせるステップの空気は、受動的に供給され、および/または
e)前記加圧された空気の対向流の流れを生じさせるステップは、最大流量の25%である、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
i.生物流体容器(1a)と、
ii.クロスフローろ過フィルタ(3)と、
iii.前記生物流体容器(1a)から前記クロスフローろ過フィルタ(3)へと動作可能に接続され、フィードフローを含んでいるフィードフローライン(11)と、
iv.前記クロスフローろ過フィルタ(3)から前記生物流体容器(1a)へと動作可能に接続され、ろ過されなかった流れを含んでいる保持液フロー戻りライン(12)と、
v.前記クロスフローろ過フィルタ(3)に動作可能に接続され、(ろ過された)透過液フローを含んでいる透過液フローライン(13)と、
vi.前記保持液フロー戻りライン(12)および無菌空気源(5)に動作可能に接続された容積型ポンプ(4)と、
vii.前記フィードフローライン(11)に動作可能に接続(弁)されたドレーンライン(14)と
を備えるクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のためのシステムであって、
viii.前記容積型ポンプ(4)が作動させられて、前記容積型ポンプによって加圧された空気の対向流の流れによって、前記動作可能に接続された容積型ポンプ及び無菌空気源(5)からドレーン弁(6)へと前記クロスフローろ過システム(20)の全体の流れを加圧し、前記ドレーン弁(6)において前記流れが回収される、クロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のためのシステム。
【請求項8】
前記加圧された空気の対向流の流れの発生は、10〜10,000rpmまたは100〜1,000rpmの間で流れを加圧する容積型ポンプ(4)によって作動させられる、クロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記加圧された空気の対向流の流れの発生は、1mL/分〜1L/分のフロー出力を加圧する容積型ポンプ(4)によって作動させられ、随意により、前記空気の圧力は、9.655×10Pa〜1.034×10Paの標準圧である、請求項7乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記容積型ポンプ(4)は、9.655×10Pa〜6.879×10Paの間で流れを加圧し、または前記加圧された空気の対向流の流れの発生は、9.655×10Pa〜3.449×10Paの間で流れを加圧する容積型ポンプ(4)によって作動させられる、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための請求項7乃至9のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くには、ろ過システムからの価値ある生物流体の効率的な定量的回収のための方法および装置に関し、より詳しくは、医薬およびバイオテクノロジ産業での使用に適した高精度分離システムからの価値ある生物流体の効率的な定量的回収に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過システムは、生物流体を精製するための医薬およびバイオテクノロジ産業の重要な構成要素である。精製された生物流体の高い価値ゆえに、広範な研究が、ろ過システムのあらゆる側面の改善に注力している。また、このようなろ過システムは、マイクロろ過、限外ろ過、タンジェンシャルまたはクロスフローろ過、および定容ダイアフィルトレーションなどの広範な有用性を包含する。一般に、これらのシステムにおいては、ろ過されるべき液体が、流路を通って多孔質膜シートまたは多孔質中空繊維カラムに押し込まれる。そのようなシートまたは膜は市販されており、これらの異なる孔サイズを利用して、膜またはカラムの平均孔サイズよりも小さい分子または微粒子が、例えば溶媒と一緒に膜または中空繊維の壁を通過し、ろ液として集められる。保持液が取り残される。限外ろ過または他のタンジェンシャルフローろ過装置を取り入れたろ過の手法など、多くのろ過の手法においては、ろ過効率を改善し、ろ液または透過液の収率を高める目的で、保持液を繰り返し再循環させる。これらの流れの各々は、回収可能性全体の最大1〜5%もの貴重な生成物を含んでいる。そのようなシステムの例を、2003年8月19日に発行されたSchickの米国特許第6,607,669号、2007年9月18日に発行されたPetersenの米国特許第7,270,744号、米国特許第6461513号、および2014年4月3日に公開された国際公開第2014/051503号に見つけることができる。
【0003】
精製および/または濃縮後の価値ある濃縮された生物流体の定量的回収は、重要な関心領域の1つである。ひとたび最大限の精製および/または濃縮処理が完了すると、かなりの量の残余の生物流体が、ろ過システムの流路に残る。この残余の生物流体の回収を促進するために、多数の戦略が適用されている。残念ながら、これらの方法のいずれも、全ての残余の生物流体の効率的かつ定量的な回収をもたらしていない。
【0004】
さらに、ろ過技術は、行為がきわめて労働集約的な性質であるなど、多数の既知の欠点を抱えている。さらなる重大な欠点は、安全性および効率性に影響する。1つの欠点は、ろ液の収量が、多くの場合に、溶液における微粒子の量が予測不可能であるために、定量的でないことである。もう1つの欠点は、過度のフィルタ入口圧力であり、これは、フィルタ入口などのチューブ接続部における噴出につながり、例えば高価につく保持液の流出を招く。さらに、伝統的なエアブローダウンが、より多くの設備、外部の圧力、および手動の相互作用を必要とするのに対し、本方法は、回収システムが滅菌フィルタを備えた追加の入口を必要とするだけであるため、設備および動作のコストの削減を促進する。これらの種類の欠点ゆえに、手動および半自動のろ過システムは、絶えず監視される必要があり、これが、そのような手法の高い労働集約性の大きな原因である。
【0005】
現在の生物流体の回収の実施は、流路から生成物を吹き飛ばすために、生物流体リザーバの入口に加圧空気ラインを適用することを必要とする。そのような方法は、残念ながら、残余の流体の発泡、生物流体の質の低下、および無菌状態の喪失につながることが多い。クロスフローろ過システムに保持された生物流体を回収するための改善された方法が、必要である。
【0006】
本開示においては、残余の生物流体の最大限の回収のために、クロスフローろ過システムから濃縮された生成物を加圧して押し出すために、内部のフローポンプが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 907 565号明細書
【発明の概要】
【0008】
本明細書において説明されるように、典型的な実施形態は、当技術分野において知られている上述の欠点または他の欠点の1つ以上を克服する。簡潔には、本開示は、ろ過システムからの価値ある生物流体の効率的な定量的回収をもたらし、より詳しくは、医薬およびバイオテクノロジ産業での使用に適した高精度分離システムからの価値ある生物流体の効率的な定量的回収をもたらす。より具体的には、本開示は、濃縮またはダイアフィルトレーションなどの用途において所望の分離が完了した後にクロスフローろ過システムから残余の(濃縮された)生物流体生成物を回収するための方法、プロセス、システム、および装置に関する。これらのプロセスが完了した後に、クロスフローろ過流路に残る濃縮された生物流体を、クロスフローろ過システム内の残余の流体が収集ドレーン地点(システムの最下点に位置してよい)において効率的に回収されるように、クロスフローろ過システムへの圧力および無菌空気の内部印加によって回収することができる。
【0009】
より具体的には、本開示は、作動させられたクロスフローろ過システムからの価値ある生物流体の向上した回収のための方法/プロセス/システムであって、クロスフローろ過システムの一端の無菌空気源に動作可能に接続された内部ポンプ(蠕動ポンプなど)を作動させることによってクロスフローろ過システムの全体に内部の(統合された)加圧された対向流の流れを生じさせることと、クロスフローろ過システムの他端に動作可能に接続されたドレーン弁において前記価値ある生物流体を回収することとを含む方法/プロセス/システムに関する。
【0010】
クロスフローろ過システムは、
i.生物流体容器と、
ii.クロスフローろ過フィルタと、
iii.前記生物流体容器から前記クロスフローろ過フィルタへと動作可能に接続され、フィードフローを含んでいるフィードフローラインと、
iv.前記クロスフローろ過フィルタから前記生物流体容器へと動作可能に接続され、ろ過されなかったフローを含んでいる保持液フロー戻りラインと、
v.前記クロスフローろ過フィルタに動作可能に接続され、(ろ過された)透過液フローを含んでいる透過液フローラインと、
vi.前記保持液フロー戻りラインおよび無菌空気源に動作可能に接続された内部ポンプと、
vii.前記フィードフローラインに動作可能に接続(弁)されたドレーンラインと
を備え、
viii.前記内部ポンプが作動させられて、動作可能に接続されたポンプ/無菌空気源から前記ドレーン弁へと前記クロスフローろ過システムの全体の対向流の流れを加圧し、前記ドレーン弁において前記価値ある流れが回収される。
【0011】
この回収された生成物は、濃縮された生物流体であり、高い価値があり、したがって、さらなる処理のためにシステムの流路から最大限に回収されるべきである。このプロセスは、ユーザがいかなる希釈も伴わずにクロスフローシステムのとくには流路から製品を完全に排出することを可能にする。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、本開示の一態様は、驚くべきことに、生成物を劣化させることなくシステムの流れの表面から残余の濃縮された生物流体を効果的に奪い取り、ドレーンにおける全体としての収量を向上させるためのクロスフローろ過システムへの内部圧力の特定の使用に関する。内部ポンプ/圧力の使用は、圧力の正確かつ狙いをつけた制御および電子データ処理ネットワークへの統合も容易にする。
【0012】
伝統的に、回収は、ろ過の完了後にシステム内に残る残余の流体を指すいわゆるホールドアップボリュームに注目する。ホールドアップボリュームを回収するための方法として、重力に基づく回収が挙げられ、名前のとおり、重力に頼ってクロスフローシステムから残留物を排出する。このような方法は、ホールドアップボリュームの約33%を得るように完成させることができる。フィードポンプから圧力を加えることで、ホールドアップボリュームのさらなる44%の回収を可能にすることができる。残りの23%を回収することは、進行中の課題であり、外部から印加される空気圧が、収集のためにいくつかの用途において使用されているにもかかわらず、圧力を制御することができないなどのそのような方法に関連するリスク因子が、定量的な回収をもたらしていない。生成物を回収するための別の標準的な方法は、最終的な生物流体の濃縮後のクロスフローろ過システムに緩衝液を流すことである。残念なことに、この方法は、最終的な価値ある生成物を希釈する結果となる。完全な生成物を回収するためのもう1つの標準的な方法は、フィードポンプを稼働させて生成物を排出することである。残念ながら、この方法も、完全な生成物を回収することができない。
【0013】
いわゆるエアブローダウンが、流路から生成物を回収するために使用されてきたさらに別の方法である。この方法では、クロスフローろ過システムを開き、加圧された空気をもたらす工業用空気ラインを接続して、流路から生物流体を吹き飛ばす必要がある。そのような方法は、生物流体の回収前に追加の処理ステップを必要とする生物流体内での発泡の発生をもたらす可能性がある。さらに、閉じた連続的なサイクルのシステムの完全性に対する不連続性に関連したシステムおよび無菌制御の喪失が、生物流体の画分の価値にとって有害であり得る。
【0014】
現在の方法を使用して、さらなる11〜20%を回復することができるが、重要なことには、88〜98%の全体を1つのステップで、標準的な方法の時間およびリスクの何分の1かで回収することができる。したがって、本プロセスは、既存の技術からの結果に対する大幅な改善である。
【0015】
本開示は、精密ろ過、微粒子コーティングおよび洗浄、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、および特定の分取クロマトグラフィ用途などの種々の分離技術に適用可能である。また、遺伝子治療の研究および開発などにおける哺乳類細胞の自動ウイルス感染、ならびに迅速な細胞分離、タンパク質の清澄化、およびタンパク質の濃縮にも適用可能である。これらのシステムの各々は、本開示による収量向上のやり方で容易に再設計することができ、自動化することができる。
【0016】
本開示の一実施形態は、作動させられたクロスフローろ過システムからの回収に関する。本明細書において使用されるとき、「作動させられた」は、構築され、装てんされ、標準的なろ過および/または流体の濃縮が完了したクロスフローろ過システムを指す。したがって、ろ過システムは、ひとたびシステムに対象の生物流体が装てんされ、恒常性の連続的な循環流が確立されると、作動させられたとみなされる。クロスフローろ過システムにおけるこの最終の期間において、ユーザは、システムの流路内に残る残余の生物流体の全てを迅速かつ効率的に回収したいと考える。作動は、ろ過が完了した後にシステムを分離して安定化させる方法を含む。多くの場合、生物流体リザーバへの弁および生物流体リザーバからの弁が閉じられる。しかしながら、本プロセスは、標準的な濃縮または収集から、流路からの残余の流体の加圧された排出へと、連続的かつ継ぎ目のない移行を提供する。ユーザが必要とする外的作用を伴わずにクロスフローシステムの無菌性および完全性を維持することは、プロセス全体の収率を大幅に向上させる。本開示の方法は、この作動させられたシステムからの生物流体の回収を含む。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「生物流体」は、生物学的または製薬学的方法によって調製され、細胞、分子(とくに、有用タンパク質)、懸濁粒子、培地、緩衝液、担体、反応溶液、または他の液体成分などの生物学的物質を含む流体を指す。クロスフローろ過システムで使用される流体の範囲は、周知である。
【0018】
本明細書において使用されるとき、「ポンプ」は、透過液のための蠕動ポンプならびにフィード用の移相およびダイアフラムポンプを含む容積型ポンプを指す。さらに、ろ過用途に利用できる遠心ポンプが存在する。ポンプの特性は、低せん断圧力/流量仕様および使い捨ての流路の一部とすることができる使い捨てのポンプヘッドを含む。
【0019】
内部ポンプは、流路に統合された容積型ポンプを指す。内部ポンプは、理想的には、低せん断圧力/流量仕様と、流路の使い捨ての態様を一体的に可能にする使い捨てのポンプヘッドとを有する。
【0020】
別の実施形態は、ポンプおよび空気源が関連の弁と共に設けられ、例えば装置のポンプ、弁、およびセンサの動作に関連するデータ、ならびに外部のソース(すなわち、ユーザの入力)からのデータを受信、処理、および記録し、さらには例えば前記ポンプ、弁、およびセンサへと信号(または、他の電子的命令)を送信する電子データ処理ネットワークへと接続されるような加圧方法の自動化による回収に関する。データ処理ネットワークは、回路、配線、ユーザインターフェース、データ記憶媒体、少なくとも1つのCPU、およびデバイスの構成要素の電子的な接続および制御を行うように構成された他の電子構成要素を備える。
【0021】
別の実施形態は、複数のベイ入口/出口クロスフローシステムに関する。標準的な操作は、生物流体容器に収容された生物流体を想定しているが、典型的な実施において、容器は、前記生物流体の出発点または起源でない。むしろ、システムへともたらされる流体の典型的なソースは、複数容器の液体試料ディスペンサである。そのようなマルチベイ挿入の一例が、図1に概略的に示されている。図1に示されているように、複数容器の試料ディスペンサを、最終的に生物流体容器1aへと接続される接続部9を介してシステムに統合することができる。1bなどの複数容器の試料ディスペンサは、電子的に制御可能な弁によってそれぞれ制御され、追求される特定の分離用途のプロセスパラメータに応じてさまざまな流体の溶液で満たされ、あるいは他のやり方で装てんされることができる複数の溶液容器を備えることができる。したがって、例えば、これらの容器を、脱イオン水、洗浄溶液、緩衝溶液、および生化学試料溶液の交互の溶液で満たすことができる。溶液は、予めプログラムされた計画に従って、システムのデータ処理ネットワークの電子制御の下で、独立または混合して送出される。
【0022】
別の実施形態は、使い捨てのシステムに関する。
【0023】
タンジェンシャルまたはクロスフローろ過フィルタは、生物流体の大部分が連続的に時間をかけて膜表面(さまざまなサイズの孔を含んでいる)に基本的に平行な方向に流れる一方で、膜を通過して流れる量ははるかに少ないろ過装置である。早期の目詰まり、汚れ、および濃度分極を防ぐこのような流れの掃除および洗浄の性質ゆえに、クロスフロー(タンジェンシャルフローとしても知られる)ろ過システムは、多くの場合、対応する垂直流の膜フィルタシステムよりも高い流束および高い処理量を達成することができる。適切な膜として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ビニルコポリマー、ポリアミド(「ナイロン6」または「ナイロン66」など)、ポリカーボネート、PFA、これらのブレンド、などから形成された限外ろ過、微小孔、ナノろ過、または逆浸透フィルタが挙げられる。
【0024】
典型的な実施形態のこれらの態様および利点ならびに他の態様および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて検討することで、明らかになるであろう。しかしながら、図面があくまでも説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を定義しようとするものではなく、本発明の範囲については添付の特許請求の範囲を参照すべきであることを、理解すべきである。本発明のさらなる態様および利点は、以下の説明に記載され、一部はその説明から明らかであり、あるいは本発明を実施することによって習得可能である。さらに、本発明の態様および利点は、添付の特許請求の範囲において詳細に指摘される手段および組み合わせによって実現および達成され得る。
【0025】
添付の図面は、本開示の現時点における好ましい実施形態を示しており、上述の全体的な説明および以下の詳細な説明と共に、本開示の原理を説明する役割を果たす。図面全体にわたって示されているように、同様の参照番号は、同様の部分または対応する部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の態様を取り入れた生物流体を処理するためのクロスフローろ過システムの典型的な実施形態の処理流の流路の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載される種々の図、フローチャート、およびシナリオは、単なる例であり、本開示が当てはまる多数の他のシナリオが存在する。
【0028】
クロスフローろ過システムは、一般に、互いに接続されて流路を形成する一連のチューブ、弁、センサ、および導管を備える。これらのシステムにおいては、無菌空気源に動作可能に接続された内部ポンプが、生物流体容器に隣接するクロスフローろ過システムの末端の近くに位置する。1つの特定の実施形態においては、無菌空気源に動作可能に接続された内部ポンプが、生物流体容器に隣接するクロスフローろ過システムの末端に位置する。
【0029】
i.図1のタンジェンシャルクロスフローろ過システム20に示されるように、システムの種々の構成要素およびサブモジュールへの試料液体の循環および/または流れ、あるいはシステムの種々の構成要素およびサブモジュール間の試料液体の循環および/または流れのための通路および通り道を確立させるために、導管10の集合が設けられる(あるいは、他のかたちで存在する)。導管の数、パターン、および複雑さは、システムの構成要素およびサブモジュールの数に応じてさまざまであるが、本発明のシステムの基本的な実施形態において、導管10は、生物流体容器1a、再循環ポンプ2、内部ポンプ4、無菌空気源5、ドレーン弁6、弁7、圧力弁8、接続部9、およびクロスフローろ過フィルタ3と協働して、前記生物流体容器1aから前記クロスフローろ過フィルタ3へと流れて再び前記生物流体容器1aへと戻るように生物流体を導く流体処理ストリームを少なくとも定めなければならない。システムは、前記生物流体容器から例えば再循環ポンプを介して前記クロスフローろ過フィルタへと動作可能に接続され、フィードフローを含んでいるフィードフローライン11と、前記クロスフローろ過フィルタから前記生物流体容器へと動作可能に接続され、ろ過されなかった流れを含んでいる保持液フロー戻りライン12と、前記クロスフローろ過フィルタに動作可能に接続され、(ろ過された)透過液フローを含んでいる透過液フローライン13とを備えることができる。さらに、システムは、ドレーン弁6によって前記フィードフローラインに動作可能に接続されたドレーンライン14を備えることができる。
【0030】
使用される導管の種類について、とくに制限はない。考えられる導管の種類として、例えば、剛体パイプ、可撓チューブ、ならびにデバイス内に形成され、あるいはデバイスに固有であるチャネルおよび通路が挙げられる。他の構成要素として、弁および接続部が挙げられる。典型的には、プロセス開発デバイスに用いられる複数の導管は、いくつかの種類の導管の混合を含む。好ましい実施形態においては、使用される導管の大部分が、約0.100インチ(0.254cm)の内径を有する可撓かつ実質的に生物学的に不活性な合成高分子チューブである。
【0031】
複数の弁7が、流体処理ストリームを通る液体試料の流れを調整するために、流体処理ストリームに沿って配置され、あるいは他のやり方で機能的に近接させて配置される。動作時に、弁を通る液体の流れは、弁が「開」状態であるか、「閉」状態であるか、あるいは場合によっては、中間状態にあるかに依存する。
【0032】
図示のとおり、複数のポンプ2が、装置の流体処理ストリームを通る液体試料の流れを駆動するために、装置の流体処理ストリームに沿って配置され、あるいは他のやり方で機能的に近接させて配置される。システムは、例えば透過液ライン上のポンプなど、複数の構成を有することができると理解される。ポンプが好ましいが、流体処理ストリームを通って試料液体を駆動するための他の電子的に制御可能な手段を、使用することができる。
【0033】
図1に示した自動CFF/TFFシステムにおいては、蠕動ポンプ、トランスファポンプ、ダイアフラムポンプ、遠心ポンプ、高圧容積型(HPPD)ポンプ、およびソレノイド作動ダイアフラムポンプなどのインラインポンプが利用される。ポンプはシステムのアーキテクチャに統合されているが、必要に応じて、使い捨ての運用をさらに容易にするために、モジュール式であってもよい。例えば、圧電駆動、音響駆動、熱空気圧駆動、静電駆動、など、他のポンプ構成を採用することもできる。有用であり得る流体マイクロポンプ装置が、例えば、1994年8月16日にR.F.Suttonらに発行された米国特許第5,338,164号、1990年7月3日にJ.G.Smitsに発行された米国特許第4,938,742号、2001年9月4日にA.Prosperettiらに発行された米国特許第6,283,718号、および1998年6月2日にH.Van Lintelに発行された米国特許第5,759,015号に開示および/または提案ならびに/あるいは言及されており、これらの米国特許は、ここでの言及によって全体が本明細書に援用される。
【0034】
ソレノイド作動ダイアフラムポンプは、高純度の流体または攻撃的な流体を送出するための非金属の不活性な流路をもたらすことができる自己プライミング微量送出ソレノイド作動マイクロポンプである。このようなポンプは、Boonton,N.J.07005のBio−Chem Valve,Inc.から入手可能である。
【0035】
高圧容積型(HPPD)ポンプは、駆動された液体試料の流れが背圧と共に許容できないほどに変動することがないように作動する。HPPDポンプとして、1999年1月26日にD.S.Bensleyらに発行された米国特許第5,863,187号(ここでの言及によって全体が本明細書に援用される)に開示され、North Springfield,Vt.05150のIvek Corporationから入手可能であるポンプなどの回転往復動ポンプが挙げられる。装置の最小再循環容積を小さくするために、HPPDポンプは、流体が集まる可能性があるいわゆる「デッドスペース」を排除し、あるいは他の方法で低減するように構成されなければならない。
【0036】
往復動ポンプは、例えばダイアフラム、メンブレン、またはピストンなどの往復運動部材を適切に備えることができる。往復運動部材は、ポンプ室(運動部材がピストンである場合には、シリンダとも呼ばれる)に対して往復動することができ、内側への行程の際に流体(例えば、培養液)をポンプ室から押し出し、外側への行程の際に流体(例えば、培養液)をポンプ室へと吸い込むことができる。往復動ポンプの行程の量は、各々の行程においてポンプ室から押し出され、あるいはポンプ室へと吸い込まれる流体(培養液)の体積に対応する。往復動ポンプは、例えば、ポンプ室と駆動用流体で満たされる駆動室とが往復運動部材を構成する可撓ダイアフラムによって隔てられている流体駆動のダイアフラムポンプであってよい。駆動用流体は、例えば空気などの気体または液体であってよい。駆動用流体の供給ラインを介して駆動室に流体の圧力が加えられると、ダイアフラムが、内側への行程においてポンプ室から液体を吐出させ、流体の圧力が解放されると、ダイアフラムは後方へと撓み、外側への行程において液体をポンプ室へと引き込む。ポンプ室は、例えば、フィルタユニットの保持液入口区画に直接接続されてよい。あるいは、直径が液体の流れを妨げないように充分に大きく、容積が往復動ポンプの行程の量よりも大幅に小さい(例えば、往復動ポンプの行程の量の10%未満や5%未満など、往復動ポンプの行程の量の20%未満)短いチューブなどの流体コネクタ(図示せず)を介し、随意により無菌コネクタを介して接続されてよい。
【0037】
ポンプ、とくに内部ポンプは、作動(例えば、オン)時に、流路に圧力を生じさせる。そのような圧力は、さまざまな表現および測定方法が可能である。そのような測定の多くは、ポンプの作成に使用される製造条件に照らして考案されている。そのような測定の1つは、軸線またはシャフトを中心とするインペラなどの加圧機構の回転を指す毎分回転数(rpm)であり、rpmは、生じる圧力を表す。他の圧力の指標は、チューブから吐出される単位時間当たりの液体の出力を測定するフロー出力を参照することができる。あるいは、圧力は、重さの単位に基づく圧力または応力の単位であるpsi(ポンド/平方インチ)を参照することができる。圧力は、1平方インチの領域に加えられる1重量ポンドの力による結果を表す。多数の方法が、psiを計算または測定するために利用可能であり、いわゆる絶対、ゲージ、または差分を含むことができる。そのような記述子は、通常は、各々のポンプ製造者によって提供される。
【0038】
特定の実施形態において、内部の加圧された流れの発生は、10〜10,000rpmの間で流れを加圧する内部ポンプによって作動させられる。別の実施形態は、100〜1000rpmの間で流れを加圧する内部ポンプによる内部の加圧された流れの発生に関する。
【0039】
別の実施形態は、1mL/分〜1L/分の内部の加圧された流れ出力の発生に関する。
【0040】
別の代案の実施形態は、標準圧力(1psi)〜150psiの間の内部の加圧された流れの発生に関する。
【0041】
別の代案の実施形態は、14〜100psiの間の内部の加圧された流れの発生に関する。
【0042】
別の代案の実施形態は、14〜50psiの間の内部の加圧された流れの発生に関する。
【0043】
別の実施形態は、ポンプの使用時の押し退けられる容積の制御に関する。ポンプの使用によって、押し退けられる容積ならびに/あるいはポンプの下流かつ回収されるべき液体か吸い出されるべきフィルタおよび流路の上流の圧力の制御を、確実にすることができる。これは、2つの利点を促進し、すなわちa)プロセスがきわめて穏やかであり、システムをより低い速度および低い圧力で運転することができるため、発泡が最小限である。さらに、b)ポンプの下流へと押し退けられる流体(空気)の量を正確に制御することは、例えば、流体をバッグへと移すことによって無菌のやり方で回収する場合に重要である。押し退けられた容積を知ることは、バッグが制御されない様相で膨張する可能性がないため、安全性を向上させ、ポンプ下流かつ回収のための流体出口の上流の圧力を監視して、全ての流体が置き換えられたことを示すことができる圧力対時間プロファイルを決定する。また、この自動化により、より良好なプロセスの文書化(GMPプロセスのEバッチ記録)が可能になり、最終的には製品および患者の安全性の向上につながる。
【0044】
無菌空気源を、圧力のもとで供給してもよい。一実施形態においては、受動的に供給される。別の実施形態においては、約1〜10リットル/分の速度で供給することができる。
【0045】
無菌の空気の流量を測定するもう1つの方法は、単位時間当たりに供給され得る空気の量に関する。そのような指標によれば、別の実施形態は、約2リットル/分の加圧空気流に関する。
【0046】
空気の流量を表す別の方法は、ポンプ流量の百分率に関して測定される。このような方法によれば、別の実施形態は、流量の1〜100%の範囲の空気流量に関する。
【0047】
別の実施形態は、最大流量の約25%の加圧された流れに関する。
【0048】
クロスフローろ過フィルタは、文献において周知である。そのようなフィルタは、軸線の周りに対称的に位置し、ろ過された流体の出口に連通したろ液チャンバを取り囲む円筒状の外側膜表面を含むことができる。それらは、多くの場合に、単純な円筒として形作られるが、階段状および円錐形のフィルタなど、他の構成が使用されてもよい。膜表面を、多孔質ポリマー、セラミック、および金属を含む多種多様な材料から製造することができる。一実施形態において、膜は比較的薄く、例えば0.2〜0.4mmであり、下方の剛体フレームまたは多孔質支持体によって支持されてよい。一例が、米国特許出願公開第2012/0010063号に記載されている。膜表面の孔サイズ(例えば、1〜500ミクロン)、形状(例えば、V字形、円筒形、溝付き)、および均一性は、用途に応じてさまざまであり得る。多くの実施形態において、膜表面は、5〜200ミクロンのサイズを有し、あるいは10〜100ミクロンのサイズさえ有し得る均一なサイズの孔を含む耐食性金属(例えば、電鋳によるニッケルスクリーン)を備える。このような材料の例は、米国特許第7,632,416号、米国特許第7,896,169号、米国特許出願公開第2011/0120959号、米国特許出願公開第2011/0220586号、および米国特許出願公開第2012/0010063号に記載されている。
【0049】
調査対象の試料液体が実質的かつ有意なタンパク質含有量を有している特定の生物医薬の用途においては、それらのタンパク質の意図せぬ望ましくない変性(すなわち、タンパク質のポリペプチド支持基盤の物理的構造の喪失)を引き起こす可能性がある力および状況は、回避および/または軽減されなければならない。特定のポンプの動作において、とりわけ気体/液体の界面(例えば、気泡)でしばしば生じる機械的なせん断力は、タンパク質の変性に関連しており、したがって装置の選択、製造、および組み込みにおいて軽減および/または回避されるべきである。
【0050】
複数のセンサ(図示せず)を、流体処理ストリームに沿い、あるいは他のやり方で流体処理ストリームに機能的に近接させて配置することができ、各々のセンサは、それぞれの感度領域において液体試料についてのデータを取得することができる。望ましく取得されるデータの種類は、調査対象のクロスフロー(タンジェンシャルフローとしても知られる)ろ過プロセスに関連し、その上方への線形拡大に関連するデータであり、典型的には、これらに限られるわけではないが、温度、pH、圧力、濃度、流量、導電率、流速、などを含む。そのようなデータを取得することができる任意の検出器、プローブ、計器、および同様の検出装置を、利用することができる。当業者であれば、そのような検知装置を装置へと組み込む目的および方法を、承知しているであろう。組み込みは、とりわけ、データ処理ネットワークとの接続の確立を含む。
【0051】
「高性能タンジェンシャルフローろ過」(HPTFF)またはHPCFFは、類似のサイズの種を含んでいるタンパク質混合物について最大で1000倍もの精製係数をもたらすためにしばしば用いられる一実施形態を指す。これは、通常は、伝統的なサイズ排除に基づく膜プロセスでは不可能である。HPTFF技術は、タンパク質を取り巻くイオン雲のサイズおよび厚さの違いを利用する。この厚さは、試料溶液のpHおよびイオン強度を変化させることによって操作することができる。HPTFF技術に関するさらなる詳細は、例えば、R.van Reis et al.,Biotech,Bioeng.,56,71−82,1997、S.Saksena et al.,Biotech.Bioeng.,43,960−968,1994、R van Reis et al.,J.Membrane Sci.,129,19−29,1997、S.Nakao et al.,Desalination,70,191−205,1988、1993年にR.van Reisに発行された米国特許第5,256,294号、および1996年にR.van Reisに発行された米国特許第5,490,937号に見つけることができる。
【実施例1】
【0052】
図1に記載のとおりのクロスフローろ過システムを構築し、バイオリアクタからの生物流体で作動させた。システムを通る生物流体の循環は、生物流体容器内の生物流体の濃縮および透過液ラインからの廃棄物の収集をもたらす。インラインポンプ2からの加圧された流れが中断され、対向流の流れが、前記保持液フロー戻りラインおよび無菌空気源に動作可能に接続された内部ポンプから開始される。生物流体容器への弁が封じられ、ドレーンライン弁が開かれ、濃縮された生物流体の流れをシステムから排出し、回収できるようになる。
【0053】
生物流体の感染を回避するために、生物流体と接触する全てのシステム構成要素は、培養の前に適切に殺菌されるべきである。システムまたはシステムの部品を組み立て、オートクレーブまたは放射線によって殺菌することができ、あるいは1つ以上の構成要素を予め殺菌し、無菌のシステムにおいて組み立てることができる。組み立てを容易にするために、殺菌されたシステムの部品または構成要素は、例えばReadyMateタイプ(GE Healthcare)の無菌コネクタを備えることができる。あるいは、殺菌されたシステムの部品/構成要素を無菌のパッケージに収容し、無菌クリーンルーム内で組み立ててもよい。
【0054】
さらに別の実施形態においては、加圧法を使用して、a)フィルタの透過液側で流体を回収することもできる。この実施形態においては、ポンプがフィルタの透過液側の上部接続部に接続され、圧力が、定量的処理を可能にするために、流体をCFFフィルタを通ってプロセスの終わりに向かって定量的に押し出す。
【0055】
このように、本発明の典型的な実施形態に適用されるとおりの本発明の基本的な新規な特徴を図示し、説明し、指摘したが、例示した装置および方法の形態および詳細ならびにそれらの動作において、種々の省略および置換ならびに変更を、当業者であれば本発明の技術的思想および技術的範囲から離れることなく行うことができることを、理解できるであろう。さらに、実質的に同じ機能を実質的に同じやり方で実行して同じ結果を達成する要素および/または方法の各ステップのあらゆる組み合わせが、本発明の技術的範囲に包含されるように明らかに意図されている。さらに、本発明の上記開示のいずれかの形態または実施形態に関連して図示および/または説明した構造および/または要素ならびに/あるいは方法の各ステップは、上記で開示または説明あるいは提案した任意の他の形態または実施形態に、一般的な設計上の選択の問題として組み込み可能であることを、理解すべきである。したがって、添付の特許請求の範囲の技術的範囲によって示されるとおりにのみ限定されることが意図されている。
[実施態様1]
作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のためのプロセスであって、
a.前記クロスフローろ過システム(20)の一端の無菌空気源(5)に動作可能に接続された蠕動ポンプなどの内部ポンプ(4)を作動させることによって前記クロスフローろ過システム(20)の全体に内部の(統合された)加圧された流れを生じさせるステップと、
b.前記クロスフローろ過システム(20)の他端に動作可能に接続されたドレーン弁(6)において前記生物流体を回収するステップと
を含むプロセス。
[実施態様2]
前記内部ポンプ(4)は、蠕動ポンプである、実施態様1に記載のプロセス。
[実施態様3]
前記クロスフローろ過システム(20)は、流路を形成するように互いに接続された一連のチューブ、弁(7)、センサ、および導管(10)を備える、実施態様1または2に記載のプロセス。
[実施態様4]
前記無菌空気源(5)に動作可能に接続された内部ポンプ(4)は、生物流体容器(1a)に隣接する前記クロスフローろ過システム(20)の末端の近くに位置する、実施態様1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様5]
前記無菌空気源(5)に動作可能に接続された内部ポンプ(4)は、生物流体容器(1a)に隣接する前記クロスフローろ過システム(20)の末端に位置する、実施態様1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様6]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップは、10〜10,000rpmの間で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、実施態様1乃至5のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様7]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップは、100〜1000rpmの間で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、実施態様1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様8]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップは、1mL/分〜1L/分のフロー出力を加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、実施態様1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様9]
前記内部ポンプ(4)は、1psi〜150psiの間で流れを加圧する、実施態様8に記載のプロセス。
[実施態様10]
前記内部ポンプ(4)は、14psi〜100psiの間で流れを加圧する、実施態様8に記載のプロセス。
[実施態様11]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップは、14〜50psiの間で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、実施態様1乃至10のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様12]
前記無菌空気源(5)は、受動的に供給され、あるいは約1〜10リットル/分の流量で供給される、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様1乃至11のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様13]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップは、約2リットル/分で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様1乃至12のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様14]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップは、流量の1〜100%のポンプ流量の百分率として測定される、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様1乃至13のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様15]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップの空気は、受動的に供給される、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様1乃至14のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様16]
前記内部の加圧された流れを生じさせるステップは、最大流量の約25%である、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様1乃至15のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様17]
i.生物流体容器(1a)と、
ii.クロスフローろ過フィルタ(3)と、
iii.前記生物流体容器(1a)から前記クロスフローろ過フィルタ(3)へと動作可能に接続され、フィードフローを含んでいるフィードフローライン(11)と、
iv.前記クロスフローろ過フィルタ(3)から前記生物流体容器(1a)へと動作可能に接続され、ろ過されなかった流れを含んでいる保持液フロー戻りライン(12)と、
v.前記クロスフローろ過フィルタ(3)に動作可能に接続され、(ろ過された)透過液フローを含んでいる透過液フローライン(13)と、
vi.前記保持液フロー戻りライン(12)および無菌空気源(5)に動作可能に接続された内部ポンプ(4)と、
vii.前記フィードフローライン(11)に動作可能に接続(弁)されたドレーンライン(14)と
を備えるクロスフローろ過システム(20)(20)からの生物流体の向上した回収のためのシステム(代替的に、透過液フローが既に分離されている)であって、
viii.前記内部ポンプ(4)が作動させられて、前記動作可能に接続されたポンプ/無菌空気源(5)から前記ドレーン弁(6)へと前記クロスフローろ過システム(20)の全体の流れを加圧し、前記ドレーン弁(6)において前記流れが回収される、クロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のためのシステム。
[実施態様18]
前記内部の加圧された流れの発生は、10〜10,000rpmの間で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、クロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17に記載のシステム。
[実施態様19]
前記内部の加圧された流れの発生は、100〜1000rpmの間で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17に記載のシステム。
[実施態様20]
前記内部の加圧された流れの発生は、1mL/分〜1L/分のフロー出力を加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17乃至19のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様21]
前記空気の圧力は、標準圧力(14psi)〜150psiである、実施態様20に記載のシステム。
[実施態様22]
前記内部ポンプ(4)は、14〜100psiの間で流れを加圧する、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17乃至21のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様23]
前記内部の加圧された流れの発生は、14〜50psiの間で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17乃至21のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様24]
前記無菌空気は、約1〜10リットル/分の流量で供給される、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17乃至23のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様25]
前記内部の加圧された流れの発生は、約2リットル/分で流れを加圧する内部ポンプ(4)によって作動させられる、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様24に記載のシステム。
[実施態様26]
前記内部の加圧された流れの発生は、流量の1〜100%のポンプ流量の百分率として測定される、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17乃至25のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様27]
前記無菌空気は、受動的に供給される、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17乃至26のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様28]
前記無菌空気は、最大流量の約25%において加圧される、作動させられたクロスフローろ過システム(20)からの生物流体の向上した回収のための実施態様17乃至27のいずれか1項に記載のシステム。
【符号の説明】
【0056】
1a 生物流体容器
2 再循環ポンプ、インラインポンプ
3 クロスフローろ過フィルタ
4 内部ポンプ
5 無菌空気源
6 ドレーン弁
7 弁
8 圧力弁
9 接続部
10 導管
11 フィードフローライン
12 保持液フロー戻りライン
13 透過液フローライン
14 ドレーンライン
20 クロスフローろ過システム
図1