【文献】
小牧 元,認知行動療法,日本臨床(増刊)肥満症,日本,2003年 7月28日,Vol.61 No.828,pp.640-648
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得された患者の現在の体調を示す情報が食欲衝動を示す場合には、患者が考えている現在の体調の原因、患者の肥満診療履歴情報及び前記患者の現在の体調がいつの時点の体調であるかを示す時間の少なくとも一つに基づいて、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきか否かを判定し、
前記患者の食欲衝動が抑制されるべきか否かの判定結果に基づいて、前記肥満に関連する事項についての患者の解釈を示す患者解釈情報の入力を促す情報を提示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記患者解釈情報の入力を促す情報を提示することは、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきか否かの判定によって、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきと判定されたときに実行される、ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
患者入力によって取得された患者の現在の体調を示す情報に基づいて、前記患者の現在の体調に関連して患者がとるべき行動を示す第1の行動療法情報に基づいて現在生じている食欲衝動を解消するための情報を提示する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシステム。
前記誤った解釈を正すための情報を患者に提示することは前記第1の行動療法情報に基づいて現在生じている食欲衝動を解消するための情報を提示することが実行された後に実行される、ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
患者の現在の体調を示す情報が入力されたタイミングに基づいて決定されるコーチングタイミングで、前記患者の体調に関連して患者を励ますためのメッセージを示すコーチング情報を提示する、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
前記肥満に関連する事項は、耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝(NAFLD)、月経異常、肥満関連腎臓病、整形外科的疾患、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の少なくとも1つに関連する事項である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
前記肥満に関連する事項は、耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝(NAFLD)、月経異常、肥満関連腎臓病、整形外科的疾患、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の少なくとも1つに関連する事項である、請求項12に記載の方法。
前記肥満に関連する事項は、耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝(NAFLD)、月経異常、肥満関連腎臓病、整形外科的疾患、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の少なくとも1つに関連する事項である、請求項14に記載のプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肥満症に対する行動療法、認知療法及びコーチングは、患者が病院受診した時に医療従事者等によって行なわれているが、現在、外来診療の頻度や時間が限られている場合がほとんどである。例えば、肥満症診療の外来頻度は、一般的に1か月から3か月に一度であり、診療時間も3分から10分程度である。また、肥満症患者が医師に相談したいと考えた場合であっても、病院まで行かなければならないため受診するまでに長時間を要する場合が多い。外来時間は限られているため、外来時間外であれば、そもそも受診することもできない。このように、医療従事者が行動療法、認知療法及びコーチングにかけられる時間は極めて限られており、また肥満症患者が医療従事者に相談したいときに相談することができない、という問題がある。つまり、十分な行動療法、認知療法及びコーチングが行われているとは言えないのが現状である。また、医療機関または医療従事者によって、肥満症診療の質にばらつきがあるという問題もある。肥満症まで至っていない単なる肥満状態の者は将来的な肥満症のリスクが高く、改善する必要がある。しかし、肥満は医療による治療対象となっていないため十分な治療が行えていないという問題もある。
【0006】
先行文献1に開示されたシステムは、個人から収集したデータに基づいて、健康に関する悪い行動を改善するための行動変容メッセージを、一日単位で順に個人に提供するシステムが開示されている。かかるシステムを用いれば、一日一回、行動変容メッセージを受信することができるため、患者はその日にとるべき行動を理解することができる。しかし、時々刻々と変化する患者の肥満治療の状況に応じて、実行される療法をきめ細やかに変更していくことはできない。また、食欲衝動を適切にコントロールできない肥満患者にとっては、一日一回送信される行動変容メッセージでは不十分であり、その都度の患者の精神状態に適した療法をタイムリーに実行することができない。また、患者が医師に相談したいときに、受診することができないという問題は解決されない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、以下のような特徴を有している。すなわち、本発明の一実施態様におけるプログラムは、肥満患者のために使用されるプログラムであって、コンピュータに、患者が使用する電子装置である患者側電子装置から、患者の現在の体調を示す情報の入力及び肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで、患者によって前記患者側電子装置に入力された、肥満に関連する事項についての患者の解釈を示す患者解釈情報を受信する段階と、受信された前記患者解釈情報及び前記肥満に関連する事項についての正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての解釈が誤りであるか否かを決定する段階と、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、前記正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を含む認知行動療法情報を前記患者側電子装置へ送信する段階と、を実行させる。
【0008】
肥満診療履歴情報をデータベースから読み出す段階と、前記受信された肥満診療履歴情報に基づいて、所定の肥満に関連する事項についての患者の解釈を含む患者解釈情報の送信を患者側電子装置に要求する要求タイミングを決定する段階と、前記要求タイミングにおいて、前記所定の肥満に関連する事項についての患者の解釈を含む患者解釈情報を送信することを要求する患者解釈情報要求を患者側電子装置に送信する段階と、をさらにコンピュータに実行させ、前記患者解釈取得情報タイミングは、前記患者解釈情報要求への応答として患者解釈情報を受信するタイミングとしてもよい。
【0009】
前記患者解釈取得情報タイミングは、患者の現在の体調を示す情報が前記患者側電子装置に入力されたタイミングに基づいて決定され、患者の現在の体調を示す情報が前記患者側電子装置に入力されたタイミングに基づいて決定される体調情報取得タイミングで、前記患者の現在の体調を示す情報を取得する段階をさらにコンピュータに実行させ、前記患者解釈情報は、患者が考えている前記患者の現在の体調と肥満との関連性を示す情報を含んでもよい。
【0010】
前記取得された患者の現在の体調を示す情報が食欲衝動を示す場合には、患者が考えている現在の体調の原因、前記肥満診療履歴情報及び前記患者の現在の体調がいつの時点の体調であるかを示す時間の少なくとも一つに基づいて、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきか否かを判定する段階と、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきか否かの判定結果に基づいて、前記肥満に関連する事項についての患者の解釈を示す患者解釈情報の入力を促す患者解釈入力要求を送信する段階と、をさらにコンピュータに実行させてもよい。
【0011】
前記患者解釈入力要求を送信する段階は、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきか否かの判定によって、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきと判定されたときに実行されてもよい。
【0012】
前記患者の現在の体調を示す情報が前記患者側電子装置に入力されたタイミングに基づいて決定される第1の行動療法実行タイミングで、前記患者の現在の体調を示す情報に基づいて、前記患者の現在の体調に関連して患者がとるべき行動を示す第1の行動療法情報を送信する段階を更にコンピュータに実行させてもよい。
【0013】
前記患者の現在の体調を示す情報は、患者が考えている現在の体調の原因を含んでもよい。
【0014】
前記第1の行動療法情報を送信した後に、体調が改善したか否かを問い合わせるメッセージを示す効果問合せ情報を送信する段階と、前記効果問合せ情報に応答して患者によって入力された回答を示す効果回答情報を受信する段階と、体調が改善していないことを前記効果回答情報が示している場合には、前記体調に関連して患者がとるべき行動を示す第2の行動療法情報を送信する段階と、を更にコンピュータに実行させてもよい。
【0015】
前記取得された患者の現在の体調を示す情報が食欲衝動を示す場合には、少なくとも前記効果解答情報に基づいて、前記患者の食欲衝動が抑制されるべきか否かを判定する段階を更にコンピュータに実行させ、前記第2の行動療法情報を送信する段階は、少なくとも前記効果解答情報に基づく判定に基づいて実行されてもよい。
【0016】
前記認知行動療法情報を送信する段階は前記第1の行動療法情報を送信する段階が実行された後に実行されてもよい。
【0017】
前記患者の現在の体調を示す情報が前記患者側電子装置に入力されたタイミングに基づいて決定されるコーチングタイミングで、前記患者の体調に関連して患者を励ますためのメッセージを示すコーチング情報を送信する段階を更にコンピュータに実行させてもよい。
【0018】
前記認知行動療法情報を送信する段階は前記コーチング情報を送信する段階が実行された後に実行されてもよい。
【0019】
患者の現在の体調を示す情報の入力及び肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて第2の行動療法実行タイミングを決定し、肥満治療のために患者がとるべき行動を示す第3の行動療法情報を決定する段階と、前記第2の行動療法実行タイミングで、前記第3の行動療法情報を前記患者側電子装置へ送信する段階と、前記認知行動療法情報及び前記第3の行動療法情報の少なくとも一方に基づいて、肥満診療履歴情報を更新する段階と、をさらにコンピュータに実行させてもよい。
【0020】
前記認知行動療法情報を送信した後に、前記患者解釈情報及び前記認知行動療法情報に基づいて、肥満診療履歴情報を更新する段階と、前記更新された肥満診療履歴情報に基づいて、服薬調整に関する情報を医師が使用する医師側電子装置及び前記患者側電子装置の少なくとも一方に送信する段階と、をさらにコンピュータに実行させてもよい。
【0021】
上述の本発明の一実施態様におけるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納することもできる。
【0022】
本発明の一実施態様におけるコンピュータは、処理装置と、通信装置と、肥満患者のために使用されるプログラムを格納する記憶装置と、を備え前記プログラムは、前記コンピュータに、患者が使用する電子装置である患者側電子装置から、患者の現在の体調を示す情報の入力及び肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで、患者によって前記患者側電子装置に入力された、肥満に関連する事項についての患者の解釈を示す患者解釈情報を受信する段階と、受信された前記患者解釈情報及び前記肥満に関連する事項についての正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての解釈が誤りであるか否かを決定する段階と、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、前記正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を含む認知行動療法情報を前記患者側電子装置へ送信する段階と、を実行させる。
【0023】
さらに、本発明の他の実施態様のコンピュータは、肥満患者のために使用されるコンピュータであって、患者が使用する電子装置である患者側電子装置から、患者の現在の体調を示す情報の入力及び肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで、患者によって前記患者側電子装置に入力された、肥満に関連する事項についての患者の解釈を示す患者解釈情報を受信し、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を含む認知行動療法情報を前記患者側電子装置へ送信する通信部と、受信された前記患者解釈情報及び前記肥満に関連する事項についての正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての解釈が誤りであるか否かを決定する制御部と、を備える。
【0024】
本発明の一実施態様における肥満患者のために使用されるプログラムは、患者が使用する電子装置に、患者の現在の体調を示す情報の入力及び患者の肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで肥満に関連する事項についての当該患者の解釈を示す患者解釈情報の入力を受け付ける段階と、前記入力された患者解釈情報をサーバ装置に送信する段階と、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を示す情報を含む認知行動療法情報を、前記サーバ装置から受信する段階と、前記受信された認知行動療法情報に基づいて、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を患者に提示する段階と、を実行させるプログラム。
【0025】
本発明の一実施態様における患者が使用する患者側電子装置は、処理装置と、通信装置と、出力装置と、肥満患者のために使用されるプログラムを格納する記憶装置と、を備える電子装置であって、前記プログラムは、前記電子装置に、患者の現在の体調を示す情報の入力及び患者の肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで肥満に関連する事項についての当該患者の解釈を示す患者解釈情報の入力を受け付ける段階と、前記入力された患者解釈情報をサーバ装置に送信する段階と、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を示す情報を含む認知行動療法情報を、前記サーバ装置から受信する段階と、前記受信された認知行動療法情報に基づいて、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を患者に提示する段階と、を実行させる。
【0026】
本発明の他の実施態様の患者側電子装置は、肥満患者のために使用される電子装置であって、患者の現在の体調を示す情報の入力及び患者の肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで肥満に関連する事項についての当該患者の解釈を示す患者解釈情報の入力を受け付ける入力部と、前記入力された患者解釈情報をサーバ装置に送信し、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を示す情報を含む認知行動療法情報を、前記サーバ装置から受信する通信部と、前記受信された認知行動療法情報に基づいて、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を患者に提示する出力部と、を有する。
【0027】
本発明の一実施態様におけるシステムは、前述のコンピュータであるサーバ装置と、少なくとも1つの前述の患者が使用する電子装置と、患者の肥満診療履歴情報を記憶するデータベースと、を備える。
【0028】
肥満患者のために使用される方法は、コンピュータに、患者が使用する電子装置である患者側電子装置から、患者の現在の体調を示す情報の入力及び肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで、患者によって前記患者側電子装置に入力された、肥満に関連する事項についての患者の解釈を示す患者解釈情報を受信する段階と、受信された前記患者解釈情報及び前記肥満に関連する事項についての正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての解釈が誤りであるか否かを決定する段階と、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、前記正答情報に基づいて、前記患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を含む認知行動療法情報を前記患者側電子装置へ送信する段階と、を実行させる。
【0029】
肥満患者のために使用される方法は、電子装置に、患者の現在の体調を示す情報の入力及び患者の肥満診療履歴情報の少なくとも一方に基づいて決定される患者解釈情報取得タイミングで肥満に関連する事項についての当該患者の解釈を示す患者解釈情報の入力を受け付ける段階と、前記入力された患者解釈情報をサーバ装置に送信する段階と、前記患者の解釈が誤りであると決定された場合には、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を示す情報を含む認知行動療法情報を、前記サーバ装置から受信する段階と、前記受信された認知行動療法情報に基づいて、患者の肥満に関連する事項についての正しいとされる情報を患者に提示する段階と、を実行させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の構成を採用することにより、時々刻々と変化する患者の肥満治療の状況に応じて、適切な療法の選択及び選択された療法の実行タイミングをきめ細やかに変更し、必要な時に必要な療法をタイムリーに実行していくことが可能となる。患者は自己のスマートフォンのような電子装置を用いることにより、電子装置を介して常にそして長期間にわたって肥満治療を受けることができる。適切な療法の選択及び実行ができるようにシステムを設定することにより、常にばらつきのない適切な肥満指導を実現することができる。また、肥満症に至っていない肥満についても肥満症治療と同様に適切な療法を受けることが可能となる。
【0031】
患者は自己の電子装置を介して、食欲衝動のような患者の現在の体調を示す情報を入力することができる。この情報に基づいて、療法を選択して実行する場合には、即時に体調とその原因と肥満に関連する事項についての患者の解釈を特定し、その解釈が誤っている場合にはこれを正すことにより、現在の体調を改善するとともに、肥満治療に関連して正しい知識を持たせる。これにより、患者の誤った思考回路を修正して同様の体調に至ったときに正しい解釈に基づく思考をとることができる。例えば、正しい知識に基づいて、食欲衝動が生じたときにその食欲衝動を上手にコントロールすることができるようにする。また、現在の体調の原因までさらに特定すれば、その原因に適した療法の実行を行うことができる。現在の体調が食欲衝動である場合には、特定された食欲衝動の原因に適した代償行動療法等の行動療法やコーチングもあわせて行うことで、より効果的に即時に食欲衝動を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において、患者とは本発明を用いて肥満の改善(治療)または肥満症治療を試みる者をいい、必ずしも医療従事者の指導のもと肥満症治療を行っている必要はない。以下の実施形態においては、肥満症の患者を例にとって説明するが、肥満の改善を試みる患者についても同様である。
【0034】
図1は本発明のシステム構成図の一例を示す。システム100は肥満症患者のために使用されるものであり、サーバ102、データベース103、患者が使用する電子装置である1以上の患者側電子装置104−1〜104−N及び医師が使用する電子装置である1以上の医師側電子装置105−1〜105Nを備える。これらはネットワーク101によって互いに接続されるが、それぞれが必要に応じて個別に接続される形態であってもかまわない。例えば、データベース103はネットワーク102に接続されず、サーバ102に直接接続され、患者側電子装置104−1〜104−N及び医師側電子装置105−1〜105Nは、サーバ102を介してデータベース103に接続される構成としてもよい。
【0035】
図2はサーバ102のハードウェア構成図の一例を示す。サーバ102は、処理装置201、表示装置202、入力装置203、記憶装置204及び通信装置205を備えるコンピュータである。これらの各構成装置はバス210によって接続されるが、それぞれが必要に応じて個別に接続される形態であってもかまわない。表示装置202は使用者に情報を表示する機能を有する。入力装置203はキーボードやマウス等のように使用者からの入力を受け付ける機能を有するものである。記憶装置204にはサーバ用プログラム206が記憶される。記憶装置204はハードディスク、不揮発性メモリや揮発性メモリ等の情報を格納できるものであればいかなるものであってもよい。通信装置205はイーサネット(登録商標)ケーブル等を用いた有線通信や移動体通信、無線LAN等の無線通信を行い、ネットワーク101へ接続する。
【0036】
図3はデータベース103のハードウェア構成図の一例を示す。データベース103は、処理装置301、表示装置302、入力装置303、記憶装置304及び通信装置305を備えるコンピュータである。これらの各構成装置はバス310によって接続されるが、それぞれが必要に応じて個別に接続される形態であってもかまわない。表示装置302は使用者に情報を表示する機能を有する。入力装置303はキーボードやマウス等のように使用者からの入力を受け付ける機能を有するものである。記憶装置304はハードディスク、不揮発性メモリや揮発性メモリ等の情報を格納できるものであればいかなるものであってもよい。記憶装置304にはデータベース(DB)用プログラム306が記憶される。通信装置305はイーサネット(登録商標)ケーブル等を用いた有線通信や移動体通信、無線LAN等の無線通信を行い、ネットワーク101へ接続する。
【0037】
本実施形態においては、サーバ102及びデータベース103を異なるコンピュータによって実現するが、一つのコンピュータによって実現してもよい。
【0038】
図4は患者が使用する電子装置である患者側電子装置104のハードウェア構成図の一例を示す。患者側電子装置104は、処理装置401、表示装置402、入力装置403、記憶装置404及び通信装置405を備える。これらの各構成装置はバス410によって接続されるが、それぞれが必要に応じて個別に接続される形態であってもかまわない。患者側電子装置403はデスクトップコンピュータやノートパソコンであってもよいし、携帯型情報端末、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末であってもよいし、専用の携帯型電子装置であってもよい。患者が現在の体調を即時に入力するためには、携帯型の通信端末が好ましい。表示装置402は使用者に情報を表示する機能を有する。入力装置403はキーボードやマウス等のように使用者からの入力を受け付ける機能を有するものである。患者側電子装置104がスマートフォンやタブレット端末である場合には、表示装置402及び入力装置403を一体としたタッチパネルとすることもできる。記憶装置404には患者側電子装置のための患者用プログラム406が記憶される。記憶装置404はハードディスク、不揮発性メモリや揮発性メモリ等の情報を格納できるものであればいかなるものであってもよい。通信装置405はイーサネット(登録商標)ケーブル等を用いた有線通信や移動体通信、無線LAN等の無線通信を行い、ネットワーク101へ接続する。
【0039】
図5は医師が使用する電子装置である医師側電子装置105のハードウェア構成図の一例を示す。医師側電子装置105は、処理装置501、表示装置502、入力装置503、記憶装置504及び通信装置505を備える。これらの各構成装置はバス510によって接続されるが、それぞれが必要に応じて個別に接続される形態であってもかまわない。医師側電子装置104はデスクトップコンピュータやノートパソコンであってもよいし、携帯型情報端末、携帯電話、スマートフォンやタブレット端末であってもよいし、専用の携帯型電子装置であってもよい。表示装置502は使用者に情報を表示する機能を有する。入力装置503はキーボードやマウス等のように使用者からの入力を受け付ける機能を有するものである。医師側電子装置104がスマートフォンやタブレット端末である場合には、表示装置502及び入力装置503を一体としたタッチパネルとすることもできる。記憶装置504には医師側電子装置のための医師用プログラム506が記憶される。記憶装置504はハードディスク、不揮発性メモリや揮発性メモリ等の情報を格納できるものであればいかなるものであってもよい。通信装置505はイーサネット(登録商標)ケーブル等を用いた有線通信や移動体通信、無線LAN等の無線通信を行い、ネットワーク101へ接続する。
【0040】
図6〜9は、本発明のサーバ102、データベース103、患者側電子装置104及び医師側電子装置105の機能ブロック図の一例を示す。サーバ102は、制御部601、表示部602、入力部603、記憶部604及び通信部605を備え、データベース103は、制御部701、表示部702、入力部703、記憶部704及び通信部705を備え、患者側電子装置104は制御部801、表示部802、入力部803、記憶部804、通信部805を備え、医師側電子装置105は制御部901、表示部902、入力部903、記憶部904、通信部905を備える。各制御部は情報処理等の制御を実行する機能を有するものである。各表示部は情報を使用者が視認できるように表示する機能を有する。各入力部は使用者からの入力を受け付ける機能を有する。各記憶部はデータ等を記憶する機能を有する。通信部は他の装置との情報の送受信を行う機能を有する。本実施形態においては、
図2〜5に記載されたハードウェアにおいて各プログラムが実行されることにより、これらの機能が実現されるが、各機能を実現するための電子回路等を構成することによりハードウェアによっても実現できる。
【0041】
本実施形態においては、データベース103の記憶部704に患者情報が記憶される。患者情報は、患者の識別番号(ID)に関連付けられた肥満症患者に関する情報である。患者に関する情報は、患者の個人情報及び肥満症診療履歴情報等を含む。本発明において診療とは医療従事者によって行われる行為である必要はなく、本発明を用いて行われるものであってもよい。本実施形態においては、患者の個人情報は基本的には確定した情報であり、肥満症診療履歴情報は時々刻々変化しうる情報である。患者の個人情報は、患者の氏名、生年月日、性別、適正体重、肥満症治療開始日、適正摂取カロリー等の情報を含む。肥満症診療履歴情報は、治療日数、患者の体調履歴情報、体重履歴情報、摂取カロリー履歴情報、服薬履歴情報、療法履歴情報等の肥満症診療の履歴に関する情報を含む。患者の体調履歴情報は、例えば、患者の日々の体調等を記録した情報であり日記情報ということもできる。体調履歴情報には、例えば、頭痛、イライラする、気分が良い、吐き気がする等の日々の体調についての情報、血液データ(AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)・ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ))及びCT値を含む。AST・ALTは、それぞれ9〜32、4〜37程度が基準値とされており、これらの基準値を超えると異常値であると判定される。例えば、肥満症で脂肪肝に至っている場合には、50〜100前後に上昇する場合が多い。CT値は、正常な場合には50〜70程度であるが、肥満症で脂肪肝に至っている場合には50以下となる場合が多い。体重履歴情報は、肥満症治療開始から日々の患者の体重を含むものである。摂取カロリー履歴情報は、摂取したカロリーを示す情報である。摂取した日時を含んでもよい。患者が摂取したカロリーとその日時を患者側電子装置104へ入力することにより記録することができる。例えば、
図10の患者AAAAの摂取カロリーの項目に示された「2014/3/11/0815:524」は2014年3月11日の8時15分に524キロカロリーの食事を摂ったことを示す。服薬履歴情報は、肥満症治療のための服薬量、服薬の日に関する情報を含む。療法履歴情報は、システムが実行した認知行動療法、その日時及び行動療法を勧めた日時、患者が実際に行動療法等の治療行為を行ったか否かを示す情報、実行されたコーチング等、患者に対して行われた療法についての履歴情報を含むものである。
【0042】
本実施形態における患者情報は、医師による患者の診療によって聞き取りや採血等の診療を行い、医師が使用する医師側電子装置105によって入力され、データベース103へ登録されてもよいし、患者が使用する患者側電子装置104によって患者が入力することでデータベース103へ登録されてもよいし、これらを組み合わせて入力されてもよい。また、肥満症治療が開始した後に、これらの方法によって、更新してもよい。
【0043】
以下に説明する実施形態においては、患者情報は、
図10に記載する形式で、患者を識別する識別番号(ID)に関連付けてデータベース記憶部704に格納される。必要に応じて適宜その他の必要な情報を加えてもよいし、不要な情報は使用しなくてもよい。個人情報として、氏名、年齢、性別、適正体重及び適正摂取カロリーを含む。適正体重は性別、身長、年齢等によって決定され、一定の範囲を持つものである。適正摂取カロリーは、性別、身長、体重、年齢等から決定される日々摂取すべき適正な摂取カロリーを示し、一定の範囲を持つものである。また、肥満症診療履歴情報として、治療日数、摂取カロリー、体調履歴としての血液データ(AST/ALT)、CT値、体重履歴、服薬履歴及び療法履歴を含む。肥満症診療履歴情報は日時とともに記憶されてもよい。服薬履歴は、日々の服薬の状況を意味するものであり、1が服薬を行ったことを意味し、0が服薬を行わなかったことを意味する。療法履歴は、患者に対して行われた療法の履歴を示す。各療法は療法IDによって識別され、実行された療法の識別番号(ID)が記録される。
【0044】
さらに、本実施形態においては、療法は、
図11A、Bに記載する療法リストの形式で、療法を識別する識別番号(ID)に関連付けてサーバ102の記憶部604に格納される。データベース記憶部704に格納されて、サーバ102が適宜読み出す形態であっても構わない。療法リストには、メッセージ、回答選択肢、正答情報、療法種別、体調/原因、経過観察、食欲抑制及びスコアを含む。これらは一例であって、これらを含まない形態であっても良いし、これらの他の項目を含む形態であっても良い。メッセージは、患者側電子装置104において表示されるものであり、肥満症治療のためのメッセージを含む。回答選択肢は、メッセージが患者に対する問合せであり、回答を要求している場合に、患者側電子装置104において表示されるための回答のための選択肢である。患者に対する問い合わせは、肥満症に関連する事項についての患者の解釈を示す患者解釈情報の問合せである。正答情報は、正答枝と指導情報を含む。正答枝は回答選択肢に対して正しいとされる選択肢の番号である。指導情報は、メッセージとしての患者に対する問合せについての正しいとされる情報を示すものである。また、指導情報は単なる文章によるメッセージではなく、教育ビデオのような動画であってもよい。この場合は療法リストの指導情報には教育ビデオを再生する命令と教育ビデオの保存場所を指定する情報を含んでもよい。メッセージが患者に対する問合せでない場合には、回答選択肢、正答情報は必ずしも必要ではない。これらの情報は患者側電子装置104の表示部802に表示されるだけでなく、スピーカのような音声出力部から音声として出力することにより患者に提示されてもよい。表示部は、表示部と音声出力部を備えた出力部としてもよい。
【0045】
療法種別は、それぞれの療法が認知行動療法、行動療法及びコーチングのいずれであるかを示す情報である。本実施形態においては、「1」は認知行動療法、「2」は行動療法、「3」はコーチングを意味する。体調/原因はそのIDの療法を実行するトリガとなる体調及びその原因を意味する。ここでは、「/」の前の部分が体調を意味し後ろの部分が原因を表わす。本実施形態においては、原因は体調との組み合わせで設定される。体調としては、「1」は食欲衝動が生じている状態を意味し、「2」はイライラしている状態を意味する。食欲衝動が生じている原因としての「1」は机の上に食べ物が置いてあることを意味し、「2」はストレス、「3」は空腹、「4」は知人に勧められたことを意味する。つまり「1/1」は食欲衝動が生じており、その原因は食べ物が目に入り食べたい気持ちになったと考えていることを意味する。また、原因の「0」は患者によって原因の特定が行われていないことを意味する。本発明において原因情報は必ずしも必要ではない。体調だけで実行すべき療法を特定することも可能であり、原因情報を含まない実施形態であっても本発明を実施可能である。一つの療法に対して、複数の体調/原因を割り当てることができる。その場合には、いずれかの体調/原因に該当する場合にはその療法を実行可能とする。経過観察は、その療法が実行された後に経過観察処理が実行される必要があるか否か及び必要である場合にはその経過観察処理が実行されるためのタイミングを示す。例えば、ID=1〜4の経過観察は「5」に設定されている。これは、経過観察が必要であり、その療法の実行後、5分後に経過観察処理を実行することを意味する。食欲抑制は、食欲を抑制するために実行できる療法であるかを示す情報である。ここでは、「1」は食欲を抑制するために実行できる療法であり、そうでないものは「0」で示される。
【0046】
療法リストを作成する段階において、種々の基準により体調/原因に対して療法を割り当てることができる。例えば、食欲衝動を抑制するための療法とそれ以外の療法に分類し、抑制すべき食欲衝動を示す体調/原因を食欲衝動を抑制するための療法に割り当て、それ以外の体調/原因をそれ以外の療法に割り当てることができる。療法によっては食欲抑制の効果があるが、例えば、イライラを解消するためにも使用される療法もある。そのような療法は、食欲衝動を抑制するための療法であっても、抑制すべき食欲衝動を示す体調/原因とそれ以外の体調/原因の両方に割り当てることができる。食欲の原因となる空腹感は心理的空腹感と身体的空腹感とに分類され、心理的空腹感に起因する食欲衝動は抑制されるべきであると考えることができる。身体的空腹感は適正な範囲のカロリー量を適正なタイミングで摂取する場合においては抑制される必要はないが、それ以外の場合には抑制される必要があると考えられる。
【0047】
本実施形態においては、抑制すべき食欲衝動を示す体調/原因を食欲衝動を抑制するための療法に割り当て、それ以外の体調/原因をそれ以外の療法に割り当てる。例えば、
図11A、Bに示すとおり、療法ID=1〜6は食欲衝動を抑制するために実行できる療法であるから食欲抑制=1とする。また、現在の体調が食欲衝動を生じている状態(体調=1)であり、食欲衝動の原因が「1:机の上に食べ物が置いてある」、「2:ストレス」及び「4:知人の勧め」の場合には心理的空腹感に起因するものであると考えられるため、抑制されるべき食欲であると判断することができるから、これらの体調/原因を示すIDを療法ID=1〜6に割り当てる。その際、体調/原因に適した療法を選択して割り当てることが好ましい。例えば、原因が「2:ストレス」については、ストレスに関連する療法である療法ID=3、5に割り当てる。また、療法ID=3、5は体調が「イライラする」の場合にも効果があるから、体調/原因=2/0についても割り当てることができる。
【0048】
一方、食欲衝動の原因が「3:空腹」である場合には、身体的空腹感と心理的空腹感に起因する食欲衝動である可能性があり、この患者が考える食欲衝動の原因からだけでは抑制されるべきか否かの判断はできない。したがって、この場合には、食欲衝動/空腹を示すID=1/3をランダムに療法IDに割り当ててもよいし、抑制すべき食欲衝動とみなして食欲抑制のための療法IDに割り当ててもよいし、抑制すべき食欲衝動ではないとみなして、食欲抑制のための療法ID以外に割り当ててもよい。また、その他の所定の方法で割り当てることもできる。ここでは、抑制されるべき食欲衝動とみなして、食欲抑制のための療法ID=4に割り当てる。このような構成とすることにより、抑制されるべき食欲衝動に対して効果的な療法の選択、実行が可能となる。
【0049】
また、スコアは患者のために実行されるべき療法を選択するときに使用される情報であり、体重、AST、ALT、CT値、服薬履歴、療法履歴及び治療日数についてそれぞれ基準スコアが設定される。例えば、療法ID=1における療法履歴「−1」は、ID=1(すなわち、この療法それ自体)の療法がすでに実行されている患者に対しては実行しないことを意味する。また、療法ID=7の体重は「Tu<」に設定されている。これは、その患者の目標とする適正体重範囲(Tb〜Tu)の上限値Tuよりも現在の体重が重いことが、本療法が実行されるための要件であることを意味する。ID=7のためのAST、ALT及びCT値は「32<」、「37<」及び「<50」と設定されている。これはAST、ALT及びCT値が異常値であるときに実行されることを意味する。服薬履歴=「1*3」は現在まで処方された薬を3日連続服薬していることが実行のための要件であることを意味する。療法履歴=「12」はすでにID=12の療法が実行されていることが本療法を実行するための要件であることを意味する。治療日数=「<14」は治療開始からの日数が14日より短いことが実行のための要件であることを意味する。ここでは、これらのスコアによって定義された要件をすべて満たす療法が選択されるが、いずれかの要件を満たせば実行するようにしてもよいし、要件毎に優先順位や重み付け等を行うこともできる。
【0050】
[第1の実施形態]
第1の実施形態におけるシステムの動作について説明する。本実施形態においては、患者側電子装置104としてスマートフォンを用い、医師側電子装置105としてノートパソコンを用いる。以下の実施形態においては、説明のために1つの患者側電子装置104及び1つの医師側電子装置105の動作について説明するが、本システムにおいては2以上の患者側電子装置104及び2以上の医師側電子装置105を含んでもよい。
【0051】
本実施形態においては、
図12Aに示すように、患者が自己のスマートフォンである患者側電子装置104を操作することにより、患者の現在の体調を示す情報が入力されて、行動療法、認知行動療法及びコーチングのうちの少なくとも1つが実行される。
【0052】
患者は患者ID=0のAAAAであるとする。患者は、肥満症治療が開始した後、食欲衝動など肥満症治療に関連した体調上の問題が生じたと患者が考える場合には、患者側電子装置104であるスマートフォンの表示部802に表示されたナースコールボタンにタッチする(ステップ1201)。すると、患者側電子装置104の表示部802上に現在の体調がどのような状態かを問い合わせる体調入力画面を表示させる(ステップ1202)。ここでは、「どうしましたか? 1:食べたい 2:イライラする」という2つの体調のいずれかを患者に選択させる表示を行う。その他、集中できない、眠れない等のその他の体調を表わす選択肢を表示することもできる。これに対して、患者は自身が考えている現在の体調を示す選択肢を患者側入力部803に入力する(ステップ1204)。
【0053】
患者側電子装置104は患者からの現在の体調を示す情報である回答の入力を受けると、制御部801がこれを検知し、次に、その回答に基づいて体調の原因を入力させるか否かを決定し、必要な場合にはその体調に合わせた原因入力画面を表示させる(ステップ1206)。ここでは、「1:食べたい」については原因を問い合わせ、「2:イライラする」に対しては原因を問い合わせないことが予め決められている。問い合わせのメッセージも「1:食べたい」について予め用意しておく。例えば、ここでは、患者の現在の体調は飲食したいという食欲衝動を持った状態であり、ステップ1202において「1:食べたい」が選択された場合を考える。これに応答して制御部801は、表示部802に「食べたくなった原因は?1:机の上に食べ物がある、2:ストレス、3:空腹、4:知人の勧め」という表示を行い、患者に入力を促す(ステップ1206)。患者は、ストレスによる食欲衝動であると考えているとする。したがって、患者は「2:ストレス」を選択して、入力部803を介して回答を入力する(ステップ1208)。患者の現在の体調としての現在の食欲衝動及び入力された原因を示す情報が、通信部805を介して、この患者を特定するための患者ID(0)とともにサーバ102へ送信される(ステップ1210)。ステップ1201〜ステップ1206は、例えば、ナースコールボタンへのタッチがあった旨を患者側電子装置104がサーバ102へ送信し、それに対してサーバ102が体調入力表示のための情報を患者側電子装置104へ送信するような対話によって実行されてもよい。
【0054】
サーバ102の通信部605が、患者ID、患者の現在の体調及びその原因を示す情報を受信すると(ステップ1212)、受信した患者IDに基づいて、当該患者のための患者情報の送信要求をデータベース103に対して通信部605を介して送信する(ステップ1214)。データベース103の通信部705が送信要求を受信すると(ステップ1216)、患者情報送信要求とともに受信された患者IDに基づいて、制御部701が、記憶部704における当該患者の患者情報を検索して、取り出し(ステップ1218)、通信部705がサーバ102へ送信する(ステップ1220)。
【0055】
サーバ通信部605が、データベース103から患者情報を受信すると(ステップ1222)、受信された患者情報及び食欲衝動の原因に基づいてサーバ制御部601が記憶部604に格納された療法リストから現在の患者に適した療法を選択する。ここでは、患者AAAAは食欲衝動を生じており、その原因はストレスであると考えている。患者情報における療法履歴は療法ID=1については未実行であることを示している。本実施形態においては、食欲抑制については使用しないものとする。したがって、この場合には、療法ID=1及び3〜5が選択可能である。すべて実行しても構わないが、療法の数を所定の数に制限してもよい。本実施形態においては、認知行動療法、行動療法及びコーチングのそれぞれについて1つずつを最大とする。ここでは、認知行動療法としてID=1、行動療法としてID=3、コーチングとしてID=5を選択する。行動療法はID=3及び4が該当するが、ランダムに選択した。その他の所定の基準により療法を選択してもよい。
【0056】
サーバ制御部601はさらに選択された3つの療法の実行順を所定の基準に基づいて決定する。ここでは行動療法、コーチング、認知行動療法の順番に実行するという基準に基づき、ID=3の行動療法、ID=5のコーチング療法、ID=1の認知行動療法の順番に実行する。このような順序で実行することにより、効果的に現在の体調を改善し、肥満症治療を行うことができる。例えば、現在生じている食欲衝動及び原因に適した代償行動療法を実行することにより、現在の食欲衝動を解消もしくは減退させることができる。さらに、コーチングを行うことにより、患者を励まし、食欲衝動が再び増加しないような精神状態に導くことができる。そして、食欲衝動が落ち着いた後に、認知行動療法を行い、先ほどまで生じていた食欲衝動に関連する事項ついての患者の解釈が誤っていれば、それを正すことができる。食欲衝動が生じてから長い時間が経過した後に認知行動療法を行う場合に比べ、患者のより高い理解と実感が得られる。このため、体調、食欲衝動に関連する事項についての誤った解釈を正し、同様の食欲衝動が生じたときに実際に食事を摂ってしまうことを効果的に防止したり、同様の食欲衝動に再び陥ることを効果的に防止することができる。
【0057】
サーバ制御部601は、カウンタNを0にリセットし(ステップ1226)、Nをカウントアップする(ステップ1228)。そして、決定された第1番目(N番目)の療法である療法(ID=3)を実行する。
【0058】
行動療法及びコーチングのための実行手順を
図13に示す。まず、サーバ制御部601は選択されたN番目の療法を示す行動療法情報またはコーチング情報を患者側電子装置104に通信部605を介して送信する(ステップ1301)。行動療法情報及びコーチング情報は療法リストにおけるメッセージを含む。ここでは、N=1であるから、療法(ID=3)が実行される場合を説明する。療法(ID=3)は行動療法(2)であるから
図13の手順に従って実行される。サーバ制御部601は記憶部604から療法リストを読み出し、療法ID=3のメッセージを行動療法情報に入れて、患者側電子装置104へ送信する(ステップ1301)。患者側電子装置の通信部805はこれを受信し(ステップ1302)、この行動療法情報に基づいて「シャワーを浴びてストレスを解消しましょう」というメッセージを表示部802に表示する(ステップ1304)。この行動療法は代償行動療法であり、現在生じている食欲衝動を解消するための飲食以外の他の行動を患者に行ってもらうことで、食欲衝動を解消することができる。ここでは、患者の食欲衝動が生じた段階ですぐにその原因を特定し、その原因に適した代償行動療法を実行することで効果的に食欲衝動を解消することができる。患者側電子装置104は患者側電子装置104における療法実行処理が終了したことを示す療法実行確認情報を送信する(ステップ1306)。
【0059】
サーバ制御部601は、療法実行確認情報を受信すると(ステップ1308)、療法(ID=3)を実行したことを療法履歴に記録して更新するための更新命令を患者IDとともにデータベース103に通信部605を介して送信する(ステップ1310)。データベース103はこれを受信し(ステップ1312)、患者ID及び療法IDに基づいて患者履歴を更新する(ステップ1314)。その後、経過観察を実行するための設定処理を行う経過観察実行設定処理が実行される(ステップ1316)。更新処理は、サーバ102から行動療法情報またはコーチング情報が患者側電子装置104へ送信された後に、療法実行確認情報の送受信を行わずに実行してもよい。また更新処理は、経過観察実行設定処理(ステップ1316)の後であっても構わない。
【0060】
経過観察実行設定処理(ステップ1316)を
図14に基づいて説明する。まず、サーバ制御部601は、記憶部604に記憶された療法リストに基づいて、実行した療法が経過観察を要求しているか否か決定する(ステップ1401)。療法リストを参照すると実行された療法(ID=3)の経過観察パラメータは「5」である。したがって、サーバ制御部601は、当該療法は経過観察を要求するものであり、その経過観察のための所定のタイミングは5分後であることを決定する(ステップ1401、1402)。サーバ制御部601は経過観察処理を5分後に実行することを予約する(ステップ1404)。このような処理は例えばクーロンジョブのような定期実行プロセスとして実行できる。
【0061】
次に経過観察実行処理を
図15Aに基づいて説明する。サーバ制御部601は、経過観察実行設定処理において予約された時間になったときに、生じていた体調が改善したか否かを問い合わせるメッセージを示す効果問合せメッセージを、患者側電子装置104に送信する(ステップ1501)。患者側電子装置104はこれを受信し(ステップ1502)、表示部802に表示する。ここでは、「食べたい気持ちは解消しましたか?1:はい 2:いいえ」というメッセージが表示される。これに対して、スマートフォンのタッチパネルである入力部603において、患者は「1:はい」または「2:いいえ」のボタンのいずれかをタッチすることにより、効果回答を入力し、入力された効果回答が送信される(ステップ1506)。サーバ通信部605はこれを受信し(ステップ1508)、サーバ制御部601は、効果回答が「1」であるか否かを判定する。効果回答が1である場合には、先ほど生じた食欲衝動が解消したため、経過観察処理を終了する。効果回答が2である場合には、先ほど生じた食欲衝動が解消していないため、これを解消するための他の療法を選択し(ステップ1512)、選択された療法を実行する(ステップ1514)。療法の選択は、既に実行された療法に関連付けられたものを選択してもよいし、実行した療法と同じ療法を再度実行してもよいし、前述のステップ1214〜1232と同様の手順を用いることにより1または2以上の療法を選択して実行しても構わない。本実施形態においては、現在生じている食欲衝動の原因であるストレスを解消するためのもう一つの療法であるID=4の療法を選択して、前述の
図13に示されたステップ1301〜1316の手順によりこれを実行し、経過観察実行処理は終了する。このように、選択された療法を実行した後に、必要に応じて適切なタイミングで効果の確認を行い、依然として体調が改善していない場合には、さらに体調を改善するための適切な療法を実行することが可能となる。経過観察処理は体調が改善するまで所定の間隔で繰り返してもよい。また、患者側電子装置104において所定期間経過後に効果問い合せメッセージを自律的に表示し、その回答を入力させ、サーバ102へ送信することもできる。
【0062】
経過観察実行設定処理(ステップ1316)が終了すると、
図13における行動療法及びコーチング実行処理が終了し、
図12Aにおける1230の療法実行処理が終了し、さらに実行すべき療法が選択されているか否かの判定を行う(ステップ1232)。なお、Kは選択された療法の数を示す。設定された経過観察実行処理は予約された所定のタイミングに実行される処理であり、ステップ1224において選択された次の療法を実行するために、この経過観察処理の終了を待つ必要はない。
【0063】
また、ステップ1310において患者側電子装置において行動療法が実行されたことを確認した後に、患者が行動療法を実際に行ったか否かをサーバ102が問い合わせるメッセージを送信し、それを患者側電子装置104において患者に提示して問い合わせてもよい。これに対して、患者は実行したか否かについての回答を選択し、患者側入力装置105を介してサーバ102へ送信される。サーバ102はこの情報をデータベース103へ送信する。例えば、肥満症診療履歴の療法履歴の項目に実行した療法のIDに加えてその療法を実際に患者が行ったか否かについての項目も持たせておき、サーバ102からの情報に基づいて、これを更新することができる。この患者が療法を実際に行ったかどうかの確認処理は、経過観察実行処理のようにクーロンジョブとして、例えば療法実行後、5分後に実行するようにしてもよい。療法リストにどのタイミングで実行すべきかの情報を記憶しておいてもよい。コーチングにおいても必要に応じて同様の処理を行うことができる。
【0064】
本実施形態においては、3つの療法が選択されたからK=3であり、ここまで1番目の処理が実行されたからK=3、N=1である。したがって、K>Nが成立し、ステップ1228へ戻り、N=2となって、選択された2番目の療法(ID=5)の実行を行う(ステップ1228、1230)。前述のとおりID=5の療法はコーチングであり、
図13に示されたステップ1301〜1316の手順によって、行動療法と同様の手順で実行される。ステップ1304においては、行動療法情報に代えて、「○○さんならストレスに負けないよ!」という患者を励ますためのコーチングメッセージが患者側電子装置104の表示部802に表示される。これにより、代償行動療法によって食欲衝動が解消ないし減退している患者をさらに励まし、精神的に安定させることができる。コーチング実行処理が終了すると、K(=3)>N(=2)であるから、ステップ1228へ戻ってカウンタNが3にカウントアップされ、選択された3番目の療法である認知行動療法(ID=1)が実行される。
【0065】
認知行動療法のための療法実行処理(ステップ1230)の手順を
図16に基づいて説明する。まず、ステップ1601において、サーバ制御部601は選択されたN番目の療法によって指定される肥満症に関連する事項についての患者の解釈を含む患者解釈情報を送信することを要求する患者解釈情報要求を患者側電子装置104へ送信する。患者解釈情報要求は療法リストのメッセージを含む。患者側電子装置104はこれを受信し(ステップ1602)、受信された患者解釈情報要求に基づいてメッセージを表示部802において表示する(ステップ1604)。ここでは、選択された認知行動療法(ID=1)のメッセージ情報に基づいて「現在の食べたいという感情はどれぐらい続くと思いますか?1: 食べない限り続き、自分には食べることが必要と感じる 2: 5分程度で収まる」という、肥満症に関連する事項である、食欲衝動とその解消について、患者の解釈を問うメッセージを表示する。
【0066】
患者はこれに対して、自分が正しいと考えている選択肢を回答として患者側電子装置104に入力部803を介して入力し、この入力された回答がサーバ102へ送信される(ステップ1606)。サーバ通信部605はこれを受信し、サーバ制御部601は、これを受診すると(ステップ1608)、療法リストに記載された正答情報と患者によって入力された回答情報とを比較し、患者の肥満症に関連する事項についての解釈が誤りであるか否かを決定する(ステップ1610)。そして、正しい場合には正しい旨を、誤りである場合には正答情報に基づいて、正しいとされる情報を示す指導情報を含む認知行動療法情報を送信する(ステップ1612)。患者側電子装置104はこの認知行動療法情報を受信し(ステップ1614)、この受信された認知行動療法情報に基づいて正解を示す情報、正しいとされる情報を表示部802に表示する(ステップ1616)。
【0067】
ここでは、食欲衝動は長時間持続し、飲食によってしか解消しないか、という肥満症に関連する事項について、患者はステップ1606において、「1:食べない限り続き、自分には食べることが必要と感じる」との患者の解釈を回答として入力し、サーバ102へ送信する。サーバ制御部601は、療法情報リストのID=1の正答情報を参照し、正答情報「2」を読み出す。患者の回答である「1」と正答情報「2」とを比較し、両者が異なると判定し、患者の解釈は誤りであると決定する(ステップ1610)。そして、療法リストの正答情報に含まれる指導情報を示す指導情報を含む認知行動療法情報を送信する(ステップ1612)。患者側電子装置104は、認知行動療法情報を受信し、そこに含まれる指導情報に基づいて、「食べたいという感情は、実は5分程度で収まるものであり、少しやり過ごすだけで収まります。食べることにこだわる必要はありません。」というメッセージを表示部802に表示する。これにより、食欲衝動が生じたときに、その原因を特定するとともに、食欲衝動、その原因及び肥満症に関連する事項についての患者の誤った解釈をも特定し、それを正すことにより、食欲衝動を解消するとともに、将来にわたって同様の食欲衝動を上手にコントロールできるようにする。食欲衝動が生じたときと認知行動療法の実行のタイミングが近いほど、患者は実感として自己の解釈の誤りを認識しやすくなり、認知行動療法の効果を高めることができる。
【0068】
患者の解釈が正解であった場合には、例えば、「正解です。よく理解していますね!」と表示することができる。正解の場合のメッセージは、療法リストに含ませてもよいし、正解用メッセージリストを別途設けて、そこから所定の基準で選択して認知行動療法に含めて、患者側電子装置104に送信してもよい。その他、正解であることがわかる形式で、患者に表示できればいかなる方法であってもよい。
【0069】
ステップ1616において、認知行動療法を実行した後に、患者側電子装置104においては療法実行が終了したことを示す療法実行確認情報を送信する(ステップ1618)。これを受信したサーバ制御部601は(ステップ1620)、第N番目の療法を実行したことを療法履歴に記録して更新する更新命令をデータベース103へ送信する(ステップ1622)。データベース103はこれを受信すると(ステップ1624)、その更新命令に基づいて療法履歴を更新する(ステップ1626)。その後、経過観察実行設定が実行される(ステップ1628)。更新処理は、サーバ102から認知行動療法情報が患者側電子装置104へ送信された後に、療法実行確認情報の送受信を行わずに実行してもよいし、経過観察実行設定(ステップ1628)が実行されたのちに実行してもよい。経過観察実行設定(ステップ1628)は、
図14に基づいて説明したものと同様である。
【0070】
行動療法に関連して行動療法を患者が実際に実行したか否かのための処理として前述したのと同様に、ステップ1622において患者側電子装置104において認知行動療法が実行されたことを確認した後に、患者が認知行動療法によって、誤った解釈が正されて、正しい理解になったかを確認するための問い合せメッセージを送信し、患者からの回答を得てもよい。サーバ102はこの情報をデータベース103へ送信し、肥満症診療履歴を更新することができる。
【0071】
経過観察実行設定(ステップ1628)が終了すると、認知行動療法実行処理が終了し、ステップ1232において、選択された療法がまだ残っているかを確認する。ここでは、K=3、N=3となり、K>Nは偽となるから、選択された療法はすべて実行されたと判断され、患者のナースコールボタンをタッチする行為によって開始された処理手順が終了する。
【0072】
選択された複数の療法は、一つの療法が実行された後、一定の時間が経過した後に次の療法が実行されるようにしてもよい。
【0073】
上述の例においては、療法として、行動療法、コーチング及び認知行動療法の3つの療法についてそれぞれ1つずつ選択され、全体として3つの療法が実行される場合を説明した。しかし、これらのいずれか1つ、または、それらのいかなる組み合わせであっても構わないし、それぞれの療法から複数の療法、例えば、3つの行動療法が選択されても同様に動作可能であることは、明らかである。
【0074】
本実施形態の処理全体は繰り返し行うことができ、あるタイミングで患者からの食欲衝動を示す情報が入力されたときに、認知行動療法のみを実行し、その後、別のタイミングで患者から別の食欲衝動を示す情報が入力されたときには、行動療法のみを実行することもできる。
【0075】
本発明に従う上述の実施形態によれば、患者が肥満症に関連して所定の体調に至った時に、その体調、原因を特定し、その体調、原因に対する適切な肥満症のための療法をタイムリーに実行することができるため、効果的な肥満症治療を行うことができる。行動療法、コーチング及び認知行動療法を組み合わせて実行することによりさらに高い効果を得ることができる。例えば、現在生じている食欲衝動に適した代償行動療法を行うことにより、その食欲衝動を解消または減少させ、コーチングにより肥満症に対する患者の意欲を精神的にサポートし、精神的に安定した状態になったときに、認知行動療法を実行することにより、ついさっきまで生じていた食欲衝動、その原因及び肥満症に関連する患者の誤った理解を正し、同様な食欲衝動に至った際にその食欲を上手にコントロールできるようにしたり、再び同様な食欲衝動に至らないように促すことができる。同様の効果は、行動療法と認知行動療法の組み合わせ、または、コーチングと認知行動療法との組み合わせによっても得られる。
【0076】
さらに、医師が使用する医師側電子装置105であるノートパソコンもまたネットワーク101を介してサーバ102に接続されている。そして、医師側電子装置105からの患者の識別情報を伴う情報送信要求が医師側電子装置105から送信され、サーバ102がこれを受信すると、当該情報送信要求に基づいて、データベース103に記憶された患者の識別情報に関連づけられた患者情報を取り出し、医師側電子装置105へ送信する。これにより、時々刻々と更新される患者の肥満症診療履歴情報を医師が確認することが可能となる。
【0077】
また、行動療法、認知行動療法及びコーチングが実行された後に肥満症診療履歴情報が更新された場合や、患者によって肥満症診療履歴情報が更新された場合に、サーバ制御手段601はこれを検出して、服薬調整処理を実行してもよい。例えば、肥満症診療履歴情報の更新をサーバ制御部601が検出すると、更新された履歴情報の患者を識別する識別IDに基づいて肥満症診療履歴情報をデータベース103から受信し、受信された肥満症診療履歴情報に基づいて、服薬調整に関する情報を決定し、これを医師が使用する医師側電子装置105や患者側電子装置104に送信することができる。
【0078】
本実施形態に従えば、患者の時々刻々と変化する状況に応じて適切な療法を実行するため、患者によって肥満症治療の進行状況に大きな差が生じやすい。適切な療法の実行に従って、適切な行動をとっている患者は肥満症治療の効果が大きく出るが、食欲衝動が生じていても、ナースコールを押さずに、飲食を行ってしまうような患者にはあまり効果が望めない。したがって、本実施形態を使用した場合には、従来よりも肥満症治療の効果の個人差が大きくなる。そこで、時々刻々と変化する肥満症診療履歴情報に基づいて服薬調整を行えば、患者それぞれの肥満症治療の進み具合に合わせた服薬を行うことができ、肥満症治療の効果を高めることができる。また、肥満症診療履歴情報に薬の副作用履歴情報を含ませて、これに基づいて服薬調整を行うことで、副作用によるリスクを最小限に抑えることも可能である。
【0079】
また、体調の原因の特定を行わなくてもよい。例えば、体調入力ステップ1204において、「2:イライラする」という体調を選択した場合に、その原因を特定するためのステップ1206〜1208を行わない。この場合、ステップ1210において、イライラするという現在の体調情報のみをサーバ102へ送信する。そして、ステップ1224においては、イライラするという体調情報と患者情報に基づいて実行すべき療法を選択する。例えば、イライラするという体調であり、原因については特定されていない状態で実行可能な療法リストにおける表示は「体調/原因」の項目が「2/0」である場合である。したがって、これに対応するID=3の行動療法が実行され、「シャワーを浴びてストレスを解消しましょう」というメッセージが患者側電子装置104において表示されて、行動療法を実行することができる。同様の手順により、原因の特定を行わずに認知行動療法、コーチングも実行可能である。
【0080】
[第2の実施形態]
本実施形態においては、患者の体調が食欲衝動を生じた状態であることを検出した場合に、ナースコール時間及び患者情報に基づいて、食欲衝動が抑制されるべきものであるか否かを判定し、食欲衝動の原因及び患者情報に加えて、この判定の結果に基づいて、実行されるべき療法を選択する点で、第1の実施形態と異なる。その他の点においては第1の実施形態と同様である。以下、
図12Bに基づいて第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
【0081】
まず、ステップ1201において、患者側電子装置104は、ナースコールボタンへのタッチが検出された時間をナースコール時間として取得する。次に、ステップ1202における、患者側電子装置104の表示部802上に表示された現在の体調がどのような状態かを問い合わせる体調入力画面において、「1:食べたい」が選択されて、患者の現在の体調として食欲衝動を生じた状態であることを検出する(ステップ1204)。さらに、食欲衝動についての原因入力表示(ステップ1206)に対する応答として、「2:ストレス」が入力され(ステップ1208)、患者の現在の体調及び原因を示す情報とともにナースコール時間を送信する(ステップ1210)。ナースコール時間は、ここでは、ナースコールボタンがタッチされた時間としたが、現在生じている患者の体調がいつの時点における体調なのかを示すための情報であればどのような情報であってもよい。例えば、ステップ1204または1210において、患者が回答の入力を行った時間としてもよいし、ステップ1210によって患者の現在の体調及び原因を示す情報を送信した時間としてもよい。サーバ102が患者の現在の体調及び原因を示す情報を受信した時間とすることもできる。
【0082】
本実施形態においては、サーバ通信部605が、データベース103から患者情報を受信すると(ステップ1222)、現在の体調が食欲衝動であることを検出し、食欲衝動の原因及び受信された患者情報に基づいて、患者に現在生じている食欲衝動が抑制されるべきであるか否かを判定する(ステップ1223)。前述のとおり、食欲の原因となる空腹感は心理的空腹感と身体的空腹感とに分類され、心理的空腹感による食欲衝動は抑制されるべきであると考えられる。また、身体的空腹感は適正な範囲のカロリー量を適正なタイミングで摂取する場合においては抑制される必要はないが、それ以外の場合には抑制される必要があると考えられる。第1の実施形態における療法の割り当ての際と同様に、食欲衝動の原因が、「1:机の上に食べ物が置いてある」、「2:ストレス」及び「4:知人の勧め」の場合には心理的空腹感に起因するものであると考えられるため、抑制されるべき食欲であると判定する。
【0083】
一方、食欲衝動の原因が「3:空腹」である場合には、身体的空腹感と心理的空腹感に起因する食欲衝動である可能性があり、この患者が考える食欲衝動の原因からだけでは抑制されるべきか否かの判定はできない。そこで、本実施形態においては、ナースコール時間及び患者情報に記憶されたその日の摂取カロリーが所定の適正な範囲の上限未満であり、かつ、ナースコール時間が食事をするための適正な時間の範囲内であるか否かを判定する。摂取カロリーの上限値及び食事時間の範囲は、例えば、予め医師によって決定され、患者情報に含ませることができる。ステップ1222において受信された患者情報から、その日の摂取カロリー、適正な摂取カロリー及び食事時間の範囲を取得し、ステップ1223において、これらの情報とナースコール時間に基づいて、その日の摂取カロリーが適正な摂取カロリーの上限値未満であり、かつナースコール時間が適正な食事時間の範囲内であると判定された場合には、この食欲衝動は適正であり、抑制する必要がないと判定する。その日の摂取カロリーが所定の範囲をオーバーしている場合や、ナースコール時間が食事を摂るための適正な時間の範囲内でない場合には、この食欲衝動は適正なものではなく、抑制されるべきものであると判定する。例えば、患者AAAAの適正な食事の時間は20時までであり、一日の規定摂取カロリーの上限は2700キロカロリーであるとする。そして、ナースコール時間は23時45分であり、この日のここまでの摂取カロリーは2900キロカロリーである場合は、この食欲衝動は抑制されるべきものであると判定される。
【0084】
次に、ステップ1225において、食欲衝動抑制判定結果、原因及び患者情報に基づいて療法リストから実行する1つ以上(K個)の療法を選択し、実行順を決定する。ステップ1223による食欲衝動抑制判定の結果が、この食欲衝動は抑制されるべきものであるという判定結果であった場合には、療法リストの食欲抑制=1の療法の中から、第1の実施形態と同様に原因及び患者情報に基づいて療法を選択し、実行する。その後の処理は、第1の実施形態と同様である。
【0085】
一方、食欲衝動が抑制される必要がないと判定された場合には、ステップ1225において、単に「適正な食欲ですので、適度な食事をとってもよいですよ」等のメッセージを表示部802に表示して、食事を許可してその他の療法の実行を行わなくともよいし、体調/原因=1/3及びこの判定結果に基づいて、食欲衝動を抑制するための療法以外の療法、すなわち、体調/原因=1/3のための療法のうち食欲抑制=0の療法を選択して実行しても良い。前述の患者AAAAの例でいえば、ナースコール時間が18時00分であり、その日の摂取カロリーが1500キロカロリーである場合には、ナースコール時間が食事のための適切な時間範囲内であり、摂取カロリーが所定の基準値以下であるから、食欲衝動が適正なものであり、抑制される必要がないと判定される。この場合には、食欲抑制=0である行動療法として、行動療法ID=10を選択し、「食事を摂っても良いですが、食べるときはゆっくりよくかんで食べましょう。」というメッセージを表示部802に表示してもよい。また、摂取カロリーの上限値とその日の摂取カロリーとの差に基づいて、メッセージの内容を変更しても良い。例えば、「食事を○○カロリーだけなら摂っても良いですが、食べるときはゆっくりよくかんで食べましょう。」というメッセージを表示するようにしても良い。また、下限値との差をとって、過剰な食事制限によって必要なカロリー摂取が行われていない患者に対しては、注意を喚起して食事を摂るような行動療法を実行することもできる。
【0086】
本実施形態を用いることにより、患者の入力から得られた体調及び原因だけでは現在の食欲衝動が抑制されるべきか否かを十分に判定することができないものについても、ナースコール時間及びその日の摂取カロリーに基づくことでより正確な判定を可能とし、さらに適切な療法を選択することが可能となる。適切な食欲衝動であるにもかかわらず食欲抑制のための療法のみが実行されると、過剰な食事制限となり健康に悪影響を及ぼす可能性がある。本実施形態を用いれば、適切な食欲衝動を正確に把握することができる。
【0087】
本実施形態においては、食欲衝動が抑制されるべきか否かの判定のために、体調、原因、ナースコール時間及び摂取カロリーを用いたが、これらの一部であっても良いし、他の要素を用いても良い。
【0088】
[第3の実施形態]
本実施形態においては、経過観察実行処理において、食欲衝動が抑制されるべきものであるかの判定を実行し、その判定結果に基づいて経過観察後の療法を選択、実行する点で、第1の実施形態と異なる。その他の点においては第1の実施形態と同様である。以下、
図15Bに基づいて第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
【0089】
本実施形態の経過観察実行処理においては、実行された療法についての効果問合せに対する回答が「1」であった場合、すなわち、現在の体調が改善しなかった場合に、食欲衝動が抑制されるべきであるか否かの判定ステップを実行する。
図15Bに記載した例によれば、現在の体調が食欲衝動が生じている状態であり、ステップ1504において、「食べたい気持ちは解消しましたか?」という問いに対して、「2:いいえ」が入力されると、ステップ1511において、現在の食欲衝動が抑制されるべきものであるか否かを判定するステップが実行される。
【0090】
前述したとおり、心理的空腹感に起因する食欲衝動は基本的に抑制するべきものであり、身体的空腹感のうち適切な空腹感に基づく食欲衝動以外は抑制するべきものであると考えられる。一般的に、心理的空腹感は食事を摂らずとも、一定時間経過後には解消すると考えられており、一定時間経過しても空腹感が解消していない場合には、身体的空腹感に基づく食欲衝動である可能性が高い。したがって、いずれかの療法が実行され、所定の時間が経過した後の効果問い合わせメッセージに対して、食欲衝動が解消していないとの回答が得られた場合には、生じている食欲衝動は身体的空腹感に基づくものである可能性が高い。
【0091】
第1の実施形態に関連して説明したとおり、食欲衝動が生じておりその原因が「3:空腹」であるとの患者の入力があった場合には、この食欲衝動が心理的空腹感によるものであるのか、身体的空腹感によるものであるのかを、患者が認識している原因からだけでは判断することができない。そこで、第1の実施形態においては、ひとまず、心理的空腹感であるとみなして割り当てられた食欲衝動を抑制するための療法が選択され、実行される。しかし、その後、所定の時間が経過した後の効果問い合わせメッセージに対して、食欲衝動が解消していないとの回答が得られた場合には、生じている食欲衝動は実際には身体的空腹感に基づくものである可能性が高い。
【0092】
より具体的には、本実施形態においては、効果問合せメッセージに対して患者によって入力された効果回答に基づいて、生じている食欲衝動が抑制されるべきものであるか否かを判定する(ステップ1511)。ここで、効果問合せメッセージの送信ステップ(ステップ1501)は、療法の実行から心理的空腹感が解消する一定時間経過後、例えば、実行された療法のための経過観察時間である5分後に実行されるように設定される。そして、食欲衝動抑制判定の結果に基づいて、実行すべき療法を選択する(ステップ1512)。ここでは、効果問合せメッセージに対する回答が「2:いいえ」である場合には、身体的空腹感に基づく食欲衝動であり、抑制されるべき食欲衝動ではないと判定する(ステップ1511)。この判定結果に基づいて、食欲衝動を抑制するための療法以外の療法、すなわち、体調/原因=1/3のための療法のうち食欲抑制スコア≠1である療法を選択して実行する。例えば、療法ID=10を実行し、「食事を摂っても良いですが、ゆっくりよくかんで食べましょう」というメッセージを患者側電子装置104の表示部802に表示して、行動療法を実行して、経過観察処理を終了させる。さらに、ステップ1224において選択された食欲衝動を抑制するための療法で未実行の療法が存在するか否か確認し、存在する場合には、それらの療法の実行を中止してもよい。
【0093】
ステップ1511において、第2の実施形態と同様に、ナースコール時間及び受信された患者情報における摂取カロリーに基づいて、抑制されるべき食欲衝動であるか否かを判定してもよい。これにより、身体的空腹感にもとづく食欲衝動の中でも抑制されるべき食欲衝動であるか否かを判定することができる。
【0094】
また、実際には抑制されるべき食欲衝動でないにもかかわらず、患者が解釈する食欲衝動の原因に基づいて食欲抑制のための療法が実行されたものを、抑制される必要のない食欲衝動として正しく判定し直し、適切な療法を再度実行することを可能とする。例えば、ステップ1206において、患者が解釈する食欲衝動の原因が「1:机の上に食べ物が置いてある」であったため、食欲衝動を抑制するための療法が選択された。しかしながら、実際には、机の上に食べ物が置いてあることだけが原因ではなく、実際に身体的な空腹状態にあったために、食欲衝動が生じている場合がある。このような場合には、食欲を抑制するための療法が実行され、一定時間経過したとしても、食欲衝動は解消しない。そのため、ステップ1508において受信される患者の回答は「2:いいえ」となり、食欲衝動が解消していないことを示す。ステップ1511においては、この回答に基づいて、現在の食欲衝動が抑制されるべきものであるかを再度判定する。例えば、一定時間経過後でも食欲衝動が解消していないから、心理的空腹感に起因するものではなく、身体的空腹感に起因するものであると判定し直すとともに、ナースコール時間及び摂取カロリーに基づいて抑制すべき食欲衝動か再判定する。
【0095】
[第4の実施形態]
第2の実施形態と第3の実施形態を組み合わせた形態で本発明を実施することも可能である。すなわち、実行されるべき療法を選択する前に、抑制されるべき食欲衝動であるか否かの判定を行い(ステップ1223)、その結果に基づいて療法を選択して実行する(ステップ1225〜1232)とともに、経過観察処理においても、抑制されるべき食欲衝動であるか否かの判定を行う(ステップ1511)。このような構成とすることにより、より正確な食欲抑制のための判定を行うことが可能となる。
【0096】
[第5の実施形態]
本実施形態は、患者による現在の体調を示す情報の入力によって肥満症のための療法実行処理が開始されるのではなく、患者の肥満症診療履歴情報に基づいてサーバ102によって決定されたタイミングに基づいて開始される点で、第1の実施形態と異なる。その他の点については、第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
【0097】
図17を用いて、サーバ102によって患者情報に基づいて所定の療法を所定のタイミングで実行することを予約するための処理を説明する。まず、サーバ102は、所定のタイミングで、患者情報送信要求をデータベース103へ送信する(ステップ1701)。この所定のタイミングは、一定期間、例えば、24時間ごとに行ってもよいし、所定の時間、例えば、午前0時に行ってもよいし、患者情報の更新が行われた場合に行ってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。患者情報の更新は、前述のように何らかの療法が実行されたときに実行される場合や、患者が、毎日の体調、摂取カロリー、体重、服薬状況等の情報をサーバ102に送信し、これに基づいてデータベース103によって実行される場合などがある。
【0098】
この患者情報送信要求を受信すると、データベース制御部701は、記憶部704から患者情報を取り出し、サーバ102へ送信する。この取り出される患者情報は、すべての患者について一括で行ってもよいし、患者情報送信要求とともにサーバ102から送信される患者IDによって特定される1以上の患者について行ってもよい。サーバ102は患者情報を受信すると(ステップ1708)、これに基づいて、所定の療法を所定のタイミングで実行することを予約し(ステップ1710)、療法予約処理が終了する。この予約処理は前述の経過処理実行予約(ステップ1404)と同様にクーロンジョブのような定期実行処理として設定することができる。予約された療法は、例えば、サーバ記憶部604に療法予約テーブルとして記憶してもよい。同じ時間に実行されることが予約される療法は複数であっても構わない。患者情報のうち少なくとも肥満症診療履歴情報に基づいてこの予約処理が実行される。すなわち、時々刻々と変化する体調履歴、摂取カロリー履歴、体重履歴、服薬履歴、療法履歴、診療日数などの肥満症診療履歴情報に基づくことにより、その患者に最適なタイミングで最適な療法を実行することが可能となる。これに加えて確定済みの個人情報を考慮することも可能である。また、予約されるタイミングは、0秒後、すなわち、直ちに実行されるように設定されてもよいし、1時間後に設定されてもよいし、翌日の朝9時に設定されてもよい。療法リストが適切なタイミングを決定するための情報を含み、これに基づいて決定されてもよい。
【0099】
例えば、患者ID=1のAAAAが、患者が日々の肥満症治療日記の更新の一環として、2014年3月13日の体重が75kgであるという更新をサーバ102を介して行った場合、サーバ102は、この更新要求に基づいて、データベース103に記録された患者AAAAの肥満症診療履歴情報を更新する要求を送信する。そして、データベース103において更新が完了した後、サーバ制御部601は、患者AAAAについての患者情報を送信するように、患者ID=1とともにデータベース103に要求する(ステップ1701)。データベース103は、これを受信すると(ステップ1702)、患者ID=1の患者情報を取り出し(ステップ1704)、サーバ102へ送信する(ステップ1706)。サーバ制御部601は受信された患者情報に基づいて、実行すべき療法を選択し、所定のタイミングで実行することを予約する。
【0100】
肥満症診療においては、治療の段階を(1)体重を落とすフェーズと、(2)体重を維持するフェーズとに分けることができる。そして、それぞれのフェーズにおいて実行されるべき療法は異なる。例えば、2014年3月13日の段階で、患者AAAAの体重が目標体重の上限値Tu(65kg)より重いこと、直近のAST、ALT及びCT値が適正範囲外であることに基づいて、患者AAAAの治療段階は体重を落とすフェーズであると判定する。そして、治療日数が3日であったとすると、体重を落とすフェーズの初期段階において有効な療法ID=7を選択し、この療法をすぐに実行するように1分後に予約する。本実施形態においては、患者による現在の体調及びその原因の入力はないから、体調/原因の項目による制限のない療法が選択される。体調/原因の項目を無視して、療法を選択してもよい。
【0101】
図18に示すように、サーバ制御部601は、療法の実行が予約された時間まで待機し(ステップ1801)、予約時間になると、当該予約時間において実行が予約されているL個の療法を決定する(ステップ1802)。例えばサーバ記憶部604に記憶した療法予約テーブルに基づいて決定することができる。そして、決定された1つ以上の療法の実行順を所定の基準により決定する。これは第1の実施形態と同様の方法により決定できる。また、この順番も予約処理において決定してもよい。その場合には、決定された順番に従って、1番目の療法を決定する。カウンタMが0に設定され(ステップ1804)、1つめの決定された療法の実行のために1つカントアップされる(ステップ1806)。そして、決定された1番目の療法を実行する(ステップ1808)。この療法実行処理は、行動療法及びコーチングについては
図13に基づいて説明した処理と同様であり、認知行動療法については、
図16に基づいて説明した処理と同様である。1番目の療法が実行されると決定された療法数Lと実行された療法数Mとを比較し(ステップ1808)、決定された療法数の方が多ければステップ1806に戻り、残りの療法を実行し、MがLと同じ数以上になっていれば、すべての決定された療法が実行されたものと判断して、予約された療法の実行処理を終了する。
【0102】
例えば、患者AAAAのために予約された療法(ID=7)の実行時間になると、サーバ制御部601は、サーバ記憶部604に記憶された療法予約テーブルから、その時間に予約されている療法ID=7を読み出し、療法ID=7を実行することを決定する(ステップ1802)。実行される療法は1つであるから、L=1である。そして、カウンタMをリセットした後(ステップ1804)、1番目の療法実行のためにカウントアップする(ステップ1806)。そして、ステップ1808において、療法ID=7によって特定される療法を実行する。療法ID=7は認知行動療法であるから、
図16に基づいて説明した処理により、実行される。この療法ID=7によって特定される認知行動療法は、過食してしまうことは、あなたがダメな証拠だと思うか、という肥満症に関連する事項についての患者の解釈を取得し、過食してしまうことは、自分がダメな証拠だと思う、という誤った解釈をしている場合には、「食べる量と自分の価値は関係ありません。コントロールが必要なだけで、体重減少に取り組まれてること時点で、あなたは以前よりずっと素晴らしい!」という指導メッセージを患者に提示する。
【0103】
本実施形態によれば、時々刻々と変化する患者の状態に基づいて、適切な療法をタイムリーに選択し、適切なタイミングで実行することができるから、より効果的な肥満症治療を行うことができる。例えば、肥満症治療を開始して、治療の段階が体重を落とすフェーズから体重を維持するフェーズに順調に移行した場合には、健康的な体重である目標体重範囲を超えてさらに減量しようとする傾向がある。患者AAAAを例にとって説明すると、2015年4月3日の段階で、患者AAAAの体重履歴が目標体重範囲(63kg〜65kg)内となり、直近のAST、ALT及びCT値が適正範囲となったため、医学的に健康な状態に至り、体重を維持するフェーズに移行した。しかし、患者AAAAは肥満症になる前に自分の体重が60kgであったことがあるため、医師から設定された63〜65kgの目標範囲を超えて減量しようという気持ちになった。サーバ制御部601はステップ1706において受信された患者情報に基づいて、患者AAAAの体重、AST、ALT及びCT値が適正範囲内となったことを検出し、体重を維持するフェーズに適した療法ID=8を選択して実行する。すなわち、患者AAAAが認知する適正体重が、医師の設定した適正体重の下限値63kg未満であるか否かを検出し、誤った認知を行っている場合には、「あなたの適正体重は63〜65kgです。63kgより減量すると身体への負担が強く、むしろ不健康な状態です。」という指導情報を表示する。これにより、患者の肥満症に関連する事項についての誤った解釈を正し、この頃の患者が行いやすい誤った解釈に基づく肥満症治療を効果的に防止することができる。
【0104】
このように、本実施形態によれば、日々の患者の肥満症診療履歴を監視し、その都度適切な療法を実行することで、患者の状態にあった、きめ細やかな肥満症治療を行うことができる。
【0105】
また、例えば、患者の認知が変化したことを確認した後に、その認知の変化が起こった状態で行動療法を行うことで、行動療法の効果を高めることができる。
【0106】
例えば、ステップ1206において、患者の食欲衝動の原因として「4:知人による勧め」を選択した場合を例にとる。知人による勧めで飲食を行ってしまう肥満症患者は、勧められた食べ物を断ると、勧めた知人の気分を害するという誤った認知を行っている場合が多い。療法ID=2の認知行動療法を実行して、ステップ1604〜1610において、このような誤った認知を行っていることが確認された場合には、「食べ物の勧めを断られても気分を害する人はほとんどいません。むしろ応援してくれる場合が多いです。」というメッセージを提示し(ステップ1616)、患者の誤った解釈を正す。療法ID=9の療法実行の条件として、この認知行動療法(療法ID=2)を行ったことを療法リストに設定しておけば、その後の所定のタイミングで、療法ID=2が実行されたことを肥満症診療履歴情報から確認し、そのタイミングで療法ID=9を実行する。療法リストにおいて療法履歴に実行された療法の効果の項目を追加し、認知行動療法が実行されたことに加えて、前述の手順に従い認知が変化する効果が確認された場合に、その認知の変化に適した行動療法を実行することもできる。療法ID=2の認知行動療法が実行され、患者が、食べ物の勧めを断られても気分を害する人はほとんどいないということを理解した後に、ステップ1304で「具体的に食べ物を勧められたときの断り方を予め準備しておくこと」という行動療法のためのメッセージを提示する。これにより、正しい認知に基づいて、食べ物を勧められたときに上手に断って、相手に応援してもらえる環境を作ることができる。
【0107】
行動療法の効果は単独で行った場合には、その効果が限定的である場合があるが、本実施形態を用いて、認知行動療法による認知の変化が起こった後に、その認知の変化に適した行動療法を実行することでその効果を高めることができる。
【0108】
[第6の実施形態]
本実施形態における肥満症患者のためのシステムは、第1〜4の実施形態に従って肥満症治療のための療法を実行するための開始のタイミングを決定する手順と、第5の実施形態に従って開始タイミングを決定する手順との両方を実行する機能を備えたものである。第1〜4の実施形態と第5の実施形態は、肥満症治療のための療法を実行するための開始のタイミングの決定の手法が異なる。しかしながら、第1〜4及び第5の実施形態を組み合わせることで、これらのいずれの療法の開始タイミング決定処理も行うことができ、いずれかの開始タイミング決定処理によって決定されたタイミングで療法を実行できることは明らかである。その他の構成は、第1〜4及び第5の実施形態と同様である。また、あるタイミングで開始される療法は、例えば、認知行動療法のみであり、他のタイミングで実行される療法が行動療法のみであるというように、それぞれのタイミングで適切な療法が選択され、実行されてもよい。
【0109】
[第7の実施形態]
本実施形態においては、患者が患者側電子装置104において文章を入力し、サーバ102へ送信し、サーバ102の制御部601においてこれを構文解析処理等行うことによって、患者の回答を分析して取得し、正答情報と比較することにより、第1〜第6の実施形態と同様の情報処理を実行する。その他の構成は第1〜6の実施形態と同様である。
【0110】
以上に説明してきた各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。