特許第6862011号(P6862011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862011
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】穿孔具
(51)【国際特許分類】
   B23B 45/00 20060101AFI20210412BHJP
   B23B 39/16 20060101ALI20210412BHJP
   B26F 1/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B23B45/00 Z
   B23B39/16 Z
   B26F1/16
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-227667(P2019-227667)
(22)【出願日】2019年12月17日
(62)【分割の表示】特願2015-77890(P2015-77890)の分割
【原出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2020-40209(P2020-40209A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】野元 裕正
(72)【発明者】
【氏名】庄司 博之
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−039658(JP,A)
【文献】 特開2010−269386(JP,A)
【文献】 米国特許第5085543(US,A)
【文献】 実開昭61−105511(JP,U)
【文献】 実公昭53−050147(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 45/00
B23B 39/16
B26F 1/16
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行式の穿孔装置に用いられる穿孔具であって、
平行な異なるドリル軸芯周りに回転駆動可能な複数のドリル刃と、
前記各ドリル刃の基端部を支持する支持ユニット部と、
前記ドリル刃に先行して穿孔対象部に接触する接触部と、
前記穿孔対象部に対して押し付けて穿孔具本体のセット位置を決める位置決め突出部と、が設けられ、
前記支持ユニット部と前記接触部との間には、外周部に開口すると共に、前記位置決め突出部の当接先端部を外周側から見通せる見通し開口部が設けてある穿孔具。
【請求項2】
前記位置決め突出部は、円周方向に間隔をあけて並設されている前記各ドリル刃の配置領域の中心において、前記穿孔対象部側に突出するピン部で構成してある請求項1に記載の穿孔具。
【請求項3】
前記各ドリル刃が前記穿孔対象部に当接するタイミングに時間差をつける時間差付与機構が設けられ、
前記時間差付与機構は、前記支持ユニット部に支持されている前記各ドリル刃の先端部までの突出長さを異ならせることで、前記各ドリル刃の先端部が前記接触部を越えて前記穿孔対象部側に突出するタイミングに時間差がつくように構成されている請求項1又は2に記載の穿孔具。
【請求項4】
前記位置決め突出部による位置決め開始時に、前記ドリル刃が前記接触部を越えて前記穿孔対象部側に突出するのを抑制する突出抑制機構が設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の穿孔具。
【請求項5】
前記支持ユニット部と前記接触部とを、前記ドリル刃の軸芯方向に沿って近接離間可能にガイドするガイド機構が設けてある請求項1から4のいずれか1項に記載の穿孔具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行式の穿孔装置に用いられる穿孔具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の穿孔装置としては、例えば、コード式やバッテリ式の電気ドリルがあり、電気ドリルに取り付けられる穿孔具としては、電気ドリルのチャック部に着脱自在に構成されたドリル刃によって構成してあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−67006号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の穿孔具によれば、電気ドリルのチャック部にドリル刃を取り付けた状態で電気ドリルを回転駆動させるに伴って、ドリル刃がドリル軸芯周りに回転するから、ドリル刃の刃先を穿孔対象部に突き当てて進入させることで、穿孔することができる。
しかしながら、複数孔の穿孔を行う場合には、それぞれの位置毎に電気ドリルを位置合わせして穿孔を行うことになり、操作が煩雑なものとなり易い。
【0005】
そこで、このような煩雑さを回避するために、一つの電気ドリルで、一度に複数孔の穿孔ができるようにすることが考えられる。
つまり、一つの入力軸に入力される回転駆動力を、複数のドリル刃に分配できる分配機構を穿孔具に備えることで、電気ドリルの回転駆動力は、分配機構を介して各ドリル刃に分配されて伝わり、各ドリル刃を同時に回転させて複数の孔を一度に穿孔できるようになる。
【0006】
【0007】
【0008】
本発明の目的は、複数の孔をまとめて穿孔できる穿孔具において、位置合わせを行い易くする手段を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、携行式の穿孔装置に用いられる穿孔具であって、平行な異なるドリル軸芯周りに回転駆動可能な複数のドリル刃と、前記各ドリル刃の基端部を支持する支持ユニット部と、前記ドリル刃に先行して穿孔対象部に接触する接触部と、前記穿孔対象部に対して押し付けて穿孔具本体のセット位置を決める位置決め突出部と、が設けられ、前記支持ユニット部と前記接触部との間には、外周部に開口すると共に、前記位置決め突出部の当接先端部を外周側から見通せる見通し開口部が設けてあるところにある。
【0010】
本発明によれば、穿孔に先だって、ドリル刃より先行して接触部が穿孔対象部に接触するから、ドリル刃が先に接触するのに比べて姿勢が安定し易く、更には、不用意にドリル刃が穿孔対象部に接触するのを防止でき、より確実に穿孔操作を開始することができる。
また、位置決め突出部を、穿孔対象部の所定位置に押し付けるだけで、当該穿孔具を、穿孔対象部上の対応セット位置に正確に位置合わせでき、穿孔位置精度の向上を図ることができる。
更には、位置決め突出部を使用して穿孔具を位置決めする時には、見通し開口部を通して穿孔具の外周側から位置決め突出部の当接先端部による位置決め状態を目視確認でき、より簡単に且つ正確な位置に当該穿孔具をセットできる。
【0011】
【0012】
本発明においては、前記位置決め突出部は、円周方向に間隔をあけて並設されている前記各ドリル刃の配置領域の中心において、前記穿孔対象部側に突出するピン部で構成してあると好適である。
【0013】
本構成によれば、穿孔対象部の所定位置にピン部を押し付けて穿孔具のセット位置を確定するのに、各ドリル刃の配置領域の中心で位置合わせをすることができ、偏りのない状態で精度よくセットすることができる。
また、穿孔対象部が、例えば、軟らかい素材で構成してあったり、又は、窪みがあるような場合、前記ピン部が穿孔対象部に入り込み易いから、位置決め効果と共に、位置ずれ防止効果をも発揮することができる。
【0014】
【0015】
本発明においては、前記各ドリル刃が前記穿孔対象部に当接するタイミングに時間差をつける時間差付与機構が設けられ、前記時間差付与機構は、前記支持ユニット部に支持されている前記各ドリル刃の先端部までの突出長さを異ならせることで、前記各ドリル刃の先端部が前記接触部を越えて前記穿孔対象部側に突出するタイミングに時間差がつくように構成されていると好適である。
【0016】
本構成によれば、穿孔に伴って、各ドリル刃が穿孔対象部に当接するタイミングをずらすことができるようになり、穿孔対象部に対して、各ドリル刃の刃先が同時に当接しない状態で穿孔を開始することが可能となる。
従って、穿孔に伴って穿孔対象部からドリル刃が受ける駆動抵抗の作用タイミングも、各ドリル刃毎にずれることになり、穿孔装置への負荷が、穿孔の当初に集中的に作用するのを防止できる。
その結果、穿孔装置への負荷を抑えた状態で、複数の孔の穿孔を進めることができる。
特に、穿孔対象部が、薄板のように、穿孔の初期に一時的に駆動抵抗のピークが見られるような場合には、各ドリル刃の当接タイミングをずらすだけで、穿孔装置へのピークとなる負荷の作用タイミングもずれ、過負荷とならない状態ですべての穿孔を行うことが可能となる。
よって、穿孔装置への負荷を抑えた状態で、複数の孔をまとめて穿孔できる。
【0017】
また、時間差付与機構として、複雑な機構を備える必要が無く、各ドリル刃の先端部までの突出長さを異ならせるだけの単純な構造によって実現でき、コストアップを抑えることができる。
更には、時間差付与機構として構造が簡単であるから、メンテナンスの手間もかからず、しかも、各ドリル刃の突出長さが異ならせてある状況を、目視によってでも簡単に確認できるから、維持管理の手間を低減できる。
従って、イニシャルコストのみならず、ランニングコストやメンテナンスコストの低減も可能となり、経済性の高い穿孔具を提供できる。
【0018】
本発明においては、前記位置決め突出部による位置決め開始時に、前記ドリル刃が前記接触部を越えて前記穿孔対象部側に突出するのを抑制する突出抑制機構が設けられていると好適である。
【0019】
本構成によれば、突出抑制機構を設けてあることで、穿孔対象部への穿孔具の位置合わせ時に、不用意にドリル刃が穿孔対象部に接触するのを防止でき、より確実に、且つ、簡単にセットできる。
【0020】
本発明においては、前記支持ユニット部と前記接触部とを、前記ドリル刃の軸芯方向に沿って近接離間可能にガイドするガイド機構が設けてあると好適である。
【0021】
本構成によれば、接触部を穿孔対象部に接触させた状態で、ガイド機構を利用して、支持ユニット部をドリル軸芯方向に沿って近接させることができる。
従って、当該穿孔具の安定した姿勢をキープしたまま、各ドリル刃を、真直ぐに穿孔対象部に突出させて穿孔を行える。
その結果、穿孔操作者の技量の有無に拘らず、効率よく、且つ、精度よく穿孔できるようになる
【0022】
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】防水シート固定具の設置状況を示す一部切欠き斜視図である。
図2】防水シートの改修状況を示す断面図である。
図3】防水シートの改修状況を示す断面図である。
図4】穿孔アタッチメントのセット状況を示す断面図である。
図5】穿孔アタッチメントの斜視図である。
図6】接触部の平面図である。
図7】ドリル刃を示す側面図である。
図8】別実施形態の穿孔アタッチメントにおけるドリル刃を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の穿孔具の一実施形態品S(以後、単に「穿孔アタッチメント」という)を、電気ドリル1(穿孔装置の一例)のチャック部1aに取り付けて、板金製の防水シート固定具2(穿孔対象部の一例)に複数の孔3を穿孔している状況を示している。
【0025】
因みに、防水シート固定具2は、図1に示すような、円板形状の金属板で構成してあり、例えば、建物の屋上スラブ4の上に、横方向に間隔をあけて点在させて、円板中央部をネジ部材5で屋上スラブ4に固定してある。これらの各防水シート固定具2の上にわたって防水シート6が配設され、防水シート固定具2の上面に接着固定されることで、屋上防水層が形成されている。
【0026】
当該実施形態においては、屋上に設置されている防水層の改修工事において、当該穿孔アタッチメントSを使用して防水シート固定具2に穿孔作業を実施する工程を例に挙げて説明する。
屋上防水層の改修工事においては、例えば、新しい防水シート固定具を既存の防水層の上に配置し、ネジ部材5で直接に屋上スラブ4に固定することが実施されるが、この場合、ネジ部材5の打設に伴って屋上スラブ4から建物内に大きな振動や騒音が伝播される虞がある。
【0027】
そこで、静かな環境を維持しながら改修工事を進めるために、ここで説明する改修方法においては、屋上スラブ4への新たなネジ打ちをせずに、既に固定されている防水シート固定具2をそのまま再利用し、その上に、新しい防水シート固定具2Nを連結して、その新しい防水シート固定具2Nを使用して改修用の新しい防水シート6Nを敷設する改修方法を採用している。
【0028】
つまり、固定されている防水シート固定具Nに、防水シート6の上から当該穿孔アタッチメントSを装着した電気ドリル1で複数の孔3をあけた後(図4参照)、防水シート固定具Nの上に新しい防水シート固定具2Nを配置すると共に(図2参照)、孔3を使用して両固定具2,2Nどうしを一体連結するものである。そして、新しい防水シート6Nを、新しい各防水シート固定具2Nにわたって接着固定することで、防水層の改修を行うものである(図3参照)。
【0029】
当該穿孔アタッチメントSによって穿孔した孔3は、上述のように新しい防水シート固定具2Nを連結するための孔3としての用途の他に、例えば、防水シート固定具2の引き抜き耐力を確認するために、引抜試験装置(不図示)を取り付ける為にも使用することができる。
【0030】
尚、防水シート固定具2は、図2図3に示すように、中央部2aと外周縁部2cとが屋上スラブ4の表面に当接し、中央部2aと外周縁部2cとの間の平面部2bは、屋上スラブ4の表面より上方に離間した膨出形状となっている。当該穿孔アタッチメントSを使用した穿孔は、薄板状の平面部2bを対象に実施される。
当該実施形態においては、孔3は、中央部2aを中心とする円の周方向に等間隔で三箇所設けてある。
穿孔した防水シート固定具2と、新しい防水シート固定具2Nとの連結は、双方に設けられた孔3に、例えば、リベットやネジ部材等の締結具を挿通して実施することができる。
【0031】
次に、電気ドリル1と穿孔アタッチメントSについて説明する。
電気ドリル1は、図4に示すように、携行式の汎用品を使用することができる。
電源供給は、コード式やバッテリ式でもよく、操作スイッチ1bによって内蔵の駆動モータ(不図示)をオン・オフ操作することができる。
また、駆動モータの回転駆動出力は、穿孔アタッチメントSの入力軸7を一体的に嵌合連結自在なチャック部1aを通じて行われる。
【0032】
穿孔アタッチメントSは、図5に示すように、一本の入力軸7と3本のドリル刃8とを従動回転自在に備えた支持ユニット部9と、防水シート固定具2の上に接地させる接触部10とを、穿孔方向(ドリル軸芯Xd方向)に沿って近接離間自在な状態に備えて構成してある。
【0033】
支持ユニット部9は、有底筒状のケーシング本体9Aと、蓋体9Bと、を備えた平面視において円形のブロック体で構成してあり、両者は、連結ボルト9Cによって一体連結されている。内部には、図には示さないが、入力軸7に入力された回転駆動力を、3本のドリル刃8に同一方向の回転に分配する分配機構が納められている。また、連結ボルト9Cを取り外すことで、内部空間を開口させることができ、分配機構等のメンテナンスを適宜実施することができる。
【0034】
尚、入力軸7は、円形の支持ユニット部9の中心軸芯X上に設けられている。
また、3本のドリル刃8は、中心軸芯Xを中心とする円の周方向に等間隔に、且つ、ドリル軸芯Xdが中心軸芯Xに平行となる状態に設けられている(図6参照)。
入力軸7とドリル刃8との中心軸芯X方向での位置関係は、ドリル刃8は、支持ユニット部9の前記接触部10側に突出する状態で、入力軸7は、支持ユニット部9の前記接触部10側とは反対側に突出する状態に配置されている(図5参照)。
【0035】
3本のドリル刃8は、図4に示すように、支持ユニット部9からドリル刃8の先端部までの突出長さL0を異ならせてある。従って、防水シート固定具2の穿孔時には、各ドリル刃8の先端部が接触部10を越えて防水シート固定具2側に突出するタイミングに時間差がつく。
その結果、穿孔時にドリル刃8に作用する最大トルクのタイミングもずれ、駆動モータに一度に負荷が集中するのを防止できる。
【0036】
因みに、ドリル刃8は、図7に示すように、基端側のホルダー部8Aと、ホルダー部8Aに挿入固定される刃部8Bとを備えて構成してある。当該実施形態においては、各刃部8Bは、全て長さの同一のものを使用し、ホルダー部8Aの飲み込み深さをそれぞれ異ならせることで、各ドリル刃8の突出長さL0が異なるように構成してある。
【0037】
このように、突出長さを異ならせて設けられた各ドリル刃8によって時間差付与機構Tが構成されている。
尚、各刃部8Bは、長さの同一のものを使用しているので、三本のドリル刃8の内の何れにも使用でき、部品調達やメンテナンスをより簡単に行える。
【0038】
また、支持ユニット部9には、図4に示すように、中心軸芯X上での前記接触部10側に、穿孔アタッチメントSを防水シート固定具2上にセットする際に、防水シート固定具2の中央部2aに押し付けてセット位置を決める位置決め突出部11が取り付けられている。
【0039】
位置決め突出部11は、先端の当接先端部11dが尖ったピン部11aと、支持ユニット部9に固定されると共に、ピン部11aを中心軸芯Xに沿った所定のスライド範囲にわたってスライド自在に支持する支持部11bと、ピン部11aと支持部11bとの間に納められて、ピン部11aを突出方向に付勢するスプリング11c(突出抑制機構の一例)とを備えている。
【0040】
位置決め突出部11の最大突出長さ寸法は、支持ユニット部9に対して最も離間した状態の接触部10よりも、ピン部11aの当接先端部11dが更に突出側に位置するように設定されている。そして、ピン部11aにはスプリング11cの付勢力が作用しているから、外力が作用しない状態においては、位置決め突出部11は、最大突出長さを保持している。
【0041】
防水シート固定具2の上に穿孔アタッチメントSをセットする際には、ピン部11aが真っ先に防水シート固定具2に当接する。そして、防水シート固定具2の中央部にピン部11aが対向するように穿孔アタッチメントSを位置決めして押し付けることで、押し付け力がスプリング11cの弾性付勢力を上回れば、スプリング11cが収縮方向に弾性変形するに伴ってピン部11aが支持部11b側に引退し、穿孔アタッチメントS全体を、防水シート固定具2側へ近接させることができる。
【0042】
穿孔アタッチメントSを防水シート固定具2側に押し続けるに伴って、接触部10が防水シート固定具2に当接し、引き続き、支持ユニット部9に取り付けられているドリル刃8が当接し、穿孔を開始することができる。
【0043】
このように、スプリング11cを設けてあることで、位置決め突出部11による位置決め開始時に、ドリル刃8が接触部10を越えて防水シート固定具2側に不用意に突出するのを抑制することができる。スプリング11cによって突出抑制機構が構成されている。
【0044】
前記接触部10は、図4に示すように、支持ユニット部9と同じ外径寸法のリング状部材で形成してある。
また、接触部10には、支持ユニット部9に向けて突出する状態に、円柱状のガイド10A(ガイド機構に相当)が一体に設けてある。ガイド10Aは、リング周方向に等間隔で3本設けてある(図6参照)。
【0045】
一方、各ガイド10Aが対応する支持ユニット部9の対応部分には、ガイド10Aをスライド自在に挿通させる挿通孔9Dがそれぞれ形成してある。従って、挿通孔9Dに挿通させたガイド10Aがスライドガイドとなって、支持ユニット部9と接触部10とを、ドリル軸芯Xd方向に沿って近接離間させることができる。
【0046】
尚、ガイド10Aと支持ユニット部9の嵌合部分には、支持ユニット部9と接触部10との近接側の終端位置規制が施されており、接触部10から突出する各ドリル刃8の最大突出寸法L1が、防水シート固定具2の厚み寸法(平面部2bの上面と屋上スラブ4の上面との離間距離と同じ寸法)L2内に納まるように形成されている。従って、ドリル刃8の先端部が屋上スラブ4に当接するのを防止している(図7参照)。
【0047】
また、支持ユニット部9から突出する各ドリル刃8が対応する接触部10の対応部には、ドリル外径より少し大径のドリル挿通孔10aがそれぞれ設けてある。
【0048】
また、接触部10の中央部は、空間として抜けている。
そして、接触部10と支持ユニット部9との間は、図4図5に示すように、外周部に開口させてあるから、この開口部12(見通し開口部に相当)を通して、外周側から位置決め突出部11を目視確認でき、ピン部11aによる防水シート固定具2への位置決めの際、ピン部11aの当接先端部11dを見ながら作業でき、より確実に位置決めを行うことができる。
【0049】
当該実施形態で説明した穿孔アタッチメントSによれば、一般的な電気ドリル1に簡単に着脱して使用でき、しかも、防水シート固定具2に対して、各ドリル刃8の刃先が当接するタイミングをずらした状態で、順次、穿孔を開始でき、電気ドリル1への負荷を抑えながら、複数の孔をまとめて穿孔できる。
【0050】
また、防水シート固定具2対する位置決め時には、不用意にドリル刃8が防水シート固定具2に接触するのを防止でき、その後の穿孔操作を、より確実に開始することができる。
しかも、上述のような作用を叶えられるにも拘らず、構造や、その使い方は、何れも極めて簡単であるから、良好な経済性と操作性とを兼ね備えさせることができる。
【0051】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0052】
〈1〉 穿孔具を取り付ける携行式の穿孔装置は、先の実施形態で説明した電気ドリルに限るものではない。例えば、電気駆動に替えて、燃料駆動によるものであってもよい。
また、電気駆動の場合であっても、電源供給は、コード式やバッテリ式の何れのものであってもよい。
【0053】
〈2〉 穿孔対象部2は、先の実施形態で説明した防水シート固定具に限るものではなく、例えば、折板や瓦棒等の金属屋根等であってもよく、それらを含めて穿孔対象部2と総称する。
【0054】
〈3〉 ドリル刃8は、先の実施形態では、3本設けてある例を説明したが、3本に限るものではなく、3本以外の複数本のドリル刃8を備えてあってもよい。
また、各ドリル刃8の回転方向は、全て同じ方向であることに限らず、異ならせてあってもよい。
【0055】
〈4〉 支持ユニット部9、及び、接触部10、及び、位置決め突出部11のそれぞれは、先の実施形態で説明した構造や形状に限るものではなく、適宜変更することができる。
【0056】
〈5〉 時間差付与機構Tは、先の実施形態で説明したように、各ドリル刃8における刃部8Bの長さは一定で、各ホルダー部8Aの飲み込み深さをそれぞれ異ならせることによって突出長さL0を異ならせる構成に限らず、例えば、図8に示すように、各ホルダー部8Aの飲み込み深さは一定で、各刃部8Bの長さをそれぞれ異ならせることによって各ドリル刃8の突出長さL0を異ならせるように構成してあってもよい。
【0057】
また、図には示さないが、これらの実施形態に替えて、各ホルダー部8Aの飲み込み深さも、各刃部8Bの長さも一定に形成し、ホルダー部8Aへの刃部8Bの進入度をそれぞれ異ならせることで各ドリル刃8の突出長さL0を異ならせるように構成してあってもよい。
【0058】
また、異なる別実施形態としては、例えば、各ドリル刃8を支持ユニット部9から個別に突出させる機構を設け、その突出させるタイミングを異ならせるように構成してあってもよい。
【0059】
〈6〉 支持ユニット部9と接触部10との近接側の終端位置規制を図る構成は、先の実施形態で説明したようにガイド10Aと支持ユニット部9との嵌合部分に設けることに限らず、例えば、ガイド10Aの露出している外周部にストッパを取り付け、支持ユニット部9と接触部10とが近接するに伴って支持ユニット部9の下面がストッパに当接することで位置規制を図れるように構成してあってもよい。
【0060】
また、その場合、ガイド10Aに対するストッパの固定位置をガイド10Aの長手方向に沿った任意の位置に変更調整できる機構が設けてあれば、接触部10から突出する各ドリル刃8の最大突出寸法L1(図7参照)を、変更調整することができる。従って、穿孔対象部2の状況の変化に合わせて、ドリル刃8の最大突出寸法L1を調整し、ドリル刃8の先端部が当接すると破損しかねない屋上スラブ4等の固いものに、ドリル刃8が直接接触するのを未然に防止することができる。
【0061】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
当該穿孔具は、携行式の穿孔装置であれば、電気ドリル以外の穿孔装置であっても取り付けて利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 電気ドリル(穿孔装置の一例)
2 防水シート固定具(穿孔対象部の一例)
8 ドリル刃
9 支持ユニット部
10 接触部
10A ガイド(ガイド機構に相当)
11 位置決め突出部
11a ピン部
11c スプリング(突出抑制機構の一例)
11d 当接先端部
12 開口部(見通し開口部に相当)
L0 突出長さ
T 時間差付与機構
Xd ドリル軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8