(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つ以上のロータ電極と1つ以上のロータスペーサとが交互に積層されたロータ電極ユニットと、1つ以上のステータ電極と1つ以上のステータスペーサとが交互に積層されたステータ電極ユニットと、からなる回転電極ユニットを備え、前記回転電極ユニットは、前記ロータ電極が送電電極である場合には、前記ステータ電極が受電電極であり、前記ロータ電極が受電電極である場合には、前記ステータ電極が送電電極であり、前記ロータ電極ユニットと前記ステータ電極ユニットとが入れ子状に組み合わせて相互に回転可能であり、前記ロータ電極のうち少なくとも外周部は、磁性体からなる部材で構成される、電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送システムの製造方法であって、
前記ステータスペーサに磁石を配置して、前記ロータ電極の外周部を磁力で吸引する工程と、
前記ロータ電極と前記ステータ電極との間に形成された隙間に流体を封止する工程と、
前記ステータスペーサに配置された前記磁石を取り外す工程と、
を含む、
電力伝送システムの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来型の回転型コンデンサとして、エアバリコンの外観を示す図である。
【
図2】従来型の回転型コンデンサとして、ポリバリコンの外観を示す図である。
【
図3A】回転体へ電力を送る手法として従来から用いられているものを示す図である。
【
図3B】回転体へ電力を送る手法として従来から用いられているものを示す図である。
【
図4】電界結合方式による非接触給電の基本的な回路図である。
【
図5】ステータ電極ユニットと、ロータ電極ユニットとからなる回転電極ユニットの構造を示す平面図及び側面断面図である。
【
図6A】ロータ電極ユニットを構成するロータスペーサとロータ電極とを結合させる前の状態を示す図である。
【
図6B】ロータスペーサとロータ電極とを結合させた後の状態を示す図である。
【
図7A】ロータ電極ユニットとステータスペーサとを組み合わせる前の状態を示す図である。
【
図7B】ロータ電極ユニットとステータスペーサとを組み合わせた後の状態を示す図である。
【
図8A】ロータ電極ユニットとステータスペーサとの組み合わせの上下に、ステータ電極を張り付けて結合させる前の状態を示す図である。
【
図8B】ロータ電極ユニットとステータスペーサを組み合わせた物の上下に、ステータ電極を張り付けて結合させた後の状態を示す図である。
【
図9】2つの回転電極ユニットを連結させて、回転体としてのシャフトに電力を伝送させる場合を示す斜視図である。
【
図10A】
図6A乃至
図8Bに示す手法により製造された回転電極ユニットの問題点を示す断面拡大図である。
【
図10B】
図6A乃至
図8Bに示す手法により製造された回転電極ユニットの問題点を示す断面拡大図である。
【
図11A】ステータスペーサに配置した磁石の磁力を利用してロータ電極の端部を吸引するとともに、ロータスペーサに配置した磁石の磁力を利用してステータ電極の端部を吸引する、双方向吸引方式を示す図である。
【
図11B】ステータスペーサに配置した磁石の磁力を利用してロータ電極の端部のみを吸引する片方向吸引方式を示す図である。
【
図12A】ロータ電極と、ステータ電極とを極薄の強磁性体で構成させ、ロータスペーサ及びステータスペーサも強磁性体で構成させ、ステータ側とロータ側との間に磁路が形成されるように、極性を考慮して磁石を配置した場合を示す図である。
【
図12B】ロータ側全体がオフセット(Offset)するような事態が生じた場合を示す図である。
【
図13A】強磁性体からなるロータ電極の周囲に特異な形の強磁性体切片VPを配置した場合を示す全体断面図である。
【
図14】外周部のみが強磁性体で構成され、他の部分は非磁性体で構成されたロータ電極の周囲に、磁石を配置した場合を示す平面拡大図である。
【
図15】多層電極に対応した薄い強磁性体切片をステータスペーサに差し込み、最後に磁石を取り付けた場合を示す平面拡大図である。
【
図16】ステータスペーサに予め強磁性体切片を張り付け、それを積層してゆく手法を示す平面拡大図である。
【
図17A】すべて非磁性体で構成させた場合を示す図である。
【
図17B】すべて強磁性体で構成させた場合を示す図である。
【
図17C】内側の端部のみが強磁性体で構成され、他の部分は非磁性体で構成させた場合を示す図である。
【
図17D】
図13A及び
図13Bの例と同様に、ロータ電極の外周部のみを強磁性体で構成させ、他の部分を非磁性体で構成させた場合を示す図である。
【
図18A】磁化方向の異なる2つの磁石を対にして使用する吸引磁石ユニットと、その配列手法を示す図である。
【
図18B】固定穴が設けられた吸引磁石ユニットを用いた配列手法を示す図である。
【
図18C】吸引磁石ユニットと、その配列方法を示すイメージ図である。
【
図19B】磁石ベルトを湾曲させた状態を示す平面図である。
【
図19C】磁石ベルトを積層させて、ベルト押さえで固定させた状態を示す断面拡大図である。
【
図19D】磁石ベルトを積層させて、ベルト押さえで固定させたときに、ベルト押さえがない部分の状態を示す断面拡大図である。
【
図20A】磁石の端面形状を示す断面拡大図である。
【
図20B】磁石の端面形状を示す断面拡大図である。
【
図21A】電極間に流体を含侵させた状態を示す断面拡大図である。
【
図21B】電極間に流体を含侵させた状態を示す断面拡大図である。
【
図21C】電極間に流体を含侵させた状態を示す断面拡大図である。
【
図22A】熱交換器の熱交換機能を持たせた回転電極ユニットの例を示す断面拡大図である。
【
図22B】熱交換器の熱交換機能を持たせた回転電極ユニットの例を示す断面拡大図である。
【
図22C】熱交換器の熱交換機能を持たせた回転電極ユニットの例を示す断面拡大図である。
【
図23】シリンダー型電極の場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、従来型の回転型コンデンサとして、エアバリコンの外観を示す図である。
図2は、従来型の回転型コンデンサとして、ポリバリコンの外観を示す図である。
図3A及び
図3Bは、回転体へ電力を送る手法として従来から用いられているものを示す図である。
【0015】
(基本構造)
図1及び
図2に示すこれら従来型の回転型コンデンサは、ラジオ等の共振回路の共振周波数を可変するために用いられている。このため、手動で回し、キャパシタンスを変化させることを目的としている。おおよその容量は、両者ともに、数百pFの容量を有している。即ち、これら従来型の回転型コンデンサは、いずれも信号の同調等に用いられるものであり、電力の伝送を行うものではない。例えば、
図1に示すエアバリコンは、機械的精度でステータ側とロータ側電極の隙間を維持しているため、隙間を狭くして大容量化するには限界がある。また、
図2に示すポリバリコンは、フィルムを電極間に挟んで電極間隔を維持している。このため、小型に製作することが可能になる。ただし、高速回転用途には向かない。これは、フィルムと電極間の摩擦劣化により性能が維持できないからである。
また、回転体へ電力を送る手法として、1900年代に発案された、ステータ側円盤電極とロータ側円盤電極とを多層に配置して回転可能な接合容量を形成する手法がある。しかしながら、この手法を実用化させるためには、実用的なキャパシタンスを完全非接触の状態で実現させなければならないという課題が伴う。この課題を解決するための手法としては、
図3A及び
図3Bに示すウィスコンシン大学により提案されたものがある。ただし、
図3A及び
図3Bに示す手法では、電極板間に空気を流して間隔を形成させる手法を採用しているため、外部にポンプを設けなければならないとともに、稼働するためのエネルギーを確保しなければならない。このため、実用化のために要するコストが増大してしまう。
【0016】
図4は、電界結合方式による非接触給電の基本的な回路図である。
【0017】
図4に示すように、送電部1側の高周波電源Vfから出力された電力を、2つの接合容量Ccを介して、受電部2側の負荷Rに送電する。ここで、接合容量Ccは、金属板の対であるため、一方の電極を他方の電極に対してスライドさせたり、回転させたりすることにより、リニア系または回転系への電力供給が可能になる。なお、本発明は、回転系への電力供給であるため、回転させることができる接合容量Ccについて説明する。
【0018】
図5は、ステータ電極ユニット11と、ロータ電極ユニット21とからなる回転電極ユニット100の構造を示す平面図及び側面断面図である。
【0019】
図5に示すように、回転電極ユニット100は、1つの接合容量Ccの一方をステータ電極ユニット11とし、他方をロータ電極ユニット21とするとともに、複数のステータ電極ユニット11と複数のロータ電極ユニット21とからなる多層構造の電極ユニットとなっている。多層構造とすることにより、大きな接合容量Ccを確保することができる。具体的には、5層のドーナツ状のステータ電極ユニット11の間に、4枚のロータ電極ユニット21がそれぞれ挟み込まれた構造となっており、ステータ電極ユニット11が固定され、ロータ電極ユニット21が回転する。なお、
図5には、説明を簡略化させるために軸受やカバー等は記載されておらず、電極のみが記載されている。
【0020】
図6A及び
図6Bは、回転電極ユニットの基本体構造を示す斜視図である。
【0021】
図6Aは、ロータ電極ユニット21を構成するロータスペーサ211とロータ電極212とを結合させる前の状態を示す図である。
図6Bは、ロータスペーサ211とロータ電極212とを結合させた後の状態を示す図である。
即ち、
図3A及び
図3Bに示すように、ロータ電極212となるリング状の極薄金属板に対して、ロータスペーサ211となる金属リングを同心円状に固定することによりロータ電極ユニット21となる。
【0022】
図7A及び
図7Bは、ロータ電極ユニット21の周囲にステータスペーサ111を配置した状態を示す斜視図である。
【0023】
図7Aは、ロータ電極ユニット21とステータスペーサ111とを組み合わせる前の状態を示す図である。
図7Bは、ロータ電極ユニット21とステータスペーサ111とを組み合わせた後の状態を示す図である。
即ち、
図7A及び
図7Bに示すように、ロータ電極ユニット21の周囲にステータスペーサ111を配置する。
【0024】
図8A及び
図8Bは、ロータ電極ユニット21とステータスペーサ111との組み合わせの上下に、ステータ電極112を張り付けて結合させることにより、回転電極ユニット100とした場合を示す斜視図である。
【0025】
図8Aは、ロータ電極ユニット21とステータスペーサ111との組み合わせの上下に、ステータ電極112を張り付けて結合させる前の状態を示す図である。
図8Bは、ロータ電極ユニット21とステータスペーサ111を組み合わせた物の上下に、ステータ電極112を張り付けて結合させた後の状態を示す図である。即ち、
図8Bに示すように、ロータ電極ユニット21とステータスペーサ111との組み合わせの上下に、ステータ電極112を張り付けて結合させることにより、回転電極ユニット100となる。
なお、
図6A乃至
図8Bに示す例では、説明の都合上、ユニット毎に製作しているが、製造過程では、これら部品を積層し、上下方向に圧接した後にレーザー溶接等で端部を溶接することにより一体化させる。さらに、
図8A及び
図8Bに示す例では、1枚のロータ電極ユニット21を2枚のステータ電極で上下から挟む構造となっているが、これらを多層に積層したものが回転電極ユニット100である。以上のような手法により軽量かつ薄型の回転電極ユニット100を製造することができる。
【0026】
本実施形態における電力伝送システムは、上述した在来型の回転型コンデンサを根本的に改良したものであり、何回転でも高速回転可能な回転型電極によって接合容量Ccを形成させる。また、電力伝送用の回転電極として接合容量Ccを増大させることができる。接合容量Ccを増大させることができると、所定の電力を送電するにあたり、インバータの周波数や送電電圧を低い値に設定することが可能になる。逆に言えば、大きな電力を送電することを目的としたとき、極めて高い周波数のインバータ等を必要とせず、現行の周波数のインバータを使用することができるため、コストを低減することができる。また、送電電圧を低く設定することもできる。
以下、本実施形態の電力伝送システムの詳細について説明する。
【0027】
図9は、2つの回転電極ユニット100を連結させて、回転体としてのシャフト200に電力を伝送させる場合を示す斜視図である。
【0028】
回転電極ユニット100を用いて
図4の回路を作成するためには、
図9に示すように、回転電極ユニット100を2セット用意する必要がある。
2つの回転電極ユニット100を平行かつ同心円状に配置し、絶縁性材料300を用いて、回転電極ユニット100を、回転体としてのシャフト200に結合させる。個々の回転電極ユニット100からシャフト200上の負荷Rに対して配線する。その一方で、2つのステータ電極ユニット11の間に、高周波電源Vfによる高周波電圧を印可する。これにより、ステータ電極ユニット11側からロータ電極ユニット21側に対し送電することが可能となる。
これに対して、ロータ電極ユニット21側で得られる電力をステータ電極ユニット11側に送電するためには、高周波電源Vfと負荷Rとの位置関係を逆にすればよい。
【0029】
(回転型電極の問題点)
次に、
図10A及び
図10Bを参照して、上述した手法により製造された回転電極ユニット100における問題点について説明する。
図10A及び
図10Bは、
図6A乃至
図8Bに示す手法により製造された回転電極ユニット100の問題点を示す断面拡大図である。
【0030】
回転電極ユニット100の接合容量Ccを大きくするためには、電極対を形成しているステータ電極112とロータ電極212とのそれぞれの半径を長くしたり、ステータ電極122とロータ電極212との間の距離(以下、「電極間隔」と呼ぶ)が狭くなるように両者を接近させたりする手法がある。
具体的には、
図10Aに示すように、ステータ電極112とロータ電極212とが対向する部分の長さrを長くしたり、ステータ電極112間の距離dを狭くしたりする手法が考えられる。
例えば、ステータ電極112間の距離dを0.5mm、ステータ電極112の半径を150mm、ロータスペーサ211の半径を50mmとすると、ステータ電極112とロータ電極212とが対向する部分の長さrは、約100mmになる。この場合、ロータ電極212の厚さが0.1mmとすると、ロータ電極212の上下の電極間隔は、それぞれ0.2mmとなる。
【0031】
しかしながら、このような装置を製作するためには、機械的に高い精度が求められるため、多大なコストを要することになる。特に、ステータ電極112とロータ電極212とが対向している部分の長さrを長くする場合には、狭い電極間距離の中央付近にロータ電極212を配置する必要があるため、技術的に極めて高い精度が要求されることとなる。このため、製造コストが上がり、維持管理も容易ではなくなる。さらに、使用時の経年変化、温度による金属板の湾曲等を考慮すると、非接触状態を維持することは困難である。
なお、ステータ電極112とロータ電極212とが対向している部分の長さrを長くした場合であっても、対向するステータ電極112間の距離dが大きくなってしまうのであれば、結果的に接合容量Ccの増大は望めなくなる。
【0032】
さらに、
図10Aに示すように、ロータ電極212は、中心部のみで保持されているため、重力Gの影響で外周部に垂れ下がりDが生じてしまう。一方、ステータ電極112は、周囲が固定されているため、垂れ下がりDの度合はロータ電極212よりは少ないが、重力Gの影響で僅かに外周部に垂れ下がりDが生じてしまう。
【0033】
この問題に対しては、これら電極(ロータ電極212及びステータ電極112)の厚さを厚くすることで、垂れ下がりの度合を小さくすることもできる。例えば、電極を剛体の厚板で製作することも可能である。しかしながら、重量が増してしまうし、コストもかかってしまう。また、砂粒が混入すれば、電極を傷つけることにもつながる。
また、
図10Aに示すように、電極同士が(即ち、ロータ電極212とステータ電極112とが)接触する部分Tがあると、ショートしてしまう。なお、ショートを防ぐために、電極に絶縁層をコーティングしたとしても、長い時間電極を回転させ続けていると、いずれはコーティングが剥がれてしまう。このため、電極同士が接触してショートしてしまう。ショートすれば、特定の部位に大電流が流れ、電極が破損してしまう。また、ショートする直前には放電して電極が解けることもあり得る。これにより、コンデンサとしての機能が果たせなくなる。
【0034】
このような問題を解消するための手法として、
図10Bに示すように、電極間に流体Fを流す手法が考えられる。流体Fには、水やオイルなどの液体、空気やガスなどの気体が含まれる。
しかしながら、この手法を用いた場合、次の(1)乃至(4)の問題が生ずる。即ち、(1)流体Fを流すためにポンプが必要になるため、容積及びコストが増大してしまう。(2)流体を循環させるための帰還路を周辺に作る必要があるため、システムの容積が大きくなってしまう。(3)電極板の積層数が増大するに従い、流体を流す為の抵抗が増大するため、外部にポンプを用意する必要がある。しかし、ポンプ圧を高めると、その圧力でステータ電極112に膨らみSが生じてしまう。膨らみSを防ぐためには最外殻のステータ電極112を厚くして強度を上げる必要がある。つまり、装置が大型化してしまう。
(4)流体に粘性がある場合には、ロータの回転トルクが増大してしまう。
【0035】
(問題点を解決するための具体的手法)
次に、
図11A及び
図11Bを参照して、上述の問題を解決するための手法について説明する。
図11A及び
図11Bは、ステータ電極112及びロータ電極212のそれぞれの端部の先に、磁石Mを配置した状態を示す断面拡大図である。
【0036】
図11Aは、ステータスペーサ111に配置した磁石Mの磁力を利用してロータ電極212の端部を吸引するとともに、ロータスペーサ211に配置した磁石Mの磁力を利用してステータ電極112の端部を吸引する、双方向吸引方式を示す図である。
図11Bは、ステータスペーサ111に配置した磁石Mの磁力を利用してロータ電極212の端部のみを吸引する片方向吸引方式を示す図である。
図11A及び
図11Bに示すように、電極の端部を磁石Mで引っ張ることで、重力Gの影響による電極の垂れ下がりDの問題を解決することができる。なお、電極全体を強磁性体で構成させてもよいし、電極の外周部のみを強磁性体で構成させて、他の部分は非磁性体で構成させてもよい。また、磁石Mは、永久磁石でもよいし、電気磁石でもよい。永久磁石と電気磁石とを組み合わせてもよい。なお、強磁性体として何を採用するかは特に限定されず、鉄、コバルト、ニッケル等を採用することができる。
【0037】
図12A及び
図12Bは、ステータ電極の周囲、及びロータ電極212の周囲に磁石Mを配置する場合における他の例を示す断面拡大図である。
【0038】
図12Aは、ロータ電極212と、ステータ電極112とを極薄の強磁性体で構成させ、ロータスペーサ211及びステータスペーサ111も強磁性体で構成させ、ステータ側とロータ側との間に磁路が形成されるように、極性を考慮して磁石Mを配置した場合を示す図である。ロータスペーサ211側に配置された磁石Mのうち、ステータ電極112に対向する面とは反対側の面に強磁性体Vが配置されている。また同様に、ステータスペーサ111側に配置された磁石Mのうち、ロータ電極212に対向する面とは反対側の面に強磁性体Vが配置されている。このように、電極を引っ張る磁石Mの面とは反対側の面に強磁性体Vを配置することは、磁気回路を構成する点で有効となる。この点については、後述する
図12Bに示す例においても同様である。
【0039】
図12Bは、ロータ側全体がオフセット(Offset)するような事態が生じた場合を示す図である。このような場合、ステータ電極112も極薄金属で構成されているため、電極同士が接触しないようにすることができる。ただし、ステータ電極112は、容易に変形しない構成となっているため、弾性変形の範囲を超える場合には、より大きな弾性変形が可能となるように、ステータ電極112に切れ目や折り目(図示なし)を予め入れておいてもよい。
なお、
図12A及び
図12Bに示す例の場合、ロータ電極212及びステータ電極112が強磁性体であることが必要となるが、電極に極めて薄い金属を用いる場合には、磁気抵抗が大きくなるため、磁路を考えることができない。このため、磁石Mの極性はステータ側とロータ側とで一致させる必要はない。さらに、ステータ内、ロータ内でも極性を考慮する必要はない。
【0041】
図13Aは、強磁性体からなるロータ電極212の周囲に特異な形の強磁性体切片VPを配置した場合を示す全体断面図である。
図13Bは、
図13Aに示す全体断面図の右半分を拡大した図である。
図12A及び
図12Bに示すように、強磁性体からなるステータ電極112及びロータ電極212のそれぞれの周囲に配置する磁石M自体を特異な形(ロータ電極212に対向する面の中央部に窪みを有する形)に加工し、さらに着磁させることも可能である。しかしながら、この場合、コストがかかるとともに、隣接する磁石Mとの間で反発力が生じ、磁石Mを配置することが困難になる。このため、
図13A及び
図13Bに示すように、鉄等を用いて特異な形(ロータ電極212に対向する面の中央部に窪みを有する形)に製作した強磁性体切片VPを、ロータ電極212の周辺に配置する。この場合、強磁性体切片VPは、当初は磁化されていないため、配置作業が容易になる。また、電極を引っ張る磁石Mの面とは反対側の面に強磁性体Vが配置されているため、磁気回路を構成する点で有効となる。
【0042】
次に、
図14を参照して、ロータ電極212の周囲に磁石Mを配置する場合の具体例について説明する。
図14は、外周部222のみが強磁性体で構成され、他の部分は非磁性体で構成されたロータ電極212の周囲に、磁石Mを配置した場合を示す平面拡大図である。
【0043】
図14に示すように、ステータスペーサ111には、強磁性体で構成されたサポート121が付けられており、このサポート121に磁石Mの一部が埋め込まれるようにして固定されている。また、磁石Mの向きは、隣接する磁石Mと逆極性となるように配置されており、ロータ電極212と磁石Mとは近接しているが接触はしていない。これにより、
図14に示すような磁束Mfが形成された、強い吸引力が得られる磁気回路が構成される。即ち、磁石Mから出た磁界は、強磁性体で構成された外周部222を通って、隣接する磁石Mに入って行く。このようにして、短い磁路を形成させることで、吸引力を増大させることができる。なお、上述したように、ロータ電極212の厚さは薄く構成されているため(例えば0.1mm)、磁場を受けつつ回転するが、渦電流が極めて少ない構造になっているため、渦電流による負トルク発生は極めて小さい。
【0044】
ここで、
図14の例において、ロータ電極212は、全体が強磁性体で構成されておらず、外周部222のみが強磁性体となっている。これは、以下の理由による。即ち、磁石Mにロータ電極212の端部を吸引してもらうためには、強磁性体である必要があるが、電極として動作する場合には、非磁性体である方が好ましいからである。具体的には、強磁性体は、スキンデプスが薄く、皮膜部しか電流が流れず、抵抗が増大してしまう。これを防止するためには、外周部222以外の部分を非磁性体とすることが好ましいからである。
【0045】
図15は、多層電極に対応した薄い強磁性体切片VPをステータスペーサ111に差し込み、最後に磁石Mを取り付けた場合を示す平面拡大図である。
【0046】
ロータ側は、点CRを中心に矢印の方向に回転する。
図15に示すような構成とすることで、ロータ電極212を吸引する力を発揮させることができる。
ここで、磁石Mの前(ロータ電極212側)に強磁性体切片VPを配置した場合、磁石Mの吸引力が低下することがあるが、強磁性体切片VPは磁石Mよりも加工がし易い。例えば、磁石Mを薄く加工するには限界があるが、強磁性体切片VPであれば容易に薄く加工することができる。このように、磁石Mの前(ロータ電極212側)に強磁性体切片VPを配置する場合と、配置しない場合とでは、吸引力の確保、加工のし易さといった面でそれぞれメリット、デメリットがある。このため、用途に応じていずれかを選択することができる。
【0047】
図16は、ステータスペーサ111に予め強磁性体切片VPを張り付け、それを積層してゆく手法を示す平面拡大図である。
【0048】
図16に示すように、強磁性体切片VPを張り付けたステータスペーサ111を積層し、レーザー溶接機等で固めた後に磁石Mを取り付け、最後に、磁束Mfが効率的に形成されるように強磁性体のブリッジVBを磁石Mに取り付ける。このように、電極を引っ張る磁石Mの面とは反対側の面に強磁性体のブリッジVBが配置されると、磁気回路を構成する点で有効となる。なお、磁石Mの内部に磁束Mfを通すことで磁気経路を形成させるように磁石Mを配置した場合には、電極を引っ張る磁石Mの面とは反対側の面に強磁性体のブリッジVBを配置する必要はなくなる。
【0049】
図17A乃至
図17Dは、ロータ電極212の材質の構成例を示す平面拡大図である。
【0050】
図17Aは、すべて非磁性体NVで構成させた場合を示す図である。磁石Mで吸引される必要がない場合に採用することができる構成例である。
図17Bは、すべて強磁性体Vで構成させた場合を示す図である。この場合、磁石Mで吸引されるが、送電電力が大きいとスキンデプスの影響を受ける。このため、送電電力が大きくない場合に採用することができる構成例である。
図17Cは、内側の端部のみが強磁性体Vで構成され、他の部分は非磁性体NVで構成させた場合を示す図である。ロータスペーサ211側に配置された磁石Mを用いて、ステータ電極112を吸引する場合に採用される構成例である。
図17Dは、
図13A及び
図13Bの例と同様に、ロータ電極212の外周部222のみを強磁性体Vで構成させ、他の部分を非磁性体NVで構成させた場合を示す図である。ステータスペーサ111側に配置された磁石Mを用いて、ロータ電極212を吸引する場合に採用される構成例である。
【0051】
図18A乃至
図18Cは、吸引磁石ユニットMUと、その配列方法を示すイメージ図である。
【0052】
図14乃至
図16に示す例のように磁石Mを配列することもできるが、磁石Mをユニット化させた吸引磁石ユニットMUを配列させることもできる。
図18Aは、磁化方向の異なる2つの磁石を対にして使用する吸引磁石ユニットMUと、その配列手法を示す図である。この配列手法は、
図18Aに示すように、電極を吸引する側とは反対側に強磁性体Vを取り付け、さらに全体を非磁性体のカバーCで覆う。これにより、回転電極ユニット100を容易に製作することができる。
図18Bは、固定穴Hが設けられた吸引磁石ユニットMUを用いた配列手法を示す図である。この配列手法は、
図18Bに示すように、1つの磁石Mの磁気の方向が、非吸引電極の端面と平行になるように配列させる。このようにしても、磁気回路を形成させることができる。また、吸引磁石ユニットMUとしては、1つの部品で済むため、回転電極ユニット100をより容易に製作することができる。
なお、吸引磁石ユニットMUの配列は、隣接する吸引磁石ユニットMU間に十分な間隔を設けることができれば極性を考慮する必要はない。これに対して、吸引磁石ユニットU同士を近接させる場合には、
図18Cに示すように、隣接する吸引磁石ユニットMUは、同極同士が隣り合うように配列させることで大きな吸引力を得ることができる。
【0053】
図19A乃至
図19Dは、磁石ベルトMBと、その使用方法を示す図である。
【0054】
図19Aは、磁石ベルトMBの構成を示す平面図である。
図18A乃至
図18Cに示すように吸引磁石ユニットMUを配列することもできるが、磁極の配列を考慮して配置した磁石Mをベルト状にした磁石ベルトMBを配列させることもできる。具体的には、
図19Aに示すように、磁極の配列を考慮して配置した磁石Mを、やや硬質でありながらも湾曲可能な非磁性かつ絶縁性の材料Eでモールドすることで磁石ベルトMBを製作する。これにより、製作する回転電極ユニット100の半径に変更が生じたとしても、変更に応じて磁石ベルトMBを曲げて対応することができるので、個別の部品を製作する必要がなくなる。また、
図18A乃至
図18Cの吸引磁石ユニットMUの配列のように極性を確認しながら配列してゆくような手間を省くことができる。これにより、回転電極ユニット100をさらに容易に製作することができる。
なお、磁石ベルトMBを製作するためにモールドする材料Eは特に限定されない。例えば、ナイロン系またはビニル系の材料Eを用いて磁石ベルトMBを製作することができる。また、具体的なモールドの手法も特に限定されない。例えば、磁石Mをアラミド又はケブラー等の強度のある繊維で編んだ網の中に入れて、ナイロン等の樹脂でモールドすることもできる。
【0055】
図19Bは、磁石ベルトMBを湾曲させた状態を示す平面図である。なお、
図19Bに示す磁石ベルトMBは、ステータスペーサ111側に配列させる構成となっているが、曲げる方向を逆にすれば、ロータスペーサ211側に配列させる構成とすることができる。
ここで、モールドする材料Eが比較的固いために、容易に湾曲させることができない場合があるが、
図19A乃至
図19Dに示すようにスリットJを設けることで容易に湾曲させることができる。ただし、スリットJを設けるか否かは任意であり必須ではない。
【0056】
図19Cは、磁石ベルトMBを積層させて、ベルト押さえLで固定させた状態を示す断面拡大図である。
図19Cに示すように、溝Kにベルト押さえLの一部分を食い込ませて、ステータスペーサ111を用いて、必要な段数だけ積層する。これにより、磁石Mの配置の機械的な精度を保持することができる。
【0057】
図19Dは、磁石ベルトMBを積層させて、ベルト押さえLで固定させたときに、ベルト押さえがない部分の状態を示す断面拡大図である。
図19Dに示すように、ベルト押さえLがない部分では、磁石ベルトMBの間に、非磁性のステータ電極112を差し込んで、ステータスペーサ111を用いて、必要な段数だけ積み重ねてネジNで固定する。
【0059】
磁石Mに強磁性体Vの電極(例えばロータ電極212)が近づくと、磁石吸引面に垂直に働く吸引力と、磁石Mの中心に強磁性体Vの電極(例えばロータ電極212)を位置させる向心力との2つの力が働く。この2つの力が大きく働くのは、
図20Bに示すような、凹面構造の場合である。これに対して、
図20Aに示す平面構造の場合には、凹面構造のように上述の2つの力(吸引力及び向心力)が大きく働くことはないが、加工するための製作コストがかからないというメリットがある。なお、磁石Mの端面形状を凸面にした場合には、上述の2つの力(吸引力及び向心力)はいずれも低い値となった。
【0060】
図21A乃至
図21Cは、電極間に流体を含侵させた状態を示す断面拡大図である。
【0061】
図10A及び
図10Bに示すように、電極間に流体Fを流す技術は既に存在する。しかしながら、流体Fを封止する技術は存在しない。なお、流体Fは特に限定されない。例えば、オイル、水等がある。オイルとしては、シリコンオイル等を採用することができる。また、水は、比誘電率が80であり、極めて大きな接合容量Ccを形成させることができる流体Fである。ただし、損失もあるため、送電電力を大きくしなければならない場合は注意が必要である。シリコンオイルは、比誘電率が2.8程度であるが、極寒から高温まで耐えることができ、誘電損失も小さいので、大電力を送電する場合に適した流体Fであるといえる。また、シリコンオイルは、絶縁破壊電圧が高く、潤滑性もあるため、回転系に適した流体Fである。さらに、低粘度のシリコンオイルを採用することで高速回転にも対応できる。これに対し、高粘度のシリコンオイルを採用することでダンパー機能を持たせることができる。
【0062】
しかしながら、電極間に含侵させる流体Fに水又はオイルを採用する場合、漏洩の問題が生じるが、以下のように解決することができる。
例えば、
図21Aに示すように、金属表面を親水性または親油性にする。これにより、表面張力を大きくすることができるので、シールすることなくオイルを封止することができる。
【0063】
また、
図21Bに示すように、リング状のシールリングIを用いる。これにより、流体Fの出入口となる電極間の隙間を封止することができる。なお、シールリングIの材質は特に限定されず、例えばゴム製のシールを用いることができる。
これらの解決手法の他に、次の3つの手法によって流体Fの漏洩を防ぐことができる。即ち、1つ目として、流体Fがオイルである場合には、フェルトのような絶縁性を有するメッシュ材にグリースを混ぜて、多層電極の上下端部にリング状に固定する。これによりオイル漏れを防ぐことができる。2つ目として、メッシュ材に、増ちょう剤を混合する方法である。また、メッシュ部分でオイルの粘度を自動的に上昇させてグリース化し、そのグリースをメッシュ材で保持する方法もある。3つ目は、流体Fがシリコンオイルである場合には、メッシュ素材に鉛、セレンまたはテルル等を混ぜて、メッシュ部分に浸透した状態にあるシリコンオイルをゲル化させる。ゲル化されたシリコンオイルは、メッシュ部に定位させられる。これにより、シリコンオイルの漏洩を防ぐことができる。
【0064】
また、
図21Cに示すように、リング磁石RMをステータ電極112の外部に配置する。これにより、磁性流体MFを用いて、ステータ電極112とロータ電極212間の磁束に沿って流体Fの漏洩を封止することができる。
なお、磁性流体MFとして何を採用するかについては特に限定されない。例えば水に混ざらない油をベースとしたものに混ぜることもできる。この場合、水を封止することもできる。さらに、フッ素油をベースとした磁性流体MFは、フッ素油がシリコンオイルと混合しない性質を利用してシリコンオイルの封止にも使用することができる。ここで、フッ素油は、蒸気圧が極めて低いため、長期間使用しても磁性流体部が細ることがない。真空用途でも使用することができる。
【0065】
なお、
図21A乃至
図21Cでは、磁性流体用の磁石リングRMを1つ(つまり上下で2つ)置いているが、同心円状に半径を違えた磁石リングRMを多段に配置することもできる。また、段数を増やすことで封止圧力を高めることもできる。
図21A乃至
図21Cにおいて、ロータ電極212等を吸引している磁石Mは、常時設置してもよいし、製造時のオイル封入時のみに用い、以後はオイルによって電極間を離隔する方式を採用してもよい。この際、シリコンオイルには離型性があるため、電極同士が密着することを妨げることができる。さらに、オイル中に球状粒子(シリカ、フラーレン等)を混合させることで潤滑性を高めてもよい。
【0066】
図22A乃至
図22Cは、熱交換器Pの熱交換機能を持たせた回転電極ユニット100の例を示す断面拡大図である。
【0067】
図22A乃至
図22Cは、いずれも
図21A乃至
図21Cと同様に、電極間に流体FとしてのオイルOを含侵させ、表面張力を利用したり(
図22A)、必要に応じてシールリング(オイルシールリングQ)を用いて封止したりする(
図22B)点は同じである。ただし、オイルとして、熱伝導性オイルを使用することにより、回転電極ユニット100をヒートシンクとしても利用することもできる。
【0068】
図22Cは、ステータ電極112の外側に、冷却水Wで冷却可能な熱交換リング磁石RMを配置した状態を示している。これにより、熱源Xからの熱エネルギーによりロータ内部が発熱したとしても、その熱を外部に逃がすことができる。逆に、外部から温水(図示せず)を用いてロータ内部を最適な温度に調節することもできる。
【0069】
上述したように、電界結合用の回転電極で形成される接合容量Ccを増大させるために、磁石Mで電極を吸引することにより、大面積の電極であっても、非接触性を維持することができる。このため、大型機械用または高速回転用の非接触電極を製造することができるようになる。特に、非接触性を維持させるために流体Fを流す必要がないため、ポンプ等の付属物を設置する必要がなくなり、信頼性の向上、低コスト化が実現される。これにより、回転電極ユニット100の実用性がさらに高まり、スリップリングの代替を進めて行くための大きな技術的要素となる。
【0070】
即ち、スリップリングは、接触式のため、メンテナンスが必要であり、定期的に交換する必要がある。しかし、数kWまでならば、容易に送電できる手軽さもある。これに取って代わることができる大電力送電可能なものが登場していない。
例えば、磁界式では、大電力送電時には、コイルをフェライトコアが囲んだものを対向させる構造を有するが、重く高価になるとともに、自身が発熱してしまう。
これに対して、電界結合方式は、装置自体に発熱源が無く軽量である利点はあるものの、大電力送電可能な、1nF程度の接合容量を有する回転円盤が実現できないでいた。産業で用いるためには、高信頼性が不可欠である。
本発明では、これを初めて可能とする磁石吸引電極を提案した。これにより、実用性が極めて高くなり、工業用途へ適用されてゆくと期待される。
さらに、液体含侵型、ヒートシンク型へと発展させている。これも、活用場面の拡大が期待できる。
【0071】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0072】
例えば、本実施形態では、ディスク型の電極について説明したが、
図23に示すように、シリンダー型の電極でも、磁石Mの力を利用して、回転に伴って生じ得るシリンダーの偏心を防ぐことができる。
【0073】
図23は、シリンダー型電極の場合を示す断面図である。
【0074】
上述の例は、ディスク型の電極について説明したが、
図23に示すように、シリンダー型の電極でも、磁石Mの力を利用して、回転に伴って生じ得るシリンダーの偏心を防ぐことができる。この場合には、
図23に示すように、固定シャフト501側に多層のシリンダー型送電電極511を配設し、それらの電極に組み合わさるように回転シャフト502側に多層のシリンダー型受電電極521を配置させる。この際、回転シャフト502側の電極を強磁性体の極薄金属とし、固定シャフト501側の電極の底部に磁石Mを配置する。これにより、回転シャフト502側の電極の偏心を防ぐことができる。
【0075】
また例えば、本実施形態では、ディスク型の電極について説明したが、
図24に示すように、磁石Mを用いて強磁性体の極薄金属膜を吸引する方法は、リニア駆動系についても適用することができる。
【0076】
図24は、リニア駆動系の場合を示す斜視図である。
【0077】
図24に示すように、リニア駆動系では、送電電極601として、コの字型の電極を用意する。具体的には、2枚の送電電極601の間に固定ブロックBを配置し、コの字型になるようにネジNで固定する。送電電極601としては、非磁性体であるアルミニウムが使用される。このコの字型の送電電極601の端部に磁石Mを周期的に取り付けて磁石列Mrを形成させる。このような送電電極601内に、強磁性極薄金属の受電電極602を差し込んだ場合、最初は送電電極上を這って挿入されるが、受電電極602が磁石Mに近づくと、磁力によって吸引され、非接触状態になる。さらに、受電電極602の取り付け部(図示せず)と磁石Mの距離よりも、受電電極602の長さを僅かに短くすると、受電電極602は磁石Mにも接触しない。このようにして、極狭いコの字型の送電電極601内でも完全非接触を実現させることができる。このような状態で、線路方向Zに沿って稼働させれば、完全非接触の状態で接合容量Ccの大きなリニア駆動系を実現させることができる。
なお、図示はしないが、受電電極602の先端部に磁石Mを配列し、コの字型の固定ブロックBの中央部に強磁性体Vを配置して対向させることで、磁石Mと強磁性体Vとを逆に取り付けることもできる。
【0078】
また例えば、上述の実施形態における磁石Mは、配置された状態のまま製品化され、磁力を用いて電極を永続的に吸引し続ける構成となっているが、この構成に限定されない。電力伝送システムの製造過程でのみ配置される構成とすることもできる。具体的には例えば、電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送システムの製造方法として、ステータスペーサ111に磁石Mを配置して、ロータ電極212の外周部222を磁力で吸引する工程と、ロータ電極212とステータ電極112との間に形成された隙間に流体Fを封止する工程と、ステータスペーサ111に配置された磁石Mを取り外す工程とを含むこともできる。
これにより、製造過程でのみ磁石Mを使用し、製品になった段階で磁石Mを存在させなくすることができるので、製品の軽量化、及びコスト削減を図ることができる。
【0079】
以上まとめると、本発明が適用される電力伝送システムは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される電力伝送システムは、
1つ以上のロータ電極(例えばロータ電極212)と1つ以上のロータスペーサ(例えばロータスペーサ211)とが交互に積層されたロータ電極ユニット(例えばロータ電極ユニット21)と、1つ以上のステータ電極(例えばステータ電極112)と1つ以上のステータスペーサ(例えばステータスペーサ111)とが交互に積層されたステータ電極ユニット(例えばステータ電極ユニット11)と、からなる回転電極ユニット(例えば回転電極ユニット100)を備え、
前記回転電極ユニットは、
前記ロータ電極が送電電極(例えばステータ電極112)である場合には、前記ステータ電極が受電電極(例えばロータ電極212)であり、
前記ロータ電極が受電電極である場合には、前記ステータ電極が送電電極であり、
前記ロータ電極ユニットと前記ステータ電極ユニットとが入れ子状に組み合わせて相互に回転可能であり、
前記ロータ電極のうち少なくとも外周部(例えば外周部222)は、磁性体からなる部材で構成され、
前記ステータスペーサは、前記ロータ電極の外周部を磁力で吸引する磁石を有する。
これにより、ロータ電極の端部を磁石で引っ張ることで、重力の影響によるロータ電極の垂れ下がりの問題を解決することができるので、電極間がショートしないように回転電極の接合容量を安定的に得ることができる。その結果、接合容量を増大させることができる。
【0080】
また、前記ロータスペーサは、前記ステータ電極の外周部を磁力で吸引する磁石を有することができる。
これにより、ロータ電極の端部を磁石で引っ張るとともに、ステータ電極の端部を磁石で引っ張ることで、重力の影響による電極の垂れ下がりの問題を解決することができる。このため、電極間がショートしないように回転電極の接合容量を安定的に得ることができる。その結果、接合容量をより増大させることができる。
【0081】
また、前記ロータ電極と前記ステータ電極との間に形成された隙間に流体(例えば流体F)が存在し、
前記流体は封止されるようにすることができる。
これにより、電極間に流体を封止することができるので、電極間がショートしないように回転電極の接合容量を安定的に得ることができる。その結果、接合容量をさらに増大させることができる。
【0082】
また、本発明の一態様の電力伝送システムの製造方法は、
1つ以上のロータ電極と1つ以上のロータスペーサとが交互に積層されたロータ電極ユニットと、1つ以上のステータ電極と1つ以上のステータスペーサとが交互に積層されたステータ電極ユニットと、からなる回転電極ユニットを備え、前記回転電極ユニットは、前記ロータ電極が送電電極である場合には、前記ステータ電極が受電電極であり、前記ロータ電極が受電電極である場合には、前記ステータ電極が送電電極であり、前記ロータ電極ユニットと前記ステータ電極ユニットとが入れ子状に組み合わせて相互に回転可能であり、前記ロータ電極のうち少なくとも外周部は、磁性体からなる部材で構成される、電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送システムの製造方法であって、
前記ステータスペーサに磁石を配置して、前記ロータ電極の外周部を磁力で吸引する工程と、
前記ロータ電極と前記ステータ電極との間に形成された隙間に流体を封止する工程と、
前記ステータスペーサに配置された前記磁石を取り外す工程と、
を含む。
これにより、製造過程でのみ磁石を使用し、製品になった段階で磁石を存在させなくすることができるので、製品の軽量化、及びコスト削減を図ることができる。