(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
一般的に、塀は、地盤に設置される塀用基礎と、塀用基礎に支持される壁体とを備えている。塀には、地震、風、偏土圧等によって水平力が作用する場合がある。塀の設計において、安全上、耐用期間においてそのような水平力が作用しても転倒しないように、その構造、地盤への根入れ深さ等が検討される。そして、その設計に基づいて、地盤に塀が施工される。
しかしながら、適切な設計又は施工がなされない場合、例えば、壁体の縦筋が、禁止された重ね継手により配筋されている場合等では、その継手が経年劣化を早める原因となり、塀が耐用期間において設計通りの耐力を発揮できない。そして、塀は、水平力に耐えられず、破壊したり、転倒したりする可能性がある。
そこで、補強筋の一端部に形成された接続部を接続するためのジョイントと、コンクリートに定着されて鉛直方向に延びるアンカーと、を備える塀用基礎を提供する。そして、そのアンカーは、上端部に、ジョイントの下端部に固定される固定部を有する。これにより、プレキャストされた塀用基礎を地盤に設置して、塀用基礎のジョイントに壁体の補強筋を接続するだけで、壁体に埋設される補強筋と塀用基礎に埋設されるアンカーとを確実に一体化できる。よって、施工者に対して適切な施工を促すことができるとともに、塀の耐久性を確保及び維持できる。
【0011】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の説明において、機能が共通する部材には、同じ番号又は符号が付される場合がある。
図1は、塀用基礎1の説明図である。
図2は、
図1におけるA矢視断面図である。
図3は、塀100の説明図である。
【0012】
(塀用基礎)
図1及び
図3に示すように、本実施形態に係る塀100は、塀用基礎1と、塀用基礎1に支持される壁体10と、を備えている。本実施形態に係る塀用基礎1は、例えば、補強コンクリートブロック塀等の組積構造の壁体10を備えた塀100の基礎、又は、鉄筋コンクリート製の壁体10を備えた塀100の基礎として適用できる。
塀用基礎1は、例えば、プレキャストコンクリート製である。塀用基礎1は、例えば、六面体状、好ましくは、直方体状のブロックである。塀用基礎1は、所定の根入れ深さで根入れされた状態で地盤Gに支持される。塀用基礎1は、例えば、幅150mm、高さ350mm、長さ2000mmの寸法を有している。
【0013】
塀用基礎1は、補強筋2の一端部2aに形成された接続部21を接続するためのジョイント11と、コンクリートに定着されて鉛直方向に延びるアンカー12と、を備えている。ジョイント11とアンカー12とは、互いに接続された状態で、塀用基礎1のコンクリートに埋設されている。ジョイント11の材軸は、アンカー12の延在する方向に沿っている。これにより、ジョイント11に接続される補強筋2の延在する方向とアンカー12の延在する方向とを、いずれも鉛直方向に沿わせて、一致させることができる。よって、塀に作用する水平軸周りの曲げモーメントに対して、補強筋2とアンカー12とで効果的に抵抗できる。
【0014】
塀用基礎1は、適宜、コンクリートに埋設されて水平方向に沿って延びる横筋14を備えている。
【0015】
壁体10は、適宜、水平方向に沿って延びる横筋(不図示)を備えている。
【0016】
壁体10は、鉛直方向に積み重ねられた複数のブロックを有していてよい。
ここで、補強筋2は、複数のブロックを貫通している。これにより、壁体10が複数のブロックで形成されていても、地震、風、偏土圧等による水平荷重に対する曲げ強度を高められるとともに、構造的に安定な状態にできる。また、補強筋2は、下端部を塀用基礎1のジョイント11に接続できるので、壁体10の内部で重ね継手のない状態で、壁体10に埋設できる。これにより、塀100の破損及び転倒に対する安全性を高めることができる。
【0017】
(ジョイント)
ジョイント11は、上端が露出した状態で、塀用基礎1のコンクリートに埋設されている。なお、ジョイント11の上端は、キャップ等を被せることによって、異物の侵入を防止してもよい。ジョイント11は、中空の筒状であり、材軸が鉛直方向に沿う姿勢で、塀用基礎1のコンクリートに埋設されている。
【0018】
ジョイント11の外側面は、塀用基礎1のコンクリートに付着している。
【0019】
ジョイント11の内側面は、補強筋2の下端部に形成された接続部21(例えば、雄ねじ)を接続するための補強筋被接続部11a(例えば、雌ねじ)を、ジョイント11の上部に有している。なお、ジョイント11の補強筋被接続部11aは、補強筋2の接続部21に接続可能であれば、雌ねじに限らない。例えば、補強筋被接続部11aは、補強筋2の接続部21が雌ねじであれば、その雌ねじに接続可能な雄ねじであってよい。例えば、補強筋被接続部11aは、補強筋2の接続部21にスナップ係合可能な構造であってもよい。
【0020】
ジョイント11の内側面は、アンカー12の上端部に形成された固定部13(例えば、雄ねじ)を固定するためのアンカー被固定部11b(例えば、雌ねじ)を、ジョイント11の下部に有している。なお、ジョイント11のアンカー被固定部11bは、アンカー12の固定部13に接続可能であれば、雌ねじに限らない。例えば、アンカー被固定部11bは、アンカー12の固定部13が雌ねじであれば、その雌ねじに接続可能な雄ねじであってよい。例えば、アンカー被固定部11bは、アンカー12の固定部13にスナップ係合可能な構造であってもよい。例えば、アンカー被固定部11bは、アンカー12の固定部13に、例えば、かしめ、溶接、ダブルナット、圧着等の適宜の手段により、固定されていてもよい。
【0021】
補強筋被接続部11a及びアンカー被固定部11bがそれぞれ雌ねじである場合、補強筋被接続部11a及びアンカー被固定部11bで形成される孔は、ジョイント11を鉛直方向に貫通していることが好ましい。これにより、あらかじめアンカー被固定部11bに対して所定の位置関係でアンカー12を接続した状態で塀用基礎1のコンクリートにジョイント11及びアンカー12を埋設しておくことができ、ジョイント11の上部に、接続長さが規定された補強筋被接続部11aを設けておくことができる。
【0022】
ジョイント11のアンカー被固定部11bとアンカー12の固定部13とは、互いに接続された状態で、塀用基礎1のコンクリートに埋設されている。
【0023】
ジョイント11は、塀用基礎1に、水平方向に沿って、所定間隔で複数設けられていてよい。
【0024】
(アンカー)
アンカー12は、コンクリートへの付着長を有する直線的に延びる棒体であり、鉛直方向に沿う姿勢で、塀用基礎1のコンクリートに埋設されている。
アンカー12は、適宜、下端部に、塀用基礎1の横筋にかぎ掛けされるように湾曲したフックを有している。アンカー12は、例えば、鉄筋である。
アンカー12は、上端部に、ジョイント11の下部のアンカー被固定部11bに固定される固定部13を有している。これにより、ジョイント11に作用する引抜力に対して、アンカーの付着力で抵抗できる。
【0025】
アンカー12の下端部は、かぎ状、又は十分な定着長を持つL字形に曲がり、鉛直方向に見て横筋14と重なっている。これにより、アンカー12がジョイント11を介して上方向に引っ張られる力に対して、効果的に抵抗できる。
【0026】
(補強筋)
補強筋2は、直線的に延びる棒体であり、鉛直方向に沿う姿勢で、塀用基礎1が支持する壁体10に埋設される。補強筋2は、一端部に、接続部21を有している。補強筋2は、他端部に、適宜、壁体10の横筋(不図示)にかぎ掛けされるように湾曲したフック、又は十分な定着長を持つL字形を有している。補強筋2は、例えば、鉄筋である。
補強筋2は、防錆対策されていてよい。補強筋2は、腐食代を考慮した太い鉄筋でもよい。なお、補強筋2は、例えば、ステンレス製でああってよく、樹脂によって被覆されていてもよく、金属めっきされていてもよい。補強筋2は、防錆対策されているので、補強筋2の腐食を抑制でき、塀用基礎1を用いた塀100の耐久性を高めることができる。
【0027】
(せん断抵抗部)
ところで、
図4から
図7に示すように、塀用基礎1は、複数の基礎ブロックBに分割されていてもよい。そして、塀用基礎1を構成する基礎ブロックBにおける隣接する基礎ブロックB同士は、少なくとも、塀100が転倒するような大きさの水平荷重に対して、その荷重の作用方向に沿って隣接する基礎ブロックB間に作用するせん断力を伝達できるように、せん断抵抗部3を介して、互いに係合又は接合されている。せん断抵抗部3は、例えば、ピン接合、凹凸接合、モルタル接合、プレート接合等である。
【0028】
図4は、ピン接合のせん断抵抗部3を説明する説明図である。
図4(A)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせる前の状態を示す図である。
図4(B)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせた後の状態を示す図である。
ピン接合のせん断抵抗部3は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、隣接する基礎ブロックBの間を、ピン31を介して接続する構造である。ピン接合のせん断抵抗部3を備える塀用基礎1は、隣接する基礎ブロックBにおける対向する両者の側端面に、それぞれ窪み32が形成されている。そして、それぞれの窪み32に係合する形状を有するピン31が、窪み32に嵌った状態になっている。ピン31は、二つの類似の形状の円錐台を、それぞれの円錐台の底面同士を張り合わせて一体化したような形状となっている。ピン31がこのような形状である場合、窪み32の形状は、ピン31の形状に応じた円錐台形状になっている。ピン接合は、例えば、一か所の接合箇所当たり、隣接する基礎ブロックBにおける対向する両者の側端面に、それぞれ、4つの窪み32と、それらの窪み32に対応する4つのピン31とを備えている。ピン接合は、このような構造であるので、低コストで、各基礎ブロックBの高さ出しを隣接する基礎ブロックBの位置を基準にして簡単にできる。また、ボルト締め等の工程を不要にできる。また、樹脂で成形されたピン31を採用することで、耐腐食性を高めることができる。また、隣接する基礎ブロックBはせん断抵抗部3を介して互いにせん断方向(長手方向に垂直な方向)で規制し合う状態で接合されているので、塀100の不等沈下を抑制できる。
【0029】
図5は、凹凸接合のせん断抵抗部3を説明する説明図である。
図5(A)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせる前の状態を示す図である。
図5(B)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせた後の状態を示す図である。
凹凸接合のせん断抵抗部3は、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、隣接する基礎ブロックBの間を、一方の基礎ブロックBに設けられ、一方の基礎ブロックBにおける他方の基礎ブロックBの端面(対向面T)に対向する長手方向の端面(対向面T)から他方の基礎ブロックBに向けて突出する凸部33と、他方の基礎ブロックBに設けられ、他方の基礎ブロックBにおける一方の基礎ブロックBの端面(対向面T)に対向する長手方向の端面(対向面T)から一方の基礎ブロックBとは反対の方向に向けて窪む凹部34とを嵌合した、凹凸嵌合構造を介して接続する構造である。凸部33の形状は、凹部34に嵌るように、凹部34の形状に応じた形状となっている。凸部33及び凹部34の形状は、例えば、平面視において略半円形状である。凸部33及び凹部34は、鉛直方向に沿って延びる形状であってよい。そして、凸部33が、凹部34に嵌った状態で、一方の基礎ブロックBと他方の基礎ブロックBとは、せん断方向(長手方向に垂直な方向)における水平方向で規制し合う状態で接合している。
【0030】
図6は、モルタル接合のせん断抵抗部3を説明する説明図である。
図6(A)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせる前の状態を示す図である。
図6(B)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせた後の状態を示す図である。
モルタル接合のせん断抵抗部3は、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、隣接する基礎ブロックBの、一方の基礎ブロックBにおける他方の基礎ブロックBの端面(対向面T)に対向する長手方向の端面(対向面T)から他方の基礎ブロックBとは反対の方向に向けて窪む第1凹部361と、他方の基礎ブロックBにおける一方の基礎ブロックBの対向面Tに対向する長手方向の端面(対向面T)から一方の基礎ブロックBとは反対の方向に向けて窪む第2凹部362と、第1凹部361及び第2凹部362によって覆われた空間を充填するように形成されたモルタル製のシャーピン35と、を備えた構造である。第1凹部361及び第2凹部362の形状は、例えば、平面視において同心の略半円形状である。第1凹部361及び第2凹部362は、鉛直方向に沿って延びる円柱状の空間36を形成している。シャーピン35は、鉛直方向に沿って延び、第1凹部361及び第2凹部362によって形成された空間の形状に対応する円柱形状である。そして、シャーピン35が、第1凹部361及び第2凹部によって形成された空間に嵌った状態で、一方の基礎ブロックBと他方の基礎ブロックBとは、せん断方向(長手方向に垂直な方向)における水平方向で規制し合う状態で接合している。
【0031】
図7は、プレート接合のせん断抵抗部3を説明する説明図である。
図7(A)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせる前の状態を示す図である。
図7(B)は、隣接する基礎ブロックBを組み合わせた後の状態を示す図である。
プレート接合のせん断抵抗部3は、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、隣り合う基礎ブロックBにおける互いに対向する端部にそれぞれに設けられた雌ねじを有するインサート37と、隣り合う基礎ブロックBを組み合わせた際に、一方の基礎ブロックBに設けられたインサート37と他方の基礎ブロックBに設けられたインサート37との間隔に対応する距離で離間する少なくとも二つの長穴38hを有するプレート38と、長穴38hに挿通されてそれぞれのインサート37に螺合されるボルト39と、を備えている。インサート37、プレート38及びボルト39のセットは、基礎ブロックBの端面(対向面T)の面内の水平方向における側面(正面又は/及び背面)にそれぞれ設けられている。そして、プレート38が隣り合う基礎ブロックBの端面(対向面T)を跨ぐようにして基礎ブロックBの側面に配置され、長穴38hにボルト39が挿通された状態で、インサート37にボルト39が螺合されて締結されている。
【0032】
(型枠)
次に、塀用基礎1の基礎ブロックBの製造に用いる型枠4について説明する。
ここでは、ピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4について説明する。
図8は、ピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図8(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図8(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図8(C)は、型枠4を
図8(A)におけるS方向に矢視した説明図である。なお、
図8において、一方の側板431はベース部から鉛直に立っているコンクリート打設位置を示しており、他方の側板432は回動して倒れている脱型位置を示している。また、
図8において、妻板44は、いずれも、2点鎖線で示すコンクリート打設位置から、長手方向にスライドして退避している状態の実線で示す脱型位置を示している。
図9から
図12についても同様である。
【0033】
図8に示すように、型枠4は、長手方向に沿う平坦な上面を有し、塀用基礎の上面を成形するベース部41と、ベース部41の長手方向に垂直な水平方向で対向する両側部に設けられ、塀用基礎1の側面を成形する側板43と、ベース部41の長手方向の両端部に設けられ、塀用基礎1の端面(対向面T)を成形する妻板44と、を備えている。
また、型枠4は、適宜、ベース部41の中央に長手方向に沿って設けられた板状の仕切42を備えている。
【0034】
型枠4は、側板43及び妻板44がコンクリート打設位置にある状態で、底となるベース部41と、周壁となる側板43及び妻板44とで、コンクリートを打設して収容可能な上方が開放された箱状の容器となるように形成されている。ベース部41の上面は、塀用基礎1の基礎ブロックBの上面を形成する。側板43の内面は、基礎ブロックBの側面を形成する。妻板44の内面は、基礎ブロックBの長手方向の端面(対向面T)を形成する。したがって、硬化したコンクリートから型枠4を取り外して脱型すると、地盤Gに載置する姿勢の基礎ブロックBとは天地を逆にした姿勢の塀用基礎1の基礎ブロックBが製造できる。そして、天地を逆転させることで、地盤Gに載置する姿勢の基礎ブロックBが完成する。
【0035】
ベース部41は、長手方向に沿う平坦な上面を有している。ベース部41は、雌ねじの中心軸が鉛直軸に沿う姿勢で配置されたジョイント11と、ジョイント11に固定部13(
図2参照)が固定されて材軸が鉛直軸に沿う姿勢で配置されたアンカー12と、を備えている。ジョイント11は、コンクリートが打設されて硬化するまでの間、ジョイント11の姿勢を保つため、適宜の手段によってベース部41の平坦面に対して直接的にジョイント11の一端面が接した状態で仮固定されている。アンカー12は、その一端部をジョイント11の他端部に固定している。このように、ベース部41は、ジョイント11と、アンカー12とを備えているので、この状態でコンクリートを打設することで、ジョイント11及びアンカー12とをあらかじめ埋設した状態のプレキャスト製の塀用基礎1を製造できる。
【0036】
ベース部41は、長手方向に垂直な水平方向を2分割に仕切るようにして中央に設けられた板状の仕切42を有している。
【0037】
仕切42は、ベース部41の平坦面から垂直に延びるように設けられている。これにより、コンクリート打設時における型枠4の側板43同士の間に形成される内部空間を二つに分割できるので、一回のコンクリート打設及び一回の脱型で、一度に二つの基礎ブロックBを製造できる。なお、型枠4は2連(もしくは2個取り)の型枠としているが、1連(もしくは1個取り)の型枠としてもよい。すなわち、ベース部41は、仕切42をなくして、一回のコンクリート打設及び一回の脱型で、一度に一つの基礎ブロックBを製造できるようにしてもよい。
【0038】
側板43は、ベース部41の長手方向に垂直な水平方向の両端部のそれぞれに設けられている。側板43は、ベース部41に対して、長手方向に沿う軸を中心として、ヒンジを介して、回動自在に設けられている。側板43は、少なくとも、側板43の内面の面内方向が鉛直に沿う状態のコンクリート打設位置と、側板43の内面が鉛直軸から傾斜した状態の脱型位置との間で回動自在となっている。側板43はこのような構造であるので、コンクリート打設の際には側板43をコンクリート打設位置に配置し、脱型の際には側板43を脱型位置まで倒すことができる。よって、硬化したコンクリートを型枠4から簡単に脱型できるので、塀用基礎1を製造しやすくできる。
【0039】
妻板44は、ベース部41の長手方向の両端部のそれぞれに設けられている。妻板44は、塀用基礎1の長手方向の端面(対向面T)を成形する妻板本体441と、その端面にせん断抵抗部3を成形するための成形部442とを備えている。このように、妻板44は、成形部442を備えているので、この成形部442を、対応するせん断抵抗部3の形状の成形部442に変えるだけで、種々の形状のせん断抵抗部3を成形できる。
【0040】
妻板44は、ベース部41に対して、スライド機構443を介して、長手方向に進退自在に取り付けられている。これにより、塀用基礎1の端面(対向面T)に突起又は窪みを成形する場合であっても、妻板44を脱型しやすくできる。なお、スライド機構443に換えて、妻板44は、ベース部41に対して、蝶番構造を介して、長手方向に揺動自在に取り付けられてもよい。
【0041】
成形部442は、妻板本体441から長手方向に突出する円錐台形状である。これにより、塀用基礎1の端面(対向面T)に、窪み32(
図4参照)を成形できる。
【0042】
次に、
図9を用いて、凹凸接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4について説明する。なお、上述のピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4と共通する事項については、説明を省略する場合がある。
【0043】
図9は、凹凸接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図9(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図9(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図9(C)は、型枠4を
図9(A)におけるS方向に矢視した説明図である。
【0044】
図9に示すように、妻板44は、ベース部41の長手方向の両端部のそれぞれに設けられている。妻板44は、塀用基礎1の端面(対向面T)を形成する妻板本体441と、その端面(対向面T)にせん断抵抗部3を形成するための成形部442とを備えている。妻板44は、ベース部41に対して、スライド機構443を介して、長手方向に進退自在に取り付けられている。
【0045】
ここで、一方の妻板44に設けられる成形部442は、円柱をその材軸に沿って2分割したような半円柱形状である。そして、成形部442は、その材軸が鉛直方向に沿う姿勢で妻板本体441に設けられている。これにより、塀用基礎1の端面(対向面T)に、凹部34(
図5参照)を成形できる。
また、他方の妻板44に設けられる成形部442は、円柱をその材軸に沿って2分割したような半円柱形状の溝である。そして、成形部442は、その材軸が鉛直方向に沿う姿勢で妻板本体441に設けられている。これにより、塀用基礎1の端面(対向面T)に、凸部33(
図5参照)を成形できる。
【0046】
次に、
図10を用いて、モルタル接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4について説明する。なお、上述のピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4と共通する事項については、説明を省略する場合がある。
【0047】
図10は、モルタル接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図10(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図10(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図10(C)は、型枠4を
図10(A)におけるS方向に矢視した説明図である。
【0048】
図10に示すように、妻板44は、ベース部41の長手方向の両端部のそれぞれに設けられている。妻板44は、塀用基礎1の端面(対向面T)を形成する妻板本体441と、その端面(対向面T)にせん断抵抗部3を形成するための成形部442とを備えている。妻板44は、ベース部41に対して、スライド機構443を介して、長手方向に進退自在に取り付けられている。
【0049】
ここで、両方の妻板44に設けられる成形部442は、いずれも、円柱をその材軸に沿って2分割したような半円柱形状である。そして、成形部442は、その材軸が鉛直方向に沿う姿勢で妻板本体441に設けられている。これにより、塀用基礎1の端面(対向面T)に、第1凹部361及び第2凹部362(
図6参照)を成形できる。
【0050】
このように、型枠4の構造は、せん断抵抗部3の種類(例えば、ピン接合、凹凸接合、モルタル接合)が異なっても、対応する成形部442又は成形部442を含む妻板44のみを交換すればよく、ベース部41、側板43及び妻板44の妻板本体441を共通のものにできる。
【0051】
次に、
図11を用いて、プレート接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4について説明する。なお、上述のピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4と共通する事項については、説明を省略する場合がある。
【0052】
図11は、プレート接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図11(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図11(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図11(C)は、型枠4を
図11(A)におけるS方向に矢視した説明図である。
【0053】
図11に示すように、側板43は、長手方向の両端部に、雌ねじを有するインサート37を備えている。インサート37は、側板43に固定された不図示の係止部に係止された状態となっている。そして、係止部は、脱型時において、硬化したコンクリートに埋設されたインサート37から、回動する側板43とともに外れるようになっている。これにより、塀用基礎1の側面に簡単にインサート37(
図7参照)を埋設できる。
【0054】
次に、
図12を用いて、ボルト接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4について説明する。なお、上述のピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4と共通する事項については、説明を省略する場合がある。
【0055】
図12は、ボルト接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図12(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図12(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図12(C)は、型枠4を
図12(A)におけるS方向に矢視した説明図である。
図12(D)は、基礎ブロックBの間に設けられたフランジ50によるせん断抵抗部3の説明図である。
【0056】
図12に示すように、側板43は、長手方向の両端部に、締結ボルト51を挿通可能な長手方向に沿う軸を中心とする通穴52を有し、塀用基礎1の両端部において締結ボルト51の軸線方向に所定の長さの空間を成形するための箱状のフランジ50を備えている。フランジ50は、側板43に固定された不図示の係止部に係止された状態となっている。そして、係止部は、脱型時において、硬化したコンクリートに埋設されたフランジ50から、回動する側板43とともに外れるようになっている。これにより、塀用基礎1の側面に簡単にフランジ50を埋設できる。塀用基礎1の隣接する基礎ブロックB同士は、
図12(D)に示すように、締結ボルト51及びナット53で締結することができる。
【0057】
次に、
図13を用いて、R形状端部60を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4について説明する。なお、上述のピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4と共通する事項については、説明を省略する場合がある。
【0058】
図13は、R形状端部60を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図13(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図13(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図13(C)は、型枠4を
図13(A)におけるS方向に矢視した説明図である。
図13(D)は、隣接する基礎ブロックBの端面(対向面T)に設けられたR形状端部60の説明図である。
【0059】
図13に示すように、妻板44は、ベース部41の長手方向の両端部のそれぞれに設けられている。妻板44は、塀用基礎1の端面(対向面T)を成形する妻板本体441と、その端面(対向面T)にR形状端部60を成形するための成形部442とを備えている。妻板44は、ベース部41に対して、スライド機構443を介して、長手方向に進退自在に取り付けられている。
【0060】
ここで、妻板44に設けられる成形部442は、円柱をその材軸に沿って2分割したような半円柱形状である。この半円柱の直径は、塀用基礎1の幅寸法と同等となっている。そして、成形部442は、その材軸が鉛直方向に沿う姿勢で妻板本体441に設けられている。これにより、塀用基礎1の端面(対向面T)に、平面視において幅寸法に相当する大きな直径の半円形状となるR形状端部60(
図13(D)参照)を成形できる。
【0061】
次に、
図14を用いて、支柱固定孔70を有する塀用基礎1の製造に用いる型枠4について説明する。なお、上述のピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4と共通する事項については、説明を省略する場合がある。
【0062】
図14は、支柱固定孔70を有する塀用基礎1の製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図14(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図14(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図14(C)は、型枠4を
図14(A)におけるS方向に矢視した説明図である。
図14(D)は、塀用基礎1の上部に設けられた支柱固定孔70の説明図である。
【0063】
図14に示すように、ベース部41は、ベース部41の上面に抜型71を有している。抜型71は、円錐台形状の外形状を有している。型枠4の内部には、ベース部の上面に抜型71を配置した状態で、コンクリートが打設される。したがって、硬化したコンクリートによって形成された塀用基礎1の上面には、
図14(D)に示すように、鉛直方向に沿って延びる支柱固定孔70が形成される。この支柱固定孔70にフェンスF等の支柱FPを挿入した状態で支柱FPと支柱固定孔70との間にモルタル等の硬化材Mを充填して硬化させることで、支柱FPを支柱固定孔70に固定できる。
【0064】
次に、
図15を用いて、T形状、I形状又はL形状の断面を有する塀用基礎1の製造に用いる型枠4について説明する。なお、上述のピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造に用いる型枠4と共通する事項については、説明を省略する場合がある。
【0065】
図15は、T形状、I形状又はL形状の断面を有する塀用基礎1の製造に用いる型枠4を示す説明図である。
図15(A)は、型枠4を平面視した説明図である。
図15(B)は、型枠4を正面視した説明図である。
図15(C)は、型枠4を
図15(A)におけるS方向に矢視した説明図である。
【0066】
図15に示すように、側板43は、T形状の断面を有する塀用基礎1に合わせて、T形状の断面の外側の輪郭に応じた形状の断面を有している。具体的には、
図15(C)に示すように、側板43は、コンクリート打設時において、一端をベース部41に対して不図示のヒンジを介して設けられ、鉛直方向に沿って延びる第1鉛直側板43aと、一端を第1鉛直側板43aの他端に設けられ、水平方向に延びる水平側板43bと、一端を水平側板43bの他端に設けられ、鉛直方向に延びる第2鉛直側板43cと、を備えている。側板43は、長手方向を中心とする両側に設けられる。側板43は、ベース部41に対して、不図示のヒンジを介して、少なくともコンクリート打設位置と脱型位置との間で、回動自在に設けられている。
【0067】
また、ベース部41は、ベース部41の長手方向に沿って延び、塀用基礎1の上面を成形する嵩上げ版81と、鉛直方向における嵩上げ版の高さを調節自在な高さ調節桁82と、を備えている。
【0068】
嵩上げ版81は、対向する第1鉛直側板43aの間の距離に対応する幅を有している。嵩上げ版81は、ジョイント11及びアンカー12を有している。これにより、ジョイント11及びアンカー12を、塀用基礎1を構成するコンクリートに埋設された状態にできる。
【0069】
高さ調節桁82は、製造する塀用基礎1の高さ寸法に応じて鉛直方向に進退するものであってよく、製造する塀用基礎1の高さ寸法に応じて高さの異なるものであってもよい。
【0070】
また、ベース部41は、塀用基礎1の断面形状に応じて適宜設置される切替仕切板83を備えている。切替仕切板83は、その内面で塀用基礎1の側面を成形する。
例えば、断面がL形状である場合、
図15(C)に示すように、切替仕切板83は、一方の第1鉛直側板43aが延在する方向に延長されるように、その内面が第1鉛直側板43aの内面に沿うように、配置される。
例えば、断面がT形状である場合、切替仕切板83は不要である。
【0071】
妻板44は、断面がT形状の塀用基礎1に対応するように、T形状を有している。そして、T形状にL形状及びI形状が包含されるので、製造する塀用基礎1の断面がL形状であっても、I形状であっても、打設されるコンクリートの側圧に耐えられるような構造になっている。
このように、側板43及び妻板44は、特定の形状を備えているので、塀用基礎1の断面形状がL形状、I形状又はT形状のいずれかであっても、型枠4を構成する側板43、ベース部41、妻板44を含む多くの部分を共用できる。
【0072】
(塀用基礎の製造方法)
次に、塀用基礎1の製造方法を説明する。塀用基礎1の製造方法では、上述の型枠4を用いることができる。ピン接合によるせん断抵抗部3を有する基礎ブロックBの製造方法を例に挙げて、
図8を用いて説明する。
(A1)まず、
図8に示すように、型枠4を、ベース部41の上面が水平になるように設置する。
この際、ベース部41には、ジョイント11及びアンカー12が設けられている。
側板43は、コンクリート打設位置、すなわち、ベース部41から鉛直に立設している状態になっている。
成形部442が形成された妻板44は、コンクリート打設位置、すなわち、側板43の長手方向端部に対して密接した状態になっている。
(A2)次に、型枠4のベース部41、側板43及び妻板44で仕切られた空間に、コンクリートを打設する。
(A3)適宜の養生を経て、型枠4から硬化したコンクリート、すなわち、塀用基礎1を脱型する。
具体的には、両側の側板431,432をそれぞれ回動する。
そして、両側の妻板44を、それぞれ、硬化したコンクリートから離れるように長手方向にスライドする。
(A4)硬化したコンクリートの天地を逆転させる。すると、上面に、アンカー12が固定されたジョイント11の雌ねじが露出し、対向面にせん断抵抗部3の窪み32(
図4参照)が形成された塀用基礎1が完成する。
このようにして、塀用基礎1を簡単に製造できる。
【0073】
(塀の施工方法)
次に、本実施形態に係る塀100の施工方法を、説明する。
(B1)
図1の左側に示すように、ジョイント11及びアンカー12がコンクリートに埋設された状態の、プレキャスト製の、塀用基礎1を準備する。
(B2)
図1の左側に示すように、塀用基礎1を、必要に応じて掘削された溝の底の地盤Gに設置する(基礎設置工程)。
(B3)次に、
図1の左側に白抜き矢印で示すように、補強筋2の下端部に形成された接続部21を、塀用基礎1の上部に形成されたジョイント11に接続する(補強筋接続工程)。そして、
図1の右側に示すように、補強筋2が、塀用基礎1に接続された状態にする。
(B4)そして、
図3に示すように、ジョイント11に接続された補強筋2に沿って、塀用基礎1の上に、壁体10を設置する(壁体設置工程)。
例えば、現場打ちコンクリートで壁体10を施工する場合、塀用基礎1の上方の空間を側型枠で囲んだ後に、その空間にコンクリートを打設して、補強筋2をコンクリートに埋設した状態でコンクリートを硬化させ、養生後に脱型する。
例えば、ブロック塀で壁体10を施工する場合、塀用基礎1の上方に、水平方向に隣接するブロック同士の間隙に補強筋2が配置されるように、所定の高さまでブロックを積み重ね、その間隙にモルタル等の充填材を充填する。
このようにして、壁体10の内部に補強筋2の継手を設けることなく、簡単に、塀100を完成させることができる。
【0074】
(その他の実施形態)
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、塀用基礎1を構成する基礎ブロックBにおける隣接する基礎ブロックB同士は、自重を伝達できるように、上下噛み合わせ構造を介して、互いに鉛直方向で係合されていてよい。上下噛み合わせ構造は、具体的には、隣り合う基礎ブロックBにおける互いに対向する端部のうち、一方の基礎ブロックBの端部の上部に他方の基礎ブロックBに向けて突出する上部突出部を設け、他方の基礎ブロックBの端部の下部に一方の基礎ブロックBに向けて突出する下部突出部を設ける。そして、隣り合う基礎ブロックBを、他方の基礎ブロックBの下部突出部の上面に、一方の基礎ブロックBの上部突出部の下面が接した状態で、上部突出部と下部突出部とが、平面視において重なり合うように配置する。これにより、隣り合う基礎ブロックB同士のレベル合わせを容易にできる。よって、塀用基礎1を簡単に施工できる。
【0075】
本実施形態の塀用基礎1は、補強筋2の一端部に形成された接続部21を接続するためのジョイント11と、コンクリートに定着されて鉛直方向に延びるアンカー12と、を備えている。そして、アンカー12は、上端部に、ジョイント11のアンカー被固定部11bに固定される固定部13を有している。これにより、壁体10の補強筋2を、壁体10の内部で接続することなく、塀用基礎1に接続できる。よって、耐久性の高い塀用基礎1を提供できる。
【解決手段】塀用基礎1は、補強筋2の一端部に形成された接続部21を接続するためのジョイント11と、コンクリートに定着されて鉛直方向に延びるアンカー12と、を備えている。アンカー12は、上端部に、ジョイント11の下端部に固定される固定部を有する。塀は、塀用基礎1と、塀用基礎1に支持される壁体と、を備える。壁体は、鉛直方向に積み重ねられた複数のブロックを有する。補強筋2は、複数のブロックを貫通する。