【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0028】
<使用したUHPEマルチフィラメント>
マルチフィラメント(1):96本のUHPEモノフィラメントを引き揃えたマルチフィラメントであって、繊度が22.2texのUHPEマルチフィラメント。東洋紡社製の商品名「イザナス」。
マルチフィラメント(2):192本のUHPEモノフィラメントを引き揃えたマルチフィラメントであって、繊度が22.2texのUHPEマルチフィラメント。東洋紡社製の商品名「イザナス」。
マルチフィラメント(3):120本のUHPEモノフィラメントを引き揃えたマルチフィラメントであって、繊度が22.2texのUHPEマルチフィラメント。
マルチフィラメント(4):64本のUHPEモノフィラメントを引き揃えたマルチフィラメントであって、繊度が22.2texのUHPEマルチフィラメント。東洋紡社製の商品名「イザナス」。
マルチフィラメント(5):32本のUHPEモノフィラメントを引き揃えたマルチフィラメントであって、繊度が22.2texのUHPEマルチフィラメント。東洋紡社製の商品名「イザナス」。
【0029】
<使用した補助剤>
流動パラフィン:表1に示す平均分子量が異なる7種の流動パラフィン。MORESCO社製。
ナフテン系ベースオイル(鉱油):分子量は348。三共油化工業社製。
グリセリン:分子量は92。阪本薬品工業社製。
デカリン:デカヒドロナフタレン。分子量は138。キシダ化学社製。
ポリエチレングリコール:分子量は400。三洋化成工業社製。
植物油:ココナッツオイル。平均分子量は200。ココウェル社製。
シリコーンオイル:分子量2000及び6000のシリコーンオイル。信越シリコーン社製。
【0030】
<補助剤の分子量の測定>
流動パラフィンの平均分子量は、ガスクロマトグラフ(島津製作所社製、商品名「GC−2010」)を使用し、標準物質であるノルマルパラフィン(SIGMA−ALDRICH社製、商品名「ASTM5442(C12−C60)Quantitative Linearity Standard」)の検量線からノルマルパラフィン換算で算出した。
具体的には、標準物質であるノルマルパラフィン(SIGMA−ALDRICH社製、商品名「ASTM5442(C12−C60)Quantitative Linearity Standard」)をガスクロマトグラフ(島津製作所社製、商品名「GC−2010」)で測定し、標準物質のピーク値の保持時間(リテンションタイム)と標準物質の分子量から検量線を作成した。
次に、測定対象である流動パラフィンを同様にガスクロマトグラフで測定した。クロマトグラフィーの原理によって、流動パラフィンは、その分子量に応じた保持時間(リテンションタイム)で検出器に移動した後、検出器で電気信号に変換される。サンプルを投入してからの経過時間を横軸に、検出器から得られた信号強度を縦軸にとることにより、クロマトグラムが得られ、その信号強度のピーク値の保持時間(リテンションタイム)を測定した。このピーク値の保持時間と上記検量線から、測定対象である流動パラフィンの分子量を決定した。
ガスクロマトグラフの測定条件の一例を下記に示す。
検出器タイプ:FID。
カラム:キャピラリーカラム(フロンティアラボ社製、商品名「Ultra alloy−SIMDIS(HT)」)。長さ:10m、内径:0.53mm、膜厚:0.1μm。
キャリアガス:ヘリウムガス。流量:24.0(ml/min)、線速度:140.5cm/s。
カラム初期温度:35℃。レート:10℃/min、最終温度:410℃、検出器温度:420℃。
注入方法:全量注入。サンプル注入量:0.5μl(マイクロリットル)。
【0031】
ココナッツオイルの平均分子量についても、流動パラフィンと同様の方法で分子量が決定した。
ナフテン系ベースオイルの分子量は、ASTM D3238に規定されるn−d−M法により平均分子量を算出した。
グリセリン及びデカリンの分子量は、分子式から特定した。
ポリエチレングリコールの分子量は、水酸化カリウム1mol当たりのmg×ポリエチレングリコール中の水酸基の数/ポリエチレングリコールの水酸基価、で算出した。なお、ポリエチレングリコールの水酸基価は、ポリエチレングリコール1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数である。
シリコーンオイルの分子量は、A.J.Barryの式(Logη=1.00+0.0123M
0.5)から算出した。ただし、ηは、25℃における動粘度(mm
2/s)を、Mは、シリコーンオイルの分子量を表す。
【0032】
<使用した製造装置>
図4に示すような、糸繰り出し装置61、第1延伸装置62、含浸装置63、余剰分除去装置64、加熱装置65、第2延伸装置66及び糸巻き取り装置67をこの順で有する製造装置6を使用した。この製造装置6の含浸装置63及び余剰分除去装置64は、
図5に示すような方式であった。すなわち、含浸装置63は、補助剤(流動パラフィンなど)を含ませた不織布をUHPEマルチフィラメントの表面に接触させる方式であり、余剰分除去装置64の除去方式は、乾燥した不織布をUHPEマルチフィラメントの表面に接触させる方式であった。前記含浸装置63は、前記不織布に連続的に補助剤を供給する供給部631が具備されており、その供給部631によって不織布に対する補助剤供給量を任意に設定できる。また、加熱装置は、輻射熱方式の長さ5mのオーブンが2基連なったものを用い、延伸装置は、
図4に示すような1段延伸方式を用いた。
【0033】
[実施例1]
室温下(23℃)に設置した前記製造装置6の糸繰り出し装置61に、マルチフィラメント(1)を装填し、含浸装置63に、補助剤として平均分子量400の流動パラフィンを供給した。マルチフィラメント(1)を引き出し、これに前記流動パラフィンを塗布し、さらに余剰の流動パラフィンをマルチフィラメント(1)から除去した後、約155℃に加熱しながら延伸処理することにより、実施例1のUHPE融着糸を作製した。なお、延伸倍率が約1.7倍となるように、第1延伸装置62の周速を10m/minに設定し、第2延伸装置66の周速を17m/minに設定した。
【0034】
[実施例2乃至7、及び、比較例1乃至10]
表1に示すような補助剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2乃至7及び比較例1乃至10のUHPE融着糸をそれぞれ作製した。実施例2乃至7及び比較例3については、貯留部632の液面(貯留部632に貯められる流動パラフィンの液面)からマルチフィラメントまでの距離、及び、含浸装置63及び余剰分除去装置64のそれぞれの不織布のマルチフィラメントに対する接触圧を、実施例1とそれぞれ変化させた。
なお、表1の「MF」は、マルチフィラメントを表し、「FY」は、UHPE融着糸を表す(以下、表2乃至表4も同様)。
【0035】
【表1】
【0036】
<UHPE融着糸の含有率の測定>
各実施例及び比較例で得られた各UHPE融着糸に含まれる補助剤の含有率を測定した。具体的には、各UHPE融着糸を1m切り出し、その重量を0.1mg単位で計測した。別途、補助剤を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして糸(以下、対照糸という)を作製し、この対照糸を1m切り出し、その重量を0.1mg単位で計測した。そして、下記式に代入することにより、流動パラフィンなどの補助剤の含有率を求めた。その結果を表1に示す。
UHPE融着糸中の補助剤の含有率(重量%)=(M−N)/N×100。
ただし、Mは、各実施例及び比較例のUHPE融着糸の重量を表し、Nは、対照糸の重量を表す。
【0037】
<UHPE融着糸の融着性の評価>
各実施例及び比較例で得られた各UHPE融着糸の表面を目視で観察すると共に、各融着糸を指で強く擦り、フィラメントの融着度合いを評価し、さらに、釣り糸として適するかどうかを評価した。その結果を表1に示す。
AA:融着糸の表面は十分に平滑であった。各モノフィラメントは十分に融着しており、融着糸がバラけることはなかった。釣り糸として非常に好適に利用できる。
A:融着糸の表面は十分に平滑であった。各モノフィラメントは十分に融着しており、融着糸はほぼバラけることはなかった。釣り糸として好適に利用できる。
B:融着糸の表面は平滑であった。融着糸の一部分(100m当たり1箇所又は2箇所)が少しバラけ、その部分において幾つかのモノフィラメントに分離した。釣り糸として利用できる。
C:融着糸の表面に多少の凹凸が確認された。融着糸の多くの部分(100m当たり3箇所以上)がバラけ、それらの部分において幾つかのモノフィラメントに分離した。釣り糸として利用できる可能性がある。
D:マルチフィラメントを構成する各モノフィラメントが融着しておらず、全ての部分で各モノフィラメントがバラけ、融着糸の態を成していなかった。釣り糸として利用できないと評価できる。
【0038】
<UHPE融着糸の単糸繊度の測定>
各実施例及び比較例で得られた各UHPE融着糸の単糸繊度を決定した。その結果を表1に示す。
UHPE融着糸の単糸繊度は、次の計算式から求めた。
UHPE融着糸の単糸繊度=(G1/G2)/G3
ただし、前記G1は、マルチフィラメント(融着前のマルチフィラメント)の繊度を、前記G2は、延伸倍率を、前記G3は、前記マルチフィラメントのモノフィラメント数をそれぞれ表す。
例えば、マルチフィラメント(1)を用いた実施例1乃至7及び比較例1乃至10のUHPE融着糸の単糸繊度は、(22.2tex/1.7)/96=約0.136tex=約1.36dtexとなる。
【0039】
<UHPE融着糸の引張強さ及び伸び率の測定>
各実施例及び比較例で得られた各UHPE融着糸の引張強さ及び伸び率を、JIS L 1013(2010年)−8.5に準じて測定した。その結果を表1に示す。なお、引張強さ及び伸び率は、引張破断強度及び破断伸度とも呼ばれる。引張強さは、数値が大きいほど好ましいと評価できる。
【0040】
[UHPE融着糸の結節強さ及び結節したときの伸び率の測定]
各実施例及び比較例で得られた各UHPE融着糸の結節強さa,bを、JIS L 1013(2010年)−8.6に準じて測定した。その結果を表1に示す。なお、結節強さaは、前記JIS L 1013(2010年)−8.6の結び方a)で糸を結んだときの強さであり、結節強さbは、前記JIS L 1013(2010年)−8.6の結び方b)で糸を結んだときの強さである。参考のため、結び方a)の状態を
図6(a)に示し、結び方b)の状態を
図6(b)に示す。
結節強さ比(a/b)=結節強さa/結節強さb、で求められる。
また、UHPE融着糸を結び方a)及び結び方b)で結んだときの伸び率a,bを、JIS L 1013(2010年)−8.5に準じて測定した。その結果を表1に示す。なお、伸び率aは、前記結び方a)で糸を結んだ状態で、それをJIS L 1013(2010年)−8.5に準じて測定したときの伸び率である。伸び率bは、前記結び方b)で糸を結んだ状態で、それをJIS L 1013(2010年)−8.5に準じて測定したときの伸び率である。
【0041】
<UHPE融着糸の取り扱い性の評価>
各実施例及び比較例で得られた各UHPE融着糸を、釣り糸として使用したときの取り扱い易さを評価した。その結果を表1に示す。
○:融着糸を釣り糸として利用し且つルアーをキャスティングしたときに、釣り竿のガイドと釣り糸との摩擦抵抗が低く、より遠くへ投げることができた。また、100回/日でキャスティングしている間、釣り糸の切断や釣り糸が釣り竿のガイドに絡まることがなかった。
×:融着糸を釣り糸として利用し且つルアーをキャスティングしたときに、釣り竿のガイドと釣り糸との摩擦抵抗が高く、余り遠くへ投げることができなかった。また、100回/日でキャスティングしている間、釣り糸の切断や釣り糸が釣り竿のガイドに絡まることが、1回以上生じた。
【0042】
実施例1乃至7のように、平均分子量が400以上の流動パラフィンを15重量%以上含むUHPE融着糸は、融着性が良好であった。さらに、平均分子量が430以上の流動パラフィンを15重量%以上含むUHPE融着糸(実施例2乃至7)は、融着性に優れ、特に平均分子量が450以上500以下の流動パラフィンを15重量%以上含むUHPE融着糸(実施例3乃至5)は、より融着性に優れていた。また、実施例2乃至5の対比から、平均分子量が450以上490以下の流動パラフィンを18重量%以上含有した融着糸は融着性に特に優れていた。
結節強さ比(a/b)が1に近いほど、結び方の違いが結節強さに影響しない融着糸と言える。換言すると、結節強さ比(a/b)が1に近いほど、結節強さが結び方に依存しない融着糸(以下、結節強さが等方性の融着糸という)と言える。一般に、結節強さ比(a/b)が0.9以上1.1以下の範囲であれば、結節強さが等方性の融着糸と言える。実施例1乃至7は、結節強さが等方性の融着糸であった。
融着性が良好な実施例1乃至7は、取り扱い性に優れていた。融着性が良好な実施例1乃至7の融着糸は、モノフィラメント様を有し、バラけ難く且つ表面平滑性に優れているためと推定される。
【0043】
[実施例8]
マルチフィラメント(1)に代えてマルチフィラメント(2)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例8のUHPE融着糸をそれぞれ作製した。
【0044】
[実施例9]
マルチフィラメント(1)に代えてマルチフィラメント(3)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例9のUHPE融着糸をそれぞれ作製した。
【0045】
[実施例10]
マルチフィラメント(1)に代えてマルチフィラメント(4)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例10のUHPE融着糸をそれぞれ作製した。
【0046】
[実施例11]
マルチフィラメント(1)に代えてマルチフィラメント(5)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例11のUHPE融着糸をそれぞれ作製した。
【0047】
<UHPE融着糸の含有率などの測定及び融着性などの評価>
実施例8乃至11で得られた各UHPE融着糸に含まれる流動パラフィンの含有率を、実施例1と同様にして測定した。また、実施例8乃至11で得られた各UHPE融着の、融着性、単糸繊度、引張強さ、伸び率、結節強さ、取り扱い性などについても、実施例1と同様にして測定及び評価した。その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例8乃至11から、単糸繊度が融着性に影響していることが判った。実施例8乃至10と実施例11の対比から、単糸繊度が0.7dtex以上2.5dtex以下である場合に融着性に優れ、1.0dtex以上1.5dtex以下である場合に融着性に特に優れていた。
【0050】
[実施例12乃至16]
マルチフィラメント(3)を糸繰り出し装置に装填する前に、表3に示す撚り係数K1で前記マルチフィラメント(3)をS撚りしたこと以外は、実施例9と同様にして、実施例12乃至16のUHPE融着糸を作製した。
【0051】
[実施例17乃至21]
マルチフィラメント(1)を糸繰り出し装置に装填する前に、表3に示す撚り係数K1で前記マルチフィラメント(1)をS撚りしたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例17乃至21のUHPE融着糸を作製した。
【0052】
[実施例22乃至26]
マルチフィラメント(4)を糸繰り出し装置に装填する前に、表3に示す撚り係数K1で前記マルチフィラメント(4)をS撚りしたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例22乃至26のUHPE融着糸を作製した。
【0053】
[比較例11及び12]
表4に示す撚り係数K1でS撚りしたマルチフィラメント(3)を用いたこと、及び表4に示す補助剤に変更したこと以外は、実施例9と同様にして、比較例11及び12のUHPE融着糸を作製した。
【0054】
[比較例13及び14]
表4に示す撚り係数K1でS撚りしたマルチフィラメント(3)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、比較例13及び14のUHPE融着糸を作製した。
【0055】
[比較例15及び16]
表4に示す撚り係数K1でS撚りしたマルチフィラメント(1)を用いたこと、及び表4に示す補助剤に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、比較例15及び16のUHPE融着糸を作製した。
【0056】
[比較例17及び18]
表4に示す撚り係数K1でS撚りしたマルチフィラメント(1)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、比較例17及び18のUHPE融着糸を作製した。
【0057】
[比較例19及び20]
表4に示す撚り係数K1でS撚りしたマルチフィラメント(4)を用いたこと、及び表4に示す補助剤に変更したこと以外は、実施例10と同様にして、比較例19及び20のUHPE融着糸を作製した。
【0058】
[比較例21及び22]
表4に示す撚り係数K1でS撚りしたマルチフィラメント(4)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして、比較例21及び22のUHPE融着糸を作製した。
【0059】
<UHPE融着糸の撚り係数K2の算出>
実施例12乃至26及び比較例11乃至22で得られた各UHPE融着糸の撚り係数K2を算出した。その結果を表3及び表4に示す。また、UHPE融着糸の繊度(パラフィンを含んだUHPE融着糸そのものの繊度)の結果も表3及び表4に併せて示す(この繊度は、表3及び表4において撚り係数K2の直下に記載)。
UHPE融着糸の撚り係数K2は、式2:K2=t×D
1/2で算出した。前記式2のtは、UHPE融着糸の撚り数(回/m)を表し、前記式2のDは、含有するパラフィン量を除いた、長さ1000m当たりのUHPE融着糸の重量(g)を表す。
具体的には、UHPE融着糸の任意の箇所から長さ10cmを取り出し、その10cm長のUHPE融着糸を光学顕微鏡で観察してその撚り数を計測し、1m当たりに換算して融着糸の撚り数t(回/m)を決定した。また、パラフィン量を除いたUHPE融着糸の長さ1000m当たりの重量Dは、次のようにして求めた。JIS L 1013(2010年)−8.3.1−b)B法に準じてUHPE融着糸の繊度を測定した。この繊度は、(パラフィンを除去せずに)パラフィンを含んだUHPE融着糸そのものの繊度である。その融着糸の流動パラフィンの含有率に基づいて、その融着糸のパラフィン含有量を算出し、前記測定された繊度から算出したパラフィン含有量を除外することにより、パラフィン量を除いたUHPE融着糸の1000m当たりの重量を決定した。得られた撚り数tと1000m当たりの重量Dを式2に代入することにより、UHPE融着糸の撚り係数K2を決定した。
【0060】
<UHPE融着糸の含有率などの測定及び融着性などの評価>
実施例12乃至26及び比較例11乃至22で得られた各UHPE融着糸の、含有率、融着性、単糸繊度などを、実施例1と同様にして測定及び評価した。その結果を表3及び表4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
実施例12乃至26で得られた各UHPE融着糸は、いずれも融着性に優れ、引張強さや伸び率が良好である。ただし、撚り係数K2が2000程度の実施例15、20及び25は、結節強さ比が0.9以上1.1以下の範囲内であるのに対し、撚り係数K2が2500を越える程度の実施例16、21及び26は、結節強さ比が前記範囲外となった。このことから、撚り係数K2を2200以下とすることにより、結節節強さが等方性の融着糸を得ることができると考えられる。
なお、比較例11乃至22のように、流動パラフィンの平均分子量が400未満及び/又はその含有量が15重量%未満の場合には、融着性が悪く、釣り糸として利用できるものではなかった。
実施例12乃至26では、S撚りしたマルチフィラメントを用いた。仮に、Z撚りしたマルチフィラメントを用いた場合には、その結節強さaの値と結節強さbの値が、S撚りした場合の対応する各値と逆転すると推定される。
【0064】
[実施例27]
実施例14で得られたUHPE融着糸を、約300mに切り出したものを4本作製した。この4本の実施例14の融着糸を1本の紐状に編紐することによって、実施例27のUHPE融着糸を作製した。この実施例27のUHPE融着糸の結節強さa及び結節強さbを実施例1と同様にして測定した。その結果、実施例27の結節強さ比(a/b)は、0.95であった。
【0065】
[実施例28]
実施例19で得られたUHPE融着糸を、約300mに切り出したものを4本作製した。この4本の実施例19の融着糸を1本の紐状に編紐することによって、実施例28のUHPE融着糸を作製した。この実施例28のUHPE融着糸の結節強さa及び結節強さbを実施例1と同様にして測定した。その結果、実施例28の結節強さ比(a/b)は、0.99であった。
【0066】
[実施例29]
実施例24で得られたUHPE融着糸を、約300mに切り出したものを4本作製した。この4本の実施例24の融着糸を1本の紐状に編紐することによって、実施例29のUHPE融着糸を作製した。この実施例29のUHPE融着糸の結節強さa及び結節強さbを実施例1と同様にして測定した。その結果、実施例29の結節強さ比(a/b)は、0.92であった。
【0067】
実施例27乃至29の融着糸は、結節強さが等方性の融着糸であった。また、これらの融着糸を指先で強く擦っても、毛羽立ちが生じなかった。