(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔繊維製品への易洗浄性の付与方法〕
本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法は、繊維製品に易洗浄性を付与する方法である。易洗浄性とは、洗浄により汚れが除去しやすいことをいう。
本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法は、繊維製品を構成している繊維に水溶性化合物を付着させる工程(A)と、工程(A)の後の繊維製品に対して平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子を付着させる工程(B)とを含む。すなわち、本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法は、工程(A)、次いで工程(B)の順で繊維製品を処理する方法である。
【0009】
工程(A)で繊維製品を構成している繊維に水溶性化合物を付着させ、その後に工程(B)で疎水性微粒子を繊維製品に付着させることで、繊維製品の表面は親水性になり、その上に疎水性微粒子を備えることで、皮脂などの疎水性汚れが落ちやすい状態になり、さらに疎水性微粒子同士により形成される空隙で疎水性汚れを吸収できる状態になる。これが洗濯時に剥がれ落ちることで易洗浄性を発揮する。以下各工程などについて説明する。
【0010】
<工程(A)>
工程(A)は、工程(A)では、繊維製品を構成している繊維に水溶性化合物を付着させる。
具体的には工程(A)では、水溶性化合物及び希釈剤を含有する繊維処理剤組成物(A)(以下、繊維処理剤組成物(A)という場合もある)を繊維製品と接触させることで、繊維製品の表面に水溶性化合物を付着させることができる。従って工程(A)は、水溶性化合物と希釈剤とを含む繊維処理剤組成物(A)を繊維製品と接触させる工程であってもよい。
【0011】
水溶性化合物についての水溶性とは、化合物1mgを60℃のイオン交換水100mlに添加し、撹拌または超音波処理を行った時に1時間以内に均一水溶液となることをいう。ここでの撹拌の条件は、100mlビーカーにマグネチックスターラーを用いて500rpmの回転速度での撹拌である。また、超音波処理の条件は、40kHzの周波数での処理である。
【0012】
水溶性化合物は、水溶性フィルム形成性化合物が好ましい。水溶性フィルム形成性化合物は希釈剤として水を用い、水溶液にして繊維製品と接触させることで繊維製品を構成している繊維表面に被膜を形成して付着する。被膜状の水溶性化合物の付着は、本効果の易洗浄性を更に向上させる。
ここで水溶性フィルム形成性化合物について、フィルム形成性化合物とは、25℃でシリコンウェハ上に当該化合物の20質量%水溶液を1ml滴下し、乾燥させたときにフィルムになる化合物を指す。従って、水溶性フィルム形成性化合物と水とを含む組成物を繊維製品と接触させた後、乾燥させると、25℃あるいはその近傍の環境下では、繊維製品の繊維表面の少なくとも一部には、当該化合物からなるフィルムが形成される。
【0013】
本発明では、水溶性フィルム形成性化合物等の水溶性化合物が付着した繊維表面は、親水性になるために油性汚れの水中での接触角を向上させるため易洗浄性を得ることができるものと考えられる。水溶性フィルム形成性化合物は、均一に繊維表面に付着させることができる観点からも好ましい。
【0014】
水溶性化合物は、好ましくは水溶性高分子化合物であり、より好ましくは水溶性アニオン性高分子化合物である。
また、水溶性化合物のうち、水溶性フィルム形成性化合物は、好ましくは水溶性フィルム形成性高分子化合物であり、より好ましくはイオン性基を有する水溶性フィルム形成性高分子化合物であり、更に好ましくは水溶性フィルム形成性アニオン性高分子化合物である。
ここで水溶性フィルム形成性アニオン性高分子化合物はアニオン性基を持つ水溶性フィルム形成性高分子であり、アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基が好ましい。また、アニオン性基はナトリウムやカリウム等の塩型、酸型およびその群から選ばれる1種以上の状態で用いることができる。
カルボキシル基を持つアニオン性高分子化合物としては、カルボキシル基及び不飽和結合を有するモノマーを重合して得られる、モノマー構成単位を有する高分子重合体が挙げられ、例えばアクリル酸やマレイン酸に由来する、ポリアクリル酸、アクリル酸−マレイン酸の共重合体等の合成高分子化合物や、天然高分子化合物由来とするカルボキシメチルセルロース等のような半合成高分子化合物、アルギン酸、キサンタンガム等の多糖が挙げられるが、なかでもポリアクリル酸が好ましい。またアニオン性高分子化合物は一部ないし全部がアルカリ剤との塩であってもよい。本発明ではこれらのうち1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
水溶性高分子化合物、更に水溶性フィルム形成性高分子化合物の重量平均分子量は、洗濯時の水への溶解性の観点から好ましくは1万以上、より好ましくは10万以上であり、好ましくは1000万以下、より好ましくは500万以下である。
水溶性高分子化合物、更に水溶性フィルム形成性高分子化合物の重量平均分子量の測定はゲル浸透クロマトグラフ法を用い、標品をポリエチレングリコールとした場合の数値である。
【0016】
水溶性化合物は、繊維表面に均一に付着させることが好ましい。しかしながら水溶性化合物が室温以下で固体の場合、繊維表面に均一付着させることは難しい。また処理される繊維製品の量によっては、水溶性化合物は多量に必要とされる。従って、水溶性化合物は希釈剤によって希釈された繊維処理剤組成物、すなわち、水溶性化合物と希釈剤とを含有する繊維処理剤組成物(A)として、繊維製品と接触させることで、繊維製品の表面に付着させることが好ましい。繊維処理剤組成物(A)は液体が好ましい。希釈剤は、水溶性化合物を溶解させることができる溶媒又は水溶性化合物を分散させることができる分散媒が挙げられ、溶媒がより好ましい。工程(A)で用いる繊維処理剤組成物(A)は、水溶性化合物及び該化合物の溶媒を含むことが好ましい。
【0017】
溶媒としては、水、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、(1)アセトン、メチルエチルケトン等の揮発性低級ケトン化合物、(2)ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素、(3)アセトニトリル、プロピオニトリル等の揮発性低級ニトリル、(4)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の揮発性低級アルコールから選ばれる1種以上が挙げられる。
希釈剤としては、水溶性化合物の溶解性、揮発性、及び取り扱いやすさの観点から、水、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールから選ばれる1種以上が好ましい。更に、希釈剤は、水を含むことがより好ましい。繊維処理剤組成物(A)は、希釈剤中、水の割合が、50質量%以上、更に70質量%以上、更に80質量%以上、そして、100質量%以下であることが好ましく、100質量%であってもよい。
【0018】
繊維処理剤組成物(A)は、水溶性化合物を、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有する。
繊維処理剤組成物(A)は、疎水性微粒子の含有量が、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、含有しない、すなわち、疎水性微粒子の含有量が0質量%であることが更に好ましい。
希釈剤は、繊維処理剤組成物(A)の残部の量で用いられる。希釈剤を用いる場合、繊維処理剤組成物(A)は、希釈剤を、組成物全体を100質量%とする量で含有する。
【0019】
工程(A)では、水溶性化合物を、繊維製品の質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、用いる。
繊維処理剤組成物(A)を用いる場合、工程(A)では、繊維処理剤組成物(A)を、水溶性化合物が、繊維製品の質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、となるように用いる。
また、繊維製品の処理を施した部分の水溶性化合物の付着量が、前記範囲内にあることが好ましく、繊維製品の処理を施した部分から任意に選んだ複数の部分において、水溶性化合物の付着量が、前記範囲内にあることがより好ましい。例えば、繊維製品の処理部分から1cm角の布片を複数切り出したとき、どの布片にも水溶性化合物が前記濃度範囲内にあることが好ましい。これにより、ごわつきや硬さを回避しながら易洗浄性を発揮させることができる。処理部は繊維製品の汚れが付きやすい部位、例えば、襟や袖等の限定された部分であってもよい。
また、本発明では、好ましくは、水溶性化合物は、繊維製品の0.1g/m
2以上1000g/m
2以下の部分の一部ないし全部に用いられる。繊維処理剤組成物(A)を、繊維製品のこのような坪量の部分に適用することが好ましい。
【0020】
繊維製品に繊維処理剤組成物(A)を接触させる方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。水溶性化合物を繊維により均一に付着させる点から、噴霧、浸漬、及び塗布から選ばれる少なくとも1種の方法が好ましい。
【0021】
<工程(B)>
工程(B)は、工程(A)の後の繊維製品に対して平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子を付着させる工程である。具体的には工程(B)では、疎水性微粒子と希釈剤を含む繊維処理剤組成物(以下、繊維処理剤組成物(B)という場合もある)を、工程(A)の後の繊維製品と接触させることで、繊維表面に疎水性微粒子を付着させることができる。従って工程(B)は、平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子と希釈剤とを含む繊維処理剤組成物(B)を、工程(A)の後の繊維製品と接触させる工程であってもよい。繊維処理剤組成物(B)は液体が好ましい。
【0022】
ここで平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子についての疎水性とは、界面活性剤などの介在なしに水への分散が困難な状態を指すが、より好ましくは25℃の水の接触角が90度以上であることをいう。なお、疎水性微粒子に対する水の接触角は、当該疎水性微粒子をガラス板になるべく薄く且つ密になるように載せた面に対する水の接触角を測定するか、その微粒子が溶融化合物又は熱可塑性高分子化合物である場合はその微粒子を融解させた後、冷却、固化させて得られる板状物質に対する水の接触角を測定する。なお、前記方法で測定した接触角が90度未満の微粒子は、親水性微粒子である。
【0023】
工程(B)で用いる疎水性微粒子は、疎水性固体微粒子である。工程(B)で用いる疎水性微粒子は、有機微粒子、すなわち有機化合物からなる微粒子であることが好ましく、有機高分子化合物からなる微粒子であることがより好ましい。
具体的には疎水性微粒子は、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリスチレン、ナイロン、シリコーン、メラミン、ポリウレタンから選ばれる一種以上であることがより好ましく、更にはナイロン、すなわちポリアミドが好ましい。ナイロンは、ナイロン6、ナイロン12が好ましい。
【0024】
工程(B)で用いる疎水性微粒子は、平均粒径が1μm以上、好ましくは5μm以上、そして20μm以下、好ましくは15μm以下である。このような平均粒径が前記下限値以上の微粒子を用いることで微粒子が単繊維間に入り込むことを防止し、繊維表面に存在する油性汚れを効率的に捕集、洗濯操作により油性汚れを微粒子ごと容易に脱離させることができる。また平均粒径が前記上限値以下であることで、繊維製品の触感がごわつくことなく、繊維上から当該粒子が脱離しにくくなる。
ここで、疎水性微粒子の平均粒径は、レーザー回折法により測定されたものである。
疎水性微粒子の形状は、球状、回転楕円体状、多孔質、棒状、板状、直方体状等が挙げられる。
工程(B)で用いる疎水性微粒子は、多孔質疎水性微粒子であってもよい。多孔質疎水性微粒子は、粒子の間隙に疎水性汚れを吸収させるだけでなく、粒子内に汚れを吸収することもできる。
【0025】
工程(B)で用いる繊維処理剤組成物(B)は、繊維製品を構成している繊維表面に、疎水性微紛体を均一に付着させるために希釈剤を含むことが好ましい。希釈剤は液体であることが好ましく、疎水性微粒子の分散媒として働く液状分散媒であることが好ましい。ここで液体分散媒は、好ましくは揮発性液状分散媒、より好ましくは工程(A)で用いる水溶性化合物を溶解しない揮発性液状分散媒である。工程(A)で用いる水溶性化合物を溶解しない分散媒を用いることで、工程(A)で付与した水溶性化合物を溶解させて混和させることなく、当該微粒子を対象繊維に付与することができる。
【0026】
繊維処理剤組成物(B)に用いる希釈剤、更には分散媒としては、(1)水、(2)アセトン、メチルエチルケトン等の揮発性低級ケトン化合物、(3)ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素、(4)アセトニトリル、プロピオニトリル等の揮発性低級ニトリル、(5)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の揮発性低級アルコール、(6)酢酸エチル等の低級脂肪酸エステルを挙げることができる。希釈剤は、(2)アセトン、メチルエチルケトン等の揮発性低級ケトン化合物、好ましくは炭素数3以上10以下の揮発性低級ケトン化合物、(3)ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素、好ましくは炭素数5以上12以下の炭化水素、(4)アセトニトリル、プロピオニトリル等の揮発性低級ニトリル、好ましくは炭素数3以上10以下の揮発性低級ニトリル、及び(6)酢酸エチル等の低級脂肪酸エステル、好ましくは脂肪酸部分の炭素数が1以上4以下でエステル部分の炭素数が1以上4以下の低級脂肪酸エステルから選ばれる一種以上がより好ましい。繊維処理剤組成物(B)は、希釈剤中、前記(2)〜(6)から選ばれる一種以上の化合物、更に前記(3)、(4)及び(6)から選ばれる一種以上の化合物の割合が、50質量%以上、更に70質量%以上、更に80質量%以上、そして、100質量%以下であることが好ましく、100質量%であってもよい。
【0027】
工程(B)では、疎水性微粒子を、繊維質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、付着させる。
繊維処理剤組成物(B)を用いる場合、工程(B)では、繊維処理剤組成物(B)を、疎水性微粒子が、繊維質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、付着するように用いる。
また、繊維製品の処理を施した部分の疎水性微粒子の付着量が、前記範囲内にあることが好ましく、繊維製品の処理を施した部分から任意に選んだ複数の部分において、疎水性微粒子の付着量が、前記範囲内にあることがより好ましい。例えば、繊維製品の処理部分から1cm角の布片を複数切り出したとき、どの布片にも疎水性微粒子が前記濃度範囲内にあることが好ましい。これにより、ごわつきや硬さを回避しながら易洗浄性を発揮させることができる。
【0028】
繊維処理剤組成物(B)は、疎水性微粒子を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有する。
繊維処理剤組成物(B)は、水溶性化合物の含有量が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、含有しない、すなわち、水溶性化合物の含有量が0質量%であることが更に好ましい。
希釈剤は、繊維処理剤組成物(B)の残部の量で用いられる。希釈剤を用いる場合、繊維処理剤組成物(B)は、希釈剤を、組成物全体を100質量%とする量で含有する。
【0029】
繊維製品に繊維処理剤組成物(B)を接触させる方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。疎水性微粒子を繊維により均一に付着させる点から、塗布、浸漬、及び噴霧から選ばれる少なくとも1種の方法が好ましく、噴霧がより好ましく、工程(A)で用いる繊維処理剤組成物(A)と工程(B)で用いる繊維処理剤組成物(B)の繊維製品上での混和を防ぐため、手動式スプレーヤーを用いた噴霧がさらに好ましい。
【0030】
<その他工程>
工程(A)は洗濯時の濯ぎ工程において行われてもよく、また屋内又は屋外にて乾燥中又は乾燥後にスプレーヤーを用いて直接、繊維処理剤組成物(A)を噴霧処理し、その後乾燥させる。
従って、本発明では、工程(A)の後に繊維製品を乾燥させる工程(A’)を含むことが好ましい。工程(A)で、繊維処理剤組成物(A)を用いる場合は、工程(A’)を含むことがより好ましい。工程(A’)での乾燥方法は任意であるが、自然乾燥や、乾燥機あるいはアイロンによる加熱乾燥が挙げられる。
工程(A’)で十分な乾燥を行うことで、本発明の易洗浄性は更に向上する。工程(A’)後に工程(B)を行うことがより好ましい。
【0031】
また、本発明では、工程(B)の後に繊維製品を乾燥させる工程(B’)を含むことが好ましい。工程(B)で、繊維処理剤組成物(B)を用いる場合は、工程(B’)を含むことがより好ましい。工程(B’)での乾燥方法は任意であるが、自然乾燥や、乾燥機あるいはアイロンによる加熱乾燥が挙げられる。
【0032】
本発明の繊維製品の繊維製品への易洗浄性の付与方法を経た繊維製品は、食べこぼし等で衣類を汚した場合に、急ぎ流水で流すような場合でも本効果を享受することができるが、通常は、使用後、洗濯により洗浄する際に優れた易洗浄効果を発揮する。本発明の繊維製品の繊維製品への易洗浄性の付与方法は、洗濯前処理方法として実施できる。また、本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法は、繊維製品の使用前の処理方法として実施できる。洗濯操作は水のみでも十分な効果を与えるが、洗濯用洗剤を併用することでさらに洗浄力を高めることができる。
【0033】
本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法を含む態様として、例えば、
(1)繊維製品を、使用前に本発明の方法により処理すること、
(2)前記処理がされた繊維製品を使用すること、
(3)使用の後の繊維製品を洗濯すること、
を含む、繊維製品の使用方法が挙げられる。
【0034】
<繊維製品>
本発明が対象とする繊維製品に限定はないが、家庭で簡便に処理ができ、皮脂を含む油の洗浄性の観点から、好ましくは衣料である。更には、木綿又は木綿混紡の衣料が好ましく、使い勝手としてはワイシャツ等の首回りや袖回りの汚れに対して使用することで、より効果的に易洗浄性を発揮することができる。
【0035】
〔繊維用易洗浄性付与剤〕
本発明の繊維易洗浄性付与剤は、水溶性化合物及び希釈剤を含有する繊維処理剤組成物(A)と、繊維処理剤組成物(A)により処理された繊維製品に用いられる、平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子及び希釈剤を含有する繊維処理剤組成物(B)と、からなる、2剤型繊維製品用易洗浄性付与剤である。本発明の繊維易洗浄性付与剤は、本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法に好適に使用される。
【0036】
繊維処理剤組成物(A)の水溶性化合物及び希釈剤は、本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法で述べたものが使用され、好ましい態様も同じである。
【0037】
繊維処理剤組成物(A)には、水溶性化合物と希釈剤以外に、界面活性剤、抗菌剤、香料、色素、顔料、蛍光増白剤、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、シリコーン等を任意に添加することができる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。シリコーンとしては、未変性シリコーン、シリコーンのポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン付加物およびカルボキシ変性シリコーン等の中から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0038】
繊維処理剤組成物(B)の疎水性微粒子及び希釈剤は、本発明の繊維製品への易洗浄性の付与方法で述べたものが使用され、好ましい態様も同じである。
【0039】
繊維処理剤組成物(B)には、疎水性微粒子と希釈剤以外に、界面活性剤、抗菌剤、香料、色素、顔料、蛍光増白剤、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、シリコーン等を任意に添加することができる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。シリコーンとしては、未変性シリコーン、シリコーンのポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン付加物およびカルボキシ変性シリコーン等の中から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0040】
本発明の繊維易洗浄性付与剤の態様としては、前記繊維処理剤組成物(A)と、前記繊維処理剤組成物(B)とを分離して保持する、繊維製品用易洗浄性付与剤キットが挙げられる。
【0041】
本発明が対象とする繊維製品に限定はないが、家庭で簡便に処理ができ、皮脂を含む油の洗浄性の観点から、好ましくは衣料である。更には、木綿又は木綿混紡の衣料が好ましく、使い勝手としてはワイシャツ等の首回りや袖回りの汚れに対して使用することで、より効果的に易洗浄性を発揮することができる。
【0042】
本発明の詳細を以下に示す。
<1> 繊維製品を構成している繊維に水溶性化合物を付着させる工程(A)と、工程(A)の後の繊維製品に対して平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子を付着させる工程(B)とを含む、繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<2> 工程(A)で、水溶性化合物及び希釈剤を含有する繊維処理剤組成物(A)を用いる、前記<1>に記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<3> 工程(B)で、平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子及び希釈剤を含有する繊維処理剤組成物(B)を用いて、繊維製品に前記疎水性微粒子を付着させる、前記<1>又は<2>記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<4> 水溶性化合物が水溶性フィルム形成性化合物である、前記<1>〜<3>の何れか1項記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<5> 水溶性フィルム形成性化合物が水溶性フィルム形成性アニオン性高分子化合物である、前記<4>に記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<6> 水溶性フィルム形成性アニオン性高分子化合物がカルボキシル基を含有する、前記<5>に記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<7> 水溶性化合物がポリアクリル酸である、前記<1>〜<6>の何れか1項記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<8> 疎水性微粒子が有機微粒子である、前記<1>〜<7>の何れか1項記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<9> 繊維製品が衣料である、前記<1>〜<8>の何れか1項記載の繊維製品への易洗浄性の付与方法。
<10> 水溶性化合物及び希釈剤を含有する繊維処理剤組成物(A)と、繊維処理剤組成物(A)により処理された繊維製品に用いられる、平均粒径1μm以上20μm以下の疎水性微粒子及び希釈剤を含有する繊維処理剤組成物(B)と、からなる、繊維製品用易洗浄性付与剤。
<11> 水溶性化合物が水溶性フィルム形成性化合物である、前繊維製品用易洗浄性付与剤。
<12> 水溶性フィルム形成性化合物が水溶性フィルム形成性アニオン性高分子化合物である、前記<11>に記載の繊維製品用易洗浄性付与剤。
<13> 水溶性フィルム形成性アニオン性高分子化合物がカルボキシル基を含有する、前記<12>に記載の繊維製品用易洗浄性付与剤。
<14> 水溶性化合物がポリアクリル酸である、前記<10>〜<13>の何れか1項記載の繊維製品用易洗浄性付与剤。
<15> 疎水性微粒子が有機微粒子である、前記<10>〜<14>の何れか1項記載の繊維製品用易洗浄性付与剤。
<16> 繊維製品が衣料である、前記<10>〜<15>の何れか1項記載の繊維製品用易洗浄性付与剤。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の「%」、「vol%」とあるのは、それぞれ「質量%」、「体積%」を表す。
【0044】
実施例1〜3、比較例1〜8
表1に示す繊維処理剤組成物で処理した処理布を洗浄した場合の洗浄力を、以下の方法で評価した。表1では、繊維処理剤組成物(A)や繊維処理剤組成物(B)に該当しないものも、便宜的にそれらの欄に示した。結果を表2に示す。
【0045】
<処理布の作製>
[工程(A)]
表1に示す繊維処理剤組成物(A)を、表2のように用いて、6cm×6cmポリエステルパレス布に0.5mlを滴下し、全体に均一に塗り広げた後、室温で乾燥させた。この処理では、水溶性化合物の付着量は、布質量に対して1.67%であった。一部の比較例では、工程(A)を行わなかった。
【0046】
[工程(B)]
工程(A)により作製した処理布に、表1に示す繊維処理剤組成物(B)を、表2のように用いてスプレーバイアルにより散布し、微粒子の質量が布質量に対して1.67%となるように処理した。その後常温で乾燥させ、処理布を得た。一部の比較例では、工程(B)を行わなかった。
【0047】
<汚染布の作製>
上記の処理布に汚れモデルとしてオレイン酸(和光純薬工業株式会社、生化学用99.0%:インジケータとしてオイルオレンジ0.03%により染色)0.1mlを滴下した。オレイン酸が十分に布上に広がるのを待つため、一晩放置(室温)することで作製した。
【0048】
<洗浄条件>
上記で作製した汚染布を、水又は洗剤を用いて以下の条件で洗浄した。
(1)水洗浄
ターゴトメータ(85r/min)
水の温度…20℃
洗浄時間…10分
洗濯水…イオン交換水(600ml)
脱水…1分
乾燥…25℃
【0049】
(2)洗剤洗浄
ターゴトメータ(85r/min)
水の温度…20℃
洗浄時間…10分
洗濯水…イオン交換水(600ml)に洗剤を溶解したもの
洗剤…市販洗剤「ウルトラアタックNeo」(花王(株)製)(2014年製造品)
洗剤濃度…0.0033%
すすぎ…和歌山市の水道水による流水すすぎ
脱水…1分
乾燥…25℃
【0050】
<洗浄率の算出>
洗浄後の布1枚を64分割に裁断し、重クロロホルム(和光純薬工業株式会社)2mlとともにバイアル瓶に入れ、超音波洗浄機で15分間抽出後、抽出液1mlとトリメチルシラン0.05vol%入り重クロロホルム(和光純薬工業株式会社)1mlを混合し、得られた混合液のうち0.7mlをH−NMR測定(NMR−MR4000、Agilent社)した。これにより得られるNMRスペクトル中のオレイン酸の二重結合部分の水素に対応する5.3ppmのピーク面積から、検量線を基に洗浄後に残ったオレイン酸量、すなわち、洗浄後に残った汚れ量を算出した。洗浄率(布からのオレイン酸脱脂率)は、下記式により算出した。結果を表2に示した。
洗浄率(%)=(付与した汚れ量−洗浄後に残った汚れ量)/付与した汚れ量×100
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示す成分は以下の通りである。
・ポリアクリル酸:和光純薬工業株式会社製 ポリアクリル酸(重量平均分子量100万、水溶性フィルム形成性アニオン性高分子化合物)
・ナイロン微粒子(1):東レ株式会社製 SP500(ナイロン12の平均粒径5μm球状微粒子、疎水性微粒子)
・ナイロン微粒子(2):東レ株式会社製 TR−1(ナイロン6の平均粒径13μm多孔質球状微粒子、疎水性微粒子)
・ポリスチレン微粒子:Thermo SCIENTIFIC Duke Standards(平均粒径2.0μm、疎水性微粒子)
・セルロース微粒子:SIGMA Sigmacell Cellulose(Type20、平均粒径20μm、親水性微粒子)
・メラミン微粒子:株式会社日本触媒製 EPOSTAR (平均粒径0.2μm、疎水性微粒子)
・アクリル微粒子:綜研化学株式会社 MP-2701(平均粒径0.4μm、疎水性微粒子)
【0053】
なお、繊維処理剤組成物A−1は、水溶性化合物としてポリアクリル酸を1%、イオン交換水を99%となるようにバイアル瓶に入れ、超音波洗浄機で処理することで溶解させて作製した。
繊維処理剤組成物A’−1はポリアクリル酸を1%、イオン交換水を98%として超音波洗浄機で処理して溶解させた液にナイロン微粒子1%を加え、撹拌することで作製した。
繊維処理剤組成物B−1、2、3およびB’−1、2、3は当該微粒子1%に酢酸エチル99%を加え、撹拌することで作製した。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例および比較例の結果から、本発明によれば、繊維に、油性汚れに対する優れた易洗浄化性能を付与することができる。