(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862050
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】被曝予防剤塗布装置及び被曝予防剤塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05B 1/14 20060101AFI20210412BHJP
B05B 15/68 20180101ALI20210412BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20210412BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20210412BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20210412BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20210412BHJP
A62B 18/02 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
B05B1/14 Z
B05B15/68
B05D7/00 K
B05D7/24 303C
B05D1/02 Z
B05D1/36 Z
!A62B18/02 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-84131(P2017-84131)
(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公開番号】特開2018-176137(P2018-176137A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】392022721
【氏名又は名称】株式会社和田電業社
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】和田 功
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−140081(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3128583(JP,U)
【文献】
特開2001−293404(JP,A)
【文献】
実開平1−56863(JP,U)
【文献】
特開2017−14643(JP,A)
【文献】
特開2004−290850(JP,A)
【文献】
特開2000−218201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−17/08
B05D 1/00− 7/26
A62B 7/00−33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着する者の鼻と口を覆う特殊形状のマスク本体部の外表面に、被曝予防剤を満遍なく塗布するための被曝予防剤塗布装置であって、マスク本体部の外表面を上方に向けて載置する基台と、基台の上方を移動しながらマスク本体部に向けて被曝予防剤を噴霧する吹き付け架台により構成され、吹き付け架台は、マスク本体部の外表面に向けて、被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で噴き付ける、一対のスプレーガンを備えていることを特徴とする被曝予防剤塗布装置。
【請求項2】
基台は略長方形状に形成され、吹き付け架台は、基台の上方において基台の長手方向に直交するように配置された横架部材を備えており、この横架部材に直交する方向に支持バーが配置され、この支持バーに一対のスプレーガンが取り付けられている請求項1に記載の被曝予防剤塗布装置。
【請求項3】
横架部材に直交する方向に複数の支持バーが配置され、それぞれの支持バーに一対のスプレーガンが取り付けられている請求項2に記載の被曝予防剤塗布装置。
【請求項4】
複数のマスク本体部は、収容ケースの中に並んでおり、収容ケースは基台上に載せられる請求項1または2に記載の被曝予防剤塗布装置。
【請求項5】
横架部材の支持バーに取り付けられている一対のスプレーガンは、支持バーにおいて若干離隔した状態で、噴出口が互いに内側を向くように斜めに配置されている請求項2に記載の被曝予防剤塗布装置。
【請求項6】
吹き付け架台の一対のスプレーガンは、マスク本体部の上方の所定の位置において、マスク本体部の外表面に向けて白金ナノ粒子を噴き付けた後、吹き付け架台を移動させて、白金ナノ粒子を再度噴き付ける請求項1又は2に記載の被曝予防剤塗布装置。
【請求項7】
マスク本体部は、装着する者の鼻を覆う急峻な曲面を有する鼻側覆面部と、装着する者の口を覆う緩やかな曲面を有する口側覆面部とから成る山形状に形成されており、マスク本体部の上方において、一対のスプレーガンのうち、一方側のスプレーガンの噴出口が鼻側覆面部に向けられ、他方側のスプレーガンの噴出口が口側覆面部に向けられている請求項1,4,6のいずれかに記載の被曝予防マスクの被曝予防剤塗布装置。
【請求項8】
噴出口が鼻側覆面部に向けられている一方側のスプレーガンは、垂線Cに対して37°の傾斜角度を有するように配置され、また、噴出口が口側覆面部に向けられている他方側のスプレーガンは、垂線Cに対して30°の傾斜角度を有するように配置されている請求項7に記載の被曝予防マスクの被曝予防剤塗布装置。
【請求項9】
装着する者の鼻と口を覆う特殊形状のマスク本体部の外表面に、被曝予防剤を満遍なく塗布するための被曝予防剤塗布方法であって、マスク本体部の外表面を上方に向けて載置する基台の上方を移動する吹き付け架台の横架部材に直交する方向に配置された支持バーの一対のスプレーガンからマスク本体部の外表面に向けて被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で噴き付ける第1噴き付け工程と、吹き付け架台を基台で所定の距離だけ移動させる移動工程と、吹き付け架台の移動した位置にてマスク本体部の外表面に向けて前記一対のスプレーガンによって被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で再度噴き付ける第2噴き付け工程とから成ることを特徴とする被曝予防マスクの被曝予防剤塗布方法。
【請求項10】
白金ナノ粒子を噴き付けたマスク本体部の外表面を、自然乾燥させる乾燥工程を含む請求項9に記載の被曝予防マスクの被曝予防剤塗布方法。
【請求項11】
白金ナノ粒子を噴き付けたマスク本体部の外表面を自然乾燥させる乾燥工程は、複数のマスク本体部を並べて収容した収容ケースを、ケージに掛けて行われる請求項10に記載の被曝予防マスクの被曝予防剤塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シンチレーション式の放射線計測器等を用いて放射線源の線量を計測するとき、或いは、放射線源に近い場所にて作業を行うとき
等に、放射線から作業員を守るために使用される被
曝予防マスクに対する、被曝予防剤塗布装置及び被曝予防剤塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、不可視の放射性物質は、口や鼻等から人体内部に侵入し、体内被曝を起こす。そこで、近年においては、放射性物質を吸着及び結晶化して可視状態とし、これによって体内被曝を防ぐためのマスクやクロス等が開発されている。
【0003】
因みに、防塵性能の高いN−95フィルタに白金ナノ粒子を塗布して担持させたマスクは、高濃度の放射性物質を強力に吸着し結晶化及び発色させ、放射性物質をマスク表面に止めて体内被曝を予防することができる。
【0004】
また、従来においては、特許文献1に示すように、形状保持性、通気性に優れ、かつ、微粒子捕捉性の高い使い捨てマスクが提案されている。
【0005】
即ち、この使い捨てマスクは、マスク本体部が外側不織布層と内側不織布層とを少なくとも備える多層構成であり、外側不織布層を構成する不織布は、面積比率で3%以上15%以下の圧縮凹部が形成されており、KES通気性試験機による通気抵抗値が0.01kPa・s/m以上0.05kPa・s/mであり、内側不織布層を構成する不織布の通気抵抗値は、外側不織布層を構成する不織布より大きくフィルタ効果を有している。
【0006】
また、この特許文献1では、外側不織布層と前記内側不織布層とがホットメルトによって接合されており、前記ホットメルトの塗布量が1.0以上3.0g/m
2以下である。このホットメルトの塗布方法としては、従来公知のカーテンコート等の他、全面塗布や、ポイント塗布のような非全面塗布であっても良いものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−217461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した様に、従来の被曝防止用のマスクにおいては、通気性を低下させることなく、白金ナノ粒子を均一に塗布することが必要不可欠である。
【0009】
しかし、上記した、特許文献1による、例えば、マスク全面へのホットメルト塗布技術を、白金ナノ粒子の塗布技術として応用したとしても、塗布量が1.0以上3.0g/m
2以下であるため、マスク全面にムラなく均一に
塗布することは困難である。
【0010】
因みに、従来のマスクは、鼻を覆う位置に相当する側が急峻な曲面を有し、口を覆う位置に相当する側が緩やかな曲面を有することから、白金ナノ粒子の塗布作業を実施する場合には、これらの両曲面にムラなく塗布できるよう、その都度、マスク全体の向きを変えなければならず、費やされる時間と労力が極めて大きいものとなる。
【0011】
しかも、このような連続した塗布作業では、マスク全面にわたって白金ナノ粒子のムラが生じ易く、且つ通気性も劣るものとなる。
【0012】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、マスク自体の通気性を維持したまま、白金ナノ粒子をマスク全面にムラなく塗布することができ、しかも、極めて短時間のうちに塗布作業を完了することができる被
曝予防マスクに対する、被曝予防剤塗布装置及び被曝予防剤塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る請求項1の発明は、装着する者の鼻と口を覆う特殊形状のマスク本体部の外表面に、被曝予防剤を満遍なく塗布するための被曝予防剤塗布装置であって、マスク本体部の外表面を上方に向けて載置する基台と、基台の上方を移動しながらマスク本体部に向けて被曝予防剤を噴霧する吹き付け架台により構成され、吹き付け架台は、マスク本体部の外表面に向けて、被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で噴き付ける、一対のスプレーガンを備えていることで、上述した課題を解決した。
【0014】
この請求項1に係る被曝予防剤塗布装置によれば、基台の上方を移動する吹き付け架台に備えた一対のスプレーガンから、移動の前後において、白金ナノ粒子をマスク本体部に向けて異なる角度で噴き付けるので、極めて短時間のうちに白金ナノ粒子の塗布作業を完了させることができる。これにより、高濃度の放射性物質を強力に吸着し結晶化及び発色させ、放射性物質をマスク本体部の表面に止めて体内被曝を予防することができる。
【0015】
本発明に係る請求項2の発明は、基台は略長方形状に形成され、吹き付け架台は、基台の上方において基台の長手方向に直交するように配置された横架部材を備えており、この横架部材に直交する方向に支持バーが配置され、この支持バーに一対のスプレーガンが取り付けられていることで、上述した課題を解決した。
【0016】
この請求項2に係る被曝予防剤塗布装置によれば、スプレーガンによる白金ナノ粒子の塗布作業を効率良く行うことができ、被曝防止用マスクの低コストによる量産化が可能となる。
【0017】
本発明に係る請求項3の発明は、横架部材に直交する方向に複数の支持バーが配置され、それぞれの支持バーに一対のスプレーガンが取り付けられていることで、上述した課題を解決した。
【0018】
この請求項3に係る被曝予防剤塗布装置によれば、それぞれの支持バーに取り付けられた各スプレーガンによって、極めて短時間のうちに白金ナノ粒子の塗布作業を完了させることができ、被曝防止用マスクの低コストによる量産化が可能となる。
【0019】
本発明に係る請求項4の発明は、複数のマスク本体部は、収容ケースの中に並んでおり、収容ケースは基台上に載せられることで、上述した課題を解決した。
【0020】
この請求項4に係る被曝予防剤塗布装置によれば、収容ケースの中に並んでいる複数のマスク本体部の全てに対して、極めて短時間のうちに白金ナノ粒子の塗布作業を完了させることができる。
【0021】
しかも、多数のマスク本体部を収容ケースに設置したままの状態で、全てのマスク本体部に、白金ナノ粒子を均一に噴き付けることが可能となる。そのため、従来のように、マスク本体部の向きを変えながら塗布するという、面倒な作業を省略する事ができる。
【0022】
本発明に係る請求項5の発明は、横架部材の支持バーに取り付けられている一対のスプレーガンは、支持バーにおいて若干離隔した状態で、噴出口が互いに内側を向くように斜めに配置されていることで、上述した課題を解決した。
【0023】
この請求項5に係る被曝予防剤塗布装置によれば、一対のスプレーガンによって、マスク本体部の全面に対し、白金ナノ粒子を確実に均一となるように噴き付けることができる。
【0024】
本発明に係る請求項6の発明は、吹き付け架台の一対のスプレーガンは、マスク本体部の上方の所定の位置において、マスク本体部の外表面に向けて白金ナノ粒子を噴き付けた後、吹き付け架台を移動させて、白金ナノ粒子を再度噴き付けることで、上述した課題を解決した。
【0025】
この請求項6に係る被曝予防剤塗布装置によれば、吹き付け架台の移動を介して、白金ナノ粒子を2回噴き付けることにより、マスク本体部の全面に対し、白金ナノ粒子を確実に均一となるように噴き付けることができる。
【0026】
本発明に係る請求項7の発明は、マスク本体部は、装着する者の鼻を覆う急峻な曲面を有する鼻側覆面部と、装着する者の口を覆う緩やかな曲面を有する口側覆面部とから成る山形状に形成されており、マスク本体部の上方において、一対のスプレーガンのうち、一方側のスプレーガンの噴出口が鼻側覆面部に向けられ、他方側のスプレーガンの噴出口が口側覆面部に向けられていることで、上述した課題を解決した。
【0027】
この請求項7に係る被曝予防剤塗布装置によれば、一対のスプレーガンにより、急峻な曲面を有する鼻側覆面部と緩やかな曲面を有する口側覆面部の全面に対し、白金ナノ粒子を確実に均一となるように噴き付けることができる。
【0028】
本発明に係る請求項8の発明は、噴出口が鼻側覆面部に向けられている一方側のスプレーガンは、垂線Cに対して37°の傾斜角度を有するように配置され、また、噴出口が口側覆面部に向けられている他方側のスプレーガンは、垂線に対して30°の傾斜角度を有するように配置されていることで、上述した課題を解決した。
【0029】
この請求項8に係る被曝予防剤塗布装置によれば、急峻な曲面を有する鼻側覆面部に噴射口が対向するように、垂線Cに対して37°の傾斜角度を有する一方側のスプレーガンが配置され、また、緩やかな曲面を有する口側覆面部に噴射口が対向するように、垂線Cに対して30°の傾斜角度を有する他方側のスプレーガンが配置されることから、マスク本体部の外表面全体に渡って、均一となるよう白金ナノ粒子を確実に噴き付けることができる。
【0030】
本発明に係る請求項9の発明は、装着する者の鼻と口を覆う特殊形状のマスク本体部の外表面に、被曝予防剤を満遍なく塗布するための被曝予防剤塗布方法であって、マスク本体部の外表面を上方に向けて載置する基台の上方を移動する吹き付け架台の横架部材に直交する方向に配置された支持バーの一対のスプレーガンからマスク本体部の外表面に向けて被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で噴き付ける第1噴き付け工程と、吹き付け架台を基台上で所定の距離だけ移動させる移動工程と、吹き付け架台の移動した位置にてマスク本体部の外表面に向けて前記一対のスプレーガンによって被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で再度噴き付ける第2噴き付け工程と、から成ることで、上述した課題を解決した。
【0031】
この請求項9に係る被曝予防剤塗布方法によれば、第1噴き付け工程、移動工程、第2噴き付け工程による一連の動作によって、マスク本体部の各全面に対し、白金ナノ粒子を確実に均一となるように吹き付けることができる。
【0032】
そのため、高濃度の放射性物質を強力に吸着して結晶化及び発色させ、放射性物質をマスク本体部の表面に止めて、体内被曝を予防することができる。また、被曝防止用マスクの、低コストによる量産化が可能となる。
【0033】
本発明に係る請求項10の発明は、白金ナノ粒子を噴き付けたマスク本体部の外表面を、自然乾燥させる乾燥工程を含むことで、上述した課題を解決した。
【0034】
この請求項10に係る被曝予防剤塗布方法によれば、マスク本体部の各全面に対して均一に噴き付けた後の白金ナノ粒子を自然乾燥させることで、高濃度の放射性物質を強力に吸着して結晶化及び発色させ、放射性物質をマスク本体部の表面に止めることができる被
曝予防マスクを、容易に製造できる。
【0035】
本発明に係る請求項11の発明は、白金ナノ粒子を噴き付けたマスク本体部の外表面を自然乾燥させる乾燥工程は、複数のマスク本体部を並べて収容した収容ケースを、ケージに掛けて行われることで、上述した課題を解決した。
【0036】
この請求項11に係る被曝予防剤塗布方法によれば、ケージに掛けられた収容ケース内の複数のマスク本体部の各全面に対して、均一に噴き付けた後の白金ナノ粒子を自然乾燥させることで、高濃度の放射性物質を強力に吸着して結晶化及び発色させることのできる大量の被
曝予防マスクを容易に製造できる。
【0037】
そのため、放射性物質を表面に止めて体内被曝を予防することができる被曝防止用マスクの、低コストによる量産化が可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、マスク自体の通気性を維持したまま、白金ナノ粒子をマスク全面にムラなく塗布することができ、しかも、極めて短時間のうちに塗布作業を完了することができる。
【0039】
また、急峻な曲面を有する鼻側覆面部と緩やかな曲面を有する口側覆面部に対し、白金ナノ粒子を確実に均一となるように噴き付けることができる。
【0040】
さらに、本発明によれば、複数のマスク本体部を設置したままの状態で、全てのマスク本体部に白金ナノ粒子を均一となるように噴き付けることができる。
【0041】
そのため、従来のように、マスク本体部の向きを変えながら塗布するという面倒な作業を省略する事ができ、被曝防止マスクの製造効率を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】マスク本体部への被曝防止剤の塗布作業の概略を示す斜視図である。
【
図2】2つのスプレーガンのマスク本体部に対する傾斜角度の設定状態を示す側面図である。
【
図3】マスクを収容した載置台の一例を示す斜視図である。
【
図4】被曝予防剤塗布装置の概略を示す斜視図である。
【
図5】可搬式の自動スプレーガンの構成を示す斜視図である。
【
図6】マスクを収容した載置台の乾燥工程における設置状態の一例を示す斜視図である。
【
図8】被曝予防剤塗布装置の他例を示す斜視図である。
【
図9】被曝予防剤塗布装置の他例において、2つのスプレーガンのマスク本体部に対する傾斜角度の設定状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<実施の形態>
以下に、図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0044】
<マスクの構成>
図1、
図2、及び
図7に示すように、マスク本体部1は、装着する者の鼻を覆う急峻な曲面を有し且つ鼻当て用の帯状の補形部材Hを内包若しくは貼着した鼻側覆面部1Aと、装着する者の口を覆う緩やかな曲面を有する口側覆面部1Bとから成る山形状に形成された特殊形状となっている。
【0045】
また、マスク本体部1の左右両側には、耳掛け部2、若しくは、後頭部掛け部2が備えられている。尚、このような両面部1A,1Bを備えた特殊形状のマスクに限定されることはなく、様々な山形形状のマスク本体部1にも適用可能である。
【0046】
<被曝予防剤塗布装置の構成>
本実施形態に係る被曝予防剤塗布装置は、装着する者の鼻と口を覆う上記した特殊形状のマスク本体部1の外表面に、被曝予防剤を満遍なく塗布するものである。
【0047】
具体的には、
図4に示すように、マスク本体部1の外表面を上方に向けて載置する基台11と、基台11の上方を移動しながらマスク本体部1に向けて被曝予防剤を噴霧する吹き付け架台12Aにより構成されている。
【0048】
この吹き付け架台12Aは、マスク本体部1の外表面に向けて、被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で噴き付ける、一対のスプレーガンSP1,SP2を備えている。
【0049】
上記基台11は、
図4に示すように、略長方形状に形成され、下部の四隅に脚部11Aを備え、上面には、左右一対の壁部11B,11Cによって囲まれた収容空間部Pを備えている。
【0050】
また、一方の壁部11Bの外側には、当該壁部11Bの長さ方向に沿ってレール状の溝部11Dが設けられ、この溝部11Dに沿って吹き付け架台12Aが基台11の長手方向(前後方向)に沿って移動できるようになっている。
【0051】
即ち、
図4に示すように、溝部11Dの一端側には吹き付け架台12Aを動かすための駆動用モータMが取り付けられ、駆動用モータMの駆動軸には、不図示の棒ネジが連結されて溝部11Dの内側に配されている。
【0052】
そして、吹き付け架台12Aの下端には、溝部11Dに沿って摺動するスライダ12Bが設けられ、スライダ12Bの下面には、前記棒ネジがねじ込められた不図示のナット部材が固定されている。これによって、駆動用モータMが作動して棒ネジが回転すると、ナット部材を介してスライダ12Bが吹き付け架台12Aと供に、溝部11Dに沿って移動する。
【0053】
吹き付け架台12Aは、基台11の上方において、基台11の長手方向に直交するように配置された横架部材12を備えている。
【0054】
横架部材12には、
図4に示すように、横架部材12に直交する方向、即ち収容空間部Pの長さ方向に沿ってアーチ状の複数の支持バー12Cが収容空間部Pの幅方向に沿って等間隔毎に並置され、それぞれの支持バー12Cの両端には、スプレーガンSP1,SP2が取り付けられている。
【0055】
横架部材12の支持バー12Cに取り付けられている一対のスプレーガンSP1,SP2は、支持バー12Cにおいて若干離隔した状態で、噴出口が互いに内側を向くように斜めに配置されている。
【0056】
即ち、
図2に示すように、スプレーガンSP1,SP2のうち一方側SP1は、垂線Cに対して角度37°となって、下方の収容空間部Pに設置された後述する収容ケース13内の所定のマスク本体部1の鼻側覆面部1Aに向けられ、スプレーガンSP1,SP2のうち他方側SP2は、垂線Cに対して角度30°となって、下方の収容空間部Pに設置された後述する収容ケース13内の所定のスク本体部1の口側覆面部1Bに向けられている。
【0057】
図3に示すように、複数のマスク本体部1は、収容ケース13の中に並んでおり、収容ケース13は基台11上の収容空間部Pに配置される。
【0058】
この収容ケース13の中には、長さ方向に沿っての2枚の縦枠13Aと幅方向に沿っての4枚の横枠13Bとを備えて、幅方向に3個で前後長さ方向に5個となって合計15個の桝目となって仕切られている。
【0059】
これら各桝目の内側には前後一対の支持枠14が内底部から起立している。これら桝目の支持枠14には、マスク本体部1の外表面(前面)が上方に向けられ、且つ、鼻側覆面部1A側(又は口側覆面部1B側)が同じ方向に向くようにして載せられる。
【0060】
そして、マスク本体部1の上方において、上記した一対のスプレーガンSP1,SP2のうち、一方側のスプレーガンSP1の噴出口が鼻側覆面部1Aに向けられ、他方側のスプレーガンSP2の噴出口が口側覆面部1Bに向けられる。
【0061】
上記した吹き付け架台12Aの一対のスプレーガンSP1,SP2は、マスク本体部1の上方の所定の位置において、マスク本体部1の外表面に向けて白金ナノ粒子を噴き付けた後、吹き付け架台12Aを移動させて、白金ナノ粒子を再度噴き付けるものとしている。この詳細については後述する。
【0062】
<可搬式の自動スプレーガンの構成>
図5に示すように、スプレーガンSP1,SP2は、カートによって移動可能としたデジタル制御式のコントロールユニット21を介して、加圧タンク22に接続されている。
【0063】
また、スプレーガンSP1,SP2のノズルは、中央の噴霧エアー・液ラインを挟んで2つのファンエアーを備えている。
【0064】
そして、上記コントロールユニット21による圧力調整の下で、被曝防止剤としての白金ナノ粒子はナノコロイド状の液となって中央の噴霧エアー・液ラインから吐出する。
【0065】
<乾燥用のケージの構成>
スプレーガンSP1,SP2によって、収容ケース3内の各マスク本体部1の外表面(前面)が白金ナノ粒子によって塗布された後には、収容ケース13は、
図6に示すように、上下複数段となってラック状に配置されたケージ31に掛けられ、例えばドライヤ、送風機、あるいは自然乾燥によってマスク本体部1は乾燥される。
【0066】
即ち、このケージ31は、底部の下面四隅にキャスタKを備えた縦長の矩形枠体31Aによって形成され、矩形枠体31Aの左右側で相対向するよう、上下方向に沿って等間隔毎にL字状の、例えば、アングル材等による支持枠32が配置されている。収容ケース13はこの両側の支持枠32に架けられて乾燥される。
【0067】
<被曝予防剤塗布装置の他の構成>
図8及び
図9は、被曝予防剤塗布装置の他の構成を示すものであ。
【0068】
本例においては、
図8に示すように、横架部材12に対し収容空間部Pの長さ方向に沿った前後対称な位置に棒状の一対の支持バー12CA、12CBが、横架部材12と略並行となるように設けられている。
【0069】
そして、一方(前側)の支持バー12CAには、その長さ方向に沿って略等間隔となるように、複数のスプレーガンSP1が取り付けられている。また、他方(後側)の支持バー12CBにも、その長さ方向に沿って略等間隔となるように、複数のスプレーガンSP2が取り付けられている。
【0070】
この他、横架部材12の一端側には、収容空間部Pの長さ方向に沿って水平位置調整用の支持架台12Dが設けられ、支持バー12CA,12CBそれぞれの一端は、この支持架台12Dに若干離隔した状態に載架されている。そして、支持バー12CA,12CBそれぞれに取り付けられているスプレーガンSP1,SP2は、噴出口が互いに内側を向くように斜めに配置される。
【0071】
即ち、
図9に示すように、スプレーガンSP1,SP2のうち一方側SP1は、垂線Cに対して角度37°となって、下方の収容空間部Pに設置された後述する収容ケース13内の所定のマスク本体部1の鼻側覆面部1Aに向けられている。また、スプレーガンSP1,SP2のうち他方側SP2は、垂線Cに対して角度30°となって、下方の収容空間部Pに設置された後述する収容ケース13内の所定のスク本体部1の口側覆面部1Bに向けられている。
【0072】
<被曝予防剤塗布方法>
次に、本実施形態に係る被曝予防剤塗布方法について説明する。
【0073】
先ず、複数のマスク本体部1を収容ケース13の各桝目に外表面を上にして且つ全てが同じ向きとなるように載置し、この収容ケース13を基台11の収容空間部P内に設置する。
【0074】
このとき、収容ケース13のこれら各桝目の支持枠14には、マスク本体部1の鼻側覆面部1A側(又は口側覆面部1B側)が同じ方向、例えば、基台11の収容空間部Pの前方側に向くよう整列させた状態となって載せられる。
【0075】
次に、基台11の上方を移動する吹き付け架台12Aの横架部材12に直交する方向に配置された支持バー12Cの一対のスプレーガンSP1,SP2から、マスク本体部1の外表面に向けて被曝予防剤としての白金ナノ粒子を異なる角度で噴き付ける(第1噴き付け工程)。
【0076】
このとき、
図2に示すように、スプレーガンSP1,SP2のうち一方側SP1は、垂線Cに対して角度37°となって急峻な曲面を有する鼻側覆面部1Aに向けられ、スプレーガンSP1,SP2のうち他方側SP2は、垂線Cに対して角度30°となって緩やかな曲面を有する口側覆面部1Bに向けられて、各スプレーガンSP1,SP2から同時に被曝防止剤としての白金ナノ粒子がナノコロイド状の液となって噴出される。
【0077】
次いで、駆動用モータMを作動させ、基台11上で吹き付け架台12Aを溝部11Dに沿って所定の時間(距離)だけ摺動させる。このとき、
図1に示すように、マスク本体部1に対し、スプレーガンSP1,SP2を備えた吹き付け架台12Aは所定の距離だけ、例えば、前方に移動する(移動工程)。
【0078】
尚、この移動距離は、マスク本体部1に対してスプレーガンSP1,SP2の噴射方向が、鼻側覆面部1A及び口側覆面部1Bから逸脱しない程度の僅かな距離(例えば、数cm程度)である。
【0079】
次いで、吹き付け架台12Aの移動した位置において、マスク本体部1の外表面に向けて一対のスプレーガンSP1,SP2から白金ナノ粒子を再度噴き付ける(第2噴き付け工程)。これにより、スプレーガンSP1,SP2のうち一方側SP1が鼻側覆面部1Aの略全体にわたって白金ナノ粒子が噴き付けられると同時に、スプレーガンSP1,SP2のうち他方側SP2が口側覆面部1Bの略全体にわたって白金ナノ粒子が噴き付けられることとなる。
【0080】
次いで、基台11の収容空間部P内から収容ケース13を取り出し、
図6に示すように、ケージ31の支持枠32に架けられ、例えばドライヤ、送風機、或いは自然乾燥等によって、白金ナノ粒子を噴き付けたマスク本体部1の表面を乾燥させる(乾燥工程)。
【0081】
以上、説明したように、本実施形態では、マスク本体部1自体の通気性を維持したまま、白金ナノ粒子をマスク本体部1の全面にムラなく塗布することができ、しかも、極めて短時間のうちに塗布作業を完了することができる。
【0082】
尚、上記した本実施形態においては、基台11の収容空間部Pに収容ケース13が不動となって載置され、スプレーガンSP1,SP2を備えた吹き付け架台12Aを前後方向に移動させているが、これに限らず、スプレーガンSP1,SP2を備えた吹き付け架台12Aを基台11に固定しておき、収容ケース13が基台11の収容空間部P内で前後方向に移動できるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、放射線から作業員を守るために使用される被
曝予防マスクとして、種々の作業現場において、幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0084】
SP1…スプレーガン
SP2…スプレーガン
P…収容空間部
K…キャスタ
C…垂線
M…駆動用モータ
H…補形部材
1…マスク本体部
1A…鼻側覆面部
1B…口側覆面部
2…耳掛け部、若しくは、後頭部掛け部
11…基台
11A…脚部
11B…壁部
11C…壁部
11D…溝部
12…横架部材
12A…吹き付け架台
12B…スライダ
12C…支持バー
12CA…支持バー
12CB…支持バー
12D…支持架台
13…収容ケース
13A…縦枠
13B…横枠
14…支持枠
21…コントロールユニット
22…加圧タンク
31…ケージ
31A…矩形枠体
32…支持枠