(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862053
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】取り付け器具、消火システム、及び撹拌方法
(51)【国際特許分類】
A62C 35/10 20060101AFI20210412BHJP
A62D 1/06 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
A62C35/10
A62D1/06
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-114121(P2017-114121)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-202072(P2018-202072A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】川尻 朋之
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−090782(JP,A)
【文献】
特開2009−142420(JP,A)
【文献】
特開2010−273925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
A62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応によって消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置の取り付け器具であって、
前記エアロゾル消火装置を保持する保持部と、
前記消火用エアロゾルの発生時における反応熱で発電する熱電変換素子と、
前記熱電変換素子が発電した電力を供給するための端子と、
を備える、取り付け器具。
【請求項2】
前記熱電変換素子は、前記保持部が前記エアロゾル消火装置を保持したときに、前記エアロゾル消火装置と接触するように配置される、
請求項1に記載の取り付け器具。
【請求項3】
前記エアロゾル消火装置が発生した熱を前記熱電変換素子に伝達する熱伝達部をさらに備える、
請求項1に記載の取り付け器具。
【請求項4】
化学反応によって消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置と、
前記エアロゾル消火装置を取り付ける請求項1から3のいずれか一項に記載の取り付け器具と、
前記取り付け器具が備える端子が供給する電力で駆動し、前記エアロゾル消火装置が発生した消火用エアロゾルを撹拌するファンと、
を備える消火システム。
【請求項5】
前記取り付け器具が備える端子が供給する電力で作動し、前記エアロゾル消火装置が作動したことを通知する通知部をさらに備える、
請求項4に記載の消火システム。
【請求項6】
化学反応によって消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置が作動したときに発生する熱を電力に変換するステップと、
変換した電力を動力として前記エアロゾル消火装置が発生したエアロゾルを撹拌するためのファンを駆動するステップと、
を含む、消火用エアロゾルの撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り付け器具、消火システム、及び撹拌方法に関し、特に、化学反応(例えば、燃焼)によって消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置を利用した消火技術に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの互いに反応可能な反応物を含む固体燃料組成又は媒体を燃焼させることにより、消火用のエアロゾルを必要なときにその場で生成する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平8−511958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消火用エアロゾルの発生時間は十数秒から数十秒程度であることが多く、また、噴射方向も固定されている。そのため、従来のエアロゾル消火装置は、比較的狭い空間での使用を前提としている。エアロゾル消火装置が発生する消火用エアロゾルは拡散しづらいため、エアロゾル消火装置に離れた位置の火災を消す能力を担わせたい。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、エアロゾル消火装置が発生する消火用エアロゾルを拡散させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、化学反応によって消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置の取り付け器具である。この取り付け器具は、前記エアロゾル消火装置を保持する保持部と、前記消火用エアロゾルの発生時における反応熱で発電する熱電変換素子と、前記熱電変換素子が発電した電力を供給するための端子と、を備える。
【0007】
前記熱電変換素子は、前記保持部が前記エアロゾル消火装置を保持したときに、前記エアロゾル消火装置と接触するように配置されてもよい。
【0008】
前記取り付け器具は、前記エアロゾル消火装置が発生した熱を前記熱電変換素子に伝達する熱伝達部をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の第2の態様は、消火システムである。このシステムは、化学反応によって消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置と、上述した前記エアロゾル消火装置を取り付ける取り付け器具と、前記取り付け器具が備える端子が供給する電力で駆動し、前記エアロゾル消火装置が発生した消火用エアロゾルを撹拌するファンと、を備える。
【0010】
前記消火システムは、前記取り付け器具が備える端子が供給する電力で作動し、前記エアロゾル消火装置が作動したことを通知する通知部をさらに備えてもよい。
【0011】
本発明の第3の態様は、消火用エアロゾルの撹拌方法である。この方法は、化学反応によって消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置が作動したときに発生する熱を電力に変換するステップと、変換した電力を動力として前記エアロゾル消火装置が発生したエアロゾルを撹拌するためのファンを駆動するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エアロゾル消火装置が発生するエアロゾルを拡散させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る消火システムの概観を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る取り付け器具の構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係る取り付け器具の別の構成を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る取り付け器具における媒質の流れを説明するための模式図である。
【
図5】エアロゾル消火装置の作動時に消火システムにおいて実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態の概要>
図1を参照して、実施の形態の概要を述べる。
図1は、実施の形態に係る消火システムSの概観を模式的に示す図である。実施の形態に係る消火システムSは、火災防壁Wに囲まれた防護空間に設置される。
【0015】
図1に示す例では、消火システムSは、第1取り付け器具1aを用いて防護空間の天井に取り付けられた第1エアロゾル消火装置2a、第2取り付け器具1bを用いて防護空間の天井に取り付けられた第2エアロゾル消火装置2b、第3取り付け器具1cを用いて防護空間の天井に取り付けられた第3エアロゾル消火装置2c、及び第4取り付け器具1dを用いて防護空間の天井に取り付けられた第4エアロゾル消火装置2dの、4つのエアロゾル消火装置2を備えている。しかしながら、消火システムSが備える取り付け器具1及びエアロゾル消火装置2の数は4に限られず、1個、2個、3個、又は5個以上であってもよい。
【0016】
以下本明細書において、第1取り付け器具1aから第4取り付け器具1dまでを特に区別する場合を除いて、単に取り付け器具1と記載する。同様に、第1エアロゾル消火装置2aから第4エアロゾル消火装置2dまでを特に区別する場合を除いて、単にエアロゾル消火装置2と記載する。
【0017】
エアロゾル消火装置2は、熱検知機能を装備している。このため、エアロゾル消火装置2は、火災によって熱が発生したことを検知すると、外部からの制御信号を受信することなく、自動で消火用エアロゾルAを発生させる。エアロゾル消火装置2は既知の消火装置であるため詳細は省略するが、エアロゾル消火装置2は熱を検知すると、化学反応によって消火用エアロゾルAを発生させる。このため、エアロゾル消火装置2が消火用エアロゾルAを発生させると、エアロゾル消火装置2の筐体となっている金属の容器の温度は、反応熱によって上昇する。
【0018】
エアロゾル消火装置2の種類にもよるが、一例として、エアロゾル消火装置2はおよそ30秒程度の間、消火用エアロゾルAを発生させる。あるエアロゾル消火装置2の温度変化について本発明の発明者が測定したところ、このエアロゾル消火装置2の筐体は、消火用エアロゾルの発生からおよそ180秒後に210度にまで達し、その後20分を経過するまで100度以上の温度を維持していた。
【0019】
そこで、実施の形態に係る消火システムSが備える取り付け器具1は、エアロゾル消火装置2を天井などの所定の位置に取り付けるとともに、エアロゾル消火装置2が消火時に発生させた熱を電力に変換する機能も有している。また、実施の形態に係る取り付け器具1は、変換した電力を外部に供給するための端子も備えている。
【0020】
このため、実施の形態に係る消火システムSは、エアロゾル消火装置2の作動時に、エアロゾル消火装置2の発熱を利用して発電した電力を用いて、他の電子機器を作動することができる。つまり、実施の形態に係る消火システムSは、エアロゾル消火装置2による消火用エアロゾルAの発生と、他の電子機器の作動とを、外部からの制御を介在させることなく連動することができる。
【0021】
例えば、実施の形態に係る消火システムSは、各取り付け器具1が備える端子が供給する電力で駆動するファン3を備えている。
図1に示す例では、第1取り付け器具1a、第2取り付け器具1b、第3取り付け器具1c、及び第4取り付け器具1dの各取り付け器具1には、それぞれ第1ファン3a、第2ファン3b、第3ファン3c、及び第4ファン3dが接続されている。以下本明細書において、第1ファン3aから第4ファン3dまでを特に区別する場合を除いて、単に「ファン3」と記載する。
【0022】
図1に示すように、各ファン3は、各エアロゾル消火装置2における消火用エアロゾルAの噴出口の近辺に配置される。このため、各エアロゾル消火装置2が消火用エアロゾルAを噴出させることと連動して、各取り付け器具1に接続されたファン3が作動する。
【0023】
この結果、ファン3は、エアロゾル消火装置2が噴出させた消火用エアロゾルAを撹拌することができる。ゆえに、消火システムSは、防護空間内に消火用エアロゾルAを拡散させることができる。
【0024】
また、消火システムSは、エアロゾル消火装置2が作動したことを外部に通知する通知部4も備えている。
図1には、第1エアロゾル消火装置2aが作動したことを通知する第1通知部4a、第2エアロゾル消火装置2bが作動したことを通知する第2通知部4b、第3エアロゾル消火装置2cが作動したことを通知する第3通知部4c、及び第4エアロゾル消火装置2dが作動したことを通知する第4通知部4dが図示されている。以下本明細書において、第1通知部4aから第4通知部4dまでを特に区別する場合を除いて、単に「通知部4」と記載する。通知部4は、取り付け器具1が備える端子が供給する電力で作動する。
【0025】
受信機5は、各通知部4が通知した信号を受信すると、防護空間で火災が起きたことを図示しない管理室等に通知する。取り付け器具1の通知部4はエアロゾル消火装置2の作動と連動するため、取り付け器具1は、防護空間内の火災をいち早く外部に通知することができる。
【0026】
以下、実施の形態に係る取り付け器具1についてより詳細に説明する。
図2は、実施の形態に係る取り付け器具1の構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る取り付け器具1は、化学反応によってエアロゾルを発生するエアロゾル消火装置2を壁や天井等に取り付けるための取り付け器具である。このため、取り付け器具1は、エアロゾル消火装置2を保持するための保持部10を備えている。
【0027】
図2に示すエアロゾル消火装置2は金属製の円柱形上の缶が筐体となっている。このため、保持部10も、エアロゾル消火装置2の表面を被覆して把持するために筒形状となっている。なお、
図2に示す保持部10は、エアロゾル消火装置2の把持を容易にするために、第1保持部10aと第2保持部10bとの二つの部材から構成される。図示はしないが、第1保持部10aと第2保持部10bとは、エアロゾル消火装置2の表面を被覆した状態で互いに固定することができる。
【0028】
煩雑となることを防ぐために
図2においては第2保持部10bにのみ図示しているが、第1保持部10aと第2保持部10bとの表面には、エアロゾル消火装置2がエアロゾルを発生させるときの反応で発電する熱電変換素子11が備えられている。熱電変換素子11は、例えば既知のゼーベック効果を利用した熱電変換素子で実現できる。
【0029】
より具体的には、熱電変換素子11は、保持部10がエアロゾル消火装置2を保持したときに、エアロゾル消火装置2と接触するように配置されている。このため、エアロゾル消火装置2がエアロゾルを発生させるときに発生する熱が熱電変換素子11に効率よく伝導する。結果として、エアロゾル消火装置2の発熱を利用した熱電変換素子11の発電効率を高めることができる。
【0030】
端子12は、熱電変換素子11が発電した電力を外部の装置に供給するための端子である。取り付け器具1は端子12を備えているため、上述したファン3及び通知部4が駆動するための電力を供給することができる。
【0031】
図3は、実施の形態に係る取り付け器具1の別の構成を模式的に示す図である。
図3に示す取り付け器具1は、
図2に示す取り付け器具1とは異なり、保持部10の表面には熱電変換素子11が配置されておらず、保持部10から離れた素子設置台13に配置されている。
【0032】
保持部10と素子設置台13とは熱伝達部14を介して熱的に接続されている。そのため、エアロゾル消火装置2が発生した熱は熱伝達部14及び素子設置台13を介して保持部10から熱電変換素子11に伝達される。保持部10、素子設置台13、及び熱伝達部14の内部は、熱を伝達するための媒質Fによって満たされている。
【0033】
図4は、実施の形態に係る取り付け器具1における媒質Fの流れを説明するための模式図であり、
図3に示す取り付け器具1の断面を模式的に示す図である。
図4に示すように、媒質Fは、保持部10、素子設置台13、及び熱伝達部14の内部を満たしている。
【0034】
図4中、白抜きの矢印は媒質Fの流れを示している。エアロゾル消火装置2の発熱によって暖められた媒質Fは、熱伝達部14を通って熱伝達部14に流れ込む。熱伝達部14に流れ込んだ媒質Fは熱伝達部14内の流路をめぐり、熱を熱電変換素子11に伝達する。熱伝達部14を出た媒質Fは熱伝達部14を通って再び保持部10に戻る。限定はしないが、一例として、媒質Fは水である。この場合、保持部10はエアロゾル消火装置2のウォータージャケットということもできる。また、熱伝達部14は、水の導通路となるパイプである。熱伝達部14の表面は、断熱性の部材で被覆されていてもよい。
【0035】
なお、
図3及び
図4に示す取り付け器具1も、
図2に示す取り付け器具1と同様に、端子12を備えている。このため、取り付け器具1は、熱電変換素子11が発電した電力を外部の装置に供給することができる。
【0036】
<エアロゾル消火装置2の作動時における消火システムSの処理フロー>
図5は、エアロゾル消火装置2の作動時に消火システムSにおいて実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0037】
エアロゾル消火装置2は、設置された防護空間内の熱を検知する(S2)。エアロゾル消火装置2は、化学反応によって消火用エアロゾルAを発生させる(S4)。取り付け器具1が備える熱電変換素子11は、エアロゾル消火装置2が消火用エアロゾルAを発生させる際の反応熱を用いて発電する(S6)。
【0038】
ファン3は、熱電変換素子11が発電した電力を動力として駆動する(S8)。この結果、防護空間内の空気が撹拌され、消火用エアロゾルAが防護空間内を拡散する。通知部4は、熱電変換素子11が発電した電力を動力として、エアロゾル消火装置2が作動したことを外部に通知する(S10)。
【0039】
<実施の形態に係る取り付け器具1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る取り付け器具1によれば、エアロゾル消火装置が発生する消火用エアロゾルAを拡散させることができる。特に、実施の形態に係る取り付け器具1は、エアロゾル消火装置2が消火用エアロゾルAを発生させる際の反応熱を利用して発電しファン3を駆動するため、ファン3を駆動するための配線等の設置が不要となる。
【0040】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0041】
上記では、エアロゾル消火装置2が外部の制御信号によらず自動で消火用エアロゾルを発生する場合について主に説明した。しかしながら、エアロゾル消火装置2は、外部からの制御信号に基づいて消火用エアロゾルを発生させる種類の物であってもよい。
【0042】
上記では、熱伝達部14として水の同通路となるパイプを例示したが、熱伝達部14の例はパイプに限られない。例えば、媒質Fとして揮発性の熱媒体を用いる場合、熱伝達部14をヒートパイプとしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・取り付け器具
2・・・エアロゾル消火装置
3・・・ファン
4・・・通知部
5・・・受信機
10・・・保持部
11・・・熱電変換素子
12・・・端子
13・・・素子設置台
14・・・熱伝達部
A・・・消火用エアロゾル
F・・・媒質
W・・・火災防壁