特許第6862082号(P6862082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862082
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20210412BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20210412BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G02C7/06
   G02C7/04
   A61F2/16
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-168811(P2015-168811)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-51183(P2016-51183A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2018年6月18日
(31)【優先権主張番号】14/472,481
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ノエル・エイ・ブレナン
(72)【発明者】
【氏名】キャレド・エイ・シェハーブ
(72)【発明者】
【氏名】シュ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】カート・ジョン・ムーディー
(72)【発明者】
【氏名】シン・ウェイ
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0062836(US,A1)
【文献】 特表2013−501963(JP,A)
【文献】 特開2014−149527(JP,A)
【文献】 特表2013−521518(JP,A)
【文献】 特表2014−517360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
A61F 2/00、2/02−2/80
3/00−4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の進行の鈍化、遅延、又は、防止のうちの少なくとも1つのための眼用レンズであって、
前記眼用レンズの中心にある第1の領域と、
前記第1の領域を取り囲む少なくとも2つの周辺領域であって、前記少なくとも2つの周辺領域は前記第1の領域と異なる幅及びジオプトリー度数を有する、少なくとも2つの周辺領域と、を備え、
前記第1の領域及び前記少なくとも2つの周辺領域の幅及び屈折力は不連続であり、その結果、中心窩視力矯正を有し、かつ、近視の進行を鈍化、遅延、又は、防止する、焦点深度及び低減された網膜像質感度を有する多焦点レンズ屈折力プロファイルを提供しており、
前記第1の領域及び前記少なくとも2つの周辺領域のそれぞれの幅及び屈折力は前記多焦点レンズ屈折力プロファイルに従い、
前記多焦点レンズ屈折力プロファイルは、次式:
P(r)=PSeg(r)+24√5×SA×(r/3.25)−12√5×(SA/3.25
によって定められ、
式中、Pは、ジオプトリー度数(D)を表し、
rは、幾何学的なレンズ中心からのラジアル距離を表し、
SAは、球面収差量を表し、
Seg(r)は、異なる前記rの範囲及び、それぞれの前記rの範囲ごとに対応する前記ジオプトリ―度数の異なる大きさを有する多数の領域を有し、
(1)第1の領域のrの範囲は前記眼用レンズの中心から1.15mm、PSeg(r)の値は、0.26Dであり、
第2の領域のrの範囲は前記第1の領域の終点から1.04mm、PSeg(r)の値は、−0.32Dであり、
第3の領域のrの範囲は前記第2の領域の終点から1.24mm、PSeg(r)の値は、−0.95Dであるか、
(2)第1の領域のrの範囲は前記眼用レンズの中心から0.98mm、PSeg(r)の値は、0.04Dであり、
第2の領域のrの範囲は前記第1の領域の終点から1.65mm、PSeg(r)の値は、−0.39Dであり、
第3の領域のrの範囲は前記第2の領域の終点から0.80mm、PSeg(r)の値は、0.56Dであるか、
(3)第1の領域のrの範囲は前記眼用レンズの中心から0.53mm、PSeg(r)の値は、−0.63Dであり、
第2の領域のrの範囲は前記第1の領域の終点から0.60mm、PSeg(r)の値は、0.56Dであり、
第3の領域のrの範囲は前記第2の領域の終点から1.37mm、PSeg(r)の値は、−0.17Dであり、
第4の領域のrの範囲は前記第3の領域の終点から0.79mm、PSeg(r)の値は、0.06Dである、階段状関数である、眼用レンズ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの周辺領域は、2つの領域を含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記少なくとも2つの周辺領域は、3つの領域を含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
1つ又は2つ以上の安定化メカニズムを有する外側領域を更に備える、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記多焦点レンズ屈折力プロファイルは、中心窩視力矯正と、近視の進行を治療するための有効な焦点深度及び低減された網膜像質感度との間のバランスを達成するために瞳孔サイズに基づいて調節されている、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記眼用レンズは、コンタクトレンズを含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記眼用レンズは、メガネレンズを含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記眼用レンズは、眼内レンズ、角膜インレー、又は、角膜アンレーを含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズに関し、より詳細には、近視の進行を鈍化、遅延、又は、防止するように設計された眼用レンズに関する。本発明の眼用レンズは、網膜像画質の劣化を精密作業活動中のぼけに影響されなくする中心窩視力矯正、焦点深度の増大、及び、様々な調節距離の範囲での最適化された網膜像をもたらし、その結果、近視の進行が防止及び/又は鈍化される焦点屈折力プロファイルを含む。
【背景技術】
【0002】
視力低下に至る一般的な状態としては、近視及び遠視が挙げられ、近視及び遠視については、眼鏡、又は、ハード又はソフトコンタクトレンズの形での矯正レンズが処方される。上記状態は、一般的に、眼の長さと眼の光学要素の焦点との不均衡と説明される。近視眼は、網膜平面の前で焦点が合い、遠視眼は、網膜平面の後で焦点が合う。近視が、典型的に発症するのは、眼の軸長が、眼の光学構成要素の焦点距離よりも長くなる、即ち、眼が、長すぎるからである。遠視が、典型的に発症するのは、眼の軸長が、眼の光学構成要素の焦点距離と比較して短すぎる、即ち、眼が、十分な長さにならないからである。
【0003】
近眼は、世界の多くの地域で高い罹患率を有する。この状態に関して最も懸念されるのが、高度近視、例えば、5又は6ジオプターを超える進行の可能性であり、高度近視は、視覚補助具なしで機能する能力に劇的に影響を与える。高度近視は、また、網膜疾患、白内障及び緑内障のリスク増大に関連している。
【0004】
矯正レンズは、それぞれ、近視を矯正するために網膜平面の前から、又は、遠視を矯正するために網膜平面の後ろから焦点を移すことによってよりはっきりした像を網膜平面にて描くように眼の総焦点(gross focus)に変えるために使用される。しかしながら、上記状態の矯正アプローチは、上記状態の原因に対応するのではなく、単に補綴であり、つまり、症状に対応することを目的とする。より重要なことに、眼の近視焦点ずれ誤差を補正しても、近視の進行を鈍化又は遅延させるものではない。
【0005】
大部分の眼は、単純近視、又は、単純遠視を有するのではなく、近視性単乱視、又は、遠視性単乱視を有する。焦点の乱視誤差が原因となって、点光源の像が、異なる焦点距離で2つの相互に垂直な線として形成される。以下で論じる内容では、近視及び遠視という用語は、それぞれ、単純近視又は近視性単乱視、並びに、遠視及び遠視性単乱視を含むために使用される。
【0006】
正視では、無限大での被写体が水晶体が弛緩した状態で相対的に鮮明に焦点が合っているはっきりした視覚の状態が説明される。通常の、つまり、正常視の大人の眼では、遠くの被写体と近くの被写体の両方から、かつ、開口、つまり、瞳孔の中央、つまり、軸傍領域を通る光が、眼の内側で、網膜平面近傍で水晶体によって集束され、倒立像が感知される。しかしながら、大部分の通常の眼は、正の縦球面収差を、一般的に5.0mmの開口について約+0.50ジオプター(D)の領域において示すことが観察され、つまり、開口、つまり、瞳孔周辺にて開口、つまり、瞳孔を通る光線は、眼が無限大に焦点が合わされたとき、網膜平面の前で+0.50D集束される。本明細書で使用するとき、目安Dは、メートル単位の、レンズ、又は、光学システムの焦点距離の反数と定義されたジオプトリー度数である。
【0007】
通常の眼の球面収差は、一定ではない。調節(主として水晶体に対する変更を介して導き出される眼の光出力の変化)が原因となって、球面収差が、正から負に変わる。
【0008】
述べたように、近視は、典型的には、眼の過剰な軸方向の成長、つまり、伸びによって発生する。主として動物の調査から、軸方向の眼の成長は、網膜像の画質及び焦点によって影響を与え得ることが、現在、一般的に容認されている。いくつかの異なる実験的な典型を利用して様々な異なる動物の種に行われた実験の結果、網膜像の画質を変えると、眼の成長の一貫した、かつ、予測可能な変化が発生し得ることがわかっている。
【0009】
更に、ひよこ及び霊長類の両方の動物モデルにおける網膜像の焦点を、正のレンズ(近視焦点ずれ)、又は、負のレンズ(遠視焦点ずれ)を通してずらすと、課された焦点ずれを補正するように眼が成長することに一貫した、眼の成長の予測可能な(方向及び大きさの観点から)変化が発生することがわかっている。光学的ぼけに関連した眼の長さの変化は、強膜成長の変化によって変調されることがこれまでわかっている。近視ぼけ及び強膜成長速度の減少を引き起こす正のレンズによるぼけによって、結果的に、遠視屈折誤差が生じる。遠視ぼけ及び強膜成長速度の増大を引き起こす負のレンズによるぼけによって、結果的に、近視屈折誤差が生じる。網膜像焦点ずれに応じたこれらの眼成長の変化は、主として局所的網膜メカニズムを介して仲介されることがこれまで実証されており、眼の長さの変化は、それでも、視神経が損傷しているときには発生するものの、焦点ずれを局所的網膜地域に課すと、結果的に、特定の網膜地域に限局された眼成長の変化が発生することがこれまでわかっている。
【0010】
ヒトでは、網膜像の画質が眼の成長に影響を及ぼし得るという概念を裏付ける間接的かつ直接的の両方の証拠がある。全てが下垂、先天性白内障、角膜混濁、硝子体出血など、形状視覚内の破壊及び他の眼性疾患に至る様々な異なる眼の状態は、若いヒトの異常な眼の成長に関連していることがこれまでわかっており、これは、網膜像の画質の相対的に大きい変化は確かに、ヒトの被検体における眼の成長に影響を及ぼすことを示唆している。ヒトの眼の成長に及ぼすより繊細な網膜の像の変化の影響が、また、ヒトの眼の成長及び近視発症の刺激をもたらし得る精密作業中のヒトの焦点調節機構における光学的誤差に基づいてこれまで仮定されている。
【0011】
近視発症の危険因子の1つは、精密作業である。そのような精密作業中の調節に関連した調節性遅れ、又は、負球面収差のために、眼は、遠視ぼけを経験し得、これは、先に論じたように近視の進行を刺激する。
【0012】
更に、調節システムは、活動中の適応光学システムであり、近くの被写体、並びに、光学的デザインに絶えず反応している。眼の前に置かれる、以前から知られている光学的デザインについてさえ、眼が近くの被写体にレンズと眼のシステムと相互作用的に調節するとき、連続的な遠視焦点ずれは、依然として存在している恐れがあり、近視の進行が引き起こされる。したがって、近視の進行の速度を鈍化させる1つの方法は、網膜像画質に及ぼす遠視ぼけの影響を低減する光学品を設計することである。そのような設計で、遠視焦点ずれのジオプター毎に、網膜像画質は、劣化の程度が小さくなる。別の意味で、網膜は、したがって、遠視焦点ずれに相対的に鈍くなる。特に、焦点深度(DOF)及び画質(IQ)感度は、網膜での遠視焦点ずれの結果としての近視の進行に対する眼の脆弱性を定量化するために使用され得る。より大きい焦点深度及び低い画質感度を有する眼用レンズデザインによって、網膜像画質は、遠視焦点ずれに対する感度が小さくなることになり、それゆえに、近視の進行の速度が鈍化される。
【0013】
物空間において、問題なく鮮明に見える場面の最も近くの被写体と最も遠い被写体との間の距離は、被写界深度と呼ばれている。画像空間では、それは、焦点深度(DOF)と呼ばれている。従来の単一視光学設計については、レンズは、単一の焦点を有し、画像鮮明度は、焦点の各側で大幅に減少する。DOFの拡張を伴う光学デザインについては、該デザインは、単一の公称焦点を有し得るものの、画像鮮明度の減少は、焦点があった距離の各側では緩やかであり、そのため、DOF内では、鮮明度の低減は、通常の視認状態では気づくものではない。
【0014】
画質(IQ)感度は、1〜5ジオプターの調節要求での網膜IQ焦点ずれ曲線の勾配と定義することができる。それは、画質がどのように焦点ずれと共に変わるかを示す。IQ感度の値が大きいほど、画質は、調節中に焦点ずれ誤差に敏感である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の多焦点レンズデザインは、焦点深度増大及びIQ感度低減による遜色のない、又は、より良好な距離視力矯正を確実にすることによって従来技術の制限事項を克服し、近視の治療を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様によれば、本発明は、近視の進行のスピードの鈍化、遅延、又は、防止のうちの少なくとも1つのための眼用レンズに関する。第1の領域は、眼用レンズの中心にある。少なくとも1つの周辺領域は第1の領域を取り囲み、かつ、第1の領域と異なる幅及びジオプトリー度数を有する。第1の領域及び少なくとも1つの周辺領域は、段階的又は不連続であり、その結果、単焦点レンズと実質的に同等の中心窩視力矯正を有し、かつ、近視の進行を鈍化、遅延、又は、防止する、焦点深度及び低減された網膜像質感度有する多焦点レンズ屈折力プロファイルが得られる。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、近視の進行のスピードの鈍化、遅延、又は、防止のうちの少なくとも1つのための方法に関する。眼用レンズは、単焦点レンズと実質的に同等の中心窩視力矯正を有し、かつ、近視の進行を鈍化、遅延、又は、防止する、焦点深度及び低減された網膜像質感度を有する多焦点屈折力プロファイルを有する。屈折力プロファイルは、レンズの中心にある第1の領域と、上記第1の領域を取り囲む少なくとも1つの周辺領域とを含む。少なくとも1つの周辺領域は、第1の領域と異なる幅及びジオプトリー度数を有する。第1の領域及び少なくとも1つの周辺領域は、段階的又は不連続である。したがって、眼の成長が変えられる。
【0018】
本発明のコンタクトレンズは、多焦点屈折力プロファイルで設計される。本明細書で定めるように、より大きい焦点深度及び低い画質感度を有するレンズデザインは、網膜像画質の劣化を遠視ぼけに影響されないようにし、したがって、近視の進行の速度が鈍化されることがわかった。したがって、本発明は、中心窩視力矯正と、近視の進行を治療又は鈍化する焦点深度及び低い画質感度をもたらすために多焦点屈折力プロファイルを有するレンズを利用する。
【0019】
本発明の多焦点レンズデザインは、また、被検体の平均瞳孔サイズに基づいて良好な中心窩視力矯正及びより高い治療有効性の両方を達成するようにカスタマイズされ得る。
【0020】
本発明の多焦点コンタクトレンズデザインは、近視の進行を防止及び/又は鈍化する単純で、費用効率が高く、かつ、有効な手段及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の前述の特徴及び利点、並びに、他の特徴及び利点は、添付の図面に示される、以下の本発明の好ましい実施態様のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
図1A】近視及び正常視母集団の輻輳の関数として焦点ずれZ、球面収差Zの項及び入射瞳直径の変化を例示する。
図1B】近視及び正常視母集団の輻輳の関数として焦点ずれZ、球面収差Zの項及び入射瞳直径の変化を例示する。
図1C】近視及び正常視母集団の輻輳の関数として焦点ずれZ、球面収差Zの項及び入射瞳直径の変化を例示する。
図2A】それぞれ、球面レンズ、5.0mm瞳開口にて+1.50Dの正の縦球面収差(LSA)を有する非球面レンズ、及び、+1.50Dの付加屈折力を有するACUVUE(登録商標)二焦点レンズ(多同心交互距離(multiconcentric alternating distance)及び近用レンズ)の屈折力プロファイルの図である。
図2B】それぞれ、球面レンズ、5.0mm瞳開口にて+1.50Dの正の縦球面収差(LSA)を有する非球面レンズ、及び、+1.50Dの付加屈折力を有するACUVUE(登録商標)二焦点レンズ(多同心交互距離(multiconcentric alternating distance)及び近用レンズ)の屈折力プロファイルの図である。
図2C】それぞれ、球面レンズ、5.0mm瞳開口にて+1.50Dの正の縦球面収差(LSA)を有する非球面レンズ、及び、+1.50Dの付加屈折力を有するACUVUE(登録商標)二焦点レンズ(多同心交互距離(multiconcentric alternating distance)及び近用レンズ)の屈折力プロファイルの図である。
図3A】本発明による第1の多焦点レンズデザインの屈折力プロファイルの図である。
図3B図3Aの多焦点レンズデザインの中間鮮鋭度(neural sharpness)及び焦点深度を示すグラフである。
図3C図3Aの多焦点レンズデザインの様々な調節状態での中間鮮鋭度を示すグラフである。
図4A】本発明による第2の多焦点レンズデザインの屈折力プロファイルの図である。
図4B図4Aの多焦点レンズデザインの中間鮮鋭度及び焦点深度を示すグラフである。
図4C図4Aの多焦点レンズデザインの様々な調節状態での中間鮮鋭度を示すグラフである。
図5A】本発明による第3の多焦点レンズデザインの屈折力プロファイルの図である。
図5B図5Aの多焦点レンズデザインの中間鮮鋭度及び焦点深度を示すグラフである。
図5C図5Aの多焦点レンズデザインの様々な調節状態での中間鮮鋭度を示すグラフである。
図6A】本発明による第4の多焦点レンズデザインの屈折力プロファイルの図である。
図6B図6Aの多焦点レンズデザインの中間鮮鋭度及び焦点深度を示すグラフである。
図6C図6Aの多焦点レンズデザインの様々な調節状態での中間鮮鋭度を示すグラフである。
図7A】本発明による第5の多焦点レンズデザインの屈折力プロファイルの図である。
図7B図7Aの多焦点レンズデザインの中間鮮鋭度及び焦点深度を示すグラフである。
図7C図4Aの多焦点レンズデザインの様々な調節状態での中間鮮鋭度を示すグラフである。
図8】本発明による例示的なコンタクトレンズの図表現である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2A、2B、及び2Cは、それぞれ、球面レンズ、5.0mm瞳開口にて+1.50Dの正の縦球面収差(LSA)を有する非球面レンズ、及び、+1.50Dの付加屈折力を有するACUVUE(登録商標)二焦点レンズ(多同心交互距離及び近用レンズ)の屈折力プロファイルの図である。これまで非球面レンズ及びACUVUE(登録商標)二重焦点+1.50レンズが両方とも近視治療に影響を及ぼし得るという観察結果がある。したがって、米国特許第6、045、578号で開示されているような、球面収差を変えるという域を越えるメカニズムが、近視の進行を防止するか、治療するか、又は、鈍化させるレンズを記述する上で必要とされている。
【0023】
本発明によれば、中心窩視力矯正をもたらし、かつ、近視の進行を治療するか、又は、鈍化させる、増大した焦点深度及び低減されたIQ感度を有する眼用レンズの多焦点屈折力プロファイルが開発される。
【0024】
1つの例示的な実施形態によれば、多焦点屈折力プロファイルが、以下により説明され得る。
【0025】
【数1】
式中、Pは、ジオプトリー度数(D)を表し、
rは、幾何学的なレンズ中心からのラジアル距離を表し、
SAは、球面収差量を表し、
Seg(r)は、異なる大きさを有するいくつかの領域を有する階段状関数を表す。
【0026】
視力矯正を測定するために、4.5mm EP(入射瞳)及び6.5mm EPでの中間鮮鋭度が、網膜像画質の決定因子として利用される。網膜像画質が良好かどうかを測定する任意の他の好適な手段や方法(例えば、MTF曲線での領域、ストレール比など)が利用され得ることに留意することが重要である。
【0027】
神経鮮明度は、以下の方程式によって与えられる。
【0028】
【数2】
式中、psfつまり点像分布関数は、点物体の画像であり、瞳関数P(X,Y)の逆フーリエ変換の二乗大きさとして計算され、式中、P(X,Y)は、以下によって与えられる。
P(X,Y)=A(X,Y)exp(ik W(X,Y)), (3)
式中、kは、波数(2π/波長)であり、A(X、Y)は瞳座標X,Yの光学アポダイゼーション関数であり、psfDLは、同じ瞳直径の回折限界psfであり、及び、g(X,Y)は、二変量ガウス、中間重み関数である。中間鮮鋭度のより完全な定義及び計算については、波面収差を利用して眼の最良な矯正を判定するという問題を論じている「Thibos et al、Accuracy and precision of objective refraction from wave front aberrations、Journal of Vision(2004)4、329〜351」を参照されたい。コンタクトレンズ及び眼の波面W(X、Y)は、以下によって与えられるようにそれぞれの和である。
CL+eye(X,Y)=WCL(X,Y)+Weye(X,Y) (4)
【0029】
特定のターゲット輻輳での被写体の画質感度、又は、レンズ+眼システムの勾配を判定するために、3つの主要なステップ、即ち、眼調節システムの結合効果の識別、被写体の対応する調節状態の推定、及び画質感度の計算が必要とされる。
【0030】
ステップ1:眼調節システムの結合効果の識別:ヒトの眼が遠から近に調節するとき、2つの眼の構造体が同時に変化する、即ち、虹彩開口は、小さくなり、水晶体は、大きくなる。これらの解剖学的変化が原因となって、3つの関連した光学パラメータ、即ち、入射瞳直径、焦点ずれ(例えば、ゼルニケ焦点ずれZ)、及び球面収差(例えば、ゼルニケ球面収差Z)が、レンズ+眼システムにおいて結合して変化する。なお、特に、瞳のサイズは、目標が近づくにつれて減少し、従来のゼルニケ焦点ずれ及び球面収差は、瞳のサイズに大きく左右されることから、これらのゼルニケ収差項を従来の方法で指定することは容易ではない。代替として、ゼルニケ焦点ずれ及び収差を異なる瞳孔サイズ全体にわたって測定するために、これらの項を『ジオプター』式に提示されることがあった。以下の方程式を介して代表的なゼルニケ係数に変換すると、
20microns=Z20Diopter*(EPD/2)/(4√3)
40microns=Z40Diopter*(EPD/2)/(24√5)
式中、EPDは、入射瞳直径、Z20Diopter(単位:D)及びZ40Diopter(単位:D/mm)であり、なお、時には図では、並びに、一部の文献では、この項の単位は、また、略して『D』と明記される)ゼルニケ焦点ずれ及び球面収差項は、『ジオプター』式で明記され、Z20microns及びZ40micronsが、対応する従来のゼルニケ項である。
【0031】
Ghoshら、2012年(Axial Length Changes with Shifts of Gaze Direction in Myopes and Emmetropes、IOVS、Sept 2012、VOL.53、No.10)は、正視者及び近視眼者についてターゲット輻輳に関連してこれらの3つのパラメータの変化を測定した。図1Aは、焦点ずれとターゲット輻輳のグラフ図であり、図1Bは、球面収差とターゲット輻輳のグラフ図であり、図1Cは、入射瞳直径とターゲット輻輳のグラフ図である。ターゲット輻輳が変わるにつれて、これらの3つのパラメータは、同時に変わる。これらのデータがコンタクトレンズなしでヒト被検体の眼で測定されたことから、レンズ+眼システムに関するこれらの光学パラメータとターゲット輻輳の関係は、異なる。それにもかかわらず、光学パラメータ(入口瞳孔サイズ、焦点ずれ、及び球面収差)間の結合関係が、同じままであるのは、それらの変化が、同じ解剖学的根源から始まるからである。異なる内挿技術が、その後、実験データからの3つのパラメータ間のそのような結合関係をモデル化するために使用され得る。
【0032】
ステップ2:近での被写体の対応する調節状態の推定:調節中の入射瞳、焦点ずれ、及び球面収差の結合関係は、ステップ1にてモデル化されると、その後、任意の所与の距離にあるターゲットについてレンズ+眼システムの残りの調節状態を推定するために使用され得る。このステップの科学的な本質は、コンタクトレンズが存在する場合に眼がどのようにして近くのターゲットに調節するかを見出すことである。例えば、ターゲットが近(例えば2D)にて特定の距離にあると、結果、距離補正式のレンズ+眼システム(例えば、図3Aのレンズ及び眼モデル0.06D/mm SAを組み合わせるシステム)についてはぼけが発生する。このシステムの残りの調節状態を判定するため、対応する画質が閾値まで向上するように入射瞳、焦点ずれ及び眼の球面収差をステップ1において結合モデル毎に系統的に調節した。例えば、図3Cでは、入射瞳、焦点ずれ、及び球面収差は、−1.6(おおよそ20/25VA)になるように画質(NS)を上げるために5.3mm、1.5D、0.03D/mmであることがわかる。
【0033】
特定のターゲット輻輳に関する画質感度の計算:調節状態、並びに、対応する入射瞳、焦点ずれ、及び球面収差が判定されると、網膜像画質感度つまり勾配は、以下のように容易に計算され得る。
IQ感度=d.NS/d.Rx, (5)
式中、d.NS/d.Rxは、中間鮮明度:焦点ずれ値の導関数である。
【0034】
例えば、標準的な眼モデル及びターゲットが2D離れたデザイン3Aについては、対応するIQ感度は、0.7であると計算される。
【0035】
領域の数、領域の幅、領域の大きさ及び球面収差の範囲を方程式(1)において設定することによって、異なる多焦点屈折力プロファイルを得ることができる。これらの変数の例示的な非限定的な範囲を以下の表1に記載する。
【0036】
【表1】
【0037】
結果として得られた多焦点屈折力プロファイルを、図3A、4A、5A、6A、及び7Aに例示する。初めの3つの多焦点レンズデザイン、つまり実施形態1〜3の、かつ、それぞれ、図3A、4A、及び5Aに例示するようなパラメータを以下の表2に記載する。
【0038】
【表2】
【0039】
図3Aは、段階的つまり不連続である3領域レンズデザインの屈折力プロファイルを示す。眼用レンズのRxつまり処方箋値は、−3.00Dである。図3Bでは、眼用レンズの画質(中間鮮鋭度によって測定時)は、0.00ジオプター焦点ずれにて最も鮮鋭となり、この眼システムは、良好に焦点があったときに最も鮮鋭な画像を担持することを示す。屈折誤差(正、負共)がこの光学システムに導入されると、画質は、落ち始める。−2.2の閾値中間鮮鋭度値が、DOFを定量化するために選ばれる。中間鮮鋭度値が−2.2よりも大きいとき、患者は、それでも、判読に妥当に良好な近視力を有する。図3Bでは、−2.2での水平閾値線が描かれている。この線は、焦点通過曲線(through-focus curve)と交差している。2つの交差部の間の幅は、DOFに対応する。この実施形態では、DOFは1.18Dである。
【0040】
図3Cは、2D、3D、4D及び5D調節状態(ターゲット輻輳)での中間鮮鋭度、及び、図3Aのレンズデザインについて典型的には調節ずれに関連している−0.40D〜−1.10Dの算出焦点ずれ誤差のグラフである。各曲線は、特定の焦点ずれ(Z20)、球面収差(Z40)、及び入射瞳孔サイズ(EP)を有する−1.6の中間鮮鋭度閾値での肩部によって特徴づけられる。肩部の勾配は、網膜IQ感度の低減を示す。この実施形態では、IQ感度は、それぞれ、0.67、0.38、0.70、及び0.95である。
【0041】
図4Aは、段階的つまり不連続である代替3領域レンズデザインの屈折力プロファイルを示す。眼用レンズのRxつまり処方箋値は、−3.00Dである。図4Bでは、−2.2の閾値中間鮮鋭度値が、DOFを定量化するために選ばれる。この線は、焦点通過曲線と交差している。2つの交差部の間の幅は、DOFに対応する。この実施形態では、DOFは1.26Dである。
【0042】
図4Cは、2D、3D、4D、及び、5Dターゲット輻輳での中間鮮鋭度、及び、図4Aのレンズデザインについて、典型的には調節遅れに関連している算出焦点ずれ誤差−0.50D〜0.90Dのグラフである。曲線は、特定の焦点ずれ(Z20)、球面収差(Z40)、及び入射瞳孔サイズ(EP)を有する−1.6の中間鮮鋭度閾値での肩部によって特徴づけられる。肩部の勾配は、網膜IQ感度の低減を示す。この実施形態では、IQ感度は、それぞれ、1.01、0.66、0.40、及び0.30である。
【0043】
図5Aは、段階的つまり不連続である4領域レンズデザインの屈折力プロファイルを示す。眼用レンズのRxつまり処方箋値は、−3.00Dである。図5Bでは、−2.2の閾値中間鮮鋭度値が、DOFを定量化するために選ばれる。この線は、焦点通過曲線と交差している。2つの交差部の間の幅は、DOFに対応する。この実施形態では、DOFは1.04Dである。
【0044】
図5Cは、図5Aのレンズデザインについて、典型的には調節遅れに関連している−0.40D〜−1.00Dの焦点ずれ誤差時の2D、3D、4D、及び5Dターゲット輻輳での中間鮮鋭度のグラフである。曲線は、特定の焦点ずれ(Z20)、球面収差(Z40)、及び入射瞳孔サイズ(EP)を有する、−1.6の中間鮮鋭度閾値での肩部によって特徴づけられる。肩部の勾配は、網膜IQ感度の低減を示す。この実施形態では、IQ感度は、それぞれ、0.84、0.33、0.64、及び0.87である。
【0045】
図6Aは、段階的つまり不連続である4領域レンズデザインの屈折力プロファイルを示す。眼用レンズのRxつまり処方箋値は、−3.00Dである。図6Bでは、−2.2の閾値中間鮮鋭度値が、DOFを定量化するために選ばれる。この線は、焦点通過曲線と交差している。2つの交差部の間の幅は、DOFに対応する。この実施形態では、DOFは1.16Dである。
【0046】
図6Cは、2D、3D、4D、及び、5Dターゲット輻輳での中間鮮鋭度、及び、図6Aのレンズデザインについて、典型的には調節遅れに関連している算出焦点ずれ誤差−0.50D〜1.00Dのグラフである。曲線は、特定の焦点ずれ(Z20)、球面収差(Z40)、及び入射瞳孔サイズ(EP)を有する、−1.6の中間鮮鋭度閾値での肩部によって特徴づけられる。肩部の勾配は、網膜IQ感度の低減を示す。この実施形態では、IQ感度は、それぞれ、1.10、0.47、0.43、及び0.36である。
【0047】
図7Aは、段階的つまり不連続である5領域レンズデザインの屈折力プロファイルを示す。眼用レンズのRxつまり処方箋値は、−3.00Dである。図7Bでは、−2.2の閾値中間鮮鋭度値が、DOFを定量化するために選ばれる。この線は、焦点通過曲線と交差している。2つの交差部の間の幅は、DOFに対応する。この実施形態では、DOFは1.03Dである。
【0048】
図7Cは、2D、3D、4D、及び、5Dターゲット輻輳での中間鮮鋭度、及び、図7Aのレンズデザインについて、典型的には調節遅れに関連している算出焦点ずれ誤差−0.50D〜0.90Dのグラフである。曲線は、特定の焦点ずれ(Z20)、球面収差(Z40)、及び入射瞳孔サイズ(EP)を有する、−1.6の中間鮮鋭度閾値での肩部によって特徴づけられる。肩部の勾配は、網膜IQ感度の低減を示す。この実施形態では、IQ感度は、それぞれ、1.14、0.15、0.66、及び0.83である。
【0049】
以下の表3に示すように、4.5mm及び6.5mmの入射瞳(EP)での中間鮮鋭度は、多焦点レンズデザインについて計算されている。焦点深度(DOF)及びIQ感度は、それぞれ、−2.2及び−1.6の閾値中間鮮鋭度値にて計算されている。
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示すように、図3A、4A、5A、6A、及び7Aに例示するような多焦点レンズデザインは、非球面レンズ及びACUVUE(登録商標)二焦点+1.50Dレンズよりも良好な中間鮮鋭度と、図3B、4B、5B、6B、及び7Bに例示するような焦点深度、及び、図3C、4C、5C、6C、及び7Cに例示するような低いIQ感度によって測定されるような遜色のない、又は、より良好な近視処理有効性とを有する。
【0052】
図8を参照すると、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ700の概略図が例示されている。コンタクトレンズ700は、視覚領域702と、外側領域704とを含む。視覚領域702は、第1の中央領域706と、少なくとも1つの周辺領域708とを含む。特定の実施形態では、視覚領域702の直径は、8.0mmであるように選択され得、実質的に円形の第1の領域706の直径は、4.0mmであるように選択され得、環状外側周辺領域708の境界直径は、レンズ700の幾何学的中心から測定されたとき5.0mm及び6.5mmであり得る。図8は本発明の例示的な一実施形態を例示するにすぎないことに留意することが重要である。例えば、この例示的な実施形態では、少なくとも1つの周辺領域708の外部境界は、視覚領域702の外側縁と必ずしも一致するというわけではなく、他の例示的な実施形態では、一致し得る。外側領域704は、視覚領域702を取り囲んで、レンズ位置決め及び中心化を含め標準的なコンタクトレンズの特徴をもたらす。1つの例示的な実施形態によれば、外側領域704は、眼の上にあるとき、レンズ回転を低減するために1つ又は2つ以上の安定化メカニズムを含み得る。
【0053】
図8の様々な領域は、同心円として例示され、該領域は、楕円形の形状などの任意の好適な円形、又は、非円形形状を含み得ることに留意することが重要である。
【0054】
眼の入射瞳孔サイズ及びターゲット輻輳として、調節は分集団間で変わることに留意することが重要である。特定の例示的な実施形態では、レンズデザインは、患者の平均瞳孔サイズ及び好適なターゲット輻輳に基づいて良好な中心窩視力矯正及び近視の処理有効性を達成するためにカスタマイズされ得る。更に、瞳孔サイズが小児患者について屈折及び年齢と相関するので、特定の例示的な実施形態では、レンズは、瞳孔サイズに基づいて特定の年齢及び/又は屈折を有する小児分集団の下位グループの方へ更に最適化され得る。本質的に、屈折力プロファイルは、中心窩視力矯正、増大した焦点深度、及び低減したIQ感度間の最適なバランスを達成するように調節される、つまり、瞳孔サイズに合わされ得る。
【0055】
現在利用可能なコンタクトレンズは依然として、視力矯正のための費用効率の高い手段である。薄いプラスチックレンズは、近視又は近眼、遠視又は遠眼、乱視、即ち、角膜の非球面性、及び老視、即ち、遠近調節をする水晶体の能力の喪失を含む、視力欠陥を矯正するために眼の角膜に適合する。コンタクトレンズは、様々な形態のものがあり、異なる機能性をもたらすために様々な材料から作製されている。
【0056】
終日装用ソフトコンタクトレンズは、典型的には、酸素透過性を目的として水と組み合わされた軟質ポリマー材料から作製される。終日装用ソフトコンタクトレンズは、1日使い捨て型であっても、連続装用型であってもよい。1日使い捨て型のコンタクトレンズは通常、1日にわたって装用され、次いで捨てられるが、連続装用の使い捨て型コンタクトレンズは通常、最大で30日の期間にわたって装用される。着色ソフトコンタクトレンズは、種々の機能性を得るために種々の材料を使用する。例えば、識別用着色コンタクトレンズは、落としたコンタクトレンズを発見する際に装用者を支援するために、明るい色合いを用いるものであり、強調着色コンタクトレンズは、装用者の生来の眼色を強調することを意図した半透明の色合いを有するものであるが、着色カラーコンタクトレンズは、装用者の眼色を変化させることを意図した、より暗く不透明な色合いを備え、光フィルタリングコンタクトレンズは、特定の色を強調する一方で他の色を弱めるように機能する。硬質ガス透過性ハードコンタクトレンズは、シロキサン含有ポリマーから作製されるものであるが、ソフトコンタクトレンズよりも硬質であり、したがってその形状を保ち、より耐久性の高いものである。二重焦点コンタクトレンズは、老眼である患者専用に設計されるものであり、軟質及び硬質の両方の種類で入手可能である。トーリックコンタクトレンズは、乱視である患者専用に設計されるものであり、同様に軟質及び硬質の両方の種類で入手可能である。上記の種々の特徴を組み合わせたコンビネーションレンズ、例えばハイブリッドコンタクトレンズもまた入手可能である。
【0057】
本発明の多焦点レンズデザインは、任意の数の材料で形成された任意の数の異なるコンタクトレンズに組み込まれ得ることに留意することが重要である。具体的には、本発明の多焦点レンズデザインは、終日装用ソフトコンタクトレンズ、硬質ガス透過性コンタクトレンズ、遠近両用コンタクトレンズ、トーリックコンタクトレンズ及びハイブリッドコンタクトレンズを含め、本明細書で説明するコンタクトレンズのいずれにおいても利用され得る。更に、本発明をコンタクトレンズに関して説明しているが、本発明の概念は、メガネレンズ、眼内レンズ、角膜インレー及びアンレーにおいて利用され得ることに留意することが重要である。
【0058】
最も実際的で好ましいと思われる実施形態を示し記載したが、記載し示した特定の構成及び方法からの逸脱は、それ自体が当業者に示唆され、本発明の趣旨から逸脱することなく使用され得ることは明らかである。本発明は、説明及び例示した特定の構造に限定されず、付属の特許請求の範囲の範囲に該当し得る全ての改変例と一貫性を有する解釈されるべきである。
【0059】
〔実施の態様〕
(1) 近視の進行の鈍化、遅延、又は、防止のうちの少なくとも1つのための眼用レンズであって、
前記眼用レンズの中心にある第1の領域と、
前記第1の領域を取り囲む少なくとも1つの周辺領域であって、前記少なくとも1つの周辺領域は前記第1の領域と異なる幅及びジオプトリー度数を有する、少なくとも1つの周辺領域と、を備え、
前記第1の領域及び少なくとも1つの周辺領域は、段階的又は不連続であり、その結果、単焦点レンズと実質的に同等の中心窩視力矯正を有し、かつ、近視の進行を鈍化、遅延、又は、防止する、焦点深度及び低減された網膜像質感度(reduced retinal image quality sensitivity)を有する多焦点レンズ屈折力プロファイルを提供する、眼用レンズ。
(2) 前記低減された網膜像質感度は、約1D〜約5Dの範囲の調節状態について+1.50〜−1.25の範囲にある、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(3) 前記低減された網膜像質感度は、約1D〜約5Dの範囲の調節状態について+0.75〜−0.50の範囲にある、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(4) 前記低減された網膜像質感度は、約1D〜約5Dの範囲の調節状態について+0.50〜−0.25の範囲にある、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(5) 前記少なくとも1つの周辺領域は、2つの領域を含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
【0060】
(6) 前記少なくとも1つの周辺領域は、3つの領域を含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(7) 前記少なくとも1つの周辺領域は、4つの領域を含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(8) 1つ又は2つ以上の安定化メカニズムを有する外側領域を更に備える、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(9) 前記多焦点屈折力プロファイルは、中心窩視力矯正と、近視の進行を治療するための有効な焦点深度及び低減された網膜像質感度との間のバランスを達成するために瞳孔サイズに基づいて調節可能である、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(10) 前記第1の領域は、約0.5mm〜約1.2mmの範囲の幅を含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
【0061】
(11) 前記少なくとも1つの周辺領域は、約0.5mm〜約1.6mmの範囲の幅を含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(12) 前記眼用レンズは、コンタクトレンズを含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(13) 前記眼用レンズは、メガネレンズを含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(14) 前記眼用レンズは、眼内レンズ、角膜インレー、又は、角膜アンレーを含む、実施態様1に記載の眼用レンズ。
(15) 近視の進行の鈍化、遅延、又は、防止のうちの少なくとも1つのための方法であって、
単焦点レンズと実質的に同等の中心窩視力矯正を有し、かつ、近視の進行を鈍化、遅延、又は、防止する、焦点深度及び低減された網膜像質感度を有する多焦点屈折力プロファイルを有する眼用レンズを供給することであって、前記屈折力プロファイルは、レンズの中心にある第1の領域と、前記第1の領域を取り囲む少なくとも1つの周辺領域とを含み、前記少なくとも1つの周辺領域は、前記第1の領域と異なる幅及びジオプトリー度数を有し、前記第1の領域及び少なくとも1つの周辺領域は、段階的又は不連続である、眼用レンズを供給することと、眼の成長を変えることと、による、方法。
【0062】
(16) 前記低減された網膜像質感度は、約1D〜約5Dの範囲の調節状態について+1.50〜−1.25の範囲にある、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記低減された網膜像質感度は、約1D〜約5Dの範囲の調節状態について+0.75〜−0.50の範囲にある、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記低減された網膜像質感度は、約1D〜約5Dの範囲の調節状態について+0.50〜−0.25の範囲にある、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記少なくとも1つの周辺領域は、2つの領域を含む、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記少なくとも1つの周辺領域は、3つの領域を含む、実施態様15に記載の方法。
【0063】
(21) 前記少なくとも1つの周辺領域は、4つの領域を含む、実施態様15に記載の方法。
(22) 前記多焦点レンズ屈折力プロファイルは、中心窩視力矯正と、近視の進行を治療するための有効な焦点深度及び低減された網膜像質感度との間のバランスを達成するために瞳孔サイズに基づいて調節可能である、実施態様15に記載の方法。
(23) 前記眼用レンズは、コンタクトレンズを含む、実施態様15に記載の方法。
(24) 前記眼用レンズは、メガネレンズを含む、実施態様15に記載の方法。
(25) 前記眼用レンズは、眼内レンズ、角膜インレー、又は、角膜アンレーを含む、実施態様15に記載の方法。
【0064】
(26) 1つ又は2つ以上の安定化領域を外側領域に追加することを更に含む、実施態様15に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8