(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862093
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】血圧脈波測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
A61B5/02 310V
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-52605(P2016-52605)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-164301(P2017-164301A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】松居 和寛
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/035629(WO,A1)
【文献】
特開2003−290160(JP,A)
【文献】
特開2014−217707(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0230774(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102007002951(DE,A1)
【文献】
特開2004−236730(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0095353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/0538,5/06−5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢上肢血圧比及び脈波伝播速度を測定する血圧脈波測定装置であって、
被験者の上肢の一部を押圧するための一対の第1のカフと、
上記被験者の下肢の一部を押圧するための一対の第2のカフと、
上記一対の第1及び上記一対の第2のカフのそれぞれに接続された一対の第1の配管及び一対の第2の配管と、
上記一対の第1のカフに上記一対の第1の配管を介して接続され、上記一対の第1の配管を伝播してくる第1の脈波を検出する第1の検出手段と、
上記一対の第2のカフに上記一対の第2の配管を介して接続され、上記一対の第2の配管を伝播してくる第2の脈波を検出する第2の検出手段と、
上記第1及び第2の脈波を用いて足関節上腕血圧比及び脈波伝播速度をそれぞれ算出する制御部と、
上記第1の検出手段と上記制御部とが配置される第1の筐体と、
上記第2の検出手段が配置される第2の筐体と、
上記第1の筐体と上記第2の筐体とを互いに異なる部位で保持し、移動可能に構成される移動体と、
を備え、
上記第1の脈波が検出されるタイミングと前記第2の脈波が検出されるタイミングとが同一となるよう、上記一対の第1の配管の長さ及び上記一対の第2の配管の長さはすべて同一に調整されている、
ことを特徴とする血圧脈波測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧脈波測定装置において、
上記第1の検出手段は、
上記一対の第1の配管を介して上記一対の第1のカフに空気を送り込み、上記一対の第1のカフを加圧する第1の圧力ポンプと、
上記一対の第1の配管を伝播してくる脈波を検出する第1の圧力センサとを含み、
上記第2の検出手段は、
上記一対の第2の配管を介して上記一対の第2のカフに空気を送り込み、上記一対の第2のカフを加圧する第2の圧力ポンプと、
上記一対の第2の配管を伝播してくる脈波を検出する第2の圧力センサとを含むことを特徴とする血圧脈波測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血圧脈波測定装置において、
上記制御部は、上記第1の脈波に基づいて、上記被験者の血圧値を算出することを特徴とする血圧脈波測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の血圧脈波測定装置において、
上記脈波伝搬速度には、上腕−足首間脈波伝播速度及び心臓−足関節間動脈脈波伝播速度を含み、
上記制御部は、心臓−足関節間動脈脈波伝播速度に基づいて心臓足首血管指数を算出することを特徴とする血圧脈波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧脈波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下肢上肢血圧比(Ankle Brachial Index:ABI)は血管の詰まりを表す指標として、また脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity:PWV)は血管の硬さを表す指標として、それぞれ動脈硬化の診断に広く用いられている。
【0003】
ABIとPWVとはそれぞれ単独でも使用される指標であるが、例えば動脈硬化が全身に及んだ場合、ABIのみの測定では正常範囲の値が得られることがあり、ABIの値が正常である場合、PWVによって全体の動脈硬化進行状況を把握することがより正確な診断の助けとなることが分かっている。
【0004】
そのため、このような多面的な診断を容易にするため、近年では従来別装置であったABI測定装置とPWV測定装置を一体化した測定装置が市場に出回っている。
【0005】
従来、この種の血圧脈波測定装置としては、例えば特許文献1(特開2000−316821号公報)に開示されているように、上腕用及び足首用の4つのカフが本体に接続されており、これらのカフを被験者の四肢にそれぞれ取り付けて測定する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−316821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した血圧脈波測定装置では、上腕用及び足首用のカフを被験者の上腕及び足首にそれぞれ装着するには、略同じ場所から伸びている配管を伸ばして被験者の上腕及び足首に装着しなければならず、複数の配管が互いに絡まってしまい非常に労力と時間がかかる。
【0008】
そこで、この発明の課題は、複数の配管が互いに絡まることなしに、被験者の上腕及び足首にカフを容易に装着できる血圧脈波測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の血圧脈波測定装置は、
下肢上肢血圧比及び脈波伝播速度を測定する血圧脈波測定装置であって、
被験者の上肢の一部を押圧するための一対の第1のカフと、
上記被験者の下肢の一部を押圧するための一対の第2のカフと、
上記一対の第1及び上記一対の第2のカフのそれぞれに接続された一対の第1の配管及び一対の第2の配管と、
上記一対の第1のカフに上記一対の第1の配管を介して接続され、上記一対の第1の配管を伝播してくる第1の脈波を検出する第1の検出手段と、
上記一対の第2のカフに上記一対の第2の配管を介して接続され、上記一対の第2の配管を伝播してくる第2の脈波を検出する第2の検出手段と、
上記第1及び第2の脈波を用いて足関節上腕血圧比及び脈波伝播速度をそれぞれ算出する制御部と
、
上記第1の検出手段と上記制御部と
が配置される第1の筐体
と、
上記第2の検出手段
が配置される第2の筐体
と、
上記第1の筐体と上記第2の筐体とを互いに異なる部位で保持し、移動可能に構成される移動体と、
を備え、
上記第1の脈波が検出されるタイミングと前記第2の脈波が検出されるタイミングとが同一となるよう、上記一対の第1の配管の長さ及び上記一対の第2の配管の長さはすべて同一に調整されている、
ことを特徴とする。
【0010】
本明細書で、脈波伝播速度とは、典型的には、上腕−足首間脈波伝播速度baPWV(brachial-ankle Pulse Wave Velocity)及び心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWV(heart-ankle Pulse Wave Velocity)を指す。なお、心臓から足首までの動脈の硬さを反映する指標となる心臓足首血管指数(CAVI)(Cardio Ankle Vascular Index)は、心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWVを対数脈波で補正することにより算出することが可能である。また、下肢上肢血圧比は、典型的には、足関節上腕血圧比ABI(Ankle Brachial Pressure Index)を指す。
【0011】
この発明の血圧脈波測定装置では、上腕用のカフが接続された第1の筐体と、足首用のカフが接続された第2の筐体とが分離されている。従って、上腕用及び足首用のカフを被験者の上腕及び足首に装着するときに、足首の近傍に第2の筐体を配置することが可能となる。そのため、上腕用のカフに接続された配管と足首用のカフに接続された配管とが互いに絡まることなしにそれぞれのカフを被験者の四肢に容易に装着することが可能となる。
【0012】
一実施形態の血圧脈波測定装置では、
上記第1の検出手段は、
上記第1の配管を介して上記第1のカフに空気を送り込み、上記第1のカフを加圧する第1の圧力ポンプと、
上記第1の配管を伝播してくる脈波を検出する第1の圧力センサとを含み、
上記第2の検出手段は、
上記第2の配管を介して上記第2のカフに空気を送り込み、上記第2のカフを加圧する第2の圧力ポンプと、
上記第2の配管を伝播してくる脈波を検出する第2の圧力センサとを含むことを特徴とする。
【0013】
この発明の血圧脈波測定装置では、上腕用のカフが接続された第1の筐体と、足首用のカフが接続された第2の筐体とが分離されている。そのため、第1の配管の長さと、第2の配管の長さとを略同一となるように調整することができる。従って、上腕で検出された脈波が検出されるタイミングと足首で検出された脈波が検出されるタイミングとを略同一とすることができるので、ABI及びPWVの測定精度を向上させることが可能となる。
【0014】
一実施形態の血圧脈波測定装置では、
上記制御部は、上記第1の脈波に基づいて、上記被験者の血圧値を算出することを特徴とする。
【0015】
この発明の血圧脈波測定装置では、上腕用のカフが接続された第1の筐体と、足首用のカフが接続された第2の筐体とが分離されている。従って、被験者の血圧のみを測定する場合には、上腕用のカフのみを被験者の上腕に装着して血圧測定することが可能となる。
【0016】
一実施形態の血圧脈波測定装置では、
上記脈波伝搬速度には、上腕−足首間脈波伝播速度baPWV(brachial-ankle Pulse Wave Velocity)及び心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWV(heart-ankle Pulse Wave Velocity)を含み、
上記制御部は、上記心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWVを対数脈波で補正することにより心臓足首血管指数(CAVI)(Cardio Ankle Vascular Index)を算出することを特徴とする。
【0017】
この発明の血圧脈波測定装置では、心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWVに基づいて心臓足首血管指数を算出することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上より明らかなように、この発明の血圧脈波測定装置によれば、被験者の上腕及び足首にカフを容易に装着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る血圧脈波測定装置100が収納ワゴン300に収納された状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の血圧脈波測定装置100が使用される態様を示す斜視図である。
【
図3】
図1の血圧脈波測定装置100の内部の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図1の血圧脈波測定装置100が実行する下肢上肢血圧比及び脈波伝播速度測定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る血圧脈波測定装置100が収納ワゴン300に収納された状態を示す斜視図である。この血圧脈波測定装置100は、第1の筐体であるメインユニット101と、第2の筐体であるアンクルユニット102と、4つのカフ24ar,24al,24br,24blとを含んでいる。収納ワゴン300は、キャスター付きの脚301と、この脚301に立設された支柱302と、支柱302の先端に取り付けられた載置台303と、支柱302の途中に取り付けられ、上方に向かって開口した収納ボックス304とを含んでいる。載置台303には、メインユニット101が載置されている。収納ボックス304には、アンクルユニット102と、右足首(右下肢)、左足首(左上肢)用のカフ24ar,24alが収容されている。右上腕(右上肢)、左上腕(左上肢)用のカフ24br,24blは、メインユニット101の後部に設けられたフック101e,101f(
図2中に示す)に引っ掛けられて保持されている。
【0022】
アンクルユニット102と、右足首(右下肢)、左足首(左上肢)用のカフ24ar,24alとは、カフ加圧用の空気を通すための配管22ar,22alによって接続されている。同様に、メインユニット101と右上腕(右上肢)、左上腕(左上肢)用のカフ24br,24blとは、カフ加圧用の空気を通すための配管22br,22blによって接続されている。また、メインユニット101は、アンクルユニット102に対して、接続ケーブル23によって電力供給および通信可能に接続されている。
【0023】
図2は
図1の血圧脈波測定装置100が使用される態様を示す斜視図である。
図2に示すように、被験者200はベッド310上に仰向けに横たわっている。アンクルユニット102は、収納ボックス304から取り出され、被験者200の右足首と左足首との間のベッド310上に載置されている。
【0024】
カフ24ar,24al,24br,24blは、それぞれ被験者200の肢部に装着される。具体的には、それぞれ、右足首(右下肢)、左足首(左上肢)、右上腕(右上肢)、左上腕(左上肢)に装着される。
【0025】
上述したように、上腕用のカフ24br,24blが接続されたメインユニット101と、足首用のカフ24ar,24alが接続されたアンクルユニット102とが分離されている。従って、上腕用及び足首用のカフ24br,24bl,24ar,24alを被験者200の上腕及び足首に装着するときに、足首の近傍にアンクルユニット102を配置することが可能となる。そのため、上腕用のカフ24br,24blに接続された配管22br,22blと足首用のカフ24ar,24alに接続された配管22ar,22alとが互いに絡まることなしにそれぞれのカフを被験者200の四肢に容易に装着することが可能となる。
【0026】
なお、以下の説明では、専ら、右足首、左足首、右上腕、左上腕に装着される例について説明する。ただし、「肢部」とは、四肢に含まれる部位を表わし、手首や指尖部などであってもよい。カフ24ar,24al,24br,24blは、特に区別する必要がない限り、これらを総称して、「カフ24」と呼ぶ。
【0027】
図3は
図1の血圧脈波測定装置100の内部の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図3に示すように、アンクルユニット102は、2つの検出ユニット20ar,20alを含む。メインユニット101は、情報処理ユニット1と、2つの検出ユニット20br,20blとを含む。
【0028】
検出ユニット20ar,20al,20br,20blは、それぞれ、被験者200の肢部の脈波を検出するために必要なハードウェアを含む。検出ユニット20ar,20al,20br,20blの構成は全て同様であってよいので、特に区別する必要がない限り、これらを総称して、「検出ユニット20」と呼ぶ。
【0029】
情報処理ユニット1は、制御部2と、出力部4と、操作部6と、記憶装置8とを含む。
【0030】
制御部2は、血圧脈波測定装置100全体の制御を行う装置であり、代表的に、CPU(Central Processing Unit)10と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)14とを含むコンピュータで構成される。
【0031】
CPU10は、演算処理部に相当し、ROM12に予め格納されているプログラムを読出して、RAM14をワークメモリとして使用しながら、当該プログラムを実行する。
【0032】
また、制御部2には、出力部4、操作部6および記憶装置8が接続されている。出力部4は、測定された脈波や脈波解析結果などを出力する。出力部4は、LED(Light Emitting Diode)またはLCD(Liquid Crystal Display)などで構成される表示デバイスであってもよいし、プリンタ(ドライバ)であってもよい。この例では、
図1、
図2中に示すように、メインユニット101の上面に、出力部4としてLCDの表示画面40が設けられている。
【0033】
図3中に示す操作部6は、ユーザからの指示を受付ける。この例では、
図1、
図2中に示すように、メインユニット101の上面に、操作部6として操作スイッチ60が設けられている。ユーザは操作スイッチ60によって電源オン、オフ、血圧測定開始などの指示を入力することができる。
【0034】
図3中に示す記憶装置8は、各種データやプログラムを保持する。制御部2のCPU10は、記憶装置8に記録されたデータやプログラムの読み出しや書き込みを行う。記憶装置8は、たとえば、ハードディスク、不揮発性メモリ(たとえば、フラッシュメモリ)、あるいは、着脱可能な外部記録媒体などにより構成されてよい。
【0035】
次に、各検出ユニット20の構成について具体的に説明する。
【0036】
検出ユニット20brは、カフ24brに配管22brを介して接続され、配管22brを伝播してくる脈波を検出する検出手段である。詳細には、検出ユニット20brは、被験者200の右上腕に装着されたカフ24brの内圧(以下、「カフ圧」という)の調整および検出を行うことで、右上腕における脈波を検出する。カフ24brは、図示のない流体袋(この例では、空気袋)を内包している。
【0037】
検出ユニット20brは、圧力センサ28brと、カフ駆動部31brと、A/D(Analog to Digital)変換部29brと、配管27brとを含む。カフ駆動部31brは、配管22brを介してカフ24brに空気を送り込み、カフ24brを加圧する。また、カフ駆動部31brは、調整弁26brと、圧力ポンプ25brとを含む。カフ24brと、圧力センサ28br,調整弁26brとは、配管22brによって接続されている。
【0038】
圧力センサ28brは、配管22brを介して伝達される圧力変動を検出するための検出部位であり、一例として、単結晶シリコンなどからなる半導体チップに所定間隔に配列された複数のセンサエレメントを含む。圧力センサ28brによって検出された圧力変動信号は、A/D変換部29brによってデジタル信号に変換されて、脈波信号pbr(t)として制御部2に入力される。
【0039】
調整弁26brは、圧力ポンプ25brとカフ24brとの間に介挿され、測定時にカフ24brの加圧に用いられる圧力を所定の範囲に維持する。圧力ポンプ25brは、制御部2からの検出指令に応じて作動し、カフ24brを加圧するためにカフ24br内の流体袋(図示せず)に空気を供給する。
【0040】
この加圧によって、カフ24brは測定部位に押圧され、右上腕の脈波に応じた圧力変化がそれぞれ配管22brを介して検出ユニット20brへ伝達される。検出ユニット20brは、この伝達される圧力変化を検出することで、右上腕の脈波を検出する。
【0041】
検出ユニット20blも同様に、圧力センサ28blと、調整弁26blと、圧力ポンプ25blと、A/D変換部29blと、配管27blとを含む。カフ24blと、圧力センサ28bl,調整弁26blとは、配管22blによって接続されている。
【0042】
また、検出ユニット20arは、圧力センサ28arと、調整弁26arと、圧力ポンプ25arと、A/D変換部29arと、配管27arとを含む。カフ24arと、圧力センサ28ar,調整弁26arとは、配管22arによって接続されている。
【0043】
検出ユニット20alも同様に、圧力センサ28alと、調整弁26alと、圧力ポンプ25alと、A/D変換部29alと、配管27alとを含む。カフ24alと、圧力センサ28al,調整弁26alとは、配管22alによって接続されている。
【0044】
検出ユニット20bl,20ar,20al内の各部の機能は、検出ユニット20brと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。また、検出ユニット20内の各部についても、特に区別する必要がない限り、“ar”,“br”などの記号は省略して説明する。
【0045】
ここで、配管22br,22blの長さと、配管22ar,22alの長さとが異なる場合には、上腕で検出された脈波が検出されるタイミングと、足首で検出された脈波が検出されるタイミングとに遅延が生じ、ABI及びPWVの測定精度に誤差が生じることとなる。これに対して、血圧脈波測定装置100では、上腕用のカフ24br,24blが接続されたメインユニット101と、足首用のカフ24ar,24alが接続されたアンクルユニット102とが分離されているので、配管22br,22blの長さと、配管22ar,22alの長さとを略同一となるように調整することができる。従って、上腕で検出された脈波が検出されるタイミングと足首で検出された脈波が検出されるタイミングとを略同一とすることができるので、ABI及びPWVの測定精度を向上させることが可能となる。
【0046】
この血圧脈波測定装置100は、制御部2(特にCPU10)による制御によって、後述する
図4の処理フローに示すように、公知のオシロメトリック法による血圧値測定を行うとともに、脈波検出を行って、脈波伝播速度として上腕−足首間脈波伝播速度baPWV(brachial-ankle Pulse Wave Velocity)及び心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWV(heart-ankle Pulse Wave Velocity)を求めるとともに、下肢上肢血圧比として足関節上腕血圧比ABI(Ankle Brachial Pressure Index)を求める。すなわち、制御部2は、各検出ユニット20br,20bl,20al,20arにより検出された脈波を用いて足関節上腕血圧比(ABI)及び脈波伝播速度(PWV)を算出する。また、制御部2は、20br,20blにより検出された脈波を用いて被験者の血圧値を算出する。さらに、制御部2は、心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWVに基づいて算出されるCAVI(Cardio Ankle Vascular Index)などの指標も算出する。ここで、制御部2は、心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWVを対数脈波で補正することによりCAVIを算出する。知られているように、上腕−足首間脈波伝播速度baPWV及び心臓−足関節間動脈脈波伝播速度haPWVは血管の硬さを示す指標であり、また、足関節上腕血圧比ABIは血管の詰まりを示す指標である。
【0047】
以上のように構成された血圧脈波測定装置100の動作について以下に説明する。
【0048】
図4は
図1の血圧脈波測定装置100が実行する下肢上肢血圧比及び脈波伝播速度測定処理を示すフローチャートである。具体的には、測定を開始すると、
図4のステップS1に示すように、各検出ユニット20内のポンプ25を駆動して、各カフ24の昇圧を開始する。
【0049】
そして、ステップS2に示すように、圧力センサ28でカフ圧を監視しながら、カフ圧を所定の圧力(被験者200の最高血圧より高い圧力)まで加圧してポンプ25を停止する(カフ昇圧完了)。次に、ステップS3に示すように、調整弁26を制御して、各カフ24の降圧を開始し、カフ圧を徐々に減圧してゆく。この減圧過程において、測定部位の動脈で発生する動脈容積の変動を各カフ24を介して、圧力センサ28で脈波信号として検出する。
【0050】
そして、ステップS4に示すように、この脈波信号の振幅に基づいて、公知のオシロメトリック法による所定のアルゴリズムを適用して最高血圧(収縮期血圧:Systolic Blood Pressure)と最低血圧(拡張期血圧:Diastolic Blood Pressure)とを算出する(血圧測定)。これとともに、CPU10が下肢上肢血圧比取得部として働いて、被験者200の左半身、右半身について、それぞれ足関節上腕血圧比ABI=(足関節収縮期血圧)/(上腕収縮期血圧)を算出する。また、この例では、脈拍(単位;拍/分)も算出する。なお、血圧の算出は、減圧過程に限らず、加圧過程において行われてもよい。
【0051】
次に、ステップS5に示すように、調整弁26を閉鎖して、カフ圧を規定圧(例えば50mmHg程度)に保持する。この状態で、ステップS6に示すように、CPU10が脈波伝播速度取得部として働いて、圧力センサ28によって測定された脈波に基づいて、被験者の血管の硬さを表す指標である脈波伝播速度を取得する
【0052】
測定が完了すると、
図4のステップS7に示すように、調整弁26を全開してカフ圧を開放する。そして、ステップS8に示すように、CPU10が表示処理部として働いて、メインユニット101の上面に設けられた表示画面40(
図2参照)に測定結果を表示する。
【0053】
なお、本実施の形態では、圧力センサ28を用いて脈波を検出する構成について説明したが、動脈容積センサ(図示せず)を用いて脈波を検出する構成であってもよい。この場合、動脈容積センサは、例えば、動脈に対して光を照射する発光素子と、発光素子によって照射された光の動脈の透過光または反射光を受光する受光素子とを含んでよい。あるいは、複数の電極を含み、被験者200の測定部位に微少の一定電流を流すとともに、脈波の伝播に応じて生じるインピーダンス(生体インピーダンス)の変化によって生じる電圧変化を検出するようにしてもよい。
【0054】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 情報処理ユニット
2 制御部
4 出力部
6 操作部
8 記憶装置
10 CPU
12 ROM
14 RAM
20ar,20al,20br,20bl 検出ユニット
22ar,22al,22br,22bl,27ar,27al,27br,27bl 配管
23 接続ケーブル
24ar,24al,24br,24bl カフ
25ar,25al,25br,25bl 圧力ポンプ
26ar,26al,26br,26bl 調整弁
28ar,28al,28br,28bl 圧力センサ
29ar,29al,29br,29bl A/D変換部
40 表示画面
60 操作スイッチ
100 血圧脈波測定装置
101 メインユニット
101e,101f フック
102 アンクルユニット
200 被験者
300 収納ワゴン
301 脚
302 支柱
303 載置台
304 収納ボックス