(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態における発光装置10を示す模式断面図である。
【0020】
発光装置10は、ステム11と、半導体レーザ12と、ケース部13と、波長変換部材14とを備える。発光装置10では、半導体レーザ12から一次光L1が波長変換部材14に照射され、波長変換部材14で波長変換された二次光と混色して白色光L2が外部に出射される。
図1では発光装置10として所謂CAN型パッケージのものを示したが、CAN型パッケージに限定されず各種半導体レーザ用のパッケージを用いることができる。
【0021】
ステム11は、半導体レーザ12を搭載してケース部13が固定される部材であり、図示しないリードピンやヒートシンクなどを備えて、外部から半導体レーザ12に電力が供給されるとともに、半導体レーザ12で発生した熱を外部に伝える。ステム11を構成する材料は特に限定されないが、放熱性が良好な銅などの金属が望ましい。
【0022】
半導体レーザ12は、電力が供給されてレーザ光を発振する半導体素子である。半導体レーザ12を構成する材料は特に限定されないが、一次光L1として青色光や紫外光を照射する場合には窒化物系半導体が用いられる、また、半導体レーザ12の共振器構造や電極構造、電流狭窄構造などの素子構造も特に限定されず、必要な発光強度と発振波長を得るために適切な構造を採用することができる。本実施形態では一次光L1を発光する素子として半導体レーザ12を示したが、波長変換部材14で波長変換される一次光L1を出射する発光素子であれば半導体レーザに限定されず、発光ダイオードや有機ELなどであってもよい。
【0023】
ケース部13は、ステム11上で半導体レーザ12を覆うように配置される部材であり、ステム11に立設される筒状の側壁と天面とを備えている。ケース部13の天面中央には開口部が設けられて波長変換部材14が固定されている。ケース部13を構成する材料は限定されないが、波長変換部材14で発生した熱をステム11に良好に伝えるためには熱伝導性に優れた金属材料が好ましい。
【0024】
波長変換部材14は、波長変換領域14aと保持領域14bとが互いに接触して一体に成形された焼結体である。波長変換部材14はケース部13の開口部に固定されて発光装置10からの光取り出し部として機能している。
【0025】
図2(a)は、第1実施形態における波長変換部材14の構造を示す模式断面図であり、
図2(b)は、波長変換領域14aと保持領域14bの構造を示す模式拡大断面図である。
図2に示すように本実施形態の波長変換部材14は、波長変換領域14aと、保持領域14bとを備えている。
【0026】
波長変換領域14aは、半導体レーザ12から照射される一次光L1により励起されて二次光を発する蛍光体材料を含有する部分であり、一次光L1と二次光とが混色して白色光L2を外部に照射する。ここでは一次光L1と二次光の混色で白色光L2を照射する例を示したが、複数の蛍光体材料を備えて複数色の二次光を発光して二次光同士の混色によって白色光L2を照射するとしてもよい。また、照射する光L2として白色光の例を示したが、その他の単色光であってもよく、複数色を混色した白色以外の色であってもよい。
【0027】
波長変換領域14aのサイズは、半導体レーザ12からの一次光L1が照射される領域よりも大きく、一次光L1を適切に二次光に波長変換できればよく、例えば厚さ数百μm程度で直径が0.1〜数mm程度である。波長変換領域14aに含有される蛍光体材料は、後述するように保持領域14bと同時焼結するためセラミック蛍光体である。具体的材料としては、Y
3Al
5O
12、すなわちYAG(Yttrium Alminum Garnet)粉末を用いて作成されたセラミック素地を焼結して得られるセラミック蛍光体が最も好ましい。YAG焼結体を波長変換領域14aとして用いることで、一次光L1の青色光を波長変換して二次光の黄色光を出射し、一次光と二次光の混色により白色を得られる。
【0028】
保持領域14bは、波長変換領域14aと一体に成形されて同時に焼結された部分であり、波長変換領域14aを保持する部分である。保持領域14bを構成する材料は特に限定されないが、波長変換領域14aで発生した熱を良好に伝導するためには、保持領域14bは波長変換領域14aよりも熱伝導率が高いことが好ましく、保持領域14bの熱伝導率は20W/mK以上であることが好ましい。
【0029】
また、保持領域14bは、
図2(b)に示すように、第1セラミック材料15aの内部で第2セラミック材料15bおよび第3セラミック材料15cが3次元的に絡み合った構造を有している。上述した保持領域14bの熱伝導率は、これら3次元的に絡み合った構造のセラミック全体の熱伝導率を示している。
【0030】
第1セラミック材料15aは、波長変換領域14aと接触して保持領域14bの全域にわたって連続的に形成されている相であり、内部に第2セラミック材料15bと第3セラミック材料15cの相が3次元的に絡み合っている。第1セラミック材料15aを構成する材料は特に限定されないが、第2セラミック材料15bおよび第3セラミック材料15cよりも熱伝導率が高い材料で構成されていることが好ましい。第1セラミック材料15aを他のセラミック材料よりも熱伝導率が高い材料で構成することにより、波長変換領域14a中の蛍光体14cで生じた熱は、
図2(b)中に黒矢印で示したように第1セラミック材料15aを伝わって外部に放熱されやすくなる。
【0031】
また、第2セラミック材料15bまたは第3セラミック材料15cを構成する材料は、第1セラミック材料15aとの屈折率差が0.2以上であることが好ましい。このように複数のセラミック材料同士の屈折率差を大きくすると、
図2(b)中に白抜き矢印で示したように、波長変換領域14aから保持領域14b方向に進む光は、3次元的に絡み合った第1セラミック材料15a〜第3セラミック材料15cの界面で反射される。これにより、保持領域14bは全体として白色の領域となり、光反射部としても機能して横方向への光漏れを防止でき、光は波長変換領域14a方向に戻されて波長変換領域14aから外部に取り出される。
【0032】
ここでは、第1セラミック材料15a〜第3セラミック材料15cの3種類の材料からなる保持領域14bを示したが、複数のセラミック材料が3次元的に絡みあう構造であれば材料の種類数は限定されない。
【0033】
このような保持領域14bは、第1セラミック材料15a〜第3セラミック材料15cとして適切な材料の組み合わせを選択して、組成比と合成温度を適切に設定して焼結することで、各材料が化合物とならずに各相が3次元的に絡み合った構造となる。具体的なセラミック材料の熱伝導率、屈折率の組み合わせと、合成温度および組成比の例を表1に示す。表1に示すように、第1セラミック材料15aとしてAl
2O
3を選択した場合には、第2セラミック材料15b、第3セラミック材料15cはYSZ(Y
2O
3安定化ZrO
2)とTiO
2(ルチル型)を用いることができる。また、第1セラミック材料15aとしてMgOを選択した場合には、第2セラミック材料15bとしてYSZを用いることができる。
【0035】
次に、波長変換部材14の製造方法について
図3(a)〜
図3(d)を用いて説明する。はじめに
図3(a)に示すように、波長変換領域14aの原料を混合したグリーンシート14a’と、保持領域14bの原料を混合したグリーンシート14b’を用意して、グリーンシート14a’をグリーンシート14b’で挟みこんだ積層グリーンシートを構成する。例えば、グリーンシート14a’としてYAG蛍光体を含むものを用い、グリーンシート14b’として表1に示した複数のセラミック材料を含む複合材料を用いる。
【0036】
次に、
図3(b)に示すように、得られた積層グリーンシートを温間等方圧プレス(WIP:Warm Isostatic Press)装置を用いて加圧し、グリーンシート14a’とグリーンシート14b’を接着する。
【0037】
次に、
図3(c)に示すように、接着した積層グリーンシートを同時焼結し、波長変換領域14aを保持領域14bが挟み込んだ積層構造の焼結体を得る。波長変換領域14aに含まれる蛍光体材料としてYAGを用いる場合には、保持領域14bの材料は表1のNo.1またはNo.3の組み合わせを選択し、焼結温度を1500〜1600℃とする。
【0038】
最後に、得られた積層構造の焼結体をダイシング等により分割し、波長変換領域14aの両側に保持領域14bが接触して一体焼結された焼結体である波長変換部材14を得る。
【0039】
図4は、本実施形態における発光装置10での熱の伝わり方を示す概念図である。発光装置10の波長変換部材14には、半導体レーザ12から一次光L1が照射される。
図4中の黒い矢印は、波長変換領域14aからの熱の経路を模式的に示している。上述したように、保持領域14bは波長変換領域14aよりも熱伝導率が高いため、波長変換領域14aの側面に接触して同時焼結された保持領域14bを介してケース部13に熱が良好に伝わって放熱される。また、上述したように保持領域14bは屈折率差が0.2以上ある複数のセラミック材料が3次元的に絡み合っているため、波長変換領域14aから保持領域14b方向に進んだ光は、保持領域14bを透過せずに反射されて波長変換領域14aから図中矢印L2のように取り出される。
【0040】
上述したように本実施形態では、波長変換部材14が、一次光を波長変換して二次光を出射する蛍光体材料を含む波長変換領域14aと、波長変換領域14aに接触して設けられた保持領域14bを有し、波長変換領域14aと保持領域14bが一体に同時焼結された焼結体である。これにより、本実施形態の焼結体は波長変換に伴う発熱を効率的に放熱できる。
【0041】
(第1実施形態の変形例)
次に第1実施形態の変形例について
図5を用いて説明する。
図5(a)は、第1実施形態の変形例における波長変換部材14の構造を示す模式断面図であり、
図5(b)は波長変換領域14aを拡大して細部を示す模式断面図である。この変形例では、波長変換部材14の波長変換領域14aが、波長変換層14dと熱輸送層14eの積層構造を有している。
【0042】
波長変換層14dは、半導体レーザ12から照射される一次光L1により励起されて二次光を発する蛍光体材料を含有する層である。具体的な波長変換層14dの材料としては、上述した第1実施形態と同様である。
【0043】
熱輸送層14eは、一次光L1と二次光を透過する透明な材料で構成される層である。熱輸送層14eが透明であるとは、全光線透過率が高いことを意味し、直線透過率が低くてもよく、例えば全光線透過率が80%以上であることが好ましい。また、熱輸送層14eは波長変換層14dよりも熱伝導性が高い材料を用いることが好ましい。
【0044】
図5(a)(b)に示すように波長変換領域14aは、波長変換層14dと熱輸送層14eを交互に積層した構造を有している。これにより、波長変換層14dで発生した熱は、熱輸送層14eを介して保持領域14bに良好に伝達され、波長変換に伴う発熱を効率的に放熱できる。また、熱輸送層14eの全光線透過率が高く透明であることから、半導体レーザ12からの一次光L1や波長変換層14dで波長変換された二次光が熱輸送層14eによって遮られず、一次光L1照射及び二次光の取り出しと放熱を両立できる。
【0045】
図5(a)(b)では、波長変換層14dと熱輸送層14eを3層ずつ交互に積層した例を示したが、層数は限定されずさらに多層であってもよく、各々1層であってもよい。また、波長変換層14dと熱輸送層14eの厚さは同程度であっても異なっていてもよく、波長変換層14dでの波長変換と熱輸送層14eによる熱輸送のバランスによって厚さの比は適宜設定してよい。
【0046】
波長変換層14dと熱輸送層14eは、シリコーン系樹脂等の接着剤により相互に張り合わせてもよく、グリーンシート同士を貼り合わせて一体に焼結してもよい。第1実施形態で示した温間等方圧プレスと焼結の技術を用いて、保持領域14b、波長変換層14d及び熱輸送層14eを同時に焼結すると、各層の界面での反射を低減して一次光L1および二次光の光取り出し効率を向上することができるので、一体焼結により波長変換部材14を形成することが好ましい。一体焼結する波長変換層14dと熱輸送層14eの具体的材料としては、例えば波長変換層14dにYAGを用いる場合には熱輸送層14eにアルミナを組み合わせることができる。
【0047】
本実施形態の変形例では、波長変換領域14aを波長変換層14dと熱輸送層14eの積層構造としているので、波長変換層14dで波長変換によって生じた熱を熱輸送層14eで保持領域14bに良好に輸送でき、放熱性が向上して波長変換層14dの温度が過度に上昇して波長変換効率が低下することを防止できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
図6は、第2実施形態における灯具ユニット20を示す模式断面図である。本実施形態は、第1実施形態で示した発光装置10を光源として車両用の灯具ユニットを構成したものである。
【0049】
図6に示す灯具ユニット20は、ハイビーム用配光パターンを形成するように構成されている。灯具ユニット20は、発光装置10と、カバー21と、ランプボディ22と、投影レンズ23と、出射した光を投影レンズ23に向けて反射する楕円反射面を有するリフレクタ24と、ベース部26を介して発光装置10が発する熱を外部へ放熱する放熱フィン25と、発光装置10が載置されているベース部26と、スイブルアクチュエータ27と、スクリュー29と、レベリングアクチュエータ30と、スクリュー31とを備える。
【0050】
ベース部26は、水平方向にスイブルできるようにスイブルアクチュエータ27によって支持されている。また、ベース部26の上部は、スクリュー31等を介してランプボディ22と連結されている。スイブルアクチュエータ27は、レベリングアクチュエータ30と接続されている。レベリングアクチュエータ30は、スクリュー29を回転させることで、連結部材28を移動させ、ベース部26の上下方向の傾きを変えることができる。このように、レベリングアクチュエータ30は、灯具ユニット20の光軸や灯具ユニット20により形成される配光パターンを上下方向に変化させるためのものである。
【0051】
図1に示したように、半導体レーザ12が発光した一次光L1は波長変換部材14で二次光に波長変換され、一次光L1と二次光の混色による白色光L2が発光装置10から出射される。
図6に示したように、発光装置10から上方に出射された白色光は、リフレクタ24で前方に反射され、投影レンズ23およびカバー21を透過して車両前方に投影される。
【0052】
本実施形態の灯具ユニット20では、
図4及び
図6で示したように、波長変換領域14aで発生した熱は保持領域14bを介してケース部13及びステム11を経由し、ベース部26から放熱フィン25に伝わり放熱される。したがって、本実施形態の灯具ユニット20でも、波長変換領域14aで発生した熱を良好に放熱して安定した白色光照射を実現できる。
【0053】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
図7は、第3実施形態における発光装置40を示す模式断面図である。発光装置40は、ステム41と、半導体レーザ42と、波長変換部材44とを備える。発光装置40では、半導体レーザ42から一次光L1が波長変換部材44に照射され、波長変換部材44で波長変換された二次光と混色して白色光が外部に出射される。
【0054】
本実施形態でも、波長変換部材44は波長変換領域44aと保持領域44bとが互いに接触して一体に成形された焼結体である。本実施形態の波長変換部材44では、波長変換領域44aの側面と底面に保持領域44bが接触しており、保持領域44bに波長変換領域44aが埋め込まれた形状となっている。また、保持領域44bは複数のセラミック材料が3次元的に絡み合った構造であり、セラミック材料の屈折率差を0.2以上にすることで保持領域14bは全体として白色の領域となり、光反射部としても機能する。
【0055】
半導体レーザ42は、波長変換領域44aの露出面側に配置されており、一次光L1を波長変換領域44aに向けて照射する。波長変換領域44aに入射した一次光L1は、蛍光体材料により波長変換されて露出面から外部に取り出される。
図7中に白抜き矢印で示すように、波長変換領域44aから保持領域44bに向かった光は、光反射部として機能する保持領域44bにより反射されて波長変換領域44a方向に戻されて外部に取り出される。
【0056】
図7中に黒い矢印で示すように、保持領域44bは波長変換領域44aよりも熱伝導率が高いため、波長変換領域44aの側面と底面に接触して同時焼結された保持領域44bとステム41を介して熱が良好に伝わって放熱される。
【0057】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態について
図8を用いて説明する。第1実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
図8は、第4実施形態における発光装置50を示す模式断面図である。発光装置50は、ステム51と、半導体レーザ52と、波長変換部材54とを備える。発光装置50では、半導体レーザ52から一次光L1が波長変換部材54に照射され、波長変換部材54で波長変換された二次光と混色して白色光L2が外部に出射される。
【0058】
本実施形態でも、波長変換部材54は波長変換領域54aと保持領域54bとが互いに接触して一体に成形された焼結体である。本実施形態の波長変換部材54では、波長変換領域54aの側面に保持領域54bが接触している。また、保持領域54bは複数のセラミック材料が3次元的に絡み合った構造であり、セラミック材料の屈折率差を0.2以上にすることで保持領域54bは全体として白色の領域となり、光反射部としても機能する。
【0059】
本実施形態では、ステム51上に半導体レーザ52が搭載され、半導体レーザ52の上部に波長変換部材54が配置されて、波長変換領域54aが半導体レーザ52の光出射位置を覆う構成とされている。波長変換領域54aに入射した一次光L1は、蛍光体材料により波長変換されて露出面から外部に取り出される。
図8中に白抜き矢印で示すように、波長変換領域54aから保持領域54bに向かった光は、光反射部として機能する保持領域54bにより反射されて波長変換領域54a方向に戻されて外部に取り出される。
【0060】
図8中に黒い矢印で示すように、保持領域54bは波長変換領域54aよりも熱伝導率が高いため、波長変換領域54aの側面に接触して同時焼結された保持領域54bを介して熱が良好に伝わって放熱される。
【0061】
(第5実施形態)
次に本発明の第5実施形態について
図9を用いて説明する。第1実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
図9は、第5実施形態における発光装置60を示す模式断面図である。発光装置60は、ステム61と、半導体レーザ62と、波長変換部材64とを備える。発光装置60では、半導体レーザ62から一次光L1が波長変換部材64に照射され、波長変換部材64で波長変換された二次光と混色して白色光L2が外部に出射される。
【0062】
本実施形態でも、波長変換部材64は波長変換領域64aと保持領域64bとが互いに接触して一体に成形された焼結体である。本実施形態の波長変換部材64では、波長変換領域64aの底面に保持領域64bが接触しており、保持領域64bの上面に波長変換領域64aが搭載された形状となっている。また、保持領域64bは複数のセラミック材料が3次元的に絡み合った構造であり、セラミック材料の屈折率差を0.2以上にすることで保持領域64bは全体として白色の領域となり、光反射部としても機能する。
【0063】
半導体レーザ62は、波長変換領域64aの露出面側に配置されており、一次光L1を波長変換領域64aに向けて照射する。波長変換領域64aに入射した一次光L1は、蛍光体材料により波長変換されて露出面から外部に取り出される。
図9中に白抜き矢印で示すように、波長変換領域64aから保持領域64bに向かった光は、光反射部として機能する保持領域64bにより反射されて波長変換領域64a方向に戻されて外部に取り出される。
【0064】
図9中に黒い矢印で示すように、保持領域64bは波長変換領域64aよりも熱伝導率が高いため、波長変換領域64aの底面に接触して同時焼結された保持領域64bとステム61を介して熱が良好に伝わって放熱される。
【0065】
(第6実施形態)
次に本発明の第6実施形態について
図10を用いて説明する。第1実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
図10は、第6実施形態における波長変換部材の構成例を示す模式断面図である。本発明の焼結体である波長変換部材は、波長変換領域14aと保持領域14bとが接触して一体に焼結されているものであればよく、波長変換領域14aと保持領域14bの形状は第1〜第5実施形態で示したものに限定されない。
【0066】
例えば、
図10(a)に示したように、平板状の保持領域14bの中央近傍に略円筒形状の波長変換領域14aが設けられたものや、
図10(b)に示したように、円錐台形状の波長変換領域14aが設けられたものでもよい。
【0067】
本実施形態でも、波長変換部材14が、一次光を波長変換して二次光を出射する蛍光体材料を含む波長変換領域14aと、波長変換領域14aに接触して設けられた保持領域14bを有し、波長変換領域14aと保持領域14bが一体に同時焼結された焼結体であり、波長変換に伴う発熱を効率的に放熱できる。
【0068】
(第7実施形態)
次に本発明の第7実施形態について
図11を用いて説明する。第1実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
図11は、第7実施形態における発光装置70を示す模式断面図である。
【0069】
発光装置70は、半導体レーザ72と、波長変換部材74と、ホルダー部材76とを備える。発光装置70では、半導体レーザ72から一次光L1が波長変換部材74に照射され、波長変換部材74で波長変換された二次光と混色して白色光L2が外部に出射される。
【0070】
図11に示すように、本実施形態の波長変換部材74は、波長変換領域74aが略円錐台形状であり、保持領域74bと側面が接触して波一体に成形された焼結体である。また、波長変換領域74aは径の大きい底面が一次光L1の入射面とされており、一次光L1の進行方向に向かって先細りとなるように波長変換領域74aが保持されている。波長変換領域74aの径が小さい側が光出射面となるため、白色光の出射面積を小さくすることもできる。ここでは波長変換領域74aの径が漸減する形状を示したが、段階的に径が変化するものであってもよい。
【0071】
ホルダー部材76は、開口部が形成された板状部材であり、開口部から波長変換領域74aが露出するように波長変換部材74の光入射面側に配置されている。ホルダー部材76の開口部は、波長変換領域74aの光入射面よりも半径がΔtだけ小さく形成され、波長変換領域74aと同心円となるように配置されている。ホルダー部材76を構成する材料は、波長変換部材74を保持できる剛性を有していれば限定されないが、放熱性を向上させるためには熱伝導率の高いセラミック材料や金属を用いることが好ましい。
【0072】
ホルダー部材76の開口部には、図示しない光学膜を成膜して所望の光学特性を付加してもよい。例えば、一次光を透過して二次光を反射する反射膜を成膜すると、波長変換領域74aの入射面側から二次光が取り出されることを防止し、効率的に出射面側から白色光を取り出して光束と輝度の低下を抑制することが可能となる。
【0073】
本実施形態では、波長変換領域74aに含まれる蛍光体材料の濃度を低くするとともに、厚さを従来よりも厚くしている。例えば、従来では蛍光体濃度を0.05〜0.5atm%の範囲として0.1〜0.3mm程度の厚さであったものを、本実施形態では蛍光体濃度を0.0005〜0.05atm%の範囲として1〜5mm程度の厚さに形成する。
【0074】
波長変換領域74aに含まれる蛍光体濃度が低くいことで、一次光から二次光への波長変換に伴う熱の発熱位置が分散される。また、波長変換領域74aの厚みが大きいので、保持領域74bと接触する面積も大きくなる。これらの発熱位置の分散と接触面積の増大によって、波長変換領域74aからの放熱効率が向上する。さらに、波長変換領域74aの光入射面側の径を大きくすることで、一次光の光強度が大きい入射面側での波長変換と放熱を同時に向上させることができる。このとき、一次光は波長変換領域74aを進行するとともに蛍光体で波長変換されるため、出射面側での径を小さくしても一次光を効率よく波長変換できる。また、出射面の径を小さくすることで輝度が向上する。
【0075】
本実施形態では、波長変換領域74aの径が大きい側を入射面としたが、径が小さい側を入射面としてもよい。この場合、一次光の進行方向に径が拡大することになり、波長変換領域74aが保持領域74bと接触する側面では、径が大きい出射面方向に光が反射され、白色光を効率的に取り出すことができる。
【0076】
本実施形態でも、波長変換部材74が、一次光を波長変換して二次光を出射する蛍光体材料を含む波長変換領域74aと、波長変換領域74aに接触して設けられた保持領域74bを有し、波長変換領域74aと保持領域74bが一体に同時焼結された焼結体であり、波長変換に伴う発熱を効率的に放熱できる。
【0077】
(第7実施形態の変形例)
次に第7実施形態の変形例について説明する。波長変換部材74として、波長変換領域74aと保持領域74bとが互いに接触して一体に成形された焼結体ではなく、波長変換領域74aと保持領域74bを別途焼結して組み合わせ、ホルダー部材76で波長変換領域74aの離脱を防止する構造としてもよい。
【0078】
本実施形態の変形例では、波長変換領域74aと保持領域74bを別体として成形して組み合わせるので、両者の形状の自由度が向上する。また、波長変換領域74aの径が大きい側に、波長変換領域74aよりも小さい開口部を有するホルダー部材76を配置しているので、保持領域74bからの波長変換領域74aの脱落を防止することができる。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。