(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異常判定部は、前記データ取得部によって取得された前記機器の前記消費電力量を一次エネルギー消費量、CO2排出量、およびコストのいずれか1つの指標の第1の値に変換し、
前記異常判定部は、前記消費電力量演算部によって演算された前記消費電力量を前記第1の値と同一の指標の第2の値に変換し、
前記異常判定部は、前記第1の値と前記第2の値とに基づいて、前記機器に異常が発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の異常検知装置。
前記機器に設定されている前記設定値に対する前記消費電力量と、前記データ取得部によって取得された前記機器の前記消費電力量との差である損失量を複数の期間毎に演算する損失量演算部と、
前記複数の前記期間毎の前記損失量に基づく損失コストと、前記複数の前記期間毎の前記機器の点検コストとの合計に基づいて点検周期を演算する点検周期演算部と、
を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の異常検知装置、異常検知方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。実施形態の機器は、省エネ制御手法による制御が適用される機器である。以下、ビルにおける空調機および熱源機を機器の例として説明する。簡略化のため、熱源機は冷水を空調機に搬送し、かつ空調機は冷水を利用して空気を冷却する場合を例として説明する。冷却する場合と加熱する場合とでは、利用する冷媒が冷水と温水とで異なる等の違いはある。しかし、異常検知装置の構成および機能はどちらの場合も同様である。空調機および熱源機は省エネ制御手法により動作していると仮定する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について
図1から
図4を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の異常検知装置1の構成を示す。
図1に示すように、異常検知装置1は、データ取得部10と、機器モデル記憶部11と、系統情報記憶部12と、消費電力量演算部13と、パラメータ入力部14と、異常判定部15と、順位演算部16とを備える。
【0010】
データ取得部10は、機器のセンサから出力された計測値と、機器の消費電力量と、機器の運用条件を示す設定値とを取得する。機器は、空調機および熱源機である。センサは、機器が配置された環境下に配置される。センサから出力された計測値は、消費電力量以外の計測値である。例えば、センサから出力された計測値は、外気温度、外気湿度、室内負荷、室内温度、および室内湿度である。データ取得部10は、電力計以外のセンサから上記の計測値の現在値を取得する。また、データ取得部10は、電力計から機器の消費電力量の現在値を取得する。また、データ取得部10は、機器の運用条件を示す設定値の現在値を機器から取得する。機器の運用条件を示す設定値については後述する。データ取得部10は、取得された計測値、消費電力量の現在値、および機器の運用条件を示す設定値の現在値を消費電力量演算部13および異常判定部15に出力する。
【0011】
機器モデル記憶部11および系統情報記憶部12は、揮発性または不揮発性のメモリである。機器モデル記憶部11および系統情報記憶部12が1つの記憶部として構成されてもよい。
【0012】
機器モデル記憶部11は、機器の消費電力量を演算するための機器モデルを記憶する。機器モデルは、機器の消費電力量の演算方法を示す情報である。例えば、機器モデルは、機器の消費電力量の演算に必要な式の情報である。機器モデル記憶部11は、機器の種類毎に機器モデルを記憶する。
【0013】
機器は、複数の系統のいずれか1つに含まれる。複数の系統の各々は、少なくとも1つの機器を含む。系統情報記憶部12は、系統に含まれる機器を示す系統情報を系統毎に記憶する。実施形態では、複数の空調機および熱源機を同時に診断するために、診断の対象となる空調機および熱源機を含むグループが1系統と定義される。
図2は、系統情報記憶部12が記憶する系統情報を示す。各系統の情報と、各系統に含まれる機器(空調機および熱源機)とが関連付けられて系統情報として系統情報記憶部12に記憶される。例えば、系統1は、空調機1および熱源機1を含む。空調機および熱源機だけでなく、診断に利用するセンサデータの情報が系統情報に含まれてもよい。
【0014】
消費電力量演算部13は、データ取得部10によって取得された計測値と、機器モデル記憶部11に記憶された機器モデルとに基づいて、機器の運用に関する設定値に対する消費電力量を演算する。消費電力量演算部13は、異常判定の対象である系統に対応する系統情報が示す機器の機器モデルを選択する。消費電力量演算部13は、選択された機器モデルを使用して、異常判定の対象である系統の消費電力量を演算する。
【0015】
パラメータ入力部14は、異常の有無を判定するために必要なパラメータをユーザが入力するための入力インタフェースである。ユーザは、パラメータ入力部14を介してパラメータを異常検知装置1に入力する。例えば、パラメータは、異常の有無を判定するための閾値である。パラメータ入力部14は、入力されたパラメータを異常判定部15に出力する。
【0016】
異常判定部15は、データ取得部10によって取得された機器の消費電力量と、消費電力量演算部13によって演算された消費電力量とに基づいて、機器に異常が発生しているか否かを判定する。異常判定部15は、パラメータ入力部14に入力されたパラメータを異常判定の閾値として使用する。異常判定部15は、判定結果を順位演算部16に出力する。
【0017】
順位演算部16は、異常判定部15によって異常が発生していると判定された機器を含む系統毎に、系統で発生する損失の大きさに基づく順位を演算する。具体的には、順位演算部16は、異常判定部15によって異常と判定された系統を抽出し、かつ抽出された系統の消費電力量の損失が大きい順に複数の系統を並び替える。これにより、順位演算部16は、各系統の点検の必要性に応じた順位を決定する。順位演算部16は、演算された順位を診断結果として出力する。消費電力量の損失が大きい順に複数の系統を並び替えることにより、管理者または点検員は、故障等に対する点検の順位を容易に決定することができる。
【0018】
異常検知装置1が、プログラムを読み込み、かつ読み込まれたプログラムを実行してもよい。つまり、異常検知装置1の機能はソフトウェアにより実現されてもよい。このプログラムは、異常検知装置1の動作を規定する命令を含む。このプログラムは、例えばフラッシュメモリのような「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」により提供されてもよい。また、上述したプログラムは、このプログラムが保存された記憶装置等を有するコンピュータから、伝送媒体を介して、あるいは伝送媒体中の伝送波により異常検知装置1に伝送されてもよい。プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように、情報を伝送する機能を有する媒体である。また、上述したプログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上述したプログラムは、前述した機能をコンピュータに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0019】
機器モデル記憶部11に記憶された機器モデルの具体例を説明する。空調機および熱源機の消費電力量を演算するモデルとして、例えば、以下の式(1)から式(3)を用いてもよい。以下の式(1)および式(2)では、例として熱源機は空冷ヒートポンプチラーである。式(1)における効率(COP)は、外気温度および外気湿度に基づいて算出される。
【0020】
熱源機冷却電力量(E_hs)=冷却熱量(Q)/効率(COP) ・・・(1)
熱源機ポンプ電力量(E_pump)=ポンプ定格消費電力量(E_pump_rate)×(ポンプ流量(F_pump)/ポンプ定格流量(F_pump_rate))
3 ・・・(2)
空調機ファン電力量(E_fan)=ファン定格消費電力量(E_fan_rate)×(ファン風量(F_fan)/ファン定格風量(F_fan_rate))
3 ・・・(3)
【0021】
室内側のバランス式として、以下の式(4)が使用されてもよい。つまり、式(1)における冷却熱量(Q)は、式(4)により室内顕熱負荷(Q_room)として算出されてもよい。
室内顕熱負荷(Q_room)=空気比熱(Ca)×ファン風量(F_fan)×(室内温度(T_room)−給気温度(T_sa)) ・・・(4)
【0022】
消費電力量演算部13による消費電力量の演算方法について説明する。実施形態では、空調機および熱源機は、省エネ制御手法により動作している。このため、空調機および熱源機に対して、運用条件を示す設定値が省エネ制御手法により設定されている。消費電力量演算部13は、この運用条件を示す設定値を利用して、消費電力を演算する。例えば、運用条件を示す設定値は、空調機給気温度、室内温度、および熱源機の冷水温度である。運用条件を示す設定値は、外気湿度および露点温度等であってもよい。
【0023】
図3を用いて、消費電力量の演算方法について具体的に説明する。
図3は、消費電力量のグラフを示す。グラフの横軸は、空調機給気温度である。空調機給気温度は、運用条件を示す設定値である。グラフの縦軸は、消費電力量である。
図3において、空調機電力量、熱源機電力量、および合計消費電力量の各グラフが示されている。合計消費電力量は、空調機電力量および熱源機電力量の合計である。
【0024】
消費電力量演算部13は、式(1)から式(3)と、センサの計測値の現在値と、運用条件を示す設定値の現在値(現在設定値)とを用いて演算を行う。消費電力量演算部13は、現在設定値で機器を運用する場合の消費電力量を演算する。具体的には、消費電力量演算部13は、現在設定値に対応する空調機電力量および熱源機電力量をそれぞれ演算する。その後、消費電力量演算部13は、空調機電力量および熱源機電力量を合計する。これにより、
図3の点P1における消費電力量が演算される。
【0025】
次に、消費電力量演算部13は、空調機給気温度が現在設定値から+1℃ずれた場合の消費電力量を演算する。これにより、
図3の点P2における消費電力量が演算される。さらに、消費電力量演算部13は、空調機給気温度が現在設定値から+2℃ずれた場合の消費電力量を演算する。これにより、
図3の点P3における消費電力量が演算される。同様に、消費電力量演算部13は、空調機給気温度が現在設定値から−1℃および−2℃ずれた場合の消費電力量を演算する。これにより、
図3の点P4および点P5における消費電力量が演算される。
図3に示されていない点についても、消費電力量演算部13は、消費電力量を演算する。これにより、
図3に示す消費電力量曲線を描くことができる。
【0026】
空調機および熱源機は、省エネ制御手法により動作しているため、現在設定値における合計消費電力量は、消費電力量曲線における最小値である。消費電力量演算部13は、空調機給気温度に関する消費電力量と同様に、室内温度および熱源機の冷水温度等に関する消費電力量を演算してもよい。
【0027】
異常判定部15による判定の具体例を説明する。異常判定部15は、消費電力量曲線において現在設定値に対応する消費電力量を検出する。これにより、異常判定部15は、機器に設定されている設定値に対する消費電力量を検出する。さらに、異常判定部15は、損失量を演算する。損失量は、機器の現在の設定値に対する消費電力量と、データ取得部10によって取得された機器の消費電力量の現在値との差である。機器の現在の設定値に対する消費電力量は、
図3の点P1における消費電力量である。異常判定部15は、損失量と、パラメータ入力部14に入力された閾値とに基づいて、機器に異常が発生しているか否かを判定する。
【0028】
具体例として、空調機における冷水バルブに異常が発生することにより空調機の給気温度の制御性能が悪化したと仮定して判定方法を説明する。冷水バルブに固着が発生した場合、あるいは一部の機構が故障した場合、冷水バルブが正常に動作せず、給気温度を給気温度設定値に制御できない。例えば、給気温度設定値が22℃である場合、冷水バルブの異常により、給気温度が24℃となることがある。その結果、熱源機における冷却熱量は減少するが、室内を冷却するためにファン風量が増加する。
【0029】
例えば、冷水バルブの異常が発生した場合、消費電力量は、空調機給気温度が現在設定値よりも2℃高い場合の消費電力量(
図3の点P3)となる。この消費電力量は、正常時の消費電力量(
図3の点P1)よりも増加している。この消費電力の増加量が損失量である。異常判定部15は、損失量と、異常の有無を判定するための閾値とを比較することにより、機器に異常があるか否かを判定する。上記の例では、損失量が閾値よりも大きい場合、異常判定部15は、異常が発生していると判定する。損失量が閾値以下である場合、異常判定部15は、異常が発生していないと判定する。異常があると判定された場合、判定対象の系統における少なくとも1つの機器に異常がある。
【0030】
パラメータ入力部14に入力される閾値は、現在設定値と、異常時の消費電力量に対応する設定値との差分を示す値であってもよい。例えば、運用条件を示す設定値が空調機給気温度である場合、2℃のような値が閾値として入力される。異常判定部15は、運用条件を示す設定値が現在設定値から2℃ずれたときの消費電力量を算出する。これにより、異常判定部15は、パラメータ入力部14に入力された閾値を消費電力量の閾値に変換する。異常判定部15は、消費電力量の現在値と消費電力量の閾値とを比較することにより、機器に異常があるか否かを判定する。
【0031】
異常判定部15は、データ取得部10によって取得された機器の消費電力量を一次エネルギー消費量、CO2排出量、およびコスト(金額)のいずれか1つの指標の第1の値に変換してもよい。この場合、異常判定部15は、消費電力量演算部13によって演算された消費電力量を第1の値と同一の指標の第2の値に変換する。異常判定部15は、第1の値と第2の値とに基づいて、機器に異常が発生しているか否かを判定する。例えば、異常判定部15は、データ取得部10によって取得された機器の消費電力量をコストに変換する。さらに、異常判定部15は、消費電力量演算部13によって演算された消費電力量をコストに変換する。異常判定部15は、これらのコストに基づいて、機器に異常が発生しているか否かを判定する。
【0032】
消費電力量が上記の指標に変換される場合、消費電力量の閾値は上記の指標に対応する閾値に変換される。この場合、消費電力量の閾値だけでなく、その閾値を所定の指標に対応する閾値に変換することを示すパラメータがパラメータ入力部14に入力される。
【0033】
図4を用いて、異常検知装置1の動作を説明する。
図4は、異常検知装置1による処理の手順を示す。
【0034】
異常判定の対象となる空調機および熱源機の機器モデルが機器モデル記憶部11に入力される。機器モデル記憶部11は、入力された機器モデルを記憶する(ステップS100)。例えば、機器モデルは、外部のコンピュータによって生成される。
【0035】
ステップS100の後、異常判定の対象となる各系統における機器の情報が系統情報記憶部12に入力される。系統情報記憶部12は、入力された情報を系統情報として記憶する(ステップS101)。例えば、系統情報は、上記のコンピュータによって生成される。
【0036】
ステップS101の後、異常の有無を判定するための閾値がパラメータ入力部14に入力される(ステップS102)。ステップS100からステップS102における処理は、判定のための前処理として行われる。
【0037】
ステップS102の後、データ取得部10は、消費電力量および計測値(外気温度、外気湿度、室内顕熱負荷、室内温度、および室内湿度)の現在値を取得する。また、データ取得部10は、運用条件を示す設定値の現在値を取得する(ステップS103)。ステップS103において取得される現在値は、処理対象の1つの系統に関する現在値である。
【0038】
ステップS103の後、消費電力量演算部13は、機器モデルを機器モデル記憶部11から取得し、かつ系統情報を系統情報記憶部12から取得する。消費電力量演算部13は、データ取得部10によって取得された現在値と、機器モデルと、系統情報とを利用して、消費電力量を演算する(ステップS104)。ステップS104において演算される消費電力量は、処理対象の1つの系統に関する消費電力量である。
【0039】
ステップS104の後、異常判定部15は、処理対象の1つの系統における空調機および熱源機に異常が発生しているか否かを判定する。このとき、異常判定部15は、ステップS104で演算された消費電力量と、異常の有無を判定するための閾値と、消費電力量の現在値とを用いる(ステップS105)。ステップS105において、処理対象の1つの系統に対する判定が行われる。異常判定部15は、判定結果を順位演算部16に出力する。
【0040】
ステップS105の後、全ての系統に対して、異常の判定が終了したか否かの判断が行われる(ステップS106)。異常の判定が行われていない系統が存在する場合、ステップS103における処理が行われる。つまり、全ての系統に対して異常の判定が終了するまで、消費電力量の演算と、異常の判定とが繰り返される。
【0041】
全ての系統に対して異常の判定が終了した場合、順位演算部16は、異常判定部15によって、異常が発生していると判定された系統を抽出する。順位演算部16は、抽出された各系統の判定結果に基づいて、各系統の順位を演算する(ステップS107)。ステップS107において演算される順位は、機器を点検すべき順を示す。
【0042】
ステップS107の後、順位演算部16は、ステップS107において演算された順位を診断結果として出力する(ステップS108)。
【0043】
例えば、ステップS103からステップS108における処理は、各系統からリアルタイムに取得された設定値に基づいて行われる。ステップS103からステップS108における処理は、過去の所定期間に各系統から出力された設定値に基づいて行われてもよい。
【0044】
異常検知装置1は順位演算部16を有していなくてもよい。例えば、異常判定の対象である全ての系統の判定結果が出力されてもよい。異常判定部15によって異常が発生していないと判定された系統の判定結果が出力されなくてもよい。異常検知装置1はパラメータ入力部14を有していなくてもよい。例えば、異常の有無を判定するためのパラメータは、異常検知装置1のプログラムに含まれてもよい。
【0045】
第1の実施形態によれば、省エネ制御手法により動作している機器の消費電力量の変化から各機器の制御性能の悪化および機器の故障を検知することができる。つまり、機器の異常を検知することができる。また、消費電力量の具体的な変化量を演算できるため、制御性能の悪化および機器の故障による消費電力量の損失額を演算することができる。さらに、複数の系統を同時に診断し、かつ各系統を損失の大きい順に並び替えることにより、管理者または点検員は点検の順位を容易に決定することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態の異常検知装置1aの構成を示す。
図5に示す構成について、
図1に示す構成と異なる点を説明する。
【0047】
異常検知装置1aは、
図1に示す異常検知装置1の構成に加えて、機器モデル生成部17を備える。機器モデル生成部17は、回帰式を利用して機器モデルを生成する。機器モデル生成部17は、正常な機器のセンサから出力された計測値に基づいて機器の機器モデルを生成する。機器モデル記憶部11は、機器モデル生成部17によって生成された機器モデルを記憶する。
【0048】
上記以外の点について、
図5に示す構成は、
図1に示す構成と同様である。
【0049】
図6を用いて、異常検知装置1aの動作を説明する。
図6は、異常検知装置1aによる処理の手順を示す。
図6に示す処理について、
図4に示す処理と異なる点を説明する。
【0050】
ステップS102の後、機器モデル生成部17は、機器モデルを生成する。このとき、機器モデル生成部17は、機器モデルを生成する対象となる空調機および熱源機のセンサが計測したデータを利用して機器モデルを生成する。機器モデルを生成するために利用するデータは、機器に異常が発生していない正常時のデータである。例えば、定期点検後のデータが利用される(ステップS110)。
【0051】
例えば、ステップS110において、機器モデル生成部17は、回帰モデルを利用して機器モデルを生成してもよい。回帰モデルを利用する場合、機器モデルを構成する各式は、以下の式(5)から式(7)のように定義されてもよい。
熱源機冷却電力量(E_hs)=a1+a2×外気温度(T_amb)+a3×熱源機負荷率(q)+a4×冷水往還温度差 ・・・(5)
熱源機ポンプ電力量(E_pump)=b1+b2×ポンプ流量(F_pump) ・・・(6)
空調機ファン電力量(E_fan)=c1+c2×ファン風量(F_fan) ・・・(7)
【0052】
式(5)は、3つの説明変数を有する重回帰式である。式(6)および式(7)は、1つの説明変数を有する単回帰式である。a1〜a4、b1、b2、c1、およびc2は、回帰モデルの係数である。機器モデル生成部17は、式(5)から式(7)の変数のデータを用いて、回帰分析により係数を決定する。上記の回帰モデルの例では、1次式が使用されている。2次以上の多項式が使用されてもよい。
【0053】
ステップS110の後、機器モデル記憶部11は、ステップS110において生成された機器モデルを記憶する(ステップS111)。ステップS111の後、ステップS103における処理が行われる。
【0054】
上記以外の点について、
図6に示す処理は、
図4に示す処理と同様である。
【0055】
上記の例では、回帰モデルを使用して機器モデルが生成される。しかし、回帰モデル以外の手法により機器モデルが生成されてもよい。例えば、ニューラルネットワークまたは機械学習などの手法により、機器モデルが生成されてもよい。
【0056】
第1の実施形態と同様に、異常検知装置1aは、順位演算部16およびパラメータ入力部14を有していなくてもよい。
【0057】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。第2の実施形態では、定期点検後などの正常時のデータを利用して機器モデルが生成される。このため、空調機および熱源機の種類に依存することなく、機器の異常を検知することができる。これにより、機器モデルの生成に必要な情報(機器の定格値等)を空調機および熱源機の種類毎に入力する必要がなくなる。したがって、第1の実施形態と比べて、異常検知装置の導入におけるエンジニアリング負荷を低減することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について
図7から
図9を参照して説明する。
図7は、第3の実施形態の異常検知装置1bの構成を示す。
図7に示す構成について、
図1に示す構成と異なる点を説明する。
【0059】
異常検知装置1bは、
図1に示す異常検知装置1の構成に加えて、損失量演算部18と、通知部19とを備える。損失量演算部18は、機器に設定されている設定値に対する消費電力量と、データ取得部10によって取得された機器の消費電力量との差である損失量を演算する。損失量は、機器の現在の設定値に対する消費電力量と、機器の消費電力量の現在値との差である。損失量演算部18は、演算された損失量を通知部19に出力する。通知部19は、順位演算部16によって演算された順位をユーザに通知する。ユーザは、管理者または点検員である。例えば、通知部19は、表示部20として構成されている。表示部20は、順位演算部16によって演算された順位を表示する。また、表示部20は、損失量演算部18によって演算された損失量を表示する。
【0060】
通知部19は、表示部20以外の構成であってもよい。例えば、通知部19は、アラーム音を発生してもよい。あるいは、通知部19は、メールを管理者または点検員宛てに送信することにより、診断結果を管理者または点検員に通知してもよい。
【0061】
上記以外の点について、
図7に示す構成は、
図1に示す構成と同様である。
【0062】
図8を用いて、異常検知装置1bの動作を説明する。
図8は、異常検知装置1bによる処理の手順を示す。
図8に示す処理について、
図4に示す処理と異なる点を説明する。
【0063】
ステップS107の後、損失量演算部18は、異常判定部15によって、異常が発生していると判定された系統における損失量を演算する(ステップS120)。ステップS120の後、順位演算部16は、ステップS107において演算された順位を診断結果として出力する。損失量演算部18は、ステップS120において演算された損失量を診断結果として出力する。表示部20は、ステップS107において演算された順位と、ステップS120において演算された損失量とを表示する(ステップS121)。
【0064】
図9は、表示部20の画面の例である。表示部20は、グラフG1および表T1を含む画像を表示する。グラフG1および表T1は、順位演算部16によって演算された順位すなわち点検順位を示す。グラフG1は、各系統の空調機および熱源機の消費電力量と、各系統の損失量とを含む。各系統の空調機および熱源機の消費電力量は、棒状のグラフで示されている。各系統について、正常時の消費電力量のグラフと現在の消費電力量のグラフとが横方向に並べられている。各消費電力量のグラフにおいて、空調機の消費電力量のグラフと熱源機の消費電力量のグラフとが縦方向に並べられている。各系統の損失量は、折れ線で示されている。各系統の空調機および熱源機の消費電力量のグラフは、損失量が大きい順に並べられている。右側に配置された系統の損失量は、左側に配置された系統の損失量よりも大きい。つまり、右側に配置された系統の点検の優先度は、左側に配置された系統の点検の優先度よりも高い。
【0065】
表T1は、所定期間毎の各系統の損失量を含む。現在の損失量が所定期間継続した場合の損失量が表T1に含まれる。例えば、所定期間は、1日、1ヶ月、および1年である。表T1において、各系統の損失量は、損失量が大きい順に並べられている。右側に配置された系統の損失量は、左側に配置された系統の損失量よりも大きい。つまり、右側に配置された系統の点検の優先度は、左側に配置された系統の点検の優先度よりも高い。
【0066】
グラフG1および表T1が表示されることにより、管理者または点検員は点検の順位および損失量を把握しやすくなる。表T1が表示されることにより、管理者または点検員は具体的な損失額を把握しやすくなる。
【0067】
図9に示す例では、表示部20は、消費電力量の損失量を表示する。損失量演算部18は、損失量[kWh]および電力量単価[円/kWh]の積である損失額[円]を演算してもよい。表示部20は、損失額を表示してもよい。
【0068】
上記以外の点について、
図8に示す処理は、
図4に示す処理と同様である。
【0069】
第1の実施形態と同様に、異常検知装置1bは順位演算部16を有していなくてもよい。したがって、表示部20は、異常判定の対象である全ての系統の情報を表示してもよい。このとき、異常判定部15によって異常が発生していると判定された系統の情報が強調表示されてもよい。例えば、異常が発生していると判定された系統の情報と、異常が発生していないと判定された系統の情報とが、異なる色で表示されてもよい。表示部20は、異常が発生していないと判定された系統の情報を表示しなくてもよい。
【0070】
異常検知装置1bは損失量演算部18を有していなくてもよい。したがって、表示部20は、損失量を表示しなくてもよい。
【0071】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。第3の実施形態では、異常が発生したときに表示部20の画面に画像が表示される。あるいは、メールなどによる通知が行われる。これにより、異常の発生を管理者または点検員に早急に知らせることができる。さらに、診断結果を表示部20の画面に表示することにより、管理者または点検員は具体的な損失量を把握することができ、かつ点検すべき系統の順番を容易に把握することができる。
【0072】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について
図10から
図12を参照して説明する。
図10は、第4の実施形態の異常検知装置1cの構成を示す。
図10に示す構成について、
図1に示す構成と異なる点を説明する。
【0073】
異常検知装置1cは、
図1に示す異常検知装置1の構成に加えて、損失量演算部18および点検周期演算部21を備える。損失量演算部18は、
図7に示す損失量演算部18と同一である。損失量演算部18は、機器に設定されている設定値に対する消費電力量と、データ取得部10によって取得された機器の消費電力量との差である損失量を複数の期間毎に演算する。点検周期演算部21は、複数の期間毎の損失量に基づく損失コストと、複数の期間毎の機器の点検コストとの合計に基づいて点検周期を演算する。
【0074】
上記以外の点について、
図10に示す構成は、
図1に示す構成と同様である。
【0075】
図11を用いて、異常検知装置1cの動作を説明する。
図11は、異常検知装置1cによる処理の手順を示す。
図11に示す処理について、
図4に示す処理と異なる点を説明する。
【0076】
ステップS107の後、損失量演算部18は、異常判定部15によって、異常が発生していると判定された系統における損失量を演算する(ステップS130)。ステップS130の後、点検周期演算部21は、点検周期を演算する(ステップS131)。
【0077】
ステップS131において、点検周期演算部21は、損失コストおよび点検コストの合計が相対的に小さい点検周期を演算する。具体的には、点検周期演算部21は、損失コストおよび点検コストの合計が最も小さい最適な点検周期を演算する。以下では、点検周期演算部21による最適な点検周期の演算例を説明する。点検周期が長くなるほど、点検回数が少なくなる。つまり、点検周期が長くなるほど、点検コストは小さくなる。一方、点検周期が長くなるほど、損失が継続する。このため、点検周期が長くなるほど、損失コストは大きくなる。このように、点検コストと損失コストとにはトレードオフの関係がある。両コストの合計が最も小さい点検周期が最適な点検周期である。
【0078】
図12は、最適な点検周期の演算例を示す。
図12に示すグラフの横軸は点検周期であり、かつ縦軸はコストである。損失コストのグラフG2と、点検コストのグラフG3と、合計コストのグラフG4とが示されている。
【0079】
例えば、計測値および設定値の現在値に対応する損失量が算出されたとき、損失量はメモリに記憶される。過去の複数の時点で算出された損失量がメモリに記憶される。損失量演算部18は、メモリに記憶された損失量に基づいて、複数の期間毎の損失量を演算する。例えば、損失量が1日に1回算出される場合、損失量演算部18は、期間内の各日の損失量をメモリから読み出す。損失量演算部18は、期間内の各日の損失量を合計することにより、その期間の損失量を演算する。外気温度および外気湿度等の条件は日によって異なるため、設定値は日によって異なる。その結果、損失量は日によって異なる。点検周期演算部21は、損失量に基づく損失コストを演算する。
図12において、1ヶ月、2ヶ月、・・・、7ヶ月のそれぞれの損失コストが示されている。
【0080】
また、点検周期演算部21は、複数の所定期間毎の点検コストを演算する。
図12に示す例では、グラフG3は直線である。つまり、点検コストは時間の一次関数である。また、点検コストは単調に減少する。点検コストは、二次以上の関数で表されてもよい。合計コストは、損失コストおよび点検コストの合計である。
図12に示すように、点検周期が6ヶ月である場合、合計コストが最も小さくなる。したがって、
図12に示す例では、最適な点検周期は6ヶ月である。管理者または点検員がパラメータ入力部14を介して点検コストの情報を入力してもよい。
【0081】
ステップS131の後、順位演算部16は、ステップS107において演算された順位を診断結果として出力する。さらに、点検周期演算部21は、ステップS131において演算された点検周期を診断結果として出力する(ステップS132)。
【0082】
異常検知装置1cによる処理の手順は、
図12に示す手順に限らない。例えば、ステップS130およびステップS131の後、ステップS107における処理が行われてもよい。
【0083】
上記以外の点について、
図11に示す処理は、
図4に示す処理と同様である。
【0084】
上記の例では、点検周期演算部21は、損失コストおよび点検コストの合計が最も小さい点検周期を演算する。点検周期演算部21によって演算される点検周期は、損失コストおよび点検コストの合計が2番目あるいは3番目に小さい点検周期であってもよい。つまり、複数の期間は第1の期間および第2の期間を含んでもよい。第1の期間の損失コストおよび点検コストの合計は、第2の期間の損失コストおよび点検コストの合計よりも小さい。点検周期演算部21は、第1の期間を点検周期として選択してもよい。
【0085】
第1の実施形態と同様に、異常検知装置1cは、順位演算部16およびパラメータ入力部14を有していなくてもよい。第3の実施形態と同様に、異常検知装置1cは通知部19(表示部20)を有してもよい。
【0086】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。第4の実施形態では、異常が発生した場合の損失コストと、点検コストとの合計が最も小さい点検周期が演算される。これにより、管理者または点検員が、点検を実施する周期を容易に決定することができる。
【0087】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、異常判定部15を持つことにより、機器の異常を検知することができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。