(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862214
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】組立式ブース
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20210412BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
E04H1/12 A
E04B2/74 501A
E04B2/74 541P
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-30437(P2017-30437)
(22)【出願日】2017年2月21日
(65)【公開番号】特開2018-135680(P2018-135680A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 仁
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−177105(JP,A)
【文献】
特開2016−094696(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3108694(JP,U)
【文献】
米国特許第04380836(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00170337(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E04B 2/74
A47K 11/00−11/12
E03D 11/00
E05F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立て状態で平面視矩形をなす縦壁が、ドア部が備えられた正面壁と、背面壁と、左右一対の側面壁とを備えると共にそれらの壁どうしがヒンジ手段により折り畳み可能に連結され、前記背面壁と側面壁のみが左右一対の支柱に支持されて、設置面に立設されるようになされ、前記側面壁は前後に分割され、その分割された部分に前記ヒンジ手段が取付けられて折り畳み可能となされており、
前記各支柱に支持された左右一対の前記側面壁が折り畳まれた閉止状態において設置面に立設されることを特徴とする組立式ブース。
【請求項2】
組み立て状態で平面視矩形をなす前記縦壁の内方に配置され、前記正面壁のドア部と連結されている線状部材と、前記線状部材と連結されている重錘と、前記縦壁の内方に固定され、前記重錘の上下方向の移動をガイドするガイド部材とを備え、前記ガイド部材は、前記正面壁から離間した前記縦壁の内方に固定され、前記縦壁で形成される内側の空間が前記ヒンジ手段による前記ドア部の回動により開放されるに伴い、前記重錘が前記ガイド部材にガイドされ上方に移動すると共に、前記縦壁で形成される内側の空間が前記ヒンジ手段による前記ドア部の回動により閉止されるに伴い、前記重錘が前記ガイド部材にガイドされ下方に移動する様になされていることを特徴とする請求項1に記載の組立式ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立式ブースに関し、特に屋外において仮設的に閉空間を形成することが可能な間仕切り組立式ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種イベントの開催時及び災害発生時等に、屋外にトイレ等の閉空間を仮設的に設置可能な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数枚の間仕切り板と、側辺又は端辺を互いに突き合わせるようにして配置された複数枚の間仕切り板の対応する連結小孔を貫通させ、複数枚の間仕切り板を結束する連結ベルトとを備える組立式ブースである組立式ブースが開示されている。この組立式ブースによれば、間仕切り板を任意の平面形状に連接させて配置することで、屋外に閉空間を形成することができる。
【0004】
また、特許文献2には、折り畳み自在に接続された間仕切り部材及び壁状部材と、間仕切り部材が回りに回転自在に取り付けられた支柱とから構成され、間仕切り部材に戸当り部材が設けられた壁状建築物である組立式ブースが開示されている。この組立式ブースによれば、間仕切り部材を支柱から回転して引き出し、壁状部材を展開することで、屋外に閉空間を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−113366号公報
【特許文献2】特開2009−174200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の組立式ブースでは、複数枚の間仕切り板及び連結ベルトが分離された状態で保管される。従って、設置場所への搬送に手間が掛かってしまうため、特に災害発生時等の設置に急を要するケースに対応することが困難であるという問題がある。また、複数枚の間仕切り板及び連結ベルトについて紛失し易くなるため、紛失の対策を講じる必要があり、保管に手間が掛かるという問題もある。
【0007】
また、特許文献2の組立式ブースは、壁面に沿って使用されることを前提とし、閉空間を形成する壁の一部として壁面を用いている。従って、設置場所が壁面の存在する場所に限定されてしまうため、設置場所の自由度が低く、汎用性に欠けるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1及び2の組立式ブースは、組立後の状態において扉が外開きであり、屋外設置時には突風等で扉が急に開いてしまう可能性がある。従って、扉が周囲に居る人間に接触する危険性や、扉の開閉による組立式ブース本体への衝撃による破損の危険性がある。
【0009】
なお、このような扉の急な開きに対応する方法として、マグネットラッチ等の開き止めを採用することも考えられるが、この方法では屋外での設置を考慮した場合に耐久性に問題がある。また、ダンパー等を使用したオートクロージャーを扉に取り付けることも考えられるが、この方法では組立式ブースの高価格化及び重量増が発生し、仮設設置物に適さないという問題がある。従って、これらの方法では、屋外に閉空間を仮設的に設置する組立式ブースにおいて、扉の急な開きに対応する方法として現実的ではない。
【0010】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、搬送及び保管が容易で、汎用性の高い組立式ブースを提供することを第1の目的とする。また、扉の急な開きを抑制することが可能な組立式ブースを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的を達成するため、本発明の組立式ブースは、組み立て状態で平面視矩形をなす縦壁が、ドア部が備えられた正面壁と、背面壁と、左右一対の側面壁とを備えると共にそれらの壁どうしがヒンジ手段により折り畳み可能に連結され、前記背面壁と側面壁のみが左右一対の
支柱に支持されて、設置面に立設されるようになされ、前記側面壁は前後に分割され、その分割された部分に前記ヒンジ手段が取付けられて折り畳み可能となされて
おり、
前記各支柱に支持された左右一対の前記側面壁が折り畳まれた閉止状態において設置面に立設されることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の組立式ブースは、組み立て状態で平面視矩形をなす前記縦壁の内方に配置され、前記正面壁のドア部と連結されている線状部材と、前記線状部材と連結されている重錘と、前記縦壁の内方に固定され、前記重錘の上下方向の移動をガイドするガイド部材とを備え、前記ガイド部材は、前記正面壁から離間した前記縦壁の内方に固定され、前記縦壁で形成される内側の空間が前記ヒンジ手段による前記ドア部の回動により開放されるに伴い、前記重錘が前記ガイド部材にガイドされ上方に移動すると共に、前記縦壁で形成される内側の空間が前記ヒンジ手段による前記ドア部の回動により閉止されるに伴い、前記重錘が前記ガイド部材にガイドされ下方に移動する様になされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬送及び保管が容易で、汎用性の高い組立式ブースを実現することができる。また、扉の急な開きを抑制することが可能な組立式ブースを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る組立式ブースを設置面に立設させた使用状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る組立式ブースを折り畳まれた状態で立設された閉止状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3に示す状態から、展開され使用される状態の途中の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4に示す状態から、さらに展開された使用状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る組立式ブースを構成する重錘とガイド部材とドア部の動作具合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
なお、本実施形態はあくまでも本発明を理解するための一例を示したに過ぎず、各部の形状、構造、材質等に関し、本実施形態以外のバリエーションが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で許容されていることは言うまでもない。また、以下説明における「正面」・「前」、「背面」・「後」、「左」、「右」の表現は、図中に記載した方向に基づいている。
【0016】
Pは本発明に係る自立式の組立式ブースであって、屋外において
図3〜
図5の工程を経て順次組立てられる。形成された閉空間内には例えば便器(図示せず)が配置されて、形成された閉空間は個室トイレとして使用可能とされる。
【0017】
組立式ブースPは、組み立て状態で平面視矩形をなす縦壁1、支柱2、線状部材3、重錘4、ガイド部材5、及び滑車6を備え、この組立式ブースPにより、前記縦壁1で形成される内側の閉ざされた空間Kを形成する。また、前記縦壁1はドア部Dが備えられた正面壁11と、背面壁12と、左右一対の側面壁13とを備えると共にそれらの壁11、12、13どうしがヒンジ手段であるヒンジHにより折り畳み可能に連結されている。
【0018】
そして、前記縦壁1の左右一対の側面壁13は前後に2分割され、その分割された部分に前記ヒンジHが取付けられて内側に折り畳み可能となされている。詳細には、前記側面壁13は前半部133と後半部134とに分割され、それぞれが平板材131の四辺を枠材132により枠組みされて形成されており、前記前半部133と後半部134の隣り合う縦枠132aに架け渡されて前記ヒンジHが上下に2個取付けられて、前記側面壁13が内側に2つ折りに折り畳み可能となされている。
【0019】
そして、前記背面壁12と側面壁13のみが左右一対の前記支柱2に支持されて、設置面に立設されている。詳細には、前記背面壁12の左右端部と前記側面壁13の後半部134の後端部とが、平面視L字状に形成された金属製の前記支柱2にボルト・ナットにより固定されている。
【0020】
前記縦壁1を形成する正面壁11と、背面壁12と、左右一対の側面壁13とは、平板材111、121、131が棒状の枠材112、122、132で四辺を枠組みされて形成されている。そして、上下方向の中央付近には、各壁11、12、13を補強する補強横杆112b、122b、132bが左右の縦枠112a、122a、132a間に架け渡されて設けられている。
【0021】
前記縦壁1を構成する前記正面壁11は、他の3つの壁である背面壁12と左右の側面壁13とは異なり、四辺が枠組みされておらず、三辺が枠組みされ倒コ字状に形成され、その一方の縦枠112aにヒンジ手段であるヒンジHが取付けられ、前記平板材111の四辺が枠組みされて形成されているドア部Dの一方の縦枠材D1、本実施形態においては左側の縦枠材D1が前記ヒンジHに取付けられて、前記正面壁11が形成されている。そして、前記ヒンジHにより前記ドア部Dが開閉可能となっている。
【0022】
また、前記正面壁11の左右の縦枠112の下部には棒状体9が上下移動可能にそれぞれ取付けられている。組み立て状態で平面視矩形をなす前記縦壁1が、左右一対の前記側面壁13が折り畳まれた閉止状態から伸ばされ展開されて使用状態になった際、前記棒状体9が下方に移動され、設置面に形成されている差込孔(図示せず)に差し込まれて、これにより前記縦壁1に風等の外力が作用した場合にも、前記縦壁1が折り畳まれない様になされている。
【0023】
なお、前記縦壁1が展開された使用状態において、外力が作用した場合に前記縦壁1が閉止しない様な構造であれば、特に前記棒状体9が必須の構成ではなく、例えば、左右一対の前記側面壁13が折り畳まれた閉止状態から伸ばされ展開されて使用状態になった際、折り畳まれない様に前記側面壁13の内側面に筋交状の棒状体を取付ける様にしてもよいし、前記側面壁13の前半部133と後半部134の隣り合う縦枠132aにわたって横棒体を取付ける様にしてもよい。
【0024】
前記平板材111、121、131の材質は特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム合金の薄板2枚の間に合成樹脂板を挟み込んで形成されている、いわゆる金属―樹脂複合板が軽量でかつある程度強度も備えられているので、好ましい。また、前記枠材112、122、132や補強横杆112b、122b、132bの材質も特に限定されるものではなく、例えばアルミ合金の押出形材が軽量でかつ強度も備えられているので、好ましい。
【0025】
左右の前記支柱2の上端部と下端部とには、支柱2間の間隔を保持するための間隔保持材7が左右の前記支柱2間に差し渡されて取付けられている。そして、この間隔保持材7のうち、上側の間隔保持材7には左右一対の折り畳み自在のフリクションアーム8の一端が取付けられ、この一対のフリクションアーム8の他端が左右一対の前記側面壁13に取付けられている。そして、前記組立式ブースPが閉止状態である折り畳まれた状態の時には、前記フリクションアーム8も中央部からV字状に折り畳まれた状態となっており、前記組立式ブースPが使用状態である展開された状態の時には、前記フリクションアーム8も伸ばされた状態となるようになされている。
【0026】
前記ガイド部材5は金属パイプ等で形成されており、前記重錘4をガイド(案内)する内周面を有する。前記ガイド部材5は、組み立て状態で平面視矩形をなす前記縦壁1の正面壁11から離間した内方、具体的には前記背面壁12の右端部に、前記重錘4が前記ガイド部材5の内部を上下方向の移動、つまり上昇及び重力落下できるようその長手方向を上下方向に向けて固定されている。
【0027】
前記線状部材3は、紐、ワイヤー、ケーブル等の線材であり、その一端に前記重錘4が連結されており、その他端が前記正面壁11のドア部Dに連結されている。具体的には、前記線状部材3はその他端が前記ドア部Dの上部に取り付けられた取付金具Tに取付けられているリング部材Rに連結されている。
【0028】
前記滑車6は、円柱体であり、その外周面には周方向に沿って一周する溝が形成され、その溝に前記線状部材3が引っ掛けられている。前記滑車6は、円柱の中心軸を回転軸として回転動可能であり、外周面の溝に引っ掛けられた前記線状部材3の移動において、水平方向の移動を垂直方向への移動に変換する。前記滑車6は、前記ガイド部材5の上方に位置するように、前記縦壁1の正面壁11から離間した内方、具体的には前記背面壁12の右端部上端に固定されている。
【0029】
次に、本実施形態に係る組立式ブースPの組立方法について、
図2〜
図5を用いて説明する。
図2は、前記縦壁1を構成する左右一対の側面壁13が折り畳まれて組立式ブースPが閉止状態を示す斜視図である。この閉止状態において、前記縦壁1の内方には、前記線状部材3、重錘4、ガイド部材5、滑車6が収容されている。そして、前記背面壁12と側面壁13とに架け渡されて取付けられている左右一対の前記フリクションアーム8がV字状に折り畳まれている。
【0030】
この
図2に示す状態から、左右一対の前記側面壁13を正面側に引き出し、前記側面壁13とフリクションアーム8とを伸ばしていく途中の状態を
図3に示す。そして、この
図3に示す状態から、さらに前記側面壁13とフリクションアーム8とを伸ばし、前記側面壁13が真直ぐなり前記縦壁1が展開された使用状態を
図4に示す。この
図4に示す状態において、前記棒状体9を下方に移動し、設置面に形成されている差込孔(図示せず)に差し込んで、前記縦壁1に風等の外力が作用した場合にも、前記縦壁1が折り畳まれない様にして、組立式ブースPの組み立てが完了する。
【0031】
図4に示す前記縦壁1が展開された組立式ブースPの使用状態において、前記正面壁11のドア部Dを手前に引くことで前記ヒンジHが回動し前記ドア部Dが開放され、開けられたドア部Dを奥に押すことで前記ヒンジHが回動し前記ドア部Dが閉止される。その際、人の手などの外力が加わり前記ドア部Dが開けられるに伴い、前記線状部材3と滑車6を介して前記ドア部Dに連結されている前記重錘4とが前記ガイド部材5にガイドされ上方に移動し、前記外力が除かれると、前記重錘4はその自重により前記ガイド部材5にガイドされ下方に移動して、前記ドア部Dが閉止するようになっている。
【0032】
つまり、
図5に示す様に、組立式ブースPが組み立てられた使用状態において、前記ドア部Dの右端部が外力により手前に引かれて前記ヒンジHにより回動し、前記重錘4が前記ガイド部材5の内周面に沿って上昇すると共に、前記滑車6は時計周りに回転し、この滑車6を境として前記線状部材3の重錘4と連結された側の部分は上方に移動すると共に、前記ドア部Dと連結された側の部分は右方向に移動する。そして、前記ドア部Dを手前に引く外力が除かれると、前記重錘4は前記ガイド部材5の内周面に沿って重力落下すると共に、前記滑車6は反時計周りに回転し、この滑車6を境として前記線状部材3の重錘4と連結された側の部分は下方に移動すると共に、前記ドア部Dと連結された側の部分は左方向に移動する。
【0033】
以上のように本実施形態の組立式ブースPは、1個のみで使用されてもよいし、複数個並べて使用されてもよい。また、上記実施形態において、前記線状部材3の一端が前記重錘4に連結された状態で前記縦壁1に収容されているとしたが、前記線状部材3の一端が前記重錘4に連結可能であれば、前記線状部材3及び重錘4は分離された状態で前記縦壁1に収容されてもよい。この場合、組立式ブースPの組立時に、前記線状部材3の一端に前記重錘4が連結される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、組立式ブースとして有用であり、屋外において仮設的に設置されるトイレ等において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 縦壁
11 正面壁
111 平板材
112 枠材
112a 縦枠
112b 補強横杆
12 背面壁
121 平板材
122 枠材
122a 縦枠
122b 補強横杆
13 側面壁
131 平板材
132 枠材
132a 縦枠
132b 補強横杆
133 前半部
134 後半部
2 支柱
3 線状部材
4 重錘
5 ガイド部材
6 滑車
7 間隔保持材
8 フリクションアーム
9 棒状体
P 組立式ブース
D ドア部
D1 縦枠材
H ヒンジ
K 空間
T 取付金具
R リング部材