【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は本発明によって達成されるが、それは、少なくともクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間、および/またはクランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に、クランプグリッパと移送アームの間の距離が連続的に測定されるためである。
i)開始位置でクランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間、または
ii)目標位置でクランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間
に、クランプグリッパと移送アームの間の距離の変化が測定されなかったことが確定された場合には、液体容器の輸送中にエラーが発生したことを示す信号が生成される。たとえば、この信号を用いて、使用者の介入によって修正される可能性のあるエラーが起こっていることを使用者に示すことができる。
【0012】
液体容器をピックアップするとき、および降ろすとき、剛性の液体容器によってクランプグリッパに及ぼされる力は大きいため、柔軟な懸架状態のためにクランプグリッパが移送アームに対して傾き、その結果、クランプグリッパと移送アームの間の距離が、測定できる程度に変化する。クランプグリッパは、移送アームに対するその元の位置へ戻らず、したがって、クランプグリッパがカチッと開いて液体容器を把持するか、または液体容器を解放してクランプグリッパに作用する圧縮力がなくなってから、元の距離に戻る。しかしながら、予想された距離の変化が測定されない場合、これは、液体容器のピックアップまたは送達に失敗し、したがって容器の喪失などのエラーが起こっていることを示す。たとえば、クランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間に予想された距離の変化が測定されない場合、これは、たとえば接近した支持位置に予想された液体容器が存在しなかったために、液体容器のピックアップに失敗したこと示す。たとえば、クランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に予想された距離の変化が測定されない場合、これは、たとえばその間に液体容器が喪失したために、容器の送達に失敗したこと示す。
【0013】
したがって、本発明の主題は、可撓性の連結要素によって自動可動の移送アームに締結されたクランプグリッパを用いる液体容器の輸送を監視する方法であり、その方法は:
a)開始位置でクランプグリッパを水平に動かし、クランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせる工程と;
b)クランプグリッパを持ち上げ、液体容器を開始位置から取り出す工程と;
c)クランプグリッパを水平に目標位置まで動かす工程と;
d)クランプグリッパを下げ、液体容器を目標位置に位置決めする工程と;
e)クランプグリッパを水平に動かし、クランプ連結を解放する工程と
を含み、ここで、
クランプグリッパと移送アームの間の距離は、少なくとも方法工程a)および/またはe)を実行する間に連続的に測定され、
i)工程a)における、開始位置でクランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間、または
ii)工程e)における、クランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に、クランプグリッパと移送アームの間の距離の変化が測定されなかったことが確定された場合には、液体容器の輸送中にエラーが発生したことを示す信号が生成される。
【0014】
あるいは、クランプグリッパと移送アームの間の距離は、方法工程a)〜e)を実行する間、すなわち輸送プロセス全体を通じて、連続的に測定することができる。この場合、エラー検出のために、液体容器のピックアップおよび/または送達(ステップa)および/またはe))の間の距離の変化のみが評価されることに留意すべきである。
【0015】
第2の問題は、クランプグリッパに劣化および摩耗現象が起こり、それがクランプ力の低下をまねく可能性があることである。それによって、前述の液体容器の喪失など、液体容器のピックアップまたは輸送の間にエラーが発生する危険性が高まる。これまでは、予防措置としてクランプグリッパを定期的に交換することによって、この危険性を低減させてきた。これは、交換の間隔の基準として、実際の働きではなく経験値に基づいて推定されるクランプグリッパの働きが用いられていたために、おそらく常に必要以上に早く交換が行われていたという欠点を有する。
【0016】
したがって、本発明が基礎とする第2の目的は、クランプグリッパの摩耗を検知することができ、かつ必要な場合には交換を促すことができるように、序文に記載したように、クランプグリッパを用いて液体容器を輸送するデバイスの適切な働きを確認する方法を提供することにある。
【0017】
この目的も、同様に本発明によって達成されるが、それは、少なくともクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間、および/またはクランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に、クランプグリッパと移送アームの間の距離が連続的に測定されるためである。
i)開始位置でクランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間に発生する距離の変化が、あったと決定され、第1の所定の閾値と比較される、かつ/または
ii)クランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に発生する距離の変化が、あったと決定され、第2の所定の閾値と比較される。
【0018】
前述の距離の変化の少なくとも1つが関連付けられた所定の閾値を下回る場合、すなわち小さすぎる場合、クランプグリッパに割り当てられた交換信号が生成される。前記信号を用いて、たとえばクランプグリッパの交換が必要であることを使用者に示すことができる。
【0019】
したがって、本発明のさらなる目的は、可撓性の連結要素によって自動可動の移送アームに締結されたクランプグリッパを含む、液体容器を輸送するデバイスの適切な働きを確認する方法であり、その方法は:
a)開始位置でクランプグリッパを水平に動かし、クランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせる工程と;
b)クランプグリッパを持ち上げ、液体容器を開始位置から取り出す工程と;
c)クランプグリッパを水平に目標位置まで動かす工程と;
d)クランプグリッパを下げ、液体容器を目標位置に位置決めする工程と;
e)クランプグリッパを水平に動かし、クランプ連結を解放する工程と
を含み、ここで、
クランプグリッパと移送アームの間の距離は、少なくとも方法工程a)および/またはe)を実行する間に連続的に測定され、
i)工程a)における、開始位置でクランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間に発生する距離の変化が、あったと決定され、第1の所定の閾値と比較され、かつ/または
ii)工程e)における、クランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に発生する距離の変化が、あったと決定され、第2の所定の閾値と比較され;
前述の距離の変化の少なくとも1つが関連付けられた所定の閾値を下回る場合、クランプグリッパに割り当てられた交換信号が生成される。
【0020】
第1および第2の閾値は、経験的に決定すべきシステム固有の最小限の距離の変化であり、分析装置を作動させる前に決められる。このために、たとえば容器の輸送プロセス中の距離の変化、および喪失率または誤り率を決定する耐久試験が実施されることがある。クランプグリッパの深刻な劣化によって保持力が低下すると、液体容器を把持および解放するために加える力が小さくなる。これは、通常はクランク連結を生成および解放するクランプグリッパの水平運動の間に発生するクランプグリッパと移送アームの間の距離の変化が、予想されるよりも小さくなることを意味する。第1および第2の閾値はそれぞれ、好ましくは、その閾値より上では、液体容器の確実な把持、保持および解放が実質的に常に保証され、一方、その閾値より下では、喪失率の上昇を予想すべき程度にクランプグリッパの保持力が低下しているように選択されるべきである。
【0021】
クランプグリッパと移送アームの間の距離は、方法工程a)〜e)を実行する間、すなわち輸送プロセス全体を通じて、連続的に測定することもできる。この場合、クランプグリッパの適切な働きを確認するために、液体容器のピックアップおよび/または送達(ステップa)および/またはe))の間の距離の変化のみが評価されることに留意すべきである。
【0022】
液体容器は、たとえば分析予定の液体を含む血液サンプル管などの1次サンプル(primary sample)容器、または1次サンプルを(1つもしくはそれ以上の)試薬とその中で混合して反応バッチを形成し、次いでそれが測定ステーションで測定される透明な小さい管形のキュベットなどの反応容器、または1つもしくはそれ以上の分析物を検出するための1つもしくはそれ以上の物質を含有する液体を含む試薬液容器とすることができる。試薬液容器は多室とし、複数の異なる試薬液を含むこともできる。
【0023】
自動可動の移送アームに締結されたクランプグリッパは、力嵌めで液体容器を把持および保持する受動的なクランプグリッパであることが好ましい。それは、一体として形成し、弾性変形可能にすることができる。クランプグリッパは、液体容器に十分な力で押し付けられたときにスナップ効果が生じ、クランプグリッパが開き、液体容器を囲み保持するように、張力がかけられた状態であることが好ましい。逆に言えば、クランプグリッパは、十分な力で動かされ、固定された液体容器から離れるまで、再び開き、液体容器を解放することはない。
【0024】
自動可動の移送アームは、水平に直線的に動かすことが可能な移送アーム、または回転点のまわりで水平に旋回することが可能な移送アームとすることができる。移送アームは、垂直方向にも可動であることが好ましい。
【0025】
クランプグリッパは、可撓性の連結要素によって自動可動の移送アームに締結される。可撓性の連結要素は自己リセット式であり、すなわち、クランプグリッパが偏向され静止位置を離れると、連結要素は、たとえばばねまたは弾性構成要素によって回復力を発生させる。有利な実施形態において、可撓性の連結要素は、ゴム、発泡体またはばね鋼からなる少なくとも1つのボディを含み、したがって、クランプグリッパは、任意の方向に動くことができ、その弾力性のために自動的に動いて静止位置に戻ることができる。可撓性の連結要素は、1つまたはそれ以上の部材から形成することができる。たとえば、捩れを防止するために、複数の部材要素を互いに隣り合わせに、または互いに積み重ねて配置することができる。
【0026】
クランプグリッパと移送アームの間の距離を連続的に測定するために、距離センサが提供される。センサは、クランプグリッパ上の点と移送アーム上の点との間の距離を測定するように取り付けられるが、その距離は、クランプグリッパの偏向中に変化することが知られている。原理的には、容量センサシステム、光ファイバーを用いた行程センサ、ポテンショメータセンサ、レーザー干渉計など、考えられるいずれのセンサシステムも適している。特に好ましい距離センサは、ホールセンサおよび磁石を含む。この場合、磁石は構成要素の1つに取り付けられ、ホールセンサは他の構成要素に取り付けられる。ホールセンサに対する磁石の位置の変化によって、ホールセンサに生成される磁場の変化が引き起こされ、したがって、距離の変化を測定することが可能になる。可撓性の連結要素の自己リセット特性は、クランプグリッパに力が作用していないときには、磁石がホールセンサから常に同じ距離のところにあり、したがって、前記ホールセンサに常に同じ磁場が存在することを意味する。有利には、ホールセンサは移送アーム上に配置され、磁石はクランプグリッパ上に配置される。しかしながら、原理的には、距離を測定する構造を対称に反転させることができる。
【0027】
液体容器の輸送中にエラーが発生したことを示す信号、および/またはクランプグリッパに割り当てられた交換信号は、使用者にとって視覚的または聴覚的に認知可能な信号であることが好ましい。可聴的な信号は、たとえばラウドスピーカ(loudspeaker)から出力することができる。視覚的な信号は、たとえばピクトグラムもしくはテキストメッセージの形態でスクリーン上に示すこと、またはランプによる光信号の形態で出力することができる。
【0028】
これによって、確実に使用者が事象を知らされ、迅速に必要な処置をとり、汚れを取り除くこと、またはクランプグリッパを交換することが可能になる。
【0029】
本発明のさらなる態様は自動分析装置であり、その自動分析装置は、
・液体容器を輸送するデバイスであって、
−可撓性の連結要素によってクランプグリッパが締結された、自動可動の移送アーム、および
−クランプグリッパと移送アームの間の距離を連続的に測定する距離センサ
を含むデバイスと、
・それぞれが1つの液体容器を支持する複数の支持位置と、
・液体容器の輸送を監視する、および/または液体容器を輸送するデバイスの適切な働きを確認する前述の方法を制御するように構成された制御デバイスと
を有する。
【0030】
液体容器の輸送を監視する方法を制御する制御デバイスは:
a)開始位置でクランプグリッパを水平に動かし、クランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせる工程と;
b)クランプグリッパを持ち上げ、液体容器を開始位置から取り出す工程と;
c)クランプグリッパを水平に目標位置まで動かす工程と;
d)クランプグリッパを下げ、液体容器を目標位置に位置決めする工程と;
e)クランプグリッパを水平に動かし、クランプ連結を解放する工程と
を有する方法を制御するように特に構成され、ここで、
クランプグリッパと移送アームの間の距離は、少なくとも方法工程a)および/またはe)を実行する間に連続的に測定され、
i)工程a)における、開始位置でクランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間、または
ii)工程e)における、クランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に、クランプグリッパと移送アームの間の距離の変化が測定されなかったことが確定された場合には、液体容器の輸送中にエラーが発生したことを示す信号が生成される。
【0031】
液体容器を輸送するデバイスの適切な働きを確認する制御デバイスは:
a)開始位置でクランプグリッパを水平に動かし、クランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせる工程と;
b)クランプグリッパを持ち上げ、液体容器を開始位置から取り出す工程と;
c)クランプグリッパを水平に目標位置まで動かす工程と;
d)クランプグリッパを下げ、液体容器を目標位置に位置決めする工程と;
e)クランプグリッパを水平に動かし、クランプ連結を解放する工程と
を有する方法を制御するように特に構成され、ここで、
クランプグリッパと移送アームの間の距離は、少なくとも方法工程a)および/またはe)を実行する間に連続的に測定され、
i)工程a)における、開始位置でクランプグリッパと液体容器の間にクランプ連結を生じさせるクランプグリッパの水平運動の間に発生する距離の変化が、あったと決定され、第1の所定の閾値と比較され、かつ/または
ii)工程e)における、クランプ連結を解放するクランプグリッパの水平運動の間に発生する距離の変化が、あったと決定され、第2の所定の閾値と比較され;
前述の距離の変化の少なくとも1つが関連付けられた所定の閾値を下回る場合、クランプグリッパに割り当てられた交換信号が生成される。
【0032】
「液体容器のための支持位置」とは、液体容器の配置のために設けられた場所を意味する。これはしばしば、特別に設計された液体容器を形態嵌めで挿入することが可能なスリーブなど、液体容器の安定した収納を可能にする、構造的に適合させた支持デバイスである。自動分析装置において、支持位置は、主に1次サンプル容器、(通常は透明な小さい管形のキュベットの形態の)反応容器、および試薬液容器のために設けられる。支持位置は、回転可能なキュベットプレートもしくは試薬プレート、または固定された収納容器などの可動の支持手段の中など、決められた位置にある。
【0033】
自動分析装置の好ましい実施形態において、クランプグリッパと移送アームの間の距離を連続的に測定する距離センサは、磁石およびホールセンサを含む(前述のことも参照されたい)。
【0034】
自動分析装置は、液体容器の輸送中にエラーが発生したことを示す信号、および/またはクランプグリッパに割り当てられた交換信号を表示する出力媒体も含むことが好ましい。出力媒体は、たとえばスクリーン、ラウドスピーカまたはランプとすることができる(前述のことも参照されたい)。
【0035】
以下では、図面を用いて本発明について説明する。