(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862261
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】高速炉の炉心および高速炉の燃料装荷方法
(51)【国際特許分類】
G21C 5/20 20060101AFI20210412BHJP
G21C 5/00 20060101ALI20210412BHJP
G21C 1/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
G21C5/20
G21C5/00 A
G21C1/02 100
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-86438(P2017-86438)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-185205(P2018-185205A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 幸治
【審査官】
関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−157865(JP,A)
【文献】
特開2016−085118(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/154669(WO,A2)
【文献】
特開昭61−231482(JP,A)
【文献】
特開2011−169710(JP,A)
【文献】
特開2013−217832(JP,A)
【文献】
特開平07−306282(JP,A)
【文献】
特開2016−080667(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0211904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C1/00−1/32
5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心の径方向において、炉心燃料集合体が複数装荷される炉心燃料集合体領域内に、内部ブランケット燃料集合体が複数装荷される内部ブランケット燃料集合体領域を配置する径方向非均質型の高速炉の炉心であって、
前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管および流動ナトリウムで構成されるナトリウムプレナムを備え、
前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項2】
請求項1に記載の高速炉の炉心であって、
前記内部ブランケット燃料集合体領域上のナトリウムプレナムの厚みが、前記炉心燃料集合体領域上のナトリウムプレナムの厚みよりも厚いことを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高速炉の炉心であって、
前記炉心の軸方向において、前記内部ブランケット燃料集合体領域の燃料有効長が、前記炉心燃料集合体領域の燃料有効長よりも短いことを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の高速炉の炉心であって、
前記炉心燃料集合体および前記内部ブランケット燃料集合体の燃料物質は、劣化ウラン酸化物を主成分とすることを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の高速炉の炉心であって、
前記ナトリウムプレナム上に中性子を遮へいする中性子遮へい体を備え、
前記ナトリウムプレナムおよび前記中性子遮へい体の間に、中性子を減速する中性子減速材をさらに備えることを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項6】
請求項5に記載の高速炉の炉心であって、
前記中性子減速材は、イットリウム・ハイドライドからなることを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項7】
炉心の径方向において、炉心燃料集合体が複数装荷される炉心燃料集合体領域内に、内部ブランケット燃料集合体が複数装荷される内部ブランケット燃料集合体領域を配置する径方向非均質型の高速炉の炉心であって、
前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管の内部に束ねられたガスプレナムを有する金属燃料要素を備え、
前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項8】
請求項7に記載の高速炉の炉心であって、
前記内部ブランケット燃料集合体領域上のガスプレナムの厚みが、前記炉心燃料集合体領域上のガスプレナムの厚みよりも厚いことを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項9】
請求項7または8に記載の高速炉の炉心であって、
前記炉心の軸方向において、前記内部ブランケット燃料集合体領域の燃料有効長が、前記炉心燃料集合体領域の燃料有効長よりも短いことを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の高速炉の炉心であって、
前記炉心燃料集合体および前記内部ブランケット燃料集合体の燃料物質は、ウラン及びジルコニウムを含む金属燃料であることを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の高速炉の炉心であって、
前記金属燃料要素上に中性子を遮へいする中性子遮へい体を備え、
前記金属燃料要素および前記中性子遮へい体の間に、中性子を減速する中性子減速材をさらに備えることを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項12】
請求項11に記載の高速炉の炉心であって、
前記中性子減速材は、イットリウム・ハイドライドからなることを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項13】
炉心の径方向において、複数の炉心燃料集合体が装荷された炉心燃料集合体領域内に、複数の内部ブランケット燃料集合体を装荷することで内部ブランケット燃料集合体領域を配置し、
前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管および流動ナトリウムで構成されるナトリウムプレナムを配置する高速炉の燃料装荷方法であって、
前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする高速炉の燃料装荷方法。
【請求項14】
請求項13に記載の高速炉の燃料装荷方法であって、
前記ナトリウムプレナム上に中性子を減速する中性子減速材を配置し、
前記中性子減速材上に中性子を遮へいする中性子遮へい体を配置することを特徴とする高速炉の燃料装荷方法。
【請求項15】
炉心の径方向において、複数の炉心燃料集合体が装荷された炉心燃料集合体領域内に、複数の内部ブランケット燃料集合体を装荷することで内部ブランケット燃料集合体領域を配置し、
前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管の内部に束ねられたガスプレナムを有する金属燃料要素を配置する高速炉の燃料装荷方法であって、
前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする高速炉の燃料装荷方法。
【請求項16】
請求項15に記載の高速炉の燃料装荷方法であって、
前記金属燃料要素上に中性子を減速する中性子減速材を配置し、
前記中性子減速材上に中性子を遮へいする中性子遮へい体を配置することを特徴とする高速炉の燃料装荷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速炉の炉心とその燃料装荷方法に係り、特に、燃焼反応度の低減とボイド反応度の低減を両立し、炉心の安全性向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高速炉の燃料集合体および炉心に関する背景技術としては、例えば、下記非特許文献1に記載されている。一般的に、高速増殖炉は、原子炉容器内に炉心を配置しており、冷却材である液体ナトリウムを原子炉容器内に充填している。その炉心に装荷される燃料集合体は、プルトニウム(Pu)を富化した劣化ウラン(U−238)を封入した複数の燃料棒、束ねられた複数の燃料棒を取り囲むラッパ管、これらの燃料棒の下端部及び燃料棒の下方に位置する中性子遮へい体を支持するエントランスノズル、及び燃料棒の上方に位置する冷却材流出部を有する。
【0003】
高速増殖炉の炉心は、内側炉心領域及びこの内側炉心領域を取り囲む外側炉心領域を有する炉心燃料領域、炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域及びブランケット領域を取り囲む遮へい体領域を有する。標準的な均質炉心の場合、外側炉心領域に装荷される燃料集合体のプルトニウム富化度(Pu富化度)は、内側炉心領域に装荷される燃料集合体のPu富化度よりも高くなっている。この結果、炉心の半径方向における出力分布が平坦化される。
【0004】
燃料集合体の各燃料棒に収納される核燃料物質の形態としては、金属燃料、窒化物燃料及び酸化物燃料がある。これらのうち、酸化物燃料が最も実績が豊富である。
【0005】
Pu及び劣化ウランのそれぞれの酸化物を混合した混合酸化物燃料、すなわち、MOX燃料のペレットが、燃料棒内で軸方向の中央部において80cm〜100cm程度の高さに充填される。さらに、燃料棒内には、劣化ウランで作られた複数の二酸化ウランペレットを充填した軸方向ブランケット領域が、MOX燃料の充填領域の上方及び下方にそれぞれ配置される。内側炉心領域に装荷される内側炉心燃料集合体及び外側炉心領域に装荷される外側炉心燃料集合体は、そのように、MOX燃料の複数のペレットを充填した複数の燃料棒を有する。外側炉心燃料集合体のPu富化度は、内側炉心燃料集合体のそれよりも高くなっている。
【0006】
炉心燃料領域を取り囲むブランケット燃料領域には、劣化ウランで作られた複数の二酸化ウランペレットを充填した複数の燃料棒を有するブランケット燃料集合体が装荷される。炉心燃料領域に装荷された燃料集合体内で生じる核分裂反応で発生した中性子のうち、炉心燃料領域から漏れた中性子が、ブランケット燃料領域に装荷されたブランケット燃料集合体の各燃料棒内のU−238に吸収される。この結果、ブランケット燃料集合体の各燃料棒内で核分裂性核種であるPu−239が新たに生成される。
【0007】
また、高速増殖炉の起動時、停止時及び原子炉出力の調節時には、制御棒が用いられる。制御棒は、炭化ホウ素(B
4C)ペレットをステンレス製の被覆管に封入した複数の中性子吸収棒を有し、これらの中性子吸収棒を、内側炉心燃料集合体及び外側炉心燃料集合体と同様に、横断面が正六角形をしたラッパ管に収納されて構成される。制御棒は、主炉停止系及び後備炉停止系の独立した2系統の構成となっており、主炉停止系及び後備炉停止系のいずれか一方のみで高速増殖炉の緊急停止が可能になる。
【0008】
さて、一般に高速炉のナトリウムボイド反応度は正であり、大型高速炉の場合、6$〜8$程度である。故障や外部電源喪失による主循環ポンプの停止による流量喪失とスクラム失敗を重畳した事故(ULOF:Unprotectd Loss of Flow)を想定すると、集合体の出力と流量に不整合が生じ、冷却材ナトリウムが沸騰して反応度が増加する可能性がある。一方、MOX燃料炉心の場合、燃焼反応は3%Δk/kk’程度であり、制御棒の誤引抜きとスクラム失敗を重畳した事故(UTOP:Unprotected Transient Over Power)を想定すると、当該制御棒近傍の出力密度が変化して、線出力が設計許容値を超過する可能性がある。
【0009】
ナトリウム(Na)ボイド反応度を低減すれば、ULOF時の冷却材ナトリウムの沸騰を回避でき、炉心の安全性向上が実現できる。また、UTOP時の線出力の増大を回避できれば、熱的な余裕の増大、ひいては炉心の安全性向上が実現できる。UTOP時の線出力増大を回避するには、燃焼反応度を低減して、燃焼補償用の制御棒1本当りに要求される、制御反応度の低減が有効である。
【0010】
高速炉において、下記非特許文献2の
図2.2に示される様に、Pu富化度を炉心中心寄りの内側炉心で低く、内側炉心を取り囲む外側炉心で高くする均質炉心に対して、一種類のPu富化度の炉心燃料の一部を同心円状に劣化ウランを主成分とするブランケット集合体が配置される、径方向非均質炉心が提案されている。径方向非均質炉心において、ブランケット集合体は燃焼が進むにつれて燃料中のU-238がPu-239に転換して、徐々に集合体の出力が増加するため、一般に燃焼反応度は均質炉心よりも小さい特長を有する。
【0011】
他方、Naボイド反応度の低減策としては、下記非特許文献3のFig.1に示される様に、均質装荷炉心において、一部の炉心燃料集合体の燃料有効長を短尺にして、そこに、ナトリウムプレナムを設ける方策が検討されている。しかしながら、この方策では、燃焼反応度を低減する効果はない。
【0012】
また、下記特許文献1には、炉心部の径方向外側において炉心燃料が高く設定されている高速炉が開示されている。この高速炉によれば、径方向外側の炉心燃料から放出される中性子が増加するために径方向出力分布が平坦化するとしている。(特許文献1の段落[0042],[0043]および
図9参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012−220325号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】平川直弘、岩崎智彦著、「原子炉物理入門」、東北大学出版会、2003年10月30日、p.279-286
【非特許文献2】Alan E. Walter, et al. 編著、高木直行監訳、「高速スペクトル原子炉(Fast Spectrum Reactors)」、ERC出版、2016年11月1日、p.25-27
【非特許文献3】KATSUYUKI KAWASHIMA, et al., “DESIGN STUDIES OF A LOW SODIUM VOID REACTIVITY CORE ABLE TO ACCOMMODATE DEGRADED TRU FUEL”, NUCLEAR TECHNOLOGY, MAR. 2014, VOL.185, p.270-280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記非特許文献2に記載されているような、短尺炉心燃料の上部へのNaプレナムの設置は、ボイド反応度の低減をもたらすが、燃焼反応度は従来炉心と同程度である。
【0016】
また、上記特許文献1では、上述したような燃焼反応度の低減やボイド反応度の低減に関する記載や開示はなされていない。
【0017】
そこで、本発明の目的は、燃焼反応度を低減しつつ、ボイド反応度の大幅な低減を実現して、ULOF、UTOP時のいずれの事故に対しても、安全性の高い高速炉の炉心とその燃料装荷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、炉心の径方向において、炉心燃料集合体が複数装荷される炉心燃料集合体領域内に、内部ブランケット燃料集合体が複数装荷される内部ブランケット燃料集合体領域を配置する径方向非均質型の高速炉の炉心であって、前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管および流動ナトリウムで構成されるナトリウムプレナムを備え、前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、炉心の径方向において、炉心燃料集合体が複数装荷される炉心燃料集合体領域内に、内部ブランケット燃料集合体が複数装荷される内部ブランケット燃料集合体領域を配置する径方向非均質型の高速炉の炉心であって、前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管の内部に束ねられたガスプレナムを有する金属燃料要素を備え、前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、炉心の径方向において、複数の炉心燃料集合体が装荷された炉心燃料集合体領域内に、複数の内部ブランケット燃料集合体を装荷することで内部ブランケット燃料集合体領域を配置し、前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管および流動ナトリウムで構成されるナトリウムプレナムを配置する高速炉の燃料装荷方法であって、前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、炉心の径方向において、複数の炉心燃料集合体が装荷された炉心燃料集合体領域内に、複数の内部ブランケット燃料集合体を装荷することで内部ブランケット燃料集合体領域を配置し、前記炉心燃料集合体領域および前記内部ブランケット燃料集合体領域の上部に、ラッパ管の内部に束ねられたガスプレナムを有する金属燃料要素を配置する高速炉の燃料装荷方法であって、前記内部ブランケット燃料集合体領域の高さが、前記炉心燃料集合体領域の高さよりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電気出力75万kWクラスの高速炉において、燃焼反応度の絶対値を1$(ドル)以下として、UTOP想定時に炉心に印可される反応度を大幅に小さくし、印加反応度の絶対値を減少しつつ、ULOF想定時に炉心に印可される反応度を負として、炉心安全性が向上する。
【0023】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の高速炉炉心の縦断面図である。
【
図2A】本発明の好適な一実施例である実施例1の高速炉の炉心燃料集合体の縦断面図および水平断面図である。
【
図2B】本発明の好適な一実施例である実施例1の高速炉の内部ブランケット燃料集合体の縦断面図および水平断面図である。
【
図3】本発明の好適な一実施例である実施例1の高速炉の炉心1/2領域の水平断面図である。
【
図4】本発明の好適な一実施例である実施例2の高速炉炉心の縦断面図である。
【
図5A】本発明の好適な一実施例である実施例2の高速炉の炉心燃料集合体の縦断面図および水平断面図である。
【
図5B】本発明の好適な一実施例である実施例2の高速炉の内部ブランケット燃料集合体の縦断面図および水平断面図である。
【
図6】本発明の好適な一実施例である実施例3の高速炉炉心の縦断面図である。
【
図7A】本発明の好適な一実施例である実施例3の高速炉の炉心燃料集合体の縦断面図および水平断面図である。
【
図7B】本発明の好適な一実施例である実施例3の高速炉の内部ブランケット燃料集合体の縦断面図および水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において、同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0026】
本発明の好適な一実施例である実施例1の高速炉の炉心とその燃料装荷方法を、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は本実施例の高速炉炉心の縦断面図である。
図2Aおよび
図2Bは本実施例の燃料集合体を示す図であり、
図2Aは炉心燃料集合体の縦断面および水平断面を示し、
図2Bは内部ブランケット燃料集合体の縦断面および水平断面を示している。
図3は本実施例の高速炉の炉心1/2領域の水平断面図である。
【0027】
本実施例における高速炉の炉心1は、
図1に示すように、炉心燃料2と内部ブランケット燃料3の2種類の燃料集合体より構成される径方向非均質装荷炉心であり、炉心燃料2および内部ブランケット燃料3の各燃料集合体の上部にはラッパ管(
図2A,
図2Bの符号201)と流動ナトリウムよりなるナトリウムプレナム4が設置されている。炉心燃料2および内部ブランケット燃料3の各燃料集合体は、下部側を下部軸方向ブランケット5、側面を径方向ブランケット6、上部側を中性子遮へい体7で囲まれている。
【0028】
図3の1/2領域の炉心水平断面図に示す通り、内部ブランケット領域33は2列の六角形状に配置されている。制御棒集合体36は、出力が低い内部ブランケット燃料集合体(内部ブランケット領域33)を避けて、炉心燃料領域32に配置され、所定の制御棒価値が確保されている。
【0029】
炉心燃料領域32は、径方向ブランケット領域34と、さらにその外側の径方向遮へい体領域35に取り囲まれている。
図1もしくは
図2A,
図2Bに示すように、内部ブランケット燃料集合体(内部ブランケット燃料3,28)の燃料有効長は、炉心燃料集合体(炉心燃料2,23)のそれよりも短い。
【0030】
核分裂で発生する中性子の大部分は、炉心燃料2,23で発生する。本炉心では、
図1に示すように、内部ブランケット燃料(内部ブランケット燃料集合体)3を炉心燃料(炉心燃料集合体)2よりも短く(低く)構成しており、内部ブランケット集合体(内部ブランケット燃料3)に隣接する炉心燃料集合体(炉心燃料2)の側面の上部がナトリウムプレナム4に接している。そのため、ULOF事故を想定した場合に、ナトリウムプレナム4内の流動ナトリウムの温度が上昇して、ナトリウムの密度が減少もしくはナトリウムが沸騰すると、炉心燃料2から上部方向に加えて、ナトリウムプレナムに接する横方向の中性子の漏洩量が増加するため、ボイド反応度がより負側の値となる。
【0031】
つまり、内部ブランケット燃料3を炉心燃料2よりも短く(低く)することにより(言い換えると、炉心燃料2を内部ブランケット燃料3よりも長くすることにより)、炉心燃料2のナトリウムプレナム4に接する表面積が増加し、炉心燃料2から発生する中性子をより効率良くナトリウムプレナム4へ放出することができる。
【0032】
図2A,
図2Bに燃料集合体の縦断面を示す。なお、上述したように、
図2Aは炉心燃料集合体を示し、
図2Bは内部ブランケット燃料集合体を示している。なお、
図2A,
図2Bの各燃料集合体の構成が分かりやすいように、各燃料集合体の水平断面(
図2AのA−A’断面および
図2BのB−B’断面)を各図面の下部に示している。
【0033】
図2Aに示す炉心燃料集合体21の燃料物質(炉心燃料)23は劣化ウラン酸化物(UO
2)にプルトニウム酸化物(PuOx)を混合したMOX燃料(Mixed Oxide)であり、全て同じPu富化度である。
図2Bに示す内部ブランケット燃料集合体26の燃料物質(内部ブランケット燃料)28は劣化ウラン酸化物(UO
2)である。また、炉心燃料23の下部24は下部軸方向ブランケット燃料であり、半径方向外側6は径方向ブランケット燃料であり、いずれも燃料は劣化ウラン酸化物(UO2)である。
【0034】
原子炉の電気出力は75万kWeで、連続運転期間は約20ヶ月、4バッチ燃料取り替えで、炉心燃料の取出し平均燃焼度は約100GWd/tである。
【0035】
燃焼反応度は、内部ブランケットの劣化ウラン中のU238が燃焼に伴って、Pu239等の核分裂核種に変換するため、内部ブランケット集合体の出力分担は徐々に増加する。そのため、燃焼反応度は約1$と小さな値となる。
【0036】
本実施例において、ボイド反応度は、上述した様に、炉心燃料集合体2,21のうち、内部ブランケット集合体3,26に接する方向の中性子漏洩量が増大するので、負の値となる。従って、制御棒の誤引抜きとスクラム失敗を重畳した事故(UTOP:Unprotected Transient Over Power)を想定した場合でも、当該制御近傍の燃料集合体における線出力の増加がわずかとなり、燃料の健全性が維持される。
【実施例2】
【0037】
本発明の他の好適な実施例である実施例2の高速炉の炉心とその燃料装荷方法を、
図4から
図5Bを参照して説明する。
図4は本実施例の高速炉炉心の縦断面図である。
図5Aおよび
図5Bは本実施例の燃料集合体を示す図であり、
図5Aは炉心燃料集合体の縦断面および水平断面を示し、
図5Bは内部ブランケット燃料集合体の縦断面および水平断面を示している。なお、
図4は実施例1の
図1に相当し、
図5A,
図5Bはそれぞれ実施例1の
図2A,
図2Bに相当する。
【0038】
本実施例における高速炉において、燃料は金属燃料(U-Pu-Zr、U-Zr)を用いる。金属燃料は、中性子の照射に伴うスエリングを抑えるために、燃料棒被覆管と燃料スラグの間に、断面積で定義して25%のギャップが設けられている。このギャップコンダクタンスを小さくして燃料棒の除熱性能を向上するために、上記のギャップにボンド材として液体Naが充填される。このため、炉心燃料の核分裂で発生する核分裂生成物(FP:Fission Product)の内のガスを保持するためのガスプレナムは燃料の上部に設けられる(上部ガスプレナム領域42)。その結果、実施例1で設定されたナトリウムプレナムによるボイド反応度の低減効果は限定的となる。
【0039】
その一方で、上部ガスプレナム領域42の冷却材Naは、ULOF時に炉心燃料領域よりも高温となるので、ガスプレナム領域のボイド反応度は負となる。本実施例は、このガスプレナム領域の負のボイド反応度を、以下の方策で増大させてボイド反応度低減を達成する。
【0040】
すなわち、
図4および
図5A,
図5Bに示す通り、内部ブランケット燃料集合体54の燃料有効長を、炉心燃料集合体51のそれよりも短くして、逆に、内部ブランケット燃料(集合体)3のガスプレナム長を、炉心燃料(集合体)2のそれよりも長くする。
【0041】
つまり、
図5A,
図5Bに示すように、内部ブランケット燃料集合体54の内部ブランケット燃料28の長さを炉心燃料集合体51の金属炉心燃料53の長さよりも短く設定し(言い換えると、炉心燃料集合体51の金属炉心燃料53の長さを内部ブランケット燃料集合体54の内部ブランケット燃料28の長さよりも長く設定し)、なおかつ、
図4に示すように、炉心41内において、実施例1と同様に、内部ブランケット燃料3を炉心燃料2よりも短くする(言い換えると、炉心燃料2を内部ブランケット燃料3よりも長くする)。
【0042】
その結果、大部分の核分裂中性子が発生する炉心燃料(集合体)2,51のうち、内部ブランケット燃料(集合体)3,54に接する上部ガスプレナム42から横方向に漏洩する中性子が増加し、ボイド反応度が低減する。
【0043】
本実施例では、定常運転時にNaを反射するナトリウムプレナムが無いため、
図4に示すように、上部遮へい体43を設けている。上部(中性子)遮へい体の断面形状は、
図5A,
図5Bの符号56に示す通り、太径の遮へい体要素で構成されており、遮へい体要素は炭化ホウ素(B
4C)を用いて、炉内上部構造の中性子照射量を抑制する。
【0044】
なお、
図4に示すように、本実施例の炉心41は、実施例1と同様に、炉心燃料2および内部ブランケット燃料3の各燃料集合体が、下部側を下部軸方向ブランケット5、側面を径方向ブランケット6、上部側を中性子遮へい体43に囲まれて構成されている。
【実施例3】
【0045】
本発明のさらに別の好適な実施例である実施例3の高速炉の炉心とその燃料装荷方法を、
図6から
図7Bを参照して説明する。
図6は本実施例の高速炉炉心の縦断面図である。
図7Aおよび
図7Bは本実施例の燃料集合体を示す図であり、
図7Aは炉心燃料集合体の縦断面および水平断面を示し、
図7Bは内部ブランケット燃料集合体の縦断面および水平断面を示している。なお、
図6は実施例1の
図1に相当し、
図7A,
図7Bはそれぞれ実施例1の
図2A,
図2Bに相当する。
【0046】
本実施例における高速炉の炉心61は、
図1に示した実施例1の炉心1に対して、ナトリウムプレナム4と上部遮へい体43の間に、中性子減速材層62を設置している。中性子減速物質としては金属水素化物の中で水素解離温度が相対的に高い、イットリウム・ハイドライド(Y-Hx)を用いている。冷却材ナトリウムのボイド時には、炉心燃料2から上方に直接、もしくは内部ブランケット燃料3の方向に漏洩した後に、構造材等による散乱によって、上部遮へい体43に衝突した中性子の多くは、炭化ホウ素(B
4C)中のB-10に吸収される。
【0047】
ところが、一部は、上部遮へい体43中のFe等の構造材やB-11などの中性子吸収断面積が大きくない物質で散乱されて、再度炉心燃料2に戻って、核分裂を起こす。本実施例では、上記の様な上部遮へい体43方向に散乱される中性子が中性子減速材層62に含まれる水素Hに衝突して減速されるため、上部遮へい体43中で吸収される割合が増大する。
【0048】
その結果、ボイド反応度が減少する。核特性解析の結果、このボイド反応度低減効果は約1$であることを確認した。
【0049】
以上の各実施例では、炉心の燃料は、劣化ウラン酸化物とプルトニウム酸化物を混合した混合酸化物(MOX)燃料、もしくは金属燃料を想定したが、窒化物燃料を用いる高速炉の場合や、冷却材もナトリウム以外の、鉛や鉛・ビスマス等の液体重金属を用いる高速炉に対しても、本発明は同様の効果が得られる。
【0050】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…高速炉の炉心、2…炉心燃料、3…内部ブランケット燃料、4…ナトリウムプレナム、5…下部軸方向ブランケット、6…径方向ブランケット(燃料)、7…中性子遮へい体、21…高速炉の炉心燃料集合体、22…炉心燃料要素、23…炉心燃料、24…下部軸方向ブランケット燃料、25…ナトリウムプレナム、26…高速炉の内部ブランケット燃料集合体、27…内部ブランケット燃料要素、28…内部ブランケット燃料、29…燃料棒被覆管、30…金属ブランケット燃料、31…高速炉の1/2炉心水平断面、32…炉心燃料領域、33…内部ブランケット領域、34…径方向ブランケット領域、35…径方向遮へい体領域、36…制御棒集合体、41…高速炉の炉心、42…上部ガスプレナム(領域)、43…上部遮へい体(領域)、51…高速炉の炉心燃料集合体、52…炉心燃料要素、53…金属炉心燃料、54…高速炉の内部ブランケット燃料集合体、55…内部ブランケット燃料要素、56…上部(中性子)遮へい体、61…高速炉の炉心、62…中性子減速材層、71…高速炉の炉心燃料集合体、72…炉心燃料要素、73…炉心燃料、74…下部軸方向ブランケット燃料、75…ナトリウムプレナム、76…高速炉の内部ブランケット燃料集合体、77…内部ブランケット燃料要素、78…内部ブランケット燃料、79…燃料棒被覆管、201…ラッパ管、211…中性子遮へい体、701…ラッパ管。