(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
図20は、作業機1の全体構成を示す概略側面図である。本実施形態では、作業機1としてバックホーが例示されている。なお、作業機1は、フロントローダ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等であってもよい。
【0009】
先ず、作業機1の全体構成を説明する。
図20に示すように、作業機1は、機体(旋回台)2と、第1走行装置3R、第2走行装置3Lと、作業装置4とを備えている。機体2上にはキャビン5が搭載されている。キャビン5の室内には、運転者(オペレータ)が着座する運転席(座席)6が設けられている。
【0010】
本実施形態においては、作業機1の運転席6に着座した運転者の前側(
図20の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(
図20の矢印A2方向)を後方、運転者の左側(
図20の手前側)を左方、運転者の右側(
図20奥側)を右方として説明する。また、前後方向K1に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。
図20に示すように、第1走行装置3Rは機体2に対して右側に設けられ、第2走行装置3Lは機体2に対して左側に設けられている。第1走行装置3R及び第2走行装置3Lは、本実施形態では、クローラ式の走行機構(クローラ式走行装置)である。第1走行装置3R及び第2走行装置3Lは、走行油圧アクチュエータである走行モータMR,MLによって駆動される。第1走行装置3R及び第2走行装置3Lの前部には、ドーザ装置7が装着されている。ドーザ装置7は、後述するドーザシリンダC3を伸縮することにより昇降(ブレードを上げ下げ)させることができる。
【0011】
機体2は、走行フレーム上に旋回ベアリング8を介して縦軸(上下の方向に延伸する軸心)回りに旋回可能に支持されている。機体2は、油圧モータ(油圧アクチュエータ)からなる旋回モータMTによって旋回駆動される。機体2は、縦軸回りに旋回する基板(以下、旋回基板という)9と、ウエイト10とを有している。旋回基板9は、鋼板等から形成されており、旋回ベアリング8に連結されている。ウエイト10は、機体2の後部に設けられている。機体2の後部には、原動機E1が搭載されている。原動機E1は、エンジンである。なお、原動機E1は、電動モータであってもよいし、エンジン及び電動モータを有するハイブリッド型であってもよい。
【0012】
機体2は、機体幅方向の中央のやや右寄りの前部に支持ブラケット13を有している。支持ブラケット13には、スイングブラケット14が、縦軸回りに揺動可能に取り付けられている。スイングブラケット14には、作業装置4が取り付けられている。
作業装置4は、ブーム15と、アーム16と、バケット(作業具)17とを有している。ブーム15の基部は、スイングブラケット14に横軸(機体幅方向に延伸する軸心)回りに回動可能に枢着されている。これによって、ブーム15が上下に揺動可能とされている。アーム16は、ブーム15の先端側に横軸回りに回動可能に枢着されている。これによって、アーム16が前後或いは上下に揺動可能とされている。バケット17は、アーム16の先端側にスクイ動作及びダンプ動作可能に設けられている。作業機1は、バケット17に代えて或いは加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(油圧アタッチメント)を装着することが可能である。他の作業具としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等が例示できる。
【0013】
スイングブラケット14は、機体2内に備えられたスイングシリンダC4の伸縮によって揺動可能とされている。ブーム15は、ブームシリンダC1の伸縮によって揺動可能とされている。アーム16は、アームシリンダC9の伸縮によって揺動可能とされている。バケット17は、バケットシリンダ(作業具シリンダ)C2の伸縮によってスクイ動作及びダンプ動作可能とされている。スイングシリンダC4、ブームシリンダC1、アームシリンダC9、バケットシリンダC2等の作業系油圧アクチュエータは、油圧シリンダによって構成されている。
【0014】
図1は作業機1の油圧システム及び制御システムを示している。作業機1の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2と、第3油圧ポンプP3と、複数の制御弁V1〜V10を有している。第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、可変容量型の油圧ポンプである。第3油圧ポンプP3は、定容量型の油圧ポンプである。第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2及び第3油圧ポンプP3は、エンジンE1の動力によって駆動して、作動油タンクに貯留された作動油を吐出する。この実施形態では、作業機1の油圧システムは、3つの油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2、第3油圧ポンプP3)を備えているが、台数は限定されない。
【0015】
複数の制御弁V1〜V10は、それぞれ油圧アクチュエータ(作業系油圧アクチュエータ、走行系油圧アクチュエータ)に供給する作動油の流量を制御する弁(電磁制御弁)である。複数の制御弁V1〜V10は、第3油圧ポンプP3から供給された作動油(パイロット油)によって、スプールの位置が切り換わる電磁式の3位置切換弁である。即ち、複数の制御弁V1〜V10は、電磁弁を有していて当該電磁弁の開度によってスプールへ作用するパイロット油の圧力が変化し、スプールの位置を変更することができる。なお、この実施形態では、電磁弁を組み込んだ電磁式の3位置切換弁を示しているが、電磁弁は別体に構成されていてもよい。また、複数の制御弁V1〜V10は、3位置切換弁以外の2位置切換弁、4位置切換弁などであってもよく限定されない。
【0016】
複数の制御弁V1〜V10は、ブームシリンダC1を制御するブーム制御弁V1、バケットシリンダC2を制御するバケット制御弁V2、ドーザシリンダC3を制御するドーザ制御弁V3、スイングシリンダC4を制御するスイング制御弁V4、第1走行装置3Rの走行系油圧アクチュエータ(走行モータMR)を制御する右走行制御弁V5、第2走行装置3Lの走行系走行油圧アクチュエータ(走行モータML)を制御する左走行制御弁V6、予備アクチュエータを制御する第1SP制御弁V7、予備アクチュエータを制御する第2SP制御弁V8、アームシリンダC9を制御するアーム制御弁V9、旋回モータMTを制御する旋回制御弁V10を有している。
【0017】
ブーム制御弁V1、バケット制御弁V2、ドーザ制御弁V3、スイング制御弁V4及び右走行制御弁V5は、第1油圧ポンプP1に接続された第1吐出油路41が接続されている。左走行制御弁V6、第1SP制御弁V7、第2SP制御弁V8、アーム制御弁V9及び旋回制御弁V10は、第2油圧ポンプP2に接続された第2吐出油路42が接続されている。
【0018】
以降、説明の便宜上、ブーム制御弁V1、バケット制御弁V2、ドーザ制御弁V3、スイング制御弁V4及び右走行制御弁V5のグループを第1ブロックB1といい、左走行制御弁V6、第1SP制御弁V7、第2SP制御弁V8、アーム制御弁V9及び旋回制御弁V10のグループを第2ブロックB2ということがある。
第1ブロックB1と第2ブロックB2との間には、連通弁V11が設けられている。連通弁V11は、第1位置と第2位置とに切り換わる切換弁であって、第1吐出油路41と第2吐出油路42とがそれぞれ接続されている。連通弁V11が第1位置である場合には、第1吐出油路41と第2吐出油路42とが連通弁V11を介して繋がり、連通弁V11が第2位置である場合には、第1吐出油路41と第2吐出油路42との連通が連通弁V11によって遮断される。なお、連通弁V11は、2位置切換弁以外の3位置切換弁、4位置切換弁などであってもよく限定されない。
【0019】
作業機1は旋回装置を備えている。旋回装置は、機体(旋回台)2、旋回モータMT、油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2)を含む装置である。
次に、作業機1の制御システムの構成について説明する。
図1に示すように、作業機1の制御システムは、複数の制御装置51、52を有している。制御装置51は、主に油圧システムを制御する作業制御装置であって、油圧制御部53を有している。油圧制御部53は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。油圧制御部53は、作業機1に設けられた油圧機器、例えば、複数の制御弁V1〜V10、連通弁V11、油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2)を制御する。なお、油圧制御部53は、油圧機器を制御するものであれば何でもよく、制御対象はこの実施形態に限定されない。制御装置52は、エンジンE1を制御するエンジン制御装置52である。この実施形態では、制御システムは、複数の制御装置51、52を有しているが、制御装置51、52を1つの制御装置で構成してもよいし、台数は限定されない。
【0020】
制御装置51には、作業操作部材(作業操作部材19L、作業操作部材19R、作業操作部材19D)が接続されている。作業操作部材19Lは、運転席6の左側に配置され、作業操作部材19Rは、運転席6の右側に配置され、作業操作部材19Dは、作業操作部材19Rとは別に運転席6の右側に配置されている。作業操作部材19L及び作業操作部材19Rは、揺動量(操作量)を検出するポテンションメータ(検出装置)を有するレバーであって、前、後、右、左に揺動自在なレバーである。作業操作部材19Dは、揺動量(操作量)を検出するポテンションメータ(検出装置)を有するレバーであって、前、後に揺動可能なレバーである。
【0021】
作業操作部材19Lを作業者(オペレータ)等が操作すると、作業操作部材19Lの操作量及び操作方向がポテンションメータにより検出され、検出された操作量及び操作方向は制御装置51に入力される。油圧制御部53は、作業操作部材19Lの操作量及び操作方向に応じて、旋回制御弁V10の旋回電磁弁のソレノイドを励磁し、当該旋回電磁弁の開度を制御するか、あるいはアーム制御弁V9のアーム電磁弁のソレノイドを励磁し、当該アーム電磁弁の開度を制御する。その結果、旋回制御弁V10の受圧部にパイロット圧が作用し、当該旋回制御弁V10の位置が切り換えられ、当該位置に応じて旋回モータMTの回転方向が切り換えられるか、あるいは、アーム制御弁V9の受圧部にパイロット圧が作用し、当該アーム制御弁V9の位置が切り換えられ、位置に応じてアームシリンダC9が伸縮する。
【0022】
作業操作部材19Rをオペレータ等が操作すると、作業操作部材19Rの操作量及び操作方向がポテンションメータにより検出され、検出された操作量及び操作方向は制御装置51に入力される。油圧制御部53は、作業操作部材19Rの操作量及び操作方向に応じて、ブーム制御弁V1のブーム電磁弁のソレノイドを励磁し、当該ブーム電磁弁の開度を制御するか、あるいは、作業操作部材19Rの操作量及び操作方向に応じて、バケット制御弁V2のバケット電磁弁のソレノイドを励磁し、当該バケット電磁弁の開度を制御する。その結果、ブーム制御弁V1の受圧部にパイロット圧が作用し、当該ブーム制御弁V1の位置が切り換えられ、当該位置に応じてブームシリンダC1が伸縮するか、あるいはバケット制御弁V2の受圧部にパイロット圧が作用し、当該バケット制御弁V2の位置が切り換えられ、位置に応じてバケットシリンダC2が伸縮する。
【0023】
作業操作部材19Dをオペレータ等が操作すると、作業操作部材19Dの操作量及び操作方向がポテンションメータにより検出され、検出された操作量及び操作方向は制御装置51に入力される。油圧制御部53は、作業操作部材19Dの操作量及び操作方向に応じて、ドーザ制御弁V3のドーザ電磁弁のソレノイドを励磁し、当該ドーザ電磁弁の開度を制御する。その結果、ドーザ制御弁V3の受圧部にパイロット圧が作用し、当該ドーザ制御弁V3の位置が切り換えられ、当該位置に応じてドーザシリンダC3が伸縮する。
【0024】
以上のように、作業操作部材(作業操作部材19L、作業操作部材19R、作業操作部材19D)を操作することによって、機体2、ブーム15、アーム16、バケット(作業具)17、ドーザ装置7を操作することができる。
制御装置51には、走行操作部材(走行操作部材20L、走行操作部材20R)が接続されている。走行操作部材20L及び走行操作部材20Rは、運転席6の前方に配置されている。走行操作部材20L及び走行操作部材20Rは、揺動量(操作量)を検出するポテンションメータ(検出装置)を有するレバーであって、前、後に揺動自在なレバーである。
【0025】
走行操作部材20L及び走行操作部材20Rをオペレータ等が操作すると、走行操作部材20L及び走行操作部材20Rの操作量及び操作方向がポテンションメータにより検出され、検出された操作量及び操作方向は制御装置51に入力される。油圧制御部53は、走行操作部材20Lの操作量及び操作方向に応じて、左走行制御弁V6の左走行電磁弁のソレノイドを励磁すると共に、走行操作部材20Rの操作量及び操作方向に応じて、右走行制御弁V5の右走行電磁弁のソレノイドを励磁する。その結果、右走行制御弁V5及び左走行制御弁V6の受圧部にパイロット圧が作用し、当該右走行制御弁V5及び左走行制御弁V6がそれぞれが切り換えられ、走行モータMR及び走行モータMLの回転方向が決定される。
【0026】
以上のように、作業操作部材(作業操作部材19L、作業操作部材19R、作業操作部材19D)及び走行操作部材(走行操作部材20L、走行操作部材20R)の操作時には、制御装置51がソレノイドの励磁及び消磁の制御信号を出力することによって、機体2、ブーム15、アーム16、バケット(作業具)17、ドーザ装置7、第1走行装置3R及び第2走行装置3Lを制御することができる。
【0027】
さて、制御装置51は、2つの制御モード(第1制御モード、第2制御モード)を有しており、制御モードに応じて、作業機1の制御形態が異なる。
制御装置51には、切換部材65が接続されている。切換部材65は、例えば、ON/OFFスイッチであって、運転席6の近傍に設けられ、作業者(オペレータ)が手動操作によって切り換えることが可能なスイッチである。なお、切換部材65は、オペレータによる手動操作ができないように、制御装置51の内部に設けてもよい。
【0028】
制御装置51は、切換部材65の切換に応じて作動する切換部(モード切換部)54が設けられている。切換部54は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。切換部材65をONにすると、制御装置51の切換部54は当該制御装置51を第1モードに設定し、切換部材65をOFFにすると、制御装置51の切換部54は
当該制御装置51を第2モードに設定する。即ち、切換部54は、制御装置51の切換部材65の切換に応じて、後述する回転数制御部55Aによって負荷に応じてエンジン回転数の増減を行う第1状態(統合制御モード)と、負荷に応じてエンジン回転数の増減を行わない第2状態(標準制御モード)とに切換る。
【0029】
制御装置51は、第2モード(標準制御モード)に設定されると、エンジン回転数は予め定められたエンジン回転数(制御装置51に接続されたアクセル設定部材64で設定された目標エンジン回転数)を維持する制御信号を制御装置52に出力する。また、標準制御モードでは、制御装置51(油圧制御部53)は、上述したように、作業操作部材及び走行操作部材の操作量等に応じて、複数の制御弁V1〜V10等の制御を行う。
【0030】
さらに、標準制御モードでは、制御装置51(油圧制御部53)は、作業操作部材及び走行操作部材の操作量等に基づいて、油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプ
P2)から吐出する作動油の流量を求め、求めた流量を吐出するように、油圧ポンプ(
第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプ
P2)の斜板角度を制御する。
なお、標準制御モードにおいて、油圧制御部53が作業操作部材及び走行操作部材の操作量等に基づいて油圧ポンプから吐出する作動油を求め、求めた作動油に基づいて斜板角度を制御する例を示しているが、これに代えて、圧力補償弁を有するロードセンシングシステムを作業機1の油圧システムに設けることにより、制御弁V1〜V11から検出された負荷圧等を検出油路で検出して、検出油路によって検出されたPPS信号,PLS信号に基づいて、油圧ポンプの斜板角度をレギュレータによって制御してもよい。その他の方法によって油圧ポンプの斜板角度の制御を行ってもよく、油圧ポンプの斜板角度の制御については限定されない。上述したアクセル設定部材64は、例えば、運転席6の近傍に設けられたレバー、ボリュームスイッチ等であり、オペレータの操作によって、目標エンジン回転数が設定される。
【0031】
図2Aは、標準制御モードにおける負荷(油圧ポンプに作用する負荷)を示す負荷ラインL1と、目標エンジン回転数を示す目標ラインL2との関係を示している。
図2Aに示すように、標準制御モードでは、油圧アクチュエータ(作業系油圧アクチュエータ、走行系油圧アクチュエータ)の作動時における負荷ラインL1が変動したとしても負荷に応じて目標エンジン回転数の変更は行わず、即ち、制御装置52に出力する目標エンジン回転数は一定(目標ラインL2が一定)に固定する。
【0032】
つまり、制御装置51は、標準制御モードでは、アクセル設定部材64によって指示された固定値である目標エンジン回転数(指令回転数)を、そのまま目標エンジン回転数(目標ラインL2:出力回転数)として出力し、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に一致させるフィードバック制御を行いながら、走行系油圧アクチュエータや作業系油圧アクチュエータの制御を実行する。
【0033】
一方、
図2Bに示すように、制御装置51は、第1モード(統合制御モード)に設定されると、アクセル設定部材64で設定された目標エンジン回転数(指令回転数)は無視して、負荷ラインL1に応じて、制御装置52に出力する目標エンジン回転数(出力回転数)を変更する。
統合制御モードによるエンジン回転の制御は、制御装置51に設けられた回転数制御部55Aにより行う。回転数制御部55Aは、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。回転数制御部55Aは、少なくとも油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2)に作用する負荷に応じて目標エンジン回転数を増減させる。具体的には、回転数制御部55Aは、作業操作部材の操作量及び走行操作部材の操作量に基づいて、油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2)から吐出する作動油の流量、即ち、必要流量を求め、必要流量から目標エンジン回転数を演算する。
【0034】
具体的には、回転数制御部55Aは、第1ブロックB1(ブーム制御弁V1、バケット制御弁V2、ドーザ制御弁V3、スイング制御弁V4及び右走行制御弁V5)に対応する油圧アクチュエータ(ブームシリンダC1、バケットシリンダC2、ドーザシリンダC3、スイングシリンダC4、走行モータMR)に供給する必要流量Q1を求める。必要流量Q1は、例えば、作業操作部材及び走行操作部材の操作量に基づいて制御弁V1〜V5のそれぞれの開度を演算し、制御弁V1〜V5のそれぞれの開度とCv値(容量係数)との関係に基づいて各制御弁V1〜V5の流量を求め、各制御弁V1〜V5の流量を総合計することにより求めてもよいし、制御弁V1〜V5の前後差圧ΔPに基づいて、各制御弁V1〜V5の流量を求め、各制御弁V1〜V5の流量を総合計することにより求めてもよいし、その他の方法によって、必要流量Q1を求めてもよい。
【0035】
また、回転数制御部55Aは、第2ブロックB2(左走行制御弁V6、第1SP制御弁V7、第2SP制御弁V8、アーム制御弁V9及び旋回制御弁V10)に対応する油圧アクチュエータ(走行モータML、予備アクチュエータ、
アームシリンダC9及び旋回モータMT)に供給する必要流量Q2を求める。必要流量Q2は、必要流量Q1と同様に、例えば、作業操作部材及び走行操作部材の操作量に基づいて制御弁V6〜V10のそれぞれの開度を演算し、制御弁V6〜V10それぞれの開度とCv値との関係に基づいて各制御弁V6〜V10の流量を求め、各制御弁V6〜V10の流量を総合計することにより求めてもよいし、制御弁V6〜V10の前後差圧ΔPに基づいて、各制御弁V6〜V10の流量を求め、各制御弁V6〜V10の流量を総合計することにより求めてもよいし、その他の方法によって、必要流量Q2を求めてもよい。
【0036】
次に、回転数制御部55Aは、必要流量Q1、Q2及び油圧ポンプの斜板角(第1油圧ポンプP1の斜板角、第2油圧ポンプP2の斜板角)に基づいて、目標エンジン回転数(必要回転数)を求める。具体的には、回転数制御部55Aは、連通弁V11によって第1吐出油路41と第2吐出油路42とを連通している場合、式(1)を用いて、目標エンジン回転数を求める。また、回転数制御部55Aは、連通弁V11によって第1吐出油路41と第2吐出油路42とを遮断している場合、式(2)、式(3)を用いて、目標エンジン回転数を求める。
【0037】
【数1】
なお、目標エンジン回転数を求めるにあたって、油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1の斜板角、第2油圧ポンプP2の斜板角)の斜板角を用いている。油圧アクチュエータに作用する負荷が所定よりも大きくなった場合、油圧ポンプの所定よりも斜板角は小さくなる。油圧アクチュエータに作用する負荷が大きくなっている状態(油圧ポンプの斜板角が負荷の影響により小さくなった状態)から負荷が小さくなった場合は、油圧ポンプの斜板角は所定の角度に戻る。したがって、上述した目標エンジン回転数の式(1)〜(3)では、油圧ポンプの斜板角に応じて変更することが可能であり、作業の負荷に応じて、目標エンジン回転数を変化させることができる。式(1)〜(3)において、斜板角は最大値を用いてもよい。
【0038】
そして、回転数制御部55Aは、連通弁V11によって第1吐出油路41と第2吐出油路42とを連通している場合は、式(1)で求めた目標エンジン回転数を制御装置52に出力する。また、回転数制御部55Aは、連通弁V11によって第1吐出油路41と第2吐出油路42とを遮断している場合は、式(2)で求めた目標エンジン回転数と、式(3)で求めた目標エンジン回転数とのいずれか大きい方の目標エンジン回転数を制御装置52に出力する。なお、連通弁V11における切換操作は、作業機1の作業状態又は走行状態に基づいて、制御装置51によって切り換えられる。連通弁V11における切換操作は、運転席6の周囲に設けられたスイッチ等の切換により行ってもよいし、その他の方法で行ってもよい。
【0039】
以上のように、統合制御モードでは、制御装置51の回転数制御部55Aによって、作業の負荷に応じて、目標エンジン回転数を変化することにより、実エンジン回転数を負荷に応じて増減することができる。このように、統合制御モードによれば、作業の負荷に応じてエンジン回転数を増減させることによって、油圧アクチュエータの速度は下げることなく同一の速度で作業を行うことができる一方で、省エネ化を図ることができる。
【0040】
なお、統合制御モードにおいて、負荷に応じて目標エンジン回転数を変更しているが、制御弁V1〜V11の制御及び油圧ポンプの斜板角度の制御は、標準制御モードと同様である。
さて、作業機1では、油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)毎又は作業毎(作業内容毎)に、エンジン回転数を制限可能である。
図3に示すように、エンジン回転数の制限は、制御装置51及び制御装置51に接続された表示装置70によって行う。
【0041】
制御装置51は、第1設定部56を有している。第1設定部56は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。第1設定部56は、表示装置70と協同して、エンジン回転数の制限値(エンジン回転数の上限値及び/又は下限値)を設定する。
図3A及び
図3Bに示すように、表示装置70は、作業機1に関する様々な情報を表示可能な表示部71と、表示部71等の操作を行う操作部(操作具)72とを有している。表示部71は、液晶等のパネルから構成されている。操作部72は、複数のスイッチ等で構成されていて、第1スイッチ72aと、第2スイッチ72bと、第3スイッチ73cとを含んでいる。なお、操作部72は、表示装置70の操作を行えるものであれば、何でもよくスイッチに限定されない。
【0042】
図3Aに示すように、制御装置51の第1設定部56は、操作部72において所定の操作が行われると、表示装置70の表示部71に設定画面M1を表示させる。設定画面M1は、油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)毎にエンジン回転数の制限を行う画面である。第1設定部56は、作業機1に装着可能な油圧アタッチメント(ブーム、バケット、アーム等)を示す文字や図形を設定画面M1に表示させる。また、第1設定部56は、各油圧アタッチメントに対応するエンジン回転数の上限値及び/又は下限値を数字又は図形(バー)等により設定画面M1に表示する。設定画面M1において、オペレータが第1スイッチ72aを選択すると、第1設定部56は、設定画面M1に表示された複数の油圧アタッチメントのうち、エンジン回転数の設定を行う油圧アタッチメントを決定する。また、設定画面M1において、エンジン回転数の設定を行う油圧アタッチメントの決定後、オペレータが第2スイッチ72b、第3スイッチ72cを選択すると、第1設定部56は、油圧アタッチメントに対応するエンジン回転数の上限値及び/又は下限値を増減し、オペレータが再び第1スイッチ72aを選択すると、エンジン回転数の上限値及び/又は下限値を選択時の値に決定する。
【0043】
このように、制御装置51の第1設定部56によって、作業機1に装着可能な油圧アタッチメント毎にエンジン回転数の制限値(上限値及び/又は下限値)を設定することができる。
図3Bに示すように、制御装置51の第1設定部56は、操作部72において所定の操作が行われると、表示装置70の表示部71に設定画面M2を表示させる。設定画面M2では、作業毎にエンジン回転数の制限を行う。第1設定部56は、作業機1で行うことができる作業(掘削、走行、旋回等)を示す文字や図形を設定画面M2に表示させる。また、第1設定部56は、各作業に対応するエンジン回転数の上限値及び/又は下限値
を数字又は図形(バー)等により設定画面M2に表示する。設定画面M2において、オペレータが第1スイッチ72aを選択すると、設定画面M2に表示された複数の作業のうち、第1設定部56は、エンジン回転数の設定を行う作業を決定する。また、設定画面M2において、エンジン回転数の設定を行う作業の決定後、オペレータが第2スイッチ72b、第3スイッチ72cを選択すると、第1設定部56は、作業に対応するエンジン回転数の上限値及び/又は下限値を増減し、オペレータが再び第1スイッチ72aを選択すると、エンジン回転数の上限値及び/又は下限値を選択時の値に決定する。
【0044】
このように、制御装置51の第1設定部56によって、作業機1によって行うことができる作業毎にエンジン回転数の制限値(上限値及び/又は下限値)を設定することができる。なお、上述した実施形態では制御装置51(第1設定部56)が表示装置70における表示の制御を行っているが、表示装置70に制御装置51(第1設定部56)を設けてもよく、表示装置70と制御装置51(第1設定部56)とを一体化してもよい。
【0045】
上述した実施形態では、油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)毎に任意にエンジン回転数の制限値の設定を行うことができるようにしているが、少なくとも2つの油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)について、油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)毎に制限値をそれぞれ異なる値に設定するようにしてもよい。
図3Cは、制限値をそれぞれ異なる値に設定可能な設定画面M3を示している。設定画面M3は、上述した設定画面M1と同様に、作業機1に装着可能な油圧アタッチメント(ブーム、バケット、アーム等)を示す文字や図形を表示する。
図3Cに示すように、例えば、アームのエンジン回転数を設定した後、ブーム等の他の油圧アタッチメントのエンジン回転数において、第1設定部56は、設定可能範囲(制限値を設定できる幅)F1を設定画面M3に表示する。設定可能範囲F1は、アーム等のように先に設定した油圧アタッチメントのエンジン回転数によって変更される。
【0046】
したがって、オペレータは、第2スイッチ72b、第3スイッチ72cを操作して、ブームのエンジン回転数の設定値を設定可能範囲F1に収めることにより、アームのエンジン回転数とは異なる制限値を設定することができる。なお、
図3Cの設定画面M3は、少なくとも2つの油圧アタッチメントに応じて制限値をそれぞれ異なる値に設定する例、即ち、先に設定したエンジン回転数が、後に設定するエンジン回転数の設定可能範囲F1を可変にする例であり、例示した油圧アタッチメント及びエンジン回転数は、
図3Cに示したものに限定されない。
【0047】
或いは、第1設定部56は、複数の油圧アタッチメントのうち、所定の油圧アタッチメントのセット値が他の油圧アタッチメントのセット値を超えないように、各油圧アタッチメントのセット値を設定してもよい。例えば、アーム、ブーム、バケットのうち、アームのセット値を高くした場合は、第1設定部56は、ブーム及びバケットのセット値の上限をアームのセット値未満にする。
【0048】
また、上述した実施形態では、油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)毎、又は、作業毎にエンジン回転数の制限値の設定を行えるようにしているが、油圧アクチュエータ又は作業をグループ化して、グループ毎に制限値の設定を行えるようにしてもよい。
図4に示すように、第1設定部56は、表示装置70の表示部71の設定画面M4を表示させる。設定画面M4では、例えば、アーム、ブーム、バケットの第1グループと、カッター、クラップルの第2グループと、ブレーカの第3グループとを表示する。第1設定部56は、設定画面M4に表示されたグループ毎(第1グループ、第2グループ、第3グループ)に、エンジン回転数の上限値及び/又は下限値を設定する。なお、グループの設定は、表示装置70を操作して任意に設定することが好ましい。
【0049】
上述した実施形態では、少なくとも2つの油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)について、油圧アクチュエータ(油圧アタッチメント)毎に制限値をそれぞれ異なる値に設定するようにしているが、これに代えて、少なくとも2つの作業について作業毎に制限値をそれぞれ異なる値に設定するようにしてもよい。例えば、掘削の作業の場合の制限値を2100rpmとした場合に、走行の作業の制限値を1600rpmに設定する。なお、上述した制限値の数値は例であり限定されない。
【0050】
ここで、統合制御モードでは、第1設定部56によって設定された制限値(上限値、下限値)を超えないようにエンジン回転数の制限が行われる。制御装置51は、エンジン回転数を第1設定部56で設定された制限値に制限する回転数制限部58を有している。回転数制限部58は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。
【0051】
回転数制限部58は、回転数制御部55Aによって演算された必要回転数がセット値(上限値)以下である場合、エンジン回転数の制限を行わない。即ち、回転数制限部58は、回転
数制御部55Aによって求められた必要回転数に対応してエンジン回転数を増減させることを許容する。一方、回転数制限部58は、回転数制御部55Aによって演算された必要回転数がセット値(上限値)を超えている場合、エンジン回転数の制限を行う。
【0052】
例えば、アーム16を操作した場合の必要回転数が1600rpmである場合において、アーム16のセット値が1800rpmの場合、回転数制限部58はエンジン回転数の制限を行わないが、アーム16のセット値が1400rpmである場合、エンジン回転数の制限を行う。つまり、回転数制限部58は、必要回転数<セット値である場合、制御装置52に出力する目標エンジン回転数(出力回転数)をセット値に制限する。
【0053】
以上のように、制御装置51の回転数制限部58によって統合制御モードであったとしても、制御装置51が回転数制限部58を有しているため、燃費の向上を行いつつエンジン回転数の制限によって騒音の軽減を行うことができる。また、上述したように、オペレータが作業時に必要なエンジン回転数を設定しながら、作業に応じてエンジン回転数を柔軟に変化させることができる。
【0054】
さて、制御装置51は、標準制御モードである場合では、アクセル設定部材64の指令値に基づいて目標エンジン回転数を設定するが、統合制御モードである場合は、アクセル設定部材64の指令値に基づいて、目標エンジン回転数ではなく、作業機1に関する別のパラメータを設定する。即ち、アクセル設定部材64は、標準制御モードでは目標エンジン回転数を設定するために用いられているが、統合制御モードでは目標エンジン回転数とは異なる別のパラメータを設定するために用いる。
【0055】
具体的には、制御装置51は、アクセル設定部材64で設定された指令値を決める第2設定部59を有している。第2設定部59は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。第2設定部59は、標準制御モードである場合、アクセル設定部材64で指令された指令値が制御装置51に入力されると、入力された指令値に基づいて目標エンジン回転数としてセットする。即ち、標準制御モードである場合に、アクセル設定部材64を操作して指令値を変えれば、第2設定部59は、目標エンジン回転数をアイドリング回転数〜最大回転数まで変更できるようにする。
【0056】
一方で、第2設定部59は、統合制御モード、即ち、負荷に応じてエンジン回転数を増減させる場合には、アクセル設定部材64で指令された指令値が制御装置51に入力されると、入力された指令値に基づいて作動油の流量を増減させる作動油変更値を設定する。そして、制御装置51は、作動油変更値に応じて、油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2)の斜板角度を現在の斜板角度よりも増減させる。例えば、統合制御モードである場合に、アクセル設定部材64を操作して指令値を変えれば、第2設定部59は、油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2)の斜板角度を±10%の範囲で増減することができる。つまり、統合制御モードでは、エンジン回転数の増減を回転
数制御部55Aが自動的に行うため、エンジン回転数を増減するアクセル設定部材64は不要になるが、統合制御モードによって不要になったアクセル設定部材64を作動油の調整をする別の設定部材として使用することができる。これにより、統合制御モードにおいても、油圧ポンプの斜板角度を変更できるため、油圧アクチュエータの速度を微調整する
ことができる。なお、上述した実施形態では、第2設定部59によって、アクセル設定部材64を、作動油を増減させるための設定部材に変更していたが、これに限らず、作業機1に関する設定を行う設定部材に変更するものであれば何でもよい。
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の油圧システム及び制御システムを示している。なお、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0057】
図5に示すように、制御装置51は、油圧制御部53と、回転制御部55B、記憶部60とを有している。油圧制御部53及び回転制御部55Bは、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。油圧制御部53は、上述した実施形態と同様に、例えば、複数の制御弁V1〜V11、油圧ポンプ等を制御する。回転制御部55Bは、操作部材(作業操作部材、走行操作部材)の操作量に基づいてエンジン回転数を設定する。即ち、
回転制御部55Bは、油圧制御部
53による油圧ポンプの制御前に操作部材の操作量に基づいてエンジンの回転数を増減させる。
【0058】
図6は、回転制御部55Bによってエンジン回転数の設定に用いられる作業操作部材の操作量とエンジン回転数との関係を示す制御線Lの一例を示している。まず、制御線Lについて説明する。作業操作部材の操作量とエンジン回転数との関係(制御線L)は、制御装置51の記憶部60に記憶している。作業操作部材の操作量とエンジン回転数との関係は、作業操作部材の操作量を示す値とエンジン回転数を示す値とを対応付けたデータであってもよいし、作業操作部材の操作量からエンジン回転数を求める関数であってもよいし、その他に操作量とエンジン回転数とを関係付けるものであればなんでもよい。
【0059】
図6に示すように、制御線Lは操作量が0〜38%未満ではエンジン回転数がアイドリング回転数(最低回転数)であり、操作量が38%を超えて操作量が増加するにしたがってエンジン回転数が増加し、操作量が略80%以上を超えた時点でエンジン回転数は最大になる。制御線Lは、操作部材の操作量から必要流量Q3を求め、必要流量Q3をエンジン回転数に換算したものである。即ち、制御線
Lは、作業操作部材の操作量に対応する作動油の流量(必要流量)に基づいてエンジン回転数の設定するものである。また、制御線
Lは、油圧ポンプの斜板角に基づいてエンジン回転数を設定するものである。言い換えれば、回転制御部55Bは、作業操作部材の操作量に対応する作動油の流量(必要流量)に基づいてエンジン回転数の設定をすると共に、油圧ポンプの斜板角に基づいてエンジン回転数を設定する。なお、制御線Lの算出方法は、一例であって限定されない。
【0060】
制御線Lは、作業操作部材19L、作業操作部材19R、作業操作部材19Dの操作方向(前、後、右、左)のそれぞれに割り当てられている。言い換えれば、制御線Lは、作業機1において作業毎に割り当てられている。例えば、作業操作部材19L、作業操作部材19R、作業操作部材19Dによって、10方向に操作する(作業が10種類である)ため、10方向に対応する10個の制御線
Lが記憶部60に記憶している。なお、制御弁V1〜V10において、流量特性が同じである場合は、同じ流量特性の制御線Lは兼用してもよい。
【0061】
図7は、第2実施形態における第1の制御フローチャートを示している。
図7に示すように、作業操作部材の操作が行われると(S1、Yes)、回転制御部55Bは作業操作部材の操作方向及び操作量に基づいて、記憶部60に記憶されている所定の制御線Lを参照し(S2)、参照した制御線L及び操作量からエンジン回転数を演算する(S3)。演算したエンジン回転数を制御装置52に出力する(S4)。例えば、アームを上昇させる方向に作業操作部材を操作した場合、回転制御部55Bは、アームを操作する作業操作部材の操作方向に対応する制御線Lを参照し、当該制御線L及び作業操作部材の操作量と制御線Lからエンジン回転数(目標エンジン回転数)を求め、エンジン回転数(目標エンジン回転数)を制御装置52に出力する。なお、エンジン回転数(目標エンジン回転数)を制御装置52に出力するのと略同時に、制御装置51(回転制御部55B)は、作業操作部材の操作量に対応する制御信号を制御弁V1〜V10の電磁弁に出力して当該制御弁V1〜V10を制御すると共に、油圧ポンプの斜板角度を最大にする。
【0062】
回転制御部55Bによって作業操作部材の操作量に応じてエンジン回転数を制御した後(
回転制御部55Bによるエンジン回転数の設定後)は、油圧制御部53による油圧ポンプの制御を実行する(S5)。例えば、油圧制御部53は、作業操作部材の操作量及び操作方向に応じて、制御弁V1〜V10の電磁弁の開度を制御すると共に、操作量等に応じて油圧ポンプの斜板の角度を制御する。
【0063】
以上によれば、作業操作部材を中立位置から操作した場合には、当該作業操作部材の操作量に応じてエンジン回転数を上昇させることにより、素早く油圧アクチュエータの作動に必要な出力を得ることができる。即ち、操作部材の操作に対する応答性を向上させることができる。なお、上述した実施形態では作業操作部材の操作量に基づいてエンジン回転数を求めていたが、走行操作部材の操作量に基づいてエンジン回転数を求めてもよい。即ち、制御線
Lを走行操作部材に適用してもよいし、走行状態に適用してもよい。
【0064】
図8は、第2実施形態における第2の制御フローチャートを示している。
図8において、S1〜S4
は、図7と同様である。
図8に示すように、回転制御部55Bにおけるエンジン回転数の出力後(S4後)、油圧制御部53に対応する必要流量(想定流量)Q4を演算すると共に、
回転制御部55Bに対応する必要流量(想定流量)Q3を演算する(S6)。油圧制御部53は、例えば、作業操作部材及び走行操作部材の操作量に基づいて制御弁V1〜V10のそれぞれの開度を演算し、制御弁V1〜V10のそれぞれの開度とCv値との関係に基づいて各制御弁
V1〜V10の流量を求め、各制御弁V1〜V10の流量を総合計することにより必要流量Q4を求めたり、制御弁V1〜V10の前後差圧ΔP等に基づいて各制御弁V1〜V10の流量を求め、各制御弁V1〜V10の流量を総合計することにより必要流量Q4を求めてもよいし、その他の方法によって、必要流量Q4を求めてもよい。
【0065】
次に、油圧制御部53によって演算した必要流量Q4と、
回転制御部55Bによって演算した必要流量Q3とを比較する(S7)。必要流量Q3が必要流量Q4以下である場合(S7、Yes)、油圧制御部53は、作動油の流量が
回転制御部55Bにより設定されたエンジン回転数により得られないとして、エンジン回転数を上昇させる(S8)。例えば、油圧制御部53は、必要流量Q4を式(2)、式(3)等を用いてエンジン回転数に換算した値以上になるまで、エンジン回転数を上昇させる。
【0066】
なお、
図8では、必要流量Q4と必要流量Q3とを比較しているが、これに代え、油圧制御部53が必要流量Q4をエンジン回転数に換算し、
回転制御部55Bが必要流量Q3をエンジン回転数に換算して、それぞれ換算したエンジン回転数を比較してもよい。
以上によれば、
回転制御部55Bによってエンジン回転数を上昇させた後、当該エンジン回転数によって十分な出力が得られない場合だけ、油圧制御部53の制御に移行することができる。なお、第2実施形態においても第1実施形態に示した回転
数制御部55A等
を適用して、標準制御モードだけでなく統合制御モードを行えるようにしてもよいし、表示装置70によって油圧アクチュエータ毎、作業毎にエンジン回転数を設定してもよい。即ち、第2実施形態と第1実施形態とを任意に組み合わせた作業機の油圧システムを構築してもよい。
【0067】
制御装置51は、油圧制御部53、記憶部60及び閾値設定部84を備えている。油圧制御部53は、速度演算部81と、制御部82と、を有している。速度演算部81、制御部82は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。速度演算部81は、操作部材が操作された場合にポテンションメータ(検出装置)により検出された揺動量(操作量)に基づいて、当該操作部材の操作速度を演算する。言い換えれば、速度演算部81は、操作部材の操作速度を検出する速度検出部である。
【0068】
制御部82は、操作速度が閾値SL未満である場合には制御弁V1〜V10に対して操作部材の操作量に対応する第1制御値で制御を行い、閾値SL以上である場合には第1制御値よりも制御弁V1〜V10の開度が大きくなる第2制御値による制御を行う。即ち、本実施形態では、記憶部60に、各油圧アクチュエータに対応する操作部材について、操作部材の操作量と、当該油圧アクチュエータに対応する制御弁V1〜V10に供給する電流値を示す第1制御値及び第2制御値とを予め対応付けて記憶させている。
【0069】
図11Aは、記憶部60に記憶されている操作部材の操作量と、第1制御値W1及び第2制御値W2との関係の一例を示した図である。
図11Aに示すように、第1制御値W1及び第2制御値W2は、操作部材の操作量が大きくなるにしたがって大きな値になる。第2制御値W2は、同一の操作量において第1制御値W1よりも大きく、第2制御値W2>第1制御値W1である。なお、油圧制御部53は、電磁弁のソレノイドの励磁によって開度を変化させるため、第1制御値及び第2制御値は電流値である。なお、第1制御値及び第2制御値は電圧値であってもよい。
【0070】
図10は、制御弁V1〜V10の第1の制御フローチャートを示し、
図11Bは、操作部材の操作開始からの時間と操作量との関係に閾値SLとの関係を示している。
図10に示すように、操作部材が操作されると、速度演算部81は当該操作部材から制御装置51へ入力された操作信号(操作量)に基づいて、操作速度(所定時間当たりの操作量の変化)を演算する(S10)。具体的には、本実施形態では、操作部材の操作位置(あるいは操作角度)を所定時間毎(例えば、0.5msec毎)にサンプリングしており、所定時間のサンプリング結果に基づいて操作速度を演算する。なお、操作速度の検出方法は特に限定されるものではなく、他の方法を用いてもよい。
【0071】
制御部82は、操作速度が予め定められた閾値SL以上であるか否かを判断し(S11)、操作速度が閾値SL以上である場合(S11、Yes)は、操作部材の操作量に対応する第1制御値に応じた第1電流よりも開度が大きくなる第2制御値に応じた第2電流(≒ワンショット電流)を制御弁V1〜V10の電磁弁に出力する(S12)。
図11Bに示すように、閾値SLは、オペレータが操作部材を急峻に操作したか否かを判断するための値であって、例えば、数十msに設定される。第1制御値は、操作部材の操作量に対応して設定される電流値(第1電流値)を示す値であって、当該操作部材の操作量と制御弁V1〜V10の開度との関係によって設定される値である。第2制御値は、第1電流値よりも制御弁V1〜V10の開度が大きくなる第2電流値を示す値であって、制御弁V1〜V10(電磁弁)を素早く操作するために設定される値である。
【0072】
制御部82は、第2電流を出力した経過時間が所定以上であるか否かを判断し(S13)、経過時間が所定以上であれば(S13、Yes)、第2電流の出力を停止して(S14)、続けて第1電流を出力する(S15)。第2電流を出力する時間(経過時間)は、例えば、数ms〜20msである。なお、経過時間は上述した数値に限定されない。
一方、制御部82は、操作速度が予め定められた閾値SL未満である場合(S11、No)は、第2電流ではなく第1電流を出力する(S15)。
【0073】
以上によれば、オペレータが操作部材を閾値SL以上の操作速度で急峻に操作した場合だけ、当該操作部材の急峻な操作速度に応じて油圧アクチュエータを素早く動かすことができ、オペレータが操作部材を閾値SL未満の操作速度でゆっくりと操作した場合には当該操作部材の操作速度に応じてゆっくりと油圧アクチュエータを操作することができる。例えば、バケット17で掬った土を下方に落下させる場合等は、当該バケット17の素早い動きが必要である。このような場合には、バケット17を操作する操作部材を急峻に操作することによってバケット17を素早くダンプすることができる。
【0074】
また、操作部材の操作速度が遅い場合には、油圧アクチュエータはゆっくりと動作することから、急峻な動きと、ゆっくりとした動きとを両立させることができ、作業機1の全体では騒音低減や燃費の低減を図ることができる。
なお、上記の閾値SLは、オペレータ或いは作業機1の管理者が、上述した第1設定部56や表示装置70を用いて任意に設定できるようにしてもよい。また、制御装置51が予め設定した条件(例えば、作動油の油温或いは気温など)に応じて閾値SLを変更するようにしてもよい。
【0075】
図9に示すように、制御装置51には作動油の温度を検出する測定装置83が接続されている。また、制御装置51は、閾値SLを油温に応じて設定する閾値設定部84を有している。閾値設定部84は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。
図12は、制御弁V1〜V10の第2の制御フローチャートを示している。
図12に示すように、S10〜S15は、
図10と同様である。
図12に示すように、制御装置51が測定装置83によって測定された油温を取得すると(S16)、閾値設定部84は、油温に基づいて閾値SLを設定させる(S17)。例えば、閾値設定部84は、油温が−10℃未満の低温であり作動油の粘性が高い場合、
図11Bに示すように閾値SLを短くする(閾値SLを示す直線の傾きを小さくする)。また、閾値設定部84は、油温が−10℃以上であって作動油の粘性が低い場合、
図11Bに示すように閾値SLを高くする(閾値SLを示す直線の傾きを大きくする)。なお、油温と閾値との関係は一例であって、数値は限定されない。また、閾値設定部84は油温の高低によって閾値SLを2段階に設定しているが、油温の値に応じて閾値SLを2段階よりも大きな多段階に設定してもよい。閾値設定部84によって閾値SLを設定した後は、S10〜S15に進む。
【0076】
なお、制御部82は、操作部材の操作パターン(例えば複数の油圧アクチュエータを同時に操作する複合操作であるか否か)に基づいて第2電流値にて制御するか否かの判断を行ってもよい。
図13は、制御弁V1〜V10の第3の制御フローチャートを示している。
図13に示すように、S10〜S15は、
図10と同様である。
図13に示すように、制御部82は、複数の油圧アクチュエータが複合操作されたか否かの判断を行う(S18:複合操作判定)。複合操作判定では、制御部82は、例えば、操作部材19Lと操作部材19Rとが同時に複合操作されたか否かを判断する。ここで、複合操作とは、2つの操作部材が中立位置である状態から略同時に揺動した場合(揺動量が略同時に制御装置51に入力された場合)、又は、2つの操作部材のうち一方の操作部材が中立位置で操作されておらず且つ他方の操作部材が操作されている状況下で一方の操作部材が中立位置から操作された場合等である。
【0077】
制御部82は、複数の油圧アクチュエータが複合操作された場合(S18、Yes)、S15に進み、第2制御値による制御を行わず第1制御値による操作を行う。また、制御部82は、複数の油圧アクチュエータが複合操作されていない場合(S18、No)、即ち、1つの油圧アクチュエータのみが操作された場合にはS10に進む。1つの油圧アクチュエータの操作時における操作部材の操作量が閾値SLを超える場合(S11、Yes)、S12に示すように、制御部82は、第2制御値による制御を行う。
【0078】
つまり、制御装置51は、操作部材の操作パターンが所定パターンである場合(S18、No)には、操作部材の操作速度が閾値未満であるか否かに応じて制御弁V1〜V10を第1制御値で制御するか第2制御値で制御するかを判断する(S11)、一方、操作部材の操作パターンが所定パターンと異なる場合(S18、Yes)には、操作部材の操作速度が閾値未満であるか否かに関わらず制御弁V1〜V10を第1制御値で制御する。なお、上述した実施形態では、操作パターンが所定パターンとして複合操作を例にとり説明したが、操作パターンは複合操作に限定されない。
【0079】
制御部82は、1つの油圧アクチュエータのみが操作された場合にはS10に進むようにしていたが、これに代えて、S12に進むようにしてもよい。即ち、制御部82は、複数の油圧アクチュエータが複合操作されていない場合(S18、No)、操作部材の操作速度に関係なく、第2制御値による制御を行ってもよい。
なお、第2制御値による制御を行う油圧アクチュエータを制御装置51に設定しておき、設定した油圧アクチュエータが操作された場合であって操作速度が閾値SL以上である場合に第2制御値による制御を行い、設定していない油圧アクチュエータについては操作速度が閾値SL以上であっても第2制御値を用いずに第1制御値による制御を行うようにしてもよい。
【0080】
図14Aは、油圧アタッチメントに対する油圧アクチュエータの設定を示す設定画面
M8を示している。設定画面
M8は、複数の油圧アタッチメントが表示され、複数の油圧アタッチメントに対応してON/OFFが表示されている。操作具72(第1スイッチ72aと、第2スイッチ72bと、第3スイッチ73c)の操作によって、各油圧アタッチメントのON/OFFが設定できる。設定画面
M8で設定された各油圧アタッチメントとON/OFF(第2制御値を用いるか否か)との関係は記憶部60に記憶される。
【0081】
図14Bは、油圧アクチュエータの設定を示す設定画面M5を示している。設定画面M5は、複数の油圧アクチュエータが表示され、複数の油圧アクチュエータに対応してON/OFFが表示されている。操作具72(第1スイッチ72aと、第2スイッチ72bと、第3スイッチ73c)の操作によって、各油圧アクチュエータのON/OFFが設定できる。設定画面M5で設定された各油圧アクチュエータとON/OFFとの関係は記憶部60に記憶される。設定画面
M8、M5の「ON」は、第2制御値による制御を行うことを示し、設定画面
M8、M5の「OFF」は、第2制御値による制御を行わないことを示している。
【0082】
図15は、制御弁V1〜V10の第4の制御フローチャートを示している。
図15に示すように、S10〜S15は、
図10と同様である。
図15に示すように、制御部
84は、操作部材が操作されると記憶部60を参照し(S21)、操作された操作部材に対応する油圧アクチュエータが第2制御値による制御対象になっているか否かを判断する(S21)。油圧アクチュエータが制御対象になっている場合(S21、Yes)、制御部84はS10に進み、その後、操作部材の操作速度が閾値SL以上である場合(S11、Yes)、S12に示すように、制御部
84は、第2制御値による制御を行う。一方、油圧アクチュエータが制御対象になっていない場合(S21、No)、制御部84はS15に進み、第1制御値による制御を行う。
【0083】
つまり、
図15に示すように、制御装置51は、所定の油圧アクチュエータに対応する操作部材が操作された場合(S21、Yes)には、操作部材の操作速度が閾値未満であるか否かに応じて制御弁V1〜V10を第1制御値で制御するか第2制御値で制御するかを判断する一方、所定の油圧アクチュエータに対応する操作部材とは異なる操作部材が操作された場合(S21、No)には、操作部材の操作速度が閾値未満であるか否かに関わらず制御弁V1〜V10を第1制御値で制御する。
【0084】
なお、第3実施形態においても回転
数制御部55A、回転制御部55B等を適用して、標準制御モードだけでなく統合制御モードを行えるようにしてもよいし、表示装置70によって油圧アクチュエータ毎、作業毎にエンジン回転数を設定してもよい。即ち、第3実施形態、第2実施形態、第1実施形態を任意に組み合わせた作業機1の油圧システムを構築してもよい。
【0085】
図16に示すように、制御装置51は、第1旋回制御部85と、第2旋回制御部86とを有している。第1旋回制御部85及び第2旋回制御部86は、制御装置51に設けられた電子電気回路、プログラム等から構成されている。
第1旋回制御部85は、作業操作部材19Lの操作量に対応する目標旋回速度を設定して旋回装置を制御する。第2旋回制御部86は、目標旋回速度よりも高い高速旋回速度を設定して旋回装置を制御する。
【0086】
図17は、作業操作部材19Lの操作量と旋回速度との関係を示したものである。
図17に示すように、第1旋回制御部85は操作量が大きくなるにしたがって目標旋回速度を示す旋回制御線N1を大きな値に設定する。第2旋回制御部86は操作量が大きくなるにしたがって高速旋回速度を示す旋回制御線N2を大きな値に設定する。旋回制御線N2で示される旋回速度は、旋回制御線N1で示される旋回速度よりも高く、同じ操作量である場合には、高速旋回速度(旋回制御線N2)>目標旋回速度(旋回制御線N1)である。
図17に示す作業操作部材19Lの操作量と旋回速度(目標旋回速度及び高速旋回速度)の関係は記憶部60に記憶されている。
【0087】
図18は、旋回装置の第1の制御フローチャートを示している。
制御装置51は、作業操作部材19Lが操作されたか否かを判断する(S30)。作業操作部材19Lが操作されると(S30、Yes)、第2旋回制御部86は、記憶部60を参照して、作業操作部材19Lの操作量と旋回制御線N2とに基づいて、高速旋回速度を算出する(S31)。第2旋回制御部86は、高速旋回速度に対応する油圧ポンプの高速出力、即ち、斜板角(高速斜板角)を設定する(S32)。第2旋回制御部86は、高速斜板角を示す制御信号を油圧ポンプに出力する(S33:高速出力)。制御装置51(第1旋回制御部85)は、第2旋回制御部86による制御を開始してから、即ち、S33による高速出力を行ってから所定時間経過したか否かを判断し(S34)、所定時間経過している場合(S34、Yes)は、目標旋回速度に基づいて旋回装置の制御を開始する(S35)。第1旋回制御部85は、記憶部60を参照して作業操作部材19Lの操作量と旋回制御線N1とに基づいて、目標旋回速度を算出する(S36)。
【0088】
第1旋回制御部85は、目標旋回速度に対応する油圧ポンプの目標出力、即ち、斜板角(目標斜板角)を設定する(S37)。第1旋回制御部85は、目標斜板角を示す制御信号を油圧ポンプに出力する(S38:目標斜板角)。即ち、第1旋回制御部85は、第2旋回制御部86による旋回装置の制御後に、目標旋回速度に基づいて旋回装置の制御を行うことで、旋回速度を目標旋回速度に収束させる。
【0089】
第1旋回制御部85において旋回速度を目標旋回速度に収束する制御は、旋回装置、即ち、旋回台2の実際の旋回速度(実旋回速度)に基づいて行うことが好ましい。例えば、制御装置51に旋回装置(旋回台2)の実旋回速度を測定する測定装置87を接続する。第1旋回制御部85は、測定装置87で測定された実旋回速度と目標旋回速度との差(速度差)を求め、速度差が零となるように目標斜板角を補正することにより、実旋回速度を目標旋回速度に一致させる。
【0090】
以上によれば、制御装置51は、第1旋回制御部85及び第2旋回制御部86を有している。また、第1旋回制御部85は、第2旋回制御部86による旋回装置の制御後に、目標旋回速度に基づいて旋回装置の制御を行っている。そのため、作業操作部材19Lを操作すれば、第1旋回制御部85及び第2旋回制御部86によって旋回台2の旋回速度を素早く目標の旋回速度に到達させることができる。また、測定装置87によって測定した実旋回速度と目標旋回速度とに基づいて高速旋回速度から目標旋回速度に収束させているため、旋回速度の収束を安定的に行うことができる。また、油圧ポンプが可変容量ポンプの場合、応答性が遅いため、旋回台2の初動段階で旋回台2の旋回速度が遅くなることがある。しかしながら、第2旋回制御部86が旋回台2の初動段階での旋回制御を高速旋回速度で行っているため、初動段階における旋回速度の低下を抑制して旋回台2の旋回動作を素早く行わせることができる。
【0091】
なお、作業操作部材の操作速度に基づいて、旋回装置の制御を行ってもよい。
図16に示すように、速度検出部81が設けられている。速度検出部81は上述した実施形態と同じである。
図19は、旋回装置の第2の制御フローチャートを示している。
図19において、S30、S31〜S38は、
図18と同様である。
図19に示すように、作業操作部材19Lが操作されると(S30、Yes)、速度検出部81は、作業操作部材19Lの操作速度を検出する(S40)。制御装置51は、作業操作部材19Lの操作速度が閾値以上であるか否かを判断する(S41)。制御装置51は、操作速度が閾値以上である場合(S41、Yes)、処理をS31に移行させ、第2旋回制御部86による高速旋回速度を用いた制御を実行する(S31〜S34)。一方、制御装置51は、操作速度が閾値未満である場合(S41、No)、処理をS35に移行させ、第1旋回制御部85による目標旋回速度を用いた制御を実行する(S35〜S38)。
【0092】
以上によれば、作業操作部材の操作が急峻である場合に、旋回台2の旋回速度を素早く目標旋回速度に到達させることができる。
以上、今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。