(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遠心送風機の子午断面で見た場合、前記分離筒の先端部が分岐して第1壁部及び第2壁部が形成されており、前記第1壁部の基端と前記第2壁部の基端が連結されており、前記第1壁部の先端と前記第2壁部の先端が分離されていて前記第2壁部の先端の軸方向位置が前記第1壁部の先端の軸方向位置よりも前記吸込口から遠い位置にあり、前記第1壁部が前記第1ガイド部を構成し、前記第2壁部が前記第2ガイド部を構成する、請求項1記載の遠心送風機。
前記遠心送風機の子午断面で見た場合、前記第1ガイド部の前記第1転向面の先端の軸方向位置は、前記仕切壁の前記第1空気流路に面した表面の先端の軸方向位置よりも前記吸込口に近い位置にあり、前記第2ガイド部の前記第2転向面の先端の軸方向位置は、前記仕切壁の前記第2空気流路に面した表面の先端の軸方向位置と同じ位置か若しくはそれよりも前記吸込口から遠い位置にある、請求項2記載の遠心送風機。
前記遠心送風機の子午断面で見た場合、前記分離筒は、第1湾曲壁部と、前記第1湾曲壁部の先端に連なる基端を有する第2湾曲壁部を有し、前記第1湾曲壁部が前記第1ガイド部を構成し、前記第2湾曲壁部が前記第2ガイド部を構成している、請求項1記載の遠心送風機。
前記遠心送風機の子午断面で見た場合、前記第1ガイド部の前記第1転向面の先端の接線は、前記仕切壁の前記第1空気流路に面した表面と交差するか、或いは当該表面と交差せずに前記第1空気流路内を延び、前記第2ガイド部の前記第2転向面の先端の軸方向位置は、前記仕切壁の前記第2空気流路に面した表面の先端の軸方向位置と同じ位置か若しくはそれよりも前記吸込口から遠い位置にある、請求項6記載の遠心送風機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
図1及び
図2は、車両用の空調装置の空気取入部及び遠心送風機の近傍の構造を示す断面図である。
【0013】
遠心送風機1は、片吸込型の遠心送風機である。遠心送風機1は、羽根車2を有する。羽根車2は、その外周部分に、周方向に並んだ翼列3Aを形成する複数の翼3を有している。羽根車2は、モータ13により回転軸線Ax周りに回転駆動され、軸方向上側(軸方向一端側)から羽根車2の翼列の半径方向内側の空間に吸入した空気を、半径方向外側に向けて吹き出す。
【0014】
なお、本明細書において、説明の便宜上、回転軸線Axの方向を軸方向または上下方向と呼び、
図1及び
図2の上側及び下側をそれぞれ「軸方向上側」及び「軸方向下側」と呼ぶ。しかしながら、このことによって、空調装置が実際に車両に組み込まれた場合に回転軸線Axの方向が鉛直方向に一致するものと限定されるわけではない。また、本明細書においては、特別な注記が無い限り、回転軸線Ax上の任意の点を中心として回転軸線Axと直交する平面上に描かれた円の半径の方向を半径方向と呼び、当該円の円周方向を周方向または円周方向と呼ぶ。
【0015】
羽根車2は、当該羽根車2と一体成形された内側偏向部材9を含む。内側偏向部材9は、コーン部と呼ばれることもある。この内側偏向部材9は、幾何学的な意味における回転体であり、側周部10と、円板形の中央部11とを有している。中央部11において、モータ13の回転軸12が羽根車2に連結される。この例では、側周部10は、この側周部10の外周面の子午断面における輪郭線が、中央部11に近づくに従って急勾配となるように湾曲している。図示しない他の例では、側周部10は、この側周部10の外周面の子午断面における輪郭線が、中央部11から翼列3Aに向けて湾曲しない(断面が直線状である)場合もある。
【0016】
羽根車2は、スクロールハウジング17の概ね円柱形の内部空間に収容される。スクロールハウジング17は、軸方向上側に開口する吸込口22と、吐出口170とを有している。スクロールハウジング17を軸方向から見た場合、吐出口170はスクロールハウジング17の外周面の概ね接線方向に延びている。吐出口170は
図2では見えない。
【0017】
スクロールハウジング17は、当該スクロールハウジング17の外周壁17Aから半径方向内側に向けて延びる仕切壁20を有している。この仕切壁20は、スクロールハウジング17の内部空間のうちのスクロールハウジング17の内周面と羽根車2の外周面との間の領域を軸方向に(上下に)分割して、スクロールハウジング17の外周壁17Aに沿って周方向に延びる上側の第1空気流路18及び下側の第2空気流路19を形成する。
【0018】
スクロールハウジング17内には、吸込口22を介して、分離筒14が挿入されている。分離筒14は、軸方向上部を除き、幾何学的な意味における回転体である。
図1と
図2を比較対照することにより理解できるように、分離筒14の上部の断面は概ね矩形である。分離筒14の中央部15の断面は円形である。分離筒14の断面形状は、上部から中央部15に近づくに従って、矩形から円形に滑らかに推移する。分離筒14の下部16は、下端に近づくに従って拡径するフレア形状を有している。
【0019】
分離筒14は、吸込口22の半径方向内側の空間を通り、羽根車2の翼列3Aの半径方向内側の空間4まで軸方向に延びている。分離筒14の上端開口は、スクロールハウジング17の外側(吸込口22よりも軸方向上側)に位置している。分離筒14の下端は、羽根車2の翼列3Aの半径方向内側の空間4内に位置している。
【0020】
分離筒14の全体が樹脂射出成形により一体成形されていてもよい。これに代えて、分離筒14の上部と、分離筒14の中央部及び下部を別々に成形した後に、両者を連結してもよい。
【0021】
分離筒14は、スクロールハウジング17内に吸入される空気の流れを、分離筒14の外側の第1通路14Aを通る第1空気流と、分離筒14の内側の第2通路14Bを通る第2空気流とに分割する。第1空気流は、スクロールハウジング17の吸込口22のうちの分離筒14の外周面より外側のリング状領域を通り、羽根車2の翼列の上半部5(吸込口22に近い部分)に流入する。第2空気流は、分離筒14の上端から分離筒14の内側に入り、羽根車2の翼列の下半部6(吸込口22から遠い部分)に流入する。従って、スクロールハウジング17の吸込口22のうちの分離筒14の外周面より外側のリング状領域がスクロールハウジング17の第1吸込口、分離筒14の上端開口がスクロールハウジング17の第2吸込口、と見なすこともできる。
【0022】
空調装置の空気取入部は、ハウジング21を有している。このハウジング21は、スクロールハウジング17と区別するために、「空気取入ハウジング」と呼ぶこととする。スクロールハウジング17と空気取入ハウジング21とは、一体成形されていてもよいし、別々に作製された後にネジ止め、接着、嵌め込み等の手法により連結されてもよい。スクロールハウジング17及び空気取入ハウジング21は空調装置ケーシングの一部を成す。なお、好適な一実施形態においては、分離筒14は、スクロールハウジング17及び空気取入ハウジング21とは別体の部品であり、空気取入ハウジング21によって所定位置に支持される。
【0023】
空気取入ハウジング21は、第1開口25、第2開口26、第3開口27及び第4開口28を有している。第1開口25及び第3開口27を介して、空気取入ハウジング21の内部空間23に、車両に備えられた内気導入路の出口29(詳細は図示せず)から、内気(車室内空気)を導入することができる。また、第2開口26及び第4開口28を介して、空気取入ハウジング21の内部空間23に、車両に備えられた外気導入路の出口30(詳細は図示せず)から、外気(車両外部から取り入れた空気)を導入することができる。
【0024】
遮断弁31を回転軸31A周りに回転させることにより、第1開口25から空気取入ハウジング21内への空気(内気)の流入を許容または遮断することができる。遮断弁32を回転軸32A周りに回転させることにより、第2開口26から空気取入ハウジング21内への空気(外気)の流入を許容または遮断することができる。切換弁33を回転軸33A周りに回転させて位置を切り替えることにより、第3開口27及び第4開口28のうちのいずれか一方を介して空気取入ハウジング21内へ空気(内気または外気)を流入させることができる。
【0025】
第1開口25及び/又は第2開口26から空気取入ハウジング21内に導入された空気のほぼ全てが第2通路14Bを通るように、かつ、第3開口27及び/又は第4開口28から空気取入ハウジング21に導入された空気のほぼ全てが第1通路14Aを通るように、空気取入ハウジング21及び分離筒14が形成されている。
【0026】
第1開口25、第2開口26、第3開口27及び第4開口28が配置される領域と分離筒14の上端との間において、空気取入ハウジング21内には、空気中のダスト、パーティクル等の汚染物質を除去するためのフィルタ35が設けられている。フィルタ35は、好ましくは単一のフィルタエレメントからなる。
【0027】
次に、
図1及び
図2に示す車両用空調装置の動作について説明する。
【0028】
車両用空調装置の第1の動作モードでは、第2開口26及び第4開口28が開かれ、第1開口25及び第3開口27が閉じられる。この状態は図示されていない。この場合、第2開口26から導入された外気は、分離筒14の外側の第1通路14Aを通り、羽根車2の翼列3Aの上半部5に流入する第1空気流を形成する。また、第4開口28から導入された外気は、分離筒14の内側の第2通路14Bを通り、羽根車2の翼列の下半部6に流入する第2空気流を形成する。第1の動作モードは、外気モードと呼ばれることもある
【0029】
第2の動作モードでは、第2開口26及び第3開口27が開かれ、第1開口25及び第4開口28が閉じられる。この状態は
図1及び
図2に示されている。この場合、第2開口26から導入された外気FEは、分離筒14の外側の第1通路14Aを通り、羽根車2の翼列3Aの上半部5に流入する第1空気流を形成する。また、第3開口27から導入された内気FRは、分離筒14の内側の第2通路14Bを通り、羽根車2の翼列3Aの下半部6に流入する第2空気流を形成する。第2の動作モードは、内外気2層流モードと呼ばれることもある
【0030】
第3の動作モードでは、第1開口25及び第3開口27が開かれ、第2開口26及び第4開口28が閉じられる。この状態は図示されていない。この場合、第1開口25から導入された内気は、分離筒14の外側の第1通路14Aを通り、羽根車2の翼列3Aの上半部5に流入する第1空気流を形成する。また、第3開口27から導入された内気は、分離筒14の内側の第2通路14Bを通り、羽根車2の翼列3Aの下半部6に流入する第2空気流を形成する。第3の動作モードは、内気モードと呼ばれることもある
【0031】
第2の動作モード(内外気2層流モード)は、特に冬季または比較的気温が低い時期に、車室内が冷えている状態からフロントウインドウの曇りを防止しつつ速やかに車室内を暖める暖房運転を行う際に用いられる。この暖房運転が自動制御により行われるときには、暖房開始後しばらくの間は、外気FEが車室のデフロスタ吹出口(図示せず)からフロントウインドウ(図示せず)に吹き付けられ、内気FRが車室のフット吹出口(図示せず)から乗客の足元に向けて吹き出される。
【0032】
第2の動作モード(内外気2層流モード)が実行されるときには、羽根車2の翼列3Aの上半部5に流入する外気FEが第1空気流路18を介してデフロスタ吹出口に供給され、羽根車2の翼列3Aの下半部6に流入する内気FRが第2空気流路19を介してフット吹出口に供給される。このとき、高湿度の内気FRがデフロスタ吹出口に供給される外気FEに混入すると、フロントウインドウの曇りという安全上問題となる事象が生じうる。また、低温の外気FEがフット吹出口に供給される内気FRに混入すると、乗客に不快感を与える要因となり得る。従って、第2の動作モードが実行されるときには、外気FEの全てが第1空気流路18に流入し、かつ、内気FRの全てが第2空気流路19に流入することが望ましい。
【0033】
なお、第1及び第3の動作モードの実行時には、内気のみまたは外気のみが用いられるため、第2の動作モードの実行時ほどには、内気と外気の混合回避に関する厳しい要求は無い。
【0034】
以下に、内気と外気の混合を効率良く防止することができる分離筒14を備えた遠心送風機1の第1〜第4実施形態について、遠心送風機1の子午断面である
図3〜
図6を参照して説明する。
図3〜
図6には
図1中で参照符号「III〜VI」で囲まれた一点鎖線で囲んだ領域の改善された構成が拡大して示されている。
【0035】
図3〜
図6に示すように、第1〜第4実施形態に係る遠心送風機1の分離筒14は、下記の共通する特徴を有している。分離筒14は、羽根車2の翼列3Aの半径方向内側の空間4内に位置する第1ガイド部110及び第2ガイド部120を有している。第1ガイド部110は第1通路14Aを通る第1空気流を半径方向外向きに転向する第1転向面112を有し、第2ガイド部120は第2通路14Bを通る第2空気流を半径方向外向きに転向する第2転向面122を有している。なお、第2通路14Bを通る第2空気流の転向には、内側偏向部材9(コーン部)の側周部10の外周面が大きく寄与しているが、第2転向面122も第2空気流の転向に寄与している。
【0036】
第1ガイド部110と第2ガイド部120とは分離筒14の互いに異なる部分により構成されている。分離筒14の同一の壁部の表面及び裏面が第1転向面112及び第2転向面122を構成する場合は、第1ガイド部110と第2ガイド部120とは分離筒14の「互いに異なる部分により構成されている」という特徴には該当しないものと見なすこととする。つまり、第1ガイド部110が表面及び裏面(いずれか一方、図示例では表面が第1転向面112となる)を有する分離筒14の第1の壁部であり、かつ、第2ガイド部120が表面及び裏面(いずれか一方、図示例では裏面が第2転向面122となる)を有する第1壁部とは異なる分離筒14の第2壁部である場合に、上記特徴に該当する。
【0037】
上述したように第1ガイド部110と第2ガイド部120とが分離筒14の互いに異なる部分により構成されていることにより、第1転向面112及び第2転向面122の形状及び配置の最適化を容易に実現することができる。これに対して、第1転向面112及び第2転向面122が分離筒14の同じ壁部の表面及び裏面により形成されていたとするならば、第1転向面112及び第2転向面122の形状及び配置の最適化は困難である。
【0038】
最初に、
図3を参照して分離筒14の第1実施形態について説明する。
図3に示すように、遠心送風機1の子午断面で見た場合、分離筒14の先端部が二股に分岐して第1壁部141及び第2壁部142が形成されている。第1壁部141の基端と第2壁部142の基端が連結されており、第1壁部141の先端と第2壁部142の先端が分離されている。
【0039】
第1壁部141の先端の軸方向位置が第2壁部142の先端の軸方向位置よりも上側(吸込口22から近い位置)にある。第1壁部141が上述した第1ガイド部110を構成しており、第1壁部141のうちの第1通路14Aに面した表面が第1転向面112となる。また、第2壁部142が上述した第2ガイド部120を構成しており、第2壁部142のうちの第2通路14Bに面した表面が第2転向面122となる。
【0040】
第1ガイド部110(第1壁部141)の第1転向面112の先端114の軸方向の位置は、仕切壁20の第1空気流路18に面した表面の先端201の軸方向の位置よりも吸込口22に近い位置(より軸方向上側の位置)にある。これにより、第1通路14A内を流れる空気が第1転向面112に転向されて第1転向面112から離れた後に第2空気流路19内に侵入することを防止若しくは最小限に抑制することができる。仮に、第1転向面112の先端114の軸方向の位置が、仕切壁20の第1空気流路18に面した表面の先端201の軸方向と同じ位置にあると、第1通路14A内を流れる空気が第1転向面112に転向されるとしても、その一部が転向しきれずに、第2空気流路19内に侵入するおそれがある。
【0041】
第2ガイド部120(第2壁部142)の第2転向面122の先端124の軸方向の位置は、仕切壁20の第2空気流路19に面した表面の先端202の軸方向の位置と同じ位置か若しくはそれよりも吸込口22から遠い位置にある(
図3では同じ軸方向位置にある)。これにより、第2通路14B内を流れる空気が第2転向面122に転向されて第2転向面122から離れた後に第1空気流路18内に侵入することを防止若しくは最小限に抑制することができる。仮に、第2転向面122の先端124の軸方向の位置が、仕切壁20の第2空気流路19に面した表面の先端202の軸方の位置よりも吸込口22に近い位置(より軸方向上側の位置)にあると、第2転向面122によって転向される第2通路14B内を流れる空気の一部が、第1空気流路18内に侵入するおそれがある。
【0042】
なお、先端114の軸方向の位置を先端201の軸方向の位置よりも吸込口22に近い位置とする一方で、先端124の軸方向の位置を先端202の軸方向の位置と同じ位置でも構わないとした理由は、第1転向面112により半径方向外向きに転向される第1空気流及び第2転向面122により半径方向外向きに転向される第2空気流に、軸方向下向き(吸込口22から遠ざかる方向)の慣性が作用するからである。つまり、この慣性により、先端124及び先端202の軸方向の位置が同じであったとしても第2空気流が第1空気流路18内に侵入する可能性は殆ど無いが、先端114及び先端201の軸方向の位置が同じであったとしたら、第1空気流が第2空気流路19内に侵入する可能性がある。
【0043】
図4には第2実施形態が示されている。この第2実施形態においては、先端124の軸方向位置が先端202の軸方向位置よりも吸込口22から遠い位置にある。この場合、第2通路14B内を流れる空気が第2転向面122に転向されて第2転向面122から離れた後に第1空気流路18内に侵入することをより確実に防止することができる。但しこの場合、第2空気流路19の出口の開口面積が小さくなるので、空気の供給量がやや小さくなる。
【0044】
第1及び第2実施形態において、分離筒14は、好ましくは樹脂射出成形により一体成形される。第1ガイド部110(第1壁部141)と第2ガイド部120(第2壁部142)との間にある隙間は、引き抜き中子を用いて形成されるので、当該引き抜き中子を抜くことができるように、第1ガイド部110の第1転向面112の裏側の面と第2ガイド部120の第2転向面122の裏側の面の角度が定められる。これらの裏側の面の形状は空気流案内性能に殆ど影響を及ぼさないため、中子抜きの容易さのみを考慮して、引き抜き中子を設計することができる。
【0045】
図3及び
図4に示す実施形態では、第1ガイド部110と第2ガイド部120との間の空間には何も存在しないように表記されている。しかしながら、第1ガイド部110と第2ガイド部120との間の空間内を軸方向に延びる複数のリブを設けて、これら複数のリブにより第1ガイド部110と第2ガイド部120とを連結してもよい。複数のリブは例えば分離筒14の周方向に等間隔で設けることができる。リブを設けることによる空気流案内性能への影響は殆ど無い。また、リブを設けることにより製造品質を向上させることができる。
【0046】
なお、第1ガイド部110と第2ガイド部120との間の軸方向隙間を完全に埋めた形態も考えられる。これによる空気流案内性能への影響は殆ど無い。但し、この場合、当該壁部分は肉厚となるため樹脂射出成形時に引けが生じやすく、分離筒14の製造が困難になるため好ましくない。例えば、引けが生じて、樹脂射出成型した後に意図しない変形が発生するおそれがある。また、製品の軽量化も困難となる。なお、この場合、第1転向面112及び第2転向面122が分離筒14の同じ壁部分の表面及び裏面により形成されることになり、前述した「第1ガイド部110と第2ガイド部120とは分離筒14の互いに異なる部分により構成されている」という特徴に該当しなくなる。
【0047】
図5に示す第3実施形態では、上述した第1及び第2実施形態と異なり、第1ガイド部110と第2ガイド部120とが別々に作製された後に接合されている。接合は、溶着、接着等により行うことができる。つまりこの場合、第1ガイド部110(第1壁部141)の基端と第2ガイド部120(第2壁部142)の基端との間に、接着部または溶着部からなる継手145が存在することになる。なお、第1及び第2実施形態においては、第1ガイド部110と第2ガイド部120は一体成形されているため、両者の基端の間に接着部または溶着部からなる継手は存在しない。
【0048】
次に、
図6を参照して第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る分離筒14は、羽根車2の翼列3Aの半径方向内側に位置する第1湾曲壁部141A及び第2湾曲壁部142Aを有している。第2湾曲壁部142Aの基端は第1湾曲壁部141Aの先端に連なっている。遠心送風機1の子午断面で見て、第1湾曲壁部141A及び第2湾曲壁部142Aは全体としてW字形に蛇行している。第1湾曲壁部141Aが第1ガイド部110を構成し、第2湾曲壁部142Aが第2ガイド部120を構成する。
【0049】
遠心送風機1の子午断面で見て、第1湾曲壁部141Aにより構成される第1ガイド部110の第1転向面112の先端の接線TLは、仕切壁20の第1空気流路18に面した表面203(仕切壁20の表面)と交差している。接線TLは、表面203と交差せずに第1空気流路18内を延びていてもよい。
【0050】
「第1転向面112の先端の接線TL」の定義について説明する。遠心送風機1の子午断面で見ると、第1転向面112の接線の軸方向(回転軸線Axの方向)に対する傾斜角θは、図中の回転軸線Ax方向下側(吸込口22から遠い側)にゆくに従って徐々に大きくなり、最大値をとった後、徐々に小さくなる。「第1転向面112の先端の接線TL」とは、傾斜角θが最大値をとるときの第1転向面112の接線と定義される。
【0051】
また、遠心送風機1の子午断面で見て、第2ガイド部120の第2転向面122の先端124の軸方向位置は、仕切壁20の第2空気流路19に面した表面の先端202の軸方向位置と同じ位置か若しくはそれよりも吸込口22から遠い位置にある。この点については、第1〜第3実施形態における第2ガイド部120と同じである。
【0052】
この第4実施形態においても、第1通路14A内を流れる空気が第2空気流路19内に侵入することを防止若しくは最小限に抑制することができ、かつ、第2通路14B内を流れる空気が第1空気流路18内に侵入することを防止若しくは最小限に抑制することができる。
【0053】
なお、
図6に示したように、遠心送風機1の子午断面で見たときに、第1ガイド部110の第1転向面112の輪郭線の先端部が第2ガイド部120の第2転向面122の輪郭線の基端部に滑らかに接続されていると(つまり、傾斜角θが第1転向面112の先端の前後において当該先端に近づくに従って徐々に大きくなる場合)、第1ガイド部110の第1転向面112の表面付近を流れる空気が、第1転向面112から剥離しないで第2ガイド部120の第2転向面122の裏側の面に沿って流れてしまうことがある。このような事象を防止するために、第1ガイド部110の先端部に
図7に示すような整流突起113を設けてもよい。このような整流突起113を設けることにより、第1ガイド部110第1転向面112の表面付近を流れる空気は、接線TLの方向に流れ易くなる。
【0054】
なお、
図3〜
図6に示す実施形態においては、遠心送風機1の子午断面で見たときに、第1ガイド部110の及び第2ガイド部120の先端部の表面及び裏面の輪郭線が互いに平行に延び、かつ、第1ガイド部110及び第2ガイド部120の先端の周面が軸方向に平行な面となっているが、本発明はこれには限定されない。例えば、第1ガイド部110及び/または第2ガイド部120の先端114、124の周囲に面取りが施されていてもよい。また例えば、第1ガイド部110及び/または第2ガイド部120の先端114、124付近が翼型の後縁部のような形状(先細形状)となっていてもよい。また、第1ガイド部110及び/または第2ガイド部120の先端114、124を軸線方向から見た輪郭は真円以外の形状であってもよい。また、第1転向面112の先端部分の傾斜角(水平面すなわち軸線方向に直交する平面に対する傾斜角を意味する)よりも、第2転向面の先端部分の傾斜角を大きくしてもよい。これにより、より確実に、第1空気流路18に第2通路14Bを流れる空気の一部が侵入すること、並びに第2空気流路19に第1通路14Aを流れる空気の一部が侵入することを、防止または最小限に抑制することができる。
【0055】
次に、
図8〜
図11を参照して第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る分離筒14においては、第1ガイド部110が軸線方向に間隔を空けて設けられた複数(ここでは3つ)の第1壁部1411,1412,1413を有している。第2ガイド部120は、他の実施形態と同様に1つの第2壁部142を有している。第1ガイド部110を複数(3つ)の第1壁部1411,1412,1413により構成することにより、第1ガイド部110の第1転向面112としての役割を持つ第1壁部1411(吸込口22に最も近い第1壁部)の表面の先端114と、仕切壁20の先端201との間の軸線方向距離を大きくすることができる。これにより第1通路14A内を流れる空気が第2空気流路19内に侵入することを一層確実に防止または抑制することができる。
【0056】
第1ガイド部110を単一の厚い壁部から構成した場合にも、仕切壁20の先端201との間の軸線方向距離を大きくすることができ、第5実施形態と同様の流れ案内機能を果たすことができる。しかしながら、分離筒14は樹脂射出成形技術により製造されため、厚い壁部に引け(成形不良)が生じやすくなり、また引けに伴う変形が生じ易くなるという問題がある。さらに、第1ガイド部110を単一の厚い壁部から構成すると、分離筒14の自由端(図中下端)の近傍にある第1ガイド部110の重量が増大し、製品の軽量化に反する。
【0057】
この第5実施形態においては、第1ガイド部110の厚さすなわち軸線方向長さが大きくなるため、第1通路14Aと、スクロールハウジング20の第1空気流路18との間の空気通路が狭くなる。このため、第1空気流路18に流入する空気の流量が小さくなるおそれがある。この問題を緩和するため、この第5実施形態では、スクロールハウジング20の舌部17tの近傍の領域では、第1壁部1411,1412を除去している。
【0058】
図9に示すように、スクロールハウジング20の舌部17tの中心17pと回転軸線Axとを結ぶ直線17sの位置を基準角度位置(0度)として、羽根車2の回転方向(
図9及び
図10では時計回り方向)に測定した角度を巻き角と呼ぶ。
【0059】
この第5実施形態では、
図10及び
図11に示すように、巻き角がゼロ度から所定の角度(例えば45度)までの角度範囲(
図10のφの範囲)では、第1ガイド部110は第1壁部1411,1412を有しておらず、第1壁部1413のみを有している。舌部17tの近傍であってかつ巻き角が正の範囲では、スクロールハウジング20に流入する空気の流量が小さいため、第1壁部1411,1412を設けると、スクロールハウジング20の第1空気流路18に流入する空気流量が非常に小さくなってしまう。しかしながら、
図10及び
図11に示すように第1壁部1411,1412を除去することにより、当該範囲(φ)においても第1空気流路18に流入する空気流量を高めることができる。
【0060】
なお、上記φの範囲では、第1通路14Aから第1空気流路18に流入する空気流量(つまり流速)がもともと小さいため、第1通路14Aから流出した空気が慣性により第2空気流路19に向かうことは殆どない。従って、上記φの範囲において第1壁部1411,1412を除去しても、デメリットは殆ど無い。
【0061】
第5実施形態において、上記φの範囲以外の範囲では、第1転向面112としての役割を果たす面(つまり第1ガイド部110を構成する3つの第1壁部のうち吸込口22に最も近い第1壁部1411の吸込口22に近い側の面)の先端114と、仕切壁20の先端201との軸線方向に関する位置関係は、
図3〜
図5に示す実施形態における先端114と先端201との位置関係と同様にすることができる。また、第2転向面122の先端124と、仕切壁20の先端202との軸線方向に関する位置関係は、
図3〜
図5に示す実施形態における先端124と先端202との位置関係と同様にすることができる。
【0062】
第5実施形態において、上記φの範囲内においては、他の実施形態における第1転向面112としての役割を果たす面である第1壁部1413の吸込口22に近い側の面112’の先端114’(
図11を参照)と、仕切壁20の先端201との軸線方向に関する位置関係は、
図3〜
図5に示す実施形態における先端114と先端201との位置関係と同様にすることができる。
【0063】
第5実施形態において、第1ガイド部110の吸込口22から最も遠い壁部である第1壁部1412と、第2ガイド部120の第2壁部との間の隙間の軸線方向位置を、仕切壁20の厚さの軸線方向位置と一致させることができる。
【0064】
第5実施形態において、第1ガイド部110を構成する3つの第1壁部1411,1412,1413を回転軸線(Ax)方向に架橋する複数のリブを、例えば分離筒14の周方向に等間隔で設けてもよい。各リブを、第2ガイド部120を構成する第2壁部142まで延伸してもよい。このようなリブを設けることにより分離筒14の該当部分の成形品質並びに剛性を向上させることができる。
【0065】
第1ガイド部110を構成する第1壁部(1411,1412,1413)の数は、図示した3つが好適であるが、これに限定されるものではなく、2つでもよいし、4つ以上でもよい。