特許第6862291号(P6862291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862291
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/33 20180101AFI20210412BHJP
   F21S 41/10 20180101ALI20210412BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20210412BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20210412BHJP
【FI】
   F21S41/33
   F21S41/10
   F21S45/10
   F21Y115:30
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-118648(P2017-118648)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2019-3866(P2019-3866A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭則
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−146396(JP,A)
【文献】 特開2017−098064(JP,A)
【文献】 特開2012−194228(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/170696(WO,A1)
【文献】 特開2016−066480(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0268846(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106051576(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/33
F21S 41/10
F21S 45/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、この投影レンズの後方に配置された発光体と、この発光体からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えた車両用灯具において、
上記発光体は、レーザー発光素子からのレーザー光照射によって発光するように構成されており、
上記リフレクタにおいて、上記レーザー発光素子から上記発光体へ向かうレーザー光の光路上または該光路の延長線上に位置する部位に、該リフレクタを貫通する開口部が形成されており、
上記リフレクタの反射面は、上記開口部の前方側に位置する第1反射領域が上記開口部の後方側に位置する第2反射領域に対して上記発光体側に変位した状態で形成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記第1および第2反射領域は、いずれも楕円面を基準面とする曲面で構成されており、
上記第1反射領域の基準面となる楕円面の離心率が上記第2反射領域の基準面となる楕円面の離心率よりも大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記第1および第2反射領域は、いずれも上記投影レンズの光軸を含む鉛直面内において上記発光体からの光を上記投影レンズの後側焦点へ向けて反射させるように構成されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記リフレクタの反射面における上記第1および第2反射領域以外の反射領域は、上記第2反射領域の基準面となる楕円面を基準面として形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記開口部の内周面に反射面処理が施されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用灯具。
【請求項6】
上記開口部の内周面に光吸収処理が施されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用灯具。
【請求項7】
投影レンズと、この投影レンズの後方に配置された発光体と、この発光体からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えた車両用灯具において、
上記発光体は、レーザー発光素子からのレーザー光照射によって発光するように構成されており、
上記リフレクタにおいて、上記レーザー発光素子から上記発光体へ向かうレーザー光の光路上または該光路の延長線上に位置する部位に、該リフレクタを貫通する開口部が形成されており、
上記リフレクタの反射面は、上記開口部の前方側に位置する第1反射領域と上記開口部の後方側に位置する第2反射領域とを備えており、
上記第1反射領域は、仮に上記第2反射領域が上記開口部の前端位置まで延長形成されているとした場合にこの延長形成された仮想反射領域で反射した上記発光体からの光が上記投影レンズに入射する領域へ向けて、上記発光体からの光を反射させるように構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、リフレクタを備えたプロジェクタ型の車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リフレクタで反射した光源からの光を投影レンズに入射させるように構成されたプロジェクタ型の車両用灯具が知られており、その光源としてレーザー発光素子からのレーザー光照射によって発光する発光体を用いたものも知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具のリフレクタとして、レーザー発光素子から発光体へ向かうレーザー光の光路の延長線上に位置する部位に、該リフレクタを貫通する開口部が形成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−146396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具のように、リフレクタにおいてレーザー光の光路の延長線上に位置する部位に開口部が形成された構成とすれば、発光体が脱落してしまったような場合であっても、明るくて指向性の強いレーザー光がリフレクタで反射して車両前方へ照射されてしまうのを未然に防止することが可能となる。
【0006】
しかしながら、このような構成を採用した場合には、次のような新たな課題が生じてしまう。
【0007】
すなわち、レーザー光照射によって発光する発光体からの光をリフレクタで反射させるように構成されたプロジェクタ型の車両用灯具は、明るいスポット状の配光パターン(例えばハイビーム用配光パターンの中心光度を高めるための配光パターン)を形成するのに適しているが、上記「特許文献1」に記載されているような開口部がリフレクタに形成されていると、この開口部の形成領域からは反射光が得られないので、その分だけ配光パターンの明るさが低下してしまう。
【0008】
このような課題は、レーザー発光素子と発光体との間にリフレクタが配置されており、該リフレクタにおいてレーザー発光素子から発光体へ向かうレーザー光の光路上に位置する部位に開口部が形成されている場合にも同様に生じ得る。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、レーザー光照射によって発光する発光体からの光をリフレクタで反射させるように構成されたプロジェクタ型の車両用灯具において、リフレクタに開口部が形成されている場合であっても明るい配光パターンを形成することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、リフレクタの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願第1の発明に係る車両用灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後方に配置された発光体と、この発光体からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えた車両用灯具において、
上記発光体は、レーザー発光素子からのレーザー光照射によって発光するように構成されており、
上記リフレクタにおいて、上記レーザー発光素子から上記発光体へ向かうレーザー光の光路上または該光路の延長線上に位置する部位に、該リフレクタを貫通する開口部が形成されており、
上記リフレクタの反射面は、上記開口部の前方側に位置する第1反射領域が上記開口部の後方側に位置する第2反射領域に対して上記発光体側に変位した状態で形成されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本願第2の発明に係る車両用灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後方に配置された発光体と、この発光体からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えた車両用灯具において、
上記発光体は、レーザー発光素子からのレーザー光照射によって発光するように構成されており、
上記リフレクタにおいて、上記レーザー発光素子から上記発光体へ向かうレーザー光の光路上または該光路の延長線上に位置する部位に、該リフレクタを貫通する開口部が形成されており、
上記リフレクタの反射面は、上記開口部の前方側に位置する第1反射領域と上記開口部の後方側に位置する第2反射領域とを備えており、
上記第1反射領域は、仮に上記第2反射領域が上記開口部の前端位置まで延長形成されているとした場合にこの延長形成された仮想反射領域で反射した上記発光体からの光が上記投影レンズに入射する領域へ向けて、上記発光体からの光を反射させるように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「発光体」は、レーザー発光素子からのレーザー光照射によって発光するものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「発光体」は、該発光体をレーザー光が透過することによって発光するように構成されてもよいし、該発光体でレーザー光が反射することによって発光するように構成されてもよい。
【0015】
上記「開口部」は、リフレクタにおいてレーザー発光素子から発光体へ向かうレーザー光の光路上または該光路の延長線上に位置する部位に形成されていれば、その具体的な形状や大きさ等は特に限定されるものではない。また、上記「開口部」は、閉空間として形成されていてもよいし、スリット等を介して外部空間と連通した開空間として形成されていてもよい。
【0016】
上記「リフレクタの反射面」における第1および第2反射領域以外の反射領域の具体的な表面形状については特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本願第1の発明に係る車両用灯具は、レーザー光照射によって発光する発光体からの光をリフレクタで反射させるプロジェクタ型の車両用灯具として構成されており、そのリフレクタには、レーザー発光素子から発光体へ向かうレーザー光の光路上または該光路の延長線上に位置する部位に該リフレクタを貫通する開口部が形成されているが、このリフレクタの反射面は、開口部の前方側に位置する第1反射領域が開口部の後方側に位置する第2反射領域に対して発光体側に変位した状態で形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、第1反射領域が第2反射領域に対して発光体側に変位していることにより、従来のように第1反射領域が第2反射領域をそのまま延長させた曲面形状で形成されているとした場合に比して、発光体の発光中心を基準とする立体角を大きく確保することができ、これにより発光体からの出射光に対する光束利用率を高めることができる。したがって、リフレクタに開口部が形成されているにもかかわらず、明るい配光パターンを形成することができる。
【0019】
このように本願第1の発明によれば、レーザー光照射によって発光する発光体からの光をリフレクタで反射させるように構成されたプロジェクタ型の車両用灯具において、リフレクタに開口部が形成されている場合であっても明るい配光パターンを形成することができる。
【0020】
上記構成において、第1および第2反射領域が、いずれも楕円面を基準面とする曲面で構成されたものとした上で、第1反射領域の基準面となる楕円面の離心率が第2反射領域の基準面となる楕円面の離心率よりも大きい値に設定された構成とすれば、第1反射領域からの反射光によって形成される第1配光パターンの集光度を、第2反射領域からの反射光によって形成される第2配光パターンの集光度に近づけることができる。そしてこれにより、大きさの揃ったスポット状の配光パターンを重畳させた明るい配光パターンを形成することができる。
【0021】
このようにした場合において、第1および第2反射領域が、いずれも投影レンズの光軸を含む鉛直面内において発光体からの光を投影レンズの後側焦点へ向けて反射させるように構成されたものとすれば、第1および第2反射領域の各々からの反射光によって形成される第1および第2配光パターンの集光度を上下方向に関して最大限に高めることができる。そしてこれにより、全体としての配光パターンを車両前方の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0022】
上記構成において、リフレクタの反射面における第1および第2反射領域以外の反射領域が、第2反射領域の基準面となる楕円面を基準面として形成されている構成とすれば、この反射領域からの反射光によって形成される配光パターンを第2配光パターンと滑らかに繋がる配光パターンとして形成することができる。
【0023】
上記構成において、リフレクタの開口部の内周面に反射面処理(例えばアルミ蒸着等)が施された構成とすれば、発光体の脱落等によって開口部の内周面にレーザー光が照射されてしまったような場合であっても、この内周面においてレーザー光を反射させることができる。したがって、リフレクタが例えば樹脂成形品等で構成されている場合であっても、その開口部の周辺部位がレーザー光照射によって不用意に溶損しまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、開口部の内周面の形状自由度を高めること(例えばリフレクタの成形をしやすい傾斜角度で開口部の内周面を形成すること等)ができる。
【0024】
上記構成において、リフレクタの開口部の内周面に光吸収処理(例えば黒色塗装等)が施された構成とすれば、発光体の脱落等によって開口部の内周面にレーザー光が照射されてしまったような場合であっても、この内周面においてレーザー光を吸収することができる。したがって、この内周面で反射したレーザー光が迷光となって車両前方へ照射され、グレア光の発生の原因となってしまうのを未然に防止することができる。なお、リフレクタを例えばダイカスト成形品等で構成されたものとすれば、開口部の内周面に光吸収処理が施された構成とした場合であっても、その開口部の周辺部位がレーザー光照射によって溶損してしまうおそれはない。したがって、これにより開口部の内周面の形状自由度を高めることができる。
【0025】
本願第2の発明に係る車両用灯具は、レーザー光照射によって発光する発光体からの光をリフレクタで反射させるプロジェクタ型の車両用灯具として構成されており、そのリフレクタには、レーザー発光素子から発光体へ向かうレーザー光の光路上または該光路の延長線上に位置する部位に該リフレクタを貫通する開口部が形成されているが、このリフレクタの反射面は、開口部の前方側に位置する第1反射領域と開口部の後方側に位置する第2反射領域とを備えており、第1反射領域は、仮に第2反射領域が開口部の前端位置まで延長形成されているとした場合にこの延長形成された仮想反射領域で反射した発光体からの光が投影レンズに入射する領域へ向けて、発光体からの光を反射させるように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0026】
すなわち、上記仮想反射領域からの反射光が投影レンズに入射する領域に、第1反射領域からの反射光が入射することとなるので、投影レンズを広範囲にわたって有効に利用することができ、これにより配光制御を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す側断面図
図2】上記車両用灯具を示す平面図
図3図1の要部詳細図
図4】上記実施形態の作用を説明するための側断面図であって、(a)は上記車両用灯具を示す図、(b)は従来例を示す図
図5】上記車両用灯具からの照射光により形成される配光パターンを示す図
図6】上記実施形態の第1および第2変形例に係る車両用灯具の要部を示す、図3と同様の図
図7】上記実施形態の第3および第4変形例に係る車両用灯具のリフレクタを単品で示す平面図
図8】上記実施形態の第5変形例に係る車両用灯具を示す、図1と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す側断面図であり、図2は、その平面図である。
【0030】
これらの図において、Xで示す方向が灯具としての「前方」(車両としても「前方」)であり、Yで示す方向が「右方向」であり、Z示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0031】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、ヘッドランプの一部として組み込まれた状態で用いられるプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0032】
すなわち、この車両用灯具10は、投影レンズ12と、この投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側に配置された光源としての発光体22と、この発光体22から出射した光を投影レンズ12へ向けて反射させるリフレクタ14とを備えた構成となっている。
【0033】
投影レンズ12は、前面が凸面で後面が平面の平凸非球面レンズであって、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。この投影レンズ12は、その外周フランジ部においてレンズホルダ16に支持されており、このレンズホルダ16はベース部材18に支持されている。
【0034】
発光体22は、光源ユニット20の一部として構成されている。
【0035】
この光源ユニット20は、レーザー発光素子24から出射した光を、集光レンズ26によって発光体22に集光させ、この発光体22の表面側から拡散光として出射させるように構成されている。
【0036】
レーザー発光素子24は、レーザーダイオードで構成されており、発光体22に対して、その裏面側からレーザー光を照射するように構成されている。
【0037】
発光体22は、レーザー発光素子24からのレーザー光照射によって白色で発光する蛍光体で構成されており、その表面側に円形状の発光面が形成されている。
【0038】
光源ユニット20は、その発光体22の発光面を鉛直上方に対して後方側に10〜45°程度(例えば30°程度)傾斜した方向へ向けた状態でベース部材18に支持されている。
【0039】
リフレクタ14は、樹脂成形品あるいはダイカスト成形品等として構成されている。
【0040】
このリフレクタ14は、光源ユニット20を上方側から覆うようにして配置された状態で、その下端縁においてベース部材18に支持されている。その際、このリフレクタ14は、その下端縁が発光体22の発光面を含む傾斜平面よりも僅かに上方側において該傾斜平面と平行に延びた状態で配置されている。
【0041】
このリフレクタ14には、レーザー発光素子24から発光体22へ向かうレーザー光の光路の延長線上に位置する部位に、該リフレクタ14を貫通する開口部14bが形成されている。
【0042】
この開口部14bは、リフレクタ14を斜め上後方から見た状態において略横長矩形状の開口形状となるように形成されている。
【0043】
図3は、図1の要部詳細図である。
【0044】
同図において示す角度θは、仮に発光体22が図示の位置から脱落してしまったとした場合に、集光レンズ26から発光体22へ向かった収束光が発光体22の位置から発散する際の拡がり角度を示している。
【0045】
開口部14bは、投影レンズ12の光軸Axを含む鉛直面内において、その前端面14b1および後端面14b2が角度θの範囲から僅かに外れる位置関係で形成されている。その際、前端面14b1および後端面14b2は、いずれも角度θで延びる直線(図中1点鎖線で示す直線)と略平行に延びるように形成されている。
【0046】
リフレクタ14として、このような開口部14bが形成された構成とすることにより、発光体22が脱落してしまったような場合であっても、明るくて指向性の強いレーザー光がリフレクタ14で反射して車両前方へ照射されてしまうのを未然に防止し、これによりフェイルセーフを図るようになっている。
【0047】
リフレクタ14の反射面14aは、開口部14bの前方側に位置する第1反射領域14aAが、開口部14bの後方側に位置する第2反射領域14aBに対して発光体22側に変位した状態で形成されている。
【0048】
第1および第2反射領域14aA、14aBは、いずれも発光体22の発光中心Sを第1焦点とする楕円面を基準面として形成された反射面形状を有している。
【0049】
具体的には、第1および第2反射領域14aA、14aBの各々は、発光体22の発光中心Sと投影レンズ12の後側焦点Fとを結ぶ直線を含む平面に沿った断面形状が楕円形状であって、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されており、鉛直断面内においては投影レンズ12の後側焦点Fが第2焦点となっている。
【0050】
そしてこれにより、第1および第2反射領域14aA、14aBは、いずれも、発光体22からの出射光を鉛直断面内においては投影レンズ12の後側焦点Fに集光させるようになっている。
【0051】
ただし、第1反射領域14aAの基準面となる楕円面の離心率は、第2反射領域14aBの基準面となる楕円面の離心率よりも大きい値に設定されており、これにより第1反射領域14aAが第2反射領域14aBに対して発光体22側に変位した状態で形成されるようになっている。
【0052】
すなわち、光軸Axを含む鉛直面内において、発光体22の発光中心S、開口部14bの前端面14b1の下端縁(すなわち第1反射領域14aAの後端縁)に位置する点P1、および後側焦点Fの3点を結ぶ折れ線L1の長さが、発光体22の発光中心S、開口部14bの後端面14b2の下端縁(すなわち第2反射領域14aAの前端縁)に位置する点P2、および後側焦点Fの3点を結ぶ折れ線L2の長さよりも小さい値に設定されている。
【0053】
その際、第1反射領域14aAの発光体22側への具体的な変位量は、折れ線L1の点P1と後側焦点Fとを結ぶ部分が、折れ線L2の点P2と後側焦点Fとを結ぶ部分と略一致するような値に設定されている。
【0054】
リフレクタ14の反射面14aにおける第1および第2反射領域14aA、14aB以外の第3反射領域14aCは、第2反射領域14aBの基準面となる楕円面を基準面として形成されており、第2反射領域14aBの反射面形状をそのまま延長形成した反射面形状を有している。
【0055】
リフレクタ14には、第1反射領域14aAの左右両側に、該第1反射領域14aAを形成している部分と第3反射領域14aCを形成している部分とを連結する左右1対の立壁部14cが形成されている。各立壁部14cは、鉛直方向上方に対して光軸Axから離れる方向へ所定角度傾斜した方向に延びるように形成されている。上記所定角度は、発光体22からの出射光が立壁部14cの内面に入射しない範囲内でできるだけ小さい値に設定されている。
【0056】
図4は、本実施形態に係る車両用灯具10を従来の車両用灯具10´と対比して示す側断面図である。
【0057】
図4(a)は、本実施形態に係る車両用灯具10を示しており、図4(b)は、従来の車両用灯具10´を示している。
【0058】
本実施形態に係る車両用灯具10と従来の車両用灯具10´とでは、リフレクタ14、14´の構成が一部異なっているが、それ以外の構成は同様である。
【0059】
すなわち、従来の車両用灯具10´のリフレクタ14´は、本実施形態に係る車両用灯具10のリフレクタ14における第1反射領域14aAの部分が第1反射領域14aA´で構成されている。
【0060】
この第1反射領域14aA´は、第2反射領域14aBの表面形状をそのまま延長させた曲面形状で開口部14b´の前方側に位置する部分を形成したものとなっている。
【0061】
その際、この第1反射領域14aA´は、該第1反射領域14aA´の前端縁からの反射光が投影レンズ12に入射する位置と第1反射領域14aAの前端縁からの反射光が投影レンズ12に入射する位置とが一致するように、その前端縁の位置が設定されている。
【0062】
また、この第1反射領域14aA´は、開口部14b´の前端面14b1´によって、その後端縁の位置が規定されるが、この開口部14b´の前端面14b1´は開口部14bの前端面14b1を図中1点鎖線で示す直線に沿って平行移動させた位置に設定されている。
【0063】
このように、従来の車両用灯具10´において、そのリフレクタ14´からの反射光が投影レンズ12に入射する際の最大角度範囲を、本実施形態に係る車両用灯具10において、そのリフレクタ14からの反射光が投影レンズ12に入射する際の最大角度範囲と同じ値に設定した場合、図4(b)に示すように、リフレクタ14´の開口部14b´の形成領域からは反射光が得られないため、光軸Axの下方近傍領域から光軸Axのやや上方領域までの部分においては、リフレクタ14´からの反射光が投影レンズ12に入射しないこととなる。
【0064】
一方、図4(a)に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10においては、開口部14bの前方側に位置する第1反射領域14aAが、開口部14bの後方側に位置する第2反射領域14aBに対して発光体22側に変位しているので、リフレクタ14の開口部14bの形成領域からは反射光が得られないにもかかわらず、リフレクタ14からの反射光が投影レンズ12に対して上記角度範囲内の略全域に入射している。
【0065】
これは、図3に示すように、折れ線L1の点P1と後側焦点Fとを結ぶ部分が、折れ線L2の点P2と後側焦点Fとを結ぶ部分と略一致していることによるものである。
【0066】
このように、リフレクタ14からの反射光が投影レンズ12に対して上記角度範囲内の略全域に入射していることから、第1反射領域14aAは、仮に第2反射領域14aBが開口部14bの前端位置まで延長形成されているとした場合にこの延長形成された仮想反射領域で反射した発光体22からの光が投影レンズ12に入射する領域へ向けて、発光体22からの光を反射させるように構成されたものとなっている。
【0067】
なお、図1〜3においても、従来の車両用灯具10´におけるリフレクタ14´の第1反射領域14aA´の位置を2点鎖線で示している。
【0068】
図5は、車両用灯具10から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンPH1を透視的に示す図である。
【0069】
この配光パターンPH1は、ハイビーム用配光パターンPHの一部として形成される配光パターンである。
【0070】
ハイビーム用配光パターンPHは、他の車両用灯具(図示せず)からの照射光によって形成される基本配光パターンPH0と配光パターンPH1との合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0071】
基本配光パターンPH0は、H−V(灯具正面方向の消点)を中心として左右方向に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0072】
一方、配光パターンPH1は、H−Vを中心とするやや横長のスポット状の配光パターンとして形成されており、これによりハイビーム用配光パターンPHの中心に高光度領域を形成するようになっている。
【0073】
この配光パターンPH1は、第1、第2および第3配光パターンPA、PB、PCの合成配光パターンとして形成されている。
【0074】
第1配光パターンPAは、第1反射領域14aAからの反射光によって形成される配光パターンであって、H−Vを中心とするやや横長のスポット状の配光パターンとして形成されている。
【0075】
第2配光パターンPBは、第2反射領域14aBからの反射光によって形成される配光パターンであって、H−Vを中心とするやや横長のスポット状の配光パターンとして、第1配光パターンPAよりも僅かに大きい配光パターンとして形成されている。
【0076】
第3配光パターンPCは、第3反射領域14aCからの反射光によって形成される配光パターンであって、第2配光パターンPBの左右両側において第2配光パターンPBと連続的に左右両側に拡がる配光パターンとして形成されている。
【0077】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0078】
本実施形態に係る車両用灯具10は、レーザー光照射によって発光する発光体22からの光をリフレクタ14で反射させるプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されており、そのリフレクタ14には、レーザー発光素子24から発光体22へ向かうレーザー光の光路の延長線上に位置する部位に該リフレクタ14を貫通する開口部14bが形成されているが、このリフレクタ14の反射面14aは、開口部14bの前方側に位置する第1反射領域14aAが開口部14bの後方側に位置する第2反射領域14aBに対して発光体22側に変位した状態で形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0079】
すなわち、第1反射領域14aAが第2反射領域14aBに対して発光体22側に変位していることにより、従来のように第1反射領域14aA´が第2反射領域14aBをそのまま延長させた曲面形状で形成されているとした場合に比して、発光体22の発光中心Sを基準とする立体角を大きく確保することができ、これにより発光体22からの出射光に対する光束利用率を高めることができる。したがって、リフレクタ14に開口部14bが形成されているにもかかわらず、明るい配光パターンPH1を形成することができる。
【0080】
このように本実施形態によれば、レーザー光照射によって発光する発光体22からの光をリフレクタ14で反射させるように構成されたプロジェクタ型の車両用灯具10において、リフレクタ14に開口部14bが形成されている場合であっても明るい配光パターンPH1を形成することができる。
【0081】
また、本実施形態のリフレクタ14の第1反射領域14aAは、仮に第2反射領域14aBが開口部14bの前端位置まで延長形成されているとした場合にこの延長形成された仮想反射領域で反射した発光体22からの光が投影レンズ12に入射する領域へ向けて、発光体22からの光を反射させるように構成されているので、上記仮想反射領域からの反射光が投影レンズ12に入射する領域に、第1反射領域14aAからの反射光が入射することとなる。したがって、投影レンズ12を広範囲にわたって有効に利用することができ、これにより配光制御を精度良く行うことができる。
【0082】
しかも本実施形態においては、第1および第2反射領域14aA、14aBが、いずれも楕円面を基準面とする曲面で構成されており、その上で第1反射領域14aAの基準面となる楕円面の離心率が第2反射領域14aBの基準面となる楕円面の離心率よりも大きい値に設定されているので、第1反射領域14aAからの反射光によって形成される第1配光パターンPAの集光度を、第2反射領域14aBからの反射光によって形成される第2配光パターンPBの集光度に近づけることができる。そしてこれにより、大きさの揃ったスポット状の配光パターンPA、PBを重畳させた明るい配光パターンPH1を形成することができる。
【0083】
その際、第1および第2反射領域14aBは、いずれも投影レンズ12の光軸Axを含む鉛直面内において発光体22からの光を投影レンズ12の後側焦点Fへ向けて反射させるように構成されているので、第1および第2反射領域14aA、14aBの各々からの反射光によって形成される第1および第2配光パターンPA、PBの集光度を上下方向に関して最大限に高めることができる。そしてこれにより、全体としての配光パターンPH1を車両前方の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0084】
また本実施形態においては、リフレクタ14の反射面14aにおける第1および第2反射領域14aA、14aB以外の第3反射領域14aCが、第2反射領域14aBの基準面となる楕円面を基準面として形成されているので、この第3反射領域14aCからの反射光によって形成される第3配光パターンPCを第2配光パターンPBと滑らかに繋がる配光パターンとして形成することができる。
【0085】
上記実施形態においては、第1反射領域14aAの発光体22側への変位量が、折れ線L1の点P1と後側焦点Fとを結ぶ部分を、折れ線L2の点P2と後側焦点Fとを結ぶ部分と略一致させるような値に設定されているものとして説明したが、これ以外の値に設定された構成とすることも可能である。
【0086】
上記実施形態においては、第1および第2反射領域14aA、14aBの各々の構成として、発光体22の発光中心Sと投影レンズ12の後側焦点Fとを結ぶ直線を含む平面に沿った断面形状が、発光中心Sを第1焦点とするとともに後側焦点Fを第2焦点とする楕円形状に設定されているものとして説明したが、このような楕円形状とは異なる曲線形状に設定された構成とすることも可能であり、その際、複数の曲線が繋ぎ合わされた断面形状とすることも可能である。
【0087】
上記実施形態においては、発光体22が、その発光面を鉛直上方に対して後方側に傾斜した方向へ向けた状態でベース部材18に支持されているものとして説明したが、その発光面を鉛直上方へ向けた状態でベース部材18に支持された構成とすることも可能である。
【0088】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0089】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0090】
図6(a)は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、図3と同様の図である。
【0091】
図6(a)に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、リフレクタ114の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0092】
本変形例のリフレクタ114も、その基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、このリフレクタ114は樹脂成形品として構成されており、かつ、その開口部114bの前端面114b1が上記実施形態の場合よりも後傾した方向(すなわち角度θで延びる直線と交差する方向)に延びるように形成されている。そして、この開口部114bの前端面114b1には、例えばアルミ蒸着等による反射面処理が施されている。
【0093】
本変形例の構成を採用した場合には、発光体22の脱落等によって開口部114bの前端面114b1にレーザー光が照射されてしまう可能性があるが、この前端面114b1には反射面処理が施されているので、この前端面114b1においてレーザー光を反射させることができる。
【0094】
したがって、リフレクタ114が樹脂成形品で構成されているにもかかわらず、その開口部114bの周辺部位がレーザー光照射によって不用意に溶損しまうのを未然に防止することができる。
【0095】
そしてこれにより、開口部114bの内周面の形状自由度を高めることができるので、その前端面114b1をリフレクタ114の成形がしやすい傾斜角度で形成することができる。
【0096】
なお、開口部114bの前端面114b1だけでなく、その内周面の全域にわたって反射面処理が施された構成とすることも可能である。
【0097】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0098】
図6(b)は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、図3と同様の図である。
【0099】
図6(b)に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、リフレクタ214の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0100】
本変形例のリフレクタ214も、その基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、このリフレクタ214はダイカスト成形品として構成されており、かつ、その開口部214bの前端面214b1が上記実施形態の場合よりも後傾した方向(すなわち角度θで延びる直線と交差する方向)に延びるように形成されている。そして、この開口部214bの前端面214b1には、例えば黒色塗装等による光吸収処理が施されている。
【0101】
本変形例の構成を採用した場合には、発光体22の脱落等によって開口部214bの前端面214b1にレーザー光が照射されてしまう可能性があるが、この前端面214b1には光吸収処理が施されているので、この前端面214b1においてレーザー光を吸収することができる。したがって、この前端面214b1で反射したレーザー光が迷光となって車両前方へ照射され、グレア光の発生の原因となってしまうのを未然に防止することができる。
【0102】
その際、リフレクタ214はダイカスト成形品で構成されているので、開口部214bの前端面214b1に光吸収処理が施されているにもかかわらず、この前端面214bの周辺部位がレーザー光照射によって溶損してしまうおそれはない。したがって、これにより開口部214bの内周面の形状自由度を高めることができ、その前端面214b1をリフレクタ214の成形がしやすい傾斜角度で形成することができる。
【0103】
なお、開口部214bの前端面214b1だけでなく、その内周面の全域にわたって光吸収処理が施された構成とすることも可能である。
【0104】
次に、上記実施形態の第3変形例について説明する。
【0105】
図7(a)は、本変形例に係る車両用灯具のリフレクタ314を単品で示す平面図である。
【0106】
図7(a)に示すように、本変形例のリフレクタ314の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、第1反射領域314aAの左右両側に位置する左右1対の立壁部314cが、リフレクタ314の前端部にのみ形成されており、それ以外の領域は、開口部314bと連通する左右1対のスリット314dとして形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0107】
なお、第1、第2および第3反射領域314aA、314aB、314aCの構成については、上記実施形態の場合と同様である。
【0108】
本変形例のリフレクタ314を採用することにより、上記実施形態の場合と同様の作用効果が得られるようにした上で、リフレクタ314の軽量化を図ることができる。
【0109】
次に、上記実施形態の第4変形例について説明する。
【0110】
図7(b)は、本変形例に係る車両用灯具のリフレクタ414を単品で示す平面図である。
【0111】
図7(b)に示すように、本変形例のリフレクタ414の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、開口部414bの左右両側に該開口部414bと連通するようにして左右方向に延びる左右1対のスリット414dが形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0112】
そして本変形例においては、リフレクタ414が左右1対のスリット414dによって前後2つの部分に分離した構成となっている。
【0113】
なお、第1、第2および第3反射領域414aA、414aB、414aCおよび立壁部414cの構成については、上記実施形態の場合と同様である。
【0114】
本変形例のリフレクタ414を採用することにより、上記実施形態の場合と同様の作用効果が得られるようにした上で、リフレクタ414の成形を容易に行うことができる。
【0115】
次に、上記実施形態の第5変形例について説明する。
【0116】
図8は、本変形例に係る車両用灯具510を示す、図1と同様の図である。
【0117】
図8に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、光源ユニット520の構成が上記実施形態の場合と異なっており、これに伴ってリフレクタ514およびベース部材518の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0118】
本変形例の光源ユニット520は、これを構成する発光体522とレーザー発光素子524および集光レンズ526とが分離して配置された構成となっている。
【0119】
そして本変形例においては、レーザー発光素子524から出射した光を、集光レンズ526によって発光体522の表面側から該発光体522に集光させ、この発光体522において拡散光として反射させるようになっている。
【0120】
発光体522は、レーザー発光素子524からのレーザー光照射によって白色で発光する蛍光体で構成されており、、その表面側に円形状の発光面が形成されている。この発光体522は、その発光面を鉛直上方に対して後方側に10〜45°程度(例えば30°程度)傾斜した方向へ向けた状態で、発光体支持部材532を介してベース部材518に支持されている。
【0121】
一方、レーザー発光素子524および集光レンズ526は、ハウジング530に収容された状態でリフレクタ514に支持されている。リフレクタ514には、レーザー発光素子524から発光体522へ向かうレーザー光の光路上に位置する部位に、該リフレクタ514を貫通する開口部514bが形成されている。この開口部514bは、円筒状の内周面形状を有しており、その開口面積は上記実施形態のリフレクタ14に形成された開口部14bより小さいものとなっている。
【0122】
本変形例においても、リフレクタ514の反射面514aは、開口部514bの前方側に位置する第1反射領域514aAが、開口部514bの後方側に位置する第2反射領域514aBに対して発光体522側に変位した状態で形成されている。ただし本変形例においては、開口部514bの開口面積が上記実施形態の開口部14bの開口面積よりも小さいので、第1反射領域514aAの発光体522側への変位量は上記実施形態の場合よりも小さいものとなっている。
【0123】
第1および第2反射領域514aA、514aBは、いずれも発光体522の発光中心Sを第1焦点とする楕円面を基準面として形成された反射面形状を有している。
【0124】
具体的には、第1および第2反射領域514aA、514aBの各々は、発光体522の発光中心Sと投影レンズ12の後側焦点Fとを結ぶ直線を含む平面に沿った断面形状が楕円形状であって、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されており、鉛直断面内においては投影レンズ12の後側焦点Fが第2焦点となっている。
【0125】
そしてこれにより、第1および第2反射領域514aA、514aBは、いずれも、発光体522からの出射光を鉛直断面内においては投影レンズ12の後側焦点Fに集光させるようになっている。
【0126】
ただし、第1反射領域514aAの基準面となる楕円面の離心率は、第2反射領域514aBの基準面となる楕円面の離心率よりも大きい値に設定されている。
【0127】
リフレクタ514の反射面514aにおける第1および第2反射領域514aA、514aB以外の第3反射領域514aCは、第2反射領域514aBの基準面となる楕円面を基準面として形成されており、第2反射領域514aBの反射面形状をそのまま延長形成した反射面形状を有している。
【0128】
リフレクタ514には、第1反射領域514aAの左右両側に、該第1反射領域514aAを形成している部分と第3反射領域514aCを形成している部分とを連結する左右1対の立壁部514cが形成されている。これら各立壁部514cは、鉛直方向上方に対して光軸Axから離れる方向へ所定角度傾斜した方向に延びるように形成されている。上記所定角度は、発光体522からの出射光が立壁部514cの内面に入射しない範囲内でできるだけ小さい値に設定されている。
【0129】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0130】
すなわち、第1反射領域514aAが第2反射領域514aBに対して発光体522側に変位していることにより、従来のリフレクタ514´のように第1反射領域514aA´が第2反射領域514aBをそのまま延長させた曲面形状で形成されているとした場合に比して、発光体522の発光中心Sを基準とする立体角を大きく確保することができ、これにより発光体522からの出射光に対する光束利用率を高めることができる。したがって、リフレクタ514に開口部514bが形成されているにもかかわらず、明るい配光パターンを形成することができる。
【0131】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0132】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0133】
10、510 車両用灯具
12 投影レンズ
14、114、214、314、414、514 リフレクタ
14a、514a 反射面
14aA、314aA、414aA、514aA 第1反射領域
14aB、314aB、414aB、514aB 第2反射領域
14aC、314aC、414aC、514aC 第3反射領域
14b、114b、214b、314b、414b、514b 開口部
14b1、114b1、214b1 前端面
14b2 後端面
14c、314c、414c、514c 立壁部
16 レンズホルダ
18、518 ベース部材
20、520 光源ユニット
22、522 発光体
24、524 レーザー発光素子
26、526 集光レンズ
314d、414d スリット
530 ハウジング
532 発光体支持部材
Ax 光軸
F 後側焦点
L1、L2 折れ線
P1、P2 点
PA 第1配光パターン
PB 第2配光パターン
PC 第3配光パターン
PH ハイビーム用配光パターン
PH0 基本配光パターン
PH1 配光パターン
S 発光中心
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8