(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般的なGPS信号を用いたGPS測位装置について説明する。
GPS測位は、地球外に配備した人工衛星の内4個の衛星を利用した測位方法である。GPS測位には、衛星と地上の管制局との間で電波にのせた信号を送受信し、信号の伝搬時間を用いて3つの衛星からの距離を測定、1点に交わる位置を求める「三角測量」の方法が採られている。
また、水中で利用される測位システムとして、音を媒体として信号を送受しながら対象の位置を特定する音響測位システムが挙げられる。例えば、潜水船の位置把握では、海底に設置したトランスポンダと呼ばれる呼出応答型の発信器を利用し、水上の母船や潜水船に装備した測位デバイスの送受波器との間で音響信号のやりとりを行う。これにより、各トランスポンダと測位デバイスとの間の距離を三角測量で求める。なお、座標基準の取り方によりLBL(Long Base−Line)、SBL(Short Base−Line)、SSBL(Super Short Base−Line)の3方式に分類される。
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る測位システムおよび装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る測位システムについて
図1を参照して説明する。
【0012】
第1の実施形態に係る測位システム1は、磁界発生装置10と測位装置20とを含む。
磁界発生装置10は、略無指向性とみなせる合成磁界を発生する。磁界発生装置10は、例えば、スマートフォンなどの携帯端末50に内蔵される場合を想定するが、磁界発生装置10単体であってもよい。磁界発生装置10の詳細については、
図2を参照して後述する。
【0013】
測位装置20は、少なくとも3つ以上の磁界検出部201と、信号処理部202と、表示部203とを含む。
【0014】
磁界検出部201は、磁界発生装置10から発生した合成磁界について、3軸方向の各成分の磁界強度を取得する。なお、以下の説明では、磁界検出部201は、3つ配置される場合を想定するが、これに限らず4つ以上の磁界検出部201が配置されてもよい。配置される磁界検出部201の個数が多いほど、磁界発生装置10の位置の推定精度は向上する。
【0015】
信号処理部202は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。信号処理部202は、各磁界検出部201から3軸方向の各成分の磁界強度を取得し、各成分の磁界強度から磁界発生装置10の位置を推定し、推定位置情報を生成する。
【0016】
表示部203は、信号処理部202から推定位置情報を受け取り、ディスプレイ(図示せず)などに表示する。なお、測位装置20の詳細については、
図6を参照して後述する。
【0017】
次に、磁界発生装置10の詳細について
図2のブロック図を参照して説明する。
図2に示す磁界発生装置10は、駆動部110と励磁コイル120とを含む。
【0018】
駆動部110は、電源111と、降圧部112と、信号生成部113と、接続切替部114と、増幅部115とを含む。電源111と降圧部112とをあわせて電源供給部とも呼ぶ。信号生成部113と、接続切替部114と、増幅部115とをあわせて信号制御部とも呼ぶ。
【0019】
電源111は、所定の電圧及び電流が取り出せる電源であればよく、例えばLi−Po電池であればよい。
降圧部112は、例えば、DC/DCコンバータであり、電源111から供給される出力電圧を下げる。
【0020】
信号生成部113は、例えば、基準信号発生器であり、基準となる正弦波信号(基準信号)を生成する。
接続切替部114は、例えば、スイッチ回路であり、信号生成部113から基準信号を、降圧部112から出力電圧をそれぞれ受け取り、後述する励磁コイル120に対する基準信号の出力先を切り替える。
増幅部115は、例えばFET(Field−Effect Transistor)であり、接続切替部114から基準信号を受け取り、基準信号を増幅する。なお、FPGA(Field Programmable Gate Array)により、信号生成部113と接続切替部114とを一体化した処理が行えるようにしてもよい。
【0021】
励磁コイル120は、例えば、3軸方向に磁気双極子モーメントが向くように配置した3つの磁気双極子を含む。磁界発生装置10からは、3つの磁気双極子が発生する各磁界が合成され、合成磁界が発生する。
【0022】
次に、磁界発生装置10の励磁コイル120の一例について
図3を参照して説明する。
以下の例では、励磁コイル120としてソレノイドコイルを磁気双極子とみなし、6つのソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zを組み合わせることにより、励磁コイル120が形成される。具体的には、x軸、y軸及びz軸の各軸に2つのソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zが1組として配置される。ただし、2つのソレノイドコイル121−x、121−y及び121−zの各組は、2つのコイルが結線(直列接続)され、一体となっている。ソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zの各組は、各軸方向に互いに直交し、かつ軸心方向の中心が共通するように配置される。なお各ソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zは、それぞれ独立して駆動される。各ソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zは、駆動部110から同一値の出力電圧を受けた場合、発生する磁界の強度が略一致するようにソレノイドコイルの巻線の巻数等が設計される。
【0023】
次に、磁界発生装置10の励磁コイル120から発生する合成磁界について
図4を参照して説明する。
図4の左図は、3つの磁気双極子が空間座標の原点に存在する場合の、各軸の磁気双極子の向きを示す概念図である。
図4の右図は、xy平面における各磁気双極子により発生する磁界401〜403と、各磁気双極子により発生する磁界401〜403を合成した合成磁界404とを示す。なお、
図4に示す各磁界401〜403と合成磁界404とは、合成磁界(合成磁束密度B)の最大値|B
max|で規格化した値である。xy平面の原点を回転中心として、+x軸方向を0°(零度)、−x軸方向を180°に規定する。
【0024】
具体的には、磁気双極子がx軸を向く場合の磁界401は、x軸方向、すなわち
図4では零度方向及び180度方向で強度が最大となり、90度方向及び270度方向で最小となるような磁界分布が形成される。磁気双極子がy軸を向く場合の磁界402は、磁界401の磁界分布を90度回転させた磁界分布が形成される。磁気双極子がz軸を向く場合の磁界403は、xy平面において均一な磁界分布が形成される。
【0025】
上述した磁界401〜403を合成した場合、合成磁界404が形成される。
図4の例では、合成磁界404の最大値と最小値との差は、約4%であり、略無指向性の磁界が発生することが分かる。
【0026】
次に、駆動部110による励磁コイル120の駆動方法の一例について
図5を参照して説明する。
図5は、各軸のソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zに対し供給される電流に関するタイミングチャートである。
【0027】
図5に示すように、まず、駆動部110の接続切替部114が、基準信号の出力先をx軸方向に軸を有するソレノイドコイル121−xに設定し、駆動部110がt
x期間、出力電圧に応じた電流をソレノイドコイル121−xに流す。
次に、駆動部110の接続切替部114が、ソレノイドコイル121−xからy軸方向に軸を有するソレノイドコイル121−yへ接続を切り替え、駆動部110がt
y期間、出力電圧に応じた電流をソレノイドコイル121−yに流す。さらに、駆動部110の接続切替部114が、ソレノイドコイル121−yからz軸方向に軸を有するソレノイドコイル121−zへ接続を切り替え、駆動部110がt
z期間、出力電圧に応じた電流をソレノイドコイル121−zに流す。その後t’期間、電流の供給を停止する(接続を切り離す)。
上述の作業を1サイクルとして、1サイクルに係る期間T(=t
x+t
y+t
z+t’)が繰り返される。
【0028】
なお、製作精度などの理由から3つのソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zの間で磁気特性(磁気双極子とみなす場合、磁気双極子モーメントm)のばらつきが大きくなると、合成磁界は無指向性とはみなせなくなる可能性もある。この場合は、例えば、測位システム1の出荷前または測定開始前に、各ソレノイドコイル121へ印加する電流の大きさを調整しておくことで、各ソレノイドコイル121から発生する磁界に関するソレノイドコイル121間のばらつきを抑制し、合成磁界を無指向性に近づけてもよい。印加する電流の大きさは、信号生成部113で生成する基準信号の振幅または増幅部115の増幅率を変更することにより調整されればよい。
【0029】
また、各ソレノイドコイル121−x〜121−zに電流を印加するタイミング(t
x、t
yおよびt
zの開始時点)は、ソレノイドコイル121のコアが磁性体であれば、電流がコイルに流れ、異方性の向きが一方向となる期間を考慮して決定されればよい。なお、ソレノイドコイル121のコアが非磁性体であれば、各ソレノイドコイル121−x〜121−zへ同時に電流が印加されてもよい。
【0030】
次に、測位装置20の磁界検出部201−1〜201−3及び信号処理部202の詳細について
図6のブロック図を参照して説明する。
【0031】
磁界検出部201−1〜201−3はそれぞれ、検出コイルx2011、検出コイルy2012及び検出コイルz2013を含む。
【0032】
検出コイルx2011は、x軸方向に感度を持ち、x軸に方向成分を有する磁界を検出し、検出信号を得る。
検出コイルy2012は、y軸方向に感度を持ち、y軸に方向成分を有する磁界を検出し、検出信号を得る。
検出コイルz2013は、z軸方向に感度を持ち、z軸に方向成分を有する磁界を検出し、検出信号を得る。
【0033】
信号処理部202は、フィルタ部2021と、周波数解析部2022と、推定部2023とを含む。
フィルタ部2021は、磁界検出部201−1〜201−3からそれぞれ、検出された各軸の方向成分の検出信号を受け取り、基準信号の周波数以外の周波数成分を除去し(フィルタ処理し)、フィルタ後検出信号を得る。
【0034】
周波数解析部2022は、フィルタ部2021からフィルタ後検出信号を受け取り、フィルタ後検出信号を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)する等の周波数解析を行い、解析信号を得る。
推定部2023は、周波数解析部2022から解析信号を受け取り、解析信号に基づいて位置推定処理を行い、磁界発生装置10の位置に関する推定位置情報を生成する。
【0035】
次に、磁界検出部201の一例について
図7を参照して説明する。
図7に示すように、x軸、y軸及びz軸の各軸方向が互いに直交するように配置された3つの検出コイルを有すればよい。なお、磁界検出部201で用いられるコイルは、磁界発生装置10の励磁コイル120と同様の構成であってもよい。
【0036】
次に、第1の実施形態に係る測位システム1の測位処理について
図8のフローチャートを参照して説明する。
ステップS801では、磁界発生装置10が、磁界を発生する。磁界を発生するタイミングは、例えば、磁界発生装置10を内蔵する携帯端末50を保持するユーザが、ボタンをタッチまたは押下する、または音声入力による指示などを、磁界を発生するトリガとすればよい。磁界発生装置10は、当該トリガが発生した場合、略無指向性の合成磁界を発生する。なお、磁界発生装置10は、測位装置20側からの起動信号を受信した場合に、磁界を発生するように設定されてもよい。
【0037】
ステップS802では、
図5の1サイクルに係る期間T毎に測位装置20の磁界検出部201が、磁界発生装置10の磁界を検出し、検出信号を得る。
ステップS803では、
図5の1サイクルに係る期間T毎に測位装置20のフィルタ部2021が、検出信号に対してフィルタ処理を行う。
ステップS804では、
図5の1サイクルに係る期間T毎に測位装置20の周波数解析部2022が、フィルタ後検出信号に対して周波数解析を行い、解析信号を生成する。
【0038】
ステップS805では、
図5の1サイクルに係る期間T毎に測位装置20の推定部2023が、解析信号が所望の周波数帯の信号であるか否かを判定する。例えば、推定部2023が、解析信号に含まれる信号成分のうちの所望の周波数帯の信号が閾値以上であるか否かを判定すればよい。所望の周波数帯の信号とは、基準信号であり、測位装置20が予め基準信号の周波数帯に関する情報を保持しておき、検出した信号における基準信号の周波数帯が閾値以上であれば、解析信号が所望の周波数帯の信号であると判定すればよい。所望の周波数帯の信号である場合、ステップS806に進み、所望の周波数帯の信号でない場合、ステップS802に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0039】
ステップS806では、
図5の1サイクルに係る期間T毎に測位装置20の推定部2023が、解析信号に基づいて位置推定処理を行い、推定位置情報を生成する。
ステップS807では、測位装置20の表示部203が、推定位置情報をディスプレイに表示する。
図5の1サイクルに係る期間T毎に推定位置情報が更新される。
【0040】
なお、ステップS805において、所望の周波数帯の信号が得られない場合、より広範囲に磁界が分布するよう、磁界発生装置10から発生する合成磁界の強さを増加させるために励磁コイル120に流れる電流を大きくしてもよい。例えば、磁界発生装置10が合成磁界を発生してから第1期間経過した後に、電流を最初の合成磁界を発生させたときの電流よりも大きくし、合成磁界の強さが増加すればよい。または、測位装置20側から合成磁界の強度を増加させる指示信号が送信され、磁界発生装置10が当該指示信号を受信したのち、磁界発生装置10が合成磁界の強度を増加させればよい。
【0041】
次に、推定部2023における位置推定処理の詳細について説明する。
まず、磁界発生装置10から発生する磁界について説明する。例えば、z軸方向に磁気双極子モーメントが向いた1個の磁気双極子が空間座標の位置(X,Y,Z)にある場合、位置(x,y,z)に形成される各磁界成分(磁束密度B
x,B
yおよびB
z)は、式(1)で表される。
【0043】
式(1)において、μ
0は真空の透磁率、rは励磁コイル120から磁界検出部201までの距離、mは磁気双極子モーメントを示している。
ここで、磁気双極子が直交座標系の原点に存在する場合を考えると、位置(x,y,z)に形成する磁界は式(1)で(X,Y,Z)=(0,0,0)として式(3)で表される。
【0045】
これより、z軸上に形成される磁界の磁束密度の大きさは、式(5)で表される。
【0047】
上記理論式を用いて、互いに直交した3つの磁気双極子の合成磁界分布が求まる。なお、式(5)は、磁気双極子単体では磁気双極子モーメントが向く方向の軸上のみで成り立つ関係式であるが、互いに直交した3つの磁気双極子を一体化する場合は任意の方向で近似的に成り立つと考えられる。
【0048】
次に、3つの磁界検出部201の配置について説明する。例えば、3つの磁界検出部201の配置は任意に決められるが、例えば、3つの磁界検出部を
図1に示すように同一円周上(半径a)で120度で等配してもよい。この場合、各磁界検出部201の座標(x,y,z)は式(7)で表される。
【0050】
ここで、磁界発生装置10の座標を(X,Y,Z)、磁界発生装置10と3つの磁界検出部201−1〜201〜3と間の距離をそれぞれr
1,r
2,r
3とする。式(7)で示す位置に磁界検出部201−1〜201−3を配置した場合、磁界発生装置10の座標(X,Y,Z)は、式(8)により算出できる。
【0052】
なお、磁界発生装置10と各磁界検出部201との間の距離には、式(9)の関係式が成り立つ。
【0054】
任意の地点に存在する磁界発生装置10が各磁界検出部201の位置に形成する磁界(磁束密度)の大きさを計測し、式(9)に代入して演算することでr
1,r
2及びr
3が得られる。
【0055】
よって、得られたr
1,r
2及びr
3を式(8)に代入することで、磁界発生装置10の空間座標における位置座標を得ることができる。当該位置座標は推定位置情報に含まれる。
【0056】
次に、推定部2023による式(9)の比例定数K
mの算出方法の一例について
図9を参照して説明する。
K
mは、
図9に示すような方法で事前に取得すればよい。まず、磁界発生装置10を空間座標の原点に配置し、磁界検出部201の1つの軸(
図9の場合はy
1軸)が空間座標の1つの軸(
図9の場合はy軸)に一致するように、磁界検出部201を配置する。次に、両者の軸を一致させたまま磁界発生装置10と磁界検出部201との間の距離rを変えながら、各地点で磁束密度の大きさ|B|を計測する。これにより、磁界発生装置10と磁界検出部201とにおける、距離rと磁束密度の大きさ|B|との関係データが得られる。最後に式(5)を用いて当該関係データを最小二乗近似し、比例定数K
mと決定すればよい。
【0057】
次に、表示部203における表示例について
図10を参照して説明する。
表示部203では、表示画面上の空間座標30に表示し、さらに式(7)及び式(8)で得られる座標情報(
図10では(X’,Y’,Z’))と視覚的に磁界発生装置10を表現するマーカーとを含む推定位置情報35を表示する。これによって、磁界発生装置10の三次元位置を視覚的に把握することができる。なお、マーカーを点滅させるといった、推定位置情報35がより目立つような手法を用いてもよい。
また、三次元表示ではなく二次元平面において推定位置情報を表示してもよい。
【0058】
なお、AR(Augmented Reality)技術を用いて、推定位置情報35をカメラなどで撮像した映像の上に重畳表示してもよい。これによって、磁界発生装置10の三次元位置をより視覚的に把握しやすくなる。また、二次元平面で推定位置情報を表示する場合は、地図に推定位置情報を重畳表示させてもよい。
【0059】
以上に示した第1の実施形態によれば、合成磁界分布が略無指向性である磁界発生装置10からの磁界を、少なくとも3つ以上の磁界検出部201で検出して磁界発生装置10の位置を推定する。これによって、無線方式で、磁界発生装置10の位置を推定することができ、有線のような取り回しの煩わしさがない。また、合成磁界分布が略無指向性であるため、磁界の発生源の姿勢を推定する必要がなく、測位装置20の磁界検出部201側に特別な工夫を施さなくとも磁界発生装置10の3次元位置を所定の精度及び簡易な構成で推定可能な測位システムを構築することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る測位システム1は、磁界発生装置10の励磁コイル120が第1の実施形態と異なる。
第2の実施形態に係る励磁コイルについて、
図11を参照して説明する。
【0061】
図11に示すように、励磁コイル120が、それぞれの軸方向が互いに直交し、かつ、各ソレノイドコイル121−x,121−y及び121−zのコイルコア122を同一とする3つのソレノイドコイルで形成される。ここで、3つのソレノイドコイルはそれぞれ独立して駆動される。
【0062】
以上に示した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することに加え、磁界発生装置10の励磁コイル120を小型化できる。
【0063】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る測位システム1は、磁界発生装置10の励磁コイル120が第1の実施形態と異なる。
第3の実施形態に係る励磁コイル120について、
図12を参照して説明する。
第3の実施形態では、励磁コイル120のコイルコア122に磁性体を適用する。コイルコア122は、例えば、ソフトフェライトの成形体で形成されればよい。
【0064】
以上に示した第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することに加え、磁界発生装置10が発生する磁界の強度(送信出力)が増大し、信号対雑音比が向上する。
【0065】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る測位装置20は、磁界検出部201のコイルが、
図11に示すように、第2の実施形態の磁界発生装置10の励磁コイル120と同様に形成される点が、第1の実施形態と異なる。
【0066】
以上に示した第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することに加え、測位装置20、特に磁界検出部201を小型化できる。
【0067】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る測位装置20は、磁界検出部201のコイルが、第1の実施形態と異なる。
第5の実施形態に係る測位装置20について、
図13を参照して説明する。
第5の実施形態では、磁界検出部201のコイルコア122に磁性体を適用する。コイルコア122は、例えば
図13左図の場合、ソフトフェライトで形成されればよい。あるいは
図13右図の場合、ソフトフェライトと非磁性体とを組み合わせた成形体で形成されればよい。具体的に、
図13右図に示す磁界検出部201のコイルは、ソフトフェライトで形成されるコイルコア122を用いた6つのソレノイドコイルが、矢印に沿って、非磁性体で形成される6面体123(ここでは立方体123)の各面にそれぞれ接着されることにより、成形される。ここで、x軸、y軸及びz軸の各軸に配置された2つのソレノイドコイル121’−x、121’−y及び121’−zは1組として扱われる。さらに、2つのソレノイドコイル121’−x、121’−y及び121’−zの各組は、2つのコイルが結線(直列接続)され、一体となっている。
【0068】
以上に示した第5の実施形態によれば、測位装置20の磁界検出感度を向上させることができ、信号対雑音比が向上する。
【0069】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る測位装置20について、
図14を参照して説明する。
第6の実施形態に係る測位装置20は、磁界検出部201として、磁気センサを用いる点が第1の実施形態の測位装置20と異なる。
【0070】
図14に示すように、磁界検出部201が、それぞれの軸方向が互いに直交するように配置された3つの磁気センサにより形成される。磁気センサは、例えば、MI(Magneto−Impedance)センサ素子が搭載されるMIセンサ基板70を利用すればよい。
MIセンサ基板70を用いる場合は、MIセンサ基板70の基板サイズを考慮し、3つのMIセンサ素子71の中心が、空間座標における原点72から等距離となる位置に配置されるように、MIセンサ基板70を組み合わせればよい。
【0071】
以上に示した第6の実施形態によれば、測位装置20の磁界検出感度を向上させることができ、信号対雑音比が向上する。
【0072】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る測位装置20は、磁界発生装置10から発生する磁界から測定環境下における外乱磁場成分を除去する点が上述の実施形態とは異なる。外乱磁場は、例えば、電線や電気機器からのノイズが挙げられる。従って、測位装置20のフィルタ部2021が、商用電源周波数及びその倍数の周波数成分(高調波成分)を除去することで、外乱磁場を含まない信号を抽出し、外乱磁場を含まない信号を用いて位置推定処理を行うことができる。
【0073】
なお、磁界発生装置10から基準信号に基づく磁界が発生する場合に、商用電源周波数である50Hz又は60Hzから周波数をずらした基準信号に基づいて、磁界を発生させてもよい。例えば、磁界発生装置10の信号生成部113が、磁界の基準信号を51Hzと設定すればよい。また、磁界の発生サイクル毎に、基準信号の周波数を変化させてもよい。例えば、
図5に示す最初のサイクルT1(i=1)では、磁界の基準信号を50Hzとし、次のサイクルT2(i=2)では、磁界の基準信号を1Hz高くして51Hzとする、といった処理を行ってもよい。
【0074】
以上に示した第7の実施形態によれば、検出信号のノイズレベルを低下させることができ、信号対雑音比が向上する。
【0075】
なお、上述の実施形態に係る測位システム1を、雪山などの遭難者、がれきの下などの埋没者の捜索に利用する場合、サーモセンサやレーダーなど(図示せず)を用いて大まかに捜索範囲を限定した後に、測位装置20による位置推定処理を実施してもよい。
【0076】
上述の実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した測位システムおよび装置の制御動作による効果と同様な効果を得ることも可能である。上述の実施形態で記述された指示は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW、Blu−ray(登録商標)Discなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータまたは組み込みシステムが読み取り可能な記録媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピュータは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の測位システムおよび装置の制御と同様な動作を実現することができる。もちろん、コンピュータがプログラムを取得する場合又は読み込む場合はネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
また、記録媒体からコンピュータや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(ミドルウェア)等が本実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
さらに、本実施形態における記録媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記録媒体も含まれる。
また、記録媒体は1つに限られず、複数の媒体から本実施形態における処理が実行される場合も、本実施形態における記録媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0077】
なお、本実施形態におけるコンピュータまたは組み込みシステムは、記録媒体に記憶されたプログラムに基づき、本実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。
また、本実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。