特許第6862343号(P6862343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862343
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】システイン結合ナノボディダイマー
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20210412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210412BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20210412BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C07K16/00
   A61P35/00
   A61K39/395 A
   C12N15/13ZNA
   C12P21/08
【請求項の数】18
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2017-532920(P2017-532920)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公表番号】特表2018-504383(P2018-504383A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2015080536
(87)【国際公開番号】WO2016097313
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年11月28日
(31)【優先権主張番号】62/094,179
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/140,611
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スホット,ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】デキャン,フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ブトン,カルロ
(72)【発明者】
【氏名】カステールス,ピーテル
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−523090(JP,A)
【文献】 Appl. Microbiol. Biotechnol., 2013, Vol. 97, No. 19, pp. 8547-8558
【文献】 J. Immunol. Methods, 2006, Vol. 315, No. 1-2, pp. 171-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも:
(i)第1のポリペプチドを提供する工程であって、前記第1のポリペプチドが、
−少なくとも1つのVHHと、
−システイン部分を含むC末端伸長部とを含む、工程;
(ii)第2のポリペプチドを提供する工程であって、前記第2のポリペプチドが、
−少なくとも1つのVHHと、
−システイン部分を含むC末端伸長部とを含む、工程;並びに
(iii)前記第1のポリペプチドの前記システイン部分のチオール部分と、前記第2のポリペプチドの前記システイン部分のチオール部分とをジスルフィド誘導体シスチンに酸化する工程を含む、ダイマーを作製するための方法であって、
該VHHの完全性が維持されており、前記シスチンが、該ダイマー中に存在する唯一の分子間ジスルフィド結合であり、それによって、前記ダイマーを作製することを特徴とし、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、システイン部分を含む最大50個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含む、方法。
【請求項2】
例えば質量分析によって決定した場合に、前記第1の及び前記第2のポリペプチドの少なくとも80%、例えば85%、90%、95%、99%又はさらにそれ以上、例えば100%が二量体化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記ダイマーを精製する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが同一のものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが異なるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、システイン部分を含む50個、40個、30個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記C末端伸長部が、前記ポリペプチドの最もC末端に位置するVHHのC末端部に遺伝子融合されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のポリペプチド及び/又は第2のポリペプチドが、C末端においてシステイン部分を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むダイマーであって、
前記第1のポリペプチドが、
−少なくとも1つのVHHと、
−システイン部分を含むC末端伸長部とを含み;
前記第2のポリペプチドが、
−少なくとも1つのVHHと、
−システイン部分を含むC末端伸長部とを含み;
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、前記第1のポリペプチドのC末端伸長部のシステイン部分と、前記第2のポリペプチドのC末端伸長部のシステイン部分との間のジスルフィド結合を介して共有結合されており;前記第1のポリペプチドのC末端伸長部のシステイン部分と、前記第2のポリペプチドのC末端伸長部のシステイン部分との間の前記ジスルフィド結合が、該ダイマー中に存在する唯一の分子間ジスルフィド結合であり;及び
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、システイン部分を含む最大50個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含む、ダイマー。
【請求項10】
前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、システイン部分を含む50個、40個、30個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含む、請求項9に記載のダイマー。
【請求項11】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが同一のものである、請求項9又は10に記載のダイマー。
【請求項12】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが異なるものである、請求項9又は10に記載のダイマー。
【請求項13】
薬物をさらに含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載のダイマー。
【請求項14】
前記薬物が、細胞増殖抑制剤、細胞傷害剤、化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント)、毒素部分及び放射性同位体からなる群より選択される、請求項13に記載のダイマー。
【請求項15】
薬物対ダイマー比(DAR)が1である、請求項13又は14に記載のダイマー。
【請求項16】
前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、C末端においてシステイン部分を含む、請求項9〜15のいずれか一項に記載のダイマー。
【請求項17】
ガンの処置に使用するための、請求項9〜16のいずれか一項に記載のダイマーであって、インターナリゼーションする、ダイマー。
【請求項18】
ガンの処置のための医薬を製造するための、請求項9〜16のいずれか一項に記載のダイマーの使用であって、前記ダイマーがインターナリゼーションする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むダイマーであって、前記第1の及び第2のポリペプチドがそれぞれ、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、(好ましくはC末端において)システイン部分を含むC末端伸長部とを含み、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、前記第1のポリペプチドのシステイン部分と、前記第2のポリペプチドのシステイン部分との間のジスルフィド結合を介して共有結合されているダイマーに関し、該ダイマーは、様々なアッセイにおいて、ベンチマーク構築物(例えば、同種の多価及び多重特異性構築物)よりもパフォーマンスが優れていた。本発明は、本発明のダイマーを作製するための方法を提供する。本発明はさらに、(本明細書で定義される)可変ドメイン、及び本発明の方法によって取得可能な1つ以上の可変ドメインを含むポリペプチド(「本発明のポリペプチド」とも称される)、並びに1つ以上の基、残基又は部分にカップリングされたこのような可変ドメイン及び/又はポリペプチドを含む化合物(「本発明の化合物」とも称される)を提供する。
【0002】
本発明はまた、このような可変ドメイン及び/又はポリペプチドをコードする核酸;このような核酸を含み、及び/又はこのような可変ドメイン及び/若しくはポリペプチドを発現し若しくは発現することができる宿主細胞;このような可変ドメイン及び/又はポリペプチド、化合物、核酸及び/又は宿主細胞を含む組成物(特に、医薬組成物);並びに特に予防目的、治療目的又は診断目的のための、このような可変ドメイン、ポリペプチド、核酸、宿主細胞及び/又は組成物の使用に関する。
【0003】
本発明の他の態様、実施態様、利点及び用途は、本明細書のさらなる説明から明らかになるであろう。
【背景技術】
【0004】
背景
20個超のモノクローナル抗体(mAb)が治療に承認され、より多くが臨床開発中であり、このクラスの分子は、様々な疾患の確立された処置モダリティになっている(Reichert (2011) MAbs 3:76-99; Nelson et al. (2010) Nat Rev Drug Discov 9:767-74)。しかしながら、ガン又は炎症性障害などの複雑な疾患は、通常、本質的に多因子性であり、疾患を媒介する多数のリガンド及びレセプター、並びにシグナルカスケード間のクロストークが関与する。複数のターゲット又は1つのターゲット上の複数の部位の遮断は、治療効果の改善をもたらすはずである。従来のモノクローナル抗体治療が有意な抗腫瘍活性を誘導する能力は限定的であったので、二重特異性物質(2つの異なる抗原に同時に結合し得る抗体)が開発された(Kontermann (2012) mAbs 4:182-197)。過去10年間に、併用療法又は混合物の使用の代替策として、二重特異性抗体による二重ターゲティングが登場した。二重特異性抗体による二重ターゲティングの概念は、1つの薬物による複数の疾患改変分子のターゲティングに基づくものである。製造、前臨床及び臨床試験は、単一二重特異性分子に縮小されるので、技術及び規制の観点から、これは開発をより容易にする(Kontermann (2012)前掲)。組み合わせではなく単一二重ターゲティング薬物による治療はまた、患者にとっても負担が少ないはずである。
【0005】
二重特異性抗体は、生化学的又は遺伝的な手段を介して作製され得る。過去20年間に、リコンビナント技術により、多種多様な二重特異性抗体が生産され、45個のフォーマットが生み出された(Byrne et al (2013) Trends Biotechnol. 31, 621-32)。このような様々なトポロジーにもかかわらず、このアプローチは、あらゆるタンパク質の組み合わせに適切であるわけではない。N末端又はC末端を介したタンパク質の融合は、生物活性の減少又は損失をもたらし得、フォールディング及びプロセシングの複雑性により、発現量の変動が観察され得る(Schmidt (2009) Curr. Opin. Drug Discovery Dev. 12, 284-295; Baggio et al. (2004) Diabetes 53, 2492-2500; Chames and Baty (2009) mAbs 1, 539-47)。
【0006】
二重特異性治療薬を作製するための代替アプローチは、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性のカップリング試薬を使用した化学的コンジュゲーションである(Doppalapudi et al. (2010) Proc Natl Acad Sci USA 107:22611-6)。現在まで、これは、このようなコンジュゲートを生産する優れた方法ではなかった。この分野で用いられる化学技術の根本的な欠陥は、リシン残基の改変への依存であった。従来の抗体当たり平均100個のリシン残基が存在し、それらの分布は、抗体又はそのフラグメント、例えばFab、Fc及び免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)領域の表面トポロジーを通して均一である。このように、リシン残基を使用したコンジュゲーション技術は、抗体分子の事実上全ての領域をランダムに架橋し、予測不可能な特性を有する生成物の非常に不均一な混合物をもたらす。
【0007】
この問題を克服するための戦略は、化学的リンカーの部位特異的導入を可能にする非天然アミノ酸の挿入によって提供される。しかしながら、非天然アミノ酸の置換は不完全であることが多く、必要な高濃度では人工アミノ酸の細胞毒性が原因で、発現量が一般に低い。
【0008】
ランダム架橋に伴う問題を克服するための別のアプローチは、単一の求核性システイン残基を抗体の所望の部位に導入する部位特異的突然変異誘発によって提供される。タンパク質では、システイン残基は天然存在量が低いが、抗体及び抗体フラグメントでは、遊離システイン残基が欠如しているので、システイン残基は分子内ジスルフィド結合で固定されて、構造及び機能的完全性を提供することが頻繁に見られる(Fodje and Al-Karadaghi (2002) Protein Eng. Des. Sel. 15, 353-358)。しかしながら、分子内架橋と分子間架橋とのコントロールは、これらの試薬を用いて達成することが非常に困難である。いくつかのコントロールは、タンパク質/試薬比、pH、イオン強度などの反応パラメータの適切な選択によって達成され得るが、結果は依然として不十分である。
【0009】
国際公開公報第2004/03019号では、例えば、ドメインのC末端においてシステインをそれぞれ有するdAbを提供し、2,2’−ジチオジピリジン(2,2’−DTDP)及び還元型モノマーを使用した化学的カップリング手順を使用して該システインを互いにジスルフィド結合することによって、可変ドメインを互いに連結して多価リガンドを形成し得ると仮説されている。しかしながら、2,2’−DTDPは、その実用性を制限する刺激物質である。加えて、2,2’−DTDPはまた、細胞からCa2+を動員する反応性ジスルフィドであるので、その使用はさらに制限される。国際公開公報第2004/03019号には、特に分子内チオール結合を破壊及び再構成せずに、この方法が実際に実行可能であるかについて記載されていないだけではなく、2,2’−DTDPの特性を考慮すると、この試薬を完全に除去するためには、手間を要する対策を講じなければならない。
【0010】
Baker et al. (2014, Bioconjugate Chem., DOI: 10.1021/bc5002467)には、合成ビス−ジブロモマレイミド架橋リンカーを使用した抗体フラグメントのジスルフィド結合の還元及び架橋による二重特異性抗体構築物が記載されている。
【0011】
Carlsson et al. (1978 Biochem J. 173:723-737)には、可逆的なタンパク質間コンジュゲーションをもたらすn−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナートを使用したタンパク質のチオール化手順が提案されている。しかしながら、この手順は、大規模な精製を必要とする。加えて、このプロトコールにしたがった場合、活性の減少が報告されている(Carlsson et al., 1978)。Carlsson et al. (1978)には、この手順を抗体又はそのフラグメントに使用し得るかについて記載されていない。
【0012】
システイン突然変異誘発は、発現量の減少及び望ましくない特性、例えば望ましくない二量体化に対する感受性、混合ジスルフィド形成又はジスルフィドスクランブルを一般にもたらすので、一般に、システイン残基の導入を介した分子間架橋は制限される(Schmiedl et al. (2000) J. Immunol. Methods 242, 101-14; Junutula et al. (2008) Nat. Biotechnol. 26, 925-32; Albrecht et al. (2004) Bioconjugate Chem. 15, 16-26)。
【0013】
Graziano and Guptillでは、F(ab’)2フラグメントの重鎖間ジスルフィド結合の還元によって生成された遊離チオールを使用してFab’×Fab’(化学的に連結された二重特異性物質)を作るための方法が議論されている。しかしながら、重鎖−軽鎖ジスルフィド結合の大規模な還元を伴わずに、重鎖間ジスルフィドの効率的な還元が達成されるように、条件を選択しなければならない。注目すべきことに、o−フェニレンジイマレイミド(o−PDM)法を使用して作られた二重特異性物質は、エルマン試薬(5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)又はDTNB)によって作製されたものよりも安定であり得るが、o−PDMによって作製された二重特異性物質を生化学的均一に精製することはより困難であった。o−PDM法の別の明らかな欠点は、抗体分子中の奇数個の重鎖間ジスルフィド結合をマレイミド化する必要があることである(Graziano and Guptill (2004) Chapter 5 Chemical Production of Bispecific Antibodies pages 71-85 From: Methods in Molecular Biology, vol. 283: Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods; Edited by: C. M. Niemeyer (C) Humana Press Inc., Totowa, NJ.)。これは、ヒト−ヒト二重特異性物質の構築におけるその適用を妨げる。
【0014】
処置(特に、ガンの処置)を改善するためのさらなる戦略は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を使用することである。現在のところ、50個超の異なるADCが臨床試験中であり、これらのいくつかは活性であるが、開発、精製及びADCの毒性予防において、多数の問題が依然として残っている。第1に、物理化学的特性、例えば抗体当たりにコンジュゲートされた薬物の数に起因するADCの不均一性、PK/生体内分布、ペイロード及び送達ビヒクルをほとんどコントロールすることができない。例えば、多くの薬物は、リシンを介して抗体にコンジュゲートされる。上記のように、リシンは抗体全体に散在しているので、これは、薬物対抗体比をコントロールすることを困難にする。加えて、このカップリングは、リシンカップリングを使用する二重特異性の概念にも干渉する。また、ガン処置に使用されるほとんどの薬物は非常に疎水性であり、ADC部分の予測不可能な概ね好ましくない凝集、PK及び生体内分布プロファイルをもたらす。これは、小さな抗体フラグメントに特に当てはまる。従来の抗体は約150kDのサイズを有する一方、薬物は平均約1kDのサイズを有する。したがって、抗体:薬物のサイズ比は、約150:1である。従来の抗体とは大きく異なり、ISVDなどの抗体フラグメントは、わずか約15kDのサイズを有する。その結果として、ISVD:薬物のサイズ比は、わずか15:1である(すなわち、従来の抗体の10倍未満)。したがって、薬物の疎水性特性は、コンジュゲートされた抗体フラグメントの物理化学的特性に対して不相応に大きな影響を及ぼす。実際、コンジュゲートされた抗体フラグメントの主な問題は、凝集である(Feng et al. 2014 Biomedicines 2:1-13)。分析は、IgGサイズの高分子構築物が、全身クリアランスと血管外遊出との間の好ましいバランスを示し、最大の腫瘍取り込みをもたらすことをさらに示唆している(Dane Wittrup et al. 2012 Methods Enzym. 503 Chapter 10, pp255-268)。これらの困難性は、より小さな抗体フラグメントに対する薬物のコンジュゲーションを使用することを事実上制限する。
【0015】
表皮成長因子レセプター(EGFR;HER−1とも称される)は、HER−2、HER−3及びHER−4と共に、HER−キナーゼファミリーのメンバーである。EGFRは、非小細胞肺ガン、乳ガン、頭頸部ガン、胃ガン、結腸直腸ガン、食道ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、腎臓ガン、膵臓ガン及び卵巣ガンを含む様々なヒト腫瘍において過剰発現される。EGFRの活性化は、細胞分裂、運動性の増加、血管新生及びアポトーシスの減少をもたらし得るシグナリングを引き起こす。これらの効果は、複雑な一連のシグナリング機構、例えばマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及びホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)経路の関与によって媒介される。
【0016】
EGFRはまた、いくつかの他の疾患、例えば炎症性関節炎及び肺粘液の過剰分泌に関与している。
【0017】
EGFRターゲティング抗体、例えばIMC-C225 (Erbitux, Imclone)、EMD72000 (Merck Darmstadt)、ABX-EGF (Abgenix)、h-R3 (theraCIM, YM Biosciences)及びHumax-EGFR (Genmab)の多くは、レセプターに対するリガンドの結合を防止する抗体として単離された。しかし、これらの抗体及び現在利用可能な薬物はいずれも、ガンの処置に完全に有効ではなく、ほとんどが重度の毒性によって制限される。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服若しくは改善すること、又は有用な代替策を提供することである。
【0019】
モジュール性の観点から、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)及び特にナノボディは、多価構築物への組み合わせに非常に適切である。多価構築物を作製するための便利で好ましい方法は、アミド結合を介して、ISVDをコードする個々の核酸を遺伝子融合することによるものであり、ISVDをコードするヌクレオチド配列を、その3’末端核酸を介して、ISVDをコードする別のヌクレオチド配列の5’末端核酸に、必要な場合には様々な長さの(核酸)リンカーを介してカップリングする。したがって、ISVDは、アミド結合を介して、場合によりペプチドリンカーを介してカップリングされる。
【0020】
部分の完全性及び機能性を維持するために、ISVDは、システイン間の分子内ジスルフィド結合を含む。ISVDをコードするヌクレオチド配列の遺伝子融合後、翻訳時に、個々のISVDにおいて、標準(分子内とも称される)ジスルフィド結合を形成する固有特性は影響されないことが広く実証されている。
【0021】
遺伝子融合の容易性及び汎用性の観点から、ISVDの化学的コンジュゲーションは、特に、分子内ジスルフィド結合を妨げずにISVDを所定の部位に選択的にカップリングするための困難な方法を必要とし、及び/又は潜在的に危険な非自己要素を使用するので、好ましい方法ではない。
【0022】
本発明は、ISVDの分子内ジスルフィド結合の実質的にいかなる異常な妨害及び障害も伴わずに、2つのポリペプチド間のジスルフィド結合を介した分子間二量体化を促進する便利な方法を提供する。該方法は、ISVDをさらに含むポリペプチドのC末端伸長部へのシステインの導入を使用する。
【0023】
本発明はまた、本発明のダイマーを作製するための方法を提供する。特に、本発明は、(ポリペプチド)ダイマーを作製するための方法であって、少なくとも:
(i)第1のポリペプチドを提供する工程であって、前記第1のポリペプチドが、
−少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、
−好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む工程;
(ii)第2のポリペプチドを提供する工程であって、前記第2のポリペプチドが、
−少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、
−好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む工程;並びに
(iii)好ましくはpH6.5〜pH7.5において、場合により酸化銅イオン(Cu2+)を追加することによって、前記第1のポリペプチドのC末端伸長部の前記システイン部分のチオール部分と、前記第2のポリペプチドのC末端伸長部の前記システイン部分のチオール部分とをジスルフィド誘導体シスチンに酸化し、前記シスチンが、該ダイマー中に存在する唯一の分子間ジスルフィド結合であり、それによって、前記ダイマーを作製する工程を含む方法に関する。
好ましくは、前記ダイマーの前記[C末端]シスチンを還元する工程は、前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドの分子内ジスルフィド結合の酸化状態が維持される条件下で実施される。換言すれば、ISVDの完全性は維持される。該方法は、前記ダイマーの前記(C末端に位置する)シスチンを還元する工程を場合によりさらに含む。
【0024】
さらに驚くべきことに、本発明のダイマーは、様々なアッセイにおいて、ベンチマーク構築物(例えば、同種の多価及び多重特異性構築物)よりもパフォーマンスが優れていた。ベンチマーク構築物は、本発明のダイマーと同じポリペプチドからなるが、ベンチマーク構築物は、これらのポリペプチドをコードする核酸の遺伝子融合によって作製されたので、第1のポリペプチドは、N末端からC末端方向にアミド結合を介して、第2のポリペプチドにカップリングされている。特に、本発明のダイマーは、ベンチマーク(例えば、同種の二価構築物)よりも良好な親和性(K値(実際又は見掛け)、K値(実際又は見掛け)、kon速度及び/又はkoff速度として適切に測定及び/又は表現される)で、ターゲットに結合し得る。一方、本発明のダイマーは、2つのアルブミン結合ISVDを含有する場合であっても、わずか1つのアルブミン結合ISVDを含有するベンチマークと同様の生体内分布プロファイルを示した。また、予想外のことに、本発明のダイマーは、特に低いターゲット発現を有する細胞において、ベンチマーク構築物と比較して改善されたインターナリゼーションを示した。インターナリゼーションは、優れた有効性に重要であるので、インターナリゼーションの改善は、優れた有効性をもたらすであろう。また、必要な薬物が減少し、ターゲットから離れる薬物が減少するので、インターナリゼーションの改善は、毒性などの副作用を減少させ得る。低いターゲット発現を有する細胞におけるダイマーのインターナリゼーションは、処置にアクセス可能な腫瘍の範囲を拡大し、薬剤耐性を生じる機会を減少させ得る。一方、本発明のダイマーは、ベンチマーク構築物と類似する好ましい生体内分布プロファイルを示した。
【0025】
したがって、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むダイマーであって、前記第1のポリペプチドが、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、(好ましくはC末端において)システイン部分を含むC末端伸長部とを含み;前記第2のポリペプチドが、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、(好ましくはC末端において)システイン部分を含むC末端伸長部とを含み;前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、前記第1のポリペプチドのシステイン部分と、前記第2のポリペプチドのシステイン部分との間のジスルフィド結合を介して共有結合されているダイマーに関する。
【0026】
このように、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む(ポリペプチド)ダイマーであって、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、C末端に位置するジスルフィド結合を介して共有結合されている(ポリペプチド)ダイマーに関する。
【0027】
本発明者らはさらに、本発明のダイマーが、予想外の好ましい結合及び機能的特徴を有することを観察した。これらの特徴はまた、効力のいかなる明らかな及び実質的な損失も伴わずに、長期間保持されていた。これは、ダイマーを保存及び輸送に有用なものにする。したがって、本発明はさらに、反応性システイン部分を含むポリペプチドを保存するための方法であって、少なくとも、前記反応性システイン部分のチオール部分をジスルフィド誘導体シスチンに酸化し、それにより、前記反応性システイン部分を一時的に不活性化する工程を含み、前記ポリペプチドが(内部)シスチン結合をさらに含む方法に関する。
【0028】
本発明者らは、ダイマーが、例えばマレイミド化学反応による例えばC末端システインを使用した官能基のカップリングなどの即時使用のためのプールとして特に適切であり得ると仮説した。軽度の還元条件を用いたプロトコールを開発し、ダイマーの分子間ジスルフィド架橋を還元して、構成ポリペプチドのチオール基を活性化した。最適条件は、内部標準ISVDジスルフィド架橋を還元せずに、ジスルフィドを還元してダイマーの形成をもたらした。したがって、本発明は、反応性システイン部分を含むポリペプチドを作製するための方法であって、少なくとも:
(i)シスチン結合を介して二量体化されたポリペプチドを提供する工程;
(ii)前記シスチン結合を還元する工程を含む方法に関し、
それにより、反応性システイン部分を含むポリペプチドを作製する。
好ましくは、前記シスチン結合は、前記ポリペプチドのC末端部に位置する。好ましくは、前記工程(ii)の還元条件は、内部シスチン結合が還元されないように選択される。
【0029】
加えて、本発明はまた、非常にコントロールされた薬物対抗体比(DAR)及び95%超の純度で、ペイロードを本発明のポリペプチドにコンジュゲートするための方法を提供する。全く予想外のことに、ポリペプチドとペイロードとのコンジュゲート(DAR=1)は、生体内分布プロファイルに対して効果を及ぼさない。また、これらのコンジュゲートポリペプチドは、in vitroにおける細胞毒性及びin vivoにおける腫瘍成長阻害を示した。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドを使用して、被験体を処置するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】使用した構築物の模式図。
図2】競合結合FACS。
図3】HER14細胞におけるEGF媒介性EGFRリン酸化の遮断(0.5mM EGF)。
図4】C末端GGC伸長ポリペプチドのジスルフィドダイマーの還元の模式図。
図5】還元型システイン伸長ポリペプチドのSECプロファイル。
図6】マレイミド−val−cit−MMAE。
図7】T0238−00001−mc−val−cit−PAB−MMAE(ABL100−NC003−1)のSDS−PAGE分析。1)Novexマーカー;2)T0238−00001ダイマー;3)還元型T0238−00001(10mM DTT、2〜8℃、O/N);4)ABL100−NC003−1粗コンジュゲーション混合物;5)ABL100−NC003−1。
図8】還元型T023800001−A、酸化型T023800001−A及びT0238−00001−mc−val−cit−PAB−MMAEの疎水性相互作用クロマトグラムの重ね合わせ。
図9】ポリペプチド−MMAEコンジュゲートのin vitro細胞殺傷:正規化細胞指数(CI)の変動として測定した、MDA−MB−468細胞の増殖に対する異なる濃度の非コンジュゲートナノボディ及びコンジュゲートナノボディの効果のインピーダンス測定モニタリング。矢印は、ナノボディ投与の時点(すなわち、播種の20時間後)を示し、点線は、データ分析のエンドポイント(すなわち、播種の116時間後)を示す。ナノボディの非存在下における細胞成長から得られた細胞指数をコントロールとして用いる。
図10】非コンジュゲートポリペプチド及びMMAEコンジュゲートポリペプチドの用量依存的効果。
図11】ポリペプチド−MMAEコンジュゲートのin vivo有効性。
図12】NCS−Bz−Df及び89Zrを使用したNbの改変及び放射性標識。
図13】3つのポリペプチドの平均%ID/g。
図14】インターナリゼーションしたポリペプチド及び構築物の用量反応曲線。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本明細書を通して先行技術に関するいかなる議論も、このような先行技術が広く公知であること、及び当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを決して自認するものではない。
【0032】
特に指示又は定義がない限り、使用される全ての用語は当技術分野の通常の意味を有し、これらは当業者には明らかであろう。例えば、標準的なハンドブック、例えばSambrook et al. “Molecular Cloning: A Laboratory Manual” ( 2nd.Ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); F. Ausubel et al. eds., “Current protocols in molecular biology”, Green Publishing and Wiley Interscience, New York (1987); Lewin “Genes II”, John Wiley & Sons, New York, N.Y., (1985); Old et al. “Principles of Gene Manipulation: An Introduction to Genetic Engineering”, 2nd edition, University of California Press, Berkeley, CA (1981); Roitt et al. “Immunology” (6th. Ed.), Mosby/Elsevier, Edinburgh (2001); Roitt et al. Roitt’s Essential Immunology, 10th Ed. Blackwell Publishing, UK (2001);及びJaneway et al. “Immunobiology” (6th Ed.), Garland Science Publishing/ Churchill Livingstone, New York (2005)並びに本明細書で引用される一般的な背景技術を参照のこと。
【0033】
特に指示がない限り、具体的に詳述されていない方法、工程、技術及び操作は全て、当業者には明らかであるように、それ自体が公知の方法で実施することができるものであり、それ自体が公知の方法で実施したものである。例えば、本明細書で言及される標準的なハンドブック及び一般的な背景技術、並びにそれらの中で引用されているさらなる参考文献;並びに例えば以下の総説:Presta 2006 (Adv. Drug Deliv. Rev. 58 (5-6): 640-56)、Levin and Weiss 2006 (Mol. Biosyst. 2(1): 49-57)、Irving et al. 2001 (J. Immunol. Methods 248(1-2): 31-45)、Schmitz et al. 2000 (Placenta 21 Suppl. A: S106-12)、Gonzales et al. 2005 (Tumour Biol. 26(1): 31-43)(これらには、親和性成熟などのタンパク質工学技術、並びに免疫グロブリンなどのタンパク質の特異性及び他の所望の特性を改善するための他の技術が記載されている)を再び参照のこと。
【0034】
核酸配列又はアミノ酸配列は、−例えば、それが得られた反応培地又は培養培地と比較して−それが前記供給源又は培地中で通常付随する少なくとも1つの他の成分、例えば別の核酸、別のタンパク質/ポリペプチド、別の生物学的成分若しくは高分子、又は少なくとも1つの夾雑物、不純物若しくは微量成分からそれが分離された場合に、「本質的に単離された(形態)(である)」とみなされる。特に、核酸配列又はアミノ酸配列は、それが少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、より具体的には少なくとも100倍及び最大1000倍又はそれ以上精製された場合に、「本質的に単離された」とみなされる。「本質的に単離された形態の」核酸配列又はアミノ酸配列は、好ましくは、適切な技術、例えば適切なクロマトグラフィー技術、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して決定した場合に、本質的に均一である。
【0035】
文脈上特に明確な必要がない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通して、「含む」、「含むこと」などの語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で(すなわち、「限定されないが、〜を含む」という意味で)解釈されるべきである。
【0036】
例えば、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列又はポリペプチドが、それぞれ別のヌクレオチド配列、アミノ酸配列若しくはポリペプチドを「含む」と言われる場合、又は別のヌクレオチド配列、アミノ酸配列若しくはポリペプチド「から本質的になる」と言われる場合、これは、後者のヌクレオチド配列、アミノ酸配列又はポリペプチドが、最初に言及されたヌクレオチド配列、アミノ酸配列又はポリペプチドにそれぞれ組み込まれていることを意味し得るが、より通常には、これは一般に、最初に言及された配列が実際に作製又は取得された方法(これは、例えば、本明細書に記載される任意の適切な方法であり得る)にかかわらず、最初に言及されたヌクレオチド配列、アミノ酸配列又はポリペプチドが、その配列内において、後者の配列と同じヌクレオチド配列又はアミノ酸配列をそれぞれ有するヌクレオチド又はアミノ酸残基のストレッチをそれぞれ含むことを意味する。非限定的な例として、本発明のポリペプチドが免疫グロブリン単一可変ドメインを含むと言われる場合、これは、前記免疫グロブリン単一可変ドメイン配列が、本発明のポリペプチドの配列に組み込まれていることを意味し得るが、より通常には、これは一般に、前記本発明のポリペプチドが作製又は取得された方法にかかわらず、本発明のポリペプチドが、その配列内において、免疫グロブリン単一可変ドメインの配列を含有することを意味する。また、核酸又はヌクレオチド配列が別のヌクレオチド配列を含むと言われる場合、好ましくは、最初に言及された核酸又はヌクレオチド配列は、それが発現産物(例えば、ポリペプチド)に発現された場合に、後者のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列が前記発現産物の一部を形成するようなものである(換言すれば、後者のヌクレオチド配列は、最初に言及されたより大きな核酸又はヌクレオチド配列と同じリーディングフレーム内にある)。
【0037】
「本質的に〜からなる」又は「から本質的になる」などは、本明細書で使用されるポリペプチドが、本発明のポリペプチドと全く同じであるか、又は免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ末端部、カルボキシ末端部、若しくはアミノ末端部及びカルボキシ末端部の両方に付加された限られた数のアミノ酸残基、例えば1〜20個のアミノ酸残基、例えば1〜10個のアミノ酸残基、好ましくは1〜6個のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個若しくは6個のアミノ酸残基を有する本発明のポリペプチドに対応することを意味する。
【0038】
特定の抗原決定基、エピトープ、抗原又はタンパク質(又はその少なくとも1つの一部、フラグメント若しくはエピトープ)に(特異的に)結合し得、これらに対する親和性を有し、及び/又はこれらに対する特異性を有するアミノ酸配列(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、抗体、ポリペプチド又は一般にその抗原結合タンパク質若しくはポリペプチド若しくはフラグメント)は、前記抗原決定基、エピトープ、抗原又はタンパク質「に対する」又は「を対象とする」と言われる。
【0039】
親和性は、分子相互作用の強度又は安定性を示す。親和性は、一般的に、K又は解離定数(これは、モル/リットル(又はM)の単位を有する)によって示される。親和性はまた、会合定数K(これは、1/Kに等しく、(モル/リットル)−1(又はM−1)の単位を有する)として表現され得る。本明細書では、2つの分子間の相互作用の安定性は、それらの相互作用のK値で主に表現されるであろう;関係式K=1/Kを考慮して、そのK値による分子相互作用の強度の特定はまた、対応するK値を計算するために使用され得ることは、当業者には明らかである。周知の関係式DG=RT.ln(K)(DG=−RT.ln(K)と同等)(式中、Rは、気体定数に等しく、Tは、絶対温度に等しく、lnは、自然対数を示す)によれば、K値は、結合の自由エネルギー(DG)の変化に関係するので、熱力学的意味においても分子相互作用の強度を特徴付ける。
【0040】
有意義(例えば、特異的)であると考えられる生物学的相互作用のKは、典型的には、10−10M(0.1nM)〜10−5M(10000nM)の範囲内である。相互作用が強いほど、そのKは小さい。
【0041】
はまた、(K=koff/kon及びK=kon/koffとなるような)複合体の解離速度定数(koffと示される)とその会合の速度(konと示される)との比として表現され得る。オフ速度koffは、M−1−1の単位を有する。オン速度は、10−1−1〜約10−1−1で変動して、二分子相互作用の拡散律速会合速度定数に近づき得る。関係式t1/2=ln(2)/koffによれば、オフ速度は、所定の分子相互作用の半減期に関係する。オフ速度は、10−6−1(複数日のt1/2を有するほぼ不可逆的な複合体)〜1s−1(t1/2=0.69s)で変動し得る。
【0042】
抗原又は抗原決定基に対する抗原結合タンパク質(例えば、ISVD)の特異的結合は、例えば、スカッチャード分析及び/又は競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ、及び当技術分野でそれ自体が公知のそれらの様々な変法;並びに本明細書で言及される他の技術を含むそれ自体が公知の任意の適切な方法で決定され得る。
【0043】
2つの分子間の分子相互作用の親和性は、それ自体が公知の様々な技術、例えば一方の分子をバイオセンサーチップ上に固定化し、流動条件下で他方の分子を固定化分子上に通過させて、kon、koff測定値及びしたがってK(又はK)値を求める周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技術(例えば、Ober et al. 2001, Intern. Immunology 13: 1551-1559を参照のこと)を介して測定され得る。これは、例えば、周知のBIACORE(登録商標)instruments (Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden)を使用して実施され得る。Kinetic Exclusion Assay(KINEXA(登録商標))(Drake et al. 2004, Analytical Biochemistry 328: 35-43)は、結合パートナーを標識せずに溶液中の結合事象を測定し、複合体の解離を動力学的に排除することに基づくものである。
【0044】
GYROLAB(登録商標)イムノアッセイシステムは、自動生体分析及び迅速なサンプルターンアラウンドのプラットフォームを提供する(Fraley et al. 2013, Bioanalysis 5: 1765-74)。
【0045】
また、測定プロセスが、例えば1つの分子のバイオセンサー上のコーティングに関連する人工物によって、示唆された分子の固有の結合親和性に対して何らかの影響を与える場合には、測定されたKが見掛けのKに相当し得ることは、当業者には明らかであろう。また、1つの分子が、他の分子の複数の認識部位を含有する場合には、見掛けのKが測定され得る。このような状況では、測定された親和性は、2つの分子による相互作用のアビディティによって影響され得る。
【0046】
「特異性」という用語は、国際公開公報第08/020079号の53〜56頁の段落n)に示されている意味を有し、その中で言及されているように、特定の抗原結合分子又は抗原結合タンパク質(例えば、本発明のダイマー又はポリペプチド)分子が結合し得る異なる種類の抗原又は抗原決定基の数を指す。抗原結合分子(例えば、本発明のポリペプチド又はISVD)と関連抗原との間の結合を測定するためのいくつかの好ましい技術も記載されている国際公開公報第08/020079号(これは、参照により本明細書に組み入れられる)の53〜56頁に記載されているように、抗原結合タンパク質の特異性は、親和性及び/又はアビディティに基づいて決定され得る。典型的には、抗原結合タンパク質(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチド)は、10−5〜10−12モル/リットル以下、好ましくは10−7〜10−12モル/リットル以下、より好ましくは10−8〜10−12モル/リットルの解離定数(K)で(すなわち、10〜1012リットル/モル以上、好ましくは10〜1012リットル/モル以上、より好ましくは10〜1012リットル/モルの会合定数(K)で)、それらの抗原に結合するであろう。10−4モル/リットル超の任意のK値(又は、10リットル/モル未満の任意のK値)は、一般に、非特異的結合を示すと考えられる。好ましくは、本発明の一価免疫グロブリン単一可変ドメインは、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で、所望の抗原に結合するであろう。抗原又は抗原決定基に対する抗原結合タンパク質の特異的結合は、例えば、スカッチャード分析及び/又は競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ、及び当技術分野でそれ自体が公知のそれらの様々な変法;並びに本明細書で言及される他の技術を含むそれ自体が公知の任意の適切な方法で決定され得る。当業者には明らかであるように、及び国際公開公報第08/020079号の53〜56頁に記載されているように、解離定数は、実際の又は見掛けの解離定数であり得る。解離定数を決定するための方法は当業者には明らかであり、例えば国際公開公報第08/020079号の53〜56頁で言及されている技術が挙げられる。
【0047】
親和性を評価するために使用され得る別のアプローチは、Friguet et al. 1985 (J. Immunol. Methods 77: 305-19)の2段階ELISA(酵素結合免疫吸着測定)法である。この方法は、溶液相結合平衡測定を確立し、プラスチックなどの支持体上の分子の1つの吸着に関係する可能性のある人工物を避ける。
【0048】
しかしながら、Kの正確な測定は、非常に大きな労力を要し得るので、多くの場合、見掛けのK値を決定して2つの分子の結合強度を評価する。全ての測定が一貫した方法で行われる限り(例えば、アッセイ条件を変化させないで維持する)、見掛けのK測定値を真のKの近似値として使用し得ることに留意すべきであり、したがって本明細書では、同等の重要性又は関連性でK及び見掛けのKを扱うべきである。
【0049】
最後に、多くの状況において、経験豊富な科学者は、いくつかの参照分子に対する結合親和性を決定することが好都合であると判断し得ることに留意すべきである。例えば、分子AとBとの間の結合強度を評価するために、例えば、Bに結合することが公知の参照分子Cであって、フルオロフォア若しくは発色団基で、又はELISA若しくはFACS(蛍光活性化細胞選別)若しくは他のフォーマットにおける検出を容易にするための他の化学的部分(例えば、ビオチン)(蛍光検出の場合にはフルオロフォア、光吸収検出の場合には発色団、ストレプトアビジン媒介性ELISA検出の場合にはビオチン)で適切に標識された参照分子Cを使用し得る。典型的には、参照分子Cは一定濃度に維持され、Aの濃度は、所定濃度又は所定量のBによって変動する。その結果として、IC50値は、Aの非存在下でCについて測定されたシグナルが半減するAの濃度に対応して得られる。参照分子の総濃度crefだけではなく、KDref(参照分子のK)が公知である限り、相互作用A−Bの見掛けのKは、以下の式:K=IC50/(1+cref/KDref)から得られ得る。cref<<KDref、K〜IC50であることに留意する。比較される結合剤について、IC50の測定が一貫した方法で実施される限り(例えば、crefを一定に維持する)、分子相互作用の強度又は安定性はIC50によって評価され得、この測定は、本明細書を通してK又は見掛けのKと同等であると判断される。
【0050】
半数最大阻害濃度(IC50)は、生物学的又は生化学的な機能、例えば薬理学的効果の阻害に関する化合物の有効性の尺度である。この定量的尺度は、所定の生物学的プロセス(又はプロセスの成分、すなわち酵素、細胞、細胞レセプター、走化性、退形成、転移、侵襲性など)を半分に阻害するために、どの程度のISV又はナノボディ(阻害剤)が必要であるかを示す。換言すれば、それは、物質の半数最大(50%)阻害濃度(IC)(50%IC又はIC50)である。薬物のIC50は、用量反応曲線を構築し、アゴニスト活性の反転に対する異なる濃度のアンタゴニスト(例えば、本発明のISV又はナノボディ)の効果を調べることによって決定され得る。IC50値は、所定のアンタゴニスト(例えば、本発明のISV又はナノボディ)について、アゴニストの最大生物学的反応の半分を阻害するために必要な濃度を決定することによって計算され得る。
【0051】
半数最大有効濃度(EC50)は、指定の曝露時間後にベースライン〜最大値の中間の反応を誘導する化合物の濃度を指す。本文脈では、それは、ポリペプチド、ISV又はナノボディの効力の尺度として使用される。段階的な用量反応曲線のEC50は、その最大効果の50%が観察される化合物の濃度に相当する。濃度は、好ましくは、モル単位で表現される。
【0052】
生物学的な系では、リガンド濃度のわずかな変化は、典型的には、シグモイド関数に従う反応の急速な変化をもたらす。リガンド濃度の増加に伴う反応の増加が鈍り始める変曲点は、EC50である。これは、最良適合線の微分によって数学的に決定され得る。ほとんどの場合、推定のためにグラフに頼ることが好都合である。EC50を実施例セクションで提供する場合、可能な限り正確にKDを反映するように実験を設計した。したがって、換言すれば、EC50値は、KD値とみなされ得る。「平均KD」という用語は、少なくとも1回、しかし好ましくは複数回、例えば少なくとも2回の実験で得られた平均KD値に関する。「平均」という用語は、「平均」」という数学的用語(データの合計をデータ内の項目の数で割ったもの)を指す。
【0053】
それはまた、化合物の阻害の尺度であるIC50(50%阻害)に関する。競合結合アッセイ及び機能的アンタゴニストアッセイでは、IC50は、用量反応曲線の最も一般的な集約尺度である。アゴニスト/刺激物アッセイでは、最も一般的な集約尺度は、EC50である。
【0054】
本明細書で使用される「遺伝子融合」という用語は、アミド結合を介した、ISVDをコードする個々の核酸のカップリングを指し、ISVDをコードするヌクレオチド配列は、その3’末端核酸を介して、ISVDをコードする別のヌクレオチド配列の5’末端核酸に、適切な場合には様々な長さの(核酸)リンカーを介して、ホスホジエステル結合を介してカップリングされ、例えば、ISVDをコードするヌクレオチド配列は、その3’末端核酸を介して、リンカー配列の5’末端核酸(これは、その3’末端核酸を介して、ISVDをコードする別のヌクレオチド配列の5’末端核酸に、ホスホジエステル結合を介してカップリングされている)に、ホスホジエステル結合を介してカップリングされる(すなわち、ISVD及び場合によりリンカーは、遺伝子融合される)。遺伝子融合は、標準的なリコンビナントDNAプロトコール(前掲)にしたがって、又は実施例セクション、例えばGaraicoechea et al. (2008, J Virol. 82: 9753-9764)に記載されているように実施され得る。
【0055】
アミノ酸配列は、文脈に応じて、単一のアミノ酸又は2つ以上のアミノ酸の非分枝配列を意味すると解釈される。ヌクレオチド配列は、3つ以上のヌクレオチドの非分枝配列を意味すると解釈される。
【0056】
アミノ酸は、天然に存在するタンパク質において一般的に見られるL−アミノ酸であり、以下の表1に列挙されている。D−アミノ酸を含有するアミノ酸配列は、この定義によって包含されることを意図するものではない。翻訳後修飾アミノ酸を含有する任意のアミノ酸配列は、改変位置と共に、以下の表に示されている記号を使用して、最初に翻訳されるアミノ酸配列として記載され得る;例えば、ヒドロキシル化又はグリコシル化、しかしこれらの改変は、アミノ酸配列において明示的に示されるものではない。配列改変された結合、架橋及びエンドキャップ、非ペプチジル結合などとして表現され得る任意のペプチド又はタンパク質は、この定義によって包含される。
【表1】
【0057】
「タンパク質」、「ペプチド」、「タンパク質/ペプチド」及び「ポリペプチド」という用語は、本開示を通して互換的に使用され、それぞれが、本開示の目的のために同じ意味を有する。各用語は、2つ以上のアミノ酸の直鎖で作られた有機化合物を指す。化合物は、10個以上のアミノ酸;25個以上のアミノ酸;50個以上のアミノ酸;100個以上のアミノ酸、200個以上のアミノ酸、さらには300個以上のアミノ酸を有し得る。当業者であれば、ポリペプチドは一般に、タンパク質よりも少ないアミノ酸を含むことを認識するであろうが、ポリペプチドとタンパク質とを区別するアミノ酸の数に関する当技術分野で認められたカットオフポイントはない;ポリペプチドは、化学合成又はリコンビナント法によって作製され得る;タンパク質は、一般に、当技術分野で公知のリコンビナント法によってin vitro又はin vivoで作製される。
【0058】
本発明の理解を容易にするために、本発明に関連して使用される専門用語の簡潔な解説を提供する。慣例により、ポリペプチドの一次構造におけるアミド結合は、アミノ酸が記載される順序にあり、ポリペプチドのアミン末端(N末端)は常に左側にあり、酸末端(C末端)は右側にある。
【0059】
本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む。その最も単純な形態では、本発明のポリペプチドは、1つのISVDと、それに続く(結合又はコンジュゲートされた)システインとからなる。
【0060】
C末端伸長部は、システイン残基を含む最後の(最もC末端に位置する)ISVDの最後のアミノ酸残基(通常はセリン残基)のC末端に存在し、好ましくは、本発明のシステイン部分は、C末端伸長部のC末端に存在し又は配置される。
【0061】
本発明との関連では、C末端伸長部は、少なくとも1つのアミノ酸(すなわち、システイン部分)からなるか、又はC末端伸長部のC末端に存在し若しくは配置された少なくとも1つのシステイン残基を含む少なくとも2個のアミノ酸残基〜最大50個のアミノ酸残基、好ましくは2〜40個のアミノ酸残基、例えば2〜30個のアミノ酸残基、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個若しくは20個のアミノ酸残基のアミノ酸配列からなる。例えば、C末端伸長部は、そのC末端に位置するアミノ酸がシステイン部分である1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個又は15個のアミノ酸残基からなり得、例えば、C末端伸長部は、システイン残基のみからなる;例えば、C末端伸長部は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個のアミノ酸残基と、それに続くシステイン部分とからなり得る;例えば、C末端伸長部は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個のグリシン残基と、それに続くシステイン部分とからなり得る;例えば、C末端伸長部は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個のアラニン残基と、それに続くシステイン部分とからなり得る。
【0062】
別の態様では、システイン残基は、C末端伸長部内の部位であって、C末端部(C末端)と異なる部位に存在し又は配置される。例えば、システイン残基は、C末端伸長部の最後のアミノ酸残基の前の(上流の)アミノ酸残基(すなわち、本発明のポリペプチドの最後から2番目のアミノ酸残基)又はC末端伸長部の最後から2番目のアミノ酸残基の前の(上流の)アミノ酸残基(すなわち、本発明のポリペプチドの最後から3番目のアミノ酸残基)に存在し又は配置される。例えば、C末端伸長部は、それぞれその1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目又は7番目のアミノ酸残基(すなわち、本発明のポリペプチドの最後から2番目のアミノ酸残基)がシステインである2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個のアミノ酸残基(例えば、グリシン又はアラニンなど)からなり得る;又は、C末端伸長部は、それぞれその1番目、2番目、3番目、4番目、5番目又は6番目のアミノ酸残基(すなわち、本発明のポリペプチドの最後から3番目のアミノ酸残基)がシステインである3個、4個、5個、6個、7個又は8個のアミノ酸残基(例えば、グリシン又はアラニンなど)からなり得る。
【0063】
C末端伸長部の好ましい例を表2に示す。
【表2】
【0064】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、好ましくはC末端においてシステイン部分を含む50個、40個、30個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含むダイマーに関する。一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記C末端伸長部が、GlyGlyGlyCys(配列番号:4)、GlyGlyCys(配列番号:3)、GlyCys(配列番号:2)又はCys(配列番号:1)からなるダイマーに関する。
【0065】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記ポリペプチドが、配列番号:1〜15からなる群より選択されるC末端伸長部を含むダイマーに関する。
【0066】
C末端伸長部は、当業者に公知の任意の適切な技術を介して、例えば遺伝子融合のための上記リコンビナントDNA技術などによって、ISVDにカップリングされ得る。
【0067】
本発明のポリペプチドは、複数のISVD、例えば2つ、3つ、4つ又はさらにそれ以上のISVDを含み得る。したがって、本発明は、少なくとも2つのISVDを含む本発明のポリペプチドに関する。加えて、本発明は、本明細書に記載される第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むダイマーであって、前記第1のポリペプチドが少なくとも2つのISVDを含み、及び/又は前記第2のポリペプチドが少なくとも2つのISVDを含むダイマーに関する。
【0068】
本発明のポリペプチドに含まれるISVDは、同じものでもよいし、又は異なるものでもよい。一実施態様では、ISVDが同じものであるか、又は異なるものであるかにかかわらず、ISVDは、同じターゲットに結合し得る。したがって、本発明は、同一のISVD、同じターゲットに結合するISVD、並びに/又は同じCDR1、CDR2及びCDR3をそれぞれ含むISVDを含む本発明のポリペプチドに関する。一実施態様では、ISVDは、異なるターゲットに結合し得る。一実施態様では、本発明は、本明細書に記載される第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むダイマーであって、前記第1のポリペプチドの前記少なくとも2つのISVDが同一のものであり、及び/又は前記第2のポリペプチドの前記少なくとも2つのISVDが同一のものであるダイマーに関する。
【0069】
本発明のポリペプチドでは、本発明のダイマーに含まれるか否かにかかわらず、ISVDは直接連結され得るか、又はリンカーを介して連結され得る。
【0070】
相対的親和性は、ポリペプチドにおけるISVDの位置に依存し得る。本発明のポリペプチドにおけるISVDの順序(向き)は、当業者の必要性に応じて選択され得ると認識されよう。個々のISVDの順序だけではなく、ポリペプチドがリンカーを含むかも、設計選択の問題である。リンカーの有無にかかわらず、いくつかの向きは、他の向きと比較して好ましい結合特徴を提供し得る。例えば、本発明のポリペプチドにおける第1のISVD(例えば、ISVD1)及び第2のISVD(例えば、ISVD2)の順序は、(N末端からC末端に)(i)ISVD1(例えば、ナノボディ1)−[リンカー]−ISVD2(例えば、ナノボディ2);又は(ii)ISVD2(例えば、ナノボディ2)−[リンカー]−ISVD1(例えば、ナノボディ1)(式中、リンカーは任意選択である)であり得る。全ての向きが、本発明によって包含される。所望の結合特徴を提供する向きのISVDを含有するポリペプチドは、例えば実施例セクションで例証されているように、ルーチンなスクリーニングによって容易に同定され得る。
【0071】
本発明のポリペプチドでは、2つ以上のISVD(例えば、ナノボディ)は、(例えば、国際公開公報第99/23221号に記載されているように)互いに直接連結され得、及び/又は1つ以上の適切なリンカーを介して互いに連結され得、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。本発明のポリペプチドに使用するための適切なリンカーは当業者には明らかであり、一般に、アミノ酸配列を連結するために当技術分野で使用される任意のリンカーであり得る。好ましくは、前記リンカーは、医薬用途を目的とするタンパク質又はポリペプチドの構築に使用するために適切である。
【0072】
いくつかの特に好ましいリンカーとしては、抗体フラグメント又は抗体ドメインを連結するために当技術分野で使用されるリンカーが挙げられる。これらとしては、上記で引用される刊行物で言及されているリンカーだけではなく、例えば、ダイアボディ又はScFvフラグメントを構築するために当技術分野で使用されるリンカーが挙げられる(しかしながら、この点に関して、ダイアボディ又はScFvフラグメントでは、使用されるリンカーは、関連V及びVドメインが互いに一緒になって完全な抗原結合部位を形成することを可能にする長さ、フレキシビリティの程度及び他の特性を有するべきであるのに対して、各ISVD(例えば、ナノボディ)はそれ自体で完全な抗原結合部位を形成するので、本発明のポリペプチドに使用されるリンカーの長さ及びフレキシビリティには特に制限がないことに留意すべきである)。
【0073】
例えば、リンカーは、適切なアミノ酸又はアミノ酸配列、特に1〜50個、好ましくは1〜30個、例えば1〜10個のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり得る。このようなアミノ酸配列のいくつかの好ましい例としては、例えば、(glyserタイプのgly−serリンカー、例えば国際公開公報第99/42077号に記載されている例えば(glyser)又は(glyser、並びに本明細書で言及されるAblynxによる出願(例えば、国際公開公報第06/040153号及び国際公開公報第06/122825号を参照のこと)に記載されているGS30、GS15、GS9及びGS7リンカー、並びにヒンジ領域、例えば(例えば、国際公開公報第94/04678号に記載されている)天然に存在する重鎖抗体のヒンジ領域又は類似配列が挙げられる。好ましいリンカーは、表3に示されている。
【0074】
いくつかの他の特に好ましいリンカーは、ポリアラニン(例えば、AAA)、並びにリンカーGS30(国際公開公報第06/122825号の配列番号:85)及びGS9(国際公開公報第06/122825号の配列番号:84)である。
【0075】
(重要ではないが、それは通常は、ScFvフラグメントに使用されるリンカーのように)使用されるリンカーの長さ、フレキシビリティの程度及び/又は他の特性は、本発明の最終的なポリペプチド及び/又はダイマーの特性(限定されないが、ケモカインに対する又は他の抗原の1つ以上に対する親和性、特異性又はアビディティを含む)に対していくらかの影響を及ぼし得ることは、本発明の範囲内に包含される。本明細書の開示に基づいて、当業者であれば、場合によりいくつかの限られたルーチンな実験の後に、本発明の特定のポリペプチド及び/又はダイマーに使用するための最適なリンカーを決定することができるであろう。
【0076】
2つ以上のリンカーが本発明のポリペプチドに使用される場合、これらのリンカーは、同じものでもよいし、又は異なるものでもよい。この場合もやはり、本明細書の開示に基づいて、当業者であれば、場合によりいくつかの限られたルーチンな実験の後に、本発明の特定のポリペプチドに使用するための最適なリンカーを決定することができるであろう。
【0077】
本発明のポリペプチドでは、ISVDは、N末端伸長部の前にあり得る。本発明との関連では、N末端伸長部は、少なくとも1個のアミノ酸残基〜最大40個のアミノ酸残基、好ましくは2〜30個のアミノ酸残基、例えば2〜20個のアミノ酸残基、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のアミノ酸残基のアミノ酸配列からなる。N末端伸長部は、本発明のポリペプチドにおける1番目の(すなわち、最もN末端に位置する)ISVDの1番目の(すなわち、最もN末端に位置し、Kabatナンバリングにしたがってアミノ酸1と一般に表記される)アミノ酸残基のN末端に存在する。したがって、本発明は、N末端伸長部を含む第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドに関する。
【0078】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のポリペプチドの前記少なくとも2つのISVDが同一のものであり、及び/又は前記第2のポリペプチドの前記少なくとも2つのISVDが同一のものであるダイマーに関する。
【0079】
一実施態様では、ダイマーの本発明の第1のポリペプチド及び本発明の第2のポリペプチドは、異なるものである。
【0080】
一実施態様では、ダイマーを構成する本発明の第1のポリペプチド及び本発明の第2のポリペプチドは、同じものである。したがって、本発明の第1のポリペプチド及び本発明の第2のポリペプチドは、同一のものである。
【表3】
【0081】
以下でさらに詳述されるように、ISVDは、VHH、V又はVドメインに由来し得るが、しかしながら、ISVDは、本発明のポリペプチド又は本発明のダイマーにおいてV及びVドメインの相補的ペアを形成しないように選択される。ナノボディ、VHH及びヒト化VHHは、軽鎖を有しない天然ラクダ抗体に由来するという点で異例であり、実際、これらのドメインは、ラクダ軽鎖と会合してVHH及びVの相補的ペアを形成することができない。したがって、本発明のダイマー及びポリペプチドは、相補的ISVDを含まず、及び/又は相補的ISVDペア、例えば相補的V/Vペアなどを形成しない。
【0082】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記リンカーが、配列番号:16〜26からなる群より選択されるダイマーに関する。
【0083】
一価ポリペプチドは、1つの結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)のみを含み、又はこれから本質的になる。2つの以上の結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)を含むポリペプチドは、本明細書では「多価」ポリペプチドとも称され、このようなポリペプチド中に存在する結合単位/免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書では「多価フォーマット」であるとも称される。例えば、「二価」ポリペプチドは、リンカー配列を介して場合により連結された2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得、「三価」ポリペプチドは、2つのリンカー配列を介して場合により連結された3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得;「四価」ポリペプチドは、3つのリンカー配列を介して場合により連結された4つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る。
【0084】
多価ポリペプチドでは、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、同じものでもよいし、又は異なるものでもよく、同じ抗原若しくは抗原決定基を対象とし得(例えば、エピトープの同じ部分に対する、又はエピトープの異なる部分に対するものであり得)、又はあるいは異なる抗原若しくは抗原決定基を対象とし得;又はそれらの適切な組み合わせであり得る。少なくとも1つの結合単位が第1のターゲットの第1の抗原を対象とし、少なくとも1つの結合単位が(例えば、第1のターゲットと異なる)第2のターゲットの抗原を対象とする少なくとも2つの結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)を含有するポリペプチドは、「多重特異性」ポリペプチドとも称され、このようなポリペプチド中に存在する結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)は、本明細書では「多重特異性フォーマット」であるとも称される。したがって、例えば、本発明の「二重特異性」ポリペプチドは、第1のターゲットの第1の抗原を対象とする少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、(すなわち、前記第1のターゲットの第1の抗原と異なる)第2の抗原を対象とする少なくとも1つのさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインとを含むポリペプチドである、など。
【0085】
例えば、「二パラトープ性ポリペプチド」又は「三パラトープ性ポリペプチド」などの「多パラトープ性ポリペプチド」は、異なるパラトープをそれぞれ有する2つ以上の結合単位を含み、又はこれらから本質的になる。さらなる態様では、本発明のポリペプチドは、例えば、「本発明の二パラトープ性ポリペプチド」又は「本発明の三パラトープ性ポリペプチド」などの多パラトープ性ポリペプチド(本明細書では「本発明の多パラトープ性ポリペプチド」とも称される)である。本明細書で使用される「多パラトープ性」(抗原)結合分子又は「多パラトープ性」ポリペプチドという用語は、少なくとも2つ(すなわち、2つ以上)の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドであって、「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインが第1のターゲットを対象とし、「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインが同じ第1のターゲットを対象とし、前記「第1の」及び「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインが異なるパラトープを有するポリペプチドを意味するものである。したがって、多パラトープ性ポリペプチドは、第1のターゲットを対象とする2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含み、又はこれらからなり、少なくとも1つの「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、前記第1のターゲット上の第1のエピトープを対象とし、少なくとも1つの「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、前記第1のターゲット上の第1のエピトープと異なる前記第1のターゲット上の第2のエピトープを対象とする。
【0086】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、一価ポリペプチド、二価ポリペプチド、多価ポリペプチド、単一特異性ポリペプチド、二重特異性ポリペプチド及び多重特異性ポリペプチドの群より選択されるダイマーに関する。
【0087】
本明細書で使用される本発明の「ターゲット」は、ISVDが結合し得る任意の適切な抗原(例えば、任意の目的のターゲット)である。本発明のISVDは、例えば、ターゲット(例えば、悪性腫瘍に関与するレセプターチロシンキナーゼ(RTK)又はGタンパク質共役レセプター(GPCR)など)の抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニット又はコンフォメーション(confirmation)(該当する場合)に結合し得るか、又はこれを対象とし得る。本発明のターゲットは、好ましくは細胞の表面上の任意のターゲット、例えば悪性腫瘍に関与することが公知の細胞レセプターなどであり得る。例えば、レセプターチロシンキナーゼ(RTK)及びRTK媒介性シグナル伝達経路は、腫瘍の開始、維持、血管新生及び血管増殖に関与する。約20個の異なるRTKクラスが同定されており、これらの中で最も広く研究されているものは、1.RTKクラスI(EGFレセプターファミリー)(ErbBファミリー)、2.RTKクラスII(インスリンレセプターファミリー)、3.RTKクラスIII(PDGFレセプターファミリー)、4.RTKクラスIV(FGFレセプターファミリー)、5.RTKクラスV(VEGFレセプターファミリー)、6.RTKクラスVI(HGFレセプターファミリー)、7.RTKクラスVII(Trkレセプターファミリー)、8.RTKクラスVIII(Ephレセプターファミリー)、9.RTKクラスIX(AXLレセプターファミリー)、10.RTKクラスX(LTKレセプターファミリー)、11.RTKクラスXI(TIEレセプターファミリー)、12.RTKクラスXII(RORレセプターファミリー)、13.RTKクラスXIII(DDRレセプターファミリー)、14.RTKクラスXIV(RETレセプターファミリー)、15.RTKクラスXV(KLGレセプターファミリー)、16.RTKクラスXVI(RYKレセプターファミリー)、17.RTKクラスXVII(MuSKレセプターファミリー)である。特に、上皮成長因子レセプター(EGFR)、血小板由来成長因子レセプター(PDGFR)、血管内皮成長因子レセプター(VEGFR)、c−Met、HER3、プレキシン、インテグリン、CD44、RON、並びにRas/Raf/マイトジェン活性化タンパク質(MAP)−キナーゼ及びホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)/Akt/哺乳類ラパマイシンターゲットタンパク質(mTOR)経路などの経路に関与するレセプターなどのターゲット。
【0088】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のターゲット及び前記第2のターゲットが、GPCR、レセプターチロシンキナーゼ、DDR1、ジスコイジンI(CD167a抗原)、DDR2、ErbB−1、C−erbB−2、FGFR−1、FGFR−3、CD135抗原、CD117抗原、タンパク質チロシンキナーゼ−1、c−Met、CD148抗原、C−ret、ROR1、ROR2、Tie−1、Tie−2、CD202b抗原、Trk−A、Trk−B、Trk−C、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、Notchレセプター1−4、FASレセプター、DR5、DR4、CD47、CX3CR1、CXCR−3、CXCR−4、CXCR−7、ケモカイン結合タンパク質2、及びCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10及びCCR11;MART−1、ガン胎児性抗原(「CEA」)、gp100、MAGE−1、HER−2、及びルイス抗原、CD123、CD44、CLL−1、CD96、CD47、CD32、CXCR4、Tim−3、CD25、TAG−72、Ep−CAM、PSMA、PSA、GD2、GD3、CD4、CD5、CD19、CD20、CD22、CD33、CD36、CD45、CD52、及びCD147;成長因子レセプター(ErbB3及びErbB4を含む);及びサイトカインレセプター(インターロイキン−2レセプターγ鎖(CD132抗原)を含む);インターロイキン−10レセプターα鎖(IL−10R−A);インターロイキン−10レセプターβ鎖(IL−10R−B);インターロイキン−12レセプターβ−1鎖(IL−12R−β1);インターロイキン−12レセプターβ−2鎖(IL−12レセプターβ−2);インターロイキン−13レセプターα−1鎖(IL−13R−α−1)(CD213al抗原);インターロイキン−13レセプターα−2鎖(インターロイキン−13結合タンパク質);インターロイキン−17レセプター(IL−17レセプター);インターロイキン−17Bレセプター(IL−17Bレセプター);インターロイキン21レセプター前駆体(IL−21R);インターロイキン−1レセプター、I型(IL−1R−1)(CD121a);インターロイキン−1レセプター、II型(IL−1R−β)(CDw121b);インターロイキン−1レセプターアンタゴニストタンパク質(IL−1ra);インターロイキン−2レセプターα鎖(CD25抗原);インターロイキン−2レセプターβ鎖(CD122抗原);インターロイキン−3レセプターα鎖(IL−3R−α)(CD123抗原)からなる群より独立して選択されるダイマーに関する。
【0089】
例示的な分子ターゲット(例えば、抗原)としては、CDタンパク質、例えばCD2、CD3、CD4、CD8、CD11、CD19、CD20、CD22、CD25、CD33、CD34、CD40、CD52;ErbBレセプターファミリーのメンバー、例えばEGFレセプター(EGFR、HER1、ErbB1)、HER2(ErbB2)、HER3(ErbB3)又はHER4(ErbB4)レセプター;マクロファージレセプター、例えばCRIg;腫瘍壊死因子、例えばTNFa又はTRAIL/Apo−2;細胞接着分子、例えばLFA−1、Mad、p150、p95、VLA−4、ICAM−1、VCAM及びανβ3インテグリン(そのa又はβサブユニットのいずれかを含む);成長因子及びレセプター、例えばEGF、FGFR(例えば、FGFR3)及びVEGF;IgE;サイトカイン、例えばIL1;サイトカインレセプター、例えばIL2レセプター;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA−4;プロテインC;ニュートロフィリン;エフリン及びレセプター;ネトリン及びレセプター;スリット及びレセプター;ケモカイン及びケモカインレセプター、例えばCCL5、CCR4、CCR5;アミロイドβ;補体因子、例えば補体因子D;リポタンパク質、例えば酸化LDL(oxLDL);リンホトキシン、例えばリンホトキシンα(LTa)が挙げられる。他の分子ターゲットとしては、Tweak、B7RP−1、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/9型ケキシン(PCSK9)、スクレロスチン、c−kit、Tie−2、c−fms及び抗M1が挙げられる。
【0090】
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド及び/又はダイマーは、一般に、そのターゲットの全ての天然に存在する類似体又は合成類似体、変異体、突然変異体、アレル、部分及びフラグメントに結合することも予想される。
【0091】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のポリペプチドの前記ISVDが第1のターゲットに結合し、及び/又は前記第2のポリペプチドの前記ISVDが第2のターゲットに結合するダイマーに関する。
【0092】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、
−競合FACSによって決定した場合に、多くとも100nM、例えば50nM、20nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、好ましくはさらに多くとも2nM、例えば1nMのIC50で;
−10−5〜10−12モル/リットル以下、好ましくは10−7〜10−12モル/リットル以下、より好ましくは10−8〜10−12モル/リットルの解離定数(K)で;
−10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1、例えば10−1−1〜10−1−1の会合速度(kon速度)で;及び/又は
−1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1、例えば10−4−1〜10−6−1の解離速度(koff速度)で、
前記第1のポリペプチドが第1のターゲットに結合するダイマーに関する。
【0093】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、
−競合FACSによって決定した場合に、多くとも100nM、例えば50nM、20nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、好ましくはさらに多くとも2nM、例えば1nMのIC50で;
−10−5〜10−12モル/リットル以下、好ましくは10−7〜10−12モル/リットル以下、より好ましくは10−8〜10−12モル/リットルの解離定数(K)で;
−10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1、例えば10−1−1〜10−1−1の会合速度(kon速度)で;及び/又は
−1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1、例えば10−4−1〜10−6−1の解離速度(koff速度)で、
前記第2のポリペプチドが第2のターゲットに結合するダイマーに関する。
【0094】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のターゲット及び前記第2のターゲットが異なるものであるダイマーに関する。
【0095】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のターゲット及び前記第2のターゲットが同一のものであるダイマーに関する。
【0096】
特に指示がない限り、「免疫グロブリン配列」という用語は−重鎖抗体又は従来の4本鎖抗体を指すために本明細書で使用されるかにかかわらず−全長抗体、その個々の鎖及びその部分、ドメイン又はフラグメント(限定されないが、抗原結合ドメイン又はフラグメント、例えばそれぞれVHHドメイン又はV/Vドメインを含む)の両方を含む一般用語として使用される。加えて、(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「VHH配列」又は「タンパク質配列」のような点で)本明細書で使用される「配列」という用語は、文脈上特により限定的な解釈の必要がない限り、関連アミノ酸配列及びそれをコードする核酸又はヌクレオチド配列の両方を含むと一般に理解されるべきである。
【0097】
免疫グロブリン単一可変ドメインは、結合単位として機能し得る(すなわち、同じターゲットの同じ若しくは異なるエピトープに対する、及び/又は1つ以上の異なるターゲットに対する)1つ以上のさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインを場合により含有し得るポリペプチドの調製のための「結合単位」、「結合ドメイン」又は「ビルディングブロック」(これらの用語は、互換的に使用される)として使用され得る。
【0098】
「単一可変ドメイン」(「SVD」)と互換的に使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(「ISVD」)という用語は、抗原結合部位が単一免疫グロブリンドメイン上に存在し、及びそれによって形成される分子を定義する。これは、免疫グロブリン単一可変ドメインを、2つの免疫グロブリンドメイン(特に、2つの可変ドメイン)が相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリン又はそれらのフラグメントと区別する。典型的には、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)は相互作用して、抗原結合部位を形成する。この場合、VH及びVLの両方の相補性決定領域(CDR)が、抗原結合部位に寄与するであろう(すなわち、合計6つのCDRが、抗原結合部位の形成に関与するであろう)。
【0099】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一V又はVドメインによって形成される。したがって、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は、3つ未満のCDRによって形成される。
【0100】
したがって、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」及び「単一可変ドメイン」という用語は、抗原結合部位の形成のために少なくとも2つの可変ドメインの相互作用を必要とする従来の免疫グロブリン又はそれらのフラグメントを含まない。しかしながら、これらの用語は、抗原結合部位が単一可変ドメインによって形成される従来の免疫グロブリンのフラグメントを含む。
【0101】
一般に、単一可変ドメインは、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になるアミノ酸配列であろう。このような単一可変ドメイン及びフラグメントは、最も好ましくは、それらが免疫グロブリンフォールドを含むか、又は適切な条件下で免疫グロブリンフォールドを形成することができるようなものである。このように、単一抗原結合単位(すなわち、例えば従来の抗体及びscFvフラグメント中に存在する可変ドメイン(これは、機能的抗原結合単位を形成するために、−例えば、V/V相互作用を通して−別の可変ドメインと相互作用する必要がある)の場合のように、機能的抗原結合単位を形成するために、単一抗原結合単位が別の可変ドメインと相互作用する必要がないような、単一可変ドメインから本質的になる機能的抗原結合単位)を形成することができる限り、単一可変ドメインは、例えば、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)若しくはその適切なフラグメント;又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列又はVHH配列)若しくはその適切なフラグメントを含み得る。
【0102】
本発明の一実施態様では、免疫グロブリン単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)である;より具体的には、免疫グロブリン単一可変ドメインは、重鎖抗体に由来する従来の4本鎖抗体又は重鎖可変ドメイン配列に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。
【0103】
例えば、単一可変ドメイン又は免疫グロブリン単一可変ドメイン(又は、免疫グロブリン単一可変ドメインとして使用するために適切なアミノ酸)は、(単一)ドメイン抗体(又は、(単一)ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸)、「dAb」若しくはdAb(すなわち、dAbとして使用するために適切なアミノ酸)又はナノボディ(本明細書で定義され、限定されないが、VHHを含む);他の単一可変ドメイン、又はそれらのいずれか1つの任意の適切なフラグメントであり得る。
【0104】
(単一)ドメイン抗体の一般的な説明については、本明細書で引用される先行技術及び欧州特許出願公開第0368684号も参照のこと。「dAb」という用語については、例えば、Ward et al. 1989 (Nature 341: 544-546)、Holt et al. 2003 (Trends Biotechnol. 21: 484-490);並びに例えば国際公開公報第04/068820号、国際公開公報第06/030220号、国際公開公報第06/003388号、国際公開公報第06/059108号、国際公開公報第07/049017号、国際公開公報第07/085815号及びDomantis Ltdの他の公開特許出願を参照のこと。哺乳類起源ではないので本発明との関連ではあまり好ましくないが、単一可変ドメインは、特定種のサメに由来し得ることも留意すべきである(例えば、いわゆる「IgNARドメイン」。例えば、国際公開公報第05/18629号を参照のこと)。
【0105】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(本明細書で定義される)NANOBODY(登録商標)又はその適切なフラグメントであり得る。[注:NANOBODY(登録商標)、NANOBODIES(登録商標)及びNANOCLONE(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である]ナノボディの一般的な説明については、以下のさらなる説明及び本明細書で引用される(例えば、国際公開公報第08/020079号(16頁)などに記載されている)先行技術を参照のこと。
【0106】
HH及びナノボディのさらなる説明については、Muyldermans 2001 (Reviews in Molecular Biotechnology 74: 277-302)による総説論文、並びに一般的な背景技術として言及される以下の特許出願:Vrije Universiteit Brusselの国際公開公報第94/04678号、国際公開公報第95/04079号及び国際公開公報第96/34103号;Unileverの国際公開公報第94/25591号、国際公開公報第99/37681号、国際公開公報第00/40968号、国際公開公報第00/43507号、国際公開公報第00/65057号、国際公開公報第01/40310号、国際公開公報第01/44301号、欧州特許出願公開第1134231号及び国際公開公報第02/48193号;Vlaams Instituut voor Biotechnologie (VIB)の国際公開公報第97/49805号、国際公開公報第01/21817号、国際公開公報第03/035694号、国際公開公報第03/054016号及び国際公開公報第03/055527号;Algonomics N.V.及びAblynx N.V.の国際公開公報第03/050531号;National Research Council of Canadaによる国際公開公報第01/90190号;Institute of Antibodiesによる国際公開公報第03/025020号;並びにAblynx N.V.による国際公開公報第04/041867号、国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第04/041865号、国際公開公報第04/041863号、国際公開公報第04/062551号、国際公開公報第05/044858号、国際公開公報第06/40153号、国際公開公報第06/079372号、国際公開公報第06/122786号、国際公開公報第06/122787号及び国際公開公報第06/122825号、及びAblynx N.V.によるさらなる公開特許出願を参照のこと。これらの出願で言及されているさらなる先行技術、特に国際公開公報第06/040153号の41〜43頁で言及されている参考文献のリスト(このリスト及び参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる)も参照のこと。これらの参考文献に記載されているように、ナノボディ(特に、VHH配列及び部分ヒト化ナノボディ)は、フレームワーク配列の1つ以上における1つ以上の「ホールマーク残基」の存在を特に特徴とし得る。ナノボディのヒト化及び/又はラクダ化、並びに他の改変、部分又はフラグメント、誘導体又は「ナノボディ融合物」、多価構築物(リンカー配列のいくつかの非限定的な例を含む)、並びにナノボディの半減期を増加させるための様々な改変、並びにそれらの調製を含むナノボディに関するさらなる説明は、例えば、国際公開公報第08/101985号及び国際公開公報第08/142164号に見られ得る。
【0107】
したがって、本発明の意味では、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」又は「単一可変ドメイン」という用語は、非ヒト供給源、好ましくはラクダ科動物、好ましくはラクダ科動物重鎖抗体に由来するポリペプチドを含む。以前に記載されているように、それらはヒト化され得る。また、この用語は、非ラクダ科動物供給源、例えばマウス又はヒトに由来するポリペプチドであって、例えば、Davies and Riechmann 1994 (FEBS 339: 285-290)、1995 (Biotechnol. 13: 475-479)、1996 (Prot. Eng. 9: 531-537)及びRiechmann and Muyldermans 1999 (J. Immunol. Methods 231: 25-38)に記載されているように「ラクダ化」されたポリペプチドを含む。
【0108】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト及びラクダ科動物の免疫グロブリン配列を含む様々な起源の免疫グロブリン配列を包含する。それはまた、完全ヒト免疫グロブリン配列、ヒト化免疫グロブリン配列又はキメラ免疫グロブリン配列を含む。例えば、それは、ラクダ科動物免疫グロブリン配列及びヒト化ラクダ科動物免疫グロブリン配列、又はラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばWard et al. 1989(例えば、国際公開公報第94/04678号並びにDavies and Riechmann 1994、1995及び1996を参照のこと)に記載されているラクダ化dAb及びラクダ化VHを含む。
【0109】
この場合もやはり、このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、任意の適切な方法で任意の適切な供給源に由来し得、例えば、天然に存在するVHH配列(すなわち、ラクダ科動物の適切な種に由来する)又は合成若しくは半合成のアミノ酸配列(限定されないが、部分又は完全「ヒト化」VHH、「ラクダ化」免疫グロブリン配列(特に、ラクダ化V)、並びに親和性成熟(例えば、合成免疫グロブリン配列、ランダム免疫グロブリン配列又は天然に存在する免疫グロブリン配列、例えばVHH配列から出発する)、CDRグラフティング、ベニヤリング、異なる免疫グロブリン配列に由来するフラグメントの組み合わせ、オーバーラッププライマーを使用したPCRアセンブリ、及び当業者に周知の免疫グロブリン配列を操作するための類似技術;又は前記いずれかの任意の適切な組み合わせなどの技術によって得られたナノボディ及び/又はVHHを含む)であり得る。
【0110】
免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列及び構造は、−しかしながら、限定されないが−当技術分野及び本明細書ではそれぞれ「フレームワーク領域1」又は「FR1」;「フレームワーク領域2」又は「FR2」;「フレームワーク領域3」又は「FR3」;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」と称される4つのフレームワーク領域又は「FR」から構成されると考えられ得る;これらのフレームワーク領域は、当技術分野ではそれぞれ「相補性決定領域1」又は「CDR1」;「相補性決定領域2」又は「CDR2」;及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と称される3つの相補性決定領域又は「CDR」によって分断される。
【0111】
免疫グロブリン単一可変ドメインにおけるアミノ酸残基の総数は、110〜120個、好ましくは112〜115個の範囲内であり得、最も好ましくは113個である。
【0112】
国際公開公報第08/020079号(これは、参照により本明細書に組み入れられる)の58頁及び59頁の段落q)にさらに記載されているように、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、Riechmann and Muyldermans 2000 (J. Immunol. Methods 240: 185-195;例えば、この刊行物の図2を参照のこと)の論文でラクダ科動物に由来するVHHドメインに適用されているように、Kabat et al. (“Kabat numbering”) (“Sequence of proteins of immunological interest”, US Public Health Services, NIH Bethesda, MD, Publication No. 91)によって示されているVHドメインの一般的なナンバリングにしたがってナンバリングされ、したがって、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は1〜30位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は31〜35位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は36〜49位のアミノ酸を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は50〜65位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は66〜94位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は95〜102位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR4は103〜113位のアミノ酸残基を含む。
【0113】
本明細書及び国際公開公報第08/020079号、国際公開公報第06/040153号に示されている免疫グロブリン単一可変ドメイン配列の例、並びにそれらの中で引用されているさらなる免疫グロブリン単一可変ドメイン関連の参考文献に基づいて、アミノ酸残基の正確な数はまた、免疫グロブリン単一可変ドメイン中に存在する特定のCDRの長さに依存することは明らかであろう。CDRに関して、当技術分野で周知であるように、VH又はVHHフラグメントのCDRを定義及び記載するための複数の慣例、例えばKabatの定義(これは、配列の可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている)及びChothiaの定義(これは、構造ループ領域の位置に基づくものである)がある。例えば、ウェブサイトhttp://www.bioinf.org.uk/abs/を参照のこと。本明細書及び特許請求の範囲の目的のために、Kabatに従うCDRも言及され得るが、Abmの定義(これは、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアに基づくものである)が、Kabatの定義とChothiaの定義との最適な折衷案であると考えられるので、CDRは、最も好ましくは、Abmの定義に基づいて定義される。ウェブサイトhttp://www.bioinf.org.uk/abs/を再び参照のこと。
【0114】
一実施態様では、FR4は、C末端アミノ酸配列VTVSS(すなわち、それぞれ110位、111位、112位及び113位)を含む。本発明はまた、109位、110位、111位又は112位で終了するISVDを包含する。本発明の一態様では、FR4はC末端アミノ酸配列VTVS(109〜112位)で終了し、FR4はC末端アミノ酸配列VTV(109〜111位)で終了し、FR4はC末端アミノ酸配列VT(109〜110位)で終了し、又はFR4はC末端アミノ酸V(109位)で終了する。C末端伸長部は、最後の(最もC末端に位置する)ISVDのFR4の最後のアミノ酸残基(例えば、V109、T110、V111、S112又はS113)のC末端に存在し得、本発明のシステイン部分は、好ましくは、C末端伸長部のC末端に存在し又は配置される。一実施態様では、FR4はC末端アミノ酸配列VTVSSを含み、C末端伸長部はシステインである(例えば、VTVSSCで終了する本発明のポリペプチド)。一実施態様では、FR4はC末端アミノ酸配列VTVSを含み、C末端伸長部はシステインである(例えば、VTVSCで終了する本発明のポリペプチド)。一実施態様では、FR4はC末端アミノ酸配列VTVを含み、C末端伸長部はシステインである(例えば、VTVCで終了する本発明のポリペプチド)。一実施態様では、FR4はC末端アミノ酸配列VTを含み、C末端伸長部はシステインである(例えば、VTCで終了する本発明のポリペプチド)。一実施態様では、FR4はC末端アミノ酸Vを含み、C末端伸長部はシステインである(例えば、VCで終了する本発明のポリペプチド)。
【0115】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、ISVDが軽鎖可変ドメイン配列(VL)であり、重鎖可変ドメイン配列(VH)であり、従来の4本鎖抗体に由来し、又は重鎖抗体に由来するダイマーに関する。
【0116】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記ISVDが、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、dAbとして使用するために適切なアミノ酸配列、ナノボディ、VHH、ヒト化VHH及びラクダ化VHからなる群より選択されるダイマーに関する。好ましくは、ISVDは、100〜140個のアミノ酸、例えば110〜130個のアミノ酸を含む。
【0117】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記ISVDが、ナノボディ、VHH、ヒト化VHH及びラクダ化VHからなる群より選択され、105〜125個のアミノ酸、例えば好ましくは110〜120個のアミノ酸、例えば110個、111個、例えば110個、111個、112個、113個、114個、115個、116個、117個、118個、119個又は120個のアミノ酸、最も好ましくは113個のアミノ酸を含むダイマーに関する。
【0118】
本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記ISVDが、ナノボディ、VHH、ヒト化VHH及びラクダ化VHからなる群より選択され、Kabatナンバリングのアミノ酸位置105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119又は120で、好ましくはアミノ酸位置113で終了するダイマーに関する。
【0119】
本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記ISVDが、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、dAbとして使用するために適切なアミノ酸配列、及びラクダ化VHからなる群より選択され、前記単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、dAbとして使用するために適切なアミノ酸配列、及びラクダ化VHがVHに由来するダイマーに関する。
【0120】
本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、dAbとして使用するために適切なアミノ酸配列、及びラクダ化VHが、110〜130個のアミノ酸、好ましくは115〜127個のアミノ酸、例えば115個、116個、117個、118個、119個、120個、121個、122個、123個、124個、125個、126個又は127個のアミノ酸、最も好ましくは123個のアミノ酸を含むダイマーに関する。好ましくは、前記単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、dAbとして使用するために適切なアミノ酸配列、及びラクダ化VHは、Kabatナンバリングのアミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129又は130で、好ましくはアミノ酸123で終了する。
【0121】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記ISVDが、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、及びdAbとして使用するために適切なアミノ酸配列からなる群より選択され、前記単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、又はdAbとして使用するために適切なアミノ酸配列がVLに由来するダイマーに関する。好ましくは、前記単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、又はdAbとして使用するために適切なアミノ酸配列は、100〜120個のアミノ酸、好ましくは105〜115個のアミノ酸、例えば100個、101個、102個、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、110個、111個、112個、113個、114個、115個、116個、117個、118個、119個又は120個のアミノ酸、最も好ましくは108個のアミノ酸を含む。好ましくは、前記単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、ドメイン抗体として使用するために適切なアミノ酸配列、dAb、又はdAbとして使用するために適切なアミノ酸配列は、Kabatナンバリングのアミノ酸101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119又は120で、好ましくはアミノ酸108で終了する。
【0122】
本発明の特定の態様では、本発明のポリペプチド又はダイマーは、本発明の対応するポリペプチド又はダイマーと比較して増加した半減期を有し得る。このようなポリペプチド又はダイマーのいくつかの好ましいが非限定的な例は、本明細書のさらなる開示に基づいて、当業者には明らかであり、例えば、(例えば、ペグ化によって)その半減期を増加させるために化学的に改変された本発明のポリペプチド;血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)に結合するための少なくとも1つのさらなる結合部位を含む本発明のポリペプチド;又は、本発明のポリペプチドの半減期を増加させる少なくとも1つの部分に連結された少なくとも1つの本発明のポリペプチドを含む本発明のポリペプチドを含む。
【0123】
本発明の特定の好ましいが非限定的な態様によれば、本発明のポリペプチドは、ターゲット細胞上のエピトープを対象とする1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインの他に、ヒト血清アルブミンに対する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含有し得る。ヒト血清アルブミンに対するこれらの免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書で引用されるAblynx N.V.による出願に一般に記載されている通りであり得る(例えば、国際公開公報第04/062551号を参照のこと)。増加した半減期を提供するいくつかの特に好ましいISVD(例えば、ナノボディ)であって、本発明のポリペプチドに使用され得るいくつかの特に好ましいISVD(例えば、ナノボディ)としては、国際公開公報第06/122787号に開示されているISVD、例えばナノボディALB−1〜ALB−10(この中では、ALB−8(国際公開公報第06/122787号の配列番号:62)が特に好ましい)(例えば、表II及びIIIを参照のこと)、並びに国際公開公報第2012/175400号に開示されているISVD、例えばナノボディ(国際公開公報第2012/175400号の配列番号:1〜11)、及び「改善された免疫グロブリン単一可変ドメイン」という表題の同時係属中の米国仮出願第62/047,560号(出願日:2014年9月8日;譲受人:Ablynx N.V.)に開示されているISVD、例えば配列番号:109を有するナノボディが挙げられる。
【0124】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、(本明細書でさらに定義される)1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含み、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、(前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位を欠くダイマーと比較して)ダイマーの半減期を増加させるダイマーに関する。好ましくは、ダイマーの半減期を増加させる前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、ダイマーの半減期を増加させるISVDである。
【0125】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、ダイマーの半減期を増加させる前記ISVDが、血清アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミン又は血清免疫グロブリン、好ましくはヒトIgGに結合するダイマーに関する。
【0126】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、ダイマーの半減期を増加させる前記ISVDを有しない対応するダイマーの半減期よりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍又は20倍超長い血清半減期を有するダイマーに関する。
【0127】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、ダイマーの半減期を増加させる対応する前記ISVDと比較して1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超又はさらに24時間超、48時間又は72時間増加した血清半減期を有するダイマーに関する。
【0128】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、特により好ましくは少なくとも72時間以上;例えば、少なくとも5日(例えば、約5〜10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば、約9〜14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば、約10〜15日)、又は少なくとも約11日(例えば、約11〜16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば、約12〜18日以上)、又は14日超(例えば、約14〜19日)のヒトにおける血清半減期を有するダイマーに関する。
【0129】
本発明の特に好ましいが非限定的な態様では、本発明は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含む本発明のポリペプチドであって、1つ以上(好ましくは、1つ)の本明細書に記載される血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばAlb11、Alb23、Alb129、Alb132、Alb8、Alb11(S112K)−A、Alb82、Alb82−A、Alb82−AA、Alb82−AAA、Alb82−G、Alb82−GG、Alb82−GGGの(例えば、配列番号:32〜44から選択される)血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメイン(表10を参照のこと)をさらに含む本発明のポリペプチドを提供する。
【表4】
【0130】
ISVD(例えば、ナノボディ)は、高度に保存された内部(標準又は分子内としても公知である)ジスルフィド架橋を含む。これらの特定の内部ジスルフィド架橋の除去は、ISVDの活性を損なう。
【0131】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の第1のポリペプチドのC末端伸長部(好ましくは、C末端)に位置する不対システイン残基(Cys、cys又はCと略記される;2−アミノ−3−スルフヒドリルプロパン酸;これは、化学式HOCCH(NH)CHSHを有するα−アミノ酸である)のチオール部分(−SH)と、本発明の第2のポリペプチドのC末端伸長部(好ましくは、C末端)に位置する不対システイン残基のチオール部分との酸化が、ジスルフィド誘導体シスチンをもたらし、それによりダイマーが作られたが、分子内チオール部分は未反応であったことを観察した。換言すれば、実施例セクションで実証されているように、C末端に位置するシステインのチオール基が特異的に酸化され、分子内チオール基の異常又は再酸化を伴わずに分子間結合が形成され、それにより、ISVDの完全性は維持された。2つの各ポリペプチドのC末端伸長部のシステインのチオール部分をジスルフィド誘導体シスチンに酸化する化学的コンジュゲーションによって、ダイマーへのポリペプチドのカップリングを実施した。好ましくは、前記シスチン(例えば、ジスルフィド架橋)は、ダイマー、例えば
【化1】
【化2】

は、ジスルフィド誘導体シスチンを示し;
−[Cys−S]及び−[AA]−[Cys−S]−[AA]は、前記ポリペプチドのシステインを含むC末端伸長部を示し;
「AA」は、本明細書で定義される任意のアミノ酸を表し;
先頭の「N」は、ポリペプチドのN末端を表し;
末尾の「C」は、ポリペプチドのC末端を表し;
下付き文字「x」、「y」、「p」及び「q」は、0〜50の範囲、例えば1〜40の範囲又は2〜30の範囲の整数、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20などから独立して選択される数字を表す。例えば、「x」、「y」、「p」及び「q」の全てが0である場合、C末端伸長部はシステインのみであり;「y」及び「q」の両方が0であるが、「x」及び「p」が0ではない場合、C末端伸長部のC末端はシステインである)中に存在する唯一の鎖間ジスルフィド結合である。
【0132】
本発明は、(ポリペプチド−)ダイマーを作製するための方法であって、少なくとも:(i)第1のポリペプチドを提供する工程であって、前記第1のポリペプチドが、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む工程;(ii)第2のポリペプチドを提供する工程であって、前記第2のポリペプチドが、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む工程;並びに(iii)前記第1のポリペプチドのC末端伸長部の(好ましくは、C末端の)前記システイン部分のチオール部分と、前記第2のポリペプチドのC末端伸長部の(好ましくは、C末端の)前記システイン部分のチオール部分とをジスルフィド誘導体シスチンに酸化し、それにより、前記ダイマーを作製する工程であって、前記ジスルフィド誘導体シスチンが、該ダイマー中に存在する唯一の分子間ジスルフィド結合である工程を含む方法に関する。
【0133】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法であって、前記第1のポリペプチドが少なくとも2つのISVDを含み、及び/又は前記第2のポリペプチドが少なくとも2つのISVDを含む方法に関する。
【0134】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法であって、前記第1のポリペプチドの前記少なくとも2つのISVDが同一のものであり、及び/又は前記第2のポリペプチドの前記少なくとも2つのISVDが同一のものである方法に関する。
【0135】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法であって、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが同一のもの又は異なるものである方法に関する。
【0136】
本明細書で使用される「二重特異性ダイマー」という用語は、第1の及び第2のポリペプチドの価数(例えば、一価、二価又は多価)又は特異性(例えば、単一特異性、二重特異性又は多重特異性)とは無関係に、ダイマーの第1のポリペプチドが、ダイマーの第2のポリペプチドと異なるものであるダイマーを指す。ダイマーは、2つの同一の二重特異性ポリペプチドを含み得ると認識されよう。
【0137】
二重特異性ダイマー(例えば、第1のポリペプチドが、ダイマーの第2のポリペプチドと異なるものである)を作製するための方法が提供される。第1の実施態様では、宿主株、例えばPichia株は、2つの異なるベクターでトランスフォーメーションされ、第1のベクターは、第1のポリペプチドをコードし、第2のベクターは、第2のポリペプチドをコードする。あるいは、1つのベクターが使用されるが、ベクターは、第1のポリペプチドをコードする第1の遺伝子と、第2のポリペプチドをコードする第2の遺伝子とを含む。あるいは、2つの宿主細胞が使用され、それぞれが一方の又は他方のポリペプチドを発現し、例えば、第1のポリペプチドをコードする第1のベクターは、第1の宿主細胞(例えば、Pichia)において発現され、第2のポリペプチドをコードする第2のベクターは、第2の宿主細胞(例えば、同様にPichia)において発現される。例えば、Pichia使用済み培地中で、前記2つの各ポリペプチドのC末端伸長部の(好ましくは、C末端に位置する)システインを、ほぼ中性のpH、例えばpH6.5〜pH7.5、例えばpH6.5、pH6.6、pH6.7、pH6.8、pH6.9、pH7.0、pH7.1pH7.2、pH7.3、pH7.4、及びpH7.5などにおいて、それらのチオール部分を介して、ジスルフィド誘導体シスチンに酸化する化学的コンジュゲーションによって、二重特異性ダイマーへのポリペプチドのカップリングを実施する。
【0138】
したがって、本発明は、二重特異性ダイマーを作製するための方法であって、少なくとも:
(i)第1のポリペプチドを提供する工程であって、前記第1のポリペプチドが、
−少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、
−好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む工程;
(ii)第2のポリペプチドを提供する工程であって、前記第2のポリペプチドが、
−少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、
−好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含み、
前記第1のポリペプチドが、前記第2のポリペプチドと異なるものである工程;並びに
(iii)好ましくはpH6.5〜pH7.5において、酸化銅イオン(Cu2+)を場合により追加することによって、前記第1のポリペプチドのC末端の前記システイン部分のチオール部分と、前記第2のポリペプチドのC末端の前記システイン部分のチオール部分とをジスルフィド誘導体シスチンに酸化し、それにより、前記ダイマーを作製する工程
を含む方法に関する。
【0139】
好ましくは、ISVDの完全性は維持され、前記シスチンは、ダイマー中に存在する唯一の分子間ジスルフィド結合である。
【0140】
本明細書で使用される「完全性」という用語は、ISVDの構造、安定性及び/又は機能の維持、例えば、適切な分子内ジスルフィド結合の維持、免疫グロブリンドメインの2層の逆平行β−シート構造の接続、及びその同種抗原の結合などを指す。
【0141】
本発明は、本明細書で提供される方法であって、第1のポリペプチドをコードする遺伝子及び第2のポリペプチドをコードする遺伝子が、2つの異なるベクター上に存在する方法に関する。好ましくは、前記ベクターは、1つの宿主細胞、例えばPichia中に存在する。あるいは、前記ポリペプチドは、1つのベクター上に位置する異なる遺伝子によってコードされる。
【0142】
本発明のベクターは、任意の適切なベクター、例えばプラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクター又はトランスポゾンなどであり得る。特に、ベクターは、発現ベクター(すなわち、in vitro及び/又はin vivoで(例えば、適切な宿主細胞、宿主生物及び/又は発現系において)発現を提供し得るベクター)であり得る。
【0143】
本発明のベクターは、宿主細胞又は宿主生物をトランスフォーメーションするために(すなわち、本発明のポリペプチドの発現及び/又は生産のために)使用され得る。適切な宿主又は宿主細胞は当業者には明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核若しくは真核細胞若しくは細胞株又は任意の適切な真菌、原核若しくは(非ヒト)真核生物、例えば以下のものであり得る:
−細菌株、限定されないが、グラム陰性株、例えばEscherichia coli;Proteus、例えばProteus mirabilis;Pseudomonas、例えばPseudomonas fluorescensの株;及びグラム陽性株、例えばBacillus、例えばBacillus subtilis又はBacillus brevis;Streptomyces、例えばStreptomyces lividans;Staphylococcus、例えばStaphylococcus carnosus;及びLactococcus、例えばLactococcus lactisの株が挙げられる;
−真菌細胞、限定されないが、Trichodermaの種、例えばTrichoderma reesei;Neurospora、例えばNeurospora crassa;Sordaria、例えばSordaria macrospora;Aspergillus、例えばAspergillus niger又はAspergillus sojae;又は他の糸状菌の細胞が挙げられる;
−酵母細胞、限定されないが、Saccharomycesの種、例えばSaccharomyces cerevisiae;Schizosaccharomyces、例えばSchizosaccharomyces pombe;Pichia、例えばPichia pastoris又はPichia methanolica;Hansenula、例えばHansenula polymorpha;Kluyveromyces、例えば Kluyveromyces lactis;Arxula、例えばArxula adeninivorans;Yarrowia、例えばYarrowia lipolyticの細胞が挙げられる;
−両生類細胞又は細胞株、例えばXenopus卵母細胞;
−昆虫由来細胞又は細胞株、例えば鱗翅目由来細胞/細胞株、限定されないが、Spodoptera SF9及びSf21細胞又はDrosophila由来細胞/細胞株、例えばSchneider及びKc細胞が挙げられる;
−植物又は植物細胞、例えばタバコ植物;並びに/又は
−哺乳類細胞/細胞株、例えばヒト由来細胞又は細胞株、哺乳動物由来細胞又は細胞株、限定されないが、CHO細胞(例えば、CHO−K1細胞)、BHK細胞及びヒト細胞又は細胞株、例えばHeLa、COS、Caki及びHEK293H細胞が挙げられる;
並びに、抗体及び抗体フラグメント(限定されないが、(単一)ドメイン抗体及びScFvフラグメントが挙げられる)の発現及び生産のためのそれ自体が公知の全ての他の宿主細胞又は(非ヒト)宿主(これは、当業者には明らかであろう)。本明細書の上記で引用される一般的な背景技術、並びに例えば国際公開公報第94/29457号;国際公開公報第96/34103号;国際公開公報第99/42077号;Frenken et al. (Res Immunol. 149: 589-99, 1998); Riechmann and Muyldermans (1999)、前掲; van der Linden (J. Biotechnol. 80: 261-70, 2000); Joosten et al. (Microb. Cell Fact. 2: 1, 2003); Joosten et al. (Appl. Microbiol. Biotechnol. 66: 384-92, 2005)及び本明細書で引用されるさらなる参考文献も参照のこと。
【0144】
本明細書では、遺伝子は、機能的ポリペプチドの合成に必要な核酸配列全体と定義される。したがって、遺伝子は、ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド(コード領域)だけではなく、特定のRNA転写産物の合成に必要な全てのDNA配列も含む。好ましくは、工程(iii)は、Pichia使用済み培地中で実施される。
【0145】
ISVDをコードする核酸に対して核酸を操作する(例えば、核酸を付加、挿入、突然変異、置換又は欠失するなど)ための方法は、当業者に周知である。前掲の標準的なハンドブックを参照のこと。
【0146】
本発明者らは、二重特異性ダイマーを作製するためのさらに最適化されたプロトコール(これは、効率が50%超、例えば60%、70%、80%又はさらに90%超、例えば95%以上であった)を提供する。第1の反応性ポリペプチドを(固体)担体に結合させ、担体に結合させた第1のポリペプチド上に第2の反応性ポリペプチドを通過させることによって、これを達成した。未反応の第2のポリペプチドを再生(還元)し、担体に結合させた第1のポリペプチド上に再び通過させ得る。全ての第1の及び/又は第2のポリペプチドが反応するまで、この工程を反復し得る。
【0147】
工程1では、第1のポリペプチドを還元して、モノマー材料、好ましくは100%モノマー材料を得る。典型的なポリペプチド溶液を還元するための一般的な条件は、本明細書に示されている。
【0148】
工程2では、バッファー中の第1のポリペプチドを還元条件下で担体に結合させる。担体は、好ましくは、クロマトグラフィー樹脂である。好ましくは、担体は、第1のポリペプチドのみに結合し、第2のポリペプチドに結合しない。第1のポリペプチドのホモダイマーの形成可能性を回避するために、固定化中に、第1のポリペプチドを低密度で担体に固定化し得る。個々の第1のポリペプチドのこのような空間的分離は、準最適結合条件(例えば、典型的な親和性樹脂にとっては過度に速い流速)を使用して担体をロードすることによって、又はエクスパンデットベットクロマトグラフィーを介して達成され得る。担体上の個々のポリペプチドを空間的に分離するための方法及び条件は、共通の一般的な知識に属するか、又は当業者によるルーチンな実験で達成され得る。好ましい実施態様では、担体は、第1のポリペプチドにのみ結合し、第2のポリペプチドに結合しない。例えば、プロテインAに第1のポリペプチドが結合する(及び好ましくは、第2のポリペプチドが結合しない)場合、プロテインAなどの担体が使用され得る。あるいは、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドの両方が担体に結合する場合、第1のポリペプチドを固定化した後、第2のポリペプチドを適用する前に、非システイン伸長ナノボディなどのダミーポリペプチドで担体を飽和させる。
【0149】
工程3では、同様に還元型の(上記を参照のこと)過剰な第2のポリペプチドをバッファーに適用し、(場合により軽度の酸化条件下で)カラムに循環させる。固定化した第1のポリペプチドが、ジスルフィド結合を介して第2のポリペプチドと完全に複合体化(コンジュゲート)するまで、第2のポリペプチドを担体上に通過させる。好ましくは、この後、第2のポリペプチドの濃度低下を測定して、飽和した第1のポリペプチド集団をマッチさせる。当業者には周知であるように、必要な場合には、この工程のために、第2のポリペプチドの単一特異性ダイマーの形成量を制限するように、条件を最適化する。担体に結合していない第2のポリペプチドの集団を回収し、将来のカップリング反応に使用し得る(例えば、再び還元し、第1のポリペプチドが飽和するまで、第1のポリペプチドを含むカラムに適用する)。
【0150】
工程4では、当業者には周知であるように、使用される担体のための典型的な溶出条件(例えば、プロテインAの場合には酸性条件)によって、担体から二重特異性ダイマーを回収する。
【0151】
本文脈では、「固定化」という用語は、その空間移動が、固体構造(例えば、担体)への付着によって完全に又は小さな限定領域に制限されている分子を指す。一般に、固定化という用語は、移動を制限するか又は移動を不可能にする行為(例えば、移動の妨害)を指す。本発明のダイマーは、任意の適切な方法によって、例えば吸着、共有結合、捕捉、封入及び(可逆的)架橋、好ましくは共有結合によって、より好ましくは親和性によって固定化され得る。固定化のための任意の適切な担体が使用され得る。当業者であれば、担体の適合性は、固定化方法に依存することを認識するであろう。例えば、共有結合のための担体は、アガロース、セルロース、架橋デキストラン、ポリスチレン、ポリアクリルアミドゲル及び多孔質シリカゲルである。好ましい担体は、プロテインA樹脂である。
【0152】
適切なバッファーとしては、限定されないが、酢酸バッファー、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、硫酸バッファー、グリシンバッファー、カルボン酸バッファー及び/又はトリスバッファーが挙げられ得る。
【0153】
還元条件及び酸化条件は、当技術分野で周知である。実施例セクション、説明、及び標準的な化学ハンドブック、例えばPrinciples of Modern Chemistry (2011 by Oxtoby, Gillis and Campion, 7thedition)を参照のこと。標準−SS−の酸化状態を維持するために、好ましい還元条件は、最大10mg/mlポリペプチドの濃度において、1〜15mM、例えば2〜12mM、4〜11mM、5〜10mM、好ましくは10mM DTT、室温で最低1時間(最大8時間まで)又は4℃で一晩実施される。好ましい酸化条件は、0.1〜10mM、0.5〜5mM、好ましくは1mM CuSO、室温で1〜4時間、好ましくは2時間実施されるか、又は便利なレドックス対(これは、当業者であれば容易に決定し得る)を使用することによって実施される。
【0154】
したがって、本発明は、二重特異性ダイマーを作製するための方法であって、少なくとも:
1.第1のポリペプチドを提供する工程であって、前記第1のポリペプチドが、
−少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、
−好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む工程;
2.前記第1のポリペプチドを還元する工程;
3.工程2の還元型の第1のポリペプチドを、還元条件下で担体に結合させる工程;
4.第2のポリペプチドを提供する工程であって、前記第2のポリペプチドが、
−少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、
−好ましくはC末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む工程;
5.前記第2のポリペプチドを還元する工程;
6.場合により全ての第1のポリペプチドがジスルフィド結合を介して第2のポリペプチドに完全にコンジュゲートするまで、工程5の還元型の第2のポリペプチドを、工程3の担体に結合させた還元型の第1のポリペプチドに、場合により軽度の酸化条件下で適用して、前記第1のポリペプチドの好ましくはC末端の前記システイン部分のチオール部分と、前記第2のポリペプチドの好ましくはC末端の前記システイン部分のチオール部分とをジスルフィド誘導体シスチンに酸化し、それにより、前記二重特異性ダイマーを作製する工程;
7.場合により、コンジュゲートしていない第2のポリペプチドを回収し、工程5及び6にしたがって再び還元及び適用する工程;
8.担体から二重特異性ダイマーを溶出させる工程
を含む方法に関する。
【0155】
本発明はさらに、本明細書に記載される任意の方法であって、前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドがN末端伸長部を含む方法に関する。
【0156】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法であって、前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、好ましくはC末端においてシステイン部分を含む50個、40個、30個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含む方法に関する。
【0157】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法であって、前記C末端伸長部が配列番号:1〜15からなる群より選択され、好ましくは、前記C末端伸長部が、GlyGlyGlyCys(配列番号:4)、GlyGlyCys(配列番号:3)、GlyCys(配列番号:2)又はCys(配列番号:1)からなる方法に関する。
【0158】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法であって、前記C末端伸長部が、前記ポリペプチドの最もC末端に位置するISVDのC末端に遺伝子融合されている方法に関する。
【0159】
一実施態様では、酸化プロセスは、例えばCuSOの形態の酸化銅イオン(Cu2+)を追加することによって最適化される。C末端に位置するチオール部分のほぼ100%が、銅処理後に酸化されたことが観察された。したがって、本発明は、本明細書に記載される方法であって、前記第1の及び/又は前記第2のポリペプチドの少なくとも80%、例えば85%、90%、95%、99%又はさらに99%超、例えば100%が二量体化される方法に関する。酸化の程度は、任意の適切な方法によって決定され得るが、好ましくは質量分析によって決定される。
【0160】
さらなる実施態様では、ダイマーは、均一に精製される。精製は、当技術分野で公知の任意の適切な技術、例えばクロマトグラフィー、好ましくはサイズ排除クロマトグラフィー(これは、当業者であれば十分に熟知している)によって達成され得る。したがって、本発明は、本明細書に記載される方法であって、場合によりサイズ排除クロマトグラフィーを介して、前記ダイマーを精製する工程をさらに含む方法に関する。したがって、本発明は、本明細書に記載される方法であって、前記ダイマーを少なくとも90%以上の純度、例えば95%以上の純度、例えば97%、98%、99%又はさらに100%に精製する方法に関する。純度は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって決定され得、好ましくは質量分析によって決定される。
【0161】
一実施態様では、本発明は、上記方法によって調製可能なダイマーに関する。
【0162】
本発明者らは、驚くべきことに、ダイマー中のポリペプチドの結合及び他の機能的特徴、例えば効力が保持されていただけではなく、対応するベンチマークと比較して改善さえされていたことを観察した。
【0163】
いかなる理論にも拘束されないが、このダイマー集合体では、ISVDのパラトープは、対応するベンチマーク集合体よりも「好ましい」抗原認識部位にあり得ると仮説した。
【0164】
本明細書で使用される「ベンチマーク」は、パフォーマンス、例えば分子の1つ以上の機能的特徴、例えば本明細書に記載される親和性、有効性及び効力などを評価するための基準点として使用される。特定のダイマーは、特定のベンチマークの妥当性(これは、当業者であれば容易に評価し得る)を決定するであろう。好ましくは、ベンチマークは、ダイマーのISVDの数及び/又は同一性と同じ数及び/又は同じISVDからなるであろう。好ましくは、ベンチマークは、ダイマーを構成する同じポリペプチドを含むが、ベンチマークでは、これらのポリペプチドは、本明細書に記載される化学的コンジュゲーションに代えて遺伝子融合によって形成される(例えば、実施例セクションを参照のこと)。ダイマーと、ダイマーを個々に構成する一方又は両方のポリペプチドとの比較は、ダイマーのパフォーマンスに関する重要な情報を既に提供する。
【0165】
本発明のダイマーは、少なくとも1つのISVDを含む第1のポリペプチドと、少なくとも1つのISVDを含む第2のポリペプチドとを含む。ダイマーの親和性は、例えば両ポリペプチドを合わせた全体として決定され得るか、又はダイマーの親和性は、ダイマーを個々に構成する各ポリペプチドの親和性を決定することによって決定され得る。換言すれば、後者の場合、他方のポリペプチドによるアビディティ効果とは無関係に、親和性は、ポリペプチドについて決定される。
【0166】
本明細書で使用される「効力」という用語は、作用物質、例えばダイマー、ベンチマーク、ポリペプチド、ISVD又はナノボディ、その生物学的活性の尺度である。作用物質の効力は、例えば実施例セクションに記載されているように、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって決定され得る。細胞培養ベースの効力アッセイは、作用物質によって誘発された生理学的反応を測定し、比較的短時間で結果を出し得るので、生物活性を決定するための好ましいフォーマットであることが多い。生成物の作用機序に基づく様々な種類の細胞ベースのアッセイが使用され得、限定されないが、増殖アッセイ、細胞傷害アッセイ、レポーター遺伝子アッセイ、細胞表面レセプター結合アッセイ、及び機能的に必須のタンパク質又は他のシグナル分子(例えば、リン酸化タンパク質、酵素、サイトカイン、cAMPなど)の誘導/阻害を測定するためのアッセイ(これらは全て、当技術分野で周知である)が挙げられる。細胞ベースの効力アッセイの結果は、本発明のダイマーと、対応するベンチマークについて得られた反応との比較によって決定される「相対効力」として表現され得る(実施例セクションを参照のこと)。
【0167】
所定のアッセイにおいて、化合物(例えば、本発明のダイマー)について得られた反応が、参照化合物(例えば、対応するベンチマーク)による反応よりも少なくとも1.5倍、例えば2倍、しかし好ましくは少なくとも3倍、例えば少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、さらにより好ましくはさらに少なくとも100倍又はそれ以上良好(例えば、機能的に良好)である場合、化合物(例えば、本発明のダイマー)は、ベンチマーク(例えば、参照化合物、例えば対応するポリペプチドを含む構築物)よりも強力であると言われる。
【0168】
本発明のダイマー、免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドの並びにこれらを含む組成物の有効性又は効力は、関与する特定の疾患又は障害に応じて、それ自体が公知の任意の適切なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイ及び/又は動物モデル又はそれらの任意の組み合わせを使用して試験され得る。適切なアッセイ及び動物モデルは当業者には明らかであり、例えば、リガンド置換アッセイ(例えば、Burgess et al., Cancer Res 2006 66:1721-9)、二量体化アッセイ(例えば、国際公開公報第2009/007427A2号、Goetsch, 2009)、シグナリングアッセイ(例えば、Burgess et al., Mol Cancer Ther 9:400-9)、増殖/生存アッセイ(例えば、Pacchiana et al., J Biol Chem 2010 Sep M110.134031)、細胞接着アッセイ(例えば、Holt et al., Haematologica 2005 90:479-88)及び遊走アッセイ(例えば、Kong-Beltran et al., Cancer Cell 6:75-84)、内皮細胞出芽アッセイ(例えば、Wang et al., J Immunol. 2009; 183:3204-11)及びin vivo異種移植モデル(例えば、Jin et al., Cancer Res. 2008 68:4360-8)、並びに以下の実験パートにおいて、及び本明細書で引用される先行技術において使用されているアッセイ及び動物モデルが挙げられる。in vitroにおける前記第1のターゲットの阻害を表現するための手段は、IC50である。
【0169】
特に、本発明のダイマーは、ベンチマークよりも良好な親和性(K値(実際又は見掛け)、K値(実際又は見掛け)、kon速度及び/又はkoff速度として適切に測定及び/又は表現される)で、ターゲットに結合する。
【0170】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドを含むダイマーであって、例えばリガンド競合アッセイ、競合FACS、機能的細胞アッセイ、例えばリガンド誘導走化性の阻害、ALPHASCREEN(登録商標)アッセイなどにおいて、好ましくは競合FACSによって決定した場合に、ベンチマークのIC50よりも少なくとも10%、例えば20%、30%、50%、80%、90%又はさらに100%又はそれ以上良好なIC50で、ターゲットに結合するダイマーに関する。
【0171】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドを含むダイマーであって、例えばリガンド競合アッセイ、競合FACS、機能的細胞アッセイ、例えばリガンド誘導走化性の阻害、ALPHASCREEN(登録商標)アッセイなどにおいて、好ましくは競合FACSによって決定した場合に、ベンチマークのIC50よりも少なくとも1.5倍、例えば2倍、3倍又は4倍及びさらに5倍又は10倍良好なIC50で、ターゲットに結合するダイマーに関する。
【0172】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドを含むダイマーであって、例えばリガンド競合アッセイ、競合FACS、機能的細胞アッセイ、例えばリガンド誘導走化性の阻害、ALPHASCREEN(登録商標)アッセイなどにおいて決定した場合に、200nM〜0.01nM、例えば0.01、0.05、0.1、0.15、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200nMのIC50を有するダイマーに関する。
【0173】
輸送プロセス、製造プロセス、保存プロセス及び送達プロセスは、ポリペプチドに対する多様なストレス、例えば化学的ストレス及び物理的なストレスを与え得る。保存中は、例えば、脱アミド、ラセミ化、加水分解、酸化、異性化、β−脱離又はジスルフィド交換などの化学的改変が起こり得る。物理的ストレスは、変性及びアンフォールディング、凝集、粒子形成、沈殿、乳白光又は吸着を引き起こし得る。これらのストレスは、タンパク質治療薬、例えば抗体治療薬の物理化学的完全性に影響を及ぼし得ることが公知である。
【0174】
上記のように、本発明者らは、本発明のダイマーが、予想外の好ましい結合及び機能的特徴を有することを観察した。これらの特徴はまた、効力のいかなる明らかな及び実質的な損失も伴わずに、長期間保持されていた。これは、ダイマーを保存及び輸送に有用なものにする。本発明は、本発明の安定なダイマーを提供する。「安定」は、一般に、1つ以上の化学的ストレス若しくは物理的ストレス(例えば、(+25℃以上の)高温)又は物理的ストレス(例えば、振盪又は撹拌)に曝露された場合であっても、ダイマーが、長期間(例えば、1カ月間〜36カ月間)の保存時に、重大な物理的変化又は化学的変化(特に、酸化)に悩まされないことを意味する。より具体的には、「安定」は、(定義された)条件下における(定義された)長期間の保存時に、分解生成物、例えば本発明のダイマーの低分子量(LMW)誘導体(例えば、ポリペプチド);及び/又は例えばダイマーの凝集によって形成された高分子量(HMW)誘導体(オリゴマー又はポリマー)の1つ以上がごくわずかに形成されることを意味する。
【0175】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、−20℃、+4℃、室温、例えば+20℃において、又はさらに+25℃において、少なくとも2カ月間、例えば4カ月間、6カ月間、12カ月間又はさらにそれ以上、例えば18カ月間、24カ月間又は36カ月間安定であり、前記安定性が、LMW及び/又はHMWのわずかな形成又は非形成、例えば10%未満、例えば5%未満、2%未満の又はさらに検出不可能なLMW及び/又はHMWを特徴とするダイマーに関する。
【0176】
タンパク質の安定性を評価するために使用され得る一般的な技術としては、静的光散乱、接線流ろ過、フーリエ変換赤外分光法、円二色法、尿素誘導性タンパク質アンフォールディング、固有トリプトファン蛍光及び/又は1−アニリン−β8−ナフタレンスルホン酸タンパク質結合が挙げられる。これらの技術は、本発明のダイマーにも適用可能である。加えて、本発明のダイマーは、保存過程において、及び/又は本明細書で定義される1つ以上のストレスの影響下で、効力/生物活性の損失をほとんど又は全く示さない。
【0177】
したがって、本発明は、反応性システイン部分を含むポリペプチドを保存するための方法であって、少なくとも、前記反応性システイン部分のチオール部分をジスルフィド誘導体シスチンに酸化し、それにより、前記反応性システイン部分を一時的に不活性化する工程を含み、前記ポリペプチドが(内部)シスチン結合をさらに含む方法に関する。
【0178】
本発明のダイマーの好ましい機能的特性にもかかわらず、本発明者らは、ダイマーが、例えばマレイミド化学反応による例えばC末端システインを使用した官能基のカップリングなどの即時使用のためのプールとして特に適切であり得ると仮説した。軽度の還元条件を用いたプロトコールを開発し、ダイマーの分子間ジスルフィド架橋を還元して、構成ポリペプチドのチオール基を活性化した。最適条件は、内部標準ISVDジスルフィド架橋を還元せずに、ジスルフィドを還元してダイマーの形成をもたらした。
【0179】
好ましい還元剤は、酸系還元剤、例えばシュウ酸(C)、ギ酸(HCOOH)、アスコルビン酸(C)、亜リン酸又はβ−メルカプトエタノール、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、新生(原子)水素、ナトリウムアマルガム、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、Sn2+イオン含有化合物、例えば塩化スズ(II)、亜硫酸化合物、ヒドラジン、亜鉛−水銀アマルガム亜鉛(Zn(Hg))、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、リンドラー触媒、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、Fe2+含有化合物、例えば硫酸鉄(II)、一酸化炭素(CO)、炭素(C)、ジチオスレイトール(DTT)及びトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンHCl(TCEP)、好ましくはDTT及びTCEPである。
【0180】
還元剤の好ましい最終濃度は、50mM〜1mM、例えば40mM〜2mM、30mM〜5mM及び20mM〜7.5mM、好ましくは10mMである。
【0181】
10mM DTTによって4℃で一晩(又は室温で少なくとも2時間)処理することが、内部標準ジスルフィド結合に影響を及ぼさずに、最大10mg/mlの濃度のISVDの分子間ジスルフィド結合を還元するために非常に適切であると決定した。還元は、好ましくは、DTT又はTCEPを使用して行われ得る。TCEPとは異なり、DTTは、好ましくは、最適なカップリング条件を作るために除去される。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を介して、モノマーポリペプチドは、非還元型ダイマー及びDTTから分離され得る。
【0182】
還元の程度は、当技術分野で公知の任意の手段を介して、例えばSEC又は非還元条件下のSDS−PAGEを介してモニタリングされ得る。
【0183】
したがって、本発明は、本明細書に記載される方法であって、好ましくは前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドの内部ジスルフィド結合の酸化状態が維持される条件下で、前記ダイマーの前記(C末端)シスチンを還元する工程をさらに含む方法に関する。
【0184】
したがって、本発明は、反応性システイン部分を含むポリペプチドを作製するための方法であって、少なくとも:
(i)シスチン(ジスルフィド結合;2つのシステイン間のSS結合又はジスルフィド架橋)を介して二量体化された本発明のポリペプチドを提供する工程;
(ii)前記シスチンを還元し、それにより、反応性システイン部分を含むポリペプチドを作製する工程
を含む方法に関する;好ましくは、前記シスチン結合は、前記ポリペプチドのC末端に位置する。好ましくは、前記工程(ii)の還元条件は、内部シスチン結合が還元されないように選択される。
【0185】
ダイマーの還元後、還元型モノマーポリペプチドは、好ましくは、コンジュゲーションのために即時に(例えば、0.5時間以内、しかし好ましくは10分以内に)使用されるか、又は再酸化を防止するために凍結されるが、再酸化は、凍結によって完全に防止されない。実験的証拠は、本発明の還元型モノマーポリペプチドが、D−PBS中、4℃で最大24時間安定であることを示唆している。
【0186】
一実施態様では、本発明のダイマー及び構成ポリペプチドは、1つ以上の官能基、残基又は部分を含む。一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含むダイマーに関する。一実施態様では、本発明は、本明細書に記載されるダイマーであって、前記第1のポリペプチド及び/又は前記第2のポリペプチドが、1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含むダイマーに関する。例えば、官能基、残基若しくは部分は、ポリペプチドのC末端のシステイン残基の(反応性)チオール部分にカップリング若しくは連結され得、及び/又は官能基、残基若しくは部分は、本発明のポリペプチドのN末端にカップリング若しくは連結され得る。一実施態様では、本発明のダイマーの一方又は両方のN末端は、官能基、残基又は部分を含む。
【0187】
このような基、残基又は部分の例、並びにこのような基、残基又は部分を付加するために使用され得る方法及び技術、並びにこのような基、残基又は部分の潜在的な用途及び利点は、当業者には明らかであろう。限定されないが、抗体改変のためのチオール反応性基としては、マレイミド、ビニルスルホン、ハロアセチル又はピリジルジスルフィド基が挙げられる。マレイミドは、中性pHでシステインと選択的に反応するが、より高いpH値ではアミン基との反応性がある。安定なチオエーテル結合が生成される。
【0188】
1つ以上の所望の特性又は機能性を本発明のダイマー及び/又はポリペプチドに付与する1つ以上の官能基、残基又は部分が、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドに付加され得る。このような官能基、残基又は部分の例は、当業者には明らかであろう。例えば、このような1つ以上の官能基、残基若しくは部分は、本発明のダイマー及び/若しくはポリペプチドの半減期、溶解性及び/若しくは吸収を増加させ得、このような1つ以上の官能基、残基若しくは部分は、本発明のダイマー及び/若しくはポリペプチドの免疫原性及び/若しくは毒性を減少させ得、このような1つ以上の官能基、残基若しくは部分は、本発明のダイマー及び/若しくはポリペプチドの任意の望ましくない副作用を排除若しくは減弱し得、並びに/又はこのような1つ以上の官能基、残基若しくは部分は、他の有利な特性を本発明のダイマー及び/若しくはポリペプチドに付与し得、及び/若しくは本発明のダイマー及び/若しくはポリペプチドの望ましくない特性を軽減し得;又は前記2つ以上の任意の組み合わせであり得る。このような官能基、残基又は部分及びそれらを導入するための技術の例は当業者には明らかであり、一般に、本明細書で引用される一般的な背景技術で言及されている全ての官能基、残基又は部分及び技術、並びに医薬用タンパク質の改変のための、特に抗体又は抗体フラグメント(scFv及び単一ドメイン抗体を含む)の改変のためのそれ自体が公知の官能基、残基又は部分及び技術を含み得、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16thed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1980)を参照のこと。
【0189】
特異性を考慮して、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドはまた、イメージング剤に対するコンジュゲーションに非常に適切である。抗体をコンジュゲートするための適切なイメージング剤は当技術分野で周知であり、同様に、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドにコンジュゲートするために有用である。適切なイメージング剤としては、限定されないが、好ましくは有機分子、酵素標識、放射性標識、着色標識、蛍光標識、発色標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、コロイド金、蛍光標識、金属標識、ビオチン、化学発光、生物発光、発色団及びそれらの混合物からなる群より選択される分子が挙げられる。
【0190】
したがって、本発明は、限定されないが、好ましくは有機分子、酵素標識、放射性標識、着色標識、蛍光標識、発色標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、コロイド金、蛍光標識、金属標識、ビオチン、化学発光、生物発光、発色団及びそれらの混合物からなる群より選択される分子を含むイメージング剤をさらに含む本発明のダイマー及び/又はポリペプチドに関する。
【0191】
1つ以上の検出可能な標識又は他のシグナル生成基、残基若しくは部分は、標識ポリペプチドの目的の用途に応じて、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドにカップリングされ得る。適切な標識並びにそれらを付加、使用及び検出するための技術は当業者には明らかであり、例えば限定されないが、蛍光標識、リン光標識、化学発光標識、生物発光標識、放射性同位体、金属、金属キレート、金属カチオン、発色団及び酵素、例えば国際公開公報第08/020079号の109頁で言及されているものが挙げられる。検出剤としての有用性が当技術分野で公知の放射性同位体及び放射性核種としては、限定されないが、H、14C、15N、18F、35S、64Cu、67Cu、75Br、76Br、77Br、89Zr、90Y、97Ru、99Tc、105Rh、109Pd、111ln、123l、124l、125l、131l、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Ra、225Acが挙げられる。約1〜約10mCiは、検出可能な毒性を伴わずに安全に投与され得るので、インジウム111は、診断用放射線核種として特に好ましい;イメージングデータは、一般に、その後のPDC分布の予測指標である(下記を参照のこと)。例えば、Murray J. L., 26 J. Nuc. Med. 3328 (1985)及びCarraguillo, J. A. et al, 26 J. Nuc. Med. 67 (1985)を参照のこと。
【0192】
他の適切な標識は当業者には明らかであり、例えば、NMR又はESR分光法を使用して検出され得る部分が挙げられる。例えば、本発明のポリペプチドは、実施例セクションで例証されているように、89Zrで放射性標識され得る。このような本発明の標識ポリペプチドは、例えば、特定の標識の選択に応じて、in vitroアッセイ、in vivoアッセイ又はin situアッセイ(それ自体が公知のイムノアッセイ、例えばELISA、RIA、EIA及び他の「サンドイッチアッセイ」などを含む)のために、並びにin vivoにおける診断目的及びイメージング目的で使用され得る。好ましい実施態様では、本発明の放射性標識ポリペプチド及び/又はダイマーは、マイクロPETイメージングを介して検出される。画像は、AMIDE Medical Image Data Examiner software (version 1.0.4, Stanford University)を使用して再構成され得る。
【0193】
特定の結合ペア、例えばビオチン−(ストレプト)アビジン結合ペアの一方の部分である官能基、残基又は部分が付加され得る。このような官能基は、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドを、すなわち結合ペアの形成を介して、結合ペアの他方の半分に結合された別のタンパク質、ポリペプチド又は化合物に連結するために使用され得る。例えば、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドは、ビオチンにコンジュゲートされ、アビジン又はストレプトアビジンにコンジュゲートされた別のタンパク質、ポリペプチド、化合物又は担体に連結され得る。例えば、このようなコンジュゲートダイマー及び/又はポリペプチドは、例えば、検出可能なシグナル生成剤がアビジン又はストレプトアビジンにコンジュゲートされた診断系において、レポーターとして使用され得る。このような結合ペアはまた、例えば、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドを担体(医薬目的に適切な担体を含む)に結合させるために使用され得る。非限定的な一例は、Cao and Suresh 2000 (Journal of Drug Targeting 8 (4): 257)に記載されているリポソーム製剤である。このような結合ペアはまた、治療的に活性な薬剤を本発明のポリペプチドに連結するために使用され得る。
【0194】
他の可能な化学的改変及び酵素的改変は、当業者には明らかであろう。このような改変はまた、研究目的で(例えば、機能−活性の関係を研究するために)導入され得る。例えば、Lundblad and Bradshaw 1997 (Biotechnol. Appl. Biochem. 26: 143-151)を参照のこと。
【0195】
いくつかの実施態様では、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドは、ダイマー/ポリペプチド−薬物コンジュゲート(本明細書ではまとめて「PDC」と略記される)を形成するために、薬物にコンジュゲートされる。現代の抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は腫瘍学的用途に使用されており、薬物(例えば、細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤、毒素又は毒素部分)の局所送達のための抗体−薬物コンジュゲートの使用は、腫瘍への薬物部分のターゲティング送達(これは、より高い有効性、より低い毒性などを可能にし得る)を可能にする。これらのADCは、3つの成分((2)リンカーによって(3)薬物部分(例えば、毒素部分又は毒素)にコンジュゲートされた(1)モノクローナル抗体)を有する。この技術の概要は、Ducry et al., Bioconjugate Chem., 21:5-13 (2010)、Carter et al., Cancer J. 14(3):154 (2008)及びSenter, Current Opin. Chem. Biol. 13:235-244 (2009)(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に提供されている。本発明のPDCはまた、3つの成分((2)リンカーによって(3)薬物(例えば、毒素部分又は毒素)にコンジュゲートされた(1)ダイマー又はポリペプチド)を有する。上記のように、リンカー及び薬物のコンジュゲーションは、抗体フラグメント(例えば、本発明のポリペプチド)の凝集、生体内分布及びPKプロファイルに対して、より大きなサイズの抗体よりも大きな好ましくない効果を及ぼすが、当業者であれば、ADCの技術、方法、手段などは、一般に、PDCに等しく適用可能であることを認識するであろう(Feng et al.(前掲)を参照のこと)。
【0196】
本発明は、(本発明のダイマーに含まれるか否かにかかわらず)薬物(例えば、毒素又は毒素部分)を含む本発明のポリペプチドを提供する。完全を期すために、本発明は、毒素又は毒素部分などの薬物を含む本発明のダイマーを提供する。
【0197】
薬物(例えば、毒素部分又は毒素)は、任意の適切な方法を使用して、ダイマー及び/又はポリペプチドに連結又はコンジュゲートされ得る。一般に、コンジュゲーションは、当技術分野で公知であるように、ダイマー及び/又はポリペプチドに対する共有結合によって行われ、一般に、リンカー(多くの場合はペプチド結合)に依拠する。例えば、薬物(例えば、毒素部分又は毒素)は、ポリペプチドに直接的に又は適切なリンカーによって共有結合され得る。適切なリンカーとしては、切断不可能リンカー又は切断可能リンカー、例えば細胞酵素(例えば、細胞エステラーゼ、細胞プロテアーゼ、例えばカテプシンB、例えば実施例セクションを参照のこと)の切断部位を含むpH切断可能リンカーが挙げられ得る。このような切断可能リンカーは、ポリペプチドのインターナリゼーション後に薬物(例えば、毒素部分又は毒素)を放出し得るリガンドを調製するために使用され得る。当業者であれば認識するように、ダイマー及び/又はポリペプチド当たりの薬物部分の数は、反応条件に応じて変化し得、1:1〜20:1の薬物:ポリペプチド(薬物対抗体比又はDARとも示される)で変動し得る。また当業者であれば認識するように、反応及び/又は精製が厳密にコントロールされない場合、実数は平均である。好ましくは、本発明のダイマーは薬物をさらに含み、薬物対ダイマー比(DAR)は1である。薬物(例えば、毒素部分又は毒素)をダイマー及び/又はポリペプチドに連結又はコンジュゲートするための様々な方法が使用され得る。選択される特定の方法は、薬物(例えば、毒素部分又は毒素)、並びに連結又はコンジュゲートすべきダイマー及び/又はポリペプチドに依存するであろう。所望により、末端官能基を含有するリンカーは、ダイマー及び/又はポリペプチド並びに薬物(例えば、毒素部分又は毒素)を連結するために使用され得る。一般に、コンジュゲーションは、反応性官能基を含有する(又は反応性官能基を含有するように改変された)薬物(例えば、毒素部分又は毒素)をリンカーと反応させるか、又はダイマー及び/若しくはポリペプチドと直接反応させることによって達成される。共有結合は、適切な条件下で第2の化学基と反応し得る化学的部分又は官能基を含有する(又は含有するように改変された)薬物(例えば、毒素部分又は毒素)を反応させ、それにより、共有結合を形成することによって形成される。所望により、適切な反応性化学基は、任意の適切な方法(例えば、Hermanson, G. T., Bioconjugate Techniques, Academic Press: San Diego, CA (1996)を参照のこと)を使用して、ポリペプチド又はリンカーに追加され得る。多くの適切な反応性化学基の組み合わせが当技術分野で公知であり、例えば、アミン基は、求電子基、例えばトシラート、メシラート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)などと反応し得る。チオールは、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロイル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)などと反応し得る。アルデヒド官能基は、アミン含有分子又はヒドラジド含有分子とカップリングされ得、アジド基は、三価リン基と反応してホスホルアミダート結合又はホスホイミド結合を形成し得る。活性化基を分子に導入するための適切な方法は、当技術分野で公知である(例えば、Hermanson(前掲)を参照のこと)。
【0198】
実施例に示されているように、予想外のことに、C末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部を含む本発明のポリペプチドは、非常にコントロールされた様式で、ポリペプチド当たり指定数の薬物をコンジュゲートするために非常に適切であったことが見出された(例えば、1のDAR)。これは、先行技術の分子と比較して良好にコントロールされた有効性及び安全性プロファイルをもたらす。したがって、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドであって、単一コンジュゲート薬物(例えば、DAR=1)を含むポリペプチド関する。したがって、本発明の方法は、改善された均一性でポリペプチド及びダイマーを生産することを可能にする。
【0199】
下記のように、PDCの薬物は、任意の数の薬剤であり得、限定されないが、細胞増殖抑制剤、細胞傷害剤、例えば化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント)、毒素部分又は放射性同位体(すなわち、ラジオコンジュゲート)が提供される。他の実施態様では、本発明はさらに、PDCを使用する方法を提供する。本発明はまた、本発明のポリペプチド又はダイマーを放射性同位体で標識して、細胞傷害性放射線をターゲット細胞に送達する放射免疫療法(RIT)に関する。
【0200】
本発明に使用するための薬物としては、細胞傷害薬物、特にガン治療に使用されるものが挙げられる。このような薬物としては、一般に、DNA損傷剤、代謝拮抗物質、天然物及びそれらの類似体が挙げられる。例示的なクラスの細胞傷害剤としては、酵素阻害剤、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤及びチミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAインターカレーター、DNA切断剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン系薬物、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞傷害性ヌクレオシド、プテリジン系薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、ドラスタチン、メイタンシノイド、分化誘導剤及びタキソールが挙げられる。
【0201】
これらのクラスのメンバーとしては、例えば、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン、ロイロシデイン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン及びポドフィロトキシン誘導体、例えばエトポシド又はリン酸エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキサン(タキソールを含む)、タキソテールレチノイン酸、酪酸、N−8−アセチルスペルミジン、カンプトテシン、カリケアミシン、エスペラミシン、エンジイン、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、カリケアマイシン、カンプトテシン、メイタンシノイド(DM1を含む)、モノメチル−オーリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)及びメイタンシノイド(DM4)及びそれらの類似体、好ましくはMMAEが挙げられる。好ましくは、毒素にコンジュゲートされた前記ポリペプチドは、ABL100−NC003−1、ABL100−NC003−3、ABL100−NC003−5、ABL100−NC003−6及びABL100−BF012−1からなる群より選択され、最も好ましくはABL100−BF012−1である。
【0202】
薬物(例えば、毒素)は、ポリペプチド−毒素コンジュゲート及び/又はダイマー−毒素コンジュゲートとして使用され得、例えば、細菌毒素、例えばジフテリア毒素、植物毒素、例えばリシン、小分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandler et al. (2000) J. Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581; Mandler et al. (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028; Mandler et al. (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(欧州特許出願公開第1391213号;Liu et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)及びカリケアマイシン(Lode et al. (1998) Cancer Res. 58:2928; Hinman et al. (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)を含み得る。毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機構によって、それらの細胞傷害効果及び細胞増殖抑制効果を発揮し得る。
【0203】
本発明のポリペプチド及び/又はダイマーと、1つ以上の小分子毒素、例えばメイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン、カリケアマイシン及びCC1065、並びに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体とのコンジュゲートが企図される。
【0204】
本発明のダイマー及び/又はポリペプチドとコンジュゲートされ得る他の薬物(例えば、抗腫瘍剤)としては、BCNU、ストレプトゾトシン、ビンクリスチン及び5−フルオロウラシル(米国特許第5,053,394号、米国特許第5,770,710号に記載されているLL−E33288複合体が総称として公知の薬剤のファミリー)並びにエスペラミン(米国特許第5,877,296号)が挙げられる。
【0205】
使用され得る薬物(例えば酵素的に活性な毒素及びそのフラグメント)としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、(Pseudomonas aeruginosaに由来する)エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンが挙げられ得る。例えば、1993年10月28日公開の国際公開公報第93/21232号を参照のこと。
【0206】
本発明はさらに、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドと、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNase)との間に形成されるPDCを企図する。
【0207】
腫瘍の選択的破壊のために、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドは、高放射性原子を含み得る。様々な放射性同位体が、ラジオコンジュゲートPDCの生産に利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が挙げられる。
【0208】
放射性標識又は他の標識は、公知の方法でコンジュゲートに組み込まれ得る。例えば、ポリペプチドは生合成され得るか、又は例えば水素に代えてフッ素−19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用した化学的アミノ酸合成によって合成され得る。Tc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111などの標識は、ペプチドのシステイン残基を介して付加され得る。イットリウム−90は、リシン残基を介して付加され得る。ヨードゲン法(Fraker et al. (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57は、ヨウ素−123を組み込むために使用され得る。ヨウ素−125は、Valentine, M. A. et al., (1989) J. Biol. Chem. 264:11282に記載されているヨードビーズ法によって放射性標識され得る。“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”(Chatal, CRC Press 1989)には、他の方法が詳細に記載されている。
【0209】
当業者であれば、とりわけ特定の放射性標識、PDCの半減期、毒性、ターゲットなどに依存するラジオコンジュゲートPDCの有効単一処置投与量(例えば、治療有効量)を確立し得る。好ましくは、有効単一処置投与量は、好ましくは、約5〜約75mCi、より好ましくは約10〜約40mCiの範囲である。
【0210】
PDC化合物の作製は、ADCの分野の当業者に公知の任意の技術によって達成され得る。簡潔に言えば、PDC化合物は、抗体単位として本発明のダイマー及び/又はポリペプチドと、薬物と、場合により薬物及び結合剤を接続するリンカーとを含み得る。
【0211】
薬物又は抗体−薬物コンジュゲートが効果(例えば、細胞に対する細胞増殖抑制効果及び/又は細胞傷害効果)を発揮するかを決定する方法は公知である。一般に、抗体薬物コンジュゲートの効果(例えば、細胞傷害活性又は細胞増殖抑制活性)は、細胞培養培地中で、抗体薬物コンジュゲートを、ターゲットタンパク質を発現する哺乳動物細胞に曝露すること;該細胞を約6時間〜約5日間培養すること;及び、細胞生存率を測定することによって測定され得る。細胞ベースのin vitroアッセイは、生存率(増殖)、細胞傷害性、及び抗体薬物コンジュゲートのアポトーシス誘導(カスパーゼ活性化)を測定するために使用され得る。これらの方法は、PDCに等しく適用可能である。
【0212】
したがって、本発明は、(本発明のダイマーに含まれるか否かにかかわらず)薬物(例えば、毒素又は毒素部分)をさらに含む本発明のポリペプチドに関する。明確にするために、本発明は、薬物(例えば、毒素又は毒素部分)をさらに含む(本発明のポリペプチドを含む)ダイマーに関する。
【0213】
したがって、本発明は、(本発明のダイマーに含まれるか否かにかかわらず)薬物(例えば、毒素又は毒素部分)にコンジュゲートされた本発明のポリペプチドに関する。明確にするために、本発明は、薬物(例えば、毒素又は毒素部分)にコンジュゲートされた(本発明のポリペプチドを含む)ダイマーに関する。
【0214】
PDCは、高度に選択的なターゲティング部分の選択性と、薬物の殺傷力とを併せ持つ。(本発明のダイマーに含まれるか否かにかかわらず)本発明のポリペプチドがPDCの成分として上手く機能するために、ポリペプチドは、ターゲット細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上のターゲット抗原に結合する必要がある。ほとんどの薬物の場合、PDCは、有効であるためには、細胞によってインターナリゼーションされなければならない(Trail 2013 Antibodies 2:113-129 review)。インターナリゼーションの後、PDCはリソソームに輸送され、続いてPDCの細胞内プロセシングによって生物学的に活性な薬物が放出されて、ターゲット細胞(例えば、腫瘍細胞)に対するその(毒性)効果が発揮されるであろう。放射性ペイロードの毒性効果を高度に限局するためには、生物学的に活性な薬物がインターナリゼーションされるだけではなく、放射免疫療法(RIT)のための放射性同位体もインターナリゼーションされることが好ましい。(本発明のダイマーに含まれるか否かにかかわらず)本発明の放射性標識ポリペプチドによる正確なターゲティングは、比較的低線量の放射能でターゲット細胞(例えば、腫瘍細胞)の選択的かつ極めて有効な細胞傷害性を引き起こし、副作用を最小限にする。
【0215】
本発明者らは、本発明のダイマーの全体的なインターナリゼーションが、特に少数のターゲットを有する細胞において、対応するモノマー及び二価ベンチマークよりも強力かつ有効であると思われることを実証した。極めて高レベルでターゲットを発現する細胞では、インターナリゼーションのこの差異は、あまり顕著ではないが依然として有意である。
【0216】
したがって、本発明は、ガンの処置に使用するための本発明のダイマーであって、インターナリゼーションするダイマーに関する。好ましくは、前記ダイマーは、(細胞傷害)薬物にコンジュゲートされる。
【0217】
したがって、本発明は、ガンの処置のための医薬を製造するための本発明のダイマーの使用であって、前記ダイマーがインターナリゼーションする使用に関する。好ましくは、前記ダイマーは、(細胞傷害)薬物にコンジュゲートされる。
【0218】
一実施態様では、本発明のダイマーは、対応するISVDのための少数の結合部位、例えば10*10個未満の結合部位、例えば5*10個の結合部位又はさらに10*10個未満の結合部位、5*10個の結合部位、1*10個の結合部位又は5000個未満の結合部位、例えば4000個未満、3000個又はさらに2000個未満の結合部位、例えば1000個又はさらにそれ未満の結合部位を発現する細胞をターゲティングするために使用され得る。
【0219】
一実施態様では、本発明は、ガンの処置に使用するための本明細書に記載されるダイマーであって、インターナリゼーションするダイマーに関する。好ましくは、前記ダイマーは、(細胞傷害)薬物にコンジュゲートされる。
【0220】
一実施態様では、本発明は、ガンの処置のための医薬を製造するための本明細書に記載されるダイマーの使用であって、前記ダイマーがインターナリゼーションする使用に関する。好ましくは、前記ダイマーは、(細胞傷害)薬物にコンジュゲートされる。
【0221】
ガン処置に使用されるほとんどの薬物は、疎水性である。これらの疎水性薬物は細胞膜を透過し得るので、これは有利である。しかしながら、これらの薬物は、非ガン性細胞の膜も透過し得る。それでも、ガン細胞は、「正常」細胞よりも急速に分裂するので、これらの薬物は依然として有効である。これらの薬物の使用は、重大な副作用を伴うと認識されよう。よりターゲティングされたアプローチのために、これらの薬物のいくつかは、好ましくはガン細胞をターゲティングするためのビヒクルとして使用される従来の抗体にカップリングされている。これらの従来の抗体は、約150kDのサイズを有する一方、薬物は、平均約1kDのサイズを有する。したがって、抗体:薬物のサイズ比は、約150:1である。この比は、薬物の疎水性が、全体として抗体薬物コンジュゲート(ADC)に対してほとんど影響を及ぼさない理由の1つである。
【0222】
ISVDの物理化学的特性は、その表面が露出したアミノ酸(これは、溶媒に曝露されている)に非常に依存することが実証されている。これは、ISVDに使用される多数の異なる製剤に反映される。従来の抗体とは全く対照的に、ISVDは、わずか約15kDのサイズを有する。したがって、ISV:薬物のサイズ比は、わずか15:1(すなわち、従来の抗体の10倍未満)である。したがって、薬物の疎水性特徴は、PDCの特性に対して不相応に大きな影響を及ぼす。実際、PDCの主な問題は、凝集である。それにもかかわらず、驚くべきことに、本発明ののPDCは安定であり、in vivo投与に適しており、in vivoで腫瘍成長を軽減することができたことが観察された。
【0223】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載される毒素にコンジュゲートされたポリペプチド、又はそれを必要とする被験体の処置に使用するための毒素にコンジュゲートされたダイマーを提供する。
【0224】
本発明は、治療に使用するための、好ましくはガンの処置に使用するための上記ダイマーに関する。また、本発明は、ガンの処置のための医薬を製造するための上記ダイマーの使用に関する。
【0225】
「ガン」という用語は、悪性新生物細胞、例えば腫瘍、新生物、ガン腫、肉腫、白血病及びリンパ腫の増殖によって引き起こされる任意のガンを指す。処置目的のガンとしては、限定されないが、ガン腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、リンパ性悪性腫瘍、乳房のガン、卵巣のガン、精巣のガン、肺のガン、結腸のガン、直腸のガン、膵臓のガン、肝臓のガン、中枢神経系のガン、頭頸部のガン、腎臓のガン、骨のガン、血液のガン又はリンパ系のガンが挙げられる。このようなガンのより具体的な例としては、有棘細胞ガン(例えば、上皮扁平上皮細胞ガン)、肺ガン(小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、肺の腺ガン及び肺の扁平上皮ガン腫を含む)、腹膜のガン、肝細胞ガン、胃ガン(gastric or stomach cancer)(消化管ガンを含む)、膵臓ガン、膠芽細胞腫、子宮頸ガン、卵巣ガン、口腔ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、泌尿器のガン、肝ガン、乳ガン(例えば、HER2陽性乳ガンを含む)、結腸ガン、直腸ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガン腫又は子宮ガン腫、唾液腺ガン腫、腎臓ガン又は腎ガン、前立腺ガン、外陰ガン、甲状腺ガン、肝ガン腫、肛門ガン腫、陰茎ガン腫、メラノーマ、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、脳ガン、頭頸部ガン並びに関連転移が挙げられる。
【0226】
「固形腫瘍ガン」は、組織の異常な塊を含むガンである。いくつかの実施態様では、ガンは、固形腫瘍ガン(例えば、ガン腫及びリンパ腫乳ガン、非小細胞肺ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、頭頸部ガン、結腸ガン、肉腫又は副腎皮質ガン腫)である。
【0227】
本発明は、(例えば、上記で定義される)ガンに関係する障害を治療及び/又は予防及び/又は緩和するための方法を提供する。
【0228】
本明細書で使用される場合、当技術分野で十分に理解されているように、症状「を処置すること」又は症状(例えば、本明細書に記載される症状、例えばガン)の「処置」は、有益な結果又は所望の結果、例えば臨床結果を得るためのアプローチである。有益な結果又は所望の結果としては、限定されないが、1つ以上の症候又は症状の緩和又は改善;疾患、障害又は症状の程度の縮小;疾患、障害又は症状の状態の安定化(すなわち、非悪化);疾患、障害又は症状の拡大の予防;疾患、障害又は症状の進行の遅延又は減速;疾患、障害又は症状の改善又は軽減;及び、検出可能又は検出不可能であるかにかかわらず、(部分的又は完全であるかにかかわらず)寛解が挙げられ得る。疾患、障害又は症状の「軽減」は、処置の非存在下における程度又は経過と比較して、疾患、障害又は症状の程度及び/若しくは望ましくない臨床徴候が減少し、並びに/又は進行の経過が減速若しくは長期化することを意味する。
【0229】
本明細書で使用される薬剤(例えば、上記コンジュゲートのいずれか)の「有効量」という用語は、有益な結果又は所望の結果、例えば臨床結果をもたらすために十分な量であり、このように、「有効量」は、それが適用されている状況に依存する。
【0230】
「被験体」は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0231】
本発明は、ガンを処置する方法であって、本発明のダイマーを患者に投与することを含む方法に関する。
【0232】
本発明はまた、関節リウマチ、乾癬又は肺粘液の過剰分泌に関係する障害を治療及び/又は予防及び/又は緩和するための方法であって、本明細書に記載される毒素にコンジュゲートされた(有効量の)ポリペプチドを、このような処置を必要とする被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0233】
本発明は、毒素にコンジュゲートされた予防用又は治療用ポリペプチド又はダイマーを、体内の特定の位置、組織又は細胞型に送達するための方法であって、本明細書に記載される毒素にコンジュゲートされたポリペプチド、又は本明細書に記載される毒素にコンジュゲートされたダイマーを被験体に投与する工程を含む方法を提供する。本発明は、それを必要とする被験体を処置するための方法であって、本明細書に記載される毒素にコンジュゲートされたポリペプチドを投与することを含む方法を提供する。
【0234】
一実施態様では、本発明は、上記毒素にコンジュゲートされたポリペプチド又は本明細書に記載される毒素にコンジュゲートされたダイマーを含む医薬組成物に関する。本発明は、場合によりさらなる薬剤と共に;薬学的に許容し得る担体と共に、本発明のダイマーを提供する。
【0235】
したがって、本発明は、本発明のダイマーに含まれるか否かにかかわらず、薬物(例えば、本明細書に記載される毒素又は毒素部分)にコンジュゲートされた本発明のポリペプチドを提供する。好ましくは、前記ポリペプチドは、EGFRを対象とするISVを含み、血清アルブミンを対象とするISVDを潜在的にさらに含む。
【0236】
一実施態様では、本発明は、本明細書に記載される毒素にコンジュゲートされたポリペプチドであって、少なくとも1つのISVDが、上皮成長因子(EGF)とEGFRとの間の相互作用を阻害及び/又は遮断するポリペプチドを提供する。
【0237】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載される化合物を含有する組成物であって、薬学的に許容し得る賦形剤と共に製剤化された組成物を表す。いくつかの実施態様では、医薬組成物は、哺乳動物における疾患の処置のための治療レジメンの一部として、政府規制当局の承認を得て製造又は販売される。医薬組成物は、例えば、経口投与のために単位投与形態(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ又はシロップ)で;局所投与のために(例えば、クリーム、ゲル、ローション又は軟膏として);静脈内投与のために(例えば、微粒子塞栓物質を含まない滅菌溶液として、及び静脈内使用に適切な溶媒系として);又は本明細書に記載される任意の他の製剤で製剤化され得る。
【0238】
一実施態様では、本発明は、本発明のダイマーを含む組成物であって、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントを場合によりさらに含み、1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を場合により含む組成物に関し、好ましくは、前記組成物は医薬組成物である。有効量を含有する組成物は、放射線処置計画、診断又は治療処置のために投与され得る。放射線処置計画又は診断目的で投与される場合、コンジュゲートは、診断有効用量で、及び/又は治療有効用量を決定するために有効な量で被験体に投与される。治療用途では、組成物は、障害の症候及びその合併症を治癒又は少なくとも部分的に阻止するために十分な量で、症状(例えば、ガン)を既に患っている被験体(例えば、ヒト)に投与される。この目的を達成するために適切な量は、「治療有効量」(疾患又は医学的症状に関連する少なくとも1つの症候を実質的に改善するために十分な化合物の量)と定義される。例えば、ガンの処置では、疾患又は症状の任意の症候を減少させ、予防し、遅延させ、抑制し、又は阻止する薬剤又は化合物は、治療的に有効である。治療有効量の薬剤又は化合物は、疾患又は症状を治癒する必要はないが、疾患若しくは症状の発症が遅延、妨害若しくは予防されるか、又は疾患若しくは症状の症候が改善されるか、又は疾患若しくは症状の期間が変化し若しくは比較的軽度であるか、又は回復が個体において加速されるような、疾患又は症状の処置を提供するであろう。本発明のダイマーは、1回目投与の上記ダイマー又は組成物のいずれかを、放射線処置計画に有効な量で被験体に投与し、続いて2回目投与の上記ダイマー又は組成物のいずれかを、治療有効量で投与することによって、ガンの処置に使用され得る。
【0239】
これらの使用に有効な量は、疾患又は症状の重症度及び被験体の体重及び全身状態に依存し得る。当業者であれば、哺乳動物の年齢、体重及び症状の個体差を考慮して、哺乳動物(例えば、ヒト)に適用される本発明の方法に使用される本発明のダイマー及び組成物の治療有効量を決定し得る。本発明の特定のPDCは、ガン細胞をターゲティングする高い能力を示し、残存するので、本発明の化合物の投与量は、非コンジュゲート薬剤の治療効果ために必要な同等用量よりも少量(例えば、約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.1%以下)であり得る。本発明の薬剤は、有効量(これは、処置される被験体において望ましい結果をもたらす量である)で、被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与される。また、当業者であれば、治療有効量を経験的に決定し得る。有効量を含む本発明の組成物の単回投与又は複数回投与は、処置医師によって選択される用量レベル及びパターンで行われ得る。用量及び投与スケジュールは、被験体における疾患又は症状の重症度(これは、臨床医によって一般的に実施される方法又は本明細書に記載されるものにしたがって、処置過程を通してモニタリングされ得る)に基づいて決定及び調整され得る。
【0240】
本発明のダイマーは、従来の処置方法若しくは治療方法のいずれかと組み合わせて使用され得るか、又は従来の処置方法若しくは治療方法と別個に使用され得る。
【0241】
本発明のダイマーが他の薬剤との併用療法で投与される場合、それらは、個体に連続投与又は同時投与され得る。あるいは、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載される薬学的に許容し得る賦形剤と合わせた本発明の化合物と、当技術分野で公知の別の治療剤又は予防剤との組み合わせから構成され得る。
【0242】
一般に、医薬用途では、本発明のダイマー及び/又はポリペプチドは、少なくとも1つの本発明のダイマー及び/又はポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントと、場合により1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物とを含む医薬調製物又は組成物として製剤化され得る。非限定的な例として、このような製剤は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内注射、筋肉内注射若しくは皮下注射又は静脈内注入)、局所投与、吸入による、皮膚パッチによる、インプラントによる、坐剤による投与などに適切な形態であり得、非経口投与が好ましい。このような適切な投与形態(これは、投与様式に応じて固体、半固体又は液体であり得る)並びにその調製に使用するための方法及び担体は当業者には明らかであり、本明細書にさらに記載される。このような医薬調製物又は組成物は、一般に、本明細書では「医薬組成物」と称されるであろう。非ヒト生物に使用するための医薬調製物又は組成物は、一般に、本明細書では「獣医学的組成物」と称されるであろう。
【0243】
したがって、さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明のポリペプチド又は少なくとも1つの本発明のダイマーと、(すなわち、医薬用途に適切な)少なくとも1つの適切な担体、希釈剤又は賦形剤と、場合により1つ以上のさらなる活性物質を含有する医薬組成物に関する。
【0244】
一般に、本発明のポリペプチド及び/又はダイマーは、それ自体が公知の任意の適切な方法で製剤化及び投与され得る。例えば、上記で引用される一般的な背景技術(特に、国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第04/041863号、国際公開公報第04/041865号、国際公開公報第04/041867号及び国際公開公報第08/020079号)及び標準的なハンドブック、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18thEd., Mack Publishing Company, USA (1990)、Remington, the Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Lippincott Williams and Wilkins (2005);又はthe Handbook of Therapeutic Antibodies (S. Dubel, Ed.), Wiley, Weinheim, 2007(例えば、252〜255頁を参照のこと)を参照のこと。
【0245】
本発明のポリペプチド及び/又はダイマーは、従来の抗体及び抗体フラグメント(ScFv及びダイアボディを含む)並びに他の薬学的に活性なタンパク質に関するそれ自体が公知の任意の方法で製剤化及び投与され得る。このような製剤及びそれらの調製方法は当業者には明らかであり、例えば、非経口投与(例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、腔内投与、動脈内投与又は髄腔内投与)又は局所(すなわち、経皮又は皮内)投与に適切な調製物が挙げられる。
【0246】
非経口投与のための調製物は、例えば、注入又は注射に適切な滅菌溶液、懸濁液、分散液又はエマルジョンであり得る。このような調製物のための適切な担体又は希釈剤としては、例えば限定されないが、国際公開公報第08/020079号の143頁で言及されているものが挙げられる。通常、水溶液又は懸濁液が好ましいであろう。
【0247】
したがって、本発明のポリペプチド及び/又はダイマーは、薬学的に許容し得るビヒクル、例えば不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体と組み合わせて、全身投与(例えば、経口投与)され得る。それらは、ハードシェルゼラチンカプセル若しくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入され得るか、錠剤に圧縮され得るか、又は患者の食事の食物と共に直接取り込まれ得る。経口治療投与のために、本発明のポリペプチド及び/又はダイマーは、1つ以上の賦形剤と組み合わせられ得、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハーなどの形態で使用され得る。このような組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の本発明のポリペプチド及び/又はダイマーを含有すべきである。当然のことながら、組成物及び調製物中のそれらの割合は変動し得、好都合には、所定の単位剤形の重量の約2〜約60%であり得る。このような治療的に有用な組成物中の本発明のポリペプチド及び/又はダイマーの量は、有効な投与量レベルが得られるようなものである。
【0248】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどはまた、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤及び甘味剤又は香味剤、例えば国際公開公報第08/020079号の143〜144頁で言及されているものを含有し得る。単位剤形がカプセルである場合、それは、上記種類の材料に加えて、液体担体、例えば植物油又はポリエチレングリコールを含有し得る。様々な他の材料がコーティングとして存在し得、又はそうでなければ固体単位剤形の物理的形態を改変し得る。例えば、錠剤、丸剤又はカプセルは、ゼラチン、ワックス、シェラック又は糖などでコーティングされ得る。シロップ又はエリキシル剤は、本発明のポリペプチド、化合物及び/又は構築物と、甘味剤としてスクロース又はフルクトースと、保存剤としてメチル及びプロピルパラベンと、色素及び香味料、例えばチェリー又はオレンジフレーバーとを含有し得る。当然のことながら、任意の単位財形の調製に使用される任意の材料は、薬学的に許容し得るものであって、用いられる量で実質的に非毒性であるべきである。加えて、本発明のポリペプチド及び/又はダイマーは、徐放性調製物及びデバイスに組み込まれ得る。
【0249】
経口投与のための調製物及び製剤はまた、本発明の構築物を耐胃環境性にして腸に入ることを可能にする腸溶性コーティングで提供される。より一般には、経口投与のための調製物及び製剤は、胃腸管の任意の所望の部分への送達のために適切に製剤化され得る。加えて、適切な坐剤が、胃腸管への送達のために使用され得る。
【0250】
本発明のポリペプチド及び/又はダイマーはまた、注入又は注射によって静脈内投与又は腹腔内投与され得る。特定の例は、国際公開公報第08/020079号の144頁及び145頁又は国際特許出願第PCT/EP2010/062975号(全文)にさらに記載されている。
【0251】
局所投与のために、本発明のポリペプチド及び/又はダイマーは、(すなわち、それらが液体である場合には)純粋な形態で適用され得る。しかしながら、一般に、固体又は液体であり得る皮膚科学的に許容し得る担体と組み合わせて、それらを組成物又は製剤として皮膚に投与することが望ましいであろう。特定の例は、国際公開公報第08/020079号の145頁にさらに記載されている。
【0252】
本発明のポリペプチド、化合物及び/又は構築物の有用な投与量は、それらのin vitro活性と、動物モデルにおけるin vivo活性とを比較することによって決定され得る。マウス及び他の動物における有効投与量からヒトの場合を推定するための方法は、当技術分野で公知である;例えば、米国特許第4,938,949号を参照のこと。
【0253】
一般に、液体組成物(例えば、ローション)中の本発明のポリペプチド及び/又はダイマーの濃度は、約0.1〜25重量%、好ましくは約0.5〜10重量%であろう。半固体組成物又は固体組成物(例えば、ゲル又は粉末)中の濃度は、約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜2.5重量%であろう。
【0254】
処置における使用に必要な本発明のポリペプチド及び/又はダイマーの量は、選択される特定のポリペプチド及び/又はダイマーだけではなく、投与経路、処置される症状の性質、並びに患者の年齢及び症状によっても変動し、最終的には主治医又は臨床医の判断であろう。また、本発明のポリペプチド及び/又はダイマーの投与量は、ターゲット細胞、腫瘍、組織、移植片又は器官に応じて変動する。
【0255】
好都合には、所望の用量は、単回用量で提示され得るか、又は適切な間隔で投与される分割用量として(例えば、1日2回、3回、4回又はそれ以上のサブ用量として)提示され得る。サブ用量それ自体を、例えば別個に大まかに区切られた投与回数にさらに分割し得る。
【0256】
投与レジメンは、長期間の毎日処置を含み得る。「長期間」は、少なくとも2週間、好ましくは数週間、数カ月間又は数年間の期間を意味する。当業者であれば、本明細書の教示を考慮して、ルーチンな実験のみを使用して、この投与量範囲内の必要な改変を決定し得る。投与量はまた、合併症の場合には、個々の医師によって調整され得る。
【実施例】
【0257】
1.ビルディングブロックの作製
表4に示されているように、EGFR結合ナノボディ7D12及び9G08、並びにアルブミン結合ナノボディALB11から出発して、様々な構築物をP. pastorisにおいて作製した。
【表5】
【0258】
1.1 遺伝子融合
例えば、Garaicoechea et al. (Garaicoechea et al. (2008) J Virol. 82: 9753-9764)に記載されている標準的なプロトコールにしたがって遺伝子融合によって、ビルディングブロック7D12及びAlb11及びリンカーのカップリングを、T023800001、T023800003、T023800005及びT023800006において様々に置き換えて(順序)実施した。様々なリンカー長及び組成物を含むポリペプチドを作製した(ISVD及び個々のISVDの順序)。遺伝子融合によって、GGCを含むC末端伸長部も構築した。T023800001(配列番号:27)、T023800003(配列番号:28)、T023800005(配列番号:29)及びT023800006(配列番号:30)及びT023800008(配列番号:31)の配列を表6に提供する。
【0259】
異なるC末端伸長部:−C(配列番号:1)、−GC(配列番号:2)、−GGC(配列番号:3)、−GGGC(配列番号:4)、−CG(配列番号:10)、−GCG(配列番号:11)、−GGGCG(配列番号:13)、−GGGGCGGGG(配列番号:15)及び−AAAC(配列番号:8)を有する様々なポリペプチドを製造することによって、C末端においてシステイン部分を含む異なるC末端伸長部を構築することの実行可能性を実証した(データは示さず)。
【0260】
1.2 アラニン伸長
十分に確立されたプロトコール(以下を参照のこと)にしたがって、アラニン部分(N−マレオイル−β−アラニン;Sigma-Aldrich)を、ほぼ中性の条件(pH6.5〜7.5)において、マレイミド化学反応を介して、C末端に位置するシステインのスルフヒドリル基(−SH)にコンジュゲートして、安定なチオエーテル結合を形成した。簡潔に言えば、最初に、問題のポリペプチドの濃度を決定した。2〜5モル過剰のN−マレオイル−β−アラニンをポリペプチドに追加して、利用可能な全てのシステインを遮断した。混合物を室温で1時間インキュベーションし、続いて4℃で一晩インキュベーションした。翌日、LCMSを介して、コンジュゲーション効率を確認した。SECクロマトグラフィーを介して、Ala伸長部を含むポリペプチドを均一に精製して、過剰なN−マレオイル−β−アラニンを除去した。
【0261】
得られた構築物をT023800001−A、T023800003−A、T023800005−A及びT023800006−Aと命名した(図1;表4)。
【0262】
アラニンを、システインを含むC末端伸長部(これは、GGCとは異なるものであった)を有する構築物にコンジュゲートすることができたこともさらに実証した(上記1.1も参照のこと;データは示さず)。
【0263】
1.3 二量体化
Pichia使用済み培地中で、前記2つの各ポリペプチドのC末端伸長部のC末端システインを、ほぼ中性のpHにおいて、それらのチオール部分を介して、ジスルフィド誘導体シスチンに酸化した化学的コンジュゲーションによってダイマーへのポリペプチドのカップリングを実施した。酸化プロセスを最適化するために、基本的には国際公開公報第2010/125187号に示されているように、酸化銅イオン(CuSOの形態のCu2+)を追加した。ダイマーを均一に精製し、続いて、サイズ排除クロマトグラフィーを介して分析した。LC−MSによっても、サンプルを検証した。得られたデータにより、チオール部分のほぼ100%が、1mM CuSOによって室温で2時間処理した後に酸化されたことが実証された。いずれのクロマトグラムにおいても、有意な(望ましくない)プレピークの形成は観察されなかった。また、いずれのクロマトグラムにおいても、有意なプレピークの形成に関する証拠は見られなかったが、これは、銅処理がタンパク質中のメチオニンを酸化しないようであり、全質量分析が+16Daのいかなる質量増加も検出しないことを示しており、例えば、メチオニンの単独酸化と一致している。
【0264】
T023800001、T023800003、T023800005及びT023800006から、ダイマーを調製した。T023800001のダイマー(T023800001−ダイマーと命名した)を図1に示す。
【0265】
1.4 安定性
ストリンジェントなストレス条件下で、異なる本発明の構築物、例えばダイマー、ポリペプチド及びベンチマークを、保存後の安定性について試験した。これらの条件は、基本的には国際公開公報第2014/184352号に示されているように、本発明のポリペプチドを異なる温度(25℃及び40℃)で長期間(3週間及び6週間)インキュベーションすることから構成されていた。
【0266】
例えばシステイン部分を含むC末端伸長部を有する本発明のポリペプチド、及びダイマーは、それらが由来する親分子と類似の特性を有しており、有意な化学的分解及び改変を伴わずに、4℃、25℃及び40℃で長期間安定であったことが実証された(データは示さず)。加えて、機能アッセイにおいて示されているように、様々な凍結融解サイクル及び4℃における長期間(すなわち、4日間超)保存後の安定性は変化しなかった(以下を参照のこと)。
【0267】
2 MDA−MB−468細胞に結合するポリペプチドの特性評価
EGFR結合親和性を評価するために、結合競合アッセイにおいて、ポリペプチドを特性評価した。
【0268】
MDA−MB−468乳ガン細胞株(乳腺/乳房;転移部位由来:胸水;ABL216)を使用した。
【0269】
EGFRを発現する細胞に対するポリペプチドの結合を検出するために、FLAGタグ付7D12を競合物質として使用した。アッセイを設定するために、最初に、MDA−MB−468細胞において、FLAGタグ付7D12の一連の滴定を実施した。非タグ付ポリペプチドを滴定した競合設定では、FLAGタグ付7D12のEC90(41nM)を選択した。
【0270】
簡潔に言えば、100,000個の細胞をプレートに移した。4℃、200gで3分間遠心分離することによって、プレートを2回洗浄した。上清を除去し、精製ポリペプチド50μlを、FLAGタグ付7D12 50μl(最終濃度41nM)と共に、1ウェル当たり合計100μlでウェルに追加した。4℃で90分間インキュベーションした後、4℃で30分間遠心分離することによって、プレートを3回洗浄した。上清を除去し、1ウェル当たり100μlの0.5μgマウス抗flag mAb(Sigma-Aldrich, cat#F1804)又はFACSバッファーを追加し、続いて、4℃で30分間インキュベーションした。4℃、200gで3分間遠心分離することによって、細胞を3回洗浄した。上清を除去した後、1ウェル当たり110μlのヤギ抗マウスPE又はヤギ抗ヒトIgG PEを細胞に追加し、4℃で30分間インキュベーションした。次いで、プレートを4℃、200gで30分間遠心分離し、上清を除去し、1ウェル当たり100μlのFACSバッファーを追加し、続いて、4℃、200gで3分間遠心分離することによってプレートを3回洗浄した。次に、死細胞を1ウェル当たり100μlのTOPRO(Molecular Probes, T3605)で染色し、FACS Canto (Becton Dickinson)によって細胞を連続測定した。最初に、散乱プロファイルから決定されたインタクトな細胞にゲートを設定した。次に、TOPRO染色(5nM、Molecular probes, T3605)からの蛍光プロファイルによって、死細胞をゲートアウトした。コントロールとして、ポリペプチドが存在せず、又は公知の無関係なポリペプチドが存在する条件を用いた(データは示さず)。
【0271】
一価T023800001−A(本明細書ではT023800001とも示される)、半減期延長(HLE)T023800003−A(本明細書ではT023800003とも示される)、T23800005−A(本明細書ではT023800005とも示される)、T023800006−A(本明細書ではT023800006とも示される)及び非還元型T023800001−ダイマーを評価した。
【0272】
結果を図2に示す。
【0273】
これらの結果から、T023800001、T023800003、T023800005及びT023800006とEC907D12−FLAG(すなわち、41nM)との競合は、それぞれT023800001、T023800003、T023800005及びT023800006について15nM、0.63nM、0.25nM及び1.16nMのKをもたらすと結論付けることができる。Cheng-Prusoff式
【数1】

を使用して、絶対阻害定数Kを計算した。
【0274】
予想外のことに、T023800001−ダイマーは0.12nMのKを示したが、これは、T023800005−A(最良のパフォーマンスを示した遺伝子融合構築物)よりも2倍良好であり、さらにT023800006−A(T023800001−ダイマーの直接的な比較対象)よりも9倍超良好である。
【0275】
3 HER14細胞株におけるEGFRリン酸化の定量
競合FACS(上記実施例2を参照のこと)において観察された効力の増加が、EGFR媒介性シグナル伝達のモデュレーションにもつながるかを検証するために、本発明者らは、NH3T3/HER14細胞において、ナノボディによるEGF媒介性EGFRリン酸化の遮断実験を設定した。使用した構築物は、T023800001−A及びT023800006−A並びにT023800001−ダイマーであった。EGFRのみを発現するHER14細胞において、EGFRリン酸化の用量依存的阻害を評価した。
【0276】
簡潔に言えば、HER14細胞を、0.1%ゼラチンコーティング96ウェル培養プレートに2連で播種し、10%FBS/BSを含有するDMEM培養培地中で24時間成長させた。翌日、0.1%FCSを補充した培地中で、細胞を24時間血清飢餓状態にし、次いで、構築物と共にインキュベーションし、続いて、0.5nMリコンビナントヒトEGF(R&D Systems, cat# 236-EG)で10分間刺激した。EGF濃度は、HER14細胞において得られたEC50(EC50=3.5ng/ml)をベースとした。各プレートにおいて、無関係のコントロールポリペプチドを参照として含めた(データは示さず)。単層を氷冷D−PBSで2回リンスし、続いて、1mM PMSFで置換した氷冷RIPAバッファーで溶解した。Phospho(Tyr1173)/Total EGFR Whole Cell Lysate Kit (Meso Scale Discovery - K15104D)を使用して、細胞溶解物におけるEGF依存性レセプター活性化を測定した。溶解物30μlをプレートにロードし、振盪しながら室温で1時間インキュベーションし、製造業者のプロトコールにしたがって加工した。Sector Imager 2400 (Meso Scale Discovery)によって、プレートを読み取った。式:(2×p−タンパク質)/(p−タンパク質+総タンパク質)×100を使用して、総タンパク質に対するリン酸化タンパク質の割合を計算した。
【0277】
結果を図3に示す。
【0278】
EGFRを発現するHer−14細胞においてのみ、EGFRリン酸化の用量依存的阻害が観察された。機能的なリン酸化は、EGFRシグナリングによってのみ媒介されるので、多価フォーマットによるアビディティの獲得は、EGFRリン酸化の細胞特異的な阻害の増加につながると予想される。
【0279】
競合FACSの結果よりもさらに顕著に、T023800001−ダイマー(4.4nM)は、確立された二価ナノボディT023800006−A(26.6nM)と比較して5〜6倍の効力増加を示す。一価T023800001−Aは、10.5nMの効力を生じた。
【0280】
4 SECを介したシステイン伸長モノマーナノボディの調製
4.1 背景情報
少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と、C末端においてシステイン部分を含むC末端伸長部とを含む本発明のポリペプチドは、マレイミド化学反応ベースのカップリング反応に適切であることが分かった(上記実施例1.2を参照のこと)。
【0281】
ダイマーをモノマーポリペプチドに変換し、C末端システインをカップリングに利用可能にするためには、還元を行う必要があった。しかしながら、内部標準ISVDジスルフィド架橋を還元せずに、ジスルフィドダイマーの減少をもたらす最適条件を設計するように注意すべきである。好ましくは、DTT又はTCEPを使用して、還元を行った。TCEPとは異なり、最適なカップリング条件を作るためには、DTTを除去する必要がある。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を介して、非還元型ダイマーナノボディ及びDTTから、モノマーナノボディを分離する。
【0282】
4.2 還元プロトコール
還元プロトコールは、D−PBS中、10mM DTTによって4℃で一晩(又は室温で最低2時間)処理することであった。ISVD濃度は、2〜10mg/mlであった。これらの条件は、内部標準ジスルフィド結合に対して影響を与えないことが実証された(以下の図4を参照のこと)。TCEPを使用して同様の結果が得られた(ここでは、本発明者らは、製造業者のプロトコールにしたがって固定化TCEP(Pierce, Immobilized TCEP Disulfide Reducing Gel, #77712)を使用した)。あるいは、4℃における10mM TCEPへの30分間の短時間曝露を使用した。
【0283】
4.3 サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
精製では、最大3つのISVDを含むポリペプチドのために、好ましくはSuperdex 75 column (GE Healthcare)(分離範囲5〜100kDa)を使用して、還元型モノマー生成物を作製した。分析目的のために、Agilent SEC-3などのHPLCカラムを使用した。平衡化バッファー及びランニングバッファーは、D−PBSであった。
【0284】
SEC後の完全に還元された純粋な生成物の例を図5に提供する。
【0285】
SECの後、還元型モノマーポリペプチドを即時にコンジュゲーションに使用し又は凍結して、ダイマーへの再酸化を防止した。実験的証拠により、GGC伸長ポリペプチドの還元型モノマー画分は、D−PBS中、4℃で最大24時間安定であることが示唆された(データは示さず)。
【0286】
2つのISVDを含むポリペプチドを、10mM DTTによって周囲温度で2時間還元し、D−PBSで平衡化したSuperdex 75 XK 16/60 column (GE Healthcare)によってサイズ決定した。ごく微量のダイマーが検出された;残りの材料をモノマーに還元し、コンジュゲーションの準備が整った。ゲルろ過標準(Biorad)の分子量(点線)を各ピークの上に示す。
【0287】
5 MMAEにカップリングされたポリペプチド
疎水性抗有糸分裂剤モノメチルアウリスタチンE(MMAE)は、天然物ドラスタチン10の合成類似体である。MMAEは、分裂細胞におけるチューブリン重合の強力な阻害剤である。
【0288】
この実施例では、本発明者らは、MMAEを本発明のポリペプチドの遊離C末端システインにカップリングすることを試みた。簡潔に言えば、薬物ターゲティングの目的で、MMAEを、バリン−シトルリンリンカーを介してポリペプチドにコンジュゲートした。バリン−シトルリンリンカーは、血清中では非常に安定であるが、ターゲット細胞によるコンジュゲートのインターナリゼーション後に、カテプシンBのようなリソソーム酵素によって切断される。本明細書では、以下のリンカー略語が使用され、示されている定義を有する:Val Citは、バリン−シトルリン(プロテアーゼ切断可能リンカー中のジペプチド部位)であり;PABは、p−アミノベンゾイルであり;mcは、マレイミドコンジュゲートである。
【0289】
ナノボディを10mM DTTによって4℃で一晩還元し、次いで、バッファー交換して、過剰なDTTを除去した。mc−val−cit−PAB−MMAE(分子量約0.7kDa;図6)とのコンジュゲーションを22℃で行った。1時間後、遊離薬物当たり20当量のN−アセチル−システインで反応をクエンチした。得られた生成物を遠心濃縮によって精製し、バッファーを最終バッファーに交換した。より大規模な精製のためには、非遠心ダイアフィルトレーション法がより適切である。生成物溶液を滅菌ろ過した(0.2mm)。
【0290】
MMAEにコンジュゲートされたポリペプチド:
T023800001=>T023800001−mc−val−cit−PAB−MMAE(ABL100−NC003−1)
T023800003=>T023800003−mc−val−cit−PAB−MMAE(ABL100−NC003−3)
T023800005=>T023800005−mc−val−cit−PAB−MMAE(ABL100−NC003−5)
T023800006=>T023800006−mc−val−cit−PAB−MMAE(ABL100−NC003−6)
T023800008=>T023800008−mc−val−cit−PAB−MMAE(ABL100−BF012−1)
【0291】
薬物対ポリペプチド比(DAR)を決定するために、HIC−HPLC分析を実施した。簡潔に言えば、Dionex Ultimate 3000RS HPLC systemに接続したTOSOH, TSKgel Butyl-NPR column (35 × 4.6 mm)を使用して、コンジュゲートの分析HICを行った。直線勾配は、30分間、流速0.8mL/分で、100%バッファーA(50mMリン酸ナトリウム中1.5M硫酸アンモニウム、pH7.0)から100%バッファーB(50mMリン酸ナトリウム中20%イソプロパノール(v/v))であった。分析中は、カラム温度を30℃に維持し、UV検出を280nmで行った。各分析では、サンプル10μgを注入した。より高い保持時間へのシフトに基づいて、及びA248/A280比によって、ピークを薬物対ポリペプチド比(DAR)とした。個々のDAR値の合計に種の割合(小数として表現される)を掛けて、平均DARを計算した。使用したポリペプチドは、ABL100−NC003−1、ABL100−NC003−3、ABL100−NC003−5及びABL100−NC003−6であった。
【0292】
結果を表5に提供する。
【表6】
【0293】
ポリペプチドの酸化状態を決定するために、SDS−PAGE分析を実施した。簡潔に言えば、MESバッファーを用いた非還元条件下で、NUPAGE(登録商標)4-12% Bis-Tris gels (Invitrogen, Cat # NP0321BOX)を使用して、SDS−PAGE分析を行った。分析のために、1レーン当たりサンプル1μg(タンパク質に基づく)をゲルにロードした。電気泳動を200Vで35分間行った。ゲルを、タンパク質検出用のINSTANTBLUE(商標)(Expedeon, Cat # ISB1LUK)で染色し、IMAGEQUANT(登録商標)imaging equipment (GE Healthcare)を使用して分析した。
【0294】
結果の概要も表5に提供する。例示的な結果を図7として提供する。
【0295】
SDS−PAGEの結果をさらに確認及び詳述するために、SE−HPLC分析を実施して、純度及び凝集の割合を決定した。簡潔に言えば、Agilent Infinity 1260 Bioinert systemに接続したWaters ACQUITY(登録商標)UPLC BEH200 SEC column (4.6 mm × 30 cm, 1.7 μm)を使用して、SE−HPLCを行った。移動相は、15%(v/v)イソプロパノールを含有する0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.8)であった。流速を0.15mL/分で一定に保持した。分析中は、カラムを25℃に維持した。アイソクラティック溶出を30分間行い、280nmでUV検出して、分析を行った。各分析では、サンプル10μgを注入した。それぞれ主ピークのピーク面積及び初期溶出ピークを総ピーク面積と比較することによって、存在する%純度及び%凝集を計算した。
【0296】
結果を表5に要約する。カップリング結果の例示的なHIC分析を図8に示す。
【0297】
これは、全てのポリペプチドで、反応が、ADCに対するコンジュゲーションのポリペプチドについて98%超の効率をもたらすことを意味する。また、反応は1のDARをもたらしたが、これは、一方ではISVDがインタクトであり(例えば、内部チオールが使用されなかった)、他方では、ポリペプチド当たりの薬物の数が非常にコントロールされていたことを示唆している。これは、従来の抗体にコンジュゲートされた薬物のガウス分布とは対照的に、より良好な安全性プロファイルをもたらす。
【表7】
【0298】
5.1.MMAEにカップリングされたポリペプチドのin vitro細胞毒性
XCELLIGENCE(登録商標)instrument (Analyser Model W380; SN: 281081212038, Roche)を使用して、細胞成長及び/又は細胞毒性に対するMMAEコンジュゲートポリペプチドの効果を試験した。この機器は、培養皿において細胞が付着及び拡散する際の電気インピーダンスの変化を定量し、無次元パラメータと称される細胞指数(これは、細胞によって覆われている組織培養ウェルの総面積に正比例する)としてそれらを表示する(Duchateau et al. 2013. Phys. Status Solidi 10: 882-888及びGiaever and Keese 1991. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7896-7900)。XCELLIGENCE(登録商標)instrument (Analyser Model W380; SN: 281081212038)は、細胞を播種するための組織培養ウェルプレートとしてE-plates 96 (ACEA Biosciences; cat#05 232 368 001; lot#20140138; plate 1: ID#079605; plate 2: ID#079606)を利用する。使用した構築物は、T023800001−A及びT023800001−MMAE、T023800003−A及びT023800003−MMAE、T023800005−A及びT023800005−MMAE並びにT023800006−A及びT023800006−MMAEであった。非コンジュゲートナノボディ及びMMAEコンジュゲートナノボディのMDA−MB−468(乳腺/乳房;転移部位由来:胸水;ABL216)細胞増殖に対する用量依存的阻害効果を、以下のプロトコールを使用してXCELLIGENCE(登録商標)instrumentを用いて評価した。
【0299】
簡潔に言えば、XCELLIGENCE(登録商標) stationを、5%COの存在下で37℃のインキュベーター内に置いた。1%P/S(Gibco, Cat Nr: 15140-122);1%ピルビン酸Na(Gibco, Cat Nr: 11360-039)及び10%FBS(Sigma-Aldrich, Cat Nr: F7524)を補充したRPMI(Gibco, Cat Nr: 72400-021)を含有するT175フラスコ中で、MDA−MB−468細胞を成長させる。トリプシン処理し、遠心分離し、示されている細胞密度に再懸濁することによって、細胞を回収する。細胞培地50μlをE-pate96の各ウェルに追加し、XCELLIGENCE(登録商標)systemによるブランクの読み取りを実施して、細胞の非存在下におけるバックグラウンドインピーダンスを測定した。6000個の細胞(50μl)をE-plate 96の各ウェルに移し、20時間インキュベーションして細胞を接着させる。各ポリペプチド100μLを、500nMから開始して1:3希釈系列で投与した(1ウェル当たりの総容量は200μlである)。インピーダンスの読み取りを15分間隔でプログラミングした。162時間(±7日間)の時点で、実験を停止した。全ての試験濃度について播種した後の116時間の時点で測定した細胞指数を用量反応分析に使用した。
【0300】
増殖曲線及び用量反応曲線を図9及び図10にそれぞれ示す。得られたIC50値を表7に示す。
【表8】
【0301】
非コンジュゲートポリペプチドT023800001−A、T023800003−A、T023800005−A及びT023800006−Aは、二パラトープ性T023800005−Aを除いて、MDA−MB−468細胞の増殖特性に対して明らかな効果を示していないが、これは、細胞増殖に対するわずかな阻害効果を実証している。対照的に、MMAEコンジュゲートポリペプチドT023800001−MMAE、T023800003−MMAE、T023800005−MMAE及びT023800006−MMAEは、図9に示されているように、細胞増殖に対する用量依存的阻害効果を明らかに示し、最高用量ではほぼ完全な阻害である。
【0302】
5.2 MMAEにカップリングされたポリペプチドのin vivo有効性
抗EGFRポリペプチド薬物コンジュゲートのin vivo有効性研究を、皮下異種移植マウスモデルにおいて評価した。
【0303】
1×10個のFaDu細胞を6〜8週齢の健常SWISSヌード雌マウスの右脇腹に皮下注射することによって、腫瘍を誘発した。FaDu細胞株は、56歳の白人/ヒンズー男性患者から摘出された下咽頭腫瘍のパンチ生検から樹立された頭頸部ガン細胞株である。腫瘍が100〜200mm3の平均体積に達したら、処置を開始した。
【0304】
T023800008−MMAEを動物に5mg/kgで4日毎に合計6回毎日注射した(Q4Dx6)。非EGFR結合MMAEコンジュゲートポリペプチドを第1のコントロール群に等モル用量で4日毎に合計6日間毎日注射した。ビヒクルを第2のコントロール群に4日毎に合計6回毎日注射した。各群は、12匹の動物からなっていた。
【0305】
キャリパーを用いて、腫瘍の長さ及び幅を週2回測定し、以下の式:
にしたがって、腫瘍の体積を推定した:
【0306】
ポリペプチド−MMAEコンジュゲートT023800008−MMAEは、2つのコントロール群と比較して有意な腫瘍成長阻害を示した(図11)。
【0307】
6 二重特異性ダイマーの作製
この実施例では、二重特異性ダイマー(すなわち、ポリペプチド1がポリペプチド2と異なるものであるダイマー)の作製を可能するプロトコールを提供する。
【0308】
6.1 標準的なプロトコール
最初に、1つのPichia株が両方の異なるポリペプチドを産生する以外は、上記実施例1.3のプロトコールに従う。また、Pichia使用済み培地中で、前記2つの各ポリペプチドのC末端伸長部のC末端システインを、ほぼ中性のpHにおいて、それらのチオール部分を介して、ジスルフィド誘導体シスチンに酸化する化学的コンジュゲーションによって、ダイマーへのポリペプチドのカップリングを実施する。酸化プロセスを最適化するために、基本的には国際公開公報第2010/125187号に示されているように、酸化銅イオン(CuSOの形態のCu2+)を追加する。ダイマーを均一に精製し(イオン交換クロマトグラフィー)、続いて、サイズ排除クロマトグラフィーを介して分析する。LC−MSによっても、サンプルを検証する。標準的なプロトコールは、目的の二重特異性NB1−NB2ダイマーを作製するであろう。しかしながら、画分は、単一特異性ダイマー(例えば、NB1−NB1及びNB2−NB2)も含有すると予想される。
【0309】
6.2 代替プロトコール
架橋リンカーを使用せずに、2つの異なるC末端システイン伸長Nbを使用して、ナノボディヘテロダイマー(二重特異性ダイマー)を作製することができる。
【0310】
第1のナノボディ(=NbA)を非共有結合によって固定化し、その遊離スルフヒドリルを第2のナノボディ(=NbB)に利用可能にしてC末端ヘテロダイマージスルフィド結合を形成することを介して、これを達成することができる。
【0311】
工程1では、NbAを還元して、モノマー材料、好ましくは100%モノマー材料を得る。典型的なナノボディ溶液[5〜10mg/ml]を還元するための一般的な条件は、D−PBS中10mM DTT、4℃で一晩又は室温(RT)で1〜2時間である。好ましくは、その標準ジスルフィド結合のインタクトな状態が維持されるように、個々の各ナノボディについて最適条件を決定する。
【0312】
工程2では、NbAモノマー画分を還元条件下で担体に結合させる。このような担体は、クロマトグラフィー樹脂(これは、好ましくはNbAにのみ結合し、NbBに結合しない)であり得る。固定化中に、NbA−NbAダイマーの固定化を回避するために、NbAを低密度で固定化する。個々のNbAのこのような空間的分離は、準最適結合条件(すなわち、典型的な親和性樹脂にとっては過度に速い流速)を使用してカラムをロードすることによって、又はエクスパンデットベットクロマトグラフィーを介して達成され得る。好ましくは、担体は、NbAにのみ結合する。したがって、NbAがプロテインA結合剤である(及び好ましくは、NbBがそうではない)場合、プロテインAを使用することができる。ナノボディA及びBの両方が担体に結合する場合、NbAを固定化した後、NbBを適用する前に、非システイン伸長ナノボディで担体を飽和させるべきである。
【0313】
工程3では、同様に還元型の(上記を参照のこと)過剰な第2のナノボディ(NbB)を適用し、(場合により軽度の酸化条件下で)カラムに循環させる。固定化したNbAが、ジスルフィド結合を介してNbBと完全に複合体化するまで、NbBを担体上に通過させる。この後、NbBの濃度低下を測定して、飽和したNbA集団をマッチさせることができる。この工程のために、NbB−NbBダイマーの形成量を制限するように、条件を最適化する。この集団は担体に結合しないので、回収し、将来のカップリング反応に使用することができる。
【0314】
工程4では、そのカラムのための典型的な溶出条件(すなわち、プロテインAの場合には酸性条件)によって、NbA−NbBダイマー調製物を樹脂から回収し、さらに加工/製剤化する。
【0315】
7 ダイマー及び薬物コンジュゲートポリペプチドのPK研究
上記のように、既にサイズの差異に起因して、本発明のポリペプチドの二量体化及びそれに対する薬物のコンジュゲーションは、従来の抗体よりもはるかに大きな影響を有する。したがって、本発明者らは、DAR=1でナノボディにコンジュゲートされたペイロードがPK特性に対して及ぼす効果を評価することを試みた。
【0316】
加えて、本発明者らは、2つのヒト血清アルブミン結合ドメイン(「Alb」)を含む本発明のダイマーのPK特性を評価することを試みた。上記実施例から明らかであるように、2つの同一の部分(すなわち、ポリペプチド1=ポリペプチド2)を含むダイマーは、2つの異なる部分を有するダイマーよりも作製及び精製が容易かつ費用効果的である。ヒト血清アルブミン結合ドメインは、様々な場合において、構築物の半減期を延長するために必要である。しかしながら、さらなるヒト血清アルブミン結合ドメインを有することは、構築物のPKプロファイルに対していかなる悪影響も及ぼさないはずである。
【0317】
7.1 ポリペプチドの放射性標識
放射性標識ポリペプチドを介して、PK特性を試験した。簡潔に言えば、遊離−NHに対するランダムなコンジュゲーションを介して、ポリペプチドを89Zr、NCS−Bz−Dfで放射性標識した(図12を参照のこと)。最終体積が500μL(最終濃度2mg/mL)になるまで、ポリペプチド22nmol(1.0mg)を0.9%NaClと混合した。次に、0.1M NaCOを追加することによって、pHを8.9〜9.1に設定した。最後に、NCS−Bz−Df 66nmolのDMSO溶液(3当量、10μL)を追加し、37℃で30分間反応させた。30分後、50mM NaOAc/200mMスクロースでプレウォッシュ加工したPD10カラムを使用することによって、反応混合物を精製した。生成物を1.0mLの画分で回収した。次に、Df−PK−ポリペプチドを、89ZrによってpH約7、室温で60分間放射性標識した(反応混合物は、89Zrを含有する1Mシュウ酸100μL、2M NaCO45μL、0.5M Hepesバッファー(pH7.2)500μL及びNCS−Df−ポリペプチド355μL(約0.4mg)を含有していた)。次に、反応混合物を、50mM NaOAc/200mMスクロースを含むプレウォッシュ加工したPD10カラムで精製し、生成物を1.5mLで回収した。
【表9】
【0318】
放射性標識の結果を表8に要約する。放射性標識収率は、9.6%〜37.6%で変動した(通常、70%の放射性標識収率が予想される)。おそらく、この低い標識収率は、改変中に使用したポリペプチドの量が少ないことに関係している。89Zr−T023800006A及び89Zr−T023800006−MMAEについては、HPLC及びスピンフィルタ分析により、放射化学的純度が十分であることが示された(96%超)。89Zr−T023800001は、スピンフィルタ分析では90.0%未満の純度を示し、HPLCでは、8.6%の遊離89Zrが示された。通常、構築物は、90.0%超の放射性標識純度を有するべきである。この場合、89Zr−T023800001のスピンフィルタ純度がほぼ90%であり、HPLC分析が純度90%超の生成物を示しているので、いずれにしても89Zr−T023800001をPK研究に使用することに決定した。全てのポリペプチドについて、Lindmo結合は90%超であった(データは示さず)。
【0319】
続いて、注射容量130μLでマウス1匹当たりの放射能が0.22MBq(濃度50μg/mL)になるように、89Zr−PK放射性標識ポリペプチドを製剤化した。
【0320】
結論として、放射性標識収率は、予想ほど効率的ではなかった。89Zr−T023800006A及び89Zr−T023800006−MMAEの放射化学的純度は、良好であった(スピンフィルタによれば97%超、及びHPLCによれば96%超)。Lindmo結合の結果は高く、90%超であった。89Zr−T023800001は、スピンフィルタ分析では必要なほど純粋ではなかった。最終的には、やはり89Zr−T023800001を使用することに決定した。全てのポリペプチドを製剤化し、上手く注射した。
【0321】
7.2 in vivoPK研究
放射性標識(89Zr)ポリペプチドを3匹のマウスに注射し、9つの時点(5分、1時間、3時間、24時間、48時間、72時間、140時間、168時間及び192時間)で、cpm(カウント毎分)値を検出した。次いで、これらの値を使用して、マウス1g当たりのポリペプチドの%注射線量(%ID/g)を計算した。各ポリペプチドについて、3匹のマウスの結果を平均した。
【0322】
結果を図13に要約する。
【0323】
結果は、予想外のことに、二価ポリペプチド(T−023800006−A)の生体内分布プロファイルが、薬物コンジュゲートポリペプチド(T−023800006−MMAE)の生体内分布プロファイルと類似することを示している。本発明のポリペプチドとペイロードとのコンジュゲーションは、生体内分布プロファイルに対して効果を及ぼさない。いかなる理論にも拘束されないが、DAR=1をもたらす厳密にコントロールされたコンジュゲーションプロセスは、PK特性の予測指標であると仮説した(この場合、非コンジュゲートポリペプチドと比較して変動なし)。
【0324】
また予想外のことに、本発明のcys連結ダイマー(T−023800001)の生体内分布プロファイルは、対応する二価ポリペプチド(T−023800006−A)のものと類似する。本発明のcys連結ダイマー中の2つのヒト血清アルブミン結合単位の存在は、分布プロファイルに対して影響を及ぼさない。
【0325】
8 ダイマーによるインターナリゼーションの改善
この実験の目的は、Cys連結ダイマーDIM T023800001(すなわち、機能的な観点から二価)が、そのモノマーカウンターパート(T023800001−A)及び伝統的な連結−遺伝子融合−二価フォーマット(T023800006−A)と比較して増加したインターナリゼーションを示すかを評価することであった。この目的のために、EGFレセプターを適度に発現するNCI−H292細胞において、インターナリゼーション実験を実施した。インターナリゼーションしたナノボディの生細胞内の蓄積を、検出ツールとしてpHrodo(商標)標識アルブミン(50μg/ml)を使用して、フローサイトメトリー(FCM)を介して測定した。pHrodo(登録商標)色素はpH感受性の分子プローブであり、中性pHではほぼ非蛍光性である。エンドソーム及びリソソームなどの酸性環境では、それは、明るく蛍光を発する。細胞(細胞30,000個/ウェル)を平底96ウェルプレートに移し、pHrodo(商標)標識アルブミン(50μg/ml)と一緒に異なる濃度の特定のポリペプチド及び構築物と共に、37℃で5時間インキュベーションした。次いで、細胞を洗浄し、回収し、FCMによって測定し、分析した。
【0326】
得られた用量反応曲線を図14に示し、相関EC50値及びトップMFIのトップレベルを表9に記載する。
【表10】
【0327】
注目すべきことに、NCI−H292細胞では、DIM T023800001の全体的なインターナリゼーションは、モノマーT023800001−A及び伝統的な連結二価ナノボディT023800006−Aよりも強力かつ有効であると思われた。また、極めて高レベルでEGFRを発現する細胞(例えば、MDA−MB−468)では、インターナリゼーションのこの差異は、あまり顕著ではないが依然として有意である(データは示さず)。
【0328】
本出願を通して引用される全ての参考文献(参照文献、発行特許、公開特許出願及び同時係属中の特許出願を含む)の全内容は、特に本明細書の上記で言及される教示のために、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0329】
図面及び実験パート/実施例は、本発明をさらに例証するために示されているに過ぎず、特に本明細書で明確な指示がない限り、本発明の範囲及び/又は添付の特許請求の範囲を限定すると決して解釈及び理解されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]