特許第6862344号(P6862344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862344
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】車間距離を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20210412BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210412BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20210412BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20210412BHJP
【FI】
   G08G1/09 H
   G08G1/16 E
   B60R21/00 991
   B60R21/00 992
   B60W30/16
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-545277(P2017-545277)
(86)(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公表番号】特表2018-509706(P2018-509706A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016053888
(87)【国際公開番号】WO2016135207
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/054029
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】デラゴードン,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】サイダー,レンナルト
【審査官】 武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/084568(WO,A1)
【文献】 特開2013−249002(JP,A)
【文献】 特表2013−534655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
B60R 21/00
B60W 30/16
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の先頭車両(12)と1台以上の後続車両(14a)との間の車間距離(24a)を制御する方法であって、
前記先頭車両の自律緊急制動システム(16)を使用することによって認識された潜在的衝突脅威(26)までの衝突時間を決定するステップと、
前記決定した衝突時間を前記1台以上の後続車両に送信するステップと、
前記1台以上の後続車両において、前記衝突時間を受信するステップと、
前記1台以上の後続車両において、前方車両までの実際の車間距離を測定する1つ以上の搭載センサから測定値を取得するステップと、
前記受信した衝突時間又は前記取得した測定値に基づいて前記車間距離を自動的に調整するステップと、
を備え、
前記先頭車両の前記自律緊急制動システムは、予め定義された、前記先頭車両の運転者に前記潜在的衝突脅威が検出されたことを警告する第1の警告フェーズ、前記先頭車両を自動的に減速させる第2の警報制動フェーズ及び前記先頭車両を自動的に全制動させる第3の全制動フェーズを含んだ制御フェーズ(28a〜28c)を含み、
前記制御フェーズの現在のフェーズは、前記衝突時間に依存し、
前記衝突時間は、前記潜在的衝突脅威と前記先頭車両との間の相対速度、又は前記潜在的衝突脅威と前記先頭車両との間の距離に基づ
前記受信した衝突時間が前記取得した測定値より大きな減速度を示す場合、前記受信した衝突時間が前記取得した測定値より優先し、前記取得した測定値が前記受信した衝突時間より大きな減速度を示す場合、前記取得した測定値が前記受信した衝突時間より優先する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1つ以上の搭載センサは、少なくとも1つのレーダ、少なくとも1つのLIDAR装置、又は、少なくとも1つのカメラを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記衝突時間の送信は、車車間通信手段(18)を使用して行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記衝突時間の受信は、車車間通信手段(32a)を使用して行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
先頭車両の自律緊急制動システム(16)を使用することによって認識された潜在的衝突脅威(26)までの衝突時間を受信するステップと、
1台以上の後続車両において、前方車両までの実際の車間距離を測定する1つ以上の搭載センサから測定値を取得するステップと、
前記衝突時間又は前記取得した測定値に基づいて車間距離を自動的に調整するステップと、
を実行するように構成された車両(14a)であって、
前記先頭車両の前記自律緊急制動システムは、予め定義された、前記先頭車両の運転者に前記潜在的衝突脅威が検出されたことを警告する第1の警告フェーズ、前記先頭車両を自動的に減速させる第2の警報制動フェーズ及び前記先頭車両を自動的に全制動させる第3の全制動フェーズを含んだ制御フェーズ(28a〜28c)を含み、
前記制御フェーズの現在のフェーズは、前記衝突時間に依存し、
前記受信した衝突時間が前記取得した測定値より大きな減速度を示す場合、前記受信した衝突時間が前記取得した測定値より優先し、前記取得した測定値が前記受信した衝突時間より大きな減速度を示す場合、前記取得した測定値が前記受信した衝突時間より優先する、
車両。
【請求項6】
前記車両は、後続車両である、
請求項5に記載の車両。
【請求項7】
1台の先頭車両(12)と1台以上の後続車両(14a)との間の車間距離(24a)を制御する方法であって、
前記1台以上の後続車両において、前記先頭車両の自律緊急制動システム(16)を使用することによって認識された潜在的衝突脅威(26)までの衝突時間を受信するステップと、
前記1台以上の後続車両において、前方車両までの実際の車間距離を測定する1つ以上の搭載センサから測定値を取得するステップと、
前記衝突時間又は前記取得した測定値に基づいて前記車間距離を自動的に調整するステップと、
を備え、
前記先頭車両の前記自律緊急制動システムは、予め定義された、前記先頭車両の運転者に前記潜在的衝突脅威が検出されたことを警告する第1の警告フェーズ、前記先頭車両を自動的に減速させる第2の警報制動フェーズ及び前記先頭車両を自動的に全制動させる第3の全制動フェーズを含んだ制御フェーズ(28a〜28c)を含み、
前記制御フェーズの現在のフェーズは、前記衝突時間に依存し、
前記受信した衝突時間が前記取得した測定値より大きな減速度を示す場合、前記受信した衝突時間が前記取得した測定値より優先し、前記取得した測定値が前記受信した衝突時間より大きな減速度を示す場合、前記取得した測定値が前記受信した衝突時間より優先する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記1つ以上の搭載センサは、少なくとも1つのレーダ、少なくとも1つのLIDAR装置、又は、少なくとも1つのカメラを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータ上で実行されたとき、請求項1〜請求項4、請求項7及び請求項8のいずれか1つのステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータ上で実行されたとき、請求項1〜請求項4、請求項7及び請求項8のいずれか1つのステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
請求項1〜請求項4、請求項7及び請求項8のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成された制御装置(22;34a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、及び、1台の先頭車両と1台以上の後続車両との間の車間距離を制御する方法に関する。本発明はまた、コンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体及び制御装置に関する。本発明は、例えば、トラックやバスなどの大型車両に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
車間距離は、アクセル及びブレーキを制御することによって車両前方の安全距離を維持する、レーダベースのアダプティブクルーズコントロール(ACC)を使用して制御することができる。
【0003】
協調型アダプティブクルーズコントロール(CACC)は、ACCの拡張型である。CACCでは、車車間通信を使用して、先行車両から後続車両へと情報を送信することができる。この情報は、後続車両によって使用され、前述した車両前方の安全距離をより良く維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、車間距離を制御する改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、請求項1に記載の車両によって達成される。本発明の第2の態様によれば、この目的は、請求項4に記載の方法によって達成される。第3の態様によれば、この目的は、請求項12に記載の車両によって達成される。第4の態様によれば、この目的は、請求項15に記載の方法によって達成される。
【0006】
第1の態様によれば、車両の自律緊急制動システムによって認識された潜在的衝突脅威(a potential collision threat)の指標を取得するステップと、取得した指標を1台以上の後続車両に送信するステップと、を実行するように構成された車両が提供される。車両の自律緊急制動システムは、予め定義された制御フェーズを含み、指標は、自律緊急制動システムの現在の制御フェーズを少なくとも部分的に決定する。この車両は、先頭車両と呼ぶことができる。
【0007】
自律緊急制動システムの予め定義された制御フェーズは、例えば、標準化されてもよいし、法定であってもよい。本発明は、取得した指標を(先頭)車両の自律緊急制動システムから1台以上の後続車両に送信することによって、1台以上の後続車両が、自律緊急制動システムの予め定義された制御フェーズに起因して、先頭車両が何をして適切な先制的行動をとるかを予想することができるとの理解に基づいている。
【0008】
この指標は、衝突時間(TTC)であってもよい。他の指標は、潜在的衝突脅威と先頭車両との間の相対速度、潜在的衝突脅威と先頭車両との間の距離などであってもよい。
【0009】
第2の態様によれば、1台の先頭車両と1台以上の後続車両との間の車間距離を制御する方法が提供される。この方法は、先頭車両の自律緊急制動システムによって認識された潜在的衝突脅威の指標を取得するステップと、取得した指標を1台以上の後続車両に送信するステップと、を備えている。先頭車両の自律緊急制動システムは、予め定義された制御フェーズを含み、指標は、自律緊急制動システムの現在の制御フェーズを少なくとも部分的に決定する。この態様は、本発明の第1の態様と同一又は同様な特徴及び/又は技術的効果を示すことができ、逆もまた同様である。
【0010】
この方法は、1台以上の後続車両において、指標を受信するステップと、受信した指標に基づいて車間距離を自動的に調整するステップと、を更に備えていてもよい。
【0011】
この指標は、衝突時間であってもよい。
【0012】
指標の送信は、車車間通信手段を使用して行われてもよい。
【0013】
指標の受信もまた、車車間通信手段を使用して行われてもよい。
【0014】
この方法は、1台以上の後続車両において、先行車両までの実際の車間距離を測定する1つ以上の搭載センサから測定値(reading)を取得するステップと、取得した測定値に基づいて車間距離を自動的に調整するステップと、を更に備えてもよい。前述の受信した指標及び取得した測定値に基づいて車間距離を自動的に調整することによって、洗練された協調型アダプティブクルーズコントロールシステムを実現することができる。
【0015】
1つ以上の搭載センサは、少なくとも1つのレーダ、少なくとも1つのLIDAR装置、又は、少なくとも1つのカメラを含むことができる。
【0016】
受信した指標が取得した測定値より(1台以上の後続車両の)大きな減速度を示す場合、受信した指標が取得した測定値より優先することができるが、取得した測定値が受信した指標より(1台以上の後続車両の)大きな減速度を示す場合、取得した測定値が受信した指標より優先することができる。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、車両において、先頭車両の自律緊急制動システムによって認識された潜在的衝突脅威の指標を受信するステップと、受信した指標に基づいて車間距離を自動的に調整するステップと、を実行するように構成された車両が提供される。先頭車両の自律緊急制動システムは、予め定義された制御フェーズを含み、指標は、自律緊急制動システムの現在の制御フェーズを少なくとも部分的に決定する。この態様は、本発明の先の態様と同一又は同様な特徴及び/又は技術的効果を示すことができ、逆もまた同様である。
【0018】
この指標は、衝突時間であってもよい。
【0019】
この車両は、後続車両と呼ぶことができる。
【0020】
第4の態様によれば、1台の先頭車両と1台以上の後続車両との間の車間距離を制御する方法が提供される。この方法は、1台以上の後続車両において、先頭車両の自律緊急制動システムによって認識された潜在的衝突脅威の指標を受信するステップと、受信した指標に基づいて車間距離を自動的に調整するステップと、を備えている。先頭車両の自律緊急制動システムは、予め定義された制御フェーズを含み、指標は、自律緊急制動システムの現在の制御フェーズを少なくとも部分的に決定する。この態様は、本発明の先の態様と同一又は同様な特徴及び/又は技術的効果を示すことができ、逆もまた同様である。
【0021】
この指標は、衝突時間であってもよい。
【0022】
この方法は、1台以上の後続車両において、先行車両までの実際の車間距離を測定する1つ以上の搭載センサから測定値を取得するステップと、取得した測定値に基づいて車間距離を自動的に調整するステップと、を更に備えてもよい。
【0023】
1つ以上の搭載センサは、少なくとも1つのレーダ、少なくとも1つのLIDAR装置、又は、少なくとも1つのカメラを含むことができる。
【0024】
受信した指標が取得した測定値より大きな減速度を示す場合、受信した指標が取得した測定値より優先することができるが、取得した測定値が受信した指標より大きな減速度を示す場合、取得した測定値が受信した指標より優先することができる。
【0025】
本発明はまた、コンピュータ上で実行されるとき、本発明の第2の態様又は第4の態様のステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムに関する。
【0026】
本発明はまた、コンピュータ上で実行されるとき、本発明の第2の態様又は第4の態様のステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムを保持する、コンピュータ可読媒体に関する。
【0027】
本発明はまた、本発明の第2の態様又は第4の態様のステップを実行するように構成された制御装置に関する。制御装置は、例えば、先頭車両及び/又は後続車両に含まれてもよい。
【0028】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【0029】
添付図面を参照して、以下に例として挙げられる本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の態様を組み込んだ先頭車両及び後続車両の概略図である。
図2図1における先頭車両の自律緊急制動システムの予め定義された制御フェーズの説明図である。
図3図1の先頭車両と後続車両との間の車間距離を制御する方法のフローチャートである。
図4図3の方法の内容における予め定義された制御フェーズの説明図である。
図5】先頭車両、後続車両及び中間車両の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、第1の車両12及び第2の車両14aの側面図である。第1の車両は、先頭車両12と呼ぶことができ、第2の車両は、後続車両14aと呼ぶことができる。車両12及び14aは、原動機を備えた道路車両(road vehicle)であるが、それらの少なくとも1台はトレーラを有していてもよい。車両12及び14aは、トラック及びバスなどの大型車両、又は、乗用車であってもよい。
【0032】
先頭車両12は、自律緊急制動(AEB)システム16と、車車間(V2V)通信手段18と、任意のヒューマンマシンインタフェース(HMI)20と、電子制御装置(ECU)22と、を備えている。制御装置22は、AEBシステム16、V2V通信手段18及び任意のHMI20に接続されている。
【0033】
AEBシステム16は、先進緊急制動システム(AEBS)と呼ぶこともできる。AEBシステム16は、潜在的衝突脅威26を認識し、認識した衝突脅威26に対する衝突時間(TTC)の形で安全指標27を導出するように構成されている。衝突時間は、先頭車両12と潜在的衝突脅威26との間の相対速度及び距離によって導出することができるが(すべての車両が同一車線で横方向に動かない定常条件)、加速、運転者反応、横方向脅威なども考慮することができる(動的条件)。衝突時間は、例えば、秒で表すことができる。潜在的衝突脅威26は、例えば、先頭車両12の予想進路に存在する他の車両であってもよい。AEBシステム16はまた、導出した衝突時間に応じて先頭車両12を自動的に減速又は制動させるように構成されている。
【0034】
具体的には、AEBシステム16は、図2に示すように、予め定義された制御フェーズ28a〜28cを備えている。図2において、水平軸は衝突時間、垂直軸は減速度である。予め定義された制御フェーズ28a〜28cは、例えば、標準化されてもよいし、法定(法律により定められている)であってもよい。予め定義された制御フェーズ28a〜28cは、第1の警告フェーズ28a、第2の警報制動フェーズ28b及び第3の全制動フェーズ28cを含んでいる。現在の制御フェーズ28a〜28cは、導出した衝突時間に依存する。警告フェーズ28aにおいて、先頭車両12の運転者に潜在的衝突脅威26が検出されたことを警告する。このフェーズ28aにおける警告は、例えば、光学的、音響的、及び/又は、軽いパルス状の制動を含むことができる。後者は、図2に示される。警報制動フェーズ28bにおいて、AEBシステム16は、制動及び/又はスロットルを絞ることによって先頭車両12を自動的に減速させる。減速度は、図2に示すように、衝突時間が短くなるにつれて大きくすることができる。最後に、全制動フェーズ28cにおいて、AEBシステム16は、先頭車両12を自動的に全制動させる。
【0035】
車車間通信手段18は、一般的に、後続車両14aにデータを送信、及び/又は、後続車両14aからデータを受信するように構成されている。特に、V2V通信手段18は、導出した衝突時間を先頭車両12から後続車両14aへと送信するために使用することができる。V2V通信手段18は、例えば、IEEE802.11p標準のようなWLANに基づくものであってもよい。
【0036】
ヒューマンマシンインタフェース20は、一般的に、先頭車両12の運転者に情報を表示するように構成されている。HMIインタフェース20は、例えば、先頭車両12のダッシュボード上のディスプレイであってもよい。
【0037】
後続車両14aは、自動前後方向制御システム30aと、車車間(V2V)通信手段32aと、電子制御装置(ECU)34aと、を備えている。制御装置34aは、自動前後方向制御システム30a及びV2V通信手段32aに接続されている。
【0038】
自動前後方向制御システム30aは、一般的に、少なくとも1つの入力に基づいて、後続車両14aのスロットル/制動/速度を自動的に制御するように構成されている。特に、自動前後方向制御システム30aは、以下でさらに説明するように、導出したAEBシステム16の衝突時間に基づいて、先行車両12までの車間距離24aを自動的に調整するために使用することができる。自動前後方向制御システム30aは、図1において先頭車両12である、先行車両までの実際の車間距離24aを測定する1つ以上の搭載センサからの測定値に基づいて、先行車両までの車間距離24aを調整することもできる。
【0039】
後続車両14aには、1つ以上のセンサ35が搭載されている。1つ以上のセンサ35は、制御装置34aに接続することができる。1つ以上のセンサ35は、少なくともレーダとすることができる。その代わりに、1つ以上のセンサ35は、レーザ光を使用した少なくとも1つのLIDAR(light detection and ranging)装置、又は、少なくとも1つのカメラであってもよい。
【0040】
車車間通信手段32aは、一般的に、先頭車両12のような他の車両からデータを受信するように構成されている。特に、V2V通信手段32aは、導出した衝突時間を先頭車両12から受信するために使用することができる。先頭車両12の車車間通信手段18と同様に、V2V通信手段32aは、IEEE802.11p標準などのWLANに基づくものであってもよい。
【0041】
図3及び図4をさらに参照すると、作動中、車間距離24a、即ち、先頭車両12と後続車両14aとの間の時間及び/又は距離は、次のように制御することができる。
【0042】
先頭車両12のAEBシステム16は、潜在的衝突脅威26を認識し(ステップS1)、衝突時間TTCを導出し始める(ステップS2)。
【0043】
導出したTTCは、制御装置22によって取得され(ステップS3)、図1において参照符号27により示されるように、V2V通信手段18を介して、先頭車両12から後続車両14aへと送信される(ステップS4)。
【0044】
後続車両14aにおいて、TTCは、V2V通信手段32aを介して受信される(ステップS5)。後続車両14aはまた、1つ以上の搭載センサ35から測定値を取得してもよい(ステップS6)。この測定値は、この場合には先頭車両12である、先行車両までの現在の車間距離24aを表している。受信したTTC及び取得した測定値は、制御装置34aによって使用され、自動前後方向制御システム30aにより車間距離24aを自動的に調整することができる(ステップS7)。
【0045】
ステップS1〜S7又は少なくともステップS2〜S7は、連続的に実行されてもよい。
【0046】
先頭車両のAEBシステム16の予め定義された制御フェーズ28a〜28cは、一般的に知られている。従って、TTC(のみ)を受信することによって、後続車両14aは、V2V通信を使用して先頭車両12から後続車両14aへと前もって制御フェーズ28a〜28cを通信せずに、先頭車両12が何をしてそれに応じて先行動作をとるかを予測することができる。予め定義された制御フェーズ28a〜28cは、例えば、後続車両14aの制御装置34aに予め格納することができる。その代わりに、制御フェーズ28a〜28cに関する情報は、V2V通信を介して、先頭車両12から後続車両14aへと送信することができる。
【0047】
受信したTTCに基づいて車間距離24aを自動的に調整するために、後続車両14aは、受信したTTCから所定時間を減算してもよい。受信したTTCは、図4において、TTC12で示されている。後続車両14aが所定時間を減算して、短縮したTTC14aとなる。受信したTTC12(即ち、先頭車両に対するTTC)及び短縮したTTC14aは、図4に示されている。図4において、先頭車両12は、減速せずに、早期の警告フェーズ28aにあることが理解できる。一方、後続車両14aは、遅い警告フェーズ28aに該当するTTC14aを有し、その自動前後方向制御システム30aは、警告フェーズ28aに該当する軽いパルス状の制動を行うことができ、これによって、車間距離24aが僅かに広がる。図4における車間距離の増加は、全制動フェーズ28cの前に開始されるので、車間距離24aの制御は、V2V通信の遅延に対して影響が少ない。
【0048】
潜在的衝突脅威26が認識されない場合、車間距離24aは、従来のアダプティブクルーズコントロールと同様に、少なくとも1つのセンサ35からの測定値に基づいて自動的に調整される。しかしながら、潜在的衝突脅威26が認識されると、受信したTTCは、少なくとも1つのセンサ35からの測定値より優先して使用することができる。例えば、少なくとも1つのセンサ35からの測定値が車間距離24aの増加を示す場合であっても、通常、それは後続車両14aに速度を上げさせて車間距離24aを小さくできると示すものであるが、受信したTTCが、先頭車両12が緊急制動を開始する途上であることを示す場合には、後続車両14aは、車間距離24aを小さくする代わりに車間距離24aを広げて安全性を向上させる。別の例では、少なくとも1つのセンサ35からの測定値が、車間距離24aがやや広がらなければならないことを示す一方、受信したTTCが、緊急制動が非常に差し迫っていることを示す場合には、後続車両14aは、少なくとも1つのセンサ35からの測定値によって示されるものより減速又は制動しなければならない。従って、この例においても、受信したTTCは、少なくとも1つの搭載センサ35からの測定値より優先する。一方、例えば、ここでは中間車両36である、他の車両36が先頭車両12と後続車両14aとの間に突然「割り込んだ」ならば(図5参照)、少なくとも1つのセンサ35からの測定値は、先行車両までの安全な車間距離を維持するために、後続車両14aが受信したTTCが示すもの(潜在的衝突脅威26が認識されたが差し迫っていない、即ち、先頭車両12からまだ遠い)より減速しなければならないことを示してもよい。従って、この場合、少なくとも1つのセンサ35から取得した測定値は、受信したTTCより優先する。
【0049】
本発明の方法は、摩擦推定に基づいて先頭車両12の減速能力を決定するステップを更に備え、これによって、車間距離24aを自動的に調整するステップは、この減速能力も考慮することを含んでもよい。このように、滑りやすい路面(低摩擦)が減速能力を低下させて早期の制動が要求される場合であっても、先頭車両12は、後続車両14aの予測可能性を維持することができる。例えば、路面が濡れて滑りやすい(低摩擦)ため、先頭車両12の現在の減速能力が乾燥道路の減速能力より低いと決定された場合、警報制動フェーズ及び全制動フェーズは、持続時間、開始時期及び/又は減速度に関して変更されてもよい。前述した摩擦は、様々な方法で推定することができる。
【0050】
先頭車両12又は路側の光学センサは、乾燥、濡れた、雪、氷などの路面の物理状態を検出することができる。そして、検出した物理状態は、ルックアップテーブルを使用して摩擦推定に変換される。
【0051】
駆動輪又はエンジン制動輪と自由回転輪との間の測定された滑りのレベルの差を使用してもよい。滑りにおける差は、駆動輪/エンジン制動輪並びに車輪の重力(垂直力)のトルク差と一緒になって、摩擦を計算又は推定する数学的基礎を与える。
【0052】
特定の操舵角で測定された横滑りを使用してもよい。ヨーレイトセンサ又は車両の異なる部分におけるGNNS(global navigation satellite system)受信機間の相対位置は、特定の速度、操舵角、異なる軸の重量配分、特定レベルの差動制動などにおける、理論的又は数学的なヨーレイトと比較することができるヨーレイトを与える。
【0053】
特定の操舵角速度及び操舵角で測定されたパワーステアリングの回転抵抗は、特に低速における摩擦を推定するために使用することができる。
【0054】
車両のEPS(electronic stability program)又はABS(anti-lock braking system)の介入は、摩擦を推定するために使用することができる。
【0055】
本発明は、上述及び図示した実施形態に限定されないことが理解されるべきであり、むしろ、当業者であれば、添付した特許請求の範囲内で多くの変更及び修正が行われることを認識するであろう。例えば、車両12及び14aは、先頭車両及び後続車両の両方として機能するように構成されてもよい。このように、各車両は、状況に応じて先頭車両又は後続車両として機能することができる。また、先頭車両からTTCを受信する、1台以上の追加の後続車両が存在してもよい。さらに、本発明は、隊列(platoon)で使用することもできる。さらにまた、本発明は、例えば、後続車両14aがACCを有していない場合、又は、そのACCがオフである場合、少なくとも1つの搭載センサ35からの測定値なしで機能することができる。
図1
図2
図3
図4
図5