【実施例】
【0734】
実施例1 IL−33に対する抗体の単離
ヒト、マウス及びカニクイザル由来の成熟IL−33のクローニング、発現及び精製
IL−1RAcP及びST2のタンパク質配列をSwiss Protから入手した。抗IL−33 scFv抗体の単離及び同定 IL−33の成熟成分をコードするcDNA分子をプライマー伸長PCRによって合成し、pJexpress404(DNA2.0)にクローニングした。ヒト及びマウスIL−33のデータベース配列情報に対応する受託番号を表2に示す。カニクイザル(Cynomologus monkey)配列は利用可能でなかったため、カニクイザルとアカゲザルとの間の高度な相同性に基づき、アカゲザルの配列(受託番号ENSMMUT00000030043)を使用してカニクイザルにおけるIL−33遺伝子のコード配列の増幅能を有するプライマーを設計した。アカゲザル遺伝子配列をヒトIL−33 cDNA配列(受託番号NM_033439)とアラインメントし、これにより、アカゲザル配列が誤ってアセンブルされ、エクソン1を欠いていることが示された。ヒトエクソン1を使用してアカゲザルゲノム配列に対するBLAST検索を実施し、エクソン1にマッチするアカゲザル配列を同定した。エクソン1を増幅するため追加のプライマーを設計した。
【0735】
成熟IL−33コード配列は、タンパク質のC末端にFLAG(登録商標)10xhisエピトープタグ(DYKDDDDKAAHHHHHHHHHH;配列番号627)を含むように修飾した。成熟Flag(登録商標)Hisタグ付加ヒト、カニクイザル及びマウスIL−33に対応する配列番号を表2に示す。
【0736】
【表18】
【0737】
ベクターをBL21(DE3)コンピテント細胞(Merck Biosciences、69450)に形質転換し、1mM IPTGで発現を誘導した。回収した細胞をBugbuster(Merck Biosciences、70584)で溶解させて、発現したタンパク質をNi−NTAアフィニティークロマトグラフィー(Histrap HPカラム:GE Healthcare、17−5248−02)、続いてサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 75カラム:GE Healthcare、17−1068−01)を使用して精製した。
【0738】
タンパク質修飾
EZ link スルホ−NHS−LC−ビオチン(Thermo/Pierce、21335)を使用して、本明細書で使用されるIgG及び修飾受容体タンパク質を遊離アミンを介してビオチン化した。このビオチン試薬を無水ジメチルホルムアミドに溶解し、PBSベースのタンパク質溶液をD−PBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)中1M NaHCO
3でpH約8に調整した。本明細書で使用されるIL−33タンパク質は、EZ link ビオチン−BMCC(Perbio/Pierce、製品番号21900)を使用して遊離システインを介してビオチン化した。ビオチン試薬を無水ジメチルホルムアミドに溶解し、PBSタンパク質溶液に混合した。いずれの場合にも、MALDI−TOF質量分析法によって標識の取り込みを評価し、未反応の試薬は、PBSで平衡化した使い捨てSephadex G25カラムを使用した緩衝液交換によって取り除いた。ビオチン化について、最終的なタンパク質濃度は、アミノ酸配列から計算した吸光係数を用いて280nm吸光度によって決定した。
【0739】
選択
成人未感作ドナー由来のヒトB細胞から単離され、且つ繊維状ファージM13をベースとするファージミドベクターにクローニングされた可変(V)遺伝子に基づく大規模単鎖Fv(scFv)ヒト抗体ライブラリを選択に使用した(Hutchings,C.,“Generation of Naive Human Antibody Libraries”in Antibody Engineering,Dubel.Berlin,Springer Laboratory Manuals:p.93(2001);Lloyd et al.,Protein Eng.Des.Sel.22(3):159−68(2009))。IL−33特異的scFv抗体は、本質的にVaughan et al.(Nat.Biotechnol.14(3):309−14(1996))に記載されるとおり、組換えヒト及び/又はマウスIL−33に対する一連の反復選択サイクルでファージディスプレイライブラリから単離した。本明細書で使用されるIL−33試薬のリストを表3に示す。
【0740】
【表19】
【0741】
端的には、scFv−ファージ粒子を溶液中のビオチン化組換えIL−33(EZ link ビオチン−BMCC(Perbio/Pierce、製品番号21900)を使用して、遊離システインを介してビオチン化した)と共にインキュベートした。粒子を100nMビオチン化組換えIL−33と共に2時間インキュベートした。次に抗原に結合したscFvを製造者の推奨に従いストレプトアビジンコート常磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)、M−280)に捕捉した。PBS−Tweenを使用した一連の洗浄サイクルで未結合のファージを洗い流した。抗原上に保持されたファージ粒子を溶出し、細菌に感染させて、次の選択ラウンド用にレスキューした。典型的には2回又は3回の選択ラウンドをこのように実施した。
【0742】
ファージELISAによるIL−33特異的結合剤の同定
上記に記載した2回又は3回の選択ラウンド後の選択アウトプットからの代表的な複数の個別クローンを96ウェルプレートで成長させた。単鎖Fv断片をファージ粒子上に提示させて結合アッセイで試験することにより、組換えヒト、マウス及びカニクイザルIL−33抗原のパネルに対する交差反応性及び特異性を決定した。ファージ提示scFv上清試料を96ウェルディープウェルプレートに以下のとおり作成した。96ウェルマスタープレートの各ウェルからの5μlの培養物を、500μlの2TYAG(2TY+100μg/mlアンピシリン+2%グルコース)培地が入ったGreinerディープウェル培養プレートに移し、37℃、280rpmで5時間インキュベートした。次にK07 M13ヘルパーファージ(2TYAG中1.5×10
11pfu/mlに希釈)を100μl/ウェルで加え、プレートを37℃、150rpmでインキュベートして感染させた。プレートを3200rpmで10分間スピンダウンして上清を取り除いた。細菌ペレットを500μl/ウェルの2TYAK(2TY+100μg/mlアンピシリン+50μg/mlカナマイシン)に再懸濁し、プレートを25℃、280rpmで一晩インキュベートした。午前中に各ウェルに500μlの2×PBS中6%(w/v)脱脂粉乳を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。次にプレートを3200rpmで10分間遠心し、このブロックしたファージ提示scFv上清をELISA実験に直接使用した。
【0743】
EC50を決定するため、典型的には精製IgGをPBS(PBS−M)中3%(w/v)粉乳に3倍希釈して11濃度ポイントとした。希釈物調製には96ウェルGreinerポリプロピレンプレート(Greiner、650201)を使用した。概して、各希釈物をデュプリケートで調製した。IgG希釈物は、PBS−M中に室温で1時間ブロックさせておいた後、ELISA実験に直接使用した。
【0744】
IL−33結合アッセイは、本質的に以下のとおり実施したプレートベースのELISAであった。上記の表3は、これらの実験に使用した抗原を示す。あらゆる実験について全ての抗原を使用したわけではないが、いずれの場合にも、ヒト、マウス、及びカニクイザルIL−33抗原を試験した。関連する対照抗原(適切な場合には、ウシインスリン+IL−4Rα FLAG(登録商標)His)もまた使用して、非特異的結合に関して試験した。ウシインスリンを除く全ての抗原をビオチン化し(上記のサブセクション1.1を参照)、全て細菌発現を用いて作成した。対照抗原として用いたIL−4Rα FLAG(登録商標)Hisの作成方法は、国際公開第2010/070346号パンフレットに記載されている。
【0745】
ストレプトアビジンプレート(Thermo Scientific、AB−1226)をPBS中0.5μg/mlのビオチン化抗原でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄し、300μl/ウェルのブロッキング緩衝液(PBS−M)で1時間ブロックした。プレートをPBSで1回洗浄し、ブロックした試料を50μl/ウェルで室温で1時間加えた。プレートをPBS−T(PBS+1%(v/v)Tween−20)で3回洗浄し、1:5000希釈の検出試薬[抗ヒトIgG HRP(Sigma、A0170)又は抗M13−HRP抗体(Amersham、27−9421−01)、それぞれIgG又はファージ提示scFvの検出用]をPBS−M中50μl/ウェルで室温で1時間加えた。プレートをPBS−Tで3回洗浄し、TMB、50μl/ウェル(Sigma、T0440)で発色させた。反応を50μl/ウェルの0.1M H
2SO
4でクエンチした後、EnVision(商標)プレートリーダー、又は同様の機器において450nmで読み取った。
【0746】
IgG力価決定のため、Prism(Graphpad)カーブフィッティングソフトウェアを使用して用量反応曲線をプロットした。ファージ提示scFvは、吸光度450nmが>0.5、及び対照(インスリン及びIL−4Rα Flag(登録商標)His)上の同じ試料について<0.2であった場合に、IL−33抗原に結合すると見なした。
【0747】
ヒト及びマウス由来のST2 ECDのクローニング、発現及び精製
ヒト及びマウス由来のST2の細胞外ドメイン(ECD)をコードするcDNA分子をプライマー伸長PCRクローニングによって合成し、pDONR221(Invitrogen、12536−017)にクローニングした。ヒト及びマウスST2のデータベース配列を使用した(表4を参照)。製造者の指示に従いLR Gateway Clonase II酵素を使用して、pDONR221中のST2 ECD cDNAクローンを哺乳類発現ベクターpDEST12.2に移した。pDEST12.2ベクターは、ヒトIgG1 Fcコード領域、ポリヒスチジン(His6)タグを目的の挿入遺伝子とインフレームで含むように修飾され、また、pCEP4ベクター由来のoriP複製起点の挿入によっても修飾されていたため、EBNA−1遺伝子産物を発現する細胞株(HEK293−EBNA細胞など)へのトランスフェクト時にエピソームプラスミド複製が可能であった。
【0748】
【表20】
【0749】
HEK293−EBNA上清中の発現したタンパク質ST2.Fcを、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(HiTrapプロテインAカラム(GE Healthcare、17−0402−01))と、続いてサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200カラム(GE Healthcare、17−1069−01))を使用して精製した。
【0750】
未精製scFvによるIL−33のST2への結合の阻害
上記に記載した2回又は3回の選択ラウンド後の選択アウトプットからの代表的な複数の個別クローンを96ウェルプレートで成長させた。scFvを細菌ペリプラズムで発現させて(Kipriyanov,et al.J Immunol Methods 200(1−2):69−77(1997))、均一FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)ベースのIL−33:ST2結合アッセイでそれらの阻害活性に関してスクリーニングした。このアッセイでは、FLAG(登録商標)Hisタグ付加ヒト、カニクイザル又はマウスIL−33への結合に関して試料がヒト又はマウスST2.Fcと競合した。
【0751】
HTRF(登録商標)アッセイは、近接しているドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとの間の蛍光共鳴エネルギー転移を利用する均一系アッセイ技術である(Mathis,et al..Clin Chem 41(9):1391−7(1995))。このアッセイを用いて、目的の分子の一方をドナーフルオロフォアのユウロピウム(Eu3+)クリプテートに直接又は間接的にカップリングし、且つ他方の目的の分子をアクセプターフルオロフォアXL665(安定架橋アロフィコシアニン)にカップリングすることにより、巨大分子相互作用を計測した。クリプテート分子の励起(337nm)により、620nmの蛍光発光が生じた。この発光からのエネルギーがクリプテートに近接したXL665に移動して、XL665からの特定の長寿命蛍光の発光(665nm)が生じた。ドナー(620nm)及びアクセプター(665nm)の両方の特異的シグナルを計測することにより、アッセイ中の有色化合物の存在を補償する665/620nm比を計算することが可能であった。
【0752】
抗体試験試料の各希釈物10マイクロリットルを384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3676)に加えることにより、FLAG(登録商標)−Hisタグ付加IL−33のST2−Fc結合の阻害に関して未精製抗IL−33 scFv試料を試験した。次に、2nMヒト又はマウスST2−Fc及び3nM抗ヒトFcクリプテート検出(Cisbio International、61HFCKLB)を含有する溶液を調製し、この混合物の5マイクロリットルをアッセイプレートに加えた。これに続いて、20nM抗FLAG(登録商標)XL665検出(Cisbio International、61FG2XLB)と組み合わせた1.2nM FLAG(登録商標)−Hisタグ付加ヒト、カニクイザル又はマウスIL−33を含有する5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(BDH 103444T)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma A9576)を含有するアッセイ緩衝液中で実施した。アッセイプレートを室温で1時間、続いて4℃で16時間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。
【0753】
各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することによりデータを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した:
【数1】
次に、各試料の%デルタFを式2を用いて計算した:
【数2】
【0754】
陰性対照(非特異的結合)は、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma A9576)を含有するダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)を含む希釈緩衝液中に調製した150nM非タグ付加ヒト又はマウスIL−33(Axxora、ヒトALX522−098、マウスALX−522−101)によって試験試料を置き換えることにより定義した。
【0755】
続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した:
【数3】
【0756】
GraphPad Prismソフトウェアを使用して、4パラメータロジスティック方程式(式4)を用いたカーブフィッティングによりIC
50値を決定した。
式4:
Y=ボトム+(トップ−ボトム)/(1+10^((LogEC50−X)*HillSlope))
Xは濃度の対数である。
Yは特異的結合である。
Yはシグモイド形でボトムから始まりトップに至る。
【0757】
図1は、ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生成されるFRETシグナルの、シングルポイントスクリーニングにおける未精製scFvペリプラズム抽出物による阻害を示す。ペリプラズム抽出物の最終濃度は50%v/vであった。ウェルB04(未精製IL330004 scFv)が例示的な「ヒット」を示し、列12は、指示されるとおりの対照ウェルを含む。
【0758】
精製scFvによるIL−33のST2への結合の阻害
未精製ペリプラズム抽出物としてIL−33:ST2相互作用に阻害効果を示したか、又は上記のファージ結合実験によって望ましい種交差反応性及び特異性プロファイルを実証した単鎖FvクローンをDNAシーケンシングにかけた(Osbourn,et al.Immunotechnology 2(3):181−96(1996);Vaughan,et al.Nat Biotechnol 14(3):309−14(1996))。ユニークなscFvを再び細菌で発現させて、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した(国際公開第01/66754号パンフレットに記載されるとおり)。上記に記載したとおりFLAG(登録商標)Hisタグ付加ヒト、カニクイザル又はマウスIL−33への結合に関して精製調製物の希釈系列をヒト又はマウスST2.Fcと競合させることにより、これらの試料の効力を決定した。陰性対照よりも高度なIL−33:ST2相互作用阻害能を有した精製scFv調製物をIgGフォーマットへの変換に選択した(例えば、scFv抗体IL330002、IL330004、IL330020及びIL330071。
【0759】
図2A:ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 scFv抗体IL330002、IL330004、IL330020及びIL330071による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0760】
図2B:カニクイザルIL−33がヒトST2に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 scFv抗体IL330002、IL330004、IL330020及びIL330071による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0761】
IL330004のパートナー抗体の同定
ファージELISAによってヒトIL−33結合陽性を示したクローンのscFvペリプラズム抽出物をOctetアッセイ(Octet RED 384システム)によってスクリーニングして、IL330004と同時にIL−33に結合した抗体を同定した。ニートなペリプレップ試料をニッケルNTAバイオセンサーに捕捉し、IL−33(200nM)、続いてIL330004(200nM)の逐次的結合を実施した。使用を最小限に抑えるためバイオセンサーを再生させた。センサーはグリシン(10mM、pH1.7)で再生させ、緩衝液(PBS+1mg/ml(0.1%)BSA+0.02%Tween20)で中和し、NiS04(10mM)を再負荷してバイオセンサー表面上にニッケルを補充する。IL330425及びIL330428が同定され、これらを全免疫グロブリンG1(IgG1)抗体フォーマットに変換した。
【0762】
scFvからIgG1への再フォーマット化
IL−33:ST2結合アッセイからの望ましい特性を有する単鎖Fvクローンと、加えて結合実験による望ましい特異性を有するファージ提示scFvのパネルを、本質的にPersic et al.(Gene 187(1):9−18(1997))によって記載されるとおり、但し以下の修正を加えて、全免疫グロブリンG1(IgG1)抗体フォーマットに変換した。CHO一過性細胞での使用を容易にし、且つエピソーム複製を可能にするため、発現ベクターにOriP断片を含めた。ヒト重鎖定常ドメイン及び調節エレメントを含有するベクター(pEU1.3)に可変重鎖(VH)ドメインをクローニングして、哺乳類細胞で全IgG1重鎖を発現させた。同様に、ヒト軽鎖(ラムダ)定常ドメイン及び調節エレメントの発現用ベクター(pEU4.4)に可変軽鎖(VL)ドメインをクローニングして、哺乳類細胞で全IgG軽鎖を発現させた。IgGを得るため、これらの重鎖及び軽鎖IgG発現ベクターをCHO一過性哺乳類細胞にトランスフェクトした(Daramola et al.Biotechnol Prog 30(1):132−41(2014))。IgGを発現させて、培地中に分泌させた。回収物をろ過した後精製し、次にプロテインAクロマトグラフィーを用いてIgGを精製した。培養上清を適切なサイズのCeramic Protein A(BioSepra)のカラムにロードし、50mMトリス−HCl pH8.0、250mM NaClで洗浄した。0.1Mクエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用して結合したIgGをカラムから溶出させて、トリス−HCl(pH9.0)を加えることにより中和した。溶出した材料をNap10カラム(Amersham、#17−0854−02)を使用してPBSに緩衝液交換し、IgGのアミノ酸配列に基づく吸光係数を用いてIgG濃度を分光光度的に決定した(Mach et al.,Anal.Biochem.200(1):74−80(1992))。精製IgGの凝集及び分解純度に関して、SEC−HPLCを用いて、及びSDS−PAGEにより分析した。抗体IL330002、IL330004、IL330020、IL330071、IL330125、及びIL330126の種々の領域に対応する配列番号を表5に示す。
【0763】
【表21】
【0764】
精製IgGによるIL−33のST2への結合の阻害
抗IL−33抗体がFLAG(登録商標)−Hisタグ付加IL−33のST2受容体への結合を阻害する能力を、上記に原理を記載した生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。
【0765】
FLAG(登録商標)Hisタグ付加ヒト、カニクイザル又はマウスIL−33への結合に関して精製IgGの希釈系列をビオチン化ヒト又はマウスST2.Fcと競合させることにより、精製IgG調製物の活性を決定した。
【0766】
抗体試験試料の各希釈物10マイクロリットルを384ウェル低容量アッセイプレート(Costar 3676)に加えることにより、FLAG(登録商標)−Hisタグ付加IL−33結合ST2−Fcの阻害に関して精製又は未精製抗IL−33抗体試料を試験した。次に、4nMビオチン化ヒト又はマウスST2−Fc及び20nMストレプトアビジンXL665検出(Cisbio International、611SAXLB)を含有する溶液を調製し、この混合物の5マイクロリットルをアッセイプレートに加えた。これに続いて、1.72nM抗FLAG(登録商標)クリプテート検出(Cisbio International、61FG2KLB)と組み合わせた1.2nM FLAG(登録商標)−Hisタグ付加ヒト、カニクイザル又はマウスIL−33を含有する5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、0.8Mフッ化カリウム(BDH 103444T)及び0.1%BSA(Sigma A9576)を含有するダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)を含むアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で2時間、続いて4℃で16時間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。
【0767】
上記に記載したとおり式1〜3を用いてデータを分析した。
【0768】
陰性対照(非特異的結合)は、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma A9576)を含有するダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)で構成される希釈緩衝液中に調製した100nM非ビオチン化ST2によって試験試料を置き換えることにより定義した。
【0769】
精製IgG抗体IL330002、IL330004、IL330020、IL330071、IL330125、及びIL330126の代表的な効力(IC
50)を表6に示す。
【0770】
【表22】
【0771】
全ての精製IgG調製物(即ち、IL330002、IL330004、IL330020、IL330071、IL330125、及びIL330126)がヒトIL−33:ヒトST2相互作用を阻害することが示された。
図3A:ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 IgG1抗体IL330002、IL330004、IL330020、IL330071、IL330125及びIL330126による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0772】
IL330002、IL330004、及びIL330071 IgG調製物もまた、カニクイザルIL−33:ヒトST2相互作用を阻害することが示された。
図3B:カニクイザルIL−33がヒトST2に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 IgG1抗体IL330002、IL330004、IL330020及びIL330071、IL330125及びIL330126による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。マウスIL−33 FLAG(登録商標)−His+マウスST2−Fc競合アッセイでは、上記の試験した抗体のいずれによっても阻害は検出されなかった。
【0773】
IgGによるHela−ST2レポーター細胞のNFκBシグナル伝達の阻害
レポーターアッセイを用いることにより、ST2及びNFκB反応性ルシフェラーゼレポーターコンストラクトをコトランスフェクトしたHela細胞を使用して、抗IL−33抗体IL330002、IL330004、IL330020、IL330071、IL330125、及びIL330126によるIL−33誘導性NFκBシグナル伝達の阻害を評価した。試験抗体の存在下又は非存在下で細胞をIL−33に曝露し、続いて生じたルシフェラーゼの活性を計測することにより、NFκBシグナル伝達を検出した。ルシフェラーゼレポーターコンストラクトを含有するHela細胞はPanomicsから供給された。ヒトST2配列をSystem Biosciencesのレンチウイルスベクターにクローニングした。Ad293細胞(Stratagene)でレンチウイルス粒子を作成し、Hela−ルシフェラーゼレポーター細胞の形質導入に使用した。
【0774】
レポーターアッセイでは、ST2受容体をIL−33で刺激するとNFκBシグナル伝達経路が活性化し、NFκBプロモーターを介して酵素ルシフェラーゼの発現が惹起された。細胞の溶解後、ルシフェラーゼ基質を加えると、これがルシフェラーゼの存在下で化学反応を起こして発光産物を生じた。細胞ライセートから検出される光量をEnvisionプレートリーダー(PerkinElmer)を使用して定量化し、IL−33媒介NFκBシグナル伝達の直接的な尺度として使用した。
【0775】
Helaトランスフェクト細胞はハイグロマイシンBを含有する培地に維持して安定な受容体発現を維持した。試験抗体の存在下又は非存在下で細胞をIL−33に曝露し、続いて生じたルシフェラーゼの活性を計測することによりNFκBシグナル伝達を検出した。
【0776】
384ウェル黒色壁ポリ−D−リジンコートプレート(Greiner、781946)中の10%v/vウシ胎仔血清(熱失活)及び100マイクログラム/mLハイグロマイシンB(Invitrogen 10687−010)を含有するDMEM培養培地(Invitrogen、41966)にトランスフェクトHela細胞を1×10
4細胞/ウェル(ウェル当たり50マイクロリットル)で播種した。プレートを37℃、5%CO
2で18〜24時間インキュベートし、次にウェルから細胞培地を穏やかに吸引した後、試験試料を加えた。
【0777】
10%v/v FBS(熱失活)及び100マイクログラム/mLハイグロマイシンB(Invitrogen、10687−010)を含有するDMEM培養培地(Invitrogen 41966)中に希釈することにより、試料の段階希釈物を調製した。15マイクロリットルの試験試料をデュプリケートで細胞に加えた。10%v/v FBS(熱失活)及び100マイクログラム/mLハイグロマイシンB(Invitrogen 10687−010)を含有するDMEM培養培地(Invitrogen、41966)中にIL−33 FLAG(登録商標)−Hisを0.6nMに希釈し、15マイクロリットルを細胞及び試験試料に加えた。この濃度は、IL−33 FLAG(登録商標)−Hisに対するレポーター細胞応答のEC
50値に相当した(幾何平均0.32nM、95%信頼区間0.25〜0.40nM、n=5)。バックグラウンド応答は、10%v/v FBS(熱失活)及び100マイクログラム/mLハイグロマイシンB(Invitrogen、10687−010)を含有するDMEM培養培地(Invitrogen、41966)30マイクロリットルを加えることによって定義した。プレートを37℃、5%CO
2で4時間及び室温で1時間インキュベートした。
【0778】
NFκBシグナル伝達に応答したルシフェラーゼの生成を計測するため、ルシフェラーゼ基質(Promega、E2620)と組み合わせた30マイクロリットルのBright Glo(登録商標)溶解緩衝液をプレートに加え、室温で5分間インキュベートした。ルシフェラーゼによって基質が酸化した結果として生じた発光はEnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)を使用して読み取る。
【0779】
続いて、相対発光単位(RLU)値を使用して、式5に記載されるとおり%特異的応答を計算した:
【数4】
【0780】
GraphPad Prismソフトウェアを使用して、4パラメータロジスティック方程式(式4)を用いたカーブフィッティングによりIC
50値を決定した。
【0781】
抗体IL330002、IL330004、IL330020、IL330071、IL330125、及びIL330126の精製IgG調製物は、NFκB駆動ルシフェラーゼ活性を阻害することが示された(代表的な効力(IC50)を表7に示す)。
【0782】
【表23】
【0783】
図4Aは、ルシフェラーゼNFκBレポーターアッセイにおける陰性対照IgGと比較したIL−33抗体IL330002、IL330004、IL330020、IL330071、IL330125、及びIL330126によるNFκB活性の阻害を示す。
【0784】
IgGによるHuvecのNFκBシグナル伝達の阻害
IL−33に応答したヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)におけるNFκBシグナル伝達を、免疫蛍光染色によって検出されるp65/RelA NFkBサブユニットの核転座によって評価した。イメージング及び核染色強度の定量化はArrayScan VTi HCSリーダー(Cellomics)で実施した。
【0785】
HuvecをCambrexから入手し、推奨プロトコルに従い完全EBM−2培地(Lonza)に維持した。Huvecをアキュターゼ(PAA、#L11−007)でフラスコから回収し、96ウェル黒色壁透明平底コラーゲンIコートプレート(Greiner)に培養培地[EGM−2 SingleQuot Kit Suppl.& Growth Factors(Lonza、#CC−4176)含有EBM−2(Lonza、#CC−3156)]中1×10
4/100μl/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2で18〜24時間インキュベートした。その後、培地を吸引し、細胞単層はインタクトなまま、以下で調製するとおりのアッセイ試験試料に交換した。
【0786】
精製IgGの試験試料(デュプリケート)を96ウェルU字底ポリプロピレンプレート(Greiner、650201)中の完全培養培地に所望の濃度に希釈した。IL−33(Adipogen)を、120μl/ウェルの総容積中1ng/mLの最終IL−33濃度となるように適切な試験抗体と混合した完全培養培地中に調製した。全ての試料を37℃で30分間インキュベートした後、100μlのIL−33/抗体混合物をアッセイプレートに移した。37℃で30分間インキュベートした後、培地を吸引し、細胞単層はインタクトなまま、37℃に予め加温した3.7%ホルムアルデヒド溶液で細胞を15分間固定した。固定液を吸引し、細胞を100μL/ウェルのPBSで2回洗浄した。
【0787】
Cellomics NFκBアッセイキット(Thermo Scientific、#8400492)を製造者の指示に従い使用して、細胞をNFκBに関して染色した。簡潔に言えば、細胞を室温で15分間透過処理し、15分間ブロックし、50μLの容積の一次抗体溶液で1時間染色した。プレートをブロッキング緩衝液で2回洗浄し、Hoechst核染色剤並びに二次抗体を含む二次抗体溶液によって室温で1時間染色した。プレートをPBSで2回洗浄した。細胞を150μL/ウェルPBSの最終容積で保存し、黒色遮光性シール(Perkin Elmer、#6005189)で被覆した後、ArrayScan VTi HCSリーダーで読み取った。好適なアルゴリズムを用いて核染色強度を計算した。データはGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析した。4パラメータロジスティック方程式(式4)を用いたカーブフィッティングによりIC
50値を決定した。
【0788】
図4Bは、Huvec NFκB転座アッセイにおける抗NIP IgG1陰性対照抗体NIP228と比較したIL−33抗体IL330004によるNFκB活性の阻害を示す。p65/RelA NFκBの核転座は抗体IL330004によって阻害された。精製IgGとして試験したとき、抗体IL330004のIC50は12nMと計算された。
【0789】
BIAcoreを用いたIL−33抗体の結合親和性計算
ヒト及びカニクイザルIL−33に対する例示的結合メンバーの精製IgG試料の結合親和性を、本質的にKarlsson et al.,J Immunol Methods 145(1−2):229−40(1991)により記載されるとおりBIAcore 2000バイオセンサー(BIAcore AB)を使用した表面プラズモン共鳴によって決定した。端的には、プロテインG’(Sigma Aldrich、P4689)を製造者の指示に従い(BIAcore)標準的なアミンカップリング試薬を使用してCM5センサーチップの表面に共有結合的にカップリングした。このプロテインG’表面を用いてFcドメインで精製抗IL−33抗体を捕捉することにより、サイクル当たり約290RUの面密度を得た。HBS−EP緩衝液(BIAcore AB)中に調製した600nM〜18.75nMの間の様々な濃度のヒト又はカニクイザルIL−33をセンサーチップ表面に流した。各抗体注入の間にpH1.7及びpH1.5の2回の10mMグリシン洗浄を用いて表面を再生させた。得られたセンサーグラムをBIA evaluation 3.1ソフトウェアを用いて評価し、1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングして相対結合データを得た。ヒト又はカニクイザルIL−33に対する抗体IL330002及びIL330004の結合の結合結果(KD、Ka、及びKd)を表8に示す。
【0790】
【表24】
【0791】
IL−33抗体の細胞内IL−33への結合
上記に記載した選択及び活性試験は、成熟IL−33(アミノ酸112〜270)の組換え又は市販の供給源を使用した。研究によれば、完全長IL−33もまた活性であり得ることが示唆される(Cayrol et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 106(22):9021−6(2009);Hayakawa et al.,Biochem Biophys Res Commun 387(1):218−22(2009);Talabot−Ayer et al.,J Biol Chem.284(29):19420−6(2009))。完全長(「天然」)IL−33との抗体の結合を初代気管支平滑筋細胞(BSMC)の免疫蛍光染色によって決定した。
【0792】
CambrexからBSMCを入手し、製造者の指示に従い完全平滑筋成長培地(SmBM(登録商標)、Lonza)に維持した。細胞をフラスコからアキュターゼ(PAA #L11−007)で回収し、96ウェル黒色壁透明平底コラーゲンIコートプレート(Greiner)中の培養培地[SMGM SingleQuot Kit Suppl.& Growth Factors(Lonza #CC−4149)含有SMBM(Lonza # CC−3181)]に2×10
4/100μl/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2で18〜24時間インキュベートした。その後、培地を吸引し、細胞単層はインタクトなまま、37℃に予め加温した3.7%ホルムアルデヒド溶液で細胞を15分間固定した。固定液を吸引し、細胞を100μL/ウェルのPBSで2回洗浄した。透過処理緩衝液(Thermo Scientific、#8400492)を使用して細胞を室温で15分間透過処理し、PBSで2回洗浄し、100μL/ウェルのPBS/1%BSA(Sigma、#A9576)によって室温で30〜60分間ブロックした。ブロッキング緩衝液を振り落とし、ブロッキング緩衝液に希釈した抗IL−33又は好適なアイソタイプ対照抗体のタイトレーションに室温で1時間交換した。
【0793】
プレートをPBSで2回洗浄し、1:10000希釈したHoechst染料(10mg/mL;Thermo Scientific)並びに1:1000希釈した二次抗体(抗ヒトIgG(H+L)、Alexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート2mg/mL;Invitrogen、#A11013)を含む二次抗体溶液によって室温で1時間染色した。プレートをPBSで3回洗浄した。細胞を150μL/ウェルPBSの最終容積で保存し、黒色遮光性シール(Perkin Elmer、#6005189)で被覆した後、ArrayScan VTi HCSリーダーで画像化した。
【0794】
市販のポリクローナル抗体(R&D Systems、#AF3625)で培養BSMCによるIL−33発現を確認し、抗ヤギIgG(H+L)、Alexa Fluor(登録商標)488コンジュゲート2mg/mL;Invitrogen、#A11055)で検出した。
図5は、CAT−002陰性対照(左側のパネル)と比較したIL−33抗体IL330004(右側のパネル)による免疫蛍光染色による気管支平滑筋細胞の内因性IL−33の検出を示す。抗体IL330004は、市販のpAbで検出された、完全長IL−33の予想された局在に対応するBSMCの明るい核染色を示した。
【0795】
実施例2 抗IL−33 scFv抗体の単離及び同定
ファージELISAによるIL−33特異的結合剤の同定
試薬及び選択は実施例1に記載するとおりであった。単鎖Fv断片をファージ粒子上に提示させて、シングルポイントELISAスクリーニングで未精製調製物として試験した。ファージ提示scFvは、吸光度450nmが>0.5であり、且つ対照(インスリン及びIL−4Rα Flag(登録商標)His)に関して同じ試料について<0.1〜0.2であった場合に、IL−33抗原に結合すると見なすものとする。
【0796】
図6は、ヒトIL−33、カニクイザルIL−33及びインスリンに対してスクリーニングした単一のプレートからのデータを示す。1つの特異的ヒト/カニクイザル交差反応性IL−33結合剤がウェルC4に示され、ウェルA12及びB12には対照IL−33結合クローンが含まれる。
【0797】
Axxora IL33305B競合によるIL−33結合剤の同定
Axxora IL33305B競合アッセイは、蛍光微量容積アッセイ技術(FMAT)を利用する均一系アッセイである。このアッセイでは、384ウェルフォーマットで粗scFv上清試料又は精製scFv及びIgGの存在下における組換えビオチン化ヒトIL−33 Flag(登録商標)Hisに対するAxxora IL33305B mAb(Axxora/Adipogen、#AG−20A−0041−C050)の結合の阻害を評価した。
【0798】
scFvを細菌ペリプラズムで発現させて、既知の生物学的に活性なIL33305B mAbに対するFMATエピトープ競合アッセイでそれらの阻害活性に関してスクリーニングした。ストレプトアビジンコートビーズ(Spherotec、#SVP−60−5)上にビオチン化IL−33を固定化し、ヤギ抗マウスAlexafluor(登録商標)−647標識抗体(Molecular Probes A21236)を使用してAxxora IL33305B Abとの相互作用を検出した。FMATシステムは、ビーズに関連する赤色蛍光を計測するマクロ共焦点画像装置である。
【0799】
Applied Biosystems Cellular Detectionシステム8200リーダーでプレートを読み取った。ヘリウムネオン励起レーザーは、ウェルの底の100μm深度以内に焦点を結んで面積1mm
2をスキャンする。ビーズがウェルの底に沈殿し、633nmでレーザー励起すると、フルオロフォアが結合したビーズ(ここでは未結合のフルオロフォアと比較してフルオロフォアの局所濃度が比較的高い)が650〜685nmでシグナルを発し、PMT1を用いてそれを計測する。溶液中の未結合のフルオロフォアは励起深度外であるか、又は比較的低い局所濃度であり、従って有意なシグナルを発しない。従って、IL33305BがIL−33に結合するのを有効に遮断するscFv又はIgG試料は、ウェルの底にあるビーズ:IL−33:IL33305B:抗マウスAlexafluor(登録商標)−647標識抗体複合体の量の減少を生じさせることになり、これが計測される蛍光の減少をもたらす。
【0800】
アッセイセットアップのため、以下を調製した:
(1)IL33305B及び抗マウスAF647混合物、IL33305Bをアッセイ緩衝液[0.1%BSA(Sigma、#A9576)及び0.1%Tween−20(Sigma、P2287)を含有するPBS(Gibco、14190−094)]中2.25nMに希釈し、アッセイ緩衝液中2μg/ml(最終400ng/ml)に希釈した抗マウスAF647と混合した。
(2)IL−33及びビーズ混合物、2.5nMビオチン化ヒトIL−33 FLAG(登録商標)Hisをアッセイ緩衝液中の0.0095%w/vストレプトアビジンビーズに加え、回転させながら室温で1時間インキュベートした−使用前にこれらの粒子は2000rpmで15分間スピンダウンし、元の容積のアッセイ緩衝液に再懸濁した。
(3)試料調製物、粗scFv上清試料を96ディープウェルプレートに作成した。96ウェルマスタープレートの各ウェルからの5μl培養物を、900μlの2TY+100μg/mlアンピシリン+0.1%グルコース培地が入ったGreinerディープウェル培養プレートに移し、37℃、280rpmで5時間インキュベートした。次にTY中の10mM IPTGを100ul/ウェルで加え、プレートを30℃、280rpmで一晩インキュベートした。翌朝、プレートを3200rpmで15分間スピンダウンした。ハイスループットスクリーニングのため、ディープウェルプレートからのscFv上清を20%の最終濃度に達するようにアッセイプレートに直接移した。
【0801】
IC50測定のため、典型的には精製scFv又はIgGをデュプリケートでアッセイ緩衝液中に3倍希釈して11濃度ポイントとした。希釈調製には96ウェルGreinerポリプロピレン(Greiner、650201)プレートを使用する。
【0802】
384ウェル透明底非結合表面黒色プレート(Costar、#3655)の列1〜22に以下を加えた:10μl試料、20μl IL33305B/抗マウスAF647混合物、及び20μl IL−33/ビーズ混合物。いずれの場合にも、総ウェル容積は40μlであった。これらの実験に典型的に使用した対照には、以下が含まれた:IL−33/ビーズ混合物+抗マウスAF647を加えた(非特異的結合);IL330305B/抗マウスAF647混合物+IL−33/ビーズ混合物(全結合)。プレートを密閉し、室温暗所で4時間インキュベートし、次にApplied Biosystems Cellular Detectionシステム8200リーダーで読み取った。データはVelocityアルゴリズムで、ゲーティングをカラー比<0.4、サイズ<15及び分カウント20に設定して分析した。粗scFv上清試料からのヒットは、全結合対照ウェルと比較してシグナルの50%以上の阻害を示すものとして定義した。精製scFv及びIgG力価決定のため、Prism(Graphpad)カーブフィッティングソフトウェアを使用して用量反応曲線をプロットした。
【0803】
scFvからIgG1への再フォーマット化
ファージ提示scFv結合実験によって決定するとき望ましい種交差反応性及び特異性プロファイルを呈したscFv又はAxxora Il33305Bとのエピトープ競合アッセイ(上記に記載したとおり)で阻害効果を示したscFvを、DNAシーケンシングにかけた(Osbourn et al.,Immunotechnology 2(3):181−96(1996);Vaughan et al.,Nat.Biotechnol.14(3):309−14(1996))。初めに、望ましい特性を有するscFvを全免疫グロブリンG1(IgG1)抗体フォーマット、又はエフェクターヌルアイソタイプIgG1 TM抗体フォーマット(突然変異L234F、L235E及びP331Sを組み込むIgG1 Fc配列)に、実施例1に記載したとおり変換した。抗体IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、IL33149、及びIL330180の様々な領域に対応する配列番号を表9に示す。
【0804】
【表25】
【0805】
IgGの結合アッセイ
プレートベースのELISAを用いて抗IL−33抗体の種交差反応性を決定した。ストレプトアビジンプレート(Thermo Scientific、AB−1226)をPBS中0.5μg/mlのビオチン化抗原でコーティングした。抗ヒトIgG HRP(Sigma、A0170)で精製IgG調製物の結合を検出した。結合曲線のEC50データを表10に示す。
【0806】
【表26】
【0807】
抗IL−33抗体によるIL−33機能的応答の阻害
IgGによるTF−1細胞増殖の阻害
細胞生存アッセイを用いて、抗IL−33抗体によるTF−1細胞からのIL−33誘導性増殖/生存の阻害を評価した。CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存アッセイ(Promega)は、代謝活性を有する細胞の存在を知らせるATPの存在の定量化に基づき培養下の生細胞の数を決定する均一法である。試験抗体の存在下又は非存在下で細胞をIL−33に曝露した。IL−33による刺激後72時間にCellTiter−Gloによって細胞生存度を計測した。
【0808】
詳細には、増殖アッセイを用いて、抗IL−33抗体によるTF−1細胞からのIL−33誘導性増殖の阻害を評価した。TF−1細胞はR&D Systemsからの供与であり、製造者の指示に従い維持した。アッセイ培地には、5%ウシ胎仔血清(熱失活、ガンマ線照射)、1%ピルビン酸ナトリウム(Sigma、S8636)、1〜2%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、15140−122)を含有するGLUTAMAX I(Invitrogen、61870)を含むRPMI−1640が含まれた。各アッセイの前に、TF−1細胞を300×gで5分間遠心することによりペレット化し、吸引によって培地を取り除き、次に細胞をアッセイ培地に再懸濁した。このプロセスを、細胞を2×10
5細胞/mlの最終濃度でアッセイ培地に再懸濁して2回繰り返した。IgGの試験溶液(デュプリケート)を所望の濃度範囲となるように96ウェルU字底ポリプロピレンプレート(Greiner、650201)中のアッセイ培地にタイトレーションし、50μLを96ウェル平底組織培養処理プレート(Costar、#3598)に移した。組換えヒトIL−33(Alexis、ALX−522−098−3010)を適切な試験抗体タイトレーションに加えて100μl/ウェルの総容積とした。次に100μlの細胞懸濁液を100μlのIL−33又はIL−33と抗体との混合物に加えることにより、総アッセイ容積200μl/ウェル及び総細胞数20,000/ウェルとした。アッセイでは100ng/mL IL−33の最終アッセイ濃度を使用し、これは、最大増殖応答の約80%を与える用量として選択されたものであった。プレートを37℃及び5%CO
2で72時間インキュベートした。100μLの上清をアッセイプレートから慎重に取り出した。製造者の指示に従い再構成したCellTiter−Glo(Promega、G7571)を各ウェルにつき100μL加えた。プレートをプレート振盪機で500rpmで5分間振盪し、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)で発光を読み取った。データはGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析した。3又は4パラメータロジスティック方程式を用いたカーブフィッティングによりIC50値を決定した。
【0809】
完全な阻害曲線を達成した抗体について、IC50値を計算した(以下の表11に要約する)。精製IgG調製物は、IL−33に応答したTF−1増殖の阻害能を有した。
図7Aは、TF−1増殖アッセイに関するIL330065及びIL330101についてのパーセント阻害(対照mAb及びhST2/Fcとの比較)を示す(ここでx軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答のパーセンテージである)。
【0810】
IL−33抗体によるHuvec IL−6放出の阻害
サイトカイン放出アッセイを用いて、抗IL−33抗体によるヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)からのIL−33誘導性IL−6産生の阻害を評価した。試験抗体の存在下又は非存在下で細胞をIL−33に曝露した。
【0811】
HuvecをCambrexから入手し、製造者のプロトコルに従い完全EBM−2培地(Lonza)に維持した。細胞をアキュターゼ(PAA、#L11−007)でフラスコから回収し、96ウェル平底組織培養処理プレート(Costar、#3598)中の培養培地(EGM−2 SingleQuot Kit Suppl.& Growth Factors(Lonza、#CC−4176)含有EBM−2(Lonza、#CC−3156))に1×10
4/100μl/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2で18〜24時間インキュベートした。その後、培地を吸引し、細胞単層はインタクトなまま、以下で考察するとおりのアッセイ試験試料を補充した。
【0812】
精製IgGの試験溶液(デュプリケート)を96ウェルU字底ポリプロピレンプレート(Greiner、650201)の完全培養培地中に所望の濃度に希釈した。IL−33(Adipogen)を、30ng/mLの最終IL−33濃度となるように適切な試験抗体と混合した完全培養培地中に調製した。全ての試料を室温で30分間インキュベートした後、120μlのIL−33/抗体混合物をアッセイプレートに移した。18〜24時間インキュベートした後、ユウロピウムの読み取りに適しているELISA(R&D Systems、DY206)によって細胞上清中のIL−6を計測した。黒色Fluro−Nunc Maxisorpプレート(VWR、#437111)を50μL捕捉抗体でコーティングし、自動プレート洗浄器(Biotek)を使用してPBS−Tween(0.01%)で3回洗浄し、250μL/ウェルのPBS/1%BSA(Sigma、#A9576)によって室温で1〜2時間ブロックした。プレートを上記のとおり洗浄し、50uLマスト細胞アッセイ上清と共に室温で1〜2時間インキュベートした。PBS−Tweenで3回洗浄した後、製造者の指示に従いプレートを検出抗体(50uL/ウェル)と共にインキュベートした。ELISAプレートをPBS−Tweenで3回洗浄し、ストレプトアビジン−ユウロピウム(PerkinElmer、1244−360)をDELFIA(登録商標)アッセイ緩衝液(PerkinElmer、4002−0010)に1:1000希釈し、50μl/ウェルで室温で45〜60分間加えた。次にプレートをDELFIA洗浄緩衝液で7回洗浄した後、50μl/ウェルのエンリッチメント溶液(PerkinElmer、4001−0010)を加え、時間分解蛍光測定法(励起340nM、発光615nM)を用いて分析した。データはGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析した。3又は4パラメータロジスティック方程式を用いたカーブフィッティングによりIC50値を決定した。完全な阻害曲線を達成した抗体について、IC50値を計算した(以下の表11に要約する)。抗体IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、IL330149、及びIL330180の精製IgG調製物(IgG1又はIgG1−TM)は、対照抗体と比較してIL−6産生を阻害した。例示的結合メンバーの効力は、本質的にIgG1−TM Fc配列突然変異(L234F、L235E及びP331S)の存在に影響されなかった。図示するデータは両方のフォーマットの情報を結合している。
図7Bは、IL330065及びIL330101についてのパーセント最大IL−6放出(ヒトST2−Fc、抗IL33 pAb AF3625(R&D Systems)、及び対照mAbとの比較)を示す(ここでx軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答のパーセンテージである)。
【0813】
ヒトマスト細胞サイトカイン放出の阻害
サイトカイン放出アッセイを用いて、ヒトマスト細胞からの抗IL−33抗体によるIL−33誘導性IL−6産生の阻害を評価した。IL−6に加え、細胞上清中の他のサイトカイン(IL−5、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13、GM−CSF及びTNFα)について、代替的なduoset ELISA又はMesoscale Discovery多重分析を用いて計測した。
【0814】
本質的にAndersen et al.(J Immunol Methods 336:166−174(2008))に記載されるとおり、臍帯血CD133+前駆細胞(Lonza、#2C−108)のインビトロ分化によってヒトマスト細胞を作製した。製造者の指示に従い前駆細胞を解凍し、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、15140−122)及び成長因子:100ng/mL幹細胞因子(Peprotech、#AF−300−07)及び50ng/mL IL−6(Peprotech、#AF−200−6)を補足した無血清増殖培地(StemSpan、#09650)において8週間インビトロ培養した。加えて、最初の3週間は培養培地に1ng/mL IL−3(R&D Systems、#203−IL)を含めた。細胞は全体を通じて<5×10
5/mLに維持した。
【0815】
アッセイ培地(StemSpan、#09650;1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、15140−122)及び100ng/mL幹細胞因子(Peprotech、#AF−300−07))においてマスト細胞を一晩培養した後、試験抗体の存在下又は非存在下でIL−33に曝露した。
【0816】
サイトカイン放出アッセイのため、細胞を取り出し、ペレット化し(150g、10分間)、アッセイ培地(StemSpan、#09650、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、15140−122)及び100ng/mL幹細胞因子(Peprotech、#AF−300−07))に再懸濁した。細胞をフラスコに戻し、18〜24時間培養した後、アッセイをセットアップした。試料評価のため、IgGの試験溶液(デュプリケート)を所望の濃度範囲となるように96ウェルU字底ポリプロピレンプレート(Greiner、650201)中のアッセイ培地にタイトレーションし、50μLの試験溶液を96ウェル平底組織培養処理プレート(Costar、#3598)に移した。アッセイ培地中に90ng/mLに希釈した50μLの組換えヒトIL−33(Adipogen、#522−098−3010)を適切な試験抗体タイトレーションに加えて100μl/ウェルの総容積とした。次に50μlの細胞懸濁液(1.5×10
5)を100μlのIL−33又はIL−33と抗体との混合物に加えることにより、総アッセイ容積150μl/ウェル及び総細胞数5×10
4/ウェルとした。このアッセイでは、最大サイトカイン応答の約50〜80%を与える用量として選択された30ng/mL IL−33の最終アッセイ濃度を使用した。プレートを37℃及び5%CO
2で18〜24時間インキュベートした。
【0817】
ユウロピウムの読み取りに適しているELISA(R&D Systems、DY206)によって細胞上清中のIL−6を計測した。黒色Fluro−Nunc Maxisorpプレート(VWR、#437111)を50μL捕捉抗体でコーティングし、自動プレート洗浄器(Biotek)を使用してPBS−Tween(0.01%)で3回洗浄し、250μL/ウェルのPBS/1%BSA(Sigma、#A9576)によって室温で1〜2時間ブロックした。プレートを上記のとおり洗浄し、50μLマスト細胞アッセイ上清と共に室温で1〜2時間インキュベートした。PBS−Tweenで3回洗浄した後、製造者の指示に従いプレートを検出抗体(50μL/ウェル)と共にインキュベートした。ELISAプレートをPBS−Tweenで3回洗浄し、ストレプトアビジン−ユウロピウム(PerkinElmer、1244−360)をDELFIAアッセイ緩衝液(PerkinElmer、4002−0010)に1:1000希釈し、50μl/ウェルで室温で45〜60分間加えた。次にプレートをDELFIA洗浄緩衝液で7回洗浄した後、50μl/ウェルのエンリッチメント溶液(PerkinElmer、4001−0010)を加え、時間分解蛍光測定法(励起340nM、発光615nM)を用いて分析した。データはGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析した。3又は4パラメータロジスティック方程式を用いたカーブフィッティングによりIC50値を決定した。
【0818】
図8Aは、漸増濃度の抗体IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、IL33149、及びIL330180によるIL−6産生の減少を示す(ここでx軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は%最大応答である)。試験抗体の精製IgG調製物は、対照抗体と比較してIL−6活性の阻害能を有した。例示的結合メンバーの効力は、本質的にIgG1−TM Fc配列突然変異(L234F、L235E及びP331S)の存在に影響されなかった。データは両方のフォーマットの情報を結合している。TF−1増殖アッセイのIC50の結果、HUVEC IL−6産生、及びマスト細胞IL−6産生を表11に示す。
【0819】
【表27】
【0820】
製造者の指示に従いMeso−Scale Diagnostics Demonstration 10−plexヒトサイトカインアッセイ(#K15002B−1)を使用して細胞上清中の更なるサイトカイン(IL−5、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13、及びGM−CSF)を検出した。上記に記載したIL−6 ELISAと同様のプロトコルを用いるユウロピウムの読み取りに適しているELISAによって細胞上清中のサイトカインを計測した。
【0821】
マスト細胞は、IL−33による刺激後、様々なサイトカインを産生することが示された(Meso−Scale Diagnostics Demonstration 10−plexヒトサイトカインアッセイ #K15002B−1;R&D Systems、#DY213)。
図8B〜
図8Fは、それぞれ、GM−CSF、IL10、IL−8、IL−13及びIL−5のIL−33駆動産生の阻害を示す。これらの結果は、抗体IL330065、IL330101、IL330107、及びIL330149が、計測した全てのサイトカインのIL−33駆動産生を阻害する能力を有することを示している。
【0822】
天然完全長IL−33の結合及び中和
上記に記載した選択及び活性試験では、成熟IL−33(アミノ酸112〜270)の組換えインハウス又は市販の供給源を使用した。完全長IL−33もまた活性であり得る(Cayrol et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 106(22):9021−6(2009);Hayakawa et al.,Biochem Biophys Res Commun 387(1):218−22(2009);Talabot−Ayer et al.,J Biol Chem.284(29):19420−6(2009))。完全長IL−33に対する抗体の結合を評価するため、完全長IL−33をクローニングし、HEK293−EBNA細胞で発現させた。以下に記載するとおり、選択された抗体は、ウエスタンブロットによって決定するとき完全長IL−33に結合することが示された。
【0823】
完全長ヒトIL−33のクローニング及び発現
ヒト由来の完全長(FL)IL−33(Swiss Prot受託番号O95760 アミノ酸1〜270)をコードするcDNA分子をプライマー伸長PCRクローニングによって合成し、pDONR221(Invitrogen、12536−017)にクローニングし、製造者の指示に従いLR Gateway Clonase II酵素(Invitrogen、12538−120)を使用して哺乳類発現ベクターpDEST12.2(Invitrogen)に移した。pDEST12.2ベクターはpCEP4ベクター(Invitrogen)由来のoriP複製起点を含むように修飾されており、EBNA−1遺伝子産物を発現する細胞株(HEK293−EBNA細胞など)へのトランスフェクション時にエピソームプラスミド複製が可能なものであった。HEK293−EBNA細胞をLipofectamine 2000(Invitrogen、11668−019)でトランスフェクトした。FL HuIL−33を発現する細胞(及びモックトランスフェクト対照)を、プロテアーゼ阻害薬(Roche、05892791001)の存在下における音波処理を用いて溶解させた。
【0824】
完全長ヒトIL−33を発現する細胞ライセートのウエスタンブロット分析
細胞ライセートのタンパク質を変性させてSDS試料緩衝液及びDTTで還元した後、SDS−PAGE電気泳動(electophoresis)によって分離し、ニトロセルロース膜に転写した。膜をPBS−T中5%脱脂粉乳で1時間ブロックし、一次抗体(0.5μg/ml)と共に1時間インキュベートし、PBS−Tで3回洗浄し、次にHRPコンジュゲート二次抗体(1対10,000希釈のヤギ抗ヒトIgG(Sigma、A0170))と共に1時間インキュベートし、PBS−Tで3回洗浄した。HRPをAmersham ECL plus検出試薬(GE healthcare、RPN2132)で検出した。サイズは、Magic Mark XP(Invitrogen、LC5602)の移動と比較することにより推定した。
図9は、ウエスタンブロットによるIL−33抗体(IL330065、IL330101、IL330107、及びIL330149)の完全長ヒトIL−33への結合を示す。
【0825】
完全長IL−33細胞ライセートに対するマスト細胞サイトカイン応答の中和
トランスフェクション後24時間に、完全長(FL)HuIL−33を発現するHEK293−EBNA細胞(及びモックトランスフェクト対照)をアキュターゼ(PAA、#L11−007)で回収した。細胞をPBSで5×10
7/mLに希釈し、組織ホモジナイザーを使用して30秒間ホモジナイズした。遠心によって細胞残屑を除去した。マスト細胞を種々の濃度の細胞ライセートで刺激した。サイトカイン産生の刺激は完全長IL−33トランスフェクト細胞ライセートのみで観察され、モックトランスフェクト細胞ライセートでは観察されなかった。準最大サイトカイン放出を刺激したライセートの濃度(近似EC50)を抗体中和試験に選択した。
【0826】
サイトカイン放出アッセイのため、アッセイ培地(StemSpan、#09650;1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、15140−122)及び100ng/mL幹細胞因子(Peprotech、#AF−300−07))においてマスト細胞を一晩培養した後、試験抗体の存在下又は非存在下でFL HuIL−33に曝露した。18〜24時間後にアッセイ上清のELISAによってIL−6及びIL−13産生が検出された。プロトコルの詳細な説明は上記に記載した(実施例2−0007)。
【0827】
図10は、完全長IL−33−トランスフェクト細胞の細胞ライセートによって刺激されたマスト細胞IL−6及びIL−13産生に対して抗IL−33抗体IL330065及びIL330101が及ぼす効果を示す。精製IgG調製物は、完全長IL−33細胞ライセートによって誘導されたIL−6(
図10A)及びIL−13(
図10B)産生の阻害能を有した。
【0828】
IL−33抗体の非競合的作用様式
精製IgGによるIL−33のST2への結合の阻害
抗IL−33抗体がFlag(登録商標)−Hisタグ付加IL−33のST2受容体への結合を阻害する能力を生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイ(この完全な方法については実施例1に記載する)で評価した。
【0829】
図11Aは、漸増濃度の抗体IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、IL33149、及びIL330180によるHTRF(登録商標)受容体−リガンド競合アッセイの特異的結合結果を示す。これらの結果は、抗体IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、IL33149、及びIL330180がIL−33:ST2相互作用の競合阻害薬ではないことを示している。
【0830】
IgGによるHuvecのNFkBシグナル伝達の阻害
実施例1に記載されるとおり免疫蛍光染色によって検出されるp65/RelA NFkBサブユニットの核転座により、IL−33に応答したHuvecのNFkBシグナル伝達を評価した。
【0831】
図11Bは、漸増濃度の抗体IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、及びIL330149によるHuvec NFkB転座を示す。これらの結果は、IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、及びIL330149が、IL−33刺激を受けたHuvecの刺激30分後のp65/RelA NFkBの核転座を阻害しなかったことを示している。この結果は、抗体IL330065、IL330099、IL330101、IL330107、IL33149、及びIL330180がIL−33のST2への結合を阻害できないことと一致している。
【0832】
HTRF(登録商標)エピトープ競合アッセイにおけるIL−33抗体のエピトープビニング
抗体がビオチン化ヒトIL−33への結合に関してmAb IL330101又はmAb IL330180と競合する能力を生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)エピトープ競合アッセイで評価した。
【0833】
以下に記載するHTRF(登録商標)エピトープ競合アッセイを用いてビオチン化IL−33に対するIgGフォーマットのリード抗体の結合を計測した。リード抗体と同様のエピトープを認識する試験scFv試料は、IL−33との結合に関してリード抗体と競合することになり、アッセイシグナルの減少につながる。
【0834】
抗体試験試料の各希釈物5マイクロリットルを384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより、リード抗体に結合するビオチン化ヒトIL−33の阻害に関して精製抗IL−33 scFv抗体試料を試験した。次に、8nM IL330180 IgG1又は12nM IL330101 IgG1及び40nM抗ヒトFc検出(Cisbio International、61HFXLB)を含有する溶液を調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレートに加えた。これに続いて、4nM(IL330180エピトープ競合アッセイについて)又は18nM(IL330101エピトープ競合アッセイについて)のビオチン化ヒトIL−33(Axxora、AG−40B−0038;ビオチン化)及び4.65nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)を含有する2.5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、0.8Mフッ化カリウム(BDH、103444T)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma A9576)を含有するダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)で構成されるアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で2時間、続いて4℃で16時間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。データは先述のとおり式1〜3を用いて分析した。陰性対照(非特異的結合)は、ビオチン化IL−33/ストレプトアビジンクリプテートの組み合わせをストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義される。
【0835】
IL330101及びIL330180エピトープ競合アッセイの結果をそれぞれ
図8A及び
図8Bに示す。
図12Aは、ビオチン化ヒトIL−33への結合に関するIL330101 scFv、IL330107 scFv、IL330149 scFv、IL330065 scFv、無関係のscFv、及びIL330180 scFvとmAb IL330101との競合結合を示す。これらの結果は、IL330101 scFv、IL330107 scFv、IL330149 scFvがIL330101のビオチン化ヒトIL−33への結合を競合的に阻害したことを示している。
【0836】
図12Bは、生化学的HTRF(登録商標)で評価したビオチン化ヒトIL−33への結合に関するIL330180、IL330101、IL330149、IL330065、及び無関係のscFvとmAb IL330180との競合結合を示す。これらの結果は、IL330101、IL330149、及びIL330065がIL330180のビオチン化ヒトIL−33への結合を競合的に阻害しないことを示している。
【0837】
この方法を用いたエピトープビニングは、表12に詳述するとおり、パネル1にIL330101、IL330107及びIL330149、パネル2にIL330065及びパネル3にIL330180を含む3つの抗体パネルを示す。
【0838】
【表28】
【0839】
実施例3 抗IL−33 Ab IL330101の最適化
親和性成熟
標的突然変異誘発手法及び親和性ベースのファージディスプレイ選択を用いてIL330101を最適化した。記載されるとおりの標準的な分子生物学的技術を用いた可変重鎖(VH)相補性決定領域2及び3(CDR2及びCDR3)及び軽鎖(VL)CDR3のオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって、リードクローンに由来する大規模scFv−ファージライブラリを作成した(Clackson,T.and Lowman,H.B.Phage Display−A Practical Approach,2004.Oxford University Press)。ヒト及びマウスIL−33に対してより高い親和性を有する変異体を選択するため、これらのライブラリを親和性ベースのファージディスプレイ選択に供した。選択は、実施例1及び2に記載されるとおりの試薬を使用して、本質的に以前記載されているとおり実施した(Thompson,J et al.J Mol Biol,1996.256:p.77−88)。端的には、scFv−ファージ粒子を溶液中の組換えビオチン化ヒトIL−33(Adipogen;実施例1の「タンパク質修飾」に記載されるとおりビオチン化した)と共にインキュベートした。次に抗原に結合したscFv−ファージを製造者の推奨に従いストレプトアビジンコート常磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)M−280)に捕捉した。次に選択されたscFv−ファージ粒子を以前記載されているとおりレスキューし(Osbourn,J.K.,et al.Immunotechnology,1996.2(3):p.181−96)、この選択プロセスを交互漸減濃度のヒト又はマウスビオチン化IL−33の存在下で(典型的には4ラウンドの選択にわたって500nM〜500pM)繰り返した。
【0840】
未精製scFvによるIL−33のmAbへの結合の阻害
選択アウトプットからの代表的な複数の個別クローンを96ウェルプレートで成長させた。scFvを細菌ペリプラズムで発現させて(Kipriyanov,et al.J Immunol Methods 200(1−2):69−77(1997))、均一FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)ベースのIL−33:mAb結合アッセイでそれらの阻害活性に関してスクリーニングした。このアッセイでは、ビオチン化ヒトIL−33又はマウスIL−33 FLAG(登録商標)Hisへの結合に関して試料がIL330101 IgGと競合した。かかるエピトープ競合アッセイは、抗IL−33 IgGと同様のエピトープを認識する試験抗体試料がビオチン化IL−33への結合に関してIgGと競合し、アッセイシグナルの減少が生じることになるという原理に基づく。
【0841】
ビオチン化ヒト又はマウスIL−33 FLAG(登録商標)HisのIL330101への結合の阻害に関して、5マイクロリットルの試料を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより未精製抗IL−33 scFv試料を試験した。次に、40nM抗ヒトFc XL665検出(Cisbio International、61HFCXLB)と組み合わせた12nM IL330101を含有する溶液をヒトIL−33アッセイ用に調製し、及び40nM抗ヒトFc XL665検出(Cisbio International、61HFCXLB)と組み合わせた2nM IL330101をマウスアッセイ用に調製した。2.5マイクロリットルをアッセイプレートに加えた。これに続いて、ヒトアッセイ用の4.6nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた18nMビオチン化ヒトIL−33(Adipogen、AG−40B−0038)を含有する2.5マイクロリットルの溶液又はカニクイザルアッセイ用の4.6nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた2nMビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)Hisを含有する溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で4時間、続いて4℃で16時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することにより、データを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した。次に、式2を用いて各試料の%デルタFを計算した。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化IL−33をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した。
【0842】
エピトープ競合アッセイがその感度限界に達したため、未精製scFv試料の試験には、中間最適化mAb IL330259を使用したアッセイを用いた。ビオチン化ヒトIL−33又はビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)HisのDyLight標識IL330259結合の阻害に関して、5マイクロリットルの各試料を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより未精製抗IL−33抗体試料を試験した。次に、20nM DyLight標識IL330259を含有する溶液をヒトIL−33アッセイ用に調製し、及び4nM DyLight標識IL330259を含有する溶液をマウスアッセイ用に調製して、2.5マイクロリットルをアッセイプレート(製造者の指示に従いキット(Thermo Scientific、53051)を使用してIgG標識した)に加えた。これに続いて、6nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた20nMビオチン化ヒトIL−33(Adipogen、AG−40B−0038)又は1.6nMビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)Hisを含有する2.5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で4時間、続いて4℃で16時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することにより、データを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した。次に、式2を用いて各試料の%デルタFを計算した。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化IL−33をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した。
【0843】
精製scFvによるIL−33のMAbへの結合の阻害
IL330101と比較して未精製ペリプラズム抽出物としてIL−33:mAb相互作用に対するより大きい阻害効果を示した単鎖FvクローンをDNAシーケンシングにかけた(Osbourn,et al.Immunotechnology 2(3):181−96(1996);Vaughan,et al.Nat Biotechnol 14(3):309−14(1996))。ユニークなscFvを再び細菌で発現させて、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した(国際公開第01/66754号パンフレットに記載されるとおり)。これらの試料の効力について、上記に記載したとおり、但しビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisアッセイを追加して(ビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisは12nM濃度で加えた)、ビオチン化ヒトIL−33、ビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)His又はビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisへの結合に関して精製調製物の希釈系列をIL330101 IgGと競合させることにより決定した。
【0844】
図13:ビオチン化ヒトIL−33がIL330101に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 scFv抗体IL330101、IL330259による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0845】
IL−33:mAb相互作用の阻害能がIL330101よりも高度であった精製scFv調製物を、IgGフォーマットへの変換に選択した。IgG発現及び精製方法は実施例1に記載される。
【0846】
エピトープ競合アッセイがその感度限界に達したため、精製scFv試料の試験には、中間最適化mAb(IL330259)を使用したアッセイを用いた。精製抗IL−33抗体試料について、上記に記載したとおり、但しビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisアッセイを追加して(ビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisは12nM濃度で加えた)、ビオチン化ヒトIL−33、ビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)His又はビオチン化カニクイザルFLAG(登録商標)His IL−33のIL330259への結合の阻害に関して試験した。
【0847】
配列及びエピトープ競合データに基づき、選択されたVH及びVLアウトプットを標準的な分子生物学的技術によって組み換えることにより、クローンがランダムな対のVH及びVL配列を含むライブラリ(例えば、VH CDR2/VL CDR3及びVH CDR3/VL CDR3ライブラリ)を形成した。或いは、VH CDR3及びVL CDR3配列をランダムに対にして、改良された変異体のプールから選択された特定のVH CDR2配列と組み換えることにより、3つ全てのCDRが非親であるライブラリを作成した。典型的には10nM〜10pMの漸減交互濃度のヒト及びマウスビオチン化IL−33を用いた5ラウンドのアフィニティ選択を全ての組換えライブラリに対して実施して、反応速度が向上したscFv配列を同定した。或いは、4ラウンドの選択の間に漸増する時間(例えば30分、1時間、2時間又は4時間)にわたって1000×非ビオチン化IL−33の存在下で一定濃度のビオチン化IL−33(例えば、1nM、100pM又は300pM)を使用して組換えライブラリを選択することにより−当該技術分野において「オフ速度」又は「競合」選択として知られるプロセス−、反応速度が向上したscFvを同定した。
【0848】
先述のとおりHTRF(登録商標)エピトープ競合アッセイにおいてIL330101親抗体又はVH CDR2最適化抗体IL330259に対する標識huIL−33の結合を阻害する能力に関して試料を再度スクリーニングした。IL330101と比較したとき有意に向上した阻害効果を示したscFvをDNAシーケンシングにかけ、更なる特徴付けのためユニークな変異体を精製scFvとして作製した。阻害性scFvを実施例1に記載されるとおり全免疫グロブリンG1(IgG1)抗体フォーマットに変換した。
【0849】
或いは、個々のユニークなVH CDR2、VH CDR3及びVL CDR3配列を特異的且つ合理的に組み換えて、IgGとして直接作製した。この例では、いかなる追加的なアフィニティ選択もなしに、IgGを反応速度の向上に関して試験した。
【0850】
あらゆる戦略から反応速度が向上した抗体が同定された。これらはIL330259、IL330377、IL330388、IL330396、IL330398及びH338L293によって例示される。
【0851】
IL330101親及び最適化抗IL−33抗体のV
H及びV
Lドメインのアミノ酸配列をIMGTデータベースの既知のヒト生殖系列配列とアラインメントし(Lefranc,M.P.et al.Nucl.Acids Res.2009.37(Database issue):D1006−D1012)、配列類似性によって最も近縁の生殖細胞系列を同定した。IL330101抗体系統のV
Hドメインについて、これはIGHV3−21/IGHJ2であった。V
Lドメインについて、それはIGLV3−25/IGLJ3であった。変化しないままであったVernier残基(Foote,J.,et al.J Mol Biol,1992.224:p.487)を考慮しない場合、V
Hドメインのフレームワークに変化は必要なく、V
Lフレームワークに4つの変化が必要であった(V3E、T5M、A45V及びV104L;Kabat付番)。これらの位置を、適切な突然変異誘発プライマーによる標準的な部位特異的突然変異誘発技法を用いて指示どおり変更した。このようにして生殖細胞系列化した抗体は、配列表に接尾辞「fgl」を付して掲載する。抗体IL330259、H338L293、IL330377、IL330388、IL330396、及びIL330398の様々な領域に対応する配列番号を表13に示す。
【0852】
【表29】
【0853】
精製IgGによるIL−33のMAbへの結合の阻害
抗IL−33抗体がDyLight標識IL330101 IgGに対するビオチン化ヒトIL−33、ビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)His又はカニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisの結合を阻害する能力を生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。
【0854】
ビオチン化ヒトIL−33、ビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)His又はビオチン化カニクイザルFLAG(登録商標)His IL−33のDyLight標識IL330101結合の阻害に関して、5マイクロリットルの各濃度の試料を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより精製抗IL−33抗体試料を試験した。次に、40nM DyLight標識IL330101を含有する溶液を調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレート(製造者の指示に従いキット(Thermo Scientific、53051)を使用して標識した)に加えた。これに続いて、4.6nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた40nMビオチン化ヒトIL−33(Adipogen、AG−40B−0038)、2.5nMビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)His又は12nMビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisを含有する2.5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で4時間、続いて4℃で16時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することにより、データを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した。次に、式2を用いて各試料の%デルタFを計算した。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化IL−33をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した。
【0855】
図14A:ビオチン化ヒトIL−33がIL330101に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 IgG1抗体IL330101、IL330259による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0856】
エピトープ競合アッセイがその感度限界に達したため、精製IgG試料の試験には、中間最適化mAb IL330259を使用したアッセイを用いた。これは、精製scFvの試験について記載するとおりである。
【0857】
IL330259エピトープ競合アッセイがその感度限界に達したため、精製IgG試料の試験には、最適化mAb(H338L293)を使用した第3のアッセイを用いた。ビオチン化ヒトIL−33、ビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)His又はビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)HisのDyLight標識H338L293結合の阻害に関して、5マイクロリットルの各試料を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより精製抗IL−33抗体試料を試験した。次に、20nM DyLight標識H338L293を含有する溶液を調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレート(製造者の指示に従いキット(Thermo Scientific、53051)を使用して標識した)に加えた。これに続いて、4.6nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた4nMビオチン化ヒトIL−33(Adipogen、AG−40B−0038)、0.8nMビオチン化マウスIL−33 FLAG(登録商標)His又は1.6nMビオチン化カニクイザルIL−33 FLAG(登録商標)Hisを含有する2.5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で4時間、続いて4℃で16時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することにより、データを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した。次に、式2を用いて各試料の%デルタFを計算した。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化IL−33をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した。
【0858】
図14B:ビオチン化ヒトIL−33がH338L293に結合することによって生じるFRETシグナルの、漸増濃度のIgG1抗体H338L293、IL330396及びIL330388による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0859】
IL−33抗体によるHuvec IL−6産生の阻害
HuvecからのIL−33刺激IL−6産生を阻害する能力に関して、実施例2に記載されるとおり抗体を評価した。
【0860】
図15Aは、漸増濃度の抗体(IL330101、IL330377、H338L293、IL330388、IL330396、IL330398)によるIL−6産生の低下を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は%最大応答である)。抗体の精製IgG調製物はIL−6活性を100%阻害した市販のポリクローナル抗体と比較して最大約70%阻害した。
【0861】
IL−33抗体によるマスト細胞IL−6産生の阻害
ヒト臍帯血由来マスト細胞からのIL−33刺激IL−6産生を阻害する能力に関して、実施例2に記載されるとおり抗体を評価した。
【0862】
図15Bは、漸増濃度の抗体(IL330101、H338L293、IL330388、IL330396)によるIL−6産生の低下を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は%最大応答である)。抗体の精製IgG調製物は、陰性対照抗体と比較してIL−6活性を100%阻害した。
【0863】
HUVEC IL−6産生及びマスト細胞IL−6産生のIC50結果を表14に示す。
【0864】
【表30】
【0865】
抗体薬理学
実施例2に記載する方法を用いて、臍帯血由来マスト細胞からのIL−6産生を漸増濃度のIL−33(Adipogen)によって誘導した。この用量反応を漸増濃度のH338L293又はIL330388の存在下で行い、IL−33用量反応曲線の右方シフトを生じさせた。GraphPad PRISMソフトウェア(La Jolla,CA,USA)を使用して抗体の存在下又は非存在下におけるIL−33のEC
50値を計算し、用量比(DR)を計算した。データはlog[抗体]M(x軸)対log[DR−1](y軸)としてプロットした。これは明らかに、アロステリックな調節因子に特徴的な非競合的プロファイル(カーブしたプロット)を示す。これを調べるため、各実験のデータを正規化して単一のデータセットに結合した。Prism Graphpadソフトウェア並びに決定されたK
b及びαの値を使用してアロステリックモデルをフィッティングした。αの値は調査した両方のリードについて同様で、約0.02のα値(即ち抗体が結合したときのIL−33親和性/効力の最大の低下が約50倍である)が示された。機能的親和性(K
b)をH338L293(約4.2nM)及びIL330388(約1.7nM)について推定することができる。
【0866】
図16は、マスト細胞IL−6産生アッセイにおけるIL330388及びH338L293のシルド解析を示す。両方の抗体とも、アロステリックな調節因子のプロファイルを呈する。
【0867】
BIAcoreを用いたIL−33抗体の結合親和性計算
ヒト、カニクイザル又はマウスIL−33に対する例示的結合メンバーの精製IgG試料の結合親和性を、BIAcore 2000(GE healthcare)を使用した溶液親和性によって決定した。ビオチン化IL33表面をストレプトアビジン(streptavin)コートセンサーチップ(GE healthcare カタログ番号BR−1000−32)に固定化した。抗IL33抗体を様々な濃度の非標識IL33と共にインキュベートし、25℃で48時間平衡化させた。試料をIL33チップ上に流して、抗体の標準曲線と比較した応答を計測することにより、遊離抗体の量を決定した。BIAevaluationソフトウェアの溶液親和性フィットを用いて親和性を決定した。ヒト、カニクイザル又はマウスIL−33に対する抗体IL330101、H338L293、IL330388、IL330396の結合の親和性を表15に示す。
【0868】
【表31】
【0869】
実施例4 IL−33の酸化還元調節
試薬
ヒトIL−33の成熟成分(アミノ酸112〜270);受託番号(Swiss−Prot)O95760をコードするcDNAをプライマー伸長PCRによって合成し、pJexpress404(DNA2.0)にクローニングした。コード配列を、タンパク質のN末端に10xhis、Avitag、及び第Xa因子プロテアーゼ切断部位(MHHHHHHHHHHAAGLNDIFEAQKIEWHEAAIEGR)を含有するように修飾した。大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞を形質転換することにより、N末端タグ付加His10/Avitag IL33−01(WT、配列番号632)を作成した。形質転換細胞を自己誘導培地(Overnight Express(商標)Autoinduction System 1、Merck Millipore、71300−4)中37℃で18時間培養した後、細胞を遠心によって回収し、−20℃で保存した。完全プロテアーゼ阻害薬カクテル錠(Roche、11697498001)、2.5u/ml Benzonaseヌクレアーゼ(merck Millipore、70746−3)及び1mg/ml組換えリゾチームを含有するBugBuster(Merck Millipore、70921−5)中に細胞を再懸濁した。細胞ライセートを75,000×gで4℃で2時間遠心することにより清澄化した。上清から、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール中におけるニッケルアフィニティークロマトグラフィーによってIL−33タンパク質を精製し、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾールに溶出させた。リン酸緩衝生理食塩水pH7.4中Superdex 75 10/300 GLカラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、IL−33を更に精製した。ピーク画分をSDS PAGEによって分析した。純粋IL−33を含有する画分をプールし、Nanodrop A280測定によって濃度を計測した。最終試料をSDS PAGEによって分析した。
【0870】
脱タグ化IL−33(BK349)を作成するため、N末端タグ付加His10/Avitag IL33−01を2×DPBS緩衝液中タンパク質1mg当たり10単位の第Xa因子(GE healthcare 27−0849−01)と共に室温で1時間インキュベートした。SECクロマトグラフィーを用いて、2×DPBS中S75カラム(GE healthcare 28−9893−33)で流量を1ml/分として脱タグ化IL33を精製した。
【0871】
表16に概要を示す他の試薬は実施例1に記載されるとおり作成した。
【0872】
【表32】
【0873】
タンパク質修飾
本明細書で使用されるIgG及び修飾受容体タンパク質は、実施例1に記載されるとおりEZ link スルホ−NHS−LC−ビオチン(Thermo/Pierce、21335)を使用して遊離アミンを介してビオチン化した。本明細書で使用されるIL−33タンパク質は、EZ link ビオチン−BMCC(Perbio/Pierce、製品番号21900)を使用して遊離システインを介してビオチン化した。
【0874】
IL−33はインビトロで急速に活性を失う
HUVECシグナル伝達アッセイ(30分)及びIL−6産生アッセイ(18〜24時間)でIL−33活性を計測した(これらの方法については、それぞれ実施例1及び2に記載される)。
【0875】
図17は、HUVECシグナル伝達アッセイ(30分)及びIL−6産生アッセイ(18〜24時間)で計測したヒトIL−33、システイン−ビオチン化IL−33又は細胞培養培地で前処理したIL−33の活性を示す。
図17Aは、NFkB又はIL−6アッセイによって計測したときのヒトIL−33活性(Adipogen)の比較を示す(x軸はモル濃度単位のヒトIL−33濃度であり、y軸はパーセント最大応答である)。IL−33は、短時間(30分)アッセイと比較して一晩では効力が有意に低かった。システイン残基によるヒトIL−33 Flag(登録商標)Hisビオチン化によっては、短時間アッセイ(30分)とより長時間のアッセイ(一晩)との間で活性は失われなかった(
図17B)。この現象を調べるため、IL−33(BK349)を細胞培養培地(EGM−2 SingleQuot Kit Suppl.& Growth Factors(Lonza、#CC−4176)含有EBM−2(Lonza、#CC−3156))で18時間前処理し、次にNFkBシグナル伝達を誘導する能力に関して未処理IL−33と比較した。培養培地で前処理したIL−33は、有意な活性喪失を呈した(
図17C)。
【0876】
IL−33のSDS−PAGE分析
IL−33タンパク質の潜在的変化を調べるため、PBS/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)又はイスコブ変法ダルベッコ培地(IMDM)処理したヒトIL−33(BK349又はヒトIL−33 Flag(登録商標)His)及びマウスIL−33 Flag(登録商標)Hisを還元又は非還元条件下でのSDS PAGE電気泳動法によって分析した。試料を1×NuPAGEゲルローディング緩衝液(Invitrogen)中に構成し、90℃で3分間変性させた。還元試料は2%β−メルカプトエタノールを含有した。製造者の指示に従いMOPS泳動緩衝液(Invitrogen)を含有するNuPAGE Novex12%ビス−トリスminiゲル(Invitrogen)で試料を泳動させた。還元試料と非還元試料とは別個のゲルで泳動させた。各レーンにつき500ngのIL−33をロードした。ゲルを振盪プラットフォーム上ddH20で3×5分間洗浄し、次にEzBlue(クマシーブリリアントブルーG−250ベースのゲル染色試薬、Sigma G1041)を使用して1時間染色した。ゲルをdH2Oで脱染し、Epsomスキャナを使用してスキャンした。
【0877】
図18は、イスコブ変法ダルベッコ培地(IMDM)による処理前又は処理後の還元又は非還元条件下におけるヒト又はマウスIL−33のSDS−PAGEを示す。非還元条件下においてのみ、IMDMによる処理後にIL−33の見かけの分子量の差が観察されたことから、ヒト及びマウスIL−33の両方について酸化還元関連修飾の存在が示唆される。
図18Aは、非還元条件下においてのみ観察された、IMDMによる処理後のヒトIL−33(BK349)の見かけの分子量の差を示す。
図18Bは、非還元条件下における非ビオチン化対ビオチン化ヒトIL−33 Flag(登録商標)Hisを示す。IL−33 Flag(登録商標)HisについてはIMDM処理後に見かけの分子量の差が観察されたが、システインビオチン化(biotnylated)IL−33 Flag(登録商標)Hisでは観察されなかった。
図18Cは、非還元条件下においてのみ観察された、IMDMによる処理後のマウスIL−33 Flag(登録商標)Hisの見かけの分子量の差を示す。
【0878】
質量分光分析及びジスルフィドマッピング
培地処理型のヒトIL−33を更なる分析のため精製した。ヒトIL−33(BK349)を60%IMDM培地と共に又はPBS中で300ug/mlの最終タンパク質濃度において37℃で18時間インキュベートした。18時間後、AKTAxpress FPLCシステム(GE healthcare)を使用した2×DPBS中S75 16:600 Superdexカラム(GE healthcare 28−9893−33)でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて培地処理IL33を培地成分から精製した。ピーク画分をSDS PAGEによって分析し、凝集していない純粋画分をプールして、LC−MSによって分析した。
【0879】
図19は、SECによるIMDM処理ヒトIL−33の精製を示す。単量体画分を更なる分析のため収集した。
【0880】
LC−MS
Synapt G1四重極飛行時間型(QToF)質量分析計(Waters、Milford,US)に結合したAcquity UPLCを用いて逆相(RP)LC−MS分析を実施した。10mMトリスHCl pH8に1mg/mlで希釈した1μgの精製タンパク質を、65℃に保った50mm×2.1mm、1.7μm粒径BEH300 C4分析カラム(Waters、Milford,US)に注入した。5分間のバイナリーグラジエントを用いて0.15mL/分の一定流量でタンパク質を溶出させた;溶媒Bは最初に5%から95%まで1分かけて増加し、2分かけて20%まで低下し、更に2分かけて5%に戻った。カラムを洗浄した後、続いて高い(95%)溶媒Bと低い(5%)溶媒Bとの間を5分間揺動させることにより注入した。溶媒A(水)及びB(アセトニトリル)に0.01%(v/v)トリフルオロ酢酸及び0.1%(v/v)ギ酸を補足した。500〜4500m/zの間でスペクトルを取得した。主要な装置パラメータには、+veイオン化モード、ソース電圧:3.4kV、試料コーン電圧:50V、ソース温度:140℃、脱溶媒和温度:400℃が含まれた。BioPharmaLynx(Waters、Milford,US)を使用して荷電状態エンベロープをデコンボリューションした。
【0881】
図20は、LC−MSによって決定したPBS処理対IMDM処理IL−33のインタクトな質量を示す。IMDM処理IL−33はPBS処理IL−33と比較して4Daの損失を呈し、これは2つのジスルフィド結合の形成と整合した。
【0882】
ジスルフィド結合マッピング
各試料につき50μgのタンパク質を、100mMリン酸ナトリウム、1mM N−エチルマレイミド、pH7.0緩衝液中3mg/mlで調製し、室温で20分間インキュベートした。乾燥試料を7MグアニジンHCl、100mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。変性タンパク質を0.3mg/mlに希釈し、37℃で2Mグアニジン(Guanadine)、100mMリン酸ナトリウム、0.1mM EDTA、pH7.0中1:50のE:S比でGlu−Cによって消化した。2時間後、Lys−Cの第2の等量のアリコートを加えた。更に2時間後、消化物を分けた;還元分析用に、消化物を50mMジチオスレイトールと共に室温で15分間インキュベートした。Synapt G2 QToF質量分析計(Waters、Milford,US)に結合したAcquity UPLCを使用して還元及び非還元試料をRP LC−MSによって分析した。各試料につき5ugのLys−C消化物を、55℃に保った150mm×2.1mm、1.7μm粒径BEH300 C18分析カラム(Waters、Milford,US)に注入した。75分間のバイナリーグラジエントを用いて0.2mL/分の一定流量でペプチドを溶出させた;溶媒Bは0%から35%まで増加した。カラムを洗浄した後、続いて高い(95%)溶媒Bと低い(5%)溶媒Bとの間を5分間揺動させることにより注入した。溶媒A(水)及びB(アセトニトリル)には0.02%(v/v)トリフルオロ酢酸を補足した。データ独立取得モードを使用して、50〜2000m/zの間でスペクトルを取得した。BioPharmaLynx(Waters、Milford,US)を使用して低エネルギー及び高エネルギースペクトルを処理した。
【0883】
図21は、IMDM処理ヒトIL−33のジスルフィドマッピングを示す。
図21Aは、DSB IL−33の非還元及び還元Lys−Cペプチドマッピング分析からの結合したデコンボリューション質量スペクトルを示す。
図21Bは、システイン含有ペプチドの隔離したスペクトルを示す。還元及び非還元試料にユニークなペプチドは、それぞれ緑色及び青色で強調表示する。データは、2つのジスルフィド架橋の形成と一致した。同定された1つの種は、それぞれシステインC208〜C249及びC227〜C232の間に架橋を有した。しかしながら、優勢なピークは解かれておらず、他の種が存在し得る。
図21Cは、ジスルフィド結合したIL−33の非還元及び還元Lys−Cペプチドマッピング分析によって同定されたジスルフィド結合ペプチドの配列を示す。ジスルフィド連結は2つのハイフン(−−)によって表す。Lys−Cの誤切断は角括弧によって表す。
【0884】
ジスルフィド結合IL−33のNMR分析
IL−33の既報告の構造に基づけば(Lingel,A.et al.Structure 17,1398−1410(2009);Liu,X.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110,14918−14923(2013))、システイン残基は大幅なコンホメーション変化なしにジスルフィド結合を起こすほど十分には近接していない。これを調べるため、NMR異核多重量子コヒーレンス(HMQC)分析を実施した。
【0885】
15N−IL−33タンパク質の作製
N末端6Hisタグ及びTEVプロテアーゼ切断部位を有する野生型IL−33(配列番号633)をコードするDNAを使用して、大腸菌(E.coli)BL21 Gold細胞を形質転換した。5g/Lの
15N−IsoGro(商標)粉末を補足したM9最少培地中において形質転換細胞を37℃で培養し、0.6〜0.8のOD600nmに達したところで100mM IPTGを添加することによりタンパク質発現を誘導した。培養を18℃で更に20時間継続した後、細胞を遠心によって回収し、−80℃で保存した。完全プロテアーゼ阻害薬錠(Roche、11697498001)、2.5U/ml Benzonaseヌクレアーゼ(merck Millipore、70746−3)及び1mg/ml組換えリゾチームを含有する50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に細胞を再懸濁した。Constant Systems細胞破壊器を25kpsiで使用して再懸濁細胞を溶解し、4℃、75,000×gで2時間遠心することによって清澄化した。上清から、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中におけるニッケルアフィニティークロマトグラフィーによってIL−33を精製し、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に溶出させた。溶出したタンパク質をTEVプロテアーゼと共にインキュベートし、4℃で50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に透析した。50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中におけるニッケルアフィニティークロマトグラフィーによって脱タグ化タンパク質を非切断IL−33と分離した。AKTAxpress FPLCシステム(GE healthcare)を使用して、20mMリン酸ナトリウム pH6.5、100mM NaCl、5mM βメルカプトエタノール中におけるHiLoad 16/60 Superdex 75カラム(GE healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによってIL−33を更に精製した。ピーク画分をSDS PAGEによって分析した。
【0886】
純粋IL−33を含有する画分をプールし、Nanodrop A280測定によって濃度を計測した。Amicon 10,000分子量カットオフスピンコンセントレータを使用して、タンパク質をNMR分析用に9.5mg/mlの最終濃度となるように濃縮した。
【0887】
PBS pH7.4中の精製
15N標識タンパク質を60%IMDM培地と共に0.28mg/mlの最終タンパク質濃度において37℃で18時間インキュベートした。18時間後、Amicon 10,000分子量カットオフスピンコンセントレータを使用して、タンパク質を0.8mg/mlの濃度となるように濃縮した。次に、PBS pH7.4中HiLoad 16/60 Superdex 75を使用して、タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。ピーク画分をSDS PAGEによって分析し、凝集していない純粋画分をプールした。最後にAmicon 10,000分子量カットオフスピンコンセントレータを使用して、タンパク質をNMR分析用に1.8mg/mlの濃度(100μM)となるように濃縮した。
【0888】
NMR分析
NMRスペクトルは、Z軸グラジエントの5mm TCI Cryoprobeを備えたTopspin 2.3を実行するBruker Avance 600MHz分光計において298Kで記録した。5%重水を添加することにより試料のロックを可能にした上で、記載のとおり
15N標識IL33 WT試料を調製した。sofast HMQCパルスシーケンスを用いて(Schanda,P;Brutscher,B;Very fast two−dimensional NMR spectroscopy for real−time investigation of dynamic events in proteins on the time scale of seconds,J.Am.Chem.Soc.(2005)127,8014−5)、(F2×F1)1024×64複合ポイント(states−TPPIモード)、9615×1460Hz掃引幅、53.4ms×43.8ms取得時間として例示的な
1H−
15N相関スペクトルを取得した。
【0889】
図22Aは、IMDM処理WT IL33のSDS PAGE分析を示す。NMRのための濃縮前及び濃縮後の還元及び非還元IMDM処理WT IL33を示すSDS PAGE。
【0890】
図22Bは、WT IL33のNMR分析を示す。IMDM培地処理前及び処理後の0.1mM
15N標識IL33 WTの
1H−
15N HMQCスペクトルのオーバーレイを、それぞれ黒色及び赤色でプロットしている。2つのスペクトルの比較は、IMDM処理後の、全く異なる、秩序の低い構造を示している。
【0891】
円偏光二色性(CD)分光法
コンホメーション変化を確認して更に調べるため、円偏光二色性(CD)分光分析を実施した。Jasco−815機器(Easton、Maryland)で遠紫外及び近紫外CD分析を実施した。遠紫外CDについては、緩衝溶液10mMリン酸塩pH=6.9中20℃で、redIL−33及びDSB IL−33についてそれぞれ0.14mg/mL及び0.12mg/mLの試料濃度で1mmパスレングスキュベットにおいて波長範囲180〜260nmにわたりスペクトルを記録した。近紫外CDについては、緩衝溶液DPBS中20℃で、redIL−33及びDSB IL−33についてそれぞれ1.38mg/mL及び0.89mg/mLの試料濃度で10mmパスレングスキュベットにおいて波長範囲260〜350nmにわたりスペクトルを記録した。緩衝溶液のCDスペクトルを記録し、全試料スペクトルから差し引いて装置、キュベット及びベースライン効果を補正した。CD Proソフトウェアを用いてスペクトルを二次構造要素にデコンボリューションした。
【0892】
図22C:近紫外円偏光二色性(CD)分光法。波長範囲260〜350nmにわたりスペクトルを記録した。最終的なスペクトルは4つのスキャンの平均とした。芳香族アミノ酸及びジスルフィド吸収バンドは、Kelly(Kelly S.M.et al.How to study proteins by Circular Dichroism.Biochimica et Biophysica Acta,1751,119−139(2005))を出典とした。Trp吸収前後の楕円率に観察される差は、単独トリプトファン(W193)の環境の変化と一致し、還元IL−33とDSB IL−33との間のこの領域における三次構造の変化を実証する。260nm前後の強度の差は、ジスルフィド結合形成からの追加的な発色団の導入と一致する。
図22D:IL−33の主要な特徴。解かれたIL−33構造(Lingel 2009)内にTrp193、システイン、及びST2結合部位(Liu,X.et al.Structural insights into the interaction of IL−33 with its receptors.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110,14918−14923(2013))を示す。
【0893】
図22E:遠紫外円偏光二色性(CD)分光法。波長範囲190〜260nmにわたってスペクトルを記録した。最終的なスペクトルは8つのスキャンの平均とした。遠紫外スペクトルは、これまでにこのタンパク質ファミリーで見られているとおり、主にβ−シート二次構造と一致する(Chang B.S.et al,Formation of an active dimer during storage of interleukin−1 receptor antagonist in aqueous solution.Biophysical Journal.71,3399−3406(1996);Craig S.et al.Conformation,Stability and folding of Interleukin1β.Biochemistry.26,3570−3576(1987);Hailey K.L.et al.Pro−interleukin(IL)−1β shares a core region of stability as compared with mature IL−1β while maintaining a distinctly different configurational landscape.J.Biol.Chem.284.26137−26148(2009);Hazudat D.et al.Purification and characterisation of Human Recombinant Precursor Interleukin 1β.J.Biol.Chem.264,1689−1693(1989);Meyers C.A.et al,Purification and characterization of Human recombinant interleukin−1β.J.Biol.Chem.262,11176−11181(1987))。スペクトルが有意に異なることから、還元IL−33と比べたDSB IL−33の二次構造の変化が示される。
【0894】
CDスペクトルから、IL−33型間での有意なコンフォメーション変化(conformatonal change)が示された。redIL−33スペクトルは既発表のデータと一致した。DSB−IL−33スペクトルは、還元型と異なる構造化タンパク質と一致した。還元IL−33とDSB−IL−33との間で最も変わり得る範囲をマッピングするため、本発明者らは水素/重水素交換質量分析法を実施した。
【0895】
水素/重水素交換質量分析法(HDX−MS)
タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4に3.5uMに希釈した。このストックを用いて、重水素化(10mMリン酸ナトリウム、pD6.6)水性溶媒で10倍希釈することにより標識実験を開始した。質量スペクトルからの種をIL33由来の消化性ペプチド配列に割り当てるため、最初のマッピング実験を行った。これは、概して記載されるとおり行った
21。簡潔に言えば、プロトン化希釈タンパク質をクエンチ溶液(100mMリン酸カリウム、pH2.55、0.1M TCEP、1℃)と1:1混合し、最終的な混合物のpHを2.55とした。クエンチしたタンパク質を、固定化ペプシンカラム(2.0×30mm;Poroszyme、Life Technologies)、C18捕捉カラム(VanGuard ACQUITY BEH 2.1×5mm;Waters)及び分析用C18カラム(1.0×100mm ACQUITY BEH;Waters)を有するWaters HDX Managerに注入した。移動相はH2O中0.1%ギ酸(A)及びACN中0.1%ギ酸(B)であり、これらのpHが2.55となるようにした。タンパク質を100μL/分緩衝液Aでペプシン及び捕捉カラムに適用し、3〜40%Bの線形グラジエントにおいて40μL/分で分析カラムから溶出させた。Protein Lynx Global Server(Waters)3.0.2及びDynamX 3.0(Waters)でMSE断片データからペプチド配列を割り当てた。シーケンシングの際と同様に標識データを取得し、但し質量分析計はMSスキャンのみに設定した。DynamX及びMatLab(Mathworks)でペプチドレベルデータを分析した。
図23は、還元IL−33及びDSB IL−33の水素交換質量分光(HX−MS)分析を示す。
図23A 還元IL−33(左側のパネル)及びDSB IL−33(右側のパネル)における機能的水素交換(重水素との)の比較。いずれの場合にも比較目的のため、既発表のIL−33構造
(lingel 2009)にデータをマッピングする。データHX−MSデータを得ることができなかった配列カバレージのギャップを灰青色で強調表示する。システイン残基の側鎖をスティックとして表示する。
図23Bは、ST2結合部位(赤色及びマゼンタ)と重ね合わせた差次的HX−MSデータの構造モデルを示す
(Liu 2013)。濃青色は、還元IL−33と比較してDSB IL−33で水素交換が増加した領域を示す。ST2結合部位1は、H/D交換の差が最も大きい範囲内にあり、構造が変わっている可能性が高い。
【0896】
ST2に対する還元IL−33対DSB IL−33の結合(BIAcore)
ジスルフィド結合したIL−33は、恐らくST2が結合する還元IL−33型と極めて異なる構造であるものと思われ(
図22、
図23)、ジスルフィド結合型への変換は機能活性の喪失と関連付けられた(
図17C)。これを調べるため、ST2に結合する能力に関して、ジスルフィド結合型のIL−33をBIAcore分析によって試験した。ST2の細胞外ドメインに対するIL−33の直接の結合を、BIAcore 2000(GE healthcare)を使用した表面プラズモン共鳴によって決定した。抗ヒトFc捕捉(GE healthcare BR−1003−39)を用いてST2をFcタグを介してCM5センサーチップ(GE healthcare BR−1003−99)上に固定化することにより、約150RUの安定表面を得た。IL−33を表面に30ul/分で3分間流して会合速度を決定した。解離は、緩衝液を30ul/分で15分間流すことにより計測した。センサーグラムはBIAevaluationソフトウェアを用いて解釈し、反応速度は、1:1(ラングミュア)結合モデルを使用するダブルリファレンス差し引きセンサーグラムを用いて決定した。
【0897】
図24Aは、redIL−33のST2への結合を示す。0.2nMのKDを与える7.8nM〜0.24nMのセンサーグラムを示す。
【0898】
図24Bは、ジスルフィド結合IL−33(IL33−DSB)のST2への結合を示す。500nM〜0.24nMのセンサーグラムを示し、ここで明らかな結合は認められない。
【0899】
ST2結合及び活性の喪失から、本発明者らは、酸化が、IL−33活性を終結させてインビボでのST2依存性免疫応答の持続期間を制限する機構であり得ると仮定するに至った。
【0900】
IL−33型の検出
ジスルフィド結合型のIL−33が実に生体内に存在することを確かめるため、本発明者らは3つの異なる市販のIL−33検出アッセイ(2つのヒトIL−33及び1つのマウスIL−33)を用いた。ヒト及びマウスIL−33 Duoset ELISA(RnD Systems)をMSDフォーマット(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)に変換した。捕捉抗体のコーティング濃度は以下のとおりであった:抗マウスIL−33 pAb 37.5ug/ml;抗ヒトIL−33 pAb 18ug/mL。捕捉抗体を0.03%Triton X−100含有PBS中に希釈し、5μlを標準的な結合プレート(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)の各ウェルの中心にスポットコーティングし、室温で一晩放置して乾燥させた。プレートをPBS−Tweenで3回洗浄し、プレートを密封して振盪しながら(450rpm)室温で30分間インキュベートすることにより、25μlアッセイ希釈剤でブロックした。アッセイ希釈剤に希釈した25μlの試料又は校正物質をブロックしたアッセイプレートに移し、これを振盪しながら(450rpm)室温で2時間インキュベートした。プレートをPBS−Tween及び25μlの検出試薬(両方ともに抗体希釈剤中1μg/mlに希釈した検出抗体+ストレプトアビジンSulfoTag)で3回洗浄した。プレートを密封して振盪しながら室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tweenで3回洗浄した。蒸留水中に2倍希釈した150μlのRead Buffer Tを加えた。15分以内にプレートを読み取った(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)。
【0901】
MilliporeヒトIL−33アッセイ(カタログ番号HTH17MAG−14K ロット2159117)を製造者の指示に従い実施した。簡潔に言えば、IL−33標準及び試料をアッセイ緩衝液に希釈し、ビーズと共に遮光下で振盪しながら(500rpm)室温で1時間インキュベートした。ウェルの内容物を取り出し、200uLの洗浄緩衝液で2回洗浄した。ウェル当たり25uLの検出抗体を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。25uLストレプトアビジン−PEを加え(洗浄無し)、プレートを振盪しながら(850rpm)且つ遮光下で更に30分間インキュベートした。ウェルの内容物を取り出し、200uLの洗浄緩衝液で2回洗浄した。試料を125uLアッセイ緩衝液に再懸濁し、被覆し、850rpmで30秒間振盪した。試料をBio−Plex 200(BioRad)で分析した。プレートは、低RP1で、50ビーズ/領域(領域44)をカウントして、ダブレット検出ゲートを5000(低)及び25000(高)に設定して読み取った。
【0902】
図25は、還元IL−33型及びジスルフィド結合IL−33型を検出するための3つの市販のIL−33 ELISAアッセイの分析を示す。還元型及びジスルフィド結合型の両方についてST2がアッセイシグナルへの干渉に及ぼす効果もまた示される。
図25A及び
図25Bは、2つの市販のヒトIL−33アッセイが主にジスルフィド結合型のIL−33(IL33−DSB)を検出することを示しており、これが、これまでに他の研究者らによってヒトエキソビボ試料で計測されてきた主要な種であることが示唆される。「還元」IL−33アッセイシグナルはsST2を加えることにより消失し得るが、酸化/ジスルフィド結合IL−33アッセイシグナルは消失しない。
図25Cは、還元型及び酸化型の両方のマウスIL−33を検出するマウスIL−33アッセイを示す。「還元」IL−33アッセイシグナルはsST2を加えることにより消失し得るが、酸化IL−33アッセイシグナルは消失しない。
【0903】
本発明者らは、還元ST2活性型のヒトIL−33に特異的な市販のアッセイを特定することができなかったため、独自の新規アッセイを開発した。IL330425 mAb(配列番号62及び67)又はIL330004 mAb(配列番号12及び17)を捕捉抗体として使用した。捕捉されたIL−33は、それぞれビオチン化sST2.Fc(R&D systems)又はビオチン化IL330425(配列番号62及び67)で検出した。捕捉抗体を0.03%Triton X−100含有PBS中150ug/mLに希釈し、5μlを標準的な結合プレート(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)の各ウェルの中心にスポットコーティングし、室温で一晩放置して乾燥させた。プレートをPBS−Tweenで3回洗浄し、プレートを密封して振盪しながら(450rpm)室温で30分間インキュベートすることにより、25μlアッセイ希釈剤でブロックした。ブロックしたアッセイプレートに、アッセイ希釈剤に希釈した25μlの試料又は校正物質を移し、これを振盪しながら(450rpm)室温で2時間インキュベートした。プレートをPBS−Tween及び25μlの検出試薬(両方ともに抗体希釈剤中1μg/mlに希釈した検出抗体+ストレプトアビジンSulfoTag)で3回洗浄した。プレートを密封して振盪しながら室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tweenで3回洗浄した。蒸留水中に2倍希釈した150μlのRead Buffer Tを加えた。15分以内にプレートを読み取った(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)。
【0904】
図26A、
図26Bは、還元IL−33の検出に特異的なELISAアッセイを示す。ジスルフィド結合型の検出は観察されない。
【0905】
ジスルフィド結合型のIL−33への変換の時間経過
上記に記載したとおりの異なるIL−33型を検出するアッセイを用いて、redIL−33からそのジスルフィド結合型への変換の時間経過をモニタした。10ug/mLの脱タグ化redIL−33を、100%ヒト血清、PBS/1%BSA又はIMDM/1%BSA中37℃でインキュベートした。時点t=0、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び24時間で10ulアリコートを取り出して90ul PBS/1%BSA(1対10希釈で1ug/mlとした)に加え、これを3×30ulアリコートに分割し、ドライアイスでスナップ凍結した後、−80℃で保存した。t=0で、凍結/融解サイクルの対照としての試料もまた、ELISA分析の直前に新鮮調製した。ヒトMSD(R&D Systems)及び上記に記載したIL33004/IL330425−ビオチンアッセイを用いて試料を分析して、それぞれジスルフィド結合IL−33及び還元IL−33を計測した。まとめると、これらのアッセイにより、IL−33の還元型からジスルフィド結合型への変換をモニタすることが可能であった。
【0906】
ELISAの結果を確認するため、時間経過試料中のIL−33をウエスタンブロットによって分析した。試料を還元又は非還元条件下でSDS−PAGEに供した。試料を1×NuPAGEゲルローディング緩衝液(Invitrogen)中に構成し、90℃で3分間変性させた。還元試料は2%β−メルカプトエタノールを含有した。製造者の指示に従いMOPS泳動緩衝液(Invitrogen)を含むNuPAGE Novex 12%ビス−トリスminiゲル(Invitrogen)で試料を泳動させた。還元試料と非還元試料とは別個のゲルで泳動させた。各レーンにつき100pgのIL−33をロードした。タンパク質をニトロセルロース膜(Invitrogen カタログ番号IB3010−02)に転写し、抗IL−33 pAb(R&D systems)によるウエスタンブロッティングによって検出した。
【0907】
図27は、IMDM又はヒト血清中でインキュベートしたヒトIL−33の時間経過を示す。
図27A:IL−33 ELISA(IL33004/IL330425−ビオチン及びヒト R&D systems MSDアッセイ)を用いてそれぞれ還元IL−33及びジスルフィド結合IL−33を検出した。
図27B:ウエスタンブロット分析を用いて還元IL−33型及びジスルフィド結合IL−33型を検出した。ジスルフィド結合型のIL−33への変換は急速に起こり、1〜2時間で50%の変換であった。ELISA及びウエスタンブロット分析の両方で、還元IL−33の消失は酸化IL−33の出現と良好に相関した。
【0908】
ヒト化IL−33トランスジェニックマウスの作成
内因性IL−33の挙動及びライフサイクルを研究するため、本発明者らは、マウスIL−33の遺伝子をヒトIL−33遺伝子に置き換えたトランスジェニックマウスを使用した。ヒト化IL−33トランスジェニックマウスは以下に記載するとおり作成した。簡潔に言えば、マウスゲノム断片(C57BL/6J RPCIB−731 BACライブラリから入手した)、ヒトゲノム断片(ヒトRPCIB−753 BACライブラリから入手した)及び選択された特徴(組換え部位及び選択マーカーなど)を組み合わせてターゲティング用ベクターを作製した(データは示さず)。
【0909】
ターゲティング用ベクターをBstBIで線状化し、TaconicArtemis Balb/cJ ES細胞株(Balb/c.2)に電気穿孔処理し、ピューロマイシン(ポジティブ選択)及びガンシクロビル(ネガティブ選択)でES細胞クローンを選択した。次に、得られたピューロマイシン耐性ES細胞クローンをPCRとサザン解析との組み合わせによってスクリーニングし、正しく標的化されるESクローンを同定した。これらを拡大して液体窒素中に凍結した。
【0910】
ホルモンの投与後、過排卵処理したC57BL/6雌をC57BL/6雄と交配させた。dpc3.5で子宮から胚盤胞を摘出した。マイクロインジェクションのため、鉱油下の少量の15%FCS含有DMEM中に胚盤胞を置いた。内径12〜15マイクロメートルのフラットチップ圧電駆動マイクロインジェクションピペットを使用して、10〜15個の標的BALB/c ES細胞を各胚盤胞に注入した。回復後、注入した8個の胚盤胞を交尾後2.5日の偽妊娠NMRI雌の各子宮角に移植した。キメラ(G0)において、C57BL/6宿主に対するES細胞の毛色の寄与(白色/黒色)によってキメラ現象を計測した。高度なキメラのマウスを繁殖させて、Flpリコンビナーゼ遺伝子の存在に関する系統BALB/cJBomTac雌突然変異体(Flp−Deleter系統)とした。毛色による生殖系列伝達は、白色の存在、系統BALB/c、子孫(G1)によって同定した。実際の生殖系列伝達は、標的対立遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCR遺伝子タイピングによって確認した(データは示さず)。
【0911】
生体内における酸化還元型のIL−33の存在
マウスにおけるアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)誘発性気道炎症モデルについては、以前記載されている(Kouzaki et al.J.Immunol.2011,186:4375−4387;Bartemes et al J Immunol,2012,188:1503−1513)。雄又は雌野生型又はヒト化IL−33マウス(6〜10週齢)をイソフルラン(isofluorane)で短時間麻酔し、25μgのアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(ALT)抽出物(Greer、Lenoir,NC)又は媒体のいずれかを50μlの総容積(total volue)で鼻腔内投与した。ALT攻撃後複数の時点で、マウスをペントバルビタールナトリウムによって麻酔死させた後、気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。気管カニューレによる洗浄(0.3ml、0.3ml及び0.4ml)によって気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。BALFを遠心し、酸化還元型のIL−33の存在に関して上記に記載したアッセイを用いて上清を分析した。全ての作業は、適切なプロジェクトライセンス権限下で英国内務省(UK Home Office)倫理及び飼育管理基準に則り行った。
【0912】
図28は、複数のELISAアッセイの組み合わせを用いた、ALT鼻腔内攻撃後種々の時点で採取したヒト化IL−33マウスからのBALFの分析を示す。(A)Millipore、(B)R&D systems及び(C)IL330425/sST2−ビオチンアッセイを用いてsST2の存在下又は非存在下におけるIL−33を計測した(左側のグラフ)。sST2の存在下におけるシグナル(還元IL−33部分が除かれたシグナル)をジスルフィド結合IL−33標準と比較して、ジスルフィド結合IL−33のレベルを定量化した。還元IL−33シグナルは、還元IL−33標準に対して定量化した、ST2の存在下と非存在下とにおけるIL−33計測間のシグナルの差として計算した。右側のグラフに還元IL−33の推定を示す。全てのアッセイが、放出されたIL−33が主にその還元型であり、5〜30分の間に最大値をとり、続いて急速に低下して120分までに検出不能となったことを示している。逆に、IL−33−DSBは時間0から徐々に増加し、30〜120分でピークとなり、24時間までに消失した。これらのデータは、IL−33が還元型で放出され、次に生体内で急速に酸化されてIL33−DSBになるモデルと一致する。
【0913】
図29は、ALT鼻腔内攻撃後種々の時点で採取した野生型BALB/cマウスからのBALFの分析を示す。
図29A マウスIL−33 ELISA(R&D systems)を使用して、sST2の存在下又は非存在下におけるIL−33を計測した(培地処理したマウスIL−33を標準曲線として使用した)。
図29B sST2の存在下におけるシグナル(還元IL−33部分が除かれたシグナル)を培地処理したマウスIL−33標準と比較して酸化IL−33のレベルを定量化した。還元IL−33シグナルは、還元マウスIL−33標準に対して定量化した、ST2の存在下と非存在下とにおけるIL−33計測間のシグナルの差として計算した。データは、放出されたIL−33が主にその還元型であり、15分でピークとなり、続いて急速に低下して120分までに検出不能となったことを示している。逆に、IL−33−DSBは時間0から徐々に増加し、45〜60分でピークとなり、24時間までに消失した。これらのデータは、IL−33が還元型で放出され、次に生体内で急速に酸化されてIL33−DSBになるモデルと一致する。
【0914】
実施例5 抗IL−33抗体の特徴付け
H338L293はコンホメーション変化を引き起こす
モノクローナル抗体H338L293(配列番号182及び187)(その作成については実施例2及び3に記載される)は、IL−33のアロステリックな調節因子である。IL−33はコンホメーションがジスルフィド結合型に有意に変化し得る(実施例4に記載されるとおり)。以下の実験は、H338L293 mAbがIL−33分子を不安定化させて、そのアンフォールディングを促進し且つジスルフィド結合型への変換を加速させるように思われることを実証している。本明細書で使用される試薬及びタンパク質修飾は、前出の例に記載されるとおりであった。
【0915】
Syproオレンジアッセイ
Syproオレンジは疎水性表面に非特異的に結合し、水がSyproオレンジの蛍光を強力にクエンチする。タンパク質がアンフォールドされると、露出した疎水性表面が染料に結合し、蛍光の増加がもたらされる。5uMの抗体を、1×DPBS中の5000倍のストック(Life technologies S−6650)から希釈した8×SYPROオレンジ染料の存在下、20uM redIL−33と共に25℃でインキュベートした。Chromo4リアルタイム検出器(Bio−rad)を使用して蛍光(励起490nm及び発光575nm)を毎分計測した。本発明者らは、redIL−33をH338L293抗体と共にインキュベートすると、タンパク質アンフォールディングの指標である蛍光シグナルの増加があったが、redIL−33又は抗体単独ではこの増加はなかったことを観察した。
【0916】
図30Aは、8×SYPROオレンジ染料の存在下25℃で5uM抗体を20uM redIL33と共にインキュベートして100分後の時点における相対蛍光単位を示す。redIL−33の存在下、H338L293によってはタンパク質アンフォールディングの指標である蛍光シグナルが増加したが、IL330004又は対照mAbでは増加しなかった。
【0917】
図30Bは、8×SYPROオレンジ染料の存在下25℃で種々の濃度のH338L293を20uM redIL33と共にインキュベートした後の経時的な相対蛍光単位を示す。抗体濃度の増加に伴い蛍光シグナルが増加した。
【0918】
SDS−PAGE電気泳動法
H338L293がIL−33のジスルフィド結合に影響を及ぼし得るかどうかを決定するため、H338L293の存在下で還元及び非還元SDS−PAGE分析を比較することによりIL−33をモニタした。1.5mg/ml H338L293 mAbを含有するか、NIP228 mAbを含有するか、又はmAbを添加しないかのいずれかであるPBS/0.1%BSA中で100ug/ml組換えヒトIL−33
112〜270(BK349)をインキュベートした。試料を標準的な組織培養インキュベーターにおいて37℃で20時間インキュベートした。1ugのIL−33を含有する試料を、還元及び非還元条件下でNovex12%ビス−トリスmini NuPAGEゲル(Invitrogen)におけるSDS−PAGEによって分析した。SDS−PAGEゲルをddH20で3×5分間洗浄した後、EzBlue(Sigma G1041、クマシーブリリアントブルーG−250ベースのタンパク質染料)で1時間インキュベートし、ゲルのバックグラウンドがなくなるまでddH20で脱染した。全てのゲル染色工程は、揺動プラットフォーム上室温で実施した。Epsomデジタルスキャナを使用してゲルを可視化した。
【0919】
図30Cは、IL−33のSDS−PAGE分析を示す。IL−33をH338L293とプレインキュベートすると、非還元条件下でより速く移動するジスルフィド結合型のIL−33の存在が増加したが、対照mAb又はmAb無しでは増加しなかった。
【0920】
IgGによるHuvecのNFkBシグナル伝達の阻害
実施例1に記載されるとおり免疫蛍光染色によって検出されるp65/RelA NFkBサブユニットの核転座により、IL−33に応答したヒト臍帯静脈内皮細胞のNFkBシグナル伝達を評価した。複数の濃度の試験抗体H338L293の存在下、種々のIL−33濃度で30分又は6時間のいずれかにわたって細胞を刺激した。
【0921】
図31は、H338L293がHUVECのIL−33刺激NFkB転座に及ぼす効果を示す。これらの結果は、これまでに見られたとおり、H338L293が、IL−33刺激を受けたHuvecの刺激30分後のp65/RelA NFkBの核転座を阻害しなかったことを示している。しかしながら、6時間後に阻害が見られる。この結果は、H338L293がIL−33のST2への結合を直接は阻害できないが、しかし数時間以内にIL−33を非ST2結合型に変換させる能力を有することと一致している。
【0922】
精製IgGによるIL−33のST2への結合の阻害
H338L293がST2受容体に対するFLAG(登録商標)Hisタグ付加IL−33の結合を阻害する能力を、実施例1に記載されるとおり生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。2つの条件を試験した。第一に、正確に実施例1にあるとおり、抗体とIL−33とをアッセイに同時に加えた。以前と同じく、精製IgG調製物は試験濃度でIL−33:ST2相互作用を阻害できなかった。第二に、H338L293をIL−33FLAG(登録商標)Hisと18時間プレインキュベートした後にアッセイに加えた。この場合、IL−33:ST2結合の濃度依存的阻害が観察された。まとめると、これらのデータは、H338L293が時間の経過に伴いIL−33を非ST2結合型に変換することと一致する。
【0923】
図32は、ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度のH338L293による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。これらの結果は、H338L293がリガンドと長時間プレインキュベートした後にのみIL−33のST2への結合を阻害することを示している。
【0924】
エピトープマッピング
IL−33のH338L293 IgGとの結合様式を明らかにするため、このIgGのエピトープマッピングを試みた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験を実施することにより、IL−33:IgG複合体の形成を観察した。BioSep−SES−S 2000カラム(300×7.4mm、s/n 550331−4)をAgilent HP1100 HPLCにおいて0.5mL min
−1でダルベッコPBSによって平衡化した。ピークはダイオードアレイ検出器(DAD)からの280nmシグナルを用いて検出した。これらの研究により、抗体−抗原複合体の形成がかなり遅く、少なくとも数時間かかったことが確認された。完全な複合体形成に十分な時間を与えた後、予め形成されたIL−33:IgG複合体にトリプシンを加え、続いてSEC分析を行った。36分間のトリプシン消化により、主ピークの保持時間が14.1分(未処理複合体のピーク溶出時間(13.6分)とインタクトなH338L292 IgG溶出(14.4分)との中間)に増加した。次に質量分光分析法を用いて最小H338L293 IgGエピトープを同定した。Shimadzu MALDI−TOF MSによって観察された、捕捉された14.1分ピークからの質量は、3,209及び4,485.3Daであった。ABI4800 MALDI−TOF MSによって観察された質量は、高強度で3,208.9Daピークであり、4,486.4Daの副ピークもまた存在した。観察された3206〜3208Daの前駆イオン質量及び3,206Da前駆イオンのABI4800 MS/MSフラグメンテーション解析は、予想されたトリプシンIL−33断片MLMVTLSPTKDFWLHANNKEHSVELHKに合致した。これは、以下に示すとおりのrヒトIL−33−Flag His10(配列番号627)の全一次配列の範囲内にある:−
【化7】
【0925】
次に同定されたペプチドを、トランケート変異体(LSPTKDFWLHANNKEHSVELHK)及び両方のスクランブル変異体と共に化学的に合成し、確証的T100 Biacore(GE Healthcare)結合研究に使用した。製造者の指示に従い標準的なアミンカップリング試薬を使用してプロテインG’(Sigma Aldrich、P4689)をCM5センサーチップ(GE Healthcare)の表面に共有結合的にカップリングした。このプロテインG’表面を用いてFcドメインでH338L293又はST2−Fcを捕捉することにより、サイクル当たり約290RUの面密度を得た。HBS−EP+緩衝液中に調製した様々な濃度のIL33ペプチドをセンサーチップ表面に流した。各抗体注入の間にpH1.7及びpH1.5の2回の10mMグリシン洗浄を用いて表面を再生させた。得られたセンサーグラムをBiacore T100評価ソフトウェア2.0.3(GE Healthcare)を用いて評価し、1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングして相対結合データを得た。
【0926】
完全長合成エピトープペプチドはH338L293 IgGに強く結合したが、IL−33受容体(ST2−Fc)には結合しなかった。完全長及びトランケート合成ペプチドは両方ともにH338L293に強く結合したが、完全長及びトランケートのスクランブル変種は結合しなかった。これは、ペプチドの切り出しによって同定されたIL−33断片がアーチファクトでなく、H338L293エピトープのコアに相当することの強力なエビデンスである。0.625〜20nMのトランケートペプチドをH338L293 IgGに流して親和性を推定した。高品質1:1フィットが得られ、K
D値は2.36nMと求まった。
【0927】
図33は、H338L293のエピトープマッピングを示す。上側のパネルは、トリプシンによる消化前及び消化後のH338L293とのIL33:IgG複合体のSEC分析を示す。下側のパネルは、Lingel et al 2009によって記載されるIL−33構造内で黒色に色付けしたH338L293に強く結合すると決定されたトランケートペプチドを示す。
【0928】
実施例6 Cys→Ser IL−33突然変異体
ジスルフィド結合型への変換におけるヒトIL−33の4つの遊離システインの役割を理解するため、本発明者らは、可能な全てのCysからSerへの突然変異体の完全なパネルを作成した。これらの突然変異体IL−33分子のほとんどが、野生型IL−33と比較して同程度のST2を介した初期活性を示した。培地中でインキュベートした後、突然変異体は、2つのジスルフィド結合の形成能を欠いていることと一致して、より速いゲル移動を呈しなかった。しかしながら、培地処理後の効力の喪失は突然変異体間で様々であった。
【0929】
IL−33システインからセリンへの突然変異体パネルの作成
ヒトIL−33(112〜270);受託番号(Swiss−Prot)O95760の成熟成分、及びあらゆる組み合わせ(合計15)で1、2、3又は4つのシステイン残基をセリンに突然変異させた一連の変異体をコードするcDNA分子をプライマー伸長PCRによって合成し、pJexpress404(DNA2.0)にクローニングした。野生型(WT)及び突然変異体IL−33コード配列は、タンパク質のN末端に10xhis、Avitag、及び第Xa因子プロテアーゼ切断部位(MHHHHHHHHHHAAGLNDIFEAQKIEWHEAAIEGR)を含有するように修飾した。
【0930】
IL−33突然変異体をコードするDNAを使用して大腸菌(E.coli)BL21 Gold細胞を形質転換した。形質転換細胞を0.3〜0.5のOD600nmに達するまで37℃で培養した。次に培養物を18℃で成長させて、0.6〜0.8のOD600nmに達したところで100mM IPTGを添加することによりタンパク質発現を誘導した。培養を18℃で更に20時間継続した後、細胞を遠心によって回収し、−80℃で保存した。
【0931】
完全プロテアーゼ阻害薬錠(Roche、11697498001)、2.5u/ml Benzonaseヌクレアーゼ(merck Millipore、70746−3)及び1mg/ml組換えリゾチームを含有する50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に細胞を再懸濁した。Constant Systems細胞破壊器を25kpsiで使用して再懸濁細胞を溶解し、4℃、75,000×gで2時間遠心することによって清澄化した。上清から、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中におけるニッケルアフィニティークロマトグラフィーによってIL33を精製し、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に溶出させた。リン酸緩衝生理食塩水pH7.4中Superdex 75 10/300 GLカラム(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによってIL33を更に精製した。ピーク画分をSDS PAGEによって分析した。純粋IL33を含有する画分をプールし、Nanodrop A280測定によって濃度を計測した。最終試料をSDS PAGE及びインタクトな質量分析法によって分析した。タンパク質は液体窒素中にスナップ凍結した。
【0932】
【表33】
【0933】
IL−33 Cys→Ser突然変異体の活性
タンパク質の完全性を確認するため、ST2依存シグナル伝達アッセイで未処理野生型IL−33(IL33−01)及びIL−33突然変異体の活性を計測した。IL−33に応答したヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvecs)のNFκBシグナル伝達を、実施例1に記載されるとおり免疫蛍光染色によって検出されるp65/RelA NFkBサブユニットの核転座によって評価した。細胞培養培地処理後の活性の喪失を調べるため、IL−33タンパク質01〜16をイスコブ変法ダルベッコ培地(IMDM)で一晩インキュベートし、未処理タンパク質との比較で評価した。
【0934】
【表34】
【0935】
図34は、IMDMで18時間処理する前及び処理した後のIL−33突然変異体の活性を示す。培養培地で前処理した野生型IL−33(IL33−01)は検出可能な活性を完全に失った。全ての突然変異体がWTよりも少ない効力喪失を呈した。一部の突然変異体は効力喪失から完全に保護された。
【0936】
ヒトマスト細胞サイトカイン放出
インビトロで突然変異体の効力が下流応答を長時間刺激すると高くなるかどうかを見るため、一晩マスト細胞IL−6産生アッセイを用いてヒトIL−33野生型及び選択された突然変異体の活性を計測した。アッセイ方法は実施例2に記載される。データはIL33−11によって例示する。
【0937】
図35Aは、IL33−11がヒトマスト細胞IL−6産生の刺激時にIL−33 WTよりも高い効力を有することを示している。IL33−01(WT)及び前処理しないIL33−11を用いて様々な濃度でヒト臍帯血由来マスト細胞からのIL−6産生を刺激した(x軸はモル濃度単位のIL−33濃度であり、y軸は18時間後の上清中に検出されたIL−6のレベルである)。
【0938】
突然変異体IL−33のインビボ効力
雌BALB/cマウス(6〜8週齢)をイソフルラン(isofluorane)で短時間麻酔し、0.1〜10ugの野生型ヒトIL−33(IL33−01、配列番号632)、IL33−11(配列番号643)又は媒体のいずれかを50μlの総容積で鼻腔内投与した。攻撃の24時間後、マウスをペントバルビタールナトリウムによって麻酔死させた後、気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。BALFを回収し、実施例4に記載されるとおり分析した。
【0939】
図35Bは、IL33−11二重突然変異体の鼻腔内投与では、天然IL−33と比較して等価なST2依存性IL−5応答に必要なタンパク質が僅か10分の1であったことを示している。これは、マウス肺環境における野生型IL−33のより急速な不活性化と対照的な突然変異体の長時間の活性と一致する。
【0940】
IL33−11のNMR分析
IL33−11と野生型ヒトIL−33タンパク質(IL33−01)との間のコンホメーションの違いを調べるため、NMR分析を実施した。
【0941】
15N−IL−33タンパク質の作製
N末端6Hisタグ及びTEVプロテアーゼ切断部位を有する野生型IL−33(配列番号633)をコードするDNAを使用して大腸菌(E.coli)BL21 Gold細胞を形質転換した。5g/Lの
15N−IsoGro(商標)粉末を補足したM9最少培地中37℃で形質転換細胞を培養し、0.6〜0.8のOD600nmに達したところで100mM IPTGを添加することによりタンパク質発現を誘導した。培養を18℃で更に20時間継続した後、細胞を遠心によって回収し、−80℃で保存した。完全プロテアーゼ阻害薬錠(Roche、11697498001)、2.5U/ml Benzonaseヌクレアーゼ(merck Millipore、70746−3)及び1mg/ml組換えリゾチームを含有する50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に細胞を再懸濁した。Constant Systems細胞破壊器を25kpsiで使用して再懸濁細胞を溶解し、4℃、75,000×gで2時間遠心することによって清澄化した。上清から、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中のニッケルアフィニティークロマトグラフィーによってIL−33を精製し、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に溶出させた。溶出したタンパク質をTEVプロテアーゼと共にインキュベートし、4℃で50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中に透析した。50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM βメルカプトエタノール中のニッケルアフィニティークロマトグラフィーによって脱タグ化タンパク質を非切断IL−33と分離した。AKTAxpress FPLCシステム(GE healthcare)を使用して、20mMリン酸ナトリウム pH6.5、100mM NaCl、5mM βメルカプトエタノール中HiLoad 16/60 Superdex 75カラム(GE healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、IL−33を更に精製した。ピーク画分をSDS PAGEによって分析した。純粋IL−33を含有する画分をプールし、Nanodrop A280測定によって濃度を計測した。Amicon 10,000分子量カットオフスピンコンセントレータを使用して、タンパク質をNMR分析用に1.8mg/ml(100μM)の最終濃度となるように濃縮した。
【0942】
NMR分析
NMRスペクトルは、Z軸グラジエントの5mm TCI Cryoprobeを備えたTopspin 2.3を実行するBruker Avance 600MHz分光計において298Kで記録した。5%重水を添加することにより試料のロックを可能にした上で、記載のとおり
15N標識IL33 WT試料を調製した。sofast HMQCパルスシーケンスを用いて(Schanda,P;Brutscher,B;Very fast two−dimensional NMR spectroscopy for real−time investigation of dynamic events in proteins on the time scale of seconds,J.Am.Chem.Soc.(2005)127,8014−5)、(F2×F1)1024×64複合ポイント(states−TPPIモード)、9615×1460Hz掃引幅、53.4ms×43.8ms取得時間として例示的な
1H−
15N相関スペクトルを取得した。
【0943】
図36は、それぞれ黒色及び赤色でプロットした0.1mM
15N標識IL33−01及びIL33−11についての
1H−
15N HMQCスペクトルのオーバーレイを示す。関連性のある残基の割り当てを示す。データは予想どおりC208及びC259前後でピークシフトを示す。しかしながら、T185〜A196から予想されるよりも多くのピークシフトがあり、これはコンホメーション変化を示している可能性がある。
【0944】
実施例7 IL33−11を用いた抗IL−33抗体の単離及び同定
Cys→Ser突然変異体IL−33タンパク質はIL−33をその還元型に安定させ、野生型と異なるコンホメーションを有する(実施例6に記載されるとおり)。突然変異体タンパク質は、異なる抗体エピトープの利用可能性又はエピトープのより長い寿命/より高い安定性をもたらすことができ、従って、詳細には還元型IL−33に対する、中和IL−33抗体の単離に有用であり得る。この例では酸化抵抗性突然変異体IL33−11タンパク質を使用して、ファージディスプレイによりIL−33抗体を単離する。
【0945】
組換えタンパク質
大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞を形質転換することにより、N末端タグ付加His10/Avitag IL33−01(WT、配列番号632)、N末端タグ付加His10/Avitag IL33−11(C208S、C259S、配列番号643)及びN末端タグ付加His10/AvitagカニクイザルIL−33(配列番号649)を作成した。形質転換細胞を自己誘導培地(Overnight Express(商標)Autoinduction System 1、Merck Millipore、71300−4)中37℃で18時間培養した後、細胞を遠心によって回収し、−20℃で保存した。完全プロテアーゼ阻害薬カクテル錠(Roche、11697498001)、2.5u/ml Benzonaseヌクレアーゼ(merck Millipore、70746−3)及び1mg/ml組換えリゾチームを含有するBugBuster(Merck Millipore、70921−5)中に細胞を再懸濁した。細胞ライセートを、4℃、75,000×gで2時間遠心することにより清澄化した。上清から、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、20mMイミダゾール中のニッケルアフィニティークロマトグラフィーによってIL−33タンパク質を精製し、50mMリン酸ナトリウム、pH8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾール中に溶出させた。リン酸緩衝生理食塩水pH7.4中のSuperdex 75 10/300 GLカラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、IL−33を更に精製した。ピーク画分をSDS PAGEによって分析した。純粋IL−33を含有する画分をプールし、Nanodrop A280測定によって濃度を計測した。最終試料をSDS PAGEによって分析した。
【0946】
実施例1に記載されるヒトST2ベクターを、C末端Flag−Hisタグを有するヒトST2 ECDを含有するように修飾した(配列番号650)。
【0947】
【表35】
【0948】
タンパク質修飾
ビオチンリガーゼ(BirA)酵素(Avidty、Bulk BirA)を製造者のプロトコルに従い使用して、Avitag配列モチーフ(GLNDIFEAQKIEWHE)を含有するタンパク質をビオチン化した。本明細書で使用されるAvitagを有しない全てのIgG及び修飾タンパク質は、実施例1に記載されるとおりEZ linkスルホ−NHS−LC−ビオチン(Thermo/Pierce、21335)を使用して遊離アミンを介してビオチン化した。
【0949】
選択
本質的に実施例1に記載されるとおり、但しIL33−11 C208S、C259S突然変異体タンパク質を使用して選択を実施した。端的には、scFv−ファージ粒子を溶液中でビオチン化組換えIL−33−11と共にインキュベートした(Aviタグによるビオチン化)。粒子を100nMビオチン化組換えIL33−11と共に2時間インキュベートした。次に抗原に結合したscFvを製造者の推奨に従いストレプトアビジンコート常磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)、M−280)に捕捉した。PBS−Tweenを使用した一連の洗浄サイクルで未結合のファージを洗い流した。抗原上に保持されたファージ粒子を溶出し、細菌に感染させて、次の選択ラウンド用にレスキューした。漸減濃度のビオチン化IL33−11(50nM及び25nM)の存在下で更に2回の選択ラウンドを行った。
【0950】
未精製scFvによるIL−33のST2への結合の阻害
上記に記載した2回又は3回の選択ラウンド後の選択アウトプットからの代表的な複数の個別クローンを96ウェルプレートで成長させた。scFvを細菌ペリプラズムで発現させて(Kipriyanov,et al.J Immunol Methods 200(1−2):69−77(1997))、それらの阻害活性に関して均一FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)ベースのIL−33:ST2結合アッセイでスクリーニングした。本質的に方法は実施例1の記載と同様であった。このアッセイでは、ビオチン化ヒトIL33−01(IL33−01、配列番号632)(野生型)又はビオチン化ヒトIL33−11(IL33−11、配列番号643)への結合に関して試料がFLAG(登録商標)Hisタグ付加ヒトST2と競合した。
【0951】
ビオチン化IL−33によるFLAG(登録商標)Hisタグ付加ST2の結合の阻害に関して、抗体試験試料の各希釈物5マイクロリットルを384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより未精製抗IL−33抗体試料を試験した。次に、4nMヒトFLAG(登録商標)Hisタグ付加ST2及び5nM抗FLAG(登録商標)XL665検出(Cisbio International、61FG2XLB)を含有する溶液を調製し、2.5マイクロリットルの混合物をアッセイプレートに加えた。これに続いて、1.5nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた2.4nMビオチン化ヒトIL33−01又はIL33−11を含有する2.5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で1時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。プレートを4℃で更に16時間(一晩)インキュベートし、再び時間分解蛍光を読み取った。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化ヒトIL33−01又はIL33−11をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。データは実施例1に記載されるとおり分析した。
【0952】
精製scFvによるIL−33のST2への結合の阻害
両方の時点で未精製ペリプラズム抽出物としてIL−33:ST2相互作用に対する阻害効果を示した単鎖FvクローンをDNAシーケンシングにかけた(Osbourn,et al.Immunotechnology 2(3):181−96(1996);Vaughan,et al.Nat Biotechnol 14(3):309−14(1996))。ユニークなscFvを再び細菌で発現させて、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した(国際公開第01/66754号パンフレットに記載されるとおり)。上記に記載したとおりビオチン化IL33−01又はビオチン化IL33−11への結合に関して精製調製物の希釈系列をFLAG(登録商標)Hisタグ付加ヒトST2と競合させることにより、これらの試料の効力を決定した。アッセイプレートを室温で1時間インキュベートし(1時間インキュベーション)、又はアッセイプレートを室温で1時間、続いて4℃で16時間インキュベートした(一晩インキュベーション)。両方の時点でIL−33:ST2相互作用の阻害能を有した精製scFv調製物をIgGフォーマットへの変換に選択した。
【0953】
図37A:ヒトIL−33−01がヒトST2に結合することによって生成される1時間インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 scFv抗体33v20064による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0954】
図37B:IL33−11がヒトST2に結合することによって生成される1時間インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 scFv抗体33v20064による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0955】
図37C:ヒトIL−33−01がヒトST2に結合することによって生成される一晩インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 scFv抗体33v20064による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0956】
図37D:IL33−11がヒトST2に結合することによって生成される一晩インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度のIL−33 scFv抗体33v20064による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0957】
scFvからIgG1への再フォーマット化
IL−33:ST2相互作用の阻害能を有した精製scFv調製物を実施例1に記載されるとおり全免疫グロブリンG1(IgG1)抗体フォーマットに変換した。IL330004(実施例1、配列番号12及び17)と同様か又はそれよりも高度に阻害した抗体を更なる分析に進めた。かかる抗体は33v20064によって例示される。抗体33v20064の様々な領域に対応する配列番号を表20に示す。
【0958】
【表36】
【0959】
精製IgGによるIL−33のST2への結合の阻害
抗IL−33抗体がビオチン化IL−33−01のFLAG(登録商標)−Hisタグ付加ST2受容体への結合を阻害する能力を、上記に原理を記載した生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。精製IgGの希釈系列をヒトビオチン化ヒトIL−33−01(配列番号632)への結合に関してヒトFLAG(登録商標)−Hisタグ付加ST2と競合させることにより、精製IgG調製物の活性を決定した。
【0960】
図38A:ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生成される1時間インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度の33v20064 IgG1抗体による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0961】
図38B:ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生成される一晩インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度の33v20064 IgG1抗体による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【0962】
IgGによるHuvecのIL−6産生の阻害
33v20064について、HUVECのIL−33刺激IL−6産生の阻害を評価した。この方法は実施例2に記載される。His−AviヒトIL−33野生型(IL33−01、配列番号632)(30ng/mL)又はHis−Avi突然変異体IL−33(IL33−11、配列番号643)(30ng/mL)を使用して、様々な濃度の試験抗体の存在下でHUVECを刺激した。
【0963】
図39A:IL330004及び抗NIP IgG1陰性対照抗体NIP228と比較した抗体33v20064によるIL33−01(WT)刺激HUVECからのIL−6産生の阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント最大応答である)。33v20064は、高抗体濃度でWT IL−33に対する応答の部分的阻害を示し、一方、IL330004は効果を示さなかった。
【0964】
図39B:IL330004及び抗NIP IgG1陰性対照抗体NIP228と比較した抗体33v20064によるIL33−11刺激HUVECからのIL−6産生の阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント最大応答である)。33v20064は、IL330004と比較して、IL33−11突然変異体によって刺激されるIL−6産生のより完全な阻害を示した。
【0965】
抗IL−33抗体の交差反応性
均一FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)に基づくIL−33:mAb結合アッセイを用いて抗IL−33抗体33v20064の交差反応性を決定した。このアッセイでは、DyLight標識33v20064 IgGに対する結合に関して試料がビオチン化ヒトIL−33−01(配列番号632)と競合した。
【0966】
【表37】
【0967】
ヒト、カニクイザル及びマウスIL−33 FLAG(登録商標)His(実施例1に記載される)について、IL−33試料の5マイクロリットルの各希釈物を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより、DyLight標識33v20064に対するヒトIL−33の結合の阻害に関して試験した。次に、20nM DyLight標識33v20064を含有する溶液を調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレート(製造者の指示に従いキット(Innova Biosciences、326−0010)を使用して標識した)に加えた。これに続いて、1.5nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた1.2nMビオチン化ヒトIL−33−01を含有する2.5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で1時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することにより、データを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した。次に、式2を用いて各試料の%デルタFを計算した。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化ヒトIL−33をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した。GraphPad Prismソフトウェアを使用して、4パラメータロジスティック方程式(式4)を用いたカーブフィッティングによりIC
50値を決定した。これらの結果から、33v20064はカニクイザルIL−33と交差反応することが実証された。しかし33v20064はマウスIL−33との競合を示さなかった。
【0968】
図40A:ビオチン化ヒトIL−33−01がDyLight標識33v20064に結合することにより生成されるFRETシグナルの、漸増濃度の試験タンパク質による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の試験試料の濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。ヒト及びカニクイザルIL−33ではFRETシグナルの阻害が観察されたが、マウスIL−33では観察されなかった。
【0969】
抗IL−33抗体の選択性
均一FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)に基づくIL−33:mAb結合アッセイを用いて抗IL−33抗体33v20064の選択性を決定した。このアッセイでは、野生型DyLight標識33v20064 IgGに対する結合に関して試料がビオチン化His−AviヒトIL−33(IL33−01、配列番号632)と競合した。ヒトIL−1α及びヒトIL−1βを、上記に記載したとおり、ビオチン化IL−33−01のDyLight標識33v20064結合の阻害に関して試験した。これらの結果から、33v20064はヒトIL−1α又はIL−1βでは競合を示さなかったことが実証された。
【0970】
図40B:ビオチン化ヒトIL−33−01がDyLight標識33v20064に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度の試験タンパク質による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の試験試料の濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。ヒトIL−1α又はIL−1βではFRETシグナルの阻害は観察されなかった。
【0971】
実施例8 抗IL−33 Ab 33v20064の最適化
33v20064のフレームワーク領域の生殖細胞系列化
親抗体33v20064のV
H及びV
Lドメインのアミノ酸配列をIMGTデータベースの既知のヒト生殖系列配列とアラインメントし(Lefranc,M.P.et al.Nucl.Acids Res.2009.37(Database issue):D1006−D1012)、配列類似性によって最も近縁の生殖細胞系列を同定した。33v20064抗体系統のV
Hドメインについては、これはIGHV3−23*01であった。V
Lドメインについては、それはIGLV3−1であった。33v20064に対し、親和性成熟プロセスの前に生殖細胞系列化を行った。Vernier残基(Foote 1992)を考慮しない場合(これはそのままとした)、33v20064のV
Lドメインのフレームワークには生殖細胞系列と異なる残基が6つあり、そのうち5つを、クンケル突然変異誘発法(Clackson,T.and Lowman,H.B.Phage Display−A Practical Approach,2004.Oxford University Press)を用いて適切な突然変異誘発性プライマーで最も近縁の生殖系列配列に復帰させた。この生殖細胞系列化の産物が33_640001であった。配列番号を表22に記載する。
【0972】
【表38】
【0973】
精製scFvによるIL−33のST2への結合の阻害
33_640001の活性を、その生殖細胞系列化していない親33v20064と比較した。scFv抗体がFLAG(登録商標)−Hisタグ付加ST2受容体に対するビオチン化His AviヒトIL−33(IL33−01、配列番号632)の結合を阻害する能力を、実施例7に記載されるとおり生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。
【0974】
図41A:ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生じる1時間インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度のscFv抗体による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。33_640001は、その生殖細胞系列化していない親と同等の活性を有した。
【0975】
図41B:ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生じる一晩インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度のscFv抗体による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。33_640001は、その生殖細胞系列化していない親と同等の活性を有した。
【0976】
親和性成熟
標的突然変異誘発手法及び親和性ベースのファージディスプレイ選択を用いて33v20064を最適化した。記載されるとおりの(Clackson 2004)標準的な分子生物学的技術を用いた可変重鎖(V
H)相補性決定領域3(CDR3)及び軽鎖(V
L)CDR3のオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって、生殖細胞系列化した親(33_640001)に由来する大規模scFv−ファージライブラリを作成した。V
H CDR3については、Kabatの定義によるCDRに先行する2つのVernier位置(即ちV
H位置93及び94)もまた、標的突然変異誘発手法における潜在的な最適化に含めた。ヒトIL−33に対してより高い親和性を有する変異体を選択するため、これらのライブラリを親和性ベースのファージディスプレイ選択に供した。これらの選択は、ビオチン化His−AviヒトIL−33野生型抗原(IL33−01、配列番号632)とビオチン化His Avi突然変異体IL−33抗原(IL33−11、配列番号643)とによって順次のラウンドで交互に、或いは全てのラウンドにおいてビオチン化IL33−11抗原のみで行った。選択は、本質的に以前記載されているとおり実施した(Thompson 1996)。端的には、scFv−ファージ粒子を溶液中で組換えビオチン化抗原と共にインキュベートした。次に抗原に結合したscFv−ファージを製造者の推奨に従いストレプトアビジンコート常磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)M−280)に捕捉した。次に選択されたscFv−ファージ粒子を以前記載されているとおりレスキューし(Osbourn,J.K.,et al.Immunotechnology,1996.2(3):p.181−96)、この選択手順を漸減濃度のビオチン化抗原(典型的には5回の選択ラウンドで50nM〜10pM)の存在下で繰り返した。
【0977】
本質的にHanes et al.(Hanes,J.,et al.Methods in Enzymology,2000.328:p.404−30)によって記載されるとおり、33v20064もまたリボソームディスプレイ技術を用いて最適化した。親scFvクローン33v20064を、ライブラリ構築及び続く選択のためのリボソームディスプレイフォーマットへの変換の鋳型として使用した。DNAレベルでは、mRNAへの効率的な転写のため、5’末端にT7プロモーターを付加した。mRNAレベルでは、コンストラクトは原核細胞リボソーム結合部位(シャイン−ダルガノ配列)を含んだ。単鎖の3’末端で終止コドンを取り除き、新生scFvポリペプチドとリボソームとの間のスペーサーとして働くようにM13バクテリオファージgIIIの一部(遺伝子III)を付加した(Hanes 2000)。
【0978】
Diversify(商標)PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)ランダム突然変異誘発キット(BD Biosciences)を製造者の推奨に従い使用したランダム突然変異誘発により、親(33v20064)scFvコンストラクトに由来するリボソームディスプレイライブラリを作成した。このエラープローンPCR(EP)の条件は、(製造者によれば)1000塩基対当たり平均8.1個のヌクレオチド変化が導入されるように選択した。次に、得られたEPライブラリを親和性ベースのリボソームディスプレイ選択において使用した(Hanes 2000)。RiboMAX(商標)大規模RNA産生システム(T7)(Promega)を製造者のプロトコルに従い使用し、且つ大腸菌(E.coli)ベースの原核生物無細胞翻訳系を使用して、scFvをインビトロで発現させた。産生されたscFv抗体−リボソーム−mRNA(ARM)複合体を溶液中でビオチン化ヒトIL−33抗原と共に、ビオチン化IL33−01抗原とビオチン化IL33−11抗原とによって順次のラウンドで交互に、或いは全てのラウンドにおいてビオチン化IL−33−11抗原のみでインキュベートした。特異的に結合した三価複合体(IL−33:ARM)を製造者の推奨に従い(Dynal)ストレプトアビジンコート常磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)M−280)に捕捉し、一方、未結合のARMは洗い流した。次に、結合したscFvをコードするmRNAを逆転写PCR(RT−PCR)によって回収した。IL−33に対してより高い親和性を有するクローンをエンリッチし、ひいては選択するため、得られた集団に対し、漸減濃度のビオチン化ヒトIL−33(5ラウンドにわたり100nM〜100pM)による更なる選択ラウンドについてこの選択手順を繰り返した。選択ラウンド3、4及び5のアウトプットをpCantab6にサブクローニングし(McCafferty,J.,et al.Appl Biochem Biotechnol,1994.47(2−3):p.157.)、以下に記載するとおり改良されたクローンを同定した。
【0979】
未精製scFvによるIL−33のmAbへの結合の阻害
選択アウトプットからの代表的な複数の個別クローンを96ウェルプレートで成長させた。scFvを細菌ペリプラズムで発現させて(Kipriyanov,et al.J Immunol Methods 200(1−2):69−77(1997))、それらの阻害活性に関して均一FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)に基づくIL−33:mAb結合アッセイでスクリーニングした。このアッセイでは、ビオチン化His Avi IL−33−01(配列番号632)又はビオチン化His AviカニクイザルIL−33(配列番号649)への結合に関して試料がDyLight標識33v20064 IgGと競合した。かかるエピトープ競合アッセイは、標識抗IL−33 IgGと同様のエピトープを認識する試験抗体試料が、ビオチン化IL−33への結合に関して標識IgGと競合してアッセイシグナルの減少が生じるという原理に基づく。
【0980】
ビオチン化His Avi IL33−01(ヒト)又はビオチン化His AviカニクイザルIL−33のDyLight標識33v20064結合の阻害に関して、5マイクロリットルの試料を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより未精製抗IL−33抗体試料を試験した。次に、2.4nM DyLight標識33v20064を含有する溶液をヒトIL−33アッセイ用に調製し、6nM DyLight標識33v20064をカニクイザルアッセイ用に調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレート(製造者の指示に従いキット(Innova Biosciences、326−0010)を使用して標識した)に加えた。これに続いて、ヒトアッセイ用の0.75nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた0.8nMビオチン化ヒトIL−33−01を含有する2.5マイクロリットルの溶液又はカニクイザルアッセイ用の1.5nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた4nMビオチン化カニクイザルIL−33を含有する溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で1時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することにより、データを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した。次に、式2を用いて各試料の%デルタFを計算した。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化IL−33をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した。
【0981】
エピトープ競合アッセイがその感度限界に達したため、未精製scFv試料の試験には、中間最適化mAb 33_640027を使用したアッセイを用いた。このアッセイは、本質的に33v20064競合アッセイに関して記載されるとおりであったが、但し以下の修正を加えた:20nM DyLight標識33_640027を調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレートに加えた。これに続いて、ヒトアッセイ用の0.75nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた0.32nMビオチン化ヒトIL−33−01を含有する2.5マイクロリットルの溶液又はカニクイザルアッセイ用の1.5nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた0.8nMビオチン化カニクイザルIL−33を含有する溶液を加えた。
【0982】
精製scFvによるIL−33のMAbへの結合の阻害
未精製ペリプラズム抽出物としてIL−33:mAb相互作用に対して阻害効果を示した単鎖FvクローンをDNAシーケンシングにかけた(Osbourn,et al.Immunotechnology 2(3):181−96(1996);Vaughan,et al.Nat Biotechnol 14(3):309−14(1996))。ユニークなscFvを再び細菌で発現させて、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した(国際公開第01/66754号パンフレットに記載されるとおり)。阻害効力について、精製調製物の希釈系列をビオチン化His Avi IL33−01、ビオチン化His Avi IL33−11又はビオチン化His AviカニクイザルIL−33への結合に関してDyLight標識33v20064 IgG又はDyLight標識33_640027 IgGと競合させることにより、精製抗IL−33抗体試料を試験した。方法は前節に記載したとおりである。
【0983】
【表39】
【0984】
scFvからIgG1への再フォーマット化
IL−33:mAb結合アッセイからの望ましい特性を有する単鎖Fvクローンを、実施例1に記載されるとおり全免疫グロブリンG1(IgG1)抗体フォーマットに変換した。これらには、抗体33_640027(EPライブラリ選択から得られたもの)、及び33_640047、33_640050(V
H CDR3ブロック突然変異誘発ライブラリ選択から得られたもの)が含まれる。これらの抗体の様々な領域に対応する配列番号を表24に示す。
【0985】
【表40】
【0986】
精製IgGによるIL−33のMAbへの結合の阻害
ビオチン化His Avi IL33−01、ビオチン化His Avi IL33−11又はビオチン化His AviカニクイザルIL−33がDyLight標識33v20064 IgG又はDyLight標識33_640027 IgGに結合するのを阻害する抗IL−33抗体の能力を、記載のとおり生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。IL−33:mAb結合アッセイからの望ましい特性を有するIgGを更なる分析用に選択した。
【0987】
IgGによるHuvecのIL−8産生の阻害
サイトカイン放出アッセイを用いて、抗IL−33抗体によるヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)からのIL−33誘導性IL−8産生の阻害を評価した。本質的に実施例2に記載されるとおり、但し少し修正を加えて、試験抗体又はST2.Fc(R&D systems)の存在下又は非存在下で細胞をIL−33に曝露した。精製IgGの試験溶液(デュプリケート)を完全培養培地中に所望の濃度に希釈した。N末端His Avi IL−33(IL33−01、配列番号632)を、2ng/mLの最終IL−33濃度となるように適切な試験抗体と混合した完全培養培地中に調製した。全ての試料を室温で30分間インキュベートした後、IL−33/抗体混合物をアッセイプレートに移した。18〜24時間インキュベートした後、実施例2に記載されるとおりユウロピウムの読み取りに適しているELISA(R&D Systems、DY208)によって細胞上清中のIL−8を計測した。データはGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析した。4パラメータロジスティック方程式を用いたカーブフィッティングによりIC
50値を決定した。IC
50値が計算された。以下の表25に要約する。
【0988】
図42Aは、33v20064、33_640050、ヒトST2−Fc又は対照mAbの存在下でIL33−01によって刺激したHUVECを示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答(IL−8産生)のパーセンテージである)。
【0989】
哺乳類完全長IL−33の中和
完全長IL−33もまた活性である(Cayrol et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 106(22):9021−6(2009);Hayakawa et al.,Biochem Biophys Res Commun 387(1):218−22(2009);Talabot−Ayer et al.,J Biol Chem.284(29):19420−6(2009))。抗体が完全長IL−33を中和する能力を評価するため、トランスフェクション後24時間に、完全長(FL)HuIL−33を発現するHEK293−EBNA細胞(及びモックトランスフェクト対照)をアキュターゼ(PAA、#L11−007)で回収した。細胞をPBSで1×10
8/mLに希釈し、組織ホモジナイザーを使用して30秒間ホモジナイズした。遠心によって細胞残屑を除去した。HUVECを様々な濃度の細胞ライセートで刺激した。サイトカイン産生の刺激は完全長IL−33トランスフェクト細胞ライセートでのみ観察され、モックトランスフェクト細胞ライセートでは観察されなかった。準最大サイトカイン放出(近似EC
50)を刺激した1:1000濃度のライセートを抗体中和試験に選択した。実験は上記に記載したとおり実施した。IC
50値を計算した。以下の表25に要約する。
【0990】
図42Bは、33v20064、33_640050、ヒトST2−Fc又は対照mAbの存在下で完全長IL−33細胞ライセートによって刺激したHUVECを示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答(IL−8産生)のパーセンテージである)。
【0991】
【表41】
【0992】
IgGによるジスルフィド結合型のIL−33の阻止
IL−33−01(0.14nM又は3ng/mL)を、両方ともに1%BSAを含有するIMDM又はPBS中、抗体(25ug/mL)又はヒトST2−Fc(105ug/mL)の存在下又は非存在下、37℃、5%CO
2で0〜24時間インキュベートした。様々な時点でアリコートを取り出し、PBS又はsST2(最終濃度10.5ug/mL)が入った予め冷却したプレートに加えた。回収時に対照mAb及び未処理試料中にsST2をスパイクしてIL−33酸化反応が続くのを阻止した。試料をアリコートに分けて予め凍結した96ウェルプレートに入れ、−80℃で保存した。ヒトIL−33 ELISAを製造者の指示に従い(R&D Systems、カタログ番号DY3625、ロット番号1362797)、但しストレプトアビジン−HRPの代わりにDELFIA検出システム(Perkin Elmer)を代用して以降実施した。簡潔に言えば、黒色96ウェルMaxisorpプレートを50uL/ウェルの捕捉抗体によって室温で一晩コーティングした。プレートをPBS中300uL 0.05%Tween−20で3回洗浄し、PBS中150uL 1%BSAによって室温で1時間ブロックした。プレートを3回洗浄し、プレートに50uL/ウェルの試料又は標準を振盪しながら(400rpm)室温で2時間加えた。プレートを3回洗浄し、プレートに50uL/ウェルの検出抗体を振盪しながら(400rpm)室温で2時間加えた。前述のとおりプレートを洗浄し、DELFIAアッセイ緩衝液中に1対1000希釈した50uL/ウェルのストレプトアビジン−ユウロピウムをプレートに遮光下振盪しながら(400rpm)室温で40分間加えた。プレートを300uL/ウェルのDELFIA洗浄緩衝液で7回洗浄した。50uL/ウェルのDELFIAエンリッチメント溶液(予め室温に加温した)をプレートに加えた。遮光下室温で10分間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)を使用して蛍光を計測した。Microsoft Excelで標準及びデータ補間を実施し、続いてGraphPad Prismソフトウェアで分析を実施した。
【0993】
実施例4、
図24Aで考察するとおり、このELISAは主に、この実験で計測されるIL−33濃度範囲内のジスルフィド結合IL−33(IL33−DSB)を検出する。ここでこのELISAを用いて、試験抗体の存在下におけるIL−33のそのジスルフィド結合型への変換をモニタする。
【0994】
図43は、試験抗体の存在下又は非存在下でIMDM(
図43A)又はPBS(
図43B)中でインキュベートする間のIL33−01のそのジスルフィド結合型(IL33−DSB)への変換を示す(x軸は時間単位の時間であり、y軸はIL−33−DSB濃度である)。IL330004及び33v20064はIL33−DSBへのIL−33変換速度を減速させる。33_640050及びST2.Fcは試験した時間経過にわたってIL−33−DSBへの変換を防ぐ。
【0995】
有益な突然変異の組換え及び更なる最適化
更なる親和性の向上を目的として、前出の選択及びスクリーニングカスケードから同定された有益な突然変異を幾つもの異なる方法で、単純な付加的手法によるか、或いは更なる選択を伴う組換えライブラリ手法を用いるかのいずれかによって組み換えた。
【0996】
配列解析から、リード抗体配列の多くに高頻度に見られる2つのシングル点突然変異「ホットスポット」、即ち、V
H CDR3のI98M及びV
L CDR2のQ50R(Kabat付番)があることが示唆された。これらの2つの突然変異を標準的な分子生物学的技術を用いて33_640001コンストラクトにグラフトし、新規抗体33_640036を作成した。更なる組換えにおいて、33_640047のV
Hを33_640036のV
Lと対にすることにより、抗体33_640117を作成した。これらは付加的手法を用いた配列組換えの例である。配列番号を表26に示す。
【0997】
【表42】
【0998】
加えて、V
H CDR3及びVL CDR3領域を網羅するブロック突然変異誘発ライブラリからの選択アウトプットが親和性の向上及び良好な配列多様性を示していたため、集団クローニング手法を用いて組み換えた。ラウンド3の選択アウトプットを組み換えることにより、ランダムに対となった、個別にランダム化されたV
H CDR3及びV
L CDR3配列を含むクローンのライブラリを形成した。次にこれらの組換えV
H CDR3/V
L CDR3ライブラリを、ビオチン化His AviヒトIL−33野生型抗原(IL33−01、配列番号632)とビオチン化His Avi突然変異体IL−33抗原(IL33−11、配列番号643)とを順次のラウンドで交互に用いるか、或いは全てのラウンドにおいてビオチン化His Avi IL33−11抗原のみを用いるリボソームディスプレイ選択において使用した。選択は、漸減濃度のビオチン化抗原(5回の選択ラウンドで50nM〜30pM)の存在下で、本質的に個別のCDR3ライブラリに関して記載されるとおり実施した。
【0999】
組換えV
H CDR3/V
L CDR3ライブラリの選択アウトプットからの代表的な複数の個別scFvの粗scFv含有ペリプラズム抽出物を調製した。ビオチン化His Avi IL33−01又はビオチン化His AviカニクイザルIL−33がDyLight標識33v20064 IgG又はDyLight標識33_640027 IgGに結合するのを阻害する抗IL−33抗体の能力を、記載のとおり生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。親scFv及び予備的な組換えで作成されたリードと比較したとき有意に向上した阻害効果を示したscFv変異体をDNAシーケンシングにかけ、精製scFvとしてユニークな組換え変異体を作製し、前節に記載したとおり試験した。
【1000】
これらの組換えライブラリから得られた最適化抗体は、33_640076、33_640081、33_640082、33_640084、33_640086及び33_640087によって例示される。これらの抗体の配列番号を表27に示す。
【1001】
【表43】
【1002】
リボソームディスプレイ選択手順の間、反復的なPCR増幅ラウンドの結果としてscFvフォーマットのこれらの抗体の可変領域に更なる自然突然変異が導入された。これらのイベントによりアウトプットの配列多様性が増すが、それらがフレームワーク領域に起こると望ましくない場合が多い。従って33_640076、33_640081、33_640082、33_640084、33_640086及び33_640087のフレームワーク領域に起こった自然突然変異を実施例3に記載されるとおり標準的な分子生物学的技術を用いてIgGコンストラクト上で生殖細胞系列に復帰させた。CDR又はCDRに隣接するVernier残基(例えばKabat付番によるV
H位置27、28、29、30、93及び94)のいずれかに起こったかかる自然突然変異は、変えないままとした。親和性を増加させるための更なる戦略として、先に同定された「ホットスポット」(V
L CDR2のQ50R突然変異)もまた同時にコンストラクトにグラフトした。これらの生殖細胞系列化及びホットスポットグラフト修飾から得られた抗体は、それぞれ33_640076、33_640081、33_640082、33_640084、33_640086及び33_640087のそれらの親抗体に対応して33_640076−1、33_640081−A、33_640082−2、33_640084−2、33_640086−2及び33_640087−2と命名した。これらの抗体の配列番号を表28に示す。
【1003】
【表44】
【1004】
更なるCDRの最適化
親和性を増加させるための別の戦略として、更なるCDRを最適化した。記載されるとおりの標準的な分子生物学的技術(Clackson 2004)を用いた可変重鎖(V
H)CDR1及びCDR2並びに軽鎖(V
L)CDR1及びCDR2のオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発により、生殖細胞系列化した親(33_640001)に由来する大規模scFv−ファージライブラリを作成した。選択及びスクリーニングは、V
HV
LCDR3ライブラリに関して記載したとおり実施した。最も改良された抗体変異体はV
H CDR2ライブラリから得られた。これらは、33_640166、33_640169、33_640170によって例示される。これらの抗体の配列番号を表29に示す。
【1005】
【表45】
【1006】
親和性の更なる向上を実現するための付加的戦略として、標準的な分子生物学的方法を用いて33_640076−1、33_640082−2、33_640086−2及び33_640087−2のIgGコンストラクトに33_640166、33_640169及び33_640170のV
H CDR2配列をグラフトした。これらの組換えによって得られた抗体は、33_640076−4、33_640082−4、33_640082−6、33_640082−7、33_640086−6及び33_640087−7によって例示された。配列の起源及び配列番号を表30に示す。
【1007】
【表46】
【1008】
集団クローニング及び選択手法を用いて、有益なV
H CDR3/V
L CDR3及びV
H CDR2配列の組換えもまた行った。V
H CDR2領域を網羅するブロック突然変異誘発ライブラリからのラウンド3の選択アウトプットを、標準的な分子生物学的技術を用いた集団クローニング手法で組換えV
H CDR3/V
L CDR3ライブラリのラウンド3の選択アウトプットと組み換えた。多数のscFv変異体を含む選択アウトプットを組み換えることにより、V
H CDR3/V
L CDR3及びV
H CDR2選択から得られたランダムに対となった配列を含むクローンのライブラリを形成した。選択は、漸減濃度のビオチン化抗原(典型的には5回の選択ラウンドで3nM〜3pM)の存在下でV
HV
LCDR3ライブラリに関する記載のとおり実施した。選択アウトプットからの代表的な複数の個別scFvからの粗scFv含有ペリプラズム抽出物を、V
HV
LCDR3ライブラリに関して記載されるとおり生化学的HTRF(登録商標)アッセイでスクリーニングした。親scFv及び予備的な組換えで作成されたリードと比較したとき有意に向上した阻害効果を示したscFv変異体をDNAシーケンシングにかけた。
【1009】
33_640027を利用したエピトープ競合アッセイがその感度の限界に達したため、精製scFv試料の試験には、33_640117を使用したアッセイを用いた。このアッセイは、本質的に33v20064競合アッセイに関して記載されるとおりであったが、但し以下の修正を加えた:2.5nM DyLight標識33_640117を調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレートに加えた。これに続いて、ヒトアッセイ用の0.75nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた0.12nMビオチン化ヒトIL−33−01の2.5マイクロリットルを含有する溶液又はカニクイザルアッセイ用の1.5nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた0.24nMビオチン化カニクイザルIL−33を含有する溶液を加えた。1時間及び一晩のインキュベーション後に蛍光を読み取った。両方の時点で最も効力の高い試料をIgGへの再フォーマット化に進めた。
【1010】
精製scFvとしてのユニークな組換え変異体を評価し、次に最も活性の高いscFvを選択して、実施例1に記載されるとおりIgG1フォーマットに変換した。これらの組換えライブラリから得られた抗体は、33_640201及び33_640237によって例示される。リボソームディスプレイ選択の間に33_640201及び33_640237のフレームワーク領域に導入された自然突然変異は、本節で先に記載したとおり生殖系列配列に復帰させ、それらの生殖細胞系列化した対応物を、それぞれ33_640201−2及び33_640237−2と命名した。これらの抗体の配列番号を表31に示す。
【1011】
【表47】
【1012】
合理的な組換え又は集団手法によってV
H CDR3/V
L CDR3及びV
H CDR2に関して最適化した抗体のデータは、
図44及び
図45の33_640082−6、33_640087−7、33_640201及び33_640237によって例示される。
【1013】
精製IgGによるIL−33のMAbへの結合の阻害
ビオチン化His AviヒトIL−33又はカニクイザルHis Avi IL−33がDyLight標識33_640117 IgGに結合するのを阻害する抗IL−33抗体の能力を、上記に記載したとおり生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。
【1014】
図44Aは、ビオチン化ヒトIL−33(IL33−01)がDyLight標識33_640117 IgGに結合することによって生成される1時間インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度の抗体33v20064、33_640050、33_640082−6、33_640087−7、33_640201及び33_640237による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【1015】
図44Bは、ビオチン化ヒトIL−33(IL33−01)がDyLight標識33_640117 IgGに結合することによって生じる一晩インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度の抗体33v20064、33_640050、33_640082−6、33_640087−7、33_640201及び33_640237による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【1016】
図44Cは、ビオチン化カニクイザルHis Avi IL−33がDyLight標識33_640117 IgGに結合することによって生成される1時間インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度の抗体33v20064、33_640050、33_640082−6、33_640087−7、33_640201及び33_640237による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【1017】
【表48】
【1018】
IgGによるHuvecのIL−8産生の阻害
Huvec IL−8産生アッセイでIgGを試験した。先述のとおり試験抗体の存在下又は非存在下で細胞をN末端His Avi IL−33(IL33−01、配列番号632)又は哺乳類完全長IL−33細胞ライセート(FL−IL33ライセート)に曝露した。IC
50値を計算した。以下の表33に要約する。
【1019】
図45Aは、試験抗体33_640050、33_640082−6、33_640087−7、33_640201及び33_640237の存在下でIL33−01によって刺激したHUVECを示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答(IL−8産生)のパーセンテージである)。
【1020】
図45Bは、試験抗体33_640050、33_640082−6、33_640087−7、33_640201及び33_640237の存在下で完全長IL−33細胞ライセートによって刺激したHUVECを示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答(IL−8産生)のパーセンテージである)。
【1021】
【表49】
【1022】
IGLJ配列の生殖細胞系列化
抗体33_640076−4、33_640081−A、33_640082−6、33_640082−7、33_640084−2、33_640086−6、33_640087−7、33_640201−2及び33_640237−2のV
Lフレームワーク領域のアミノ酸配列を、IMGTデータベースの既知のヒトIGLJ生殖系列配列とアラインメントし(Lefranc,M.P.et al.Nucl.Acids Res.2009.37(Database issue):D1006−D1012)、配列類似性によって最も近縁の生殖細胞系列を同定した。これらの抗体の全てについて、これはIGLJ2であった(これは、これらの抗体と比べてV
L領域の位置104(Kabat付番)に単一のアミノ酸の違いを有する)。この残基を実施例3に記載されるとおり標準的な分子生物学的方法を用いて生殖細胞系列に復帰させた。得られた抗体は、それぞれ33_640076−4、33_640081−A、33_640082−6、33_640082−7、33_640084−2、33_640086−6、33_640087−7、33_640201−2及び33_640237−2のそれらの親系統に対応して、33_640076−4B、33_640081−AB、33_640082−6B、33_640082−7B、33_640084−2B、33_640086−6B、33_640087−7B、33_640201−2B及び33_640237−2Bと命名した。これらの抗体のV
H及びV
L領域の配列番号を表34に示す。
【1023】
【表50】
【1024】
実施例9 インビボ気道炎症モデル
IL−33サイトカイントラップのクローニング、発現及び精製
マウスIL−1RAcP及びマウスST2のタンパク質配列をSwiss Protから入手した(それぞれ受託番号Q61730及びP14719)。Economides et al 2003に基づきマウスIL−33サイトカイントラップを設計し、これは、ヒトIgG1のFc部分に融合したアミノ酸1〜359 Q61730及びアミノ酸27〜332 P14719からなった。タンパク質配列をコドン最適化し(Geneart)、pDEST12.2 OriPにクローニングし、IL−1RAcP由来の天然シグナルペプチドを利用して細胞から培地中にタンパク質を分泌させた。CHO細胞における発現のため、ゲートウェイリンカーをオーバーラッププライマーPCRによって取り除いた。トラップ発現ベクターをCHO一過性哺乳類細胞にトランスフェクトした。マウスIL−33トラップを発現させて、培地中に分泌させた。回収物をプールし、ろ過した後、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製した。培養上清を5ml HitrapプロテインAカラム(GE Healthcare)にロードし、1×DPBSで洗浄し、結合したトラップを0.1Mクエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用してカラムから溶出させて、トリス−HCl(pH9.0)を加えることにより中和した。溶出した材料をS200 16:600 Superdexカラム(GE healthcare)を使用して1×DPBS中のSECによって更に精製し、濃度を分光光度法でアミノ酸配列に基づく吸光係数を用いて決定した(Mach et al.,Anal.Biochem.200(1):74−80(1992))。
【1025】
ヒト化IL−33マウス
ヒト化IL−33マウスの作成方法については、既に実施例4に記載した。気道及び/又はアレルギー性炎症のモデルにおいてこのヒト化マウスを使用して、抗ヒトIL−33抗体の効果を評価する。
【1026】
インビボ気道炎症モデル
マウスにおけるアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(ALT)誘発性気道炎症のモデルについては、以前記載されている(Kouzaki et al.J.Immunol.2011,186:4375−4387;Bartemes et al J Immunol,2012,188:1503−1513)。内因性IL−33はALT曝露後に急速に放出され、IL−33依存性IL−5産生及び肺における好酸球増加(eosinphilia)を駆動する。雄又は雌野生型又はヒト化IL−33マウス(6〜10週齢)をイソフルラン(isofluorane)で短時間麻酔し、25μgのALT抽出物(Greer、Lenoir,NC)又は媒体のいずれかを50μlの総容積で鼻腔内投与した。ALTによる鼻腔内攻撃の24時間前(腹腔内処理)又は2時間前(鼻腔内処理)に、試験物質:IL330004 IgG(配列番号12及び17)、H338L293 IgG(配列番号182及び187)、マウスIL−33 Trap、33_640050(配列番号302及び307)、アイソタイプ対照IgG(NIP228)又は媒体(PBS、10ml/kg)によってマウスを腹腔内処理又は鼻腔内処理した。攻撃の24時間後、マウスをペントバルビタールナトリウムによって麻酔死させた後、瀉血及び気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。気管カニューレによる洗浄(0.3ml、0.3ml及び0.4ml)によって気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。BALFを遠心し、細胞をカウントし(FACS(FacsCALIBER、BD)による総細胞)、上清をサイトカインに関してELISA(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)によって分析した。Diff−Quik(Fisher Scientific、UK)で染色したサイトスピン調製物に関して細胞分画カウント(200細胞/スライド)を実施した。全ての作業は、適切なプロジェクトライセンス権限下で英国内務省(UK Home Office)倫理及び飼育管理基準に則り行った。
【1027】
図46は、H338L293が野生型BALB/cマウスのALT誘発性BAL IL−5及び好酸球増加を用量依存的に阻害することを示している。25ugのALTによる攻撃前−2時間の時点で試験物質を鼻腔内投与した(括弧内に示すとおり10、30又は100mg/kg)。ALT攻撃の24時間後にBALFを採取し、IL−5(
図46A)及び好酸球(
図46B)の存在に関して分析した。一元配置ANOVAをボンフェローニの多重比較検定と共に用いて、試験物質の有意な効果を決定した。
***p<0.001、
〜〜p<0.01 対照mAbとの比較(n=4〜8)。マウスIL−33 Trapを陽性対照として使用した。
【1028】
図47は、H338L293(30mg/kg)及びマウスIL−33 Trap(10mg/kg)がヒト化IL−33マウスのALT誘発性BAL IL−5を阻害するが、IL330004(30mg/kg)は阻害しないことを示している。25ugのALTによる攻撃前−2時間の時点で試験物質を鼻腔内投与した。ALT攻撃の24時間後にBALFを採取し、IL−5の存在に関して分析した。一元配置ANOVAをボンフェローニの多重比較検定と共に用いて、試験物質の有意な効果を決定した。
***p<0.001、
**p<0.01(n=4)。
【1029】
図48は、33_640050がヒト化IL−33マウスのアルテルナリア属(Alternaria)誘発性BAL IL−5を用量依存的に阻害することを示している。25ugのアルテルナリア属(Alternaria)による攻撃前−24時間の時点で試験物質を腹腔内投与した(括弧内に示すとおり0.3、3又は30mg/kg)。ALT攻撃の24時間後にBALFを採取し、IL−5の存在に関して分析した。一元配置ANOVAをボンフェローニの多重比較検定と共に用いて、試験物質の有意な効果を決定した。
***p<0.001、
**p<0.01(n=4〜5)。
【1030】
実施例10 抗IL−33抗体の特徴付け
精製IgGによるIL−33のST2への結合の阻害
抗IL−33抗体がビオチン化IL33−01のFLAG(登録商標)−Hisタグ付加ST2受容体への結合を阻害する能力を、上記に原理を記載した生化学的HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)競合アッセイで評価した。精製IgGの希釈系列をヒトビオチン化ヒトIL33−01(配列番号632)への結合に関してヒトFLAG(登録商標)−Hisタグ付加ST2と競合させることにより、精製IgG調製物の活性を決定した。
【1031】
図49A:ヒトIL−33がヒトST2に結合することによって生成される一晩インキュベートした後のFRETシグナルの、漸増濃度の抗体33v20064、33_640087−7、33_640087−7B、33_640050及び33_640237−2Bによる阻害を示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。
【1032】
IgGによるHuvecのIL−8産生の阻害
Huvec IL−8産生アッセイでIgGを試験した。先述のとおり試験抗体の存在下又は非存在下で細胞をN末端His Avi IL−33(IL33−01、配列番号632)に曝露した。IC
50値を計算した。以下の表35に要約する。データは、IGLJ配列の生殖細胞系列化が抗体効力にいかなる効果も及ぼさなかったことを示している。
【1033】
図49Bは、試験抗体33_640087−7、33_640087−7B、33_640237−2及び33_640237−2Bの存在下でIL33−01によって刺激したHUVECを示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答(IL−8産生)のパーセンテージである)。
【1034】
【表51】
【1035】
抗IL−33抗体の選択性及び交差反応性
生殖細胞系列化抗IL−33抗体の選択性及び交差反応性を、均一FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光、Cisbio International)に基づくIL−33:mAb結合アッセイを用いて決定した。このアッセイでは、DyLight標識33_640087−7B IgG(配列番号618及び618)又は33_640237−2B IgG(配列番号624及び626)への結合に関して試料がビオチン化ヒトIL−33−01(配列番号632)と競合した。
【1036】
ヒト、カニクイザル及びマウスIL−33 FLAG(登録商標)His(実施例1及び表21に記載される)、ヒトIL−1α及びIL−1β(R&D Systems)(表21)又はラットIL−33(GenScript)について、試料の5マイクロリットルの各希釈物を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar、3673)に加えることにより、DyLight650標識33_640087−7B又はDyLight650標識33_640237−2Bに対するヒトIL−33の結合の阻害に関して試験した。次に、1.2nM DyLight650標識33_640087−7B又は33_640237−2Bを含有する溶液を調製し、2.5マイクロリットルをアッセイプレート(製造者の指示に従いキット(Innova Biosciences、326−0010)を使用して標識した)に加えた。これに続いて、0.75nMストレプトアビジンクリプテート検出(Cisbio International、610SAKLB)と組み合わせた0.12nMビオチン化ヒトIL−33−01を含有する2.5マイクロリットルの溶液を加えた。希釈は全て、ダルベッコPBS(Invitrogen、14190185)中0.8Mフッ化カリウム(VWR、26820.236)及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、PAA、K05−013)を含有するアッセイ緩衝液で実施した。アッセイプレートを室温で4時間、続いて4℃で18時間インキュベートし、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nm発光波長で時間分解蛍光を読み取った。各試料の665/620nm比、続いて%デルタF値を計算することにより、データを分析した。665/620nm比を使用することにより、式1を用いて試料干渉を補正した。次に、式2を用いて各試料の%デルタFを計算した。陰性対照(非特異的結合)は、ストレプトアビジンクリプテート検出と組み合わせたビオチン化ヒトIL−33をストレプトアビジンクリプテート検出のみに置き換えることによって定義した。続いて%デルタF値を用いて、式3に記載されるとおり%特異的結合を計算した。GraphPad Prismソフトウェアを使用して、4パラメータロジスティック方程式(式4)を用いたカーブフィッティングによりIC
50値を決定した。これらの結果から、33_640087−7B及び33_640237−2BはカニクイザルIL−33と交差反応するが、マウスIL−33、ラットIL−33、ヒトIL−1α又はヒトIL−1βとは交差反応しないことが実証された。
【1037】
図50A:ビオチン化ヒトIL−33−01がDyLight標識33_640087−7B(配列番号618及び618)に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度の試験タンパク質による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の試験試料濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。ヒト及びカニクイザルIL−33ではFRETシグナルの阻害が観察されたが、マウス又はラットIL−33、ヒトIL−1α又はヒトIL−1βでは観察されなかった。
【1038】
図50B:ビオチン化ヒトIL−33−01がDyLight標識33_640237−2B(配列番号624及び626)に結合することによって生成されるFRETシグナルの、漸増濃度の試験タンパク質による阻害を示す(x軸はモル濃度単位の試験試料の濃度であり、y軸はパーセント特異的結合である)。ヒト及びカニクイザルIL−33ではFRETシグナルの阻害が観察されたが、マウス又はラットIL−33、ヒトIL−1α又はヒトIL−1βでは観察されなかった。
【1039】
HUVEC IL−8アッセイにおける内因性IL−33の中和
抗体が内因性IL−33の中和能を有するかどうかを決定するため、ヒト肺組織を使用して内因性IL−33タンパク質の供給源を提供した。この研究はNRES East of England(Cambridge East)研究倫理委員会(参照番号08/H0304/56p5)によって承認されたものであり、組織は患者のインフォームドコンセントを得た上で供与を受けた。Papworth Hospital NHS Trust Research Tissue Bankにより、氷上でAqix RS−I媒体(Aqix Ltd)中にある肺癌患者及び肺移植手術からの非癌性隣接組織が提供された。組織はPBS中400mg/mLで希釈し、組織ホモジナイザーを使用して30秒間ホモジナイズした。遠心によって細胞残屑を除去した。HUVECを様々な濃度の肺ライセートで刺激した。IL−8放出を刺激したライセートのEC
50濃度を抗体中和試験に選択した。細胞を先述のとおり試験抗体の存在下又は非存在下で肺ライセートに曝露した。sST2はIL−8応答を最大約70%阻害したことから、全てではないが、ほとんどのIL−8産生が肺ライセート内の内因性IL−33によって駆動されたことが示唆される。33_640050及び33_640087−7B IgGはsST2と同程度にIL−8応答を阻害し、内因性IL−33を結合して中和するそれらの能力を実証した。33_640050 IgGは肺ライセートを0.032nMのIC50で中和した。33_640087−7Bは肺ライセートを0.013nMのIC
50で中和した。sST2は肺ライセートを0.019nMのIC50で中和した。
【1040】
図51は、sST2と比較した、試験抗体33_640050及び33_640087−7Bの存在下でヒト肺ライセートによって刺激したHUVECを示す(x軸はモル濃度単位の抗体濃度であり、y軸は最大応答(IL−8産生)のパーセンテージである)。sST2はIL−8応答を最大約70%阻害したことから、全てではないが、ほとんどのIL−8産生が肺ライセート内の内因性IL−33によって駆動されたことが示唆される。両方の抗体ともsST2と同程度にIL−8応答を阻害し、内因性IL−33を結合して中和するそれらの能力を実証した。
【1041】
インビボ気道炎症モデル
ヒト化IL−33マウスの作成方法については、既に実施例4に記載した。実施例9に記載されるとおりアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(ALT)誘発性気道炎症のモデルにヒト化マウスを使用して、33_640087−7Bの効果を評価した。雄又は雌野生型又はヒト化IL−33マウス(6〜10週齢)をイソフルラン(isofluorane)で短時間麻酔し、25μgのALT抽出物(Greer、Lenoir,NC)又は媒体のいずれかを50μlの総容積で鼻腔内投与した。ALTによる鼻腔内攻撃の24時間前にマウスを試験物質:33_640087−7B IgG(配列番号618及び618)、アイソタイプ対照IgG(NIP228)又は媒体(PBS、10ml/kg)で腹腔内処理した。攻撃の24時間後、マウスをペントバルビタールナトリウムによって麻酔死させた後、瀉血及び気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。気管カニューレによる洗浄(0.3ml、0.3ml及び0.4ml)によって気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。BALFを遠心し、上清をサイトカインに関してELISA(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)により分析した。全ての作業は、適切なプロジェクトライセンス権限下で英国内務省(UK Home Office)倫理及び飼育管理基準に則り行った。
【1042】
図52は、33_640087−7Bがヒト化IL−33マウスのアルテルナリア属(Alternaria)誘発性BAL IL−5を用量依存的に阻害することを示している。25ugのアルテルナリア属(Alternaria)による攻撃前−24時間の時点で試験物質を腹腔内投与した(括弧内に示すとおり0.1、1、3又は10mg/kg)。ALT攻撃の24時間後にBALFを採取し、IL−5の存在に関して分析した。一元配置ANOVAをボンフェローニの多重比較検定と共に用いて、試験物質の有意な効果を決定した。
***p<0.001、
**p<0.01(n=5〜6)。
【1043】
実施例11 抗IL−33抗体の親和性
組換えヒトIL33に対する抗IL−33抗体断片(Fab)の親和性を、BIACORE(商標)によるリアルタイム相互作用モニタリングを用いて、及び33_640087−7Bについては平衡状態でKinExA(商標)を用いて決定した。両方の方法論ともヒトIL33タンパク質をSEC−HPLCによって精製することにより、biacore分析に対する抗原の品質及びまたFabの品質も確保した。
【1044】
Biacore親和性分析
パパイン切断によって完全長IgG1からFab断片を作成し、SECによって精製した。Biacore T100を用いて25℃で抗体断片(Fab)の親和性を計測した。標準的なアミンカップリング技法を用いてストレプトアビジンをC1チップ表面に10mM酢酸ナトリウムpH4.5中4μg/mlの濃度で共有結合的に固定化した。115〜170RUの範囲の典型的な最終ストレプトアビジン表面密度を達成した。組換え酵素ビオチン化ヒトIL−33(インハウスで作製)を飽和状態で約30RUのFab結合(Rmax)が可能となるようにHBS−EP+緩衝液中4μg/mlでストレプトアビジンチップ表面上にタイトレーションした。この低レベルのアナライト結合により、物質移動効果が確実に最小限となるようにした。
【1045】
IL−33 FabをHBS−EP+緩衝液中5nM〜78pMに段階希釈して50μl/分でチップ上に流し、3分の会合及び最長30分までの解離とした。同じ条件下で複数の緩衝液単独注入を行い、BiaEvalソフトウェア(バージョン2.0.1)を用いて分析した最終的なセンサーグラムセットのダブルリファレンスの差し引きを可能にした。チップ表面は3M MgCl
2のパルスで完全に再生した。
【1046】
HEK−EBNA細胞で発現させたST2−Flag−His10(配列番号650)のヒトIL−33に対する親和性を、上記と同じ方法を用いてBIACORE(商標)により決定した。
【1047】
【表52】
【1048】
KinExA親和性分析
SPRアッセイで見られた高親和性を確認するため、本発明者らは結合平衡除外アッセイ(KinExA)に取り掛かった。KinExAは、より高い親和性のタンパク質間相互作用、特に表面ベースのバイオセンサー技法がその実用上の限界に達するpM〜pM未満の範囲のものを解くのに徐々に支持されつつある(Rathanaswami P,Roalstad S,Roskos L,Qiaojuan JS,Lackie S,Babcook J.Demonstration of an in vivo generated sub−picomolar affinity fully human monoclonal antibody to interleukin−8.Biochemical and Biophysical Research Communications.2005;334:1004−1013)。
【1049】
抗体33_640087−7Bの親和性を、KinExA 3200で実施する結合平衡除外アッセイによって計測した。200mgの乾燥UltraLink Biosupportアズラクトンビーズを2.5mlの50mM炭酸水素ナトリウムpH8.4中110μgのIL−33(既述のとおり)と一定の撹拌を行いながら室温で2時間混合することにより、サンプリングビーズを調製した。ビーズをリンスし、1MトリスpH8.7中10mg/ml BSAでブロックした。使用前に、ビーズをD−PBS、0.02%ナトリウムアジド中に再懸濁した。DPBS(ダルベッコPBS)中1mg/ml BSA、0.02%ナトリウムアジドで構成される試料緩衝液中に33_640087−7B/IL−33平衡混合物を調製した。2つの異なるIgG濃度を様々なIL−33濃度と共に使用し、即ち、5pMの33_640087−7Bを125pM〜61fMに段階希釈したIL−33と共に、及び500fM 33_640087−7Bを62.5pM〜15fMに段階希釈したIL−33と共に(両方ともゼロIL−33対照を含んで行った)使用した。蛍光二次検出試薬は、DPBS中1mg/ml BSA、0.02%ナトリウムアジド、0.1%Tween 20に希釈したAlexa Fluor 647ヤギ抗ヒト−Fcであった。試料をKinExAにかけた一方で、25℃に設定した温度制御キャビネットに収容した。データはKinExA Proソフトウェア バージョン4.1.11を使用して分析した。
【1050】
KinExAアッセイは、33_640087−7BがヒトIL−33に対して<142fM(フェムトモル濃度)のK
Dを有することを示している(表37)。
【1051】
【表53】
【1052】
実施例12 酸化IL−33の活性
酸化IL−33の活性を調査するインビボパイロットスタディ
実施例4において(Cohen,E.S.et al.Oxidation of the alarmin IL−33 regulates ST2−dependent inflammation.Nat.Commun.6:8327 doi:10.1038/ncomms9327(2015)もまた参照のこと)、本発明者らは酸化したジスルフィド結合型のIL−33(DSB IL−33)の発見について記載し、この型がST2に結合しないことを示した。酸化IL−33がST2とは独立して代替的な活性を有したかどうかを調べるため、ST2欠損マウスを反復用量のヒトIL−33で2、4又は6週間にわたり腹腔内処理又は鼻腔内処理した。複数の組織に対して組織学的分析を実施した。
【1053】
ST2欠損マウスを以前記載されているとおり作成した(Townsend,M.J.,Fallon,P.G.,Matthews,D.J.,Jolin,H.E.,and McKenzie,A.N.J.(2000).T1/ST2−deficient mice demonstrate the importance of T1/ST2 in developing primary T helper cell type 2 responses.J.Exp.Med.191,1069−1076)。雌ST2欠損マウス(12週齢)をイソフルラン(isofluorane)で短時間麻酔し、10μgのN末端His Avi IL−33(IL33−01、配列番号632;ロット番号CCH168、エンドトキシンレベル0.03EU/mg)、又は媒体(PBS)のいずれかを50μlの総容積で鼻腔内投与した。或いは、IL−33又は媒体はi.p.注射で投与した。このプロセスを毎週3回繰り返し、合計18回の処理を行った。IL−33による処理を2週間又は4週間のみ受けたマウスには、IL−33の投与前、最初の4週間又は2週間の投与週間にPBSを投与した。
【1054】
最終処理の24時間後、マウスをペントバルビタールナトリウムによって麻酔死させた後、瀉血及び気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。EDTAでフラッシュしたシリンジを使用した心臓採血によって血液を収集した。血液学はSysmex XTVet血液分析器を使用して行った。残りの血液は遠心し、血漿を抽出した。気管カニューレによる洗浄(0.3ml、0.3ml及び0.4ml)によって気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。BAL細胞をフローサイトメーター(MACSquant、Miltenye Biotec)によってカウントし(BAL総細胞数、BALFを遠心して上清を分離し、それをサイトカインに関してELISA(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)によって分析した。Diff−Quik(Fisher Scientific、UK)で染色したサイトスピン調製物に対して細胞分画カウント(200細胞/スライド)を実施した。PBS洗浄後の肺に気管注入によって10%中性緩衝ホルマリン(NBF)を充満させて肺構造を維持し、NBF中に24〜48時間浸漬固定した。次に、固定した肺試料を4つの等しい断面となるように横切断した後、一連のアルコール、キシレン及びパラフィンワックスで処理した。最後に、次に肺の横断切片をパラフィンワックスブロックに包埋した。分析及び炎症スコアリング評価のため4μm組織切片を切り出し、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色した。全ての作業は、適切なプロジェクトライセンス権限下で英国内務省(UK Home Office)倫理及び飼育管理基準に則り行った。
【1055】
腹腔内又は鼻腔内経路によるIL−33曝露を調べるため、実施例4に記載されるとおりMilliporeヒトIL−33アッセイ(カタログ番号HTH17MAG−14K ロット2159117)を用いてBALF及び血漿中のヒトIL−33を計測した。sST2−Fcがアッセイシグナルを低下させる能力を用いて、ST2結合(還元)IL−33対非ST2結合(酸化)IL−33の存在を決定した。鼻腔内投与後、2、4及び6週のエンドポイント時点でIL−33はBALF及び血漿中に一貫して検出された。検出されたIL−33の大部分は酸化していた。単回腹腔内投与後、IL−33は投与後5時間に血漿中に一過性に検出されたが、24時間までには検出不能となった。反復IL−33投与後、2、4又は6週のエンドポイント時点でヒトIL−33がBALF又は血漿中に一貫して検出されることはなかった。これらのデータから、酸化IL−33の最も良好な全身曝露が鼻腔内投与によって達成されることが示された。
【1056】
図53A.インビボパイロットスタディの実験計画。6週間にわたるヒトIL−33又は媒体(PBS)の反復投与によってST2欠損マウスを腹腔内処理又は鼻腔内処理した(n=3〜4匹/群)。最終IL−33投与後24時間で組織、BALF及び血清を採取した。
【1057】
図53B.BALB/cマウスにヒトIL−33を反復投与した後のBAL液中におけるヒトIL−33曝露の分析。
図53Aに記載するとおり処理したマウスからのBALF中のヒトIL−33を計測した(x軸は処理群を示し、y軸は任意単位のヒトIL−33アッセイシグナルを示す)。IL−33は鼻腔内投与後のBALFにのみ検出された。検出されたIL−33はほとんどが酸化している(非ST2結合性である)ことが分かった。
【1058】
図53C ヒトIL−33(10ug)の単回腹腔内投与後の血漿中におけるIL−33曝露の分析。投与後2、5、24及び48時間の時点で血漿中のヒトIL−33を計測した(x軸は分析時点を示し、y軸は任意単位のヒトIL−33アッセイシグナルを示す)。IL−33は投与後5時間に血漿中に一過性に検出されたが、24〜48時間までに検出不能となった。
【1059】
図53D BALB/cマウスにヒトIL−33を反復投与した後の血漿中におけるIL−33曝露の分析。
図53Aに記載するとおり処理したマウスからの血漿中のヒトIL−33を計測した(x軸は処理群を示し、y軸は任意単位のヒトIL−33アッセイシグナルを示す)。IL−33は鼻腔内投与後の血漿にのみ検出された。検出されたIL−33はほとんどが酸化している(非ST2結合性である)ことが分かった。
【1060】
複数の組織に対して組織学的分析を実施した。肝臓、脳、脾臓、皮膚、胃、リンパ節又は心臓について、ヒトIL−33処理マウスに対照と比較して関連性のある異常なし。肺では、鼻腔内群にのみ、及び処理後6週間にのみ、対照と比較してIL−33処理マウスにリンパ球性血管周囲炎の増加が存在した。これは、酸化IL−33への最も高い曝露と一致する(
図53)。結論として、ST2 KOマウスをIL−33で処理すると、対照と比較してIL−33処理マウスの肺における血管周囲リンパ球浸潤の存在が増加する。この病理は酸化IL−33によって媒介され得る。
【1061】
図54Aは、PBSを6週間にわたって鼻腔内投与したマウス(n=3)由来の肺組織の代表的なH&E染色パラフィン切片を示す。
【1062】
図54Bは、IL−33を6週間にわたって鼻腔内投与したマウス(n=4)由来の肺組織の代表的なH&E染色パラフィン切片を示す。
【1063】
IL−33抗原処理マウス肺のパスウェイ解析
観察された炎症反応につながるマウス肺内の酸化IL−33によって調節される経路に関して洞察を得るため、6週間PBS処理動物対6週間IL−33処理動物からの肺組織に対してマイクロアレイ解析を実施した。
【1064】
7匹のST2KOマウス(上記に記載したとおりPBSを3匹に投与し、IL33−01を4匹に投与した)から肺組織を採取し、350uLのRLT緩衝液(Qiagen #79216)中に直接置いた。次にQiagen TissueLyser(Qiagen #85300)を製造者のプロトコルに従い使用して組織を破壊し、RNeasy線維組織キット(Qiagen #74704)を用いてRNAを精製した。次にこのキットからの精製RNAを、RNeasyマイクロカラム(Qiagen #74004)を製造者のプロトコルに従い使用して濃縮した。次にAffymetrix社のGeneChip WT Plus試薬キット(Affymetrix #902513)を使用してRNAを一本鎖DNAに増幅し、マウストランスクリプトーム1.0(MTA1.0)ジーンチップ(Affymetrix #900720)にハイブリダイズし、Affymetrix Fluidics Stationで洗浄し、Affymetrix Genechip Scanner 3000 7Gでスキャンした。次にデータをAffymetrix Expressionコンソールで処理した。データをMicrosoft Excelで分析し、4匹のIL33処理マウス中少なくとも2匹が対照群平均値から±1.2倍を超えるシグナルの変化を有した遺伝子を選別した。選別した遺伝子リストを生物学データベースネットワーク(BioDBnet v2.1)を使用してKEGG IDに変換し、KEGGパスウェイ解析(www.kegg.jp;KEGG Mapper v2.5)で解析した。KEGGパスウェイで解析した同じ遺伝子を、Ingenuityパスウェイ解析(IPA)(Qiagen)もまた用いて分析した。IPA解析は、細胞周期に関係する経路が調節されると見られることを示唆した。例示的な遺伝子を表38に掲載する。
【1065】
【表54】
【1066】
HuvecにおけるDSB IL−33のシグナル伝達
ヒト細胞で酸化(DSB)ヒトIL−33に対する応答が観察され得るかどうかを確かめるため、インビトロでのヒト細胞の刺激を調査した。マウスマイクロアレイ解析では細胞周期に関係する経路の活性化が示されたため、p38 MAPキナーゼ及びJAK−STATシグナル伝達を調べた。ヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)を製造者の指示に従い培養し、還元IL−33又はDSB IL−33で刺激した。p−p38 MAPK又はp−STAT5の核転座を免疫蛍光染色によって検出した。核染色強度のイメージング及び定量化はArrayScan VTi HCSリーダー(Cellomics)で実施した。このアッセイは、NFkB p65/RelA核転座に関する記載と本質的に同じであったが、但し以下の修正を加えた。
【1067】
p−p38 MAPKアッセイについては、96ウェル黒色壁透明平底コラーゲンIコートプレート(Greiner # 655956)中の培養培地[EGM−2 SingleQuot Kit Suppl.& Growth Factors(Lonza、#CC−4176)含有EBM−2(Lonza、#CC−3156)]にHuvecを1×10
4/75μl/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2で18〜24時間インキュベートした。還元IL−33又はDSB IL−33の試験試料(デュプリケート)を96ウェルU字底ポリプロピレンプレート(Greiner、650201)内の完全培養培地中に所望の濃度に希釈し、Huvecプレートに75uLを加えて刺激を惹起した。15分間又は30分間の37℃でのアッセイインキュベーション後、細胞を3.7%ホルムアルデヒド溶液に(37℃に予め加温した50uLの16%溶液を加えることにより)15分間固定した。固定液を吸引し、100μL/ウェルのPBSで細胞を2回洗浄した。p−p38に関して1:250希釈のホスホ−p38抗体(Cell signalling #9211S)で細胞を染色した。簡潔に言えば、細胞を室温で15分間透過処理し、15分間ブロックし、50μLの容積の一次抗体溶液で1時間染色した。プレートをブロッキング緩衝液で2回洗浄し、二次抗体溶液(1:400希釈のDyLight 488標識ヤギ抗ウサギIgG;ThermoFisher Scientific #35552)及びHoechst核染色(1:10000希釈のThermoFisher Scientific #62249)によって室温で1時間染色した。プレートをPBSで2回洗浄した。細胞を150μL/ウェルPBSの最終容積で保存し、黒色遮光性シール(Perkin Elmer、#6005189)で覆い、後にArrayScan VTi HCSリーダーで読み取った。好適なアルゴリズムを用いて核染色強度を計算した。データはGraphpad Prismソフトウェアを使用して分析した。
【1068】
pSTAT5アッセイについては、96ウェル黒色壁透明平底コラーゲンIコートプレート(Greiner、#655956)中の培養培地[EGM−2 SingleQuot Kit Suppl.& Growth Factors(Lonza、#CC−4176)含有EBM−2(Lonza、#CC−3156)]にHuvecを1×10
4/75μl/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2で18〜24時間インキュベートした。この完全培地を吸引した後、細胞を100uL PBS/ウェルで2回洗浄し、このPBSを吸引して、各ウェルに75uLの飢餓培地[ペニシリン/ストレプトマイシン含有EBM−2(Lonza、#CC−3156)]を加えた。次に細胞を37℃、5%CO
2で18時間インキュベートした。還元IL−33又はDSB IL−33の試験試料(デュプリケート)を96ウェルU字底ポリプロピレンプレート(Greiner、650201)内の飢餓培地中に所望の濃度に希釈し、Huvecプレートに75uLを加えて刺激を惹起した。15分間又は30分間の37℃でのアッセイインキュベーション後、細胞を3.7%ホルムアルデヒド溶液に(37℃に予め加温した50uLの16%溶液を加えることにより)15分間固定した。固定液を吸引し、100μL/ウェルのPBSで細胞を2回洗浄した。p−STAT5に関して、1:250希釈のホスホ−STAT5ウサギ抗体C71E5(Cell Signalling #9314S)で細胞を染色し、これを上記に記載したとおり検出した。
【1069】
還元IL−33によってp−p38 MAPKシグナル伝達が惹起され、これは酸化によってDSB型になると失われ(
図55A)、NFkBシグナル伝達に関して先述したもの(実施例4〜6)と同様であった。しかしながらDSB IL−33はp−STAT5シグナル伝達を惹起したが、還元IL−33は惹起しなかった(
図55B)。従って還元型からDSB型へのヒトIL−33の変換時にシグナル伝達経路活性化における明らかな切り換えが観察され、DSB IL−33が既知のIL−33経路と異なる活性を有し得ることが示唆された。
【1070】
核転座アッセイの結果を確認するため、IL−33シグナル伝達をウエスタンブロット分析によって決定した。Huvecを上記のとおり還元IL−33又はDSB IL−33(3ng/mL)で15分間刺激した。次に細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、HALTプロテアーゼ阻害薬(Pierce #78430)を含有する250uL RIPA緩衝液(Pierce #89901)で溶解させた。試料を還元条件下でSDS−PAGEに供した。試料を4×NuPAGEゲルローディング緩衝液(Invitrogen)と3:1で混合し、90℃で3分間変性させた。還元試料は2%β−メルカプトエタノールを含有した。試料を製造者の指示に従いMOPS泳動緩衝液(Invitrogen)を加えたNuPAGE Novex 4〜12%ビス−トリスminiゲル(Invitrogen)上で泳動させた。タンパク質をニトロセルロース膜(Invitrogen カタログ番号IB3010−02)に転写し、ウサギホスホ−p38MAPK抗体(Cell Signalling #9211S)、ウサギホスホ−STAT5抗体C71E5(Cell Signalling #9314S)又はウサギp−JAK2抗体(Cell Signalling #3771S)によるウエスタンブロッティングによって検出した。一次抗体は抗ウサギ−HRP(Cell Signalling #7074)で検出し、ECL試薬(Thermo Scientific #34096)を使用して可視化した。
【1071】
図55Aは、還元IL−33又はDSB IL−33(IMDM培地で前処理したIL33−01)に応答したHuvecにおけるp−p38MAPK核転座活性を示す(x軸はIL−33濃度を示し、y軸は任意単位の核転座シグナルを示す)。還元IL−33については濃度依存性シグナルが観察されたが、酸化IL−33については観察されなかった。
【1072】
図55Bは、還元IL−33又はDSB IL−33(IMDM培地で前処理したIL33−01)に応答したHuvecにおけるp−STAT5核転座を示す(x軸はIL−33濃度を示し、y軸は任意単位の核転座シグナルを示す)。DSB IL−33については濃度依存性シグナルが観察されたが、還元IL−33については観察されなかった。
【1073】
図55C。還元IL−33又はDSB IL−33(IMDM培地で前処理したIL33−01)で15分間刺激したHuvecのp−p38MAPK、p−JAK2及びp−STAT5のウエスタンブロット分析。還元IL−33による刺激後はp−p38MAPKの活性化が検出されたが、DSB IL−33による刺激後は検出されなかった。DSB IL−33による刺激後はp−JAK2及びp−STAT5の活性化が検出されたが、還元IL−33による刺激後は検出されなかった。
【1074】
DSB IL−33のシグナル伝達は終末糖化産物受容体(RAGE)によって媒介される
HuvecにおいてDSB IL−33により調節される経路に関する洞察を得るため、Huvecを先述のとおり培養し、6ウェル組織培養処理プレート(Nunc 140675)に1×10
6細胞/ウェルでプレーティングした。一晩インキュベートした後、細胞をDSB IL−33で2又は6時間刺激した。350uLのRLT緩衝液(Qiagen #79216)に細胞を収集した。RNeasy Micro Kit(Qiagen #74004)を製造者のプロトコルに従い用いてRNAを精製した。次にAffymetrix社のGeneChip WT Plus試薬キット(Affymetrix #902513)を使用してRNAを一本鎖DNAに増幅し、ヒトゲノムU133A 2.0(U133A 2.0)ジーンチップ(Affymetrix #900469)にハイブリダイズさせて、Affymetrix Fluidics Stationで洗浄し、Affymetrix Genechip Scanner 3000 7Gでスキャンした。次にデータをAffymetrix Expressionコンソールで処理し、未処理対照と比べて±1.8倍を超えるシグナルの変化を有する遺伝子を選別した。遺伝子発現変化はほとんど観察されなかった(表39)。それにも関わらず、限られた遺伝子パネルをIngenuityパスウェイ解析(IPA)(Qiagen)を用いて分析すると、2時間の時点におけるEIF2シグナル伝達経路及び6時間の時点におけるAGERシグナル伝達が示唆された。潜在的にこれらは、スカベンジング/終末糖化産物受容体(RAGE)経路の活性化を示唆した。
【1075】
【表55】
【1076】
終末糖化産物受容体(RAGE)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するマルチリガンド受容体であり、高移動度群ボックス1(HMGB−1)、S100タンパク質ファミリー、終末糖化産物(AGE)及びβシート線維材料を含めた種々のリガンドを認識する。これは酸化的ストレスに関与すると考えられており、数多くの疾患の病因と関連付けられている。
【1077】
DSBがRAGEと直接相互作用するかどうかを評価するため、ELISAフォーマットを用いてRAGEの還元IL−33対DSB IL−33への結合を調査した(
図56A)。還元又はDSB N末端His Avi IL−33(IL33−01、配列番号632)を実施例7に記載するとおりビオチン化した。ストレプトアビジンプレート(Thermo Scientific、AB−1226)をPBS中50μg/mlのビオチン化抗原でコーティングし、室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS−T(PBS+1%(v/v)Tween−20)で3回洗浄し、300μl/ウェルのブロッキング緩衝液(1%BSA含有PBS(Sigma、A9576))で1時間ブロックした。プレートをPBS−Tで3回洗浄した。RAGE−Fc(R&D Systems #1145−RG)をブロッキング緩衝液に希釈し、IL−33コートしたウェル又は対照(IL−33無し)ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液中1:5000希釈した抗ヒトIgG HRP(Sigma、A0170)、50μl/ウェルでRAGE−Fcを室温で1時間検出した。プレートをPBS−Tで3回洗浄し、TMB、50μl/ウェル(Sigma、T0440)で発色させた。反応を50μl/ウェルの0.1M H
2SO
4でクエンチした後、EnVision(商標)プレートリーダー、又は同様の機器において450nmで読み取った。
【1078】
DSB IL−33とRAGEの相互作用を更に確認するため、RAGE−Fc又は抗RAGE抗体がHuvecのST2非依存性pSTAT5シグナル伝達を阻害する能力を評価した。このため、上記に記載したプロトコルに従い、RAGE−Fc(R&D Systems #1145−RG)、ST2−Fc(R&D Systems #523−ST)、抗RAGE mAb(国際公開第2008137552号パンフレットのもの)又は対照試薬の存在下又は非存在下で様々な濃度のDSB IL−33(IMDM処理IL33−01)を使用してHuvecを刺激した。RAGE−FcによるDSB IL−33の中和(
図56B)、又は抗RAGE mAbによる受容体の中和(
図56C)は、pSTAT5シグナルを完全に阻害することができた。
【1079】
図56A。ELISAによる還元IL−33又はDSBプレート表面へのRAGE−Fcの結合(x軸はRAGE−Fc濃度を示し、y軸は450nMでの吸光度を示す)。データは、RAGEの還元IL−33への結合と比較してDSB IL−33への結合が増加したことを示した。
【1080】
図56Bは、RAGE−Fc(50ug/mL)、ST2−Fc(50ug/mL)又は抗NIP IgG1陰性対照抗体、NIP228(50ug/mL)の存在下でのHuvecにおけるDSB IL−33に対するpSTAT5応答を示す。pSTAT5シグナル伝達はRAGE−Fcによって完全に阻害されたが、ST2−Fc又はNIP228によっては阻害されなかった。
【1081】
図56Cは、抗RAGE mAb、m4F4(10ug/mL)、又はマウスIgG1陰性対照抗体(10ug/mL)の存在下でのHuvecにおけるDSB IL−33に対するpSTAT5応答を示す。pSTAT5シグナル伝達はm4F4によって完全に阻害されたが、対照mAbによっては阻害されなかった。
【1082】
抗IL−33抗体によるDSB IL−33活性の阻止
実施例8に記載するとおり、IL−33に結合する抗体はIL−33のDSB型への酸化を阻止し得る(
図43A)。IL−33抗体がHuvecのpSTAT5シグナル伝達を阻止する能力を評価した。
【1083】
一定濃度の33_640087−7B(配列番号616及び618)、抗ST2(国際公開第2013/173761 Ab2号パンフレットのもの;配列番号85及び配列番号19)及びアイソタイプ対照mAbをIMDM中に調製し、次に96ウェルU字底プレートにおいてWT IL−33(これもまたIMDM中に調製した)のタイトレーションと(100uLを100uLと)組み合わせた。プレートを37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。これらの「プレインキュベーション処理」プレートの各ウェルからの75uLを、上記にpSTAT5アッセイに関して記載したとおり調製した「飢餓」細胞に加え、37℃で15分間インキュベートした。次に細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、eBioscienceホスホ−STAT5A/B Instant One ELISA(eBioscience #85−86112−11)からの100uL溶解緩衝液を各ウェルに加えた。次に製造者の指示に従い細胞ライセートのpSTAT5活性を計測した。
【1084】
図57は、33_640087−7B(10ug/mL)又は抗ST2 mAb、Ab2(10ug/mL)の存在下におけるIMDMで処理したIL−33に対するHuvecのpSTAT5応答を示す(x軸はIL−33濃度であり、y軸はpSTAT5シグナルである)。pSTAT5シグナル伝達は33_640087−7Bによって完全に阻害されたが、抗ST2によっては阻害されなかったことから、この応答がST2非依存性であることが確認された。
【1085】
抗IL−33抗体は上皮細胞のRAGE依存応答を阻害する
RAGEは肺上皮細胞で高度に発現する。DSB IL−33依存応答に関して肺上皮細胞株を評価した。このため、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び10%FBSを補足したF12K培地(Gibco #21127022)でA549細胞を培養した。0.5%トリプシン−EDTA(Gibco、#15400−054)で細胞を回収し、洗浄して、96ウェルプレートに培養培地中1×10
5/細胞/ウェルでプレーティングした。次に細胞を37℃、5%CO
2で24時間インキュベートした。翌日、完全培地を取り除き、細胞をPBSで2回洗浄し、「飢餓」培地(1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有F12K培地)に培地を交換し、プレートを37℃及び5%CO
2で24時間インキュベートした。
【1086】
一定濃度の33_640087−7B(配列番号616及び618)、抗ST2(国際公開第2013/173761 Ab2号パンフレット(配列番号85及び配列番号19))、抗RAGE m4F4(国際公開第2008137552号パンフレットのもの)及びアイソタイプ対照mAbをIMDM中に調製し、次に96ウェルU字底プレートにおいてWT IL−33(これもまたIMDM中に調製した)と(100uLを100uLと)組み合わせた。細胞及び処理プレートの両方を37℃及び5%CO
2で一晩インキュベートした。これらの「プレインキュベーション処理」プレートの各ウェルからの75uLを、上記に記載したとおり調製した「飢餓」細胞に加え、プレートを37℃及び5%CO
2で24時間インキュベートした。次に、96ウェルトランスウェルプレートを低結合96ウェルレシーバプレートに加えることにより96ウェルトランスウェルシステム(Corning #CLS3422−48EA)をセットアップする。235uLの完全培地(10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足したF12K培地)をトランスウェルシステムのボトムチャンバに加えた。次に処理した96ウェルの各ウェルにつきA549細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理して剥離させ、1000rpmで5分間遠心し、75uLの「飢餓」培地に再懸濁し、トランスウェルシステムのトップチャンバに加えた。次にトランスウェルプレートを37℃、5%CO
2で16時間インキュベートした。次にトップチャンバ及びボトムチャンバの両方から培地を取り除き、235uLトリプシンを使用してボトムチャンバから細胞を取り出した。次に100uLのトリプシン/細胞懸濁液を100uLのCell Titer Glo(Promega #G7571)に加えた。新鮮A549細胞のタイトレーションをトリプシンに調製し、50:50でCell Titer Gloに加えることにより、細胞数の標準曲線を作成した。次にプレートをインキュベートし、製造者の指示に従い読み取った。
【1087】
図58Aは、33_640087−7B(10ug/mL)、抗ST2 mAb、Ab2(10ug/mL)、又は抗RAGE mAb 4F4の存在下でIL33−01で処理した後のA549細胞の遊走を示す(x軸は細胞前処理条件を示し、y軸は遊走した細胞の数である)。データは、A549細胞をDSB IL−33で前処理すると、続く細胞遊走が低下することを実証している。この遊走の阻害は抗RAGE mAb及び33_640087−7Bによって逆転したが、抗ST2によっては逆転しなかった。
【1088】
図58Bは、33_640087−7B(10ug/mL)又は抗ST2 mAb、Ab2(10ug/mL)の存在下でインキュベートしたDSB IL33−01で処理した後のA549細胞の遊走を示す(x軸は細胞前処理条件を示し、y軸は遊走した細胞の数である)。データは、A549細胞をDSB IL−33で前処理すると、続く細胞遊走が低下することを実証している。この遊走の阻害は、33_640087−7B又は抗ST2によっては逆転しなかった。
【1089】
まとめると、これらのデータから、33_640087−7BがDSB IL−33を直接中和するよりむしろ、還元IL−33からDSB IL−33への変換を阻止することによってDSB−IL_33活性を阻害することが確認され、これは還元されたST2活性型のIL−33のみに結合するその能力と一致している。