特許第6862354号(P6862354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6862354ナイトロジェンマスタード誘導体の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862354
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ナイトロジェンマスタード誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 269/06 20060101AFI20210412BHJP
   C07C 271/22 20060101ALI20210412BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20210412BHJP
   C07C 237/12 20060101ALI20210412BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210412BHJP
   A61K 38/05 20060101ALN20210412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C07C269/06
   C07C271/22
   C07C231/12
   C07C237/12
   !C07B61/00 300
   !A61K38/05
   !A61P35/00
【請求項の数】21
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2017-558492(P2017-558492)
(86)(22)【出願日】2016年5月6日
(65)【公表番号】特表2018-515512(P2018-515512A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2016060242
(87)【国際公開番号】WO2016180740
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】1507903.1
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513267523
【氏名又は名称】オンコペプティデス エービー
【氏名又は名称原語表記】Oncopeptides AB
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】バルストレーム、ニクラス・ハカン
(72)【発明者】
【氏名】ベンネルバリ、ヨハン・アンデシュ
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540686(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0079383(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/191426(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/141294(WO,A1)
【文献】 特表2012−505224(JP,A)
【文献】 特表2004−503564(JP,A)
【文献】 特表2008−519824(JP,A)
【文献】 KUPCZYK-SUBOTKOWSKA,Lidia, ,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,1997年,40,1726-1730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(III):
【化1】
またはその脱保護された生成物の製造のための方法であって、
化合物(II):
【化2】
をクロロ酢酸と、還元剤および緩衝剤の存在下に反応させることを含み、
式中、PGは、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、1-アダマンチルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、クロロアセチル、フェニルアセチル、ベンズアセチル、p-トルエンスルホニル、2-ニトロベンゼンスルホニル、t-ブチルスルホニル、2-または4-ニトロベンゼンスルホニル、2,4-ジニトロベンゼンスルホニル、および、2-ナフタレンスルホニルからなる群から選択される保護基であり、
Rは、適切に保護された形のOHであるか、または、
【化3】
であり、前記適切に保護された形は、メチルエステル、メトキシメチルエステル、9-フルオレニルメチルエステル、t-ブチルエステル、ベンジルエステル、ジフェニルメチルエステル、トリフェニルメチルエステル、2,6-ジメチルフェニルエステル、トリメチルシリルエステル、トリエチルシリルエステル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエステル、2-(トリメチルシリル)エチルエステル、S-t-ブチルエステル、および、2-アルキル-1,3-オキサゾリンからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記方法が、ボラン、ボラン−ルイス塩基錯体、ボロヒドリド、メタルヒドリド、および、金属触媒の存在下のHからなる群から選択される還元剤の存在下に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元剤が、BH、またはボランジメチルスルフィドである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
PGが、t-ブチルオキシカルボニルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、3から50℃の範囲の、例えば4から45℃の範囲の温度で行われる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、5から40℃の範囲の温度で行われる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記緩衝剤が、クロロ酢酸塩である、例えばクロロ酢酸ナトリウムである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
クロロ酢酸:クロロ酢酸塩のモル比が、2:1から5:1である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
化合物(II):クロロ酢酸塩のモル比が、1:7から1:20である、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
Rが、
【化4】
である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
化合物(III)の塩または化合物(III)の脱保護された生成物の塩の製造のための方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法および塩を生成する工程を、例えば塩酸塩を生成する工程を含む、方法。
【請求項12】
化合物(II)が、化合物(VI):
【化5】
を還元剤と反応させることによって生成されたものであり、
式中、PGは、化合物(II)に関して定義された通りであり、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または、
【化6】

であり、前記適切に保護された形は、メチルエステル、メトキシメチルエステル、9-フルオレニルメチルエステル、t-ブチルエステル、ベンジルエステル、ジフェニルメチルエステル、トリフェニルメチルエステル、2,6-ジメチルフェニルエステル、トリメチルシリルエステル、トリエチルシリルエステル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエステル、2-(トリメチルシリル)エチルエステル、S-t-ブチルエステル、および、2-アルキル-1,3-オキサゾリンからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記還元剤が、水素および触媒である、例えばH/Pd/Cである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Rが、
【化7】

であり、化合物(VI)が、化合物(IV):
【化8】

を、化合物(V):
【化9】

と反応させることによって生成されたものであり、
式中、PGは、化合物(II)に関して定義された通りである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
化合物(I):
【化10】
またはその塩の製造のための方法であって、
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を行うこと、および、さらに、化合物(III)を脱保護して、化合物(I)またはその塩を生成することを含み、
式中、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または、
【化11】
であり、前記適切に保護された形は、メチルエステル、メトキシメチルエステル、9-フルオレニルメチルエステル、t-ブチルエステル、ベンジルエステル、ジフェニルメチルエステル、トリフェニルメチルエステル、2,6-ジメチルフェニルエステル、トリメチルシリルエステル、トリエチルシリルエステル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエステル、2-(トリメチルシリル)エチルエステル、S-t-ブチルエステル、および、2-アルキル-1,3-オキサゾリンからなる群から選択される、方法。
【請求項16】
化合物(I)が、化合物(Ib):
【化12】
またはその塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、化合物(I)の塩の製造のための方法である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、化合物(Ib)の塩酸塩:
【化13】
の製造のためである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
化合物(VIb):
【化14】
の製造のための方法であって、
化合物(IV):
【化15】
を、化合物(V):
【化16】
と反応させることを含み、
式中、PGは、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、1-アダマンチルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、クロロアセチル、フェニルアセチル、ベンズアセチル、p-トルエンスルホニル、2-ニトロベンゼンスルホニル、t-ブチルスルホニル、2-または4-ニトロベンゼンスルホニル、2,4-ジニトロベンゼンスルホニル、および、2-ナフタレンスルホニルからなる群から選択される保護基である、方法。
【請求項20】
次の構造:
【化17】
を有し、
式中、YはNHまたはNOであり、PGは、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、1-アダマンチルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、クロロアセチル、フェニルアセチル、ベンズアセチル、p-トルエンスルホニル、2-ニトロベンゼンスルホニル、t-ブチルスルホニル、2-または4-ニトロベンゼンスルホニル、2,4-ジニトロベンゼンスルホニル、および、2-ナフタレンスルホニルからなる群から選択される保護基である化合物。
【請求項21】
PGが、t-ブチルオキシカルボニルである、請求項20に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルフルフェン(melflufen)、またはその塩、およびメルファラン、またはその塩を調製するための改善された方法に関する。本発明は、さらに、本発明の方法において生成される新規中間体化合物を提供する。
【発明の背景】
【0002】
アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタードに由来する薬剤、すなわちビス(2−クロロエチル)アミン誘導体は、様々な癌の治療において化学療法剤として使用される。メルファラン、すなわち、p−ビス−(2−クロロエチル)−アミノ−L−フェニルアラニン(化合物(Id)、CAS No.148−82−3)は、ナイトロジェンマスタードとアミノ酸のフェニルアラニンとのコンジュゲートであるアルキル化剤である(US 3,032,584)。メルファランは、転移性黒色腫の治療において臨床的に使用されるが、限られた効能、用量制限毒性を有し、耐性が現れることがある。
【0003】
【化1】
【0004】
メルファランフルフェンアミドエチルエステル(L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、メルフルフェン、化合物(Ib))は、アミノ酸のフェニルアラニンにコンジュゲートしてジペプチドを生成したメルファランの誘導体である(WO 01/96367)。
【0005】
【化2】
【0006】
メルフルフェンの一塩酸塩(L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル一塩酸塩;(Ib)の塩酸塩;CAS No.380449−54−7)は、メルフルフェン塩酸塩と呼ばれる。
【0007】
【化3】
【0008】
骨髄腫を含めて、ヒトの癌の約20種類の異なる診断結果に対応するヒト腫瘍細胞の培養で研究されたとき、メルフルフェンは、メルファランの効能に比べて、50から100倍高い効能を示した(http://www.oncopeptides.se/products/melflufen/2015年3月26日にアクセスされた)。Arghya, et al. abstract 2086「A Novel Alkylating Agent Melphalan Flufenamide Ethyl Ester Induces an Irreversible DNA Damage in Multiple Myeloma Cells」(2014)5th ASH Annual Meeting and Expositionにおいて開示されたデータは、メルフルフェンが、急速に、活発(robust)で、不可逆的なDNAの損傷を引き起こし、これは、多発性骨髄腫細胞におけるメルファラン耐性を克服する、その能力の説明となり得る。メルフルフェンは、現在、多発性骨髄腫における第I/IIa相の臨床試験を受けている。
【0009】
塩酸塩の状態のメルフルフェンを調製するための方法は、WO 01/96367に記載されており、下に、スキーム1に示される。その方法では、N−tert−ブトキシカルボニル−L−メルファランが、p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルと反応させられて、N−tert−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルを生じる。勾配カラムクロマトグラフィーによる精製後、その工程の収率は43%である。
【0010】
【化4】
【0011】
スキーム1に示されているように、メルフルフェン(塩酸塩の状態の)を調製するための既知の方法は、出発材料として細胞毒性剤のメルファランを用い、メルフルフェンは、複数の工程を順次行って合成される。メルファランは、非常に毒性が強く、このため、出発材料および中間体の全て、さらには発生する廃棄物流も、極めて毒性が強い。これが、該方法を大規模に用いるとき、安全性、環境への影響およびコストの点で、主要な不都合である。したがって、改善された、より安全な方法が、特にメルフルフェンを大規模に製造するために、非常に望まれている。さらに、市販のメルファランの純度は、その劣った安定性のせいで、低く、該方法の各工程の収率は低く、既知の方法によって製造される最終製品の純度は、高くない。
【0012】
メルファランを調製するための方法が、WO 2014/141294に記載されている。WO 2014/141294において、分子にビス(2−クロロエチル)基を導入するための工程は、エチレンオキシドガスとの反応による、第3級フェニルアミンジオールへの第1級フェニルアミンの変換を含む。これは、52.6%の収率を示す。次いで、アミンジオールは、塩化ホスホリルとの反応によって、ビス(2−クロロエチル)フェニルアミンに変換される。芳香族アミンを、対応するビス−(2−ヒドロキシエチル)アミンに変換するために、エチレンオキシド、またはクロロエタノールを用い、その後、その中間体を塩素化することは、芳香族ビス−(2−クロロエチル)アミンを製造するための一般的技法である。クロロアレーンから出発し、それにジエタノールアミンとのSNAr−反応を行うこともまた知られている。本発明者等は、スキーム2に、下で示されるように、メルフルフェン(その塩の状態の)を製造するために、これらの方法を適用した。
【0013】
【化5】
【0014】
本発明者等は、THF中のエチレンオキシドを用いると(スキーム2の経路(a))、55℃でアルキル化は起こらないこと;温度を60℃に上げると、ジアルキル化中間体が生成されるが、反応は非常に遅いことを見出した。収率および反応速度を上げるためには、反応は、高い温度を必要とするであろうが、これは、圧力の増加を引き起こし、その結果、反応は、圧力容器で行われる必要があるであろう。このような条件は、副生成物の生成に繋がる可能性がある。類似の反応条件であるが、エチレンオキシドと酢酸の50:50混合物を用いると(スキーム2の経路(b))、反応時間は、より速くなるが、副生成物が生成される。炭酸カリウムおよびクロロエタノールを用いると(スキーム2の経路(c))、恐らくはエチルエステルと部分エステル交換を行うクロロエタノールのせいで、やはり副生成物が生成される。
【0015】
本発明者等は、ジ−アルキル化化合物の塩素化も試みた。ジクロロメタン中の塩化チオニルを用いる、スキーム2のビス−(2−ヒドロキシエチル)化合物(4)の塩素化は、脱保護された副生成物を、かなり生成した。POCl3を用いる、スキーム2のビス−(2−ヒドロキシエチル)化合物(4)の塩素化は、高い温度および長い反応時間を要した。加えて、塩化チオニルとPOCl3の両方は、安全性への懸念のせいで、大規模に取り扱うのは難題である。本発明者等はまた、スキーム2のビス−(2−ヒドロキシエチル)化合物(4)を、メタンスルホニルクロリドおよびトリエチルアミンによる処理によって、対応するジメシレートに変換した。次いで、ジメシレートは、120℃で、DMF中の塩化ナトリウムにより処理された。しかし、この反応の粗生成物は、かなりの副生成物を含み、この経路を大規模に経済的に用いることを不適切にしていた。
【0016】
要約すると、これらの経路のどれも、高純度メルフルフェンの大規模生産に適していないことが見出された。それらは、メルフルフェンの合成では、うまくいかず、結果として、収率は悪く、効率的ではない。さらに、スキーム2に示された経路は、N,N−ビス−クロロエチルアミンを生成するために複数の工程を必要とし、毒性のある試薬を用いる。
【0017】
本発明者等は、メルフルフェン(特に、その塩酸塩の状態のメルフルフェン)の製造のための改善された方法を見出したが、これは、優れた収率で、また非常に高いレベルの純度を有する化合物を提供する。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、化合物(III):
【0019】
【化6】
【0020】
またはその脱保護された生成物の製造のための方法を提供し、
この方法は、化合物(II):
【0021】
【化7】
【0022】
をクロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させること、
を含み、
式中、PGは保護基であり、Rは、適切に保護された形のOHであるか、または
【0023】
【化8】
【0024】
である。
【0025】
本発明者等によって、驚くべきことに、ナイトロジェンマスタードへの芳香族アミン化合物(II)の変換は、高収率および高純度で、1工程だけで達成できることが見出された。
【0026】
本発明はまた、化合物(I):
【0027】
【化9】
【0028】
またはその塩の製造のための方法も提供し、
この方法は、上記の化合物(III)の製造のための方法を行うこと、および、さらに、化合物(III)を脱保護して、化合物(I)またはその塩を生成することを含み、
式中、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または
【0029】
【化10】
【0030】
である。
【0031】
本発明は、さらに、化合物(VIb):
【0032】
【化11】
【0033】
の製造のための方法を提供し、
この方法は、化合物(IV):
【0034】
【化12】
【0035】
を化合物(V):
【0036】
【化13】
【0037】
と反応させることを含み、
式中、PGは保護基である。
【0038】
本発明は、さらに、化合物(II):
【0039】
【化14】
【0040】
の製造のための方法を提供し、
この方法は、化合物(VI):
【0041】
【化15】
【0042】
を還元剤と反応させることを含み、
式中、PGは保護基であり、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または、
【0043】
【化16】
【0044】
である。
【0045】
本発明は、さらに、次の構造を有する化合物:
【0046】
【化17】
【0047】
を提供し、
式中、YはNH2またはNO2であり、PGは保護基である。
【詳細な説明】
【0048】
本発明は、クロロ酢酸および還元剤を用いる、たった1つの工程だけで、芳香族第1級アミン(化合物(II))を芳香族N,N−ビス−クロロエチルアミンに変換することを含む、メルフルフェン、もしくはその塩、またはメルファラン、もしくはその塩の合成のための改善された方法を提供する。この方法は、非常にうまくいき、高純度を有する生成物の良好な収率をもたらす。この方法は、2つの単一工程であるビス−ヒドロキシアルキル化および塩素化が、1つの容器における1つの作業工程によって置き換えられるという理由で、特に効率的である。
【0049】
不確かさを避けるために記すと、ここで「メルフルフェン」に言及される場合、特に断わらなければ、それは、メルフルフェンまたはその塩(例えば、メルフルフェン塩酸塩)を表し得る。
【0050】
不確かさを避けるために記すと、本発明の方法、またはここで記載される化合物のいずれか1つの特徴の態様もしくは好ましい側面は、さらなる態様を生み出すために、本発明の方法、またはここで記載される化合物の別の特徴のいずれかの態様もしくは好ましい側面と組み合わされてもよい。
【0051】
メルファランは、「L」型立体配置を有し;メルフルフェンは、「LL」型立体配置を有し、本出願において描かれた構造においての、「L」型および「LL」型立体配置である。本発明の方法、およびここで記載される化合物は、「D」型、または「DL」型、「LD」型および「DD」型異性体または異性体の混合物(ラセミ混合物を含めて)に、同様に適用可能である。
【0052】
本発明は、化合物(III):
【0053】
【化18】
【0054】
またはその脱保護された生成物の製造のための方法を提供し、
この方法は、次の工程:
(c)化合物(II):
【0055】
【化19】
【0056】
をクロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させること、
を含み、
式中、PGは保護基であり、Rは、適切に保護された形のOHであるか、または
【0057】
【化20】
【0058】
である。
【0059】
本発明の好ましい態様において、Rは、
【0060】
【化21】
【0061】
である。こうして、本発明は、化合物(IIIb):
【0062】
【化22】
【0063】
またはその脱保護された生成物の製造のための方法を提供し、
この方法は、次の工程:
(c)化合物(IIb)
【0064】
【化23】
【0065】
をクロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させること、
を含み、
式中、PGは保護基である。
【0066】
PGは、第1級アミンの保護に適する保護基である。このような保護基は、当業者によく知られている、例えば、Wuts、P.G.M.、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、5th Edition(2014)(John Wiley & Sons、Inc.)を参照。保護基の選択は、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。例えば、PGは、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)、1−アダマンチルオキシカルボニル(Adoc)、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、クロロアセチル、フェニルアセチル、ベンズアセチル、p−トルエンスルホニル(トシル、Ts)、2−ニトロベンゼンスルホニル(Nps)、t−ブチルスルホニル(Bus)、2−または4−ニトロベンゼンスルホニル(ノシル)、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル(DNs)、および2−ナフタレンスルホニルからなる群から選択され得る。
【0067】
例えば、式(IIIb)の化合物は、メチルオキシカルボニル−L−メルファラン、エチルオキシカルボニル−L−メルファラン、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル−L−メルファラン、t−ブチルオキシカルボニル−L−メルファラン、ベンジルオキシカルボニル−L−メルファラン、p−メトキシベンジルオキシカルボニル−L−メルファラン、1−アダマンチルオキシカルボニル−L−メルファラン、p−ブロモベンジルオキシカルボニル−L−メルファラン、トリフルオロアセチル−L−メルファラン、クロロアセチル−L−メルファラン、フェニルアセチル−L−メルファラン、ベンズアセチル−L−メルファラン、p−トルエンスルホニル−L−メルファラン、2−ニトロベンゼンスルホニル−L−メルファラン、t−ブチルスルホニル−L−メルファラン、2−または4−ニトロベンゼンスルホニル−L−メルファラン、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル−L−メルファラン、2−ナフタレンスルホニル−L−メルファラン;メチルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、エチルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、t−ブチルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、ベンジルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、1−アダマンチルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、トリフルオロアセチル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、クロロアセチル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、フェニルアセチル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、ベンズアセチル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、p−トルエンスルホニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、2−ニトロベンゼンスルホニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、t−ブチルスルホニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、2−または4−ニトロベンゼンスルホニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル、または2−ナフタレンスルホニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルであり得る。
【0068】
例えば、式(II)の化合物は、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(メチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(エチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(p−メトキシベンジルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(1−アダマンチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(p−ブロモベンジルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(トリフルオロアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(クロロアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(フェニルアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(ベンズアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(p−トルエンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(2−ニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(t−ブチルスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(4−ニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(2−ニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(2,4−ジニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、または、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−(2−ナフタレンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチルであり得る。
【0069】
好ましくは、PGは、Fmoc、Boc、Cbz、Moz、Adoc、ブロモベンジルカルバメート、および、トリフルオロアセトアミドからなる群から選択される。より好ましくは、PGはBocである。
【0070】
こうして、本発明は、化合物(IIIa):
【0071】
【化24】
【0072】
またはその脱保護された生成物の製造のための方法を提供し、
この方法は、次の工程:
(c)化合物(IIa):
【0073】
【化25】
【0074】
をクロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させること、
を含み、
式中、Rは、適切に保護された形のOHであるか、または
【0075】
【化26】
【0076】
である。
【0077】
Rが、適切に保護された形のOHである態様において、OH基(および任意に、隣接するカルボニル基)は、カルボン酸の保護に適する何らかの基によって保護され得る。このような保護基は、当業者によく知られている、例えば、Wuts、P.G.M.、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、5th Edition(2014)(John Wiley & Sons、Inc.)を参照。カルボン酸の保護基の選択は、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。例えば、保護基は、メチルエステル、メトキシメチルエステル、9−フルオレニルメチルエステル、t−ブチルエステル、ベンジルエステル、ジフェニルメチルエステル、トリフェニルメチルエステル、2,6−ジメチルフェニルエステル、トリメチルシリルエステル、トリエチルシリルエステル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルエステル、2−(トリメチルシリル)エチルエステル、S−t−ブチルエステル、および、2−アルキル−1,3−オキサゾリンからなる群から選択され得る。
【0078】
特に好ましい態様において、PGはBocであり、Rは、
【0079】
【化27】
【0080】
である。
【0081】
こうして、本発明は、化合物(IIIc):
【0082】
【化28】
【0083】
またはその脱保護された生成物の製造のための方法を提供し、
この方法は、次の工程:
(c)化合物(IIc):
【0084】
【化29】
【0085】
をクロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させること、
を含む。
【0086】
本発明の工程(c)において使用される還元剤は、例えば、還元的アミノ化または還元的アルキル化反応において使用されるのに適する還元剤であってよい。好ましくは、還元剤は、ヒドリドドナー、例えば、ボラン、ボラン−ルイス塩基錯体、ボロヒドリド、メタルヒドリド、および、金属触媒の存在下のH2からなる群から選択される還元剤である。本発明のある態様において、還元剤は、B26、B1014、BH3SMe2(ボランジメチルスルフィド、BMS)、BH3THF、NaBH4、LiBH4、NaBH3CN、水素化アルミニウム(アラン)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、および、金属触媒(例えば、任意に担体上の、例えばカーボン上の、パラジウム、白金、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの化合物(例えば、それらの酸化物)からなる群から選択される触媒)の存在下のH2からなる群から選択される。還元剤がH2である場合、好ましくは、触媒はパラジウムである(H2/Pd)。より好ましくは、還元剤は、ボラン、およびボラン−ルイス塩基錯体、例えば、B26、B1014、BH3SMe2、BMSまたはBH3THFからなる群から選択される。最も好ましくは、還元剤は、BMSおよびBH3THFからなる群から選択される。より一層好ましくは、還元剤はBMSである。
【0087】
反応は、好ましくは、溶媒の存在下に行われる。適切な溶媒の選択は、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。好ましくは、溶媒は、極性の非プロトン性溶媒である。例えば、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)、メチルシクロペンチルエーテルおよびジブチルエーテル、またはこれらの混合物からなる群から選択される溶媒であってよい。より好ましくは、溶媒は、THFおよび2−MeTHFからなる群から選択される。好ましい一態様において、溶媒はTHFである。別の好ましい態様において、溶媒は2−MeTHFである。
【0088】
好ましくは、反応温度は、1から80℃の範囲にある。ある好ましい態様において、反応温度は、1から50、好ましくは4から45、より好ましくは5から40℃の範囲に、例えば5から30℃の範囲にある。好ましい一態様において、反応は、5から20℃の範囲で行われ、例えば、反応は、5から7℃で始めて、次いで、反応の間に、温度を約20乃至30℃に、例えば約20℃に上げて行われてもよい。
【0089】
別の好ましい態様において、反応は、1から50℃(より好ましくは4から45℃)の範囲で行われ、例えば、反応は、約1から10℃(例えば、3から7℃、好ましくは4から6℃)で始めて、次いで、反応の間に、温度を約20乃至30℃に、例えば約20℃乃至25℃に上げて行われてもよい。より好ましくは、反応は、約1から10℃(例えば、3から7℃、好ましくは4から6℃)で始めて、次いで、反応の間に、温度を約5乃至15℃に、例えば5乃至13℃に、次に、約20乃至30℃に、例えば約20乃至25℃に、上げて行われてもよい。
【0090】
一態様において、反応温度は、最初に、約40乃至50℃に上げられる。例えば、反応温度は、反応の間に、45℃に上げられ、次いで、約1乃至10℃(例えば、3乃至7℃、例えば、3、4、5、6、または7℃、好ましくは約4乃至6℃)に冷却され、次に、温度は、約20乃至30℃に、例えば約20乃至25℃に上げられる。より好ましくは、反応温度は、反応の間に、45℃に上げられ、次いで、約1乃至10℃(例えば、3から7℃、例えば、3、4、5、6、または7℃、好ましくは約4乃至6℃)に冷却され、次に、温度は、約5乃至15℃に、例えば5乃至13℃に、次いで、約20乃至30℃に、例えば約20乃至25℃に上げられる。
【0091】
好ましくは、化合物(II):クロロ酢酸のモル比は、1:2以下、好ましくは1:5以下、より好ましくは1:10以下、最も好ましくは1:20以下である。ある好ましい態様において、化合物(II):クロロ酢酸のモル比は、1:2から1:100、好ましくは1:5から1:40、より好ましくは1:10から1:35、より一層好ましくは1:15から1:30、最も好ましくは1:20から1:28、例えば、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、または1:28であり、好ましくは1:26である。
【0092】
好ましくは、化合物(II):還元剤のモル比は、1:1以下、好ましくは1:3以下、より好ましくは1:7以下である。ある好ましい態様において、化合物(II):還元剤のモル比は、1:1から1:50、好ましくは1:3から1:30、より好ましくは1:5から1:20、より一層好ましくは1:8から1:18、最も好ましくは1:10から1:15、例えば1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、または1:25であり、好ましくは1:13である。
【0093】
本発明者等は、さらに、驚くべきことに、上記の化合物(III)を得るための化合物(II)の反応は、緩衝剤、例えば、クロロ酢酸との組合せで緩衝剤として働くクロロ酢酸塩により提供される緩衝剤の存在下に行われるとき、さらに改善されることを見出した。本発明者等は、クロロ酢酸塩を緩衝剤として使用することより、クロロ酢酸だけを用いる方法に比べて、化合物(III)が、結果として、より一層高い収率で、より高純度で得られることを見出した。反応がクロロ酢酸塩の存在下に行われるとき、副生成物、特にPG基の脱保護により生じる副生成物が、より少ないことが認められる。例えば、化合物(II)が化合物(IIc)である場合、Boc基を失うことから生じる副生成物がより少ないことが認められる。
【0094】
ある好ましい態様において、反応は、緩衝剤の存在下に行われる。緩衝剤は、溶液のpHを、別の酸または塩基の添加後に、選ばれた値の近くに保つ役割を果たすことができるものである。本発明の還元に通常使用される非水溶媒では、溶液から酸(すなわち、プロトン)を除去できる化合物はすべて、緩衝剤であると考えることができる。例えば、緩衝剤は、弱い酸または塩基の塩と組み合わせられた弱い酸または塩基、例えば、リン酸と、リン酸ナトリウムおよび/またはリン酸水素ナトリウムおよび/またはリン酸二水素ナトリウムのようなリン酸塩との組合せであってよい。クロロ酢酸が反応物中に存在するので、緩衝剤はクロロ酢酸の塩であってよい。
【0095】
特に好ましいある態様において、緩衝剤はクロロ酢酸塩である。クロロ酢酸塩は、クロロ酢酸ナトリウム、クロロ酢酸カリウム、クロロ酢酸マグネシウム、クロロ酢酸カルシウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されてよい。好ましくは、クロロ酢酸塩はクロロ酢酸ナトリウムである、すなわち、反応は、クロロ酢酸ナトリウムの存在下に行われる。
【0096】
好ましくは、反応がクロロ酢酸塩の存在下に行われる場合、クロロ酢酸塩とクロロ酢酸の量は、緩衝溶液が得られるような量である。緩衝溶液は、それに少量の酸またはアルカリが添加されたとき、pH、または、非水溶媒では溶液中の酸(すなわち、プロトン)の量の変化を食い止める溶液である。
【0097】
反応がクロロ酢酸塩の存在下に行われる態様において、本発明者等は、副生成物の生成が、特定のモル比の化合物(II):クロロ酢酸塩を用いることによって、最小限度に抑えられることを見出した。好ましくは、反応がクロロ酢酸塩の存在下に行われる場合、化合物(II):クロロ酢酸塩のモル比は、1:3以下、より好ましくは1:4以下、より一層好ましくは1:7以下、例えば、1:9以下、1:12以下、1:15以下である。ある好ましい態様において、化合物(II):クロロ酢酸塩のモル比は、1:4から1:50、好ましくは1:5から1:30、より好ましくは1:7から1:20、より一層好ましくは1:8から1:15、例えば1:10である。
【0098】
ある好ましい態様において、クロロ酢酸:クロロ酢酸塩のモル比は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1である。ある好ましい態様において、クロロ酢酸:クロロ酢酸塩のモル比は、1:1から10:1、好ましくは1:1から6:1、より好ましくは2:1から5:1、より一層好ましくは2:1から4:1、例えば2.6:1である。
【0099】
好ましくは、反応がクロロ酢酸塩の存在下に行われる場合、化合物(I)の1モル当量毎に、少なくとも2モル当量のクロロ酢酸、少なくとも1モル当量のクロロ酢酸塩、および少なくとも1モル当量の還元剤が存在する。より好ましくは、化合物(I)の1モル当量毎に、少なくとも8モル当量のクロロ酢酸、少なくとも4モル当量のクロロ酢酸塩、および少なくとも4モル当量の還元剤が存在する。より一層好ましくは、化合物(I)の1モル当量毎に、少なくとも14モル当量のクロロ酢酸、少なくとも7モル当量のクロロ酢酸塩、および少なくとも7モル当量の還元剤が存在する。より一層好ましくは、化合物(I)の1モル当量毎に、少なくとも20モル当量のクロロ酢酸、少なくとも7モル当量のクロロ酢酸塩、および少なくとも10モル当量の還元剤が存在する。最も好ましくは、化合物(I)の1モル当量毎に、少なくとも24モル当量のクロロ酢酸(例えば、24、26、28または30モル当量)、少なくとも9モル当量のクロロ酢酸塩(例えば、9、10、12または15モル当量)、および少なくとも12モル当量の還元剤(例えば、12、13または15モル当量)が存在する。
【0100】
ある好ましい態様において、化合物(I)の1モル当量毎に、2から60モル当量のクロロ酢酸、1から50モル当量のクロロ酢酸塩、および1から30モル当量の還元剤が存在する。より好ましくは、8から60モル当量のクロロ酢酸、4から50モル当量のクロロ酢酸塩、および4から30モル当量の還元剤が存在する。より一層好ましくは、化合物(I)の1モル当量毎に、14から40モル当量のクロロ酢酸、7から25モル当量のクロロ酢酸塩、および7から20モル当量の還元剤が存在し;最も好ましくは、化合物(I)の1モル当量毎に、24から30(例えば、26)モル当量のクロロ酢酸、9から15(例えば、10)モル当量のクロロ酢酸塩、および12から15(例えば、13)モル当量の還元剤が存在する。
【0101】
好ましくは、反応工程(c)が一旦完了すると、反応は、極性プロトン性溶媒、例えばアルコールまたは水でクエンチされる。好ましい一態様において、反応はエタノールでクエンチされる。別の好ましい態様では、反応は水でクエンチされる。
【0102】
ある好ましい態様において、本発明に従って生成される化合物(III)は、不純物を除去するために、1種以上の溶媒(例えば、エタノール、酢酸エチル、アセトン、2−MeTHFおよびこれらの混合物から選択される溶媒)および1種以上の非溶媒(例えばヘプタン)で再晶析される。化合物(III)が化合物(IIIc)である態様において、本発明者等は、化合物(IIIc)を、エタノール、酢酸エチル、アセトンまたは2−MeTHFに高温で溶かし、温度を下げ、そして、例えばヘプタンを加えると、純度を上げられることを見出した。例えば、約7倍の体積のアセトン中50℃での再晶析、その後のヘプタンの添加および冷却は、生成物の純度を、HPLCによる96.8から98.6面積%に向上させることができる。ある態様において、化合物(III)(例えば、化合物(IIIc))は、アセトン/ヘプタンの混合物、または、2−MeTHF/ヘプタンの混合物で再晶析される。
【0103】
反応が水でクエンチされる態様において、水の添加後、化合物(III)は、反応溶液から析出し得る(例えば、反応溶液を約4乃至8℃に冷却することによる)が、この場合、反応溶液に高温(例えば、約30乃至40℃)で再溶解され得る。次いで、有機および水性相は分離され、有機相は洗われ得る(例えば、塩の水溶液(例えば、NaCl水溶液、好ましくは20%のNaCl水溶液)により洗われる)。次に、有機相は、濃縮されて、化合物(III)を析出し得る。好ましくは、次いで、化合物(III)は、溶媒で、例えば非プロトン性溶媒、または非プロトン性溶媒の混合物、より好ましくは2−MeTHF/ヘプタン混合物で、洗われ得る。化合物(III)が化合物(IIIc)である態様において、本発明者等は、これらの単離工程は、さらなる精製工程(例えば再晶析)の必要なしに、驚くべき高純度の化合物(IIIc)を生じることを見出した。
【0104】
本発明による化合物(III)または(IIIa)の脱保護された生成物は、PG保護基が取り除かれた、またはRが適切に保護された形のOHである場合には、OH保護基が取り除かれた、式(III)または(IIIc)の化合物である。好ましくは、PG保護基は除去される(例えば、式(I)の化合物)。より好ましくは、PG保護基は除去され、Rが適切に保護された形のOHである場合、OH保護基は除去される。
【0105】
本発明による化合物(IIIb)または(IIIc)の脱保護された生成物は、PG保護基が除去された式(IIIb)または(IIIc)の化合物である(例えば、式(Ib)の化合物)。
【0106】
本発明のある態様において、化合物(III)の塩または化合物(III)の脱保護された生成物の塩が、生成される。このため、本発明はまた、化合物(III)(例えば、(IIIa)、(IIIb)もしくは(IIIc)の製造のための上記プロセス、および、その塩を生成する工程、例えば塩酸塩を生成する工程を含む、化合物(III)の塩(例えば、化合物(IIIa)、(IIIb)もしくは(IIIc)の塩)、または化合物(III)の脱保護された生成物の塩(例えば、化合物(IIIa)、(IIIb)もしくは(IIIc)の脱保護された生成物の塩)の製造のための方法も提供する。
【0107】
化合物(III)の塩もしくは化合物(III)の脱保護された生成物の塩を生成する工程は、化合物(III)もしくはその脱保護された生成物を生成する工程とは別個の工程であり得る;または、塩を生成する工程は、化合物(III)またはその脱保護された生成物を生成する工程の一部として行われてもよい。
【0108】
本発明の方法は、化合物(III)のPG保護基を除去して、化合物(I):
【0109】
【化30】
【0110】
またはその塩を得る、さらなる工程(d)を任意に含んでいてもよく、
ここで、PGおよびRは、工程(c)に関して上で定義された通りである。
【0111】
好ましくは、化合物(I)の塩は、薬学的に許容される塩(すなわち、薬学的に許容され、医薬品に使用されるのに適し、対イオンが薬学的に許容されるものである化合物(I)の塩)である。好ましくは、化合物(I)の塩は、薬学的に許容される酸性塩、より特別には塩酸塩である。
【0112】
特に、本発明に係る、酸により生成される適切な塩には、無機酸、強い有機カルボン酸、例えば、無置換であるか、もしくは例えばハロゲンによって置換された1から4個の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば飽和もしくは不飽和ジカルボン酸、例えばヒドロキシカルボン酸、例えばアミノ酸により、または、有機スルホン酸、例えば、無置換であるかもしくは例えばハロゲンによって置換された(C1〜C4)アルキルもしくはアリールスルホン酸により、生成されるものが含まれる。薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシンおよびアルギニンから生成されるものが含まれる。
【0113】
本発明の好ましい態様において、化合物(I)の塩が得られる。より好ましくは、薬学的に許容される塩が、最も好ましくは、薬学的に許容される酸性塩が、より特別には塩酸塩が得られる。
【0114】
好ましい態様において、Rは、
【0115】
【化31】
【0116】
であり、工程(d)は、化合物(IIIb)のPG保護基を除去して、化合物(Ib)(メルフルフェン)、またはその塩を得ることを含み;ここで、PGは、工程(c)に関して上で定義された通りである。
【0117】
好ましくは、化合物(Ib)の塩が得られる。より好ましくは、薬学的に許容される塩が、最も好ましくは薬学的に許容される酸性塩が、より特別には塩酸塩が得られる。
【0118】
非常に広範な反応条件が、工程(d)における保護基PGの除去を行うために使用され得る。工程(d)に必要な反応条件は、PG保護基の性質に依存する。上の工程(c)におけるPGの定義に応じた保護基の除去のための条件の選択は、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。例えば、保護基がカルバメート基である場合、塩酸(HCl)またはトリフルオロ酢酸(TFA)のような酸(好ましくはHCl)が、保護基を除去するために使用され得る。保護基を除去するための適切な条件は、例えば、Wuts、P.G.M.、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、5th Edition(2014)(John Wiley & Sons、Inc.)に教示されている。
【0119】
例えば、PGがBocである(すなわち、化合物(III)が化合物(IIIa)である)場合、工程(d)は、化合物(IIIa)を、酸性反応条件下に反応させて、化合物(I)(メルフルフェンもしくはメルファラン)、またはその塩(好ましくは、その塩酸塩)を得ることを含み;ここで、PGおよびRは、工程(c)に関して上で定義された通りである。
【0120】
別の好ましい態様において、PGはBocであり、Rは、
【0121】
【化32】
【0122】
であり、工程(d)は、化合物(IIIc)のPG保護基を除去して、化合物(Ib)(メルフルフェン)、またはその塩を得ることを含む。好ましくは、化合物(Ib)の塩が得られる。より好ましくは、化合物(Ib)の薬学的に許容される塩が、最も好ましくは、化合物(Ib)の薬学的に許容される酸の塩が、より特別には、化合物(Ib)の塩酸塩
【0123】
【化33】
【0124】
が得られる。
【0125】
PGが酸に不安定な保護基、例えばBocである態様において、好ましくは、化合物(III)(例えば、化合物(IIIa)または(IIIc))は、保護基を除去するために、酸性反応条件下に、好ましくはHClと反応させられて、化合物(I)(例えば(Ib))、またはその塩を生成する。好ましくは、化合物(I)(例えば(Ib))の塩酸塩が生成される。
【0126】
工程(d)での適切なHCl源の例には、1.3MのHCl/EtOH、2.5MのHCl/EtOH、1MのHCL/EtOAc、3MのHCl/EtOH、および、5〜6MのHCl/iPrOHが含まれる。好ましくは、化合物(III):HClのモル比は、1:1から1:50であり、より好ましくは、それは、1:3から1:30、より一層好ましくは1:5から1:20、最も好ましくは1:7から1:17、例えば1:10である。
【0127】
好ましくは、脱保護のための溶媒は、エタノール(EtOH)、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、THF、アセトン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、反応は、HCl/EtOH、酢酸エチル/HCl/EtOH、アセトン/HCl/EtOH、またはTHF/HCl/EtOHの混合物中で行われ得る。例えば、HCl/EtOH、アセトン/HCl/EtOH、またはTHF/HCl/EtOH。好ましくは、反応は、HCl/EtOH、または、酢酸エチル/HCl/EtOHの混合物中で行われる。
【0128】
工程(d)の生成物は、精製され得る、例えば、溶媒で洗うこと(例えば、エタノールによる1回以上の洗浄、例えばエタノールによる3回の洗浄)および/または晶析(例えば、エタノールでの再晶析および/またはメチルtert−ブチルエーテルでの再晶析;例えば、メチルtert−ブチルエーテルでの再晶析;または、例えば、メチルtert−ブチルエーテルでの再晶析とそれに続くエタノールでの再晶析)によって精製され得る。
【0129】
好ましくは、脱保護は、N,N−ビス−クロロエチルアミンが生成される工程(c)の後の別個の工程である。しかし、ある態様において、脱保護は、ワンポット合成における工程(c)の一部として行うことができる。その場合、本発明の方法は、脱保護された生成物である化合物(I)を、直接与える。
【0130】
本発明のある態様において、化合物(I)の塩(例えば、化合物(Ib)の塩)が生成される。このため、本発明はまた、化合物(I)(例えば(Ib))の製造のための上記プロセス、および、化合物(I)の塩(例えば、化合物(Ib)の塩)を生成する工程、例えば塩酸塩を生成する工程を含む、化合物(I)の塩(例えば、化合物(Ib)の塩)の製造のための方法も提供する。
【0131】
化合物(I)の塩(例えば、化合物(Ib)の塩)を生成する工程は、脱保護工程(d)の後の別個の工程であってよい、または、その塩を生成する工程は、脱保護工程(d)の一部として行われてもよい。好ましい一態様において、化合物(I)の塩(例えば、化合物(Ib)の塩、好ましくは化合物(Ib)の塩酸塩)を生成する工程は、脱保護工程(d)の一部として行われる。このような態様において、好ましくは、PGは、酸に不安定な保護基、例えばBocであり;好ましくは、化合物(III)(例えば、化合物(IIIa)または(IIIc))は、保護基を除去するために、酸性反応条件下に、より好ましくはHClと反応させられて、化合物(I)(例えば(Ib))をその塩として生成する。より好ましくは、化合物(I)(例えば(Ib))の塩酸塩が生成される。
【0132】
別の態様において、化合物(I)の塩(例えば、化合物(Ib)の塩)を生成する工程、および脱保護工程は、ワンポット合成におけるステップ(c)の一部として行われてもよい。その場合、本発明の方法は、脱保護された生成物である化合物(I)の塩を直接与える。
【0133】
本発明者等は、さらに、2つの置換フェニルアラニンである、PG−p−ニトロ−L−フェニルアラニン(化合物(IV))と、p−フルオロ−L−フェニルアラニンエチルエステル(化合物(V))を反応させて、化合物(VIb):
【0134】
【化34】
【0135】
を生成することを含む、新規方法を見出したが、式中、PGは、工程(c)に関して上で定義された通りである。
【0136】
アミノ酸がカップリングされて、化合物(VIb)を生成する。次いで、化合物(VIb)は還元されて、芳香族アミン化合物(IIb)を生成し得る。化合物(IIb)を生成する方法は、無毒の出発材料を用い、このため、メルフルフェンを合成するための方法に用いられる場合、最終工程の前の、毒性生成物の発生を回避する。このため、この方法は、メルフルフェンの合成のための既知の方法で使用されるように、ビス−(2−クロロエチル)含有出発材料を用いるより、ずっと安全である。
【0137】
こうして、本発明はまた、次の工程:
(a)化合物(IV):
【0138】
【化35】
【0139】
を化合物(V):
【0140】
【化36】
【0141】
と反応させること、
を含み、式中、PGは、工程(c)に関して上で定義された通りである、化合物(VIb)の製造のための方法も提供する。
【0142】
ある好ましい態様において、PGはBocであり、方法は、次の工程:
(a)化合物(IVc):
【0143】
【化37】
【0144】
を化合物(V)と反応させて、化合物(VIc):
【0145】
【化38】
【0146】
を得ること、
を含む。
【0147】
本発明の方法の工程(a)は、アミドカップリング反応に適する任意の条件下に行われ得る。アミドカップリング反応の条件の選択は、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。必要な反応条件は、PG保護基の特質に依存し得る。
【0148】
本発明で使用されるのに適するアミドカップリング剤には、カルボジイミド、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、エチル−(N’,N’−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC);ホスホニウム系試薬、例えば、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP);アミニウム系試薬、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム3−オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TDBTU);インモニウムアミニウム系試薬、例えば、(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−N,N−ジメチルメタンイミニウムヘキサクロロアンチモネート(BOMI)、5−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−3,4−ジヒドロ−1−メチル2H−ピロリウムヘキサクロロアンチモネート(BDMP)、および、5−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−3,4−ジヒドロ−1−メチル2H−ピロリウムヘキサクロロアンチモネート(AOMP);酸クロリドを生じる作用剤、例えば、塩化チオニル、五塩化リン、トリホスゲン、トリアジン(例えば、シアヌル酸クロリド、シアヌル酸フルオリド、およびこれらの誘導体)、テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TFFH)、ビス(テトラメチレン)フルオロホルムアミジニウム(BTFFH)、および、1,3−ジメチル−2−フルオロ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(DFIH);または、他のカップリング剤、例えば、3−(ジエチルホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン(DEPBT)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、プロピルホスホン酸無水物(T3P)、およびN−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)が含まれる。
【0149】
さらなる作用剤、例えば、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、2−シアノ−2−(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(オキシマ)が、ラセミ化を抑えるために、アミドカップリング条件に含められてもよい。好ましくは、ラセミ化を抑える、さらなる作用剤は、HOBtである。
【0150】
ある好ましい態様において、アミドカップリングは、HATUまたはHBTUを、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)もしくはN−メチルモルホリン(NMM)と共に用い;EDCおよびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を、DIPEAもしくはNMMと共に用い;プロピルホスホン酸無水物(T3P)を、DIPEAと共に;またはPyBOPを、DIPEAと共に用い;行われる。
【0151】
好ましくは、工程(a)は、EDCの存在下に行われる。より好ましくは、工程(a)は、EDC、HOBtおよびNMMの存在下に行われる。これらの反応条件を用いると、化合物(VIb)は、非常に高い粗生成物純度で、例えば96%を超える純度で、得られ得る。最も好ましくは、工程(a)は、1.1当量のEDC、0.1当量のHOBt、3.5当量のNMMの存在下に、それぞれ約1当量の化合物(IV)および化合物(V)を用いて行われる。
【0152】
特定のアミドカップリング反応条件に対する溶媒の選択は、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。好ましくは、反応に対する溶媒は、非プロトン性溶媒である。例えば、溶媒は、酢酸エチル、アセトン、THF、2−MeTHF、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、シクロペンチルメチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものであってよい。好ましくは、溶媒は、DMF、酢酸エチル、アセトン、2−MeTHFおよびこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、それは酢酸エチルまたはアセトンである。本発明者等は、アセトンが、反応の全体を通して反応混合物を溶液に保ち、本発明のアミドカップリング反応にとって、驚くほど有効な溶媒であることを見出した。このため、最も好ましくは、溶媒はアセトンである。
【0153】
工程(a)の生成物は、次の反応工程の前に、さらに精製され得る、例えば、晶析によって精製され得る。あるいは、工程(a)の生成物は、化合物(VIb)のさらなる単離または精製なしに、プロセス工程(b)(下に記載される)に直接使用されてもよい。
【0154】
反応の(a)から(d)の各工程における生成物の純度は、各工程における不純物が、プロセスを通して存続し得る、例えば、工程(a)の生成物の純度は、続く反応工程(b)、(c)および(d)の純度に影響を及ぼすので、重要であることが見出された。したがって、最も高い純度の化合物(III)を、したがって化合物(I)を得るためには、プロセスの各工程が、できるだけ高い純度を有する生成物に導くことが重要である。本発明の工程(a)から(d)の各々は、高純度の生成物を生じさせ、全反応プロセスを、高純度を有する化合物(III)を、したがって化合物(I)を製造するために特に有効にしている。
【0155】
本発明はまた、次の工程:
(b)化合物(IV):
【0156】
【化39】
【0157】
を還元剤と反応させること、
を含む、化合物(II)の製造のための本発明の方法を提供し、
式中、PGは、工程(c)に関して上で定義された通りであり、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または、
【0158】
【化40】
【0159】
である。
【0160】
例えば、式(VI)の化合物は、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(メチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(エチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(p−メトキシベンジルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(1−アダマンチルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(p−ブロモベンジルオキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(トリフルオロアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(クロロアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(フェニルアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(ベンズアセチルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(p−トルエンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(2−ニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(t−ブチルスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(4−ニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(2−ニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(2,4−ジニトロベンゼンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチル、または、(2S)−2−[[(2S)−3−(4−ニトロフェニル)−2−(2−ナフタレンスルホニルアミノ)プロパノイル]アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)プロパン酸エチルであり得る。
【0161】
例えば、PGがBocである場合、本発明の方法は、工程:
(b)化合物(VIa):
【0162】
【化41】
【0163】
を、還元剤と、例えばH2/Pd/Cと反応させて、化合物(IIa)を得ること、
を含み得、
式中、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または
【0164】
【化42】
【0165】
である。
【0166】
Rが、
【0167】
【化43】
【0168】
である、ある好ましい態様において、本発明の方法は、工程:
(b)化合物(VIb)を、還元剤と、例えばH2/Pd/Cと反応させて、化合物(IIb)を得ること、
を含み得、
式中、PGは、工程(c)に関して上で定義された通りである。
【0169】
PGがBocであり、Rが、
【0170】
【化44】
【0171】
である、ある好ましい態様において、本発明の方法は、工程:
(b)化合物(VIc)を、還元剤と、例えばH2/Pd/Cと反応させて、化合物(IIc)を得ること、
を含み得る。
【0172】
本発明の方法の工程(b)は、ニトロ基をアミン基に還元するのに適する条件下に行われ得る。必要な反応条件は、PG保護基の特質に依存し得る。還元反応条件を選択することは、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。
【0173】
ある好ましい態様において、工程(b)の還元反応は、水素化反応、より好ましくは触媒による水素化反応(すなわち、水素化反応が水素および触媒の存在下に行われる)であってよい。したがって、工程(b)の還元剤は、水素(H2)および触媒であってよい。好ましくは、触媒は、金属触媒、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル(例えば、ラネーニッケルまたは漆原ニッケル)、鉄、およびこれらの化合物(例えば、これらの酸化物)からなる群から選択される触媒である。触媒は、均一であっても不均一であってもよい;好ましくは、それは不均一である。好ましくは、触媒は、触媒担体、例えば、カーボン、アルミナ、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される触媒担体上に存在する。最も好ましくは、触媒担体はカーボンである。
【0174】
本発明の好ましい態様において、触媒は、パラジウム(Pd)、より好ましくはカーボン上のパラジウム(Pd/C)である、すなわち、還元反応(b)は、H2ガスとPd/C触媒(H2/Pd/C)を用いる(すなわち、工程(b)の還元剤は、H2/Pd/Cである)。より好ましくは、Pd/C触媒は、活性化されたカーボン上の1から15%のPd、好ましくは、活性化されたカーボン上の1から10%のPd、より好ましくは、活性化されたカーボン上の3から6%のPd、最も好ましくは、活性化されたカーボン上の3から5%のPdである。好ましくは、Pd/C触媒は、約50%の湿分を含む触媒である。
【0175】
好ましくは、H2の圧力は、1から8bar、より好ましくは1から3barである。触媒は、好ましくは、1から30重量/重量%、より好ましくは3から20重量/重量%、より一層好ましくは3から10重量/重量%、最も好ましくは3から6重量/重量%、例えば、3、4、4.5、5または6重量/重量%、存在する。
【0176】
水素化反応のための溶媒の選択は、一般に行われており、当業者の通常の実施の範囲内にある。適切な溶媒の例には、2−MeTHF、酢酸エチル、エタノールおよびこれらの混合物が含まれる。好ましくは、溶媒は、2−MeTHFである。
【0177】
完了後、触媒は、濾過によって、例えばカーボンフリットを通しての濾過によって、除去され得る。
【0178】
工程(b)の生成物(化合物(II))は、本発明の方法の工程(c)において使用される前に不純物を除去するために、1種以上の溶媒(例えば、エタノール、酢酸エチル、2−MeTHFおよびこれらの混合物)および1種以上の非溶媒(例えばヘプタン)で晶析され得る。本発明者等は、化合物(II)を、例えば、エタノール、酢酸エチル、または2−MeTHF、またはこれらの混合物に、高温で溶かし、温度を下げ、例えばヘプタンを加えると、純度が高まることを見出した。好ましくは、化合物(II)は、2−MeTHF/ヘプタン混合物から晶析される。
【0179】
上記の工程(b)は、上記の工程(c)および/または(d)と組み合わせて用いられてもよい。こうして、本発明は、次の工程:
(b)化合物(VI)を還元剤と反応させることを含む、化合物(II)の製造のためのプロセス;
(c)化合物(II)を、クロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させることを含む、化合物(III)、または脱保護されたその生成物、または脱保護されたその生成物の塩の製造のためのプロセス;および/または
(d)化合物(III)を脱保護して、化合物(I)またはその塩を生成することを含む、化合物(I)、またはその塩の製造のためのプロセス;
の1つ以上を含む方法を提供し、
式中、PGは保護基であり、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または
【0180】
【化45】
【0181】
である。好ましくは、PGはBocである。
【0182】
好ましい一態様において、工程(c)は、化合物(III)の脱保護された生成物の製造のためのプロセスであり、このプロセスは、さらに、化合物(III)の脱保護された生成物の塩を生成する工程を含む。別の好ましい態様において、工程(d)は、化合物(I)の塩の製造のためのプロセスであり、このプロセスは、さらに、化合物(I)の塩を生成する工程を含む。
【0183】
Rが、
【0184】
【化46】
【0185】
である好ましい一態様において、上記の工程(a)および/または(b)は、上記の工程(c)および/または(d)と組み合わせて用いられてもよい。こうして、本発明は、次の工程:
(a)化合物(IV)を化合物(V)と反応させることを含む、化合物(VIb)の製造のためのプロセス;および/または
(b)化合物(VIb)を還元剤と反応させることを含む、化合物(IIb)の製造のためのプロセス;および/または
(c)化合物(IIb)を、クロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させることを含む、化合物(IIIb)、または脱保護されたその生成物の製造のためのプロセス;および/または
(d)化合物(IIIb)を脱保護して、化合物(Ib)またはその塩を生成することを含む、化合物(Ib)またはその塩の製造のためのプロセス;
の1つ以上を含む方法を提供し、
ここで、PGは、ステップ(c)に関して上で定義された通りである。
【0186】
このような態様において、好ましくは、PGはBocである。
【0187】
好ましい一態様において、工程(c)は、化合物(IIIb)の脱保護された生成物の製造のためのプロセスであり、このプロセスは、さらに、化合物(IIIb)の脱保護された生成物の塩を形成する工程を含む。別の好ましい態様において、工程(d)は、化合物(Ib)の塩の製造のためのプロセスであり、このプロセスは、さらに、化合物(Ib)の塩を生成する工程を含む。
【0188】
本発明はまた、ここで記載された方法によって製造される、化合物(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)もしくはそれらの脱保護された生成物、もしくはそれらの脱保護された生成物の塩;ここで記載された方法によって製造される式(I)、(Ib)の化合物、もしくはそれらの塩;ここで記載された方法によって製造される式(VIb)の化合物;または、ここで記載された方法によって製造される、式(II)もしくは(IIc)の化合物;も提供する。
【0189】
やはりここで開示されているのは、任意に適切に保護された形の、化合物(X):
【0190】
【化47】
【0191】
またはその塩の製造のための方法であり、この方法は、次の工程:
(c)化合物(XI):
【0192】
【化48】
【0193】
をクロロ酢酸と、任意に適切な溶媒中で、還元剤の存在下に反応させること、
を含む。
【0194】
好ましい反応条件は、上記の工程(c)の場合に好ましいものである。
【0195】
[実施例]
一般的な実験の詳細
特に断わらなければ、全ての試薬/溶媒は、市販品製造業者から購入され、さらなる精製なしに使用された。
【0196】
化合物は、C18逆相カラムを装備し、波長262nmでUV検出器を用いる、HPLC装置で精製された。全ての化合物は、水中のアセトニトリルの勾配を通じて分離された。
【0197】
例1
化合物(VIc)の合成
【0198】
【化49】
【0199】
窒素導入口および還流冷却器を装備し、オーバーヘッド攪拌している反応器に、Boc−ニトロフェニルアラニン(化合物(IVc))(35.0g、112.8mmol、1eq.)を、続いて、アセトン(420mL)、N−メチルモルホリン(43.4mL、394.8mmol、3.5eq.)、フルオロ−L−フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩(化合物(V))(28.5g、115mmol、1.02eq.)、EDC(23.8g、124.1mmol、1.1eq.)、および、HOBt・H2O(1.7g、11.3mmol、0.1eq.)を投入した。スラリーを室温で18.5時間攪拌すると、HPLCによれば、化合物(IVc)は完全に消費された。水(180mL)および2−MeTHF(965mL)を投入した。次いで、透明な2相の有機混合物から、蒸発(TJ:35℃)によって、約640gの溶媒を除去した。次に、360mLの2−MeTHFを加え、2回蒸発除去した。水相を、58mLの2M硫酸の添加により、pH3に酸性化した。有機層を、35〜40℃に加熱し、次いで、順次、水(90mL)、飽和NaHCO3水溶液(90mL)により2回、次に塩水(90mL)、最後に水(90mL)により洗った。2−MeTHFに溶けた生成物に、35〜40℃で、ヘプタン(270mL)を滴下して加え、その後、混合物を、攪拌しながら、一夜放置して、室温にした。135mLの別のヘプタンを滴下して加え、その後、ベージュ色のスラリーを10℃に冷却した。生成物を単離し、100mLの冷2−MeTHF/ヘプタン(6/4)ですすぎ洗いした。生成物化合物(VIc)を、湿分のある状態で保存した(82.5g)。少量の生成物試料を、検出限界(LOD)より上で分析すると、固形物が43.8%の残留溶媒を含むことを示した。これに基づくと、精製された生成物は82%の収率で得られた。純度は、HPLCによって、99.4面積%であると決定された。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-D6) δ 8.48 (広幅なd, 1H, J=7.5 Hz), 8.16 (2H, d, J=8.7 Hz), 7.55 (2H, d, J=9 Hz), 7.28 (2H, dd, J=8,7, 8.1 Hz), 7.12-7.02 (3H, m), 4.49 (1H, dd, J=14.4, 7.2 Hz), 4.32-4.24 (1 H, m), 4.04 (2H, dd, J=14.4, 7.2 Hz), 3.08-2.95 (3H,m), 2.84 (1H, dd, J=13.2, 10.8 Hz), 1.27 (s, 9H), 1.11 (3H, t, J=7.2Hz)
13C-NMR (75 MHz, DMSO-D6) δ 171.4 (C=O), 171.2 (C=O), 161.2 (C-F, d, J=242.3 Hz), 155.2 (C=O), 146.6 (C), 146.2 (C), 133.1 (C), 131.1 (2炭素, CH, d, J=8.3 Hz), 130.6 (2炭素, CH), 123.1 (C), 114.9 (2炭素, CH, J=20.4 Hz), 78.1 (C), 60.6 (CH2), 55.1 (CH), 53.6 (CH), 37.3 (CH2), 35.9 (CH2), 28.0 (3炭素, CH3), 14.0 (CH3)
例2
化合物(IIc)の合成
【0200】
【化50】
【0201】
水素化オートクレーブに、湿った固体の生成物化合物(VIc)(約4.9gの乾燥重量、9.7mmol、1eq.)、2−MeTHF(75mL)および3重量/重量%の5%Pd/C−触媒(147mg、50%の湿分)を入れた。反応混合物を窒素で脱ガスし、次いで、1bargの水素を投入した。600rpmに攪拌を、TJを36℃に設定した。反応を4時間で終えた。水素化オートクレーブを、10mLの2−MeTHFですすぎ洗いし、E−フラスコの反応溶液に、すすぎ洗い分を加えた。次いで、チャコール(250mg、5重量%)を加え、得られた混合物を、室温で15分間攪拌し、その後、それを濾過した。フィルターを、10mLの2−MeTHFですすぎ洗いし、すすぎ洗い分をフィルターに入れた。明るい黄色/ピンクの濾液は、析出した白色生成物を含んでいた。スラリーを、約40℃に加熱して、固体を溶かし、その後、ヘプタン(42mL)を、1時間の間に滴下して加えた。加熱を止め、混合物を、一夜攪拌しながら、放置して室温にした。さらに21mLのヘプタンを加え、その後、混合物を約7℃に冷却した(氷/水浴)。固体を単離し、10mLの冷2−MeTHF/ヘプタン(6/4)により洗った。湿った固体(5.7g)を、35℃で一夜、真空乾燥して、4.2gの乾燥重量の化合物(IIc)を得たが、これは、91%の収率に相当する。純度は、HPLCによって決定して、99.1面積%であった。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-D6) δ 8.26 (1H, d, J=7.5Hz), 7.26 (dd, 2H, J=8.1, 5.7 Hz), 7.09 (2H, t, J=8.7 Hz), 6.86 (2H, d, J=8.1 Hz), 6.71 (1H, d, J=8.7 Hz), 6.45 (1H, d, J=8.1 Hz), 4.87 (2H, s), 4.45 (1H, dd, J=14.4, 7.5 Hz), 4.07-4.00 (3H, m), 3.06-2.91 (2H, m), 2.71 (1H, dd, J=13.8, 3.9 Hz), 2.54-2.46 (1H, m), 1.31 (s, 9H), 1.11 (3H, t, J=6.9 Hz).
13C-NMR (75 MHz, DMSO-D6) δ 171.4 (C=O), 171.2 (C=O), 161.2 (C-F, d, J=242.3 Hz), 155.1 (C=O), 146.9 (C), 133.2 (C, d, J=3.0 Hz), 131.1 (2炭素, CH, d, J=8.3 Hz), 129.5 (2炭素, CH), 124.8 (C), 114.8 (2炭素, CH, J=21.1 Hz), 113.6 (2炭素, CH), 77.9 (C), 60.5 (CH2), 56.0 (CH), 53.5 (CH), 36.7 (CH2), 35.9 (CH2), 28.1 (3炭素, CH3), 13.9 (CH3)
本発明者等は、粗化合物(VIc)または再晶析した化合物(VIc)(純度:99.1面積%)を出発材料として用い、また、様々な反応条件、例えば、H2の圧力、Pd/Cの重量/重量%、溶媒および温度を変えて、例2を数回、繰り返した。再晶析された化合物(VIc)を出発材料として用いたとき、粗生成物純度(97.2面積%)は、粗化合物(VIc)を用いたとき(この場合、粗生成物純度は、一般に95〜96面積%である)より僅かに高かった。最終収率および純度も、粗化合物(VIc)から出発したときより僅かに高い(98〜98.5面積%)。
【0202】
本発明者等はまた、溶媒として2−MeTHFを用い、Pd/Cの重量/重量%、温度、H2の圧力、および濃度を変えて、例2を数回繰り返した。化合物(VIc)の高い変換率(>99.5面積%)が、3から6barのPd/Cの重量/重量%;30から40℃の温度範囲;1から6bargのH2圧力で、また様々な反応物濃度で、達成された。得られた粗生成物純度は、全ての試行で似ており(95.3〜96.2面積%)、2−MeTHF/ヘプタンから晶析後の単離生成物の純度も同様であった(98.0〜98.5面積%)。
【0203】
例3
化合物(IIIc)の調製
(i)クロロ酢酸塩の存在下にBH3SMe2を用いて行う
【0204】
【化51】
【0205】
オーバーヘッド攪拌機を有する0.5Lの乾燥した反応器に、TI=5〜13℃で、化合物(IIc)(6.99g、14.76mmol)を、続いて、無水テトラヒドロフラン(46mL)、クロロ酢酸(36.3g、383.8mmol)、クロロ酢酸ナトリウム塩(17.2g、147.6mmol)を入れた。次いで、BH3SMe2(14.6g、191.9mmol、18.2mL)の溶液を、45分間かけて添加した。添加後、反応温度を、TI=25〜30℃に調節し、この温度に達した後、2時間保った。反応を、エタノール(17.7g、383.8mmol、22.4mL)で、ゆっくりとクエンチし、TJ=5℃で一夜攪拌し、次に、蒸留水(138mL)でゆっくりと希釈して、生成物である化合物(IIIc)を析出させた。温度を、TI=15℃に調節し、攪拌速度を上げ、その後、K2CO3水溶液(8.0M、27mL)を加えて、pH=7.0〜7.5にした。反応物スラリーを、フィルター上に収集し、反応容器およびフィルターケーキを水(2×40mL)で洗った。フィルターケーキを、TJ=20℃で、1時間で、水(200mL)に再スラリー化し、次いで、再び濾過した。水(50mL)で洗い、その後、TJ=35℃で、高真空下に乾燥すると、7.85g(88.8%)の未補正収量で、白色粗生成物である化合物(IIIc)を生成した。HPLCによる純度は97.5面積%。
【0206】
記載された手順に従って調製された粗化合物(IIIc)(7.5グラム)を、反応器に投入し、2−MeTHF(80mL)で洗い落した。TJ=50℃で加熱して、物質を溶かした。ヘプタン(80mL)を、TI=45〜50℃で、攪拌しながら加え、さらに攪拌し、その後、温度を、TJ=10℃に調節した。析出した固体を、濾過によって収集し、TJ=35℃で、高真空下に乾燥すると、6.86g(91.5%)の白色の生成物である化合物(IIIc)を生成した。HPLCによる純度は99.1面積%。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-D6) δ 8.30 (1H, d, J=7.8 Hz), 7.26 (2H, dd, J=8.1, 6 Hz), 7.09-7.05 (3H, m), 6.79 (1H, d, J=8.9 Hz), 6.63 (2H, d, J=8.4 Hz), 4.49-4.42 (1H, dd, J=14.7, 7.5 Hz), 4.07-3.99 (3H, m), 3.68 (8H, s), 3.06-2.91 (2H, m), 2.76 (1H, dd, J=13.8, 4.2 Hz), 2.56 (1H, m), 1.29 (9H, s), 1.1 (3H, t, J=6.6 Hz)
13C-NMR (75 MHz, DMSO-D6) δ 172.1 (C=O), 171.3 (C=O), 161.2 (C-F, d, J=242.3 Hz), 155.2 (C=O), 144.7 (C), 133.2 (C, d, J=3.0 Hz), 131.1 (2炭素, CH, d, J=7.5 Hz), 130.2 (2炭素, CH), 126.1 (C), 114.9 (2炭素, CH, J=21.1 Hz), 111.6 (2炭素, CH), 78.0 (C), 60.6 (CH2), 55.9 (CH), 53.5 (CH), 52.2 (CH2), 41.2 (CH2), 36.4 (CH2), 35.9 (CH2), 28.1 (3炭素, CH3), 14.0 (CH3)
(ii)クロロ酢酸塩の存在下にBH3SMe2を用いて行う
オーバーヘッド攪拌機を有する0.5Lの乾燥した反応器に、化合物(IIc)(7.5g、15.84mmol)を、続いて2−MeTHF(150mL)を入れた。混合物を、45℃に加熱して、透明な溶液にした。溶液を4℃に冷却し、クロロ酢酸(38.9g、411.8mmol)を加え、続いて、TI=5〜13℃で、クロロ酢酸ナトリウム塩(18.4g、158.4mmol)を加えた。次いで、BH3SMe2溶液(15.6g、205.9mmol、19.5mL)を90分かけて添加した。添加後、反応温度を、TI=20〜25℃に調節し、この温度に達した後、5時間保った。反応を、TI=15〜25℃で、水(150g、8333mmol、150mL)により、水相のpH=3.5で、ゆっくりとクエンチし、TI=6℃で、攪拌しないで一夜放置した。生成物である化合物(IIIc)は、有機相に析出していたが、攪拌しながら、温度をTI=35℃に調節すると、2つの透明な相が生成した。放置して相分離させ、水相を除去した。有機相を、20%NaCl(aq)で3回洗った。3つの水相のpHは、1.7、1.1、および1.1であった。第3の水相の除去の後、有機相を丸底フラスコに移し、その半分の体積にエバポレータで濃縮した。生成物である化合物(IIIc)が析出し始め、6℃で19時間放置して、生成物スラリーを十分に析出させた。スラリーをフィルターで収集し、丸底フラスコおよびフィルターケーキを、2−MeTHF:n−ヘプタン(2×40mL)で洗い、続いて、TJ=35℃で高真空下に乾燥すると、8.3g(87.6%)の未補正収量で、白色粗生成物である化合物(IIIc)を生成した。HPLCによる純度は99.4面積%。
【0207】
(iii)クロロ酢酸塩の存在下にボラン−テトラヒドロフランを用いて行う
磁気攪拌子を有する100mLの乾燥した丸底フラスコに、ゆっくりとした窒素流の下で、化合物(IIc)(0.75g,1.58mmol)を、続いて、無水テトラヒドロフラン(6mL)、クロロ酢酸(3.89g、41.2mmol)、およびクロロ酢酸ナトリウム塩(1.84g、15.8mmol)を入れた。TI=5〜13℃で、1MのBH3THF溶液(20.6mmol、20.6mL)を、30分かけて添加した。添加後、反応温度を、TI=23〜28℃の間に調節し、この温度に達した後、2時間保った。インプロセスコントロール試料(HPLC)が、反応の未完了を示したので、ジャケットの温度を、TJ=40℃に設定し、内部温度がTI=40℃に達したとき、この温度に2時間、反応物を保ち、その時点で、インプロセス試料(HPLC)は、6.7面積%の出発材料、7.1%のアシル化付加物(不純物)および84.1%の化合物(IIIc)を示した。TI=23℃で、反応を進め、4日間放置し、その後、エタノール(2.4g、3mL)でゆっくりとクエンチした。水(100mL)を加え、1MのK2CO3水溶液で、pHを7に調節した。反応物スラリーをフィルターで収集し、反応容器およびフィルターケーキを水(2×20mL)で洗い、続いて、TJ=35℃で、高真空下に乾燥すると、0.85g(89.6%)の未補正収量で、無色の粗生成物を生成した。HPLCによる純度は94.3面積%であり、1つの主要な不純物は、3.8面積%の、出発材料のクロロアセチル化付加物に帰属された。
【0208】
(iv)クロロ酢酸塩の添加なしに、BH3SMe2を用いて行う
磁気攪拌子を有する100mLの乾燥した丸底フラスコに、ゆっくりとした窒素流の下で、化合物(IIc)(0.75グラム、1.58mmol)を、続いて、無水テトラヒドロフラン(6mL)およびクロロ酢酸(3.89g、41.2mmol)を入れた。TI=5〜16℃で、BH3SMe2(1.56g、20.6mmol、2.0mL)の溶液を、30分かけて添加した。添加後、反応温度を、TI=25℃に調節し、この温度に達した後、2.5時間保った。プロセスコントロール試料(HPLC)は、化合物(IIIc)のBoc−脱保護形であるメルフルフェン(化合物(Ib)を、66面積%で示した。反応を、エタノール(2.9g、3.7mL)で、ゆっくりとクエンチした。反応物のpHを、1MのK2CO3水溶液で、pH=8に調節し、続いて、EtOAc(40mL)を加えた。層分離させ、水層を、EtOAc(50mL)で再抽出した。有機層を合わせ、<30mbar、35℃で、減量して油状物とした。油状物を、EtOAc(30mL)から2回、再蒸留精製し、残留物を、TJ=23℃/5mbarで乾燥すると、1.6gの茶色がかった油状物が残された。化合物(Ib)のHPLCによる純度は、66.1面積%であった。
【0209】
例4
塩酸塩としての化合物(Ib)の調製
【0210】
【化52】
【0211】
Boc−メルフルフェン(化合物(IIIc))(5.0g、8.3mmol)を、磁気攪拌子、および窒素導入口を備える丸底フラスコに投入した。エタノール中1.3MのHCl(無水)(64mL、83.5mmol、10eq.)を加えた。19時間後、変換率は99.4%であった。溶媒を、ロータリエバポレータで、T=33℃で部分的に留去し、続いて、エタノール(18mL)を加えた。これを2回繰り返した。種結晶を加えると、30分後に生成物が析出した。スラリーを21時間攪拌し、次いで、濃縮した。メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)(108mL)を、一様な速度で、30分に渡って、室温で加えた。室温での100分間の攪拌の後、析出物を、真空濾過によって収集し、2×25mLのエタノール:MTBE(1:6)で洗った。真空オーブン中、T=35℃/5mbarで、一夜乾燥した。その塩酸塩の状態の化合物(Ib)の収量は、4.0g(90%)。HPLCによる純度は98.7面積%。
1H-NMR (300 MHz, MeOH-D4) δ 7.26 (2H, dd, J=8.4, 8.1 Hz), 7.17 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.02 (2H, dd, J=9, 8.4 Hz), 6.74 (2H, d, J=8.4 Hz), 4.69 (1H, dd, J=7.8, 6.3 Hz), 4.15 (2H, dd, J=14.1, 7.2 Hz), 4.04 (1H, dd, J=8.4, 5.4 Hz), 3.76 (4H, dd, J=6.3, 6 Hz), 3.67 (4H, dd, 6.6, 5.7 Hz), 3.17 (2H, dd, J=14.4, 6 Hz), 3.06-2.88 (2H, m), 1.22 (3H, t, J=7.2 Hz)
13C-NMR (75 MHz, MeOH-D4) δ 172.2 (C=O), 169.8 (C=O), 163.4 (C-F, d, J=244.5 Hz), 147.4 (C), 133.9 (C, d, J=3 Hz), 132.1 (2炭素, CH, d, J=7.5 Hz), 131.8 (2炭素, CH), 123.4 (C), 116.2 (2炭素, CH, d, J=21.9 Hz), 113.7 (2炭素, CH), 62.6 (CH2), 55.6 (CH), 55.5 (CH), 54.3 (CH2), 41.6 (CH2), 37.6 (CH2), 37.6 (CH2), 14.5 (CH3)
例4は、酢酸エチルの存在下に、1.3Mから2.5MまでHClの濃度を変えて、また6℃から室温まで温度を変えて、成功裏に繰り返された。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 化合物(III):
【化53】
またはその脱保護された生成物の製造のための方法であって、
化合物(II):
【化54】
をクロロ酢酸と、還元剤の存在下に反応させることを含み、
式中、PGは保護基であり、Rは、適切に保護された形のOHであるか、または、
【化55】
である、方法。
[2] 前記方法が、ボラン、ボラン−ルイス塩基錯体、ボロヒドリド、メタルヒドリド、および、金属触媒の存在下のH2からなる群から選択される還元剤の存在下に行われる、[1]に記載の方法。
[3] 前記還元剤が、BH3、またはボランジメチルスルフィドである、[2]に記載の方法。
[4] PGが、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、1−アダマンチルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、クロロアセチル、フェニルアセチル、ベンズアセチル、p−トルエンスルホニル、2−ニトロベンゼンスルホニル、t−ブチルスルホニル、2−または4−ニトロベンゼンスルホニル、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル、および、2−ナフタレンスルホニルからなる群から選択される、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5] PGが、t−ブチルオキシカルボニルである、[4]に記載の方法。
[6] 前記方法が、3から50℃の範囲の、例えば4から45℃の範囲の温度で行われる、[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記方法が、5から40℃の範囲の温度で行われる、[1]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記方法が、緩衝剤の存在下に行われる、[1]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記緩衝剤が、クロロ酢酸塩である、例えばクロロ酢酸ナトリウムである、[8]に記載の方法。
[10] クロロ酢酸:クロロ酢酸塩のモル比が、2:1から5:1である、[9]に記載の方法。
[11] 化合物(II):クロロ酢酸塩のモル比が、1:7から1:20である、[9]または[10]に記載の方法。
[12] Rが、
【化56】
である、[1]から[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 化合物(III)の塩または化合物(III)の脱保護された生成物の塩の製造のための方法であって、[1]から[12]のいずれかに記載の方法および塩を生成する工程を、例えば塩酸塩を生成する工程を含む、方法。
[14] 化合物(II)が、化合物(VI):
【化57】
を還元剤と反応させることによって生成されたものであり、
式中、PGは、化合物(II)に関して定義された通りであり、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または、
【化58】
である、[1]から[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 前記還元剤が、水素および触媒である、例えばH/Pd/Cである、[14]に記載の方法。
[16] Rが、
【化59】
であり、化合物(VI)が、化合物(IV):
【化60】
を、化合物(V):
【化61】
と反応させることによって生成されたものであり、
式中、PGは、化合物(II)に関して定義された通りである、[14]または[15]に記載の方法。
[17] 化合物(I):
【化62】
またはその塩の製造のための方法であって、
[1]から[16]のいずれかに記載の方法を行うこと、および、さらに、化合物(III)を脱保護して、化合物(I)またはその塩を生成することを含み、
式中、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または、
【化63】
である、方法。
[18] 化合物(I)が、化合物(Ib):
【化64】
またはその塩である、[17]に記載の方法。
[19] 化合物(I)の塩の製造のための方法であって、[17]または[18]に記載の方法および塩を生成する工程を、例えば、塩酸塩を生成する工程を含む、方法。
[20] 前記方法が、化合物(Ib)の塩酸塩:
【化65】
の製造のためである、[19]に記載の方法。
[21] 化合物(VIb):
【化66】
の製造のための方法であって、
化合物(IV):
【化67】
を、化合物(V):
【化68】
と反応させることを含み、
式中、PGは保護基である、方法。
[22] 化合物(II):
【化69】
の製造のための方法であって、化合物(VI):
【化70】
を、還元剤と反応させることを含み、
式中、PGは保護基であり、Rは、任意に適切に保護された形のOHであるか、または、
【化71】
である、方法。
[23] 前記還元剤が、水素および触媒である、例えばH2/Pd/Cである、[22]に記載の方法。
[24] 次の構造:
【化72】
を有し、
式中、YはNH2またはNO2であり、PGは保護基である化合物。
[25] PGが、t−ブチルオキシカルボニルである、[24]に記載の化合物。