特許第6862357号(P6862357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

<>
  • 特許6862357-ポリマー組成物 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862357
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20210412BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 67/06 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08L23/06
   C08L53/00
   C08L67/06
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-560739(P2017-560739)
(86)(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公表番号】特表2018-515669(P2018-515669A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2016061114
(87)【国際公開番号】WO2016188818
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年4月15日
(31)【優先権主張番号】15169057.5
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】デュシャトー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヤシンスカ−ワルツ,リディア
(72)【発明者】
【氏名】ボウヤーイ,ミロウド
(72)【発明者】
【氏名】ロヴェーラ,デリアーニ
(72)【発明者】
【氏名】ソリマン,マリア
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−342256(JP,A)
【文献】 特公昭40−016790(JP,B1)
【文献】 特公昭49−048472(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン、ポリエチレンおよび相溶化剤を含む組成物であって、前記相溶化剤は、ポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーであり、前記ポリエステルは、非芳香族ポリエステルでありかつ少なくとも10の平均M/E比を有し、Mはカルボニル炭素を含まない前記ポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、Eは前記ポリエステル中のエステル基の数である、組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤は、AB型もしくはBAB型ブロックコポリマー(ここで、Aはポリプロピレンを表し、Bはポリエステルを表す)であるか、またはn個のポリエステル分岐がグラフトされているポリプロピレン骨格を有する構造AB(ここで、nは少なくとも1である)のグラフトブロックコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
骨格内の2個の隣接するエステル基間の骨格炭素原子の数は、前記ポリエステルにわたってランダムに分布している、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記相溶化剤において、前記ポリエステルは、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリ(カプロラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(ε−デカラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(エチレンブラシレート−co−ペンタデカラクトン)、ポリ[エチレン−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[エチレン−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[プロピレン−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[プロピレン−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,4−ブタンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,4−ブタンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,23−トリコサンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,23−トリコサンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,20−イコサンジイル−1,20−イコサンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサンジイル−1,20−イコサンジオエート]およびポリ[プロピレン−1,20−イコサンジオエート]からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルは、少なくとも20の平均M/E比を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリプロピレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として5〜95重量%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
相溶化剤の量は、ポリプロピレンおよびポリエチレンの量の合計を基準として0.5〜10重量%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレンは、
− 1種以上のプロピレンホモポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンランダムコポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンブロックコポリマー、
− マトリックス相および分散相を含む1種以上の異相ポリプロピレンコポリマーであって、前記マトリックス相は、プロピレンホモポリマー、ならびに/あるいは該マトリックス相を基準として最大で3重量%までのエチレンおよび/または少なくとも1種のC〜Cα−オレフィンを含むプロピレンコポリマーからなり、かつ前記分散相はエチレン−C〜Cα−オレフィンコポリマーからなる、1種以上の異相ポリプロピレンコポリマー、または
− 前記ポリプロピレンのいずれかの混合物
である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリエチレンは、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、またはそれらポリエチレンのいずれかの混合物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記相溶化剤は、5000〜250000g/molの数平均分子量を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記相溶化剤の前記ポリプロピレンブロックは、プロピレンホモポリマーブロックであるか、または前記ポリプロピレンブロックの重量を基準として少なくとも90重量%のポリプロピレンを含有するプロピレンコポリマーブロックである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
【請求項13】
自動車内装品、自動車外装品、家庭用電気器具、導管、フィルムおよびシートからなる群から選択される、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
ポリプロピレンブロックと非芳香族ポリエステルのブロックとを含むブロックコポリマーの、ポリプロピレンおよびポリエチレンのブレンド物における相溶化剤としての使用であって、前記ポリエステルは、少なくとも10の平均M/E比を有し、Mはカルボニル炭素を含まない前記ポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、Eは前記ポリエステル中のエステル基の数である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン、ポリエチレンおよび相溶化剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンおよびポリエチレンの組成物は、個々の構成成分の種類および量を選択することによって材料の特性を調整できる可能性を有していることから望ましい組成物である。しかしながら、ポリエチレンおよびポリプロピレンが互いに混和しないことはよく知られている。さらに、ポリプロピレンおよびポリエチレンは実質的に相互作用しないため、ポリエチレンおよびポリプロピレンをブレンドすると、一般に、物理的性質が劣るポリプロピレン相およびポリエチレン相を有する2相系になるという欠点がある。さらに、ポリオレフィンを印刷できるようにするには、一般に、コロナ放電処理、フレーム処理、フッ素処理等の前処理が必要である。
【0003】
そのため、このようなブレンド物に相溶化剤を添加することによって相間の相互作用を増大させる試みがなされてきた。相溶化剤は、両方の相に親和性を示すことにより、その結合強度を増大させる物質である。その結果として、特性が改善された材料を得ることができる。
【0004】
相溶化剤を含むポリプロピレンおよびポリエチレンのブレンド物は当該技術分野において知られている。例えば、米国特許第6,114,443号明細書には、ポリエチレンおよびアイソタクチックポリ−アルファ−オレフィンホモポリマー(ポリプロピレン等)を、ポリエチレンブロックおよびアタクチックポリ−アルファ−オレフィンブロックのジブロックコポリマー相溶化剤と一緒にブレンドしたブレンド物を含む組成物が開示されている。この米国特許のジブロック相溶化剤は、各ブロックのモノマーをメタロセン触媒の存在下で逐次重合させることにより調製することができる。
【0005】
機械的性質、化学的性質およびコストの有利な組合せを得るという観点から、低コストで比較的容易に製造することができるさらなる組成物が継続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、ポリプロピレンおよびポリエチレンを含む、機械的性質の優れたバランスを有する組成物を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、印刷適性が向上したポリオレフィンをベースとする組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、ポリプロピレン、ポリエチレンおよび相溶化剤を含む組成物であって、前記相溶化剤は、ポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーであり、前記ポリエステルは、非芳香族ポリエステルでありかつ少なくとも10の平均M/E比を有し、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である、組成物に関する。
【0009】
本発明者らは、少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステルであって、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である、非芳香族ポリエステルが、少なくとも部分的にポリエチレン結晶と共結晶化し得、かつ/またはポリエチレン結晶上にエピタキシャルに結晶化し得ることを見出した。本発明者らはまた、ポリプロピレンブロックがポリプロピレンと相互作用することも観測した。したがって、本発明者らは、本明細書におけるブロックコポリマーがポリプロピレンおよびポリエチレンのブレンド物中で相溶化剤として作用することを見出し、本明細書に定義する相溶化剤を比較的少ない量で添加することにより、ポリエチレン−ポリプロピレンブレンド物の特性が向上することをさらに観測した。さらに、ポリエステル相溶化剤は材料に一定の極性を付与するため、印刷適性が向上し、それによって印刷前に行う前処理を回避することができるか、または少なくともその強度が抑えられる。
本発明を適用することにより、上述の目的の少なくとも一部が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ブレンド物のDSC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
相溶化剤
ポリエステルブロック
本発明による組成物の相溶化剤のポリエステルブロックは、少なくとも10の平均M/E比を有する非芳香族ポリエステルであり、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、ポリエステル中のエステル基の数である。平均M/E比は数平均を意味する。M/E比は、少なくとも12、少なくとも20、少なくとも50であってもよく、または少なくとも100であってさえよい。しかしながら、印刷適性を発現させるために、一方ではポリエチレン相と相互作用させることと、他方では材料に十分な極性を付与することとのバランスを見出すと有利である。したがって、M/E比は、最大で50、好ましくは最大で32であることが好ましい。したがって、ポリエステルブロックにおけるM/E比の好ましい範囲は10〜32である。
【0012】
ポリエステルが非芳香族であるとは、ポリエステルが芳香族基を含まないことを意味する。
【0013】
ポリエステルの骨格が好ましくは飽和であるとは、好ましくは二重結合を含まないことを意味する。ポリエステルの骨格が脂肪族であることが好ましい。
【0014】
ポリエステル骨格は、一実施形態において、メチル分岐、エチル分岐、プロピル分岐、ブチル分岐、ペンチル分岐、ヘキシル分岐等の単鎖脂肪族分岐を含む。このような分岐の量はポリエステルブロックの(共)結晶化挙動に悪影響を与える可能性があるため、好ましくは少量に維持される。他の実施形態において、骨格は、酸素、窒素、硫黄等の1種以上のヘテロ原子を含む。
【0015】
ポリエステルは、ポリエステルホモポリマーであってもポリエステルコポリマーであってもよい。
【0016】
ポリエステルがポリエステルコポリマーである場合、骨格中の隣接する2個のエステル基間の骨格炭素原子の数は、好ましくはポリエステル全体にランダムに分布している。さらに、ポリエステルコポリマー中のエステル基間の骨格炭素原子の数(M)は、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも10または少なくとも12である。
【0017】
ポリエステルホモポリマーの典型的な例としては、ドデカラクトン、トリデカノラクトン、テトラデカラクトン、ペンタデカラクトン、ヘキサデカラクトン、ヘプタデカラクトン、オクタデカラクトン、ノナデカラクトン、アンブレトリド、グロバリドの開環重合により得られるホモポリマーが挙げられる。換言すれば、ポリエステルホモポリマーの典型的な例としては、ポリドデカラクトン、ポリトリデカノラクトン、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリヘプタデカラクトン、ポリオクタデカラクトン、ポリノナデカラクトン、ポリアンブレトリド、ポリグロバリドが挙げられる。
【0018】
ポリエステルコポリマーの典型的な例としては、ドデカラクトン、トリデカノラクトン、テトラデカラクトン、ペンタデカラクトン、ヘキサデカラクトン、ヘプタデカラクトン、オクタデカラクトン、ノナデカラクトン、アンブレトリド、グロバリド、バレロラクトン、カプロラクトン、マソイアラクトン、δ−デカラクトン、ε−デカラクトン、13−ヘキシルオキサシクロトリデク10−エン−2−オン、13−ヘキシルオキサシクロトリデカン−2−オンを含む群からの少なくとも2種のラクトンのコポリマーが挙げられる。
【0019】
ポリエステルコポリマーの他の典型的な例としては、ポリエステルコポリマーが少なくとも10の平均M/Eを有することを条件として、C〜C30ジオールおよびC〜C32二酸の組合せから調製されるAABB型コポリエステルが挙げられる。さらに、コポリマーのM/E比は少なくとも8であることが好ましい。Cという語は、それぞれジオールまたは二酸に含まれる炭素原子数xを表す。
【0020】
ジオールとしては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘプタン−1,7−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ノナン−1,9−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ウンデカン−1,11−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、トリデカン−1,13−ジオール、テトラデカン−1,14−ジオール、ンタデカン−1,15−ジオール、ヘキサデカン−1,16−ジオール、ヘプタデカン−1,17−ジオール、オクタデカン−1,18−ジオール、ノナデカン−1,19−ジオール、イコサン−1,20−ジオール、ヘンイコサン−1,21−ジオール、ドコサン−1,22−ジオール、トリコサン−1,23−ジオール、テトラコサン−1,24−ジオール、ペンタコサン−1,25−ジオール、ヘキサコサン−1,26−ジオール、ヘプタコサン−1,27−ジオール、オクタコサン−1,28−ジオール、ノナコサン−1,29−ジオール、トリアコンタン−1,30−ジオールに加えて、これらの不飽和類縁体および分岐類縁体が挙げられる。ラクトンはまた、主鎖中に酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子も含むことができ、例えば、1,5−ジオキサパン−2−オンであってもよい。
【0021】
環状炭酸エステルも同様に、平均M/Eが10以上であるポリカーボネートまたはポリ(エステル−co−カーボネート)を形成するためのモノマーまたはコモノマーとして、ラクトン、ジラクトン、ヒドロキシル酸、ヒドロキシ酸エステル、もしくはジオールおよびジカルボン酸、またはこれらのモノマーの組合せと組み合わせて使用することができる。環状炭酸エステルの例は、トリメチレンカーボネートおよびデカメチレンカーボネートである。
【0022】
二酸としては、これらに限定されるものではないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ヘンイコサン二酸、ドコサン二酸、トコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸ならびにこれらの不飽和類縁体および分岐類縁体が挙げられる。ジオールおよび二酸はまた、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子も主鎖中に含むことができる。
【0023】
1種以上のジオールおよび二酸の組合せに替えて10以上である所望のM/Eを有するAABBコポリエステルを製造するために環状ジラクトンを添加することもできる。環状ジラクトンの典型的な例は、エチレンアジペート、エチレンブラシレート、ブチレンアジペートである。
【0024】
他の種類のポリエステルコポリマーとしては、結果として平均M/Eが少なくとも10であるポリエステルを生成するラクトンおよびジラクトンの組合せならびに/またはC〜C30ジオールおよびC〜C32二酸の組合せから調製されるAB/AABBコポリエステルが挙げられる。ラクトン、ジラクトン、ジオールおよび二酸は上の一覧から選択することができる。
【0025】
好ましくは、ポリエステルまたはコポリエステルは、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリ(カプロラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(ε−デカラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(エチレンブラシレート−co−ペンタデカラクトン)、ポリ[エチレン−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[エチレン−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[プロピレン−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[プロピレン−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,4−ブタジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,4−ブタジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,23−トリコサジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,23−トリコサジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,20−イコサジイル−1,20−イコサンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサジイル−1,20−イコンジオート]、ポリ[プロピレン−1,20−イコサンジオート]から選択される。
【0026】
より一般的には、ポリエステルまたはコポリエステルは、一般式
【化1】
(式中、Rは、有機基、好ましくは、平均鎖長が少なくとも炭素原子10個である脂肪族基であり、nは繰り返し単位の数であり、これは、一般に、少なくとも25、好ましくは少なくとも50、例えば少なくとも100である)を有する。繰り返し単位数nは、好ましくは最大で2000、例えば、最大で1000または500である。
【0027】
有機基Rは、分岐または直鎖炭化水素基であり、任意選択的に、−O−に隣接する原子が炭素原子である、すなわちヘテロ原子ではないことを条件として1種以上のヘテロ原子を含む。Rは、1種以上の−C=C−等の不飽和を含むことができる。好ましくは、Rは分岐または直鎖炭化水素基であり、より好ましくは、Rは分岐または直鎖脂肪族基である。好ましくは、Rは飽和脂肪族基である。この点に関し、本明細書において使用される鎖長という語は、2個のエステル基(O=)C−O−間の最短の原子数を指す。したがって、「鎖長」には任意選択的な分岐も側基も含まれない。例えば、Rが(C)である場合、鎖長は4である。同様に、RがCH−C(CH−CH−CHである場合、鎖長は同じく4である。上の一般式において、Rは、ポリエステル全体を通して、平均鎖長が少なくとも炭素原子10個であることを条件として同一であっても異なっていてもよい。次に示す(コ)ポリエステルの一般構造を考えることができ、これらの構造は、上に示した一般構造のより詳細な実施形態である。
【化2】
【0028】
、R、RおよびRの鎖長は、ポリエステルの場合、M/E比が少なくとも10となるように選択される。上のRの説明は、R〜Rにも適用される。
【0029】
平均M/E比は、好ましくは少なくとも12である。ポリエステルのM/E比が高いほど、ポリエチレンとの類似性が高くなると共に、ポリエチレン相との相互作用が高くなるであろう。それと同時に、M/E比が非常に高いポリエステルは、製造の費用効率が低くなる。加えて、その場合には材料の極性が低くなり、印刷適性を発現させるために前処理が必要となるであろう。
【0030】
したがって、M/E比は最大で32とすることができる。したがって、M/E比は10〜32、より好ましくは12〜24とすることができる。
【0031】
ポリプロピレンブロック
本発明による組成物の相溶化剤中のポリプロピレンブロックは、ポリプロピレンブロックの重量を基準として少なくとも90重量%のプロピレンを含むプロピレンホモポリマーまたはプロピレンコポリマーである。コモノマーは、エチレンまたはC〜Cα−オレフィンであってもよく、好ましくはエチレンである。好ましくは、コモノマーの量は、最大で5重量%、より好ましくは最大で2重量%である。コモノマーの量が多過ぎると材料が完全に非晶性になる可能性があり、これは機械的性質という観点で特定の用途に望ましくない。
【0032】
ブロックコポリマーの種類
本発明によるブロックコポリマーは、好ましくはAB型またはBAB型(ここで、Aはポリプロピレンを表し、およびBはポリエステルを表す)である。
【0033】
ブロックコポリマーはまた、ポリプロピレン骨格を有し、n個のポリエステル分岐がその上にグラフトされている(ここで、nは少なくとも1である)構造ABを有するグラフトブロックコポリマーであってもよい。グラフトコポリマーの場合、骨格がポリプロピレンブロックと見なされる。
【0034】
グラフトの量nは、最大で20、好ましくは最大で15または10である。グラフトの数が多過ぎるとポリプロピレン骨格が組成物中のポリプロピレン相と十分に相互作用しなくなるため、多くし過ぎるべきではない。
【0035】
ブロックコポリマーが2個以上のB(すなわち、ポリエステル)ブロックを含む一実施形態において、これらのBブロックの長さは同一であっても異なっていてもよい、すなわち、ブロックコポリマーを製造するためのプロセスの条件に応じて分子量が同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
本発明の組成物に相溶化剤として使用されるブロックコポリマーの数平均分子量は、好ましくは5000〜250000g/mol、より好ましくは10000〜100000g/molであり、前記数平均分子量は、トリクロロベンゼン中160℃でポリエチレンを標準物質として用いて実施される高温サイズ排除クロマトグラフィーによりポリエチレン換算分子量として測定される。
【0037】
製造方法:ブロックコポリマー
一実施形態において、ブロックコポリマーは、3段法により製造することができる。
【0038】
第1の工程(A)において、プロピレンおよび任意選択的なオレフィン性コモノマーを、触媒系を用いて重合することにより、少なくとも1つの鎖末端上に主族金属を含む第1のポリプロピレンブロックを得る。この触媒系は、
i)IUPAC元素周期律表第3〜10族の金属を含む金属触媒または金属触媒前駆体;および
ii)少なくとも1種の連鎖移動剤;および
iii)任意選択的な助触媒
を含む。
【0039】
したがって、工程(A)では、ポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)は、触媒、助触媒、少なくとも1種の連鎖移動剤および任意選択的なさらなるチェーンシャトリング試剤の存在下における配位連鎖移動(coordinative chain transfer)重合(CCTP)により調製することができる。使用される連鎖移動剤は、通常、ヒドロカルビルアルミニウム化学種、ヒドロカルビルホウ素化学種および/またはヒドロカルビル亜鉛化学種)である。このプロセスにより、末端が金属原子で官能基化されたポリプロピレン鎖またはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)鎖が得られる。これは酸素等の酸化剤と容易に反応する。
【0040】
第2の工程(B)では、工程A)で得られた少なくとも1つの鎖末端に主族金属を含む第1のポリプロピレンブロックを少なくとも1種の酸化剤と反応させ、続いて少なくとも1種の金属置換試剤(metal substituting agent)と反応させることにより、少なくとも1つの官能基化された鎖末端を含む第1のポリプロピレンブロックを得る。好ましくは、この官能基化された鎖末端はヒドロキシル基を含む。
【0041】
このように、工程(B)では、工程(A)で得られた生成物を酸素で処理した後、酸性化されたアルコール等のプロトン性基質で処理することにより、金属が除去され、ヒドロキシルで末端が官能基化されたポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)生成物が得られる。
【0042】
第3の工程(C)では、少なくとも1種の第2のポリマーブロックを第1のポリプロピレンブロック上に形成することによりブロックコポリマーが得られる。ここでは、工程B)で得られた第1のポリプロピレンブロックの官能基化された鎖末端が開始剤として使用される。第3の工程は、エステル交換または(好適な)ラクトンの開環重合(ROP)により実施することができる。
【0043】
このように、工程(C)では、工程(B)の生成物がジブロックコポリマーを形成するための高分子開始剤として使用される。この工程(C)において、ラクトンの開環重合または予め合成されたポリエステルのエステル交換は、工程(B)の生成物である鎖末端がヒドロキシルで官能基化されたポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)と、開環重合触媒および/またはエステル交換触媒との存在下で実施される。工程(C)は、(芳香族)炭化水素の溶液または溶融物中で実施することができる。ポリプロピレンまたはポリ(プロピレン−co−α−オレフィン)−ポリエステルブロックコポリマーを製造するためのプロセスは、例えば、HDPE−PLLAジブロックコポリマー(Chem.Eur.J.2012,18,13974−13978)またはシンジオタクチックPP−ポリエステルジブロックコポリマー(Macromolecules 2010,42,3073−3085)に関して報告されているプロセスに類似するプロセスである。エステル交換反応は、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)およびポリカプロラクトンのカップリングに関して報告されている反応に相当するものである(Macromol.Mater.Eng.2009,294,643−650)。
【0044】
したがって、上に述べた工程A〜Cは、カスケード様プロセス(cascade−like process)において、例えば、同一の反応器もしくは槽または後続する/連結された反応器もしくは槽のいずれかで、好ましくは中間工程および/またはワークアップ工程および/または乾燥工程および/または精製工程を追加することなく、さらに好ましくは連続的に実施することもできる。カスケード様プロセスにおいて、ポリマー調製は、金属置換工程(例えば、加水分解による)を行うことなく実施することができる。本発明に関連する反応器として押出機も考えられることに留意されたい。
【0045】
製造方法:グラフトブロックコポリマー
グラフトブロックコポリマー、すなわちポリエステルブロックがポリプロピレン骨格上にまたはポリプロピレン骨格からグラフトされているブロックコポリマーは3段法で製造することができる。
【0046】
第1の工程(D)では、少なくとも1種の第1の種類のオレフィンモノマーと、少なくとも1種の第2の種類の、金属で活性抑制された(metal−pacified)官能基化されたオレフィンモノマーとを、触媒系を用いて共重合することにより、1種または複数種の金属で活性抑制された官能基化短鎖分岐を有するポリプロピレン主鎖が得られる。この触媒系は、
i)IUPAC元素周期律表第3〜10族からの金属を含む金属触媒または金属触媒前駆体;
ii)任意選択的な助触媒
を含む。
【0047】
このように、工程(D)では、プロピレンは、活性抑制されたヒドロキシル官能基化オレフィンコモノマーを用いて、他の触媒を用いるオレフィン重合と同様にして(ヒドロキシル官能基化オレフィン性コモノマーが共重合前にTiBA等のアルキルアルミニウムと反応させることによって活性抑制されている点が異なる)、触媒および助触媒の存在下で共重合される。
【0048】
第2の工程(E)では、工程(D)で得られた、1種または複数種の金属で活性抑制された官能基化短鎖分岐を有するポリプロピレン主鎖を、少なくとも1種の金属置換試剤と反応させることにより、1種または複数種の官能基化された短鎖分岐を有するポリプロピレン主鎖が得られる。好ましくは、官能基化された鎖末端はヒドロキシル基を含む。
【0049】
すなわち、工程(E)では、工程()の生成物を酸性化アルコール等のプロトン性基質で処理することにより保護基が除去される。工程(E)の生成物は、プロピレンとヒドロキシル官能基化オレフィンとのランダムコポリマーであり、ヒドロキシル基は短鎖分岐に位置する。
【0050】
第3の工程(F)では、ポリプロピレン主鎖上に1つ以上のポリエステル側鎖を形成することによりグラフトコポリマーを得ることができる。ここでは、工程(E)で得られたポリプロピレン主鎖上の官能基化された短鎖分岐を開始剤として使用することができる。工程(F)は、エステル交換または(好適な)ラクトンの開環重合(ROP)により実施することができる。
【0051】
このように、工程(E)の生成物は、次の工程(F)において、グラフトブロックコポリマーを形成するための高分子開始剤として使用される。工程(F)では、ラクトンの開環重合または予め合成しておいたポリエステルのエステル交換が、工程()で得られたプロピレンおよびヒドロキシル官能基化オレフィンのランダムコポリマーと、開環重合触媒および/またはエステル交換触媒との存在下で実施される。
【0052】
工程()は、(芳香族)炭化水素の溶液中または溶融物中で実施することができる。プロピレンおよびヒドロキシル官能基化オレフィンおよびポリプロピレン−グラフト−ポリエステルブロックコポリマーを製造するためのプロセスは、例えば、エチレンおよびヒドロキシル官能基化オレフィンを共重合させた後、グラフトコポリマーを形成させることに関して報告されているプロセスに類似するプロセスである(J.Polym.Sci.Part A Polym.Chem.2014,52,2146−2154)。エステル交換反応は、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)およびポリカプロラクトンのカップリングに関して報告されている反応に相当する反応である(Macromol.Mater.Eng.2009,294,643−650)。
【0053】
上に述べた工程D〜Fは、カスケード様プロセスにおいて、例えば、同一の反応器もしくは槽または後続する/連結された反応器もしくは槽のいずれかで、好ましくは中間工程および/またはワークアップ工程および/または乾燥工程および/または精製工程を追加することなく、さらに好ましくは連続的に実施することができる。カスケード様プロセスにおけるポリマーの調製は、好ましくは、金属置換工程(例えば、加水分解による)を行うことなく実施することができる。本発明に関連する反応器として押出機も考えられることに留意されたい。
【0054】
ポリプロピレン
本発明組成物中のポリプロピレンは、
− 1種以上のプロピレンホモポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンランダムコポリマー、好ましくは、プロピレンエチレンまたはプロピレンC〜Cα−オレフィンランダムコポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンブロックコポリマー、
− マトリックス相および分散相を含む1種以上の異相ポリプロピレンコポリマーであって、マトリックス相は、プロピレンホモポリマー、ならびに/または最大で3重量%のエチレンおよび/もしくは少なくとも1種のC〜Cα−オレフィンを含むプロピレンコポリマーであって、重量%は、マトリックス相を基準とする、プロピレンコポリマーからなり、および分散相は、エチレン−C〜Cα−オレフィンコポリマーからなる、1種以上の異相ポリプロピレンコポリマー、
− 上述のポリプロピレンのいずれかの混合物
とすることができる。
【0055】
アイソタクチックポリプロピレンが好ましい。
【0056】
ポリプロピレンが異相コポリマーである場合、マトリックス相がプロピレンホモポリマーおよび/またはプロピレン−エチレンコポリマー(最大で3重量%のエチレンを含む)であることと、さらに、分散相がエチレンプロピレンコポリマー(20〜80重量%のプロピレンおよび80〜20重量%のエチレンを含む)(ここで、重量%は分散相を基準とする)であることとが好ましい。
【0057】
ポリプロピレンは、好ましくは、プロピレンホモポリマーであるか、またはプロピレンエチレンランダムコポリマーもしくはプロピレンC〜Cα−オレフィンランダムコポリマーである。ランダムコポリマーは、前記エチレンまたはα−オレフィンを、コポリマーを基準として最大で5重量%含む。ランダムコポリマーは、好ましくは、プロピレン−エチレンランダムコポリマーである。
【0058】
好ましくは、ポリプロピレンのメルトフローレートは、ISO 1133(2.16kg、230℃)に準拠して測定されて0.1〜100g/10minである。より好ましくは、メルトフローレートは5.0〜60g/10minである。
【0059】
ポリエチレン
本発明による組成物に含まれるポリエチレンは、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)とすることができる。ポリエチレンは、上述のポリエチレンの少なくとも2種類の混合物であってもよく、または上述のポリエチレンの少なくとも2種類の混合物であってもよい。例えば、このポリエチレンは、LLDPEおよびLDPEの混合物であってもよく、または2種類のLDPEの混合物であってもよい。
【0060】
VLDPE、LDPE、LLDPE、MDPEおよびHDPEという語は当該技術分野において知られている。
【0061】
超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、一般に、密度が915kg/m未満のポリエチレンを指す。直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンは、密度が915〜935kg/mのポリエチレンを指す。高密度ポリエチレンは、密度が935kg/mを超えるポリエチレンを指す。
【0062】
好ましくは、ISO 1133(2.16kg、190℃)に準拠して測定されたポリエチレンのメルトフローレートは0.1〜100g/10minである。
【0063】
組成物
本発明の組成物中のポリプロピレンおよびポリエチレンの量は幅広い範囲内で変化させることができる。ポリプロピレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として5〜95重量%で変化させることができる。好ましくは、ポリプロピレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として20〜90重量%、40〜90重量%、50〜90重量%である。したがって、ポリエチレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として95〜5重量%で変化させることができる。好ましくは、ポリエチレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として80〜10重量%、60〜10重量%、50〜10重量%である。一実施形態において、ポリプロピレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として60〜90重量%であり、ポリエチレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として40〜10重量%である。
【0064】
相溶化剤、ポリプロピレンおよびポリエチレンのメルトフローレートは、押出または密閉式混練等の一般的な溶融混練技法を用いて均質なブレンド物を調製することができるように選択される。この点に関し、均質なブレンド物とは、ポリエチレンおよびポリプロピレンの濃度が、例えポリエチレンがポリプロピレンマトリックス中で分散相を形成する可能性があっても、またはその逆であっても、材料全体を通して実質的に一定であるブレンド物を意味する。相溶化剤は、組成物の溶融加工中に相溶化剤の少なくとも一部がポリエチレン相およびポリプロピレン相の界面に移行することを可能にするメルトフローを有することが必要である。
【0065】
本発明の組成物の好ましい製造方法は、
− 組成物中で分散相を形成するポリマーを相溶化剤と溶融混練することにより、マスターバッチを調製する工程と、
− こうして得られたマスターバッチを、組成物中でマトリックス相を形成するポリマーと溶融混練する工程と
を含む。
【0066】
この方法において、好ましくは、相溶化剤の大部分、好ましくは実質的に全部がマスターバッチに含まれ、好ましくは、相溶化剤の少量部分が、組成物を生成するための溶融混練において添加され、好ましくは、溶融混練において相溶化剤は実質的に全く添加されない。すなわち、マスターバッチを調製する工程において、相溶化剤の総量の80〜100%がマスターバッチに添加され、マスターバッチと、組成物のマトリックス相を形成するポリマーとから組成物を調製する工程において、相溶化剤の総量の0〜20%が添加される。
【0067】
この方法には、相溶化剤がより高い効果を発揮し、結果として組成物の特性が最適化されるという利点がある。
【0068】
したがって、相溶化剤のメルトフローレートは、好ましくは、分散相を形成するポリマーのメルトフローレートに近い。例えば、分散相を形成するポリマーおよび相溶化剤を類似の条件下で測定した場合のメルトフローレートの比は、0.01〜100の範囲、好ましくは0.05〜50の範囲、より好ましくは0.1〜10の範囲、さらに好ましくは0.5〜5の範囲であり得る。
【0069】
相溶化剤の量は、ポリプロピレンおよびポリエチレンの量の合計を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜10重量%、例えば2〜10重量%または3〜8重量%である。
【0070】
好ましい実施形態において、本発明は、
ポリエチレンおよびポリプロピレンの量の合計を基準として70〜90重量%のポリプロピレンと、
ポリエチレンおよびポリプロピレンの量の合計を基準として10〜30重量%のポリエチレンと、
ポリエチレンおよびポリプロピレンの量の合計を基準として1〜10重量%の相溶化剤と
を含み、ポリプロピレンは、1〜20のメルトフローレートを有し(ISO 1133、2.16kg、230℃)、ポリエチレンは、低密度ポリエチレンでありかつ1〜20のメルトフローレートを有し(ISO 1133、2.16kg、190℃)であり、および相溶化剤は、10〜32のM/E比を有しかつ10000〜100000g/molの数平均分子量を有する、組成物に関する。
【0071】
本発明の組成物は、当該技術分野において一般的な添加剤、例えば、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、赤外線吸収剤、難燃剤、離型剤等をさらに含むことができる。このような添加剤は、組成物の重量を基準として最大で約5重量%の量で含まれる。
【0072】
本発明の組成物はまた、タルク、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス小板(glass platelet)、有機繊維、炭素繊維、セルロース系繊維等の強化剤をさらに含むことができる。タルクおよびガラス繊維が好ましい。強化剤の量は、組成物の重量を基準として1〜20重量%である。
【0073】
当業者は、本発明による組成物が熱可塑性組成物であることを理解するであろう。
【0074】
物品
さらに、本発明は、本明細書に開示する組成物を含む物品に関する。さらに本発明は、本明細書に開示する組成物から製造される物品に関する。一般に、この組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形等の成形技法を用いて物品に変換される。したがって、本発明は、本発明による組成物を成形することにより得られる物品にも関する。異形押出または管押出により異形材または管を製造することも可能である。
【0075】
成形または押出により得られる物品において、相溶化剤のポリエステルブロックの少なくとも一部はポリエチレン相内で共結晶化しており、かつ/またはエピタキシャルに結晶化しており、および相溶化剤のポリプロピレンブロックの少なくとも一部はポリプロピレン相内で絡み合っており、かつ/または共結晶化しており、かつ/またはエピタキシャルに結晶化している。
【0076】
物品は、自動車内装品、自動車外装品、家庭用電気器具、導管、フィルム、シート、容器、水タンク、輸液バッグとすることができる。
【0077】
使用
本発明の他の態様では、ポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーの、ポリプロピレンおよびポリエチレンのブレンド物における相溶化剤としての使用であって、前記ポリエステルは、非芳香族ポリエステルでありかつ少なくとも10のM/E比を有し、Mは、カルボニル炭素を含まないポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、エステル基の数である、使用に関する。本明細書に説明する組成物に関する好ましい実施形態も同様にこの使用に適用される。
【0078】
ここで、以下に示す非限定的な実施例に基づき本発明をさらに説明する。
【0079】
測定方法
NMRによる反応の転化率の測定:
操作周波数400MHzのVarian Mercury分光計において、5mmの試料管中、重水素化テトラクロロエタン(TCE−d)を溶媒として使用してH NMR分析(H−NMR)を80〜110℃で実施し、記録を行った。残留溶媒を標準物質とし、テトラメチルシランに対する化学シフト(ppm)を測定した。
【0080】
、MおよびPDI:
高速GPC(Freeslate、Sunnyvale、米国)を用いて高温サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を160℃で実施することによりM、M(kg/mol)およびPDIを測定した。検出器はIR4(PolymerChar、Valencia、Spain)とした。カラムセットは、PolymerLaboratories製PLgel Olexis(13μm、300×7.5mm)を3本使用した。1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)を溶離液として流速1mL・min−1で使用した。TCBは使用前に新たに蒸留した。高温SEC分析を行い、狭分子量分布(narrow)を有するポリエチレン標準物質(PSS、Mainz、独国)に対する分子量および対応するPDIを求めた。ブロックコポリマーのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施した。PLgel Olexis(300×7.5mm、Polymer Laboratories)カラムを3本連結し、Polymer Laboratories製PLXT−20 Rapid GPC Polymer Analysis System(屈折率検出器および粘度検出器)を160℃で使用した。1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液として流速1mL・min−1で使用した。ポリエチレン標準物質(Polymer Laboratories)に対する分子量を求めた。Polymer Laboratories製PL XT−220自動サンプル処理装置(robotic sample handling system)をオートサンプラーとして使用した。多分散度PDIはM/Mに対応する。
【0081】
TA InstrumentsからのDSC Q100を用いて示差走査熱量分析(DSC)を行うことにより、溶融温度(T)および結晶化温度(T)に加えて転移エンタルピーを測定した。−60℃〜210℃で10℃・min−1の速度で昇温および降温することにより測定を実施した。転移は2回目の加熱曲線および冷却曲線から推定した。
【0082】
ヒドロキシルで官能基化された鎖末端を有するポリプロピレンブロックの調製
反応容積が300mLであるステンレス鋼製撹拌型反応器内で重合を実施した。反応器を一定温度(40℃)に維持した。トルエン(70mL)およびメチルアルモキサン(MAO)溶液(5mL、トルエン中30%溶液、Al/Zr≒1000)を加えて50rpmで30分間撹拌した。トリイソブチルアルミニウム(TIBA;4mL、ヘキサン中1.0M溶液、Al/Zr≒200当量)およびジエチル亜鉛(DEZ;1.0mL、ヘキサン中1.0M溶液、Al/Zr≒50当量)を添加し、10分間撹拌した。次いで、ジルコノセン触媒前駆体であるrac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)ZrClのトルエン溶液を加えた。溶液を予め定められた圧力のオレフィン(エチレンまたはプロピレンのいずれか)で飽和させた。触媒はグローブボックス内でトルエン(3mL)に溶解してから反応器に移した。次いで反応器をオレフィンで所望の圧力(2bar)に加圧し、この圧力を予め定められた時間にわたり維持した(15分間、工程A))。重合終了後、オレフィン供給を停止し、オレフィン残圧を放出した後、ガス注入管から空気を注入し、懸濁液を一定の酸素圧(3bar)下において60℃で2時間激しく撹拌し続けた(600rpm、工程B)。酸化工程の終了後、ポリマーを酸性化メタノール(金属置換試剤として使用、工程B))で停止し、ヒドロキシルで官能基化された第1のポリプロピレンブロック(iPP)を得た。次いでこれを濾過してメタノールで洗浄し、真空中60℃で一夜乾燥させた。
【実施例】
【0083】
以下に示す実施例は、本明細書に記載するプロセスの工程C)に関するものであり、官能基化された鎖末端、特に、例えばヒドロキシルで官能基化された鎖末端を有する予め調製された第1のポリプロピレンブロックを用いて第2のポリマーブロックを形成するものである。
【0084】
ブロックコポリマーの調製
【化3】
【0085】
実施例1
cROPによりiPP−ブロック−PPDLコポリマーを合成するための典型的な手順
クリンプキャップ付きガラスバイアルにトルエン(1.5mL)、PDL(1.08g、4.5mmol)、ヒドロキシル末端封止iPP(17.4mg、8.7μmol)および触媒2(3.05mg、8.7μmol)を装入した。
【0086】
操作は全てグローブボックス内で行った。次いで混合物をグローブボックスから取り出し、100℃の油浴中で撹拌した。設定した時間間隔でアリコートを採取することにより、反応の進行をH NMR分光法により追跡した。合成されたコポリマーを室温に冷却し、酸性化メタノールで重合を停止し、単離し、室温で18時間真空乾燥させた。表1の品名(entry)iPP−PPDL1〜iPP−PPDL9の欄に反応条件、分子量(MおよびM)、PDIおよびPDLの転化率を詳細に記載する。
【0087】
実施例2
2をヒドロキシル末端封止iPPと100℃で24時間予備混合したことを除いて、実施例1と同一手順を用いた。表1の品名iPP−PPDL10〜iPP−PDL15の欄に反応条件、分子量(MおよびM)、PDIおよびPDLの転化率を詳細に記載する。
【0088】
実施例3
1をヒドロキシル末端封止iPPと100℃で24時間予備混合したことを除いて、実施例2と同一手順を用いた。表1の品名iPP−PPDL16〜iPP−PDL21の欄に反応条件、分子量(MおよびM)、PDIおよびPDLの転化率を詳細に記載する。
【0089】
実施例4
反応押出によりPP−ブロック−PPDLを合成するための典型的な手順
押出機のチャンバーの第1、第2および第3のゾーンの温度をそれぞれ160℃、180℃、190℃に設定した。押出機に無水マレイン酸官能基化iPP(Exxelor PO1020、9g、M=30.7kg・mol−1、PDI=3.4、無水基0.43重量%)およびIrganox B225(2500ppm)を供給した。ポリマーを5分間予備混合した後、エタノールアミン(0.072g、1.1mmol)をシリンジで添加した。混合物を60秒間処理した後、押出機チャンバーから排出した。OHで官能基化されたポリプロピレン(Exx−OH)を120℃でm−キシレンに溶解し、冷アセトン中で析出させることにより精製した。生成物を40℃の真空オーブンで24時間乾燥させた。
【0090】
この予め調製したOH官能基化PPを利用して、PP−ブロック−PPDLコポリマーを調製した。この工程では、押出機を190℃、スクリュー回転数を100rpmに設定し、OH官能基化ポリプロピレン(Exx−OH)(5.1g、M=36.6kg・mol−1、PDI=3.4)およびポリペンタデカラクトン(PPDL)(3.9g、M=115.1kg・mol−1、PDI=2.4)を供給した。ポリマーを5分間予備混合した。次いで、触媒3、すなわちオクタン酸スズ(II)(0.045g、0.1mmol)を加え、混合物を2分間混合した。このコポリマーをm−キシレンに120℃で溶解し、冷アセトン中で析出させることにより精製した。このコポリマーを40℃の真空オーブンで24時間乾燥させた。表1の品名iPP−PPDL22〜iPP−PPDL24の欄に反応条件、分子量(MおよびM)、PDIおよびPDL転化率を詳細に記載する。
【0091】
実施例5
溶液中のエステル交換によるiPP−ブロック−PPDLコポリマーを合成するための典型的な手順
窒素導入管、環流冷却器を備えた三ッ口丸底フラスコにOH官能基化ポリプロピレン(Exx−OH)(6.66g、M=36.6kg・mol−1、PDI=3.4)およびPPDL(3.33g、Mn=39.6kg・mol−1、D=2.4)を装入し、m−キシレンに120℃で溶解した。溶液をマグネチックスターラーで撹拌した。次いで触媒3(0.05g、0.12mmol)を加えて混合物を24時間撹拌した。溶液を、冷アセトンを入れたビーカーに注ぎ、マグネチックスターラーで1時間撹拌した後、濾過した。コポリマーを室温の真空オーブンで48時間乾燥させた。表1の品名iPP−PPDL25〜iPP−PPDL26の欄に反応条件、分子量(MおよびM)、PDIおよびPDL転化率を詳細に記載する。
【0092】
【表1-1】
【0093】
【表1-2】
【0094】
実施例6
相溶化されていないブレンド物を調製するための典型的な手順
アイソタクチックポリプロピレン(iPP)(PP575P、8.0g、M=42.9kg・mol−1、PDI=6.9、MFI=10.5g/10min(230℃、2.16kg))、低密度ポリエチレン(LDPE)(2008TN00、2.0g、Mn=12.2kg・mol−1、PDI=5.8、MFI=7.5g/10min(190℃、2.16kg))を押出機チャンバーに供給した。スクリュー回転数を100rpmとして混合物を190℃で3分間処理した。その後、機械的性質および形態解析に用いる試験片を作製するために混合物を小型射出成形機に直接排出した。表2の品名1、2、4、6、8の欄にブレンド物の調製条件を詳細に記載する。
【0095】
実施例7
PP−ブロック−PPDLにより相溶化されたブレンド物を調製するための典型的な手順
アイソタクチックポリプロピレン(iPP)(PP575P、8.0g、M=42.9kg・mol−1、PDI=6.9、MFI=10.5g/10min(230℃、2.16kg))、低密度ポリエチレン(LDPE)(2008TN00、2.0g、M=12.2kg・mol−1、PDI=5.8、MFI=7.5g/10min(190℃、2.16kg))およびPP−ブロック−PPDL(iPP−PPDL24、0.5g、M=30.5kg・mol−1、PDI=6.8)を押出機チャンバーに供給した。スクリュー回転数を100rpmとして混合物を190℃で3分間処理した。その後、機械的性質および形態解析に用いる試験片を作製するために混合物を小型射出成形機に直接排出した。表2の品名3、5、7の欄にブレンド物の調製条件を詳細に記載する。
【0096】
【表2】
【0097】
図1にこれらのブレンド物のDSC曲線を示す。相溶化されたブレンド物の結晶化熱(エンタルピー値)は、相溶化されていないブレンド物の結晶化熱よりも小さいことが観測され得る。これは、ポリプロピレン相のみならずポリエチレン相にも当てはまる。これらの観測結果に基づき、本発明者らは、本明細書に開示したブロックコポリマーが確かにポリエチレンおよびポリプロピレンのブレンド物を相溶化する作用を有していると考えている。
【0098】
グラフトブロックコポリマーの例:
ヒドロキシルで官能基化された短い分岐側鎖を有するポリプロピレン(iPP)主鎖の調製
ランダムに官能基化されたアイソタクチックポリプロピレンを合成するため、C対称性を有するシリル架橋されたジルコノセン触媒であるrac−MeSi(2−Me−4−Ph−Ind)ZrCl)/MAOを用いて、プロピレン/10−ウンデセン−1−オールの共重合を実施した。重合反応をステンレス鋼製Buechi反応器内で実施した。重合を行う前に反応器を40℃の真空下で乾燥させ、二窒素でフラッシュした。不活性雰囲気中、トルエン溶媒(70mL)を装入し、続いてTIBAおよび官能基化されたモノマーを装入した。得られた溶液を15〜20分間撹拌した後、計算した量の助触媒を二窒素雰囲気下で添加した。触媒を反応器に添加することにより重合反応を開始した。次いで反応器をプロピレンで所望の圧力に加圧し、この圧力を予め定められた時間にわたり維持した(工程D))。プロピレンの供給を停止し、得られた混合物を酸性化メタノール(金属置換剤として使用、工程E))で反応を停止し、濾過して60℃の減圧下で24時間乾燥させた。
【0099】
以下に示す実施例は、全て本明細書に開示するプロセスの工程F)に関するものである。ここでは、予め調製しておいたヒドロキシルで官能基化された短い分岐側鎖を有するポリプロピレン主鎖を用いてポリマー分岐を形成した。
【0100】
iPP−グラフト−PPDLコポリマーを合成するための典型的な手順
クリンプキャップ付きガラスバイアルにトルエン(1.5mL)、PDL(1.1g、4.5mmol)、ヒドロキシル官能基化iPP(4.9mg、8.7μmol)および触媒3(約3.05mg、8.7μmol)を装入した。操作は全てグローブボックス内で行った。次いで混合物をグローブボックスから取り出し、100℃の油浴中で撹拌した。設定した時間間隔でアリコートを採取することにより、反応の進行をH NMR分光法により追跡した。合成されたコポリマーを室温に冷却し、酸性化メタノールで重合を停止し、これを単離して室温で18時間真空乾燥させた。表の品名iPP−PPDL1〜HDPE−PPDL3の欄に、次に示す触媒3を用いた本実施例の反応条件、分子量(MおよびM)、DおよびPDL転化率を詳細に記載する。
【化4】
【0101】
さらに、触媒1に替えて次に示す触媒4を用いたことを除いて上述の手順を繰り返した。表の品名iPP−PPDL4の欄に、次に示す触媒を用いた本実施例の反応条件、分子量(MおよびM)、DおよびPDL転化率を詳細に記載する。
【化5】
【0102】
【表3】
他の実施形態
1.ポリプロピレン、ポリエチレンおよび相溶化剤を含む組成物であって、前記相溶化剤は、ポリプロピレンブロックおよびポリエステルブロックを含むブロックコポリマーであり、前記ポリエステルは、非芳香族ポリエステルでありかつ少なくとも10の平均M/E比を有し、Mは、カルボニル炭素を含まない前記ポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、前記ポリエステル中のエステル基の数である、組成物。
2.前記相溶化剤は、AB型もしくはBAB型ブロックコポリマー(ここで、Aはポリプロピレンを表し、およびBはポリエステルを表す)であるか、またはポリプロピレン骨格を有し、その上にn個のポリエステル分岐がグラフトされている構造AB(ここで、nは少なくとも1である)のグラフトブロックコポリマーである、実施形態1に記載の組成物。
3.前記骨格内の2個の隣接するエステル基間の骨格炭素原子の数は、前記ポリエステルにわたってランダムに分布している、実施形態1または2に記載の組成物。
4.前記ポリエステルは、少なくとも20、より好ましくは少なくとも50の平均M/E比を有する、実施形態1〜3のいずれかに記載の組成物。
5.ポリプロピレンの量は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの総量を基準として5〜95重量%である、実施形態1〜4のいずれかに記載の組成物。
6.相溶化剤の量は、ポリプロピレンおよびポリエチレンの量の合計を基準として0.5〜10重量%、好ましくは5〜10重量%である、実施形態1〜5のいずれかに記載の組成物。
7.前記ポリプロピレンは、
− 1種以上のプロピレンホモポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンランダムコポリマー、好ましくは、プロピレンエチレンまたはプロピレンC〜Cα−オレフィンランダムコポリマー、
− 1種以上のプロピレン−α−オレフィンブロックコポリマー、
− マトリックス相および分散相を含む1種以上の異相ポリプロピレンコポリマーであって、前記マトリックス相は、プロピレンホモポリマー、ならびに/または最大で3重量%のエチレンおよび/もしくは少なくとも1種のC〜Cα−オレフィンを含むプロピレンコポリマーであって、前記重量%は、前記マトリックス相を基準とする、プロピレンコポリマーからなり、および前記分散相は、エチレン−C〜Cα−オレフィンコポリマーからなる、1種以上の異相ポリプロピレンコポリマー、
− 前記ポリプロピレンのいずれかの混合物
である、実施形態1〜6のいずれかに記載の組成物。
8.前記ポリエチレンは、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたは前記ポリエチレンのいずれかの混合物である、実施形態1〜7のいずれかに記載の組成物。
9.前記相溶化剤は、5000〜250000g/molの数平均分子量を有する、実施形態1〜8のいずれかに記載の組成物。
10.前記相溶化剤において、前記ポリエステルは、ポリテトラデカラクトン、ポリペンタデカラクトン、ポリヘキサデカラクトン、ポリ(カプロラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(ε−デカラクトン−co−ペンタデカラクトン)、ポリ(エチレンブラシレート−co−ペンタデカラクトン)、ポリ[エチレン−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[エチレン−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[プロピレン−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[プロピレン−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,4−ブタンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,4−ブタンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,19−ノナデカンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,23−トリコサンジイル−1,19−ノナデカンジオエート]、ポリ[1,23−トリコサンジイル−1,23−トリコサンジオエート]、ポリ[1,20−イコサンジイル−1,20−イコサンジオエート]、ポリ[1,6−ヘキサンジイル−1,20−イコサンジオエート]、ポリ[プロピレン−1,20−イコサンジオエート]からなる群から選択される1種以上から選択される、実施形態1〜9のいずれかに記載の組成物。
11.前記相溶化剤の前記ポリプロピレンブロックは、プロピレンホモポリマーブロックであるか、または前記ポリプロピレンブロックの重量を基準として少なくとも90重量%のポリプロピレンを含有するプロピレンコポリマーブロックである、実施形態1〜10のいずれかに記載の組成物。
12.実施形態1〜11のいずれかに記載の組成物を含む物品。
13.自動車内装品、自動車外装品、家庭用電気器具、導管、フィルム、シートからなる群から選択される、実施形態12に記載の物品。
14.ポリプロピレンブロックと非芳香族ポリエステルのブロックとを含むブロックコポリマーの、ポリプロピレンおよびポリエチレンのブレンド物における相溶化剤としての使用であって、前記ポリエステルは、少なくとも10の平均M/E比を有し、Mは、カルボニル炭素を含まない前記ポリエステル中の骨格炭素原子の数であり、およびEは、前記ポリエステル中のエステル基の数である、使用。
図1