(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、詳細に説明する。
〔新規なアゾ化合物〕
本発明のアゾ化合物は、下記一般式(1)
【化6】
で表されるアゾ化合物又はその塩である。本発明のアゾ化合物は、一般的に二色性染料と言われる色素として機能する水溶性染料である。
【0012】
一般式(1)中、Ab
1は置換基を有するフェニル基、又は置換基を有するナフチル基を表し、Rb
1〜Rb
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Xb
1は置換基(フェニル基及びベンゾイル基を除く)を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は置換基を有していてもよいナフトトリアゾール基を表す。
【0013】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物は、下記一般式(2)
【化7】
(式中、Ab
1、Rb
1〜Rb
5、及びXb
1は、一般式(1)中と同じ意味を表す。)
で表されるアゾ化合物であることが好ましい。これにより、一般式(1)で表されるアゾ化合物を使用した偏光素子の偏光性能をさらに向上させることができる。
【0014】
前記一般式(1)又は(2)中のAb
1は、置換基を有するフェニル基、又は置換基を有するナフチル基を表すが、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有するフェニル基、又はスルホ基、ヒドロキシ基、及びスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選択される2個もしくは3個の置換基を有するナフチル基であることが好ましい。
【0015】
前記一般式(1)又は(2)中のAb
1が置換基を有するフェニル基である場合には、その置換基としてスルホ基又はカルボキシ基を少なくとも1つ有することが好ましい。Ab
1が置換基を2つ以上有するフェニル基である場合は、それらの置換基のうち、(一部の)少なくとも1つの置換基がスルホ基又はカルボキシ基であり、他の置換基が、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基、又は炭素数1〜4のアルキルアミノ基であることが好ましい。フェニル基上の置換基は、より好ましくは、スルホ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、又はカルボキシ基であり、特に好ましくは、スルホ基、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、又はカルボキシ基である。フェニル基上の置換基の数は2個であることが好ましい。フェニル基上の置換基の置換位置は、特に限定されないが、フェニル基上の置換基の数が2個である場合、2−位と4−位との組み合わせであることが好ましい。
【0016】
前記一般式(1)又は(2)中のAb
1が置換基を有するナフチル基である場合、その置換基としてスルホ基を少なくとも1つ有することが好ましい。Ab
1が置換基を2つ以上有するナフチル基である場合には、それらの置換基のうち、(一部の)少なくとも1つの置換基がスルホ基であり、他の置換基が、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。ナフチル基上の置換基の数が2個である場合、それら置換基の置換位置の組み合わせは、4−位と8−位との組み合わせ、又は6−位と8−位との組み合わせであることが好ましく、6−位と8−位との組み合わせであることが特に好ましい。ナフチル基上の置換基の数が3個である場合、それら置換基の置換位置の組み合わせは、1−位と3−位と6−位との組み合わせであることが特に好ましい。
【0017】
Ab
1におけるフェニル基上又はナフチル基上の置換基としての、スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基は、スルホ基を有する炭素数1〜4の直鎖アルコキシ基であることが好ましい。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基において、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましい。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基は、3−スルホプロポキシ基又は4−スルホブトキシ基であることがより好ましく、3−スルホプロポキシ基であることが特に好ましい。
【0018】
一般式(1)又は(2)中のXb
1は置換基(フェニル基及びベンゾイル基を除く)を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は置換基を有していてもよいナフトトリアゾール基を表すが、好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1個の置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は1個もしくは2個のスルホ基で置換されたナフトトリアゾール基であり、より好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個又は2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、又はヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1個の置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基であり、さらに好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個又は2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基である。置換基の置換位置としては、特に限定されないが、Xb
1が、1つの置換基を有するフェニルアミノ基、1つの置換基を有するベンゾイルアミノ基、又は1つの置換基を有するフェニルアゾ基である場合、p−位であることが特に好ましい。
【0019】
一般式(1)又は(2)中のRb
1〜Rb
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基を表すが、好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、又はメトキシ基である。さらに光学特性を向上させるには、Rb
1とRb
2との置換位置の組み合わせ及びRb
3とRb
4との置換位置の組み合わせはそれぞれ独立に、2−位と6−位との組み合わせ、2−位と5−位との組み合わせ、又は3−位と5−位との組み合わせであることが好ましく、2−位と5−位との組み合わせであることがより好ましい。Rb
5の置換位置は、2−位又は3−位であることが好ましく、2−位であることがより好ましい。Rb
1とRb
2との置換位置の組み合わせ及びRb
3とRb
4との置換位置の組み合わせはそれぞれ独立に、少なくとも一方がメトキシ基である場合、2−位と6−位との組み合わせ、2−位と5−位との組み合わせ、又は3−位と5−位との組み合わせであることが好ましく、2−位と5−位との組み合わせであることがより好ましい。
【0020】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物の製造方法を以下に説明する。前記一般式(1)で表されるアゾ化合物は、公知の製造方法と同様の製造方法で製造することができるため、前記一般式(1)で表されるアゾ化合物の製造方法は、ここに記述された製造方法に限定されるものではない。例えば、非特許文献1に記載されるような通常のアゾ染料の製法に従い、公知のジアゾ化、カップリングを行うことにより、前記一般式(1)で表されるアゾ化合物を容易に製造できる。
【0021】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物は、以下のようにして製造できる。まず、下記一般式(6)
【化8】
(式中、Ab
1、Rb
1、及びRb
2は、前記一般式(1)及び(2)中と同じ意味を表す。)
で表されるモノアゾアミノ化合物を得る。
【0022】
前記一般式(6)で表されるモノアゾアミノ化合物は、Ab
1がスルホ基を少なくとも1つ有するフェニル基である場合、下記一般式(7)
【化9】
(式中、Rb
11及びRb
12は、一方が、スルホ基又はカルボキシ基を表し、他方が、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基、又は炭素数1〜4のアルキルアミノ基を表す。)
で表される芳香族アミン類を公知の方法によりスルホアルキル化して得られるスルホアルコキシアニリン酸類をジアゾ化し、下記一般式(8)
【化10】
(式中、Rb
1及びRb
2は、前記一般式(1)及び(2)中と同じ意味を表す。)
で表されるアニリン類と1次カップリングさせることによって得られる。
【0023】
前記一般式(6)で表されるモノアゾアミノ化合物は、Ab
1がスルホ基を少なくとも1つ有するナフチル基である場合、下記一般式(9)
【化11】
(式中、Rb
13は、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、トシレート化されたヒドロキシ基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、置換アミド基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、qは1〜3の整数を示す。)
で表されるナフチルアミンスルホン酸類、又はアミノナフトールスルホン酸類を公知の方法によりスルホアルキル化して得られるスルホアルコキシナフチルアミンスルホン酸類をジアゾ化し、前記一般式(8)で表されるアニリン類と1次カップリングさせることによって得られる。
【0024】
次いで、前記一般式(6)で表されるモノアゾアミノ化合物をジアゾ化し、下記一般式(10)
【化12】
(式中、Rb
3及びRb
4は、前記一般式(1)及び一般式(2)中と同じ意味を表す。)
で表されるアニリン類と2次カップリングさせ、下記一般式(11)
【化13】
(式中、Ab
1、Rb
1、Rb
2、Rb
3、及びRb
4は、前記一般式(1)及び(2)中と同じ意味を表す。)
で表されるジスアゾアミノ化合物を得る。
【0025】
次いで、この一般式(11)で表されるジスアゾアミノ化合物をジアゾ化し、下記一般式(12)
【化14】
で表されるアニリン類と3次カップリングさせ、下記一般式(13)
【化15】
(式中、Ab
1及びRb
1〜Rb
5は、一般式(1)及び(2)中と同じ意味を表す。)
で表されるトリスアゾアミノ化合物を得る。
【0026】
次いで、前記一般式(13)で表されるトリスアゾアミノ化合物を公知の方法でジアゾ化し、下記一般式(14)
【化16】
(式中、Xb
1は、前記一般式(1)及び(2)中と同じ意味を表す。)
で表されるナフトール類と4次カップリングさせることにより、下記一般式(15)
【化17】
(式中、Ab
1、Rb
1〜Rb
5、及びXb
1は、前記一般式(1)及び(2)中と同じ意味を表す。)
で表されるテトラアゾ化合物が得られる。
【0027】
前記一般式(15)で表されるテトラアゾ化合物に、硫酸銅と、アンモニア水、アミノアルコール、及びヘキサメチレンテトラミンからなる群より選択される少なくとも1種などとからなる銅錯塩化合物を加えて、好ましくは85℃〜95℃で銅化反応を行うことで、一般式(1)又は一般式(2)で表される銅錯塩化されたアゾ化合物を得る。
【0028】
上記合成におけるジアゾ化工程は、ジアゾ成分の塩酸、硫酸などの鉱酸水溶液又は懸濁液に亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩を混合するという順法によるか、あるいはジアゾ成分の中性又は弱アルカリ性の水溶液に亜硝酸塩を加えておき、これと鉱酸を混合するという逆法によって行われる。ジアゾ化の温度は、−10〜40℃が適当である。また、ジアゾ化物とアニリン類とのカップリング工程は、塩酸、酢酸などの酸性水溶液と上記各ジアゾ液(ジアゾ化物の水溶液又は懸濁液)とを混合し、温度が−10〜40℃でpH2〜7の酸性条件で行われる。
【0029】
カップリングにより得られたモノアゾアミノ化合物、ジスアゾアミノ化合物、及びトリスアゾアミノ化合物は、そのままで、あるいは酸析や塩析により析出させた後で、濾過して取り出すか、溶液又は懸濁液のまま次の工程へ進むこともできる。ジアゾニウム塩が、難溶性で懸濁液となっている場合は濾過し、プレスケーキとして次のカップリング工程で使うこともできる。
【0030】
一般式(13)で表されるトリスアゾアミノ化合物のジアゾ化物と、一般式(14)で表されるナフトール類との4次カップリング反応は、温度が−10〜40℃でpH7〜10の中性からアルカリ性の条件下で行われる。反応終了後、塩析により析出させ濾過して取り出す。また、精製が必要な場合には、塩析を繰り返すか、又は有機溶媒を使用して水中から析出させればよい。精製に使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等の水溶性有機溶媒があげられる。
【0031】
Ab
1が置換基を有するフェニル基である場合における前記一般式(1)で表されるアゾ化合物を合成するための出発原料(原料化合物)である、一般式(7)で表される芳香族アミン類のRb
11及びRb
12としては、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ基などで置換されたナフトトリアゾール基、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基、又は炭素数1〜4のアルキルアミノ基が挙げられる。Rb
11及びRb
12はそれぞれ独立して、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、Rb
11及びRb
12の少なくとも1つがスルホ基であることがより好ましく、Rb
11及びRb
12の置換基数が2である(すなわちRb
11及びRb
12の両方が水素原子でない)ことがさらに好ましい。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基としては、スルホ基を有する炭素数1〜4の直鎖アルコキシ基が好ましい。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基において、スルホ基の置換位置は、アルコキシ基末端が好ましい。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基は、3−スルホプロポキシ基、又は4−スルホブトキシ基であることがより好ましい。
【0032】
一般式(7)で表される芳香族アミン類としては、例えば、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホン酸、2−アミノ−4−スルホ安息香酸、2−アミノ−5−スルホ安息香酸等、5−アミノイソフタル酸、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸、5−アセトアミド−2−アミノベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−(3−スルホプロポキシ)ベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼン−1,3−ジスルホン酸、2−アミノベンゼン−1,4−ジスルホン酸等が挙げられるが、4−アミノベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼン−1,3−ジスルホン酸が特に好ましい。また、一般式(7)で表される芳香族アミン類は、フェニル基上の置換基としてナフトトリアゾール基を有していてもよい。前記ナフトトリアゾール基としては、6,8−ジスルホナフトトリアゾール基、7,9−ジスルホナフトトリアゾール基、7−スルホナフトトリアゾール基、5−スルホナフトトリアゾール基等が挙げられる。この場合、ナフトトリアゾール基は、フェニル基のp−位にあることが特に好ましい。
【0033】
Ab
1が置換基を有するナフチル基である場合における前記一般式(1)で表されるアゾ化合物を合成するための出発原料(原料化合物)である、前記一般式(9)で表されるナフチルアミンスルホン酸類のRb
13は、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、トシレート化されたヒドロキシ基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、置換アミド基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基であるが、好ましくは水素原子、スルホ基、スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基である。また、Rb
13は、好ましくは水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基である。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基は、スルホ基を有する炭素数1〜4の直鎖アルコキシ基であることが好ましい。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基において、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましい。スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基は、3−スルホプロポキシ基又は4−スルホブトキシ基であることが好ましい。前記一般式(9)で表されるナフチルアミンスルホン酸類において、スルホ基の置換位置は、ナフタレン環のどちらのベンゼン核上であってもよい。スルホ基の数qが1である場合には、スルホ基の置換位置が1−位、3−位、及び6−位のいずれかであることが好ましく、スルホ基の数qが2又は3である場合には、スルホ基の置換位置の組み合わせが1−位、3−位、6−位、及び7−位からなる群より選択される2つ又は3つの組み合わせであることが好ましい。
【0034】
前記一般式(9)で表されるナフチルアミンスルホン酸類としては、例えば、2−アミノナフタレン−1−スルホン酸、8−アミノナフタレン−1−スルホン酸、5−アミノナフタレン−1−スルホン酸、5−アミノナフタレン−2−スルホン酸、8−アミノナフタレン−2−スルホン酸、3−アミノナフタレン−1−スルホン酸、6−アミノナフタレン−2−スルホン酸、4−アミノナフタレン−1−スルホン酸、7−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸、6−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸、3−アミノ−7−ニトロナフタレン−1,5−ジスルホン酸、4−アミノナフタレン−1,6−ジスルホン酸、4−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸、5−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸、3−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸、4−アミノナフタレン−1,6−ジスルホン酸、7−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、7−アミノナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸、8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、5−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、7−アミノ−3−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−1−スルホン酸、7−アミノ−3−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−1−スルホン酸、7−アミノ−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、7−アミノ−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−アミノ−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−アミノ−4−(4−スルホブトキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、2−アミノ−5−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−1,7−ジスルホン酸、6−アミノ−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2,7−ジスルホン酸、又は7−アミノ−3−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−1,5−ジスルホン酸などが挙げられるが、好ましくは、7−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸、6−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸、7−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、7−アミノ−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸、6−アミノ−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸であり、特に好ましくは、7−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸、7−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、7−アミノ−4−(3−スルホプロポキシ)ナフタレン−2−スルホン酸である。
【0035】
1次カップリング成分である前記一般式(8)で表されるアニリン類が有するRb
1及びRb
2、並びに2次カップリング成分である前記一般式(10)で表されるアニリン類が有するRb
3及びRb
4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基を表すが、好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3−スルホプロポキシ基、4−スルホブトキシ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基である。Rb
1とRb
2との置換位置の組み合わせ及びRb
3とRb
4との置換位置の組み合わせはそれぞれ独立に、アミノ基に対して、2−位と6−位との組み合わせ、2−位と5−位との組み合わせ、又は3−位と5−位との組み合わせであることが好ましく、2−位と5−位との組み合わせであることがより好ましい。前記一般式(8)で表されるアニリン類及び前記一般式(10)で表されるアニリン類として使用可能なスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアニリン類としては、3−(2−アミノ−4−メチルフェノキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(2−アミノフェノキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(2−アミノ−4−メチルフェノキシ)ブタン−1−スルホン酸等が挙げられる。前記一般式(8)で表されるアニリン類及び前記一般式(10)で表されるアニリン類として使用可能なそれ以外のアニリン類としては、例えば、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジエチルアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、3,5−ジメチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン又は3,5−ジメトキシアニリン等が挙げられる。これらアニリン類は、アミノ基が保護基で保護されたものであってもよい。前記保護基としては、例えばそのω−メタンスルホ基が挙げられる。1次カップリングに使用する前記一般式(8)で表されるアニリン類と、2次カップリングに使用する前記一般式(10)で表されるアニリン類とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
3次カップリング成分である前記一般式(12)で表されるメトキシ基を有するアニリン類は、アミノ基に対してo−位にメトキシ基を有するアニリンであればよいが、好ましくは、2,5−ジメトキシアニリン、2−メトキシアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリンである。
【0037】
4次カップリング成分である前記一般式(14)で表されるナフトール類が有する置換基Xb
1は、置換基(フェニル基及びベンゾイル基を除く)を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は置換基を有していてもよいナフトトリアゾール基を表すが、好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1個の置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は1個もしくは2個のスルホ基で置換されたナフトトリアゾール基であり、より好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個又は2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、又はヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1個の置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基であり、さらに好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個又は2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基である。Xb
1が、1つの置換基を有するフェニルアミノ基、1つの置換基を有するベンゾイルアミノ基、又は1つの置換基を有するフェニルアゾ基である場合、置換基の置換位置としては、特に限定されないが、Xb
1が、1つの置換基を有するフェニルアミノ基、1つの置換基を有するベンゾイルアミノ基、又は1つの置換基を有するフェニルアゾ基である場合、p−位であることが特に好ましい。
【0038】
本発明のアゾ化合物は、前記一般式(1)で表される遊離酸の形で、あるいはその塩の形で存在しうる。上記塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。上記塩は、偏光素子用の基材を染色するのに用いる場合には、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩であることが好ましい。一般式(1)で表されるアゾ化合物は、カップリング反応後に鉱酸を添加することにより遊離酸の形で単離することができ、単離された一般式(1)で表されるアゾ化合物を水又は酸性化した水により洗浄することで、単離された一般式(1)で表されるアゾ化合物から無機塩を除去することができる。このようにして低い塩含有率を有する酸型の一般式(1)で表されるアゾ化合物が得られる。次に、この酸型の一般式(1)で表されるアゾ化合物を、水性媒体中で所望の無機又は有機の塩基により中和することで、対応する塩の溶液とすることができる。あるいは、カップリング反応後の塩析時に、例えば塩化ナトリウムなどを用いて一般式(1)で表されるアゾ化合物をナトリウム塩とすることもでき、例えば塩化カリウムを用いて一般式(1)で表されるアゾ化合物をカリウム塩とすることもできる。このようにして一般式(1)で表されるアゾ化合物を所望の塩とすることができる。
【0039】
本発明の一般式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物又はその塩の具体例を以下にあげる。なお、化合物例は、遊離酸の形で表す。
【0043】
〔偏光素子〕
本発明の偏光素子は、基材と、前述した本発明のアゾ化合物とを含んでいる。本発明のアゾ化合物は、前記基材に吸着していることが好ましい。本発明の偏光素子において色素として用いられるアゾ化合物は、一般的には、当該技術分野において公知のアゾ染料の合成手段(例えば、非特許文献1の第626頁)に従い、公知のジアゾ化、カップリングを行うことにより製造することができる。アゾ化合物を溶液に溶解し、染色工程にて基材に含浸させて偏光素子を作製することができる。
【0044】
本発明の偏光素子は、前述した本発明のアゾ化合物に加えて、二色性色素である、下記一般式(3)
【化21】
で表されるアゾ化合物又はその塩をさらに含むことが好ましい。これにより、さらに高い偏光性能を有する偏光素子を実現できる。前記一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩も、前記基材に吸着していることが好ましい。
【0045】
一般式(3)中、Ar
1は置換基を有するフェニル基、又は置換基を有するナフチル基を表し、Rr
1〜Rr
6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Xr
1は置換基(フェニル基及びベンゾイル基を除く)を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は置換基を有していてもよいナフトトリアゾール基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、0又は1を示す。
【0046】
前記一般式(3)で表されるアゾ化合物は、下記一般式(5)
【化22】
(式中、Ab
1、Rb
1〜Rb
5、及びXb
1は、一般式(1)中と同じ意味を表す。)
で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0047】
前記一般式(3)又は(5)において、Ar
1は置換基を有するフェニル基、又は置換基を有するナフチル基を表し、Rr
1〜Rr
6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Xr
1は置換基(フェニル基及びベンゾイル基を除く)を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は置換基を有していてもよいナフトトリアゾール基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、0又は1を示す。
【0048】
前記一般式(3)又は(5)中のRr
1〜Rr
6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。前記一般式(3)又は(5)中のRr
5及びRr
6は、一方が炭素数1〜4のアルコキシ基であり、他方が炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。
【0049】
前記一般式(3)又は(5)中のXr
1は、好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1個の置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニルアゾ基、又は1個もしくは2個のスルホ基で置換されたナフトトリアゾール基であり、より好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、及び炭素数1〜4のアルキルアミノ基からなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1個の置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基、又は1個もしくは2個のスルホ基で置換されたナフトトリアゾール基であり、特に好ましくは、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基からなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、又はヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群より選択される1個の置換基を有していてもよいベンゾイルアミノ基である。
【0050】
前記一般式(3)又は(5)中のAr
1は、置換基を有するフェニル基、又は置換基を有するナフチル基であるが、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有するフェニル基、又はスルホ基、ヒドロキシ基、及びスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選択される2個もしくは3個の置換基を有するナフチル基であることが好ましい。
【0051】
前記一般式(3)又は(5)中のAr
1において、フェニル基上の置換基は、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ置換されたナフトトリアゾール基、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基、又は炭素数1〜4のアルキルアミノ基であることが好ましい。前記一般式(3)又は(5)中のAr
1において、ナフチル基上の置換基は、スルホ基、ヒドロキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。前記一般式(3)又は(5)中のAr
1は、スルホ基又はカルボキシ基を1つ以上有するフェニル基又はナフチル基であることが好ましく、耐久性を向上させるために、スルホ基又はカルボキシ基を2つ以上有するフェニル基又はナフチル基であることがより好ましい。前記一般式(3)又は(5)中のAr
1は、より偏光特性を向上させると共に中性色の偏光素子を作製するために、スルホ基又はカルボキシ基を有するフェニル基であることがさらに好ましい。
【0052】
一般式(3)におけるm及びnはそれぞれ独立に、0又は1であればよいが、本発明の偏光素子において良い偏光性能を得るには、m及びnの少なくとも一方が1であることが好ましく、m及びnの両方が1であることがより好ましい。また、置換アミノ基は特に限定されないが、例えば炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基が置換されたアミノ基が含まれる。さらに置換アミド基は特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基が置換されたアミド基が含まれる。
【0053】
前記一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩の合成方法としては、例えば、特開平9−302250号公報、特許第4662853号公報、国際公開第2012/108169号、国際公開第2012/108173号などに記載されている方法で作製することができるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
前記一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩としては、例えば、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド117、C.I.ダイレクト・レッド127、国際公開第2005/075572号に記載されているアゾ化合物(例えば、国際公開第2005/075572号の実施例1に記載されているアゾ化合物)、特許第4662853号に記載されている染料、国際公開第2013/008735号に記載されている染料、特公平2−61988号公報に記載されているアゾ化合物、特開2013−57909号公報に記載されているアゾ化合物、国際公開第2012/108169号に記載されているアゾ化合物(例えば、国際公開第2012/108169号の式(8)、(9)、(10)、(17)、(21)で表されるアゾ化合物)などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
前記一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩は、前記一般式(3)で表される遊離酸の形で偏光素子に含まれていてもよく、前記一般式(3)で表されるアゾ化合物の塩の形で偏光素子に含まれていてもよい。上記塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩であってもよく、アンモニウム塩やアルキルアミン塩などの有機塩であってもよい。上記塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0056】
次に、本発明の偏光素子に使用可能な一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩の具体例を以下にあげる。なお、以下の化合物例では、スルホ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基などの置換基を遊離酸の形で表しているが、そのような置換基は塩の形であってもよい。
【0072】
本発明の偏光素子において、前記一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩の含有量は、本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩の含有量100重量部に対して、1〜200重量部の範囲内であることが好ましく、50〜100重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0073】
本発明の偏光素子は、前述した本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩に加えて、下記一般式(4)
【化38】
で表されるアゾ化合物又はその塩をさらに含むことが好ましく、前記一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩と、前記一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩との両方をさらに含むことがより好ましい。これにより、さらに高い偏光度を有する偏光素子を実現できる。前記一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩も、前記基材に吸着していることが好ましい。
【0074】
前記一般式(4)中において、Ay
1は、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Ry
1〜Ry
4はそれぞれ独立に、水素原子、スルホ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、pは1〜3の整数を示す。前記一般式(4)中のAy
1は、カルボキシ基又はスルホ基であることが好ましい。
【0075】
前記一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩の合成方法としては、例えば、非特許文献1に記載の合成方法や、国際公開第2007/138980号に記載されている合成方法を採用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩としては、例えば、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・イエロー72、C.I.ダイレクト・オレンジ39(CAS番号:1325−54−8)、国際公開第2007/138980号に記載されているアゾ化合物(例えば、国際公開第2007/138980号の実施例1に記載されている化合物例111のアゾ化合物)を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
前記一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩は、前記一般式(4)で表される遊離酸の形で偏光素子に含まれていてもよく、前記一般式(4)で表されるアゾ化合物の塩の形で偏光素子に含まれていてもよい。上記塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩であってもよく、アンモニウム塩やアルキルアミン塩などの有機塩であってもよい。上記塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0078】
次に、本発明の偏光素子に使用可能な一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩の具体例を以下にあげる。なお、以下の化合物例では、スルホ基及びカルボキシ基を遊離酸の形で表しているが、スルホ基やカルボキシ基は塩の形であってもよい。
【0080】
本発明の偏光素子において、前記一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩の含有量は、本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩の含有量100重量部に対して、1〜200重量部の範囲内であることが好ましく、50〜100重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0081】
本発明の偏光素子において、色調整等に応じて、一般式(1)、(3)、及び(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物又はその塩以外の他の有機染料、例えば非特許文献2に記載のアゾ化合物などを1種以上、本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩と併用してもよい。併用する他の有機染料は、特に制限されないが、親水性高分子を染色するものであって、本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収特性を有する染料であって、二色性の高いものが好ましい。他の有機染料としては、例えば、非特許文献2に記載のアゾ化合物(例えば、C.I.ダイレクト・イエロー28)や、C.I.ダイレクト・レッド2、C.I.ダイレクト・レッド31、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド247、C.I.ダイレクト・グリーン80、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.ダイレクト・ブルー202、C.I.ダイレクト・バイオレット9などが挙げられる。これらのアゾ化合物は、遊離酸の形、あるいは、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アンモニウム塩、アミン類の塩等の塩の形で用いられる。必要に応じて、他の有機染料を併用する場合、目的とする偏光素子が、より中性色な偏光素子、特徴ある色を有する偏光素子、液晶プロジェクター用カラー偏光素子、及びその他のカラー偏光素子の何れであるかにより、それぞれ配合する他の有機染料の種類は異なる。他の有機染料の配合量(二種以上の場合にはそれらの合計配合量)は、特に限定されるものではないが、一般的には、本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩と、前記一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩と、前記一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩との合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であるのが好ましい。
【0082】
前記基材としては、親水性高分子が好ましい。前記親水性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂などが挙げられる。本発明のアゾ化合物を含有させる基材として、染色性及び架橋性などから、ポリビニルアルコール又はその誘導体(以下、「ポリビニルアルコール系樹脂」と称する)が最も好ましい。基材をフィルム形状として、本発明のアゾ化合物及び他の配合物をフィルム形状の基材に吸着させ、延伸等の配向処理を適用することによって、本発明の偏光素子を作製できる。
【0083】
ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の製造方法を採用できる。ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂(酢酸ビニルの単独重合体又は共重合体)をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。このポリビニルアルコール又はその誘導体は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなどであってもよい。
【0084】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましく、99.5モル%以上が特に好ましい。ケン化度が上記下限未満であると、ポリビニルアルコール系樹脂が溶出し易くなり、光学特性の面内ムラ、染色工程での染色性の低下、延伸工程での切断を誘発し、生産性を著しく低下させる恐れがあり、好ましくはない。
【0085】
本発明の偏光素子の光学特性を向上するためには、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、1000〜10000であることが好ましく、2000〜10000であることがより好ましく、3500〜10000であることがさらに好ましく、5000〜10000であることが特に好ましい。重合度が10000を超えると、ポリビニルアルコール系樹脂が硬くなり、成膜性や延伸性が低下し、生産性が低下するので、工業的な観点から重合度が10000以下であることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、粘度平均重合度を意味し、当該技術分野において周知の手法によって求めることができる。
【0086】
以下、基材がポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムである場合を例にして、具体的な偏光素子の製造方法を説明する。
【0087】
まず、ポリビニルアルコール系樹脂を成膜することにより、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルム原反を得る。ポリビニルアルコール系樹脂の成膜方法としては、含水ポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出する方法の他、流延成膜法、湿式成膜法(貧溶媒中への吐出により成膜する方法)、ゲル成膜法(ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去する方法)、キャスト成膜法(ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を基板上に流し、乾燥させる方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用できるが、これらの方法に限定されない。
【0088】
成膜の際に溶剤を使用する場合、その溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、水等が挙げられる。溶剤は、1種でもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。成膜の際に用いる溶剤の量としては、成膜原液(成膜に使用されるポリビニルアルコール系樹脂及び溶剤を含む混合液)全体に対して70〜95重量%が好ましいが、限定されない。ただし、溶剤の量が70重量%未満であると、成膜原液の粘度が高くなり、調製時の濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルム原反を得ることが困難となる。また、溶剤の量が95重量%を超えると、成膜原液の粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚み制御が難しく、乾燥時の風による表面の揺らぎの影響が大きくなり、乾燥時間が長くなり生産性が低下する。
【0089】
フィルム原反を製造するにあたり、可塑剤を使用してもよい。前記可塑剤としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記可塑剤の使用量も、特に制限されないが、通常は、ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して、5〜15重量部の範囲内が好適である。
【0090】
成膜後のフィルム原反の乾燥方法としては、例えば、熱風による乾燥や、熱ロールを用いた接触乾燥や、赤外線ヒーターによる乾燥等が挙げられるが、限定されない。これら乾燥方法のうちの1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。乾燥温度についても、特に制限はないが、50〜70℃の範囲内が好ましい。
【0091】
乾燥後のフィルム原反は、その膨澗度を後述する所定の範囲に制御するために、熱処理を行うことが好ましい。成膜後のフィルム原反の熱処理方法としては、例えば、熱風による方法や、熱ロールにフィルム原反を接触させる方法などが挙げられ、熱により処理ができる方法であれば特に限定されない。これらの方法のうちの1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。熱処理温度は、特に制限はないが、110〜140℃の範囲内が好ましい。熱処理の時間は、おおむね1〜10分間が好適であるが、特に限定されない。
【0092】
こうして得られるフィルム原反の厚みは、20〜100μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましく、20〜60μmであることがさらに好ましい。厚みが20μm未満になると、フィルムの破断が発生し易くなる。厚みが100μmを超えると、延伸時にフィルムにかかる応力が大きくなり、延伸工程での機械的負荷が大きくなり、その負荷に耐えうるための大規模な装置が必要となる。
【0093】
以上により得られたポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに対して、次に膨潤工程を施す。
【0094】
前記膨潤工程は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを20〜50℃の溶液に30秒〜10分間浸漬させることによって行われる。前記溶液は、水溶液であることが好ましい。フィルムの膨潤はアゾ化合物の染色処理時にも起こるので、偏光素子を製造する時間を短縮しようとする場合には、膨潤工程を省略することもできる。
【0095】
フィルム原反の膨澗度Fは、180〜260%であることが好ましく、200〜240%であることがより好ましく、210〜230%であることがさらに好ましい。膨澗度Fが200%未満であると、延伸時の伸度が少なく、低倍率で破断する可能性が高くなる。180%未満になると、延伸時の伸度が著しく低下し、破断する可能性が高くなり、充分な延伸を行うことが困難となる。また、膨澗度Fが240%を超えると、膨潤が過多となり、シワや弛みが発生し、延伸時の切断の原因となりつつある。膨澗度Fが260%を超えると、顕著にシワやたるみの原因となりうるため好ましくない。膨澗度Fを制御するためには、例えば、成膜後のフィルム原反を熱処理する際の、温度及び時間で好適な膨潤度Fに成すことができる。
【0096】
フィルム原反の膨澗度Fは、当該技術分野において周知の手法によって測定することができるが、例えば、次の方法により測定される。まず、フィルム原反を5cm×5cmにカットし、30℃の蒸留水1リットルに4時間浸漬する。この浸漬したフィルムを蒸留水中から取り出し、2枚の濾紙で挟んでフィルム表面の水滴を濾紙に吸収させた後に、水に浸漬されていたフィルムの重さ[β(g)]を測定する。さらに、浸漬されて水滴を吸収されたフィルムを105℃の乾燥機で20時間乾燥し、デシケーターで30分間冷却した後、乾燥後のフィルムの重さ[γ(g)]を測定する。そして、下記数式(v)によりフィルム原反の膨潤度Fを算出する。
膨潤度 F=100×β/γ(%) ・・・(v)
【0097】
膨潤工程の後に、染色工程を施す。染色工程では、本発明のアゾ化合物(一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩)を、必要に応じて他のアゾ化合物(一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩など)と共に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着させることができる。
【0098】
前記染色工程は、アゾ化合物をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着させる方法であれば、特に限定されないが、例えば、アゾ化合物を含有した溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させることによって行われる。この染色工程での溶液温度は、5〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましく、35〜50℃が特に好ましい。溶液に浸漬する時間は、適度に調節できるが、30秒間〜20分間で調節するのが好ましく、1〜10分間がより好ましい。染色方法としては、前記溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が好ましいが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに該溶液を塗布する方法であってもよい。
【0099】
二色性染料であるアゾ化合物を含有した溶液は、染色助剤として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを含有することができる。それら染色助剤の含有量は、アゾ化合物の染色性による染色の時間及び温度に応じて任意の濃度に調整できるが、0〜5重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。
【0100】
染色工程の後、次の工程に入る前に、洗浄工程(以下、「洗浄工程1」という)を行うことができる。洗浄工程1は、染色工程でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面に付着した染料溶媒を洗浄液で洗浄する工程である。洗浄工程1を行うことによって、次に処理する液中に染料が移行するのを抑制することができる。洗浄工程1では、一般的には、洗浄液として水が用いられる。洗浄方法としては、洗浄液に浸漬する方法が好ましいが、洗浄液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布する方法も用いることができる。洗浄の時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜300秒間、より好ましくは1〜60秒間である。洗浄工程1での洗浄液の温度は、親水性高分子が溶解しない温度であることが必要であり、一般的には5〜40℃である。
【0101】
染色工程の後、又は洗浄工程1の後に、架橋剤及び/又は耐水化剤をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含有させる工程を行うことができる。前記架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができ、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができるが、ホウ酸が好ましい。前記耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。
【0102】
以上に示された少なくとも1種の架橋剤及び/又は耐水化剤を用いて、架橋剤及び/又は耐水化剤をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含有させる工程を行う。前記架橋剤及び/又は耐水化剤は、通常、溶媒に溶解させた溶液の状態で使用される。前記溶媒としては、水が好ましいが、限定されるものではない。前記架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程における、溶媒中の架橋剤及び/又は耐水化剤の含有濃度は、ホウ酸を例にして示すと、溶媒に対して0.1〜6.0重量%が好ましく、1.0〜4.0重量%がより好ましい。この工程での溶媒の温度は、5〜70℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤及び/又は耐水化剤の溶液に浸漬する方法が好ましいが、該溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布又は塗工する方法でもよい。この工程での処理時間は、30秒間〜6分間が好ましく、1〜5分間がより好ましい。ただし、架橋剤及び/又は耐水化剤をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含有させることは必須でなく、偏光素子の製造時間を短縮したい場合や、架橋処理又は耐水化処理が不必要な場合には、この処理工程を省略してもよい。
【0103】
染色工程の後、洗浄工程1の後、又は、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程の後に、延伸工程を行う。延伸工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを1軸に延伸する工程である。延伸方法は、湿式延伸法及び乾式延伸法のどちらでも良い。延伸倍率は3倍以上であれば本発明を達成しうるが、好ましくは5倍〜7倍である。
【0104】
乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が空気媒体の場合には、延伸する際の空気媒体の温度は、常温〜180℃が好ましい。また、湿度20〜95%RHの雰囲気中で延伸処理するのが好ましい。延伸方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法は限定されるものではない。延伸工程は、1段の延伸により行うことができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0105】
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はそれらの混合溶液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する。前記架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。前記架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。前記耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。
【0106】
以上に示された少なくとも1種の架橋剤及び/又は耐水化剤を用いて、架橋剤及び/又は耐水化剤をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含有させる工程を行う。前記架橋剤及び/又は耐水化剤は、通常、溶媒に溶解させた溶液の状態で使用される。前記溶媒としては、水が好ましいが、限定されるものではない。前記架橋剤及び/又は耐水化剤を含有
【0107】
以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸を行う。前記架橋剤としては、ホウ酸が好ましい。前記延伸工程での架橋剤及び/又は耐水化剤の濃度は、例えば、0.5〜15重量%が好ましく、2.0〜8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は、2〜8倍が好ましく、5〜7倍がより好ましい。延伸温度は、40〜60℃が好ましく、45〜58℃がより好ましい。延伸時間は、通常30秒間〜20分間であるが、2〜5分間がより好ましい。湿式延伸工程は、1段の延伸により行うことができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0108】
延伸工程を行った後には、フィルム表面に架橋剤及び/又は耐水化剤の析出、又は異物が付着することがあるため、フィルム表面を洗浄する洗浄工程(以下、「洗浄工程2」という)を行うことができる。洗浄の時間は、1秒間〜5分間が好ましい。洗浄方法としては、洗浄液に浸漬する方法が好ましいが、洗浄液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布又は塗工する方法も用いることができる。洗浄処理は、1段の処理とすることもできるし、2段以上の多段処理とすることもできる。洗浄工程の洗浄液の温度は、特に限定されないが、通常5〜50℃、好ましくは10〜40℃である。
【0109】
ここまでの処理工程で用いる溶媒として、例えば、水;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリドン;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等のアルコール類;エチレンジアミン又はジエチレントリアミン等のアミン類などの溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、1種以上のこれら溶媒の混合物を用いることもできる。最も好ましい溶媒は、水である。
【0110】
延伸工程又は洗浄工程2の後には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるが、より乾燥効率を高めるためにはロールによる圧縮、エアーナイフ、吸水ロール等によって表面の水分除去を行うことができ、また、そのような水分除去と共に、あるいは、そのような水分除去に代えて、送風乾燥を行うこともできる。乾燥処理の温度としては、20〜100℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましい。乾燥処理の時間は、30秒間〜20分間の範囲内とすることができるが、5〜10分であることが好ましい。
【0111】
本発明では、さらに偏光性能を向上させるために、所望の耐久性を維持できる範囲で、例えばヨウ素を含む染色液を用いてヨウ素を基材に吸着させることにより、ヨウ素を偏光素子に含ませても良い。前記染色液は、ヨウ素及びヨウ化物を含んでいる。前記ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛などを用いることができるが、ここで示したヨウ化物に限定されるものではない。ヨウ素濃度は、0.0001〜0.5重量%が好ましく、0.001〜0.4重量%がより好ましい。ヨウ化物濃度は、0.0001〜8重量%が好ましい。この場合の処理工程としては、例えば、染色工程、洗浄工程1、延伸工程、及び洗浄工程2のいずれか1つ、もしくは、それらの複数の工程を用いることができる。処理温度は、5〜60℃が好ましく、5〜50℃がより好ましく、10〜40℃が特に好ましい。処理時間は、適度に調節できるが、30秒間〜20分間で調節するのが好ましく、1〜5分間がより好ましい。
【0112】
以上のように、本発明の偏光素子は、基材とアゾ化合物とを含む偏光素子において、前記アゾ化合物として前記一般式(1)で表されるアゾ化合物を使用していることで、優れた偏光性能を有している。
【0113】
〔偏光板〕
本発明の偏光板は、本発明の偏光素子と、前記偏光素子の少なくとも片面に設けられた透明保護層とを備えている。
前記透明保護層は、透明ポリマーによる塗布層として、又は透明フィルムのラミネート層として設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマー又は透明フィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマー又は透明フィルムが好ましい。透明保護層に用いる透明ポリマー又は透明フィルムとして、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂又はそのフィルム、アクリル樹脂又はそのフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂又はそのフィルム、ナイロン樹脂又はそのフィルム、ポリエステル樹脂又はそのフィルム、ポリアリレート樹脂又はそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂又はそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖がイミド及び/又はアミドの重合体(又は樹脂)又はそのフィルムなどが挙げられる。また、前記透明保護層として、液晶性を有する樹脂又はそのフィルムを設けることもできる。前記保護フィルムの厚みは、例えば、0.5〜200μm程度である。偏光素子の片面に樹脂又はフィルムを1層設けてもよく、偏光素子の片面に同種又は異種の樹脂又はフィルムを2層以上設けてもよく、偏光素子の両面に同種又は異種の樹脂又はフィルムを1層以上設けてもよい。
【0114】
前記透明保護層を偏光素子と貼り合わせるために、接着剤を用いることができる。前記接着剤としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール接着剤が好ましい。前記ポリビニルアルコール接着剤として、例えば、ゴーセノール(登録商標)NH−26(日本合成化学工業株式会社製)、エクセバール(登録商標)RS−2117(株式会社クラレ製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記接着剤には、架橋剤及び/又は耐水化剤を添加することができる。前記ポリビニルアルコール接着剤には、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体を混合することができ、その場合、さらに必要により架橋剤を混合させることができる。前記無水マレイン酸−イソブチレン共重合体として、例えば、イソバン(登録商標)#18(株式会社クラレ製)、イソバン(登録商標)#04(株式会社クラレ製)、アンモニア変性イソバン(登録商標)#104(株式会社クラレ製)、アンモニア変性イソバン(登録商標)#110(株式会社クラレ製)、イミド化イソバン(登録商標)#304(株式会社クラレ製)、イミド化イソバン(登録商標)#310(株式会社クラレ製)などが挙げられる。必要により無水マレイン酸−イソブチレン共重合体に混合される架橋剤としては、水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。前記水溶性多価エポキシ化合物とは、例えば、デナコールEX−521(ナガセケムテックス株式会社製)、テトラード(TETRAD)(登録商標)−C(三菱ガス化学株式会社製)などが挙げられる。また、前記接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤といった、ポリビニルアルコール接着剤以外の公知の接着剤を用いることもできる。また、接着剤の接着力の向上、又は耐水性の向上を目的として、亜鉛化合物、塩化物、ヨウ化物等の添加物を接着剤に0.1〜10重量%程度の濃度で含有させることもできる。添加物についても、限定されるものではない。偏光素子の少なくとも片面に透明保護層を接着剤で貼り合せた後、適した温度で乾燥又は熱処理することによって、偏光板が得られる。
【0115】
前記偏光板は、場合によって、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置に貼り合わせる場合、貼り合わせた後に非露出面となる透明保護層の表面に視野角改善及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層又はフィルムを設けることもできる。偏光板を、これらの層又はフィルムや、表示装置に貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。
【0116】
前記偏光板は、前記透明保護層におけるもう一方の表面、すなわち露出面上に、反射防止層や防眩層、ハードコート層など、各種の公知の機能性層を設けたものであってもよい。この各種機能性層を作製するには、塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼り合わせる方法を用いることもできる。また、前記機能性層は、位相差を制御する層又はフィルムとすることができる。
【0117】
以上のように、本発明の偏光板は、基材及びアゾ化合物を含む偏光素子と、前記偏光素子の少なくとも片面に設けられた透明保護層とを備える偏光板において、前記アゾ化合物として前記一般式(1)で表されるアゾ化合物を使用していることで、優れた偏光性能を有している。
【0118】
本発明の偏光素子及び偏光板は、液晶表示装置などの表示装置に用いることができる。本発明の偏光素子又は偏光板を用いた表示装置は、高コントラストを有する表示装置になる。
【0119】
また、本発明の偏光素子及び偏光板はそれぞれ、必要に応じて保護層又は機能層及び支持体等を設け、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、カーナビゲーション、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ及び屋内外の計測器や表示器等に使用される。
【0120】
本発明の偏光板の適用方法として、本発明の偏光板を支持体に貼付して支持体付き偏光板として使用しても良い。前記支持体としては、偏光板が貼付されるため、平面部を有しているものが好ましい。また、前記支持体としては、光学用途であるため、ガラス成形品が好ましい。前記ガラス成形品としては、例えば、ガラス板、レンズ、プリズム(例えば、三角プリズム、キュービックプリズムなど)等が挙げられる。レンズに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付のコンデンサレンズとして利用し得る。また、プリズムに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付きの偏光ビームスプリッタや偏光板付ダイクロイックプリズムとして使用し得る。また、偏光板を液晶セルに貼付してもよい。前記ガラス成形品の材質としては、例えば、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、水晶、サファイヤ等の無機系のガラスや、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の有機系のプラスチックが挙げられるが、無機系のガラスが好ましい。前記ガラス板の厚さや大きさは、所望のサイズでよい。また、ガラスからなる支持体を備える支持体付き偏光板には、単板光透過率をより向上させるために、そのガラス面及び偏光板面の一方又は両方に反射防止層(AR層)を設けることが好ましい。こういった支持体の表面に、例えば支持体の平面部の表面に、透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に本発明の偏光板を貼付する。また、偏光板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に支持体を貼付してもよい。ここで使用する接着(粘着)剤は、例えば、アクリル酸エステル系のものが好ましい。なお、この偏光板を位相差板と組み合わせて楕円偏光板として使用する場合、楕円偏光板の位相差板側を支持体に貼付するのが通常であるが、楕円偏光板の偏光板側を支持体に貼付してもよい。
【0121】
〔表示装置〕
本発明の表示装置は、本発明の偏光素子、又は本発明の偏光板を備えるものである。また、本発明の表示装置は、例えば、液晶セルと、液晶セルの片側又は両側に配置されている本発明の偏光素子又は本発明の偏光板を備える反射型、透過型、又は透過・反射両用型等の液晶表示装置とすることができる。上記液晶セルは、任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型の液晶セル、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型の液晶セルなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであって良い。
【0122】
さらに、本発明の表示装置において、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な他の光学部材を適宜な位置に1つ又は2つ以上配置することもできる。本発明の偏光素子又は本発明の偏光板や、他の光学部材を設ける場合、それらは、両側で同じものであってもよいし、両側で異なるものであってもよい。
【0123】
本発明の表示装置は、本発明の偏光素子又は本発明の偏光板の片側又は両側に液晶セル等の他の部材と粘着させるための粘着層を有するものとすることもできる。その粘着層の形成には、適宜な粘着性物質や粘着剤を用いることができ、特に限定はない。粘着層の構成材料の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素樹脂、ゴムなどの適宜な重合体をベース重合体とするものなどが挙げられる。
【0124】
本発明の表示装置は、ツイストネマチック方式(TN)、スーパーツイストネマチック方式(STN)、薄膜トランジスタ方式(TFT)、バーチカルアライメント方式(VA)、インプレーンスイッチング方式(IPS)等の液晶表示装置全般、及び他の表示装置に使用することができる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得られた偏光素子及び偏光板の透過率、偏光度、及びコントラスト値の測定は、以下のようにして行った。
【0126】
〔偏光素子の透過率及び偏光度の測定方法〕
1枚の偏光素子の各波長における透過率を単体透過率Ts、2枚の偏光素子をそれらの吸収軸方向が同一となるように重ねた場合の各波長における透過率を平行位透過率Tp、2枚の偏光素子をそれらの吸収軸が直交するように重ねた場合の各波長における透過率を直交位透過率Tcとした。それぞれの透過率Ts、Tp、及びTcは、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製の「U−4100」)を用いて5nm間隔の各波長で測定した。
【0127】
偏光素子の偏光度ρ(%)は、平行位透過率Tp及び直交位透過率Tcから、下記式により算出した。
ρ={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}
1/2×100
【0128】
〔偏光板の透過率、偏光度、及びコントラスト値の測定方法〕
1枚の偏光板の各波長における透過率を視感度補正したものを単体透過率Ys、2枚の偏光板をそれらの吸収軸方向が同一となるように重ねた場合の各波長における透過率を視感度補正したものを平行位透過率Yp、2枚の偏光板をそれらの吸収軸が直交するように重ねた場合の各波長における透過率を視感度補正したものを直交位透過率Ycとした。視感度補正は、JIS Z 8722:2009に基づいて、C光源2°視野、色度関数により行った。それぞれの透過率Ys、Yp、及びYcは、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製の「U−4100」)を用いて5nm間隔の各波長で測定した。
【0129】
偏光板の偏光度Py(%)は、視感度補正された平行位透過率Yp、及び視感度補正された直交位透過率Ycから、下記式(16)により算出した。
Py={(Yp−Yc)/(Yp+Yc)}
1/2×100 …(16)
【0130】
偏光板のコントラスト値(CR)は、視感度補正された平行位透過率Yp、及び視感度補正された直交位透過率Ycから、下記式(17)により算出した。
CR=Yp/Yc …(17)
【0131】
〔実施例1〕
<化合物例1のアゾ化合物の合成>
4−アミノベンゼン−1,3−ジスルホン酸25.3重量部を水500重量部に加え、冷却し10℃以下で、35重量%塩酸水溶液31.3重量部を加え、次に亜硝酸ナトリウム6.9重量部を加え、5〜10℃で1時間攪拌し、ジアゾ化した。そこへ、1次カップラー(カップリング成分)として希塩酸水溶液に溶解した3−メチルアニリン10.7重量部を加え、10〜30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記構造式(18)
【化40】
で表されるモノアゾアミノ化合物29.7重量部を得た。
【0132】
得られた構造式(18)のモノアゾアミノ化合物を水400重量部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、10〜30℃で35重量%塩酸水溶液25.0重量部を、次に亜硝酸ナトリウム5.5重量部を加え、20〜30℃で1時間攪拌し、ジアゾ化した。そこへ、2次カップラーとして希塩酸水溶液に溶解した3−メチルアニリン8.6重量部を加え、20〜30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記構造式(19)
【化41】
で表されるジスアゾアミノ化合物31.3重量部を得た。
【0133】
得られた構造式(19)のジスアゾアミノ化合物を水250重量部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、20〜30℃で35重量%塩酸水溶液20.0重量部を、次に亜硝酸ナトリウム4.4重量部を加え、20〜30℃で1時間攪拌し、ジアゾ化した。そこへ、3次カップラーとして、希塩酸水溶液に溶解した2−メトキシ−5−メチルアニリン8.8重量部を加え、20〜30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3.5とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記の構造式
【化42】
で表されるトリスアゾアミノ化合物32.6重量部を得た。
【0134】
得られた構造式(20)のトリスアゾアミノ化合物を水200重量部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、20〜30℃で35%塩酸水溶液16.0重量部を、次に亜硝酸ナトリウム3.5重量部加え、20〜30℃で1時間攪拌し、ジアゾ化し、トリスアゾアミノ化合物のジアゾ化物を得た。また、4次カップラーとして、6−フェニルアミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸16.1重量部を水50重量部に加え、炭酸ナトリウムで弱アルカリ性として溶解し、4次カップラーの溶液を得た。
【0135】
この4次カップラーの溶液に、先に得られたトリスアゾアミノ化合物のジアゾ化物をpH8〜10に保って注入し、攪拌して、カップリング反応を完結させた。次いで、硫酸銅25重量部の水溶液にモノエタノールアミン30.5重量部を加えて95℃で10時間反応させ、薄層クロマトグラフィー上で未反応物が認められなくなるまで銅化反応を行った。反応後、塩化ナトリウムで塩析し、濾過して、一般式(1)で表されるアゾ化合物の一例として、化合物例1のアゾ化合物(銅化テトラキスアゾ化合物)46.4重量部を得た。
【0136】
<偏光素子の作製>
基材としてのケン化度が99モル%以上で膜厚が40μmのポリビニルアルコールフィルム(株式会社クラレ製の「VF−PE#4000」;以下、単に「フィルム」と称する)を35℃の温水に3分浸漬し膨潤処理をした。一方、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩としての化合物例1のアゾ化合物1.0重量部と、染色助剤として無水硫酸ナトリウム1.0重量部と、水2000重量部とを混合することにより、40℃の水溶液を調製した。この40℃の水溶液に前記の膨潤処理したフィルムを浸漬して、アゾ化合物をフィルムに吸着させた。
【0137】
アゾ化合物が吸着されたフィルムを水にて洗浄した後、2重量%のホウ酸を含有した40℃の水溶液で1分間ホウ酸処理を行った。ホウ酸処理して得られたフィルムを、5.0倍に延伸しながらホウ酸3.0重量%を含有した58℃の水溶液中で5分間ホウ酸処理を行った。そのホウ酸処理して得られたフィルムの緊張状態を保ちつつ、常温の水で20秒間洗浄処理を行った。洗浄処理して得られたフィルムを直ちに60℃で5分間乾燥処理を行い、膜厚15μmのフィルム形状の偏光素子を得た。以上の方法で、本発明の一例に係る一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を含有する偏光素子を作製した。
【0138】
〔実施例2〕
<化合物例17のアゾ化合物の合成>
4次カップラーとして、6−フェニルアミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸16.1重量部に代えて、(7,8−ジスルホ−2H−ナフト[1,2−d]トリアゾール−2−イル−)−1−ナフトール−3−スルホン酸28.2重量部を用いたこと以外は、実施例1における化合物例1のアゾ化合物の合成と同様にして、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩としての化合物例17のアゾ化合物(銅化テトラキスアゾ化合物)を得た。
【0139】
<偏光素子の作製>
化合物例1のアゾ化合物に代えて化合物例17のアゾ化合物を用いたこと以外、実施例1と同様にして、偏光素子を作製した。
【0140】
〔比較例1〕
化合物例1のアゾ化合物に代えて、特開昭60−156759号公報の実施例38に記載の銅化されたアゾ化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光素子を作製した。
【0141】
〔比較例2〕
化合物例1のアゾ化合物に代えて、特公昭64−5623号公報の実施例1に記載の銅化されたアゾ化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光素子を作製した。
【0142】
表1に、実施例1,2の偏光素子及び比較例1,2の偏光素子における偏光度が最も高い波長における単体透過率Ts、平行位透過率Tp、直交位透過率Tc、及び偏光度ρの測定結果を示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1から分かるように、本発明の実施例1,2の銅化されたアゾ化合物を用いた偏光素子は、これまでに知られている銅化されたアゾ化合物よりも、同程度の透過率で飛躍的に偏光度が向上していることが分かる。
【0145】
〔実施例3〕
まず、基材としてのケン化度が99%以上で膜厚が40μmのポリビニルアルコールフィルム(株式会社クラレ製の「VF−PE#4000」;以下、単に「フィルム」と称する)を35℃の温水に3分浸漬し、膨潤処理をした。また、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩としての化合物例1のアゾ化合物2.0重量部と、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩として化合物例20のアゾ化合物(C.I.ダイレクト・レッド117)を0.5重量部と、一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩としての化合物例111のアゾ化合物(国際公開第2007/138980号の実施例1に記載されているアゾ化合物)0.5重量部と、染色助剤としてのトリポリリン酸ナトリウム1.0重量部及び無水硫酸ナトリウム1.0重量部と、水2000重量部とにより、40℃の水溶液を調製した。この40℃の水溶液に前記の膨潤処理したフィルムを浸漬して、アゾ化合物をフィルムに吸着させた。
【0146】
アゾ化合物が吸着されたフィルムを水にて洗浄した後、2重量%のホウ酸を含有した30℃の水溶液で1分間ホウ酸処理を行った。ホウ酸処理して得られたフィルムを、5.0倍に延伸しながらホウ酸3.0重量%を含有した58℃の水溶液中で5分間ホウ酸処理を行った。そのホウ酸処理して得られたフィルムの緊張状態を保ちつつ、常温の水で20秒間洗浄処理を行った。洗浄処理して得られたフィルムを直ちに60℃で5分間乾燥処理を行い、膜厚15μmのフィルム形状の偏光素子を得た。以上の方法で、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、及び一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩をフィルムに含有する偏光素子を作製した。
【0147】
得られた偏光素子の両面に対して、アルカリ処理した膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フイルム株式会社製の「TD−80U」;以下、「TAC」と略記する)を、ポリビニルアルコール接着剤を用いて接着することにより、TAC/接着層/偏光素子/接着層/TACという構成で積層(ラミネート)した。これにより、偏光板を得た。得られた偏光板を測定試料とした。
【0148】
〔実施例4〕
一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩として、化合物例1のアゾ化合物2.0重量部に代えて実施例2で用いた化合物例17のアゾ化合物3.0重量部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、及び一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩をフィルムに含有する偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0149】
〔実施例5〕
一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩として、化合物例20のアゾ化合物を0.5重量部に代えて、化合物例41のアゾ化合物のナトリウム塩(国際公開第2005/075572号の実施例1に記載されているアゾ化合物)1.0重量部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、及び一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩をフィルムに含有する偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0150】
〔実施例6〕
一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩として、化合物例20のアゾ化合物を0.5重量部に代えて、化合物例54のアゾ化合物(国際公開第2012/108169号の実施例3に記載されている式(21)で表されるアゾ化合物)1.6重量部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、及び一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩をフィルムに含有する偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0151】
〔実施例7〕
一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩として、化合物例111のアゾ化合物0.5重量部に代えて、前記一般式(4)の構造を有するC.I.ダイレクト・オレンジ39(CAS番号:1325−54−8)を0.58重量部使用したこと以外は、実施例3と同様にして、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、及び一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩をフィルムに含有する偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0152】
〔実施例8〕
一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩として、化合物例20のアゾ化合物を0.5重量部に代えて、化合物例20のアゾ化合物を0.12重量部と、化合物例99のアゾ化合物(国際公開第2012/108169号の実施例1に記載されている式(17)で表されるアゾ化合物)1.2重量部とを使用し、一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩として、化合物例111のアゾ化合物0.5重量部に代えて、前記一般式(4)の構造を有するC.I.ダイレクト・オレンジ39(CAS番号:1325−54−8)を0.39重量部使用したこと以外は、実施例3と同様にして、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、及び一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩をフィルムに含有する偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0153】
〔実施例9〕
一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩としての化合物例111のアゾ化合物0.5重量部に代えて、他の有機染料としての次の構造式
【化43】
で表されるC.I.ダイレクト・イエロー28を0.80重量部使用したこと以外は、実施例3と同様にして、一般式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩、一般式(3)で表されるアゾ化合物又はその塩、及びほぼ同じ波長にて偏光機能を持つ一般式(4)で表されるアゾ化合物又はその塩をフィルムに含有する偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0154】
〔比較例3〕
実施例3におけるアゾ化合物の組成を特開平11−218611号公報の実施例2に記載のアゾ化合物の組成に変更したこと以外は、実施例3と同様にして偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0155】
〔比較例4〕
実施例3におけるアゾ化合物の組成を特許第4162334号公報の実施例3に記載のアゾ化合物の組成に変更したこと以外は、実施例3と同様にして偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0156】
〔比較例5〕
実施例3におけるアゾ化合物の組成を特許第4360100号公報の実施例1に記載のアゾ化合物の組成に変更したこと以外は、実施例3と同様にして偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0157】
〔比較例6〕
一般式(1)で表されるアゾ化合物である化合物例1のアゾ化合物を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして、偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0158】
〔比較例7〕
一般式(1)で表されるアゾ化合物である化合物例1のアゾ化合物に代えて、化合物例1のアゾ化合物と同じくテトラキスアゾ化合物である国際公開第2012/108169号の式(17)で表されるアゾ化合物1.8重量部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0159】
表2に、実施例3〜9及び比較例3〜7の偏光板における、偏光度が最も高い波長における視感度補正された単体透過率Ys、視感度補正された平行位透過率Yp、視感度補正された直交位透過率Yc、偏光度Py、およびコントラスト値CRを示す。
【0160】
【表2】
【0161】
表2から分かるように、本発明の実施例3〜9の偏光板は、比較例3〜7の偏光板と比較して、偏光性能及びコントラストが向上していることが分かる。また、実施例3〜9の偏光板を85℃、相対湿度85%の環境に500時間の間、暴露しても透過率及び偏光度の変化は起こらなかった。
【0162】
以上のことから、本発明の偏光板及び偏光素子は、以上の実施例1〜9及び比較例1〜7の結果から明らかなように、従来の偏光板及び偏光素子と比較して光学特性が向上していることが分かる。また、本発明の偏光板及び偏光素子は、以上の実施例3〜9の結果から明らかなように、耐久性が高い偏光素子及び偏光板であることが分かる。また、本発明の偏光素子又は偏光板を用いた表示装置や偏光レンズ等の製品は、偏光特性が良好で、かつ、耐久性を有することから、高い信頼性を得ることができる。