(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度制御部は、前記超電導スイッチよりも熱容量が小さい区間に熱的に接続されたヒータによる加熱機構と、冷凍機と熱的に接続された伝熱板による冷却機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の高温超電導磁石装置。
前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間は、前記超電導スイッチから引き出された高温超電導線と、前記励磁電源から引き出された常電導金属からなる電流フィーダ線との接続部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温超電導磁石装置。
前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間は、前記超電導スイッチから引き出された高温超電導線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温超電導磁石装置。
前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間は、前記超電導スイッチから引き出された高温超電導線と、前記励磁電源から引き出された常電導金属からなる電流フィーダ線に電気的に接続された第2の高温超電導線との接続部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温超電導磁石装置。
前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間は、前記超電導スイッチから引き出された前記高温超電導線と、前記励磁電源から引き出された常電導金属からなる電流フィーダ線から引き出された前記第2の高温超電導線との双方の高温超電導線に接続された第3の高温超電導線に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の高温超電導磁石装置。
前記第3の高温超電導線は、前記高温超電導コイル及び前記超電導スイッチに接続される前記高温超電導線よりも安定化銅が相対的に薄いか又は安定化銅を有しないことを特徴とする請求項6に記載の高温超電導磁石装置。
高温超電導コイルと、前記高温超電導コイルに接続されて電流を供給する励磁電源と、前記励磁電源と接続され、前記高温超電導コイルに並列に電気的に接続された超電導スイッチとを具備し、前記励磁電源と前記超電導スイッチとの接続経路において、前記超電導スイッチよりも熱容量が小さい区間に温度制御部を設けた高温超電導磁石装置の運転を制御する高温超電導磁石装置の運転制御装置であって、
前記高温超電導コイルの発生磁場を測定する磁場測定部と、
前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間の抵抗値に対応する温度を測定する温度測定部と、
前記発生磁場が定格電流値の下限に対応する磁場に近づいた際、前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間の抵抗値が、前記高温超電導コイルの抵抗値よりも高くなるまで抵抗値を増加させるように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする高温超電導磁石装置の運転制御装置。
高温超電導コイルと、前記高温超電導コイルに接続されて電流を供給する励磁電源と、前記励磁電源と接続され、前記高温超電導コイルに並列に電気的に接続された超電導スイッチとを具備し、前記励磁電源と前記超電導スイッチとの接続経路において、前記超電導スイッチよりも熱容量が小さい区間に温度制御部を設けた高温超電導磁石装置の運転を制御する高温超電導磁石装置の運転制御方法であって、
前記高温超電導コイルの発生磁場を測定する磁場測定工程と、
前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間の抵抗値に対応する温度を測定する温度測定工程と、
前記発生磁場が定格電流値の下限に対応する磁場に近づいた際、前記温度制御部が設けられている前記接続経路の区間の抵抗値が、前記高温超電導コイルの抵抗値よりも高くなるまで抵抗値を増加させるように制御する制御工程と、
を有することを特徴とする高温超電導磁石装置の運転制御方法。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴測定装置(NMR: Nuclear Magnetic Resonance)や磁気共鳴画像診断装置(MRI: Magnetic Resonance Imaging)等の超電導機器では、長時間にわたって発生する磁場に対しppmオーダーの極めて高い時間安定度が求められる。そのため、超電導コイルと並列に永久電流スイッチと呼ばれる電気的なスイッチを接続することがある。
【0003】
永久電流スイッチは、一般に超電導線材で作製された超電導スイッチである。この超電導スイッチは、超電導転移温度以下に冷却された状態では、原理的には電気抵抗ゼロの閉ループとなるため、電流減衰(磁場減衰)のない非常に安定した磁場を発生させることができる。
【0004】
このようにして運転することは、永久電流モードと呼ばれている。上記閉ループを形成するための超電導スイッチは、温度変化を利用して切り替え(オン、オフ)られる。例えば、励磁時には、超電導スイッチへの分流を防いで超電導コイル本体に電流を供給するため、ヒータ等を用いて常電導転移温度以上に加熱して超電導スイッチを高抵抗(オフ)にする方法が採られている。この場合、励磁後に閉ループを形成して定常運転に移行するためには、上記ヒータ等をオフにして冷却し、超電導スイッチを超電導状態(オン)に戻せばよい。
【0005】
なお、超電導コイルと超電導スイッチとの接続部等のように、接続部において抵抗成分Rが生じてしまうと、超電導コイルのインダクタンスLで定まる回路の時定数L/Rで電流減衰(磁場減衰)してしまう。そのため、例えば超電導素線(フィラメント)同士を、圧接やスポット溶接、熱処理等により直接接続することで、1E−10Ω乃至1E−13Ωオーダーの極めて低抵抗に接続する、いわゆる超電導接続技術が用いられている。
【0006】
このような超電導コイルに使用する超電導素線の線材としては、Bi
2Sr
2Ca
2Cu
3O
10-δ線材やREB
2C
3O
7-δ線材といった酸化物高温超電導の線材(高温超電導線材)を適用することが近年、盛んに研究されている。
【0007】
高温超電導線材を用いた超電導コイルでは、従来のNbTi等の低温超電導線材に比べ、20K〜50Kといった高い温度でも高い臨界電流密度を有するため、高電流密度運転によるコイルの小型化が可能となる。超電導スイッチに用いられる超電導線材についても、上記超電導コイルと同じ運転温度で設計した方が、冷却構造をより簡素化できるため、同様の高温超電導線材を用いて作製されることが好ましい。
【0008】
ただし、このような高温超電導線材は、超電導層が非常に脆い酸化物の薄膜であるため、前述したような超電導接続技術が現状では確立されていない。そのため、ハンダを介した一般的なハンダ接続で接続される。このハンダ接続は、超電導接続よりも大きな抵抗成分を生じるため、電流が減衰してしまい、永久電流モードでの運転は困難となる。
【0009】
一方、超電導スイッチを並列に接続せずに、通常の超電導磁石のように常時電源駆動で運転する方法もあるが、電源の電流リップルにより時間安定度が悪化してしまう。
【0010】
そこで、例えば特許文献1又は2は、高温超電導コイルに並列に接続された超電導スイッチと、上記高温超電導コイルに電流を供給するための電源回路と、を具備する。これらの文献では、上記超電導スイッチと直列に、上記高温超電導コイルの抵抗成分の1〜1000倍程度大きい抵抗値を有する補償抵抗体を接続する方法が提案されている。この方法によれば、上記高温超電導コイルの抵抗成分で生じる電圧降下を補償し、電源駆動でも時間的に高安定な磁場を発生させることができるとしている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係る高温超電導磁石装置、その運転制御装置及び方法について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
(構 成)
図1は第1実施形態の高温超電導磁石装置を示す回路図である。
図2は第1実施形態の高温超電導磁石装置の接続部を示す拡大断面図である。
図3は第1実施形態の高温超電導磁石装置に用いられる高温超電導線の一例を示す構成図である。
図4は第1実施形態の高温超電導磁石装置の通電パターンの一例を示すタイミングチャートである。
【0024】
本実施形態の高温超電導磁石装置は、
図1に示すように高温超電導コイル1と、この高温超電導コイル1に常時電流を供給するための励磁電源5とが電気的に接続されている。高温超電導コイル1には、超電導スイッチ2が並列に電気的に接続されている。
【0025】
超電導スイッチ2には、温度変化によって抵抗値を変化させるため加熱機構であるヒータ3が電気的には絶縁されているものの、熱的に接続されている。
【0026】
超電導スイッチ2は、ヒータ3の発熱によって超電導転移温度Tc以上に昇温されることで、常電導状態(オフ)になり高抵抗を発生する。一方、超電導スイッチ2は、ヒータ3の発熱がない状態では、図示しない冷却機構としての冷凍機と熱的に接続された伝熱板によって高温超電導コイル1と同じ温度まで冷却されることで、超電導状態(オン)になり低抵抗を発生する。ここで、超電導スイッチ2は、再冷却する場合、少なくとも超電導転移温度Tc未満まで冷却され、実際には運転温度まで冷却される。
【0027】
励磁電源5と高温超電導コイル1との接続経路の一部において、励磁電源5からは、
図2に示すように金,銀,銅,鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,銅合金,鉄合金等の常電導金属、又はこの常電導金属に超電導線を貼り合せてなる電流フィーダ線11が引き出される。
【0028】
励磁電源5と高温超電導コイル1との接続経路では、高温超電導コイル1との接続部12a,12bが少なくとも1箇所以上(本実施形態では2箇所)存在する。すなわち、励磁電源5と高温超電導コイル1は、接続部12a,12bを介して電気的に接続されている。これらの接続部12a,12bは、ハンダ接続や圧接、スポットウェルディング等の接続手段によって形成されて有限の接続抵抗を生じる。
【0029】
また、励磁電源5と超電導スイッチ2は、接続部13a,13bを介して電気的に接続されている。励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の一部の区間においても、接続部12a,12bと同様に接続部13a,13bで接続抵抗が生じる。
【0030】
本実施形態の高温超電導磁石装置では、
図2に示すように励磁電源5から引き出された電流フィーダ線11と、超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21との間は、ハンダ層6を介した接続部13aによって接続されている。
【0031】
接続部13aには、抵抗値を変化させるための温度制御部としてのヒータ4が電気的に絶縁されているものの、熱的に接続された構成となっている。温度制御部であるヒータ4が設けられる一部の区間の長さは、超電導スイッチ2よりも熱容量が小さくなるように設定されている。
【0032】
本実施形態では、超電導スイッチ2に設けられたヒータ3と同様に、ヒータ4の発熱がない状態では、図示しない冷凍機と熱的に接続された伝熱板によって、接続部13aが高温超電導コイル1と同じ温度まで冷却されることが好ましい。なお、
図1では温度制御部としてヒータ4のみを図示しているが、その他の加熱機構の他、冷凍機と熱的に接続された伝熱板による冷却機構を含むものとする。
【0033】
また、接続部13aは、ハンダ接続でなく、前述したように圧接、スポットウェルディング等の接続法によって形成してもよい。
【0034】
次に、本実施形態の運転制御系の構成について説明する。
【0035】
図1に示すように高温超電導コイル1の発生磁場は、ホール素子やNMR(Nuclear Magnetic Resonance, 核磁気共鳴)プローブ等の磁場測定部7によって測定される。ヒータ4が設けられている励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の区間の温度は、抵抗温度計等の温度測定部8によって測定される。この温度測定部8によって測定される温度は、上記接続経路の区間の抵抗値に対応している。
【0036】
磁場測定部7によって測定された磁場を示す磁場測定信号と、温度測定部8によって測定された温度を示す温度測定信号は、それぞれ制御部9に出力される。制御部9は、これらの信号を得てヒータ4の抵抗値を制御することで、後述するように高温超電導磁石装置の運転を制御している。
【0037】
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記録媒体としてのROM(Read Only Memory)、I/O(Input / Output)等を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成された制御装置である。
【0038】
このうち、上記ROMは、電源を切断しても記憶内容を保持する必要のあるデータやプログラムを記憶する。上記RAMは、データを一時的に格納する。上記CPUは、上記ROMにインストールされているプログラムを実行することで各機能を実現する。
【0039】
次に、
図3を用いて高温超電導線21の構成を説明する。
【0040】
図3に示すように、高温超電導線21は、全体がテープ状に形成されている。高温超電導線21は、例えば金属製のテープ基板24の上に中間層25、及び超電導層26、さらに保護層29、さらにその両面を安定化層27で被覆された、いわゆるコーティッド・コンダクターと呼ばれる薄膜高温超電導線である。
【0041】
高温超電導線21は、必要に応じて、テープ基板24と中間層25との間に配向層28が設けられることもある。テープ基板24は、例えばステンレス鋼、ハステロイ等のニッケル合金、銀合金等の材質で形成される。
【0042】
中間層25は、拡散防止層であり、例えば、酸化セリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ:Yttria-Stabilized Zirconia)、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、バリウムジルコニア等の材質からなり、テープ基板24上に形成される。
【0043】
超電導層26は、例えば、RE
123系の組成(REB
2C
3O
7-δ等)を有する酸化物超電導体薄膜からなる。なお、「REB
2C
3O
7-δ」の「RE」は希土類元素(例えば、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd),ホルミニウム(Ho),サマリウム(Sm)等)及びイットリウム元素の少なくともいずれかを、「B」はバリウム(Ba)を、「C」は銅(Cu)を、「O」は酸素(O)を意味している。
【0044】
安定化層27は、超電導層26に過剰に電気が流れた場合に超電導層26が燃焼するのを防止する目的で設けられ、例えば導電性の銅や銀等から形成される。
【0045】
配向層28は、テープ基板24上に中間層25を配向させて形成する目的で設けられ、酸化マグネシウム(MgO)等から形成される。なお、配向層28は、配向した基板を用いる場合には省略することができる。
【0046】
保護層29は、超電導層26が空気中の水分に触れて劣化するのを防止する等の目的で設けられ、銀等から形成される。なお、保護層29も超電導層26に過剰に電気が流れた場合に超電導層26が燃焼するのを防止する役割も果たす。
【0047】
このような多層からなる高温超電導線21のテープ幅wは、例えば4〜12mm、テープ厚さは0.1〜0.2mmと非常に薄く、高温超電導線単体であれば超電導転移温度Tc以上における単位断面積あたりの抵抗値が電流フィーダ線11よりも高い特徴がある。
【0048】
なお、本実施形態では、高温超電導線21の周囲をポリイミドやポリイミドアミドのような絶縁材で被覆した絶縁被覆高温超電導線としてもよい。また、本実施形態の高温超電導線21は、必ずしも安定化層27を設けなくてもよい。
【0049】
(運転制御方法)
次に、
図1及び
図4に示す通電パターンを用いて、本実施形態における高温超電導磁石装置の運転制御方法を説明する。
【0050】
高温超電導コイル1は、
図1に示す回路図においてインダクタンスLと、コイル内部で高温超電導線が発生するフラックスフロー抵抗、コイル内の高温超電導線同士の接続抵抗、及び複数のコイルからなる場合にはコイル間の接続抵抗とからなる抵抗成分Rとの和で等価的に表すことができる。
【0051】
まず、超電導スイッチ2がオフ(ヒータ3がオン)、接続経路のヒータ4がオフの状態で励磁電源5による高温超電導コイル1の励磁を開始する。この場合、超電導スイッチ2は、超電導転移温度Tc以上のため高抵抗となっており、励磁電源5からの電流は、ほぼ全て高温超電導コイル1側に供給され、
図4に示すように定格電流値I
0に達して励磁が完了する。
【0052】
この時、超電導スイッチ2に求められるオフ時の高抵抗は、励磁速度にもよるものの、励磁時の誘導電圧L(dI/dt)による分流を制限するのに十分な高抵抗でなければならない。また、緊急時に励磁電源5を遮断した際、コイルが蓄積する磁気エネルギーを保護抵抗で消費させる緊急遮断動作の観点からは、保護抵抗よりも高い数百mΩから数十Ωオーダーの抵抗値が求められる。
【0053】
そこで所望の抵抗値を得るには、超電導線の長さを長く設定する必要があり、超電導スイッチ2は、無誘導巻のコイルで構成されることが一般的である。
【0054】
その後、超電導スイッチ2のヒータ3がオフになり、超電導スイッチ2は冷却されて超電導状態(オン)になり運転開始となる。この時、励磁電源5の出力する電流値は一定であっても、高温超電導コイル1の抵抗成分と、その他の接続部12a,12b,13a,13bの抵抗成分の総和で計算される回路抵抗Rとによって定まる回路の時定数L/Rによって、高温超電導コイル1に流れる通電電流値Iは定格電流値I
0から
図4の波線の比較例で示すように徐々に減衰していく。
【0055】
本実施形態の運転制御方法では、通電電流値Iが定格電流値の下限に設定した電流値に近づいた際、制御部9は接続経路のヒータ4を発熱させるように制御することで、接続部13aの抵抗値を高温超電導コイル1の抵抗成分よりも高くなるように上昇させる。
【0056】
高温超電導コイル1と接続部12a,12bからなる抵抗成分Rcoilと、超電導スイッチ2と接続部13a,13bからなる抵抗成分Rsとしたとき、高温超電導コイル1に流れる通電電流値Iは、
I=I
0×(Rs/(Rs+Rcoil))=I
0×(1/(1+(Rcoil/Rs))
である。したがって、通電電流値Iは、抵抗成分Rsの上昇によって定格電流値I
0に復帰する。
【0057】
接続経路のヒータ4の発熱は、冷却システムへの熱負荷となるため、復帰後は接続経路のヒータ4をオフにする。そして再度、通電電流値Iが定格電流値の下限に設定した電流値に近づいた際には、上記と同様のプロセスを繰り返すことで、電流減衰(磁場減衰)が補償される。
【0058】
このように制御部9は、磁場測定部7によって測定された発生磁場が定格電流値の下限に対応する磁場に近づいた際、ヒータ4が設けられている接続経路の区間の抵抗値が、高温超電導コイル1の抵抗値よりも高くなるまで抵抗値を増加させるように制御している。この場合、ヒータ4が設けられている接続経路の区間の抵抗値は、温度測定部8によって測定された温度に対応している。
【0059】
なお、通電電流値Iは、いわゆるシャント抵抗による測定手段としてもよいが、回路抵抗Rを増加させてしまうこととなる。そのため、通電電流値Iに比例する高温超電導コイルの発生磁場は、前述したホール素子やNMR(Nuclear Magnetic Resonance, 核磁気共鳴)プローブといった磁場測定部7によってモニタし、逆算して求めることが好ましい。
【0060】
(作 用)
このように構成された本実施形態において、励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の一部において温度制御が可能となる。また、接続部13aの抵抗成分は、超電導スイッチ2のように緊急遮断の観点から保護抵抗よりも高い抵抗値とする必要はない。
【0061】
接続経路に設置されたヒータ4が設けられる区間の長さは、超電導スイッチ2よりも熱容量が小さくなるように設定されている。そのため、超電導スイッチ2を加熱するよりも少ない加熱量で、高温超電導コイル1よりも高い抵抗成分を発生させることができるとともに、超電導スイッチ2を再冷却するよりも短時間での復帰が可能となる。
【0062】
(効 果)
本実施形態によれば、従来のように補償抵抗体を設置する必要がないため、励磁電源1から余剰電流の供給は不要となる。また、本実施形態によれば、短時間で電流減衰(磁場減衰)を補償可能な高温超電導磁石装置を提供することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、接続部13a,13bのうち、接続部13aに温度制御部としてのヒータ4を熱的に接続した例について説明したが、これに限らず接続部13bにヒータ4を熱的に接続してもよい。この場合でも上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0064】
(第2実施形態)
(構 成)
図5は第2実施形態の高温超電導磁石装置を示す回路図である。
【0065】
なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、
図5では磁場測定部7、温度測定部8、及び制御部9を含む運転制御系の図示を省略している。
【0066】
本実施形態の高温超電導磁石装置は、第1実施形態の励磁電源5から引き出された電流フィーダ線11と、超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21との間にハンダ層6を介した接続部13aに温度制御部としてのヒータ4が熱的に接続された構成を以下のように替えている。
【0067】
図5に示すように、本実施形態の高温超電導磁石装置は、超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21aにおいて、抵抗を変化させるための温度制御部としてのヒータ4aが電気的に絶縁されているものの、熱的に接続された構成となっている。
【0068】
なお、高温超電導線21aの構成は、
図3に示す高温超電導線21と同様であるので、その説明を省略する。また、
図5では温度制御部としてヒータ4aのみを図示しているが、その他の加熱機構の他、冷凍機と熱的に接続された伝熱板による冷却機構を含むものとする。
【0069】
(作 用)
このように構成された本実施形態において、抵抗を変化させるための温度制御部としてのヒータ4aが設置されている励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の一部の区間は、超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21aである。
【0070】
そのため、ハンダによる接続部13aに温度制御部としてのヒータ4aを熱的に接続した第1実施形態と比べて、単位長さあたりの熱容量を小さくすることができる。
【0071】
なお、本実施形態の運転制御方法は、第1実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0072】
(効 果)
本実施形態によれば、抵抗を変化させるための温度制御部としてのヒータ4aが設置されている励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の一部の区間における単位長さあたりの熱容量は、第1実施形態よりも小さくすることができる。
【0073】
そのため、一段と少ない加熱量で高温超電導コイル1よりも高い抵抗成分を発生させることができるとともに、より短時間での復帰が可能な高温超電導磁石装置を提供することができる。
【0074】
なお、本実施形態において、ヒータ4aが設置されている区間は、高温超電導線21aの長手方向に延長されてもよく、またヒータ4aを分割して複数設けてもよい。
【0075】
(第3実施形態)
(構 成)
図6は第3実施形態の高温超電導磁石装置を示す回路図である。
図7は第3実施形態の高温超電導磁石装置の接続部を示す拡大断面図である。
【0076】
なお、第1、第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、
図6では、
図5と同様に磁場測定部7、温度測定部8、及び制御部9を含む運転制御系の図示を省略している。
【0077】
本実施形態の高温超電導磁石装置は、第2実施形態の高温超電導線21aに替えて、
図6及び
図7に示すように超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21bと、電流フィーダ線11に電気的に接続された第2の高温超電導線32との接続部において、抵抗を変化させるための温度制御部としてヒータ4bが熱的に接続されて構成となっている。
【0078】
なお、第2の高温超電導線32の構成は、
図3に示す高温超電導線21と同様であるので、その説明を省略する。また、
図6では温度制御部としてヒータ4bのみを図示しているが、第1、第2実施形態と同様に、その他の加熱機構の他、冷凍機と熱的に接続された伝熱板による冷却機構を含むものとする。
【0079】
(作 用)
このように構成された本実施形態において、抵抗を変化させるための温度制御部としてのヒータ4bが設置されている励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の一部は、超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21bと、電流フィーダ線11に電気的に接続された第2の高温超電導線32との接続部である。
【0080】
これにより、本実施形態では、単位長さあたりの熱容量は第2実施形態よりも大きくなるものの、抵抗値は第2の高温超電導線32の抵抗とハンダ層との接続抵抗が追加されるため、単位長さあたりの抵抗を第2実施形態よりも高くすることができる。
【0081】
なお、本実施形態の運転制御方法は、第1実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0082】
(効 果)
本実施形態によれば、単位長さあたりの熱容量は第2実施形態よりも大きくなるが、単位長さあたりの抵抗は第2実施形態よりも高くすることができる。そのため、より省スペースに高温超電導コイル1よりも高い抵抗成分を発生可能な高温超電導磁石装置を提供することができる。
【0083】
なお、本実施形態においてヒータ4bが設置されている区間は、高温超電導線21bと第2の高温超電導線32との接続部からそれぞれ高温超電導線21b,第2の高温超電導線32の長手方向に延長されてもよく、またヒータ4bを分割して複数設けてもよい。
【0084】
(第4実施形態)
(構 成)
図8は第4実施形態を示す高温超電導磁石装置の接続部を示す拡大断面図である。なお、第1〜第3実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0085】
本実施形態の高温超電導磁石装置は、第2実施形態の超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21aや、第3実施形態の超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21bと、電流フィーダ線11に電気的に接続された第2の高温超電導線32との接続部の構成を以下のように替えている。
【0086】
図8に示すように、本実施形態の高温超電導磁石装置は、超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21cと、電流フィーダ線11から引き出された第2の高温超電導線32の双方に接続された第3の高温超電導線34に、抵抗を変化させるための温度制御部としてのヒータ4cが熱的に接続された構成となっている。
【0087】
ここで、第3の高温超電導線34は、高温超電導コイル1に使用されている高温超電導線、及び超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21cと異なる構成となっている。具体的には、第3の高温超電導線34は、安定化層27の安定化銅が相対的に薄いか、もしくは安定化銅を有しない構成である。
【0088】
(作 用)
このように構成された本実施形態において、抵抗を変化させるための温度制御部としてのヒータ4cが設置されている励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の一部は、超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21cと電流フィーダ線11から引き出された第2の高温超電導線32の双方に接続された第3の高温超電導線34である。
【0089】
第3の高温超電導線34は、高温超電導コイル1に使用されている高温超電導線、及び前記超電導スイッチ2から引き出された高温超電導線21cよりも安定化層27の安定化銅が相対的に薄いか、又は安定化銅を有しない高温超電導線である。そのため、第2実施形態及び第3実施形態よりも単位長さあたりの熱容量をさらに小さくすることができる。
【0090】
なお、本実施形態の運転制御方法は、第1実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0091】
(効 果)
本実施形態によれば、抵抗を変化させるための温度制御部としてのヒータ4cが設置されている励磁電源5と超電導スイッチ2との接続経路の一部は、第2実施形態〜第3実施形態よりも単位長さあたりの熱容量をさらに小さくすることができる。そのため、一段と少ない加熱量で高温超電導コイル1よりも高い抵抗成分を発生させることができるとともに、より短時間での復帰が可能な高温超電導磁石装置を提供することができる。
【0092】
なお、本実施形態においてヒータ4cが設置される区間は、高温超電導線21c,第2の高温超電導線32と第3の高温超電導線34との接続部からそれぞれの長手方向に延長されてもよく、またヒータ4cを分割して複数設けてもよい。
【0093】
(その他の実施形態)
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0094】
なお、第1実施形態乃至第4実施形態の説明における回路図では、高温超電導コイル1を1つのインダクタンスと1つの抵抗成分で示しているが、複数の高温超電導コイル1を直列、又は並列に電気的に接続するような高温超電導コイルにおいても適用可能である。その場合、超電導スイッチ2のオン、オフ、及び抵抗を変化させるための温度制御部は、複数設けることも可能である。