特許第6862389号(P6862389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6862389水溶液からリン酸塩及び他の汚染物質を除去する組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862389
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】水溶液からリン酸塩及び他の汚染物質を除去する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20210412BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20210412BHJP
   C01B 33/24 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B01J20/30
   C02F1/28 B
   C02F1/28 P
   C02F1/28 E
   C01B33/24 101
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-103148(P2018-103148)
(22)【出願日】2018年5月30日
(62)【分割の表示】特願2015-530016(P2015-530016)の分割
【原出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-138303(P2018-138303A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】61/780,267
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/715,812
(32)【優先日】2012年10月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/695,201
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515055052
【氏名又は名称】エヌクリア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】オドム,スティーブン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】アイビー,デニー,ジェー.
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−050975(JP,A)
【文献】 特開2009−285636(JP,A)
【文献】 特開昭49−122889(JP,A)
【文献】 特開2007−238412(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0151650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/28
20/30 − 20/34
C02F 1/28
C01B 33/20 − 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液からリン酸塩を除去することのできる組成物を製造する方法であって、
(a)酸化カルシウム、二酸化ケイ素、水酸化ナトリウム及びを含むスラリーを形成することであって、酸化カルシウム:二酸化ケイ素:水酸化ナトリウムのモル比が2.43〜2.97:1.12〜1.38:0.9〜1.1の範囲であることと、
(b)前記スラリーに対し、13.5psi〜16.5psiの圧力下で1時間〜6時間水熱プロセスを行うこと、
を含む、方法。
【請求項2】
(c)前記組成物を540℃〜660℃で少なくとも27分間加熱すること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(c)で要求される加熱工程を600℃で少なくとも30分間行う、請求項に記載の方法。
【請求項4】
水溶液からリン酸塩を除去する方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造される組成物を、リン酸塩を含む水溶液に接触させるとともに、反応させることを含む、方法。
【請求項5】
前記水溶液を反応チャンバー内に収容し、前記組成物を遠心力下で該水溶液と接触させるとともに、反応させる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶液が加圧浮上法(dissolved air flotation)の最終段階における水溶液又はプロセス水流中の水溶液である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
部分噴射器(portion injector)によって前記組成物を前記水溶液と接触させるとともに、反応させる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
スラリーで散布することにより前記組成物を前記水溶液と接触させさせるとともに、反応させる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物がバリアとして地表下埋設されている、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が凝集剤であり、更にポリマーを含むものである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、結晶質構造及び非晶質構造の複合ケイ酸カルシウム構造を含む結晶性組成物を1種又は複数種使用して、水溶液から、リン酸塩、硝酸塩及び重金属を除去する組成物及び方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2013年3月13日付けで出願された米国仮出願第61,780,267号、2012年10月18日付けで出願された米国仮出願第61/715,812号、及び、2012年8月30日付けで出願された米国仮出願第61/695,201号を基礎とする優先権を主張するものであり、これらの出願全体がそれぞれ引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0003】
農業排水、豪雨による流出水、廃水処理排出物、及び、他の発生源から環境へと排出されるリン、窒素及び重金属の蓄積量が増加していることは、この惑星が直面している最も重大な環境課題の1つである。リンは肥料にも使用されており、リン酸塩の鉱床が枯渇しつつあり、今後100年で完全に枯渇し得ることを考えれば、世界の食糧供給が確実に影響を受けると考えられる。
【0004】
表層水においてリンのレベルが上昇すると、水生生物にとって有害な富栄養化が起こる。EPAは、富栄養化を制御するためには、湖又は貯水池に入る時点で水流(stream)中の全リン酸塩量が(リンとして)0.05mg/Lを超えないこと、及び、湖又は貯水池に直接排出されない場合は水流中の全リン量が0.1mg/Lを超えないことを推奨している。これまで、リンの除去は、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム(ミョウバン)及び水酸化カルシウム(石灰)等の金属塩を使用する凝集/析出方法によって達成されてきた。これらの方法は多くの場合、析出及び最終的な固体除去を促進するのにポリマーを使用することを必要とする。天然に存在する及び合成されたゾノトライト及び/又はトバモライトを利用してリンを除去する様々な方法が詳述されている。これらの材料は、pHが上昇すると重炭酸イオンが炭酸イオンに変化して除去効率の低下を招くため、溶液のpHによって制御されている。リンを除去する他の方法としては、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム六水和物)の化学的形成がある。このプロセスは、通常は水酸化マグネシウムであるマグネシウム源の導入を必要とし、アンモニウム源としてのアンモニアが高いレベルであることに依存するものである。
【0005】
硝酸塩についても、表層水及び地下水においてそのレベルが増加すると、そのレベルが飲用水の供給に望ましくないレベルになることから、関心が高まっている。現在、飲用水における硝酸塩の限度は、窒素として10mg/Lである。硝酸塩の除去は、ほとんどの場合、微生物による脱窒により行われ、このプロセスでは、低酸素環境中で脱窒細菌が使用できることが必要である。細菌は硝酸塩を代謝して、亜硝酸塩、最終的には窒素ガスへと還元する。
【0006】
水源へと金属イオンが排出されると、水生生物に悪影響があるだけでなく、水が非飲用になってしまう。水流中での金属の水質基準は、国際的な飲用水の金属基準と同様非常に低いものである。金属イオンは、ほとんどの場合、金属水酸化物として凝集/析出させることによって水及び廃水から除去される。これは、通常、水酸化カルシウム又は水酸化ナトリウム等のアルカリの添加により達成される。凝集を促進し、固体の除去を助けるために、通常、ポリマーが必要である。また、金属イオンの除去は、カチオン交換樹脂の使用によっても達成される。このプロセスでは、通常、懸濁された固体並びにオイル及びグリースを含まない比較的きれいな水源が必要である。
【0007】
したがって、水及び廃水等の水溶液から高効率でリン酸塩、硝酸塩及び金属イオンを除去する組成物及び該組成物を作製する方法が必要とされている。上記組成物は、追加でpHの調整を行う必要がなく、リン酸塩の効果的な除去に必要なアルカリ性を十分に提供できることが特に好ましい。本発明に関連して想定される水溶液が様々な汚染物質プロファイルを有することを考えると、様々なカチオン及びアニオンを吸着するように上述の組成物を扱うことができることが更に好ましい。
【0008】
また、上述の組成物は、食品加工用途において飲料水水源から汚染物質を除去する際に安全に使用できることが非常に好ましい。また、上述の組成物は、リン酸塩及び硝酸塩を肥料として使用可能な形態で回収できることが好ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、結晶質構造及び非晶質構造の複合ケイ酸カルシウム構造を含む組成物を1種又は複数種使用して、水溶液から、リン酸塩、硝酸塩及び重金属を除去する組成物及び方法に関する。本発明に係る組成物は、表層水からリン酸塩及び硝酸塩を除去し、場合により、高品質で徐放性の肥料(5−35−0)を産出することができる。
【0010】
本発明は、水及び廃水等の水溶液からリン酸塩、硝酸塩及び金属イオンを高効率で除去する組成物及び方法を提供することを目的とする。また、本発明は、追加でpHの調整を行う必要がなく、リン酸塩の効果的な除去に必要なアルカリ性を十分に提供することのできる組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、様々なカチオン及びアニオンを吸着するように扱うことができる組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、食品加工用途において飲料水水源から汚染物質を除去する際に安全に使用できる組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、リン酸塩及び硝酸塩を肥料として使用可能な形態で回収できる組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の適用が想定される水溶液としては、農業流出水、溜池、動物農場流出水、動物園流出水、水流、湖、用水路、貯水池、家庭用水及び商業用水の豪雨による流出水、廃水処理プラント排出物、食品加工排出物、工業廃水排出物、家庭用廃水排出物、食肉加工残渣、トイレの水及び水族館の水が挙げられる。
【0012】
本発明に係る組成物は、様々な用途に利用することができる。一実施の形態において、遠心力を用いて接触速度が高まるように設計された反応チャンバーにおいて、組成物をリン酸塩、硝酸塩、重金属及び/又は他の汚染物質を含む水溶液と接触させる。関連する実施の形態において、反応器は、層流条件下で操作されるタイラーボルテックスシステム(Taylor vortex system)を採用する。
【0013】
他の実施の形態においては、最終DAF又はプロセス水流(例えば、廃水最終処理(地方自治体の処理装置又は食品処理装置))に乾燥物で供給又はスラリーで混入させることにより、組成物をリン酸塩、硝酸塩、重金属及び/又は他の汚染物質を含む水溶液と接触させる。他の実施の形態においては、AdEdge(商標)濾過システム(例えば、高濃度栄養物除去システム)により、組成物をリン酸塩、硝酸塩、重金属及び/又は他の汚染物質を含む水溶液と接触させる。
【0014】
他の実施の形態においては、部分噴射器(portion injector)(例えば、男性用小便器又はトイレで用いる)により、組成物をリン酸塩、硝酸塩、重金属及び/又は他の汚染物質を含む水溶液と接触させる。
【0015】
他の実施の形態においては、(例えば、地表又は表層水域に)乾燥物若しくはスラリーで散布するか、又は、飛行機で散布する(crop dusting)ことにより、組成物をリン酸塩、硝酸塩、重金属及び/又は他の汚染物質を含む水溶液と接触させる。
【0016】
他の実施の形態においては、埋設バリア(例えば、リン酸塩を除去するのに、動物農場若しくは動物園の地表の下に埋設されるか、又は、水族館の濾液を捕集するのに使用される、組成物を含むシート)により、組成物をリン酸塩、硝酸塩、重金属及び/又は他の汚染物質を含む水溶液と接触させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第1の組成物(組成物A)のリン吸着等温線を示す図である。
図2】本発明に係る第2の組成物(組成物B)のリン吸着等温線を示す図である。
図3】組成物Bのリン吸着等温線と他のリン除去方法のリン吸着等温線とを比較した図である。
図4】組成物Bの硝酸塩吸着等温線を示す図である。
図5】様々な重金属に対する組成物Bの親和性を示す図である。
図6】組成物Bの水からのヒ素の除去効率を、現在使用できる他の媒体と比較して示す図である。
図7】リン採掘作業から得られた表層水サンプルからの、組成物Bを利用したリンの除去を示すグラフである。
図8】組成物BのEDSスペクトルを示す図である。
図9】組成物BのXRDスペクトルを示す図である。
図10】ケイ酸カルシウム分子中の原子の空間的定位がどのように変化し、結合長及び/又は結合角が変化し得るかを示す図である。
図11】組成物Bの溶液からのリン除去効率に対するカルシウムイオンの添加の効果を示す図である。
図12】本発明に係る第3の組成物(組成物C)のリン吸着等温線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、溶液からリン酸塩、硝酸塩及び重金属を除去することのできる組成物を製造する方法であって、(a)酸化カルシウム、二酸化ケイ素、アルカリ及び溶媒を含むスラリーを形成することと、(b)スラリーに対し、組成物を形成するのに十分な圧力下及び十分な時間で水熱プロセスを行うことにより、溶液からリン酸塩、硝酸塩及び重金属を除去することのできる組成物を製造することと、を含む、方法に関する。上述の組成物は、「水熱残渣」ともいうことができる。上記の方法は、幾つかの実施形態において、結果的に得られる組成物の溶液からのリン酸塩、硝酸塩及び/又は重金属の除去効率/効果を高めるのに十分な温度で十分な時間、組成物/水熱残渣を加熱する追加の工程(c)を含む。
【0019】
或る特定の実施形態では、前記アルカリが、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選ばれるものである。アルカリは、幾つかの実施形態において、アルカリ溶質及び溶媒を含む液体アルカリの形態とすることができる。溶媒は、幾つかの実施形態において、水であるか、又は、水を含む。溶媒は、他の実施形態において、酸化カルシウム、二酸化ケイ素及びアルカリが少なくとも部分的に混和性を有する液体、例えば、酢酸、t−ブタノール、エタノール、ギ酸、イソプロパノール、メタノール及びニトロメタン等の他の極性プロトン性溶媒である。これらの極性プロトン性溶媒の混合物も使用できる。
【0020】
酸化カルシウム、二酸化ケイ素及び液体アルカリのモル比は、幾つかの実施形態において、それぞれ2.7:2.5:1である。このモル比は、関連する実施形態においては、独立して、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%又は±10%の範囲で変化させることができる。例えば、スラリー中の酸化カルシウム:二酸化ケイ素:アルカリのモル比は、一実施形態において、2.43〜2.97:1.12〜1.38:0.9〜1.1である。
【0021】
特定の実施形態においては、高アルカリ性を達成するために、スラリーは酸化カルシウムを更に高いモル比で追加して含んでもよい。酸化カルシウム、二酸化ケイ素及びアルカリのモル比は、幾つかの実施形態において、2.7:1.25:1である。このモル比は、関連する実施形態においては、独立して、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%又は±10%程度変化させることができる。
【0022】
また、本発明は、溶液からリン酸塩、硝酸塩及び重金属を除去することのできる組成物を製造する方法であって、(a)酸化カルシウム、二酸化ケイ素、アルカリ、溶媒及びハロゲン化金属塩を含むスラリーを形成することと、(b)スラリーに対し、組成物を形成するのに十分な圧力下及び十分な時間で水熱プロセスを行うことと、を含む、方法に関する。上述の組成物は、「水熱残渣」ともいうことができる。上記の方法は、幾つかの実施形態において、結果的に得られる組成物の溶液からのリン酸塩、硝酸塩及び/又は重金属の除去効率/効果を高めるのに十分な温度及び十分な時間で、組成物/水熱残渣を加熱する追加の工程(c)を含む。
【0023】
ハロゲン化金属塩は、関連する実施形態において、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化ランタン及び塩化マグネシウムからなる群から選ばれるものである。酸化カルシウム:二酸化ケイ素:アルカリ:ハロゲン化金属塩のモル比は、幾つかの実施形態において、54:25:20:5.5である。このモル比は、関連する実施形態においては、独立して、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%又は±10%の範囲で変化させることができる。例えば、酸化カルシウム:二酸化ケイ素:アルカリ:ハロゲン化金属塩のモル比は、一実施形態において、48.6〜59.4:22.5〜27.5:18〜22:4.95〜6.05である。
【0024】
スラリーは、幾つかの実施形態において、1種又は複数種の非晶質化合物を追加して含んでもよい。他の実施形態においては、1種又は複数種のカルシウム塩及び/又は可溶性アルカリ土類塩を添加することにより、スラリーのカルシウムイオン濃度及び/又はpHを高めてもよい。
【0025】
水熱プロセスは、幾つかの実施形態において、少なくとも約13.5psi、14psi、14.5psi、15psi、15.5psi、16psi又は16.5psiの圧力下で行う。関連する実施形態において、スラリーに対して、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間又は最大で6時間水熱プロセスを行う。水熱プロセスは、例えば、上述の水蒸気圧範囲によりもたらされる温度に相当する温度が達成されるよう、121℃(±10%)で加熱した密封又は蓋付きの反応容器を含むものであってもよい。これらの実施形態において、反応容器は、加熱された「ジャケット付き」ボールミル及び/又は密封圧力ポット又は蓋付きの反応容器からなるようにしてもよい。
【0026】
追加の「活性化」工程(すなわち、工程(c))を含む実施形態では、組成物/水熱残渣を、540℃以上660℃以下で少なくとも27分間加熱する。関連する実施形態においては、組成物/水熱残渣を、少なくとも28分間、29分間、30分間、31分間、32分間又は33分間、最長で12時間加熱する。活性化工程は、例えば、マッフル炉、電気キルン又はガスキルンを用いることにより達成することができる。
【0027】
また、本発明は、上述の方法により製造される組成物に関する。本発明に係る組成物は、当技術分野で既知の化学分析方法、例えば、エネルギー分散分光分析(EDS)又はX線結晶解析/回折(XRD)と併用される走査電子顕微鏡法(SEM)によっても特徴付けることができる。本発明に係る組成物は、一実施形態において、図8に示すEDSスペクトルを有する。本発明に係る組成物は、他の実施形態において、図9に示すXRDスペクトルを有する。
【0028】
図9に示す組成物は、2つの異なるケイ酸カルシウム(CaSiO)の結晶質構造を含む。組成物BのXRDスペクトルデータから、この2つの異なるCaSiO構造に加えて、Ca(OH)、NaCl、SiO及びCaCOの結晶構造が存在することもわかった。XRDスペクトルデータは、Cu−Κα照射を用いて得られたものである。
【0029】
組成の変化、及び/又は、温度及び/又は圧力の変化により、特定の結晶質構造が変化し得る。図10に示すように、ケイ酸カルシウム分子中の原子の空間的定位が変化して、結合長及び結合角が変化し得る。
【0030】
熱源から取り出した後、得られた結晶性組成物は、様々な水溶液に適用することができる。例えば、硝酸塩、重金属及び/又は他の汚染物質のレベルが非常に低い場合には、結晶性組成物は、一実施形態において、層流条件下で操作されるタイラーボルテックスシステム中で水溶液と接触させることができる。このようにアレンジしたシステムでは、反応器での流体動力学は、特有のボルテックス効果により、ドーナツ穴を介して鉛直に回転するとともに、反応器の円周に沿って水平に回転するドーナツ型レベルの水の幾つかの層が発生するようなものとなる。結晶性組成物及び他の溶質が、遠心力により反応器の内面に沿って濃縮し、これにより、接触露出(contact exposure)が高まり、反応時間が著しく短縮し、吸着効率が著しく向上する。
【0031】
結晶性組成物は、他の実施形態において、汚染された表層水に適用することができる。水は、汚染された池、湖又は用水路から、より小さいタンク又は他の貯蔵所へと汲み上げられる。藻及び残屑は、除去するか、又は、水源へと戻す。次いで、パイプ中を流れる廃液に結晶性組成物を注入し、混合手段を用いて混合することにより、結晶性組成物上にリン酸塩、硝酸塩及び重金属を吸着させる。次いで、例えば、収集スクリーンにより濾過し、清浄化された水は、水源へと戻すか、又は、他の水域へと排出する。
【0032】
結晶性組成物は、他の実施形態において、例えば艀により湖及び池に散布して、栄養物を吸着及び結合して栄養物のレベルを下げることができる。結晶性組成物は、土壌に混入して栄養物を吸着させることもでき、これにより、雨水流出の問題が著しく低減されると考えられる。結晶性組成物は、バリアとして地表下の層に埋設することもでき、これにより、栄養物が地下水及び帯水層に入るのが防止されると考えられる。海洋生物及び水生生物に害を与えないようにpHを維持するために、複合的な(すなわち、段階的な)適用が必要である場合がある。
【0033】
結晶性組成物は、他の実施形態において、混合濃縮溶液(mixed liquor)又は最終DAFに直接組成物を添加することにより、廃水処理に用いることができる。吸着後、結晶性組成物を凝集させて系外へと排出し、加工及び処分するか、又は、食用副生成物として販売する。
【0034】
結晶性組成物は、他の実施形態において、水族館で使用することができる。
【0035】
結晶性組成物は、他の実施形態において、トイレにおいて洗浄と同時に提供することができる。
【0036】
結晶性組成物は、他の実施形態において、無機ポリマー凝集剤として使用することができる。更に他の実施形態においては、結晶性組成物は、他の無機ポリマー又は有機ポリマーを含む。
【実施例】
【0037】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、単に例示の目的で提供するものであって、本発明はこれらの実施例に限定されないが、本明細書に提示される教示により明らかとなる全ての変形形態を包含するものとする。
【0038】
実施例1
酸化カルシウム15g及び二酸化ケイ素15gを含む混合物に、1M水酸化ナトリウム溶液100mLを室温で添加した。得られたスラリーを、水蒸気圧15psiで、6時間オートクレーブにて水熱反応させた。残留した固体に対し、600℃で30分間マッフル炉にて加熱を行った。
【0039】
図1は、得られた組成物(「組成物A」)のリン吸着等温線を示す図である。
【0040】
実施例2
酸化カルシウム30g、二酸化ケイ素15g、及び、塩化第二鉄六水和物15gを含む混合物に、1M水酸化ナトリウム溶液200mLを室温で添加した。得られたスラリーを、水蒸気圧15psiで、1時間〜6時間オートクレーブにて水熱反応させた。残留した固体に対し、600℃で30分間マッフル炉にて加熱を行った。
【0041】
図2は、得られた組成物(「組成物B」)のリン吸着等温線を示す図である。
【0042】
図3は、組成物Bのリン吸着等温線と他のリン除去方法のリン吸着等温線とを比較した図である。
【0043】
図4は、組成物Bの硝酸塩吸着等温線を示す図である。
【0044】
図5は、様々な重金属に対する組成物Bの親和性を示す図である。
【0045】
図6は、組成物Bの水からのヒ素の除去効率を、現在使用できる他の媒体と比較して示す図である。
【0046】
図7は、リン採掘作業から得られた表層水サンプルからの、組成物Bを利用したリンの除去を示すグラフである。
【0047】
図8は、組成物BのEDSグラフである。
【0048】
図9は、組成物BのXRDスペクトルを示す図である。
【0049】
図11は、組成物Bの溶液からのリン除去効率に対する、カルシウムイオンの添加の効果を示す図である。◆は、酸化カルシウムの添加の効果を示し、■は、水酸化カルシウムの添加の効果を示す。
【0050】
実施例3
酸化カルシウム30g及び二酸化ケイ素15gを含む混合物に、1M水酸化ナトリウム溶液200mLを室温で添加した。得られたスラリーを、水蒸気圧15psiで、3時間オートクレーブにて水熱反応させた。残留した固体に対し、600℃で12時間マッフル炉にて加熱を行った。
【0051】
図11は、得られた組成物(「組成物C」)のリン吸着等温線を示す図である。
【0052】
実施例4
組成物A、組成物B及び組成物Cの性質及び使用について、更に徹底的な調査を行った。典型的な化学的性質及び物理的性質を表1に詳しく示す。
【0053】
【表1】
【0054】
組成物BについてEDS分析及びXRD分析を行った結果、この材料が結晶質構造及び非晶質構造の両方からなることがわかった(図8及び図9参照)。この材料のケイ酸カルシウム(CaSiO)部分は、2つの異なる結晶構造として存在する。これらのケイ酸カルシウム結晶は、2つの異なる分子構造で存在する。XRDデータを以下に示す。相対強度は、パーセンテージ、すなわち、秒当たりカウント(cps)でのピーク高さの最大強度ピーク高さに対するパーセンテージで表している。面間間隔(d)及び半値全幅(FWHM)も共に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
組成物A及び組成物Bの各々について、オルト−リン酸イオン(PO−2)の吸着能力及び吸着効率を評価した。実験室での実験から得られたデータから吸着等温線を作成した(図1及び図2参照)。材料は両方とも、およそ160〜170mg/g(すなわち、組成物A及び組成物Bの1g当たりのPのmg)の吸着率という、優れたリン酸塩除去効率を示した。組成物Bのリン酸塩吸着と、様々な他の典型的な吸着剤のリン酸塩吸着とを比較したものを図3に詳しく示す。リン酸塩吸着反応における運動速度は非常に速く、ほとんどの状況において分オーダーである。リン酸塩採掘作業から得られた表層水におけるリンの除去は、1時間後に達成された(図7参照)。この特定のサンプルは、280mg/gに近い吸着効率を示した。
【0057】
最も効果的な吸着に最適なpH範囲は、9.0〜12.5(標準単位)であり、ほとんどの適用において、このpH範囲は組成物を添加することにより達成される。水酸化カルシウムCa(OH)によりカルシウムを追加して提供すると、より高いpHで起こり得る炭酸カルシウムCaCOの形成による悪影響が相殺される。
【0058】
組成物Bのスラリー中に塩化第二鉄六水和物(FeCl・6HO)が存在すると、本発明に係る組成物が良好な硝酸塩(NO)吸着効率を発揮すると考えられる。実験室での実験から得られたデータから吸着等温線を作成した(図4参照)。およそ50mg/g(すなわち、組成物Bの1g当たりのNのmg)の吸着率が達成された。最も効果的な硝酸塩の吸着に最適なpHは、およそ6.0(標準単位)である。組成物Bは高いアルカリ性を有するため、反応期間にわたってpH調整を行うことが必要である。
【0059】
組成物Bについて、重金属イオンの吸着能力を実証する。クロム(Cr)、銅(Cu)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)及びカドミウム(Cd)に対して、93%〜98%の除去効率を達成した(図5参照)。具体的な除去効率を表2に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
組成物Bについて、ヒ素(As)の吸着能力も評価した。一般的に使用されている媒体であるGFOプラス及びE33に対して組成物Bを比較した。比較は、標準下降流充填カラム試験を用いて行った(図6参照)。除去効率を表3に示す。最も効果的な吸着に最適なpH範囲は、9.0〜12.5(標準単位)である。
【0062】
【表4】
【0063】
実施例5
肥料としての使用のための吸着されたリン酸塩及び硝酸塩の回収
リン酸塩及び硝酸塩の両方を吸着した結晶は、濾過又は重力沈降により容易に水溶液から除去される。これらの結晶は、オーブンで乾燥することにより、又は、単に空気で乾燥することにより、乾燥することができる。実験室での等温線に基づくと、組成物Bに由来する飽和結晶の肥料価値は5−35−0であり、これは、窒素(N)が5%、リンがPとして35%、カリウム(K)が0%であることを示している。リン酸塩採掘作業から得られた表層水の処理が実証するように、肥料価値は場合により増加し得る(リンがPとして57%)。例えば、図11を参照のこと。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12