(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3Dグラフィックは、モニタリングされる地下水の放射能汚染の範囲、濃度、地下水の流動及び核種の移行が組み合わされた1つの画像の形態で表示されることを特徴とする請求項3に記載の地下水放射性汚染監視システム。
前記多重パッカーシステムは、区間毎に配置された地下水流動管のそれぞれを囲む構造であって、上下方向に離隔移動が可能な複数のパッカーを用いて地下水の区間毎に隔離区間を形成するように構築され、
前記地下水流動管に連結された前記自動分岐装置は、前記区間毎の地下水流動管のそれぞれに対して、複数の地下水流入流路が回転可能に形成された中心軸を基準として放射状に形成されることにより、揚水された各区間毎の地下水を自動分岐するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の地下水放射性汚染監視システム。
前記現場監視システムは、前記複数のパッカーにより断続された各区間毎の隔離区間に複数の水理地球化学センサが配置されて地下水の特性をリアルタイムにモニタリングし、
前記遠隔監視装置は、前記複数のパッカーにより隔離した深度の出力結果に関連する一部の深度の調査周期及び順序を変化させることができるように前記現場監視システムを制御することを特徴とする請求項7に記載の地下水放射性汚染監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の実施形態による原子力利用施設周辺の地下水放射性汚染監視システムは、原子力利用施設内又はその周辺の敷地に設置される現場監視システムと、それを遠隔制御する遠隔監視装置とを含む。
【0013】
なお、本発明は、様々な変更が可能であり、様々な実施形態を有するが、特定の実施形態を図面に示して詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0014】
以下に説明される「第1」、「第2」などのように序数を含む用語は様々な構成要素を説明するために使用されるが、前記構成要素は前記用語により限定されるものではない。すなわち、前記用語は1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲から外れない限り、第1構成要素は第2構成要素と命名してもよく、同様に、第2構成要素は第1構成要素と命名してもよい。「及び/又は」という用語は複数の関連記載項目の組み合わせ又は複数の関連記載項目のいずれか1つの項目を含む。
【0015】
また、ある構成要素が他の構成要素に「連結」又は「接続」されていると言及された場合は、前記他の構成要素に直接的に連結又は接続されていることもあり、中間にさらに他の構成要素が存在することもある。それに対して、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結」又は「直接接続」されていると言及された場合は、中間にさらに他の構成要素が存在しないと理解すべきである。
【0016】
さらに、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されるものであり、本発明を限定するものではない。単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。本明細書において、「含む」や「有する」などの用語は、本明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はそれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はそれらの組み合わせの存在や付加可能性を予め排除するものではないと理解すべきである。
【0017】
さらに、別途定義されない限り、技術的な用語や科学的な用語を含めて以下に使用される全ての用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願で明らかに定義しない限り、理想的であるか又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明し、添付図面を参照して説明する上で、図面番号に関係なく同一又は対応する構成要素には同一の符号を付し、それについての重複する説明は省略する。
【0019】
本発明で頻繁に言及される「原子力利用施設」は、実際に監視対象となる核種などを用い、地下水及び土壌への汚染物質の流出の恐れがある大規模施設であって、原子力発電所、研究用原子炉、核燃料製造工場、放射性廃棄物処分場などが広義に含まれる。
【0020】
図1は、本発明の実施形態における原子力利用施設20周辺の地下水への放射性物質の流出と地下水のモニタリングを示す概念図である。地下水の放射性汚染のモニタリングのための監視井戸(monitoring well)10は、原子力利用施設の敷地特性調査による敷地概念モデルから推論された地下水流動モデルに基づいて位置が決定される。
【0021】
図1に示すように、監視井戸10は、地下水の流動方向に沿って原子力利用施設20の前後の少なくとも2地点に設置される。これは、今後のバックグラウンド水質への汚染物質の流入による挙動特性の解析において必須の数である。例えば、
図1において原子力利用施設20から埋設連結されたパイプラインが損傷した場合、損傷した地点11から放射性物質15が流出して地下水の流動方向に移行する。よって、この場合は
図1において右側に示す監視井戸10の隔離区間で放射性物質15を計測する。
【0022】
ただし、本発明は、2地点の監視井戸に限定されないことは言うまでもなく、より精密かつ正確な汚染プルームの挙動を把握するために必要であれば、3地点以上に監視井戸を設置して運用してもよい。
【0023】
従来は、このような監視井戸の設置に地下水の流動が反映されていなかったり、隔離されていない裸孔(open borehole)状態で採取された地下水の放射能を四半期毎に取得するにとどまっていたが、本発明においては、地下水の流動に応じて監視井戸を選定し、監視井戸内の地下水の流動が速い断裂帯を対象に区間毎に隔離してモニタリングすることにより、希釈効果を防止し、計測された放射性物質の種類に応じた汚染源の予測及び汚染プルームの分布を迅速に判断することができ、復元計画を立てる上で直接的な判断根拠にすることができるようにした。
【0024】
本発明による地下水放射性汚染監視システムは、原子力利用施設周辺の地下水に深度別に多重パッカーシステムを構築して深度別に地下水の流動路を隔離した地下水特性をモニタリングし、深度別に隔離配置された地下水流動管に連結された自動分岐装置により深度別に地下水を揚水、分岐及び採取して放射能汚染を計測する。このような計測が監視井戸の全ての隔離深度に対して繰り返し行われると、その取得された現場計測資料をデータベース化し、データベース化された現場計測資料を遠隔監視装置にネットワークを介して送信する。ここで、データベース化された現場計測資料には、区間別水頭圧、簡易水質、放射能計測資料などが含まれる。すると、遠隔監視装置では、データベース化された現場計測資料を時系列分析し、地下水流動モデル、地球化学モデル及び核種移行モデルに関する数値を算出する。そして、算出された数値に基づいて放射能汚染源を予測し、汚染物質の分布及び移行特性を示す汚染プルームを地下水流動モデルに基づいて3Dグラフィック処理して出力する。
【0025】
図2は、本発明の実施形態による地下水放射性汚染監視システムにおける、現場監視システムと遠隔監視装置のインタラクションによる地下水のモニタリングの動作過程を説明するためのフローチャートである。
【0026】
図2に示すように、地下水放射性汚染監視システムにおいては、原子力利用施設周辺に設置された現場監視システム100がネットワーク300を介して遠隔に位置する遠隔監視装置200と通信しながら地下水のモニタリング動作を行う。
【0027】
地下水放射性汚染監視システムによる地下水の放射能モニタリング動作過程は次の通りである。地下水の放射能モニタリングを行う前に、原子力利用施設周辺の敷地調査による敷地特性評価、監視井戸の位置選定及び試錐、監視井戸の水理地球化学調査による監視深さ(区域)の選定、多重パッカーの設置などの準備過程(11)が先行する。
【0028】
具体的には、準備過程(11)として、1)敷地特性評価に基づいて敷地概念モデルを構築する過程、2)地下水流動モデル及び地球化学モデルを構築する過程、3)監視井戸の位置及び深度を決定する過程、4)監視井戸を試錐し、調査、試験、解析する過程、5)周期的に水理地球化学的モニタリングを行う過程が含まれてもよい。
【0029】
このように敷地特性評価が先行しなければならない理由は、原子力利用施設から放出された放射性汚染物質の地中の挙動は原子力利用施設の敷地の水理地質及び地球化学特性に左右されるからである。すなわち、敷地特性評価が先行すると地下水の流動及び水理地球化学的特性を評価して予測することができる。その後、原子力利用施設内の放射性物質の種類と潜在的汚染源の位置を把握し、地下水流動モデルに基づいて監視井戸の位置及び深度を選定し、それにより地下水の放射性汚染をリアルタイムにモニタリングする。つまり、本発明による地下水の放射性汚染モニタリングの先行過程として、敷地特性評価及び施設の構成要素の把握が必要不可欠である。
【0030】
また、本発明において、監視井戸には、多重パッカーシステムを活用して主な地下水流動路に深度別に隔離区間を形成する。このように多重パッカーを用いて主な地下水流動路の区間を断続することにより、汚染プルームの挙動を正確に把握することができる。多重パッカーシステムに含まれる多重パッカーの構造及び詳細については
図5A及び
図5Bを参照して以下でより具体的に説明する。
【0031】
準備過程(11)の後、
図2に示すように、現場監視システム100又は遠隔監視装置200により(図には現場監視システム100により行われる場合のみ示す)監視手順入力過程(12)が行われる(a)。例えば、現場監視システム100の入力手段により区間別地下水の放射能計測周期、計測資料収集周期、地下水の採水周期及び採水量が設定されるようにしてもよい。
【0032】
また、現場監視システム100と遠隔監視装置200間のネットワーク通信周期の設定も監視手順入力過程(12)に含まれるようにしてもよい。さらに、現場監視システム100での実験室の分析周期も監視手順入力過程(12)に含まれるようにしてもよい。
【0033】
このように監視手順が入力されると(12)、選択された特定の深度の自動分岐された地下水を揚水し(13)、計測を行う(14)。その後、自動分岐された地下水を採水し(15)、流動管及び測定チャンバの洗浄過程を行う(16)。
【0034】
そして、計測過程(14)で採水された地下水の汚染を判断する(17)。判断の結果、汚染された地下水であれば汚染水を貯蔵し(18)、そうでなければ自然排水処理を行う(19)。前述した地下水の揚水、計測、採水、洗浄及び排水過程は、地下水の多重深度の全てに対して実行が完了するまで繰り返し行われる。
【0035】
具体的には、入力された監視手順の実行により、地下水自動分岐部120(
図3A)及び地下水揚水ポンプ部110(
図3A)が動作する。揚水された地下水(13)は、測定チャンバ部130(
図3A)に移動し、初期に入力された監視手順(12)に従って、地下水の理化学水質測定及び放射能計測が行われる。
【0036】
ここで、計測過程(14)で収集された計測資料は、現場監視システム100内にデータベース化される(b)。これと共に、多重パッカーシステム内に埋設された各種センサなどの計測値も、リアルタイムにデータベース化される。
【0037】
採水過程(15)で採水された地下水試料は、実験室精密分析のために、試料自動採取部140により、計画された体積の試料が計画された容器に自動採取されるようにしてもよい。また、実験室精密分析の結果は詳細分析データベース化される。一実施形態においては、実験室精密分析の結果と現場計測値との比較により、現場計測器の感度、正確性及び精密性が向上/維持されるようにする。
【0038】
詳細分析データベースは、計測データベース(b)と連動して用いられ、これらは周期的に遠隔監視装置200にアップデートされる(c、d)。
【0039】
このように、計画された時間又は計画された計測周期で選択された特定の深度の地下水の揚水、計測、排水が完了すると、他の深度の地下水を調査するために、計画された入力手順(又は入力された監視手順)に従って地下水自動分岐部120が動作する。ここで、揚水された地下水により計測セル(cell)とチャンバの洗浄が行われる(16)。
【0040】
地下水の多重深度の全てに対する揚水、計測、採水、洗浄、排水が完了すると、現場監視システム100は、このような現場計測資料のデータベースを計画された通信周期で遠隔監視装置200に送信する。
【0041】
その結果、遠隔監視装置200は、遠隔でも現場計測資料の結果を用いて地下水の放射能汚染及び汚染源の位置をリアルタイムに予測する(20)ことができる(e)。これは原子力利用施設の系統によって劣化による計画されていない放出により発生する核種の種類が異なるので可能である。具体的には、遠隔監視装置200は、リアルタイムに受信する計測資料と、地下水流動モデル、地球化学モデル及び核種移行モデルに関する数値の計算により、地下水の流動と放射能汚染プルームを予測することができる。
【0042】
また、遠隔監視装置200では、潜在的汚染源の予測に基づいて3D汚染プルームを出力する。ここで、3D汚染プルームの生成のために、遠隔監視装置200内のデータベース250(
図3B)には、予測汚染源及び汚染度の位置座標値が保存され、データベース250のアップデートにより変化した座標値の履歴が時間情報と共に、又は時間順に保存される。
【0043】
このようにデータベース250(
図3B)に保存された座標値の履歴は3次元立体画像として生成され、公知のマッピング技術により等値線で表された3次元立体画像として視覚化され、すなわち出力手段230(
図3B)により出力される。
【0044】
また、このような等値線で表された3次元立体画像は、時間の経過に従って前記算出された地下水流動モデル(地下水の流動方向及び流速に応じた汚染プルームの予測移流速度を含む)に対応して動く3次元立体画像として出力されるようにしてもよい。よって、地下水の放射性汚染の発生時に、汚染物質の種類、分布範囲に応じた復元計画に直接役立つ。
【0045】
その後、遠隔監視装置200により(g)、前記出力された3D汚染プルームを評価及び分析し(22)、その評価に基づいて次の動作を行うようにしてもよい。
【0046】
一動作として、放射性汚染の範囲、核種の移行、汚染の濃度、地下水の流れに基づいて監視手順入力過程(12)の入力値を調整するようにしてもよい(23)。他の動作として、汚染復元施設手段に3D汚染プルームの出力データを送信するようにしてもよい(24)。
【0047】
図3A及び
図3Bは、それぞれ本発明の実施形態による地下水放射性汚染監視システムの現場監視システム及び遠隔監視装置の構成を説明するためのブロック図である。
【0048】
まず、
図3Aに示すように、現場監視システム100は、ハードウェア的構成要素からなる地下水放射性汚染現場監視システム101に様々なソフトウェアプログラム、すなわち現場監視システム運用プログラム102を実現及び実行することにより、現場の地下水汚染のモニタリング動作を行う。
【0049】
地下水放射性汚染現場監視システム101は、地下水揚水ポンプ部110、地下水自動分岐部120、測定チャンバ部130、試料自動採取部140、汚染水貯蔵部106、システム運用部150、並びに外部通信部160を含む。
【0050】
また、現場監視システム運用プログラム102は、分岐装置運用プログラム103、水理地球化学及び放射能計測部データベース収集プログラム104、自動試料採取プログラム105、並びに現場地下水監視システム運用プログラム107を含んでもよい。
【0051】
図示していないが、現場監視システム100は、監視井戸地上露出部を含む現場監視システムの構成が内蔵された実験室であるウェアハウスと、ウェアハウス内の多重パッカーシステム設置監視井戸とを含む。これについては
図6Aを参照して以下でより具体的に説明する。
【0052】
地下水揚水ポンプ部110は、定量ポンプ、及び地下水自動分岐部120に連結された多重パッカー監視井戸の各深度別の地下水流動管を含む。ここで、1つの地下水流動管が地下水揚水ポンプ部110に連結されるので、現場監視システム100内の地下水揚水ポンプは1つで十分である。当該地下水流動管には、地下水が正常に揚水されているか否かを確認できるように、地下水流量計やセンサなどが設けられてもよい。
【0053】
地下水自動分岐部120は、監視井戸内の深度別の隔離区間から地下水流動管が連結されて調査の目的に合った深度区間の地下水のみを揚水及び採取できるようにする装置である。例えば、本発明による地下水自動分岐部120は、三方弁又はステッピングモータを活用した回転マニホールド方式が適用された装置であってもよい。
【0054】
測定チャンバ部130は、地下水の理化学水質計測器及び放射能計測器を含む。一般的に、理化学水質測定のためには、各センサが外気の影響を受けないように、フローセル(チャンバ)内にpHセンサ、ORP(酸化還元電位)センサ、DO(溶存酸素)センサを挿入して測定を行う。また、監視井戸内にEC(電気伝導度)センサが設けられていない場合は、当該フローセル内に挿入して理化学水質測定を行うようにしてもよい。さらに、地下水の水質因子のうち濁度は該当計測部で測定するようにする。
【0055】
放射能の計測にはベータ線源及びガンマ線源計測器の駆動が含まれる。ベータ線源の計測のための試料注入、カクテル供給、混合などは自動化で行われる。ガンマ線源の計測のための地下水放射能測定チャンバは、ガンマ線源計測センサの形状によってその設計が異なり、外部放射能の影響を遮断するために、チャンバの外部は約10cm以上の厚さの遮蔽物質(例えば、鉛など)で囲まれるようにする。しかし、これに限定されるものではない。
【0056】
試料自動採取部140は、地下水の水質の定量分析(無期成分分析、安定同位元素分析、放射性同位元素分析など)のために現場で試料を取得する系統であり、精密分析のために実験室に後に移動させるように設計される。試料自動採取部140は、各分析項目別に必要な試料量を考慮して設計され、設計によって試料保管容器の種類及び大きさが決定される。
【0057】
放射能計測で異常がなかったり排出許容基準を超えていない地下水試料は自動排水されるようにし、汚染地下水は汚染水貯蔵部106に保管されるようにする。汚染水貯蔵部106の外部には遮蔽システムを適用し、汚染水処理方式においては独自基準を設けて運用する。
【0058】
システム運用部150は、様々な運用プログラム(地下水揚水プログラム、分岐装置運用プログラム、計測データベース収集プログラム、自動試料採取プログラム、データベース送信プログラムなど)を含む現場管理手段と、それに接続された外部通信部160とから構成されてもよい。
【0059】
現場管理手段は、遠隔監視装置200の中央管理手段220により制御される。外部通信部160は、ユーザの目的及び現場状況によってLAN、CDMA、LTE方式のいずれかを用いて運用し、データ消失防止のために2つ以上の通信手段を備えるようにしてもよい。
【0060】
一実施形態において、地下水特性のモニタリングの計測周期は、現場監視システム100又は遠隔監視装置200により入力された監視手順入力値によって決定されるようにしてもよい。この場合、現場監視システム100は、遠隔監視装置200の出力手段230により出力された3D立体画像に含まれる放射能汚染の範囲、濃度、地下水の流れ及び放射能核種の少なくとも1つに基づいて前記監視手順入力値を自動調整するようにしてもよい。
【0061】
次に、
図3Bに示すように、地下水監視システムを構成する遠隔監視装置200は、外部通信手段210、中央管理手段220、データベース250、出力手段230及び通知手段240を含む。
【0062】
外部通信手段210は、現場監視システム100及び外部施設システム(例えば、外部復元システム)と通信するための手段である。
【0063】
中央管理手段220は、外部通信手段210に接続され、現場監視システム100から受信した現場計測資料を分析し、分析結果に基づいて現場監視システム100の現場管理手段を遠隔制御するための制御命令を生成する。
【0064】
データベース250は、中央管理手段220に接続され、現場監視システム100から受信した現場計測資料及び前記現場計測資料の分析データを保存する。ここで、保存されるデータには、予測汚染源の位置座標値と地下水流動モデルによって異なるテーブル化した座標値が含まれてもよい。
【0065】
出力手段230は、中央管理手段220に接続され、データベース250に保存された現場計測資料及び分析データを3次元グラフィックモデルとして出力する。また、出力手段230は、原子力利用施設の敷地内の地下水の流動を含む潜在的汚染源からの核種の分布特性をリアルタイムに可視化して提供する。さらに、出力手段230は、時系列分析、地下水流動モデル、地球化学モデル及び核種移行モデルに対応する2次元データをリアルタイムに出力することもできる。
【0066】
また、中央管理手段220は、出力手段230の分析結果に基づいたモニタリング監視手順の自動調整を現場監視システムに提供する。
【0067】
また、一実施形態において、外部通信手段210は、データ消失防止のために複数の通信網手段を含んでもよい。この場合、複数の通信網手段のいずれか1つを用いて、計画された通信周期で現場監視システム100から前記データベース化された現場計測資料を受信し、他の1つを用いて前記算出された数値と前記3次元グラフィックモデルに対応するデータを現場監視システム100に送信する。
【0068】
また、出力手段230により出力される3次元グラフィックモデルに、モニタリングされる地下水の放射能汚染の範囲、濃度、地下水の流れ及び核種の移行が組み合わされた1つの3次元画像の形態で表示されるようにしてもよい。
【0069】
また、一実施形態において、中央管理手段220は、前記3次元グラフィックモデルに関する時間設定が入力される入力手段(図示せず)を含んでもよい。よって、前記入力された時間設定によって前記汚染の範囲、濃度、地下水の流れ及び核種の移行を示す前記組み合わされた画像が次第に変化するように、動く3次元グラフィックモデルを出力することができる。これは、地下水の放射性汚染物質の今後の移行を予測するための手段として用いることができる。
【0070】
さらに、一実施形態において、中央管理手段220は、外部通信手段210を介して外部復元システムと通信するようにしてもよい。具体的には、汚染プルームの分析結果に対応する放射能汚染評価(22,
図2)に基づいて、外部通信手段210を介して、前記出力された3次元グラフィックモデルとそれに対応する時系列分析、地下水流動モデル、地球化学モデル及び核種移行モデルに関する数値とを定められた放射能汚染復元手段に提供するようにしてもよい。
【0071】
さらに、一実施形態において、中央管理手段220は、前記多重パッカーにより断続された各深度別の隔離区間に配置された複数の水理地球化学センサを用いて、地下水の特性をリアルタイムにモニタリングするようにしてもよい。さらに、多重パッカーのうち、出力手段230の出力結果に関連する一部のパッカーの位置が上下方向に離隔移動するように、現場監視システム100の現場管理手段を制御してもよい。
【0072】
通知手段240は、分析結果に対応する放射性汚染評価の結果、基準範囲を超える汚染度が予測されると、定められた通知を出力する。
【0073】
図4は、本発明の実施形態による地下水放射性汚染監視システムにおける、深度別の地下水特性のモニタリングのための準備過程を説明するためのフローチャートである。
【0074】
図4に示すように、まず、モニタリング対象敷地周辺の敷地特性を評価して敷地概念モデルを構築する(401)。次に、敷地概念モデルに基づいて、監視井戸の位置及び深さを選定して監視井戸の試錐を行う(402)。そして、地下水の深度別に地下水圧、地下水質の現場測定、放射能の現場測定、試料採取を行えるように、多重パッカーを用いて深度別の区間隔離を行う(403)。ここで、深度別の区間隔離(403)は、地下水の主な流動路となる断裂帯を対象に行い、水理試験により水理伝導度や透水係数などの水理資料値を予め得ておく。
【0075】
次に、計測周期を設定する(404)ようにしてもよい。具体的には、現場放射能計測器(水用ベータ及びガンマ計測器)の計測最適化(分析感度の向上)による計測周期を決定する。このとき、計測周期を含む揚水ポンプの運用、計測資料収集周期、地下水の採水周期及び採水量、外部通信周期、実験室分析周期などが設定されるようにしてもよい。その後、深度別の地下水の特性をリアルタイムにモニタリングする(405)。
【0076】
図5A及び
図5Bは、本発明の実施形態による地下水放射性汚染監視システムに適用される多重パッカーシステムの設置例を示す図である。
【0077】
本発明による地下水放射性汚染監視システムに適用される多重パッカーシステムは、地下水の多重深度に配置された地下水流動管のそれぞれを囲む構造であって、上下方向に離隔移動が可能な複数のパッカーを用いて地下水の深度別に隔離区間を形成するように構築されてもよい。
【0078】
また、本発明において、地下水流動管に連結された自動分岐装置は、前記多重深度の地下水流動管のそれぞれに対して、複数の地下水流入流路が回転可能に形成された中心軸を基準として放射状に形成されることにより、揚水された地下水を自動分岐するように構成されてもよい。
【0079】
ここで、自動分岐装置は、地下水による腐食を防止するために、例えばステンレス鋼材質からなるようにしてもよい。また、複数の地下水流入流路にそれぞれ選択流路と排出流路が形成され、回転により選択されたいずれかの流入流路に連通して地下水が流入するようにしてもよい。
【0080】
図5Aは、多重パッカーシステムを構築するための多重パッカーの一例を示し、上から下の方向に少なくとも第1パッカー501、第2パッカー502及び第3パッカー503を含み、パッカーに膨張流体を供給して油圧を加える供給管511、513、パッカー同士を連結する連結管514、及びパッカー間に存在する地下水Wを外部に案内する案内管512から構成される。なお、供給管511、513に膨張流体を供給してパッカーを同時に膨張させて監視井戸の壁面に密着させる。
【0081】
また、
図5Bは、多重パッカーシステムを構築するための多重パッカーの他の例を示し、複数のパッカー501’、502’、503’のうち第1パッカー501’が圧力供給管518から上部圧力供給管516を介して移送された高圧流体により膨張して監視井戸の外周面と監視井戸の壁面に密着する。ここで、第1パッカー501’の上部及び下部には、それぞれ上部移動キャップ517a及び下部移動キャップ517bが備えられてもよい。よって、第1パッカー501’が上部又は内部に流入した地下水を連結管を介して地上に送る下部の有孔管519に向かって離隔移動するか、又は現在の位置に固定されるようにすることができる。それにより、第1パッカー501’と他のパッカー502’、503’間には隔離した地下水採取区間が形成されることになる。
【0082】
こうすることにより、本発明による離隔移動が可能な多重パッカーシステムが構築される。一方、第2パッカー502’が高圧流体により膨張して監視井戸の壁面に密着固定された後、第1パッカー501’は連結管を中心として制限リング(横方向リング)まで上下方向に離隔移動することもできるので、多重パッカー間の隔離距離及び離隔空間を容易に調整することができる。よって、地下水採取区間を容易に変更することができる。
【0083】
図6Aは、
図5A又は
図5Bの多重パッカーシステムを活用して地下水の放射能汚染を監視する一例を示す図である。
【0084】
現場監視システム100は、監視井戸地上露出部を含む現場監視システムの構成が内蔵された実験室であるウェアハウスと、ウェアハウス内の多重パッカーシステム設置監視井戸500とを含む。
【0085】
ウェアハウスは、監視井戸地上露出部を含む現場監視システムの構成部を内部に積載できる構造と作業に容易な面積程度の大きさを有する移動実験室である。
【0086】
ウェアハウスの大きさはユーザの実施に合わせて調整できるが、システムの駆動電力の供給は必須である。電力供給が円滑でない場合、太陽光電源の供給も考慮すべきである。また、外部の天候に関係なく恒常性を維持するように、エアコン、ヒータ、除湿装置を備え、構成系統部の誤作動を事前に防止することが好ましい。さらに、各監視用ウェアハウスの隔離距離は短いほど監視システムに効果的であるが、対象敷地の地下施設物の影響を考慮して、縦方向が約100m以内であることが好ましい。
【0087】
多重パッカーシステム設置監視井戸500は、地下水の深度別の特性(地下水圧、地下水水質特性)をモニタリングするシステムであり、リアルタイムに地下水の特性を深度別に把握することができる。具体的には、地下水位の変化、汚染物質の流入の早期診断が可能であるので、汚染の予防に効果的である。深度別の区間断続は、試錐監視井戸の詳細調査により主な地下水流入帯を決定し、当該区間を多重パッカーを活用して断続する。また、断続された各区間内に様々な水理地球化学センサ(地下水圧、温度、電気伝導度センサなど)を埋設し、地下水の特性をリアルタイムにモニタリングするようにしてもよい。
【0088】
図6Bは、本発明の実施形態による地下水放射性汚染監視システムにおける、計測資料の分析結果に基づいた汚染物質の計測値及び汚染分布特性の等値線画像の一例を示す図である。一例として、
図6Bは、
図6Aの5箇所の監視井戸を結ぶ横方向に切断して(601,
図6A)汚染分布特性を等値線で表した画像である。
【0089】
遠隔監視装置200では、汚染物質の計測と地下水流動モデルに基づいて3D汚染プルームを出力する。ここで、3D汚染プルームの生成のために、遠隔監視装置200内のデータベース250(
図3B)のアップデートにより変化した座標値の履歴が時間情報と共に、又は時間順に保存される。このようにデータベース250に保存された座標値の履歴は3次元立体画像として生成され、公知のマッピング技術により等値線で表された3次元立体画像として視覚化され、すなわち出力手段230(
図3B)により出力される。換言すれば、3D汚染プルームは、公知のマッピング技術により等値線で表された3次元立体画像として視覚化され、すなわち出力手段230(
図3B)により出力される。等値線で表された3次元立体画像から、汚染源の位置、核種の移行及び分布特性、予測汚染範囲、濃度、流れなどを一目で容易に確認することができる。
【0090】
図7は、本発明の実施形態による地下水放射性汚染監視システムのモニタリング結果に基づいた核種移行モデルの3Dグラフィック画像を経時的に2D画像化した画像の一例を示す図である。
【0091】
このような画像は、時間の経過に従って地下水流動モデル(地下水の流動方向及び流速に応じた汚染プルームの予測移流速度を含む)に対応して動く3次元画像として出力されるようにしてもよい。すなわち、汚染プルームの計測結果が数値で出力されるのではなく、3D汚染プルームのグラフの形態で提供されることを確認することができる。よって、時間の経過による汚染プルームの流動方向、移流速度などを視覚的に直観することができる。
【0092】
また、一実施形態においては、地下水流動モデルに様々な環境センサのセンサ値を適用して特性が変化した地下水流動モデルをリアルタイムに構築し、動く3次元画像が、前記特性が変化した地下水流動モデルによって非パターンの形態で変化するように視覚化することもできる。よって、地下水の放射能汚染の復元時点に最適化された復元計画を立てることができる。ここで、前記3次元画像に対応する3D汚染プルームのスケール、基準位置を変更したり、それに対応する3次元画像の属性(例えば、カラー、パターンなど)を変更して出力するようにしてもよい。
【0093】
さらに、3D汚染プルームの予測移流速度が基準値を超えたり、流動方向の近傍に特定の施設が位置したり(例えば、病院など)、危険核種が新たに発見された場合、地下水流動モデルに対応する3次元画像と共に予め設定されたアラーム/警告を出力するようにしてもよい。さらに、このために、前記3次元画像に対応する3D汚染プルームのスケール、基準位置を変更したり、それに対応する3次元画像の属性(例えば、カラー、パターンなど)を変更して出力するようにしてもよい。
【0094】
以上説明したように、本発明による地下水放射性汚染監視システムは、データベース収集、資料送信、資料分析及び図示化を自動化することにより、労働力及び経費の効率性を最大化し、機器の誤作動及び非理想的資料の算出に対する警報システムを設け、遠隔で現場システムを制御することにより、地下水放射性汚染監視システムの統合及び自動化を実現する。また、地下水の多重深度のモニタリング基盤を活用した地下水の3次元流動モデルを構築することにより、地下水の水理地球化学的特性及び放射能分布を深度別にリアルタイムに把握し、汚染物質の流入及び流出の早期診断を可能にする。さらに、汚染源の予測、挙動、核種分布特性、濃度、流れなどの変化を動く3次元画像として可視化して提供することにより、ユーザが汚染度を一目で容易に把握することができ、その後のモニタリング計測周期に自動的に活用されて復元計画の樹立に自動的に参照される便宜を提供する。
【0095】
前述した本発明は、プログラム記録媒体にコンピュータ可読コードで実現することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータシステムにより読み取り可能なデータが記録されるあらゆる種類の記録装置を含む。コンピュータ可読媒体には、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Disk)、SDD(Silicon Disk Drive)、ROM、RAM、CD−ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などが含まれ、かつ搬送波(例えば、インターネットによる送信)状に実現されるものも含まれる。
【0096】
本発明の詳細な説明はあらゆる面で制限的に解釈されてはならず、例示的なものとして考慮されるべきである。本発明の範囲は請求の範囲の合理的解釈により定められるべきであり、本発明の等価的範囲内でのあらゆる変更が本発明の範囲に含まれる。