(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862413
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】虫垂切除術用モデル
(51)【国際特許分類】
G09B 23/30 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
G09B23/30
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-502201(P2018-502201)
(86)(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-524636(P2018-524636A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016043277
(87)【国際公開番号】WO2017015438
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】62/195,439
(32)【優先日】2015年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】サレー コドル
【審査官】
田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0248596(US,A1)
【文献】
実開昭58−168765(JP,U)
【文献】
Vermiform Appendix,limbs&things [online],2006年 2月 1日,特に、製品画像及び「Features」の項を参照、[2020年7月17日検索],URL,https://d2mgr4ms5vxvj6.cloudfront.net/media/3124/50122_50123_50124_vermiform_appendix_userguide_web.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科的訓練用の模擬組織構造体であって、
近位端と遠位端との間で長手方向軸線に沿って延びる中央ルーメンを備えた管状構造体を有する模擬大腸と、
前記模擬大腸の前記遠位端に連結された模擬虫垂と、
前記模擬大腸に連結された状態で該模擬大腸に沿って長手方向に延びる模擬結腸ひもと、
近位端と遠位端との間の中間部分を備えかつ前記模擬虫垂に連結されている少なくとも1本の模擬動脈と、
実質的に前記模擬虫垂を包囲したポケットと、を有し、
前記ポケットは、シリコーンの下側層およびシリコーンの上側層を有し、前記模擬虫垂および前記少なくとも1本の模擬動脈は、前記少なくとも1本の模擬動脈の前記中間部分が、前記下側層にくっつけられ、前記少なくとも1本の模擬動脈の前記遠位端が、前記模擬虫垂にくっつけられるように、前記下側層と前記上側層との間に配置されている、模擬組織構造体。
【請求項2】
前記模擬大腸は、縮小した直径を有する少なくとも1つの横方向ひだを有する、請求項1記載の模擬組織構造体。
【請求項3】
前記模擬結腸ひもは、前記模擬結腸ひもの長手方向長さに沿う少なくとも1つの広幅側方部分を有し、前記少なくとも1つの広幅側方部分は、前記少なくとも1つの横方向ひだと整列している、請求項2記載の模擬組織構造体。
【請求項4】
前記模擬結腸ひもは、シリコーンの幅の狭いストリップである、請求項1記載の模擬組織構造体。
【請求項5】
模擬回腸を更に有し、前記模擬大腸は、前記遠位端の近くに穴を有し、前記模擬回腸は、前記穴内に挿入された状態で前記模擬大腸に連結されており、前記ポケットは、前記模擬回腸の一部を含む、請求項1記載の模擬組織構造体。
【請求項6】
前記模擬大腸は、シリコーンの第1の層およびシリコーンの第2の層を有し、前記模擬結腸ひもは、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されている、請求項1記載の模擬組織構造体。
【請求項7】
前記模擬大腸は、
直径を有する前記中央ルーメンを画定する内面を備えたシリコーンの第1の層と、
シリコーンの第2の層と、を有し、
前記模擬結腸ひもは、内面、外面、頂縁と底縁との間に定められた距離、および第1の側縁と第2の側縁との間に定められた幅を有するシリコーンのストリップであり、前記ストリップは、前記第1の層と前記第2の層との間に埋め込まれている、請求項1記載の模擬組織構造体。
【請求項8】
前記ストリップの前記内面は、前記第1の層の外面にくっつけられている、請求項7記載の模擬組織構造体。
【請求項9】
前記第2の層は、前記第1の層および前記ストリップに被覆成形されている、請求項7記載の模擬組織構造体。
【請求項10】
前記ストリップの前記幅は、前記第1の側縁と前記第2の側縁との間に構成された状態で比較的細幅の部分が散在して設けられた広幅部分を含み、前記中央ルーメンは、小径および比較的大径の対応の領域を有する、請求項7記載の模擬組織構造体。
【請求項11】
前記広幅部分は、前記小径の領域と整列している、請求項10記載の模擬組織構造体。
【請求項12】
角度が付けられた状態で前記中央ルーメンに相互連結された第2のルーメンを更に有する、請求項7記載の模擬組織構造体。
【請求項13】
前記模擬大腸は、前記模擬虫垂と一体成形されており、前記模擬虫垂は、前記模擬大腸の直径よりも小さい直径を有する、
請求項1記載の模擬組織構造体。
【請求項14】
前記シリコーンの下側層は、前記模擬大腸の底に取り付けられ、前記シリコーンの上側層は、前記シリコーンの下側層の下縁と、前記模擬大腸に取り付けられ、これにより、前記ポケットは前記模擬虫垂、前記模擬大腸の一部、及び少なくとも1本の模擬動脈を含む、請求項1記載の模擬組織構造体。
【請求項15】
腹腔鏡訓練器具の内腔に虫垂切除術用モデルを取り付けて固定するように構成されたバックグラウンドシートをさらに含み、前記内腔は直視から隠されており、前記バックグラウンドシートは高密度エチレンビニルアセテートフォームで作られている、請求項1記載の模擬組織構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に、外科的訓練ツールに関し、特に、腹腔鏡下手術、内視鏡下手術および低侵襲手術に関連した(しかしながら、これらには限定されない)種々の外科的技術および手技を教示するとともに練習させる模擬組織構造体およびモデルに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2015年7月22日に出願された米国特許仮出願第62/195,439号(発明の名称:Appendectomy model)の優先権および権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、この記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
新たな外科的技術(術式)を学習する医学生ならびに熟練医は、自分達が患者としての人間に対して手術を行う資格を得る前に大がかりな訓練を受けなければならない。この訓練は、種々の形式の組織を切断し、穿通し、クランプし、把持し、ステープル留めし、焼灼し、縫合するための種々の医療器具を用いる適正な技術を教示しなければならない。訓練を受ける人(訓練生)が遭遇する場合のある場面の範囲は、広い。例えば、種々の器官ならびに患者の解剖学的構造および疾患が提示される。種々の組織層の厚さおよびコンシステンシーもまた、身体の一部分と隣りの部分とでは様々であり、しかも患者ごとに様々な場合があろう。互いに異なる手技には互いに異なる技能が要求される。さらに、訓練生は、例えば患者の体格や病態、標的組織の隣接の解剖学的景観および景観や標的組織が容易にアクセス可能であるか比較的アクセス不能であるかという要因によって影響を受ける種々の解剖学的環境中において技術を練習しなければならない。
【0004】
外科的訓練の1つまたは2つ以上の観点について多くの教示補助具、訓練器具、模擬訓練装置(シミュレータ)およびモデル臓器が利用可能である。しかしながら、遭遇する可能性がありかつ内視鏡下の手技、腹腔鏡下の手技、低侵襲手術手技(外科的処置)を練習するために使用できるモデルまたは模擬組織要素が要望されている。腹腔鏡下手術では、トロカールまたはカニューレを挿入して体内腔にアクセスしたりカメラ、例えば腹腔鏡の挿入のためのチャネルを作ったりする。カメラは、ライブビデオフィードキャプチャリング画像を提供し、次にこれら画像を1つまたは2つ以上のモニタで外科医に表示する。少なくとも1つの追加の小さな切開創が作られ、かかる切開創を通って別のトロカール/カニューレを挿入してモニタ上で観察される手技を実施するために外科用器具を挿通させることができる経路を作る。標的組織場所、例えば腹部は、典型的には、二酸化炭素ガスを送り出して体内腔に通気しまたは注入して外科医により用いられるスコープおよび器具を受け入れるのに足るほど広い作業空間を作ることによって拡張される。組織腔内のガス注入圧力は、専用トロカールを用いることによって維持される。腹腔鏡下手術は、開放手技と比較した場合、多くの利点を提供する。これら利点としては、切開創が小さいということに起因して、疼痛が軽いこと、出血が少ないこと、回復期間が短いことが挙げられる。
【0005】
腹腔鏡下または内視鏡下低侵襲手術では、開放手術と比較して技能レベルの高いことが要求される。というのは、標的組織は、医師によって直接観察されることがないからである。標的組織は、小さな開口部を通ってアクセスされる手術部位の一部分を表示するモニタにより観察される。したがって、医師は、組織平面を視覚的に見定め、二次元観察スクリーン上における三次元奥行き覚、器具の手渡し、縫合、高精度切断ならびに組織および器具の操作を練習する必要がある。典型的には、特定の解剖学的構造または手技を模倣するモデルが模擬骨盤または腰部訓練器具内に配置され、この訓練器具では、解剖学的モデルは、医師による直接可視化(直視化)から隠されている。訓練器具に設けられたポートは、器具を通して直視化から隠された解剖学的モデルに対して行われる技術を練習するために用いられる。模擬骨盤訓練器具は、腹腔鏡下手術で用いられる基本的な技能および典型的な技術、例えば把持、操作、切断、結び目を作ること、縫合、ステープル留め、焼灼ならびにこれら基本的な技能を利用した特定の外科的処置をどのように実施するかについて外科医および研修医を訓練する機能的かつ安価であり、しかも実用的な手段となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外科医が外科的技術または術式を訓練することができる模擬骨盤訓練器具用の臓器モデルが必要とされる。これら臓器モデルは、外科医が術式を適切に学習するとともに自分の技量を向上させることができるよう本物のようである必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、外科的訓練用の模擬組織構造体が提供される。模擬組織構造体は、近位端と遠位端との間で長手方向軸線に沿って延びる中央ルーメンを備えた管状構造体を有する模擬大腸を有する。模擬組織構造体は、模擬大腸の遠位端に連結された模擬虫垂を有する。
模擬結腸ひもが模擬大腸に連結された状態でこの模擬大腸に沿って長手方向に延びている。模擬組織構造体は、近位端と遠位端との間の中間部分を備えた少なくとも1本の模擬動脈を有する。この少なくとも1本の模擬動脈は、模擬虫垂に連結されている。シリコーンポケットが模擬虫垂および模擬動脈の少なくとも一部を包囲した空所を実質的に構成する。
【0008】
本発明の別の観点によれば、外科的訓練用の模擬組織構造体が提供される。模擬組織構造体は、虫垂切除術用モデルを含む。虫垂切除術用モデルは、直径を有する中央ルーメンを画定する内面を備えたシリコーンの第1の層を有する。シリコーンの第2の層が設けられている。シリコーンのストリップが第1の層と第2の層との間に埋め込まれている。シリコーンのストリップは、内面、外面、頂縁と底縁との間に定められた距離、および第1の側縁と第2の側縁との間に定められた幅を有する。
【0009】
本発明の別の観点によれば、模擬組織構造体を製造する方法が提供される。本方法は、マンドレルを用意するステップと、湿ったシリコーンの第1の層をマンドレルに被着させるステップとを含む。この第1の層を硬化させて中央ルーメンを備える第1の管状構造体を作製する。中央ルーメンの直径のほぼ半分未満のシリコーンの幅の狭いストリップを用意し、この幅の狭いストリップを第1の管状構造体に沿って長手方向に被着させる。湿ったシリコーンの第2の層を第1の管状構造体およびシリコーンの幅の狭いストリップに被着させる。湿ったシリコーンの第2の層を硬化させた後、第1の層と第2の層と幅の狭いストリップの集成体をマンドレルから取り外す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の虫垂切除用モデルの平面図であり、黄色のシリコーンの第2の層が模擬虫垂および動脈を示すよう取り外された状態を示す図である。
【
図2】本発明の虫垂切除用モデルの平面図であり、黄色のシリコーンの第2の層が模擬虫垂および動脈を収容するよう第1の黄色のシリコーン層が下に位置した状態でポケットを形成している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
腹腔鏡下手技のための虫垂切除用モデルが提供される。虫垂切除用モデルは、外科医および研修医に解剖学的構造および虫垂切除手技に関与するステップを教示するよう設計されている。このモデルは、シリコーン、熱可塑性エラストマー(TPE)およびフォームで作られ、このモデルは、重要な解剖学的ランドマーク(景観)を全て備えている。虫垂切除用モデルは、裸眼による直視から隠された腹腔鏡下訓練器具内に配置され、その結果、ビデオ上で作業を観察しながら腹腔鏡外科医の技能を練習することができるようになっている。
【0012】
図1は、本発明の虫垂切除用モデル10を示している。モデル10は、複数の横方向ひだ14を備えた模擬大腸12の一部分を有する。模擬大腸12の遠位端は、湿ったシリコーンの第1の層を回転マンドレルに被着させることによって虫垂16と一緒に一体成形されている。マンドレルは、マンドレルの端に連結された模擬虫垂16の形状を備えた模擬大腸の形状を有する模擬虫垂16の直径は、模擬大腸12の直径よりも小さい。第1のシリコーン層は、マンドレルの周りに硬化するようになっている。マンドレルを回転させると、均一の層が硬化してマンドレルの形状を取ることができる。次に、予備成形シリコーンの白色の幅の狭いストリップ18を
図1および
図2に示されているように管状模擬大腸12の長手方向軸線に沿って載せられて
模擬結腸ひもを構成する。シリコーン系接着剤を用いると、白色の幅の狭いストリップを第1のシリコーン層に取り付けることができる。次に、湿ったシリコーンの第2の層を被着させて白色の幅の狭いストリップ18を第1のシリコーン層と第2のシリコーン層との間にサンドイッチする。幅が狭くて長くかつ白色のシリコーンストリップ18は、形状が実質的に長方形である。別の形態では、幅の狭いストリップ18は、模擬大腸12の長手方向長さに沿って細幅の側方部分と散在して設けられた広幅の側方部分を有するのが良い。幅の狭いストリップ18の広幅部分は、実質的に互いに間隔を置いて配置されかつ大腸12の横方向ひだ14と整列し、その後、2つのシリコーン層に取り付けられるとともにこれらの間に埋め込まれる。硬化済みのシリコーン構造体をマンドレルから取り外す。
【0013】
依然として
図1を参照すると、黄色のシリコーンの小さくて薄い第1の層20が模擬大腸12の底に取り付けられ、この第1の層は、虫垂16の底に取り付けられても良くまたは取り付けられなくても良い。動脈を表す1本または2本以上の赤色シリコーン管22が模擬動脈、例えば模擬虫垂動脈の中間部に沿って第1の黄色シリコーン層20に取り付けられている。管22は、中実であっても良く中空であっても良い。赤色動脈管22の遠位端は、図示のように接着剤で虫垂16の頂部に取り付けられている。穴24が模擬大腸12の遠位端の近くに形成され、シリコーンの予備成形管26が穴24内に挿入されて回腸を模倣している。赤色管22の近位端は、
図1に示されているように回腸の下に配置される。次に、黄色シリコーンの薄い第2の層28を第1のシリコーン層20上に被着させて黄色の第1の層20の下縁に取り付けるとともに人工大腸12に取り付け、それにより
図2に示されているように虫垂16、大腸12の一部、赤色管22および人工回腸26の一部を覆うとともにこれを収容する洞穴状またはポケット状構造を作製する。モデル全体を表面模様付きシリコーンの赤色バックグラウンドシート30に取り付ける。面ファスナー式(フック・アンド・ループ式またはいわゆるマジックテープ式)締結手段をモデル10の下に、そして一形態では、バックグラウンドシート30の下に用いてモデル10を腹腔鏡下訓練器具の内部に取り付けるとともに固定するのが良い。一形態では、バックグラウンドシート30は、高密度エチレンビニルアセテートフォームで作られる。
【0014】
医師は、虫垂切除用モデル10を腹腔鏡訓練器具内に配置することによって腹腔鏡下虫垂切除術を練習する。モデル10を締結手段で訓練器の底部に固定する。メスまたは他の器具を用いて頂部の黄色の第2のシリコーン層28を切開してポケットを開き、そしてその下に位置する動脈22を可視化する。医師は、次に、赤色動脈22を切開してこれらをレトラクトする。次に、虫垂16を切断して取り出す。
【0015】
別の形態では、モデル10は、別の大型モデルまたは組織構造体、例えば腹部臓器モデルまたは骨盤モデルの一部として形成され、このモデルは、模擬腹腔鏡下環境、例えば外科的訓練器具内に配置されるよう寸法決めされるとともに形作られており、この外科的訓練器具については以下に説明する。
【0016】
外科的訓練器具は、患者の胴、例えば腹部を真似るよう形作られている。外科的訓練器具は、模擬もしくは生きている組織または本明細書において説明した臓器モデルもしくは訓練モデルなどを受け入れるためにユーザから実質的に覆い隠されている体腔となる。体腔には組織模擬領域を介して接近し、この組織模擬領域は、ユーザが組織に対して外科的技術を練習しまたは体腔内に配置された状態で見えるモデルを練習するための器具を用いることによって穿通される。体腔は、組織模擬領域を介して接近可能であるように示されているが、手支援型アクセス器具または単一部位ポート器具を代替的に用いて体腔に接近することができる。例示の外科的訓練器具が2011年9月29日に発行された米国特許第8,764,452号明細書(発明の名称:Portable Laparoscopic Trainer)に記載されており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。外科的訓練器具は、腹腔鏡下または他の低侵襲外科的処置を練習するのに特に適している。
【0017】
外科的訓練器具は、少なくとも1つのレッグによって基部から間隔を置いて配置された状態でこれに連結された頂部カバーを有する。複数のレッグが頂部カバーを離隔させるために用いられるのが良い。外科的訓練器具は、患者の胴、例えば腹部を真似るよう形作られている。頂部カバーは、患者の前方表面を表しており、頂部カバーと基部との間の空間は、器官が存在する患者の内部または体内腔を表している。外科的訓練装置は、患者が手術手技を受ける場合の模擬(シミュレーション)において種々の手術手技およびこれらと関連した器械を教示し、練習し、そして実証するための有用なツールである。外科用器械は、組織模擬領域を通るとともに頂部カバーにあらかじめ設けられた孔を通ってキャビティ中に挿入される。種々のツールおよび技術を用いて頂部カバーを穿通し、それにより頂部カバーと基部との間に配置された模擬臓器または練習用モデルに対して模擬手技を実施することができる。基部は、模擬組織モデルまたは生きている組織をステージングしまたは保持するためのモデル受け入れ領域またはトレーを有する。基部のモデル受け入れ領域は、モデルを定位置に保持するフレーム状要素を有している。模擬組織モデルまたは生きている器官を基部上に保持するのを助けるため、引っ込み可能なワイヤに取り付けられたクリップが複数の場所に設けられている。引っ込み可能なワイヤは、伸長され、次にクリップ留めされて組織モデルを組織模擬領域の実質的に下の定位置に保持する。組織モデルを保持する他の手段としては、モデル受け入れ領域内で基部に取り付けられた面ファスナー式締結材料のパッチが挙げられ、この面ファスナー型締結材料のパッチは、モデル10に取り付けられた面ファスナー式締結材料の補足し合う小片に取り外し可能に連結可能である。
【0018】
ビデオディスプレイモニタが頂部にヒンジ留めされている。ビデオモニタは、画像をモニタに送る種々の視覚的システムに接続可能である。例えば、あらかじめ設けられた孔またはキャビティ内に設けられたウェブカム(ウェブカメラ)のうちの一方を通って挿入され、そして模擬手技を観察するために用いられる腹腔鏡をビデオモニタおよび/またはモバイルコンピューティング装置に接続して画像をユーザに提供するのが良い。また、音声記録または送り出し手段もまた提供されて訓練装置と一体化され、それにより音声および視覚的機能を提供するのが良い。携帯式記憶装置、例えばフラッシュドライブ、スマートフォン、ディジタルオーディオもしくはビデオプレーヤまたは他のディジタルモバイル装置もまた実証目的で訓練手技を記録するとともに/あるいはあらかじめ記録された映像をモニタ上にプレイバックするために設けられる。当然のことながら、音声視覚的出力をモニタよりも大きなスクリーンに提供する接続手段が設けられる。別の変形例では、頂部カバー16は、ビデオディスプレイを備えておらず、ラップトップ型コンピュータ、モバイルディジタル装置またはタブレットと接続し、これをワイヤまたはワイヤレスで訓練装置に接続する手段を含む。
【0019】
組立て時、頂部カバーは、レッグが実質的に周囲に沿って配置されるとともに頂部カバーと基部との間に相互に連結された状態で基部の真上に位置決めされる。頂部カバーと基部は、実質的に同一の形状および寸法のものでありかつ実質的に同一の周囲外形を有している。内部キャビティは、視界から部分的にまたは完全に隠されている。レッグは、周囲光が内部キャビティをできるだけ多く照明することができ、しかも有利には、携帯性に都合がいいようにできるだけ軽量化をもたらすために開口部を有している。頂部カバーは、レッグから取り外し可能であり、レッグは、基部に対して取り外し可能でありまたは基部に対してヒンジ等により折り畳み可能である。したがって、非組立て状態の訓練装置は、携帯を容易にする減少高さを有している。本質的には、外科的訓練装置は、ユーザからは隠されている模擬本体キャビティを備えている。本体キャビティは、少なくとも1つの組織模擬領域および/または頂部カバーに設けられた孔を介してアクセス可能である少なくとも1つの手術モデルを受け入れるよう構成されており、ユーザは、孔を通ってモデルにアクセスして腹腔鏡下または内視鏡下低侵襲手術法を練習することができる。
【0020】
モデルの任意の部分を1種類または2種類以上の有機塩基ポリマーで作ることができ、かかる有機塩基ポリマーとしては、ヒドロゲル、単独重合体ヒドロゲル、多重合体ヒドロゲル、ゴム、ラテックス、ニトリル、タンパク、ゼラチン、コラーゲン、ソイ、非有機塩基ポリマー、例えば熱可塑性エラストマー、クラトン、シリコーン、フォーム、シリコーンを主成分とするフォーム、ウレタンを主成分とするフォーム、およびエチレンビニルアセテートフォームなどが挙げられるがこれらには限定されない。任意の塩基ポリマー中には、1種類または2種類以上の充填剤、例えば布、織り繊維または不織繊維、ポリエステル、ナイロン、コットンおよびシルクを採用することができ、導電性充填剤材料、例えば黒鉛、白金、銀、金、銅、その他の添加剤、ゲル、油、コーンスターチ、ガラス、ドロマイト、炭酸塩鉱物、アルコール、デドナ(deadner)、シリコーン油、顔料、フォーム、ポロキサマー(poloxamer)、コラーゲン、ゼラチンなどを採用することができる。用いられる接着剤としては、シアノアクリレート系、シリコーン系、エポキシ系、スプレー型接着剤、ゴム系接着剤などが挙げられるがこれらには限定されない。
【0021】
本明細書において開示した実施形態および変形例に対して種々の改造を行うことができることは言うまでもない。したがって、上述の説明は、本発明を限定するものと解されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解されるべきである。当業者であれば、本発明の範囲および精神の範囲内で他の改造例を想到するであろう。
また、好ましい構成態様として、本発明を次のように構成することもできる。
10. 模擬組織構造体を製造する方法であって、
マンドレルを用意するステップと、
湿ったシリコーンの第1の層を前記マンドレルに被着させるステップと、
前記湿ったシリコーンの第1の層を硬化させて中央ルーメンを備える第1の管状構造体を作製するステップと、
シリコーンの幅の狭いストリップを用意するステップと、
前記幅の狭いストリップを前記第1の管状構造体に沿って長手方向に被着させるステップと、
湿ったシリコーンの第2の層を前記第1の管状構造体および前記シリコーンの幅の狭いストリップに被着させるステップと、
前記湿ったシリコーンの第2の層を硬化させるステップと、
前記第1の層、前記第2の層および前記幅の狭いストリップを前記マンドレルから取り外すステップとを含む、方法。
11. 前記幅の狭いストリップを前記第1の管状構造体にくっつけるステップを更に含む、上記10記載の方法。
12. 穴を前記中央ルーメンに作るステップと、
前記穴中に挿入可能な寸法および形態の第2の管状構造体を用意するステップと、
前記第2の管状構造体を前記穴中に挿入するステップと、
前記第2の管状構造体を前記第1の管状構造体に取り付けるステップとを更に含む、上記10記載の方法。
13. シリコーンの幅の狭いストリップを用意する前記ステップは、色が白色であるシリコーンの幅の狭いストリップを用意するステップを含み、前記第1の層および前記第2の層は、色が白色である、上記10記載の方法。
14. シリコーンの幅の狭いストリップを用意する前記ステップは、前記幅の狭いストリップの長手方向長さに沿って比較的細幅の側方部分が散在して設けられた1つまたは2つ以上の広幅側方部分を有する幅の狭いストリップを用意するステップを含み、細長いマンドレルを用意する前記ステップは、長手方向軸線に沿って縮小直径の部分を有する細長いマンドレルを用意するステップを含み、幅の狭いストリップを被着させる前記ステップは、前記1つまたは2つ以上の広幅側方部分を前記縮小直径の前記部分に整列させるステップを含む、上記10記載の方法。
15. マンドレルを用意する前記ステップは、近位部分および遠位部分を備えたマンドレルを用意するステップを含み、前記マンドレルの前記近位部分は、長手方向軸線および実質的に円筒形の形状を定めるとともに第1の直径を有し、前記マンドレルの前記遠位部分は、前記第1の部分に対して角度が付けられるとともに前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する、上記10記載の方法。