【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様において、液体物質で充填されたカートリッジまたはシリンジの少なくとも1つの物理的または化学的パラメータを測定するためのセンサが提供される。通常、カートリッジには液体薬剤で充填される。
【0013】
センサは、カートリッジまたはシリンジのバレルの外周に配置可能な平面の可撓性箔を含む。さらに、センサは、前記箔に配置された少なくとも第1および第2の測定電極を含む。電極は、通常、互いに空間的に分離されて、カートリッジの側壁の半径方向に対向するセクションにおける第1および第2の電極の配置を有効にする。一般に、測定電極は任意の形状であってよい。第1および第2の測定電極は、バレルの側壁の外周に配置されまたは取り付けられたときに互いに分離して、カートリッジの少なくとも一部およびそれに含まれる液体物質が第1および第2の測定電極間に位置するようになっている。
【0014】
センサはまた、前記箔に配置された少なくとも第1および第2の接点電極を含む。センサは、前記箔に配置され、第1および第2の測定電極に接続されたプロセッサをさらに含む。第1の接点電極および第2の接点電極はプロセッサに接続される。このように、第1および第2の測定電極は、プロセッサを介して第1および第2の接点電極に接続される。したがって、2つの接点電極は、外部電気エネルギー供給部、および場合により、プロセッサと外部デバイスとの無線通信を可能にするトランシーバなどのさらなる信号処理手段への明確な電気接触をもたらす。
【0015】
第1および第2の接点電極は、特に、プロセッサならびに第1および第2の測定電極との有線エネルギー供給部を提供する。さらに、第1および第2の接点電極は、プロセッサにより、かつ第1および/または第2の測定電極により取得した、または発生した電気信号の有線伝送を行う。
【0016】
センサは、前記箔に配置され、プロセッサに接続されたトランシーバをさらに含む。カートリッジの外周に取り付け可能な共通の弾性箔に設けられた測定電極、プロセッサ、およびトランシーバにより、略完全かつ十分に機能するが小型で低コストのセンサをカートリッジに直接設けることができる。トランシーバは、コンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、またはスマートウォッチ、または類似の個人用電子デバイスなどの外部デバイスと無線通信するように構成される。トランシーバを無線周波(RF)トランスポンダとして実施して、Bluetooth(登録商標)、Wi−FiまたはNFCなどの標準通信プロトコルを介して外部電子デバイスと通信することができる。あるいは、トランシーバを、例えば赤外線スペクトル域で動作する光送信機として実施してもよい。そのような構成において、トランシーバはIRDAインターフェースを含むことができる。
【0017】
一般に、プロセッサは、適切なエネルギー供給部を備えた薬物送達デバイス内に正確に組み付けられたとき、電気エネルギー供給部と電気接触したセンサに電気エネルギーが供給されるとすぐに、測定電極から取得可能な電気信号を取得し処理するように構成される。例えばマイクロコントローラとして構成されたプロセッサは、測定データのシーケンスを記憶する記憶装置またはメモリを含むことができる。さらに、プロセッサは、通常、例えば所定のスケジュールに従って様々な測定ルーティンを自動で実行するようにプログラム可能である。例えば、プロセッサは、1日に数回、例えば1時間おきなど一定時間ごとにカートリッジの温度および/または内容物測定を実行し開始するようにプログラムすることができる。このように、カートリッジが晒される温度などの環境パラメータを、センサで、したがってカートリッジ自体で連続して常時モニタすることができる。トランシーバおよびプロセッサの配置は、電気エネルギー供給部により電力供給されるアクティブRFIDチップまたはアクティブRFIDタグを構成または形成することができる。
【0018】
第1および第2の接点電極は、プロセッサと少なくとも電源との明確な電気インターフェースを提供する。通常、電源はセンサの外側にセンサから離れて位置する。電源は、通常、薬物送達デバイス内に配置されるか、または通常、薬物送達デバイスの外向き部分に取り付けられる。センサがカートリッジに取り付けられ、または組み付けられ、前記カートリッジが薬物送達デバイス内に配置されると、第1および第2の接点電極は電源に電気接触して、カートリッジの物理的または化学的パラメータの測定を有効にする。
【0019】
センサには、アセンブリ空間を必要とし、センサを製造するためのコストを実質的に増加させ得るそれ自体のエネルギー供給部がない。電気エネルギー供給部をセンサの外側に配置することにより、センサは、カートリッジを交換しなければならなくなると廃棄されることになる使い捨てセンサとして特に適している。
【0020】
トランシーバを箔に、したがってセンサに直接取り付け、配置することにより、接点電極を、センサ用の、したがってそのプロセッサ、測定電極、およびトランシーバのエネルギー供給手段としてのみ機能するように構成することができる。データ収集、データ処理、およびデータ送信のすべてを、センサ自体で実行することができる。センサと薬物送達デバイスとの間にデータ通信リンクは必要ない。センサは、薬物送達デバイス内に配置されたときのみ、電気エネルギーを必要とする。このように、接点電極とエネルギー供給部との間に確立される電気接触を、かなり簡単かつ経済的に実施することができる。
【0021】
実施形態によれば、センサは、平面の可撓性箔、第1および第2の測定電極、第1および第2の接点電極、プロセッサ、ならびにトランシーバのみから構成される。このように、センサを動作させるために必要なセンサアセンブリのさらなる部材、すなわち電気エネルギー源、および場合により電子データ記憶装置は、離れて、例えば薬物送達デバイス内または薬物送達デバイスに位置する。したがって、特に再利用可能な薬物送達デバイスの場合、センサを、カートリッジに恒久的に締結され固定された使い捨てセンサとして容易に実施することができる。カートリッジが空になったとき、センサが取り付けられたカートリッジ全体を廃棄することになる。センサが平面の可撓性箔、多くの電極、および非常に小さいプロセッサしか含まないため、かなり環境にやさしい処分およびかなり経済的な製造を行うことができる。ここで、トランシーバを、可撓性箔上に印刷または被覆された様々な導体から構成されたRFアンテナとして実施してもよい。
【0022】
バッテリなどの、センサアセンブリのかなり高価で比較的大きい部材を、離してセンサの外側に、しかし薬物送達デバイスの内側に設け、または薬物送達デバイスに取り付けることができる。そのようなデバイスの再利用可能な特徴により、少なくともデータ取得、データ記憶、およびデータ送信用の電気エネルギー供給部を薬物送達デバイス内に配置することができ、かつ複数のセンサまたはそのようなセンサを備えたカートリッジと共に連続して使用することができる。
【0023】
別の実施形態によれば、第1および第2の接点電極は、箔の長手方向端部セクションに配置される。通常、平面の可撓性箔は、長手方向(z)および横方向または周方向(u)により画成される平面に延びる。長手方向および横方向は、通常、互いに対して垂直に延びる。平面の可撓性箔は、カートリッジのバレルの側壁の外周に巻き付けられるまたは取り付けられるように構成される。カートリッジに巻き付けられるまたは取り付けられると、箔の長手方向は、通常、軸方向に細長いカートリッジの長手方向または軸方向に平行に延びるが、平面の可撓性箔の横方向または周方向は、カートリッジの側壁の管状または円形周囲に沿って延びる。
【0024】
第1および第2の接点電極を箔の長手方向端部セクションに配置することにより、接点電極は平面の可撓性箔の遠位端または近位端を形成する。第1および第2の接点電極は、カートリッジのバレルの外周に取り付けられるまたは配置されると、管状カートリッジの遠位端もしくは遠位端近くまたは近位端もしくは近位端近くに配置される。このように、平面の可撓性箔の遠位端または近位端セクションのみを、第1および第2の接点電極が占有する。したがって、平面の可撓性箔の残りの大部分を、少なくとも第1および第2の測定電極、トランシーバおよび/またはプロセッサの配置のために使用することができる。
【0025】
さらなる実施形態によれば、第1および第2の接点電極は、箔の共通の長手方向端部セクションに配置される。例えば、第1および第2の接点電極は、いずれも箔の遠位端近くまたは遠位端に配置される。あるいは、第1および第2の接点電極は、箔の近位端セクション近くまたは近位端セクションに配置される。
【0026】
近位および遠位という用語は、薬物送達デバイス内の平面の可撓性箔およびそれぞれのカートリッジの意図した方向を指す。遠位方向は、薬物送達デバイスの投薬端を指す。薬物送達デバイスが注射デバイスとして実施されるとき、薬物送達デバイスの遠位端は患者の注射部位側を向く。近位端または近位方向は反対方向を向く。ペン型注射器のような注射デバイスとして実施されるとき、薬物送達デバイスの近位端は、ユーザが注射手順を構成、設定、および実行するように手で操作可能である。
【0027】
別の実施形態において、第1および第2の接点電極は、箔の両長手方向端部セクションに配置される。そのような実施形態において、例えば、第1の接点電極は平面の可撓性箔の近位端に位置し、第2の接点電極は平面の可撓性箔の遠位端に位置することが考えられる。ここで、少なくとも2つの接点電極は、間に位置する少なくとも第1および第2の測定電極と共に、平面の可撓性箔の長手方向の境界を形成する。箔上の第1および第2の接点電極の特定の配置および位置は、センサアセンブリ全体の特定の実施ならびにカートリッジおよびそれぞれの薬物送達デバイスの特定の構成に応じて決まる。通常、第1および第2の接点電極は、平面の可撓性箔を備えたカートリッジが薬物送達デバイス内に正確に組み付けられたときに電気接触が接点電極と電気エネルギー供給部との間に形成されるような、平面の可撓性箔上の位置に配置される。
【0028】
別の実施形態によれば、第1および第2の接点電極は長手方向に分離し、横方向または周方向に略平行に延びる。第1および第2の接点電極を長手方向に分離することにより、例えば、薬物送達デバイス内または薬物送達デバイスでそれぞれの軸方向距離において対応して位置し配置された第1および第2の接点要素を用いて、各接点電極を別々に電気エネルギー供給部に電気的に接続することができる。さらに、第1および第2の接点電極が横方向または周方向に互いに略平行に延びるため、平面の可撓性箔がカートリッジのバレルの側壁に巻き付けられたときに、リング状の接点電極構造をカートリッジの外周に形成することができる。
【0029】
通常、平面の可撓性箔の巻付けならびに第1および第2の接点電極の横方向または周方向延長部は、各電極がカートリッジのバレルの外周に沿って閉じたリングを概ね形成するようになっており、前記リングは、可撓性箔の巻付けまたはカートリッジのバレルの長手方向もしくは軸方向に略垂直に延びる単一の横断面に位置する。このように、第1および第2の接点電極の各々は、カートリッジが薬物送達デバイス内で任意の方向に位置するときに回転的に不変である特定の軸方向接点構造を形成する。
【0030】
さらなる実施形態によれば、第1および第2の接点電極は、概ね箔の横方向寸法全体にわたって延びる。通常、箔の横方向寸法全体は、カートリッジのバレルの外周に概ね正確に一致し対応する。通常、平面の可撓性箔は、重なることなくバレルの外周全体を概ね覆うことにより、バレルの外周に巻付け可能である。第1および第2の接点電極が概ね箔の横方向寸法全体にわたって延びるときに、略閉じた第1および第2の接点電極構造を得ることができる。このように、回転不変の接点電極構造をカートリッジの外周に設けることができる。
【0031】
例えば第1および第2の接点電極のうちの少なくとも一方が、接点電極の対向して位置する横方向端部間に小さい間隙が残るようにカートリッジに巻き付けられる他の実施形態において、薬物送達デバイスの対応する接点要素は、横方向間隙サイズを超える横方向延長部を有する。このように、接点要素と接点電極との電気接触には、薬物送達デバイス内の接点要素に対するカートリッジの任意の回転方向が常に与えられる。
【0032】
別の実施形態において、箔は略透明である。さらに、第1および第2の測定電極のうちの少なくとも一方または第1および第2の接点電極のうちの少なくとも一方は、箔上またはその内に印刷または被覆された導電性構造を含む。
【0033】
箔自体は、通常、電気的に絶縁されている。このように、箔は、実際に、少なくとも第1および第2の測定電極の両方ならびに少なくとも第1および第2の接点電極のための可撓性平面基板または機械的支持部として作用する。平面の可撓性箔上または可撓性箔内にすべての電極を印刷または被覆することにより、様々な電極、すなわち第1および第2の測定電極ならびに第1および第2の接点電極が互いに対して本質的に正確に位置する。第1および第2の測定電極ならびに第1および第2の接点電極の相対位置および/または相対方向は、恒久的に持続し、最初に平面の可撓性箔がカートリッジのバレルの外周に巻き付けられたときにのみ明確な修正を受けることができる。トランシーバおよびプロセッサもセンサの箔上にある状態では、これらの相互の距離および方向も変化しないままであるため、高度に再現性があり正確なセンサの製造および操作性が可能になる。
【0034】
電極は、アルミニウム、金、銀、またはこれらの混合物および合金などの適切な導電性材料を含むことができる。電極を、例えばスクリーン印刷により可撓性箔に印刷することができる。あるいは、電極を、スパッタリング、溶射被覆などの任意の適切な薄膜堆積技術により、または様々な化学気相堆積技法により、平面の可撓性箔に被覆してもよい。箔は、通常、透明なポリマーを含むか、または透明なポリマーから作られる。箔は、材料すなわち:ポリカーボネート、ポリアミド、またはポリ塩化ビニル(PVC)のうちの少なくとも1つまたはこれらの組合せを含むことができる。
【0035】
さらなる実施形態によれば、第1および第2の測定電極ならびに第1および第2の接点電極は、箔の共通の面に位置する。あるいは、第1および第2の測定電極は箔の一方の面に位置し、第1および第2の接点電極は箔の反対側の面に位置する。それにより、プロセッサは、箔を通って延びる測定電極と接点電極とを電気接触させることができる。プロセッサを、箔のいずれかの面に配置することができる。しかしながら、プロセッサを箔に組み込むことも考えられる。プロセッサを箔の凹部に組み付けて、センサの一部が箔の対向して位置する両平面から突出するようにしてもよい。
【0036】
第1および第2の測定電極は、箔の同じ面に常に位置する。また、第1および第2の接点電極は、可撓性箔の同じ共通の面に常に位置する。
【0037】
第1および第2の接点電極は、通常、箔がカートリッジのバレルの外周に巻き付けられたときに、平面の可撓性箔の外向き面に配置される。そのような構成により、測定電極も巻き付けられた箔の外向き面に位置することが一般に考えられる。容量測定電極として実施されるとき、平面の可撓性箔は誘電性であるか、または誘電電荷を透過する。
【0038】
別の実施形態において、少なくとも第1および第2の接点電極は巻き付けられた箔の外向き部分に位置し、少なくとも第1および第2の測定電極は巻き付けられた箔の内向き部分に位置することが考えられる。そのような実施形態において、平面の可撓性箔は多層構造を含み、第1の測定電極を第1の接点電極に電気的に接続する少なくとも1つの導体が平面の可撓性箔を通って延びることが考えられる。
【0039】
無線データ送信の目的で、例えばRFアンテナ構造を含むトランシーバが、巻き付けられた、または巻かれたセンサの外向き面に位置することが特に有利である。通常、トランシーバと測定電極とは箔の反対側に位置する。これらはプロセッサを介してのみ電気的に接触することができる。
【0040】
別の実施形態において、少なくとも2つの測定電極は、静電容量測定電極または温度測定電極として構成される。静電容量測定電極として実施されるとき、第1および第2の測定電極は、通常、箔がカートリッジのバレルに巻き付けられたときにカートリッジの長手方向延長部全体に沿って延びる。測定電極は、管状バレルの周囲の半分よりも小さい横方向または周方向延長部を有する略矩形の構造を含むことができる。通常、第1および第2の測定電極は、略同一の幾何学的形状である。
【0041】
略矩形の構造とは別に、測定電極は軸方向にテーパ構造を含んでもよい。さらに、電極は台形、三角形であってよく、または矩形および三角形の組合せを含んでもよい。特に軸方向に一定に変化する幾何学的構造を有する電極を利用することにより、例えば投薬手順中にカートリッジのピストンが直線軸方向変位を受けるときに、それぞれの直線的に変化する容量信号を取得することができる。したがって、電極の幾何学的形状により、容量測定の正確性および精度を向上させることができる。さらに、複数の測定電極が平面の可撓性箔の長手方向延長部に沿って配置され、同じまたは重なる長手方向位置にある対の測定電極が、対ごとに特定のプロセッサに接続可能であることが考えられる。カートリッジのバレルの外周に沿った異なる長手方向位置に配置される複数対の第1および第2の測定電極により、静電容量測定の空間分解能、およびしたがってピストンの位置のかなり高い空間分解能を、様々な対の測定電極に接続されたプロセッサにより測定し判定することができる。
【0042】
温度測定電極として実施されるとき、電極は、カートリッジの側壁に沿って対ごとに、かつ長手方向に交互に配置された対のヒータおよびサーミスタを含むことができる。通常、第1の測定電極は、いくつかの平行に向いているが長手方向に分離したヒータを含むことができ、第2の測定電極は、第1の測定電極のヒータ間に長手方向に置かれた、対応して配置されたサーミスタを含むことができる。第1の測定電極により、熱エネルギーをカートリッジの側壁に、様々なサーミスタにより、したがって第2の測定電極により蓄えることができ、カートリッジ内のピストンの位置によって生じる温度の不規則性を測定し判定することができる。通常、ヒータまたはサーミスタを形成する第1および第2の測定電極の各枝部は、センサアセンブリのプロセッサに別々に接続可能である。このように、カートリッジの側壁にわたる熱励起および熱伝達を、第1および第2の測定電極の隣接する枝部の距離に従う空間分解能を用いてモニタすることができる。温度測定電極として構成され実施されるとき、測定電極は温度検出アレイまたは熱流センサとして作用する。
【0043】
そのような温度測定配置の実施は、電気エネルギー供給部により十分な電力を供給できるときに特に有利である。例えばバッテリ、太陽電池、またはこれらの組合せの形の電気エネルギー供給部を薬物送達デバイスにおいて実施することにより、温度測定のための十分な電力をかなり経済的な方法で容易に供給することができる。
【0044】
別の実施形態において、トランシーバおよびプロセッサは、パッシブRFIDチップまたはパッシブRFIDタグとして構成される。ここで、トランシーバは、付近のRF場から電気エネルギーを引き出して取得し、かつプロセッサおよび/または電極に電気エネルギーを供給して測定を実行する、かつ/または接点電極から取得した測定データを処理する、かつ/または測定もしくは処理されたデータを別の電子デバイスに送信するように動作可能であり、かつ構成される。
【0045】
実際には、センサアセンブリを、NFCアセンブリのアクティブおよびパッシブRFIDのハイブリッド型として実施してもよい。例えば、所定の時間間隔でデータを定期的に記憶するために、付近のRF場の存在から独立して、電気エネルギー供給部によりセンサアセンブリに常時電力が供給される。加えて、センサアセンブリを、スマートフォンなどの外部電子デバイスにより提供され発生し得るRF場に晒されたときにトランシーバを介して電気エネルギーを取得し引き出すように構成してもよい。そのようなパッシブな挙動は、エネルギーを節約し、デバイスの電力管理を最適化するのに特に有用となり得る。バッテリの寿命をこのようにして延ばすことができる。
【0046】
プロセッサとトランシーバとが、デフォルトごとにパッシブモードに切り替わり、印加されたRF場から引き出された電気エネルギーに基づいてできる限り長く動作するように構成されると特に有利である。適切なRF場が存在しない状況において、プロセッサは、電気エネルギー供給部、例えばバッテリから取得した電気エネルギーに基づいて測定手順を実行するまたは始動させることができる。例えばカートリッジまたはシリンジの状態もしくは用量履歴をモニタするために、電気エネルギー供給部、したがってバッテリが、常時プロセッサに電力供給し続けることも考えられる。RF場から追加の電力が取得されたときのみ、プロセッサおよびトランシーバは外部電子デバイスと無線通信する。そのような手法は非常にエネルギー効率が高いため、バッテリの寿命を延ばす。
【0047】
別の態様によれば、本発明は、液体物質で充填された、通常、液体薬剤で充填された管状バレルを含むカートリッジに関する。カートリッジは、バレルの側壁の外周に巻き付けられた、前述のセンサをさらに含む。
【0048】
センサを配置可能または取り付け可能なカートリッジは、例えば内部に含まれる液体物質に対して略不活性であるガラスまたは他の材料から作られた管状バレルを含むことができる。カートリッジは、遠位に位置し穿孔可能な出口を含むことができ、この出口は穿孔可能なセプタムによって封止され、両頭注射針などの穿孔アセンブリを用いて遠位封止を穿刺することによりカートリッジの内部にアクセスするようになっている。遠位出口とは反対側で、カートリッジ、特にその管状バレルは、通常、カートリッジ内で摺動可能に変位可能なピストンにより封止される。ピストンは、遠位を向いた駆動力の影響により、バレルに対して遠位方向に摺動可能に変位可能であり、この駆動力は、通常、薬物送達デバイスのプランジャまたはピストンロッドが遠位方向に前進して、遠位を向いた圧力を前記ピストンに及ぼすことによって及ぼされる。センサは、特に、そのようなカートリッジ専用であるが、他の方法で、例えばバイアル、シリンジ、アンプル、ボトル、または可撓性バッグを含む他の種類の薬剤容器に使用してもよい。
【0049】
カートリッジおよびセンサのアセンブリを、カートリッジの内容物の消費または投薬後に全体が廃棄される使い捨てユニットして構成することができる。通常、センサの可撓性箔が略透明であるため、センサ、したがって電極を上に有する可撓性箔がカートリッジに取り付けられているときでも、カートリッジの充填レベルを目視検査することができる。少なくとも電極は透明な種類のものであってよい。例えば、電極は、導電性かつ略透明なインジウムスズ酸化物(ITO)を含むことができる、またはこれから構成される。カートリッジの内容物、特に液体薬剤が凝固もしくは凝結、または他の有害な影響もしくは現象を受けているかどうかを直感的に制御するために、カートリッジの側壁を完全に覆うセンサをさらに用いるカートリッジ内部の目視検査が特に有利である。
【0050】
別の実施形態において、センサは、カートリッジに恒久的に取り付けられ、その管状側壁部分全体を覆う。そのような構成において、センサ、特に平面の可撓性箔が、可撓性箔の上面または下面に持続的に印刷された視覚スケールを備えると特に有利であり得る。カートリッジの瞬間的な充填レベルを視覚表示するために、スケールは様々な符号、数字、または他の記号を含むことができる。例えば、通常、可撓性箔の軸方向または長手方向に沿って分離された、多くの等距離に配置されたスケール項目をスケールに設けることにより、例えばガラスバレルの外周にそのようなスケール項目を直接設ける必要がなくなる。視覚スケールをセンサ、特にセンサの可撓性箔に設けることにより、かつセンサを明確かつ正確な、高度に再現性のある方法でカートリッジのバレルの外周に取り付けることにより、視覚的に知覚可能なスケール項目をガラスバレル上に設けるかなり経済的でわかりやすい容易な方法が提供される。
【0051】
さらなる実施形態によれば、センサ、特にその平面の可撓性箔はカートリッジのバレルに接着により取り付けられる。センサとカートリッジとを接着により取り付けるための接着剤を、箔が管状カートリッジに巻き付けられたときに半径方向内方を向く箔の一面に設けることができる。
【0052】
接着剤を、第1および第2の測定電極とは反対の箔の面に位置させてもよい。そのような構成において、測定電極は、箔がカートリッジに巻き付けられたときに半径方向外方を向く箔の外向き面に位置する。あるいは、測定電極が、巻き付けられた箔の内向き部分に位置することも考えられる。その場合、接着剤を測定電極間で長手方向および/または周方向に位置させることができる。センサがバレルに巻き付けられたときに、接着剤がカートリッジのバレルの外周とセンサの測定電極との間に半径方向に位置することも考えられる。
【0053】
別の実施形態によれば、センサの接点電極は、センサが管状バレルに巻き付けられたときに箔の外向き面に位置する。このように、接点電極にカートリッジの外側から容易にアクセスして、第1および第2の測定電極と少なくとも電気エネルギー供給部、プロセッサおよび/またはセンサアセンブリのトランシーバとの電気接続を確立することができる。
【0054】
別の態様によれば、本発明はさらに、液体薬剤の用量を投与するための薬物送達デバイスに関する。薬物送達デバイスは、前述のカートリッジを収容するハウジングを含み、カートリッジは、液体薬剤で充填され、カートリッジのバレル内に摺動可能に受け入れられたピストンを含む。薬物送達デバイスは、ピストンロッドまたはプランジャを通常有する駆動機構をさらに含んで、遠位を向いた駆動力をカートリッジのピストンに及ぼして、カートリッジの遠位に位置する出口を介して液体薬剤の用量を排出する。カートリッジの出口は、通常、両頭注射針を含む穿孔アセンブリと連結可能であり、この両頭注射針により、カートリッジ内部への流体移送アクセスを得ることができ、カートリッジから排出される薬剤を生物組織に直接注射することができる。
【0055】
通常、薬物送達デバイスは、可変かつユーザ設定可能なサイズの薬剤の用量を個々に可変に設定し、その後投薬するペン型注射器などの注射デバイスとして構成される。
【0056】
さらに、薬物送達デバイスは、カートリッジに取り付けられたセンサが薬物送達デバイス内に位置するときにセンサの第1および第2の接点電極に電気的に接続可能な電気エネルギー供給部を含む。
【0057】
別の実施形態によれば、薬物送達デバイスのハウジングは、カートリッジが組み付けられるカートリッジホルダを含む。再利用可能なデバイスとして実施されるとき、薬物送達デバイスのハウジングは、通常、遠位に位置するカートリッジホルダに解放可能に連結可能な近位に位置する本体を含む。カートリッジホルダと本体とを切り離すまたは解放することにより、カートリッジをカートリッジホルダ内に組み付けることができる。カートリッジに含まれる薬剤が完全に投薬されると、カートリッジを新しいカートリッジと交換することができる。このために、カートリッジホルダをハウジングから切り離すまたは解放することができる。
【0058】
カートリッジホルダの近位端から空のカートリッジを新しいカートリッジと交換した後、カートリッジホルダをハウジングの本体に再び取り付けるまたは再び組み付けることができる。さらに、さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスは使い捨てデバイスとして構成される。ここで、センサが取り付けられたカートリッジは、カートリッジホルダ内に容易に最初に配置され、このカートリッジホルダは、ハウジングの本体に解放不能に、したがって恒久的に連結される。この文脈において、解放不能な連結とは、強引な方法で、薬物送達デバイスのカートリッジホルダおよびハウジングのうちの少なくとも一方の完全性を損なうことによってのみ分離可能である取り外し不能な連結を意味する。
【0059】
使い捨てデバイスとして実施されるとき、センサアセンブリの少なくとも一部の電子部材、したがって電気エネルギー供給部が、薬物送達デバイスのハウジングに取り外し可能に連結可能な別個の付属デバイス内に位置することが特に有利である。このように、センサアセンブリ、特にその電気エネルギー供給部を繰り返し使用し、要求に応じて様々な使い捨て薬物送達デバイスに取り付けることができる。
【0060】
さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスは、エネルギー供給部に電気的に接続され、センサによる測定を開始し、またはトランシーバを用いた外部電子デバイスとの通信を開始する少なくとも1つの操作要素も含む。操作要素はユーザにより作動可能である。操作要素は、測定または通信、例えば外部電子デバイスとのデータ交換を始動させるためにユーザにより作動可能な押しボタンまたはダイヤルを含むことができる。それに加えて、または代替として、操作要素は外部電子デバイスで実行されるソフトウェアであってもよい。外部電子デバイスとセンサアセンブリのプロセッサとの通信リンクを確立したとき、操作要素を、ユーザにより選択可能なメニュー項目として、例えば外部電子デバイスのディスプレイ上に表示してもよい。
【0061】
操作要素により、カートリッジおよび特にカートリッジ内に含まれる液体物質の少なくとも1つの物理的または化学的パラメータの、ユーザにより作動可能な手動の測定を、要求に応じて始動させ開始することができる。
【0062】
別の実施形態によれば、電気エネルギー供給部は、バッテリと各々バッテリに電気的に接続可能な第1および第2の接点要素とを収容するコンパートメントを含む。第1および第2の接点要素は、ハウジングの貫通口を通ってさらに延びて、センサの第1および第2の接点電極にそれぞれ電気的に接続する。通常、コンパートメントには、取り外し可能または解放可能なクロージャを介して外側からアクセス可能である。クロージャを取り外すまたは開くことにより、コンパートメントの内部にアクセスする。このようにして、空のバッテリを新しいバッテリと交換または取り換えることができる。それに加えて、または代替として、バッテリは充電式バッテリであってよく、電気エネルギー供給部は、電気エネルギーをバッテリに蓄積し、発生させ、貯蔵するための太陽電池または他の種類の充電手段をさらに備えてもよい。
【0063】
さらなる実施形態において、コンパートメントは、カートリッジホルダ、カートリッジホルダの少なくとも遠位端を取り外し可能に覆う保護キャップに組み込まれ、またはコンパートメントは、ハウジングに取り外し可能に連結可能な付属デバイスに組み込まれる。通常、付属デバイスは、少なくとも1つの締結クリップを含むことができ、この締結クリップにより、付属デバイスは薬物送達デバイスのハウジングの特定の部分に取り外し可能に連結可能である。付属デバイスは、薬物送達デバイスのハウジングの本体に取り付け可能である。ここで、付属デバイスは、薬物送達デバイスのハウジングのカートリッジホルダに向かって延び、カートリッジホルダと半径方向に重なることができる。したがって、コンパートメントがカートリッジホルダまたは付属デバイスに組み込まれると、カートリッジホルダは側壁部分に貫通口を含むため、カートリッジに取り付けられたセンサの第1および第2の接点電極と電気エネルギー供給部の第1および第2の接点要素との電気接触をもたらすことができる。
【0064】
代替実施形態において、コンパートメントは、カートリッジホルダの少なくとも遠位端を取り外し可能に覆う保護キャップに組み込まれる。ここで、保護キャップおよびカートリッジホルダは貫通口を含み、この貫通口を通して、電気エネルギー供給部の第1および第2の接点要素とセンサの第1および第2の接点電極との電気接触をそれぞれ確立することができる。
【0065】
「センサアセンブリ」という用語は、本明細書で使用されるとき、測定電極、接点電極、プロセッサ、およびトランシーバを有するセンサを含み、かつ電気エネルギー供給部をさらに含むシステムを定義する。センサアセンブリの動作および完成は、センサを備えたカートリッジが薬物送達デバイス内に組み付けられたときに得られ、これにより、センサの第1および第2の接点電極と電気エネルギー供給部との電気接触が確立される。
【0066】
通常、第1および第2の測定電極、少なくとも第1および第2の接点電極、プロセッサ、ならびにトランシーバを有する少なくとも平面の可撓性箔は、カートリッジに組み付けられ恒久的に締結され、センサアセンブリの残りの電子部材、すなわち電気エネルギー供給部は薬物送達デバイスに組み付けられ、またはそのような電子部材は薬物送達デバイスに取り付けられる。このように、センサアセンブリを、薬物送達デバイスの様々な部材、すなわち薬物送達デバイスのハウジングおよび取り換えまたは交換可能なカートリッジの間で分割および分離することができる。
【0067】
センサおよびその平面の可撓性箔をある種のラベルとして実施してもよく、このようなラベルは、カートリッジの少なくとも1つの物理的または化学的パラメータの測定能力に加えて、カートリッジにラベル付けする、またはカートリッジを他の同一形状のカートリッジと区別するようにも動作可能である。電気エネルギー供給部は薬物送達デバイスに組み込まれるため、これを前記ラベルに設ける必要はない。このように、ラベルは小さく維持することができ、最小の空間しか必要としない。センサから離れて位置する電気エネルギー源によるセンサの駆動によって、比較的複雑な多機能センサの実施が可能になる。
【0068】
例えばバッテリを含む、離れて位置する電気エネルギー供給部は、プロセッサまたはプロセッサに接続された別個のメモリセルに記憶される用量履歴の作成などのセンサ機能をもたらし、これを有効にする。要求に応じて、取り込まれたまたは記録された用量履歴を、カートリッジ上に実際に位置するセンサアセンブリのトランシーバを介して、スマートフォンまたはコンピュータなどの外部電子デバイスに送信することができる。
【0069】
センサがカートリッジの充填レベルを判定可能であるだけでなく、その電極を、光透過測定を実行して混濁、凝集の形成、またはカートリッジ内に含まれる構成された凍結乾燥物の混合状態を検査するように構成してもよいことに一般に言及すべきである。そのような実施形態において、第1および第2の測定電極の少なくとも一方が光検出器を含み、第1および第2の測定電極の他方が光透過デバイスとして実施されることが考えられる。
【0070】
通常マイクロチップまたはマイクロコントローラの形のプロセッサ、およびトランシーバは、平面の可撓性箔に直接位置するため、これらはセンサに属し、センサの一体部材を形成する。このように、センサは、電気エネルギー供給部に電気的に接続されるとすぐに完全に動作可能である。プロセッサが箔に、したがってラベル型センサに直接取り付けられるため、測定電極と、薬物送達デバイス内のカートリッジの特定のアセンブリから略独立したプロセッサとの明確な電気接続がもたらされる。このように、測定電極とプロセッサとの非常に正確で高度に再現性のある電気接続がもたらされる。トランシーバもセンサの箔上に直接位置している状態では、トランシーバならびにそのプロセッサおよび測定電極との相互作用についても同じことが有効である。プロセッサおよび/またはトランシーバは数ミリメートルの小ささであってよい。プロセッサは、わずか1mm以下の領域の厚さを含むことができる。横方向および長手方向のプロセッサの寸法は2mm以下の小ささであってよい。したがって、平面の可撓性箔上へのセンサの直接の実施および配置は、大きいアセンブリ体積を必要とすることなく容易に実施可能である。
【0071】
プロセッサが箔に取り付けられ、プロセッサがセンサの一体部材であるため、液体物質または薬剤の種類などのカートリッジ特有の情報、製造日または有効期限などのプロセス関連データ、および特定のデータコードなどの偽造防止手段を、プロセッサまたはプロセッサに接続された別個のメモリセルに記憶させることができる。このようにして、カートリッジに関連する電子データをプロセッサに記憶させることができる。
【0072】
電気エネルギー供給部を薬物送達デバイス内または薬物送達デバイス上に配置することにより、エネルギー供給部は再利用可能なタイプであってよく、カートリッジに取り付けられたセンサは使い捨て式であってよい。薬物送達デバイス内にカートリッジを組み付けたときに電気エネルギー供給部とセンサとの電気接触を確立することにより、カートリッジが薬物送達デバイス内に位置する限り、プロセッサおよび/またはトランシーバに恒久的または頻繁に電力供給することができる。このように、プロセッサ、トランシーバおよびセンサを、カートリッジの寿命の間中、カートリッジ関連データを恒久的に収集し、恒久的または頻繁に取り込むまたは記憶するように動作させることができる。そのようなデータは、カートリッジの用量履歴および温度履歴を含むことができる。収集されたデータの無線送信は、外部の要求に応じて、または例えばプロセッサに記憶された所定のスケジュールに従って定期的に頻繁に実行することができる。
【0073】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0074】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0075】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0076】
エキセンジン−4は、例えば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0077】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0078】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0079】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0080】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0081】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0082】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(例えば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0083】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0084】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0085】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0086】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0087】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0088】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、例えば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類、例えば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0089】
薬学的に許容される溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0090】
特許請求の範囲で定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を行ってもよいことが当業者にさらに明らかになろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用される参照符号は本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないことに留意されたい。
【0091】
以下で、図面を参照しながら、表示配置、駆動機構、および薬物送達デバイスの実施形態について詳細に説明する。