特許第6862441号(P6862441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6862441セルロース系短尺繊維及び長尺繊維の止血混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862441
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】セルロース系短尺繊維及び長尺繊維の止血混合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20210412BHJP
   A61L 26/00 20060101ALI20210412BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20210412BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20210412BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20210412BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20210412BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20210412BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20210412BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61L26/00
   A61L31/04 100
   A61L31/04 120
   A61L31/12 110
   A61L31/14
   A61L31/16
   A61L31/02
   A61P7/04
   A61K47/02
   A61K47/36
   A61K47/42
   A61K47/14
   A61P43/00 121
   A61P31/00
   A61P17/02
【請求項の数】21
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-523454(P2018-523454)
(86)(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公表番号】特表2018-538259(P2018-538259A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】IL2016000020
(87)【国際公開番号】WO2017077526
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年9月4日
(31)【優先権主張番号】242496
(32)【優先日】2015年11月8日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】242497
(32)【優先日】2015年11月8日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】62/252,785
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/252,796
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511203455
【氏名又は名称】オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イラン・エレツ
(72)【発明者】
【氏名】ファインゴールド・オムリ
(72)【発明者】
【氏名】フレイザス・ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】イーブリ・ローネン
(72)【発明者】
【氏名】ルーニー・ドウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ダーナラジ・スリデビ
(72)【発明者】
【氏名】ギャロウェイ・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ダンカー・ウォルター
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00216378(EP,A1)
【文献】 特表2013−523296(JP,A)
【文献】 特表2011−502635(JP,A)
【文献】 特表平09−504719(JP,A)
【文献】 特表2015−517388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61L 15/00−33/18
WPI
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セルロース及び/又は酸化再生セルロースで構成される長尺セルロース系繊維及び微細セルロース系繊維を含む止血繊維及び/又は凝集体組成物であって、前記長尺セルロース系繊維及び前記微細セルロース系繊維が、それぞれ組成物重量全体の5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率であり、前記長尺セルロース系繊維のサイズ分布が、177μm超かつ350μm未満のD90、及び95μm超かつ167μm未満のD50であり、前記微細セルロース系繊維のサイズ分布が、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である、止血繊維及び/又は凝集体組成物。
【請求項2】
a)亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及び銅から選択される二価カチオン、
b)正に荷電したペプチド及び/又は多糖類、
c)ωアミノカルボン酸、並びに
d)上記のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む、請求項1に記載の止血組成物。
【請求項3】
プロタミン塩、カルシウム塩、及び、ε−アミノカプロン酸(εACA)を更に含む、請求項1に記載の止血組成物。
【請求項4】
前記長尺セルロース系繊維及び前記微細セルロース系繊維が、酸化再生セルロース繊維である、請求項1〜のいずれか一項に記載の止血組成物。
【請求項5】
75〜420μmの範囲のサイズを有する凝集体の形態である、請求項1〜のいずれか一項に記載の止血組成物。
【請求項6】
止血組成物の作製方法であって、
a)長尺繊維及び微細繊維を形成するようにセルロース系材料のサイズを低減する工程であって、前記セルロース系材料は酸化セルロース及び/又は酸化再生セルロース繊維であり、前記長尺繊維のサイズ分布が、177μm超のD90、及び95μm超のD50であり、前記微細繊維のサイズ分布が、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である、低減する工程と、前記長尺繊維及び前記微細繊維を、それぞれ5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率で混合して、それにより止血繊維組成物を得る工程と、を含み、
b)任意選択で、工程a)で得られた前記止血繊維組成物が、凝集体の形態の止血組成物を得るための更なる工程に供され、前記工程が、i)前記止血繊維組成物圧密化して、圧密化止血繊維組成物を得ることと、任意選択で、ii)前記圧密化止血繊維組成物のサイズを低減することと、を含む、方法。
【請求項7】
前記長尺繊維の前記D90が、350μm未満であり、前記D50が、167μm未満である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記サイズの低減が、粉砕によって実施される、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
工程a)における前記サイズの低減には、前記セルロース系材料を切り開く及び/又は切断する工程が先行する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)における前記サイズの低減が、2部プロセスであり、第2部が、空気分級機ミルにおいて実施される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2部における、前記長尺繊維を得るための前記粉砕の回数が、前記微細繊維を得るための前記粉砕の回数とは異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記空気分級機ミルにおける前記粉砕が、前記長尺繊維を得るために1回、及び前記微細繊維を得るために3回実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程b)i)における前記圧密化には、前記止血繊維組成物を、任意選択で、11重量%〜18重量%の含水レベルまで加湿する工程が先行する、請求項〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記加湿する工程が、前記止血繊維組成物中に吸湿性材料、任意選択で塩化カルシウムを含めることによって実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程b)ii)における前記サイズの低減には、前記圧密化止血繊維組成物除湿する工程が先行する、請求項〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記除湿が、5重量%未満の含水レベルまで実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程b)i)における前記圧密化が、スラッギングマシンを使用して、任意選択で25〜70kN/cmの範囲の力で実施される、請求項〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程b)における止血凝集体を得ることが、75〜420μmの範囲の寸法を有する凝集体を生成することを目標とする、請求項〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記セルロース系材料が、酸化再生セルロース布、酸化再生セルロース不織布、酸化再生セルロース織布、酸化再生セルロース編物、細断された酸化再生セルロース材料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記長尺繊維及び前記微細繊維に、
a)亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及び銅から選択される二価カチオン、
b)正に荷電したペプチド及び/又は多糖類、
c)ωアミノカルボン酸、並びに
d)上記のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を添加することを更に含む、請求項〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記長尺繊維及び前記微細繊維に、プロタミン塩、カルシウム塩、及びε−アミノカプロン酸を添加することを更に含む、請求項〜19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系短尺繊維及び長尺繊維の混合物を含む止血組成物、その調製、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な状況において、ヒトを含む動物は、創傷が原因で、あるいは外科的処置の間に出血に見舞われることがある。状況によっては、出血は比較的軽いものであり、通常の血液凝固作用に簡単な応急処置の実施が加われば、それだけで十分である。他の状況では、相当な出血が起こることがある。これらの局面では通常、専門的な設備及び物資、並びに適切な救助を施すように訓練された人員が必要となる。
【0003】
外科的処置中の出血は、多様な形態で現れ得る。出血は、離散的であるか、又は大きな表面積から拡散している場合がある。出血は、大小の血管、動脈(高圧)、又は静脈(低圧)からの、大量又は少量の出血であり得る。出血は、容易にアクセス可能であり得るか、又はアクセス困難な部位を起源とし得る。
【0004】
止血を達成するための従来の方法は、外科的技法、縫合糸、結紮又はクリップ、及びエネルギーに基づく凝固又は焼灼の使用を含む。これらの従来の手段が、無効であるか又は実用的でない場合、典型的には、補助的な止血技法及び製品が利用される。
【0005】
出血の制御のための適切な方法又は製品の選択は、出血の重症度、起源の解剖学的位置、隣接する重要な構造に対する起源の近接、出血が離散的起源に由来するか又はより広い表面積に由来するか、起源の可視性及び正確な識別、及び起源へのアクセスを含むがこれらに限定されない多くの要因に依存する。
【0006】
止血の補助として、多くの製品が開発されてきた。これらの製品としては、酸化再生セルロース、トロンビン溶液を伴うか又は伴わない様々な形態のゼラチン、コラーゲン粉体、生物学的に活性な局所止血製品(局所トロンビン溶液、フィブリンシーラントなど)、及び種々の合成局所シーラントなどの局所用吸収性止血剤(topical absorbable hemostat、TAH)が挙げられる。
【0007】
局所用吸収性止血剤(TAH)は、外科用途で広く使用されている。TAHは、酸化セルロース(oxidized cellulose、OC)、酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose、ORC)、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサンなどをベースとした製品を包含する。止血性能を向上させるために、上記の材料をベースとした足場を、トロンビン及びフィブリノゲンなどの生物由来の凝固因子と組み合わせることができる。
【0008】
最も一般的に使用される局所止血剤のうちの1つは、酸化再生セルロース(ORC)から作製されたSURGICEL(登録商標)Original可吸収性止血剤である。ORCは、多くの外科的処置のための安全かつ有効な止血剤として、1960年代に導入された。SURGICEL(登録商標)Originalは、そのすぐ周囲に迅速に適合する緩い編みのORC布帛であり、手術器具に付着せず、そのサイズを容易に調節することができるため、他の吸収性剤よりも管理が容易である。これにより、外科医は、全ての出血が止まるまで、セルロースを所定の位置にしっかりと保持することができる。出血の制御は、失血を最小限に抑え、術後合併症を低減させ、かつ手術室での手術の時間を短くするために、外科的処置において必須かつ重要である。その生分解性並びにその殺菌特性及び止血特性により、酸化セルロースは、酸化再生セルロースと同様、神経手術、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織処置を含む、様々な外科的処置において局所性止血用創傷包帯として長い間使用されてきた。粉体、織布、不織布、編物、及び他の形態で作製されるか否かにかかわらず、酸化セルロース材料をベースとした様々な種類の止血剤を形成するためのいくつかの方法が知られている。現在利用される止血用創傷包帯としては、セルロース繊維の均一性を高めた酸化セルロースである酸化再生セルロース(ORC)を含む編物、織布、又は不織布が挙げられる。
【0009】
SURGICEL(登録商標)可吸収性止血剤は、結紮又は他の従来の制御方法が実用的でないか又は無効である場合に、毛細血管、静脈、及び小動脈出血の制御を補助するために外科的処置において補助的に使用される。SURGICEL(登録商標)ファミリーの可吸収性止血剤は、4つの主要製品群からなり、全ての止血用創傷包帯は、Ethicon,Inc.(Somerville,N.J.)、Johnson & Johnson Companyから市販されている。SURGICEL(登録商標)Original止血剤は、薄黄色がかった色及び微かなカラメル様の芳香を有する白色布帛である。この材料は丈夫であり、ほつれずに縫合又は切断することができる。
【0010】
SURGICEL(登録商標)NU−KNIT(登録商標)可吸収性止血剤は、SURGICEL(登録商標)Originalと同様であるが、より緻密な編物、したがってより高い引張強度を有し、この材料は、出血を制御するために所定の位置に巻き付けるか又は縫合することができるため、外傷及び移植手術における使用に特に推奨される。
【0011】
SURGICEL(登録商標)FIBRILLAR(商標)可吸収性止血剤製品形態は、外科医が特定の出血部位で止血を達成するために必要な任意の量の材料を鉗子で剥離及び把持することを可能にする層状構造を有しており、これにより、到達しにくいか又は不規則に形成された出血部位について編み形態よりも便利であり得る。これは、整形外科/脊椎及び神経学的手術における使用に特に推奨される。
【0012】
SURGICEL(登録商標)SNoW(商標)可吸収性止血剤製品形態は、構造化された不織布により、内視鏡使用形態のための他の形態よりも便利であり得、切開処置及び最小侵襲性処置の両方において高度に適合性であり、推奨される構造化不織布である。
【0013】
酸化セルロースを含有する市販の吸収性止血剤の他の例は、Gelita Medical BV(Amsterdam,The Netherlands)からのGELITA−CEL(登録商標)吸収性セルロース外科的包帯である。上記の市販の酸化セルロース止血剤は、編物、不織布、又は粉体形態で入手可能である。多孔性多糖類粒子及び植物澱粉系粒子からなる粉体などの追加の止血製品もまた、PERCLOT(登録商標)及びARISTA(商標)として市販されている。
【0014】
背景技術米国特許第8,815,832号、米国特許第3,364,200号、米国特許出願公開第2008/0027365号、米国特許出願公開第2004/0005350号、国際公開第2007/076415号、米国特許第6,627,749号、米国特許第6,309,454号、米国特許第5,696,191号、米国特許第6,627,749号、米国特許第6,225,461号、国際公開第2001/024841(A1)号、欧州特許第1,323,436号、米国特許出願公開第2006/0233869号、Howsmon,J.A.,& Marchessault,R.H.(1959).The ball−milling of cellulose fibers and recrystallization effects.Journal of Applied Polymer Science J.Appl.Polym.Sci.,1(3),313〜322.doi:10.1002/app.1959.070010308。
【0015】
Cullen,B.,Watt,P.W.,Lundqvist,C.,Silcock,D.,Schmidt,R.J.,Bogan,D.,& Light,N.D.(2002).The role of oxidised regenerated cellulose/collagen in chronic wound repair and its potential mechanism of action.The International Journal of Biochemistry & Cell Biology,34(12),1544〜1556.doi:10.1016/s1357〜2725(02)00054〜7。
【0016】
Rajkhowa,R.,Wang,L.,& Wang,X.(2008).Ultra−fine silk powder preparation through rotary and ball milling.Powder Technology,185(1),87〜95.doi:10.1016/j.powtec.2008.01.005。
【0017】
Yasnitskii,B.G.,Dol’berg,E.B.,Oridoroga,V.A.,Shuteeva,L.N.,Sukhinina,T.V.,& Bogun,T.A.(1984).Oxycelodex,a new hemostatic preparation.Pharmaceutical Chemistry Journal,18(4),279〜281.doi:10.1007/bf00760712。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、セルロース系材料に由来する短尺繊維及び長尺繊維の混合物を含む、改善された止血組成物に関する。
【0019】
一態様では、本発明は、セルロース系の長尺繊維及び微細繊維を含む止血繊維及び/又は凝集体組成物に関し、それら長尺繊維及び微細繊維は、それぞれ5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率であり、長尺繊維のサイズ分布は、177μm超のD90、及び95μm超のD50であり、微細繊維のサイズ分布は、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である。全ての割合は、組成物重量全体のw/wである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、長尺繊維のD90は、350μm未満であり、D50は、167μm未満である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、止血組成物は、
a)亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及び銅から選択される二価カチオン、
b)正に荷電したペプチド及び/又は多糖類、
c)ωアミノカルボン酸、並びに
d)上記のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む。
【0022】
一実施形態では、組成物は、組成物全体の2.5%〜5.0%w/wの濃度範囲にあるωアミノカルボン酸、組成物全体の2.5%〜5.0%w/wの濃度範囲にあるプロタミン塩、塩中のカチオン濃度が組成物全体の1.3%〜1.8%w/wである二価カチオン塩を含む。残存重量は、総重量100%w/wになるようにセルロース系繊維により提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、止血組成物は、プロタミン塩、塩化カルシウム、及びε−アミノカプロン酸(ε-aminocaproic acid、εACA)を更に含む。残存重量は、総重量100%w/wになるようにセルロース系繊維により提供される。
【0024】
一実施形態では、εACA、プロタミン硫酸塩、及び塩化カルシウムの濃度範囲は、それぞれ2.5%〜5.0%、2.5%〜5.0%、5.0%〜6.5%w/wである。残存重量は、総重量100%w/wになるようにセルロース系繊維により提供される。
【0025】
組成物は、5%〜25%w/wの範囲の濃度で長尺繊維を含む。残存重量は、総重量100%になるように短尺繊維(75%〜95%の濃度範囲で存在する)、及び任意選択で他の化合物/添加剤により提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、セルロース系繊維は、酸化再生セルロース繊維である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、止血組成物は、75〜420μmの範囲のサイズを有する凝集体の形態である。
【0028】
別の態様では、本発明は、
a)長尺繊維及び微細繊維を形成するように、セルロース系材料、例えば布帛のサイズを低減する工程であって、長尺繊維のサイズ分布が、177μm超のD90、及び95μm超のD50であり、微細繊維のサイズ分布が、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である、低減する工程と、長尺繊維及び微細繊維を、それぞれ5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率で混合して、それにより止血繊維組成物を得る工程と、を含む、止血組成物の作製方法に関する。
b)任意選択で、工程a)で得られた止血繊維組成物は、凝集体の形態の止血組成物を得るための更なる工程に供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、凝集体は、
i)止血繊維組成物を圧密化して、圧密化止血繊維組成物を得ることと、
ii)圧密化組成物のサイズを低減することと、を含む工程において形成される。
【0030】
いくつかの態様では、本発明は、
a)長尺繊維及び微細繊維を形成するようにセルロース系材料のサイズを低減する工程であって、長尺繊維のサイズ分布が、177μm超のD90、及び95μm超のD50であり、微細繊維のサイズ分布が、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である、低減する工程と、長尺繊維及び微細繊維を、それぞれ5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率で混合して、それにより止血繊維組成物を得る工程と、を含む、止血組成物の作製方法に関する。
b)任意選択で、工程a)で得られた止血繊維組成物は、凝集体の形態の止血組成物を得るための更なる工程に供される。これらの工程は、i)止血繊維組成物を圧密化して、圧密化止血繊維組成物を得ることと、任意選択で、ii)圧密化組成物のサイズを低減することと、を含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、長尺繊維のD90は、350μm未満であり、D50は、167μm未満である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、サイズの低減は、粉砕によって実施される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、工程a)におけるサイズの低減には、セルロース系材料を切り開く及び/又は切断する工程が先行する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、工程a)におけるサイズの低減は、2部プロセスであり、第2部は、空気分級機ミルにおいて実施される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、空気分級機ミルにおける粉砕は、長尺繊維を得るために1回(1通過)、微細繊維を得るために3回(3通過)実施される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、圧密化工程i)には、止血繊維組成物を、任意選択で、11重量%〜18重量%の含水レベルまで加湿する工程が先行する。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、加湿する工程は、止血繊維組成物中に吸湿性材料、任意選択で塩化カルシウムを含めることによって実施される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、工程ii)におけるサイズの低減には、圧密化組成物を除湿する工程が先行する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、除湿は、5重量%未満の含水レベルまで実施される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、工程i)における圧密化は、スラッギングマシンを使用して、任意選択で、25〜70kN/cmの範囲の力で実施される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、工程b)において止血凝集体を得ることは、75〜420μmの範囲の寸法を有する凝集体を生成することを目標とする。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、セルロース系材料は、酸化再生セルロース布、酸化再生セルロース不織布、酸化再生セルロース織布、酸化再生セルロース編物、細断された酸化再生セルロース材料、又はそれらの組み合わせである。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、長尺繊維及び微細繊維に、
a)亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及び銅から選択される二価カチオン、
b)正に荷電したペプチド及び/又は多糖類、
c)ωアミノカルボン酸、並びに
d)上記のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を添加することを更に含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、長尺繊維及び微細繊維に、プロタミン塩、カルシウム塩、及びε−アミノカプロン酸を添加することを更に含む。
【0045】
別の態様では、本発明は、本発明の方法によって得ることができる繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物に関する。
【0046】
別の態様では、本発明は、本発明による繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物を血液と接触させ、それによりゲルを形成する工程を含む、ゲルの形成方法に関する。
【0047】
別の態様では、本発明は、本発明による方法によって得ることができるゲルに関する。
【0048】
別の態様では、本発明は、本発明による繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物を含む容器と、任意選択でアプリケータ、担体、及び/又は使用説明書と、を含むキットに関する。
【0049】
いくつかの実施形態では、容器がアプリケータである。
【0050】
別の態様では、本発明は、出血創傷、創傷部位における細菌感染症の治療、部位における漏出の封止、部位における癒着の防止、及び/又は吻合部位からの漏出を、それ必要とする対象において最小化又は防止する方法に関し、本方法は、有効量の、繊維及び/又は凝集体の形態の本発明による止血組成物を、対象の創傷及び/又は部位の上及び/又は中に適用する工程を含む。
【0051】
本発明は、出血を止めるため、封止、癒着防止、及び/又は吻合部位からの漏出の最小化又は防止のための、本発明による繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物の、抗細菌剤としての使用に関する。いくつかの実施形態では、この使用は、冠状動脈バイパス移植(coronary artery bypass graft、CABG)手術における漏出を最小化又は防止するためである。
【0052】
一実施形態では、この適用は、創傷及び/又は部位に向かって組成物に圧力を加えることなく実施される。例えば、ガーゼを使用する手動圧縮は不要である。様々な製品において、製品は、少なくとも1分間の適用中に手動圧縮を必要とする。圧縮なしに止血組成物を使用する利点は、止血組成物を、到達しにくい領域の中/上に適用できることである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】修正されたブルーム試験を使用して、異なる繊維組成物について得られた抵抗力/凝集力を示す棒グラフである。非補充の微細ORC繊維から得られた抵抗力を、実験全体のベースラインとした。長尺ORC繊維(long ORC fibers、L−ORC)の添加は、凝塊抵抗を増加させることが示された。
図2】エクスビボ縫合モデルによる異なる凝集体組成物に対する止血効力を示すバー図である。この図は、長尺ORC繊維(L−ORC)の添加が、止血効力を増加させたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、ゲル又は凝塊形成時の止血のための驚くべき物理特性及び非常に有益な効果(複数可)を有する繊維及び/又は凝集体組成物(複数可)、それらの調製及びその使用に関する。止血組成物は、繊維及び/又は凝集体の形態のセルロース系材料に由来する短尺繊維及び長尺繊維の混合物を含む。例えば、繊維及び/又は凝集体組成物は、増加した凝集力及び有益な止血能力などの有益な物理特性を有するゲル又は凝塊形成を誘導する。
【0055】
用語「セルロース系繊維」は、セルロース骨格を含む繊維に関する。セルロース骨格は修飾されることができ、例えば、カルボキシル化又は酸化レベルの変化を含み得る。セルロース系材料の非限定的な例としては、酸化セルロース又は酸化再生セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルセルロースが挙げられる。
【0056】
セルロース系材料は、織布、不織布、編物、及び/又は他の形態の布帛であり得る。
【0057】
セルロース系繊維の非限定的な例は、ORC繊維、綿繊維、レーヨン繊維、及びビスコース繊維である。
【0058】
用語「繊維」は、細長い糸状形態を有する構造体に関する。
【0059】
止血繊維組成物は、粉体の形態であってもよい。
【0060】
本発明の一実施形態では、組成物中の「微細又は短尺」セルロース系繊維は、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50のサイズ分布を有する。
【0061】
本発明の一実施形態では、組成物中の「長尺」セルロース系繊維は、177μm超のD90、及び95μm超のD50のサイズ分布を有する。別の実施形態では、長尺繊維は、350μm未満のサイズ分布を有し、D50は、167μm未満である。
【0062】
サイズ分布D50はまた、粉体/凝集体サイズ分布におけるユニットの中位径又は中央値として知られており、累積分布における50%でのユニット径の値である。例えば、D50がXμmである場合、試料中のユニットの50%がXμmよりも大きく、50%はXμmよりも小さい。サイズ分布は、目的の試料中の全ユニットサイズの総数の割合として与えられる様々なサイズ範囲のそれぞれに収まるユニットの数である。したがって、D90値は、D90値よりも小さいサイズを有する90%のユニットを指す。
【0063】
用語「粉体」は、分散した乾燥固体粒子に関する。
【0064】
用語「凝集体」は、目標のサイズ範囲を有する圧密化セルロース系材料に関し、例えば、この圧密化材料は、粉砕及び任意選択で篩分けなどのサイズ低減に供される。
【0065】
サイズ低減の非限定的な例は、引裂き、細断、粉砕、摩砕、及び/又は篩分けである。
【0066】
一実施形態では、凝集体は、粉砕などのサイズ低減に供された圧密化繊維組成物である。
【0067】
用語「止血」は、出血強度を低減するか、又は出血を止める能力に関する。
【0068】
結果は、以下の知見に基づいたものである。
本発明による止血組成物は、微細セルロース系繊維の比較組成と比較したとき、優れた特性を示すことが本発明により分かった。
【0069】
微細ORC繊維を長尺ORC繊維で補充することは、凝塊の抵抗及び凝集力を増加させたことが分かった。
【0070】
結果は、微細ORC繊維と長尺ORC繊維との混合物が、血液との接触時に形成される凝塊の凝集力を少なくとも1.5倍増加させたことを示す。
【0071】
用語「ゲル又は凝塊の抵抗」は、修正されたブルーム試験(下記で例証される)の結果に関連し、金属性の棒が、5mm/分の速度で動きながら、7mmの伸長でゲルを通過するのに必要な力を示す。この力は、ゲルの抵抗のレベルを反映し(力が大きいほど、ゲルの抵抗が大きくなる)、順にゲルの凝集力のレベルを示している。棒が定常的な動きで進行するのに必要な力が大きいほど、ゲルの抵抗が大きくなる。
【0072】
異なるサイズ分布を有するORC繊維の使用は、繊維及び/又は凝集体の適用の後に生成された凝塊の、得られた構造的完全性を増加させ得ることが分かった。
【0073】
また、短尺ORC繊維の、長尺ORC繊維による補充が、総組成重量の25%未満の濃度の長尺繊維を有する組成物を含む非補充微細ORC繊維に対して、組成物の止血能力をほぼ2倍向上させ得ることが分かった。
【0074】
また、微細ORC繊維の、長尺繊維及び次の3つの化合物(塩化カルシウム、PS、及びεACA)全てによる補充は、優れた結果を示した。正の効果は、特定の比率の補充成分で観察された。
【0075】
80%微細ORC繊維を、10%長尺ORC繊維と共に含み、かつ5% CaCl、2.5% PS、及び2.5% εACAを含む組成物は、微細ORC繊維からなる組成物と比較して、2倍の優れた止血結果を示した。
【0076】
異なるサイズ分布を有する繊維の混合物を含む酸化再生セルロース(ORC)繊維を含む繊維及び/又は凝集体組成物は、微細繊維のみで調製されたORC繊維を含む組成物と比較したとき、優れた特性を示す。
【0077】
機序によって束縛されるものではないが、異なるサイズ分布を有するセルロース系繊維混合物、及び任意選択で化合物(複数可)は、その場で達成される凝塊の構造に寄与する。
【0078】
一態様では、本発明は、長尺セルロース系繊維及び微細セルロース系繊維を含む繊維及び/又は凝集体組成物に関し、長尺繊維及び微細繊維は、それぞれ5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率であり、長尺繊維のサイズ分布は、177μm超のD90、及び95μm超のD50であり、微細繊維のサイズ分布は、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である。
【0079】
本明細書に開示される全ての範囲は、適用可能な場合、上下限を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、長尺繊維は、5%〜25%未満の範囲の濃度である。
【0081】
本発明の止血組成物を作製するための出発材料として使用され得る酸化再生セルロース材料は、既知でありかつ市販されている。出発材料としては、酸化多糖類、特に酸化セルロース及びその中和誘導体を含む可吸収性の織布若しくは編物又は不織布材料を挙げることができる。例えば、セルロースは、カルボキシル−酸化又はアルデヒド−酸化セルロースであってよい。より好ましくは、限定するものではないが酸化再生セルロースを含めた酸化再生多糖類が使用され得る。酸化再生セルロースは、再生されていないセルロースに対して均等度がより高度であるがために好ましい。再生セルロース、及び酸化再生セルロースを作製する方法に関する詳細な説明は、米国特許第3,364,200号、同第5,180,398号、及び同第4,626,253号に記載されており、これらの各々の内容は、その全体が記載されたものとして、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
利用され得る好ましいセルロース系材料の例としては、INTERCEED(登録商標)可吸収性癒着障壁、SURGICEL(登録商標)Original可吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)NU−KNIT(登録商標)可吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)FIBRILLAR(商標)可吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)SNoW(商標)可吸収性止血剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の止血繊維及び/又は凝集体は、優れた止血性、並びに良好な組織なじみ性及び流動性を有するペースト又は粉体形態のいずれかで止血剤として動作することができる。加えて、止血繊維及び/又は凝集体は、他の薬剤及びバイオポリマーと物理的に統合及び/又は混和されて、組織への接着性、封止性、及び/又は癒着防止性を改善することができる。
【0084】
本発明の一態様では、有益な止血、創傷治癒、及び他の治療的特性を有する止血繊維及び/又は凝集体組成物の作製方法が提供される。
【0085】
本発明の1つの可能な方法は、止血繊維及び/又は凝集体を、ORC製品などのセルロース系材料、例えば上で考察したものから直接製造することを含む。
【0086】
一実施形態では、長尺繊維及び短尺繊維は、セルロース系材料のサイズを低減することによって得られ、長尺繊維は、微細繊維を得るのに必要な工程及び/又は時間と比較して、より少ない粉砕工程及び/又はより短い粉砕時間を含めることによって得ることができる。
【0087】
代替の実施形態では、切断されたセルロース系布片は、ボールミルにおいて微細繊維に直接変換される。ボールミルにおける異なるラウンド数及び又は粉砕期間は、異なる繊維サイズをもたらす。ボールミル工程から取り出されたより大きな繊維は、最終的な繊維及び/又は凝集体組成物(複数可)中に異なる繊維サイズを組み込むために、将来の使用のために回収され得る。
【0088】
粉砕後に得られたセルロース系微細繊維は、予め得られた長尺セルロース系繊維と混合することができ、任意選択で、化合物(複数可)及び/又は添加剤と更に混合して、例えば、組織への接着性、封止性、止血性、及び/又は癒着防止性を向上させることができる。
【0089】
長尺繊維及び微細繊維の混合は、それぞれ5%〜25%及び95%〜75%の範囲の比率で実施され、長尺繊維のD90は、177μm超であり、D50は、95μm超であり、微細繊維のD90は、177μm未満であり、D50は、95μm未満である。
【0090】
生成された止血繊維組成物は、化合物で更に補充することができる。
【0091】
一実施形態では、止血組成物の作製方法は、ORC材料などのセルロース系材料、例えば、SURGICEL(登録商標)Original可吸収性止血剤を用いて開始させる。ORC布帛を、2.54〜5.08cm(1〜2インチ)幅の断片に切断した後、材料をブレードに供給して布帛を小片に切断する。次いで、切断されたORC布片を、2つの連続した粉砕プロセス(ハンマー粉砕及び空気分級機粉砕)によってORC繊維に摩砕する。異なる粉砕工程からの繊維を、最終繊維組成物(複数可)に異なる繊維サイズを組み込むために、将来の使用のために取る。得られた止血繊維組成物は、凝集体の形態の止血組成物を得るための更なる工程に供され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、異なる繊維サイズという用語は、異なるサイズ分布を有する繊維に関連する。
【0093】
一実施形態では、組成物中のセルロース系繊維は、異なるサイズ分布を有するセルロース系繊維の混合物からなる。セルロース系繊維混合物を、化合物(複数可)と更に混合することができる。一実施形態では、混合物は、圧密化及び粉砕のプロセスを経て、凝集体を形成することができる。任意選択で化合物(複数可)を有するセルロース系繊維の凝集体は、75μm〜420μmの範囲であり得る。
【0094】
一実施形態では、凝集体を形成する前に、長尺繊維及び微細繊維を含有するセルロース系繊維混合物は、後次の処理のために、約11%〜約18%のレベル、約11%〜約16%、最も好ましくは約12〜16%(Ohausハロゲン水分計により測定)までの加湿工程に供される。塩化カルシウムなどの十分な量の吸湿性材料が繊維に添加される場合、この工程を省略することができる。十分な量の吸湿性化合物は、例えば、Ohausハロゲン水分計により測定して、約11%〜約18%のレベルまでの加湿を可能にする量である。次いで、得られた湿潤混合繊維を圧密化する。
【0095】
用語「吸湿性材料」は、通常は常温又は室温環境下において、周囲から水分子を吸着保持することができる物質に関する。非限定的な例としては、塩化亜鉛、塩化カルシウム、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0096】
一実施形態では、凝集体の形成は、圧密化後及びサイズ低減前に、除湿又は乾燥の工程を含み、篩分け工程を含む。サイズ低減及び篩分け工程は、典型的には、ある寸法を有する凝集体を標的化することを可能にする。次の工程は、アプリケータデバイスに投与し、次いで、デバイスをパッケージング及び滅菌することができる。
【0097】
一実施形態では、アプリケータへの投与前の貯蔵水分は、乾燥の終了時に約2%w/w未満であり、アプリケータに投与するために、制御された環境(相対湿度に応じて500グラムの試料水分利得当たり0.3〜0.6%/時、一般的に相対湿度25〜55%)において6%w/w未満の含水量を達成する。止血組成物(複数可)を作製するための1つの可能な方法は、セルロース系材料を切り開き、切断する工程と、例えば、得られた材料を粉砕することによって、サイズを低減する工程と、長尺繊維及び微細繊維を得るための、空気分級機における粉砕工程(複数可)と、異なるサイズの繊維を混合する工程と、任意選択で、化合物(複数可)を添加する工程と、を含む。
【0098】
止血組成物(複数可)を作製するための他の可能な方法は、セルロース系材料を切り開き、切断する工程と、例えば、得られた材料を粉砕することによって、サイズを低減する工程と、長尺繊維及び微細繊維を得るための、空気分級機における粉砕工程(複数可)と、異なるサイズの繊維を混合する工程と、任意選択で、化合物(複数可)を添加する工程と、加湿する工程と(十分な量の吸湿性材料[例えば、塩化カルシウム]が添加される場合は省略され得る)、圧密化の工程と、除湿又は乾燥の工程と、圧密化材料のサイズを低減する工程と、篩分けの工程と、任意選択で、貯蔵容器内、又は送達デバイス、一次包装、及び二次包装内に投与する工程と、任意選択で、滅菌の工程と、を含む。
【0099】
切り開き及び切断を実施して、布帛を、およそ2.54cm×7.62cm又は5.08cm×7.62cm(1インチ×3インチ又は2インチ×3インチ)の適切なサイズ片に切り開き、切断することができるが、より小さい切片を使用することもできる。切り開き及び切断のために行われる主な操作は、布帛のロールを巻き戻し、布帛をストリップに切り開き、ストリップを切断して、切片をサイズ決定して第1の粉砕工程に送達することである。AZCOから入手可能なAZCOモデルFTW−1000などの、いくつかの切断及び切り開き用のマシンが既知であり、商業的に入手可能である。
【0100】
第1の粉砕工程では、セルロース系布帛材料の処理片は、材料の色指数及び水溶性含有量に最小の影響を与えながら、切り開いて切断する工程で生成された中間粗繊維から、452μm未満のD90値及び218μm未満のD50値を有する材料に変換される。497μmの円形スクリーン、及びスクリーンを通過するまで布帛を分解して中間粗セルロース繊維を生成する一組のブレードを備えたハンマーミル型粉砕マシンである、Fitzpatrickにより製造されたモデルDASO6及びWJ−RS−D6Aなどの、粉砕のためのいくつかのマシンが市販されている。例示的な処理行程では、ミル速度は、約7000RPMであり得、処理温度は80℃未満であり、ブレード数は8(各々2つのインペラ)であり、ブレード型は225ナイフ、衝撃型ブレードであり、ブレード配向は、「衝撃」として設定される。
【0101】
粉砕工程において生成された繊維は、材料の色指数及び水溶性含有量に最小の影響を保持しながら、更に低減することができる。Quadroからの空気分級機/F10 Quadro Fine Grindなどのいくつかのマシンが、第2の粉砕工程に使用可能である。
【0102】
第1の粉砕工程からの中間粗繊維は、制御された速度で第2のミルに供給され、粉砕スクリーンによって分離された2つの粉砕室を通過することができる。材料は、送風機によって粉砕室を通って引き込まれ得る。中間粗繊維は、所望のサイズを得るために、空気分級機装置を介して数回処理され得る。加えて、異なる繊維サイズを最終繊維及び/又は凝集体に組み込むために、将来の使用のためにこれらの粉砕工程から繊維を取り出すことができる。第1の粉砕工程からの中間粗繊維は、制御された速度で第2のミルに供給され得る。中間粗繊維は、所望のサイズを得るために、空気分級機装置を介して3回処理され得る。加えて、ある特定の実験では、異なる繊維サイズを最終凝集体に組み込むために、空気分級機を通る最初の走流から取られた繊維を抽出することができる。
【0103】
実施形態では、空気分級機を通る第1及び第3の走流から回収された繊維は、改善された繊維/凝集体組成物を作製するために使用される。
【0104】
この工程(複数可)において、Quadro空気分級機F10を、粉砕速度8400rpm、送風機速度1800rpm、及び3通過で使用することができる。そのような実施形態では、1通過後、得られた長尺繊維は、350μm未満のD90値、及び167μm未満のD50値を有し得る。3通過後、得られた微細繊維は、177μm未満のD90値、及び95μm未満のD50値を有し得る。
【0105】
微細繊維はまた、上記のような2つの粉砕工程の代わりに、ボールミルによって1つの工程で生成することもできる。
【0106】
代替ボールミル実施形態では、50gの予め切断されたセルロース系布帛[例えば、ORC布帛](5×5cm又は2インチ×2インチ)を、12高密度ジルコニア(二酸化ジルコニウムZrO2、直径20mm、Glen Mills Inc.(Clifton,N.J.,USA))を用いて、ボール及び試料を500mLの摩砕槽に入れることによってボールミルされる。この槽は、ラッチブラケットの中へ圧締めされ、次いで遊星ボールミルPM100、Retsch,Inc.(Newtown,Pa.,USA))上で平衡される。次いで、粉砕を二方向に450rpmで20分間行う。時間などの異なる粉砕パラメータを使用することにより、改善された凝集体をもたらすことができる混合物への将来の組み込みに使用することができる、異なる繊維サイズを生成することができる。
【0107】
一実施形態では、加湿工程に適した湿度室は、Thermal Product SolutionsによりモデルCEO−916−4−B−WF4−QSとして市販されている。室空気の加湿は、水蒸気噴射により達成される。25℃の典型的な定常状態温度を利用することができるが、湿度レベルは、75%〜85%の間で、好ましい目標の85%空気湿度で循環させることができる。湿度チャンバ内の材料の加湿時間又は滞留時間は、材料の量及び空気の再循環に応じて数時間から数日の範囲であり得る。典型的かつ好ましい循環では、材料は、数個のトレイに配置され、相対湿度85%に暴露された約3,000グラムのセルロース微細繊維について、12〜13時間の滞留時間と、加湿後の繊維の目標の12%含水量とを有することになる。
【0108】
一実施形態では、微細繊維は、長尺繊維と、任意選択で、化合物及び/又は添加剤と、圧密化前に混合される。
【0109】
圧密化材料は、粉砕して篩分けすることができ、75〜420μmの凝集体を回収することができる。
【0110】
圧密化装置は、既知であり商業的に入手可能である。繊維は、スラッギング機械又は当該技術分野において既知の任意の他の圧密化技法によって圧密化され得る。例示的な圧密化ユニットは、Retsch手動篩分けAS200スクリーナを備えたFitzpatrick Chilsonator IRR220−L1A、及びM5A下で統合されたスクリーナSweco Vibroエネルギーユニットを備えたFitzpatrick Chilsonator CCS220/M3B & RV−M5Aである。圧密化処理は、共通の電気系によって結合された2つの別個のサブシステムを使用して行うことができる。例えば、第1のサブシステム(転圧器:メインユニット)は、Fitzpatrick Chilsonator CCS220転圧器、及び圧密化材料を予備破砕するためのM3Bミルであり得、一方で第2のサブシステム(転圧器:二次粉砕ユニット)は、所望のサイズ凝集体を得る分離のためのSweco又はRetchスクリーナを備えた最終粉砕のためのM5Aミルである。
【0111】
除湿又は乾燥工程での圧密化に続いて、水分を除去することができる。除湿又は乾燥工程は、好ましくは、色、嵩密度、水溶性含有量、及びサイズなどの任意の他の製品品質属性に著しく影響を及ぼさない。典型的には、繊維は、従来の流動化空気床を使用してバッチとして乾燥させることができる。
【0112】
除湿装置は、既知であり商業的に入手可能である。例示的なベンチトップ流動空気床は、6L容量を有するRetsch(TG−200)から商業的に入手可能である。あるいは、Fluid Air(Aurora,IL)からの流動化床モデルNo.0002を使用することもできる。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態では、正電荷を有する1種又は2種以上の多糖類が、本発明による組成物中に更に添加/含有されている。正電荷を有する多糖類の非限定的な例は、キトサン及びカチオン性グアーガムである。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態では、正電荷を有する1種又は2種以上のペプチドが、本発明による組成物中に更に添加/含有されている。そのようなペプチドの非限定的な例は、アバエシン(abaecin)、アピダエシン(apidaecin)、プロフェニン、インドリシジン、メリトチン、マガイニン、LL−37、牛ラクトフェリシン、ヒトラクトフェリシン、セクロピンA1、ブフォリンII、タナチン、ポリフェムシン1、マガイニン2、ヒトβデフェンシン−2、ウサギ腎デフェンシン、ペネトラチン/アンテナペジア、TAT、SynB1、SynB3、PTD−4、PTD−5、FHVコート−(35〜49)、BMV Gag−(7〜25)、HTLV−II Rex−(4〜16)、D−Tat、R9−Tatトランスポルタン、MAP、SBP、FBP、MPG、MPG(ΔNLS)、Pep−1、Pep−2である。
【0115】
更なる態様では、本発明は、ゲルの形成方法を提供し、この方法は、本発明による止血組成物を血液と接触させ、それによりゲルを形成する工程を含む。
【0116】
用語「血液」は、血漿などの血液画分を含む。
【0117】
用語「ゲル」は、軟性かつ脆弱から硬性かつ強靱までの性質を有することができる粘性及び/又は固体様材料に関する。ゲルは、ヒドロゲルであり得る。
【0118】
典型的には、ヒドロゲルは、親水性であるポリマー鎖のネットワークである。ヒドロゲルは、90%を超える水を含み、ポリマーネットワークを含むことができる。
【0119】
ゲルは、凝固した液体、特に血液の厚い塊である凝塊であり得る。
【0120】
用語「接触する」は、その広義において使用され、例えば、凝塊又はゲルが形成されるように、止血組成物を血液に十分に近接させる任意のタイプの複合作用を指す。
【0121】
一実施形態では、この方法は、比較組成物が血液と接触したときに形成されるゲルの1.5倍以上の抵抗を有するゲルを形成し、かつ/又は比較組成物が血液と接触したときに形成されるゲルより約2倍以上の止血能力を有するゲルを形成する。比較組成物は、微細セルロース系繊維を含み、セルロース系長尺繊維を欠失している。
【0122】
更なる態様では、本発明は、本発明に記載の方法によって得ることができるゲルを提供する。
【0123】
更なる態様では、本発明は、本発明の止血組成物を含む容器、並びに任意選択でアプリケータ、担体、及び/又は使用説明書を含むキットを提供する。
【0124】
用語「担体」は、止血組成物を含む、及び/又は保持する物理マトリックスに関する。担体の例としては、セルロース系パッド、コラーゲン系パッドなどの内部及び/又は外部用途のためのパッド;歯科矯正及び整形外科用インプラントなどのインプラント;SURGIFOAM(登録商標)、EVICEL(登録商標)などの流動性シーラント及び/又は止血剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
一実施形態では、本発明による止血繊維及び/又は凝集体組成物は、酸化セルロース系(ORC)繊維材料から、又は予め細断された酸化セルロース(OC)系材料から作製される。
【0126】
得られた止血繊維及び/又は凝集体組成物は、様々な外科的及び/又は創傷治癒局所用途、例えば抗殺菌処置、止血、癒着防止、封止のため、及び/又は漏出、例えば、冠動脈バイパス移植(CABG)中に生じる漏出などの吻合部位からの漏出を最小化又は防止するために使用することができる。
【0127】
この組成物を使用して、例えば、腹腔鏡手術中に、CABG及び/又は動静脈吻合などの吻合部位上、脊椎手術又は神経手術などの加圧が是認されない処置中に到達しにくい領域における出血を止めることができる。
【0128】
冠動脈バイパス移植(CABG)手術を受けた患者は、処置中に生じた吻合部位からの漏出を有し得る。これらの漏出の多くは、追加の縫合糸又は様々な止血剤を使用して手術中に対応される。これらの手術中の漏出を止め、漏出が術後に発達するのを防ぐことは、外科医にとって、患者が術後の吻合漏出を有しないことをより確信することを助ける。輸血又は再手術を必要とするCABG処置後の出血は、罹患性及び不死性の有意な増加に関連する。20%もの症例において、特定の出血部位が、再手術中に特定され得る。手術による出血の典型的な起源としては、カニューレ挿入部位、近位及び遠位吻合部位、並びにITA及び静脈移植片の分枝が挙げられる。文献によれば、CABG患者の2〜3%は、出血について再探査を必要とし、20%もの患者が、輸血を必要とする過剰な術後出血を有する。
【0129】
止血組成物(複数可)は、いくつかの既知の製品にわたって以下の利点のうちの1つ又は2つ以上を有し得る。
1−例えば、大血管縫合線における出血を停止することができ、したがって血管内で止血を達成することにおいて限られた効力を有する、いくつかの既知の製品とは異なり、血管縫合線からの出血を著しく低減し、止めることができる。
2−加圧を必要とせずに止血を達成することができる。いくつかの既知の製品は、止血を達成するために圧力を加えること(例えば、ガーゼで手動圧縮すること)を必要とする。
3−血液中で活性化される。水分によって活性化されると、止血繊維及び/又は凝集体は、構造(例えば、凝塊/ゲルの形態)を利得し、止血を達成することができる。いくつかの既知の製品は、予形成された構造完全性を有する。
4−血中で設定可能であり、容易に流れず、止血を達成することができる。いくつかの既知の製品は、湿潤環境において限られた効力を有する。
5−出血部位に癒着することができるが、依然として可逆的であり、すなわち出血部位に癒着し、かつ洗浄に抵抗性であるが、外科矯正が必要な場合には、掻き落として除去し、アクセスを得ることができる。いくつかの既知の製品は、湿潤フィールドにおける癒着が限られているか、又は一旦適用された後に容易に除去できない場合がある。
【0130】
全ての引用される刊行物の内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0131】
材料及び方法。
【0132】
【表1】
調製に関する詳細は、下記を参照されたい。
【0133】
【表2】
【0134】
表2は、実験において使用されるCaCl中のカチオンの割合(組成物重量全体に基づくw/w)を示す。
【0135】
【表3】
【0136】
酸化再生セルロース(ORC)繊維の調製。
ORC繊維の製造プロセスは、ORC材料SURGICEL(登録商標)Original可吸収性止血剤で開始した。ORC材料を、2.54〜5.08cm(1〜2インチ)幅の断片に切断した後、布帛を小片に切断するブレードにその材料を供給した。次いで、切断されたORC布片を、2つの連続した粉砕プロセス(ハンマー粉砕及び空気分級機粉砕)によって、ORC微細繊維に摩砕した。異なる粉砕工程からの繊維を、最終凝集体に異なる繊維サイズを組み込むために、将来の使用のために取った。
【0137】
より具体的には、繊維を製造するためのプロセスは、SURGICEL(登録商標)Original布帛を切り開いて切断する工程と、得られる材料を、ハンマー粉砕を使用して粉砕する工程と、長尺微細繊維を得るための空気分級機における粉砕工程(複数可)と、任意選択で、異なるサイズの繊維を混合する工程とを含んだ。
【0138】
切り開き及び切断を実施して、布帛を、およそ2.54cm×7.62cm(1インチ×3インチ)の適切なサイズ片に切り開いて切断した。切り開き及び切断のために行われる主な操作は、布帛のロールを巻き戻し、布帛をストリップに切り開き、ストリップを切断して、切断された小片をサイズ決定し、第1の粉砕工程に送達することであった。
【0139】
第1の粉砕工程では、セルロース系布帛材料の処理片は、材料の色指数及び水溶性含有量に最小の影響を与えながら、切り開いて切断する工程で生成された中間粗繊維から、452μm未満のD90値及び218μm未満のD50値を有する材料に変換された。この工程での粉砕に使用されるマシンは、Fitzpatrickにより製造されるハンマーミル型モデルWJ−RS−D6Aであった。ハンマーミルは、497μmの円形スクリーンと、スクリーンを通過するまで布帛を分解して中間粗セルロース系繊維を生成するための一組のブレードとを備えていた。粉砕のパラメータは、約7000RPMのミル速度であり、処理温度は80℃未満であり、ブレード数は8(各々2つのインペラ)であり、ブレード型は225ナイフ、衝撃型ブレードであり、ブレード配向は、「衝撃」として設定された。
【0140】
第1の粉砕工程からの中間の粗繊維は、第2のミルに制御された速度で供給された。中間の粗繊維は、所望のサイズを得るために、空気分級装置を介して3回処理された。加えて、ある特定の実験では、空気分級機を通る最初の走流から取られた繊維は、最終凝集体の異なる繊維サイズを組み込むために抽出された。
【0141】
この工程(複数可)において、Quadro空気分級機F10を、粉砕速度8400rpm、送風機速度1800rpm、及び3通過で使用した。1通過後、得られた長尺ORC繊維は、177μm超のD90、及び95μm超のD50を有していた。3通過後、得られた微細ORC繊維は、177μm未満のD90値、及び95μm未満のD50値を有していた。
【0142】
粉体組成物の調製。
全ての粉体は、湿度制御された条件下で化学天秤を使用して計量された。相対湿度は、粉体調製プロセス全体にわたって20%を超えなかった。全ての粉体は、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50を有するORC微細繊維からなり、上記のように調製され(表1A)、各実施例において特定される比率で、350μm未満のD90、及び167μm未満のD50を有する長尺ORC繊維で補充された。実施例2における全ての粉体組成物はまた、5% CaCl、2.5% PS、及び2.5% εACAで補充された。例えば、実施例2及び図2において、10% L−ORCという組成物は、80%微細ORC繊維、10%長尺ORC繊維、5% CaCl、2.5% PS、及び2.5% εACAからなっていた。全ての割合は、組成物重量全体のw/wである。
【0143】
表1Bに詳述される全ての化合物は、粉体形態で提供された。
【0144】
各粉体混合物を、杵と臼に移し、粉体粒子が組成物内で均等/均質に分配されるまで完全に混合した。湿気の吸着を最小限にするために、粉体組成物は、バイアル内で保管し、プラスチックパラフィンフィルム(PARAFILM(登録商標))で密封した。
【0145】
凝集体の調製。
より高い体積比率当たりの質量を含む凝集体/顆粒を得るために、2つの工程を実施した。
I−粉体の圧密化(カプセル化)及び
II−カプセルの乾燥、粉砕/摩砕、及び篩分け
【0146】
下記の工程I及びIIの詳細を参照されたい。
【0147】
粉体の圧密化。
圧密化は、手動油圧プレス(Specac Atlas 13608キログラム(15トン)モデルGS15011)及び好適な排気可能なペレットダイを使用して実施し、このペレットダイは、10mmの直径を有する(Specac GS03100)。約300mgの粉体組成物(上記のように調製)を、およそ1.5〜2.0cmの高さまでペレットダイに装填した。次の工程では、金属製の棒(手動油圧プレス機器の一部である)を、粉体の上部に合わせ、それを使用して、手動油圧プレスにより3629キログラム(約1179キログラム/cm)(4トン(約1.3トン/cm)の圧力に到達させた。この工程に続いて、直径10mm、高さおよそ0.3cm〜0.5cmのカプセル(圧密化粉体)を形成した。カプセルをペレットダイから解放し、杵と臼によって半体に破壊して、次の乾燥工程のための表面積を増加させた。
【0148】
カプセルの乾燥、粉砕/摩砕、及び篩分け。
カプセルの半体を、真空オーブン(Cole Parmer真空オーブンモデル05017−05)で、37℃でおよそ16時間乾燥させて、任意の過剰な湿度を除去し(及び5%w/w未満の湿度に到達させ)、カプセルの粉砕を可能にした。乾燥したカプセルの半体を、IKA(登録商標)Works,Inc.チューブミルコントロール9737790を使用し、20,000rpmで30秒間摩砕/粉砕した。次の工程では、粉体を、MRC(篩のメーカー)篩加振器(モデルLS−200を強度レベル2で)1分間、2つの篩の組、420μmの孔径を有するものと、75μmの孔径を有するものとを通して勢いよく篩分けした。2つの篩の間に残る凝集体を回収し、室温(20℃〜27℃)で密閉バイアル内に保管し、使用するまでプラスチックパラフィンフィルムで密封した。この段階の最後に、全ての成分は、各々の最終的な顆粒/凝集体組成物中に存在し、その中で均質に分布していた。
【0149】
実施例1における組成物は、粉体形態であり、実施例2及び3における組成物は、凝集体形態であった。
【0150】
血液調製物。
実験1で使用された血液は、絶命したブタからLahav契約研究機関(contract research organization、C.R.O.)によって採取され、冷却した容器(4℃)内で送達された。血液採取時に、血液1リットル当たり5000IUのヘパリンを添加した[ヘパリンナトリウム−Fresenius 5000IU/1mL注射液、メーカー:BODENE(PTY)LTD、Intramedとして取引、カタログ番号:9207910LAB]。
【0151】
凝固を防ぐために、到着時に追加のヘパリンを添加した(血液1リットル当たり5000IU)。ヘパリン化した血液を、ボトルを数回反転させることによって緩やかに混合した。次の工程では、残留凝塊を除去するために、ヘパリン化した血液を、20μmポリプロピレンシリンジフィルター(EntegrisによるSVL25D20HQSA25)で濾過し、ポリプロピレン容器に収集した(ガラスによって誘導される血液凝固を防止するため)。濾過されたヘパリン化血液を、使用まで4℃で保管した。
【0152】
ブルーム試験。
ブルームは、ゲル又はゼラチンの凝集力を測定するために用いられる試験である。凝集力は、試験された材料/組成物の分子間の結合を表す。一般に、ブルーム試験は、4mmの陥没を生じさせるために、円筒状ピストン(12.7mmの直径を有する)によって、6.67%ゼラチンゲル(7.5gのゼラチンを105gの水に溶解することによって調製された)の遊離表面に加える必要がある力(グラム)の決定に関する。この試験の場合、ゲルは、典型的には以下の寸法、容量150mL、内径59mm、及び高さ85mmを有するガラス容器内で形成される。下降するピストンの速度は、30mm/分に設定される(米国特許第1540979号に記載されるブルーム試験を参照されたい)。
【0153】
下記の実施例では、修正されたブルーム試験を実施して、異なる試験粉体組成物が血液と混合されたときに形成された凝塊の凝集力を試験した。このパラメータを、各試験組成物の潜在的な止血効力の表示として評価した。一般に、より高い抵抗力(ブルーム試験における高い値)は、より高い凝集力と相関し、組成物が高い止血効力を有することを示唆する。低い抵抗力は、低い凝集力に相関し、組成物が低い止血効力を有することを示唆する。各試験粉体組成物によって誘導された凝集力を、非補充(微細)ORC繊維と比較して評価した。この結果は、非補充(微細)ORC繊維に対する抵抗力の増加倍数として提示される。
【0154】
修正されたブルーム試験を、以下のように実施した。
1)300mgの各試験粉体組成物を、7mLの管(内径:15mm、高さ50mm)に計量した。
2)2.5mLの血液(「血液調製物」で上記のとおり調製した)を、各粉体組成物に添加した。
3)乾燥粉体が視覚的に明らかでなくなるまで、管を3200rpmで勢いよく渦動させ、血液粉体組成物混合物を3分間培養して、凝塊形成を可能にした。
4)凝集力を測定するために、バイアルを、「Lloyd LFプラス」装置に置き、金属性の棒[1.27cm(0.5インチ)]を一定の事前設定した下降速度:5mm/分でバイアル内に挿入した。凝塊の中へ7mm伸長した地点における金属性の棒の移動に対する凝塊の抵抗力は、メガパスカル(MPa)単位で測定した。試験は、室温で実施した。
【0155】
縫合糸前臨床モデル。
拍動型エクスビボ心肺バイパス(CPB)モデルを使用して、生理学的状態をシミュレートした。このモデルは、
Sergeant,P.,Kocharian,R.,Patel,B.,Pfefferkorn,M.,&Matonick,J.(2016).Needle−to−suture ratio,as well as suture material,impacts needle−hole bleeding in vascular anastomoses.Interactive CardioVascular and Thoracic Surgery,22(6),813〜816.doi:10.1093/icvts/ivw042に記載されている。
【0156】
簡潔には、拍動型エクスビボ心肺バイパスモデルは、一連のポンプ及びチャンバを用いて、システム全体を通して血圧を生成、制御、及び維持した。このモデルは、ブタ頸動脈に出入りする血液を濾過するリザーバと、コンピュータ統合データ取得システムと、酸素化器と、熱交換器とからなる。流量インピーダンス及び容積区分調整が存在して、血量流及び圧力制御の微調整を可能にする。
【0157】
ブタ頸動脈内に配置された縫合からの血液損失を収集し、計量して漏出率を確立した。漏出率は、ある期間にわたって収集された血液の量として計算され、記録された。
【0158】
生理学的状態をシミュレートするために、以下のパラメータを使用した。
圧力120/80mmHg
パルス数72/分
血液温度33〜35℃
10,000IUのヘパリンを、1Lのドナーブタ血液に添加し、10mg/mLのプロタミン硫酸塩で滴定して、活性化凝固時間(activated clotting time、ACT)をおよそ369秒に調整した。ACTは、VetScan i−STAT可動式携帯型ユニット(Abbott Point of Care)及びI−STAT ACTセライトカートリッジ(Abbott Poing of Care、部品番号:600−9006−10)で測定した。
【0159】
ブタ頸動脈を周囲組織から単離し、システムに載置した。管クランプを使用して、組織を取付け具に固定した。頸動脈の両側の血流を制限し、頸動脈を、6−0 PROLENE縫合糸(8806H)及びBV−1針を用いて単純な連続パターンで縫合した。2分間にわたる血液損失質量を、ベースラインとして測定した。
【0160】
凝集体を縫合部位にわたって適用し、適用の完了に続いて4分間硬化させた。制限を取り除き、2分間にわたる血液損失質量を測定した。
【0161】
インビボモデルの肝臓生検パンチ。
成熟した約60kgの雌ブタを、外科的処置の前に24時間絶食させた。動物に、1150mg〜1400mgのケタミン、115mg〜140mgのキシラジン、7.5mgのミダゾラムで麻酔をかけた。麻酔をイソフルランで維持し、腹部を開いて肝臓を露出させた。平均動脈血圧、体温、及び心拍数は、外科的処置の全体にわたって継続的にモニタリングした。平均動脈血圧が60mmHgを下回った場合、実験を終了した。
【0162】
直径4mm×深さ2mmの生検パンチを肝臓ローブに対して実施し、標本を手術用鋏で切除した。パンチ部位を30秒間にわたって出血させ、出血強度を0〜5のスケールで視覚的に評価した。これにより、出血なしには0のスコアを与え、強度の出血には5のスコアを与えた。次いで、パンチ部位を清潔なガーゼで払拭して過剰な血液を除去し、100mgの試験凝集体組成物をパンチ空洞に注入した(例えば、5.0% CaCl、2.5% PS、及び2.5% εACAを含む凝集体組成物は、40mg/cm CaCl、20mg/cm PS、20mg/cm εACAと同等である)。
【0163】
合計量100mgの最終組成物が、0.4cmの直径を有する円形のパンチ上に適用される。したがって、この100mgの組成物を、π(0.2cm)が約0.126cmであるパンチの表面積に適用した。これは、793.65mg/cm(計算の結果:100mg/0.126cm)の最終組成物が使用されたことを意味する。
【0164】
CaClを5%の最終組成物濃度で使用する。したがって793.650.05は、約40mg/cmに等しい。
【0165】
PSを2.5%の最終組成物濃度で使用する。したがって793.650.025は、約20mg/cmに等しい。
【0166】
εACAを2.5%の最終組成物濃度で使用する。したがって793.650.025は、約20mg/cmに等しい。
【0167】
清潔なガーゼを使用して1分間、穏やかな圧力を手動で組成物に加えた。出血を4分間にわたってモニタリングし、その後、出血強度を0〜5のスケールで再度評価した。結果は、全ての複製から達成される完全な止血率の割合として提示される。
【0168】
実施例1:形成された凝塊の凝集力に対する長尺ORC繊維による微細ORC繊維補充の効果。
この実施例の目的は、長尺ORC繊維による微細ORC繊維の補充によって誘導される凝集力を調べることであった。この補充は、漸増量の長尺ORC繊維を微細ORC繊維に添加することによって実施した。この効果は、上記のように実施された修正されたブルーム試験を使用することによって評価した。微細ORC繊維を、長尺ORC繊維(w/w)と、それぞれ次の比率、100:0、90:10、80:20、及び70:30で混合した。
【0169】
図1は、非補充微細ORC繊維と比較して、異なる試験組成物に対して得られた抵抗力/凝集力の増加倍数を示す棒グラフである。
【0170】
修正されたブルーム試験の結果は、金属性の棒が、血液との接触時に試験組成物で形成されるゲルを、5mm/分の速度で動きながら7mmの伸長で通過するのに必要な力を示す。この力は、ゲルの抵抗のレベルを反映し(力が大きいほど、ゲルの抵抗が大きくなる)、順にゲルの凝集力のレベルを示している。凝集力は、組成物の分子が結合される強度を表す。棒がその定常的な動きを伴って進行するのに必要な力が大きいほど、ゲルの抵抗が大きくなり、凝集力が大きくなる。
【0171】
結果は、非補充微細ORC繊維から得られるものに対する凝塊抵抗の増加倍数として提示される。
【0172】
一般に、長尺ORC繊維による微細ORC繊維の補充は、凝塊の抵抗及び凝集力を増加させたことが分かる。
【0173】
結果は、微細ORC繊維と長尺ORC繊維との混合物が、凝血の凝集力を少なくとも1.5倍増加させたことを示す。
【0174】
実施例2:エクスビボモデルにおける長尺ORC繊維による微細ORC繊維補充の止血効力。
実施例1において得られた結果は、長尺ORC繊維による微細ORC繊維の補充が、繊維を血液と混合したときに形成される凝塊の凝集力を改善したことを示した。
【0175】
凝集力を改善した補充が、止血能力も改善し得るか否かを調べるために、次の量の長尺ORC繊維、組成物重量全体の0%、10%、又は25%、及び5% CaCl、2.5% PS、2.5% εACAを全て含む3つの組成物を、縫合エクスビボモデルにおいて試験した。
【0176】
図2に提示される結果は、微細ORC繊維が、10%長尺ORC繊維で補充されたときに得られる止血効力において、ほぼ2倍の増加を示す。長尺ORCの25%が使用されるとき、非補充微細ORC繊維に対して正の傾向が観察され得る。
【0177】
機序によって束縛されるものではないが、長尺繊維が、形成された凝塊の支持基準を提供し、これが凝塊構造の完全性を改善し、それにより凝塊を介した血液漏出の機会を低減し、止血効力を改善すると思われる。
【0178】
実施例3:インビボ試験によって決定される、止血効力に対する長尺繊維及び化合物による微細繊維の補充の効果。
以下の実施例は、化合物及び繊維補充のインビボ止血効果を調べる。結果は、上記のような肝臓生検パンチインビボモデルを使用し、雌ブタに対して実施された異なる前臨床実験から収集した。各実験の結果を異なる表(表3、4、及び5)に提示する。この実験において、様々な凝集体組成物を試験した。試験した凝集体組成物は、化合物及び長尺ORC繊維による補充を伴うか又は伴わないORC繊維であり、化合物及びORC繊維の濃度は、下記の表で特定される。補充凝集体は、10.0%(最終混合物重量のw/w)の長尺ORC繊維(表1Aのサイズ分布を参照されたい)及び77.5〜85.0%の微細ORC繊維のORC繊維の組み合わせを含んでいた。
【0179】
表は、完全な出血停止/完全な止血の成功率を一覧表示する。各実験において、微細ORC凝集体(任意の補充なし)をベースライン対照として、化合物及び長尺ORC繊維の補充の止血効力を調べた。
【0180】
【表4】
【0181】
このインビボモデルにおいて、試験条件下(表3〜5)では、長尺繊維及び3つの化合物(塩化カルシウム、PS、及びεACA)全てによる微細ORC繊維の補充によって優れた結果が観察された。正の効果は、特定の比率の補充成分で観察された。
【0182】
実施例2における結果は、10%の長尺繊維で補充し、5% CaCl、2.5% PS、及び2.5% εACAを含めることによって、止血に改善があったことを示す。
【0183】
この実験では、他の比率が負の効果を有し、止血効力を減少させたことも示されている。
【0184】
本開示の様々な形態について図示し説明したが、本明細書で説明した方法及びシステムの更なる適応が、当業者による適切な変更により、本発明の範囲を逸脱することなく達成され得る。そのような可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、他の改変も当業者には明らかであろう。例えば、上述の実施例、変形形態、幾何学形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって、必須ではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面において図示され、説明された構造及び動作の細部に限定されないものとして理解されたい。
【0185】
〔実施の態様〕
(1) 長尺セルロース系繊維及び微細セルロース系繊維を含む止血繊維及び/又は凝集体組成物であって、前記長尺繊維及び前記微細繊維が、それぞれ組成物重量全体の5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率であり、前記長尺繊維のサイズ分布が、177μm超のD90、及び95μm超のD50であり、前記微細繊維のサイズ分布が、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である、止血繊維及び/又は凝集体組成物。
(2) 前記長尺繊維の前記D90が、350μm未満であり、前記D50が、167μm未満である、実施態様1に記載の止血組成物。
(3) a)亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及び銅から選択される二価カチオン、
b)正に荷電したペプチド及び/又は多糖類、
c)ωアミノカルボン酸、並びに
d)上記のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む、実施態様1又は2に記載の止血組成物。
(4) プロタミン塩、カルシウム塩、及び、ε−アミノカプロン酸(εACA)を更に含む、実施態様1又は2に記載の止血組成物。
(5) 前記セルロース系繊維が、酸化再生セルロース(ORC)繊維である、実施態様1〜4のいずれかに記載の止血組成物。
【0186】
(6) 75〜420μmの範囲のサイズを有する凝集体の形態である、実施態様1〜5のいずれかに記載の止血組成物。
(7) 止血組成物の作製方法であって、
a)長尺繊維及び微細繊維を形成するようにセルロース系材料のサイズを低減する工程であって、前記長尺繊維のサイズ分布が、177μm超のD90、及び95μm超のD50であり、前記微細繊維のサイズ分布が、177μm未満のD90、及び95μm未満のD50である、低減する工程と、前記長尺繊維及び微細繊維を、それぞれ5%〜25%w/w及び95%〜75%w/wの範囲の比率で混合して、それにより止血繊維組成物を得る工程と、を含み、
b)任意選択で、工程a)で得られた前記止血繊維組成物が、凝集体の形態の止血組成物を得るための更なる工程に供され、前記工程が、i)前記止血繊維組成物を圧密化して、圧密化止血繊維組成物を得ることと、任意選択で、ii)前記圧密化組成物のサイズを低減することと、を含む、方法。
(8) 前記長尺繊維の前記D90が、350μm未満であり、前記D50が、167μm未満である、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記サイズの低減が、粉砕によって実施される、実施態様7又は8に記載の方法。
(10) 工程a)における前記サイズの低減には、前記セルロース系材料を切り開く及び/又は切断する工程が先行する、実施態様7〜9のいずれかに記載の方法。
【0187】
(11) 工程a)における前記サイズの低減が、2部プロセスであり、第2部が、空気分級機ミルにおいて実施される、実施態様7〜10のいずれかに記載の方法。
(12) 前記空気分級機ミルにおける前記粉砕が、前記長尺繊維を得るために1回、及び前記微細繊維を得るために3回実施される、実施態様11に記載の方法。
(13) 工程b)i)における前記圧密化には、前記止血繊維組成物を、任意選択で、11重量%〜18重量%の含水レベルまで加湿する工程が先行する、実施態様7〜12のいずれかに記載の方法。
(14) 前記加湿する工程が、前記止血繊維組成物中に吸湿性材料、任意選択で塩化カルシウムを含めることによって実施される、実施態様13に記載の方法。
(15) 工程b)ii)における前記サイズの低減には、前記圧密化組成物を除湿する工程が先行する、実施態様7〜14のいずれかに記載の方法。
【0188】
(16) 前記除湿が、5重量%未満の含水レベルまで実施される、実施態様15に記載の方法。
(17) 工程b)i)における前記圧密化が、スラッギングマシンを使用して、任意選択で25〜70kN/cmの範囲の力で実施される、実施態様7〜16のいずれかに記載の方法。
(18) 工程b)における止血凝集体を得ることが、75〜420μmの範囲の寸法を有する凝集体を生成することを目標とする、実施態様7〜17のいずれかに記載の方法。
(19) 前記セルロース系材料が、酸化再生セルロース布、酸化再生セルロース不織布、酸化再生セルロース織布、酸化再生セルロース編物、細断された酸化再生セルロース材料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様7〜18のいずれかに記載の方法。
(20) 前記長尺繊維及び微細繊維に、
a)亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及び銅から選択される二価カチオン、
b)正に荷電したペプチド及び/又は多糖類、
c)ωアミノカルボン酸、並びに
d)上記のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を添加することを更に含む、実施態様7〜19のいずれかに記載の方法。
【0189】
(21) 前記長尺繊維及び微細繊維に、プロタミン塩、カルシウム塩、及びε−アミノカプロン酸を添加することを更に含む、実施態様7〜19に記載の方法。
(22) 実施態様7〜21のいずれかに記載の方法によって得ることができる繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物。
(23) 実施態様1〜6、及び22のいずれかに記載の繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物を血液と接触させ、それによりゲルを形成する工程を含む、ゲルの形成方法。
(24) 実施態様23に記載の方法によって得ることができるゲル。
(25) 実施態様1〜6、及び22のいずれかに記載の繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物を含む容器と、任意選択でアプリケータ、担体、及び/又は使用説明書と、を含む、キット。
【0190】
(26) 出血創傷、創傷部位における細菌感染症の治療、部位における漏出の封止、部位における癒着の防止、及び/又は吻合部位からの漏出の最小化若しくは防止を、それを必要とする対象において行う方法であって、実施態様1〜6、及び22のいずれかに記載の繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物の有効量を、前記対象の前記創傷及び/又は部位の上及び/又は中に適用する工程を含む、方法。
(27) 前記適用が、前記創傷及び/又は部位に向かって前記組成物に圧力を加えることなく実施される、実施態様26に記載の方法。
(28) 出血を止めるため、封止、癒着の防止、及び/又は吻合部位からの漏出の最小化若しくは防止のための、抗細菌剤としての、実施態様1〜6、及び22のいずれかに記載の繊維及び/又は凝集体の形態の止血組成物の使用。
(29) 冠状動脈バイパス移植(CABG)手術における漏出を最小化又は防止するための、実施態様28に記載の使用。
図1
図2