(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0001】
(優先権)
本出願は、2015年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/254,737号及び2016年6月14日に提出された米国仮特許出願第62/349,981号の優先権を主張する。それぞれの内容は、その全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
細菌感染症、ウイルス感染症及び真菌感染症及び他の病気は、しばしばワクチン接種又は対象への薬剤の送達によって予防又は治療される。すべての動物、特に脊椎動物又は魚類、甲殻類などの無脊椎動物において、ワクチン、生物学的製剤及び他の薬剤の送達は、病気、死亡を予防するため又は全体的に良好な健康を維持するために、しばしば送達される。多くの畜産業及び養魚業において、すべての動物が効果的に治療されることを確実にすることが課題である。対象の数及びその大きさの変動は、各対象へのワクチン接種及び他の薬物の送達を困難にさせる。
【0003】
特に家禽産業に目を向けると、受精卵又はニワトリを薬剤で治療するいくつかの現行手法がある。これらは、
1)18又は19日目に「卵内で」(卵の内部で)行う孵化場での自動ワクチン接種、
2)「孵化後に」行う孵化場での自動マススプレーワクチン接種、
3)「孵化後に」行う孵化場での手作業注入ワクチン接種、
4)「成育場」で飼料又は水に加えるワクチン接種/投薬、及び
5)手作業又は大量噴霧器で雛に吹きかけるワクチン接種/投薬
を含む。
【0004】
家禽産業はワクチン又は他の薬に毎年30億ドル以上費やしているが、これらの投資に対する利益はワクチン又は他の薬物を送達する方法の問題により保証されない。前述の各方法は顕著且つ重大な不備を示している。第1に、E18/19に卵内で行われる孵化場での自動ワクチン接種はかなり普及している。しかしながら、このシステムには欠点がある。第1に、多くの対象のワクチンは、卵内投与に利用可能でなく、病気の性質によって利用可能にならない場合があり、及び/又は活性分子/粒子を運ぶのに必要な抱合体は、卵内で投与することができない。また、卵内ワクチン接種の現行の方法は、18又は19日目に卵全体の穴あけ/穿孔を必要とする。送達は、針を卵内に伸ばし、ワクチン/薬剤の注入液を投与する間、何らかの機械的手段によって卵を所定の位置に保持することを必要とする。この方法は、病原体及び細菌が卵に入ることを可能にし、胚に悪影響を与える可能性がある。卵内ワクチン接種の際、望ましくない卵(腐った卵又は死んだ胚を含む卵)も、穴を開けられる/穿孔される前に卵を静止位置に保持する機械的手段及び針と接触する。このため、他の卵及びワクチン接種システムに望ましくない汚染を広げる可能性が高い。このようにして、更なる処理の間、後続の生存卵への汚染物質の移動を可能にする。
【0005】
この汚染物質移動の影響を軽減するため、業界では、卵内ワクチン接種の一部として卵に抗生物質を導入及び注入し始めた。しかしながら、消費者は抗生物質で治療された家禽から遠ざかっている。このため、業界は、抗生物質の使用を排除しながら群れの健康を維持する異なるやり方で同じ病気を治療するための代替的な方法を見つける必要性を感じている。
【0006】
孵化場での「孵化後の」手作業のワクチン接種は、他の方法よりも信頼性が高いと考えられるが、研究によってこの方法も信頼性、再現性に欠け、雛のけが及び死亡を引き起こすことが示されている。孵化場は、信頼性の高いワクチン接種者を見つけだすという課題に直面しており、1日当たりの生成率の増加はこれをより困難にしている。これにより、すべての雛が有効にワクチン接種されることを確実にするという課題が高まり、全体的なコストが増加する。また、ワクチン接種の際に雛に触れなければならないので、手で触れる際に雛を傷つけた場合、雛にけが又は死亡の危険がある。更に、作業者は多数の雛にワクチン接種をしなければならないため、作業者は反復性のストレス障害を受ける。これは、家禽業者にとって経済的な生産性の損失をもたらす。
【0007】
代替的なアプローチは、ワクチン接種/投薬を飼育場の飼料又は水に加えることだった。この方法は、大部分の細菌について、雛の消化器系の病原体及び寄生虫が薬剤に耐性となっているという事実によって、部分的にしか有効でないことが判明している。この方法の部分的効果の一因となる他の因子は、飲料ラインの均一性がないこと、等しくない飲食量の結果としての等しくない投与量、及び一部のワクチンが水又は飼料内で非常に短い半減期を有することを含む。
【0008】
養魚業に関しては、魚は、人が食べるための益々大きな食物源となっている。海洋、川、湖の状態は、消費できる魚のより信頼できる供給源が養魚によって提供されるようなものである。しかしながら、養魚場又は魚の孵化場は、すべての魚を健康な状態に保つ上で家禽業と同様の課題を抱えている。
【0009】
魚の孵化場は魚を卵から育て、同年齢の魚を同じタンクに入れる。大量の魚を大型のタンクに入れ、成長するように飼料を与える。タンク内の狭い所にいる大量の魚は、病気の急速な広がりと大きな経済的影響をもたらす可能性がある。
【0010】
多くの場合、任意のワクチン、薬剤及び駆虫薬を、魚のタンク又は魚の飼料への液剤の投与によって送達することができる。しかしながら、一部の症状又は病気は、上記の方法によって治療可能でない場合がある。そのような場合、魚はワクチンや他の生物学的製剤を個別に注入する必要がある。現在の魚の注入方法では、前記作業に先立って魚の鎮静前に魚から飼料を除去する必要がある。鎮静された空腹の魚は機械的手段によって移動され、手動の又は機械的な配置手段によって手作業で又は自動的に注入される。これらの作業は魚にとって厳しく、死亡率及び広範なコストの増加をもたらすことが示されている。
【0011】
同様に、多くの畜産業において、すべての動物が効果的に治療されることを確実にすることは面倒な課題である。対象の数及びその大きさの変動は、各対象へのワクチン接種及び他の薬物の送達を困難にさせる。
【0012】
ここで豚に目を向けると、任意の特定の農場におけるすべての子豚にワクチン接種又は他の治療を施す能力に関しても同様の課題が存在する。各子豚が効果的に治療されることを確実にすることが重要であり、そうでなければ、1頭の病気の子豚が破壊的な経済的影響で農場全体に影響を及ぼす。
【0013】
豚に関しては、好ましくは鼻腔を通して送達される一部のワクチン又は治療薬がある。しかしながら、効果的に送達する能力は、幼い子豚が有効薬量を送達するのに十分な長い間容易に動かない状態に保たれず、送達中の動きが子豚の鼻軟骨又は脳に害を及ぼすことがある点で困難であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、動物に薬物を効果的に送達するための自動システム及び方法を対象とする。本開示の様々な態様は、本開示のすべての態様ではないがいくつかの態様を示した添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。実際には、本開示は、多くの異なる形態で具現化されることができ、本明細書に記載の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0018】
一実施形態は、たくさんのニワトリの孵化したての幼鳥に、それらが殻から分離された後で且つ孵化場から離れる前に薬物を送達することを対象とする。また、雛に関する本開示の態様による方法及びシステムは、限定されないが、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、及び外来種の鳥などを含むあらゆるタイプの家禽で使用することができる。
【0019】
別の実施形態は、牛への薬物の送達を対象とする。しかしながら、本開示の様々な態様による方法及びシステムは、バイソン、豚、ヤギ、羊、馬などを含むがこれらに限定されない、あらゆるタイプの家畜で使用することができる。更なる実施形態は、魚への薬物の送達を対象とする。本開示の様々な態様による方法及びシステムは、タラ、マス、サケ、ティラピアなどの養殖魚、並びにエビ、ロブスター、ホタテ貝、カキ、ハマグリ、ムール貝、ザリガニなどを含むがこれらに限定されない、あらゆるタイプの魚や甲殻類で使用することができる。更に別の実施形態は、豚への薬物送達を対象とする。同様の数字は、多数の図を通して同様の要素を指す。
【0020】
図1は、第1実施形態10のシステム全体の上面図を示す。
図2は、
図1のシステムの側面図を示す。第1実施形態10は、ニワトリ孵化場の孵化日の部屋に置かれる可能性が高い。雛/殻分離器12は、孵化したての幼鳥をその殻から分離するための手段を提供する。第1コンベヤー14は、雛/殻分離器12から分離壁16の開口部を通って、幅の広い第2コンベヤー18へと雛を移動する。分離壁16は、孵化プロセスを薬物送達プロセスから分離する。
【0021】
幅の広い第2コンベヤー18は、個々の雛の処理を容易にする雛の分散を開始しり。第2コンベヤー18から、第2コンベヤーよりも幅の広い第3コンベヤー20と第4コンベヤー22に雛が運ばれる。
図1から分かるように、第5コンベヤー24は、搬送アセンブリの上部から吊り下げられた仕切り26を有する。仕切り26は、最終的に個別の縦列になる狭い列に雛を移動するのを助ける。
【0022】
第6コンベヤー28は、第5コンベヤー24上で作成された個別の縦列内に雛を保つための仕切り26を含む。第6コンベヤー28は、仕切り26によって分離された個別の列の雛を一連の同様にそろっている傾斜コンベヤーベルト30上に移動する。
【0023】
個別キャリア装置32が、傾斜コンベヤーベルト30の下に配置される。各個別キャリア装置32は、
図3に示すように、カップ又はバスケットに類似し且つ1羽の雛13を受け入れるようにサイズ設定される。個別キャリア装置32は、相互連結され、コンベヤーシステムによって前進させられる個別キャリア経路に沿って移動する。各キャリア装置32は、各装置がそのヒンジ式連結部の周りで回転又は旋回することができるように、コンベヤーシステムに対してヒンジ式に取り付けられる。雛13が装置32から落ちないことを確実にするために回転の度合いを制限することができる。
【0024】
第1実施形態10は、注入システム42(
図4)を更に含む。注入システム42は、
図4に示すように、注入ヘッド44と、薬物リザーバ47と、加圧ガス供給源48と、作動機構50とを有する。加圧ガスは、予め加圧されたガスカプセルによって、或いは中央の圧縮機に取り付けられたガス配管によって、注入システム42に供給されることができる。
【0025】
作動機構50は、システムコントローラ38(
図4)と通信する。作動機構50は、加圧ガス及び薬物を活性化して、所定の投与量を雛13に送達する。薬物リザーバ47は、雛13への注入用のワクチン、薬剤又は生物学的製剤を含むことができる。
【0026】
注入システム42及びカメラ36は、キャリア装置コンベヤーシステム34の下で注入システム移動プラットフォーム45(
図4)上に取り付けられる。注入システムは、雛13の後部領域に注入液を送達するために効果的に動作する。したがって、注入システム42は、キャリア装置32内に直立して座っているそれらの雛13のみに注入するように設計される。注入システム移動プラットフォーム45は、キャリア装置コンベヤーシステム34に隣接してキャリア装置コンベヤーシステム34に対して平行に、同じ速度で動く。これにより、カメラ36は、移動中にキャリア装置32内の雛13の画像を取り込むことができる。これはまた、雛13がキャリア装置32内で移動している間に注入システム42を動作させることを可能にし、このことついては以下で更に詳細に説明する。
【0027】
コンベヤー制御システム40は、すべてのコンベヤーベルトの速度及び動作を制御する。システムコントローラ38は、
図5に概略的に示すように、カメラ36、コンベヤー制御システム40及び注入システム42と連通している。システムコントローラ38は、コンピュータプロセッサ及び画像プロセッサを含む。画像プロセッサは、カメラ36から画像を受け取り、それらを処理する。システムコントローラ38は、システム全体のすべてのセンサー、カメラ、コンベヤー、アクチュエータ及びI/O(入力/出力レシーバー及びドライバー)と通信する。システムコントローラは、すべてのシステムオペレーションを同期させ、システムの中枢部に作用する。I/Oは、構成要素を作動又は停止させ、システムコントローラは、コンピュータプロセッサと画像プロセッサから情報を取得し、特定のスプレーヘッドを作動させる。
【0028】
個別キャリア装置32の下には、
図1及び
図2に示すように第7コンベヤーベルト46がある。第7コンベヤーベルト46は、消費のために雛が飼育される成育場への移送用のコンテナに雛を集団で移動する。
【0029】
使用時、雛13は孵化するとすぐに、雛/殻分離器12において殻から分離される(
図1)。雛13は次に、第1コンベヤーベルト14上に移動する。雛13が移動しているとき、雛は、第2コンベヤーベルト18、第3コンベヤーベルト20、第4コンベヤーベルト22、第5コンベヤーベルト24及び第6コンベヤーベルト28上に移動する。各コンベヤーベルトは、第6コンベヤーベルト28上で個別の縦列になるまで、雛を更に引き離す。
【0030】
雛13は、第6コンベヤーベルト28(
図3)から傾斜コンベヤーベルト30上に移動し、傾斜コンベヤーベルト30が個別キャリア装置32内に雛を入れる。個別キャリア装置32の下では、カメラ36及び注入システム42が、注入システム移動プラットフォーム45上で平行に且つ同じ速度で移動する。カメラ36(
図4)は、キャリア装置32の下に配置される。カメラ36は、個別キャリア装置32内の雛13の少なくとも1つの画像を取り込む。カメラ36は、取り込んだ画像をシステムコントローラ38に送る。システムコントローラ38は、画像を処理し、個別キャリア装置32内の雛13の相対位置を決定する。
【0031】
キャリア装置32内の雛13の相対位置を決定した後、システムコントローラは、雛がワクチン接種のための所望の位置にある場合にはキャリア装置の下の注入システム42を作動させる。雛13が所望の位置にない(例えば、雛がまっすぐに座っていない)とシステムコントローラ38が決定した場合、システムコントローラ38は注入システム42を作動させない(
図5)。
【0032】
一旦作動されると、注入システム42(
図4)の作動機構50により、加圧ガス供給源48からのある量が、所定量の薬物をリザーバ47から注入ヘッド44を通って雛13に移動するように移動させる。好ましくは、送達時に、注入ヘッド44は、雛13に隣接しているか又は雛13と接触している。
【0033】
注入後、キャリア装置32は、キャリア装置コンベヤーシステム34の端部に移動する(
図3)。コンベヤーシステムが回転すると、ヒンジ式に連結されたキャリア装置32も回転する。これにより、キャリア装置32に保持された雛13は、伸長したヒンジ式スライド33上に、及び雛13がワクチン接種された場合には第7コンベヤーベルト46上に静かに落ちる。雛13がキャリア装置32内で適切な姿勢でなかったために注入を受けなかった雛の場合、ヒンジ式スライド33は垂直位置に引き戻され、雛はコンベヤー47上に静かに落ち、図示しない他の搬送装置によって戻り、コンベヤー24上に置かれ、プロセスを再び経て、注入を受ける。
【0034】
注入後、注入システム移動プラットフォーム45上のカメラ36及び注入システム42(
図4)は、それらの初期位置に引き戻され、個別キャリア装置32の下を再び移動し始める。移動プラットフォームの機能を制御する機構は、システムコントローラ38によって制御される。
【0035】
注入装置に関する上記の説明は無針装置に焦点を合わせているが、針注入装置も使用され得ると予想されることを理解されたい。注入によって送達されると想定されるワクチンには、マレック病及び七面鳥のヘルペスウイルス(HVT)ベクターワクチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
第2実施形態70を
図6に示す。第2実施形態70は、囲い72と、若い牛75などの家畜がそこを通って移動するように促すための一連の仕切り74とを含む。仕切り74は、平行に配置され、それぞれ前方ゲート77及び後方ゲート79を有する。前方ゲート77は、閉鎖されると、動物が前方ゲートを越えて前進し、仕切り74及び囲い72から出るのを防止する。後方ゲート79は、閉鎖されると、動物が仕切り74から後退して囲い72の中に戻るのを防止する。
【0037】
図6及び7に示す存在センサー76が、仕切り74の上又は仕切り74の近くに取り付けられ、一対の仕切りの間を移動する子牛75を感知するように配置される。
図6及び7に示す存在センサー73が、仕切り74の上又は仕切り74の近くに取り付けられ、前方ゲート77の近傍に到達する子牛75を感知するように配置される(
図7)。電子リーダ93が、家畜の電子識別タグ88を読み取るために仕切り74の上又は仕切り74の近くに取り付けられる。カメラが子牛75の完全な画像を得ることができ且つカメラに子牛がぶつからないように、カメラ78が仕切り74の上に取り付けられる。カメラ78は、子牛の少なくとも1つの画像を取り込み、画像は、右後肢の上部のような、子牛75の所定の標的領域を含むことができる。
【0038】
第2実施形態70は、自動注入システム82(
図8)を更に含む。注入システムは、対象動物、この場合は子牛75を治療するのに使用されるワクチン、薬品、生物学的薬剤又は他の薬剤のような薬物86で満たされたリザーバ84を有する。注入システム82はまた、加圧ガス供給源90及び注入ヘッド91を含む。加圧ガスは、予め加圧されたガスカプセルによって、或いは中央の圧縮機に取り付けられたガス配管によって、自動注入システム82に供給されることができる。
【0039】
図8に示す注入システム82は、注入システムの高さ、奥行き及び長さの自動調節を可能にするフレーム92に調節可能に取り付けられる。フレーム92は、仕切り74の1つ以上のような固定構造物に固定して取り付けられる。注入システム82の自動調節可能性は、子牛75の位置に対する注入システム82の高さ、幅及び奥行きを自動的に且つ遠隔で調節することができる機構(図示せず)によって達成される。調節可能性の詳細については、以下で更に詳細に説明する。
【0040】
加圧ガス供給源90(
図8)は、リザーバ84内の薬物86を子牛75に送達するために使用されることができる。加圧ガス供給源90及び薬物86の制御は、無針送達装置の当業者によって理解されることが分かる。
【0041】
システムコントローラ80は、
図9に概略的に示すように、存在センサー76、カメラ78、及び注入システム82と電子通信する。システムコントローラ80は、所定の投与量の薬物86を子牛75の所定の標的領域に送達するために、存在センサー76、存在センサー73、前方ゲート77、後方ゲート79、電子リーダ93(
図7)、カメラ78及び注入システム82と通信する。システムコントローラ80は、コンピュータプロセッサ及び画像プロセッサを含む。システムコントローラ80は、存在センサー73、ゲート77、79、電子リーダ93、カメラ78、及び注入システム82の動作を遠隔制御する能力を有する。また、システムコントローラ80は、カメラ78から受信した画像を処理する。この方法の詳細を以下でより詳細に説明する。
【0042】
使用時、
図6に示すように、囲い72は家畜の群れを保持するが、仕切り74は1頭の子牛75を一対の仕切りの間で前進させるように促す。子牛75が仕切り74の間を移動すると、存在センサー76が作動し、システムコントローラと通信して前方ゲート77を閉じ、子牛の更なる前方移動を防止する。続いて、子牛75が存在センサー73に達すると、システムコントローラ80は、後方ゲート79を閉じ、子牛75の後方移動を停止させ、子牛が仕切り74から後退することを防止する。この時点で、子牛75は、一対の仕切り74と、前方及び後方のゲート77、79との間で相対的に動かないように保持される。
【0043】
また、存在センサー73(
図6)は、カメラ78と通信して、子牛75の、特に子牛の所定の領域の相対位置のビデオ映像の取り込みを開始する。例えば、薬物を好ましくは右上後肢(「標的領域」)に送達する場合、カメラ78は、標的領域に焦点を合わせるように予めプログラムされることができる。画像カメラ78が子牛の標的領域の画像を取り込むと、画像はシステムコントローラ80に送られる。
【0044】
システムコントローラ80(
図9)は、画像を分析し、調節可能なフレーム92に取り付けられた自動注入システム82と通信する。システムコントローラ80は、自動注入システム82に信号を送って、標的領域に対する注入ヘッド91の高さ、角度又はそれ自体の長さ及び奥行きに対する必要な位置調節を行う。所定量の薬物がリザーバ84から引き出され、ガス供給源90からの加圧ガスを使用して注入ヘッド91(
図8)を通して子牛75の標的領域に注入される。
【0045】
注入が行われた後、システムコントローラは、子牛75が仕切り74から出て施設の別の部分に移動することを可能にする前方ゲート77(
図6)を開く。その後、後方ゲート79が開き、別の子牛75が仕切り74の間に移動することを可能にし、プロセスは繰り返す。
【0046】
電子リーダ93(
図7)は、一般的に子牛の耳に固定された識別タグ88をデジタルで読み取るように配置されることに留意されたい。この場合、電子リーダ93は、特定の子牛75を明確に識別するために、タグ88上で得られるデータをスキャンすることもできる。また、ワクチン接種が行われると、システムコントローラ80は、子牛のタグ94によってアクセス可能なそのデータベースに、ワクチン接種の種類及び送達日を記録する。更に、子牛75が囲い72内に戻った場合、システムコントローラ80は、電子リーダ92から識別情報を受信し、子牛75が既にワクチン接種されたことを認識した後、前方ゲート77を開き、子牛75を出て行かせて、子牛75の再ワクチン接種を防止する。
【0047】
第2実施形態70の注入システムは、豚、ヒツジ、ヤギ、バイソンなどの他の家畜にも適用できると予想される。仕切り74のサイズ及び間隔並びにフレーム90の調節可能範囲は、前述の異なる動物毎に変更される可能性が高いことが理解される。
【0048】
主に牛である家畜に送達され得るワクチン又は薬物は、黒脚症、悪性浮腫、腸性中毒症C及びD、IBR(牛感染性鼻気管炎)、PI3(牛パラインフルエンザ3型)、クロストリジウム、BRSV(牛RSウイルス)、パスツレラ菌、MLV−IBR/PI3、K−BVD、MLV−BRSV、ブルセラ症、及び/又はレプトスピラ症を含むが、これらに限定されない。
【0049】
主に羊である家畜に送達され得るワクチン又は薬物は、カンピロバクター、ビブリオ、クラミジア、ウェルシュ菌C及びD、破傷風、鼻腔内パラインフルエンザ、クロストリジウム、オルフ(伝染性膿疱性皮膚炎)及び/又は腐蹄症を含むが、これらに限定されない。
【0050】
第3実施形態100を
図10に示す。第3実施形態100は、魚104への薬物の送達を対象とする。第3実施形態100は、第1タンク106及び第2タンク108を含む。第1タンク106及び第2タンク108は、パイプ110によって接続される。パイプ110のサイズ及び長さは、タンク106、108に収容される魚104の種類によって決まる。
【0051】
図11に示すように、魚104がパイプに沿って第1タンク106及び第2タンク108に移動することを防止するために、前方袋及び後方袋112、114(
図11)がそれぞれパイプ110の両端に配置される。各袋112、114は、加圧流体源116(
図10)と連通し、遠隔で作動される。また、各袋112、114(
図11)は、迅速に膨張及び収縮させることができる。
【0052】
図12に示すように、左側方袋及び右側方袋118、120がそれぞれパイプ110の左右両側に配置される。上述した前方袋及び後方袋と同様に、右側方袋118及び左側方袋120も加圧流体源116と連通し、遠隔で作動される。左側方袋及び右側方袋118、120も迅速に膨張及び収縮させられる。
【0053】
図10に戻って、第1タンク袋122が、第1タンク106の底に配置される。同様に、第2タンク袋124が、第2タンク108の底に配置される。両方の袋122、124は、加圧流体システム116と連通している。加圧流体システム116は、各袋122、124へ出入りする流体の流れを制御し、これについては後に詳述する。タンク袋122、124は、第1タンク106及び第2タンク108と同様の容積を達成するのに十分な大きさである。
【0054】
図11に示す存在センサー126が、パイプ110に取り付けられ、後方袋114の近くに配置される。存在センサー126は、パイプ110内の魚104の存在を感知するように設計される。カメラ128も、前方袋112と前方袋114との間のパイプ110に取り付けられる。カメラ128は、好ましくは、パイプ110内の魚104のライブビデオ画像を取り込むことができるビデオカメラである。詳細には、カメラ128は、魚104の所定の標的領域のビデオ映像を撮影するように設計される。袋例えば、大西洋サケの下肋の下及び腹びれの後ろに注入液を送達することが望ましい。逆に、ティラピアでは、注入は多くの場合、胸びれの後ろに行われる。標的領域は魚の種類によって異なるので、カメラ128は、治療される対象魚の特定の所定の標的領域に焦点を合わせるように予めプログラムされる必要がある。
【0055】
図13は、注入用の薬物134のリザーバ132、加圧ガス源138(
図13)及び注入ヘッド140(
図14)を有する注入システム130を示す。注入システム130は、前方袋112と後方袋114との間のパイプ110の内部に取り付けられている。注入システム130は、処理される魚の種類に応じて、
図11に示すようにパイプ110の底部に、又は
図14に示すようにパイプ110の側面に取り付けることができる。
【0056】
注入ヘッド140(
図14)は、注入システム130内のフレーム(図示せず)に移動可能に取り付けられる。注入ヘッド140は、パイプ110の内壁に沿って軸方向及び半径方向に移動する能力を有することが分かる。注入ヘッド140の動きは、システムコントローラ146(
図15)によって遠隔制御される。
【0057】
存在センサー126、カメラ128、注入システム130及び加圧流体源116はすべて、システムコントローラ146(
図15)と通信する。システムコントローラ146は、コンピュータプロセッサ及び画像プロセッサを含む。システムコントローラは、存在センサー126、カメラ128、注入システム130及び加圧流体源116を遠隔制御することができる。システムコントローラ146は、カメラ128によって提供される位置情報を受信し、それを処理して、以下でより詳細に説明するように、注入ヘッド140の位置及び注入のタイミングを自動的に調節する。システムコントローラは、加圧流体源116と通信し、前方袋112、後方袋114、右側方袋118、左側方袋120、第1タンク袋122、及び第2タンク袋124を収縮及び膨張させる。
【0058】
使用時、魚104はすべて第1タンク106内に位置する。この例では、すべての魚104がサケであると仮定する。第1タンク106は、
図10に示すように、比較的大量の水及び多数の魚104を有する。第1タンク106は、パイプ110によって第2タンク108に接続される。第2タンク108は、少量の水を有し、好ましくは魚を有しない。前方袋及び後方袋112、114は、魚104がパイプ110に入るのを阻止するように膨張位置にある。
【0059】
魚104に薬物を送達するために、後方袋114が収縮される。これにより、魚104が第2タンク108に向かってパイプ110内へと泳ぐことを可能にする。しかしながら、存在センサー126は、パイプ内の魚104の存在を感知し、システムコントローラ146に信号を送る。システムコントローラは、魚104の第2タンク108への更なる前方移動を阻止するために、前方袋112を膨張させる。また、魚104が存在センサー126を越えて進むと、システムコントローラ146は、後方袋114を膨張させるように信号を送り、他の魚104がパイプ110に進入しないことを確実にする。
【0060】
存在センサー126はまた、カメラ128に信号を送って作動させる(
図11)。カメラ128は、魚104の所定の標的のビデオ画像を取り込む。これは魚の種類によって異なる場合がある。サケの場合、好ましい送達領域は、下肋と腹びれの後ろとの間の魚の下部である。
【0061】
カメラ128が魚104の所定の領域の画像を取り込むと、画像は処理のためにシステムコントローラ146に送られる(
図15)。カメラ128によって取り込まれた魚の位置に基づいて、システムコントローラ146は、注入を標的領域内に配置するために、魚104に対する注入ヘッド140の位置を必要に応じて遠隔で調節する。詳細には、システムコントローラ146は、カメラ128によって決定された魚104の位置に対する注入ヘッド140の高さ、幅及び奥行きを制御し、注入の作動を制御する。したがって、魚104がパイプ110に沿って所定の位置に移動すると、注入ヘッドの位置はそれに応じてシステムコントローラ146の制御下で調節される。
【0062】
注入ヘッド140の位置を制御するのではなく、システムコントローラが魚104の位置を制御し得ることも想定される(
図12)。前方袋112、後方袋114、右側方袋118及び左側方袋120の圧力を操作することによって、システムコントローラは、標的領域が注入ヘッド140に直接隣接するように魚104の位置を変えることができる。
【0063】
注入液が魚104に送達されると、システムコントローラ146は、前方袋112及び側方袋118、120と通信して、それらを迅速に収縮させる(
図12及び15)。側方袋118、120の収縮により、魚104はもはや拘束されない。前方袋112の収縮により、魚104は前方に移動して第2タンク108に入ることができる。その後、後方袋114が収縮され、別の魚104がパイプ110内に移動することを可能にし、プロセスは繰り返す。
【0064】
各魚104が第2タンク108内へと泳ぐと、第1タンク袋122及び第2タンク袋124がそれに応じて水の量を調節することに留意すべきである(
図10)。例えば、第1タンク106がその魚104の集団を第2タンク108に入れ始めると、第1タンク袋122はゆっくりと膨張し始める。そうするにつれて、第1タンク106内の水量は減少する。逆に、第2タンク108が第1タンク106からの魚104で満たされ始めると、第2タンク内の水量は増加する必要がある。第2タンク袋124はゆっくりと収縮し、その結果、魚104のより大きな集団を収納するようにタンク内の水量が増加することを可能にする。第1タンク袋122及び第2タンク袋124が膨張及び収縮する速度は、システムコントローラ146によって制御される。システムコントローラ146は、加圧流体源116と連通しており、このタスクを遂行するために、本明細書に記載された各構成要素に対する適切な弁を遠隔で開閉する。
【0065】
各タンク袋の頂部に上げ底が載ってタンクの表面をより均一にすることができることが更に理解される。これは、新しいタンクを補充する前に、第1タンク内の魚が完全に空になることを確実にする上で重要である。
【0066】
魚に関しては、送達することができるワクチン又は薬物は、サケ用のせっそう病ワクチン、コイのコイヘルペスウイルスを含むが、これらに限定されず、一部の商業的に重要な魚において、VHS(ウイルス性出血性敗血症)、白点病及び旋回病を治療するためにワクチン又は薬物を送達することができる。
【0067】
第4実施形態150を
図16に示す。第4実施形態150は、特定のワクチン及び他の薬剤の子豚への鼻腔内送達に焦点を合わせている。
【0068】
第4実施形態150は、
図16に詳細に示され、
図17に詳細に示される輪郭要素154を含む。各輪郭要素154は、輪郭要素154から延びるニップル156を有する。輪郭要素154は、子豚152の顔面を受けるように成形され、子豚の鼻を受けるように形成された空間を含む。また、輪郭要素154は、子豚152の鼻の端部が止まるように設計された鼻受け板158を有する。鼻受け板158は、輪郭要素154から外向きに突出する一対の中空指状突起160を有する。一対の指状突起160は、子豚がニップル156をその口に入れたときに、子豚152の鼻孔内に受け入れられるような大きさと間隔を有し、これについては以下で詳細に説明する。
【0069】
複数の輪郭要素154は、垂直壁などの表面に固定して取り付けられる(
図16)。各ニップル156は、
図18に示すように、システムコントローラ180と通信する圧力センサー159を備える。各ニップル156はまた、液体調合乳のタンク162に接続される。システムコントローラ180によって動作可能な弁166が、タンク162からニップル156への調合乳の流れを開閉する。
【0070】
一対の中空指状突起160は、両指状突起160が子豚の鼻孔に受け入れられると作動されるセンサー181を備える(
図17)。センサー181は、システムコントローラ180と通信し、
図17に詳細に示す加圧薬物送達システム168に接続される。
【0071】
加圧薬物送達システム168は、ワクチンのような薬物172の供給源を収容する容器170を含む。加圧薬物送達システム168はまた、薬物172の容器170と連通する加圧ガス源174と、圧力下で薬物の送達を始動及び終了させ、またシステムコントローラ180によって制御される制御機構176とを含む。
【0072】
したがって、加圧薬物送達システム168、及びニップル156を通る調合乳164の流れを制御する弁166は、システムコントローラ180を介して互いに電子通信する。このような通信の利点及び詳細な実施は、以下で第4実施形態150の動作を説明するときにより詳細に説明する。
【0073】
子豚が立って乳を飲む床は、ヒンジ192及びラッチ194を有するプラットフォーム190である。ラッチ194は、システムコントローラ180によって遠隔制御される。プラットフォーム190、ヒンジ192及びラッチ194は、既に薬物を受け取った豚が乳を飲むのを防ぐためのトラップドアのように作用する。プラットフォーム190の機能は、以下で更に詳細に説明する。
使用中、子豚152は、複数の輪郭要素154が固定的に取り付けられた保持領域に運ばれる。これは、一連のコンベヤーベルト及び仕切りによって行われてもよく、手作業で行われてもよい。最も効果的な結果のために、子豚152は空腹であり且つ/又は喉が渇いていることが望ましい。ニップル156が子豚152に示され、子豚は本能的にニップル156にくっついて吸い始めようとする。子豚152がニップル156にくっついて乳を飲み始めると、圧力センサー159が作動し、子豚152の存在をシステムコントローラ180に知らせる。一方、子豚の鼻は、輪郭要素154の鼻受け板158に受け入れられる。また、一対の指状突起160は子豚の鼻孔に受け入れられ、センサー181によって感知される。センサー181は子豚の鼻孔の係合をシステムコントローラ180に伝える。
【0074】
子豚152がニップル156を吸うと、調合乳164(
図16)の流れを制御する弁166がシステムコントローラ180(
図18)によって作動されて開き、調合乳の投与量がタンク162からニップル156を通って子豚の口に流れる。同時に、加圧薬物送達システム168も作動される。ワクチンなどの薬物172は、子豚152の鼻腔を通って加圧流体の下で送達される。送達の圧力は、鼻腔又は軟骨内を通して投薬量を送達するが、損傷を引き起こさないように設計される。
【0075】
加圧薬物送達システム168(
図18)がその投薬量を送達した後、加圧薬物送達システム168からシステムコントローラ180に信号が送られる。システムコントローラ180は、弁166を閉じるように動作させる。弁166を閉じることにより、調合乳164のニップル156への流れが止まり、子豚152はニップル156から離れるように促される。これは、輪郭要素154の後ろにニップル156を後退させることによって達成され得る。これは、子豚152の下の床のロボットによる下降など、子豚152とニップル156との間に障害を与えることによっても達成され得る。子豚152がもはやニップル156を吸うことができなくなると、子豚は更なる処理のために移動される。
【0076】
電子リーダ157(
図16)が一般的に子豚の耳に固定された識別タグ182をデジタルで読み取るように配置されることに留意されたい。この場合、電子リーダ157は、特定の子豚152を明確に識別するために、タグ182上で得られるデータをスキャンすることもできる。また、ワクチン接種が行われると、システムコントローラ180は、子豚のタグ182によってアクセス可能なそのデータベースに、ワクチン接種の種類及び送達日を記録する。
【0077】
子豚152が第4実施形態150に戻った場合、システムコントローラ180は、電子リーダ157から識別情報を受信し、子豚152が既にワクチン接種されたことを認識した後、子豚152の再ワクチン接種を防止する(
図16、17、18)。システムコントローラ180は、ニップル156又は薬物送達システム168からの調合乳の流れを作動させない。また、システムコントローラ180はラッチ194と通信してラッチ194を開く。これにより、プラットフォーム190がヒンジ192の周りを回転し、子豚が更なる処理のために下のレベルまで落ちることが可能になる。子豚が2回以上処理されるのを防ぐために、あらゆる装置が使用され得ることが想定される。上述のシステムは、限定ではなく例として提供される。
【0078】
特定のワクチン及び/又は薬剤は、好ましくは、子豚152の鼻腔又は軟骨を通して送達されることを理解されたい。これらは、マイコプラズマ、ヘモフィルス・パラスイス、プレウロニウモニア、アクチノバチルス、PRRS(豚繁殖・呼吸障害症候群)、豚インフルエンザ、及び豚PEDV(豚流行性下痢ウイルス)を含むが、これらに限定されない。
【0079】
上記の説明はワクチン及び薬剤に目を向けているが、当業者は、投与される薬物が、ヒトを含む家畜、哺乳類、又は様々な他の動物にワクチン接種、投薬又は処置するために使用される様々な薬物を含み得ることを理解するであろう。
【0080】
本明細書に記載された本開示の多くの改良及び他の態様が、上記の説明及び関連する図面に提示された教示の利益を享受する本開示が関係する当業者に思い浮かぶことが想定される。したがって、本開示は開示された特定の態様に限定されるものではなく、改良及び他の態様は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解すべきである。本明細書では特定の用語を使用しているが、それらは一般的且つ説明的な意味でのみ使用され、限定のためではない。