(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
N−{4−クロロ−2−ヒドロキシ−3−[(3S)−3−ピペリジニルスルホニル]フェニル}−N’−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)尿素の臭化水素酸塩;および1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでなる静脈内投与用の医薬組成物であって、該薬学的に許容可能な賦形剤が、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(Captisol(登録商標))、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤である、医薬組成物。
【背景技術】
【0002】
CXCR2は好中球に高度に発現されるケモカイン受容体であり、この受容体を通じたシグナル伝達は、損傷組織への炎症性細胞の動員を引き起こす。Morohashiら、Leukocyte Biol, 1995. 57:180 およびMcCollら、J. Immunology, 1999, 163:2829を参照のこと。CXCR2およびそのリガンドのいくつか(例えば、IL−8)は、ヒトでは炎症性呼吸器感染病態時に著しく上方制御されることが示されている。したがって、CXCR2受容体に結合することができ、CXCR2リガンド(例えば、IL−8)結合を阻害する化合物は、CXCR2リガンド産生の増加に関連した病態の治療に役立つ可能性がある。したがって、そのような化合物は、好中球のCXCR2リガンド誘導走化性およびT細胞サブセットに関連した炎症状態を治療し得る。
【0003】
急性ウイルス性および細菌肺感染は著しい免疫性炎症および粘液産生を引き起こし、気道の詰まり、呼吸困難、および入院をしばしばもたらす。現在の抗ウイルス治療および抗生物質は、症状発症直後に投与される場合、奏効の程度は様々である。感染病原体は疾患および病因に関与するが、感染に対する過度な免疫応答もまた、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)およびインフルエンザ(influenza:IFV)などの重症呼吸器疾患の病因に著しく寄与する。
【0004】
特に、RSV感染時の粘液過剰産生は、肺の末梢気道をブロックして適正な酸素交換を妨げるため、乳幼児にとって有害であることが知られている。RSV感染のマウスモデルにおいて、CXCR2を介したシグナル伝達は粘液過剰産生および気道過敏に寄与する。抗CXCR2抗体およびCXCR2
−/−マウスによる免疫中和は、RSV感染後の肺の粘液の著しい減少を示した。Tate, Reading. Plos One. March 2011, Volume 6, Issue 3。
【0005】
また、CXCR2リガンド抗体(MIP−2)で治療されたインフルエンザ感染マウスは、ウイルス複製および排除に影響を与えることなく、肺病理の改善と共に肺好中球数の減少を示したことも報告された。Miller, Lukacs. The Journal of Immunology, 2003, 170: 3348−3356。要約すると、CXCR2およびそのリガンドのいくつか(例えば、IL−8)は、ヒトにおいて呼吸器感染時に著しく上方制御されることが示されている。そのため、例えば過剰炎症、粘液過剰産生および気道過敏を含む呼吸器感染の複数の局面を標的にする、有益となり得る別の医学的療法が必要とされる。
【0006】
国際公開第2007/124424号には、本明細書では共に互換的に「ダニリキシン」と称する、化合物N−{4−クロロ−2−ヒドロキシ−3−[−3−ピペリジニルスルホニル]フェニル}−N’−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)尿素およびエナンチオマーN−{4−クロロ−2−ヒドロキシ−3−[(3S)−3−ピペリジニルスルホニル]フェニル}−N’−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)尿素を含む、IL−8により媒介される疾患状態の治療に有用な化合物が開示されている。
【0007】
ダニリキシンは、慢性閉塞性肺疾患の治療のために開発中の小さい、高親和性、選択性、および可逆性のCXCR2アンタゴニストである。Miller, E.ら、European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics 39.3 (2014): 173−181。ダニリキシンは、臨床前試験でin vitroおよびin vivoの両方でのCXCR2活性の潜在的な拮抗作用を実証してきた。その潜在能力および作用持続時間は、好中球の蓄積に関連した障害の治療における経口抗炎症剤としてのその潜在的な用途を支持するものである。好中性は、組織破壊的なプロテアーゼおよび他の媒介物の放出を介して、粘液過剰産生、気道狭窄および部分的には慢性閉塞性肺疾患またはCOPDに関連する肺機能の低下の原因である肺実質の破壊の、重要な引き金となっていると考えられている。Miller, Eら、European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics 39.3 (2014): 173−181。
【0008】
ダニリキシンはpH<2で最も高い溶解性を有している。したがって、経口摂取ダニリキシンの臨床開発では、胃の中での溶出性を最適化させて、小腸内で吸収されるように薬の溶液を送達することに焦点があてられた。胃内pHの上昇は、ダニリキシンの溶出性、さらにはその吸収に顕著な影響を及ぼす可能性がある。Miller, Eら、European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics39.3 (2014): 173−181。
【0009】
最近では、ダニリキシンの臭化水素酸塩が、経口投与後の遊離塩基と比較してより高いpHにおける改善した溶解性および溶出性のプロファイルを示すことが見出された。国際公開第2015/071235号を参照のこと。患者にはさらにプロトンポンプ阻害薬を摂取する者もいるために、より高い胃内pHを有することがある。そのような患者は、他の点では健康な患者と同一の遊離塩基への曝露を受けず、したがって、臭化水素酸塩の増加した溶出性および溶解性はそのような患者の曝露を増加させることに役立つ。
【0010】
したがって、例えば、救命救急セッティング(例えば、静脈内製剤)で患者に投与することができるダニリキシン臭化水素酸塩の改善された製剤を患者に利用可能にしておくことが有利であると思われる。当然、そのような任意の静脈内製剤は、十分な溶解性と同様に製品の保存期間にわたり化学的および物理的な安定性を示す必要があると思われる。
【発明の概要】
【0011】
一つの態様では、ダニリキシン、またはその薬学的に許容可能な塩;および1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤の医薬組成物が提供される。
【0012】
一つの態様では、N−{4−クロロ−2−ヒドロキシ−3−[−3−ピペリジニルスルホニル]フェニル}−N’−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)尿素とも称されるダニリキシンの臭化水素酸塩、特に、N−{4−クロロ−2−ヒドロキシ−3−[(3S)−3−ピペリジニルスルホニル]フェニル}−N’−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)尿素とも称されるダニリキシンのエナンチオマーの臭化水素酸塩が提供される。
【0013】
一つの態様では、Captisol(登録商標)、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤の1つ以上から選択される薬学的に許容可能な賦形剤が提供される。
【0014】
一つの態様では、臭化水素酸塩としてのダニリキシン、Captisol(登録商標)、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤を含んでなる医薬組成物であって、水中で再構成されたときのpHが約4である医薬組成物が提供される。
【0015】
一つの態様では、凍結乾燥されて凍結乾燥粉末を形成している、臭化水素酸塩としてのダニリキシン、Captisol(登録商標)、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0016】
一つの態様では、静脈内療法として使用するための、臭化水素酸塩としてのダニリキシン、Captisol(商標)、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0017】
一つの態様では、感染性疾患から発生する症状を治療するための静脈内療法で使用するための、臭化水素酸塩としてのダニリキシン、Captisol(商標)、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0018】
一つの態様では、呼吸管感染性疾患から発生する症状を治療するための静脈内療法で使用するための、臭化水素酸塩としてのダニリキシン、Captisol(商標)、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0019】
本出願の全体にわたって、化合物および組成物に関する様々な実施態様に言及されている。記載された様々な実施態様は、種々の実例となる例を提供することを目的としており、代替種の説明として解釈されるべきでない。むしろ、本明細書で提供される様々な実施態様の記載は重複した範囲であり得ることにも留意されたい。本明細書で議論された実施態様は単なる実例であって、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0020】
本明細書に使用される用語は、特定の実施態様のみを記載することを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することは意図されないと理解すべきである。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲では、以下の意味を有するものと定義される数多くの用語に言及がなされる。
【0021】
本明細書において、「化合物(compound)」、「化合物(compounds)」、「化学物質(chemical entity)」、および「化学物質(chemical entities)」は、本明細書に開示された一般式、その一般式の任意の亜属(subgenus)により包含される化合物、および化合物のラセミ体、立体異性体、および互変異性体を含む、一般式および下位一般式内の化合物の任意の形態を指す。
【0022】
本明細書において、「有効量(effective amount)」という用語は、例えば、研究者または臨床医によって、調査の対象である組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的な応答が引き出されるであろう薬品または医薬品の量を意味する。さらに、「治療上有効な量」という用語は、任意の量であって、そのような量を投与されていない対応する被験体と比較して、疾患、障害または副作用の改善された治療、回復、疾患、予防または緩和、あるいは疾患または障害の進行速度の減少をもたらす量を意味する。また、この用語の範囲には正常な生理機能を向上させるために有効な量も含まれている。
【0023】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient:API)を医薬製剤中に製剤化するために使用する物質を意味する。賦形剤(例えば、マンニトール、Captisol(商標)、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン酸ナトリウム、滑石、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなど)は、医薬開発の不可欠な部分であり、限定するわけではないが、製造における補助、薬品の安定性および効能の変更を含む、製品の所望のプロファイルを達成するために役立つものである。許容可能な賦形剤は無毒であり、本明細書に記載された少なくとも1種の化学物質の治療的有用性に悪影響を及ぼさない。そのような賦形剤は、当業者が一般的に利用可能な、あらゆる固体、液体、半固体またはエアロゾル組成物の場合にはガス性賦形剤であってもよい。
【0024】
さらに、「賦形剤」という用語は、可溶化剤、安定剤、担体、希釈剤、充填剤、pH緩衝剤、等張化剤、抗菌剤、湿潤剤および乳化剤(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンなど)を包含する。好ましくは、賦形剤はヒトおよび動物への投与に承認されているか、または安全であると考えられているものである。一般に、意図される投与様式に従い、医薬組成物は、化学物質を、約0.005重量%〜95重量%;特定の実施態様では約0.5重量%〜50重量%含有しているだろう。そのような投与形を調製する実際の方法は、公知であるか、または当業者にとっては明らかである;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照のこと。
【0025】
本明細書において、「凍結乾燥(lyophilization)」、「凍結乾燥された(lyophilized)」および「凍結乾燥された(freeze-dried)」は、乾燥させる材料がまず凍結され、真空環境中での昇華によって氷または凍結された溶媒が除去される方法を指す。「凍結乾燥粉末」または「凍結乾燥調製物」は、凍結乾燥(即ち、水溶液の凍結乾燥)によって得られた任意の固形物質を指す。水溶液は非水性溶媒を含有していてもよく、即ち、水性溶媒および1種以上の非水性溶媒から構成された溶液であってもよい。好ましくは、凍結乾燥調製物は、薬学的に許容可能な賦形剤としての水から構成される溶液を凍結乾燥させることによって固体材料が得られるものである。
【0026】
本明細書において、「薬学的に許容可能」という用語は、過剰な毒性、刺激または他の問題もしくは合併症のない、合理的な有益性/危険性の比率に見合った、適切な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適である化合物、材料、組成物および投与形を指す。
【0027】
本明細書において、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、当技術分野でよく知られた様々な有機および無機カウンターイオンに由来する薬学的に許容可能な塩を指し、単なる例示として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびテトラアルキルアンモニウムが挙げられ、分子が塩基性官能基を含有する場合には、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、およびシュウ酸塩などの有機または無機酸の塩を含む。好適な塩としては、P. Heinrich Stahl, Camille G. Wermuth (Eds.), Handbook of Pharmaceutical Salts Properties, Selection, and Use; 2002に記載されているものが挙げられる。
【0028】
当業者であれば、化合物の薬学的に許容可能な塩を調製してもよいことを理解するであろう。これらの薬学的に許容可能な塩は、化合物の最終的な単離および精製中にin situで、あるいは精製された化合物を、その遊離酸または遊離塩基の形態で、それぞれ好適な塩基または酸と別々に反応させることにより、調製してもよい。
【0029】
したがって、「化合物またはその薬学的に許容可能な塩」という文脈での「または」という用語は、化合物またはその薬学的に許容可能な塩(代替物)、あるいは化合物およびその薬学的に許容可能な塩(組合せ)のいずれかを指すと理解すべきである。
【0030】
本明細書において、「医薬組成物」という用語は、化合物および1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を表す。賦形剤は、組成物の他の成分と相溶性を有するという意味で許容可能でなければならず、その投与対象に対して有害であってはならない。本発明の別の態様によれば、薬剤またはその薬学的に許容可能な塩と共に1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物の調製方法も提供される。医薬組成物は、本明細書に記載された任意の病態の治療および/または予防に使用することができる。
【0031】
非経口投与(parental administration)に適合させた医薬組成物には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、および意図している投与対象の血液で組成物の等張性を与える溶質を含んでいてもよい水性および非水性の滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。組成物は、単位用量または複数用量での容器(例えば、密封したアンプル、バイアル)で提供され、滅菌液体担体(例えば、注射用水)を使用直前に追加することのみが必要な、凍結乾燥状態で保管してもよい。即席の注射溶液および懸濁液は、無菌の散剤、果粒剤および錠剤から調製してもよい。
【0032】
「ラセミ体」は、エナンチオマーの混合物を指す。本発明の一つの実施態様において、ダニリキシンまたはその薬学的に許容可能な塩は、言及される不斉炭素の全てが1つのコンフィギュレーションにある1種のエナンチオマーで鏡像異性的に富化される。一般に、鏡像異性的に富化された化合物または塩への言及は、特定のエナンチオマーが、その化合物または塩の全てのエナンチオマーの総重量の50重量%超を占めることを示すものである。
【0033】
化合物の「溶媒和物(solvate)」または「溶媒和物(solvates)」は、化学量論量または非化学量論量の溶媒に結合された、上記に定義された化合物を指す。化合物の溶媒和物は、全ての形態の化合物の溶媒和物を含む。特定の実施態様において、溶媒は揮発性、非毒性であり、および/または微量でのヒトへの投与に許容可能である。好適な溶媒としては水が挙げられる。
【0034】
「立体異性体(stereoisomer)」または「立体異性体(stereoisomers)」は、1つ以上の立体中心のキラリティーが異なる化合物を指す。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。
【0035】
光学的に活性な(R)および(S)異性体、ならびにdおよびl異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を用いて調製されてもよく、または従来の手法を用いて分割されてもよい。例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが所望される場合、このエナンチオマーは不斉合成により、またはキラル補助基による誘導体化により調製することができ、得られたジアステレオマー混合物は分離され、補助基が切断されて純粋な所望のエナンチオマーをもたらす。あるいは、分子がアミノ基などの塩基性官能基、またはカルボキシル基などの酸性官能基を含有する場合、ジアステレオマーの塩が適当な光学的に活性な酸または塩基を用いて形成され、続いて故に形成されたジアステレオマーが当技術分野で知られた分別結晶またはクロマトグラフィー手段により分割され、その後純粋なエナンチオマーが回収されてもよい。さらに、エナンチオマーおよびジアステレオマーの分離は、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーを、場合により化学誘導体化(例えば、アミンからのカルバメートの形成)と組合せて用いて達成されることが多い。
【0036】
「互変異性体」は、エノール−ケトおよびイミン−エナミン互変異性体、またはピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールなどの環−NH−部分および環=N−部分の両方に結合した環原子を含有するヘテロアリール基の互変異性体形態などの、プロトンの位置が異なる化合物の代替形態を指す。
【0037】
本発明のそのような化合物は、特定の幾何学的形態または立体異性形態で存在することができる。本発明には、(−)および(+)エナンチオマー、(R)および(S)エナンチオマー、(D)異性体、(L)異性体、そのラセミ混合物、ならびに鏡像異性的に富化された混合物などの他のその混合物を含む、全てのそのような化合物が包含される。追加の不斉炭素原子は、アルキル基などの置換基に存在してもよい。全てのそのような異性体、およびその混合物は、本発明に含まれることが意図される。
【0038】
患者の疾患を「治療する(treating)」またはその「治療(treatment)」とは、1)その疾患に罹患しやすい患者もしくは未だその疾患の症状を示していない患者において疾患が発生しないように予防すること;2)疾患を阻害すること、もしくはその進行を妨げること;または3)疾患またはその症状を緩和もしくは退行を引き起こすことを指す。
【0039】
ダニリキシン
ダニリキシンは、現在アメリカで慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)のための臨床試験で第2フェーズ中のCXCR2阻害剤である。ダニリキシンは米国特許第7,893,089号に記載されており、その特許は、引用することによりその全文を本明細書に組み込むものとする。国際公開第2015/071235号はダニリキシンの臭化水素酸塩形態に関するものである。ダニリキシンの化学名は、N−{4−クロロ−2−ヒドロキシ−3−[−3−ピペリジニルスルホニル]フェニル}−N’−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)尿素であり、本明細書では、互換的にそのエナンチオマー:N−{4−クロロ−2−ヒドロキシ−3−[(3S)−3−ピペリジニルスルホニル]フェニル}−N’−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)尿素とも称される。
【0040】
ダニリキシンの静脈内製剤を調製するためには、治療上効果的な化合物(ダニリキシン)が混合物全体の0.5〜90重量%の濃度で存在していることが意図される。しかしながら、ダニリキシンの水中での低い溶解性、および遊離塩基形態での不安定性により、従来のダニキシリンの製剤が静脈内での使用を可能にする調製物をもたらすことが阻止されている。ダニリキシンの安定した製剤の追求では、十分な生物学的利用能、安定性および他の薬学的に所望される特性を静脈内に送達させるために有用となるであろう様々な取り組みが行われてきた。このようなダニリキシンの静脈内製剤の改良は、後述する例1〜4でより詳細に記載されている。
【0041】
臭化水素酸塩としてのダニリキシンおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含有している、静脈内投与用のダニリキシンの本発明の製剤/組成物は、他の静脈内製剤に比べて利点を示し、これにより、例えば、ウイルス感染、またはウイルス性呼吸器感染性疾患、またはインフルエンザ感染、またはRSV感染などの特定の疾患を治療するため、またはそのような疾患の再発を治療するために使用することが特に好適となることが見出されている。
【0042】
特に、臭化水素酸塩IV製剤は、遊離塩基IV製剤と比較して、改善された安定性および減少したCaptisol(登録商標)の量を示す。そのため、本発明の一つの実施態様によれば、式I:
【化1】
の構造を有するダニリキシンまたは薬学的に許容可能な塩が提供される。いくつかの実施態様では、薬学的に許容可能な塩は臭化水素酸塩である。
【0043】
本発明の別の実施態様によれば、式II:
【化2】
の構造を有するダニリキシンまたは薬学的に許容可能な塩が提供される。いくつかの実施態様では、薬学的に許容可能な塩は臭化水素酸塩である。
【0044】
したがって、本発明の目的のためには、「ダニリキシン」という用語は、ともに既述のラセミ化合物形態またはキラル形態を指すことができる。
【0045】
代替の実施態様では、本明細書に記載された特定の賦形剤との独立の新規化合物としての、および非経口製剤としての、臭化水素酸塩の形態のダニリキシンも提供される。さらに、ダニリキシンのそのような臭化水素酸塩は、新規療法および本発明の組合せと一緒に使用してもよい。
【0046】
別の実施態様では、治療上有効な量のダニリキシンの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0047】
シクロデキストリンおよびそれらの誘導体は、例えば、米国特許第5,134,127号で教示されるように、一定の化合物の水溶解性を増強させることができる。しかしながら、この文献は、シクロデキストリンがダニリキシンまたは任意のそのようなCXCR2阻害剤に関係する化合物の水溶解性を増強させることができるかどうかに関しては触れていない。
【0048】
Captisol(登録商標)は、下記に示されるスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンの商品名であり、Ligand Pharmaceuticals Inc., Lenexa, Kansによって販売されている。Captisol(登録商標)は、医薬化合物の溶解性および/または安定性を改良するために、錯化剤として使用される。 Captisol(登録商標)の化学構造は以下のとおりである。
【0050】
表1は、Captisol(登録商標)に関する特定の関連情報を示す。
【表1】
【0051】
マンニトールはD−マンニトールとしても知られている。それはマンノースと関係する六価アルコールであり、ソルビトールと異性体である。そのCAS番号は69−65−8であり、分子量は182.17である。マンニトールは、医薬製剤で広く使用されている。それは一般に不活性であり、一度凍結乾燥させられると急速に再水和する。その一つの用途には、固く均質の固形物(cake)を生産するための担体として使用する場合の、凍結乾燥調製物が含まれる。マンニトールは、凍結乾燥物に安定した見事な構造を提供する充填剤に分類されるものである。共通の充填剤には、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロースならびにグリシン、ヒスチジンおよびアルギニンなどのアミノ酸が含まれる。また、これらの充填剤は、安定剤および等張化剤としての役割を果たすことができる。これらの充填剤の中でも、マンニトールおよびグリシンは、結晶化して凍結乾燥物に構造的な一体性を提供する傾向がある。マンニトールの化学構造は以下のとおりである。
【0053】
緩衝剤は、加工、保管および再構成中の薬品の分解を回避するためにpHを制御するので、凍結乾燥製剤では重要な薬剤となる。緩衝剤の選択は、有効成分のpH安定性プロファイルに依存することがある。理想的な緩衝剤は、限定するわけではないが、高い崩壊温度、非揮発性および凍結乾燥中に非結晶質のまま維持される能力を含む特性を有するべきである。先に言及した特性はより速い乾燥過程を促進し、有効成分の分解につながり得るpHドリフトを防止するであろう。そのような1種の緩衝剤である、クエン酸緩衝剤は非結晶質のまま維持され、これによってpHの変化を最小限に抑えることが見出された。したがって、一つの実施態様では、本発明の製剤(または互換的に使用される医薬組成物)に好適な緩衝剤は、クエン酸塩である。
【0054】
本発明の別の実施態様では、医薬組成物は薬学的に許容可能な賦形剤を含んでなり、さらにCaptisol(登録商標)を含んでなる。
【0055】
本発明の別の実施態様では、薬学的に許容可能な賦形剤はCaptisol(登録商標)およびマンニトールを含む。
【0056】
本発明の別の実施態様では、薬学的に許容可能な賦形剤は、Captisol(登録商標)、マンニトールおよびクエン酸緩衝剤の1つ以上を含む。
【0057】
本発明の別の実施態様では、医薬組成物のpHは3.5〜4.5の範囲である。
【0058】
本発明の別の実施態様では、医薬組成物のpHは約4.0である。
【0059】
本発明の別の実施態様では、本明細書に記載された医薬組成物は凍結乾燥されて凍結乾燥粉末を形成している。
【0060】
本明細書に記載されるように、ダニリキシンの凍結乾燥製剤は溶液から溶媒を除去した後に得られる。典型的には、溶媒として水が使用されるが、他の有機溶媒を個々にまたは組合せて使用することができる。使用された溶媒は、ダニリキシンと安定した溶液を形成しなければならず、薬品物質を明らかに分解または非活性化させてはならない。さらに、溶媒は、例えば、凍結乾燥または真空乾燥を介して薬品の水性分散体または溶液から容易に除去可能でなければならない。
【0061】
本発明に有用な典型的な製剤および凍結乾燥のサイクルは以下のとおりである。凍結乾燥は、凍結乾燥または真空乾燥のために標準的な設備を使用して実行することができる。サイクルは、充填量/仕上がりに使用する機器および設備に依存して変化させてもよい。
【0062】
本発明の典型的な実施態様によれば、水性の予備凍結乾燥した溶液または分散体は、まず薬学的に許容可能な配合容器中で製剤化する。その溶液は濾過して滅菌容器へと投入し、適当なサイズのバイアルに充填し、部分的に栓で塞ぎ、凍結乾燥機に投入する。本明細書に記載された凍結乾燥技術を使用し、溶液は所望の含水量に達するまで凍結乾燥する。結果として生じる凍結乾燥粉末は、滅菌注射用水または他の好適な担体で速やかに再構成することができ、投与に好適なダニリキシンの液剤が提供される。
【0063】
予備凍結乾燥した溶液または分散体は、通常以下によって薬学的に許容可能な担体中にまず製剤化される:
1.適当な水性の緩衝液を取って混合しながら水溶性賦形剤を添加すること、
2.混合しながらダニリキシン臭化水素酸塩を所望の濃度まで添加すること、
3.必要に応じて1N NaOHまたは1N HClを加えてpHを約3.5〜4.5に調整すること、
4.溶液を適当なバイアルに充填し、その後凍結乾燥機へ投入すること。
先の工程は特定の順番で示されているものの、当業者であれば必要に応じて工程の順序を変更することができるものと理解されたい。
【0064】
予備凍結乾燥した溶液または分散体は凍結乾燥の前に滅菌することができ、通常は適切なフィルターによる濾過を通じて事前形成される。複数の滅菌フィルターを使用することができる。溶液または分散体の滅菌は当技術分野で知られた他の方法(例えば、照射)によって達成することができる。さらに、最終滅菌を使用してもよい。
【0065】
この場合、溶液または分散体は滅菌後に凍結乾燥の準備ができる。一般に、濾過した溶液は、滅菌の受け入れ容器に導入し、次に、任意の好適な容器に移され、その中で製剤を効果的に凍結乾燥し得る。通常、製剤は、限定するわけではないが、例えば、本明細書に記載され、当技術分野で知られたバイアルなど、販売される製品が中に入った容器へと効果的かつ効率的に凍結乾燥させる。
【0066】
予備凍結乾燥した溶液または分散体の凍結乾燥で使用する典型的な手順は、以下に示すとおりである。しかしながら、当業者であれば、限定するわけではないが、例えば、予備凍結乾燥した溶液または分散体および凍結乾燥機器などのものに依存して手順またはプロセスを改良してもよいことを理解するであろう。
【0067】
まず、本発明の所定のダニリキシン製剤は、一定の範囲の温度下で凍結乾燥室内に置かれ、次に、通常は数時間、溶液の凝固点を十分に下回る温度に曝す。好ましくは、温度は約−40℃以下に約2時間である。その後、温度は−10℃以下で約3時間に上昇させて、その後−40℃以下に約2時間温度を維持する。凍結相とアニーリング相の間の傾斜率は1.5℃/分である。凍結サイクルが完了した後、凍結乾燥室は真空ポンプで脱気する。さらに、凍結乾燥室の脱気は圧力として約200ミリトールが得られるまで継続すべきである。乾燥相は約31時間この圧力および5℃で維持され、その後、温度は約5時間で50℃に上昇させる。
【0068】
その後、製品組成物をチャンバ内で真空下にて暖める。圧力として約200ミリトールが維持される。加温プロセスは、傾斜率として約1℃/分で、極めて徐々に行なわれることが好ましい。初期の乾燥中に、製品温度は約5℃に上昇し、約31時間維持されるべきである。第二乾燥相では、温度はその後約50℃に上昇し、約5時間維持される。
【0069】
一旦乾燥サイクルが完了すると、チャンバ内の圧力を滅菌した乾燥窒素ガス(または同等のガス)で大気圧(またはそのわずかに下)に放出させることができる。製品組成物がバイアルなどの容器中で凍結乾燥されていた場合、バイアルには栓をして、取り出し、密閉することができる。製品の品質を分析するために、様々な物理的、化学的および微生物学的な試験を行なうことを目的として、いくつかの代表的なサンプルを取り出すことができる。
【0070】
凍結乾燥製剤は、典型的には薬学的な投与形で販売されている。本発明の薬学的な投与形は、典型的にはバイアルの形態であるが、無菌環境を維持することができるアンプル、注射器、共バイアルなどの任意の好適な容器でもよい。材料がダニリキシン製剤と相互作用しない限り、そのような容器はガラス製またはプラスチック製であってもよい。密閉は典型的にはストッパーであり、最も典型的には滅菌ゴムストッパー、好ましくは密封をもたらすシリコーン化ストッパーである。典型的には、バイアルは、ダニリキシンをバイアル一つあたり約0.5〜10g、好ましくはバイアル一つあたり約1〜5gを含む凍結乾燥粉末を含有している。したがって、本発明の一つの実施態様では、ダニリキシンの凍結乾燥粉末、ガラス製バイアルおよび場合により注射器を含んでなるキットが提供される。
【0071】
本発明の凍結乾燥製剤は、水、好ましくは滅菌注射用水、または共溶媒などの他の滅菌流体で再構成して、非経口注射を介した投与のためのダニリキシンの適当な溶液を提供し、その後、例えば、生理食塩水を含めた適当な静脈内の混合剤容器へとさらなる希釈を行う。
【0072】
本発明の原則、好ましい実施態様および作動形態は上述されている。しかしながら、本明細書で保護することが意図される本発明は、開示された特定の形態に限定されて解釈されるべきではなく、その理由としては、これらは限定的というよりもむしろ例示と見なすべきだからである。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、変種および変更を行なうことができる。
【0073】
本発明の別の実施態様では、本明細書に記載された医薬組成物は静脈内投与される。
【0074】
本発明の別の実施態様では、医薬組成物は療法での使用のためのものである。
【0075】
本発明の別の実施態様では、医薬組成物は、CXCR2アンタゴニストが示される疾患または病態の治療に使用するためのものである。
【0076】
本発明の別の実施態様では、医薬組成物は、インフルエンザまたはRSVの治療に使用するためのものである。
【0077】
液体の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、少なくとも1種の化学物質および任意の薬学的アジュバントを、担体(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノール等)に溶解、分散等させて溶液または懸濁液を形成することにより調製することができる。注射剤は、液体の溶液もしくは懸濁液、エマルションとして、または注射前の液体への溶解または懸濁に好適な固体形態のどちらかで、従来の形態で調製することができる。そのような非経口組成物に含有される化学物質の割合は、その特異性のほか、化学物質の活性、および被験体のニーズに高度に依存する。しかし、溶液中0.01%〜10%の有効成分の割合が使用可能であり、組成物が、その後上記の割合まで希釈されることになる固体ならば、当該割合はより高くなる。特定の実施態様では、組成物は、溶液中に活性剤を約0.2〜2%の濃度で含むであろう。
【0078】
これらの手順は、所望の調製物に応じて成分の混合、造粒および圧縮または溶解を必要とし得る。薬学的に許容可能な賦形剤の形態および特徴は、それが組み合わされる有効成分の量、投与経路、および他のよく知られた変数によって決まることが理解されよう。賦形剤は、製剤の他の成分と適合し、その投与対象に有害でないという意味において「許容可能」でなければならない。
【0079】
使用される医薬賦形剤は、例えば固体または液体のどちらであってもよい。例示的な固体賦形剤は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等である。例示的な液体賦形剤は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、水等である。同様に、賦形剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の当技術分野でよく知られた遅延物質を、単独でまたはワックスと一緒に含んでもよい。幅広い薬学的形態を使用することができる。したがって、液体賦形剤が使用される場合、調製物は、アンプルなどの滅菌注射用液、または非水性懸濁液の形態となる。
【0080】
一般に、提供される化学物質は、類似の有用性をもたらす薬剤に対して認められている投与方法のいずれかにより、治療上有効な量で投与されるであろう。化学物質、すなわち有効成分の実際の量は、治療する疾患の重症度、被験体の年齢および相対的健康、使用する化学物質の効能、投与の経路および形態、ならびに他の要因などの多くの要因に依存するであろう。薬物は、1日1回または2回など、1日1回を超えて投与することができる。
【0081】
本明細書に記載された化学物質の治療上有効な量は、1日当たり投与対象の体重1キログラム当たり、約0.01〜20mgの範囲、例えば、約0.1〜10mg/kg/日、例えば約0.5〜5mg/kg/日となり得る。したがって、70kgの人への投与に関して、投与範囲は1日約1〜1000mgとなり得る。
【実施例】
【0082】
以下の例は、本発明の範囲内の特定の実施態様についてさらに記載し、例証するものである。これらの例は、単に例示を目的として記載するものであり、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、多数の変動が可能であるために、限定的なものとして解釈すべきではない。
【0083】
式Iおよび式IIの化合物は、当業者であれば、本明細書にその全文が組み込まれている米国特許第7,893,089号に記載された教示内容に従うことによって合成し得る。式Iおよび式IIのHBr塩は、当業者であれば、国際公開第2015/071235号に記載されている教示内容に従うことによって合成し得る。
【0084】
例1
遊離塩基ダニリキシンのIV製剤および安定性
表Aは、遊離塩基ダニリキシンのIV製剤1つ当たりの成分およびそれぞれの量を示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表Bは、表Aで製剤化されたダニリキシンの安定性を示す。この製剤では、安定させるために5℃での保管が必要であった。この条件での保管は、より高いコストならびに輸送および保管での煩雑性を招く。室温(25℃)では、不純物分解レベルが2週間後に既に規格限界(0.2%)に接近していた。たった1週間後に、30℃で保管したサンプルの不純物分解レベルは規格限界(0.2%)に接近していた。データから例証されるように、遊離塩基製剤の安定性への懸念に加えて、APIを可溶性にするために必要なCaptisol(登録商標)の量が多かったことも懸念であった。
【0087】
【表3】
【0088】
例2
ダニリキシンの凍結乾燥臭化水素酸塩のIV製剤
表Cは、ダニリキシンのHBr凍結乾燥製剤のIV製剤1つ当たりの成分およびそれぞれの量を示す。
【0089】
【表4】
【0090】
凍結乾燥を行うダニリキシンHBr塩の2mg/mlの溶液は、下記の手順に従って作製した。
【0091】
pH4の10mMクエン酸緩衝液を準備した。マンニトール(50mg)を緩衝液(0.5mL)に加え、溶解するまで混合した。Captisol(登録商標)(40mg)(バッチ容積の50%)を加え、溶解するまで混合した。ダニリキシンHBr2mgを溶液に加え、溶解するまで混合した。その溶液に滅菌水を用いて完全なバッチ容積にした。pHは、必要に応じて1N NaOHまたは1N HClを使用して、3.5〜4.5に調節した。溶液はバイアルに充填し、凍結乾燥させ、窒素でパージし、密封した。
【0092】
再構成のために、滅菌水をバイアルに加え、全ての材料が溶解するまで振盪させた。再構成時間は15秒間である。pHは再構成後に約4を保持した。
【0093】
例3
凍結乾燥サイクル開発
多数の凍結乾燥サイクルは、最も効率的な乾燥サイクルを達成するそれらの能力で評価することができる。乾燥サイクルを達成するためによく評価する変数には、凍結速度、一次乾燥温度、時間および製品への圧力が含まれる。現在の凍結乾燥プロセスは、下表Dで見ることができる。
【0094】
【表5】
【0095】
例4
ダニリキシンの凍結乾燥された臭化水素酸塩のIV製剤の安定性
表Eは、例2で製剤化されたダニリキシンの安定性を示す。この例では、界面活性剤のない4%Captisol(登録商標)でのこの製剤の安定性を示す。安定性は次を含む複数の時点での不純物のパーセント(Imp%)として測定した:5℃、25℃、40℃、および50℃の様々な温度ならびに60%および75%の相対湿度(RH)で、1週間、2週間および4週間。
【0096】
【表6】
【0097】
表Eのデータは、5℃と25℃を比較した場合、不純物の割合に増加がないことを示す。更に、その状態は2週間および1か月の時点まで及んだ。しかしながら、上昇した温度では、すべての時点で不純物プロファイルの増加があった。
【0098】
ダニリキシンのIV製剤の遊離塩基の安定性について表Bに示されたデータおよびダニリキシンのHBrIV製剤の安定性について表Eに示されたデータを合わせると、ダニリキシンのHBrIV製剤は、大幅に改善された保管期限およびより少ない量のCaptisol(登録商標)で、室温保管を可能にするという利点を提供する。
【0099】
【表7】