【課題を解決するための手段】
【0041】
したがって、本発明の主題は、式I
【化3】
のカルボプロストおよび
式Ia
【化4】
のそのトロメタミン塩を製造する方法であって、
一般式II
【化5】
のエノン(式中、Rは、水素原子または保護基を示す)の選択的アルキル化を行い、
結果として得られる一般式III
【化6】
のエノール(式中、Rは、上記に定義された意味を有する)を還元し、
結果として得られる一般式IV
【化7】
のラクトールのR保護基を除去し、
このようにして得られた式V
【化8】
のラクトールエピマーから式VI
【化9】
のカルボプロストエピマーをウィッティヒ反応で製造し、
カルボプロストエピマーをメチルエステルに転換し、式VII
【化10】
のメチルエステルエピマーをクロマトグラフィーによって分離し、
式VIII
【化11】
のエピマーを加水分解し、かつ所望により、トロメタミン塩に転換することによって行われ、
a.)選択的アルキル化は、キラル添加剤の存在下で非プロトン性有機溶媒中でグリニャール試薬を用いて実行されること、
b.)クロマトグラフィーは、シリカゲルでの重力クロマトグラフィーによって実行されること、
c.)トロメタミン塩の形成は、固体のトロメタミン塩基を用いて実行されること
を特徴とする、方法である。
【0042】
本発明による方法では、グリニャール試薬として、メチルマグネシウムクロリドまたはメチルマグネシウムブロミド、好ましくはメチルマグネシウムブロミドが、3〜4モル当量、好ましくは3.5モル当量の量で適用される。
【0043】
キラル添加剤として、
錯体形成キラル添加剤、好ましくは(S)−Taddolが、好ましくは1モル当量の量で適用される。
【0044】
R保護基として、エーテル、シリルエーテル、ベンジル、置換ベンジルまたはアシル基、好ましくはp−フェニルベンゾイル基が適用される。
【0045】
本発明による方法では、非プロトン性有機溶媒として、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンのようなエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;ジクロロメタンのようなハロゲン化溶媒、またはこれらの溶媒の混合物、好ましくはトルエンが適用される。
【0046】
メチル化は−80〜−20℃の間、好ましくは−50℃の温度で実行される。
【0047】
本発明によると、重力シリカゲルクロマトグラフィーは、適用される溶離液が塩基を含有する、または
わずかに塩基性(pH=7.5〜8.0)のシリカゲルが使用されるやり方で実行してよい。
【0048】
塩基として、有機塩基またはアンモニア、好ましくはトリエチルアミンを使用してよく、塩基の量は、好ましくは0.1%である。溶離液として、ジクロロメタン:トリエチルアミンまたはジクロロメタン:アセトン:トリエチルアミン混合物を使用してよい。
【0049】
わずかに塩基性のシリカゲル、例えば40〜70マイクロメートルの粒子サイズのChromatorex MB球状シリカゲルを使用してよい。溶離液として、好ましくはアセトン−ジクロロメタン勾配混合物が使用される。
【0050】
本発明による方法では、塩の形成は、無水極性有機溶媒中で実行され、極性有機溶媒として、アルコールおよび/またはケトン、好ましくはイソプロピルアルコールおよび/またはアセトンを使用してよい。
【0051】
本発明による方法は
図8に示されている。
【0052】
本発明による方法の大きな利点は、除去することが困難な15−(R)−異性体(R−IIIエピマー不純物由来である15−エピ−カルボプロスト不純物)の量が0.5%以下であるカルボプロストトロメタミン塩を生成することである。
【0053】
不純物15−(R)は、合成の第1の工程でグリニャール反応によるアルキル化の間に形成される。
【0054】
本発明者らの方法の出発物質は、p−フェニルベンゾイル保護基を含有する式IIのエノンである。
【0055】
方法の重要な工程は、式IIのエノンのアルキル化である。アルキル化反応で達成できる立体選択性が高いほど、形成される望ましくないエピマー((R)−III)の量が小さくなり、所望のエピマー((S)−III)およびそれから誘導されるさらなる中間体の精製もより容易かつより経済的になる。
【0056】
本発明者らの方法では、可能な限り選択的なアルキル化(メチル化)を実現し、望ましくないエピマーを可能な限り経済的に除去することを目標とした。
【0057】
保護されたPG−エノンである出発化合物自体がキラル化合物であるため、たとえ反応の中心が不斉中心から比較的離れていても、キラル添加剤を添加することなく、アルキル化が良好な選択性で進行することが原理的に可能である。この好例が、WO2008/081191A1の特許明細書で与えられており、キシレン、トルエンまたはこれらの溶媒の混合物中で−78℃で、トリエチルシリルによって保護されたPG−エノンを5当量のメチルマグネシウムクロリドと反応させる。アルキル化では、(S:R)=70:30という非常に好ましいエピマー比が達成された。
【0058】
反応の選択性は、反応条件(溶媒、反応温度、試薬、添加順序)および出発物質の構造に依存すると考えられる。
【0059】
CHINOINプロスタグランジンの生産の過程で作られるPG−エノン中間体は、p−フェニルベンゾイル保護基(II)を含有する。しかし、エノンのメチルマグネシウムブロミドとの反応から、(S)−III:(R)−IIIエピマーが55:45の比で得られた。
【0060】
トルエン中、トリエチルアミンの存在下でメチルマグネシウムブロミドを用いてアルキル化を実行しても、低い選択性の程度(55:45)は変化せず、驚くべきことにキラルS−ジメチル−1−フェニルエチルアミン塩基の存在下では、選択性は消失した。
【0061】
トリメチルアルミニウムおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールから製造した試薬をPG−エノンに添加することにより、選択性は63:37に増大した。
【0062】
選択性を増大させるために、様々なキラル添加剤の存在下でアルキル化が実行された。
【0063】
可能性のあるキラル添加剤(表1):
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
メチルマグネシウムブロミドの場合、アルキル化剤の(S)−Taddolが、(S)−III:(R)−III=70:30という比が得られる最も効率的な添加剤であることが明らかになったため、本発明者らはこの反応を詳細に研究した。アルキル化はエーテル型およびハロゲン化溶媒中ならびにトルエン中で実行された。
【0067】
反応は−50℃で実行されたが、その理由は−70℃および−80℃というより低い温度では反応が減速し、その上エピマー比が改善されなかったためである。−25℃というより高い温度では、多くの副生成物が現れた。
【0068】
(S)−III:(R)−IIIエピマー比に対する(S)−Taddolの量の効果(表2)
(溶媒:トルエン、反応温度:−50℃)
【0069】
【表3】
【0070】
上記の結果から、(S)−Taddolキラル補助剤の最適な量が1モル当量であることが明らかである。より小さい量を採用することは、エピマー比がより良好ではなくなるが、より過剰な量を採用することはさらなる効果をもたらさない。
【0071】
(S)−III:(R)−IIIエピマー比に対する溶媒の効果(表3)
(S)−Taddolの量は1モル当量、MeMgBrの量は3.5モル当量、
反応温度:−50℃
【0072】
【表4】
【0073】
驚くべきことに、グリニャール反応に典型的なエーテル型溶媒中ではなくトルエン中で、非常に良好な収率に加えて、(S)−III:(R)−III=70:30という最良のエピマー比が達成された。
【0074】
特に興味深いことに、クロロホルム中ではS/R選択性が逆転した。
【0075】
反応を実現するために、3.5モル当量を超える量のグリニャール試薬のメチルマグネシウムブロミドが選択された。したがって、本発明者らの方法では、グリニャール試薬(MeMgCl)が5モル当量を超える量で適用されたWO2008/081191の特許明細書よりも少量のグリニャール試薬が使用される。
【0076】
さらなる利点は、反応が、引用した特許明細書にて適用された−78℃の代わりに、より高い温度である−50℃で実行される点である。
【0077】
本発明者らはまた濃度の効果についても調査した。しかし、研究した領域(5、8および10倍過剰量の溶媒)では、濃度はエピマー比に影響を与えなかった。最も適切な溶媒過剰量は8倍過剰量であった。より濃縮された反応混合物は、撹拌することが困難であったが、一方でより希釈された溶液中では反応速度が低下した。
【0078】
驚くべきことに本発明者らは、アキラルトリエチルアミンの存在下でのトルエン中のグリニャール反応が、予測されていた50:50%の比の代わりに、(S)−III:(R)−III=55:45のエピマー比を結果的にもたらすことを見出した。しかし、トリエチルアミンおよび(S)−Taddolの併用作用が、塩基を使用せずに達成した70:30の選択性をさらに高めることはなかった。
【0079】
グリニャール反応では、最良のエピマー比(70:30)は、トルエン中で−50℃にて3.5モル当量のメチルマグネシウムブロミド試薬および1モル当量の(S)−Taddolキラル補助材料を使用して達成された。
【0080】
本発明者らの現在の知識による(S)−IIIおよび(R)−IIIエピマーの分離は、非常にコストのかかる分取HPLCによってのみ可能であるため、本発明者らはこの中間体のレベルでは分離を目標にしなかった。反応の最後に反応混合物は希釈された酸で分解された。後処理に後、相当量の(S)−Taddolが混合物から結晶化した。残りの(S)−Taddolはヘキサン−酢酸エチルおよび酢酸エチル溶離液で洗浄することによってシリカゲルカラム上で濾過して除去された。
【0081】
回収した(S)−Taddolは立体選択性のグリニャール反応中で再使用できる。
【0082】
IIIのエピマーの分離はコストのかかる分取HPLC法によってのみ可能であるため、本発明者らはエピマーを分離する他の方法を探索した。
【0083】
シャープレスエポキシ化は一般にアリルアルコールの速度論的光学分割に使用することができる。(Kinetic resolution of racemic allylic alcohols by enantioselective epoxidation.A route to substances of absolute enantiomeric purity?、V.S.Martin、S.S.Woodard、T.Katsuki、Y.Yamada、M.Ikeda、K.B.Sharpless、JACS、103、6237〜6240頁(1981年)。)
【0084】
分離の基礎として、キラル補助材料の存在下では、2つのエピマーアリルアルコールのエポキシ化は、望ましくないエピマーのみがエポキシドを形成し、所望のエピマーは未反応のままである形で実行することができる。1:1エピマー混合物から出発し、0.5モル当量のエポキシ化試薬を使用し、理想的な場合では、所望のエピマーが50%の収率、純度100%で得られる。
【0085】
シャープレスエポキシ化では、通常の酸化剤はtert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、キラル補助材料はD−またはL−酒石酸のジエチル(DET)またはジイソプロピルエステル(DIPT)、触媒はチタン酸テトライソプロピルである。
【0086】
本発明者らの場合は、(D)−酒石酸ジイソプロピルエステル((D)−DIPT)キラル補助材料の存在下で、望ましくないエピマー((R)−III)のエポキシ化がより高速で生じた。50:50%のエピマーエノール混合物から出発して、得られる式IIIの化合物のエピマー純度は70%であった。
【0087】
式IIIのエノールのエピマー組成が70:30だった場合、エポキシ化反応はこの比を変化させなかった。したがって、エピマーを分離するこの方法は除外された。
【0088】
ラクトン還元
(S)−Taddolキラル補助材料の存在下で製造されたエノールIIIの(S)70:(R)30エピマー混合物のラクトン基は、プロスタグランジンの化学合成でしばしば使用される条件下で、DIBAL−H試薬を用いてテトラヒドロフラン中−75℃で還元された。
【0089】
後処理後に得られたIV PPB−ラクトールエピマー(4つの異性体の混合物)の分離は、アセトン、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン−ヘキサン混合物中または上記の溶媒の混合物中での結晶化では成功しなかった。
【0090】
加メタノール分解
式IVのラクトールエピマーのp−フェニルベンゾイル(PPB)保護基はメタノール溶液中で塩基(炭酸カリウム)の存在下で除去された。
【0091】
後処理後に得られた式Vのラクトールエピマー(4つの異性体の混合物)の分離は、アセトン、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン−ヘキサン混合物中または上記の溶媒の混合物中での結晶化では成功しなかった。
【0092】
ウィッティヒ反応
テトラヒドロフラン中でウィッティヒ反応が実行された。上方鎖を構築するために、式Vのラクトールエピマーを、カリウムtert−ブチレートを用いてテトラヒドロフラン溶媒中で、(カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(CBFBr)から遊離したホスホランと反応させた。後処理後に得られた式Iのカルボプロスト(R,S)は、エピマーを単離せずに次のエステル化工程に送られた。
【0093】
エステル化
15−エピマーの分離はカルボプロストエステルのレベルでは最も有望と考えられたため、本発明者らはエピマーの分離の可能性について詳細に調査した。
【0094】
本発明者らの目標は、非常にコストのかかる分取HPLC技術の代わりに経済的な重力クロマトグラフィーで分離を実行することであった。
【0095】
TLCおよびHPLC研究に基づき、製造したエステルのうちメチルエステルがエピマーの分離に最も適切であった。
【0096】
エステル、エーテル、およびケトン型ならびにハロゲン化溶媒を使用してクロマトグラフィーによる精製が実行された。
【0097】
ジクロロメタン:アセトン=2:1の溶離液混合物が使用されるAm.Chem.Soc.、96(18)、5865〜5876頁、1974年に記載された方法に加え、酢酸エチル:メチルエチルケトン、酢酸イソプロピル:メチルエチルケトンおよびメチルtert−ブチルエーテル:アセトン混合物でも良好な分離が達成された。
【0098】
エピマーの分離には、ジクロロメタン:アセトン=2:1の混合物が選択されたが、カルボプロストメチルエステルが弱酸性のシリカゲルの表面で分解されるという観察に基づき、以下の革新的な変更が導入された:
【0099】
酸に敏感な第三級アルコールのシリカゲルカラム上での分解を防止するためにクロマトグラフィー精製の溶離液中に0.1%のトリエチルアミンが混合された。
【0100】
粗カルボプロストメチルエステルの技術的な不純物は、クロマトグラフィーよってシリカゲルカラム上でメチルtert−ブチルエーテル:0.1%のトリエチルアミン、およびメチルtert−ブチルエーテル:アセトン:0.1%のトリエチルアミン溶離液混合物を使用して除去された。
【0101】
カルボプロストメチルエステルエピマーの分離は、ジクロロメタン:0.1%のトリエチルアミン、およびジクロロメタン:アセトン:トリエチルアミン=2:1:0.1%の混合物を使用して同一のクロマトグラフィーカラムでのクロマトグラフィーの反復によって完遂された。
【0102】
クロマトグラフィーの反復によって、望ましくないエピマーの量は特定の限界(≦0.5%)に低減することができた。
【0103】
望ましくないエピマーを特定の限界を満たすレベルで含有する蒸発させた主要なフラクションが次の工程に送られた。
【0104】
2回のクロマトグラフィーの間で、シリカゲルカラムは0.1%のトリエチルアミン:アセトン、および0.1%のトリエチルアミン:ジクロロメタン溶離液で洗浄して再生された。
【0105】
クロマトグラフィーはわずかに塩基性のシリカゲルが使用された場合でも良好に完遂することができる。最良の分離は40〜70の粒子サイズの球状シリカゲル(pH値:7.5〜8.0)であるChromatorex MBでアセトン:ジクロロメタン勾配混合物を溶離液として使用して達成された。この場合、0.1%のトリエチルアミンを溶離液混合物に添加することは不要であった。
【0106】
40〜70の粒子サイズの球状シリカゲルであるChromatorex MBの価格は、0.063〜0.200mmの不規則なシリカゲルであるGeduran Si60の価格よりも1桁上回るが、より高価なシリカゲルを適用しているため、(R,S)エピマーは1回のクロマトグラフィーで収率57%で分離することができ、結果として得られるカルボプロストメチルエステルは15−エピ異性体不純物を0.5%以下の量で含有する。
【0107】
加水分解
カルボプロストメチルエステルは、メタノール溶液中で、水酸化ナトリウム溶液での処理によってカルボプロストに加水分解された。酸性媒体中のエピマー化を防ぐためにカルボプロストを得るための酸性化は素早く実行されなければならない(Eur.J.Pharm.Sci.、3、27〜38頁(1995年))。
【0108】
塩の形成
トロメタミン塩を形成するため、カルボプロストをイソプロパノール中に溶解させ、溶液に固体のトロメタミン塩基を添加され、混合物を撹拌した。塩の形成が完了すると、反応混合物を濾過した。カルボプロストトロメタミン塩は、アセトン、酢酸エチルおよびヘキサンの添加によって結晶化された。
【0109】
トロメタミン塩は良好な収率で再結晶化することができる。
【0110】
US2013/0190404Aの特許明細書に開示された方法と比較した本発明者らの方法の利点は、本発明者らは水を使用しないため、本発明者らは水からカルボプロストを沈殿させるために大量の溶媒を使用する必要がないという点である。
【0111】
本発明者らの方法では、(S)−Taddolキラル補助剤の存在下で、本発明者らは70:30のエピマー比を達成した。この選択性はWO2008/081191の特許明細書に記載されたものと同一である。
【0112】
保護されたPG−エノン(TES−PG−エノンおよびPPB−PG−エノンのそれぞれ)からエピマー(R,S)エステル混合物までについて算出した2つの方法の全体の収率は、それぞれ75および86%であり、本発明者らが本発明者らの方法で達成した収率が10%高いことを意味する。
【0113】
粗エピマーエステル混合物の予備精製は両方の方法で重力カラムクロマトグラフィーで実行されるが、WO2008/081191の特許明細書はクロマトグラフィーの条件を開示していない。
【0114】
WO2008/081191の特許明細書では、異性体の分離はコストのかかる高圧分取クロマトグラフィーで実行されるが、一方、本発明による方法では、異性体は、時間およびコストを節約し、大規模で実現可能な重力クロマトグラフィーで分離される。
【0115】
クロマトグラフィーによる精製は、カルボプロストメチルエステルが酸性の性質のシリカゲル上で分解するという事実によってより困難なものとなる。良好な分離は溶離速度が分解速度よりも大きい場合にのみ達成することができる。この基準は比較的少量の注入された材料がシリカゲルカラムを高速で通過する高価な分取クロマトグラフィーによって満たされる。
【0116】
本発明者らの方法での重力クロマトグラフィーの適用可能性は、クロマトグラフィーに使用される溶離液に0.1%の塩基性添加剤、好ましくは低沸点の有機塩基、トリエチルアミンを添加することで、この塩基がシリカゲルの酸性部位に結合することによって、クロマトグラフィーカラム上で精製される材料の分解を妨げるということから構成される革新的認識によって可能になる。クロマトグラフィーはまた、弱塩基性(pH=7.5〜8.0)の性質のシリカゲルを適用する場合にも良好な効率で実行することができる。この場合、中性の溶離液もカルボプロストメチルエステルエピマーの分離に適切である。
【0117】
本発明者らの方法のさらなる利点:
キラル触媒は高価であるが再生可能であり、90〜95%再使用可能であるものの、トリエチルクロロシランの使用もまた高価であり、生産コストを大きく増大させる。
【0118】
グリニャール反応はより高い温度(−78℃の代わりに−50℃)で実行され、グリニャール試薬の量はより小さい(5equの代わりに3.5equ)。
【0119】
WO2008/081191の特許明細書に最も好ましい精製方法として記載された逆相高圧クロマトグラフィー法では、精製生成物は水相中に存在し、生成物を得るためにさらなる抽出工程が必要とされ、生産時間が長くなる。本発明者らの順相の重力カラムクロマトグラフィー法は、品質の必要条件を満たすフラクションが一体化され、蒸発させ、精製生成物を得る。
【0120】
本発明のさらなる詳細は実施例によって示されるが、発明は実施例に限定しない。
【0121】
少なくとも0.01%の塩基性添加剤の使用が効果的であり、1%を超える塩基性添加剤の使用は実用的ではない。