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特許6862448カルボプロストおよびそのトロメタミン塩を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862448
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】カルボプロストおよびそのトロメタミン塩を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 405/00 20060101AFI20210412BHJP
   C07C 215/10 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALN20210412BHJP
   A61P 15/00 20060101ALN20210412BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20210412BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C07C405/00 503T
   C07C215/10
   !A61K31/5575
   !A61P15/00
   !C07B53/00 E
   !C07B53/00 F
   !C07B57/00 346
【請求項の数】24
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-528222(P2018-528222)
(86)(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公表番号】特表2019-502666(P2019-502666A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】HU2016000067
(87)【国際公開番号】WO2017093770
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年10月30日
(31)【優先権主張番号】P1500584
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】594129552
【氏名又は名称】キノイン・ジヨージセル・エーシユ・ベジエーセテイ・テルメーケク・ジヤーラ・ゼー・エル・テー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ペテル・ブーザ−ラントス
(72)【発明者】
【氏名】ジュジャンナ・カルドス
(72)【発明者】
【氏名】イレン・ホルトバージ
(72)【発明者】
【氏名】イシュトバーン・ラスゾォロフィ
(72)【発明者】
【氏名】イムレ・ユハシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラスズロ・フォナギー
(72)【発明者】
【氏名】チャバ・ヴァラディ
(72)【発明者】
【氏名】アグネシュ・ナジネ・ボルコ
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/081191(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0190404(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102816099(CN,A)
【文献】 特開昭52−017449(JP,A)
【文献】 Yankee, Ernest W.; Axen, Udo; Bundy, Gordon L.,"Total synthesis of 15-methylprostaglandins",Journal of the American Chemical Society,1974年,Vol.96(18),p.5865-5876
【文献】 Beat Weber, Dieter Seebach,Enantiomerically Pure Tertiary Alcohols by TADDOL‐Assisted Additions to Ketones or How to Make a Grignard Reagent Enantioselective,Angewandte Chemie International Edition in English,1992年,Vol.31(1),p.84-86
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 405/00
C07C 215/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
のカルボプロストおよび
式Ia
【化2】
のそのトロメタミン塩を製造する方法であって、
一般式II
【化3】
のエノン(式中、Rは、保護基を示す)の選択的アルキル化を行い、結果として得られる一般式III
【化4】
のエノール(式中、Rの意味は、上記の定義による)を還元し、結果として得られる一般式IV
【化5】
のラクトールのR保護基を除去し、式V
【化6】
のラクトールエピマーをウィッティヒ反応で反応させて、式VI
【化7】
のカルボプロストエピマーを得、カルボプロストエピマーをそれらのメチルエステルに転換し、式VII
【化8】
のメチルエステルエピマーのクロマトグラフィー分離を行い、式VIII
【化9】
のエピマーを加水分解ることによって行われ、
− 選択的アルキル化は、キラル補助剤の存在下で非プロトン性有機溶媒中でグリニャール試薬を用いて実行されること、
− クロマトグラフィーは、重力シリカゲルクロマトグラフィーによって実行されること、
トロメタミン塩を製造する場合には、トロメタミン塩は、前記加水分解の後に、固体のトロメタミン塩基を使用することによって形成されることを含む、前記方法。
【請求項2】
グリニャール試薬として、メチルマグネシウムクロリドまたはメチルマグネシウムブロミドドが適用されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グリニャール試薬として、メチルマグネシウムブロミドが適用されることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
メチルマグネシウムブロミドが、3〜4モル当量の量で適用されることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
メチルマグネシウムブロミドが、3.5モル当量の量で適用されることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
キラル補助剤として、錯体形成キラル補助剤が使用されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
錯体形成キラル補助剤として、(S)−Taddolが適用されることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(S)−Taddolが、1モル当量の量で使用されることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
R保護基として、エーテル、シリルエーテル、ベンジル、置換ベンジルまたはアシル基が適用されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
R保護基として、−p−フェニルベンゾイル基が適用されることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
非プロトン性有機溶媒として、ジエチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンのようなエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;ジクロロメタンのようなハロゲン化溶媒、またはこれらの溶媒の混合物が適用されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
溶媒として、トルエンが適用されることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
メチル化が、−80〜−20℃で実行されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
メチル化が、−50℃で実行されることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
重力シリカゲルクロマトグラフィーに使用される溶離液が、塩基を含有することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
塩基として、有機塩基またはアンモニアが適用されることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
塩基として、トリエチルアミンが適用されることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
トリエチルアミンの量が、0.1%であることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
溶離液として、ジクロロメタン:トリエチルアミンまたはジクロロメタン:アセトン:トリエチルアミン混合物が適用されることを含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
重力シリカゲルクロマトグラフィーにおいて塩基性のシリカゲルが適用されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
溶離液として、アセトン−ジクロロメタン勾配混合物が適用されることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
塩の形成が、無水極性有機溶媒中で実行されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
極性有機溶媒として、アルコールおよび/またはケトンが適用されることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
極性有機溶媒として、イソプロピルアルコールおよび/またはアセトンが適用されることを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、式I
【化1】
のカルボプロストおよび式Ia
【化2】
のカルボプロストトロメタミンを製造する新規の方法である。
【背景技術】
【0002】
カルボプロストトロメタミンは、Upjohn独自の製品である。適応症:妊娠中絶および出産後出血(分娩後出血)の停止。
【0003】
カルボプロストトロメタミンの最初の経済的でスケーラブルな合成は、Upjohnの化学者らによって記述された(非特許文献1)。
【0004】
15−メチル置換基は、トリメチルアルミニウムまたはメチルマグネシウムブロミドを用いてベンゾイルエノンから構築された(図1)。
【0005】
どちらの場合も、15−メチル−エピマーの比は1:1であった。エピマーはTLC法では分離できなかった。
【0006】
次の工程で、ラクトン基は水素化ジイソブチルアルミニウムを用いて還元された。ラクトン還元は、R=ベンゾイルもしくはトリメチルシリル保護基またはR=H原子を有するラクトンエピマーから実行された(図2)。
【0007】
上方鎖は、3つのラクトールエピマーすべてからウィッティヒ反応によって形成された(図3)。保護基は後処理操作の間に除去され、各場合で(R,S)カルボプロストエピマーが得られた。NaH/DMSO試薬を用いてカルボキシブチルホスホニウムブロミド(CBFBr)からホスホランが遊離された。
【0008】
(R,S)カルボプロストエピマー混合物はジアゾメタンを用いてエステル化され、(R,S)エステルエピマーをジクロロメタン:アセトン溶離液混合物を使用してクロマトグラフ処理すると、カルボプロストメチルエステルが得られた(図4)。
【0009】
特許文献1の特許明細書によると、K−またはL−セレクトライドを用いたPGE誘導体のオキソ基の還元によって、カルボプロストメチルエステルの合成で有用な中間体であるPGF誘導体がもたらされる。
【0010】
特許文献1の特許明細書は、PGE誘導体から出発するカルボプロストメチルエステルの製造を記載している。選択的触媒水素化は、各PGE2誘導体を提供し、これは、オキソ基の還元後に保護されたPGF2a誘導体を結果的に生じる。最後の工程では、シリル保護基が除去されて、カルボプロストメチルエステルが得られる。
【0011】
特許文献2の特許明細書では、カルボプロストは非特許文献1に記載された経路に従って製造される(図5)。
【0012】
カルボプロストメチルエステルを製造する上記方法の主な利点は、以下の通りである:
【0013】
グリニャール反応
トリエチルシリル保護基でエノンが保護されたこと、
メチルマグネシウムブロミドの代わりに、より経済的なメチルマグネシウムクロリドが使用されたこと、
試薬の量が、16モル当量から5モル当量に低減されたこと、
適用された溶媒が、THFの代わりにトルエンまたはキシレンの異性体であったこと。
【0014】
これらの変化の結果、ラクトンエピマーの比は所望のエピマーに有利な形で60:40から70:30に増大した。
【0015】
ラクトン還元
DIBAL−Hの量が、4.6〜5.4モル当量から3.5モル当量に低減された。
【0016】
ウィッティヒ反応
ウィッティヒ反応では溶媒(ジメチルスルホキシド)は変更されなかったが、カルボキシブチルトリフェニルホスホニウムブロミド(CBFBr)からのホスホランの遊離について、NaH塩基の代わりに、より燃焼性が低く、取り扱いが容易なNaNH2が適用された。
【0017】
ウィッティヒ反応の温度は20℃から−25〜10℃に下げられ、好ましくないトランスエピマーを6〜8%から3%に低減させるという結果をもたらした。
【0018】
トリエチルシリル(TES)保護基はウィッティヒ反応の後処理条件の間に開裂し、これはTES保護基を使用することの追加的な利点である。
【0019】
エステル化
スケーラブル性のより低いジアゾメタン法の代わりに、カルボプロストエピマーはアセトン中で、炭酸カリウムの存在下で硫酸ジメチルまたはヨウ化メチルを用いてエステル化された。
【0020】
これらの変更によって、保護されたエノンから出発したカルボプロストメチルエステルエピマーの収率は55%から75%に増大した。
【0021】
クロマトグラフィー
カルボプロストメチルエステルエピマーの分離には、順相および逆相分取HPLC法が適用された。
【0022】
順相分取HPLC:充填剤:Chiralpak AD
【0023】
溶離液:ヘプタンまたはヘキサンとアルコールとの混合物。最良の分離は、ヘプタン:エタノールまたはヘプタン:イソプロパノール混合物で達成された。
【0024】
逆相分取HPLC:
充填剤:Inertsil Prep ODS、溶離液:メタノール:水:アセトニトリルまたは
充填剤:YMC C8、溶離液:メタノール:水:アセトニトリル
【0025】
2つの代替的合成経路が提示された。
【0026】
第1の経路では、ラクトンエピマーを分取HPLC法によって分離し、純粋なRおよびSエピマーから出発してカルボプロストメチルエステルが製造された。この方法の間にはエピマー化は観察されなかったが、エピマーの分取分離はメチルエステルのレベルではより好ましいと述べられている。
【0027】
第2の経路では、下方鎖はより短い鎖のケトンから出発してペンチルマグネシウムブロミドを使用して構築された(図6)。
【0028】
この経路のラクトンエピマーの比は50:50%であり、したがって、この経路は除外された。
【0029】
特許文献3の特許明細書は、閉環に繋がるメタセシス(閉環メタセシス、RCM反応)によってプロスタグランジンを合成する一般的な方法を記載している。
【0030】
カルボプロストの場合、適切な中間体から出発し、グラブス触媒を使用することにより、1〜9のラクトンが製造され、保護基の除去およびラクトン環の開環後にカルボプロストメチルエステルが得られる(図7)。
【0031】
この方法の利点は、主要な中間体が光学的に純粋な材料から製造され、したがって、結果として得られるカルボプロストメチルエステルはR−エピマーを含有しない点にある。
【0032】
欠点は、この方法が大規模に実現することが困難な反応を適用しており、化学的に敏感な試薬を使用している点にある。
【0033】
特許文献4の特許明細書は、カルボプロストトロメタミンのX線回折およびDSCデータを公表している。この明細書は結晶化を記載している:カルボプロストを溶媒(アセトニトリル、アセトン、エーテルまたはC1〜4アルコール)に溶解させる。この溶液にトロメタミンの水溶液を滴加する。結晶を収集する。カルボプロストトロメタミンを水に溶解し、アセトンの添加後に、再び結晶を収集する。
【0034】
特許文献5の特許明細書は、高純度のカルボプロストトロメタミンの製造を開示している。
【0035】
粗カルボプロストエステルの精製は、極めて高価な固定相、好ましくは5〜10μmの粒子サイズ、順相、シアノ結合もしくはアミノ結合または球状シリカゲルで実行された。これらのシリカゲルの適用は高圧分取液体クロマトグラフィーを必要とする。高圧技術は時間およびコストがかかり、高価な耐圧設備、高純度の溶離液および列挙されている高価な固定相が必要である。
【0036】
HPLCによる純度≧99.5%、15−エピ−エピマー≦0.5%、5,6−トランス異性体≦0.5%。
【0037】
高純度のエステルを加水分解し、酸からトロメタミン塩を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】IN185790A1
【特許文献2】WO2008/081191
【特許文献3】WO2011/008756A1
【特許文献4】US2013/190404
【特許文献5】CN102816099A
【非特許文献】
【0039】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.、96(18)、5865〜5876頁、1974年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
本発明者らは、除去することが困難な15−(R)−異性体(15−エピ−カルボプロスト、((R)−III))の不純物の量が0.5%以下であるカルボプロストトロメタミン塩を製造する方法を詳説することを目標とした。
【課題を解決するための手段】
【0041】
したがって、本発明の主題は、式I
【化3】
のカルボプロストおよび
式Ia
【化4】
のそのトロメタミン塩を製造する方法であって、
一般式II
【化5】
のエノン(式中、Rは、水素原子または保護基を示す)の選択的アルキル化を行い、
結果として得られる一般式III
【化6】
のエノール(式中、Rは、上記に定義された意味を有する)を還元し、
結果として得られる一般式IV
【化7】
のラクトールのR保護基を除去し、
このようにして得られた式V
【化8】
のラクトールエピマーから式VI
【化9】
のカルボプロストエピマーをウィッティヒ反応で製造し、
カルボプロストエピマーをメチルエステルに転換し、式VII
【化10】
のメチルエステルエピマーをクロマトグラフィーによって分離し、
式VIII
【化11】
のエピマーを加水分解し、かつ所望により、トロメタミン塩に転換することによって行われ、
a.)選択的アルキル化は、キラル添加剤の存在下で非プロトン性有機溶媒中でグリニャール試薬を用いて実行されること、
b.)クロマトグラフィーは、シリカゲルでの重力クロマトグラフィーによって実行されること、
c.)トロメタミン塩の形成は、固体のトロメタミン塩基を用いて実行されること
を特徴とする、方法である。
【0042】
本発明による方法では、グリニャール試薬として、メチルマグネシウムクロリドまたはメチルマグネシウムブロミド、好ましくはメチルマグネシウムブロミドが、3〜4モル当量、好ましくは3.5モル当量の量で適用される。
【0043】
キラル添加剤として、錯体形成キラル添加剤、好ましくは(S)−Taddolが、好ましくは1モル当量の量で適用される。
【0044】
R保護基として、エーテル、シリルエーテル、ベンジル、置換ベンジルまたはアシル基、好ましくはp−フェニルベンゾイル基が適用される。
【0045】
本発明による方法では、非プロトン性有機溶媒として、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンのようなエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;ジクロロメタンのようなハロゲン化溶媒、またはこれらの溶媒の混合物、好ましくはトルエンが適用される。
【0046】
メチル化は−80〜−20℃の間、好ましくは−50℃の温度で実行される。
【0047】
本発明によると、重力シリカゲルクロマトグラフィーは、適用される溶離液が塩基を含有する、または
わずかに塩基性(pH=7.5〜8.0)のシリカゲルが使用されるやり方で実行してよい。
【0048】
塩基として、有機塩基またはアンモニア、好ましくはトリエチルアミンを使用してよく、塩基の量は、好ましくは0.1%である。溶離液として、ジクロロメタン:トリエチルアミンまたはジクロロメタン:アセトン:トリエチルアミン混合物を使用してよい。
【0049】
わずかに塩基性のシリカゲル、例えば40〜70マイクロメートルの粒子サイズのChromatorex MB球状シリカゲルを使用してよい。溶離液として、好ましくはアセトン−ジクロロメタン勾配混合物が使用される。
【0050】
本発明による方法では、塩の形成は、無水極性有機溶媒中で実行され、極性有機溶媒として、アルコールおよび/またはケトン、好ましくはイソプロピルアルコールおよび/またはアセトンを使用してよい。
【0051】
本発明による方法は図8に示されている。
【0052】
本発明による方法の大きな利点は、除去することが困難な15−(R)−異性体(R−IIIエピマー不純物由来である15−エピ−カルボプロスト不純物)の量が0.5%以下であるカルボプロストトロメタミン塩を生成することである。
【0053】
不純物15−(R)は、合成の第1の工程でグリニャール反応によるアルキル化の間に形成される。
【0054】
本発明者らの方法の出発物質は、p−フェニルベンゾイル保護基を含有する式IIのエノンである。
【0055】
方法の重要な工程は、式IIのエノンのアルキル化である。アルキル化反応で達成できる立体選択性が高いほど、形成される望ましくないエピマー((R)−III)の量が小さくなり、所望のエピマー((S)−III)およびそれから誘導されるさらなる中間体の精製もより容易かつより経済的になる。
【0056】
本発明者らの方法では、可能な限り選択的なアルキル化(メチル化)を実現し、望ましくないエピマーを可能な限り経済的に除去することを目標とした。
【0057】
保護されたPG−エノンである出発化合物自体がキラル化合物であるため、たとえ反応の中心が不斉中心から比較的離れていても、キラル添加剤を添加することなく、アルキル化が良好な選択性で進行することが原理的に可能である。この好例が、WO2008/081191A1の特許明細書で与えられており、キシレン、トルエンまたはこれらの溶媒の混合物中で−78℃で、トリエチルシリルによって保護されたPG−エノンを5当量のメチルマグネシウムクロリドと反応させる。アルキル化では、(S:R)=70:30という非常に好ましいエピマー比が達成された。
【0058】
反応の選択性は、反応条件(溶媒、反応温度、試薬、添加順序)および出発物質の構造に依存すると考えられる。
【0059】
CHINOINプロスタグランジンの生産の過程で作られるPG−エノン中間体は、p−フェニルベンゾイル保護基(II)を含有する。しかし、エノンのメチルマグネシウムブロミドとの反応から、(S)−III:(R)−IIIエピマーが55:45の比で得られた。
【0060】
トルエン中、トリエチルアミンの存在下でメチルマグネシウムブロミドを用いてアルキル化を実行しても、低い選択性の程度(55:45)は変化せず、驚くべきことにキラルS−ジメチル−1−フェニルエチルアミン塩基の存在下では、選択性は消失した。
【0061】
トリメチルアルミニウムおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールから製造した試薬をPG−エノンに添加することにより、選択性は63:37に増大した。
【0062】
選択性を増大させるために、様々なキラル添加剤の存在下でアルキル化が実行された。
【0063】
可能性のあるキラル添加剤(表1):
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
メチルマグネシウムブロミドの場合、アルキル化剤の(S)−Taddolが、(S)−III:(R)−III=70:30という比が得られる最も効率的な添加剤であることが明らかになったため、本発明者らはこの反応を詳細に研究した。アルキル化はエーテル型およびハロゲン化溶媒中ならびにトルエン中で実行された。
【0067】
反応は−50℃で実行されたが、その理由は−70℃および−80℃というより低い温度では反応が減速し、その上エピマー比が改善されなかったためである。−25℃というより高い温度では、多くの副生成物が現れた。
【0068】
(S)−III:(R)−IIIエピマー比に対する(S)−Taddolの量の効果(表2)
(溶媒:トルエン、反応温度:−50℃)
【0069】
【表3】
【0070】
上記の結果から、(S)−Taddolキラル補助剤の最適な量が1モル当量であることが明らかである。より小さい量を採用することは、エピマー比がより良好ではなくなるが、より過剰な量を採用することはさらなる効果をもたらさない。
【0071】
(S)−III:(R)−IIIエピマー比に対する溶媒の効果(表3)
(S)−Taddolの量は1モル当量、MeMgBrの量は3.5モル当量、
反応温度:−50℃
【0072】
【表4】
【0073】
驚くべきことに、グリニャール反応に典型的なエーテル型溶媒中ではなくトルエン中で、非常に良好な収率に加えて、(S)−III:(R)−III=70:30という最良のエピマー比が達成された。
【0074】
特に興味深いことに、クロロホルム中ではS/R選択性が逆転した。
【0075】
反応を実現するために、3.5モル当量を超える量のグリニャール試薬のメチルマグネシウムブロミドが選択された。したがって、本発明者らの方法では、グリニャール試薬(MeMgCl)が5モル当量を超える量で適用されたWO2008/081191の特許明細書よりも少量のグリニャール試薬が使用される。
【0076】
さらなる利点は、反応が、引用した特許明細書にて適用された−78℃の代わりに、より高い温度である−50℃で実行される点である。
【0077】
本発明者らはまた濃度の効果についても調査した。しかし、研究した領域(5、8および10倍過剰量の溶媒)では、濃度はエピマー比に影響を与えなかった。最も適切な溶媒過剰量は8倍過剰量であった。より濃縮された反応混合物は、撹拌することが困難であったが、一方でより希釈された溶液中では反応速度が低下した。
【0078】
驚くべきことに本発明者らは、アキラルトリエチルアミンの存在下でのトルエン中のグリニャール反応が、予測されていた50:50%の比の代わりに、(S)−III:(R)−III=55:45のエピマー比を結果的にもたらすことを見出した。しかし、トリエチルアミンおよび(S)−Taddolの併用作用が、塩基を使用せずに達成した70:30の選択性をさらに高めることはなかった。
【0079】
グリニャール反応では、最良のエピマー比(70:30)は、トルエン中で−50℃にて3.5モル当量のメチルマグネシウムブロミド試薬および1モル当量の(S)−Taddolキラル補助材料を使用して達成された。
【0080】
本発明者らの現在の知識による(S)−IIIおよび(R)−IIIエピマーの分離は、非常にコストのかかる分取HPLCによってのみ可能であるため、本発明者らはこの中間体のレベルでは分離を目標にしなかった。反応の最後に反応混合物は希釈された酸で分解された。後処理に後、相当量の(S)−Taddolが混合物から結晶化した。残りの(S)−Taddolはヘキサン−酢酸エチルおよび酢酸エチル溶離液で洗浄することによってシリカゲルカラム上で濾過して除去された。
【0081】
回収した(S)−Taddolは立体選択性のグリニャール反応中で再使用できる。
【0082】
IIIのエピマーの分離はコストのかかる分取HPLC法によってのみ可能であるため、本発明者らはエピマーを分離する他の方法を探索した。
【0083】
シャープレスエポキシ化は一般にアリルアルコールの速度論的光学分割に使用することができる。(Kinetic resolution of racemic allylic alcohols by enantioselective epoxidation.A route to substances of absolute enantiomeric purity?、V.S.Martin、S.S.Woodard、T.Katsuki、Y.Yamada、M.Ikeda、K.B.Sharpless、JACS、103、6237〜6240頁(1981年)。)
【0084】
分離の基礎として、キラル補助材料の存在下では、2つのエピマーアリルアルコールのエポキシ化は、望ましくないエピマーのみがエポキシドを形成し、所望のエピマーは未反応のままである形で実行することができる。1:1エピマー混合物から出発し、0.5モル当量のエポキシ化試薬を使用し、理想的な場合では、所望のエピマーが50%の収率、純度100%で得られる。
【0085】
シャープレスエポキシ化では、通常の酸化剤はtert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、キラル補助材料はD−またはL−酒石酸のジエチル(DET)またはジイソプロピルエステル(DIPT)、触媒はチタン酸テトライソプロピルである。
【0086】
本発明者らの場合は、(D)−酒石酸ジイソプロピルエステル((D)−DIPT)キラル補助材料の存在下で、望ましくないエピマー((R)−III)のエポキシ化がより高速で生じた。50:50%のエピマーエノール混合物から出発して、得られる式IIIの化合物のエピマー純度は70%であった。
【0087】
式IIIのエノールのエピマー組成が70:30だった場合、エポキシ化反応はこの比を変化させなかった。したがって、エピマーを分離するこの方法は除外された。
【0088】
ラクトン還元
(S)−Taddolキラル補助材料の存在下で製造されたエノールIIIの(S)70:(R)30エピマー混合物のラクトン基は、プロスタグランジンの化学合成でしばしば使用される条件下で、DIBAL−H試薬を用いてテトラヒドロフラン中−75℃で還元された。
【0089】
後処理後に得られたIV PPB−ラクトールエピマー(4つの異性体の混合物)の分離は、アセトン、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン−ヘキサン混合物中または上記の溶媒の混合物中での結晶化では成功しなかった。
【0090】
加メタノール分解
式IVのラクトールエピマーのp−フェニルベンゾイル(PPB)保護基はメタノール溶液中で塩基(炭酸カリウム)の存在下で除去された。
【0091】
後処理後に得られた式Vのラクトールエピマー(4つの異性体の混合物)の分離は、アセトン、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル、トルエン−ヘキサン混合物中または上記の溶媒の混合物中での結晶化では成功しなかった。
【0092】
ウィッティヒ反応
テトラヒドロフラン中でウィッティヒ反応が実行された。上方鎖を構築するために、式Vのラクトールエピマーを、カリウムtert−ブチレートを用いてテトラヒドロフラン溶媒中で、(カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(CBFBr)から遊離したホスホランと反応させた。後処理後に得られた式Iのカルボプロスト(R,S)は、エピマーを単離せずに次のエステル化工程に送られた。
【0093】
エステル化
15−エピマーの分離はカルボプロストエステルのレベルでは最も有望と考えられたため、本発明者らはエピマーの分離の可能性について詳細に調査した。
【0094】
本発明者らの目標は、非常にコストのかかる分取HPLC技術の代わりに経済的な重力クロマトグラフィーで分離を実行することであった。
【0095】
TLCおよびHPLC研究に基づき、製造したエステルのうちメチルエステルがエピマーの分離に最も適切であった。
【0096】
エステル、エーテル、およびケトン型ならびにハロゲン化溶媒を使用してクロマトグラフィーによる精製が実行された。
【0097】
ジクロロメタン:アセトン=2:1の溶離液混合物が使用されるAm.Chem.Soc.、96(18)、5865〜5876頁、1974年に記載された方法に加え、酢酸エチル:メチルエチルケトン、酢酸イソプロピル:メチルエチルケトンおよびメチルtert−ブチルエーテル:アセトン混合物でも良好な分離が達成された。
【0098】
エピマーの分離には、ジクロロメタン:アセトン=2:1の混合物が選択されたが、カルボプロストメチルエステルが弱酸性のシリカゲルの表面で分解されるという観察に基づき、以下の革新的な変更が導入された:
【0099】
酸に敏感な第三級アルコールのシリカゲルカラム上での分解を防止するためにクロマトグラフィー精製の溶離液中に0.1%のトリエチルアミンが混合された。
【0100】
粗カルボプロストメチルエステルの技術的な不純物は、クロマトグラフィーよってシリカゲルカラム上でメチルtert−ブチルエーテル:0.1%のトリエチルアミン、およびメチルtert−ブチルエーテル:アセトン:0.1%のトリエチルアミン溶離液混合物を使用して除去された。
【0101】
カルボプロストメチルエステルエピマーの分離は、ジクロロメタン:0.1%のトリエチルアミン、およびジクロロメタン:アセトン:トリエチルアミン=2:1:0.1%の混合物を使用して同一のクロマトグラフィーカラムでのクロマトグラフィーの反復によって完遂された。
【0102】
クロマトグラフィーの反復によって、望ましくないエピマーの量は特定の限界(≦0.5%)に低減することができた。
【0103】
望ましくないエピマーを特定の限界を満たすレベルで含有する蒸発させた主要なフラクションが次の工程に送られた。
【0104】
2回のクロマトグラフィーの間で、シリカゲルカラムは0.1%のトリエチルアミン:アセトン、および0.1%のトリエチルアミン:ジクロロメタン溶離液で洗浄して再生された。
【0105】
クロマトグラフィーはわずかに塩基性のシリカゲルが使用された場合でも良好に完遂することができる。最良の分離は40〜70の粒子サイズの球状シリカゲル(pH値:7.5〜8.0)であるChromatorex MBでアセトン:ジクロロメタン勾配混合物を溶離液として使用して達成された。この場合、0.1%のトリエチルアミンを溶離液混合物に添加することは不要であった。
【0106】
40〜70の粒子サイズの球状シリカゲルであるChromatorex MBの価格は、0.063〜0.200mmの不規則なシリカゲルであるGeduran Si60の価格よりも1桁上回るが、より高価なシリカゲルを適用しているため、(R,S)エピマーは1回のクロマトグラフィーで収率57%で分離することができ、結果として得られるカルボプロストメチルエステルは15−エピ異性体不純物を0.5%以下の量で含有する。
【0107】
加水分解
カルボプロストメチルエステルは、メタノール溶液中で、水酸化ナトリウム溶液での処理によってカルボプロストに加水分解された。酸性媒体中のエピマー化を防ぐためにカルボプロストを得るための酸性化は素早く実行されなければならない(Eur.J.Pharm.Sci.、3、27〜38頁(1995年))。
【0108】
塩の形成
トロメタミン塩を形成するため、カルボプロストをイソプロパノール中に溶解させ、溶液に固体のトロメタミン塩基を添加され、混合物を撹拌した。塩の形成が完了すると、反応混合物を濾過した。カルボプロストトロメタミン塩は、アセトン、酢酸エチルおよびヘキサンの添加によって結晶化された。
【0109】
トロメタミン塩は良好な収率で再結晶化することができる。
【0110】
US2013/0190404Aの特許明細書に開示された方法と比較した本発明者らの方法の利点は、本発明者らは水を使用しないため、本発明者らは水からカルボプロストを沈殿させるために大量の溶媒を使用する必要がないという点である。
【0111】
本発明者らの方法では、(S)−Taddolキラル補助剤の存在下で、本発明者らは70:30のエピマー比を達成した。この選択性はWO2008/081191の特許明細書に記載されたものと同一である。
【0112】
保護されたPG−エノン(TES−PG−エノンおよびPPB−PG−エノンのそれぞれ)からエピマー(R,S)エステル混合物までについて算出した2つの方法の全体の収率は、それぞれ75および86%であり、本発明者らが本発明者らの方法で達成した収率が10%高いことを意味する。
【0113】
粗エピマーエステル混合物の予備精製は両方の方法で重力カラムクロマトグラフィーで実行されるが、WO2008/081191の特許明細書はクロマトグラフィーの条件を開示していない。
【0114】
WO2008/081191の特許明細書では、異性体の分離はコストのかかる高圧分取クロマトグラフィーで実行されるが、一方、本発明による方法では、異性体は、時間およびコストを節約し、大規模で実現可能な重力クロマトグラフィーで分離される。
【0115】
クロマトグラフィーによる精製は、カルボプロストメチルエステルが酸性の性質のシリカゲル上で分解するという事実によってより困難なものとなる。良好な分離は溶離速度が分解速度よりも大きい場合にのみ達成することができる。この基準は比較的少量の注入された材料がシリカゲルカラムを高速で通過する高価な分取クロマトグラフィーによって満たされる。
【0116】
本発明者らの方法での重力クロマトグラフィーの適用可能性は、クロマトグラフィーに使用される溶離液に0.1%の塩基性添加剤、好ましくは低沸点の有機塩基、トリエチルアミンを添加することで、この塩基がシリカゲルの酸性部位に結合することによって、クロマトグラフィーカラム上で精製される材料の分解を妨げるということから構成される革新的認識によって可能になる。クロマトグラフィーはまた、弱塩基性(pH=7.5〜8.0)の性質のシリカゲルを適用する場合にも良好な効率で実行することができる。この場合、中性の溶離液もカルボプロストメチルエステルエピマーの分離に適切である。
【0117】
本発明者らの方法のさらなる利点:
キラル触媒は高価であるが再生可能であり、90〜95%再使用可能であるものの、トリエチルクロロシランの使用もまた高価であり、生産コストを大きく増大させる。
【0118】
グリニャール反応はより高い温度(−78℃の代わりに−50℃)で実行され、グリニャール試薬の量はより小さい(5equの代わりに3.5equ)。
【0119】
WO2008/081191の特許明細書に最も好ましい精製方法として記載された逆相高圧クロマトグラフィー法では、精製生成物は水相中に存在し、生成物を得るためにさらなる抽出工程が必要とされ、生産時間が長くなる。本発明者らの順相の重力カラムクロマトグラフィー法は、品質の必要条件を満たすフラクションが一体化され、蒸発させ、精製生成物を得る。
【0120】
本発明のさらなる詳細は実施例によって示されるが、発明は実施例に限定しない。
【0121】
少なくとも0.01%の塩基性添加剤の使用が効果的であり、1%を超える塩基性添加剤の使用は実用的ではない。
【実施例】
【0122】
[実施例1a]
[1,1’−ビスフェニル]−4−カルボン酸、(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4−[(1E)−3−ヒドロキシ−3−メチル−1−オクテン−1−イル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イルエステル
【化12】
(S)−Taddol4.66kgを蒸留したトルエン25.4Lに窒素雰囲気下にて添加した。ほぼ均質な溶液を冷却し、1.4Mメチルマグネシウムブロミド溶液25Lを−50℃で添加した。30分撹拌した後、蒸留したトルエン中の[1,1’−ビスフェニル]−4−カルボン酸(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4−[(1E)−3−オキソ−1−オクテン−1−イル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イルエステル4.46kgの溶液を−50℃で添加した。反応完了後、混合物を1M塩酸およびトルエンの混合物に注ぎ、完全に撹拌した。相は分離され、水相をトルエンで抽出した。有機相を1M炭酸水素ナトリウム溶液および飽和塩溶液で洗浄した。有機相を蒸発させた。
【0123】
乾燥残留物を50℃でメタノール中に溶解し、0℃まで冷却した。沈殿した(S)−Taddolを濾過によって除去した。
【0124】
濾液を蒸発させ、残留物をトルエン中に溶解し、(S)−Taddolの残りをヘキサン:酢酸エチルおよび酢酸エチル溶離液を使用してフィルタークロマトグラフィーによってシリカゲルカラム上で除去した。
【0125】
生成物を含有するクロマトグラフィーの主要なフラクションを蒸発させた。
【0126】
収率:4.40kg(95%)。
【0127】
(S)−Taddolの回収率
結晶化およびクロマトグラフィーによる分離によって再び得られた(S)−Taddol4.6kgを50℃でアセトン中に溶解し、ヘキサンの添加後に0℃で結晶化した。結晶を濾過により収集し、洗浄および乾燥させた。
【0128】
収率:4.3kg(93.5%)、HPLCによる純度:99.96%。
【0129】
[実施例1b]
[1,1’−ビスフェニル]−4−カルボン酸、(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−2−ヒドロキシ−4−[(1E)−3−ヒドロキシ−3−メチル−1−オクテン−1−イル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イルエステル
【化13】
[1,1’−ビスフェニル]−4−カルボン酸、(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4−[(1E)−3−ヒドロキシ−3−メチル−1−オクテン−1−イル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イルエステル9.7kgを窒素雰囲気下にて、無水テトラヒドロフラン62kg中に溶解した。水素化ジイソブチルアルミニウム9.8kgのトルエン溶液を−75℃で添加した。還元の終わりに反応混合物を吸引により2M硫酸水素ナトリウム溶液に移動し、相を完全に混合し、沈降後に分離した。水相をトルエンで抽出し、一体化した有機相を1M炭酸水素ナトリウム溶液および飽和塩溶液で洗浄した。有機相を蒸発させた。
収率:9.74kg(99.96%)。
【0130】
[実施例1c]
2H−シクロペンタ[b]フラン−2,5−ジオール、ヘキサヒドロ−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−オクテン−1−イル)
【化14】
[1,1’−ビスフェニル]−4−カルボン酸、(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−2−ヒドロキシ−4−[(1E)−3−ヒドロキシ−3−メチル−1−オクテン−1−イル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イルエステル10.3kgをメタノール46L中に溶解し、炭酸カリウム1.5kgを添加し、40℃で反応させた。反応完了後、混合物を0℃まで冷却し、希釈したリン酸で中和した。沈殿した結晶を濾別し、メタノール:水混合物で洗浄し、濾液を濃縮した。濃縮物に水および塩化ナトリウムを添加した。生成物を酢酸エチルで抽出し、一体化した有機相を活性炭で脱色し、炭を濾別し、濾液を蒸発させた。
収率:6.1kg(97%)。
【0131】
[実施例1d]
粗カルボプロスト
(5Z,9α,11α,13E)−15−メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−プロスタ−5,13−ジエン−1−カルボン酸、粗(R,S)
【化15】
不活性雰囲気にて、カルボキシブチルトリフェニルホスホニウムブロミド(CBFBr)20kgを無水テトラヒドロフラン133L中に添加し、0℃まで冷却し、tert−ブチル酸カリウム17kgをいくつかのポーションで混合物に添加した。オレンジ色の懸濁液を−5〜−10℃まで冷却し、無水テトラヒドロフラン中の2H−シクロペンタ[b]フラン−2,5−ジオール、ヘキサヒドロ−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−オクテン−1−イル)5.9kgの溶液を添加した。反応完了後、反応混合物に水を添加し、2M硫酸水素ナトリウム溶液でpHを10〜11に設定した。反応混合物を濃縮し、20℃まで冷却した。沈殿した結晶を濾別し、1M炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄した。濾液をジクロロメタンで抽出した。水相のpHを2M硫酸水素ナトリウム溶液で中性に設定し、酢酸エチルの添加後、pH=2まで酸性化した。沈殿した結晶を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。濾液の相を分離した。水相を酢酸エチルで抽出した。一体化した有機相を飽和塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。濃縮物を20℃まで冷却し、ジイソプロピルエーテルを添加することにより結晶化した。結晶を濾別し、ジイソプロピルエーテル:アセトン混合物で洗浄した。濾液を蒸発させた。
収率:7.1kg、(93%)。
【0132】
[実施例1e1]
カルボプロストメチルエステル
(5Z,9α,11α,13E,15S)−15−メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−プロスタ−5,13−ジエン−1−カルボン酸メチルエステル
【化16】
粗カルボプロスト(R,S)7.7kgを蒸留したアセトン28L中で溶解し、炭酸カリウム9kgおよびヨウ化メチル9.1kgを溶液に添加し、反応混合物を50℃で撹拌した。反応の終わりに混合物を吸引によりメチルtert−ブチルエーテルおよび1M硫酸水素ナトリウム溶液の混合物に移動した。撹拌および沈降に続いて相を分離し、水相をメチルtert−ブチルエーテルで抽出した。一体化した有機相を1M炭酸水素ナトリウム溶液および飽和塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。粗生成物:8kg(100%)。
【0133】
上記に基づき、PG−エノンについて計算した粗カルボプロストメチルエステルの収率は86%である。
【0134】
蒸発の始めにトリエチルアミン70mLを溶液に添加した。濃縮物をクロマトグラフィーによってメチルtert−ブチルエーテル:トリエチルアミン(0.1%)、次いでメチルtert−ブチルエーテル:アセトン:トリエチルアミン=20:1:0.1%の溶離液混合物を使用してシリカゲルカラム上で精製した。カルボプロストメチルエステルエピマー(R,S)を含有する主要なフラクションを蒸発させた。ジクロロメタン:トリエチルアミン(0.1%)およびジクロロメタン:アセトン:トリエチルアミン=2:1:0.1%の溶離液混合物を使用して、繰り返しのクロマトグラフィーによって、エピマーをシリカゲルカラム上で分離した。2つのクロマトグラフィーサイクルの間に、アセトン:トリエチルアミン(0.1%)、次いでジクロロメタン:トリエチルアミン(0.1%)の溶離液混合物でシリカゲルカラムを再生した。
【0135】
主要フラクションを蒸発させた。
【0136】
収率:カルボプロストメチルエステル(VII)については2.35kg(42%)(粗カルボプロストメチルエステルが70:30の比でエピマーを含有することを考慮に入れている)。
【0137】
[実施例1e2]
精製の代替的方法:
粗カルボプロストメチルエステルをジクロロメタンに溶解し、ジクロロメタン−アセトン=4:1、2:1の勾配混合物および次いでアセトン溶離液を使用してChromatorex MB70−40/75シリカゲルカラム上でのクロマトグラフィーによって精製した。カルボプロストメチルエステルを含有するフラクションをHPLCによって調査し、十分な品質のフラクションを蒸発させた。
収率:2.97kg(57.5%)。
【0138】
[実施例1f]
カルボプロスト
(5Z,9α,11α,13E)−15−メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−プロスタ−5,13−ジエン−1−カルボン酸)
【化17】
カルボプロストメチルエステル550gを蒸留したメタノール5Lおよび2M水酸化ナトリウム溶液5L中に溶解した。加水分解の完了後、反応混合物に水を添加し、溶液を濃縮した。濃縮した反応混合物に水およびメチルtert−ブチルエーテルを添加し、完全に混合し、次いで相を分離した。水相に塩化ナトリウムおよびメチルtert−ブチルエーテルを添加し、2M硫酸水素ナトリウム溶液でpHを4に設定した。相を分離し、メチルtert−ブチルエーテルで水相を抽出し、有機相を飽和塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。
収率:519g、(98%)。
【0139】
[実施例1g]
カルボプロストトロメタミン
2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールで形成された(5Z,9α,11α,13E)−15−メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−プロスタ−5,13−ジエン−1−カルボン酸の塩
【化18】
カルボプロスト509gを濾過し、蒸留したイソプロパノール2.7L中に溶解し、次いでトロメタミン170.8gを添加し、反応混合物を室温で約1時間撹拌した。溶液を濾過し濃縮した。濃縮物に(濾過し、蒸留した)イソプロパノールおよび(濾過し、蒸留した)アセトンを添加した。反応混合物を20℃で撹拌し、その間に結晶が沈殿した。結晶懸濁液に濾過し、蒸留した酢酸エチル、次いで濾過し、蒸留したヘキサンを添加し、撹拌をさらに1時間継続した。結晶を濾別し、ヘキサン:アセトン:酢酸エチル混合物で洗浄し、乾燥させた。
収率:593g、(86%)。
【0140】
[実施例1h]
カルボプロストトロメタミンの再結晶化
濾過し、カルボプロストトロメタミン塩500gを蒸留したイソプロパノール中に溶解した。得られた溶液に濾過し、蒸留したアセトンを20℃で滴加した。結晶の大半が沈殿した後、(濾過し、蒸留した)酢酸エチル、次いで(濾過し、蒸留した)ヘキサンを添加し、結晶懸濁液をさらに撹拌した。約1時間にわたる撹拌の後、結晶を濾別し、ヘキサン:アセトン:酢酸エチルの混合物で洗浄し、乾燥させた。
収率:480g、96%。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】本発明の方法による反応式を示す。
図2】本発明の方法による反応式を示す。
図3】本発明の方法による反応式を示す。
図4】本発明の方法による反応式を示す。
図5】本発明の方法による反応式を示す。
図6】本発明の方法による反応式を示す。
図7】本発明の方法による反応式を示す。
図8】本発明の方法による反応式を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8