特許第6862475号(P6862475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6862475悪性疾患を有する患者の予後を推定し、免疫療法に対する応答性を予測する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862475
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】悪性疾患を有する患者の予後を推定し、免疫療法に対する応答性を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6813 20180101AFI20210412BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20210412BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20210412BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20210412BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C12Q1/6813 ZZNA
   G01N33/50 P
   C12Q1/6886 Z
   C12Q1/6827 Z
   !C12N15/09 Z
【請求項の数】20
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2018-560986(P2018-560986)
(86)(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公表番号】特表2019-516383(P2019-516383A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2017061612
(87)【国際公開番号】WO2017198617
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2019年1月8日
(31)【優先権主張番号】102016005947.8
(32)【優先日】2016年5月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518407216
【氏名又は名称】ディモ ディートリヒ
【氏名又は名称原語表記】DIETRICH, Dimo
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214259
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】ディモ ディートリヒ
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/035112(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/037936(WO,A1)
【文献】 特表2014−505475(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/196381(WO,A1)
【文献】 N. Engl. J. med., 2012年,vol.366, no.26,p.2443-2454
【文献】 Clin. Cancer Res., 2014年,Vol.20, No.19,p.5064-5074
【文献】 Cancer Immunology Research, ,2016年 1月,Vol.4, Issue1, Supplement,Abstract A017 (p.1-5)
【文献】 European Journal of Cancer,2015年 9月,Vol.51, Supplement3,p.S602, 3017
【文献】 EMBO Molecular Medicine, 2011年,Vol.3,p.726-741
【文献】 Journal of Clinical Oncology, 2015年,Vol.33, No.15, Suppl.,3015
【文献】 Leukemia, 2014年,Vol.28,p.1280-1288
【文献】 Oncotarget, 2013年,Vol.4, No.11,p.2067-2079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
G01N 33/50
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪性疾患を有する患者の、PDCD1と相互作用するように設計した少なくとも1種の医薬品を使用する免疫療法に対する応答性を予測する方法、
ここで、悪性疾患の細胞及び/又は前記悪性疾患の細胞と相互作用するT‐リンパ球細胞の少なくとも1種の免疫調節遺伝子に関するDNA‐メチル化解析を行う、
ここで、前記免疫調節遺伝子がCD274遺伝子である、並びに
前記DNA‐メチル化解析の結果に基づいて、前記免疫療法に対する応答性を予測する、ここで、10%未満のCD274遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化は、前記患者が前記免疫療法に応答する可能性があることを示す。
【請求項2】
前記悪性疾患が黒色腫(メラノーマ)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記黒色腫(メラノーマ)が転移したものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記悪性疾患が、がん腫(カルシノーマ)、白血病、神経膠腫(グリオーマ)、肉腫又はリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記がん腫(カルシノーマ)が、扁平上皮細胞がん又は腺がん(アデノカルシノーマ)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬品が、PDCD1との前記相互作用によって、PDCD1、CD274及び/又はPDCD1LG2の免疫調節効果を阻害するように設計されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬品が、PDCD1と特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬品を、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びピジリズマブから成る群から選択する、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬品が、ペムブロリズマブである、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNA‐メチル化解析が、配列番号:(SEQ ID NO:)33及び/又は配列番号:76に含まれる少なくとも1種のCpG‐ジヌクレオチドのメチル化の存在、非存在又は程度を測定することを含む、及びここで、前記少なくとも1種のCpG‐ジヌクレオチドのメチル化の非存在は、又は前記少なくとも1種のCpG‐ジヌクレオチドのDNAメチル化の程度が10%未満であることは、前記患者が前記免疫療法に応答する可能性があることを示す、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種のCpG‐ジヌクレオチドが、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11及び/又は配列番号:12に含まれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
悪性疾患を有する患者に対する免疫療法による治療を目的とした、PDCD1と相互作用するように設計した医薬品を個人に合わせて選択するための方法、
ここで、悪性疾患の細胞及び/又は前記悪性疾患の細胞と相互作用するT‐リンパ球細胞の少なくとも1種の免疫調節遺伝子に関するDNA‐メチル化解析を行う、
ここで、前記免疫調節遺伝子がCD274遺伝子である、並びに
前記CD274遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化が10%未満の場合、前記DNA‐メチル化解析の結果に基づいて前記医薬品を選択する。
【請求項13】
前記医薬品が、PDCD1との前記相互作用によって、PDCD1、CD274及び/又はPDCD1LG2の免疫調節効果を阻害するように設計されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬品がPDCD1に特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬品を、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びピジリズマブから成る群から選択する、請求項12から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬品が、ペムブロリズマブである、請求項12から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
患者の悪性疾患の細胞及び/又は前記悪性疾患の細胞と相互作用するT‐リンパ球細胞の少なくとも1種の免疫調節遺伝子に関するDNA‐メチル化解析の使用、
ここで、前記免疫調節遺伝子がCD274遺伝子である、
PDCD1と相互作用するように設計した少なくとも1種の医薬品を使用する免疫療法に対する応答性を予測する、及び/又は前記患者に対する免疫療法による治療についての、PDCD1と相互作用するように設計した医薬品を個人に合わせて選択する、ことが目的である、
ここで、前記CD274遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化が10%未満の場合、前記患者は前記免疫療法に応答する可能性があることを示す、及び/又は前記医薬品を選択する。
【請求項18】
請求項1から11の何れか一項に記載の方法、請求項12から16の何れか一項に記載の方法、又は請求項17に記載の使用、を実施するためのキット、であって、
前記DNA‐メチル化解析のための少なくとも1種のオリゴヌクレオチド‐対、前記オリゴヌクレオチド‐対は、前記悪性疾患の細胞及び/又は前記T‐リンパ球細胞由来のDNA中の免疫調節遺伝子CD274のプロモーター領域の配列に、前記DNA中に含まれるシトシンを、ウラシル又はシトシンとは識別可能な塩基対形成挙動及び/若しくは分子量を有する別の塩基に変換した後に、前記配列を増幅及び/又は検出するために、ハイブリダイズするように設計されている、並びに、
前記方法又は前記使用を実施するための指示書、
を含むキット。
【請求項19】
前記プロモーター領域が配列番号: 33に含まれる、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記プロモーター領域が、配列番号:76、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11及び/若しくは配列番号:12、を含む、又は、に含まれる、請求項18又は19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この特許出願は、ドイツ特許出願 DE 10 2016 005 947.8 の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
この出願は、説明の一部として 485 個の配列の、WIPO ST.25 標準による txt フォーマットの電子配列プロトコルを含み、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0003】
本発明は、腫瘍学の分野における分子診断の方法に関する。該方法を用いて、悪性疾患を有する患者の予後を推定することができる、又は悪性疾患を有する患者の免疫療法に対する応答性を予測することができる。本発明はさらに、これらの患者に対して行う免疫療法による治療に好ましい活性薬剤を個人に合わせて選択することを可能にする分子診断の方法に関する。従って、本発明はまた、予後診断、予測又は個人に合わせて活性薬剤を選択すること、並びに予後及び/若しくは予測バイオマーカー又は個人に合わせて活性薬剤を選択するためのバイオマーカー、のために、このような方法を使用することにも関する。更に、本発明は、記載された方法を実施するための、又は記載された使用をするためのキットに関する。特に、本発明は、in vitro の方法及び使用に限定される。
【背景技術】
【0004】
患者の治療を適切に選択することは、現代医学における中心的な関心事である。一方で、適切な治療を選択するには、見込みがある治療法とは別に、最も可能性のある疾患の経過を最も正確に推定する必要がある。この予後に基づいて、臨床医は、例えば、おそらく好ましい経過をたどっている場合での、より保存的な治療を行うべきか、治療の経過が好ましくない場合での、より根治的な治療を行うかを決定することがある。従って、疾患の経過について、信頼性のある推定をすることは、治療の最適化を可能にする。特に、患者はより狙いが定められた治療の恩恵を受けることができる。
【0005】
悪性疾患(がん)を有する患者の予後を推定することは、現在のところ十分に行うことができていない。通常、患者の予後は、悪性疾患の進行速度に基づいて推定される。そのために、転移の存在、腫瘍の大きさ、及びリンパ管及び血管への浸潤などのパラメータが考慮される。これら腫瘍ステージを評価する手順は、各腫瘍疾患単位(Tumorentitat)によって異なる。ある腫瘍に対しては、例えば、前立腺がん患者におけるグリーソンの成長パターン(Wachstumsmusters nach Gleason)による診断などの様に、他の予後予測因子がある。全体的に見て、悪性疾患患者の予後を診断することは、信頼性が低く、標準化されていない。
【0006】
予後バイオマーカーには、この問題を解決する潜在的な可能性がある。米国 2014/0011702 A1 によって、遺伝子 DGKIMGMTSDPR のメチル化解析を、神経膠腫(グリオーマ)患者の予後予測又は予測をするために利用できることが公知となっている。米国 2006/0121467 A1 は、乳がんにおけるホルモン療法への治療応答性を予測するのに、遺伝子 STMN1SFNS100A2TGFBR2TP53PTGS2FGFR1SYKPITX2GRIN2DPSACGACYP2D6MSMBCOX7A2LVTNPRKCDONECUT2WBP11DAG1ERBB2TFF1TMEFF2ESR1RASSF1PITX2PSAT1 及び PCAF のメチル化を使用する方法を記載している。米国 2015/0051084 A1 によっては、前立腺がん患者の予後を診断する際に、遺伝子 HSPB1 のメチル化が利用されることが公知となっている。WO 2011/051414 A1 は、卵巣がん患者における予後又は白金療法への応答性を予測するのに、遺伝子 CLK3MTMR4NFE2L1PERLD1AKAP2ANAPC1ANKRD47ATF7ATP5G1BCL2C9orf3COILCSF2DMP1E2F3ELMO2ERBB2GABRG2GPC5HSPA6KISS1MARCH3KIAA0100MROMSX1NCOA6PAPOLAPDGFRARPL23ARUFY3SOX3TP53TSPYL1UBXD3 及び ZNF420 のメチル化を利用することを開示している。
【0007】
一方、免疫療法に対する患者の応答性を確度高く予測することは、大きな臨床的及び経済的利益をもたらす。腫瘍学のブレークスルーは、現在、いわゆる免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法に代表されるものであるが、これは進行した腫瘍疾患においてさえも顕著な結果を示す。しかしながら、比較的少数の患者しかこれらの治療に応答しない。従って、これらの療法に対する応答性を予測することができる予測的バイオマーカーは、特に臨床的価値がある。現在、試験として抗体を使用した免疫組織学的な方法があるが、この方法は、治療への応答性を予測するために、組織切片を使用して、対応する免疫チェックポイント・タンパク質が存在することを示すというものである。しかし、これらの試験はあまり高くはない信頼性である。
【0008】
これまでのように、悪性疾患患者の治療は、多くの場合、最適には選択されていない。なぜなら、個々の患者の疾患の経過はしばしば不正確にしか推定されず、従って、臨床医は、利用可能な治療について個人に合わせて選択する又は調節するために、十分な根拠を有しない。即ち、様々な悪性疾患の患者について、疾患進行の正確な推定及び治療に対する応答性についての信頼性のある予測を可能にする、客観的に測定が可能なパラメータに基づく、堅牢で経済的な予後予測及び予測方法が無いのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開 2014/0011702 号明細書 A1
【特許文献2】米国特許出願公開 2006/0121467 号明細書 A1
【特許文献3】米国特許出願公開 2015/0051084 号明細書 A1
【特許文献4】国際公開 2011/051414 号明細書 A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
こうしたことの背景に対して、第1の実施態様において、本発明は、悪性疾患を有する患者の予後を推定する方法、及び/又は悪性疾患を有する患者の免疫療法に対する応答性を予測する方法を提供する。前記方法は、悪性疾患の細胞、及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞の少なくとも 1 つの免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析、その結果に基づいて、予後を診断すること及び/又は免疫療法への応答性を予測すること(予測(Pradiktion))を特徴とする。
【0011】
第2の実施態様によれば、本発明は、悪性疾患を有する患者に対して免疫療法による治療をするために活性薬剤を個人に合わせて選択する方法であって、悪性疾患の細胞、及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞の少なくとも 1 つの免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析を行い、その結果に基づいて、活性薬剤を選択する。
【0012】
本発明の第3の実施態様は、予後診断をすること、予測すること及び/又は患者に対して免疫療法による治療をするための活性薬剤を個人に合わせて選択する為に、悪性疾患の細胞、及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞の少なくとも 1 つの免疫調節遺伝子の DNA のメチル化解析を使用することに関する。
【0013】
本発明の第4の実施態様は、悪性疾患の細胞、及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞の免疫調節遺伝子の少なくとも 1 つの CpG‐ジヌクレオチドでのメチル化の存在、非存在又は程度、及び/又は予測的なバイオマーカー、より具体的には、患者に対して免疫療法による治療をするための活性薬剤を個人に合わせて選択する為に、バイオマーカーを使用することに関する。
【0014】
最後に、第5の実施態様において、本発明は、前記方法を実施する為、より具体的には前記態様による使用をするためのキットを提供する。前記キットは、DNA‐メチル化解析をするための少なくとも 1 つのオリゴヌクレオチド‐対を含み、前記オリゴヌクレオチド‐対は、悪性疾患の細胞及び/又は T‐リンパ球細胞由来の DNA 中の免疫調節遺伝子の配列とハイブリダイズするように設計されていて、前記 DNA 中に含まれるシトシンを、ウラシル又はシトシンとは識別可能な塩基対形成挙動及び/若しくは分子量を有する別の塩基に変換した後に、前記配列を増幅及び/又は検出する。
【0015】
本発明の全ての実施態様において、前記免疫調節遺伝子がコードする免疫チェックポイント・タンパク質は、B7‐タンパク質及びその受容体、MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー TNFRSF9、CD40、TNFRSF4、TNFRSF18 及び CD27、免疫グロブリン‐スーパーファミリーのメンバー TIGIT、BTLA、HAVCR2、BTNL2 及び CD48、並びにアデノシンが結合するタンパク質アデノシン 2A 受容体を含む群から選択される。また、前記免疫チェックポイント・タンパク質をコードする免疫調節遺伝子の任意の組み合わせも可能である。
【0016】
これらの実施態様の好ましい変形は、以下の説明及び従属請求項から明らかになるであろう。
【0017】
定義と一般的な説明
本明細書では、本発明に関する一般的な技術的背景を提供するために様々な文献が引用されている。これらの文献の開示及び教示は、繰り返しを避けるために、参照することによって以下の記載に完全に組み込まれる。
【0018】
以下の定義及び一般的な説明は、本発明を理解、解釈及び実施するにおいて、当業者を導き助けることを意図している。他に記載がない限り、全ての技術用語及び科学用語は、本発明の分野における当業者の通常の理解に対応する意味を有するものとする。
【0019】
本発明の様々な態様及び変形は、分子生物学のルーチンな活動(Routinepraxis)における技術及び方法を含む。特に、CpG‐ジヌクレオチドのメチル化を測定する DNA‐メチル化解析は、分子生物学者又は遺伝学者の専門知識のうちの 1 つである。これらの技術及び方法のための有用な実験マニュアルを、当業者は容易に利用可能である(例えば、「Molecular Cloning、A Laboratory Manual」、M.R. Green と J. Sambrook、第4版、2012 年、Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0020】
「ein」又は「eine」などの不定冠詞は、本明細書で使用されるように、これらの特徴の 2 つ以上が存在する可能性を含む。
【0021】
「悪性疾患(maligne Erkrankungen)」又は「悪性疾患(bosartige Erkrankungen)」は、この用語が本明細書中で使用されるように、疾患の経過が進行性で破壊的であり、患者の死にもつながるような疾患を含む。悪性疾患には、例えば新生物又は腫瘍のような悪性の組織新生が含まれ、前記悪性は、制御されない、スペースを必要とする、はみでた(verdrangendes)、浸潤性の、及び/又は侵襲的な増殖によって特徴付けられる。悪性腫瘍は、通常、二次腫瘍(転移がん(Metastasen))を形成することができる。悪性腫瘍には、例えば、がん腫(カルシノーマ)、肉腫、黒色腫(メラノーマ)、神経膠腫(グリオーマ)、芽腫、精上皮腫(セミノーマ)及び奇形腫が含まれる。悪性疾患には、血液学的な悪性疾患、即ち、血液系又は造血系が関係する悪性疾患、例えば白血病、リンパ腫、骨髄増殖性疾患及び骨髄異形成症候群が含まれる。白血病には、未成熟な造血細胞が悪性に変化し、過剰に増殖し、末梢血細胞の蓄積をもたらす悪性疾患の群が含まれる。リンパ腫には、リンパ系の細胞が変性している疾患が含まれる。骨髄増殖性疾患には、1 つ又は複数の造血細胞系列が増殖する疾患群が含まれる。骨髄異形成症候群は、すべての血液形成細胞系列の前駆細胞のクローン性増殖を含み、造血幹細胞の慢性的な分化障害が根底にある。
【0022】
「予後(prognosis)」は、この用語が本明細書で使用されるように、悪性疾患を有する患者の健康状態について叙述すること又は将来の前記患者の健康の変化を指す。これには、治療的介入が無い患者の健康状態と、既に治療を受けているか受けた患者の健康状態の両方が含まれる。本発明の意味における予後は、前記患者が将来治療を受けた場合の健康状態又は健康状態の変化を叙述することも含む。前記治療は、それぞれ緩和的、治癒的、ネオアジュバント的又はアジュバント的であることがある。具体的には、「予後(prognosis)」は、1 つ以上の様々な健康状態:死ぬこと、生きること、再発、リンパ節転移の発生、遠隔転移の発生、悪性疾患の進行(進展(Fortschreiten))、悪性疾患の退行(退縮(Zuruckbildung))、悪性疾患の変化(Unveranderung)、悪性疾患に特有のパラメータが増加又は減少、が発生することを叙述することも含む。
【0023】
ここでの「予測(Pradiktion)」は、特定の治療に対する悪性疾患の応答性についての予測であると理解される。治療に対する応答性は、治療を適用したときに、悪性疾患の程度が減少しているか、変わらないか、又は進行が徐々に減速しているかによって特徴づけることができる。応答性が見られないことは、悪性疾患の程度が変わらないか、増加しているか、又は加速しているかによって特徴づけることができる。それぞれの場合において、治療を適用する前又は治療を受けていない患者の悪性疾患の程度と比較することができる。この疾患の程度を、悪性細胞の数又は悪性腫瘍のサイズによって特徴づけることができる。具体的には、治療に対する応答性を、死の発生、再発、リンパ節転移の発生、遠隔転移の発生、悪性疾患の進行、及び/又は悪性疾患に特有の任意のパラメータの増加、が遅延することにより特徴づけることがある。
【0024】
特に、予後及び予測とは、予め行われる in vitro の方法と結びついた演繹的な段階のことを指すので、本発明に必須の技術的ステップは、ヒト又は動物の身体上では行われない。
【0025】
「遺伝子(Gen)」は、ここでは、調節、転写及び/又は機能的な配列領域を含み、それによって生物学的に活性がある RNA を生成するための基本情報を含む、DNA のセクションを指す。特に、遺伝子は、例えば、遺伝子の転写の際に調節的な機能を果たす、プロモーター、転写因子結合部位、CpG‐アイランド、開クロマチン(offenes Chromatin)、エンハンサー及びサイレンサー、CTCF‐結合部位などのエレメントを含む。
【0026】
遺伝子及びそのヌクレオチドを指定するための命名法は、2016 年 4 月 30 日の「ヒトゲノム組織遺伝子命名委員会(Human Genome Organisation Gene Nomenclature Committee)」(HGNC)の勧告に従う。例えば、遺伝子(Genstamm)は、ラテン語のイタリック大文字(本翻訳文では下線とする)で示される(例えば、PDCD1CD274)。
【0027】
本明細書で記載する遺伝子は、2016 年 4 月 30 日付けで、米国国立衛生研究所(National Institute of Health, USA)の「GenBank」(Benson D.A. et al., Nucleic Acids Research, 2013, 41, D36-42)を通じて公開され利用可能となる。
【0028】
以下の記載において、特定の DNA 配列(配列番号(SEQ ID NOs))を参照する場合、これは常に前記 DNA の配列と少なくとも 95%、少なくとも 96%、少なくとも 97%、少なくとも 98% 又は少なくとも 99% の配列が同一である配列変異体を含む。2 つの核酸配列の配列同一性は、例えば、ClustalW アルゴリズム(Thompson et al., Nucleic Acids Research, 1994, 22, 4673-4680)を用いて決定することができる。
【0029】
「CpG‐ジヌクレオチド(CpG-Dinukleotid)」とは、5' 側から3' 側への一般的に有効な読み取り方向においてヌクレオシド配列がシチジン‐リン酸‐グアノシンを有する DNA モチーフである。グアノシンは、核酸塩基グアニン及び糖β-D-リボースからなる。シチジンは核酸塩基シトシンと糖β-D-リボースからなる。
【0030】
「DNA‐メチル化(DNA-Methylierung)」とは、メチル基が DNA の特定のヌクレオチドに生化学的又は化学的にカップリングすることを意味する。本発明の範囲では、「DNA‐メチル化」とは、CpG‐ジヌクレオチドの中にあるシトシンの 5 位の炭素原子上にメチル基が存在すること(5‐メチルシトシン)を意味する。
【0031】
従って、本発明の意味における「DNA‐メチル化解析(DNA-Methylierungsanalyse)」は、特定の配列の中での CpG‐ジヌクレオチド又はいくつかの CpG‐ジヌクレオチドのメチル化状態を測定することを含む。本発明の種々の変形において、「DNA‐メチル化解析(DNA-Methylierungsanalyse)」は、前記シトシンが前記 CpG‐ジヌクレオチドにおいてメチル化されているかどうかを意味すると理解される。前記 DNA‐メチル化解析は、前記 CpG‐ジヌクレオチドの単一コピーを含むことがある。前記 DNA‐メチル化解析はまた、例えば DNA が複数の細胞からのものである場合、前記 CpG‐ジヌクレオチドの複数のコピーを含むことがある。この場合、前記 DNA‐メチル化解析は、CpG‐ジヌクレオチドのメチル化状態又はメチル化値、即ち、CpG‐ジヌクレオチドの複数のコピーにおけるメチル化の程度を表す断面値(Querschnittswert)、を提供することができる。
【0032】
「免疫チェックポイント・タンパク質(Immun-Checkpoint)」は、免疫応答、即ち免疫抑制性若しくは抗炎症性(消炎症性(entzundungshemmend))又は免疫刺激性若しくは向炎症性(炎症促進性(entzundungsfordernd))の何れかを調節するタンパク質である。免疫チェックポイント・タンパク質は、例えば、共刺激(正の調節)又は共阻害(負の調節)様式での抗原特異的な T 細胞活性化又は T 細胞エフェクター機能の強度及び程度を調節することによって、前記免疫応答が正しく機能しているかをモニターするのに役立つ。いくつかの悪性疾患においては、例えば、抗炎症性又は共抑制性の免疫チェックポイント・タンパク質が、免疫回避の過程でアップレギュレートされる。
【0033】
本発明の意味において、「悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞(mit den Zellen der malignen Erkrankung wechselwirkende T-Lymphozyten)」は、リガンド‐受容体結合特異的に、悪性疾患の細胞と接触している又は接触することができる T‐リンパ球細胞を含む。例えば MHC:ペプチド複合体、より具体的には、MHC II:抗原複合体のように、前記リガンドは、前記悪性疾患の細胞の表面に位置していることがある。例えば T 細胞受容体(TCR)のように、前記受容体は、前記 T‐リンパ球細胞の表面に位置していることがある。あるいは、前記リガンドは、前記 T‐リンパ球細胞の表面上及び前記悪性疾患の細胞の表面上の受容体に位置していることもある。従って、「悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞(mit den Zellen der malignen Erkrankung wechselwirkende T-Lymphozyten)」は、以前に対応する抗原と相互作用をしたことがなくても、抗原提示細胞と接触することで、上記リガンド‐受容体結合の内の一つを介して、前記悪性疾患の細胞と、特異的に相互作用することができるようになった(活性化(aktiviert)) T‐リンパ球細胞も含む。抗原提示細胞は、例えば、樹状細胞又はマクロファージであることがある。前記活性化は、例えば、T‐リンパ球細胞と、悪性疾患の細胞に由来する抗原を提示する抗原提示細胞との間のリガンド‐受容体結合を介して起こる。例えば MHC II:抗原複合体では、前記リガンドは、前記抗原提示細胞の表面上に位置し、前記 T 細胞受容体(TCR)は、前記 T‐リンパ球細胞の表面上に位置する。本発明の意味に含まれる T‐リンパ球細胞と悪性疾患の細胞との相互作用のまた別の形態は、前記悪性疾患の細胞によって生成されたアデノシンが前記 T‐リンパ球細胞の表面上の受容体と結合することを含む。前記アデノシンは前記 T‐リンパ球細胞によって生成され、前記受容体は前記悪性疾患の細胞の表面上に位置していることもある。
【0034】
「免疫療法(Immuntherapie)」又は「免疫療法による治療(immuntherapeutische Behandlung)」は、本明細書では、前記免疫系の活性に影響を与える全ての治療アプローチに対する総称として用いられる。免疫療法は、前記免疫系の効果を強化又は緩和することを目的とすることがある。本発明の特定の変形においては、免疫療法には、悪性疾患に対する生物の免疫応答を増強する活性薬剤を使用した治療が含まれる。そのような活性薬剤には、特異的に免疫チェックポイント・タンパク質に結合し、その結果それらのシグナル伝達(特に抗炎症性のシグナル伝達)を阻止する、例えばモノクローナル抗体などの、免疫チェックポイント阻害剤が含まれる。別の可能性としては、RNA 干渉又は CRISPR 干渉により、例えば、前もって免疫チェックポイント・タンパク質の発現を阻止する活性薬剤がある。前記活性薬剤はまた、(特に向炎症性の)免疫チェックポイント・タンパク質のシグナル伝達を増強する免疫チェックポイント・アゴニストであっても良い。
【0035】
この用語が本明細書で使用されるように、免疫チェックポイント・タンパク質を「阻害する(inhibieren)」とは、1 つ以上の免疫チェックポイント・タンパク質が介する反応の化学的、生物学的及び/又は物理的性質を遅延、阻害又は阻止することを意味する。
【0036】
「バイオマーカー(Biomarker)」は、客観的に測定できる、特性を表わす指標及び/又は生物学的な判断基準であり、並びに生体内の正常な生物学的又は病理学的過程の状態、より具体的には、例えば手術、放射線治療又は薬物治療などの治療介入に対しての正常又は病理学的過程の応答、について推論することを可能にするものである。バイオマーカーは、しばしば、タンパク質、ホルモン、代謝産物、糖及び核酸のような(生物)化学物質、並びにそれらの修飾物である。
【0037】
「緩和的療法(palliative Therapie)」又は緩和療法(Palliativtherapie)は、疾患の治癒を目的とするのではなく、症状の緩和又は他の有害作用の軽減(緩和)を目的とした医学的治療である。従って、治癒を目的とした治癒的療法とは対照的である。緩和ケアの手段をとることは、難治性疾患の進行を遅らせること、及び吐き気、痛み又は(反応性)うつ病などの症状を軽減することを、しばしば目標とする。
【0038】
「治癒的療法(kurative Therapie)」は、患者の健康状態を完全に回復させることを目的とした療法であり、同時に、悪化を阻止する療法である。この用語は、具体的に、完全な治癒が予見できない場合(低いパーセントの可能性)にも使用される。
【0039】
「ネオアジュバント療法(neoadjuvante Therapie)」は、予定されている外科的介入が行われる前に腫瘍の量を減少させるために実施される療法である。これは、腫瘍が一次的には手術可能でない場合に行われることが多い。ネオアジュバント療法は、腫瘍のサイズを縮小することができ、その結果、更に外科的に腫瘍を除去することも可能である。この場合、これはしばしば悪性腫瘍の治癒的療法の唯一の方法である。
【0040】
「アジュバント療法(adjuvante Therapie)」は、補完的又はサポート的な治療手段を指し、識別可能な腫瘍成分を完全に取り除いた後に適用され、可能性はあるがまだ検出されない腫瘍転移(微小転移)を叩き、それにより長期的な治癒の見込みを改善する。
【0041】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも例示的なものであり、特許請求の範囲に記載された発明を説明することを意図するものである。本発明の更なる利点及び特徴は、以下の記載、図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本発明はその好ましい実施形態の観点から説明されるが、本発明の範囲から逸脱することなく多くの他の変形が可能である。従って、添付の特許請求の範囲は、特許請求の範囲に明示的に記載されていなくても、本発明の真の範囲内に含まれる特徴の変形及び組み合わせを含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、根治的前立腺切除術後の 417 例の前立腺がん患者の無再発生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。前記患者は、本発明に係る腫瘍中の PDCD1 遺伝子座の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化されている。
図2図2は、根治的前立腺切除術後の 417 例(A)及びこれとは独立したコホート 259 例(B)の前立腺がん患者の無再発生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。前記患者は、腫瘍における本発明に係る CD274 遺伝子座の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化されている。前記 DNA‐メチル化解析は、Infinium HumanMethylation450 ビーズチップ技術(Infinium HumanMethylation450 BeadChip Technologie)(A)又は定量的メチル化特異的リアルタイム‐PCR(quantitativer methylierungsspezifischer Echtzeit-PCR)(B)を用いて行った。
図3図3は、本発明に係る腫瘍中の免疫調節遺伝子 PDCD1(A)、CD274(B)及び PDCD1LG2(C)の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化された、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群I:閾値未満の腫瘍における DNA‐メチル化を有する患者。群II:閾値を超える腫瘍における DNA‐メチル化を有する患者。患者を群分けするための閾値は、以下のメチル化値で設定した:PDCD1LG2 については 12.84%;CD274 については 13.11%;PDCD1 については 20.54%。
図4図4は、本発明に係る免疫調節遺伝子 TIGIT(A)、TNFRSF9(B)、LAG3(C)、BTLA(D)、CTLA4(E)及び CD40(F)の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化された、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群I:閾値未満の腫瘍におけるメチル化を有する患者。群II:閾値を超える腫瘍におけるメチル化を有する患者。患者を群分けするための閾値は、以下のメチル化値で設定した:TIGIT については 86.41%;TNFRSF9 については 57.80%;LAG3 については 66.94%;BTLA については 91.31%;CTLA4 については 13.10%;CD40 については 17.16%。
図5図5は、本発明に係る PDCD1 遺伝子座の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化された、528 例の頭部‐及び頸部領域に扁平上皮がんを有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。全ての患者のメチル化の中央値に基づいて、患者の群分けを行い、ある群には前記中央値を超えてメチル化された患者を、他の群には前記中央値未満にメチル化された患者を割り当てた。
図6図6は、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者を検査するための、本発明に係る遺伝子 BTLA(A)及び CD27(C)の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析との間における相関、並びに BTLA(B)及び CD27(D)の mRNA‐発現に基づいて層別化された患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析の結果を示す。
図7図7は、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者を検査するための、本発明に係る免疫調節遺伝子 CD274 の mRNA‐発現解析及び DNA‐メチル化解析との間における相関(A)、並びに本発明に係る DNA‐メチル化解析に基づいて(B)、前記 mRNA‐発現解析に基づいて(C)、及び mRNA‐発現解析と DNA‐メチル化解析の組合せに基づいて層別化された患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。
図8図8は、本発明に係る免疫調節遺伝子 CD274(A)(図7におけるような)、PDCD1LG2(B)、PDCD1(C)、BTLA(D)、LAG3(E)、TIGIT(F)、CD40(G)、CTLA4(H)及び TNFRSF9(I)の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析に基づいて層別化された、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群 II(高リスク群):高い DNA‐メチル化及び低い mRNA‐発現;群 IV(低リスク群):低いメチル化及び高い mRNA‐発現;群 I+III(中リスク群):高い mRNA‐発現及び高い DNA‐メチル化、又は低い mRNA‐発現及び低い DNA‐メチル化。
図9図9は、9 つの免疫調節遺伝子 CD274PDCD1PDCD1LG2TIGITTNFRSF9LAG3BTLACTLA4 及び CD40 の mRNA‐発現解析(A)、DNA‐メチル化解析(B)及びmRNA‐発現解析とDNA‐メチル化解析の組合せ(C)に基づいて本発明に係る層別化された、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群 I:9 つの遺伝子の内、少なくとも 8 つにおいて mRNA‐発現が上昇している患者;群 II:9 つの遺伝子の内、8 つ未満で mRNA‐発現が増加した患者;群 III:9 つの遺伝子の内、最大 4 つで DNA‐メチル化が増加した患者;群 IV:9 つの遺伝子の内、少なくとも 5 つにおいて DNA‐メチル化が増加した患者;群 V:群 I 及び III の両方に属する患者;群 VI:群 II 及び群 IV の両方に属する患者;群 VII:群 I 及び群 IV、又は群 II 及び群 III のどちらかに属する患者。
図10図10は、免疫調節遺伝子 LAG3 に関する、プロモーター領域(A)及び遺伝子内領域(B)の DNA‐メチル化と mRNA‐発現の相関;免疫調節遺伝子 CD40 に関する、プロモーター領域(C)及び遺伝子内領域(D)の DNA‐メチル化と mRNA‐発現の相関;並びに免疫調節遺伝子 LAG3(E、F、G)及び CD40 (H、I、J)に関する、プロモーター(E、H)、遺伝子内領域(F、I)の DNA‐メチル化解析及び両方の領域を組合せた解析(G,J)に基づいて、本発明に係る層別化をした、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群 I 及び IV:閾値未満の DNA‐メチル化;群 II 及び III:閾値を超える DNA‐メチル化;群 V:群 II 及び IV からの患者;群 VI:群 II 及び III、又は I 及び IV からの患者;群 VII:群 I 及び III からの患者。
図11図11は、182 例の急性骨髄性白血病を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示しており、前記患者は本発明に従って、免疫調節遺伝子 CD274(A、B、C)、PDCD1(D、E、F)及び PDCD1LG2(G、H、I)の DNA‐メチル化解析(A、D、G)、mRNA‐発現解析(B、E、H)及び mRNA‐発現解析と DNA‐メチル化解析の組合せ(C、F、I)に基づいて層別化されている。群 I:閾値未満の DNA‐メチル化;群 II:閾値を超える DNA‐メチル化;群 III:閾値を超える mRNA‐発現;群 IV:閾値未満の mRNA‐発現。閾値:CD274 DNA のメチル化については 17.00%;PDCD1 DNA のメチル化については 56.95%;PDCD1LG2 DNA のメチル化については 62.82%;CD274 の mRNA‐発現については 4.7319;PDCD1 の mRNA‐発現については 23.7933 及び PDCD1LG2 の mRNA‐発現については 12.9895。
図12図12は、182 例の急性骨髄性白血病を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示しており、前記患者は本発明に従って、免疫調節遺伝子 TNFRSF9(A)、TIGIT(B)、BTLA(C)、HAVCR2(D)、CD80(E)、CTLA4(F)、ICOS(G)、C10orf54(H)、HHLA2(I)、CD160(J)、KIR2DL4(K)及び KIR3DL1(L)の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化されている。二分化は最適化された閾値に基づいて行った。群 I:閾値未満の DNA‐メチル化;群 II:閾値を超える DNA‐メチル化。
図13図13は、本発明に従って、前記免疫調節遺伝子 CD274(A,B,C)、PDCD1(D,E,F)、及び PDCD1LG2(G,H,I)の DNA‐メチル化解析(A,D,G)、mRNA‐発現解析(B,E,H)、及び DNA‐メチル化解析と前記 mRNA‐発現解析との組合せ(C,F,I)に基づいて層別化された、510 例の低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。前記 DNA‐メチル化を二分化するのには、以下の閾値を使用した:CD274 については 32.00%;PDCD1 については 33.79%;PDCD1LG2 については 59.89%。前記 mRNA‐発現の二分化は、患者群の全ての腫瘍由来のそれぞれの遺伝子の mRNA‐発現の中央値に基づいた。群 I:前記閾値未満の DNA‐メチル化;群 II:前記閾値を超える DNA‐メチル化;群 III:前記中央値を超える mRNA‐発現;群 IV:前記中央値未満の mRNA‐発現;群 I+III:群 I 及び群 III の患者;群 II+IV:群 II 及び群 IV の患者;群I+IV/II+III:群 II 及び III、又は I 及び IV の患者。
図14図14は、本発明に従って、前記免疫調節遺伝子 CD80(A,B,C)、CTLA4(D,E,F)、ICOS(G,H,I)、CD276(J,K,L)の DNA‐メチル化解析(A,D,G、J)、mRNA‐発現解析(B,E,H、K)、及び DNA‐メチル化解析と mRNA‐発現解析との組合せ(C,F,I、L)に基づいて層別化された、510 例の低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。前記 DNA‐メチル化に基づく二分化をするのには、以下の閾値を選択した:90.76%(CD80);86.43%(CTLA4);84.75%(ICOS)及び30.08%(CD276)。前記 mRNA‐発現の二分化は、患者群の全ての腫瘍由来のそれぞれの遺伝子の mRNA‐発現の中央値に基づいた。群 I:前記閾値未満の DNA‐メチル化;群 II:前記閾値を超える DNA‐メチル化;群 III:前記中央値を超える mRNA‐発現;群 IV:前記中央値未満の mRNA‐発現;群 I+III:群 I 及び群 III の患者;群 II+IV:群 II 及び群 IV の患者;群 I+IV/II+III:群 II 及び III、又は I 及び IV の患者。
図15図15は、本発明に従って、前記遺伝子 TNFRSF25(A)、TNFRSF9(B)、CD40(C)、TIGIT(D)、BTLA(E)、HAVCR2(F)、C10orf54(G)、HHLA2(H)、LAG3(I)、CD160(J)、KIR2DL4(K)及び KIR3DL1(L)の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化された、510 例の低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。二分化は、以下の閾値に基づいて行った:TNFRSF25 については 61.88%;TNFRSF9 については 79.24%;CD40 については 43.24%;TIGIT については 80.66%;BTLA については 84.64%;HAVCR2 については 2.495%;C10orf54 については 66.52%;HHLA2 については 77.14%;LAG3 については 74.34%;CD160 については 92.89%;KIR2DL4 については 90.85% 及び KIR3DL1 については 52.28%。群 I:前記閾値未満のメチル化;群 II:前記閾値を超えるメチル化。
図16図16は、本発明に従って、前記免疫調節遺伝子 TIGIT(A)、TNFRSF9(B)、CD274(C)、CD80(D)、CTLA4(E)、CD276(F)及び HHLA2(G)の DNA‐メチル化解析に基づき層別化された、318 例の淡明細胞型腎細胞がん(klarzelligen Nierenzellkarzinomen)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。二分化は、全患者の腫瘍由来のそれぞれの遺伝子の DNA‐メチル化の中央値に基づいて行った。群 I:前記中央値未満のメチル化;群 II:前記中央値を超えるメチル化。
図17図17は、免疫調節遺伝子 TIGIT(A)、TNFRSF9(B)、CD80(C)、CTLA4(D)、CD276(E)及び HHLA2(F)の DNA‐メチル化解析と mRNA‐発現解析の本発明による組合せに基づいて層別化された、318 例の淡明細胞型腎細胞がん(klarzelligen Nierenzellkarzinomen)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。二分化は、全患者の腫瘍由来のそれぞれの遺伝子の DNA‐メチル化又は mRNA‐発現の中央値に基づいて行った。群 I:前記中央値未満のメチル化及び前記中央値を超える mRNA‐発現;群 III:前記中央値を超えるメチル化及び前記中央値未満の mRNA‐発現;群 II:前記中央値を超えるメチル化及び前記中央値を超える mRNA‐発現、又は前記中央値未満のメチル化及び前記中央値未満の mRNA‐発現。
図18図18は、PDCD1 遺伝子によってコードされる免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を阻害する活性薬剤ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)を用いた免疫療法に対する患者の応答性を診断するための、本発明に係る免疫調節遺伝子 CD274 の DNA‐メチル化解析を示す図である。23 例の前記免疫療法の開始前に悪性黒色腫(メラノーマ)を外科的に切除した患者由来の転移がんにおける前記遺伝子のメチル化値(%)を示す。
図19図19は、PDCD1 遺伝子によってコードされる免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を阻害する活性薬剤ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)を用いた免疫療法に対する患者の応答性を診断するための、本発明に係る免疫調節遺伝子 PDCD1 の DNA‐メチル化解析を示す図である。23 例の前記免疫療法の開始前に悪性黒色腫(メラノーマ)を外科的に切除した患者由来の転移がんにおける前記遺伝子のメチル化値(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
シークエンスの簡単な説明
数値コード<213>及び<223>の下にそれぞれ示されているように、SEQ ID NO:1 から SEQ ID NO:485 までの配列をリストする。
【0044】
発明の説明
本発明の第一の態様は、悪性疾患を有する患者の予後を推定するための、及び/又は悪性疾患を有する患者の免疫療法の応答性を予測するための方法に関する。この場合には、悪性疾患の細胞及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞由来の少なくとも 1 つの免疫調節遺伝子について、DNA‐メチル化解析を行う。本明細書で、前記免疫調節遺伝子は、B7‐タンパク質及びその受容体、即ち、B7‐タンパク質がリガンドとして結合する受容体、MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー TNFRSF9、CD40、TNFRSF4、TNFRSF18 及び CD27、免疫グロブリン‐スーパーファミリーのメンバー TIGIT、BTLA、HAVCR2、BTNL2及びCD48、並びにアデノシンが結合するアデノシン 2A 受容体、から選択される免疫チェックポイント・タンパク質をコードする。これらの免疫チェックポイント・タンパク質の任意の組み合わせを含むいくつかの免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析を行うことも可能である。この場合、好ましくは、DNA‐メチル化解析は、同じリガンド‐受容体結合に関与するいくつかの免疫調節遺伝子に対して行われる。前記 DNA‐メチル化解析の結果に基づいて、前記予後が診断され、及び/又は前記免疫療法への応答性が予測される(vorhergesagt)(予測(Pradiktion))。
【0045】
本発明は、悪性疾患が複雑な遺伝的及びエピジェネティックな変化を有し、結果として高度に個別化していることがあるという知見に続くものである。同じ臓器及び同じステージの悪性疾患であっても、前記患者の予後は異なる可能性がある。本発明者は、研究の結果、悪性疾患には免疫学的なサブタイプが存在し、体内の免疫系によってうまくチェックされている否かによって、通常、より良好な又はより不良な疾病経過を辿るということに気がついた。この特性は、これらのサブタイプが免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化及び mRNA‐発現に特有の特徴を有しているという事実に起因するのかもしれない。
【0046】
本発明者の研究によれば、良好な経過を辿る患者では、悪性疾患の細胞、若しくは悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞、又は両方の細胞は、1 つ以上の B7‐タンパク質及びその受容体、1 つ以上の MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体、1 つ以上の TNFRSF9、CD40、TNFRSF4、TNFRSF18 及び CD27、1 つ以上の TIGIT、BTLA、HAVCR2、BTNL2及びCD48、及び/又はアデノシンが結合するアデノシン 2A 受容体の特徴的な発現によって、とりわけ特徴づけられる。これに関連して、本発明者は、これらの免疫調節遺伝子の発現がメチル化によって調節されることを初めて証明することができた。このようにして、対応する DNA‐メチル化解析によって、前記免疫調節遺伝子のメチル化によって規定され、客観的に測定可能な免疫学的な表現型を説明することができる。
【0047】
本発明を説明する中において、本発明に係る免疫調節遺伝子のメチル化は、患者の悪性疾患の予後と有意に相関することが述べられる。本発明者にとって本質的かつ極めて驚くべき発見は、それが特定の疾患単位(Entitaten)に限定されない、悪性疾患の一般的な現象であることである。従って、これまでの特定の遺伝子のバイオマーカーとしてのメチル化解析によっては、単一又は少数の疾患単位(Entitaten)に関連した 1 つの予測のみが可能となる一方で、本発明は、同じ遺伝子の DNA‐メチル化解析に基づいて、様々な悪性疾患タイプの疾患経過を予測するのに普遍的に適合しうる初めての予後予測試験を提供する。これに関して、以下の実施形態も参照される。
【0048】
本発明の更なる独創的な特徴及び具体的な利点は、発明者によって同定された免疫調節遺伝子が、その DNA のメチル化が悪性疾患の経過について予後予測的であり、同時に免疫療法の重要な標的である免疫チェックポイント・タンパク質もコードしていていることだ。従って、対応する遺伝子産物が存在する度合い又は存在しない度合いに関する知見は、有効な免疫療法による治療を計画することに強く関連する。免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化は、対応する免疫チェックポイント・タンパク質の発現と直接相関していることが示されたので、本発明に係る方法は、予後を推定することの代替的又は追加的なものとして、対応する免疫療法に対する患者の応答性を予測可能にする。例えば、DNA‐メチル化解析によって免疫チェックポイント・タンパク質が発現していることが示される場合は、免疫療法に対しても応答する可能性がある。従って、従来のマーカー遺伝子に基づく従来の方法では、予後だけ又は予測だけが可能であった一方で、患者の予後の診断と免疫療法に対する応答性の予測を同じアッセイで同時に初めてできるようになる。
【0049】
前記 DNA‐メチル化解析は、関連する文献によって当該分野で公知となっている全ての一般的な方法を用いて、基本的に行うことができる。好ましい方法は、例えば、以下の工程を含む:A)転移性細胞又は T‐リンパ球細胞の DNA をそれぞれ提供する工程;B)前記 DNA 中に含まれるシトシンの少なくとも一部を、ウラシル又はシトシンと識別が可能な塩基対形成挙動及び/又は分子量を有する別の塩基に変換する工程;C)工程B)から得られた DNA を使用して前記免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化を分析する工程。
【0050】
工程A)から得られる分析対象の DNA は、例えば、外科的又は生物学的に取り除かれた組織由来の悪性疾患の細胞又は浸潤性 T‐リンパ球細胞のような、様々な供給源に由来することがある。前記細胞は、スメア(Abstrichen)及び灌流液、細い針で吸引した液又は唾に由来してもよい。前記 DNA はまた、例えば、自由に循環している DNA、エキソソーム DNA の形態で、又は DNA が回収される自由に循環している細胞の形態で、血液、血清及び血漿に由来することもある。前記 DNA はまた、例えば遊離 DNA の形態で、又は DNA が回収される細胞の形態で、尿、胸水又は腹水のような他の体液に由来することもある。前記 DNA は、保存されていない(新鮮な)細胞、組織及び体液並びに固定された細胞、組織及び体液からも得ることがある。細胞、組織及び体液の固定は、エタノール及び他のアルコールなどの沈殿固定剤によって、又はホルムアルデヒドのような架橋固定剤によって行うことがある。分析対象の DNA を、これらの供給源の任意の組み合わせから得ることもある。分析対象の DNA は、上記の供給源から抽出された DNA であることもある。例えば沈殿又は抽出によって、前記 DNA を濃縮することもある。これは、例えば、分析対象の DNA が、前記体液由来の自由に循環する DNA を用いて提供されることがある。例えば、サイズ濾過によって、又は富化しようとする細胞の表面上にある抗原に対する抗体を表面に持つ磁性粒子によって、細胞を富化することも可能である。分析対象の DNA は、例えば、自由に循環している悪性疾患の細胞又は前記体液由来の T‐リンパ球細胞から提供されることがある。分析対象の DNA の他の好ましい供給源は、新鮮な組織のホモジネート及び固定された組織の溶解物である。
【0051】
好ましい変形例としては、前記 DNA は、自由に循環する DNA、エキソソーム由来の DNA 及び/又は、いわゆる液体生検(Flussigbiopsien)又は「リキッド・バイオプシー(liquid biopsies)」といわれる、体液由来の自由に循環する細胞由来の DNA、を含む。液体生検は、現在、腫瘍学研究の中心的な領域である。液体生検は、腫瘍組織などの疑わしい組織そのものではなく、分析対象の体液のサンプルであり、例えば血液サンプルである。このサンプルにおいては、腫瘍から血流に放出された、自由に循環しているゲノム DNA、エキソソーム DNA、又は自由に循環している細胞など、腫瘍に由来する様々な物質を評価する。液体生検を解析する本発明に係る方法は、腫瘍又は転移がんを生検することができない場合、或いは、生検を行うことががんの後期ステージにある患者に大きなリスクをもたらす場合、有利に使用される。従来の mRNA 又は免疫組織化学に基づいて、免疫調節遺伝子の発現を検出することが、困難或いは不可能であるのに対し、免疫調節遺伝子に関する前記 DNA‐メチル化は、体液中で非常にうまく測定することができ、このことは本発明の特徴である。
【0052】
工程B)における DNA の変換は、原則として、この目的のために当該分野で知られている全ての公知及び適切な方法を用いて行うことができる。典型的には、化学的又は酵素的な変換であり、例えば DNA を亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムと接触させることにより、行われる。
【0053】
必要に応じて、工程B)における変換の後、工程C)において DNA‐メチル化を調べる前に、DNA を精製することができる。適切な精製方法及びプロトコールは、当業者に公知であり、例えば、DNA 抽出、沈殿又はポリマーを使った濃縮(polymergestutzte Anreicherung (polymer-mediated enrichment))を含むことがある。
【0054】
DNA‐メチル化解析は、免疫調節遺伝子に含まれる少なくとも 1 つの CpG‐ジヌクレオチドのメチル化の存在、非存在又は程度を測定することを含むことがある。前記免疫調節遺伝子中のいくつかの CpG‐ジヌクレオチドを調べることも可能である。これらはまた、調べる対象の免疫調節遺伝子の異なる部分にわたって分布していることもある。好ましい変形では、少なくとも 1 つの CpG‐ジヌクレオチドのメチル化を、少なくとも2つの異なる免疫調節遺伝子によって測定する。このようにして、本発明は、悪性疾患の DNA 中の CpG‐ジヌクレオチドが時々不均一にメチル化されて存在することがあるという問題を解決する。この結果、以下の例示的な実施形態から分かるように、偽陰性及び偽陽性の測定結果が回避されるので、特に信頼性があり、特に洗練された(differenzierte)予後及び/又は予測が実現する。
【0055】
工程C)における免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化を分析することは、特に限定されない。当業者は、本開示に基づいて好ましい方法を容易に決定することができる。これに関しては、上記実験マニュアルも参照されたい。好ましい変形では、分析対象の少なくとも 1 つの CpG‐ジヌクレオチドを含み、変換された DNA の領域を増幅するように設計された、いわゆるプライマーである、オリゴヌクレオチドを使ってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をまず最初に行う。引き続き、好ましくは、この増幅産物の少なくとも一部を使って、例えば、「超並列シークエンシング(Massive Parallel Sequencing)」、「次世代シークエンシング(Next Generation Sequencing)」(NGS)、又はナノポアシークエンシングとも呼ばれる、サンガー・シークエンシング、パイロシークエンシング、質量分析シークエンシング又は第二又は第三世代のシークエンシングを行う。前記 PCR に続いて、変異特異的オリゴヌクレオチド(プローブ)とのハイブリダイゼーションを、例えば DNA マイクロアレイの形態で、行うことも可能である。前記メチル化はまた、定量的リアルタイム‐PCR(quantitative real-time PCR、qPCR)、必要に応じて、融解温度の曲線を解析すること(Schmelzkurvenanalyse)によって測定することもできる。具体的には、前記定量的リアルタイム‐PCR を、WO 1997/046705 A1 に記載されているようにメチル化特異的プライマーを用いて、及び/又は WO 2002/072880 A2 に記載されているようにメチル化特異的ブロッカー・オリゴヌクレオチドを使って行うことができる。好ましい変形においては、メチル化特異的検出プローブが使用される。
【0056】
さらに他の好ましい変形では、例えば「全ゲノム・ショットガン・バイサルファイト・シークエンシング(Whole Genome Shotgun Bisulfite Sequencing (WGSBS))」又はダイレクト・ナノポア・シークエンシング(direkten Nanoporensequenzierung)の場合に、PCR を省略することができる。前記 WGSBS では、前記 DNA を断片化し、次にこの DNA 断片にアダプターを連結する。前記アダプターによって、その後、増幅及びシークエンシングをすることが可能になる。前記 DNA は、例えば、バイサルファイト(Bisulfite、亜硫酸水素塩)処理での変換によって既に断片化されている可能性があるため、前記 WGSBS における断片化のステップを省略することも可能である。当業者は、WGSBS を実施するためのプロトコールを容易に利用することができる(Johnson, M. D. et al., Curr. Protoc. Mol. Biol., 2012, 99, 21.23.1-21.23.28;Lister, R. et al., Nature, 2009, 462, 315-322;Berman, B. P. et al., Nat. Genet., 2011, 44, 40-46)。
【0057】
別の好ましい変形では、特異的オリゴヌクレオチド(プローブ)とのハイブリダイゼーションを PCR 増幅の前に実施することができるが、これはプローブ結合部がライゲーションされていて、続いて PCR によって増幅される場合である。当業者は、「マルチプレックス・ライゲーション依存プローブ増幅(multiplex ligation dependent probe amplification (MLPA))」などについての好ましい方法及びプロトコールを容易に利用することができる(例えば、「PCR Mutation Detection Protocols」 von B. D. M. Theophilus と R. Rapley, 第2版, 2011 年, Springer)。
【0058】
更に好ましい変形において、前記メチル化解析は、Infinium HumanMethylation 450 BeadChip を用いて実施される。好適なプロトコールを、例えば、ニューヨークのSpringer Science+Business Media社の書籍シリーズ「Methods in Molecular Biology」の第 1288 巻(2015 年)である S.P. Chellappan による書籍「Chromatin Protocols」中の M.A.Carless による「Determination of DNA Methylation Levels Using Illumina HumanMethylation450 BeadChips」の章に見出すことができる。他の適したプロトコルは、以下の実施形態から明らかになる。
【0059】
前記 DNA‐メチル化解析は、好ましくは、少なくとも1つの CpG‐ジヌクレオチドのメチル化を定量的に測定することが可能な条件下で実施される。この定量的な測定はまた、1 つ以上の遺伝子におけるいくつかの CpG‐ジヌクレオチドのメチル化状態を含むことがある。その後、例えば、特に堅牢な値を得るために、得られた量の平均化を行うことがある。このようにして、本方法は堅牢性及び精度が特に高いものとなる。例えば、定量的なメチル化解析は、ある遺伝子座のメチル化コピー数を同じ遺伝子座の全コピー数と関連付けることによって、相対的メチル化を測定するのに有用である。
【0060】
次いで、前記 DNA‐メチル化解析の結果、或いは前記免疫調節遺伝子のメチル化を、予後及び/又は免疫療法に対する患者の可能性のある応答性を診断するために、例えば参照値と比較することができる。参照値を適切に設定することは、実験医学的なルーチン(Routine)の一部である。一つの可能なやり方は、遡及的(レトロスペクティブ(retrospektiven))な分析によって免疫療法に対する予後及び/又は応答性が既に分かっている、同等の悪性疾患を有する患者の群、特に同じ疾患単位(Entitat)において、前記免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析を行うこと、である。これに基づくと、前記免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化は、免疫療法に対する予後及び/又は可能性のある応答性と相関することがある。例えば、遡及的(レトロスペクティブ(retrospektiven))に分析した群を、前記免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化によって予後又は応答性が区別される 2 つ以上のサブ群に分ける。好ましい参照値は、例えば、以下で閾値と呼ぶ 2 つのサブ群を分離する DNA‐メチル化の値である。本発明に係る方法において、前記 DNA‐メチル化解析の結果が閾値を超える又は未満であるかどうかに応じて、個々の患者を既知の予後、或いは既知の応答性を有する群の内の一つに割り付けることができる。
【0061】
また、DNA‐メチル化解析の結果と前記免疫調節遺伝子の mRNA‐発現の結果とを関連付けることも可能である。例えば、この遺伝子の発現が患者の予後の指標である場合、この遺伝子の DNA‐メチル化に基づいてその mRNA‐発現を決定することにより、前記患者の予後を診断することができる。本発明に係る免疫調節遺伝子の発現は、免疫療法による治療をするための攻撃標的も提供するので、このような方法で、免疫調節遺伝子によってコードされる免疫チェックポイント・タンパク質を攻撃標的として用いる、対応する免疫療法に対する応答性を、確実に予測することができる。
【0062】
本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析が、専門家が一般的に予測することができない方法であり、疾患経過の予後、或いは多くの様々な腫瘍疾患単位(Tumorentitaten)における免疫療法に対する応答性を予測することに適しているということは、本発明を特に傑出したものとする。前記悪性疾患は、特に、がん腫(カルシノーマ)、黒色腫(メラノーマ)、肉腫、神経膠腫(グリオーマ)、リンパ腫及び/又は白血病を含むことがある。前記がん腫(カルシノーマ)には、例えば、腺がん(アデノカルシノーマ)、扁平上皮がん、小細胞がん、神経内分泌がん、腎細胞がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、肛門がん、気管支がん、子宮内膜がん、胆管細胞がん、肝細胞がん、精巣がん、大腸がん、頭頸部がん、食道がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、甲状腺がん及び/又は子宮頸がんが含まれることがある。肉腫は、例えば血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫、神経原性肉腫、骨肉腫又は横紋筋肉腫であることがある。白血病は、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、又は慢性骨髄性白血病(CML)であることがある。リンパ腫は、ホジキン・リンパ腫又は非ホジキン・リンパ腫であることがある。非ホジキン・リンパ腫は、B 細胞リンパ腫又は T 細胞リンパ腫であることがある。対応する根拠は、実施例に記載されている。
【0063】
前記方法の更なる変形においては、前記免疫調節遺伝子の mRNA‐発現解析を DNA‐メチル化解析に追加して行う。これは、例えば、前記免疫調節遺伝子の少なくとも 1 つの転写バリアント(Transkriptvariante)又は少なくとも 2 つの異なる免疫調節遺伝子の少なくとも 1 つの転写バリアントの mRNA‐発現レベルを測定することを含むことがある。好ましくは、mRNA‐発現解析は、mRNA‐発現レベルの定量的測定が可能となる条件下で実施される。
【0064】
前記 mRNA‐発現解析のための好ましいプロトコールは、当業者に周知であり、通常は、a)転移性細胞又は T‐リンパ球細胞の mRNA を提供する工程;b)mRNA を cDNA に書き換える工程;c)免疫調節遺伝子の cDNA を検出する工程、を含む。しかし、cDNA への書き換えを先行して行うことをせずに mRNA を直接分析することも可能である。特に、ナノストリング技術(Nanostringtechnologie)はこの目的に適している。mRNA‐発現解析はまた、RNA-Seq(RNA シークエンシング)、又は全トランスクリプトーム・ショットガン・シークエンシング(whole transcriptome shotgun sequencing (WTSS))によっても行うことができる。ここで、mRNAの存在及び/又は量を測定するために、次世代シークエンシング(NGS)法を用いることができる。例えば、実施形態で行われているように、特定の配列を有する mRNA 分子の数を測定し、全ての mRNA 分子の数に対して標準化した値(標準化されたカウント(normalized count))を決定することができる。好ましい RNA-Seq 技術及び完全なソリューション(Komplettlosungen)を、例えば、イルミナ社、サン・ディエゴ、カリフォルニア州、米国(Illumina、San Diego、Ca、USA)から入手することが可能である。
【0065】
驚くべきことに、本発明に係る DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析を組み合わせることによって、予後群をより正確に層別化することが可能になるという意味で、予後の推定は更に改良される。前記解析を組み合わせることは、まず始めに患者について、免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析と mRNA‐発現解析の両方に基づいて、例えば上記の参照値を用いて、各予後群を診断すること、によって行うことができる。続いて、これらの予後群をまとめて、予後の為の更なるサブ群を作る。例えば、各予後が、免疫調節遺伝子の mRNA‐発現解析後及び DNA‐メチル化解析後の両方においてそれぞれ不良である場合、不良な予後を呈するサブ群が形成され得る。例えば、前記患者が、前記免疫調節遺伝子の mRNA‐発現解析及び DNA‐メチル化解析の両方に基づいて、良好な予後を有する場合、良好な予後を有するサブ群を形成することができる。例えば、2つの中間的な予後予測群には、免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析又は mRNA‐発現解析の何れかが良好な予後を示し、それぞれ他方の解析が不良な予後を示す患者が含まれる。いくつかの免疫調節遺伝子を解析し、それによって予後群への多因子分類が実施され得る場合、さらに洗練された層別化が可能となる。これに基づき、本発明により、臨床的な意思決定が、これまでに無かった方法で、客観的に測定可能なパラメータに基づいて、個別の患者に対して、より正確で、及びより信頼性が高く適合したものとなることがある。
【0066】
悪性疾患の細胞の DNA‐メチル化の変化は、遺伝子の中及び周囲の様々な CpG‐ジヌクレオチドと関係する。本発明に係る方法を実施するためには、特に、CpG‐ジヌクレオチドが、プロモーター内、及び悪性疾患の細胞又は T‐リンパ球細胞における免疫調節遺伝子の転写産物をコードする配列のプロモーター内にあることが特に好ましい。しかしながら、悪性疾患の細胞又は T‐リンパ球細胞における免疫調節遺伝子の遺伝子本体の外側の CpG‐ジヌクレオチドのメチル化も変化することがあり、本発明に係る方法にとって好適であることもある。本発明に係る DNA‐メチル化解析にとって好ましい領域には、調節的な遺伝子領域、特に転写因子結合部位、プロモーター、CpGアイランド、サイレンサー、エンハンサー、CTCF‐結合部位及びそれらの組み合わせが含まれる。エンハンサーは、例えば、遠位エンハンサーとして遺伝子から離れて存在してもよい。エンハンサーはまた、遺伝子の近くに位置することがあり、そのときは近位エンハンサーと呼ばれる。調節的な遺伝子領域は当業者に周知であり、例えば、D.S. Latchman、第 2 版、2015 年、Garyland Science、Taylor&Francis Group、LLCの「Gene Control」に記載されている。例えば、メチル化状態が転写活性又は遺伝子の発現と相関するような CpG‐ジヌクレオチドも、本発明に係る方法を実施するのに好ましい。転写活性は、例えば、変化したクロマチン構造から分かる。いわゆる「開クロマチン(offenes Chromatin)」は、遺伝子の高い転写活性を伴うことができるが、このことは、例えば、W. Janning と E. Kunst による「Genetik」 2004 年、Georg Thieme Verlag 社、シュトゥットガルトとニューヨーク、に記載されている。従って、「開クロマチン」の領域は、本発明に係る DNA‐メチル化解析にとって好ましい。
【0067】
調節的な遺伝子エレメントを決定することは、適切なデータベースを用いて当業者にとって容易に可能である。例えば、「Ensembl」データベースでは、このような調節エレメントには注釈付けられていて、このことは、例えば、D.R. Zerbino、S.P. Wilder、N. Johnson、T. Juettemann 及びP.R. Flicek による「The Ensembl Regulatory Build」 Genome Biology、2015 年、第 16 号、doi:10.1186/s13059-015-0621-5 に記載されている。
【0068】
ヒト・ゲノムの好ましい一次配列を使用して、本発明に係る DNA‐メチル化解析に適した及び好ましい免疫調節遺伝子の領域及び配列を決定することができるが、そのヒト・ゲノムの一次配列には、
例えば、die humane Genomversion des Genome Reference Consortium Genome Reference Consortium Human Build 38 (GRCh38)又は Reference Consortium Human Build 38 patch release 7 (GRCh38.p7) 2016 年 3 月 21 日、がある。前記ゲノムの領域は、以下では「染色体番号:領域の最初の塩基の位置‐領域位置の最後の塩基の位置」、例えば、第 2 染色体の塩基 241849881 から 241858908 塩基までの領域については「2:241849881-241858908」、のようにして参照される。
【0069】
ある変形の実施形態では、前記免疫調節遺伝子は、B7‐タンパク質及びその受容体をコードする遺伝子である CD274PDCD1LG2 及び PDCD1 から選択される。別の変形の実施形態では、前記免疫調節遺伝子は、B7‐タンパク質及びその受容体をコードする遺伝子である CD80 及び CTLA4 から選択される。更に別の変形の実施形態では、前記免疫調節遺伝子は、B7‐タンパク質の受容体をコードする遺伝子である ICOS、及び B7‐タンパク質遺伝子をコードする CD276C10orf54 及び HHLA2 から選択される。更に別の変形の実施形態では、免疫調節遺伝子は、MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体をコードする遺伝子 LAG3CD160KIR2DL4KIR3DL1 から選択される。これらの変異体からの免疫調節遺伝子の任意の組み合わせも可能である。
【0070】
遺伝子 PDCD1 又は Programmed Cell Death 1 はまた、シノニム(同義名) CD279PD1HPD-1SLEB2PD1hSLE1 及び HPD-L としても知られている。PDCD1 は、免疫調節遺伝子であり、そして本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質であるタンパク質をコードする。タンパク質 PDCD1 は受容体であり、例えば、遺伝子 CD274 及び PDCD1LG2 によってコードされる、B7‐タンパク質に属する両方のリガンドに結合することができる。PDCD1 は免疫グロブリン‐スーパーファミリーに属する。PDCD1 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(2:241849881-241858908、SEQ ID NO:17)、開クロマチン領域(2:241849051-241853001、SEQ ID NO:18 及び 2:241861820-241862593、SEQ ID NO:19)、エンハンサー領域(2:241852997-241855201、SEQ ID NO:2)、CTCF‐結合部位(2:241859081-241860074、SEQ ID NO:3)及び/又はプロモーター領域(2:241856912-241861429、SEQ ID NO:29 及び 2:241862929-241865230、SEQ ID NO:30)に含まれる。PDCD1 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例1、3、5、7、8、10、12及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る mRNA の発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74 及び/又は SEQ ID NO:75 の少なくとも一部に相当する。免疫療法に対する応答性の予測には、特に、PDCD1 によってコードされる受容体及び/又はそのリガンド、免疫調節遺伝子 PDCD1LG2 及び CD274 によってコードされるリガンド、を阻害するのに適した活性薬剤が含まれる。例としては、ニボルマブ(Nivolumab)(商品名:オプジーボ(Opdivo)、メーカー:ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)(商品名:キイトルーダ(Keytruda)、メーカー:メルク/ MSDシャープ&ドーメ(Merck/MSD Sharp & Dohme)社)、ピジリズマブ(Pidilizumab)(CT-011、メーカー:CureTech 社)、MGD013(Macrogenics 社)、AMP-224(メーカー:グラクソ・スミス・クライン社)、MEDI0680(AMP-514、メーカー:MedImmune LLC 社)、AUNP-12(メーカー:Aurigene Discovery Technologies Ltd.)、BMS935559(MDX 1105、メーカー:ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社))、CA-170(メーカー:クリス(Curis)社)、MPDL3280A(メーカー:ロシュ(Roche)社)、MEDI4736(メーカー:アストラゼネカ社(AstraZeneca)社)、アベルマブ(Avelumab)(MSB0010718C、メーカー:ファイザー(Pfizer)社)及び rHIgM12B7(B7-DC 架橋抗体 rHIgM12B7、メイヨー・クリニック(Mayo Clinic))が挙げられる。
【0071】
遺伝子 CD274 又は CD274 分子CD274 molecule)はまた、同義名 PDCD1L1B7-HB7H1PDCD1LG1PDL1PDL1 及び B7H1 としても知られている。CD274は、免疫調節遺伝子であり、そして本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質である B7‐タンパク質をコードする。CD274PDCD1 によってコードされる受容体のリガンドであるタンパク質をコードする。CD274 は、免疫グロブリン‐スーパーファミリーに属する。CD274 のDNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(9:5450503-5470566、SEQ ID NO:1)、並びにプロモーター領域(9:5445402-5456799、SEQ ID NO:76 及び 9:5458041-5461360、SEQ ID NO:77)、エンハンサー領域(9:5457122-5457702、SEQ ID NO:78;9:5463574-5468340、SEQ ID NO:79;9:5440647-5441785、SEQ ID NO:80 及び 9:5472191-5473149、SEQ ID NO:81)及び/又は CTCF‐結合部位(9:5440970-5441435、SEQ ID NO:82 及び 9:5446325-5446870、SEQ ID NO:83)に含まれる。DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、代替プロモータ及びCTCF‐結合部位(9:5451072-5481072、SEQ ID NO:371)を含む CD274 のコーディング領域、代替プロモータ(9: 5451072-5461819、SEQ ID NO:375)、プロモーターの上流の調節領域(9:5433159-5449887、SEQ ID NO:370)、CTCF‐結合部位を含むプロモーターの上流領域(9: 5439290-5449887、SEQ ID NO:376)、プロモーターの下流のコーディング領域(9: 5451072-5470566、SEQ ID NO:372)並びにCTCF‐結合部位及びエンハンサーを含むコーディング領域の下流の領域(9:5470566-5496357、SEQ ID NO:373)、を含む。CD274 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例2、3、7、8、10、12、15及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る mRNA の発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:101、SEQ ID NO:102、SEQ ID NO:103 及び/又は SEQ ID NO:104 の少なくとも一部に相当する。免疫療法に対する応答性の予測には、特に、CD274 がコードする B7‐タンパク質、及び/若しくはこれに対応する PDCD1 がコードする受容体並びに/又は PDCD1 がコードする受容体にやはり結合する PDCD1LG2 がコードするリガンド、を阻害する活性薬剤が含まれる。例としては、ニボルマブ(Nivolumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ピジリズマブ(Pidilizumab)、AMP-224、AMP-514、AUNP-12、BMS935559、CA-170(クリス(Curis)社)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)(MPDL3280A、ロシュ(Roche)社、ジェネンテック(Genentech)社)、MGD013(マクロジェニクス(Macrogenics)社)、MEDI4736、CA-170(Curis, Inc.)及びアベルマブ(Avelumab)が挙げられる。
【0072】
遺伝子 PDCD1LG2 又は programmed cell death 1 ligand 2 はまた、同義名 BtdcPDL2CD273PDCD1L2B7DCbA574F11.2PDL2 及び B7DC としても知られている。PDCD1LG2 は免疫調節遺伝子であり、本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質である B7‐タンパク質をコードする。PDCD1LG2 は、PDCD1 でコードされた受容体のリガンドである B7‐タンパク質をコードする。PDCD1LG2 は免疫グロブリン‐スーパーファミリーに属する。PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(9:5510570-5571254)並びにプロモーター領域(9: 5507688-5523442、SEQ ID NO:84;9:5491444-5503289、SEQ ID NO:85;9:5528150-5534251、SEQ ID NO:86 及び 9:5547972-5571492、SEQ ID NO:87)及び/又はエンハンサー領域(9:5479110-5491616、SEQ ID NO:88;9:5522642-5528253、SEQ ID NO:89;9:5534822-5547690、SEQ ID NO:90;9:5572730-5580962、SEQ ID NO:91)に含まれ、並びにコーディング配列の上流にある領域(9:5496357-5510570、SEQ ID NO:374)である。特に好ましくは、前記 DNA‐メチル化解析は、隣接する遺伝子 CD274 及び PDCD1LG21 の転写産物をコードし、及びこれらの遺伝子のエンハンサー及びプロモーターの領域を含む、配列領域 9:5433159-5603325 中、特に CD274 及び PDCD1LG21 のコーディング領域の間の領域(9:5470566-5510570;SEQ ID NO:485)の 1 つ以上の CpG‐ジヌクレオチドを含む。PDCD1LG2 のメチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例3、5、7、8、9、10及び13においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る mRNA の発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:105 の少なくとも一部に相当する。免疫療法に対する応答性の予測には、特に、PDCD1LG2 がコードする B7‐タンパク質、及び/又はこれに対応する PDCD1 がコードする受容体、を阻害する活性薬剤が含まれる。適した阻害剤は、例えば、ニボルマブ(Nivolumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ピジリズマブ(Pidilizumab)、AMP-224、AMP-514、AUNP-12、CA-170(クリス(Curis)社)及びrHIgM12B7 である。
【0073】
遺伝子 ICOS 又は誘導性 T 細胞共刺激因子inducible T-cell co-stimulator)はまた、同義名 CD278CVID1 及び AILIM としても知られている。ICOS は免疫調節遺伝子であり、本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質であるタンパク質をコードする。ICOS は受容体であり、例えば、遺伝子 ICOSLG によってコードされる B7‐タンパク質に属するリガンドに結合することができる。ICOSLG 又は誘導性 T 細胞共刺激因子リガンドinducible T-cell co-stimulator ligand)は、免疫調節遺伝子であり、本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質であるリガンドをコードする。ICOSLG はまた、 ICOSLB7RP1LICOSB7RP-1KIAA0653GL50ICOS-LCD275B7H2 及び B7H2 とも呼ばれている。ICOS 及び ICOSLG は、免疫グロブリン‐スーパーファミリーに属する。ICOS の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(2:203936748-203961577、SEQ ID NO:92)並びにプロモーター領域(2:203934590-203941036、SEQ ID NO:93 及び 2:203948548-203953636、SEQ ID NO:94)及び/又はエンハンサー領域(2:203931099-203937863、SEQ ID NO:95 及び 2:203940518-203949061、SEQ ID NO:96)に含まれる。ICOSLG の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(21:44222991-44240966、SEQ ID NO:97)並びに CpG‐アイランド領域(21:44240132-44243380、SEQ ID NO:98)、プロモーター領域(21:44238919-44247988、SEQ ID NO:99)及び/又はエンハンサー領域(21:44214476-44227512、SEQ ID NO:100)に含まれる。ICOS 及び ICOSLG の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11、13及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る ICOS 又は ICOSLG の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:106、SEQ ID NO:107、SEQ ID NO:108、SEQ ID NO:109、SEQ ID NO:110 及び/又は SEQ ID NO:111 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、ICOS 及び/又は ICOSLG の免疫調節効果を変える、特に ICOSによってコードされている受容体を活性化するのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するのために、ICOS 及び/又は ICOSLG 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。適した活性薬剤は、例えば、JTX-2011(Jounce Therapeutics 社)である。
【0074】
遺伝子 CTLA4 又は細胞傷害性 T‐リンパ球細胞関連タンパク質 4cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)はまた、同義名 CELIAC3GRD4CTLA-4IDDM12CDCD28GSECD152 及び ALPS5 としても知られている。CTLA4 は免疫調節遺伝子であり、本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質であるタンパク質をコードする。CTLA4 は、例えば遺伝子CD80 によりコードされる B7‐タンパク質に属するリガンドに結合することができる、受容体をコードする。CD80 又は CD80 分子CD80 molecule)は免疫調節遺伝子であり、本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質であるリガンドをコードする。CD80 はまた、例えば B7CD28LG1B7.1B7-1LAB7BB1 及び CD28LG とも呼ばれる。CTLA4 及び CD80 は、免疫グロブリン‐スーパーファミリーに属する。CTLA4 のメチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(2:203867786-203873960、SEQ ID NO:160)並びにプロモーター領域(2:203866174-203868926、SEQ ID NO:162 及び 2:203869477-203874095、SEQ ID NO:164)、エンハンサー領域(2:203874152-203875266、SEQ ID NO:165;2:203876672-203878051、SEQ ID NO:166 及び 2:203879313-203881585、SEQ ID NO:167)及び/又は CTLA4 とその隣接する免疫調節遺伝子 ICOS との間の領域(2:203872383-203939876)に含まれる。CTLA4 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例4、7、8、11、13,15及び16においてこの目的のために記載されているものから選択される。CD80 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(3: 119524293-119559602)並びにプロモーター領域(3:119554042-119563668、SEQ ID NO:163 及び 3:119568227-119573274、SEQ ID NO:177)及び/又はエンハンサー領域(3:119563379-119568778、SEQ ID NO:178;3:119538188-119543511、SEQ ID NO:179 及び 3:119545840-119554325、SEQ ID NO:180)に含まれる。CD80 のメチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11、13、15及び16においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る CTLA4 又は CD80 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:168、SEQ ID NO:169、SEQ ID NO:170、SEQ ID NO:171、SEQ ID NO:172 及び SEQ ID NO:173 又は SEQ ID NO:174、SEQ ID NO:175 及び/又は SEQ ID NO:176 の少なくとも一部に相当する。好ましい方法の実施形態には、CTLA4 及び/又は CD80 の免疫調節効果を変える、特に阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性を予測するために、CTLA4 及び/又は CD80 遺伝子のDNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。適した活性薬剤は、例えば、イピリムマブ(Ipilimumab)(MDX-010、商品名イェルボイ(Yervoy)、ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社)、トレメリムマブ(Tremelimumab)(チシリムマブ(Ticilimumab)、CP-675,206、ファイザー(Pfizer)社、メドイミューン(MedImmune)社、アストラゼネカ(Astra Zeneca)社)である。
【0075】
本発明の方法を実施することに関して、更なる好ましい B7‐タンパク質をコードする免疫調節遺伝子には、遺伝子 CD276C10orf54HHLA2NCR3LG1CD86 及び VTCN1 がある。遺伝子 CD276C10orf54HHLA2NCR3LG1CD86 及び VTCN1 は本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質をコードし、免疫グロブリン‐スーパーファミリーに属する。遺伝子 CD276 又は CD276 分子CD276 molecule)はまた、B7-H3B7H34Ig-B7-H3 及び B7RP-2 としても知られている。CD276 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(15:73683966-73714518、SEQ ID NO:181)並びにプロモーター領域(15:73679515-73692168、SEQ ID NO:182 及び 15:73693817-73698829、SEQ ID NO:184)、CpGアイランド領域(15:73683810-73685004、SEQ ID NO:183)、CTCF‐及び転写因子結合部位(15:73699041-73706032、SEQ ID NO:185)及びエンハンサー領域(15:73674927-73679619、SEQ ID NO:186 及び 15:73710442-73723236、SEQ ID NO:187)に含まれる。CD276 のメチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例13、15、16及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る CD276 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:241、SEQ ID NO:242、SEQ ID NO:243、SEQ ID NO:244、SEQ ID NO:245、SEQ ID NO:246、SEQ ID NO:247、SEQ ID NO:248、SEQ ID NO:249、SEQ ID NO:250、SEQ ID NO:251、SEQ ID NO:251 、及び/又は SEQ ID NO:253 の少なくとも一部に相当する。好ましい方法の実施形態には、CD276 の免疫調節効果を変える、特に阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、CD276 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。適した活性薬剤は、例えばエノビリツズマブ(Enoblituzumab)(MGA271、マクロジェニクス社(Mocrogenics))及び MGD009(マクロジェニクス社(Mocrogenics))である。
【0076】
遺伝子 C10orf54 又は染色体 10 オープン・リーディング・フレーム 54chromosome 10 open reading frame 54)はまた、B7H5GI24PP2135VISTAB7-H5DD1alpha 及び SISP1としても名付けられている。C10orf54 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(10:71747559-71773498、SEQ ID NO:188)並びにプロモーター領域(10:71759805-71784691、SEQ ID NO:189 及び 10:71723534-71753287、SEQ ID NO:191)及び/又は CTCF‐結合部位(10:71738936-71750940、SEQ ID NO:190)に含まれる。C10orf54 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11、14及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る C10orf54 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:192、SEQ ID NO:193 及び/又は SEQ ID NO:194 の少なくとも一部に相当する。好ましい方法の実施形態には、C10orf54 の免疫調節効果を変える、特に阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、C10orf54 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。適した活性薬剤は、例えば、CA-170(クリス社(Curis))及び JNJ-61610588(ヤンセン・バイオテック社(Janssen Biotech、Inc.))である。
【0077】
遺伝子 HHLA2 又は HERV-H LTR-associating 2 はまた、B7-H7B7YB7H7 及び B7-H5 ととしても知られている。HHLA2 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(3:108296490-108378285)、並びにエンハンサー、プロモーター及び CTCF‐結合部位を有する調節領域(3:108291804-108313328、SEQ ID NO:36)及び 2 つの別のプロモーター領域(3:108310655-108313476、SEQ ID NO:195 及び 3:108341108-108352706、SEQ ID NO:196)に含まれる。HHLA2 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11、14、15及び16においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る HHLA2 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:197、SEQ ID NO:198、SEQ ID NO:199、SEQ ID NO:200、SEQ ID NO:201、SEQ ID NO:202、SEQ ID NO:203、SEQ ID NO:204、SEQ ID NO:205、SEQ ID NO:206 及び/又は SEQ ID NO:207 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、HHLA2 の免疫調節効果を変える、特に阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、HHLA2 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。
【0078】
遺伝子 NCR3LG1 又はナチュラル・キラー細胞細胞傷害性受容体 3 リガンド 1natural killer cell cytotoxicity receptor 3 ligand 1)はまた、B7H6DKFZp686O24166 及び B7-H6 としても知られている。NCR3LG1 は免疫調節遺伝子であり、その産物は B7‐タンパク質に属し、本発明に係る免疫チェックポイント・タンパク質である。NCR3LG1 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(11:17351726-17377341、SEQ ID NO: 208)並びにプロモーター領域(11:17347524-17359073、SEQ ID NO:209)及び/又は CpG‐アイランド領域(11:17351068-17354459、SEQ ID NO:210)に含まれる。本発明に係る NCR3LG1 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:254 及び/又は SEQ ID NO:255 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、NCR3LG1 の免疫調節効果及び/又は NCR3 がコードする受容体の免疫調節効果を変えるのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、NCR3LG1 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。
【0079】
遺伝子 CD86 又は CD86 分子CD86 molecule)はまた、B7-2B70LAB72B7.2 及び CD28LG2 としても知られている。CD86 によりコードされるリガンドは B7‐タンパク質に属し、本発明に係る免疫チェックポイント・タンパク質であり、例えば、CD28 及び CTLA4 によってコードされる受容体に結合することができる。CD86 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(3:122055366-122121139)、プロモーター領域(3:122071817-122084231、SEQ ID NO:211;3:122053987-122061537、SEQ ID NO:212;3:122081939-122095873、SEQ ID NO:213;3:122096457-122110191、SEQ ID NO:214)及び/又はエンハンサー領域(3:122119408-122125888、SEQ ID NO:215)に含まれる。CD86 のメチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例17においてこの目的のために記載されたものから選択される。本発明に係る CD86 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:256、SEQ ID NO:257、SEQ ID NO:258、SEQ ID NO:259、SEQ ID NO:260、SEQ ID NO:261、SEQ ID NO:262、SEQ ID NO:263 及び/又は SEQ ID NO:264 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、CD86 がコードするリガンド並びに/又は CTLA4 及び/若しくは CD28 がコードする受容体による免疫調節効果を阻害するのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、CD86 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。適した活性薬剤は、例えば、イピリムマブ(Ipilimumab)(MDX-010、商品名イェルボイ(Yervoy)、ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社)、トレメリムマブ(Tremelimumab)(チシリムマブ(ticilimumab)、CP-675,206、ファイザー(Pfizer)社、メドイミューン(MedImmune)社、アストラゼネカ(Astra Zeneca)社)である。
【0080】
遺伝子 VTCN1 又は V-set ドメイン・コンテイニング T 細胞活性化阻害因子 1V-set domain containing T-cell activation inhibitor 1)はまた、B7-H4B7H4B7S1B7XB7h.5PRO1291 及び VCTN1 としても知られている。VTCN1 によってコードされるタンパク質は B7‐タンパク質に属し、本発明に係る免疫チェックポイント・タンパク質である。VTCN1 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(1:117143587-117210960)、及び/又はプロモーター領域(1:117193851-117226364)に含まれる。本発明に係る VTCN1 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA が SEQ ID NO:377、SEQ ID NO:378 及び/又は SEQ ID NO:379 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、VTCN1 によってコードされるリガンド及び/又はその受容体を阻害するのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、VTCN1 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。
【0081】
免疫調節遺伝子 KIR2DL4KIR3DL1KIR3DL3LAG3 及び CD160 は、MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体であるタンパク質をコードする。KIR2DL4KIR3DL1KIR3DL3LAG3 及び CD160 は、本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質であり、免疫グロブリン‐スーパーファミリーに属する。KIR‐遺伝子である KIR2DL4KIR3DL1 及び KIR3DL3 は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体killer cell immunoglobulin-like receptors)(略して KIR 又は KIR‐受容体)をコードする。遺伝子 KIR2DL4 又はキラー細胞免疫グロブリン様受容体、2 つのドメイン、長い細胞質尾部、4killer cell immunoglobulin-like receptor, two domains, long cytoplasmic tail, 4)はまた、例えば、KIR103KIR103ASG9PCD158D15.212KIR103AS 及び 103AS としても知られている。KIR2DL4 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(19:54803535-54814517、SEQ ID NO:216)、プロモーター領域(19:54799627-54807083、SEQ ID NO:217;19:54791651-54800236、SEQ ID NO:229)、及び/又は 2 つのエンハンサー領域(19:54803283-54804114、SEQ ID NO:218 及び 19:54812823-54819942、SEQ ID NO:219)に含まれる。KIR2DL4 のメチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11,14及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る KIR2DL4 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:220、SEQ ID NO:221、SEQ ID NO:222、SEQ ID NO:223、SEQ ID NO:224、SEQ ID NO:225、SEQ ID NO:226、SEQ ID NO:227 及び/又は SEQ ID NO:228 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、KIR2DL4 によってコードされる受容体の免疫調節効果を阻害するのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、KIR2DL4 の DNA‐メチル化解析を使用を使用することが含まれる。適した活性薬剤は、例えばリリルマブ(Lirilumab)(ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社)である。
【0082】
遺伝子 KIR3DL1 又はキラー細胞免疫グロブリン様受容体、3 つのドメイン、長い細胞質尾部、1killer cell immunoglobulin-like receptor, three domains, long cytoplasmic tail, 1)はまた、NKB1CD158Ecl-11cl-2CD158e2NKAT3AMB11NKB1BKIRKIR3DL2CD158E1CD158e1/2NKAT-3nkat3 及び KIR3DL1/S1 としても知られる。KIR3DL1 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(19:54816468-54866993)、並びにプロモーター領域(19:54808180-54831092、SEQ ID NO:230)及び/又は 2 つのエンハンサー領域(19:54812749-54821037、SEQ ID NO:231 及び 19:54835785-54863422、SEQ ID NO:232)に含まれる。KIR3DL1 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11及び14においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る KIR3DL1 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO: 233、SEQ ID NO:234、SEQ ID NO:235 及び/又は SEQ ID NO:236 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、KIR3DL1 によりコードされる受容体の免疫調節効果を阻害するのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、KIR3DL1 遺伝子のメチル化解析を使用することが含まれ、例えば、リリルマブ(Lirilumab)(ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社及びインネイト・ファーマ(Innate Pharma)社の IPH2102/BMS-986015としても知られる)、及び IPH4102(インネイト・ファーマ(Innate Pharma)社)が含まれる。
【0083】
遺伝子 KIR3DL3 又はキラー細胞免疫グロブリン様受容体、3 つのドメイン、長い細胞質尾部、3killer cell immunoglobulin-like receptor, three domains, long cytoplasmic tail, 3)はまた、KIR2DS2CD158zKIR3DL7KIR44CD158Z 及び KIRC1 としても知られている。KIR3DL3 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(19:54724479-54736536、SEQ ID NO:237)、並びにプロモーター領域(19:54723156-54728908、SEQ ID NO:238)、及び/又は 2 つのエンハンサー領域(19:54723473-54725230、SEQ ID NO:239 及び 19:54735023-54744608、SEQ ID NO:240)に含まれる。本発明に係る KIR3DL3 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は、SEQ ID NO:265 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、KIR3DL3 によりコードされる受容体の免疫調節効果を阻害するのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、KIR3DL3 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれ、例えば、リリルマブ(Lirilumab)(ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社及びインネイト・ファーマ(Innate Pharma)社の IPH2102/BMS-986015としても知られる)が含まれる。
【0084】
遺伝子 LAG3 又はリンパ球細胞活性化遺伝子 3lymphocyte-activation gene 3)はまた、例えば、FDC 及び CD223 とも名付けられている。LAG3 のメチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(12:6772512-6778455、SEQ ID NO:161)、並びにプロモーター領域(12:6770333-6774801、SEQ ID NO:349)、CTCF‐結合領域を有する代替プロモーター領域(12:6777768-6781320、SEQ ID NO:350)、並びにエンハンサー領域(12:6774685-6778062、SEQ ID NO:351)である。LAG3 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例4、7、8,9及び14においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る LAG3 の mRNA について測定をするためには、例えば、SEQ ID NO:352、SEQ ID NO:353、SEQ ID NO:354 及び SEQ ID NO:355 の配列又は部分配列が好ましい。好ましい本方法の実施形態は、LAG3 によってコードされる受容体の免疫調節効果を阻害するのに適した阻害剤に対する応答性を診断するための LAG3 遺伝子のメチル化解析を使用することである。適した阻害剤は、例えば、MGD013(マクロジェニクス(Macrogenics)社)及び BMS-986016(ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社)である。
【0085】
遺伝子 CD160 又は CD160 分子CD160 molecule)はまた、BY55NK28 及び NK1 とも呼ばれる。CD160 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(1:145719471-145739288、SEQ ID NO:361)、並びにプロモーター領域(1:145718367-145722818、SEQ ID NO:362)、代替プロモータ領域(1:145735798-145741393、SEQ ID NO:364)、CTCF‐結合部位(1:145720204-145722255、SEQ ID NO:363)、及び/又は 2 つのエンハンサー領域(1:145727546-145735069、SEQ ID NO:365 及び 1:145708511-145719786、SEQ ID NO:366)に含まれる。CD160 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11、14及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る CD160 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA が SEQ ID NO:356、SEQ ID NO:357、SEQ ID NO:358、SEQ ID NO:359 及び/又は SEQ ID NO:360 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、CD160 によってコードされる受容体の免疫調節効果を変える、特に阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために CD160 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。
【0086】
免疫調節遺伝子 TIGITBTLAHAVCR2BTNL2 及び CD48 は、免疫グロブリン‐スーパーファミリーのメンバーに属し、本発明の意味において免疫チェックポイント・タンパク質である、タンパク質 TIGIT、BTLA、HAVCR2、BTLN2 及び CD48 をコードする。
【0087】
遺伝子 TIGIT 又は Ig 及び ITIM ドメインを有する T 細胞免疫受容体T-cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)はまた、例えば、DKFZp667A205VSIG9VSTM3FLJ39873 及び WUCAM としても知られている。TIGIT の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(3:114276913-114310288)、並びにエンハンサー及び CTCF‐結合部位を有する 3 つの調節領域(3:114273873-114278448、SEQ ID NO:266;3:114306113-114321848、SEQ ID NO:267;3:114288458-114302904、SEQ ID NO:268)に含まれる。TIGIT の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例4、7、8、11、14、15、16及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る TIGIT の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:269、SEQ ID NO:270、SEQ ID NO:271、SEQ ID NO:272、SEQ ID NO:273、SEQ ID NO:274、及び/又は SEQ ID NO:275 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、TIGIT の免疫調節効果を変える、特に阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性の診断のための TIGIT 遺伝子のメチル化解析を使用することが含まれる。
【0088】
遺伝子 BTLA 又は B 及び T‐リンパ球細胞関連B and T lymphocyte associated)はまた、CD272 及び BTLA1 としても知られる。BTLA の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(3:112463968-112499561)、並びにプロモーター領域(3:112494210-112503447、SEQ ID NO:276)、代替プロモータ領域(3: 112460682-112487674、SEQ ID NO:279)、及び/又はエンハンサー領域(3:112501618-112513121、SEQ ID NO:277;3:112486680-112495554、SEQ ID NO:278;3:112451208-112463106、SEQ ID NO:280;3:112508297-112522457、SEQ ID NO:281)に含まれる。BTLA の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例4、6、7、8、11及び14においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る BTLA の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:282、SEQ ID NO:283、SEQ ID NO:284 及び/又は SEQ ID NO:285 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、BTLA の免疫調節効果を変える、特に阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために BTLA 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。
【0089】
遺伝子 HAVCR2 又は A 型肝炎ウイルス細胞受容体 2hepatitis A virus cellular receptor 2)はまた、TIMD-3CD366Tim-3TIMD3FLJ14428TIM3HAVcr-2 及び KIM-3 とも呼ばれる。HAVCR2 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(5:157085832-157142869)、並びにプロモーター領域(5:157138356-157147783、SEQ ID NO:286)、代替プロモータ領域(5:157097106-157121624、SEQ ID NO:287)、並びに 3 つのエンハンサー領域(5:157144698-157161450、SEQ ID NO:288;5:157116666-157139926、SEQ ID NO:289 及び 5:157080879-157096259、SEQ ID NO:290)に含まれる。HAVCR2 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例11及び14においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る HAVCR2 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:291、SEQ ID NO:292、SEQ ID NO:293、SEQ ID NO:294、SEQ ID NO:295 及び/又は SEQ ID NO:296 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、HAVCR2 の免疫調節効果を変える、例えば阻害する、のに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、HAVCR2 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。適した阻害剤は、抗 TIM-3 抗体 TSR-022(テサロ社(Tesaro、Inc))である。
【0090】
遺伝子 BTNL2 又はブチロフィリン様 2butyrophilin like 2)はまた、BTL-IIBTN7HSBLMHC1 及び SS2 とも呼ばれる。BTNL2 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(6:32393963-32407128、SEQ ID NO:387)、並びにプロモーター及び調節エレメントを有する領域(6:32387381-32413712、SEQ ID NO:387)に含まれる。BTNL2 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る BTNL2 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:389 の少なくとも一部に相当する。好ましい実施形態には、BTNL2 の免疫調節効果を変えるのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、BTNL2 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。これには、特に、BTNL2 によってコードされた免疫チェックポイント・タンパク質を阻害するのに適したアンタゴニストが含まれる。
【0091】
遺伝子 CD48 又は CD48 分子CD48 molecule)はまた、BCM1BLASTBLAST1MEM-102SLAMF2hCD48 及び mCD48 とも呼ばれる。CD48 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、プロモーター及び調節エレメント(1:160676386-160722581)、並びにプロモーター(1:160703189-160716911、SEQ ID NO:390)に含まれる。CD48 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る CD48 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:389 の少なくとも一部に相当する。好ましい実施形態には、CD48 の免疫調節効果を変えるのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、CD48 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。
【0092】
CD40TNFRSF9TNFRSF18TNFRSF4 及び CD27 は、タンパク質 CD40、TNFRSF9、TNFRSF18、TNFRSF4 及び CD27 をコードする免疫調節遺伝子である。CD40、TNFRSF9、TNFRSF18、TNFRSF4 及び CD27 は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの受容体であり、本発明の意味において免疫チェックポイント・タンパク質である。
【0093】
遺伝子 CD40 又は CD40 分子CD40 molecule)、TNF 受容体スーパーファミリー・メンバー 5TNF receptor superfamily member 5)はまた、TNFRSF5p50Bp50 及び CDW40 とも呼ばれる。CD40 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(20: 46118272-46129863、SEQ ID NO:297)、並びにプロモーター領域(20:46115599-46122305、SEQ ID NO:298)、代替プロモータ領域(20:46106713-46115878、SEQ ID NO:299)、及び/又はエンハンサー領域(20:46121274-46143091、SEQ ID NO:300)に含まれる。CD40 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例4,7,8,9及び14においてこの目的のために記載されたものから選択される。本発明に係る CD40 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:301、SEQ ID NO:302、SEQ ID NO:303、SEQ ID NO:304、SEQ ID NO:305、SEQ ID NO:306 及び/又は SEQ ID NO:307 の少なくとも一部に相当する。好ましい実施形態には、CD40 の免疫調節効果を変えるのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、CD40 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。これには、特に、CD40 によってコードされる受容体を活性化するのに適したアゴニストが含まれ、例えば、CP-870,893(ファイザー(Pfizer)社、VLST 社)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)(シアトル・ジェネティクス(Seattle Gentetics)社)、Chi Lob 7/4(サウサンプトン大学)がある。特に、活性薬剤を、CD40 の免疫調節効果を阻害することができるように選択することもできる。適した活性薬剤は、例えば、ルカツムマブ(Lucatumumab)(ノバルティス(Novartis)社)である。
【0094】
遺伝子 TNFRSF9 又は腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー・メンバー 9tumor necrosis factor receptor superfamily member 9)はまた、4-1BBCDw137CD137 及び ILA としても知られている。TNFRSF9 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(1:7915894-7943165、SEQ ID NO:308)、並びにプロモーター領域(1:7937419-7950341、SEQ ID NO:309)、CTCF‐結合部位、エンハンサー及び代替プロモーターを有する調節エレメント領域(1:7910016-7923298、SEQ ID NO:312)、エンハンサー領域(1:7922095-7939183、SEQ ID NO:310)、及び/又は CpG‐アイランド(1:7949284-7956816、SEQ ID NO:311)に含まれる。TNFRSF9 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例4,7,8,11,14,15,16及び17においてこの目的のために記載されているものから選択される。本発明に係る TNFRSF9 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:313、SEQ ID NO:314、SEQ ID NO:315 及び/又は SEQ ID NO:316 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、TNFRSF9 の免疫調節効果を変えるのに適した活性薬剤、特に TNFRSF9 によってコードされる受容体を活性化させるのに適したアゴニスト、に対する応答性を診断するために、TNFRSF9 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。適した活性薬剤は、PF-05082566(PF-566、ファイザー(Pfizer)社)及びウレルマブ(Urelumab)(BMS-663513、ブリストル‐マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)社)である。
【0095】
遺伝子 TNFRSF25 又は腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー・メンバー 25tumor necrosis factor receptor superfamily member 25)はまた、WSL-LRWSLAPO3TNFRSF12TR3LARDDDR3TRAMPWSL-1DR3WSL1 及び APO-3 とも呼ばれている。TNFRSF25 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(1:6461151-6466195、SEQ ID NO:317)、並びに代替プロモーター領域(1:6458470-6463974、SEQ ID NO:318)、2 つ CpG‐アイランド(1:6459713-6463353、SEQ ID NO:319;1:6465602-6466846、SEQ ID NO:320)、並びに別のプロモーター(1:6464008-6468536、SEQ ID NO:321)、及び/又はエンハンサー(1:6468908-6478190、SEQ ID NO:322)に含まれる。TNFRSF25 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例14及び17においてこの目的のために記載されたものから選択される。本発明に係る TNFRSF25 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:323、SEQ ID NO:324、SEQ ID NO:325、SEQ ID NO:326、SEQ ID NO:327 及び/又は SEQ ID NO:328 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、TNFRSF25 の免疫調節効果を変えるのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、TNFRSF25 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。これは、特に好ましくは、TNFRSF25 によってコードされる受容体を活性化するのに適したアゴニストである。
【0096】
遺伝子 TNFRSF18 又は腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー・メンバー 18tumor necrosis factor receptor superfamily member 18)はまた、GITRAITRCD357 及び GITR-D としても知られている。TNFRSF18 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、転写産物をコードする領域(1:1203508-1206691、SEQ ID NO:329)、及び/又はプロモーター領域(1:1195867-1210392、SEQ ID NO:330)に含まれる。本発明に係る TNFRSF18 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:331、SEQ ID NO:332、SEQ ID NO:333及び/又はSEQ ID NO:334 の少なくとも一部に相当する。TNFRSF18 のメチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例17においてこの目的のために記載されたものから選択される。好ましい方法の実施形態には、TNFRSF18 の免疫調節効果を変えるのに適した活性薬剤に対する応答性を診断するために、TNFRSF18 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。これは、特に、TNFRSF18 によってコードされる受容体を活性化するのに適しているアゴニストに関するものであり、例えば TRX518(GITR社)がある。
【0097】
遺伝子 TNFRSF4 又は腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー・メンバー 4tumor necrosis factor receptor superfamily member 4)はまた、IMD16OX40TXGP1LCD134 及び ACT35 としても知られている。TNFRSF4 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(1:1211326-1214138、SEQ ID NO:335)、プロモーター領域(1:1209894-1215938、SEQ ID NO:336)、及び/又は CpG‐アイランド領域(1:1213505-1214288、SEQ ID NO:337)に含まれる。本発明に係る TNFRSF4 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:338、SEQ ID NO:339 及び/又は SEQ ID NO:340 の少なくとも一部に相当する。TNFRSF4 のメチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例17においてこの目的のために記載されたものから選択される。好ましい本方法の実施形態には、TNFRSF4 の免疫調節効果を変えるのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、TNFRSF4 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。特に好ましくは、TNFRSF4 によってコードされる受容体を活性化するのに適したアゴニストであり、例えば MEDI6469(9B12、メドイミューン社(MedImmune LLC)、アストラ・ゼネカ(Astra Zeneca)社、アゴノックス(AgonOx)社)、Hu106-22 及び Hu 119-122(UTMDACC)がある。
【0098】
遺伝子 CD27 又は CD27 分子CD27 molecule)はまた、S152T14TNFRSF7S152LPFS2 又は Tp55 とも呼ばれる。CD27 の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(12:6444867-6451718、SEQ ID NO:341)、2 つのプロモーター領域(12:6442585-6448021、SEQ ID NO:342 及び 12:6448982-6453895、SEQ ID NO:343)、及び/又は 3 つのエンハンサー領域(12:6453736-6456010、SEQ ID NO:344;12:6447474-6449430、SEQ ID NO:345 及び 12:6439173-6442795、SEQ ID NO:346)に含まれる。CD27 の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例6及び17においてこの目的のために記載されたものから選択される。CD27 の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:347 及び/又は SEQ ID NO:348 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、CD27 の免疫調節効果を変えるのに適した活性薬剤に対する応答性を診断するために、CD27 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。これは、特に、CD27 によってコードされる受容体を活性化するのに適しているアゴニストであることがあり、例えば、バルリルマブ(Varlilumab)(セルデックス・セラピューティクス(CelldexTherapeutics)社)がある。
【0099】
遺伝子 ADORA2A は、アデノシン 2A 受容体をコードする免疫調節遺伝子である。アデノシン 2A 受容体は本発明の意味における免疫チェックポイント・タンパク質であり、代謝産物のアデノシンの結合を介して免疫調節の効果をもたらす。遺伝子 ADORA2A 又はアデノシン A2a 受容体adenosine A2a receptor)はまた、A2aRADORA2 又は RDC8 としても知られている。ADORA2A の DNA‐メチル化解析のための好ましい領域は、例えば、転写産物をコードする領域(22:24417879-24442360、SEQ ID NO:380)、CpG‐アイランドを有するプロモーター領域(22:24422358-24434469、SEQ ID NO:381)、エンハンサー領域(22:24418577-24423493、SEQ ID NO:382)、並びに ADORA2A 及びそのアンチセンス RNA をコードする領域(22:24420336-24501503)に含まれる。ADORA2A の DNA‐メチル化解析のための更に好ましい領域は、実施例17においてこの目的のために記載されたものから選択される。本発明に係る ADORA2A の mRNA‐発現解析に関しては、転写産物の配列の少なくとも一部を検出することが適していて、その cDNA は SEQ ID NO:383、SEQ ID NO:384、SEQ ID NO:385 及び/又は SEQ ID NO:386 の少なくとも一部に相当する。好ましい本方法の実施形態には、アデノシン 2A 受容体の免疫調節効果を変えるのに適した、活性薬剤に対する応答性を診断するために、ADORA2A 遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用することが含まれる。特に好ましくは、ADORA2A によってコードされる受容体を阻害するのに適したアンタゴニストであり、例えば、PBF-509、イストラデフィリン(Istradefylline)、ST1535、ST4206、トザデナント(Tozadenant)、V81444、CPI-444、プレラデナント(Preladenant)、ビパデナント(Vipadenant)、SCH58261、ATL801 である。
【0100】
あるいは、他の予後及び/又は予測バイオマーカーと組み合わせて、本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析を実施することが可能である。これに特に適しているのは、遺伝子 BRAF 及び EGFR の突然変異であり、これに基づいて BRAF 及び EGFR の阻害剤に対する応答性を予測することができる。ケモカイン及びケモカイン受容体、例えばケモカインファミリー CXC 及び CX3C、のメチル化解析及び/又は突然変異解析と組み合わせて、前記免疫調節遺伝子のメチル化解析を実施することも可能である。例えば、これを、ウロクプルマブ(Ulocuplumab)による治療に対する応答性を予測するために使用することができる。本発明に係る免疫調節遺伝子のメチル化解析はまた、遺伝子 IL2RBCXCL12CXCR4 及び CXCR7 のメチル化解析と組み合わせることもできる。
【0101】
まず第 1 に、予後の推定を、免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を変えるように設計された、少なくとも 1 つの活性薬剤で、患者に対して免疫療法による治療をする前、途中又は後に行うことができる。その予測にはまた、少なくとも 1 つのそのような活性薬剤を使用した免疫療法に対する患者の悪性疾患の応答性が含まれることがある。免疫調節効果の変化は、活性薬剤が解析対象の免疫チェックポイント・タンパク質自体又はその受容体若しくはリガンドと相互作用することを通じてもたらされることがある。例えば、免疫チェックポイント・タンパク質にはリガンド CD274 及び/又は PDCD1LG2 が含まれる。この CD274 及び/又は PDCD1LG2 の免疫調節効果を対応する受容体 PDCD1 との相互作用を通じて変える、特に阻害する、例えば、PDCD1 受容体への CD274 又は PDCD1LG2 の結合を活性薬剤によってブロックする、ように活性薬剤を設計することができる。特に、共抑制性又は抗炎症性の免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を低下させる又抑制することができる、いわゆる免疫チェックポイント・タンパク質阻害剤を、活性薬剤として使用することがある。そのような免疫チェックポイント・タンパク質阻害剤の例には、ニボルマブ(Nivolumab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)及び上記の他の活性薬剤がある。他の可能性には、本発明に係る免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を活性化する活性薬剤がある。適した活性化作用の活性薬剤には、既に上記した活性薬剤が含まれる。様々な本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析に基づいて、活性薬剤の選択を、それぞれにおいて前記免疫療法で良好な応答性が現れるように、行うことも可能である。このような併用療法は、多くの場合、特に有効であるが、比較的高いコストを伴うために、非常に慎重に検討する必要があり、それ故に、個々の活性薬剤に対する応答性に関しては、特に信頼性高く予測する必要がある。これは、本発明の方法によって初めて提供することができるようになったことである。
【0102】
これは、本発明の第 2 の態様であり、これにより、悪性疾患を有する患者を免疫療法で治療するための活性薬剤を個人に合わせて選択するための方法が提供される。前記方法は、更に、悪性疾患の細胞、及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞の少なくとも 1 つの免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析を実施することによって特徴づけられる。ここで、前記免疫調節遺伝子は、B7‐タンパク質及びそれらの受容体(即ち、B7‐タンパク質が結合する受容体)、MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー TNFRSF9、CD40、TNFRSF4、TNFRSF18 及び CD27、免疫グロブリン‐スーパーファミリーのメンバー TIGIT、BTLA、HAVCR2、BTNL2 及び CD48 及びアデノシンが結合するアデノシン 2A 受容体から選択される免疫チェックポイント・タンパク質をコードし、その DNA‐メチル化解析の結果に基づいて、活性薬剤が選択される。
【0103】
次に、活性薬剤を、免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を変化させることができるように選択することができる。例えば、活性薬剤は、免疫チェックポイント・タンパク質阻害剤として、共抑制性又は抗炎症性の免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を低下させる又は抑制することができ、又は免疫チェックポイント・タンパク質アゴニストとして、共刺激性又は向炎症性の免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を増強することができる。特に、DNA‐メチル化解析によって、悪性疾患の細胞及び/又は T‐リンパ球細胞における対応する免疫チェックポイント・タンパク質の発現が示される場合、それに対する活性薬剤が選択される。なぜなら、その発現によって、活性薬剤を使った免疫療法による治療をすることへの攻撃標的が提供され、結果として、対応する免疫療法に応答する可能性が十分に高くなるからである。
【0104】
本発明の第 3 の態様は、患者に対して免疫療法による治療をするために予後診断をする、予測をする及び/又は活性薬剤を個人に合わせて選択するために、患者の悪性疾患の細胞及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞の少なくとも1つの免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析を使用すること、に関する。ここでもまた、免疫調節遺伝子は、B7‐タンパク質とその受容体(即ち、B7‐タンパク質に結合する受容体)、MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー TNFRSF9、CD40、TNFRSF4、TNFRSF18 及び CD27、免疫グロブリン‐スーパーファミリーのメンバー TIGIT、BTLA、HAVCR2、BTNL2 及び CD48 並びにアデノシンが結合するアデノシン 2A 受容体から選択される免疫チェックポイント・タンパク質をコードする。
【0105】
本発明の第 4 の態様は、患者に対して免疫療法による治療をするために、予後の、及び/若しくは予測的なバイオマーカー、又は活性薬剤を個人に合わせて選択するためのバイオマーカー、として悪性疾患の細胞及び/又は悪性疾患の細胞と相互作用する T‐リンパ球細胞の免疫調節遺伝子の少なくとも 1 つの CpG‐ジヌクレオチドのメチル化の存在、非存在又は程度を使用することに関する。ここでもまた、免疫調節遺伝子は、B7‐タンパク質とその受容体(即ち、B7‐タンパク質に結合する受容体)、MHC:ペプチド複合体に結合する共受容体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー TNFRSF9、CD40、TNFRSF4、TNFRSF18 及び CD27、免疫グロブリン‐スーパーファミリーのメンバー TIGIT、BTLA、HAVCR2、BTNL2 及び CD48 並びにアデノシンが結合するアデノシン 2A 受容体から選択される免疫チェックポイント・タンパク質をコードする。
【0106】
その他の点では、第 2、第 3 及び第 4 の態様の更なる特徴及び好ましい実施形態は、適用可能な限り、第 1 の態様のものに対応する。
【0107】
本発明の第 5 の態様によれば、第 1 若しくは第 2 の態様による方法を実施するための、又は第 3 若しくは第 4 の態様による使用をするためのキットが提供される。前記キットは、DNA‐メチル化解析のための少なくとも 1 つのオリゴヌクレオチド‐対を含む。ここで、前記オリゴヌクレオチド‐対を、悪性疾患の細胞及び/又は T‐リンパ球細胞由来の DNA 中の免疫調節遺伝子の配列とハイブリダイズし、その後、前記 DNA 中に含まれるシトシンを、ウラシル又はシトシンとは識別可能な塩基対形成挙動及び/若しくは分子量を有する別の塩基に変換して、前記配列を増幅する及び/又は検出する、ように設計することができる。
【0108】
前記キットはまた、1 つ以上の更なるオリゴヌクレオチド‐対を含むことができる。ここで、それぞれは、DNA‐メチル化解析について異なる配列を増幅及び/又は検出することを目的に、前記変換された DNA 中の同じ免疫調節遺伝子又は他の免疫調節遺伝子の異なる配列にハイブリダイズするように、設計されるている。
【0109】
さらに前記キットは、mRNA‐発現解析のための少なくとも 1 つのオリゴヌクレオチド‐対を含んでもよい。ここで、前記オリゴヌクレオチド‐対は、悪性疾患の細胞及び/又は T‐リンパ球細胞からの免疫調節遺伝子の少なくとも 1 つの転写バリアントの mRNA 及び/又は mRNA から生成された cDNA の配列にハイブリダイズするように、前記配列を増幅する及び/又は検出するように、設計されている。
【0110】
オリゴヌクレオチド‐対を使用して増幅する及び/又は検出する免疫調節遺伝子の好ましい領域及び配列は、第 1 の態様と同様である。
【0111】
前記キットは、好ましくは、第 1 及び/若しくは第 2 の態様による方法を実施するための並びに/又は第 3 若しくは第 4 の態様による使用をするための取扱説明書を含む。
【実施例】
【0112】
本発明を、例示的な実施形態及び実験結果を参照して、以下に、より詳細に記載する。これらの実施形態は例示であり、特定の詳細に限定されない。
【0113】
実施例1:免疫調節遺伝子 PDCD1 の DNA‐メチル化解析に基づく根治的切除術後の前立腺がんを有する患者の予後の診断
本発明に係る方法の実施の範囲内で、局所限局的に前立腺がんを有する患者の予後の診断を、例えば、前立腺及び前立腺に位置する腫瘍の根治的除去(根治的切除)を行った後に、行うことができる。
【0114】
まず、DNA を腫瘍から回収した。例えば、プロテイナーゼ K を用いて腫瘍組織を溶解した後に、シリカ遠心分離カラムを使って DNA を抽出することがこの目的に適していた。腫瘍からDNAを得るために、市販のキット、例えば、QIAamp DNA ミニキット(キアゲン社、ヒルデン、ドイツ(Qiagen N.V., Hilden, Germany))など、が入手可能である。その後、抽出した DNA を亜硫酸水素塩で変換し、原則全てのシトシンを脱アミノ化してウラシルにし、一方でメチル化したシトシンを不変のままにした。続いて、DNA‐メチル化解析を、例えば Infinium HumanMethylation 450 BeadChip(イルミナ社、サン・ディエゴ、カリフォルニア州、米国(Illumina、Inc., San Diego, CA, USA))を使用して製造業者の指示に従ってゲノムワイドで行った。HumanMethylation450 BeadChip からの生データの取得を TCGA Research Network(http://cancergenome.nih.gov/)に記載されている通りに行った。全体として、予後が既知である 417 例の前立腺がんを有する患者の腫瘍由来の生データを取得し、遡及的(レトロスペクティブ(retrospektiven))に解析した。
【0115】
本発明に係る PDCD1 遺伝子の DNA‐メチル化解析のために、HumanMethylation450 BeadChip の生データに基づいて、相対的なメチル化を算出した。この目的のために、Infinium HumanMethylation450 BeadChip のビーズ対 cg00795812、cg27051683、cg03889044、cg17322655 及び cg20805133 でカバーされる、PDCD1 遺伝子の中の CpG‐ジヌクレオチドを使用した。このビーズ対は亜硫酸水素塩で変換した DNA に結合するが、その DNA は、変換前、配列 SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23 及びSEQ ID NO:24 を有していた。まず、各前記ビーズ対及び各患者サンプルの生データに基づいてメチル化値を計算した。これは、メチル化変異体に結合する一対のビーズの信号(S_M)と、非メチル化 DNA に結合する一対のビーズの信号(S_U)とを比較することによって行った。ビーズには、固定されたオリゴヌクレオチドが含まれ、本明細書ではプローブとも呼ばれる。式:メチル化=(プローブ強度 S_M)/((プローブ強度 S_M)+(プローブ強度 S_U))に従って得られる比に基づいて、DNA‐メチル化を計算した。続いて、配列 SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23 及びSEQ ID NO:24 を有する 5 つの遺伝子座の各々について、決定したメチル化値を算術的に平均した。その後、そのようにして得られたメチル化値に基づいて、前記患者を、既知の予後に応じて、遡及的(レトロスペクティブ(retrospektiven))に 2 つの群に割り付けたところ、PDCD1 遺伝子座のメチル化に関する閾値として 57.5 %が得られた。ある群は、57.5 %の閾値未満の PDCD1 遺伝子座のメチル化を有し、以下では低い PDCD1 のメチル化の群と呼ぶ。従って、PDCD1 遺伝子座で 57.5 %を超えたメチル化を示した群は、高い PDCD1 のメチル化の群と呼ぶ。
【0116】
図1は、本発明に係る方法を適用することにより、患者を 2 つの群に分けることが可能となることを示すが、その 2 つの群では、低い PDCD1 のメチル化の群の患者が高い PDCD1 のメチル化の群の患者よりも有意に良好な予後を有する。ここで、前記予後は、生化学的な再発が発症する、即ち、前立腺がんに特異的な血液パラメータである PSA が増加する、までの予測時間によって例示される。低い PDCD1 のメチル化の群では PSA 無再発生存期間の平均値は 92 か月であったが、高い PDCD1 のメチル化の患者群は平均値 79 か月で、PSA 無再発生存期間が 13 か月短いことが示された。従って、本発明に係る方法を適用することによって、PSA 再発に関して患者を異なるリスク群に割り付けることが可能となった。
【0117】
従って、腫瘍が取り除かれたばかりの患者、及び将来の疾患経過がまだ分からない患者の予後を診断することが可能となる。この目的のために、この患者の腫瘍における PDCD1 遺伝子の DNA‐メチル化は、例えば、Infinium HumanMethylation450 BeadChipを用いて測定することができる。例えば、このメチル化が 57.5 %の閾値未満である場合、この患者を平均 92 か月の無再発生存期間を有するより良好な予後を有する患者群に割り当てることができる。例えば、患者の腫瘍における PDCD1 遺伝子のメチル化が閾値を超える場合、この患者では、PSA の再発が早期に起こる可能性が高い。この患者は、その後、追加のアジュバント療法の恩恵を受けることができる。例えば、フォローアップ中にこれらの患者の進行を注意深く監視することも可能であり、PSA 再発の発症も早期に診断され、好ましい治療措置を開始することができる。
【0118】
実施例2:免疫調節遺伝子 CD274 のDNA‐メチル化解析に基づく根治的切除術後の前立腺がん患者の予後の診断
本発明に係る方法を実施することにより、CD274 遺伝子内の CpG‐ジヌクレオチドの DNA‐メチル化解析に基づいて、悪性疾患の患者の予後の診断を行うことも可能である。例えば、患者を前立腺及び前立腺に位置する腫瘍の根治的除去(根治的な外科的切除)によって治療した後に、腫瘍中の CD274 遺伝子のメチル化に基づいて、局所限局的に前立腺がんを有する患者の予後を診断することができる。
【0119】
予後が分かっている合計 417 例の患者の腫瘍サンプルを遡及的に検討した。DNA‐メチル化解析は、実施例1に記載のように行った。Infinium HumanMethylation450 BeadChip の生データに基づいて、CD274 遺伝子座の相対的メチル化を計算するために、ゲノム中で、配列 SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11 及び SEQ ID NO:12 中の CpG‐ジヌクレオチドのメチル化解析を可能にする、5 つのビーズ対 cg15837913、cg02823866、cg14305799、cg13474877 及び cg19724470 を使用した。実施例1に記載したように一対の非メチル化及びメチル化状態に特異的なビーズそれぞれについて比を求め、遺伝子 PDCD1 と同様に実施例1に記載したように、各患者についての相対的メチル化を 5 つのビーズ対それぞれに対して計算した。その後、これらの 5 つのメチル化値を平均化し、患者サンプル当たりの相対的メチル化値とした。そして、そのようにして決定したメチル化値に基づいて、遡及的に分かっている予後に応じて、患者を 2 つの群に分けた。2 つの群に分けることで、CD274 遺伝子座での相対的メチル化について 52.75 %の閾値が得られた。337 例の患者の群は、CD274 遺伝子座において 52.75 %の閾値レベル未満のメチル化を有していて、低い CD274 のメチル化の群と呼ぶ。対応して、52.75 %を超えた CD274 遺伝子座メチル化を示した群を、高い CD274 のメチル化の群と呼ぶ。この群は 80 例の患者からなっていた。
【0120】
図2Aは、本発明に係る方法を使用することにより、患者を 2 つの群に分けることが可能になり、低い CD274 のメチル化の群が高い CD274 のメチル化の群より有意に良好な予後を有することを示す。この応用例では、生化学的な再発が発症する、即ち前立腺がんに特異的な血液パラメータである PSA が増加する、までの予測時間を予後と定義する。低い CD274 のメチル化の群では、PSA 無再発生存期間平均値が 2822 日であったのに対して、高い PDCD1 のメチル化の患者群は平均値 1578日で、PSA 無再発生存期間が 1244 日短いことが示された。従って、本発明に係る方法を使用することにより、PSA 再発に関して患者を異なるリスク群に割り付けることが可能となった。
【0121】
本発明に係る悪性疾患の患者の予後を診断するために、リアルタイム‐PCRを用いた DNA‐メチル化解析を実施することも可能である。この例では、前立腺腫瘍を有していて、予後が既知である 259 例の患者を遡及的に調べたが、これは前述の 417 例の患者とは異なるコホートであった。
【0122】
リアルタイム‐PCR による DNA‐メチル化解析のために、厚さ 10 μm の組織薄切片を調製し、ガラススライド上に載せた。HE セクションを用いて、病理学的検査により腫瘍領域を同定した。次いで、これらの腫瘍領域をメスを用いてガラススライドから掻き取った。腫瘍領域に由来する DNA を、innuCONVERT 亜硫酸水素塩オール・イン・ワン・キット(アナリティック・イェーナ社、イェーナ、ドイツ)(innuCONVERT Bisulfit All-In-One Kit (Analytik Jena, Jena, Deutschland))を用いて、メーカーから提供されている指示に従って、亜硫酸水素塩で変換した。続いて、NanoDrop ND-1000 分光光度計(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社、ウォルトハム、マサチューセッツ州、米国(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA))を用いて、変換された DNA の量を定量した。前立腺腫瘍の DNA‐メチル化解析は、定量的リアルタイム‐PCR(qPCR)を用いて、メチル化特異的に CD274 遺伝子座を増幅し、同時に定量することで行った。この場合、同じ反応において、メチル化に加えて、全 DNA も測定する デュプレックス‐(Duplex-)又はマルチプレックス‐PCR(Multiplex-PCR)を使用した。全 DNA は、例えば、標的配列に CpG‐ジヌクレオチドが含まれず、それ故に標的配列がメチル化に依存しないで増幅される、プライマー及びプローブを使用して、測定した。今回の場合、全 DNA を測定するのに ACTB 遺伝子中のある遺伝子座を増幅した。ゲノム中のこの遺伝子座は SEQ ID NO:32 の配列を有し、亜硫酸水素塩による変換の後には SEQ ID NO:7 の配列を有するようになる。この配列を、SEQ ID NO:4 及び SEQ ID NO:5 の配列を有するプライマーを用いて増幅した。増幅産物を配列特異的に検出することは、5‘ 側に蛍光色素 アトー 647N を及び 3‘ 側にクエンチャー BHQ-2 を有する、SEQ ID NO:6 のプローブを用いて行った。CD274 遺伝子座をメチル化特異的に増幅することは、SEQ ID NO:13 及び SEQ ID NO:14 の配列を有するプライマーを用いて行った。これらのプライマーは、SEQ ID NO:33 の亜硫酸水素塩による変換から生じる配列を増幅する。メチル化が完全に行われている場合、ゲノム中のこの変換された領域は SEQ ID NO:16 の配列を有する。メチル化を特異的に検出することは、5‘ 側に蛍光色素 6-FAM を及び 3‘ 側にクエンチャー BHQ-1 を有する、SEQ ID NO:15 の配列を有するプローブを用いて行った。前立腺腫瘍の変換された DNA 中におけるメチル化状態を DeltaDelta-CT 法により計算し、100 %メチル化している標準 DNA に対するパーセンテージとして表した。標準 DNA としては、メーカー指示に従って innuCONVERT 亜硫酸水素塩オール・イン・ワン・キットを使って先に変換した、人工的メチル化 DNA(CpGenome(登録商標)ユニバーサル・メチル化 DNA;メルク・ミリポア社、ダルムシュタット、ドイツ(CpGenomeTM Universal Methylated DNA; Merck Millipore, Darmstadt, Germany))を使用した。本実施例では、CD274 メチル化のリアルタイム‐PCR 定量は、20 μl の PCR 反応で、それぞれ 3 回の独立した測定を行った。ここで、次の反応組成が好ましい:35 mM トリス‐HCl、pH 8.4、6 mM MgCl2、50 mM KCl、4 %グリセリン、各 0.25 mM dNTP(dTTP、dATP、dGTP、dCTP)、2 U FastStart Taq DNA‐ポリメラーゼ(ロシュ・アプライド・サイエンス社、ペンツベルグ、ドイツ(Roche Applied Science, Penzberg, Deutschland))、各 0.4 μm プライマー及び各 0.2 μm 検出プローブ。qPCR は、例えば、AB7500 ファスト・リアル‐タイム PCR システム(ライフ・テクノロジー社、カールスバッド、カリフォルニア州、米国))(AB7500 Fast Real-Time PCR System(Life Technologies Corporation, Carlsbad, CA, USA))を用いて行った。適した温度プロファイルは、例えば以下のステップを含む:95 ℃で 20 分、続いて 56 ℃で 45 秒、95 ℃で 15 秒を 45 サイクル。
【0123】
図2Bは、本発明に係る方法の使用が、リアルタイム‐PCR によって決定した CD274 遺伝子座のメチル化に基づいて、前立腺がん患者の予後を診断するのに適していることを示す。259 例の患者を、DNA‐メチル化解析に基づいて、異なる予後を有する 2 つの群に割り付けた。腫瘍が 0.975 %を超えるメチル化を示した患者は、93 か月の平均 PSA 無再発生存期間を有し、腫瘍が 0.975 %未満のメチル化を示した患者は、平均 PSA 無再発生存期間が 21 か月延長した(114 か月)。
【0124】
例えば、上記のリアルタイム‐PCR と同様に、予後が未知である患者の腫瘍サンプル中の CD274 遺伝子座のメチル化を測定することが可能である。例えば、このメチル化が 0.975 %を超える場合、患者は不良な予後であり、93 か月の非再発生存期間が平均となることがある。腫瘍におけるメチル化がこの閾値未満である場合、患者は平均 114 か月の非再発生存期間で、より良好な予後である可能性が高い。
【0125】
この例では、本発明に係る方法を、2 つの異なる技術、即ち、リアルタイム‐PCR と Infinium HumanMethylation450 BeadChip、を使用して行う。患者を予後が良好と不良の群に群分けすることを可能にするメチル化閾値は、52.75 %(Infinium HumanMethylation450 BeadChip)及び 0.975 %(リアルタイム‐PCR)であった。予後群に割り付けるための好ましい閾値が、DNA‐メチル化解析に使用する方法に応じて決まることがあるということは、当業者にとって明らかである。別のやり方としては、それぞれの DNA‐メチル化解析の結果を直接比較できるように、異なる方法を、お互いに対して較正することである。例えば、所定の割合のメチル化を有する 1 つ以上の標準 DNA サンプルの DNA‐メチル化解析を、異なる方法によって実施することで、較正することができる。それぞれの方法において、調べる対象の免疫調節遺伝子のメチル化解析の結果と標準 DNA サンプルのメチル化解析の結果を関連付けることによって、前記測定結果を較正することができ、その結果、異なる方法による較正された測定結果を比較することが可能となる。
【0126】
実施例3:免疫調節遺伝子 PDCD1PDCD1LG2 及び CD274 の DNA‐メチル化解析に基づく悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後の診断
この例では、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の、本発明に係る予後の診断を示す。前記 DNA‐メチル化解析の結果を、実施例1に記載されたように、Infinium HumanMethylation450 BeadChip を用いて取得した。各遺伝子の相対的メチル化を測定するために、まず最初に、実施例1に記載したように、Infinium HumanMethylation450 BeadChip の各選択されたビーズ対に対して、相対的メチル化を測定した。その後、それぞれの遺伝子についてのメチル化の代表値を得るために、遺伝子あたり最大 6 つのビーズ対のこの相対的メチル化を平均した。CD274 のメチル化解析をするには、ビーズ対 cg15837913(SEQ ID NO:8)、cg02823866(SEQ ID NO:9)、cg14305799(SEQ ID NO:10)、cg13474877(SEQ ID NO:11)及びcg19724470(SEQ ID NO:12)を使用した。これらのビーズによって、例えば、CD274 遺伝子の配列領域 SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:33 及び SEQ ID NO:76 における CpG‐ジヌクレオチドのメチル化を測定することができる。PDCD1 のメチル化解析をするには、ビーズ対 cg00795812(SEQ ID NO:20)、cg03889044(SEQ ID NO:22)、cg17322655(SEQ ID NO:23)、cg20805133(SEQ ID NO:24)及びcg27051683(SEQ ID NO:369)を使用した。これらのビーズによって、例えば、PDCD1 遺伝子の配列領域 SEQ ID NO:3 及び SEQ ID NO:29 における CpG‐ジヌクレオチドのメチル化を測定することができる。PDCD1LG2 のメチル化解析をするには、ビーズ対 cg07211259(SEQ ID NO:31)を使用した。これらのビーズによって、例えば、PDCD1LG2 遺伝子の配列領域 SEQ ID NO:84 における CpG‐ジヌクレオチドのメチル化を測定することができる。
【0127】
図3は、DNA‐メチル化解析基づいて、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者を予後群に遡及的に割り付けたこと示す。予後に応じて、腫瘍における遺伝子 PDCD1図3A)、CD274図3B)及び PDCD1LG2図3C)のメチル化に基づいて、群に割りつけた患者の カプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群Iには、対応する遺伝子座で閾値未満の低いメチル化を有する腫瘍の患者が含まれる。群IIには、それぞれの遺伝子の閾値を超えてメチル化が増加している腫瘍の患者が含まれる。患者を群分けするための閾値としては、以下のメチル化値を設定した:PDCD1LG2 については 12.84 %、CD274 については 13.11 %及び PDCD1 については 20.54 %。分析した 3 つの遺伝子全てについて、DNA‐メチル化解析をして、腫瘍においてメチル化が増加している患者は、その疾患についてより不良な経過を示すことが示された。本発明に係る方法を使用することで、免疫チェックポイント遺伝子 PDCD1 並びにその対応するリガンドをコードする CD274 遺伝子の DNA‐メチル化に基づいて、悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後群を診断することが可能となった。また、本発明に係る予後の診断をするために、免疫チェックポイント・タンパク質 PDCD1 のリガンドをコードする別の遺伝子 PDCD1LG2 を使うことができることが示された。
【0128】
この実施例は、本発明に係る方法が、実施例1及び実施例2のような単一の悪性疾患、前立腺がんに限定されるのではなく、例えば、悪性黒色腫(メラノーマ)などの他の悪性疾患においても予後の診断が可能であることを示す。従って、これらの遺伝子の DNA‐メチル化解析に基づく予後の診断は、個々の疾患単位(Entitaten)に限定されず、他の悪性腫瘍にも適用できる。それ故、本発明は、従来の予測方法では個々の疾患単位(Entitaten)に適用性が限られているという問題を解決する。
【0129】
さらに、この例によって、本発明に係る方法の実施形態によって、将来の様々な健康状態に関して予後の診断が可能であることを示すことができる。実施例1及び実施例2では、PSA 再発の発症を正確に予測することができた。PSA 再発は、前立腺腫瘍に限られる特性である。これに対して、本実施例3では、患者の死亡を予測することができた。
【0130】
実施例4:免疫調節遺伝子 TIGITTNFRSF9LAG3BTLACTLA4 及び CD40 の DNA‐メチル化解析に基づく、悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後の診断
本発明の方法はまた、免疫チェックポイント遺伝子 TIGITTNFRSF9LAG3BTLACTLA4 及び CD40 のメチル化に基づいて、悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後の推定も可能にする。本実施例では、Infinium HumanMethylation450 BeadChip(イルミナ社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国(Illumina, Inc., San Diego, CA, USA))を使用して、遺伝子の相対的メチル化を測定するための DNA‐メチル化解析の結果を、実施例1で説明したように、取得した。続いて TIGITTNFRSF9LAG3BTLACTLA4 及び CD40 それぞれについて、相対的メチル化を決定した。この目的のために、実施例1に記載したように、ビーズ対のメチル化状態及び非メチル化状態に特異的なビーズから比を求めた。遺伝子 BTLA については、ビーズ対 cg24157392 及び cg19281794 を使用した。これらのビーズは、亜硫酸水素塩で変換する前には SEQ ID NO 37 又は SEQ ID NO 37の配列を有するヒト DNA の配列に結合し、従って、例えば配列領域 SEQ ID NO 276 のメチル化の測定が可能となる。両方のビーズ対は、それぞれ 1 対のビーズで構成され、その内の 1 つは亜硫酸水素塩による変換前に非メチル化である配列に、及びもう 1 つは変換前にメチル化した配列に結合する。これら両方のビーズ対から前記比が求められるが、そこでは、例えば、ビーズ対 cg24157392 について以下に示す:メチル化=(強度 cg24157392_M)/((強度 cg24157392_M)+(強度 cg24157392_U))、ここで、ビーズの cg24157392_M はメチル化バリアントに結合し、ビーズの cg24157392_U は非メチル化バリアントに結合する。同じ手順をビーズ対 cg19281794 に適用した。次いで、ビーズ対 cg24157392 及び cg19281794 の相対的メチル化値を平均化するによって、BTLA に関する相対メチル化値を計算した。
【0131】
このようにして、遺伝子 TIGITTNFRSF9LAG3BTLACTLA4 及び CD40 の相対的メチル化を測定した。TNFRSF9 の相対的メチル化を測定するためには、ビーズ対cg14614416(SEQ ID NO:51)、cg14153654(SEQ ID NO:54)、cg17123655(SEQ ID NO:55)、cg18025409(SEQ ID NO:57)、cg06956444(SEQ ID NO:58)及び cg08840010(SEQ ID NO:59)を使用したが、そこでは、例えば、ゲノム中の配列領域 SEQ ID NO:308、SEQ ID NO:309 及び SEQ ID NO:321 のメチル化を測定することができる。CD40 のメチル化を測定する際には、ビーズ対 cg19785066(SEQ ID NO:47)、cg09053081(SEQ ID NO:48)及び cg21601405(SEQ ID NO:49)を使用したが、そこでは、例えば、配列領域 SEQ ID NO:297 及び SEQ ID NO:298 のメチル化を測定するのに適している。TIGIT のメチル化を測定するためには、ビーズ対 cg02771886(SEQ ID NO:61)、cg08723913(SEQ ID NO:62)、cg17164827(SEQ ID NO:63)、cg04885775(SEQ ID NO:64)、cg23637607(SEQ ID NO:65)及び cg16358924(SEQ ID NO:66)を使用したが、そこでは、配列領域 SEQ ID NO:267 のメチル化を測定するのに適している。CTLA4 遺伝子の配列領域SEQ ID NO:162 のメチル化を測定するためには、ビーズ対 cg08460026(SEQ ID NO:39)を使用した。LAG3 の相対的メチル化を測定するためには、ビーズ対 cg04153135(SEQ ID NO:40)、cg20652042(SEQ ID NO:41)及び cg01820374(SEQ ID NO:42)を使用したが、配列領域 SEQ ID NO:161、SEQ ID NO:349 及び SEQ ID NO:351 におけるメチル化を測定するのに適している。
【0132】
図4は、本発明の対象に係る DNA‐メチル化解析に基づいて、470 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者を予後群に遡及的に割り付けたことを示す。腫瘍中の遺伝子 TIGIT図4A)、TNFRSF9図4B)、LAG3図4C)、BTLA図4D)、CTLA4図4E)及び CD40図4F)のメチル化に基づいて群に割り付けた患者の カプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群Iには、対応する遺伝子座で閾値未満の低いメチル化の腫瘍を有する患者が含まれる。群IIには、それぞれの遺伝子の閾値超える高いメチル化の腫瘍を有する患者が含まれる。患者を群分けするための閾値としては、例えば、以下のメチル化値を設定した:TIGITについては 86.41 %、TNFRSF9 については 57.80 %、LAG3 について は 66.94 %、BTLA については 91.31 %、CTLA4 については 13.10 %及び CD40 については 17.16 %。この実施例で検討したすべての免疫調節遺伝子に関して、閾値を超えた高いメチル化の腫瘍を有する患者は、閾値未満のメチル化を示す腫瘍を有する患者よりも、有意に悪い疾患経過を呈することが示された。
【0133】
実施例5:免疫調節遺伝子 PDCD1 の DNA‐メチル化解析に基づく頭部‐及び頸部領域の扁平上皮がん患者の予後の診断
図5は、本発明に係る方法に基づき、528 例の頭部‐及び頸部領域の扁平上皮がんを有する患者を予後群に遡及的に割り付けたことを示す。臨床のエンドポイントを、死亡として定義した。免疫チェックポイント遺伝子 PDCD1 の DNA‐メチル化解析を、腫瘍組織からの DNA において測定した。高い PDCD1 メチル化を有する患者は、PDCD1 遺伝子座のメチル化が低い患者よりも悪い経過を示す。閾値として中央値を用いた 2 分化によって、前記患者を群分けをした。即ち、半分の患者サンプル(n = 264 例の患者)が閾値を超えたメチル化値を有し、残りの半分(n = 264 例の患者)が閾値未満であるように、閾値を選択した。
【0134】
リアルタイム‐PCR によって PDCD1 の DNA‐メチル化解析を行うことも可能であった。リアルタイム‐PCR について、適した条件及び組成は実施例2と同様である。以下のオリゴヌクレオチドを PCR に使用した:SEQ ID NO:25(フォワード・プライマー)、SEQ ID NO:26(リバース・プライマー)及び SEQ ID NO:27 検出プローブ。検出プローブを FAM 及び BHQ-1 で標識した。使用したプライマーによって、SEQ ID NO:368 の配列を有する亜硫酸水素塩で変換された DNA の増幅が可能になる。この配列は、亜硫酸水素塩での変換前には、SEQ ID NO:367 の配列を有していた。頭部‐及び頸部領域の扁平上皮がんを有していて、予後が分かっている、合計 120 例の患者からの腫瘍サンプルを遡及的に調べた。患者を、メチル化解析に基づいて、及び予後に応じて、低いメチル化を有する 40 例の患者の群と高いメチル化を有する 80 例の患者の群に割り付けることができた。高いメチル化を有する患者群は、低いメチル化を有する群と比較して、有意により悪い全生存率を示した(p‐値 < 0.05)。
【0135】
実施例1では、本発明に係る方法の実施形態によって、PDCD1 遺伝子のメチル化に基づいて前立腺がん患者における予後を診断することが可能であることが示された。これらの前立腺がんは、前立腺の腺上皮から生じるがん腫(カルシノーマ)であった。従って、これらのがん腫(カルシノーマ)は腺がん(アデノカルシノーマ)に属する。実施例3では、本発明に係る方法の実施形態によって、悪性黒色腫(メラノーマ)患者の予後を診断することが可能であることも示された。黒色腫(メラノーマ)は上皮細胞由来ではなくメラノサイト由来であるため、がん腫(カルシノーマ)には属さない。黒色腫(メラノーマ)はがん腫(カルシノーマ)と比較した場合、基本的に異なる悪性疾患である。本実施例5では、頭部‐及び頸部領域の扁平上皮がん患者においても、本発明に係る予後の診断が可能であることをさらに示すことができた。これらの扁平上皮細胞がんは、腺がん(アデノカルシノーマ)と同様に、がん腫(カルシノーマ)に属し、上皮細胞から生じる。腺がん(アデノカルシノーマ)とは対照的に、扁平上皮細胞がんは、腺上皮からではなく、扁平上皮から生じる。従って、本発明に係る方法の実施形態によって、異なる起源のがん腫(カルシノーマ)における予後の診断だけでなく、がん腫(カルシノーマ)ではない悪性疾患の予後の診断も可能であることを示すことができた。これらの結果は、様々な悪性疾患における予後及び/又は予測のために、本発明に係る方法を普遍的に適用できることをさらに示す。
【0136】
実施例6:DNA‐メチル化解析に基づく免疫チェックポイント遺伝子の mRNA‐発現の測定
本発明に係る方法の実施によりまた、遺伝子 BTLA及び CD27 の mRNA‐発現に基づいて、以下の実施例に示すように、免疫調節遺伝子によってコードされる免疫チェックポイント・タンパク質の発現を測定することも可能になる。
【0137】
mRNA の測定を、例えば、mRNA の抽出後、全 RNA の cDNA ライブラリーを調製し、そして最後に次世代シークエンシングに基づく解析を行うことで、測定することができる。例えば、RNeasy ミニキット(キアゲン、ヒルデン)(RNeasy Mini Kit(Qiagen、Hilden))をメーカーの指示に従って使用し、腫瘍組織から RNA を得ることができる。次に、TruSeq RNA ライブラリ作成キット v2(イルミナ社)(TruSeq RNA Library Preparation Kit v2(Illumina))を使用してメーカーの指示に従ってライブラリーを調製し、HiSeq PE(ペア‐エンド(Paired-End))クラスター・キットv4 cBot(イルミナ社)(HiSeq PE (Paired-End) Cluster Kit v4 cBot (Illumina))を使用して、HiSeq 2500 次世代シークエンサー(イルミナ)(HiSeq 2500 Next Generation Sequencer(Illumina))で分析することができる。mRNA の測定又は全 mRNA 分子の数に対する特定の配列を有する mRNA 分子の相対数を測定することは、TCGA リサーチ・ネットワーク(TCGA Research Network)(http://cancergenome.nih.gov/)に記載された通りに行った。
【0138】
図6は、BTLA図6A)及び CD27図6C)の mRNA‐発現を有する 470 例の患者の悪性黒色腫(メラノーマ)組織における DNA‐メチル化の相関を示す。50 %未満のそれぞれの遺伝子座のメチル化を有する全ての腫瘍は、10 を超える mRNA(BTLA図6A)又は 100 を超える mRNA(CD27図6C)の発現を示すことが分かった。図6Bは、> 10の BTLA mRNA 発現である腫瘍を有する黒色腫(メラノーマ)患者が、より低い mRNA‐発現である腫瘍を有する患者よりも有意に良好な予後を有することを示す。BTLA と同様に、> 100の CD27 mRNA‐発現である腫瘍を有する黒色腫(メラノーマ)患者が、より低い mRNA‐発現を有する患者よりも有意に良好な予後を有することが図6Dに示されている。
【0139】
遺伝子 BTLA 及び CD27 の発現は、患者の予後を診断するために使用されるだけではなく、例えば治療が対応する遺伝子産物に対する治療である場合、治療に応答する可能性を示す。この実施例は、mRNA‐発現の測定を、腫瘍における遺伝子座のメチル化に基づいてすることができて、患者の予後を診断するために使用され得ることを示す。これは、mRNA 自体を直接的に測定することが、mRNA の低い安定性のために、臨床ルーチンにおいては、しばしば制限されるという問題を解決する。
さらに、この実施例は、DNA‐メチル化解析に基づく患者の予後の診断によって、解析された免疫調節遺伝子の発現を同時に推定することも可能になることを示す。その結果、遺伝子産物、即ち、免疫チェックポイント・タンパク質、の発現に応じて、治療がおそらくは作用する、又は治療がおそらくは作用しないと、患者を評価することが可能である。この目的に特に適しているのは、免疫チェックポイント・タンパク質又はその相互作用パートナーに対して直接的に向けられている療法である。特に、これらの遺伝子産物に対するモノクローナル抗体を用いた免疫療法がこの目的に適している。
【0140】
実施例7:組み合わされた DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析に基づく悪性黒色腫(メラノーマ)患者の予後の診断
悪性黒色腫(メラノーマ)を有し、及び予後が分かっている 470 例の患者の腫瘍における CD274 遺伝子の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析を行った。mRNA‐発現及び DNA‐メチル化の測定は、実施例1,3及び6に記載のように行った。
【0141】
図7Aは、検出された CD274 遺伝子の mRNA‐発現と DNA‐メチル化の、示された閾値と併せた散布図を示し、その閾値に基づいて、高い及び低い mRNA‐発現又は DNA‐メチル化を有する予後群に遡及的に分り付けた。図7Aは、DNA‐メチル化及び mRNA‐発現の有意な負の相関(Spearman の ρ= -0.546、p < 0.001)を示す。導入されたメチル化の閾値 13.11 %に基づいて、本発明によれば、患者をより高い(群 II+III)及びより低い(群 I+IV)DNA‐メチル化群に割り付けることができる。同様に、図7Aに示す 18.23 で mRNA‐発現の垂直閾値を導入することによって、高い(群 III+IV)及び低い(群 I+II)mRNA‐発現を示す 2 つの群形成が可能になる。図7Bは、腫瘍における高い CD274 のメチル化を有する患者(群 II+III)の、低いメチル化を有する患者(群 I+IV)と比較した、全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。群 II+III の患者は、I+IV 群の患者と比較して、あまり好ましい予後を示さない。図7Cは、腫瘍における高い CD274 mRNA‐発現を有する患者(群 III+IV)と低いメチル化 患者(群 I+II)とを比較した、全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。腫瘍において、遺伝子 CD274 の mRNA‐発現が増加した腫瘍の患者(群 III+IV)は、CD274 の低い mRNA‐発現の腫瘍を有する群 I+II の患者に比べて、より良好な臨床経過である。図7Dは、腫瘍において、高い遺伝子 CD274 の mRNA‐発現及び低いメチル化を有する患者(群 IV)、高いメチル化及び低い mRNA‐発現を有する患者(群 II)、並びに高いメチル化及び高い mRNA‐発現を有する患者並びに低いメチル化及び低い mRNA‐発現を有する患者(群 I+III)とを比較した、全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。mRNA‐発現解析と DNA‐メチル化解析の両方において、良好な予後を有する群に割りつけられる患者(群 IV:高い mRNA‐発現と低いメチル化)は、mRNA‐発現解析及び DNA‐メチル化解析に基づいて、予後不良群に割り付けられている腫瘍を有する患者(群 II:高いメチル化と低い発現)と比較して、有意に好ましい経過を取る。全ての他の患者(群 I+III)は、群 II 及び IV の予後の間にある予後を示す(図7D)。
【0142】
図7は、遺伝子 CD274 の例を用いて、悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後をより良く診断するために、mRNA‐発現解析及び DNA‐メチル化解析の組み合わせる、本発明に係る方法の実施形態を詳細に記載している。本発明に係る方法を更なる遺伝子に適用すると、予後をより良く診断することも可能になる。CD274図8A及び図7D)と比較して、この予後の診断を遺伝子 PDCD1LG2図8B)、PDCD1図8C)、BTLA図8D)、LAG3図8E)、TIGIT図8F)、CD40図8G)、CTLA4図8H)及び TNFRSF9図8I)に関しても示すことができる。図8は、本発明の様々な免疫調節遺伝子の mRNA‐発現と DNA‐メチル化を組み合わせた解析に基づいて、悪性黒色腫(メラノーマ)を有し、予後が分かっている 470 例の患者を遡及的に割りつけていることを示す。患者の群分けを、個々の遺伝子に適する閾値に応じて、図7と同様に行った。腫瘍において、高い DNA‐メチル化と低い mRNA‐発現を有する患者(群 II)、腫瘍において、低い DNA‐メチル化と高い mRNA‐発現を有する患者(群 IV)、並びに残りの患者(群 I+III)の疾患経過を比較した。すべての検討した遺伝子について、群 II が好ましくない疾患経過を辿り、群 IV が好ましい疾患経過を辿り、残りの患者(群 I+III)が中間の死亡リスクを有することを、示すことができた。従って、群 II は高いリスク群を表し、群 IVは低いリスク群を表す。
【0143】
実施例8:免疫調節遺伝子 PDCD1LG2CD274PDCD1BTLALAG3TIGITCD40CTLA4 及び TNFRSF9 についての、組合せた DNA‐メチル化解析と mRNA‐発現解析に基づく悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後の診断
実施例3及び4において、全部で 9 つの異なる免疫チェックポイント遺伝子(PDCD1LG2CD274PDCD1BTLALAG3TIGITCD40CTLA4 及び TNFRSF9)の DNA‐メチル化解析に基づく、悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後の本発明に係る診断を示した。悪性疾患を有する患者の予後を診断することは、異なる遺伝子の DNA‐メチル化解析と mRNA‐発現解析を組み合わせることによってさらに向上させることができる。mRNA‐発現及び DNA‐メチル化の測定は、実施例1及び6に記載のように行った。定量的メチル化値の計算は、実施例3及び4に記載したように、各遺伝子について実施した。予後群への患者の割り付けは、最初に、9 つの遺伝子の mRNA‐発現に基づいて行った。群 I は、9 つの遺伝子の mRNA‐発現に基づいて好ましい予後に割り付けることができる群である。群 I には、9 つの遺伝子の少なくとも 8 つの遺伝子で閾値を超える mRNA‐発現を示した腫瘍を有する患者が含まれる。群 II は、9 つの遺伝子の mRNA‐発現に基づいて、好ましくない予後を割り当てることができる群である。群 II には、解析した 9 つの遺伝子のうち 8 つ未満の遺伝子で閾値を超える mRNA‐発現を示した腫瘍を有する患者が含まれる。続いて、9 つの遺伝子の DNA‐メチル化に基づいて、患者を割り付けた。群 III は、9 つの遺伝子の DNA‐メチル化に基づいて好ましい予後を割り当てることができる群である。群 III には、9 つの遺伝子のうち最大 4 つの遺伝子で閾値を超える DNA‐メチル化を示した腫瘍を有する患者を含む。群 IV は、9 つの遺伝子の DNA‐メチル化に基づいて、好ましくない予後を割り当てることができる群である。群 IV には、解析した 9 つの遺伝子のうち少なくとも 5 つの遺伝子で閾値を超えるメチル化を示した腫瘍を有する患者が含まれる。最終的には、患者の割り付けを、9 つの遺伝子の DNA‐メチル化及び mRNA‐発現に基づいて行った。群 V には、mRNA‐発現と DNA‐メチル化の両方の面で、予後良好な群に割り付けることができる患者が含まれていた。群 V は、群 I 及び 群 III の両方に割りつけられる患者が含まれた。群 VI には、mRNA‐発現及び DNA‐メチル化の両方の面で、予後不良の群にあった患者が含まれていた。群 VI は、群 II 及び群 IV の両方にいた患者を含んでいた。群 VII には、mRNA‐発現又は DNA‐メチル化のどちらかで予後良好な群にあった患者が含まれていた。群 VII は、群 I 及び群 IV の両方、又は群 II 及び群 III の両方、に属していた患者を含んでいた。図9Bは、解析した 9 つの遺伝子のうち最大 4 つの遺伝子の DNA‐メチル化がそれぞれ不良な予後の群に割りつけられた患者、即ちその遺伝子に関しては閾値を超えるメチル化を示す患者が、全体として良好な予後を呈することを示す(群 III)。対照的に、9 つの遺伝子のうち少なくとも 5 つの遺伝子のメチル化解析に基づいて不良な予後の群に割りつけられた患者(群 IV)は、全体としても有意に不良な予後を呈する。図9Aは、9 つの遺伝子のうち少なくとも 8 つの遺伝子の mRNA‐発現解析に基づいて良好な予後の群に割り当てられた患者(群 I)が、9 つの遺伝子のうち 8 つ未満の遺伝子しか mRNA‐発現解析に基づいて良好な予後に割りつけられなかった患者(群 II)よりも、全体として有意に良好な予後を呈することを示す。DNA‐メチル化解析に基づいて患者を群分けするための閾値は、例えば、以下のメチル化値が設定される:PDCD1LG2 について 12.84 %、CD274 について 13.11 %、PDCD1 について 20.54 %、TIGIT について 86.41 %、TNFRSF9 について 57.80 %、LAG3 について 66.94 %、BTLA について 91.31 %、CTLA4 について 13.10 %、及び CD40 について 17.16 %。RNA‐発現解析に基づいて患者を群分けするための閾値は、例えば、以下の mRNA‐発現が設定される:PDCD1LG2 について 5.61、CD274 について 18.23、PDCD1 について 7.29、TIGIT について 12.38、TNFRSF9 について 0.935、LAG3 について 9.65、BTLA について 3.33、CTLA4 について 13.12、及び CD40 について 30.14。
【0144】
実施例7(図8)で、本発明に係る DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析の組み合わせると、DNA‐メチル化解析又は mRNA‐発現解析の何れか一つだけに基づく予後の診断よりも、悪性疾患を有する患者の予後について、さらに洗練された診断が可能になることを既に示した。従って、ここに示されるように、DNA‐メチル化解析と mRNA‐発現解析の組み合わせがいくつかの免疫調節遺伝子を含む場合、本発明のこの有利な効果をさらに改善することができる。図9Cは、今回検討した 9 つの遺伝子の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析の両方に基づいて、それぞれ良好な予後を有する群に属する腫瘍を有する患者(図9B、群 III 及び図9A、群 I)は、全体的に非常に良好な予後を有する(図9C、群 V)、ことを示す。今回検討した 9 つの遺伝子の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析の両方に基づいて、それぞれが不良な予後を有する群である患者(図9C、群 VI)は、不良な予後を有する。他の全ての患者(図9C、群 VII)は、群 VI より良好な経過を示し、群 V より不良な経過を示した。
【0145】
実施例9:免疫調節遺伝子 CD40 及び LAG3 の例による、プロモーターのメチル化と遺伝子内のメチル化に基づく悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の予後の診断
遺伝子の DNA‐メチル化は mRNA‐発現と逆相関する、と一般的には考えられている。即ち、これは、遺伝子の高いメチル化が遺伝子の低い mRNA‐発現に関連することを意味する。本発明に係るこの例示的な実施形態では、遺伝子内領域で有意な正の相関が存在し得ることが示された。これは、遺伝子 LAG3 及び CD40 の例によって示された。mRNA‐発現及び DNA‐メチル化の測定は、実施例1及び6に記載のように行った。遺伝子 LAG3 及び CD40 それぞれのプロモーターの相対的メチル化の計算を、実施例4に記載のように行った。遺伝子内領域の測定に関しては、以下に記載するビーズ対を使用し、実施例1に記載したように互いに比較して、各遺伝子座の相対的メチル化値を得た。LAG3 の遺伝子内の DNA‐メチル化解析については、ビーズ対 cg11429292(SEQ ID NO:43)及び cg14292870(SEQ ID NO:44)を使用し、例えば、SEQ ID NO:161 及び SEQ ID NO:350 の領域での DNA‐メチル化解析が可能となる。CD40 の遺伝子内の DNA‐メチル化解析については、ビーズ対 cg06218285(SEQ ID NO:50)を使用し、例えば、SEQ ID NO:297 の領域での DNA‐メチル化解析が可能となる。
【0146】
図10は、本発明に係る悪性黒色腫(メラノーマ)を有する 470 例の患者の予後を診断することの結果を示す。プロモーター及び遺伝子内の領域のメチル化の分析を、単独で及び組み合わせたものに基づいて、患者の割り付けを遡及的に行った。図10A及び図10Cは、プロモーター領域に位置する CpG‐ジヌクレオチドの相対的メチル化が、それぞれの遺伝子の mRNA‐発現と負の相関があることを示す。これに対し、これらの遺伝子の遺伝子内領域の相対的メチル化は、プロモーター領域とは対照的に、mRNA‐発現と正に、且つ有意に相関していることが示された(図10B及び図10D)。図10E及び10Hは、遺伝子 LAG3 及び CD40 のDNA‐メチル化解析について実施例4で既に示した結果を示す。
【0147】
LAG3 及び CD40プロモーターにおける DNA‐メチル化が増加している患者(群 II)は、好ましくない経過を辿る(図10E及び10H)。これらの関係は、遺伝子内領域においては、驚くことに逆転している。図10Fの群 III は、20.67 %を超えた LAG3 遺伝子の遺伝子内メチル化を示した腫瘍を有する患者を含む。IV群は、20.67 %未満のメチル化を示した腫瘍を有する患者を含む。LAG3 遺伝子の遺伝子内メチル化が減少した患者は、好ましくない経過を辿る。患者の経過についてのカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析によると、LAG3 遺伝子の遺伝子内及びプロモーターのメチル化を組合せると、予後の診断が改善されることが示された(図10G)。群 V には、群 II 及び群 IV の両方に属する患者が含まれる。群 VII には、群 I 及び群 III の両方に属する患者が含まれる。群 VI には、群 II 及び III 又は I 及び IV の何れかに属する患者が含まれる。LAG3 遺伝子の遺伝子内メチル化及びプロモーター・メチル化の両方に基づいて、不良の予後を示した患者は、特に不良の経過を辿る群を形成した(図10G、群 V)。
【0148】
CD40 遺伝子のプロモーター及び遺伝子内のメチル化、並びにこの両方の解析を組合せた解析に応じた、患者の経過についてのカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析は(図10H、10I、10J)、LAG3 で得られたものと同様の結果をもたらした。群 I(図10H)には、17.16 %未満のメチル化を示した腫瘍を有する患者が含まれる。群 II には、17.16 %を超えるメチル化を示した腫瘍を有する患者が含まれる(図10H)。CD40 プロモーターのメチル化が増加した患者は、不良である経過を辿った。群 III(図10I)には、35% を超えるメチル化を示した腫瘍を有する患者が含まれる。群 IV(図10I)には、35 %未満のメチル化を示した腫瘍を有する患者が含まれる。CD40 遺伝子の遺伝子内メチル化が減少した患者は、不良である経過を辿った。群 V(図10J)には、群 II 及び群 IV の両方に属する患者が含まれる。群 VII(図10J)には、群 I 及び群 III の両方にいる患者が含まれる。群 VI には、群 II 及び III 又は I 及び IV の何れかである患者が含まれる。CD40 のプロモーターと遺伝子内領域の両方の DNA‐メチル化解析に基づいて、良好な予後に割りつけられた患者は、ここで、特に良好な予後を辿る群を形成することが示された。CD40 遺伝子のプロモーターと遺伝子内領域を組み合わせた DNA‐メチル化解析によって、単独での解析と比較して、予後の診断は、より洗練されたリスク評価という意味において、改善されたものとなる。
【0149】
実施例10:CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析に基づく急性骨髄性白血病を有する患者の予後の診断
本発明に係る方法はまた、悪性血液疾患を有する患者の予後を診断することも可能にする。182 例の急性骨髄性白血病を有する患者由来の悪性細胞の mRNA‐発現解析及び DNA‐メチル化解析を、実施例1及び6に記載のように実施した。DNA‐メチル化解析の結果に基づいて、遺伝子 CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 の相対的なDNA‐メチル化の計算を、実施例3に記載のように行った。
【0150】
図11は、182 例の急性骨髄性白血病を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。驚くべきことに、遺伝子 CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 のメチル化が閾値未満(群 I、図11A、11D、11G)の患者は不良の予後を示し、一方で、先の例では、これらの免疫調節遺伝子でメチル化が増加していた患者が不良の予後を呈した。従って、本発明に係る方法を実施することがまた、悪性血液疾患の患者の予後をも診断することを可能にすることは驚くべき知見である。遺伝子 CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 の mRNA‐発現の解析(図11B、11E、11H)によりまた、患者の予後を診断することが可能となった。mRNA‐発現の解析においてさえも、発現が減少した患者(群 IV)は、先に記載した実施例7及び8の結果とは対照的に、より良好な予後を呈することも驚くべきことである。図11C、11F及び11Iは、DNA‐メチル化及び mRNA‐発現を組合せた解析が、mRNA‐発現及び DNA‐メチル化の個々の単一解析よりも、それぞれ、より洗練されたリスク評価をもたらすことを示す。
【0151】
実施例11:TNFRSF9TIGITBTLAHAVCR2CD80CTLA4ICOSC10orf54HHLA2CD160KIR2DL4 及び KIR3DL1 の DNA‐メチル化解析に基づく急性骨髄性白血病患者の予後の診断
本発明に係る方法はまた、他の免疫調節遺伝子を使用しても、悪性血液疾患を有する患者の予後の診断を可能とする。DNA‐メチル化解析には、実施例10で収集したデータを使用した。TNFRSF9TIGITBTLA 及び CTLA4 の相対的メチル化の測定を実施例4に記載したようにビーズ対についてのデータに基づいて行った。遺伝子 HAVCR2CD80ICOSC10orf54HHLA2CD160KIR2DL4 及び KIR3DL1 の相対的メチル化を測定するために、及び実施例1に記載のように相対的メチル化を計算するために、以下に記載するビーズ対を使用した。HAVCR2 についてはビーズ対 cg09574807(SEQ ID NO:46)を使用し、遺伝子領域 SEQ ID NO:286 のメチル化の測定が可能となる。CD80 のメチル化の測定は、ビーズ対 cg12978275(SEQ ID NO:126)及び cg13458803(SEQ ID NO:127)に基づいて行い、配列領域 SEQ ID NO:163 のメチル化解析が可能となる。遺伝子 ICOSの DNA‐メチル化解析は、ビーズ対 cg18561976(SEQ ID NO:112)及びcg15344028(SEQ ID NO:113) に基づき、配列領域 SEQ ID NO:92、SEQ ID NO:93 及び SEQ ID:95 のメチル化解析が可能となる。HHLA2 の DNA‐メチル化解析は、4 つのビーズ対 cg00915092(SEQ ID NO:122)、cg14703454(SEQ ID NO:123)、cg11326415(SEQ ID NO:124)及び cg22926869(SEQ ID NO:125)に基づいて行い、配列領域 SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:195 及び SEQ ID NO:196 の解析が可能となる。遺伝子 C10orf54 の配列領域 SEQ ID NO:190 及び SEQ ID NO:191 のDNA‐メチル化解析には、ビーズ対 ch.10.1529706R(SEQ ID NO:35)を使用した。CD160 遺伝子中の配列領域 SEQ ID NO:361、SEQ ID NO:362 及び SEQ ID NO:366 の DNA‐メチル化解析は、ビーズ対 cg12832565(SEQ ID NO:150)、cg10798745(SEQ ID NO:151)及び cg15892497(SEQ ID NO:152)によって行った。遺伝子 KIR2DL4 の配列領域 SEQ ID NO:217 及び SEQ ID NO:218 のメチル化解析には、ビーズ対 cg08326410(SEQ ID NO:143)を使用した。KIR3DL1 の DNA‐メチル化解析は、ビーズ対 cg15588997(SEQ ID NO:137)、cg08129658(SEQ ID NO:138)、cg02469067(SEQ ID NO:139)、cg19689800(SEQ ID NO:140)、cg06494497(SEQ ID NO:141)及び cg05720980(SEQ ID NO:142)を用いて行い、配列領域 SEQ ID NO:230、SEQ ID NO:231 及び SEQ ID NO:232 のメチル化解析が可能となる。
【0152】
図12は、182 例の急性骨髄性白血病を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。前記患者を、免疫調節遺伝子 TNFRSF9図12A)、TIGIT図12B)、BTLA図12C)、HAVCR2図12D)、CD80図12E)、CTLA4図12F)、ICOS図12G)、C10orf54図12H)、HHLA2図12I)、CD160図12J)、KIR2DL4図12K)及び KIR3DL1図12L)の DNA‐メチル化解析に基づいて層別化した。二分化は、最適化された閾値に基づいて行った。閾値の最適化は、良好及び不良な予後を有する患者を最適に分離すること、即ち、Log‐ランク検定の p 値を可能な限り小さくすること、が可能となるように行った。すべての分析した遺伝子について、閾値未満のメチル化である悪性疾患を有する患者(群I)が閾値を超えたメチル化を有する患者と比較して、不良な経過を呈することを示すことができた。
【0153】
実施例12:CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析に基づく低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の予後の診断
本発明に係る方法はまた、神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の予後を診断することも可能にする。例えば、免疫調節遺伝子 CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析を、510 例の低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者において実施した。DNA 及び RNA の調製、mRNA‐発現解析及び DNA‐メチル化解析並びにそれらの評価は、実施例1及び実施例6に記載の通りに行った。Illumina HumanMethylation 450 BeadChip によって取得されたデータに基づいて遺伝子CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 の相対的メチル化の計算を、実施例3に記載のように実施した。
【0154】
悪性血液疾患について実施例11で既に示されているように、DNA‐メチル化解析、mRNA‐発現解析及びこれら両方の解析の組み合わせによって、神経膠腫(グリオーマ)を有する患者においても、予後を診断することができる。図13は、神経膠腫(グリオーマ)細胞における免疫調節遺伝子のメチル化が閾値未満である患者(群 I)は、閾値を超えたメチル化の腫瘍を有する患者(群 II)よりも有意に不良の予後であることを示す。このことは 3 つの遺伝子 CD274図13APDCD1図13D)及び PDCD1LG2図13G)に関して同じように示された。免疫調節遺伝子の対応する mRNA‐発現の解析においても、遺伝子の発現が増加することに基づいて予後が不良の患者を同定することができる(群 III)。mRNA‐発現解析及び DNA‐メチル化解析から、本発明に係る組合せをすることは、死亡することについて高リスク(群 I+III)、中リスク(群 I+IV/II+III)、低リスク(群 II+IV)の 3 つの予後群を形成することができる点で、特に有利であることが分かった。実施例10及び11において、悪性血液疾患に関して既に示されたように、神経膠腫(グリオーマ)においても、悪性疾患についての以前の解析とは対照的に、ここでは、mRNA‐発現が減少し、DNA‐メチル化が増加することが良好な予後に相関するということは、驚くべき発見である。このことは、様々な悪性疾患を有する患者における予後を診断する上で、本発明が有効であることを強調する。
【0155】
実施例13:CD80CTLA4ICOS 及び CD276 の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析に基づく低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の予後の診断
本発明に係る神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の予後の診断はまた、免疫調節遺伝子 CD80CTLA4ICOS 及び CD276 のDNA‐メチル化及び mRNA‐発現に基づいても可能である。本解析は、実施例12に記載したようにして集めたメチル化データ及び発現データに基づく。遺伝子 CD80CTLA4、及び ICOS の相対的 DNA‐メチル化を測定することは、実施例11及び4で記載したように行われる。CD276 遺伝子の相対的 DNA‐メチル化を測定するには、実施例1で記載したように、ビーズ対 cg24688248(SEQ ID NO:119)、cg14910296(SEQ ID NO:120)及び cg12524179(SEQ ID NO:121)を使用し、数学的に解析する。これらのビーズ対によって、配列領域 SEQ ID NO:181、SEQ ID NO:182 及び SEQ ID NO:183 ついての DNA‐メチル化を測定することが可能となる。
【0156】
図14は、解析した 510 例の低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示す。患者を、免疫調節遺伝子 CD80図14A、B、C)、CTLA4図14D、E、F)、ICOS図14G、14H、14I)、CD276(14J、14K、14L)の DNA‐メチル化解析(図14A、14D、14G、14J)、mRNA‐発現解析(図14B、14E、14H、14K)並びに DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析の組合せ(図14C、14F、14I、14L)に基づいて層別化した。DNA‐メチル化に基づく二分化には、以下の閾値を選択した:90.76 %(CD80)、86.43 %(CTLA4)、84.75 %(ICOS)及び 30.08 %(CD276)。mRNA‐発現に基づく二分化には、中央値を閾値として使用した。群 I には、閾値未満のメチル化を有する患者を含まれ、群 II は、閾値を超えるメチル化を有する患者によって形成される。群 III には、中央値を超える mRNA‐発現である腫瘍を有する患者が含まれるが、群 IV の患者は、腫瘍において中央値未満の mRNA‐発現を示した。CD274PDCD1 及び PDCD1LG2 について、実施例12と図13に既に示されているように、患者の予後をまた、遺伝子 CD80CTLA4ICOS 及び CD276 の DNA‐メチル化及び mRNA‐発現並びにこれら両方の解析の組合せに基づいて、診断することができる。この場合においても、本発明の主題である免疫調節遺伝子の高い DNA‐メチル化及び低い mRNA‐発現が疾患のより良好な経過と関連しているということは、驚くべき発見であった。
【0157】
実施例14:TNFRSF25TNFRSF9CD40TIGITBTLAHAVCR2C10orf54HHLA2LAG3CD160KIR2DL4 及び KIR3DL1 の DNA‐メチル化解析に基づく低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の予後の診断
他の免疫遺伝子の DNA‐メチル化解析に基づいて、低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の予後を診断することも可能である。図15に示した結果は、実施例12に記載されるように取得した DNA‐メチル化データの解析に基づく。遺伝子 TNFRSF9CD40TIGITBTLAHAVCR2C10orf54HHLA2LAG3CD160KIR2DL4 及び KIR3DL1 の相対的な DNA‐メチル化の測定を行うために、使用するビーズ対と DNA‐メチル化の計算は実施例1,4及び11に記載されている。遺伝子 TNFRSF25 の DNA‐メチル化を測定するには、例えば、これら実施例で使用したように、ビーズ対 cg27224823(SEQ ID NO:153)、cg13331246(SEQ ID NO:154)、cg23588699(SEQ ID NO:155) 及び cg10982045(SEQ ID NO:156)を使用することが可能であり、これらを使用して、配列領域 SEQ ID NO:317、SEQ ID NO:318 及び SEQ ID NO:319 のDNA‐メチル化解析が可能となる。配列領域 SEQ ID NO:317、SEQ ID NO:320 及び SEQ ID NO:321 の DNA‐メチル化解析には、ビーズ対 cg00087884(SEQ ID NO:157)、cg10059687(SEQ ID NO:158)及び cg11756870(SEQ ID NO:159)もまた使用することができる。
【0158】
図15は、510 例の低悪性度の神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示すが、そこでは、患者を遺伝子TNFRSF25(A)、TNFRSF9(B)、CD40(C)、TIGIT(D)、BTLA(E)、HAVCR2(F)、C10orf54(G)、HHLA2(H)、LAG3(I)、CD160(J)、KIR2DL4(K) 及び KIR3DL1(L)の DNA‐メチル化解析に基づいて、遡及的に層別化している。患者の層別化を、遺伝子の相対的メチル化の二分化に基づいて、行ったが、そこでは、以下の閾値を基礎とした:61,88 %(TNFRSF25)、79.24 %(TNFRSF9)、43.24 %(CD40)、80.66 %(TIGIT)、84.64 %(BTLA)、2.495 %(HAVCR2)、66.52 %(C10orf54)、77.14 %(HHLA2)、74.34 %(LAG3)、92.89 %(CD160)、90.85 %(KIR2DL4) 及び 52.28 %(KIR3DL1)。群 I には、閾値未満の DNA‐メチル化を有する患者が含まれる;群 II には、閾値を超える DNA‐メチル化を示した腫瘍を有する患者が割りつけられる。全ての免疫調節遺伝子について、低い DNA‐メチル化は患者の不良な予後と関連することが示された。
【0159】
実施例15:CD274TNFRSF9TIGITCD80CTLA4CD276 及び HHLA2 の DNA‐メチル化解析に基づく淡明細胞型腎細胞がんを有する患者の予後の診断
先の実施形態で、本発明による方法によって、種々の悪性疾患、例えば腺がん(アデノカルシノーマ)、扁平上皮細胞がん、黒色腫(メラノーマ)、白血病及び神経膠腫(グリオーマ)を有する患者の予後を診断することが可能になることが既に示されている。本実施例においては、本発明に係る方法を、淡明細胞型腎細胞がんを有する患者に適用した。DNA‐メチル化データを、実施例1に記載したようにして取得した。遺伝子 CD274TNFRSF9TIGITCD80CTLA4CD276 及び HHLA2 のビーズ対からのデータに基づく相対的DNA‐メチル化の計算は、実施例3,4,11 及び 13に記載されているように行った。
【0160】
図16は、318 例の淡明細胞型腎細胞がんを有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示すが、そこでは、免疫調節遺伝子 TIGIT(A)、TNFRSF9(B)、CD274(C)、CD80(D)、CTLA4(E)、CD276(F) 及び HHLA2(G)の DNA‐メチル化に基づいて、患者を遡及的に層別化している。各遺伝子についての相対的 DNA‐メチル化値の二分化は、すべての患者の DNA‐メチル化のそれぞれの中央値に基づいて行った。群 I には、中央値未満の DNA‐メチル化の腫瘍を有する患者が含まれ、一方で、群 II には、中央値を超える DNA‐メチル化の腫瘍を有する患者が属する。図16は、7 つの解析した遺伝子のうち 6 つまでの遺伝子で DNA‐メチル化が増加している(群 I)ことは、不良な予後と有意に相関することを示す。遺伝子 HHLA2 については、驚くべきことに、免疫調節遺伝子が閾値未満のメチル化を有する場合、淡明細胞型腎細胞がんを有する患者の予後が不良であることが示された(図16G)。 この結果は、先の実施例に記載された腺がん(アデノカルシノーマ)及び扁平上皮がんに加えて他のがん腫(カルシノーマ)について本発明の主題に係る方法を適用することが可能であることを示す。
【0161】
実施例16:TNFRSF9TIGITCD80CTLA4CD276 及び HHLA2 の mRNA‐発現解析と組み合わせた DNA‐メチル化解析に基づく淡明細胞型腎細胞がんを有する患者の予後の診断
多様な悪性疾患において、本発明の方法を普遍的に適用できることは、318 例の淡明細胞型腎細胞がんを有する患者における遺伝子 TNFRSF9TIGITCD80CTLA4CD276 及び HHLA2 の mRNA‐発現と DNA‐メチル化の組合せた解析においてさらに確認された。DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析を、実施例1及び6に記載のように実施し、評価した。使用したビーズ対に基づく遺伝子の相対的メチル化の計算は、実施例4,11及び13に記載されている。
【0162】
図17は、318 例の淡明細胞型腎細胞がんを有する患者の全生存率のカプラン‐マイヤー(Kaplan-Meier)生存率分析を示すが、そこでは、免疫調節遺伝子 TIGIT(A)、TNFRSF9(B)、CD274(C)、CD80(D)、CTLA4(E)、CD276(F) 及び HHLA2(G)の DNA‐メチル化と mRNA‐発現の組合せた解析に基づいて、患者を層別化した。二分化を、全患者のメチル化又は mRNA‐発現の中央値に基づいて行った。群 I:中央値未満のメチル化及び中央値を超える mRNA;群 III:中央値を超えるメチル化及び中央値未満の mRNA ;群 II;中央値を超えるメチル化及び中央値を超える mRNA 又は中央値未満のメチル化及び中央値未満の mRNA。この例で分析された遺伝子のうち 6 つの遺伝子について、患者は、死亡することに対して高、中及び低のリスクを有する 3 つの群に割り付けることができることが示された。遺伝子 TIGIT(A)、TNFRSF9(B)、CD80(C)、CTLA4(D) 及び CD276(E)においては、高い DNA‐メチル化と低い mRNA‐発現(群 I)が特に不良な予後と関連していた一方、遺伝子 HHLA2(F)は全く反対の関係である。このことによっても又、既にこの遺伝子について DNA‐メチル化解析だけをしたときに、実施例15に記載した驚くべき結果が確認される。
【0163】
例示的な実施例13,12,10,8及び7に既に示されているように、本発明の主題に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化及び mRNA‐発現を組合せて解析することは、個々に解析するよりも洗練された予後予測を可能にするという点で、この方法の特に有利な実施形態を表す。
【0164】
実施例17:PDCD1 及び CD274 の DNA‐メチル化解析に基づく免疫療法に対する悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者の応答性の診断
免疫療法に対する応答性を予測するために、本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析を適用することを、23 例の悪性黒色腫(メラノーマ)を有する患者のコホートを使って検討した。患者はペムブロリズマブ(Pembrolizumab)による免疫療法を受けた。この活性薬剤は、免疫調節遺伝子 PDCD1 によってコードされる受容体 PDCD1 に対するモノクローナル抗体である。抗体は、受容体 PDCD1 との相互作用によって、CD274 及び PDCD1LG2 によってコードされたリガンドの結合を阻止し、そのようにして、PDCD1 並びに CD274 及び/又は PDCD1LG2 の免疫調節効果を変える。23 例の患者のうち 11 例が病気の進行を示し(患者 13〜患者 23)、11 例の患者(患者 2〜患者 12)では疾患は安定したままであったか、腫瘍の質量が減少していた。1 例の患者(患者 1)においては、腫瘍はもはや検出できなくなるまで退縮した。
【0165】
免疫調節遺伝子 PDCD1 及び CD274 の DNA‐メチル化解析には、腫瘍患者の皮膚転移、リンパ節転移及び遠隔転移の細胞から DNA を得た。転移細胞は、免疫療法を開始する前に外科的に得た。亜硫酸水素塩で変換した DNA への変換は、実施例2に記載のように行った。免疫調節遺伝子の本発明に係る DNA‐メチル化解析を、CD274 及び PDCD1 それぞれについて実施例2及び5に記載されるような定量的リアルタイム‐PCR を用いて行った。
【0166】
図18は、免疫調節遺伝子 PDCD1 によってコードされる受容体 PDCD1 に結合する、リガンド CD274 をコードする免疫調節遺伝子 CD274 の患者毎の DNA‐メチル化を示す。ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)療法に応答しない患者 13〜23 は、腫瘍における平均 DNA‐メチル化が 18.5 %であり、一方で、部分的に又は完全に応答する患者群(患者 1〜12)は、腫瘍において平均わずか 6.2 %の DNA‐メチル化しか示さなかった。
【0167】
前記結果は、本発明に係る方法が、免疫療法に対する応答性の予測を支援できることを、CD274 遺伝子及び活性薬剤ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)の DNA‐メチル化解析の例を用いて示している。特に、前記結果は、DNA‐メチル化に基づいて患者を選択することが可能であることを示し、例えば、CD274 遺伝子の DNA‐メチル化が低い、例えば 10 %未満の、患者のみがペムブロリズマブ(Pembrolizumab)療法に反応し、高い DNA‐メチル化を有する患者では、本実施例では治療に対して応答する可能性は低い。部分的に又は完全に応答する患者 1〜患者 12のうち、10 例(83 %)は CD274 の DNA‐メチル化が 10 %未満であることを示し、従って、この例では治療に対して応答性が期待される患者として適切に同定することができる。全体として、8 例の患者が 10 %を超える CD274 メチル化を有していた。これらの 8 例の患者のうち 6 例(75 %)については、免疫療法に応答しないと予測することは正しかった。
【0168】
この実施例は、本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化の測定が、免疫療法に対する応答性を予測するために基本的に適していることを示す。これによれば、本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化の測定を、前記免疫調節遺伝子が免疫チェックポイント・タンパク質としてリガンドをコードし、そのリガンドに対応する受容体を阻害することによって前記リガンドの免疫調節効果を変えることが意図された活性薬剤を使用する場合にも、使用することができる。即ち、本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析はまた、別の免疫調節遺伝子によってコードされる免疫チェックポイント・タンパク質と拮抗的に相互作用する活性薬剤に対する応答性を予測するのにも、適していることが示される。
【0169】
図19は、CD274 と対応する、本発明に係る免疫調節遺伝子 PDCD1 の DNA‐メチル化の測定を示す。応答を示す患者 1〜12 の群において、腫瘍サンプル中、平均 59 %の PDCD1 遺伝子のメチル化が見出された。このメチル化は、疾患が進行を示し、平均メチル化が 22 %であった患者の腫瘍のメチル化よりも、t‐検定の p 値が 0.008 と、有意に高かった。PDCD1 遺伝子の DNA‐メチル化のレベルは、このようにまた、免疫療法に対する応答性と相関し、前記療法を開始する前に、PDCD1 の DNA‐メチル化に基づいて、前記療法に応答する可能性のある患者を同定することが可能である。例えば、12 例(患者 1〜12)中 9 例(75 %)の応答性があった患者の腫瘍は、25 %を超える PDCD1 遺伝子の DNA‐メチル化を示し、それ故に、応答性がある患者として正しく同定できた。免疫療法によって腫瘍が完全に減少した患者(患者 1)は、この場合、調べたすべての試料の内でメチル化が最も高い 98 %であり、それ故に、特に確実に同定することができた。これとは対照的に、前記治療に反応しない 11 例の患者(患者 13〜23)中 9 例(82 %)は、PDCD1 のメチル化が 25 %未満であり、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)を用いる選択した免疫療法に応答しない患者として正しく同定することができた。そのような患者は、本発明に係る方法を使用することで、将来、例えば、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)による免疫療法及びその副作用を避けることができる。同時に、これらの患者に対して効果的である可能性の高い別の療法を早期に適用することによって、貴重な時間を得ることができる。例えば、免疫チェックポイント・タンパク質をコードする免疫調節遺伝子について、更に DNA‐メチル化の測定を行うために本発明の方法を使用し、他の免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を変える活性薬剤を使用した療法への応答性を予測し、代替となる療法を個人に合わせて選択することができる。
【0170】
図19はまた、例示として、免疫調節遺伝子の定量的なメチル化を考慮することによって、治療応答性を予測することが可能となることを示す。これにより、患者にとっては、閾値を使用しなくても、治療に対する応答性を予測することが可能になる。本実施例では、腫瘍が完全に退縮した患者 1 は、治療に部分的にしか応答しなかった患者 2〜12 よりも高い PDCD1 遺伝子のメチル化を示す。
【0171】
免疫療法に対する応答性を更に正確に予測することができるように、本発明に係る様々な免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析の適用を組み合わせることも可能である。図18及び19から、完全な腫瘍退縮を示した患者 1 は、腫瘍において、低い CD274 DNA‐メチル化(3.6 %)及び PDCD1 の高いメチル化(98 %)の両方を有していた。CD274 は、PDCD1 によってコードされる受容体に結合するリガンドをコードする。ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)は、このリガンド‐受容体結合を妨害又は阻害することにより、これらの遺伝子によってコードされる 2 つの免疫チェックポイント・タンパク質の免疫調節効果を変える、活性薬剤である。この発見は、いくつかの免疫チェックポイント・タンパク質、特に同じリガンド‐受容体結合に関与するもの、について、本発明による解析を行うことによって、免疫療法に対する応答性の予測がさらに改善し得ることを示す。このことはまた、本実施例で、12 例の患者(患者 1〜12)のうち、治療に対して少なくとも部分的な応答性を示す患者を、10 %未満の CD274 メチル化又は 25 %を超える PDCD1 メチル化の何れかにより、全て(100 %)同定したことによっても示され得る。従って、免疫療法に対する応答性を、これらの患者に対して正確に予測することができる。11 例の治療応答性が無い患者(患者 13-23)のうち、5 例(45 %)は 10 %を超える CD274 メチル化及び、25 %未満の PDCD1 メチル化(患者 14-16、19及び21)であった。これらの患者については、PDCD1 及び CD274 の組み合わせた DNA‐メチル化解析に基づいて、治療応答性が無いことは特に信頼性をもって予測することができた。
【0172】
実施例18:様々な免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析及び mRNA‐発現解析に基づく頭部‐及び頚部領域の扁平上皮がんを有する患者の予後の診断
DNA‐メチル化解析を実施例1に記載したように行った。表1に記載の個々の免疫調節遺伝子の相対的メチル化を計算するためには、Infinium HumanMethylation450 BeadChipのビーズ対(イルミナ社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国(Illumina, Inc., San Diego, CA, USA))を使用した。ゲノム中におけるこれらのビーズ対の標的配列をまた、表1中の対応する SEQ ID NO によって特定する。ビーズ対について、実施例1に記載されたような非メチル化状態及びメチル化状態に特異的な対のビーズを互いに同様に比較することによって、それぞれの相対的メチル化を各患者について計算した。実施例5のように、528 例の頭部‐及び頸部領域の扁平上皮がんを有する患者の全生存率を調べた。
【0173】
実施例6に記載のようにして mRNA‐発現を測定した。表2に列挙した mRNA を調べた。
【0174】
表1にまとめられた結果は、本発明に係る免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化の測定が患者の生存と有意に相関し、それによって患者の予後の診断が可能になることを示す。ハザード比1は、コックス比例ハザード・モデルを用いて決定されたものであり、対応する免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化値が増加するのに伴って、患者の死亡リスクがどのように増加するかを表わす。1 より大きいハザード比は、DNA‐メチル化値が高いほど患者の死亡リスクが増加することを意味する。1 未満のハザード比の場合、このリスクが小さくなる。
【0175】
この例は、一方では、本発明に係る表1に列挙された免疫調節遺伝子の DNA‐メチル化解析によって、患者の予後の診断が可能になることを示す。さらに、この例は、メチル化閾値に基づいて、患者を異なる予後を有する群に割り付けることによって予後の診断が可能となるだけでなく、例えばコックス比例ハザードモデルのような統計的モデルに基づいて、それぞれのメチル化値に応じて患者の予後がどの程度変化するかをも診断することができることを示す。
【0176】
遺伝子例 ADORA2ABTNL2C10orf54CD160CD276CD48CD80CD86PDCD1TIGIT 及び TNFRSF18 に基づいて、遺伝子内の様々な領域が本発明に係る方法を適用するのに適しうるということも、表1に示されている。これらの遺伝子において、様々な領域の DNA‐メチル化解析を種々のビーズ対によって調べ、それぞれによって予後の診断をうまく行うことができる、ということから明らかである。
【0177】
表1のハザード比2は、メチル化値が閾値を超える腫瘍を有する患者の死亡リスクが、閾値未満の値を有する患者と比較して、高いことを説明する。例えば、免疫調節遺伝子 CD274 の場合は、SEQ ID NO:425 及び SEQ ID NO:426 を有する 2 つの領域について、驚くべきことに、1 つはメチル化が高くなることは死亡リスクが低下することを伴うこと、一方で、実施例3で示したが、悪性黒色腫(メラノーマ)での CD274 遺伝子の別の領域のメチル化が高くなることは生存率が悪いことと相関すること、を示している。CD276 についても同様の所見が見出された。SEQ ID NO:427、SEQ ID NO:428 及び SEQ ID NO:429 に含まれる CD276 の領域の DNA‐メチル化解析は生存と逆相関すること、即ち、これらの領域のメチル化が高くなることは死亡リスクの低下を伴う。対照的に、SEQ ID NO:430の領域のメチル化は死亡リスクと正の相関がある。このように、遺伝子中の 1 つ又はいくつかの調べる領域を選択することによって、例えば、mRNA‐発現又はタンパク質発現を単独で考慮するよりも、洗練された予後を行うことができ、これは、本発明に係る DNA‐メチル化解析の特に有利な点を表す。
【0178】
表1:528 例の頭部‐及び頸部領域の扁平上皮がんを有する患者の全生存率解析の結果。
記載した遺伝子の DNA‐メチル化と患者の生存との関係を調べた。表中で繰り返し挙げられている遺伝子では、本発明に係るメチル化の測定を、それぞれの遺伝子の異なる領域を含むそれぞれのビーズ対を用いて行った。これらの領域は、それぞれ SEQ ID NO の配列によって決まる。
ハザード比1は、前もって二分化していないメチル化値を表し、ハザード比2は、閾値を超えるメチル化値を有する患者の死亡するリスクが、前記閾値未満の値を有する患者と比較して、相対的に高いこと、を表わす。P‐値1及び2は、ハザード比1及び2それぞれのものを表わす。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0179】
表2は、記載した免疫調節遺伝子の例を用いて、それら遺伝子の mRNA‐発現の解析によっても、患者の生存を予測することが可能になり、それ故に、本発明に係る DNA‐メチル化解析を補完することができること、を示す。患者を、例示した閾値に基づいて群分けした。この閾値は、RNA-Seq によって解析された全 mRNA 分子に対する免疫チェックポイント・タンパク質の mRNA 分子の値(標準化されたカウント)であって、これに基づいて、患者を良好な予後の群と不良な予後の群とに非常にうまく割り付けることができた。腫瘍において CD274 又は CD276 の各閾値を超える mRNA‐発現を示した患者は、これらの遺伝子を閾値未満で発現する腫瘍を有する患者よりも、有意に不良な疾患の経過を辿った。しかし、遺伝子 ADORA2ABTNL2C10orf54CD160CD27CD48PDCD1TIGITTNFRSF18TNFRSF25 及び TNFRSF4 については、これらの遺伝子をそれぞれの閾値を超えて発現する腫瘍を有している患者は、良好な予後であった。従って、この実施例によって、本発明による予後の診断のための更なる指標として、mRNA‐発現解析を信頼性をもって加えることができることが示された。
【0180】
表2:528 例の頭部‐及び頸部領域の扁平上皮がんを有する患者の全生存率分析の結果。
前記免疫調節遺伝子の mRNA‐発現と患者の生存との間の関係を調べた。ハザード比を、閾値に基づいて二分化した mRNA‐発現値によって決定した。
【表2】
【0181】
実施例19:免疫調節遺伝子の共メチル化及び共発現に基づく DNA‐メチル化及び mRNA‐発現の測定
実施例8に既に示されているように、免疫調節遺伝子はしばしば共発現する、即ち、悪性疾患の細胞及び/又は T‐リンパ球細胞などの免疫細胞は、単一の免疫調節遺伝子を発現するだけでなく、いくつかの免疫調節遺伝子を同時に発現する。この実験において、様々な免疫調節遺伝子の mRNA‐発現及び DNA‐メチル化を、実施例1及び6に記載のように測定した。520 例の頭部‐及び頸部腫瘍の患者サンプルについて mRNA‐発現データを、及び 528 例の頭部‐及び頸部腫瘍の患者サンプルについて DNA‐メチル化データを取得することができた。
【0182】
表3は、例示記載した免疫調節遺伝子について、腫瘍における様々な免疫調節遺伝子の mRNA‐発現には、統計的に有意かつ正の相関があることを示す。従って、単一又はいくつかの免疫調節遺伝子の mRNA‐発現の測定に基づいて、他の免疫調節遺伝子の mRNA‐発現を推論することが可能である。
【0183】
表3:520 例の頭部‐及び頚部腫瘍を有する患者の腫瘍における様々な免疫調節遺伝子の mRNA‐発現についてのスピアマン順位相関(Spearman's p)。
すべての相関は、ICOSLG 及び CD274(p = 0.008)並びに ICOSLG 及び PDCD1LG2(p = 0.070)の相関を除いて、有意水準 p < 0.001 示した。
【表3】
【0184】
PDCD1LG2 及び CD274 は、両方とも遺伝子 PDCD1 によってコードされる受容体に結合するリガンドをコードする。これらの遺伝子について、DNA‐メチル化の相関を互いに調べた。PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析には、ビーズ対 cg07211259(SEQ ID NO:31)を、CD274 の DNA‐メチル化解析には、ビーズ対 cg15837913(SEQ ID NO:8)、cg13474877(SEQ ID NO:11)及び cg19724470(SEQ ID NO:12)を使用した。相関をスピアマン順位相関によって決定し、相関係数をスピアマンのρとして表した。統計的有意性は p 値として示される。結果は、ビーズ対 cg07211259 はビーズ対 cg15837913 と相関(ρ= 0.33、p < 0.001)、cg07211259 は cg13474877 と相関(ρ= 0.24、p < 0.001)、及び cg07211259 は cg19724470と相関(ρ= 0.42、p <0.001)した。これは、例えば、この確立された相関に基づいて、PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析によって、CD274 のメチル化を述べることができることを示す。このようにして、例えば、PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析に基づいて、CD274 又は PDCD1 によってコードされる免疫チェックポイントタンパク質を阻害する活性薬剤を使用した療法への応答性を予測することができる。例えば、PDCD1LG2 の DNA‐メチル化解析により、示された相関に基づいて CD274 についての DNA‐メチル化が決まる場合、その関連する活性薬剤を使用する療法に対して応答する可能性がある。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]