(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
輸送機器が停留する停留場と、前記停留場の上方に設けられるドローン配送場と、配送物を前記ドローン配送場に移動可能なエレベータと、前記輸送機器に積まれた前記配送物が積み入れられ、前記エレベータにより前記停留場と前記ドローン配送場との間を移動する移動手段と、を備え、
前記ドローン配送場は、前記配送物を仕分けする仕分け場と、ドローンが駐機するドローンポートと、前記配送物を前記移動手段から受け取り、前記仕分け場まで移動させる配送場移動手段と、を有し、
前記ドローンポートは、前記仕分け場の上方に設けられ、
前記仕分け場は、仕分けされた前記配送物が配置される配置部を有し、
前記配送場移動手段は、前記配送物を、前記配送物における所定の条件に基づいて前記配置部に配置するよう、前記配置部上を移動可能に構成されている、配送システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の無人航空機用複数階層配送センターに配送物を集約させ、そこからUAVによる配送を行う場合には、配送物が回収されてから配送先に届くまでの全体的な配送時間が多くかかる問題があった。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載の無人航空機用複数階層配送センターを利用する場合も通常の配送の流れと同様に、輸送機器を用いて配送先の最寄りの配送センターに配送物が集められるため、特に飛行機や船、鉄道等を用いて配送センターまで配送物を輸送する際には、空港や駅等の停留場で荷下ろしされ、大型トラック等に積み替えて配送センターに配送されることとなり、配送物の移動回数が多いことにより時間がかかる問題があった。
【0008】
また、配送センターとして配送物を一時保管しておく空間が必要であるため、比較的大きな規模の設備を要する問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものであり、輸送機器により輸送された配送物を迅速に配送先に届けることができる配送方法および配送システムを提供することを課題とする。
また、本発明は、輸送機器の停留場等の既存設備に導入することができる配送方法および配送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明に係る配送方法は、ドローンを用いて配送物を配送する方法であって、前記配送物を停留場に停留する輸送機器から前記停留場の上方に設けられるドローン配送場に移動させる配送物移動工程と、前記配送物を前記ドローンに積み入れる荷積み工程と、前記ドローンにより前記配送物を配送先まで届ける配送工程と、を含み、前記荷積み工程は、前記配送物を前記ドローンの下方から前記ドローンに積み入れる。
【0011】
本発明に係る配送方法によれば、停留所の上方にドローン配送場を設けることにより、輸送機器から別の輸送機器へと配送物を移動させることなく、直接配送先に配送することができ、ドローンを用いることにより陸路と空路の間の空間を有効に使った迅速な配送をすることができる。また、荷積み工程において、配送物をドローンの下方から積み入れることにより空間を有効活用することができるため、有限の空間である停留場の上方においても空間的に余裕ある設備を提供することができる。
【0012】
この態様において、配送工程は、前記ドローン配送場周辺を飛行する前記ドローンを誘導する誘導工程を含む。
このように、ドローン配送場周辺を飛行するドローンの誘導が可能であれば、GPS(登録商標)等による通常のドローンの飛行制御または位置制御等が機能しないような閉空間や狭隘空間であってもドローンを適切に誘導することができる。
【0013】
この態様において、前記配送物移動工程は、前記停留場と前記ドローン配送場とを連通する前記配送物の移動専用のエレベータを通る階層移動工程を含む。
このように、配送物の移動専用のエレベータを利用して配送物を移動させることにより、公共交通機関として輸送機器の停留場を利用する人々とは、分けたルートを確保することができる。
【0014】
この態様において、前記荷積み工程は、前記配送物を前記ドローンに下方から積み入れ可能なリフターを用いて行われる。
このように、配送物をドローンの下方から積み入れることにより、有限な空間である停留場の上方であっても空間を効率的に活用して配送作業を行うことができる。
【0015】
この態様において、前記停留場は、鉄道駅のホーム部であり、前記輸送機器は、鉄道である。
このように、ドローン配送場を設ける停留場として鉄道駅のホーム部を利用することにより、通常ホーム部とコンコース部とを有する鉄道駅を上方に拡張することで簡単にドローン配送場を設けることができる。
【0016】
また、本発明は配送システムにも関する。すなわち、本発明に係る配送システムによれば、輸送機器が停留する停留場と、前記停留場の上方に設けられるドローン配送場と、配送物を前記ドローン配送場に移動可能なエレベータと、を備え、前記ドローン配送場は、前記配送物を仕分けする仕分け場と、ドローンが駐機するドローンポートと、を有し、前記ドローンポートは、前記仕分け場の上方に設けられている。
【0017】
本発明に係る配送システムによれば、輸送機器が停留する停留場の上方にドローン配送場を設け、そのドローン配送場をさらに複数階層として配送物の仕分け場とその仕分け場の上方に設けられるドローンポートにより、有限な空間である停留場にもドローン配送場を設けることができる。また、配送センターに配送物を集約するために輸送機器から別の輸送機器に配送物を積み替える等の作業を省くことができるため、配送時間を短縮することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記仕分け場は、仕分けされた前記配送物が配置される配置部を有し、前記ドローンポートは、前記ドローンに前記配送物を積み入れる荷積み部を有し、前記配置部と前記荷積み部とは、複数のマス目を有する盤面状に形成され、前記配置部のマス目と前記荷積み部のマス目とは、それぞれ上下方向に対応した位置に設けられる。
このように、マス目を有する盤面状に配置部と荷積み部を形成することにより、仕分け方法の規則を定めやすくなり、また機械や装置の動きを単純化することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記仕分け場は、前記配送物を前記ドローンに下方から積み入れ可能なリフターを有している。
このように、リフターにより配送物を下方から持ち上げることにより、簡単に配送物をドローンの下方から積み入れることができる。また、上下方向の一定の動きのみが必要となるため、省電力化や機械的な故障を抑制することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記ドローンポートは、前記ドローンの充電が可能な充電手段と、前記ドローンポート周辺を飛行する前記ドローンを誘導可能な誘導手段と、を有している。
このように、充電手段を有していることによりドローンが駐機して配送物の荷詰めを待つ間にドローンを充電することができる。また、誘導手段を有していることにより、閉空間や狭隘空間であっても確実にドローンの離陸と着陸を誘導することができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記停留場は、鉄道駅のホーム部であり、前記輸送機器は、鉄道である。
このように、輸送機器を鉄道とすることにより、陸路を利用した迅速な配送において鉄道からトラック等に配送物を詰め替えて配送センターに集約させるためのタイムロスを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
開示した技術によれば、輸送機器により輸送された配送物を迅速に配送先に届けることができ、輸送機器の停留場等の既存設備に導入することができる配送方法および配送システムを提供することができる。
【0023】
他の課題、特徴及び利点は、図面及び特許請求の範囲とともに取り上げられる際に、以下に記載される発明を実施するための形態を読むことにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に示した好ましい配送方法および一実施形態に係る配送システムについて、
図1〜
図6を参照して詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、添付図面に示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、適宜変更が可能である。
【0026】
[配送方法]
以下、本発明に係る配送方法について
図1と適宜
図2を参照して詳細に説明する。
図1は配送方法を工程に分けて説明するためのフロー図、
図2は本発明の配送方法を実現するための配送システムの一例を示している。
図2以降において、直線の実線矢印は後述する移動手段6の動きを示し、一点鎖線矢印はドローン5の動きを示し、破線矢印は後述する配送場移動手段312の動きを示し、点線矢印は後述する誘導手段323のレーザーの照射例を示している。また符号Gで示すのは、ドローン5のGPS(登録商標)等の自走制御、飛行制御または位置制御等の手段である。
【0027】
本発明の配送方法は、陸路での渋滞緩和や輸送機器間での配送物4の積み替え等によるタイムロスを軽減させるため、輸送機器1が停留する停留場2からドローン5を用いて配送先に配送センター等の配送物4の集約場を介さずに直接配送する方法である。この配送方法に用いられるドローン5は、配送物4を下方から積み入れ可能であり、配送先まで配送可能な仕様のものを選択することが好ましい。また、適宜カメラや位置制御機能等を有していることが好ましい。配送先までの距離や配送物の重さ等を考慮し、複数の異なるドローン5を用いることも当然に可能である。
【0028】
本発明に係る配送方法は、
図1に示すように、輸送機器1が停留する停留場2の上方に設けられるドローン配送場3を利用して配送物4の配送を行う方法であり、配送物4を停留場2に停留する輸送機器1から停留場2の上方に設けられるドローン配送場3に移動させる配送物移動工程S1と配送物4をドローン5に積み入れる荷積み工程S2と、ドローン5により配送物4を配送先まで届ける配送工程S3と、を含む。
【0029】
配送物移動工程S1は、輸送機器1に積まれている配送物4を移動手段6により輸送機器1からドローン配送場3に移動させる工程である。この配送物移動工程S1には、輸送機器1から配送物4を停留場2に積み下ろす積み下ろし工程S11と、停留場2からドローン配送場3への階層間を移動する階層移動工程S12と、ドローン配送場3を移動する配送場移動工程S13と、を有する。
【0030】
配送物移動工程S1において利用される移動手段6は、配送物4の積み下ろしと積み入れおよび移動のうちの少なくとも一つは自動に行えることが好ましく、さらに好ましくは全て自動に行えることである。例えば、自立移動が可能なロールボックスパレットや移動や位置制御が可能な自走ロボットを用いること等を例として挙げることができる。
【0031】
なお、移動手段6は、作業者や停留場2を利用する人や物等にぶつかることなく自走できることが好ましい。自走方式としては、追従式やライン走行、完全自動方式等、様々な方法が存在するが適切な方法を選択して使用することができる。
【0032】
積み下ろし工程S11では、輸送機器1から配送物4を移動手段6に積み入れる工程であり、輸送機器1内の配送物4を移動手段6へ積み入れる作業は、作業者による手作業でも良いし、移動手段6に備わった自動積み入れが可能な機能等を用いても良い。
【0033】
階層移動工程S12は、移動手段6により、停留場2から停留場2の上方に設けられるドローン配送場3へ移動する工程であり、停留場2を利用する人(例えば、公共交通機関の乗り場として停留場2を使う人)が乗れないようにした配送物4専用のエレベータ7を利用して階層間を移動する。
【0034】
配送場移動工程S13は、停留場2から上方にエレベータ7で移動した配送物4を移動手段6からドローン5に受け渡すまでの配送物4の移動工程である。配送場移動工程S13においては、配送場移動手段312を用いて配送物4を移動手段6から受け取り、ドローン5に積み入れる場所(後述の荷積み部321)まで移動させる。
【0035】
配送場移動手段312としては、ロボットアームやマテリアルハンド、負圧パッド等により、上方から制御することが好ましい。なお、
図2にはロボットアームを用いた例を示しており、複数のロボット等を設けることもできるが、ロボットアーム等を天井部から吊り下げて設けることが好ましい。
【0036】
荷積み工程S2は、ドローン配送場3に移動した配送物4をドローン5に積み入れる工程であり、配送物4の積み入れは、ドローン5の下方から行われる。すなわち、ドローン5は、下部に配送物4を備えた状態で配送を行う。
【0037】
また、荷積み工程S2は、配送物4の仕分けを行う仕分け工程S21と、仕分けされた配送物4をドローン5に積み入れる積み入れ工程S22と、を有する。
【0038】
仕分け工程S21は、配送物4を配送先や大きさ、配送予定日等の諸条件により仕分けする工程である。通常の配送センター等で行われる条件を適用して仕分けをすることができる。また、ドローン5の充電状況や性能等のドローン5を用いることにより生じる諸条件を追加して仕分けをすることが好ましい。
【0039】
積み入れ工程S22は、ドローン5の下方から配送物4をドローン5に積み入れる工程である。積み入れ方法に制限は設けていないが、昇降機能を有するリフター313を用いて行われることが好ましい。リフター313は上下方向の動きのみを許容するため省電力化につながり、また機械の故障可能性を低減することができる利点を有する。
【0040】
配送工程S3は、荷積みされたドローン5を飛行させて配送先に配送物4を届け、配送が完了したドローン5をドローン配送場3に帰還させる工程である。ドローン5の飛行は自動操縦や自立飛行可能であることが好ましく、ルート等をあらかじめ定めて記憶させ、GPS(登録商標)により制御する方法等を例示することができる。また、操縦者を設けて操縦することも当然に可能である。なお、自動操縦や自立飛行方法としてGPS(登録商標)を用いない方法を適用することもできる。
【0041】
また、配送工程S3は、ドローン配送場3の周辺を飛行するドローン5を誘導することができる誘導工程S31を有する。誘導工程S31における誘導手段323は、雨等からドローン5を守るために設ける屋根等により遮蔽された閉空間や狭隘部、様々な信号が飛び交う場所等によりGPS(登録商標)が機能しない可能性の高いドローン配送場3の周辺においてドローン5を誘導することができる方法を用いることが好ましい。例えば、レーザーを用いてドローン5を誘導する方法や、QRコード(登録商標)を用いた方法等を例示することができ、
図2には、レーザーを用いた方法を一例として示しており、このレーザーは回転自在に設置され、ドローン5の離陸と着陸の両方を誘導可能とすることが好ましい。
【0042】
また、誘導工程S31は、ドローン5が配送を開始する離陸時を誘導する離陸誘導工程S32と、配送を完了したドローン5をドローン配送場3に誘導する着陸誘導工程S33と、を有する。離陸誘導工程S32および着陸誘導工程S33とは、同様の誘導手段323を用いて行うことができるが、例えば離陸にはレーザーを用い、着陸にはQRコード(登録商標)を用いる等、別の誘導手段323をそれぞれ適用することもでき、さらにそれらを組み合わせて適用することもできる。
【0043】
本発明の配送方法は、配送物4の輸送を担う輸送機器1およびその輸送機器1が停留する停留場2であれば、鉄道11や飛行機、船、トラックなどの様々な輸送機器1および鉄道駅21や飛行場、港などの様々な停留場2に対して適用することが当然にできる。本明細書においては、この配送方法を適用する好ましい一例として、輸送機器1を鉄道11、停留場2を鉄道駅21(ホーム部22)とした例を示している(
図2以降参照)。すなわち、上記の説明においては、輸送機器1を鉄道11、停留場2を鉄道駅21(ホーム部22)と適宜読み替えることができる。
【0044】
以上のように、輸送機器1から配送物4を停留場2の上方(上階)に設けられたドローン配送場3に移動させる配送物移動工程S1と、配送物4をドローン5に積み入れる荷積み工程S2と、ドローン5を用いて配送物4を配送先に届ける配送工程S3と、を含むことにより、輸送機器1により運ばれた配送物4を別の輸送機器に積み替えて配送センターに集約させることなく、運ばれた配送物4をドローン配送場3で仕分けて迅速に配送先に配送することができる。
【0045】
また、荷積み工程S2において配送物4をドローン5の下方から積み入れることにより、有限な空間である停留場2等にも導入することができる。
【0046】
また、配送物移動工程S1に輸送機器1から配送物4を積み下ろす積み下ろし工程S11と、停留場2からドローン配送場3に移動する階層移動工程S12と、ドローン配送場3内を移動する配送場移動工程S13と、を有し、階層移動工程S12を配送物4専用のエレベータ7を用いて行うことにより、停留場2の上階に設けられたドローン配送場3にも簡単にアクセス可能とし、迅速に配送先に配送することができる。
【0047】
また、積み下ろし工程S11および階層移動工程S12に移動手段6として自立移動および障害物回避が可能なロールボックスパレットを用いることにより、人Pにぶつかることがなく、さらに補助者等の人員を削減することができる。
【0048】
また、配送場移動工程S13において、配送場移動手段312として天井部から吊り下げて使用するロボットアームや真空パッド等により配送物4を移動手段6から受け取り、荷積み部321に配置することにより、配送物4を傷つけることなく簡単に移動させることができ、また天井部に配送場移動手段312のレール等を設けることにより、移動手段6が移動する床部分の空間を開けておくことができる。
【0049】
また、積み入れ工程S22において、ドローン5の下方からドローン5に配送物4を積み入れる際に、リフター313を用いて行うことにより、簡単に下方から配送物4を積み入れることができ、リフター313自体も上下方向の動作のみとなり、故障の可能性を低減することができる。
【0050】
また、離陸誘導工程S32と着陸誘導工程S33とを有する誘導工程S31を含むことにより、ドローン5の位置制御機能等が、複数の異なる信号や閉空間により機能しない場合にもドローン5を誘導することができ、特に位置制御が機能しなくなると考えられるドローン配送場3周辺において安全にドローン5を飛行させることができる。
【0051】
また、輸送機器1として鉄道11、停留場2として鉄道駅21(ホーム部22)としてドローン配送場3を上方に導入することにより、多くの配送物4を輸送する鉄道11から積み下ろした配送物4を迅速にドローン5まで運び、配送先への配送までの時間を短縮することができる。
【0052】
[配送システム]
以下、配送システムについて
図2〜
図6を参照して詳細に説明する。
図2には、本発明に係る配送システムの構成を示す概略図が示され、
図3以降には、配送システムの各階層を説明する説明図が示されている。
【0053】
本発明の配送システムは、上述した配送方法を実現可能なシステムとして、出願人が例示する好ましい一実施形態である。
配送システムは、
図2に示すように、輸送機器1が停留する停留場2と、停留場2の上方に設けられるドローン配送場3と、配送物4をドローン配送場3に移動可能なエレベータ7と、を備える。
【0054】
本発明の配送システムは、停留場2等の通常の配送センター等と比べて狭い場所(有限の空間)に設けること、および配送物4が輸送機器1から別の輸送機器1へ積み替えられて配送センターに集約される際のタイムロスを省くべく検討されて見出された構成であり、停留場2と近い面積のドローン配送場3を上階層に設ける。したがって、ドローン配送場3は停留場2よりも小さいかまたはほぼ同一の面積に形成されることが好ましい。
【0055】
図2では、輸送機器1として鉄道11を例として示し、停留場2として鉄道駅21を示している。鉄道11は、配送物4の輸送手段として広く活用されており、通常は鉄道駅21に到着した後は、配送物4はトラックなどの別の輸送機器1に積み替えられ、配送センターに集約される。したがって、輸送機器1への積み替えや配送センターへの集約によるタイムロスを短縮する考え方を考慮すると、本発明の配送システムは、直接配送センターに行くことのできない鉄道11や飛行機、船等の輸送機器1に適している。
【0056】
本明細書においては、これらの一例として鉄道11を適用した例を示している。そのため、鉄道11を船や飛行機等のその他の輸送機器1に読み替え、停留場2を鉄道駅21(そのホーム部22)や港や飛行場等と読み替えることにより、他の輸送機器1に適用することができる。なお、下記では輸送機器1を鉄道11、停留場2を鉄道駅21またはホーム部22として記載する。また、符号の付し方として、配送物4が関連する対象を数字、および斜線で示し、交通機関として利用する人Pやその人々が関連する対象をアルファベットで表示する。
【0057】
図3に示すように、ホーム部22(停留場2)は、配送物4を輸送する専用の鉄道11が停留するホーム221および公共交通機関としての鉄道Tが停留するホームFとが設けられている。すなわち、鉄道11や鉄道Tが停留する場所全体のことである。
【0058】
鉄道11が停留するホーム221と鉄道Tが停留するホームFは分かれていることが好ましい。しかしながら、鉄道駅21の規模の関係上、ホーム221として一般の人Pが利用するホームFを活用していることが多く見られる。ホーム221とホームFとは、鉄道11が停留するか鉄道Tが停留するかの違いである。したがって、人Pがドローン配送場3に迷い込まない、また配送物4の移動に際して人Pの移動に迷惑をかけないように運用することが重要である。
【0059】
鉄道11から配送物4を積み下ろして、ドローン配送場3に移動させる移動手段6は、ホーム221を自走する際に、人Pや物等に当たらないようにプログラムされていることが好ましい。すなわち、障害物回避手段を有していることが好ましい。
【0060】
また、ホーム221には、配送物4の移動専用のエレベータ7が設けられている。ホームFとしても使用される場合には、一般の人Pが利用するエレベータEも設けられている。すなわち、鉄道11のみが停留するホーム221にはエレベータ7のみが設けられ、鉄道11と鉄道Tとの両方が停留するホーム221(F)にはエレベータ7およびエレベータEの両方が設けられ、鉄道Tのみが停留するホームFにはエレベータEのみが設けられる。このエレベータEは、配送物4の移動には利用することはできず、ホームFの上階または下階に設けられる
図4に示すコンコース部23との行き来のみを可能とする。
【0061】
エレベータ7は、配送物4または移動手段6が近づいたことを感知して扉を開ける仕組みとし、人Pが誤って乗った場合には警報を鳴らし、その階から動かないシステム等を設けることが好ましい。また、エレベータ7はコンコース部23には止まらず、ドローン配送場3(詳細には、後述する仕分け場31)に直通する。すなわち、エレベータ7は、ホーム221とドローン配送場3を連通している。
【0062】
図2および
図3では、ホーム部22を、1つのホーム221と3つのホームFとを有する例を示しているが、ホーム221とホームFは同じ場所で共有することもでき、またホーム221を複数設けることもできる。エレベータ7やエレベータEも当然に複数設けることができる。
【0063】
ドローン配送場3は、ホーム部22の上方に設けられ、配送物4を仕分ける仕分け場31と、ドローン5が駐機するドローンポート32と、を有している。なお、ドローン配送場3はホーム部22のすぐ上の階であっても、コンコース部23等を間に挟んでも良く、ホーム部22やコンコース部23とドローン配送場3との間に別の階を設けていても良い。
【0064】
図5に示すように仕分け場31は、配送物4を配送先や大きさ、配送予定日等の諸条件により仕分ける場所であり、仕分けた配送物4を配置する配置部311と、配送物4を配置部311に移動させる配送場移動手段312と、配送物4をドローン5に積み入れるリフター313と、を有している。
【0065】
配置部311は、ドローン5が駐機している場所の真下に位置するように設けられ、配送物4を一つ一つ分けて配置するために複数のマス目を有する盤面状に形成されている。マス目の数や大きさなどは、対象となる配送物4の数や大きさ、使用するドローン5の仕様に合わせて決めることができる。
【0066】
配送場移動手段312は、移動手段6がエレベータ7により仕分け場31に配送物4を備えて移動してきた際に、移動手段6から配送物4を受け取り、諸条件の基に決められた配置部311に配送物4を配置する手段である。本発明の好ましい形態としては、前述のようにロボットアームやマテリアルハンド、負圧パッドを例示することができ、それらを天井部から吊り下げて移動自在に固定することが好ましい。なお、移動方法としては、縦横に移動可能とすることにより、移動を単純化させて故障の可能性を低減することができる。
【0067】
リフター313は、配置部311に設けられリフター313上に配送物4が配置される。配送物4が配置され、上方にドローン5がスタンバイしている状態で、リフター313は上方に配送物4を持ち上げる。なお、リフター313は、配送物4が配置された時に配送物4を持ち上げ、ドローン5がスタンバイ状態となるまで、その場で待機していても良いが、消費電力等を考慮すると、前述のように配送物4とドローン5との両方の準備ができた段階で配送物4を持ち上げ、とドローン5に下方から積み入れることが好ましい。
【0068】
ドローンポート32は、ドローン5が駐機する場所および鉄道駅21(ホーム部22)の屋上部分または開放部を有する最上階である。ドローン5を雨や風等から保護するために屋根部324を設けることもできる。
【0069】
ドローンポート32は、
図6に示すように、ドローン5に配送物4を積み入れる荷積み部321と、ドローン5を充電可能な充電手段322(不図示)と、ドローン5がドローン配送場3の周辺を飛行している時に誘導することができる誘導手段323と、を有する。
【0070】
荷積み部321は、配置部311と同様に複数のマス目により盤面状に形成されている。荷積み部321とマス目は、配置部311のマス目と上下方向に各マス目が一致するように設けられている。すなわち、配置部311に配置された配送物4をリフター313により持ち上げた位置にドローン5が駐機する状態となる。荷積み部321は、ドローン5が駐機し、配送物4がリフター313により積み入れられるまで待機している場所である。
【0071】
荷積み部321の下方は、リフター313により配送物4が持ち上げられ、ドローン5に積み入れられるため、開口しているか、または開閉可能に形成され、配送物4が持ち上げられた際に開口することが好ましい。なお、ドローン5が駐機するためドローン5を配置可能なスペースは確保し、配送物4が通る部分のみ開口させる。
【0072】
充電手段322は、荷積み部321に駐機するドローン5を適宜充電するための手段であり、荷積み部321に充電ポート等を常設しても良いし、ケーブル等を用いた充電でも良い。また、充電手段322は、ドローン5を充電することができれば何れの方法でも良く、接触式や非接触式等、ドローン配送場3の設備、電気系統の環境やドローン5の仕様等により適宜選択することが好ましい。
【0073】
誘導手段323は、ドローン5が配送を始めた離陸時と、配送を完了したドローン5の着陸時にドローン5を配送ルートや荷積み部321に誘導することが可能な手段である。配送中のドローン5はGPS(登録商標)等により位置を制御することが想定されるが、ドローン配送場3周辺では、様々な信号の干渉や閉空間を原因とするGPS(登録商標)の切断等によりドローン5の制御が困難となることが想定される。
【0074】
したがって、飛行中(配送中)のドローン5の制御方法とは異なるドローン5の制御方法が好ましい。例えば、レーザーを用いた誘導方法や、QRコード(登録商標)を用いた誘導方法等を例示することができる。例示したレーザーを用いた誘導方法はドローン5の離陸時および着陸時の両方の誘導に効果的であり、QRコード(登録商標)を用いた誘導方法は特に着陸時に効果的な方法である。
【0075】
なお、例示した誘導方法に限らず、ドローン5の誘導に適当な方法を選択して良い。また、本明細書に記載のように停留場2として鉄道駅21(ホーム部22)を利用する場合には、鉄道11が利用する電気を分岐してドローン5に供給することもできる。すなわち、輸送機器1や停留場2等から充電に利用できる設備を利用することもできる。
【0076】
屋根部324は、ドローンポート32を設置する場所や周辺の環境により必要であれば形成することが好ましい。ドローン5は機械であるため、雨や風、砂、埃下等の環境に曝露することは好ましくないため、屋根部324により少なくとも荷積み部321を覆っておくことが好ましい。
【0077】
以上のように、本発明の配送システムによれば、停留場2の上方(上階)にドローン配送場3を設けることにより、輸送機器1から配送物4をトラック等の別の輸送機器に積み替えて配送センターに集約させることなく、運ばれた配送物4をドローン配送場3で仕分けて迅速に配送先に配送することができる。
【0078】
また、上方のスペースを活用してドローン配送場3を設けることにより、停留場2のような有限な空間にも導入することができる。
【0079】
また、ドローン配送場3を仕分け場31とドローンポート32との2つに分け、ドローンポート32が仕分け場31の上方となるように別の階層に設けることにより、省スペース化を実現し、停留場2等の有限な空間の場所であっても導入することができる。
【0080】
また、仕分けされた配送物4をドローン5に積み入れるために配置される配置部311を、複数のマス目を有する盤面状に形成することにより、仕分け条件により簡単に仕分けさせることができ、どのドローン5へ積み入れるのかを明確にすることができる。
【0081】
また、配送場移動手段312として、天井部に縦横に移動自在に固定したマテリアルハンドや真空パッド等を適用することにより、移動(縦横)が簡略化され、複数の同時制御等も容易となり、機械的な故障の可能性を低減することができる。
【0082】
また、配置部311を盤面状に形成し、縦横に移動自在な配送場移動手段312を用いて配送物4の仕分けを行うことにより、配送場移動手段312が複雑な動きをすることなく、全てのマス目に簡単にアクセス可能であり、複数の配送場移動手段312を同時に稼働させた際にも混乱を生じにくくすることができる。
【0083】
また、リフター313を有していることにより、仕分け場31とは異なる階層に駐機するドローン5に簡単に下方から配送物4を積み入れることができ、リフター313自体も昇降方向のみの動きとなるため、故障の可能性を低減することができる。
【0084】
また、荷積み部321を複数のマス目を有する盤面状に形成し、配置部311に形成されたマス目に上下方向に対応させることにより、配置部311に配置された配送物4を確実にドローン5に積み入れることができる。
【0085】
また、荷積み部321に充電手段322を設け、ドローン5を駐機させることにより、待機しているドローン5を簡単に充電し、準備完了次第配送させることができる。すなわち、ドローン5の配送と充電との効率的なサイクルを簡単に形成することができる。
【0086】
また、荷積み部321に開口または開閉可能に形成された開口を設けることにより、ドローン5への荷積みを容易に行うことができる。
【0087】
また、ドローンポート32に誘導手段323を設けることにより、様々な信号が飛び交う停留場2付近であり、さらに閉空間や高層建築の集合部等におけるGPS(登録商標)等の誤作動や機能停止等により、ドローン5の飛行に異常をきたす可能性を低減させることができ、また、レーザーによる誘導手段323を適用することにより、直接ドローン5を誘導することができる。さらに、QRコード(登録商標)により誘導手段323を適用することにより、荷積み部321にドローン5を正確に着陸、駐機させることができる。
【0088】
また、停留場2として鉄道駅21のホーム部22、輸送機器1として鉄道11を適用することにより、鉄道11での輸送において必ず必要な別の輸送機器への積み替え作業を行うことなく、配送することができ、全体の配送時間を短縮することができる。
【0089】
また、ドローン配送場3を鉄道駅21の上方に設けることにより、鉄道11を運行させるための電力をドローン5の充電手段322や仕分けや荷積み等の作業に必要な電力に適用させることができる。
【0090】
また、ドローン配送場3を鉄道駅21に設けることにより、配送時間の短縮だけでなく、例えば鉄道駅21での配送物4の引き取りを可能にする等、配送時に不在配送とならない工夫を実施することもできる。