(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防護対象設備は、重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれないように、原子炉建屋と同時に破損することを防ぐ必要がある。
図21に示すように、防護対象設備10を地上に設置した場合、防護対象設備10は、原子炉建屋30と同一の直線上に位置するため、航空機等の飛来物11が原子炉建屋30に衝突した後、防護対象設備10にも衝突して、必要な機能が損なわれる可能性が高い。
【0008】
そこで、
図22に示すように、防護対象設備10を地下に設置することによって、防護対象設備10に対して航空機等の飛来物11が衝突することを回避することが考えられる。しかし、飛来物11が地面に衝突したときに発生する衝撃力が防護対象設備10に伝播する。そのため、防護対象設備10に伝播した衝撃力によって、防護対象設備10において重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれないように対処しておく必要がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、地下に設置された建築物に対し、航空機等の物体の衝突によって発生した衝撃力の伝播を低減することが可能な衝撃低減構造及び発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の衝撃低減構造及び発電プラントは以下の手段を採用する。
本発明の参考例に係る衝撃低減装置は、物体の衝突によって発生し、地中に埋設された建築物へ伝播される衝撃力を低減する構成を有する衝撃低減装置であって、前記建築物の上方に設けられ、水が貯蔵されたプールを備える。
【0011】
この構成によれば、物体(例えば飛行機等の飛来物)が、地中に埋設された建築物に向かって衝突しようとする場合であっても、物体は、建築物に到達する前にプールに貯蔵された水に突入する。また、物体が水に突入したとき、水の粘性抵抗や浮力によって、物体が減速され、物体の衝突時の衝撃力を緩和できる。その結果、地中に埋設された建築物に対し、航空機等の物体の衝突によって発生した衝撃力の伝播を低減できる。
【0012】
本発明の参考例に係る衝撃低減装置は、物体の衝突によって発生し地中に埋設された建築物へ伝播される衝撃力を低減する構成を有する衝撃低減装置であって、前記建築物の上方に設けられた板材と、一端部が前記建築物の上面に接続され、他端部が前記板材の下面に接続された、粘弾性特性を有する部材とを備える。
【0013】
この構成によれば、物体が地面に衝突したとき、衝突直後に発生する、力が大きく短い時間の衝撃力は、板材の質量による慣性力で吸収し、その後に発生する、力が小さく長い時間の衝撃力は、粘弾性特性を有する部材が発揮する減衰力で吸収する。これにより、地中に埋設された建築物に対し、航空機等の物体の衝突によって発生した衝撃力の伝播を低減できる。
【0014】
本発明の参考例に係る衝撃低減装置は、物体の衝突によって発生し地中に埋設された建築物へ伝播される衝撃力を低減する構成を有する衝撃低減装置であって、前記建築物の上面に設けられ、減衰特性を有する材料を有するパネル材を備え、前記パネル材は、前記建築物の上面に対して斜めに設置される。
【0015】
この構成によれば、パネル材は、建築物の上面に対して斜めに設置されることから、パネル材において衝撃力が伝播する距離が長くなり、かつ、パネル材は、減衰特性を有する材料を有する。これにより、地中に埋設された建築物に対し、航空機等の物体の衝突によって発生した衝撃力の伝播を低減できる。
【0016】
本発明の参考例に係る発電プラントは、上述した衝撃低減装置を備える。
【0017】
本発明の参考例に係る衝撃低減構造は、物体の衝突によって発生し地中に埋設された建築物へ伝播される衝撃力を低減する構成を有する衝撃低減構造であって、前記建築物の上方に設けられる軽量土と、前記軽量土の上面に設けられ、前記軽量土よりも高密度な土とを備える。
【0018】
この構成によれば、物体が地面に衝突したとき、軽量土よりも高密度な土によって物体が地中にめり込むことを防ぎ、軽量土が変形することによって、衝撃エネルギーを低減させる。また、衝撃によって発生する応力波は、高密度な土と軽量土の境界面で反射し、土を透過する応力波を低減できる。
【0019】
本発明に係る衝撃低減構造は、物体の衝突によって発生し地中に埋設された建築物へ伝播される衝撃力を低減する構成を有する衝撃低減構造であって、前記建築物の上方に設けられる
とともに通常の土よりも密度が低い軽量土と、前記軽量土の上面に設けられ、前記軽量土よりも剛性が高
く、かつ前記衝撃力によって貫通しない厚さに設定された金属板とを備える。
【0020】
この構成によれば、物体が地面に衝突したとき、軽量土よりも剛性が高い金属板によって物体が地中にめり込むことを防ぎ、軽量土が変形することによって、衝撃エネルギーを低減させる。また、衝撃によって発生する応力波は、高密度な土と軽量土の境界面で反射し、土を透過する応力波を低減できる。
【0021】
本発明に係る発電プラントは、上述した衝撃低減構造を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、地下に設置された建築物に対し、航空機等の物体の衝突によって発生した衝撃力の伝播を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置の第1変形例を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置の第2変形例を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置の第3変形例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置の第4変形例を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置の第5変形例を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置の第5変形例の壁部を示す平面図である。
【
図8】本発明の第2参考実施形態に係る衝撃低減装置を示す縦断面図である。
【
図9】防護対象設備に伝搬された衝撃力の時刻歴変化を示すグラフである。
【
図10】本発明の第2参考実施形態に係る衝撃低減装置の第1変形例を示す縦断面図である。
【
図11】本発明の第2参考実施形態に係る衝撃低減装置を示す横断面図及び変形後の側面図である。
【
図12】本発明の第2参考実施形態に係る衝撃低減装置の第2変形例を示す縦断面図である。
【
図13】本発明の第2参考実施形態に係る衝撃低減装置の第2変形例を示す斜視図である。
【
図14】本発明の第3参考実施形態に係る衝撃低減装置を示す縦断面図である。
【
図15】本発明の第3参考実施形態に係る衝撃低減装置を示す部分拡大縦断面図である。
【
図16】本発明の第3参考実施形態に係る衝撃低減装置を示す部分拡大縦断面図である。
【
図17】本発明の第3参考実施形態に係る衝撃低減装置の第1変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【
図19】本発明の第1実施形態に係る衝撃低減装置を示す縦断面図である。
【
図20】本発明の第1実施形態に係る衝撃低減装置の第1変形例を示す縦断面図である。
【
図21】原力炉建屋と地上に設けられた防護対象設備を示す側面図である。
【
図22】原力炉建屋と地中に設けられた防護対象設備を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1参考実施形態]
本発明の第1参考実施形態に係る衝撃低減装置1は、例えば、
図1に示すように、大型航空機等の外部飛来物等の衝突から防護する必要のある設備(以下「防護対象設備10」という。)に付随して設けられる。防護対象設備10は、発電用原子炉が設置された原子炉建屋30が建てられている工場又は事業所などの発電プラント31に設置される。防護対象設備10の一例として、「特定重大事故等対処施設」がある。この防護対象設備10は、地下に設置されている。なお、発電用原子炉が設置された工場又は事業所は、発電プラントの一例であり、本発明に係る発電プラントは、発電用原子炉以外の発電設備が設置されたプラントでもよい。
【0025】
本参考実施形態に係る衝撃低減装置1は、航空機等の飛来物11が衝突したときに発生し、地中に埋設された防護対象設備10に対して伝播される衝撃力を低減することができる。
【0026】
衝撃低減装置1は、
図1に示すように、内部に水が貯蔵されたプール5を有し、防護対象設備10の上方に設けられる。プール5は、地中の防護対象設備10に対し飛来物11が衝突することを防止できる大きさや位置で設けられる。例えば、プール5は、防護対象設備10へ向かう飛来物11の飛来線上に設けられる。また、プール5は、防護対象設備10の平面視形状をカバーするように、防護対象設備10の平面視形状と同等か、平面視形状よりも広い面積を有する。なお、飛来物11の飛来条件や衝突条件などを考慮して、必ずしも、プール5は、全ての部分が防護対象設備10に向かう飛来線上に設けられなくてもよいし、防護対象設備10の平面視形状よりも広い面積を有さなくてもよい。
【0027】
上述したプール5が設けられることによって、飛来物11が防護対象設備10に衝突しようとする場合にも、飛来物11が防護対象設備10に到達する前に、飛来物11はプール5に貯蔵された水に突入する。飛来物11が水に突入したとき、水の粘性抵抗や浮力によって、飛来物11が減速され、飛来物11の衝突時の衝撃力を緩和できる。その結果、地中に埋設された防護対象設備10に対し、航空機等の飛来物11の衝突によって発生した衝撃力の伝播を低減できる。そして、防護対象設備10に入力される衝撃力を大きく減少させることができる。
【0028】
プール5に貯蔵された水は、速い速度で飛来してくる飛来物11に対して、水の抵抗によって相対的に固くなることから、防護対象設備10に対する防護壁として機能する。また、航空機のように容積に対する質量が小さい飛来物11に対しては、プール5内の水によって、高い浮力が作用する。したがって、飛来物11の突入方向を変更させたり、衝突時の衝撃力を吸収したりすることができ、防護効果が大きい。
【0029】
さらに、航空機のように燃料を含むエンジンを搭載している飛来物11の衝突によって発生する火災に対し、プール5内の水が延焼を防止できる。また、発電用原子炉が設置される土地の地盤はそもそも強固であるため、防護対象設備10を地下深く埋設することは、コストや工期が問題になる。一方、防護対象設備10の上部にプール5を設けることで、埋設深さを浅くすることもでき、防護対象設備10の建設にかかるコストや工期を低減できる。
【0030】
図2に示すように、プール5の内部において、水が貯蔵される部分には、例えば、板材が格子状に組み合わされた構造物6などが設置されてもよい。長周期の地震動などといった外力の入力によって、プール5でスロッシングが生じるおそれがあるが、構造物6が設置されることにより、スロッシングの発生を防止できる。なお、プール5でスロッシングを防止する構造物6は、通常用いられる技術を適用でき、格子状の構造物に限定されず、例えば多孔板などでもよい。
【0031】
プール5は、壁部7や底部8を有し、壁部7は、高さ方向で地中に全て埋め込まれてもよいし、一部分が地面から突出し、残りの部分が埋め込まれるように設けられてもよい。
図3に示すように、壁部7の一部分が地面から突出するように、プール5が設置される場合、例えば、壁部7の外側にて、壁部7の突出した部分の最上部まで、盛土9が施されてもよい。これにより、プール5の側方に向かって飛来物11が飛来してきた場合、防護対象設備10までの地中部分の距離を長くすることができ、防護対象設備10へ伝播される衝撃力を更に低減できる。
【0032】
なお、壁部7の全てが埋め込まれるようにプール5が設置される場合でも、プール5に屋根等を設けて、その上部に盛土を施してもよい。この場合でも、防護対象設備10までの地中部分の距離を長くすることができ、防護対象設備10へ伝播される衝撃力を低減できる。また、プール5の地面からの露出部分を隠蔽するため、金網等を設けた上に草木等を被せてもよい。これにより、地中に埋設された防護対象設備10の位置が地上や上空から特定しづらくなる。
【0033】
また、
図4に示すように、プール5の底部8には、緩衝材12が全面にわたって敷き詰められてもよい。緩衝材12は、例えば、多孔質を有する材料であり、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂、発泡金属(例えばセルメット(登録商標))などである。飛来物11がプール5に衝突したとき、底部8に設けられた緩衝材12が圧潰されて、発生する衝撃力が緩和される。
【0034】
プール5に貯蔵される水の容積は、飛来物11の衝突時に、プール5に貯蔵された水が緩衝性能を適切に発揮できるように設定される。例えば、プール5に貯蔵される水の容積は、飛来物11の飛来条件、緩衝すべき衝撃力の大きさなどに基づいて決定される。プール5の壁部7の内面には、
図5に示すように、所定の水の容積を確保できる水深を表す目盛線13が設けられてもよい。これにより、目盛線13を目安にして、プール5において所定の水の容積が確保されているか否かを確認しやすくなる。したがって、プール5の容積確保に関する保安管理が容易になる。
【0035】
上述した参考実施形態において、壁部7は、全周にわたって、同じ材質で同じ厚さに形成されてもよいし、
図6に示すように、壁部7の一部において、壁部7の他の部分に比べて破壊されやすい脆弱部14が設けられてもよい。
【0036】
脆弱部14は、
図7に示すように、例えば、壁部7の他の部分に比べて板厚が薄く、飛来物11の衝突時に他の部分よりも先に破壊されやすい構成を有している。これにより、飛来物11がプール5に衝突したとき、壁部7のうち脆弱部14がまず先に破壊される。その結果、水が破壊された脆弱部14の部分から逃げるため、プール5で発生した衝撃力が拡散する。したがって、防護対象設備10へ伝播される衝撃力を更に低減できる。
【0037】
[第2参考実施形態]
次に、本発明の第2参考実施形態に係る衝撃低減装置2について説明する。
本発明の第2参考実施形態に係る衝撃低減装置2は、航空機等の飛来物11が地面に衝突したときに発生し、地中に埋設された防護対象設備10に対して伝播される衝撃力を低減することができる。
【0038】
衝撃低減装置2は、
図8に示すように、地中において、防護対象設備10の上面に設置される。衝撃低減装置2は、例えば、鋼板などの金属製材料を有する台板15と、台板15を支持しつつ減衰性能を有するマウント16などを備える。
【0039】
台板15は、防護対象設備10の平面視形状をカバーするように、防護対象設備10の平面視形状と同等か、平面視形状よりも広い面積を有する。台板15は、所定値以上の質量を有することが望ましく、所定値は、例えば、衝突する物体の質量の10倍である。
【0040】
マウント16は、ゴム、合成樹脂などの粘弾性特性を有する材料からなる。マウント16は、一端部が防護対象設備10の上面に接続され、他端部が台板15の下面に接続される。
【0041】
台板15及びマウント16を有する衝撃低減装置2は、固有振動数が2Hz以下であることが望ましい。
【0042】
衝撃低減装置2は、上述した構成を有することによって、
図9に示すように、航空機等の飛来物11が地面に衝突したとき、衝突直後に発生する、力が大きく短い時間の衝撃力を、台板15の質量による慣性力で吸収し、その後に発生する、力が小さく長い時間の衝撃力を、マウント16の粘弾性特性を有する材料により減衰させる。これにより、地中に埋設された防護対象設備10に対し、航空機等の飛来物11の衝突によって発生した衝撃力の伝播を低減できる。その結果、防護対象設備10の健全性が維持されやすくなる。
【0043】
台板15が衝突する物体の質量の10倍以上の質量を有することで、大きい衝撃力が台板15に作用した際に、慣性力効果が発揮される。また、台板15及びマウント16を有する衝撃低減装置2の固有振動数が2Hz以下であることで、動的応答倍率の観点から、高い周波数の衝撃力が伝播されない。
【0044】
なお、台板15は、金属製材料の単一素材で形成されてもよいし、
図10に示すように、2枚の金属製の板材17と、2枚の板材17の間に挟まれた緩衝材18とを有する構成でもよい。緩衝材18は、例えば、多孔質を有する材料であり、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂、発泡金属(例えばセルメット(登録商標))などである。緩衝材18を金属製ではなく合成樹脂製にすれば、腐食による性能劣化を防止できる。
【0045】
衝撃力が台板15に伝播されたとき、2枚の板材17の間に挟まれた緩衝材18が圧潰されて、衝撃エネルギーが吸収され、防護対象設備10へ伝播される衝撃力が緩和される。また、緩衝材18によって力が分散されるため、衝撃低減装置2の局所的な破壊を防止できる。
【0046】
このように2枚の板材17の間に挟まれた緩衝材18を有する構成とすることによって、緩衝材18の緩衝効果で、防護対象設備10へ伝播される衝撃力が緩和され、防護対象設備10の健全性が維持されやすくなる。
【0047】
また、上述した台板15において、緩衝材18の代わりに、
図12及び
図13に示すように、複数本の金属製の管材19が設けられてもよい。管材19は、例えば鋼管、アルミ管等であり、軸方向が鉛直方向に対して平行に設けられる。管材19は、外部からの衝撃力によって圧潰可能な強度及び構造を有する。この場合も、衝撃力が台板15に伝播されたとき、2枚の板材17の間に挟まれた管材19が圧潰されて、衝撃エネルギーが吸収され、防護対象設備10へ伝播される衝撃力が緩和される。また、管材19によって力が分散されるため、衝撃低減装置2の局所的な破壊を防止できる。
【0048】
マウント16は、台板15の上面と防護対象設備10の上面の間で複数本設置される。マウント16の本数は、台板15の質量を支持できるように、各マウント16の強度との関係で決定される。マウント16は、
図11(a)に示すように、台板15に対して全面に均等に配置されてもよいし、
図11(c)に示すように、台板15の隅部のみ、又は、
図11(e)に示すように、各辺に沿った部分のみ配置されてもよい。
【0049】
マウント16が均等に配置されている場合、衝撃力が伝播されたときの台板15の形状は、
図11(b)に示すように、平板のままである。一方、マウント16が台板15の隅部のみ、又は、各辺に沿った部分のみ配置されている場合、
図11(d)及び
図11(f)に示すように、衝撃力が台板15に伝播されたとき、台板15は、マウント16に支持されていない部分が衝撃力の入力側とは反対側に撓む。そして、台板15の曲げ変形によって、衝撃エネルギーを吸収でき、かつ、衝撃力を減衰させることができる。
【0050】
[第3参考実施形態]
次に、本発明の第3参考実施形態に係る衝撃低減装置3について説明する。
本発明の第3参考実施形態に係る衝撃低減装置3は、航空機等の飛来物11が地面に衝突したときに発生し、地中に埋設された防護対象設備10に対して伝播される衝撃力を低減することができる。
【0051】
衝撃低減装置3は、
図14に示すように、地中において、防護対象設備10の上面に設置される。衝撃低減装置3は、減衰特性を有する材料を有するパネル材21から構成される屋根20を備える。
【0052】
パネル材21は、例えば、高減衰能材料、制振合金、複合材などの高減衰性能を有する材料である。ここで、高減衰性能とは、例えば、鋼材などの一般的な構造用材料に比べて、短時間で加速度の振幅を減衰する特性をいう。パネル材21に高減衰性能を有する材料が用いられることで、防護対象設備10に伝播される衝撃力を、減衰によって低減できる。
図18に示すグラフでは、鋼材に比べて高減衰性能を有する材料の減衰特性が高い例を示している。
【0053】
パネル材21は、平板状の板材でもよいし、波板状の板材でもよい。また、パネル材21は、単一の素材で形成されてもよいし、複数の素材が組み合わされて構成されてもよい。
【0054】
パネル材21は、防護対象設備10の水平な上面に対して、斜めに設置される。すなわち、パネル材21は、鉛直方向に対しても角度を有して配置される。パネル材21は、複数枚が組み合わされて、例えば、山型、波型などに構成される。
【0055】
パネル材21は、上述した構成を有することによって、パネル材が鉛直方向に対して平行に設けられる場合に比べて、上端から防護対象設備10の上面までの力の伝播長さが長くなる(
図15参照)。これにより、防護対象設備10に伝播される衝撃力を、減衰によって低減できる。
【0056】
また、斜めに設置されたパネル材21の上面において、板面が水平方向に設置されたパネル材22が設けられてもよい。パネル材22は、パネル材21と同様に、高減衰性能を有する材料である。また、パネル材22は、平板状の板材でもよいし、波板状の板材でもよい。また、パネル材22は、単一の素材で形成されてもよいし、複数の素材が組み合わされて構成されてもよい。
【0057】
パネル材22は、衝撃力が入力されたとき、
図16に示すように、パネル材21によって支持されていない部分が、衝撃力の入力側とは反対側に撓む。そして、パネル材22の曲げ変形によって、衝撃エネルギーを吸収でき、かつ、衝撃力を減衰させることができる。また、斜めに設置されたパネル材21についても、鉛直方向に作用する衝撃力に対する剛性が小さいことから、パネル材21が曲げ変形し、衝撃エネルギーを吸収でき、かつ、衝撃力を減衰させることができる。
【0058】
上述した構成において、
図17に示すように、パネル材21,22の下面と防護対象設備10の上面との間に緩衝材23が設けられてもよい。緩衝材23は、例えば、多孔質を有する材料であり、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂、発泡金属(例えばセルメット(登録商標))などである。緩衝材23を金属製ではなく合成樹脂製にすれば、腐食による性能劣化を防止できる。
【0059】
衝撃力がパネル材21,22に伝播されたとき、パネル材21,22の下面に配置された緩衝材23が圧潰されて、衝撃エネルギーが吸収され、防護対象設備10へ伝播される衝撃力が緩和される。また、緩衝材23によって力が分散されるため、衝撃低減装置3の局所的な破壊を防止できる。
【0060】
緩衝材23の圧縮強度は、衝撃低減装置3よりも上方に位置する土の質量に耐えられる強度、すなわちρ×h以上とする。ここで、ρ:土の密度、h:衝撃低減装置3の埋設深さ(
図14参照)である。これにより、緩衝材23は、衝撃力が伝播されない通常時において変形せず、衝撃力が伝播されたときのみ変形が生じる。
【0061】
また、水平に配置されたパネル材22の曲げ剛性は、緩衝材23の圧縮強度以下とする。これにより、パネル材22は、緩衝材23よりも変形されやすく、緩衝材23がパネル材22の変形によって生じる力を吸収する。したがって、緩衝材23の緩衝効果で、衝撃エネルギーを吸収でき、かつ、衝撃力を減衰させることができる。
【0062】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係る衝撃低減構造4について説明する。
本発明の第1実施形態に係る衝撃低減構造4は、航空機等の飛来物11が地面に衝突したときに発生し、地中に埋設された防護対象設備10に対して伝播される衝撃力を低減することができる。
【0063】
衝撃低減構造4は、
図19に示すように、防護対象設備10の上方に設けられる軽量土24と、軽量土24の上面に設けられ、軽量土24よりも高密度な土25などを備える。
【0064】
軽量土24は、通常の土よりも密度が低い物質であり、例えば、EPS破砕片混合土(EPS:Expanded Poly Styrol(ビーズ法発泡スチロール))などである。EPS破砕片は、廃棄された発泡スチロールが破砕機によって破砕されたものであり、このEPS破砕片が通常の土と混合されたものがEPS破砕片混合土である。軽量土24は、通常の土に比べて潰れやすく、緩衝効果が高い。その結果、軽量土24は、飛来物11の衝突時に発生する衝撃エネルギーを低減させる。
【0065】
軽量土24は、地下に位置する防護対象設備10を囲むように配置される。すなわち、軽量土24は、防護対象設備10の最下部から最上部よりも高い位置まで配置される。防護対象設備10の最下部よりも深い位置にある土は、軽量土24よりも密度が高い。軽量土24の上面は、例えば水平な面である。なお、軽量土24は、防護対象設備10の側方に配置されてもよいし、必ずしも側方に配置されなくてもよい。
【0066】
土25は、例えば、通常の土を押し固めて密度を高めたもの、又は、岩石混合土などである。土25は、軽量土24の上面に層状に配置される。土25は、地上面まで配置される。
【0067】
軽量土24が単体で使用された場合、飛来物11が衝突した際、局所的な大変形が発生し、衝撃力は、軽量土24によってほとんど低減されないまま、防護対象設備10に伝播されてしまう。これに対し、土25が、軽量土24の上面に層状に配置されることで、土25に対して飛来物11が衝突したとき、力が分散される。また、軽量土24よりも高密度な土25によって飛来物11が地中にめり込むことを防ぎ、衝撃低減構造4の局所的な変形を防止できる。
【0068】
軽量土24と土25は、それぞれ1層ずつ配置されてもよいし、
図19に示すように、2層以上交互に配置されてもよい。複数層からなる場合、土25の上面に軽量土24が配置される層があり、土25と軽量土24の境界面で、衝撃によって発生する応力波が反射し、土25を透過する応力波を低減できる。したがって、防護対象設備10に向かって伝播される衝撃力を低減できる。層数が2層以上とされることで、境界面が増えるため、衝撃力の低減効果を増加させることができる。
【0069】
上述した実施形態では、軽量土24と土25が積層される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。すなわち、軽量土24の局所的な大変形を抑制できればよく、
図20に示すように、土25の代わりに金属板26、例えば鋼板などが配置されてもよい。金属板26の厚さは、飛来物11が衝突したときに発生する衝撃力によって貫通しないような厚さに設定される。
【0070】
なお、金属板26と軽量土24は、
図20に示すように、複数層配置されてもよい。この場合、全ての金属板を合計した厚さが、飛来物11が衝突したときに発生する衝撃力によって貫通しないような厚さに設定される。
【0071】
金属板26が用いられる場合、土25よりも剛性を高く設定することができ、その場合、飛来物11のめり込み深さを浅くすることができる。その結果、飛来物11から防護対象設備10までの距離が長くなるため、減衰効果を増加させることができる。
【0072】
上述した実施形態及び変形例によれば、防護対象設備10が、軽量土24と土25又は金属板26が積層された衝撃低減構造4によって埋没されるため、飛来物11の衝突時に発生し、防護対象設備10へ伝播される衝撃力を低減させる。その結果、防護対象設備10の健全性が維持される。
【0073】
なお、第1参考実施形態から第3参考実施形態、及び第1実施形態では、防護対象設備10に付随して設けられる衝撃低減装置1,2,3及び衝撃低減構造4について説明したが、本発明はこの例に限定されない。すなわち、本発明に係る衝撃低減装置及び衝撃低減構造は、地下に埋設された建築物全般に適用可能であり、特に、高度な安全性を確保する必要がある建築物への適用に適している。本発明に係る衝撃低減装置及び衝撃低減構造は、発電プラントに設置された建築物のうち防護対象設備10以外の建築物に設けられてもよいし、発電プラント以外で設置された建築物に設けられてもよい。