特許第6862537号(P6862537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862537
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】医療用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20210412BHJP
   A61B 17/29 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61B17/28
   A61B17/29
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-511010(P2019-511010)
(86)(22)【出願日】2017年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2017014292
(87)【国際公開番号】WO2018185897
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅浩
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07699835(US,B2)
【文献】 国際公開第2016/166898(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/152972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28
A61B 17/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の支持部と、
該支持部の先端に支持された第1把持片および第2把持片と、
第2把持片を前記支持部の長手軸に直交する揺動軸回りに揺動させる駆動機構とを備え、
該駆動機構が、前記第2把持片の基端に設けられ、前記揺動軸を中心軸とする内歯車を有する円筒部と、前記揺動軸と平行な軸線回りに回転可能に設けられ、前記内歯車と噛み合う外歯車を有する駆動部材と、前記支持部の基端において加えられた動力を伝達して該駆動部材を回転させるワイヤとを備える医療用処置具。
【請求項2】
前記内歯車および前記外歯車の一方がピン歯車であり、他方がサイクロイド歯車である請求項に記載の医療用処置具。
【請求項3】
長尺の支持部と、
該支持部の先端に支持された第1把持片および第2把持片と、
第2把持片を前記支持部の長手軸に直交する揺動軸回りに揺動させる駆動機構とを備え、
該駆動機構が、前記第2把持片の基端に設けられ、前記揺動軸を中心軸とする円筒部と、該円筒部の内側に前記揺動軸と平行な軸線回りに回転可能に支持され、前記円筒部の内面と摩擦接触させられる円柱外面を有する駆動部材と、前記支持部の基端において加えられた動力を伝達して該駆動部材を回転させるワイヤとを備える医療用処置具。
【請求項4】
前記第1把持片が前記支持部の先端に固定されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の医療用処置具。
【請求項5】
前記第2把持片が、前記内歯車とは前記揺動軸の軸方向の反対側に配置された第1歯車を備え、
前記第1把持片が、前記揺動軸と平行な他の軸線を中心軸とし前記第1歯車と噛み合う第2歯車を基端側に備え、前記第2歯車の中心軸回りに前記第2把持片とは逆方向に揺動可能に設けられている請求項1または請求項2に記載の医療用処置具。
【請求項6】
前記第2把持片が、前記内歯車とは前記揺動軸の軸方向の反対側に突出するピンを備え、
前記第1把持片が、前記ピンをガイドするカム溝を備え、前記揺動軸と平行な他の軸線回りに前記第2把持片とは逆方向に揺動可能に設けられている請求項1または請求項2に記載の医療用処置具。
【請求項7】
前記支持部が可撓性を有する請求項1から請求項のいずれかに記載の医療用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用処置具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒状の支持部の先端に、支持部の長手軸に直交する揺動軸線回りに揺動可能に支持された一方の把持片の揺動軸線よりも基端側に内歯車を揺動軸線と同軸に設け、内歯車に噛み合わせた駆動用歯車を回転させることで、把持片を揺動軸線回りに揺動させて開閉する処置具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7699835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の処置具は、内歯車に噛み合う駆動用歯車を、他方の把持片に固定された外歯車とも噛み合わせているので、内歯車の径寸法が大きくなり、把持片が大きく揺動させられると、内歯車が設けられた把持片の基端部分が支持部の径方向に大きく突出してしまうという不都合がある。この場合、把持片を大きく開いた状態で処置具を基端側に移動させると、径方向に大きく突出した把持片の基端部分が周囲に干渉して移動の障害となるという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、把持片が大きく揺動させられても把持片の基端部を支持部の径方向に突出させずに済み、周囲との干渉を低減することができる医療用処置具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、長尺の支持部と、該支持部の先端に支持された第1把持片および第2把持片と、該第2把持片を前記支持部の長手軸に直交する揺動軸回りに揺動させる駆動機構とを備え、該駆動機構が、前記第2把持片の基端に設けられ、前記揺動軸を中心軸とする内歯車を有する円筒部と、前記揺動軸と平行な軸線回りに回転可能に設けられ、前記内歯車と噛み合う外歯車を有する駆動部材と、前記支持部の基端において加えられた動力を伝達してワイヤを回転させる動力伝達部材とを備える医療用処置具である。
【0007】
本態様によれば、支持部の基端において加えた動力が動力伝達部材により支持部の先端まで伝達されて駆動部材が回転させられる。これにより、駆動部材の外面が把持片の基端に設けられた円筒部の内面との間で転がり接触させられて、駆動部材の回転力が円筒部に伝達されて、一対の把持片が揺動軸線回りに揺動させられることにより開閉される。これにより、処置対象部位の把持あるいは押し広げ等の処置を行うことができる。
【0008】
この場合において、把持片の揺動に際して回転させられる円筒部が、把持片の揺動軸線を中心軸としているので、把持片が揺動しても円筒部の径方向の寸法は変化せず、従来のように把持片の基端部が支持部の径方向に大きく突出することがない。その結果、把持片を大きく開いた状態で処置具を基端側に移動させても、把持片の基端部が周囲に干渉することがなく、スムーズに移動することができる。
【0009】
上記態様においては、前記円筒部の内面に内歯車が設けられ、前記駆動部材の外面に前記内歯車に噛み合う外歯車が設けられていてもよい。
このようにすることで、駆動部材の回転力が外歯車と内歯車との噛み合いによって確実に把持片に伝達され、把持力あるいは把持片によって処置対象部位を押し広げる力を向上することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記内歯車および前記外歯車の一方がピン歯車であり、他方がサイクロイド歯車であってもよい。
このようにすることで、構造が簡易なピン歯車を使用して、動力を確実に伝達する駆動機構を構成することができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記支持部が可撓性を有していてもよい。
このようにすることで、支持部を湾曲させて、曲がりくねった経路に沿って挿入し、所望の処置対象部位に一対の把持片を到達させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、把持片が大きく揺動させられても把持片の基端部を支持部の径方向に突出させずに済み、周囲との干渉を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用処置具の先端部を示す斜視図である。
図2図1の医療用処置具の先端部の分解斜視図である。
図3図1の医療用処置具の先端部の固定把持片と可動把持片とを取り付けた状態を示す正面図である。
図4図1の医療用処置具の可動把持片に設けられた内歯車と駆動部材に設けられた外歯車との関係を示す正面図である。
図5図1の医療用処置具の第1の変形例であって、固定把持片と可動把持片とを取り付けた状態を示す正面図である。
図6図5の医療用処置具の可動把持片に設けられた内歯車と駆動部材に設けられた外歯車との関係を示す正面図である。
図7図1の医療用処置具の第2の変形例を示す正面図である。
図8図7の医療用処置具の背面図である。
図9図8の医療用処置具の他の例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態に係る医療用処置具1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る医療用処置具1は、図1および図2に示されるように、可撓性を有する長尺の支持部2と、該支持部2の先端に固定された固定把持片(把持片)3と、支持部2の長手軸に直交する揺動軸線A回りに揺動可能に支持され固定把持片3に対して開閉させられる可動把持片(把持片)4と、可動把持片4を揺動させる駆動機構5とを備えている。
【0015】
駆動機構5は、支持部2の基端側に設けられたハンドルあるいはアクチュエータ等の動力を発生する図示しない駆動部と、該駆動部により発生した動力を伝達するワイヤ(動力伝達部材)6と、ワイヤ6により揺動軸線Aと平行な軸線回りに回転駆動させられる駆動部材7と、可動把持片4の基端に固定され、揺動軸線Aを中心軸とする円筒部8とを備えている。図中符号14は、駆動部材7を回転可能に支持するキャップである。
円筒部8の内面には内歯車8aが設けられ、駆動部材7の外面には内歯車8aに噛み合って転がり接触させられる外歯車7aが設けられている。
【0016】
ワイヤ6は、長さ方向の途中位置が円筒状の駆動部材7の外面に巻き掛けられて、周方向の1箇所の駆動部材7に設けられた溝9に図示しない固定部材をはめ込んで接着することにより駆動部材7に固定されている。これにより、ワイヤ6は、駆動部材7の軸線を挟んで両側から支持部2を基端側に向かって平行に延びて駆動部に接続されている。駆動部により一方のワイヤ6を牽引することにより駆動部材7を一方向に回転させ、他方のワイヤ6を牽引することにより駆動部材7を他方向に回転させることができるようになっている。
【0017】
本実施形態においては、図3および図4に示されるように、外歯車7aはピン歯車であり、内歯車8bはサイクロイド歯車である。ピン歯車の歯は、溝9近傍を除き周方向に等間隔をあけて所定のピッチ円半径に沿って4箇所に設けられたピンである。4本のピンであっても、可動把持片4の揺動角度を45°以上確保することができる。
内歯車8bのピッチ円半径と、外歯車7aのピッチ円半径との比率が2から6であり、外歯車7aの回転が1/6から1/2に減速されて内歯車8bを回転させるようになっている。
【0018】
このように構成された医療用処置具1によれば、駆動部によってワイヤ6に加えた力により発生したトルクの2から6倍のトルクで可動把持片4を揺動させることができ、小さい動力で可動把持片4と固定把持片3との間に処置対象部位等をしっかりと把持することができるという利点がある。
【0019】
また、本実施形態においては、揺動軸線A回りに揺動させられる可動把持片4が、基端部に固定された円筒部8を回転駆動することにより揺動させられ、円筒部8が可動把持片4の揺動軸線Aを中心軸としているので、可動把持片4が揺動する際に、揺動軸線A回りの径方向寸法が変化せず、従来のように把持片の基端部が支持部2の径方向に大きく突出することがない。
【0020】
このような医療用処置具1は、例えば、内視鏡のチャネルやオーバーチューブのチャネルを経由して体内に配置されるので、体内への挿入時には、可動把持片4を固定把持片3に対して閉じた状態とすることにより全体を細径化できて挿入をスムーズに行うことができることは言うまでもない。本実施形態に係る医療用処置具1は、内視鏡等のチャネルの先端から突出させた状態で、処置対象部位に対して処置を行う際に、固定把持片3に対して可動把持片4を開閉しながら処置が行われる。
【0021】
この場合において、固定把持片3に対して可動把持片4を開いた状態で、何らかの原因により医療用処置具1全体がチャネル内に引き込まれる場合に、本実施形態に係る医療用処置具1によれば、可動把持片4の基端部の外径寸法が可動把持片4の開閉にかかわらず一定なので、大きく開いた状態の可動把持片4の基端部がチャネルの開口に引っかかることがなく、スムーズに引き込むことができるという利点がある。これにより、医療用処置具1の破損を防止することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る医療用処置具1においては、内歯車8aと外歯車7aとをピン歯車とサイクロイド歯車とにより構成したので、駆動部材7から可動把持片4に動力を伝達する部分の構造を単純化して簡易に構成することができるという利点がある。
なお、図5および図6に示されるように、内歯車8aをピン歯車により構成し、外歯車7aをサイクロイド歯車により構成してもよい。
また、ピン歯車とサイクロイド歯車に代えて、他の形式の歯車を採用してもよい。
【0023】
また、本実施形態においては、内歯車8aと外歯車7aとの噛み合いによる転がり接触によって、駆動部材7から可動把持片4への動力の伝達を行うこととしたが、これに代えて、可動把持片4に設けられた円筒部8内面と、駆動部材7に設けられた円柱外面との摩擦接触により、動力を伝達することにしてもよい。この場合においても円筒部8内面の径寸法を円柱外面の径寸法よりも十分に大きく設定しておくことにより、駆動部材7の回転が減速されて可動把持片4に伝達される。
【0024】
また、本実施形態においては、一方の把持片3を固定し他方の把持片4を揺動させることとしたが、これに代えて、両把持片4a,4bを同期して開閉可能に揺動させることにしてもよい。
例えば、図7および図8に示されるように、一方の把持片4aの基端に設けられた円筒部8の内歯車8aとは軸方向の反対側の面に歯車10を設け、該歯車10に噛み合う他の歯車11を他の把持片4bの基端に設けることにしてもよい。これにより、ワイヤ6の牽引によって一方の把持片4aが一方向に揺動させられると、該把持片4aに設けられた歯車10に噛み合う歯車11を介して他の把持片4bが逆方向に揺動させられ、一対の把持片4a,4bを開閉動作させることができる。
【0025】
また、歯車10,11に代えて、図9に示されるように、一方の把持片4aの円筒部8の内歯車8aとは反対側に突出するピン12を設け、他方の把持片4bを支持部2に揺動可能に取り付けて、該他方の把持片4bにピン12をガイドするカム溝13を設けることにしてもよい。
これにより、一方の把持片4aを駆動部材7によって一方向に揺動させると、円筒部8に設けたピン12の位置が変化するので、ピン12をカム溝13内で移動させることによって、他方の把持片4bについても他方向に揺動させることができ、一対の把持片4a,4bを同時に同期して開閉動作させることができる。
また、長尺の支持部2として可撓性を有する軟性のものを例示したが、硬性の支持部2を採用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 医療用処置具
2 支持部
3 固定把持片(把持片)
4 可動把持片(把持片)
4a,4b 把持片
5 駆動機構
6 ワイヤ(動力伝達部材)
7 駆動部材
7a 外歯車
8 円筒部
8a 内歯車
A 揺動軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9